第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、公共性及び信頼性の確保、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築並びに創造的かつ魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。また、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。

この企業理念の下、中期経営計画において、中長期の将来像を見据えた経営の基本方針、事業戦略及び経営目標を策定しています。

2019年度から2021年度の3か年を対象とした「第三次中期経営計画 ―市場への責任 未来への挑戦―」(2019年3月策定、2020年3月アップデート)においては、グローバルな環境変化や技術革新の中、ステークホルダーとの一層の協力や新たなパートナーシップを通じ、誰もがあらゆる商品を安心かつ容易に取引できる取引所<Total smart exchange>への進化を目指すとともに、「責任あるインフラの運営者として『持続可能な社会の構築』に向けて、さらに積極的に貢献していく」ことを経営の基本方針とし、社会を支えるインフラとしての責任を果たす意思と、環境変化に立ち向かう意思を「市場への責任 未来への挑戦」と表しています。
中期経営計画を着実に実行するとともに、投資家・利用者のニーズや事業環境の変化、技術の進展や規制の枠組みの見直しに応じて、的確な対応を進めることにより、日本国内のみならず、アジア太平洋地域のタイムゾーンにおける機軸マーケットとして、世界でも枢要な市場の一つであり続けることを目指していきます。

 

(2)中期経営計画、経営環境及び対処すべき課題等

 ① 第三次中期経営計画1年目の振り返り

2019年度においては、当社グループは、第三次中期経営計画の計画1年目として、以下4つの重点戦略に基づく施策を着実に実行いたしました。

重点戦略

主な施策や成果

次世代に向けた
「市場のカタチ」の追求

現物プラットフォーム arrowhead2.5の稼働

株式決済期間短縮(T+2化)の実現

IPO94社を達成

日中ETFコネクティビティを活用した日中ETF同時上場

総合取引所の実現と
その発展

東京商品取引所(TOCOM)との経営統合

商品移管・清算機関統合に係る制度の確定・公表

経営統合シナジー創出に向けた管理部門の統合

一体化した営業部隊による市場活性化策の推進

データサービスの多様化の実現と次世代への挑戦

新たなデータサービス・ユーザ層を創出する実証実験プログラム・データサンドボックスプログラムを立ち上げ

新プログラムにより新たなデータサービスの開発が進捗

(実用化2件、実験中5件)

事業と社会の未来を
支えるための基盤作り

BCP強化のための関西バックアップセンターの構築を推進

ブロックチェーン/DLTを実用化するインフラ構築に向けた新プロジェクトの立上げ

人生100年時代を見据えた資産形成の重要性を訴求

 

 ② 経営・事業環境及び課題

当社グループは、有価証券やデリバティブの上場から、取引の場の提供、清算・決済サービスから指数・情報サービスに至るまで、我が国の市場に関する一連のサービスをグループ一丸となって提供しています(当社の企業構造については「第1企業の概況 3事業の内容」の事業系統図をご覧ください。)。当社グループが運営する市場は、企業等に対しては資金調達機会を、投資家に対しては資産運用機会を、社会全体に対しては価格発見機能を提供しています。我が国においては、国内の他の取引所や私設取引システム(PTS)が市場を提供していますが、当社グループは、証券会社等の取引参加者を通じて、国内外の投資家からの大量の需給を集約することにより日本国内において確固たる地位を確立しています。当社グループが、我が国におけるセントラル・マーケットの運営者として、引き続き安定的に市場運営を行っていくためには、取引参加者・上場会社・システムベンダーをはじめとする市場関係者との一層の連携を図っていくことが重要と認識しています。また、政府の成長戦略における、金融・資本市場関連分野の課題として掲げられている事項に対しても、市場運営者としての立場から、実現に向けた取組みが求められています。

当社グループの運営する市場は、内外の経済情勢や金融政策、地政学リスクの動向など外部環境の変化によって大きな影響を受けるため、内外の経済動向や市場環境を注視しながら、市場運営を行っていく必要があります。これまで、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により経済活動が抑制され景気が急速に悪化しているところ、さらに、日本経済においては、少子高齢化や財政赤字、金融緩和の長期化などの中長期的な構造要因の急速な顕在化が懸念されています。また、世界経済においては、米国・欧州における金融政策の動向や米中貿易問題など米中経済の動向や政治リスクの高まりなどが想定されますが、これらの動向により、当社グループの運営する市場の動向に影響を与える可能性があります。当社グループとしては、環境の不透明性・不確実性から生じる様々なリスクに的確に対処しながら、常に安定的に利用者の満足度が高い市場インフラを提供することを最大の経営課題と認識しており、流通市場や発行市場の動向が当社グループの業績に与える影響を注視しつつ、柔軟なコストコントロールの実施や、日本株市況に過度に依存しない経営体質の更なる強化を図ってまいります。

 

 ③ 第三次中期経営計画(2019年度-2021年度)2年目以降に向けたアップデート

計画2年目を迎えるにあたっては、第三次中期経営計画の大枠を維持しつつ、①環境変化や進捗状況に応じて柔軟なコストコントロールを行いながら、具体的に施策を見直す中でも、総合取引所の活性化や新たなデータサービスの創出をはじめ、さらに収益の多様化を図るための施策を積極的に展開していくこと、②ESG重視のグローバルな潮流に応じて、ESG投資・開示の普及をはじめ、当社自らのESG開示やESGスコアリングの充実など、サステナビリティ推進の取組みを更に強化していくことを基本方針とした計画のアップデートを行い、以下4つの重点戦略を着実に実行することとしています。

重点戦略

具体的施策

次世代に向けた
「市場のカタチ」の追求

現物市場の機能強化、次世代現物プラットフォームの構築推進

日本市場の魅力向上に向けた市場構造の構築、コーポレートガバナンス向上

グローバル競争力強化のための清算サービス向上

個人投資家との新たなチャネル拡大、グローバル投資家サポートの推進

ETF市場活性化、新たな投資家層の受け皿となる環境整備

質的魅力を備えた上場会社・上場商品の拡充

総合取引所の実現・活性化とその発展

総合取引所の実現

次期デリバティブプラットフォーム J-GATE3.0の構築推進

多様なフロー獲得によるデリバティブ市場活性化

デリバティブ市場の発展に向けた新しい施策の推進

中長期の将来像の実現に向けた対応

データサービスの多様化の実現と次世代への挑戦

■技術革新とパートナーシップを活用した新しい情報サービスの創造

API配信・クラウド配信を実現する次世代情報配信システムの構築

環境変化・ニーズに即した指数開発・事業強化

投資対象としての機能性を備えたTOPIXへの移行

中長期の将来像の実現に向けた対応

事業と社会の未来を
支えるための基盤作り

■ITシステム基盤強化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進、デジタル人材育成

■サイバーセキュリティ対策の強化と自然災害リスクに備える関西バックアップセンター整備

■環境変化に即した的確な自主規制機能の発揮

■安定的な資産形成や市場機能強化のための金融リテラシー向上

■事業基盤の強化

 

 

なお、当社グループは、4つの重点戦略の達成状況を判断するための客観的な指標として、主要達成目標を定めており、計画1年目の進捗状況を踏まえ以下のとおり更新しています

 

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④ 第三次中期経営計画(2019年度-2021年度)の経営財務数値及び資本政策

「第三次中期経営計画 ―市場への責任 未来への挑戦―」では、市場への責任を果たすためのシステム投資・BCP投資を実施しつつ未来へ挑戦していくための取組みを推進すること、具体的には4つの重点戦略を着実に遂行することにより、当社グループの収益基盤である取引量などの中長期的な増大を図っていくことを経営財務方針としています。また、安定的な市場運営のための財務の安全性と株主還元のバランスをとりつつ、継続的な投資により、市場の持続的な発展・進化を支えることを資本政策の基本方針とし、市況にかかわらず資本コストを上回るROE10%を中長期的に維持することを目指します。当該経営財務方針及び資本政策に基づき、計画最終年度の経営財務数値と計画期間中の設備投資金額の目安となる水準を以下のとおり設定しています。

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2020年3月に計画をアップデートしておりますが、経営財務数値は維持し、流通市場や発行市場の動向が当社グループの業績に与える影響を注視しつつ、柔軟なコストコントロールの実施や、日本株市況に過度に依存しない経営体質の更なる強化を図ってまいります。

2【事業等のリスク】

 

[リスク管理への基本方針]

当社グループは、システム障害リスク、清算参加者破綻時の補償等のリスク、事務過誤のリスクなど、事業上様々なリスクを抱えています。これらのリスクに対応するため、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」及びCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、JPXで定めた「リスク管理方針」に従って、未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはそのおそれが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えています。(各委員会等の詳細については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」をご覧ください。)

また、事業年度毎に当社グループが重点的に対応すべきリスクを「重要リスク」として特定し、未然に「重要リスク」等への対応を行うことで、リスクの発現可能性を低減させるとともに、リスクが顕在化した際には機動的な対応を行います。また、重大事故発生時には、統括的な状況把握、早期解決に向けた指揮などが「リスク管理委員会」によって行われる体制となっており、経営陣へ必要な情報が漏れなく、迅速に入る体制が整備されています。

 

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<重要リスクの特定フローイメージ>

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[個別のリスク]

以下、当社グループの事業その他に関し、リスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しておりますが、これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、必ずしもリスク要因には該当しないと考えられる事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。

 

 1.経営体制・事業戦略に関するリスク

(1)経営体制の特徴等について

① 持株会社であることについて

当社は持株会社であるため、収入は、経営管理料収入や子会社や関連会社からの配当金に大きく依存しますが、法律上又は事業上の制約により、当社への子会社や関連会社からの配当金の支払いは制限される可能性があります。

当社の子会社である日本取引所自主規制法人は、金融商品取引法において、営利の目的をもって業務を行ってはならない旨、規定されていることから配当を行うことができず、また、子会社である株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構は、清算機関としての企業の継続性及び決済履行保証スキーム(「7.決済履行確保の枠組みについて」参照)の機能確保の観点から、一定の剰余金を確保する必要があります。(「金融市場インフラのための原則」(2012年4月:国際決済銀行・支払決済システム委員会、証券監督者国際機構専門委員会の共同報告書)においても、「(より複雑なリスク特性を伴う清算業務に従事しているCCPは)極端であるが現実に起こり得る市場環境において最大の総信用エクスポージャーをもたらす可能性がある2先の参加者とその関係法人の破綻を含み、かつこれに限定されない広範な潜在的ストレスシナリオを十分にカバーするだけの追加的な財務資源を保持すべきである。」との原則が掲げられております。)

当社グループは、配当について「金融商品取引所グループとして、財務の健全性、清算機関としてのリスクへの備え、当社市場の競争力強化に向けた投資機会等を踏まえた内部留保の重要性に留意しつつ、業績に応じた配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を60%程度とすること」を目標としておりますが、当社の子会社や関連会社が、当社に配当を行うだけの十分な収益やキャッシュ・フローを確保できなかった場合には、当社の株主に対する配当が困難もしくは不可能となる可能性があります。

 

② 自主規制機能について

投資家が市場に安心して参加するためには、市場が公正で信頼できるものである必要があり、市場の公正性・信頼性を確保するためには、自主規制機能が適切に発揮されることが不可欠です。

当社グループの企業体としての利害と市場の公正性との間の利益相反問題の回避に万全を期するとともに、その実効性を確保するため、金融商品市場については、持株会社の傘下に市場運営会社(株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所)と自主規制法人(日本取引所自主規制法人)を置いており、日本取引所自主規制法人は株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所からの委託を受けて自主規制業務を行っております。

この自主規制業務の委託料については、金融商品取引法において、自主規制法人が委託を受けた自主規制業務を行うために適正かつ明確な算出方法が委託契約に定められていることが求められていることから、長期かつ固定的な金額を基本としております。また、商品市場については、自主規制業務の独立性確保の観点から、株式会社東京商品取引所の取締役会の諮問機関として自主規制委員会を設置し、同委員会が自主規制業務に関する事項の審議を行うこととし、同委員会の職務を補助する自主規制を担当する部門を設置しています。

当社グループでは、自主規制機能は市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹であり、市場についての一種の品質保証であるとともに、市場のブランドを維持向上させるものであると認識しており、中長期的に収益の獲得・向上に資するものであると考えておりますが、短期的には、自主規制機能の発揮が営利性の追求と相反する側面があるとともに、市場環境の悪化等により、当社グループの経営成績が順調に進展しない場合には、自主規制機能にかかる業務に必要な経営資源を投入した結果、当社グループの経営成績に影響を及ぼす業績が圧迫される可能性があります。加えて、自主規制機能が適切に発揮されない場合には、市場参加者や投資家等の信頼を著しく損ね、ひいては市場のブランド価値を毀損することにより、当社グループ全体の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、金融商品取引所との比較において自主規制業務に関する負担が著しく低い私設取引システム(いわゆるPTS。以下「PTS」といいます。)等との競争においては、コスト構造上、不利に働く可能性があります。

 

(2)事業戦略に関するリスク

① 事業戦略が失敗するリスク

当社グループは、2019年度から2021年度までの3年間を対象とする当社グループの第三次中期経営計画を2019年3月に公表し、様々な施策を実行しております。

当社グループは、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えることを企業理念とし、市場の持続的な発展のための事業戦略を着実に遂行することにより、当社グループの収益基盤である取引量などの中長期的な増大を図っていくことを経営財務方針としています。このため、事業戦略の着実な遂行を行ったとしても、それがもたらす財務上の効果が第三次中期経営計画期間の後に発現することなどにより、第三次中期経営計画期間中に、経営財務目標を達成できない可能性があります。また、本項に示した各種リスクの顕在化や経済環境・市場環境の変化等によっても、目標を達成できない可能性があります。加えて、当社グループの遂行する市場の持続的な発展のための事業戦略は、投資家・利用者のニーズの変化やステークホルダーとの調整、法改正や規制の見直しなどによる事業環境の変化等により、当初予定していたとおりに遂行できない可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、各種リスクの顕在化や経済環境・市場環境の変化等を注視するとともに、事業戦略の進捗状況や事業環境の変化等について定期的にモニタリングを行い、第三次中期経営計画の達成のために、的確な財務運営や環境変化に応じた重点戦略の見直しなどを適時的確に行うよう対策を行っています。

 

② システム投資について

近年のIT技術の発展により取引所もシステムの高度化が進んでおり、その安定性・処理性能等が市場間競争における優位性確保に大きな影響を及ぼす状況となっております。

当社グループでは、現物市場の売買システムとして、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた「arrowhead」を、デリバティブ市場の取引システムとして、世界標準の取引機能と世界水準の注文処理性能を兼ね備えた「J-GATE」をそれぞれ稼働しております。

今後も、テクノロジーの発達に伴う投資手法の高度化・多様化等、刻々と変化を続ける利用者のニーズに適切に対応し、取引所としての競争力を維持していくためには、加速度的に進化する技術を最大限活用すべく、ITに関する設備投資を継続し、取引システム等の改良に努めていく必要があることから、「J-GATE」については、2021年度第3四半期のリプレースを予定しており、「arrowhead」については、今後詳細な更改スケジュールを検討してまいります。

しかしながら、これらの設備投資により、必ずしも直ちに収益が拡大するとは限らず、市況の悪化等により、コストに見合う収益を生み出すことができなかった場合には、当社グループの業績が圧迫されるとともに、その後における追加的な設備投資に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

2.事業環境等に関するリスク

(1)法令等による規制等について

① 免許制の事業であることについて

当社グループは金融商品取引法、商品先物取引法及び関連する諸法令の規制の下、事業を行っております。

当社は、金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下「取引所持株会社認可」といいます。)を受けた「金融商品取引所持株会社」であり、当社の子会社である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の免許(以下「取引所業免許」といいます。)を受けて、取引所金融商品市場を開設・運営する「金融商品取引所」であります。なお、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の認可(以下「自主規制業務の委託認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を日本取引所自主規制法人に委託しており、日本取引所自主規制法人は同法が定める内閣総理大臣の認可(以下「自主規制業務認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を行っております。加えて、当社は金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下「商品取引所子会社化認可」という)を受けて、株式会社東京商品取引所を子会社としており、株式会社東京商品取引所は、商品先物取引法が定める主務大臣の許可(以下「株式会社商品取引所許可」といいます。)を受けて先物取引を行うために必要な市場を開設・運営する「株式会社商品取引所」であります。

また、株式会社日本証券クリアリング機構は、金融商品取引法が定める内閣総理大臣の免許を受けて、金融商品取引清算機関として金融商品債務引受業等を行っており、株式会社日本商品清算機構は商品先物取引法が定める主務大臣の許可を受けて、商品取引清算機関として商品取引債務引受業等を行っております。

さらに、金融商品取引清算機関の総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権を取得し、若しくは保有しようとする場合、あらかじめ、内閣総理大臣の認可を受けなければならないとされており、当社は当該認可を受けております。

現時点におきましては、上記免許等が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、取消事由等に該当し、免許等の取消処分を受けることとなった場合又は業務の全部若しくは一部の停止等の処分を受けることとなった場合等には、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<主な許認可等の概要>

許認可等の名称

根拠条文

会社名

有効期限

免許又は認可の取消事由

取引所持株会社認可

金融商品取引法

第106条の10第1項

株式会社日本取引所グループ

なし

同法 第106条の26、第106条の28第1項

取引所業免許

同法 第80条

株式会社東京証券取引所

株式会社大阪取引所

なし

同法 第134条第1項、第148条、第152条第1項

自主規制業務の委託認可

同法 第85条第1項

株式会社東京証券取引所

株式会社大阪取引所

なし

同法 第153条の2

自主規制業務認可

同法 第102条の14

日本取引所自主規制法人

なし

同法 第153条の4

金融商品債務引受業免許

同法 第156条の2

株式会社日本証券クリアリング機構

なし

同法 第156条の17第1項、第2項

金融商品取引清算機関の主要株主認可

同法 第156条の5の5

株式会社日本取引所グループ

なし

同法 第156条の5の9第1項

商品取引所子会社化認可

同法 第106条の24第1項

株式会社日本取引所グループ

なし

同法 第106条の26、第106条の28第1項

株式会社商品取引所許可

商品先物取引法 第78条

株式会社東京商品取引所

なし

商品先物取引法 第94条第1項、第159条第1項、第2項

商品取引債務引受業許可

同法 第167条

株式会社日本商品清算機構

なし

同法 第186条第1項、第2項

 

② 業務内容の制限等について

当社グループは、金融商品取引法及び商品先物取引法において、次のような業務内容の制限を受けております。金融商品取引所持株会社である当社は、子会社である株式会社金融商品取引所等の経営管理を行うこと及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を行うことができないとされており、金融商品取引所である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務等以外の業務を行うこと、自主規制法人である日本取引所自主規制法人は、自主規制業務及びこれに附帯する業務以外の業務を行うこと、商品取引所である株式会社東京商品取引所は、商品市場の開設及び上場商品の品質の鑑定、刊行物の発行その他これに附帯する業務以外の業務を行うこと、金融商品取引清算機関である株式会社日本証券クリアリング機構は、金融商品債務引受業等及びこれに附帯する業務以外の業務を行うこと、商品取引清算機関である株式会社日本商品清算機構は、商品取引債務引受業等及びこれらに附帯する業務以外の業務を行うことを原則として禁止されており、業務範囲が制限されております。

また、同様に、金融商品取引所持株会社、金融商品取引所及び商品取引所は、金融商品取引法及び商品先物取引法において、子会社の範囲についても制限を受けております。

このほか、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所、日本取引所自主規制法人及び株式会社日本証券クリアリング機構は、定款、業務規程、受託契約準則、業務方法書を変更する場合には、内閣総理大臣の認可が必要である旨、定められており、同様に、株式会社東京商品取引所及び株式会社日本商品清算機構は定款等を変更する場合には、主務大臣の認可が必要である旨、定められているなど、当社グループは法令による広範な規制の下、業務を行っております。

これらの規制は、必ずしも当社の株主を保護することを目的とはしていないため、将来、何らかの理由により、業務上必要な認可が得られないような場合には、当社グループが必要とする施策を実行できず、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

当社の発行済株式の取得及び所有に係る制限等について

金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社が発行する株式につきましては、認可金融商品取引業協会、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社、商品取引所、商品取引所持株会社又は地方公共団体その他政令で定める者を除いて、何人も、総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除きます。以下「対象議決権」といいます。)を取得し、又は保有してはならないとされております。

また、総株主の議決権の100分の5を超える対象議決権の保有者となった者は、内閣府令で定めるところにより、対象議決権保有割合、保有の目的その他内閣府令で定める事項を記載した対象議決権保有届出書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないものとされております。

 

④ 法改正による影響等について

当社グループの事業に関連する法規制の導入・改正・撤廃や法規制の執行に関する方針の変更は、直接的に又はその結果生じる市場環境の変化を通じて、当社グループに悪影響を及ぼす可能性があります。

例えば、規制内容の変更に伴う競争環境の変化や税制の変更は、当社グループの市場シェアや取引量の減少に繋がる可能性があります。

将来における法規制の変更内容及びそれが当社グループの事業に与える影響を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものでもありませんが、新たな規制等が実施された場合には、当社グループの業務遂行や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)金融市場の動向による影響について

① 収益構造の特徴等について

当社グループの営業収益のうち、「取引関連収益」及び「清算関連収益」(それぞれ2020年3月期の連結営業収益に占める割合が39.3%、21.4%)は有価証券やデリバティブ商品の売買代金・取引高の水準に、「上場関連収益」(同11.6%)は上場する企業の時価総額や資金調達額、新規上場会社数の水準などにそれぞれ大きく依拠しております。

現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、景気は急速に悪化しており、極めて厳しい状況にあります。先行きについては、感染症の影響による極めて厳しい状況が続くと見込まれ、内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要があります。

当社グループの収益は、有価証券やデリバティブ商品の流通市場並びに有価証券の発行市場の動向、ひいては世界的な金融市場の動向や国内外の経済情勢の影響を大きく受けることとなります。

特に、上場会社の大多数は日本企業であることから、日本経済の状況が当社グループの業績に及ぼす影響は大きく、景気の低迷等により、流通市場及び発行市場を取り巻く環境が悪化し、現物市場及びデリバティブ市場における取引量、上場会社の時価総額、資金調達額等が減少した場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。

こうしたリスクに対処するため、当社グループとしては、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する中にあっても、社会インフラとしての責務を果たすため、安定的な市場運営の維持を最優先事項と位置づけ、万全の対策を採ってまいります。

 

② 外国人投資家の動向による影響について

2019年1月~12月における外国人投資家の取引量は、株式の売買代金においては6割程度、デリバティブ取引の主力商品である日経平均株価先物やTOPIX先物の取引高においては7割程度を占めるなど、重要な割合を占めております。

したがって、日本経済、日本企業一般の株価パフォーマンス又は為替レートの状況や規制強化等により、外国人投資家にとっての日本市場への投資魅力が減退し、取引量が減少することとなった場合には、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、外国人投資家を含めた国内外の投資家への営業強化・関係強化を行うとともに、日本市場への投資・フロー獲得に向けた取組みを積極的に行っております。

 

(3)競合による影響について

① 現物市場に関する他の証券取引所、取引所外取引との競合について

現物取引等における競合は激しさを増してきており、市場の流動性、取引の執行にかかるスピード・コスト、取引システムの性能、取引参加者や上場会社に提供される商品やサービスの多様性、規制環境など、様々な分野において、今後も競合が激化していくものと認識しております。

現状、当社グループにおける株式売買代金は、2019年1~12月における国内上場株式の売買代金の84%程度を占めており、日本における取引所外取引(PTS及びOTC等)は16%程度となっておりますが、近年、取引所外取引における取引量は増加傾向にあり、将来的には当社グループのシェアを奪う脅威となる可能性があります。

当社グループがこうした競争環境に適切に対応できず、市場の流動性等が減少した場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、近年、取引所業界は世界的に激しい価格競争にも晒されております。競合他社が当社グループよりも低い手数料等でのサービスの提供を開始し、当社グループにおいても、取引や上場にかかる手数料の引下げ等を行う必要が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② シンガポール取引所の日経平均株価先物取引・オプション取引との競合について

大阪取引所市場における日経平均株価先物取引は主にシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引と競合しております。シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引は、大阪取引所市場における日経平均株価先物取引と同じく、我が国株式市場を代表する指数である日経平均株価を対象とした株価指数先物取引です。

 

過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高は、次のとおりです。

年度

大阪取引所市場

シンガポール取引所市場

2017年度

49,158,330単位

11,823,131単位

2018年度

50,031,286単位

11,036,082単位

2019年度

56,109,751単位

13,060,783単位

(注1)大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引には、それぞれ日経225mini及びMini Nikkei 225 Index Futuresを含みます。ただし、これらは、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の10分の1であるため、実際の取引高の10分の1としております。

(注2)シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引(米ドル建を含み、Mini Nikkei 225 Index Futuresを除きます。)は、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。

 

 

指数オプション取引に関しては、大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引が主に競合している商品として、シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引があります。

過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引の取引高は、次のとおりです。

年度

大阪取引所市場

シンガポール取引所市場

2017年度

36,041,670単位

4,969,971単位

2018年度

32,405,569単位

5,311,745単位

2019年度

32,368,996単位

5,528,273単位

(注)シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引は、取引換算額では大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。

 

2019年度の大阪取引所市場における日経平均先物取引及び日経平均株価オプション取引の取引高は、シンガポール取引所市場のそれを上回っておりますが、今後の市場参加者の動向によっては、大阪取引所市場の利用者がシンガポール取引所市場に移ることで大阪取引所市場における取引手数料収入が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 取引所間の経営統合について

取引所業界においては、情報通信技術の発展に伴うクロスボーダー取引の拡大や市場間競争の激化、取引所の株式会社化・上場を背景とした規模拡大や経営効率向上の取組強化、国際的な規制の調和の進展などを背景に、主に欧米地域を中心に、特に2000年代後半以降、主要取引所間での合従連衡の動きが顕著となりました。例えば2007年には、NYSEグループとユーロネクスト間及びNasdaqとOMX間の経営統合、ロンドン証券取引所によるイタリア取引所の買収などが実施され、その後も2012年のHKEx によるロンドン金属取引所の買収、2013年のインターコンチネンタル取引所によるNYSEユーロネクストの買収(2014年にユーロネクストをスピンオフ)などが実現しています。欧州を中心に、2019年のユーロネクストによるオスロ取引所の買収など、足元でも取引所間統合の動きがありますが、一方で、経営統合を発表しながらも、規制当局による承認等が得られず、見送りとなった事例もこれまで少なからずあり、また昨今では、清算分野、IT関連や情報ビジネスなどビジネス領域の拡大を目的にした取引所による買収事例も増加しています。

他の取引所による経営統合・買収等が今後とも継続的に行われるのかどうか、またその場合の当社グループの事業への影響を予測することは困難ですが、他の取引所がそうした取組みを通じて、より優れたサービスの提供やコスト削減を実現する場合には、当社グループの競争優位性の相対的な低下や国際的なプレゼンスの低下に繋がる可能性があります。

こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、市場環境の変化等を注視するとともに、市場関係者等との議論等を踏まえて市場制度の見直し等を行うことで、市場機能の強化を図り、公正かつ利便性の高い取引サービスを提供できるよう取り組んでおります。

 

3.事故・災害等に関するリスク

当社グループでは、市場開設者及び清算機関という社会インフラとしての責務を果たすべく、様々なリスクが発現した場合においても、事業を可能な限り継続し、止むを得ず中断する場合においても可能な限り早期に再開できるよう、BCP(緊急時事業継続計画)を策定しており、堅実かつ安定的な事業継続体制の整備に努めております。

しかしながら、地震・風水害・火災等の自然災害、電力・通信等の社会インフラの停止、物理的破壊行為・サイバーテロ等のテロ行為又は新型インフルエンザを始めとする疫病の蔓延等により、想定を上回る被害を受け、事業を長期的に中断せざるをえないこととなった場合には、甚大な経済的損失を被るとともに、社会的信用の低下等、深刻な事態をもたらす可能性があります。

また、事業の中断に至らなかった場合においても、被害の状況によっては、多額の回復費用が必要となり、当社グループの財政状態及び、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、事故・災害等が発生した場合においても、株券や資金の決済インフラを提供する株式会社証券保管振替機構や日本銀行などの各種関係機関と協業したうえで、取引参加者、上場会社、投資家等のステークホルダーへの影響を最小化することを目的に、BCP(緊急時事業継続計画)に定めた所要の対応を迅速かつ的確に行うための訓練を定期的に実施しているとともに、2021年度からの関西バックアップセンターの稼働も含めた、業務・システム両面での東西相互バックアップ態勢の強化などに取り組んでおります。

 

なお、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症に関して、今後、国内における同感染症の拡大が、一層進行した場合、当社グループ社員が通勤に利用する公共交通機関への更なる影響や、当社グループ社員における感染者の発生等が生じ、業務継続の確保が困難となるリスクがあります。

当社グループとしては、感染症の影響により、安定的な市場運営に影響が生じないよう、政府が示す新型コロナウイルス感染症に向けた対処方針等に基づく感染症拡大予防のための各種対応に加え、業務継続の確保に向けた以下の取組みを行っておリます。

 

・当社グループにおけるBCP(緊急時事業継続計画)に基づき、CEOを総括本部長とするBCP対策本部を設置

・部室別に業務特性の精査等を行い、出勤を必要としない業務については在宅勤務を推奨

・業務特性上、出勤を伴う社員については、フレックスタイム制度の活用によるオフピーク出勤を実施

・出勤が必要な社員については、複数のチームに分け、交代での在宅勤務を基本としたうえで、近隣バックアップオフィス等を活用し、チーム毎に異なる拠点で業務を行う「業務遂行体制の複数チャネル化」を構築・推進   等

 

当社グループとしては、新型コロナウイルス感染症の拡大予防策を引き続き実施するとともに、今後の感染症拡大の状況等に応じて、業務継続確保に向けた必要な取組みを柔軟に行うことで、安定的な市場運営の実現を目指してまいります。

 

4.システム面に関するリスク

現物及びデリバティブの売買・清算並びにこれらに関連する業務は、システムを通じて処理されていることから、市場の安定性・信頼性を維持するためには、取引システムの安定稼働が必須の要件となっております。

また、近年、テクノロジーの発展に伴い、取引システムは高度化してきており、取引システムの性能が、取引所ビジネスにおける競争力の源泉となっております。

当社グループでは、過去にシステム障害やキャパシティの不足により売買停止に至った反省の下、同様の事態が発生することを防ぐため、開発手法の標準化や十分な稼動確認テストの実施、詳細な運用マニュアルの整備とその遵守、更には開発及び運用業務に係る品質管理の徹底などのリスク管理体制をとっておりますが、その可能性を完全に否定することはできません。

利用者の要望に適切に対応することができず、取引システムの性能が他の取引所等の提供するシステムに劣後することとなった場合又はシステム障害等の発生により、市場の信頼性が毀損した場合には、取引量が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5.情報漏えい等に関するリスク

当社グループでは、取引参加者、上場会社等の企業情報や個人情報を保有しているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しております。当社グループの多くの役職員は、金融商品取引法及び商品先物取引法においても秘密保持義務が課せられておりますが、役職員の故意又は過失による情報漏えいの発生を完全に否定することはできません。

さらに、外部からの不正なアクセスの防止に関しても、個人情報保護法及び金融分野における個人情報保護に関するガイドライン等の各ガイドラインの下で、厳格な管理が要求されておりますが、万が一重要な情報が外部に漏洩した場合には、市場利用者等からの損害賠償、監督官庁からの処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、情報管理に関するポリシーや事務手続等を策定しており、役職員に対する教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底、システム上のセキュリティ対策等を行うとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management System:ISMS)の国際標準規格「ISO/IEC27001 / JIS Q 27001」の認証を取得し、現在もその認証を継続して付与されております。

 

6.事務リスクについて

当社グループは、市場開設者及び清算機関としての重要な業務に関して、役職員の故意又は過失により重大な事務過誤が発生した場合には、損失の発生、監督官庁の処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの業務運営や、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、事務過誤の発生を未然に防止するため、業務プロセスの見直しを継続的に行っております。また、業務プロセスの見直しの際には、業務の自動化・効率化等の観点を踏まえ、RPA(Robotic Process Automation)の積極的な活用に取り組んでおります。

7.決済履行確保の枠組みについて

日本には株式会社東京証券取引所をはじめ、有価証券の売買を行うための金融商品取引所1が4つありますが、これらの取引所における有価証券の売買については、すべて株式会社日本証券クリアリング機構が清算業務を行っております。同社は、PTS2における有価証券の売買についても、清算業務の対象としております。株式会社大阪取引所における先物・オプション取引についても、同社が清算を行っており、さらには、店頭市場におけるクレジットデフォルトスワップ取引及び金利スワップ取引(以下「店頭デリバティブ取引」といいます。)並びに国債店頭取引も清算業務の対象としております。また、株式会社日本商品清算機構は、株式会社東京商品取引所及び大阪堂島商品取引所が開設する商品市場(以下「指定商品市場」といいます。)における取引について清算業務を行っており、さらには、店頭市場における商品デリバティブ取引等についても清算業務の対象としております。

株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構は、清算機関として市場参加者が行った取引の債務を負担し、債権・債務の当事者となって、決済の履行を保証しております。これにより、市場参加者は取引相手方の信用リスクを意識せずに取引を行うことが可能となりますが、一方で、清算参加者が決済不履行を起こした場合でも、株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構には他の清算参加者との決済を履行する義務があります。このため、両社では、清算参加者の決済不履行に伴い損失が生じた場合には、決済不履行を発生させた清算参加者の担保等によりその損失を補填する自己責任原則を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構又は株式会社日本商品清算機構の自己資金を充てるほか、他の清算参加者にも負担を求める損失補償制度を設けております。

両社における決済履行確保のための取組み及び損失補償制度の概要は以下のとおりです。

 

(決済履行確保のための取組み)

① 清算参加者制度及びモニタリング

清算参加者の信用リスクの低減を図るため、清算資格の種類ごとに資格要件を定めるとともに、資格要件にはそれぞれ取得基準と維持基準を設けており、一定の財務基盤、経営体制及び業務執行体制を有する者を清算参加者とすることとしています。それらの状況については定期的にモニタリングを行い、問題があると認められた場合は、当該清算参加者の債務について引受けを停止することができるほか、清算資格の取消しを行うことが可能となっております。

また、清算参加者のポジションの状況も定期的にモニタリングしており、一部の清算参加者に対する過度な信用リスクの集中がないかを管理し、ポジションが過大である場合には、必要に応じて措置を検討しております。

 

② 担保制度

清算参加者の決済不履行による損失に備えるため、清算参加者に担保の預託を求めております。担保には、清算基金3等の清算預託金、取引証拠金4、当初証拠金5及び変動証拠金6があり、定期的に十分性を確認するとともに、適宜、担保所要額の算出モデルの検証及び見直しを行っております。

また、担保として預託を受ける金銭又は代用有価証券に対して一定の適格要件を設定するとともに、日々担保価値の評価を行っております。

 

③ DVP(Delivery Versus Payment)決済

株式会社日本証券クリアリング機構と清算参加者との有価証券の決済は、仮に決済不履行が生じても「取りはぐれ」が生じることのないよう、証券と資金の授受をリンクさせ、代金の支払いが行われることを条件に証券の引渡しを行う(証券の引渡しが行われることを条件に代金の支払いを行う)DVP決済で行われております。

 

④ 流動性の確保

清算参加者の決済不履行時に必要となる流動性を確保するため、資金決済銀行等との間で流動性供給に関する契約を締結しております。

また、資金の流動性供給枠の十分性については、定期的に確認を行っております。

 

(損失補償制度の概要)

清算参加者が決済不履行を起こした場合、株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構は、当該清算参加者を当事者とする債務の引受け又は負担の停止並びに株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構が当該清算参加者に引き渡すべき有価証券及び金銭の引渡しを停止するとともに、引渡しを停止した有価証券及び金銭を、当該清算参加者の決済不履行の弁済に充当します。

 

以上の処理後においても、株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構の損失が解消されない場合には、以下に記載する方法により、損失の補填を行います。なお、この補填は、株式会社日本証券クリアリング機構においては、原則として、有価証券の売買、先物・オプション取引、店頭デリバティブ取引及び国債店頭取引のそれぞれの清算に係る損失7について、株式会社日本商品清算機構においては、指定商品市場ごとの清算に係る損失について、不履行清算参加者の清算資格に応じて、個別に行います。(以下に記載されている金額は、2020年3月末時点において確定している金額となります。)

 

決済不履行発生時の有価証券の売買及び先物・オプション取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金、取引証拠金及び清算基金等)による補填

② 金融商品取引所等の損失補償による補填8

③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填

④ 不履行清算参加者以外の清算基金による補填

⑤ 不履行清算参加者以外による相互保証

 

したがって、清算参加者の決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額(現物取引:104億円、先物・オプション取引:174億円)を上限として、株式会社東京証券取引所又は株式会社大阪取引所が補填を行うことにより、また、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金として積み立てた金額(200億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

また、決済不履行発生時の店頭デリバティブ取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填

② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)

③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填

⑤ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填

 

したがって、清算参加者の店頭デリバティブ取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、それぞれの清算業務について②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている金額(クレジットデフォルトスワップ取引:15億円、金利スワップ取引:20億円)を上限として補填することにより、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている金額(クレジットデフォルトスワップ取引:15億円、金利スワップ取引:20億円)を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

さらに、決済不履行発生時の国債店頭取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填

② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)

③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)

④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填

⑤ 原取引按分清算参加者9の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金のうち③での未負担額)

⑥ 原取引按分清算参加者の特別清算料による補填

⑦ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填

 

したがって、清算参加者の国債店頭取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている17.5億円を上限として補填することにより、③及び⑤については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている17.5億円を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

株式会社日本商品清算機構における決済不履行発生時の清算に係る損失については、指定商品市場ごとに、次に掲げる順序により、補填を行います。

① 当該清算参加者が当該指定商品市場について預託している担保(自己分の取引証拠金等)による補填
② 株式会社日本商品清算機構による補填
③ 商品取引所の損失補償による補填
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④ 損失を補填し得ない指定商品市場に係る他の清算参加者が株式会社日本商品清算機構に預託している清算預託金

による補填
⑤ 損失を補填し得ない指定商品市場に係る他の清算参加者の負担による補填

 

したがって、清算参加者の決済不履行により、株式会社日本商品清算機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、株式会社日本商品清算機構が決済不履行積立金として積み立てた金額(23.7億円)を上限として補填を行うことにより、また、③については、損失補償契約に定められた金額(21億円) を上限として、株式会社東京商品取引所が補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。

 

 

 

1 有価証券の売買を行うための金融商品取引所:東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所及び福岡証券取引所

2 PTS:ジャパンネクスト証券株式会社及びチャイエックス・ジャパン株式会社が運営するPTS

3 清算基金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているものです。その所要額は、極端ではあるが現実に起こりうる市場環境下において複数の清算参加者が決済不履行を起こした場合等に、当該不履行清算参加者が預託する証拠金等が不足することで発生する損失をカバーするよう計算されます。

4 取引証拠金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構に対する先物・オプション取引に係る債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、先物・オプション取引の建玉について、SPAN®※で計算した額から、ネット・オプション価値の総額を差し引いて得た額以上となります。

※ SPAN® :CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が開発した証拠金計算方法で、The Standard Portfolio Analysis of Riskの略。先物・オプション取引全体の建玉から生じるリスクに応じて証拠金額が計算されます。

5 当初証拠金:各清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、それぞれの取引について清算参加者が破綻した場合に、そのポジション処理が完了するまでの間に価格(金利スワップ取引についてはイールド・カーブ)が変動することにより想定される損失額に、一定のリスクをカバーする額を加算して計算されます。

6 変動証拠金:各清算参加者のポジションについて、日々の価格変動をカバーするために、前日からのポジションの価値の変動分を、変動証拠金として現金により授受します。変動分が負となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構に支払い、正となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構から受け取ります。

7 株式会社日本証券クリアリング機構では、クロスマージン制度を導入しており、当該制度の対象とされた国債証券先物取引に係る損益については、店頭デリバティブ取引(金利スワップ取引)の清算に係る損益として取り扱われます。

8 金融商品取引所等の損失補償による補填:株式会社日本証券クリアリング機構が金融商品取引所等との間で締結している損失補償契約に基づき、当該契約に定める金額を上限に損失を補填します。現物取引に係る契約は株式会社日本証券クリアリング機構と5つの金融商品取引所との契約に加え、株式会社日本証券クリアリング機構と各PTSとの契約があり、補償限度額は合計で113億円(うち当社グループである株式会社東京証券取引所と株式会社大阪取引所の補償限度額の合計は104億円。)となっております。また、先物・オプション取引に係る契約は株式会社日本証券クリアリング機構と株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所との契約で、補償限度額は合計で174億円となっております。

9 原取引按分清算参加者:信託口を有する清算参加者をいいます。

10 商品取引所の損失補償による補填:株式会社日本商品清算機構が商品取引所との間で締結している損失補償契約に基づき、当該契約に定める金額を上限に損失を補填します。株式会社日本商品清算機構と株式会社東京商品取引所及び大阪堂島商品取引所との契約があり、当社グループである株式会社東京商品取引所の補償限度額は21億円となっております。

 

 

 

8.保有するシンガポール取引所株式について

当社グループは、2007年6月に、シンガポール取引所との緊密な提携関係の構築を目的として、シンガポール取引所に上場する同社株式53,051千株を取得(発行済株式の4.99%に相当(当時)。取得金額374億円)しましたが、同社株式の株価が下落したことに伴い、2009年3月に207億円の投資有価証券評価損を計上しております。

現時点で、同社株式の株価や為替の変動は、当社グループの資本や包括利益に影響を及ぼす可能性があります。

他方、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえ保有継続の必要性について検討した結果、今後も従来どおり協力関係を継続するにあたり必ずしも株式を保有する必要はないとの判断に至ったことから、同社株式を3年程度かけて順次売却することを、2018年3月30日に決定し、現在売却を進めています(売却の状況については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」をご覧ください。)。

 

9.契約等に関するリスク

シカゴ・マーカンタイル取引所とのSPAN利用に関するライセンス契約について

株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構は、先物・オプション取引の証拠金を受け入れておりますが、証拠金計算方式として、シカゴ・マーカンタイル取引所が開発したSPAN方式を採用しております。

同方式を採用するに際し、シカゴ・マーカンタイル取引所との間でSPANの利用に関するライセンス契約を締結しておりますが、不測の事態により当該契約が解消された場合には、SPAN方式に代わる証拠金計算方式の採用に伴うシステム改造負担等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 株式会社日本経済新聞社との日経平均株価利用許諾契約について

当社グループのデリバティブ市場の主力商品である日経平均株価先物、日経225mini及び日経平均株価オプションに関しては、原資産である日経平均株価の利用許諾について株式会社日本経済新聞社との間で利用許諾契約を締結しております。

株式会社大阪取引所は株式会社日本経済新聞社に対し、日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引に関する利用許諾契約に基づき、契約基本料の他、取引高に応じて月額対価を支払っております。当該契約は、一方の当事者による契約義務不履行の場合や、議決権の過半数の株式譲渡又は取得、合併といった事由による当該契約関連事業の支配権に重大な変動が生じた場合等には、他方の当事者が通知を行うことにより当該契約を解約することができる内容となっておりますが、一方の当事者が契約を終了させる通知を行わない場合は、現在締結している契約の満了日である2020年12月末から5年間ずつ自動更新されることとなっております。また、株式会社日本経済新聞社はやむを得ない事由が生じたときは、株式会社大阪取引所の了承を条件に日経平均株価の編集及び公表を廃止することができます。仮に上記の事由により、当該契約が終了した場合、株式会社大阪取引所は日経平均株価先物取引、日経225mini及び日経平均株価オプション取引の中断、あるいは中止を余儀なくされ、この場合、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性があります。

その他、当該契約に関して、当社グループの経営成績が大きな影響を受ける可能性がある事態が生じる場合としては、以下のようなものが考えられます。

・ 利用許諾料については当該契約の他に別途締結している覚書により、契約基本料の他、1先物取引及び1オプション取引当たり一定額を月額対価として株式会社大阪取引所が株式会社日本経済新聞社へ支払うこととなっておりますが、当該覚書の内容については、株式会社大阪取引所と株式会社日本経済新聞社が協議のうえ、変更される可能性があります。当該利用許諾料が大幅に変更された場合には、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・ 当該契約は独占契約ではないため、今後、国内外において株式会社大阪取引所以外の者が株式会社日本経済新聞社との間で日経平均株価利用許諾契約を締結し、利用権を取得する可能性があります。株式会社大阪取引所以外の者が日経平均株価の利用権を取得し国内外において日経平均株価先物・オプション取引を行い、その利便性が高い等の事情により大阪取引所市場の取引高が減少した場合、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

10.訴訟等に関するリスク

① 法令遵守に関するリスク

当社グループでは、情報漏えいをはじめ、役職員の故意又は過失による法令違反行為を防止するため、企業としての行動の基本方針をまとめた企業行動憲章の制定や内部通報制度であるコンプライアンス・ホットラインの設置、継続的な社内研修の実施など、法令遵守への取組みに注力しておりますが、これらの取組みがすべての法令違反行為の発見・防止に対して有効であるとは限らず、役職員による法令違反行為を常に排除できるとは限りません。

役職員による法令違反行為が現実のものとなった場合には、監督官庁からの行政処分や市場利用者等からの損害賠償請求等、行政上又は司法上の制裁が科される可能性があるとともに、社会的信用の低下等により、当社グループの事業運営に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 訴訟に関するリスクについて

当社グループの事業は様々な法的責任に晒されており、これらには、役職員等又はコンピュータ・システムによる業務運営の中で、過誤が発生するリスク(いわゆるオペレーショナル・リスク)の顕在化による法的責任も含まれます。

オペレーショナル・リスクには、例えば次のようなものが考えられます。

・ 役職員が法令や当社グループの定款、業務規程その他の諸規則等に定められた適正な業務遂行(必要な市場規制措置等)を過誤等により怠る又は誤った措置を行うリスク

・ 障害や大規模災害によるシステム停止又はシステムに誤作動が発生するリスク

・ 役職員又はシステム運用業務委託先の過誤等により取引が中断されるリスク

・ 当社グループが算出を行っているTOPIX等の株価指数や統計情報等、配信を行う各種情報に誤謬が生じるリスク

 

上記のリスクが顕在化した場合には、監督官庁から処分等を科される可能性があるとともに、損害を被った市場利用者から損害賠償等を求められる可能性もあります。

当社グループでは、規則や契約等において、利用者が損害を受けた場合であっても、当社グループに故意又は重過失がある場合を除き、損害賠償の責を負わない旨を定めておりますが、オペレーショナル・リスクの顕在化を含むなんらかの要因により訴訟が提起された場合には、訴訟費用が多額にのぼる可能性があるとともに、訴訟において当社グループに不利な判決等がなされた場合には、訴訟に伴う損害賠償のみならず、社会的な信用の低下等を通じて、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

11.レピュテーショナル・リスク

当社グループでは、社会的な信用力やブランド力を、競争力の源泉の一つとして認識しております。

当社グループの社会的な信用は、システム及び自主規制業務等における過誤等、当社グループに起因する様々な要因のみならず、取引参加者や上場会社等の市場参加者又はその他の第三者による不法行為等によっても毀損される可能性があります。

当社グループの社会的な信用の毀損は、取引高の減少や発行会社の当社グループが開設する市場への上場を妨げる要因となる可能性があり、ひいては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.業績等の概要

(1)業績

 当社グループの当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の連結業績は、営業収益は1,236億88百万円(前年同期比2.1%増)、営業費用が585億32百万円(前年同期比8.2%増)となったため、営業利益は685億33百万円(前年同期比1.4%減)、税引前利益は690億95百万円(前年同期比2.4%減)となりました。

 また、法人所得税費用を計上した後の最終的な親会社の所有者に帰属する当期利益は476億9百万円(前年同期比3.0%減)となりました。

 当社グループROEについては、資本効率を意識した経営を行うことにより、金融商品市場の動向にかかわらず、資本コストを上回る10%を中長期的に実現することを目指しており、当連結会計年度のROEは16.3%となりました。

 なお、当社は、公開買付けにより株式会社東京商品取引所及び株式会社日本商品清算機構を連結子会社としたことから、第3四半期連結会計期間より両社の損益を含んでおります(2019年10月1日から2020年3月31日までの6か月間)。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ79億92百万円増加し、718億83百万円となりました。

 

①営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益690億95百万円に、減価償却費及び償却費164億99百万円並びに支払法人所得税等214億82百万円等を加減した結果、568億81百万円の収入となりました。

 

②投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産の取得による支出123億79百万円等により、94億34百万円の支出となりました。

 

③財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動によるキャッシュ・フローは、支払配当金359億35百万円等により、394億11百万円の支出となりました。

 

2.生産、受注及び販売の実績

 業務の性格上、該当する情報がないため記載しておりません。

 

3.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 当社グループは、当連結会計年度より、IFRS第16号「リース」(2016年1月公表)(以下、「IFRS第16号」)を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.会計方針の変更」をご参照ください。

 なお、本項に記載した予想、予見、見込み、見通し、方針等の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来に生じる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しており、採用する重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表-連結財務諸表注記-3.重要な会計方針」及び「5.重要な会計上の見積り及び見積りを行う判断」に記載しております。

 この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるためにこれらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループによる見積りのうち、のれんについては、各連結会計年度末日又は減損の兆候がある場合に、減損テストを実施しております。減損テストの回収可能価額は、使用価値に基づき算定しております。使用価値は、経営計画等に基づくキャッシュ・フローの見積額を、当該資金生成単位の加重平均資本コストを基礎とした割引率により割引いて算定しており、経営計画の最終年度を超える期間におけるキャッシュ・フローについては、将来の不確実性を考慮し、最終年度と同水準で推移すると仮定しております。なお、企業結合で生じたのれんは、当社グループ全体を一つの資金生成単位として減損テストをしております。

 当社グループの収益は、「第2 事業の状況-2事業等のリスク-2.事業環境等に関するリスク-(2)金融市場の動向による影響について-①収益構造の特徴等について」に記載のとおり、日本経済の状況の影響を大きく受け、また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。そのため、日本の景気が急速に悪化し長期間に渡って低迷した場合などには当社グループの経営計画等に基づくキャッシュ・フローの見積額が大きく減少し、のれんの減損が発生する可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

(営業収益の状況)

①取引関連収益

取引関連収益は、現物の売買代金並びに金融デリバティブ及び商品デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。

当連結会計年度の取引関連収益は、前年同期並みの485億89百万円となりました。

 

・取引関連収益の内訳

     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

 至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

 至 2020年3月31日)

 

 

 増減(%)

取引関連収益

48,660

48,589

△0.1

 

取引料

39,248

39,118

△0.3

 

 

現物

28,084

25,757

△8.3

 

 

金融デリバティブ

11,163

12,255

9.8

 

 

 TOPIX先物取引

2,031

2,254

11.0

 

 

 日経平均株価先物取引(注1)

4,523

5,101

12.8

 

 

日経平均株価指数オプション取引(注2)

2,563

2,888

12.7

 

 

 長期国債先物取引

1,945

1,811

△6.9

 

 

 その他

99

200

100.5

 

 

商品デリバティブ

1,104

 

基本料

1,017

1,020

0.3

 

アクセス料

4,800

4,701

△2.0

 

売買システム施設利用料

3,499

3,646

4.2

 

その他

95

101

6.5

(注1) 日経225mini先物取引を含めております。

(注2) Weeklyオプション取引を除きます。

 

②清算関連収益

清算関連収益は、株式会社日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業及び株式会社日本商品清算機構が行う商品取引債務引受業に関する清算手数料等から構成されます。

当連結会計年度の清算関連収益は、前年同期比6.6%増の264億27百万円となりました。

 

③上場関連収益

上場関連収益は、新規上場や上場会社の新株券発行の際に発行額に応じて受領する料金等から構成される「新規・追加上場料」及び時価総額に応じて上場会社から受領する料金等から構成される「年間上場料」に区分されます。

当連結会計年度の上場関連収益は、年間上場料が増加したことなどから、前年同期比2.1%増の143億22百万円となりました。

 

・上場関連収益の内訳

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

 

 

増減(%)

上場関連収益

14,025

14,322

2.1

 

新規・追加上場料

3,994

3,965

△0.7

 

年間上場料

10,030

10,356

3.2

 

④情報関連収益

情報関連収益は、情報ベンダー等への相場情報の提供に係る収益である相場情報料のほか、指数ビジネスに係る収益及びコーポレートアクション情報等の各種情報の提供に係る収益から構成されます。

当連結会計年度の情報関連収益は、相場情報料が増加したことに加え、指数ビジネスに係る収益が増加したことなどから、前年同期比4.5%増の219億77百万円となりました。

 

⑤その他の営業収益

その他の営業収益は、売買・相場報道等の各種システムと取引参加者・ユーザをつなぐarrownetに係る利用料、注文の送信時間等の短縮による売買執行の効率化を目的として、システムセンター内に取引参加者及び情報ベンダー等が機器等を設置するコロケーションサービスに係る利用料、売買システム等のサービス提供料及び株式会社東証システムサービスが行うシステム開発・運用収益等から構成されます。

当連結会計年度のその他の営業収益は、売買システム等のサービス提供料が減少したことなどから、前年同期比2.1%減の123億71百万円となりました。

 

・その他の営業収益の内訳

                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

 

 

増減(%)

その他の営業収益

12,630

12,371

△2.1

 

arrownet利用料

3,261

3,311

1.5

 

コロケーション利用料

3,887

3,917

0.8

 

その他

5,481

5,142

△6.2

 

(営業費用の状況)

当連結会計年度の人件費は、前年同期比5.6%増の175億12百万円となりました。

システム維持・運営費は、現物及びデリバティブの売買システムをはじめとした各種システムの維持及び管理運用に係る費用等から構成されます。システム維持・運営費は、前年同期比1.4%増の120億71百万円となりました。

減価償却費及び償却費は、前年同期比40.9%増の164億84百万円となりました。

その他の営業費用は、前年同期比10.5%減の124億64百万円となりました。

(3)財政状態に関する分析

(資産、負債及び資本の状況)

 当社グループの資産及び負債には、株式会社日本証券クリアリング機構及び株式会社日本商品清算機構が清算機関として引き受けた「清算引受資産・負債」及び清算参加者から担保として預託を受けた「清算参加者預託金」が両建てで計上されております。「清算引受資産・負債」及び「清算参加者預託金」は、多額かつ清算参加者のポジションなどにより日々変動することから、当社グループの資産及び負債の額は、これらの変動に大きな影響を受けます。その他、金融商品取引及び商品先物取引の安全性を確保するための諸制度に基づく「信認金」、「取引参加者保証金」及び「違約損失積立金」が資産及び負債または資本に両建てで計上されております。

 当連結会計年度末の資産は、「清算引受資産」が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ13兆2,168億96百万円増加し、67兆2,863億2百万円となりました。また、「清算引受資産」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「違約損失積立金」を控除した後の資産は、前連結会計年度末に比べ193億17百万円増加し、3,788億20百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債は、資産と同様に「清算引受負債」が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ13兆2,029億71百万円増加し、66兆9,809億26百万円となりました。また、「清算引受負債」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「取引参加者保証金」を控除した後の負債は、前連結会計年度末に比べ55億27百万円増加し、931億44百万円となりました。

 当連結会計年度末の資本は、配当金の支払により減少した一方、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ139億24百万円増加し、3,053億75百万円となりました。また、違約損失積立金を控除した後の資本は、2,774億27百万円となりました。

 

<参考>

 

資産合計

資本合計

親会社所有者に

帰属する持分

親会社所有者

帰属持分比率

 

2020年3月期

2019年3月期

百万円

67,286,302 (378,820)

54,069,405 (359,502)

百万円

305,375 (277,427)

291,450 (263,502)

百万円

298,228 (270,280)

285,009 (257,060)

0.4 (71.3)

0.5 (71.5)

 

 

親会社所有者帰属持分

当期利益率

資産合計

税引前利益率

1株当たり親会社

所有者帰属持分

 

2020年3月期

2019年3月期

16.3 (18.1)

17.6 (19.5)

0.1 (18.7)

0.1 (19.8)

円 銭

556.97 (504.78)

532.10 (479.92)

(注) 各指標における( )内は、資産合計は「清算引受資産」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「違約損失積立金」、資本合計及び親会社所有者に帰属する持分は、「違約損失積立金」をそれぞれ控除して算出した数値です。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動のために必要な資金及び株主還元のための資金は、主に手元資金及び営業キャッシュ・フローの活用により調達しております。また、手元流動性の確保や資本コストの低減のため、必要に応じて金融機関からの借入れや社債の発行等による資金調達も活用しております。

当社グループの主要な資金需要は、システム維持・運営費や人件費などの市場運営等のための運転資金及びシステム開発のための設備投資資金などがあります。また、株主還元については、金融商品取引所グループとしての財務の健全性等に留意しつつ、業績に応じた配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を60%程度とすることを目標としております。

キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要-(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(契約債務)

当連結会計年度末現在における契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超5年以内

5年超

借入金

32,500

32,500

社債

20,000

20,000

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況-2 事業等のリスク」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

 

契約内容

相手方の名称

契約会社名

契約期間

備考

日経平均先物取引、ミニ日経平均先物取引及び日経平均オプション取引に係る「日経平均株価」の利用許諾に関する契約

株式会社日本経済新聞社

株式会社大阪取引所

2011年1月1日から5年間

以後5年毎に自動更新

 

SPANの利用に係るライセンス契約

Chicago Mercantile

Exchange

株式会社日本証券クリアリング機構

2004年2月2日

SPANの利用に係るライセンス契約

Chicago Mercantile

Exchange

株式会社日本商品清算機構

2010年5月1日から2021年4月30日まで

 

※ 期間の定めのない契約のため、契約の効力発生日を記載しております。

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。