記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、公共性及び信頼性の確保、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築並びに創造的かつ魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。また、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。
この企業理念の下、中期経営計画において、中長期の将来像を見据えた経営の基本方針、事業戦略及び経営目標を策定しています。当社グループは、2030年までに実現を目指す長期ビジョンを、Target 2030として「幅広い社会課題に、資金調達・資金循環機能をはじめとしたソリューションを提供するグローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化し、持続可能な社会と経済発展の実現に貢献する」と定め、この長期ビジョンを実現していくための第Ⅱステージとして、2025年度から2027年度の3か年を対象にした「中期経営計画2027」を策定しております。
中期経営計画を着実に実行するとともに、投資家・利用者のニーズや事業環境の変化、技術の進展や規制の枠組みの見直しに応じて、的確な対応を進めることにより、日本国内のみならず、アジア太平洋地域のタイムゾーンにおける機軸マーケットとして、世界でも枢要な市場の一つであり続けることを目指していきます。
(2)中期経営計画、経営環境及び対処すべき課題等
① 中期経営計画2024の振返り
当社グループは、グローバルな市場間競争における日本の金融・資本市場全体の魅力向上に貢献するため、以下の3つのFocusに掲げる各施策を着実に実施しました。
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主な施策や成果 |
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Focus 1 企業のイノベーション・成長と資産形成の循環促進 |
・「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請 ・JPXプライム150指数の開発 ・ETF等の1日平均売買代金及び純資産30%増達成※1 ・中流動性銘柄における呼値の単位の適正化 ・クロージング・オークションの導入 ・投資単位引下げの促進 ・TOPIX改革の推進 ・「東証アジア スタートアップ ハブ」の立上げ ・現物売買システム「arrowhead4.0」を運用開始及び取引時間の延伸を実現 |
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Focus 2 マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現 |
・短期金利先物の上場及びOTC金利スワップ清算とのクロスマージン導入 ・日経225マイクロ先物及び日経225ミニオプションの上場 ・デリバティブ市場の祝日取引の開始(取引高の過去最高は平日比9割超※2) ・セキュリティトークンプラットフォームへの出資 ・生成AIを活用した日本市場の情報発信サービスの実証実験開始 ・ゴム先物取引の受渡決済にDLT技術を実装 |
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Focus 3 社会と経済をつなぐ サステナビリティの推進 |
・ESG債情報プラットフォームの公開 ・JPX ESG Linkの開設 ・JPXサステナビリティ情報検索ツールの提供開始 ・ESG関連指数算出開始、ESG関連指数先物上場 ・電力先物の本上場、LNG先物の試験上場 ・カーボン・クレジット市場の開設 |
※1 2021年度比、1日平均売買代金はレバレッジ型・インバース型商品除く、純資産は日銀買入分除く
※2 2024年4月29日(昭和の日)、平日比は2023年度下半期平日取引高との比較
② 経営・事業環境及び課題
当社グループは、有価証券やデリバティブの上場から、取引の場の提供、清算・決済サービスから指数・情報サービスに至るまで、我が国の市場に関する一連のサービスをグループ一丸となって提供しています(当社の企業構造については「第1企業の概況 3事業の内容」の事業系統図をご覧ください。)。当社グループが運営する市場は、企業等に対しては資金調達機会を、投資家に対しては資産運用機会を、社会全体に対しては価格発見機能を提供しています。我が国においては、国内の他の取引所や私設取引システム(PTS)が市場を提供していますが、当社グループは、証券会社等の取引参加者を通じて、国内外の投資家からの大量の需給を集約することにより日本国内において確固たる地位を確立しています。
当社グループの運営する市場は、内外の経済情勢や金融政策、地政学リスクの動向など外部環境の変化によって大きな影響を受けるため、内外の経済動向や市場環境を注視しながら、市場運営を行っていく必要があります。当社グループとしては、環境の不透明性・不確実性から生じる様々なリスクに的確に対処しながら、常に安定的に利用者の満足度が高い市場インフラを提供することを最大の経営課題と認識しております。当社グループが、我が国におけるセントラル・マーケットの運営者として、引き続き安定的に市場運営を行っていくためには、取引参加者・上場会社・システムベンダーをはじめとする市場関係者との一層の連携を図っていくことが重要と認識しています。また、政府において"資産運用立国"が策定され、2024年からは新NISAがスタートするなど、「成長と分配の好循環」の実現に向けて当社グループが果たすべき役割はこれまで以上に高まってきております。国内外から日本のマーケットへの関心が高まる中、その魅力をグローバルに発信し、様々なステークホルダーからの期待に応えることで、更なる成長へと歩を進めていくことが重要です。
③ 中期経営計画2027の概要
こうした認識の下、当社グループは、中期経営計画2027を策定し、引き続き ”Exchange & beyond” をスローガンとし、2つの基本方針を定めています。社会課題や利用者のニーズを起点とした顧客本位・マーケットインの姿勢を徹底し、第Ⅰステージ(「中期経営計画2024」)で築いた基盤を発展させると共に、新たな領域への積極的な挑戦を続けてまいります。また、我が国の金融・資本市場の中核インフラとして、市場や当社グループへの信頼を高めつつ、資産運用立国の実現を強力にサポートするなど、社会に提供する価値の増大を目指します。
このような基本方針の下、足元の外部環境も踏まえて、3つの重点テーマを設定しています。
重点テーマ 1 日本株市場の新時代を切り拓く
・上場会社の自律的な価値向上の促進
・投資しやすい環境の醸成
・エクイティ・オプション市場の振興
重点テーマ 2 総合プラットフォーム化へ邁進する
・アジアにおける機軸マーケットとしての進化
・金利関連商品・サービスの強化・拡大
・エネルギー関連商品の振興
重点テーマ 3 デジタルイノベーションを共創する
・データサービスの次世代化
・AI等の先端技術の積極的な導入
・業界全体の課題解決に向けた貢献
また、「中期経営計画2027」では、経営目標として以下の財務目標・非財務コミットメントを設定しています。
最終年度における財務目標
・ROE 18.0%以上
非財務コミットメント
・人的資本への継続的な投資を通じた人材力の向上
・基幹システムの安定的な提供とレジリエンスの発揮
「中期経営計画2027」を通じて“市場の持続的な発展”を図り、社会課題の解決に貢献することで、“豊かな社会
の実現”を目指してまいります。
記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。
(1)考え方・体制
当社グループは、企業理念で掲げる「市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献」に向け、我々を取り巻く環境や社会課題、それらとの関係に目を向け、企業価値の向上につながる取組を進めることが重要な経営課題の一つであると認識し、経営方針を定め、経営計画等を策定しています(第2 事業の状況-1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等参照)。
公共性・信頼性を備えた利便性・効率性及び透明性が高い市場と魅力的なサービスを提供するという当社グループのビジネスモデルを踏まえると、市場メカニズムを活用した取組を進めていくことが肝要と考え、長期ビジョンのもと、中期経営計画2024では3つのFocusの一つに「社会と経済をつなぐサステナビリティの推進」を掲げ、サステナビリティ関連情報の発信に係る機能強化や、関連指数算出・商品の上場、排出量市場創設の推進等に取り組んできました。
より包括的に取組を進めていくため、中期経営計画2027の策定プロセスにおいて、サステナビリティの観点からの重点領域を整理し、「国民の安定的な資産形成」、「安定的な市場運営」、「サステナブルファイナンスの推進」、「気候変動への対応」、「人的資本経営の推進」、「サイバーセキュリティへの対応」としました。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組については、当社ウェブサイトもご参照ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/index.html
[ガバナンス]
当社グループは、上記の考えのもと、グループCEOを本部長、グループCOOを副本部長とするサステナビリティ推進本部を設置して、サステナビリティ関連課題の事業への影響を分析し、対応を進めています。これらに係る基本方針や重要事項は、適宜取締役会に報告し、監督が適切に図られる体制を整えています(
さらに、全社的なリスク管理における重要リスクとして「サステナビリティ推進への対応」を特定し、リスク管理の観点からも四半期ごとに取締役会に報告がなされる体制としています。また、サステナビリティ担当役員のもとで、サステナビリティ推進部が中心となり、サステナビリティ課題が当社グループの事業にもたらすリスクと機会を把握し、それらに適切に対応できるよう、分析・モニタリングしています。
加えて、執行役に対して支給する中長期インセンティブ(金銭報酬)を、中期経営計画2024において示す連結ROE及びサステナビリティ施策の達成度に連動させることとしています(
[リスク管理]
当社グループは、様々なリスクに対応するため、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」及びCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、「リスク管理方針」に従って、未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはそのおそれが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えています。「リスク管理方針」では、当社が抱えるリスクを特定したうえで分類し、所管部署が管理することとしており、その運用評価・問題点に関する情報は「リスクポリシー委員会(半期毎)」及び「リスク管理委員会(四半期毎)」に定期的に集約し、その都度、取締役会に報告しています。サステナビリティ関連のリスクについては、「リスクポリシー委員会」において「事業環境・事業戦略リスク」に係る重要リスクに特定し、サステナビリティ推進部が管理しています(
(2)気候変動に関する取組
当社グループは、気候変動がリスクと機会の両面から当社グループの持続的な成長に影響を及ぼす可能性があることを認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言(以下、「TCFD提言」という。)に沿った情報開示を進めるとともに、提言内容を気候変動関連リスク・機会への対応を進める際の指針として活用することで、レジリエンスと持続的な成長性の向上に努めています。
[戦略]
当社グループは、サステナビリティの観点からの重点領域として「気候変動への対応」を挙げ、気候変動がもたらすリスク・機会として想定される事項と、それらが当社グループの事業・戦略・財務計画に与える影響を検討し、リスク低減や企業価値向上に向けた施策を講じています。
また、気候変動への対応は長期的で不確実性の高い課題であることから、戦略のレジリエンスを検討するため、TCFD提言の技術的補足文書等を参考に、シナリオ分析を実施しています。シナリオ分析にあたっては、短期(直近3年)、中期(~2030年)、長期(~2050年)の時間軸を設定し、気候変動に関する物理的リスク、移行リスク・機会として想定される事項を特定したうえで、複数の外部シナリオ下における戦略や財務計画への影響・対応方針等を評価しています。
<気候変動がもたらすリスク・機会として想定される事項と関連取組>
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分類 |
気候変動がもたらすリスク・機会として 想定される事項 |
時間軸 |
主な関連取組 |
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物理的リスク |
急性 |
自然災害の激甚化により、操業停止や物的損害が発生した場合、短期的な収益減少、中長期的な投資家の離反につながる可能性 |
短期~長期 |
・「緊急時事業継続計画(BCP)」策定 ・業務・システム両面のバックアップ態勢強化 ・「コンティンジェンシー・プラン」策定 |
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慢性 |
長期的気候パターンの変化により、操業停止や関連対応の増加等、取引所の事業運営が妨げられる可能性 |
長期 |
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移行リスク |
法・規制 |
温室効果ガス排出量削減に係る政策・規制の強化により、事業活動に伴う排出コスト及び排出削減のための投資に伴うコストが増加する可能性 |
中期~長期 |
・省エネ化推進 ・カーボン・ニュートラル目標設定 |
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ESG情報開示や関連商品・サービスに関する法規制等の強化により、商品、市場、及び当社グループの事業運営に様々な影響が生じる可能性 |
短期~長期 |
・法規制動向の把握、規制当局等との連携強化 ・上場会社等のESG情報開示に対する理解促進 |
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技術 |
脱炭素化関連技術のイノベーション創出に伴い、ITシステム等への新技術導入に係るコストが増加する可能性 |
中期~長期 |
・ITシステム関連設備における最新技術活用 |
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市場 |
当社グループの運営する市場に上場する会社や商品の気候変動に関する取組や情報開示に対する投資家の要求水準が高まり、需要の減少、収益への影響が生じる可能性 |
短期~長期 |
・市場利用者のニーズ把握、提供サービスの拡充 ・上場会社のサステナビリティ関連取組促進 |
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評判 |
当社グループの市場運営やその姿勢、または日本企業の経営姿勢において、気候変動対策への取組が不足していると解されることにより、当社グループ及び日本市場全体への評価・信頼が低下し、ビジネス機会の縮小、資金調達コストの上昇につながる可能性 |
短期~長期 |
・情報開示・発信、ステークホルダーとの対話強化 ・国内外の議論への参加 |
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分類 |
気候変動がもたらすリスク・機会として 想定される事項 |
時間軸 |
主な関連取組 |
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機会 |
製品およびサービス |
ESG投資の拡大を踏まえ、気候変動を含むESG課題に関連した商品・サービスの提供を拡大し、関連収入が増加する可能性 |
短期~中期 |
・中期経営計画2024のもと、「社会と経済をつなぐサステナビリティの推進」関連施策の推進 |
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サステナブルファイナンスの活用により、資金調達コストを低減できる可能性 |
短期~中期 |
・グリーン・デジタル・トラック・ボンド発行 |
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エネルギー源 |
エネルギー調達手段の多様化により、エネルギー調達に係る価格変動や潜在的なコスト増加への耐性が向上する可能性 |
短期~中期 |
・再生可能エネルギー調達手段の多様化 |
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※ 物理的リスクとは、気候変動に起因する自然災害等による資産や事業活動への直接的な損傷等に関するリスクをいう
※ 移行リスクとは、低炭素社会への移行に伴って発生する政策・法務・技術革新・市場嗜好の変化等に起因するリスクのことをいう
シナリオ分析の詳細については、当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/jpx-esg/environment/01.html
[指標及び目標]
当社グループは、気候変動への対応として、主な温室効果ガス(以下、「GHG」という。)の排出要因である電力の調達方法を見直し、2024年度までに当社グループ全体で消費する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替え、Scope2排出量をゼロにすること、同時期までに当社グループ全体でのカーボン・ニュートラル(Scope1、2)を達成することを目指してきました。発電事業者との協働やクレジット活用など、様々な手法を組み合わせ、計画どおり、2024年度の消費電力100%を再生可能エネルギーで調達するとともに、カーボン・ニュートラルを達成しました。今後は、Scope 1、2のカーボン・ニュートラルを維持しつつ、Scope3(注1)も含めた適切な排出量管理を通じ、継続してGHG排出を抑えるべく取り組みます。
<当社グループのGHG排出量(Scope 1、2)>
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2020年度 (t-CO2) |
2021年度 (t-CO2) |
2022年度 (t-CO2) |
2023年度 (t-CO2) |
2024年度 (t-CO2) |
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Scope1(直接的なCO2排出量) |
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Scope2(間接的なCO2排出量) |
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合計(Scope1+2) |
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(注1)消費電力を再生可能エネルギーに切り替えることにより削減できない排出の一部は、Jクレジットでオフセットしています。詳細は当社ウェブサイトをご覧ください。
(注2)2024年度の当社グループのGHG排出量Scope3については、数値が確定し次第、当社ウェブサイトに掲載する予定です。
GHG排出量を含む環境関連データについては、当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/jpx-esg/environment/02.html
(3)人的資本経営の取組
① 人材戦略の考え方
「私たちは、公共性及び信頼性の確保、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築並びに創造的かつ魅力的なサービスの提供により、市場の持続的な発展を図り、豊かな社会の実現に貢献します。私たちは、これらを通じて、投資者を始めとする市場利用者の支持及び信頼の増大が図られ、その結果として、利益がもたらされるものと考えます。」
当社グループでは上記の企業理念を掲げており、信頼性の高い市場基盤の構築や魅力的なサービスの提供により、豊かな社会の実現に貢献することを第一のミッションとし、市場のニーズに応えていくことが結果として利益の最大化にもつながると考えています。こうした公益性・社会貢献性は、当社グループの事業の大きな特徴の一つであり、当社グループの採用競争力や当社社員のエンゲージメントの源泉となっています。当社グループの採用活動においても、本企業理念への共感を重視しています。
本企業理念の下、2030年までに実現を目指す長期ビジョンをTarget2030として、「幅広い社会課題に、資金調達・資金循環機能をはじめとしたソリューションを提供するグローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化し、持続可能な社会と経済発展の実現に貢献する」と定めており、この長期ビジョンを実現していくためのスローガンとして、安定的な市場運営という伝統的な取引所としての機能を強化しながら、同時に、その枠組みに過度にとらわれず新たな領域へも進んでいく意思を「Exchange & beyond」と表しています。こうした中長期の将来像を実現していくために、「伝統的な取引所業務の更なる安定・高度化を支える」人材に加え、「新たな分野・領域を切り拓く」人材を採用・育成し、全ての人材の能力発揮のための環境を整備することを人材戦略の基本的な考え方としています。
また、今期スタートする中期経営計画2027において、当社グループにおける人材力の向上に向けた主要なKPI(非財務コミットメント)として、以下の3つの指標を掲げることとしました。これらの指標は、毎年社員に対して実施しているエンゲージメント・サーベイの結果から得られるものであって、継続的にその高い水準の達成を目指し、真に人材力を強化し、最終的な中長期ビジョンを実現してまいります。
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● ワークエンゲージメント(仕事に対する活力、熱意、没頭の結果) 社員一人ひとりの仕事に対する活力、熱意、没頭の度合いの高さが、それぞれの主体的な行動・取組をもたらし、最終的な企業の発展に繋がるという考えに基づき、人的資本経営に係る様々な取組をとおして、社員のワークエンゲージメントの更なる向上を目指します。
● 社員の成長※1(成長機会や成長意欲、成長のための研修等の環境整備の結果) 社員一人ひとりの成長が会社の成長に繋がるという考えに基づき、「社員自身が成長意欲を持てているか、成長を実感できているか」ということや、「会社側が、社員の成長に繋がる機会や研修等の環境整備を十分に行えているか」という点に注目し、社員の成長に資する効果的な取組を進めてまいります。
● 企業理念の浸透※1(企業理念への共感や仕事への意義、責任感等の結果) 当社グループが目指す信頼性の高い市場基盤の構築を果たしていくためには、社員一人ひとりが当社グループの企業理念に強く共感し、自身の仕事に意義を感じ、責任感を持って取り組むことが求められます。こうした中で、先般、当社グループの元社員によるインサイダー取引規制違反の事案が発生したことを受け、再発防止に向け、あらためて当社グループの企業理念のより一層の浸透を図ってまいります。
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※1 サーベイ全体から、「社員の成長」及び「企業理念の浸透」を測る複数の設問を抽出し、スコア化した当社グループ独自の指標
※2 当社委託先のエンゲージメントサーベイ業者において集計した他社の平均値
※ 人的資本経営に係る個別の施策及び人的資本に関する各種のデータについては、当社及び中核子会社を対象としています。
② 伝統的な取引所業務の更なる安定・高度化を支える人材の採用・育成について
企業理念に掲げているとおり、信頼性の高い市場基盤の構築や魅力的なサービスの提供が当社グループにおける中核的なミッションであり、安定的な市場運営はその根幹をなしています。そのため、伝統的な取引所業務の更なる安定化に向けて、当社グループの公共的使命に共感し、高い使命感・責任感を持って市場の安定運営のために必要な業務に誠実に取り組むことのできる人材や、高いコミュニケーション能力を発揮し、多様なステークホルダーの結束点となる意識を有する人材、現状に満足せず、より高い次元を目指そうとする人材を積極的に採用しています。
加えて、デジタル技術が進展し、マーケットニーズが多様化する現代においては、市場の安定運営という守りにも「革新」が求められます。こうした背景や、特定の分野で高い専門性を武器にキャリアを築いていきたいという多様な働き方のニーズも踏まえ、担当業務を基幹システム及び情報系システムの開発・運用を始めとするデジタル・ネットワーク分野に特定した「デジタル・ソリューション(DS)コース」を2023年度より設置し、積極的に採用を行っています。
また、採用後の人材育成(キャリアパス)の方針として、取引所業務をはじめとする当社グループ全体の機能強化のため、以下の理由からジョブローテーション(人事異動・担当替え)による人材育成が重要であると考えています。
・独自性のある取引所業務における社員個々人の適性の発見
・上場から売買・清算・決済までの一連のバリューチェーンを俯瞰できる能力の獲得
・不測の事態が発生した際の業務継続のための臨機応変な対応力の獲得
キャリアの前半(若手~中堅社員)は適性発見のための部門横断的なローテーション、その後は専門分野を意識したローテーションを実施することで、多様な業務経験機会の提供を通じて、社員の能力伸長や適性発見を図り、俯瞰的な視点と強みとなる専門分野を兼ね備えた人材を育成しています。
加えて、人材育成(能力開発)の観点も重要であり、社員一人ひとりの成長が会社の成長に繋がっていくと考えています。当社グループでは、業務経験を通じた能力開発の機会である「実務経験」、上司・先輩社員の指導や体験共有からの学びの機会である「知の共有」、研修等の教育による学びの機会である「研修」の3つを柱とし、当社グループの業務に必要な技術や知識等をバランス良く習得できるようサポートする能力開発プログラムを提供しています。
一点目の「実務経験」は人材育成の中核となる要素であり、独自性の高い当社グループでの業務の各部署における導入研修やOJTに加え、自身の希望するキャリアを歩めることがエンゲージメントの観点からも重要であることから、自己申告制度・社内公募制度・社内FA制度により継続的に社員のキャリアに関する希望を把握し、本人の希望や適性に応じたジョブローテーション及び国内外の専門機関や企業への派遣を実施しています。
二点目の「知の共有」について、上司・部下間での指導については、評価プロセスの中で定期的に実施している1on1面談等を活用しながら、社員自身による目標の設定、取り組んだ課題・業務に対する成果の振返り、上司からのフィードバックによる自己の更なる改善や成長の促進、といったプロセスを機能させることで、社員一人ひとりの成長を後押ししています。更に、上司・部下間での指導だけでなく、当社グループ全体で知識・経験の共有を図るとともに、その過程で社員同士が部署横断的な関係性を築いていくことが組織力の向上には必要不可欠であると考えています。このため、「JPXカレッジ」という枠組みを用意し、キャリアサポート研修やななメンター制度などの取組を行うとともに、Exchange caféなどの相談コミュニティや私塾サポート制度(社内講師による研修)といった社員間のコミュニケーション機会の増進を図る施策の実施にも取り組んでいます。こうした社員間コミュニケーションの増進策への参加は、2024年度は延べ344人となり、目標としていた290人を上回る結果となりました。今後は、より多様な機会において経営層と社員や社員同士のコミュニケーションが図られるよう、こうした社員のコミュニケーション機会を年に25回程度設けることを目標とし(2024年度は20回)、社員のより広く深い関係性の構築を図っていきたいと考えています。
三点目の「研修」について、社員個々人のキャリアの段階に応じた内容を学ぶ階層別研修や、社内外での様々な研修、社内公募制度による国内外の教育機関への派遣制度等を用意しています。これに加え、キャリアデザイン支援制度により、当社グループの業務に必要な技術・知識等を習得するための研修等の費用を社員一人につき年間30万円まで補助する取組や、資格取得報奨金制度により、IT・語学・法律・会計等の資格取得に対して報奨金を支給する取組を行っているほか、ITスキルやAIなどの新たな技術、英語、ビジネススキル、マネジメントスキル等好きなオンライン講座をオンデマンド方式で学べる「Udemy Business※」のサービスを提供するなど、社員の自発的な学びを強力に後押ししています。社員自らが自発的かつ意欲的に学ぶことは、より深く、効率的にスキルや知識を習得することに繋がり、社員一人ひとりの成長に大きく寄与するものと考えています。こうした社員の自発的な学習をサポートする制度の利用は、2024年度は延べ530人となり、目標としていた350人を大幅に上回る結果となりました。2025年度は引き続き延べ500人以上の利用を目指し、社員が自らの意思で積極的に専門的な知識や最新の情報を吸収し、広い視野や自由な発想力を獲得することのできる環境の整備を更に推進してまいります。
※ 株式会社ベネッセコーポレーションが、米国Udemy社の運営するオンライン動画学習プラットフォーム「Udemy」からビジネスに特化した講座を厳選し、法人向けに提供する定額制オンライン動画学習サービス
③ 新たな分野・領域を切り拓く人材の採用・育成について
日本の金融・資本市場全体の魅力向上に貢献するためには、これまでの取引所の常識にとらわれない攻めの挑戦、「革新」が強く求められます。こうした次世代の新しい取引所の姿を模索し実現するための核となるのは、自ら課題を考え抜き、その実現に向かって積極的に取り組んでいく一人ひとりの社員であり、当社グループでは②で挙げた資質に加え、新規領域を開拓し、牽引していく力・タフさも有する人材も重視しています。
また、新たな分野・領域を切り拓いていくためには、ビジネスとデジタルテクノロジーの両方に精通し、その知識・経験をベースに事業に変革をもたらす人材や、新たな分野・領域の開拓に人的リソースを充当していくための事業の自動化及びプロセス改革などを推進する人材が必要です。2023年度より設置しているDSコースにより、基幹システム及び情報系システムの開発・運用を中心とするIT部門でのキャリア形成を希望する人材を拡充することで、業務・IT部門間のジョブローテーションを活性化させ、ビジネスとデジタルテクノロジーの両面に精通し変革をもたらす人材の育成強化を企図しており、急速な技術の進展に対応できる高度専門人材の採用・育成にもつなげていきたいと考えています。
加えて、当社グループがグローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化していくためには、語学力のみならず、当社グループの取組などを対外的に強く発信するなどグローバルビジネスの牽引に必要なスキルやマインドセットを持つ人材も必要不可欠です。こうしたスキルやマインドセットの獲得にはグローバルな環境での業務経験等が非常に重要であると考えており、このような経験を有する社員の採用・育成にも引き続き積極的に取り組んでまいります。
前述の人材育成(能力開発)のための様々な施策は伝統的な取引所業務の更なる安定・高度化だけではなく、新たな分野・領域を切り拓く人材の育成においても非常に重要な役割を担っています。社員の自発的な学習を支援することで、ビジネスやデジタルテクノロジー、語学力等の新たな分野・領域を切り開く素地となるスキルや知識の獲得を推進してまいります。また、海外経験を有する社員を増やしていくため、今後は海外駐在員事務所等(ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、北京、香港)への駐在、海外大学院(MBA、ロースクールなど)への留学や海外専門機関への派遣等をこれまで以上に積極的に行い、グローバルビジネスを牽引する人材の育成を推進してまいります。
④ 全ての人材の能力発揮のための環境整備等について
当社グループでは、社員の人材育成だけではなく、多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍し、社員一人ひとりのウェルビーイングが高い組織をつくっていくことが重要であると考えています。加えて、企業文化のような目に見えない社員間での共通の価値観が醸成されていることも必要です。こうした組織や企業文化といった確固たる土台を据えることにより、社員一人ひとりがその能力を余すことなく発揮し、活躍できるようになるものと考えています。
(a)多様な人材の活躍推進
当社グループでは、性別・国籍・年齢などにかかわらず、多様な人材が活躍できるよう、人事部内に「ダイバーシティ推進グループ」を設置し、各種取組を実施しています。育児期の社員のために法定を上回る両立支援制度を整備しているほか、男性の育児参加が増えていくことが、社会全体の女性活躍の推進につながるという考えに基づき、男性育休セミナーを開催するなど男性社員の育児支援制度の利用を積極的に推奨しており、2024年度においては、19人の男性社員が育休を取得し、平均取得日数は42.3日となりました。
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分類 |
項目 |
2024年度 |
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男性社員の育休取得の状況 |
(取得者数) |
(19人) |
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※ 育休とは、育児休業、産後パパ育休、育児休暇(有給)を取得した合計数
また、女性社員については、出産・育児等のライフイベントに伴い、キャリアのブランク期間が発生しやすいことから、特に会社のサポートが重要であると考えています。そのため、育休からの復職前面談などによるスムーズな復職をサポートする取組や育児との両立支援制度を充実させることで、過去5年の育休からの復職率は95.3%と高水準を維持しています。加えて2024年度には、当社グループの安定的な業務運営を支える業務に取り組み、専門性を身につけ、一般事務や専門的事務の実務の中心を担うSSコース社員向けのキャリア研修を実施し、個々の強みを更に生かしキャリアップすることができるよう、女性管理職を含めた女性社員の活躍に一層重点を置いた取組も行いました。このように、女性社員がキャリアを中断することなく働き続けることができ、また、業務での更なる活躍も目指すことができるための環境の整備を行うとともに、当社グループでは、女性管理職の登用にも注力しています。2022年度には当社グループで初の内部昇格による女性執行役が誕生したほか、部長級にも2024年度は女性社員3人を登用しています。2025年3月末時点の女性管理職は48人、女性管理職比率は9.0%となり、2025年4月の時点で、女性管理職の数は目標としていた50人 (2021年度の約1.5倍) を超え、59人(女性管理職比率10.4%)に達しました。当該状況を踏まえ、役員や部長に登用する人材の候補を増やすため、新たな登用目標を設定しました。具体的には、非管理職社員の指導・育成にあたる女性管理職を現在の53人(2025年4月時点)から3年間で30人以上増加させることを目指します。
なお、2025年3月末時点で、中途採用社員の比率は31.5%、中途採用社員管理職の比率は30.9%となっており、外国人社員の比率は1.2%、外国人管理職の比率は0.6%となっております。引き続き、国籍に関わらず、法律・会計・金融・ITなどの業務経験や専門的なスキルを持つ人材を中心に、アルムナイ採用等の様々なチャネルも活用しつつ積極的な中途採用を実施していくとともに、外国人については業務経験のない新卒採用も行い、優秀な人材を登用していくことで、中途採用管理職および外国人管理職数の維持・向上に努めてまいります。
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項目 |
全体 |
女性社員 |
中途社員 |
外国人社員 |
|
従業員数 (比率) |
1,248人 (100%) |
376人 (30.1%) |
393人 (31.5%) |
15人 (1.2%) |
|
管理職数 (比率) |
531人 (100%) |
48人 (9.0%) |
164人 (30.9%) |
3人 (0.6%) |
※ 2025年3月末時点
そのほか、シニア社員のより一層の活躍を促進するため、2023年4月より、定年年齢をそれまでの60歳から65歳に変更する定年延長を実施しています。従来においても、60歳で定年退職したのち、再雇用制度に基づいて65歳まで働くことは可能でしたが、定年延長を実施して、60歳以降に期待する役割や処遇について見直しを行ったことにより、社員が60歳で一度退職するという意識を持つことなく、65歳まで高い使命感や責任感を保ったまま、安心して業務に取り組むことができる環境を整備しました。シニア社員の持つ豊富な業務経験や知見を活かしつつ、各種人材育成(能力開発)の制度によるリスキリング等を通じて、シニア社員の成長や活躍を促進することで、安定的な市場運営という伝統的な取引所としての機能の更なる安定・高度化を推進していきたいと考えています。
(b)ウェルビーイング
(ⅰ)エンゲージメントと健康経営
全ての社員が能力を最大限に発揮するためには、心身が健康であるとともに、熱意や活力をもって働くことを通じて、社会的にも満たされた状態(well-being)になることが重要です。当社グループでは、社員のエンゲージメントの把握及び人事施策の改善へとつなげるためにエンゲージメント・サーベイを実施しており、2024年度の結果は、仕事に対する活力・熱意・没頭に関するワークエンゲージメント・スコアが64.1、会社に対する愛着・帰属意識に関する組織エンゲージメント・スコアが71.8となり、前年度の結果(それぞれ63.1、71.3)に引き続き相対的に高い水準となりました(※サーベイ委託会社のデータに基づく)。①で記載のとおり、今後はワークエンゲージメントのスコアを当社グループが重要視する指標の1つとして掲げつつ、引き続きこれらエンゲージメント・スコアの維持・向上に努めてまいります。
健康経営の推進に向けた取組については、これまで傷病者への適切なケア・早期復職に向けた支援など、産業医と連携した取組を中心に行い、2024年度の傷病者数は11人、ストレスチェックにおける総合健康リスクは82という結果につながっています。なお、今回のストレスチェックにおいて高ストレスと判断された社員のうち、産業医による医師面接または相談を受けた社員については、産業医の指導のもと適切な対応を取っております。また、残業時間の多い社員については、年度平均が45時間以上になる場合に「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」を使用して体調を確認し、必要に応じて産業医や保健師に連携するようにしています。加えて、当社グループでは、2022年度より保健師を採用し、心と身体の健康に関する相談や面談、教育、情報提供等をより行いやすい体制を整備しているほか、2023年度には部署横断的なメンバーで構成される「ウェルネス推進委員会」、人事部内に「ウェルネス推進グループ」をそれぞれ設置し、健康経営に係る取組や社内への情報発信を行うなど健康経営の推進体制を強化しております。今後は傷病等の未然防止に向けた活動にも注力し、当社グループで働く全ての社員が最大限に能力を発揮できる環境を整備してまいります。
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分類 |
項目 |
2024年度 |
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エンゲージメント サーベイ |
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健康経営の推進 |
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※1 疾病により長期欠勤(1ヶ月以上の欠勤)又は休職を経験した者の数
※2 平均値が100で値が低いほど望ましい。
(ⅱ)ファイナンシャル・ウェルネス
当社グループでは、社員の長期的な資産形成を支援する観点から、福利厚生制度として従業員持株会制度及び職場つみたてNISA制度を導入し、また、企業型確定拠出年金のマッチング拠出制度を導入しています。2023年度には経営層と社員が株主と一体となり企業価値の向上を目指す観点から、従業員持株会を通じ社員1人あたり当社普通株式100株を付与しました。この結果、従業員持株会の加入率は大きく増加し、2024年度は95%以上となっております。また、職場つみたてNISAは30%以上の社員が利用し、企業型確定拠出年金に係るマッチング拠出は60%以上の社員が行っています。
当社グループでは、国民の金融リテラシー向上・投資家層の拡大に向けて、公正・中立な立場から、学校・職場への講師派遣など金融経済教育活動に力を入れており、その担い手となる社員自身が正しい金融知識を身に付け、行動していく必要があるとの考えから、社員に対して金融知識や資産形成に関する研修を実施しています。更に、人生100年時代を迎え、一人ひとりが人生の様々な目的に対応した形で資産形成を行い、経済的に自立することが重要になってきています。多様な選択肢のある充実した人生を送ることができるようファイナンシャル・ウェルネスの向上にむけて、ベテラン社員を対象にしたマネープランに関するセミナーの開催など、老後の生活に役立つ具体的で実践的な情報を提供することなどを積極的に行っています。引き続き社員の金融リテラシーを一層高める教育をより充実させ、自律的な資産形成を促進してまいります。
(c)企業文化とマインド
全ての社員が能力を最大限に発揮するためには、会社全体の多様性や社員のウェルビーイングなど数値で表されるものだけではなく、企業文化などの目に見えない共通の価値観が醸成されていることも重要です。当社グループでは、強みであり、今後も守るべき企業文化が3つ挙げられます。
1つ目は「企業理念の浸透・訴求力の高さ」です。当社グループにはその事業の公益性・社会貢献性の高さに惹かれた人材が集まるとともに、企業理念への共感が、社員の高い定着率やエンゲージメントの源泉ともなっています。また、当社グループの採用活動においても企業理念への共感を重視しています。当社グループの元社員によるインサイダー取引規制違反の事案の発生を踏まえ、あらためて研修や社員間コミュニケーション等をとおして当社グループの企業理念を社員一人ひとりにより一層浸透させていくことが必要となっています。
2つ目は「安定的な市場運営に対する使命感」です。当社グループの事業の根幹である安定的な市場運営を遂行するためには、ミスの許されないオペレーションを日々着実に実施していく定常業務も多く存在し、そうした業務に対し社員は高い使命感・責任感を持って日々取り組んでいます。
3つ目は「風通しのよさ」です。当社グループでは、過度に上下関係を意識することなくコミュニケーションがとれる、社員個々人が意見やアイデアを言いやすい企業風土が醸成されています。こうした社風の中で、日々、更なる安定的な市場運営や新たな分野・領域の開拓に向けた闊達な意見交換が行われています。
その一方で、当社グループの長期ビジョンであるTarget2030を実現するためには、これら企業文化を承継していくと同時に、「自己の成長」「挑戦」「組織貢献」「部下・後輩の育成」といったマインドを意識づけし、更にそれらを醸成していくことも重要であると考えています。時代や環境の変化に対応していくためには、社員一人ひとりが学習などのインプットだけではなく、成果等のアウトプットにも着目する形で、常に「自己の成長」を意識する必要があるほか、新サービスの導入・新商品の開発や、従来の前例・枠組みなどに過度にとらわれることなく既存業務の改善や生産性向上のための施策を実施するなど、様々な「挑戦」を続けていくことが重要です。また、安定的な市場運営という当社グループの中核的ミッションを遂行していくためには、社員一人ひとりが「組織貢献」を意識し、社員同士が支えあうことが必要不可欠です。更に、業務や日常的なコミュニケーションの中で部下や後輩に積極的に働きかけて信頼関係を構築し、「部下・後輩の育成」を行っていくことは、企業文化やマインドを承継するとともに会社が持続的に発展していくために重要であると考えています。
当社グループにおける社員の評価制度において、「自己の成長」「挑戦」「組織貢献」「部下・後輩の育成」の4つのマインドを評価対象の項目として取り入れることで、社員への浸透・意識付けを図っています。また、管理職の評価には、上司だけでなく同僚や部下がこれら4つのマインドの充足度を評価する360度レビューを導入しており、より多角的な視点での評価を行うことでこれらマインドの定着・伸長を促しています。加えて、強みである企業文化を確実に承継していくため、経営層と若手社員との対話の機会や、社員同士のコミュニケーション機会の増進も引き続き図ってまいります。
⑤ 人的資本に関するデータ
<社員数等に関するデータ>
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項目 |
分類 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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※1、2、3 |
全社員 |
1,196 |
1,199 |
1,224 |
1,236 |
|
|
うち男性 (比率) |
859 (71.8%) |
849 (70.8%) |
861 (70.3%) |
863 (69.8%) |
872 (69.9%) |
|
|
うち女性 (比率) |
337 (28.2%) |
350 (29.2%) |
363 (29.7%) |
373 (30.2%) |
376 (30.1%) |
|
|
うち外国人 (比率) |
17 (1.4%) |
16 (1.3%) |
17 (1.4%) |
16 (1.3%) |
15 (1.2%) |
|
|
うち中途採用 (比率) |
331 (27.7%) |
371 (30.9%) |
389 (31.8%) |
388 (31.4%) |
393 (31.5%) |
|
|
採用数(人) ※2 |
新卒採用 |
25 |
25 |
27 |
30 |
30 |
|
うち女性 |
11 |
11 |
12 |
12 |
12 |
|
|
うち外国人 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
|
中途採用 |
14 |
18 |
26 |
13 |
18 |
|
|
うち女性 |
0 |
5 |
10 |
3 |
5 |
|
|
うち外国人 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
|
|
|
全退職者 (離職率) |
10 (0.8%) |
18 (1.5%) |
9 (0.7%) |
21 (1.7%) |
(1.3%) |
|
うち男性 |
8 |
14 |
7 |
16 |
11 |
|
|
うち女性 |
2 |
4 |
2 |
5 |
5 |
|
|
|
全社員 |
17.3 |
17.5 |
17.6 |
17.7 |
|
|
男性社員 |
16.8 |
17.0 |
17.3 |
17.5 |
17.8 |
|
|
女性社員 |
18.8 |
18.6 |
18.3 |
18.2 |
18.0 |
(当社及び中核子会社を対象としています(外部への出向者、派遣社員等を除き、受入れ出向者、嘱託、育産休者含む)。)
※1 全て年度末時点の数字。
※2 うち数は重複する場合があります。
※3 2020年度及び2021年度について株式会社東証システムサービス(2022年度より当社グループ会社の株式会社JPX総研と合併)社員を含みます(ただし、「社員数」のうち「うち外国人」及び「うち中途採用」ついては2020年度を除く)。
<健康経営等に関するデータ>
|
項目 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
|
65.1% |
92.3% |
96.5% |
94.0% |
|
|
|
11.9% |
9.8% |
10.6% |
9.5% |
|
|
|
91.1% |
90.6% |
95.2% |
97.2% |
|
|
|
6人 |
3人 |
1人 |
9人 |
|
|
|
27時間35分 |
28時間15分 |
27時間46分 |
24時間55分 |
|
|
(比率)※4 |
12.0日(60%) |
12.2日(61%) |
12.6日(63%) |
14.0日(70%) |
(68%) |
(当社及び中核子会社を対象としています(外部への出向者、嘱託を含み、受入れ出向者、派遣社員等を除く)。)
※4 休業者を分母に含みます。
(参考)
当社グループの人事施策の様々な取組については、JPXウェブサイト及び統合報告書(JPXレポート)も併せてご参照ください。
https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/jpx-esg/employee/index.html
https://www.jpx.co.jp/corporate/investor-relations/ir-library/integrated-report/index.html
[リスク管理への基本方針]
当社グループは、システム障害リスク、清算参加者破綻時の補償等のリスク、事務リスクなど、事業上様々なリスクを抱えています。これらのリスクに対応するため、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」及びCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、JPXで定めた「リスク管理方針」に従って、未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはそのおそれが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えています。(各委員会等の詳細については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスク管理体制の整備の状況」をご覧ください。)
また、事業年度ごとに当社グループが重点的に対応すべきリスクを「重要リスク」として特定するとともに、当社グループ各部室におけるリスク管理の実効性を高めるべく、重要リスクごとに「基本的な対応方針」を策定し、未然に「重要リスク」等への対応を行うことで、リスクの発現可能性を低減させるとともに、リスクが顕在化した際には機動的な対応を行います。また、重大事故発生時には、統括的な状況把握、早期解決に向けた指揮などが「リスク管理委員会」によって行われる体制となっており、経営陣へ必要な情報が漏れなく、迅速に入る体制が整備されています。
<当社グループにおけるリスク管理体制>
<当社グループにおけるリスク管理プロセス>
<重要リスクの特定フローイメージ>
[個別のリスク]
以下、当社グループの事業その他に関し、リスク要因となる可能性があると考えられる事項を記載しておりますが、これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、必ずしもリスク要因には該当しないと考えられる事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は、提出日現在において入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。
1.経営体制・事業戦略に関するリスク
(1)経営体制の特徴等について
① 持株会社であることについて
当社は持株会社であるため、収入は、子会社からの経営管理料収入及び子会社や関連会社からの配当金に大きく依存しますが、法律上又は事業上の制約により、当社への子会社や関連会社からの配当金の支払いは制限される可能性があります。
当社の子会社である日本取引所自主規制法人は、金融商品取引法において、営利の目的をもって業務を行ってはならない旨、規定されていることから配当を行うことができず、また、子会社である株式会社日本証券クリアリング機構は、清算機関としての企業の継続性及び決済履行保証スキーム(「7.決済履行確保の枠組みについて」参照)の機能確保の観点から、一定の剰余金を確保する必要があります。(「金融市場インフラのための原則」(2012年4月:国際決済銀行・支払決済システム委員会、証券監督者国際機構専門委員会の共同報告書)においても、「(より複雑なリスク特性を伴う清算業務に従事しているCCPは)極端であるが現実に起こり得る市場環境において最大の総信用エクスポージャーをもたらす可能性がある2先の参加者とその関係法人の破綻を含み、かつこれに限定されない広範な潜在的ストレスシナリオを十分にカバーするだけの追加的な財務資源を保持すべきである。」との原則が掲げられております。)
当社グループは、配当について、金融商品取引所グループとして、財務の健全性、清算機関としてのリスクへの備え、当社市場の競争力強化に向けた投資機会等を踏まえた内部留保の重要性に留意しつつ、業績に応じた配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を60%以上とすることを目標としておりますが、当社の子会社や関連会社が、当社に配当を行うだけの十分な収益やキャッシュ・フローを確保できなかった場合には、当社の株主に対する配当が困難もしくは不可能となる可能性があります。
② 自主規制機能について
投資家が市場に安心して参加するためには、市場が公正で信頼できるものである必要があり、市場の公正性・信頼性を確保するためには、自主規制機能が適切に発揮されることが不可欠です。
当社グループの企業体としての利害と市場の公正性との間の利益相反問題の回避に万全を期するとともに、その実効性を確保するため、金融商品市場については、持株会社の傘下に市場運営会社(株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所)と自主規制法人(日本取引所自主規制法人)を置いており、日本取引所自主規制法人は株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所からの委託を受けて自主規制業務を行っております。
この自主規制業務の委託料については、金融商品取引法において、自主規制法人が委託を受けた自主規制業務を行うために適正かつ明確な算出方法が委託契約に定められていることが求められていることから、長期かつ固定的な金額を基本としております。また、商品市場については、自主規制業務の独立性確保の観点から、株式会社東京商品取引所の取締役会の諮問機関として自主規制委員会を設置し、同委員会が自主規制業務に関する事項の審議を行うこととし、同委員会の職務を補助する自主規制を担当する部門を設置しています。
当社グループでは、自主規制機能は市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹であり、市場についての一種の品質保証であるとともに、市場のブランドを維持向上させるものであると認識しており、中長期的に収益の獲得・向上に資するものであると考えておりますが、短期的には、自主規制機能の発揮が営利性の追求と相反する側面があるとともに、市場環境の悪化等により、当社グループの経営成績が順調に進展しない場合には、自主規制機能にかかる業務に必要な経営資源を投入した結果、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。加えて、自主規制機能が適切に発揮されない場合には、市場参加者や投資家等の信頼を著しく損ね、ひいては市場のブランド価値を毀損することにより、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、金融商品取引所との比較において自主規制業務に関する負担が著しく低い私設取引システム(いわゆるPTS。以下「PTS」といいます。)等との競争においては、コスト構造上、不利に働く可能性があります。
(2)事業戦略に関するリスク
① 事業戦略が失敗するリスク
当社グループは、2025年度から2027年度までの3年間を対象とする当社グループの中期経営計画を2025年3月に公表し、様々な施策を実行しております。
市場の持続的な発展のために当社グループが遂行する事業戦略は、投資家・利用者のニーズの変化やステークホルダーとの調整、本項に示した各種リスクの顕在化などによる事業環境の変化等により、当初予定していたとおりに遂行できない可能性があります。
こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、各種リスクの顕在化や経済環境・市場環境の変化等を注視するとともに、事業戦略の進捗状況や事業環境の変化等について定期的にモニタリングを行い、的確な財務運営や環境変化に応じた重点戦略の見直しなどを適時行うよう対策を行っています。
② システム投資について
近年のIT技術の発展により取引所もシステムの高度化が進んでおり、その安定性・処理性能等が市場間競争における優位性確保に大きな影響を及ぼす状況となっております。
当社グループでは、現物市場の売買システムとして、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた「arrowhead」を、デリバティブ市場の取引システムとして、世界標準の取引機能と世界水準の注文処理性能を兼ね備えた「J-GATE」をそれぞれ稼働しております。
テクノロジーの発達に伴う投資手法の高度化・多様化等、刻々と変化を続ける利用者のニーズに適切に対応し、取引所としての競争力を維持していくためには、加速度的に進化する技術を最大限活用すべく、ITに関する設備投資を継続し、取引システム等の改良に努めていく必要があることから、2021年9月の「J-GATE」に続き、「arrowhead」についても、2024年11月に更改しております。
しかしながら、これらの設備投資により、必ずしも直ちに収益が拡大するとは限らず、市況の悪化等により、コストに見合う収益を生み出すことができなかった場合には、当社グループの業績が圧迫されるとともに、その後における追加的な設備投資に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ サステナビリティ推進への対応について
当社グループは、我々を取り巻く環境や社会課題、それらとの関係に目を向け、企業価値の向上につながる取組を進めることが重要な経営課題の一つであるとの考えのもと、当社グループCEOを本部長とするサステナビリティ推進本部を設置し、各種方針や戦略を策定し、全社横断的に施策を実施しています(「第2 事業の状況-2 サステナビリティに関する考え方及び取組」参照)。
当社グループのビジネスモデルを踏まえ、市場メカニズムを活用したサステナビリティ推進への取組を行っていますが、対応が十分でない場合には、当社グループが提供する取引所インフラに対する信認や支持の低下、収益機会の逸失または市場の魅力低下につながる可能性があります。
2.事業環境等に関するリスク
(1)法令等による規制等について
① 免許制の事業であることについて
当社グループは金融商品取引法、商品先物取引法及び関連する諸法令の規制の下、事業を行っております。
当社は、金融商品取引法が定める取引所持株会社に係る内閣総理大臣の認可(以下「取引所持株会社認可」といいます。)を受けた「金融商品取引所持株会社」であり、当社の子会社である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める金融商品市場の開設に係る内閣総理大臣の免許(以下「取引所業免許」といいます。)を受けて、取引所金融商品市場を開設・運営する「金融商品取引所」です。なお、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、同法が定める内閣総理大臣の認可(以下「自主規制業務の委託認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を日本取引所自主規制法人に委託しており、日本取引所自主規制法人は同法が定める内閣総理大臣の認可(以下「自主規制業務認可」といいます。)を受けて、自主規制業務を行っております。加えて、当社は金融商品取引法が定める内閣総理大臣の認可(以下「商品取引所子会社化認可」といいます。)を受けて、株式会社東京商品取引所を子会社としております。株式会社東京商品取引所は、商品先物取引法が定める主務大臣の許可(以下「株式会社商品取引所許可」といいます。)を受けて先物取引を行うために必要な市場を開設・運営する「株式会社商品取引所」であります。
また、株式会社日本証券クリアリング機構は、金融商品取引法が定める金融商品債務引受業に係る内閣総理大臣の免許(以下「金融商品債務引受業免許」といいます。)及び商品先物取引法が定める主務大臣の承認(以下「金融商品債務引受業等兼業の承認」といいます。)を受けて、金融商品取引清算機関として金融商品債務引受業等を行っており、また、商品先物取引法が定める主務大臣の許可(以下「商品取引債務引受業許可」といいます。)及び金融商品取引法が定める内閣総理大臣の承認(以下「商品取引債務引受業兼業の承認」といいます。)を受けて、商品取引清算機関として商品取引債務引受業を行っております。
さらに、金融商品取引清算機関の総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権を取得し、若しくは保有しようとする場合、あらかじめ、内閣総理大臣の認可(以下「金融商品取引清算機関の主要株主認可」といいます。)を受けなければならないとされており、当社は当該認可を受けております。
現時点におきましては、上記免許等が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、取消事由等に該当し、免許等の取消処分を受けることとなった場合又は業務の全部若しくは一部の停止等の処分を受けることとなった場合等には、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
<主な許認可等の概要>
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許認可等の名称 |
根拠条文 |
会社名 |
有効期限 |
免許又は認可の取消事由 |
|
取引所持株会社認可 |
金融商品取引法 第106条の10第1項 |
株式会社日本取引所グループ |
なし |
金融商品取引法 第106条の26、第106条の28第1項 |
|
取引所業免許 |
同法 第80条第1項 |
株式会社東京証券取引所 株式会社大阪取引所 |
なし |
同法 第134条第1項、第148条、第152条第1項 |
|
自主規制業務の委託認可 |
同法 第85条第1項 |
株式会社東京証券取引所 株式会社大阪取引所 |
なし |
同法 第153条の2 |
|
自主規制業務認可 |
同法 第102条の14 |
日本取引所自主規制法人 |
なし |
同法 第153条の4 |
|
金融商品債務引受業免許 |
同法 第156条の2 |
株式会社日本証券クリアリング機構 |
なし |
同法 第156条の17第1項、第2項 |
|
金融商品取引清算機関の主要株主認可 |
同法 第156条の5の5第1項 |
株式会社日本取引所グループ |
なし |
同法 第156条の5の9第1項 |
|
商品取引所子会社化認可 |
同法 第106条の24第1項 |
株式会社日本取引所グループ |
なし |
同法 第106条の26、第106条の28第1項 |
|
商品取引債務引受業兼業の承認 |
同法 第156条の6第2項 |
株式会社日本証券クリアリング機構 |
なし |
同法 第156条の17第2項 |
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株式会社商品取引所許可 |
商品先物取引法 第78条 |
株式会社東京商品取引所 |
なし |
商品先物取引法 第94条第1項、第159条第1項、第2項 |
|
商品取引債務引受業許可 |
同法 第167条 |
株式会社日本証券クリアリング機構 |
なし |
同法 第186条第1項、第2項 |
|
金融商品債務引受業等兼業の承認 |
同法 第170条第2項 |
株式会社日本証券クリアリング機構 |
なし |
同法 第186条第1項、第2項 |
② 業務内容の制限等について
当社グループは、金融商品取引法及び商品先物取引法において、次のような業務内容の制限を受けております。金融商品取引所持株会社である当社は、子会社である株式会社金融商品取引所等の経営管理を行うこと及びこれに附帯する業務のほか、他の業務を行うことができないとされており、金融商品取引所である株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所は、取引所金融商品市場の開設及びこれに附帯する業務等以外の業務を行うこと、自主規制法人である日本取引所自主規制法人は、自主規制業務及びこれに附帯する業務以外の業務を行うこと、商品取引所である株式会社東京商品取引所は、商品市場の開設及び上場商品の品質の鑑定、刊行物の発行その他これに附帯する業務以外の業務を行うこと、金融商品取引清算機関及び商品取引清算機関である株式会社日本証券クリアリング機構は、金融商品債務引受業等及び商品取引債務引受業並びにこれらに附帯する業務以外の業務を行うことを原則として禁止されており、業務範囲が制限されております。
また、同様に、金融商品取引所持株会社、金融商品取引所及び商品取引所は、金融商品取引法及び商品先物取引法において、子会社の範囲についても制限を受けております。金融商品取引所持株会社の子会社である株式会社JPX総研は、取引所金融商品市場の開設に附帯する業務のほか、内閣総理大臣の認可を受けた場合には取引所金融商品市場の開設に関連する業務を行うことができます。
このほか、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所、日本取引所自主規制法人及び株式会社日本証券クリアリング機構は、定款、業務規程、受託契約準則、業務方法書を変更する場合には、内閣総理大臣の認可が必要である旨、定められており、同様に、株式会社東京商品取引所及び株式会社日本証券クリアリング機構は定款等を変更する場合には、主務大臣の認可が必要である旨、定められているなど、当社グループは法令による広範な規制の下、業務を行っております。
これらの規制は、必ずしも当社の株主を保護することを目的とはしていないため、将来、何らかの理由により、業務上必要な認可が得られないような場合には、当社グループが必要とする施策を実行できず、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 当社の発行済株式の取得及び所有に係る制限等について
金融商品取引法において、金融商品取引所持株会社である当社が発行する株式につきましては、認可金融商品取引業協会、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社、商品取引所、商品取引所持株会社又は地方公共団体その他政令で定める者を除いて、何人も、総株主の議決権の100分の20(その財務及び営業の方針の決定に対して重要な影響を与えることが推測される事実として内閣府令で定める事実がある場合には、100分の15)以上の数の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除きます。以下「対象議決権」といいます。)を取得し、又は保有してはならないとされております。
また、総株主の議決権の100分の5を超える対象議決権の保有者となった者は、内閣府令で定めるところにより、対象議決権保有割合、保有の目的その他内閣府令で定める事項を記載した対象議決権保有届出書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないものとされております。
④ 法改正による影響等について
当社グループの事業に関連する法規制の導入・改正・撤廃や法規制の執行に関する方針の変更は、直接的に又はその結果生じる市場環境の変化を通じて、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。
例えば、規制内容の変更に伴う競争環境の変化や税制の変更は、当社グループの市場シェアや取引量の減少に繋がる可能性があります。
将来における法規制の変更内容及びそれが当社グループの事業に与える影響を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものでもありませんが、新たな規制等が実施された場合には、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)金融市場の動向による影響について
① 収益構造の特徴等について
当社グループの営業収益のうち、「取引関連収益」及び「清算関連収益」(それぞれ2025年3月期の連結営業収益に占める割合が39.8%、21.2%)は有価証券やデリバティブ商品の売買代金・取引高の水準に、「上場関連収益」(同10.7%)は上場する企業の時価総額や資金調達額、新規上場会社数の水準などにそれぞれ大きく依拠しております。
したがって、当社グループの収益は、有価証券やデリバティブ商品の流通市場並びに有価証券の発行市場の動向、ひいては世界的な金融市場の動向や国内外の経済情勢の影響を大きく受けることとなります。
特に、上場会社の大多数は日本企業であることから、日本経済の状況が当社グループの経営成績に及ぼす影響は大きく、景気の低迷等により、流通市場及び発行市場を取り巻く環境が悪化し、現物市場及びデリバティブ市場における取引量、上場会社の時価総額、資金調達額等が減少した場合には、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。
こうしたリスクに対処するため、当社グループとしては、我が国金融・資本市場の中核インフラとして、上場から売買、清算・決済及びデータサービスに至るまで、市場運営の基本となる機能を一丸となって安定的に提供するとともに、新たなサービスを創出し収益の安定化を図り、強固な財務基盤を維持する中で、社会に対して提供する付加価値を高めてまいります。
② 外国人投資家の動向による影響について
2024年1月~12月における外国人投資家の取引量は、株式の売買代金においては6割程度、デリバティブ取引の主力商品である日経平均株価先物やTOPIX先物の取引高においては7割程度を占めるなど、重要な割合を占めております。
したがって、日本経済、日本株式市場のパフォーマンス又は為替レートの状況や規制強化等により、外国人投資家にとっての日本市場への投資魅力が減退し、取引量が減少することとなった場合には、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、外国人投資家を含めた国内外の投資家への営業強化・関係強化を行うとともに、日本市場への投資・フロー獲得に向けた取組を積極的に行っております。
(3)競合による影響について
① 現物市場に関する他の証券取引所、取引所外取引との競合について
現物取引等における競合は激しさを増してきており、市場の流動性、取引の執行にかかるスピード・コスト、取引システムの性能、取引参加者や上場会社に提供される商品やサービスの多様性、規制環境など、様々な分野において、今後も競合が激化していくものと認識しております。
現状、当社グループにおける株式売買代金は、2024年1~12月における国内上場株式の売買代金の81%程度を占めており、日本における取引所外取引(PTS及びOTC等)は19%程度となっておりますが、近年、取引所外取引における取引量は増加傾向にあり、将来的には当社グループのシェアを奪う脅威となる可能性があります。
当社グループがこうした競争環境に適切に対応できず、市場の流動性等が減少した場合には、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、近年、取引所業界は世界的に激しい価格競争にも晒されております。競合他社が当社グループよりも低い手数料等でのサービスの提供を開始し、当社グループにおいても、取引や上場にかかる手数料の引下げ等を行う必要が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② シンガポール取引所の日経平均株価先物取引・オプション取引との競合について
大阪取引所市場における日経平均株価先物取引は主にシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引と競合しております。シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引は、大阪取引所市場における日経平均株価先物取引と同じく、我が国株式市場を代表する指数である日経平均株価を対象とした株価指数先物取引です。
過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高は、次のとおりです。
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年度 |
大阪取引所市場 |
シンガポール取引所市場 |
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2022年度 |
47,085,779単位 |
7,105,164単位 |
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2023年度 |
47,226,251単位 |
5,885,737単位 |
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2024年度 |
40,172,560単位 |
4,303,212単位 |
(注1)大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引の取引高には、ミニ取引(大阪取引所は日経225mini、シンガポール取引所はMini Nikkei 225 Index Futures)及びマイクロ取引(大阪取引所市場の日経225マイクロ先物)による取引を含みます。ただし、これらミニ取引は、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の10分の1、マイクロ取引は100分の1であるため、それぞれ実際の取引高の10分の1、100分の1としております。
(注2)シンガポール取引所市場の日経平均株価先物取引のうち、Nikkei 225 Index Futures及びUSD Nikkei 225 Index Futuresは、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価先物取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。
指数オプション取引に関しては、大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引が主に競合している商品として、シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引があります。
過去3年間の大阪取引所市場及びシンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引の取引高は、次のとおりです。
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年度 |
大阪取引所市場 |
シンガポール取引所市場 |
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2022年度 |
24,963,946単位 |
1,753,756単位 |
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2023年度 |
22,881,701単位 |
1,175,601単位 |
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2024年度 |
16,056,501単位 |
1,003,474単位 |
(注1)シンガポール取引所市場の日経平均株価オプション取引は、取引換算額では大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引の半分であるため、実際の取引高の半分を記載しております。
(注2)大阪取引所市場の日経平均株価オプション取引には、ミニ取引(日経225ミニオプション)及びWeeklyオプション取引(2023年5月29日以降、日経225ミニオプションに制度変更)による取引を含みます。ただし、ミニ取引は、取引金額換算では大阪取引所市場における日経平均株価オプション取引の10分の1であるため、実際の取引高の10分の1としております。
2024年度の大阪取引所市場における日経平均先物取引及び日経平均株価オプション取引の取引高は、シンガポール取引所市場のそれを上回っておりますが、今後の市場参加者の動向によっては、大阪取引所市場の利用者がシンガポール取引所市場に移ることで大阪取引所市場における取引手数料収入が減少し、当社グループの事業運営及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 取引所間の経営統合について
取引所業界においては、情報通信技術の発展に伴うクロスボーダー取引の拡大や市場間競争の激化、取引所の株式会社化・上場を背景とした規模拡大や経営効率向上の取組強化、国際的な規制の調和の進展などを背景に、主に欧米地域を中心に、特に2000年代後半以降、主要取引所間での合従連衡の動きが顕著となりました。足元では欧州において、ユーロネクストによるオスロ取引所、イタリア取引所の買収(2019年、2021年)やスイス取引所によるスペイン取引所の買収(2020年)、またアジア太平洋地域においても、シカゴ・オプション取引所等を運営するCboeグローバル・マーケッツが日本や豪州でPTSを運営するチャイエックス・アジア・パシフィック・ホールディングスを買収(2021年)するなど、取引所間統合の動きがありますが、一方で、経営統合を発表しながらも、規制当局による承認等が得られず、見送りとなった事例もこれまで少なからずあります。また昨今では、清算分野、IT関連や情報ビジネスなどビジネス領域の拡大を目的にした取引所による買収事例も増加しています。
他の取引所による経営統合・買収等が行われる場合の当社グループの事業への影響を予測することは困難ですが、他の取引所がそうした取組を通じて、より優れたサービスの提供やコスト削減を実現する場合には、当社グループの競争優位性の相対的な低下や国際的なプレゼンスが低下し、当社グループの事業運営及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、市場環境の変化等を注視するとともに、市場関係者等との議論等を踏まえて市場制度の見直し等を行うことで、市場機能の強化を図り、公正かつ利便性の高い取引サービスを提供できるよう取り組んでおります。また、データやテクノロジーを活用したデジタル事業やネットワーク事業の強化を進め、事業の多角化やサービスの高度化についても推進しております。
3.事故・災害等に関するリスク
当社グループでは、市場開設者及び清算機関という社会インフラとしての責務を果たすべく、様々なリスクが発現した場合においても、事業を可能な限り継続し、止むを得ず中断する場合においても可能な限り早期に再開できるよう、BCP(緊急時事業継続計画)を策定しており、堅実かつ安定的な事業継続体制の整備に努めております。
しかしながら、地震・風水害・火災等の自然災害、電力・通信等の社会インフラの停止、物理的破壊行為・サイバーテロ等のテロ行為又は新型インフルエンザを始めとする疫病の蔓延等により、想定を上回る被害を受け、事業を長期的に中断せざるをえないこととなった場合には、甚大な経済的損失を被るとともに、社会的信用の低下等、深刻な事態をもたらす可能性があります。
また、事業の中断に至らなかった場合においても、被害の状況によっては、多額の回復費用が必要となり、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、事故・災害等が発生した場合においても、株券や資金の決済インフラを提供する株式会社証券保管振替機構や日本銀行などの各種関係機関と協業したうえで、取引参加者、上場会社、投資家等のステークホルダーへの影響を最小化することを目的に、BCP(緊急時事業継続計画)に定めた所要の対応を迅速かつ的確に行うための訓練を定期的に実施しているとともに、首都直下地震などの広域災害時においても市場機能を維持すべく関西データセンターの構築をはじめ、業務・システム両面での東西相互バックアップ態勢の強化などに取り組んでおります。
4.システム面に関するリスク
現物及びデリバティブの売買・清算並びにこれらに関連する業務は、システムを通じて処理されていることから、市場の安定性・信頼性を維持するためには、取引システムの安定稼働が必須の要件となっております。
また、近年、テクノロジーの発展に伴い、取引システムは高度化してきており、取引システムの性能が、取引所ビジネスにおける競争力の源泉となっております。
そのため、システム障害等の発生により、市場の信頼性が毀損した場合、または利用者の要望に適切に対応することができず、取引システムの性能が他の取引所等の提供するシステムに劣後することとなった場合には、取引量が減少し、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、過去にシステム障害やキャパシティの不足により売買停止に至った反省の下、開発手法の標準化や十分な稼働確認テストの実施、詳細な運用マニュアルの整備とその遵守、開発及び運用業務に係る品質管理の徹底などのリスク管理体制の構築等の取組を行ってまいりましたが、2020年10月1日に「arrowhead」において発生した障害を踏まえ、更なるシステムの安定性・信頼性の向上に努めるのみならず、万が一のシステム障害等発生時における迅速かつ適切な回復策を拡充すべく取り組んでおります。
5.情報漏えい等に関するリスク
当社グループでは、取引参加者、上場会社等の企業情報や個人情報を保有しているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しております。当社グループの多くの役職員は、金融商品取引法及び商品先物取引法においても秘密保持義務が課せられておりますが、役職員の故意又は過失による情報漏えいの発生を完全に否定することはできません。
さらに、外部からの不正なアクセスの防止に関しても、個人情報保護法及び金融分野における個人情報保護に関するガイドライン等の各ガイドラインの下で、厳格な管理が要求されておりますが、万が一重要な情報が外部に漏洩した場合には、市場利用者等からの損害賠償、監督官庁からの処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、情報管理に関するポリシーや事務手続等を策定しており、役職員に対するe-ラーニングによる教育・研修等により情報管理及び法令遵守の重要性の周知徹底を行うとともに、社員間のコミュニケーションに係る施策等を通じて、企業理念やコンプライアンス意識等の浸透を図っております。また、システム上のセキュリティ対策等を行うことで、情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management System:ISMS)の国際標準規格「ISO/IEC27001 / JIS Q 27001」の認証を取得し、現在もその認証を継続して付与されております。
6.事務過誤等に関するリスク
当社グループは、市場開設者及び清算機関としての重要な業務に関して、役職員の故意又は過失により重大な事務過誤等が発生した場合には、損失の発生、監督官庁からの処分、レピュテーションの毀損等により、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するため、当社グループでは、事務過誤等の発生を未然に防止するため、業務プロセスの見直しを継続的に行っております。また、業務プロセスの見直しの際には、AIの活用やDXの推進など、業務の自動化・効率化等に取り組んでおります。
7.決済履行確保の枠組みについて
日本には株式会社東京証券取引所をはじめ、有価証券の売買を行うための金融商品取引所1が4つありますが、これらの取引所における有価証券の売買については、すべて株式会社日本証券クリアリング機構が清算業務を行っております。同社は、PTS2における有価証券の売買についても、清算業務の対象としております。また、株式会社大阪取引所、株式会社東京商品取引所及び株式会社堂島取引所における先物・オプション取引についても、同社が清算を行っており、さらには、店頭市場におけるクレジットデフォルトスワップ取引及び金利スワップ取引(以下「店頭デリバティブ取引」といいます。)並びに国債店頭取引も清算業務の対象としております。
株式会社日本証券クリアリング機構は、清算機関として市場参加者が行った取引の債務を負担し、債権・債務の当事者となって、決済の履行を保証しております。これにより、市場参加者は取引相手方の信用リスクを意識せずに取引を行うことが可能となりますが、一方で、清算参加者が決済不履行を起こした場合でも、株式会社日本証券クリアリング機構には他の清算参加者との決済を履行する義務があります。このため、清算参加者の決済不履行に伴い損失が生じた場合には、決済不履行を発生させた清算参加者の担保等によりその損失を補填する自己責任原則を基本としつつ、万が一不足が生じる場合には、株式会社日本証券クリアリング機構の自己資金を充てるほか、他の清算参加者にも負担を求める損失補償制度を設けております。
同社における決済履行確保のための取組及び損失補償制度の概要は以下のとおりです。
(決済履行確保のための取組)
① 清算参加者制度及びモニタリング
清算参加者の信用リスクの低減を図るため、清算資格の種類ごとに資格要件を定めるとともに、資格要件にはそれぞれ取得基準と維持基準を設けており、一定の財務基盤、経営体制及び業務執行体制を有する者を清算参加者とすることとしています。それらの状況については定期的にモニタリングを行い、問題があると認められた場合は、当該清算参加者に担保の追加を求めることや、債務の引受けを停止することができるほか、清算資格の取消しを行うことが可能となっております。
また、清算参加者のポジションの状況も定期的にモニタリングしており、一部の清算参加者に対する過度な信用リスクの集中がないかを管理し、ポジションが過大である場合には、必要に応じて措置を検討しております。
② 担保制度
清算参加者の決済不履行による損失に備えるため、清算参加者に担保の預託を求めております。担保には、清算基金3等の清算預託金、取引証拠金4、当初証拠金5及び変動証拠金6があり、定期的に十分性を確認するとともに、適宜、担保所要額の算出モデルの検証及び見直しを行っております。
また、担保として預託を受ける金銭又は代用有価証券等に対して一定の適格要件を設定するとともに、日々担保価値の評価を行っております。
③ DVP(Delivery Versus Payment)決済
株式会社日本証券クリアリング機構と清算参加者との有価証券の決済は、仮に決済不履行が生じても「取りはぐれ」が生じることのないよう、証券と資金の授受をリンクさせ、代金の支払いが行われることを条件に証券の引渡しを行う(証券の引渡しが行われることを条件に代金の支払いを行う)DVP決済で行われております。
④ 流動性の確保
清算参加者の決済不履行時に必要となる流動性を確保するため、資金決済銀行等との間で流動性供給に関する契約を締結しております。
また、資金の流動性供給枠の十分性については、定期的に確認を行っております。
(損失補償制度の概要)
清算参加者が決済不履行を起こした場合、株式会社日本証券クリアリング機構は、当該清算参加者を当事者とする債務の引受け又は負担の停止並びに株式会社日本証券クリアリング機構が当該清算参加者に引き渡すべき有価証券及び金銭の引渡しを停止するとともに、引渡しを停止した有価証券及び金銭を、当該清算参加者の決済不履行の弁済に充当します。
以上の処理後においても、株式会社日本証券クリアリング機構の損失が解消されない場合には、以下に記載する方法により、損失の補填を行います。なお、この補填は、原則として、有価証券の売買、先物・オプション取引、店頭デリバティブ取引及び国債店頭取引のそれぞれの清算に係る損失7について、不履行清算参加者の清算資格に応じて、個別に行います。(以下に記載されている金額は、2025年3月末時点において確定している金額となります。)
決済不履行発生時の有価証券の売買の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金等)による補填
② 金融商品取引所等の損失補償による補填8
③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填
④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金による補填
⑤ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填
したがって、清算参加者の有価証券の売買に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額を上限として、株式会社東京証券取引所又は株式会社大阪取引所が補填を行うことにより、また、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金9として積み立てた金額(200億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
決済不履行発生時の先物・オプション取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(取引証拠金及び清算基金等)による補填
② 金融商品取引所又は商品取引所の損失補償による補填10
③ 株式会社日本証券クリアリング機構による補填
④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金による補填10
⑤ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填
⑥ 破綻後における差金代金相当額の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填
したがって、清算参加者の先物・オプション取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①の対応によっても、同社の損失を補填しえない場合には、②については、損失補償契約に定められた金額(金融デリバティブ取引:174億円、コモディティ・デリバティブ取引:91億円)を上限として、株式会社東京証券取引所、株式会社大阪取引所又は株式会社東京商品取引所が補填を行うことにより、また、③については、金融デリバティブ取引に関しては日本証券クリアリング機構が証券取引等決済保証準備金として積み立てた金額(200億円)及びコモディティ・デリバティブ取引に関しては同社が商品先物等決済保証準備金として積み立てた金額(38億円)を上限として補填を行うことにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
決済不履行発生時の店頭デリバティブ取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填
② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)
③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)
④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填
⑤ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填
したがって、清算参加者の店頭デリバティブ取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、それぞれの清算業務について②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている金額(クレジットデフォルトスワップ取引:15億円、金利スワップ取引:20億円)を上限として補填することにより、③については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている金額(クレジットデフォルトスワップ取引:15億円、金利スワップ取引:20億円)を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
決済不履行発生時の国債店頭取引の清算に係る損失については、次に掲げる順序により、補填を行います。
① 不履行清算参加者が預託している担保(当初証拠金及び清算基金)による補填
② 株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第一階層決済保証準備金)
③ 不履行清算参加者以外の清算参加者の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金)
④ 不履行清算参加者以外の清算参加者の特別清算料による補填
⑤ 原取引按分清算参加者11の清算基金及び株式会社日本証券クリアリング機構による補填(第二階層決済保証準備金のうち③での未負担額)
⑥ 原取引按分清算参加者の特別清算料による補填
⑦ 破綻後における変動証拠金等の累計が勝ち方の不履行清算参加者以外の清算参加者による補填
したがって、清算参加者の国債店頭取引に係る決済不履行により、株式会社日本証券クリアリング機構に損失が生じた場合で、上記①までの対応によっても、同社の損失を補填しえないときには、②については、株式会社日本証券クリアリング機構が第一階層決済保証準備金として積み立てている20億円を上限として補填することにより、③及び⑤については、株式会社日本証券クリアリング機構が第二階層決済保証準備金として積み立てている20億円を上限として補填することにより、当社グループに損失が生じる可能性があります。
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1 有価証券の売買を行うための金融商品取引所:東京証券取引所、名古屋証券取引所、札幌証券取引所及び福岡証券取引所 2 PTS:ジャパンネクスト証券株式会社、Cboeジャパン株式会社、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社及びJapan Alternative Market株式会社が運営するPTS 3 清算基金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているものです。その所要額は、極端ではあるが現実に起こりうる市場環境下において複数の清算参加者が決済不履行を起こした場合等に、当該不履行清算参加者が預託する証拠金等が不足することで発生する損失をカバーするよう計算されます。 4 取引証拠金:清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する先物・オプション取引に係る債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、先物・オプション取引の建玉について、VaR方式※で計算した額から、ネット・オプション価値の総額を加減して得た額以上となります。 ※ VaR方式:過去の一定期間におけるマーケットデータの変動に基づいてポートフォリオの想定損益額を計算し、その一定水準の損失をカバーする金額を算出する方式です。 5 当初証拠金:各清算参加者の株式会社日本証券クリアリング機構に対する債務の履行を確保するため、清算参加者に預託を義務付けているもので、その所要額は、それぞれの取引について清算参加者が破綻した場合に、そのポジション処理が完了するまでの間に価格(金利スワップ取引についてはイールド・カーブ)が変動することにより想定される損失額に、一定のリスクをカバーする額を加算して計算されます。 6 変動証拠金:各清算参加者のポジションについて、日々の価格変動をカバーするために、前日からのポジションの価値の変動分を、変動証拠金として現金により授受します。変動分が負となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構に支払い、正となる清算参加者は株式会社日本証券クリアリング機構から受け取ります。
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8.契約等に関するリスク
当社グループのデリバティブ市場の主力商品である日経平均株価先物、日経225mini、日経225マイクロ先物、日経平均株価オプション及び日経225ミニオプションに関しては、原資産である日経平均株価の利用許諾について株式会社日本経済新聞社との間で利用許諾契約を締結しております。
株式会社大阪取引所は株式会社日本経済新聞社に対し、日経平均株価先物、日経225mini、日経225マイクロ先物、日経平均株価オプション及び日経225ミニオプションに関する利用許諾契約に基づき、契約基本料の他、取引高に応じて月額対価を支払っております。当該契約は、一方の当事者による契約義務不履行の場合や、議決権の過半数の株式譲渡又は取得、合併といった事由による当該契約関連事業の支配権に重大な変動が生じた場合等には、他方の当事者が通知を行うことにより当該契約を解約することができる内容となっておりますが、一方の当事者が契約を終了させる通知を行わない場合は、5年間ずつ自動更新されることとなっております。また、株式会社日本経済新聞社はやむを得ない事由が生じたときは、株式会社大阪取引所の了承を条件に日経平均株価の編集及び公表を廃止することができます。仮に上記の事由により、当該契約が終了した場合、株式会社大阪取引所は日経平均株価先物取引等の中断、あるいは中止を余儀なくされ、この場合、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
その他、当該契約に関して、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性がある事態が生じる場合としては、以下のようなものが考えられます。
・ 利用許諾料については当該契約の他に別途締結している覚書により、契約基本料の他、1先物取引及び1オプション取引当たり一定額を月額対価として株式会社大阪取引所が株式会社日本経済新聞社へ支払うこととなっておりますが、当該覚書の内容については、株式会社大阪取引所と株式会社日本経済新聞社が協議のうえ、変更される可能性があり、当該利用許諾料が大幅に変更された場合
・ 当該契約は独占契約ではないため、今後、国内外において株式会社大阪取引所以外の者が株式会社日本経済新聞社との間で日経平均株価利用許諾契約を締結し、利用権を取得する可能性があり、株式会社大阪取引所以外の者が日経平均株価の利用権を取得し国内外において日経平均株価先物・オプション取引を行い、その利便性が高い等の事情により大阪取引所市場の取引高が減少した場合
9.訴訟等に関するリスク
① 法令遵守に関するリスク
当社グループでは、情報漏えいをはじめ、役職員の故意又は過失による法令違反行為を防止するため、企業としての行動の基本方針をまとめた企業行動憲章の制定や内部通報制度であるコンプライアンス・ホットラインの設置、継続的な社内研修の実施など、法令遵守への取組に注力しておりますが、これらの取組がすべての法令違反行為の発見・防止に対して有効であるとは限らず、役職員による法令違反行為を常に排除できるとは限りません。
役職員による法令違反行為が現実のものとなった場合には、監督官庁からの処分や市場利用者等からの損害賠償請求等、行政上又は司法上の制裁が科される可能性があるとともに、社会的信用の低下等により、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
② 訴訟に関するリスクについて
当社グループの事業は様々な法的責任に晒されており、これらには、役職員等又はコンピュータ・システムによる業務運営の中で、過誤が発生するリスク(いわゆるオペレーショナル・リスク)の顕在化による法的責任も含まれます。
オペレーショナル・リスクには、例えば次のようなものが考えられます。
・ 役職員が法令や当社グループの定款、業務規程その他の諸規則等に定められた適正な業務遂行(必要な市場規制措置等)を過誤等により怠る又は誤った措置を行うリスク
・ 障害や大規模災害によるシステム停止又はシステムに誤作動が発生するリスク
・ 役職員又はシステム運用業務委託先の過誤等により取引が中断されるリスク
・ 当社グループが算出を行っているTOPIX等の株価指数や統計情報等、配信を行う各種情報に誤謬が生じるリスク
上記のリスクが顕在化した場合には、監督官庁からの処分等の可能性があるとともに、損害を被った市場利用者から損害賠償等を求められる可能性もあります。
当社グループでは、規則や契約等において、利用者が損害を受けた場合であっても、当社グループに故意又は重過失がある場合を除き、損害賠償の責を負わない旨を定めておりますが、オペレーショナル・リスクの顕在化を含むなんらかの要因により訴訟が提起された場合には、訴訟費用が多額にのぼる可能性があるとともに、訴訟において当社グループに不利な判決等がなされた場合には、訴訟に伴う損害賠償のみならず、社会的な信用の低下等を通じて、当社グループの事業運営及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
10.レピュテーショナル・リスク
当社グループでは、社会的な信用力やブランド力を、競争力の源泉の一つとして認識しております。
当社グループの社会的な信用は、システム及び自主規制業務等における過誤等、当社グループに起因する様々な要因のみならず、取引参加者や上場会社等の市場参加者又はその他の第三者による不法行為等によっても毀損される可能性があります。
当社グループの社会的な信用の毀損は、取引高の減少や発行会社の当社グループが開設する市場への上場を妨げる要因となる可能性があり、ひいては、当社グループの事業運営及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
1.業績等の概要
(1)業績
当社グループの当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績は、営業収益は1,622億30百万円(前年同期比6.1%増)、営業費用が750億71百万円(前年同期比4.9%増)となったため、営業利益は901億22百万円(前年同期比3.1%増)、税引前利益は902億77百万円(前年同期比3.3%増)となりました。
当社グループROEについては、資本効率を意識した経営を行うことにより、金融商品市場の動向にかかわらず、資本コストを上回る10%を中長期的に実現することを目指しており、当連結会計年度のROEは18.3%となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ295億91百万円減少し、984億28百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益902億77百万円に、減価償却費及び償却費183億61百万円並びに支払法人所得税等216億20百万円等を加減した結果、861億36百万円の収入となりました。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出1,740億10百万円及び定期預金の払戻による収入1,279億10百万円等を加減した結果、612億23百万円の支出となりました。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、支払配当金485億72百万円等により、544億98百万円の支出となりました。
2.生産、受注及び販売の実績
業務の性格上、該当する情報がないため記載しておりません。
3.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
本項に記載した予想、予見、見込み、見通し、方針等の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来に生じる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。
(1)重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しており、採用する重要性がある会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表-連結財務諸表注記-3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを行う判断」に記載しております。
この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるためにこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループによる見積りのうち、のれんについては、各連結会計年度末日又は減損の兆候がある場合に、減損テストを実施しております。減損テストの回収可能価額は、使用価値に基づき算定しております。使用価値は、経営計画等に基づくキャッシュ・フローの見積額を、当該資金生成単位の加重平均資本コストを基礎とした割引率等により割引いて算定しており、経営計画の最終年度を超える期間におけるキャッシュ・フローについては、将来の不確実性を考慮し、最終年度と同水準で推移すると仮定しております。なお、のれんは企業結合のシナジーから便益を得ると見込まれる資金生成単位又は資金生成単位グループに配分し、減損テストを実施しております。
当社グループの収益は、「第2 事業の状況-3事業等のリスク-2.事業環境等に関するリスク-(2)金融市場の動向による影響について-①収益構造の特徴等について」に記載のとおり、日本経済の状況の影響を大きく受け、また、流通市場や発行市場の動向は、経済環境その他様々な要因により大きく変動する場合があるため、その動向を精緻に予測することは非常に困難です。そのため、日本の景気が急速に悪化し長期間に亘って低迷した場合などには当社グループの経営計画等に基づくキャッシュ・フローの見積額が大きく減少し、のれんの減損が発生する可能性があります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
(営業収益の状況)
①取引関連収益
取引関連収益は、現物の売買代金並びに金融デリバティブ及びコモディティ・デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。
当連結会計年度の取引関連収益は、現物の売買代金が前年同期を上回り、取引料が増加したことなどから、前年同期比4.8%増の645億15百万円となりました。
取引関連収益の内訳
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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増減(%) |
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取引関連収益 |
61,585 |
64,515 |
4.8 |
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取引料 |
51,477 |
53,887 |
4.7 |
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現物 |
39,163 |
43,117 |
10.1 |
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金融デリバティブ |
10,838 |
9,374 |
△13.5 |
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TOPIX先物取引 |
2,135 |
1,731 |
△18.9 |
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日経平均株価先物取引(注1) |
4,316 |
3,704 |
△14.2 |
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日経平均株価指数オプション取引(注2) |
2,395 |
1,939 |
△19.0 |
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長期国債先物取引 |
1,934 |
2,237 |
15.7 |
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その他 |
55 |
△237 |
- |
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コモディティ・デリバティブ |
1,476 |
1,394 |
△5.5 |
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基本料 |
978 |
965 |
△1.3 |
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アクセス料 |
5,269 |
5,657 |
7.4 |
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売買システム施設利用料 |
3,746 |
3,895 |
4.0 |
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その他 |
113 |
109 |
△3.9 |
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(注1) 日経225mini先物取引を含めております。
(注2) Weeklyオプション取引を除きます。
②清算関連収益
清算関連収益は、株式会社日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業に関する清算手数料等から構成されます。
当連結会計年度の清算関連収益は、前年同期比4.7%増の344億45百万円となりました。
③上場関連収益
上場関連収益は、新規上場や上場会社の新株券発行の際に発行額に応じて受領する料金等から構成される「新規・追加上場料」及び時価総額に応じて上場会社から受領する料金等から構成される「年間上場料」に区分されます。
当連結会計年度の上場関連収益は、新規・追加上場料及び年間上場料が増加したことから、前年同期比11.0%増の173億9百万円となりました。
上場関連収益の内訳
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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増減(%) |
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上場関連収益 |
15,590 |
17,309 |
11.0 |
||
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新規・追加上場料 |
3,499 |
4,284 |
22.4 |
|
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年間上場料 |
12,090 |
13,025 |
7.7 |
|
④情報関連収益
情報関連収益は、情報ベンダー等への相場情報の提供に係る収益である相場情報料、指数ビジネスに係る収益等から構成されます。
当連結会計年度の情報関連収益は、相場情報料が増加したことに加え、指数ビジネスに係る収益が増加したことなどから、前年同期比7.2%増の318億99百万円となりました。
⑤その他の営業収益
その他の営業収益は、売買・相場報道等の各種システムと取引参加者・ユーザをつなぐarrownetに係る利用料、注文の送信時間等の短縮による売買執行の効率化を目的として、システムセンター内に取引参加者や情報ベンダー等が機器等を設置するコロケーションサービスに係る利用料等から構成されます。
当連結会計年度のその他の営業収益は、前年同期比7.8%増の140億60百万円となりました。
その他の営業収益の内訳
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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増減(%) |
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その他の営業収益 |
13,047 |
14,060 |
7.8 |
||
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arrownet利用料 |
3,349 |
3,553 |
6.1 |
|
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コロケーションサービス利用料 |
5,158 |
5,898 |
14.4 |
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|
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その他 |
4,539 |
4,608 |
1.5 |
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(営業費用の状況)
当連結会計年度の人件費は、前年同期比6.0%増の237億40百万円となりました。
システム維持・運営費は、現物及びデリバティブの売買システムをはじめとした各種システムの維持及び管理運用に係る費用等から構成されます。システム維持・運営費は、前年同期比7.3%増の204億92百万円となりました。
減価償却費及び償却費は、前年同期比0.3%増の183億61百万円となりました。
その他の営業費用は、前年同期比6.1%増の124億76百万円となりました。
(3)当期の財政状態の概況
(資産、負債及び資本の状況)
当社グループの資産及び負債には、株式会社日本証券クリアリング機構が清算機関として引き受けた「清算引受資産・負債」及び清算参加者から担保として預託を受けた「清算参加者預託金」が両建てで計上されております。「清算引受資産・負債」及び「清算参加者預託金」は、多額かつ清算参加者のポジションなどにより日々変動することから、当社グループの資産及び負債の額は、これらの変動に大きな影響を受けます。その他、金融商品取引等の安全性を確保するための諸制度に基づく「信認金」、「取引参加者保証金」及び「違約損失積立金」が資産及び負債または資本に両建てで計上されております。
当連結会計年度末の資産は、「清算引受資産」が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ4兆7,141億34百万円増加し、85兆3,967億61百万円となりました。また、「清算引受資産」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「違約損失積立金」を控除した後の資産は、前連結会計年度末に比べ66億73百万円増加し、4,284億97百万円となりました。
当連結会計年度末の負債は、資産と同様に「清算引受負債」が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ4兆7,015億52百万円増加し、85兆456億13百万円となりました。また、「清算引受負債」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「取引参加者保証金」を控除した後の負債は、前連結会計年度末に比べ72億96百万円減少し、950億23百万円となりました。
当連結会計年度末の資本は、配当金の支払により減少した一方、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ125億81百万円増加し、3,511億48百万円となりました。また、「違約損失積立金」を控除した後の資本は、3,231億99百万円となりました。
参考
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資産合計 |
資本合計 |
親会社の所有者に 帰属する持分 |
親会社所有者 帰属持分比率 |
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2025年3月期 2024年3月期 |
百万円 85,396,761 (428,497) 80,682,627 (421,823) |
百万円 351,148 (323,199) 338,566 (310,618) |
百万円 340,823 (312,875) 328,359 (300,411) |
% 0.4 (73.0) 0.4 (71.2) |
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親会社所有者帰属持分 当期利益率 |
資産合計 税引前利益率 |
1株当たり親会社 所有者帰属持分 |
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2025年3月期 2024年3月期 |
% 18.3 (19.9) 19.0 (20.8) |
% 0.1 (21.2) 0.1 (21.4) |
円 銭 327.57 (300.71) 315.54 (288.68) |
(注) 各指標における( )内は、資産合計は「清算引受資産」、「清算参加者預託金」、「信認金」及び「違約損失積立金」、資本合計及び親会社の所有者に帰属する持分は、「違約損失積立金」をそれぞれ控除して算出した数値です。
※当社は、2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。
そのため、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり親会社所有者帰属持分を算定して
おります。
(4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動のために必要な資金及び株主還元のための資金は、主に手元資金及び営業キャッシュ・フローの活用により調達しております。また、手元流動性の確保や資本コストの低減のため、必要に応じて金融機関からの借入れや社債の発行等による資金調達も活用しております。
当社グループの主要な資金需要は、システム維持・運営費や人件費などの市場運営等のための運転資金及びシステム開発のための設備投資資金などがあります。また、株主還元については、金融商品取引所グループとしての財務の健全性等に留意しつつ、業績に応じた配当を実施することを基本とし、具体的には、配当性向を60%程度とすることを目標としております。
キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要-(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(契約債務)
当連結会計年度末現在における契約債務の概要は以下のとおりであります。
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年度別要支払額(百万円) |
|||
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契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超5年以内 |
5年超 |
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借入金 |
32,500 |
32,500 |
- |
- |
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社債 |
20,000 |
- |
20,000 |
- |
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況-3 事業等のリスク」に記載しております。
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契約内容 |
相手方の名称 |
契約会社名 |
契約期間 |
備考 |
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日経平均株価先物、日経225mini、日経225マイクロ先物、日経平均株価オプション及び日経225ミニオプションに係る「日経平均株価」の利用許諾に関する契約 |
株式会社日本経済新聞社 |
株式会社大阪取引所 |
2011年1月1日から5年間 以後5年ごとに自動更新 |
|
該当事項はありません。