第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針
 当社はオンライン金融事業を営むマネックス証券株式会社(日本)及びTradeStation Group, Inc.(米国)並びに暗号資産交換業を営むコインチェック株式会社(日本)を始め、その他国内外に金融関連の子会社及び持分法適用会社を有する持株会社です。なお、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えております。当社グループは、次に掲げる企業理念および行動指針を基に、個人投資家の日々の生活及び資産形成に必要な総合金融サービスの提供を目指していきます。

 

 ① 企業理念
 MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表しています。
 常に変化し続ける未来に向けてマネックスグループは、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインするとともに、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指します。

 

 ② 行動指針

・自主性をもって事業を創造する

 一人一人が、未来のあるべき姿と当社事業の成長のために自ら考え進んでいきます。プロフェッショナル意識を持ち、必要な知識や技術を追求し、自らの価値を高めるよう努めます。

・公正であることを尊重する

 多様な背景や考え方を尊重します。一人一人の能力が最大限発揮できる透明性のある公正なチームを構築することで、当社の企業価値の向上につなげるとともに、より良い社会の実現を目指します。

・企業理念の実現に貢献する

 私たちのステークホルダーの価値創造に貢献します。未来における人の活動において、生涯バランスシートを最良化するため、何が望まれているかを想像して、個人およびチームが短期的かつ長期的な目標に向かって邁進します。

 

(2) 目標とする経営指標及び現状の経営環境
 当社グループは連結における年度の業績予算を策定していますが、当社グループはオンライン証券ビジネスやクリプトアセットビジネスなどをグローバルに展開しており、経済環境や相場環境等の影響を大きく受けるため、業績予想を行うことが困難な状況にあります。当社の業績予想および収益計画は、投資家に対して誤った情報を提供する可能性があることから適切でないと考えているため、開示しておりません。一方、資本効率に関する目標としてROEが妥当と考えており、15%を達成すべき水準と考えております。
 2025年3月期の連結決算については、親会社の所有者に帰属する当期利益は△51億円となりました。日米証券事業の安定推移に加え、クリプトアセット事業セグメントが大幅増収となりました。一方で、Coincheck Group N.V.(以下、「Coincheck Group」)のDe-SPAC上場に係る一過性費用として株式報酬費用13,714百万円、専門家報酬4,531百万円を計上しました。ROEについては△4%となり、一過性費用を除く実力値ベースでは、7%となりました。今後、資本効率を意識し、利益につながる成長投資を促進することで、継続的にROE15%を出せるように努めてまいります。

 

(3) 対処すべき課題

Ⅰ全社戦略

1) 成長戦略の追求と利益成長

当社グループはROEターゲットを15%と設定しています。当該目標を達成するにあたり、グループ各社の成長戦略を促進しつつ、成長領域への投資によりさらなる利益成長を図ることで、より一層の企業価値向上を目指します(主要セグメントの成長戦略については下記Ⅱ参照)。

 

2) グループ内シナジーの追求

「資本コストおよび株価を意識した経営」の下、事業ポートフォリオの最適化を図ってきました。足元は、アセットマネジメントビジネスやテクノロジー等への利益につながる成長投資を促進していますが、今後は、グループ会社間のシナジーをより一層追求していくことで、新たな価値の提供に努めてまいります。

 

3) 人的資本経営の高度化

当社グループが常に革新的な、最良の商品・サービスをお客様に提供し、社会から信頼、尊敬される企業であり続けるためには、その推進力である社員一人ひとりの力が何よりも重要です。そのため当社グループでは「人材」を最も重要な経営資源と捉え、全社で掲げる「人材育成方針」のもと、持続的な成長と企業価値の向上にむけて社員がもつポテンシャルを最大限引き出すための人材育成環境づくりに取り組んでいきます。

 

Ⅱグループ各社の事業戦略※1

1) 証券事業セグメント

米国のTradeStationは、先物やオプションの取引を行うアクティブトレーダーなど収益貢献度の高い大口顧客にフォーカスし、彼らのニーズに合わせた取引体験を提供することに尽力しています。その一環で、高度なオプション取引機能に対する需要に対応するため、ポジション管理ツールの強化と複雑なオプション注文の最適化を盛り込んだ、新しいプラットフォームの開発に取り組んでいます。また、革新的な取引・分析ソリューションを提供するフィンテック企業の顧客の取引も取り込むべく、Trading Viewをはじめとするパートナー企業とのAPI連携も促進しています。さらに、コンシェルジュサービスを実施し、専用サポートや高性能ツール・リサーチの提供により顧客の取引体験を向上させ、アクティブトレーダーのロイヤリティ向上を目指します。加えて、米国や英国の営業組織を強化して機関投資家への個別対応を実施している他、世界中のアクティブトレーダーに選ばれるプラットフォーマーとしての地位を確立すべく、Tradestation Europeのサービスの立ち上げを準備しています。

持分法適用会社であるマネックス証券株式会社は2020年より「アセマネモデル」をビジネスモデルとして掲げ、日本株委託手数料に依存しない強固な収益構造への転換を図るべく、収益基盤強化に努めてまいりました。2024年度は前年度に資本業務提携を開始し、親会社となった株式会社NTTドコモ(以下、「NTTドコモ」)と協力して、dポイントをためて使えるようになる「dアカウント連携」や、NTTドコモが発行するdカードで投信積立ができる「dカードⓇ積立」などの新サービスをリリースしました。これらの「ドコモ経済圏」のサービスを利用している顧客にとって利便性の高いサービスを提供することにより、NTTドコモ経由の新規口座獲得を伸ばすことができました。加えて、株式会社イオン銀行との業務提携効果もあり、今まで以上に投資初心者の口座開設が増え、NISA口座の開設率も向上しています。そういった新しいお客様により便利によりスムーズに利用いただくべく、UI/UXの継続的な改善が課題であると認識しています。また、さらなる口座獲得のため、認知度向上を図る施策も強化してまいります。その他の課題として、米国株取引サービスの新システムへの円滑な移行、情報セキュリティ・サイバーセキュリティの強化、AML/CFT対策※2の強化、及びIFAビジネス※3が拡大する中での対面チャネル特有のコンプライアンス対応・オペレーション対応に対処してまいります。直近ではフィッシング詐欺による不正取引が確認されており、多要素認証を必須化する等の対策に努めて参ります。

 

2) クリプトアセット事業セグメント

コインチェック株式会社を傘下にもつCoincheck Groupが2024年12月に米国ナスダック市場に上場いたしました。Coincheck Groupは今後、ナスダック上場企業としての知名度や信頼力を強みにM&A等を活用し、グローバル・クリプト・コングロマリット企業を目指します。取り組みの一環として2025年3月にはステーキング※4のサービスプロバイダーである株式会社Next Finance Techを当社グループに迎えました。

Coincheck Groupの主要子会社であるコインチェック株式会社は、日本を拠点としてBTC(ビットコイン)をはじめとする暗号資産を取扱う販売所および取引所の運営を主要事業としております。「コインチェックとつながる人口の拡大」を戦略として、日本国内における競合優位性の堅持を進めるとともに事業ポートフォリオの拡充と収益源の多様化を進めてまいりました。

 今後も収益源の多様化を目指し、預かり資産から収益が得られるステーキングサービスやトークンを使った企業の資金調達手法の1つであるIEO※5を推進する他、多様な法人顧客のニーズに合わせたサービス提案ができる体制の強化などの取り組みを行っていきます。また、web3事業領域において、安心して利用いただける暗号資産交換業者として法人にも個人にも最初に選ばれる会社になるため、技術力の向上やセキュリティの強化にも引き続き取り組んでまいります。

 

3) アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業セグメント

アセットマネジメント事業は、当社グループとして取り込んでいくべき投資領域であり、戦略的な投資による成長加速を目指しています。2024年4月にカナダの暗号資産運用会社である3iQ Digital Holdings Inc. (以下、「3iQ」)を買収し、2025年4月には米国中小型株の運用で優れた実績を誇る運用会社Westfield Capital Management Company L.P.に出資し持分法適用会社化しました。

日本においては、運用会社であるマネックス・アセットマネジメント株式会社が、ロボアドバイザーサービス「ON COMPASSシリーズ」を運用しておりますが、「2022年ファンドラップ費用控除後運用パフォーマンス」※6における過去3、5年のシャープレシオ及びリターンで第1位となり、運用残高が2024年12月末で1,000億円を突破しました。また、機関投資家や事業法人向け運用も拡大しており、同社全体の運用残高が2025年3月時点で6,900億円まで成長しました。さらに、上場企業の資本効率改善と資本市場活性化を追求するファンド「マネックス・アクティビスト・ファンド」の運用パフォーマンスは投資先企業へのエンゲージメント効果もあり好調に推移しています。3iQは、傘下の子会社を通じて、暗号資産に関する各国の規制環境や機関投資家等の運用ニーズの変化を的確に捉え、迅速に商品を組成し、各種アライアンスを含め効率的に販売・提供するチャンネルを構築・拡大していきます。

ウェルスマネジメント事業として、マネックスPB株式会社は、富裕層のお客様向けに対面でのプライベートバンキングサービスを行っており、オンラインだけでは対応できないお客様のニーズに応えるべく、外国籍投資信託や私募投資信託、各種外貨建て債券など多数のPB専用の商品を取り揃え、質の高いサービスを提供してまいります。また資産運用のみならず、資産承継や法人の資本政策なども含めた様々なご相談についても、当社グループ各社と連携しております。

 

※1 当社グループは、2025年3月31日まで「日本」、「米国」、「クリプトアセット事業」、「投資事業」の4つを報告セグメントとしておりましたが、2025年4月1日より「証券事業」、「クリプトアセット事業」、「アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業」、「投資事業」の4つの報告セグメントに変更しましたので、変更後のセグメントに基づいて記載しています。

※2 Anti-Money Laundering/Countering the Financing of Terrorismの略で、マネーロンダリング対策/テロ資金供与対策のこと

※3 独立系フィナンシャルアドバイザー(Independent Financial Advisor)が、顧客の資産運用をサポートするビジネスのこと

※4 Proof of Stakeを採用しているブロックチェーンにおいて、一定の行為を行い、ブロックチェーンの安定稼働へ貢献する見返りとして報酬を獲得すること

※5 Initial Exchange Offering

※6 金融庁調べ。https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20230421.html

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。なお、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えているため、以下マネックス証券株式会社の内容も含めて記載しております。

 

(1)サステナビリティ全般に関する開示

1)企業理念に沿った当社グループの基本方針および取組み

当社は、「MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表わしています。常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインすると共に、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化すること」を目指すことを企業理念に掲げています。

当社は、当社グループの役員および従業員(名称の如何に関わらず当社グループの業務に従事する者のすべてを含む。以下、総称して「役職員」)が上記企業理念を実現するための行動指針を制定し、役職員一人ひとりが遵守すべき規律を定めています。そして、当社グループ役職員を対象とする社内報への掲載や社内研修の実施を通じ、企業理念を役職員に浸透させるための取組みを行っています。

 

2)ガバナンス体制

当社グループ独自の経営課題と社会課題の解決を目指すため、当社グループのステークホルダーにとっての重要度(縦軸)と当社グループの業績に与える影響についての重要度(横軸)を「マネックスグループのマテリアリティ・マトリックス」(以下、「マテリアリティ・マトリックス」)として特定しています。

マテリアリティ・マトリックスは、ステークホルダーの考えや財務的影響度および当社グループの企業理念への影響度を数値化することによって、当社グループがリスクと機会の観点で取組むべき各課題を解決するための優先順位を可視化したものです。こうして、当社グループでは、執行役との協議を重ねたうえでマテリアリティ・マトリックスを策定し、最終的には取締役会での報告、協議を経て決定しました。当社グループのウェブサイトにて上記の過程を踏まえたマテリアリティ・マトリックスを公開(※)しています。

マテリアリティ・マトリックスにて数値化、可視化された各課題は、縦横の3象限ずつ計9象限に分けてプロットしており、数値的に重要とされる課題は、本業のなかで取組むべき最重要項目として、各執行役が推進責任者となり、目標設定、進捗管理をして、半期ごとに進捗状況および今後の課題を取締役会に報告しています。

また、様々なステークホルダーとともに社会的課題の解決に取組み、新しい価値を創造することで持続可能な社会の実現に貢献することを「MONEX サステナビリティ・ステートメント」として制定しており、取締役全員がコミットしています。

(※)https://www.monexgroup.jp/jp/sustainability/mg_esg.html

 

マテリアリティ・マトリックスにおける最重要項目

執行役/担当

コーポレート・ガバナンス

代表執行役社長CEO

リスクマネジメント

リスク管理統括責任者

イノベーション

新規事業担当執行役

金融サービスへのアクセス向上(金融リテラシー向上含む)

代表執行役社長CEO

セキュリティ&プライバシー

情報セキュリティ担当執行役

人材採用・人材育成、労働慣行、

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン

人事担当執行役

コンプライアンス(AML&腐敗防止)

内部統制担当執行役

サステナブルファイナンス

証券事業セグメント担当執行役

人権尊重

人権担当執行役

 

当社グループは、サステナビリティ活動に取組むに当たり、社内の横断組織である「サステナビリティ・タスクフォース」が中心となり、上記のマテリアリティ・マトリックスにおける最重要項目での取組みや気候変動をはじめとする環境問題に関して、審議および検討を行っています。これらのサステナビリティに関する取組みについては、定期的に取締役会に報告され、承認を受けながら、グループ全体を巻き込んで、各種課題の取組みとサステナビリティに関する情報開示を推進しています。

 

3)リスク管理

当社は、事業目的を安定的に達成するためには、経営に影響を与えるリスクを常に許容範囲にとどまるように管理することが重要と考えています。こうした経営方針に基づき、「統合リスク管理規程」等に定めた17のリスクを適切に識別、分析、評価したうえで、セグメントを担当する執行役が各リスクについての具体的な管理方法、体制を決定しています。セグメントを担当する執行役は、リスクが発生あるいはリスクが発生する蓋然性が高いと判断した場合、CEOが定めるリスク管理統括責任者と各リスクを担当する執行役に対して報告する体制を構築しており、リスク管理統括責任者は、リスク管理体制に関する整備状況、運用状況を把握し、毎月取締役会に報告しています。

また、サステナビリティにおけるリスク管理は、マテリアリティ・マトリックスの特定プロセスの中で、当社グループの業績に与える影響としての重要度(横軸)を決定するうえで、各課題のリスクと機会に対する財務的影響度を数値化して評価しており、各執行役は、マテリアリティ・マトリックスにおける最重要項目として評価された課題の推進責任者として、リスクを管理しています。

 

4)戦略、指標および目標

短期および中長期にわたる当社グループの戦略に影響を与える指針として、上記のとおり、当社は企業理念への影響度を数値化して、マテリアリティ・マトリックスを特定しています。特定されたマテリアリティ・マトリックスのうち、最重要項目においては、推進責任者である各執行役が進捗を管理しながら、半期ごとに進捗状況および今後の課題を目標設定して取締役会に報告しています。

 

5)取組み実績

当社はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用する日本株式を運用対象とする6つのESG指数である「FTSE Blossom Japan Index」「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」「Morningstar Japan ex-REIT Gender Diversity Tilt Index」のすべての構成銘柄に選定されています。

 

(2)人的資本、多様性に関する開示

1)基本方針および取組み

当社グループは、人材を最も重要な経営資本と捉え、企業理念の実現を促す3つの行動指針を定めています。行動指針を体現するために求められる人材の能力や行動を明らかにし、人事評価基準にも適用することによって、役職員一人ひとりが自ら考え行動するインセンティブを創出し、個々人の生産性を高めることで組織として最大のパフォーマンスを発揮できる体制を整えています。

 

行動指針

「自主性をもって事業を創造する」

一人一人が、未来のあるべき姿と当社事業の成長のために自ら考え進んでいく。プロフェッショナル意識を持ち、必要な知識や技術を追求し、自らの価値を高めるよう努める。

 

「公正であることを尊重する」

多様な背景や考え方を尊重する。一人一人の能力が最大限発揮できる透明性のある公正なチームを構築することで、当社の企業価値の向上につなげるとともに、より良い社会の実現を目指す。

 

「企業理念の実現に貢献する」

私たちのステークホルダーの価値創造に貢献する。未来における人の活動において、生涯バランスシートを最良化するため、何が望まれているかを想像して、個人およびチームが短期的かつ長期的な目標に向かって邁進する。

 

金融・経済のボーダレス化に伴い、新しい商品やサービスの競争が複雑化している現状において、限られた労働力で最大限の成果を生み出す「効率性や生産性の改善・向上」のみならず、新しい未来やイノベーションを生む人材育成がこれまで以上に重要な課題となります。

当社グループは、人的資本および多様性の充実に取組むうえで、当社グループが求める人材が、その能力を最大限発揮できる就業環境を整えるため、2つの方針を策定しています。

 

・人材育成方針

「当社グループは、高い志と情熱をもって変革を試みる役職員のチャレンジ精神を鼓舞する環境を整えることにより、組織やチームの出力の質を高め新たな未来の価値を創造できる自律型人材を育成します。」

 

・社内環境整備方針

「当社グループは、多様な人材の多様な働き方を受入れ、組織やチームの活性化を実現する役職員一人ひとりの主体性ある取組みが公正に評価される環境を整えます。」

 

2)重点課題(指標)および目標

次の重点課題にフォーカスし、その改善に取り組んでいます。

 

(a)多様性の確保と公正な評価制度(報酬体系)

当社グループの人事制度においては、性別、年齢、国籍などによらず、企業価値への貢献度を最も重要な評価基準として人事評価をおこなっており、その結果にのみ基づいて人事処遇するため、多様性を損ねない組織体制を構築しています。

賃金格差(ペイギャップ)については、男女別の報酬体系を持たないため、個々人の貢献度や習熟度に対する評価結果や職種の違いに伴う格差は生じますが、性差による格差は生じません。

なお、多様性がどの程度の品質で確保されているかを測る指標として、評価と報酬の観点から「女性管理職比率」と「男女賃金格差」を計測しています。(2025年3月期の実績は下表のとおり)

項目

区分

男性

女性

評価

人数比率

全社員

72.8%

27.2%

女性の数を人口比に近づく程度まで増やしたいと考えています。

 

管理職者

76.4%

23.6%

貢献度に沿って適正に処遇すべきで、目標は定めません。

ペイギャップ

全社員

100%

87.3%

男女別の給与体系を持たないため、原則男女間格差は生じませんが、左記は報酬に関する職種間格差から生じたものです。

 

非管理職

100%

82.8%

 

管理職者

100%

104.5%

対象会社:マネックスグループ株式会社、コインチェック株式会社、TradeStationグループ各社

 

(b)人材の育成・開発

日本セグメントにおいては、Off-JTや自己学習により身につけた基礎能力や専門分野に必要となる知識・スキルを、OJTにおいて繰返し実践させることを通じて、時にはストレッチアサインメントを課すことで自身の経験としての成功体験を積み重ねる機会を提供しています。また社内育成担当による1対1のコミュニケーションの機会を設けるなど質の高い人材育成環境を整備しています。

 

米国セグメントは、社員教育プログラムを通じて、顧客特性の理解、自社が提供するサービスやシステム、金融業界に関する豊富な知識を社員に提供しています。 また、リーダーシップと能力開発にも力を入れており、1対1のコーチングや、誰でも受講できるリーダーシップと能力開発の研修コースを提供しています。

 

クリプトアセット事業セグメントにおいては、組織内での課題解決型アプローチに加え、技術共有会やエンジニア任意参加の横断型技術交流など社員による自発的な勉強会が開催されており、ポジティブラーニング制度を活用し費用を補助しています。

 

(c)働き方の柔軟性

当社グループは、役職員一人ひとりが最も高いアウトプットを出せる働き方環境を選択できるように様々な制度を設計しております。

時間や場所の制約を受けない働き方が可能になる制度設計(フレックスタイム制度や在宅勤務制度)や出産、育児および介護など多くの役職員が経験しうる重大なライフイベントに対する支援など、役職員間の相互理解と協力が得られる企業風土や文化に根差した体制を整えており、出産や育児および介護による休職者が100%復職できる環境を維持します。

項目

育児休暇を取得した人数

取得比率

男性育児休業取得率

13人

92.9

対象会社:マネックスグループ株式会社、コインチェック株式会社

 

(d)組織エンゲージメントサーベイ

日本拠点の当社およびマネックス証券株式会社、米国セグメントならびにクリプトアセット事業セグメントにおいて、組織エンゲージメントサーベイを定期的に実施しています。

2022年より日本拠点の当社およびマネックス証券株式会社の役職員を対象にした組織エンゲージメントサーベイを実施しています。人的資本に関する課題にフォーカスしたスコアについては、役職員全員に対して、所属する部門やグループの結果を周知しているため、部門やグループごとに改善策を討議し、日々試行錯誤に努めることができる体制を整えています。本サーベイの結果、多くの役職員が当社グループの企業理念に共感し、多様な価値観を尊重しながら、グループが直面する課題に対して当事者意識を持って取り組み、企業価値の向上に向けた活動に積極的に参加する企業文化や風土が醸成されていることが示されました。

米国セグメントおよびクリプトアセット事業セグメントにおいても、組織エンゲージメントサーベイを毎年実施しており、測定結果を分析し、適切な施策を導入することにより、役職員の定着率の向上と健全な職場環境の醸成に役立てています。

3【事業等のリスク】

1.当社に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクについては、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。また、マネックス証券株式会社は2024年1月より当社の持分法適用会社となりましたが、当社グループと企業理念やブランド等を共有しており、引き続き重要なグループ会社と考えているため、以下マネックス証券会社の内容も含めて記載しております。

 

(1) ビジネスリスクについて

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の成長領域への投資が進まない場合、投資の失敗により損失を計上することとなった場合、また投資後におけるグループ会社間のシナジーの発現が遅れた場合、利益成長が図れず、ROE15%を達成できない可能性があります。

証券事業セグメントにおいては、TradeStationは収益貢献度の高い大口顧客を獲得することができず、収益が拡大しない可能性があります。マネックス証券はパートナー企業との連携が進まず、新規口座数が頭打ちとなり、顧客基盤を拡大できない可能性があります。クリプトアセット事業セグメントにおいては、Coincheck GroupによるM&Aが進まず、収益源を多様化できない可能性があります。コインチェックは厳しい競争環境により新規口座の獲得シェアが落ち、顧客基盤を拡大できない可能性があります。アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業は、セグメント内外でのシナジーの発現が遅れ、運用残高を伸ばすことができない可能性があります。

 

(2) 信用リスクについて

a. 顧客取引に関わる信用リスク

  当社グループは、信用取引、先物・オプション取引、FX取引等により、顧客に対して信用供与をするため、株式市況、為替市況等の変動によっては顧客に対する信用リスクが顕在化する可能性があります。ただし、当社グループは、前金、保証金又は担保の差し入れを受けており、また、取引状況の日常的なモニタリングを通じたポジションの偏り等のリスクを把握し管理していることなどから、顧客に対する信用リスクの顕在化は限定的と判断しています。

  ただし、今後の市場環境等の急激な変動により、顧客立替金が生じる場合において、顧客からこれを十分回収できない可能性があり、その場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、コインチェックは暗号資産取引について顧客に対して信用供与を行っておらず、顧客に対する信用リスクはありません。

b. 取引金融機関等に関わる信用リスク

  当社グループは、FX取引及び暗号資産取引におけるカバー取引、貸株取引等により、取引金融機関及び暗号資産交換業者等に対する信用リスクに晒されています。当社グループの取引金融機関及び暗号資産交換業者等は、基本的には国内又は海外で認知された金融機関及び暗号資産交換業者であるため信用リスクは限定的です。また、取引金融機関に対する格付引下げ等の信用不安につながり得る情報を入手した場合には、関係部門間で連携をとりながらリスク回避のために必要な措置を講じておりますが、今後の市況等の急激な変動により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

  なお、信用リスクを含む金融リスクに関する定量的な分析は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.金融リスク管理」に記載しています。

 

(3) 情報セキュリティリスクについて

  当社グループは、主要セグメントである証券事業セグメントやクリプトアセット事業セグメントにおいて、取引の根幹をなす基幹システムを内製開発・自社保有しておりますが、システムの不具合、処理能力不足、通信回線の障害などによりシステムの機能不全に陥った場合には、事業運営に重大な支障が生じるおそれがあります。

  グローバルにビジネス展開をしている当グループでは、深刻化するサイバーセキュリティに対する脅威からお客様の情報や資産を守り、安心してお取引を行っていただくため、金融庁が制定している金融商品取引業者向けの総合的な監督指針や、米国国立標準技術研究所(NIST)800シリーズを参照し、包括的なサイバーセキュリティ対策の強化に努めています。また、マネックスグループ全体でサイバー攻撃により発生した事象への対応、および被害を軽減させるためのグローバルな体制を構築しており、当社に設置したマネックスグループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を中心に、主要グループ各社にもCSIRTを設置しています。マネックスグループCSIRTはグループ各社のCSIRTとの協力体制の下、ガバナンスの強化を行い、各社のCSIRTは各社の業務、情報資産、そしてシステムを守る機能を果たしており、組織運営、システム対応、人的対応、外部連携の以上4つの軸でサイバーセキュリティ対策を推進しています。

しかしながら、上記の対応において、何らかの不備、あるいは現段階では予測できない原因により、当社グループの適切な対応が遅れる、又は適切な対応がなされなかった場合や、外部からのサイバー攻撃等により個人情報や機密情報などが漏えいした場合には、当社グループの信用低下や被害者からの損害賠償請求等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、暗号資産交換業を営むコインチェックは、不正アクセスに対する備えとして、預り暗号資産の大半を安全性の高いコールドウォレット(※1)で保管しており、不正アクセスに対するリスクの低減を図っています。しかしながら、外部からの攻撃等により、ホットウォレット(※2)やコールドウォレットで保管している暗号資産を窃取され、不正送金が行われた場合には、当社グループの信用低下や被害者からの損害賠償請求等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

※1 インターネット等の外部とのネットワークとつながっていない遮断された環境に保管されているウォレット

※2 外部とのネットワークとつながっている環境に保管されているウォレット

 

(4) その他のリスク

  直近ではマネックス証券でフィッシング詐欺による不正取引が確認されており、巧妙化した手口やスマートフォンの普及により、顧客が詐欺に遭うリスクが高まっています。多要素認証を必須化する等の対策に努めていきます。

 

2. 当社のリスク管理状況

 

 (1)リスク管理体制

当社は、経営に影響を与えるリスクを許容できる一定の範囲内にとどめることが事業目的達成に資するという考え及びCOSO* ERMフレームワークに基づき、「統合リスク管理規程」等に定めたリスクを適切に識別、分析、評価したうえで、当社および当社グループ会社の各々のリスクについて、適切な管理体制を整備しています。以下の体制の通り、CEOが任命するリスク管理統括責任者がリスク管理体制に関する整備状況、運用状況を把握し、VaR管理も含めて定期的に取締役会に報告しています。

また、取締役会はそのリスク管理体制に関する整備状況等を確認すること、さらに、内部統制システムが有効に機能するよう体制の整備および運用状況についての内部監査を実施し、取締役会はリスク管理の有効性評価をしています。

*COSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission):トレッドウェイ委員会支援組織委員会)

 

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(2)リスク管理方法

1)グループVaRにおける定量的なリスク管理

 当社グループは、グループ全体で保有するリスク量が許容額に収まっているかを把握するため、毎月グループVaRを計算し、定量的に管理しています。市場リスクについては、一定の期間内(保有期間二週間)に一定の確率(信頼区間片側99%)で被りうる最大損失額、信用およびオペレーショナル・リスクについては、上記に準じて発生しうる最大損失額を算出しており、その合計値であるグループ全体のリスク量がリスク許容額(連結株主資本から固定的な資産を控除した額の1/2)と比べどういう状況にあるか取締役会に報告し、取締役が確認しています。

 

① 市場VaR

 市場リスクは、株式、金利、為替、暗号資産など、当社グループが保有する資産価格の変動により損失を被るリスクとして、月末時点の各資産残高にそれぞれの金融商品等における価格変動率を乗じてリスク額を計算しています。なお、当社グループにおける金融商品取引業及び暗号資産交換業においては、ブローカー業務における収益の計上がほとんどであり、トレーディング目的として自己で保有することで収益を計上する取引はごく一部であり、当社グループの金融商品取引業における市場リスクは限定的です。

 

 

② 信用VaR

 信用リスクは、各社の金融商品取引、暗号資産取引における取引先および顧客の貸倒れリスクとして、取引先リスクおよび顧客リスクを計算しています。取引先リスクについては、取引金融機関に対する預金残高、金融商品取引等で発生する保証金および証拠金や取引先への預け暗号資産残高の残高に対して、各金融機関に付与されている外部格付評価機関の格付け評価に紐づいたデフォルト率を乗じて、リスク額を計算しています。顧客リスクは、信用供与された金融商品取引等における過去の貸倒れ実績に基づくデフォルト率に、該当する取引の残高を乗じて計算したリスク額や、過去リターン実績に基づく一日のリターンの範囲をリスク額として算出しています。

 

③ オペレーションVaR

  オペレーションVaRは、暗号資産取引における顧客の預かり資産であるウォレット残高に、コールドウォレットおよびホットウォレットごとに設定した不正送金リスク率を乗じてサイバー攻撃によって生じうる損失をサイバーセキュリティリスクとしてリスク額として計算しています。サイバーセキュリティリスク以外のオペレーショナル・リスクとして、各セグメントの金融費用控除後営業収益に一定の率を乗じた額により、リスク額を算出しています。

 

2)グループRCMにおける定性的なリスク管理と主要な取組み

 グループVaRとしての定量的なリスク管理に加えて、網羅的に残存リスク(グループ全体の影響度×発生確率/統制)の算出、評価をしたリスクコントロールマトリックスを取締役会に報告して、当社グループのリスクの状況を定性的に管理しています。

 当社グループがオンライン金融商品取引業のサービスを営む上で、最も重要なリスクであるサイバーセキュリティリスクにおいては、マネックスグループCSIRTを中心に、各社で設置されたCSIRTとの協力体制のもと、グローバルな体制を構築しています。一方、暗号資産取引を営むコインチェックのウォレット管理においては、各社が不正送金に対して適切な管理体制を構築し、リスクの低減を図っています。

 

グループRCMにおけるリスクの定義および主要な取組み

リスク

カテゴリー1

リスク

カテゴリー2(*)

リスクの定義

主要な取組み

ビジネスリスク

戦略リスク

既存事業の競争力低下、新規投資の失敗、グループ内シナジー発現の遅れなどにより、投下資本を失い、将来の収益・利益が減少(逸失)するリスク

証券事業:TradeStationによるアクティブトレーダー向けの洗練されたツールの開発・提供、サードパーティーとのAPI連携。マネックス証券によるアセマネモデルの推進、NTTドコモやイオン銀行等とのアライアンス推進

クリプトアセット事業:Coincheck GroupによるM&A、コインチェックによる顧客基盤の拡大およびBtoBビジネスの拡大

アセットマネジメント・ウェルスマネジメント事業:成長領域への投資、アセマネ事業のポートフォリオ最適化、セグメント内外でのシナジー創出

経営管理リスク

グループ会社の経営状況を適時的確に把握できず、最適な事業ポートフォリオを構築できないリスク

取締役会等に月次でセグメントごとの業績やKPIを報告

ファイナンシャル・リスク

市場関連リスク

市場リスク要因の変動による保有資産(オフバランスシート資産を含む)の変動による損失のリスク

FX取引につきカバー取引に関する規定に基づき、外国為替ポジションを適切に制御(暗号資産交換取引につき、基本的に自己ポジションは保持していない)

VaRの計算対象として、重点的にリスク量を計算

信用リスク

取引先および顧客へのクレジットリスク(気候変動リスクに晒されている取引先のクレジットリスクを含む)

取引状況の日常的なモニタリングを通じてポジションの偏り等のリスクを把握

VaRの計算対象として、重点的にリスク量を計算(1.(2)で詳細を記載)

流動性リスク

資金繰り管理における不備等で資金確保が困難になるリスク

直接金融・間接金融の活用等資金調達手段を多様化

オペレーショナル・リスク

情報セキュリティリスク

情報資産の漏洩、毀損等により機密性、完全性等が損なわれることで損失を被るリスク

情報セキュリティ委員会の実施や定期的モニタリング、従業員へのセキュリティ教育の継続的実施

サイバーセキュリティリスク

サイバー攻撃等により、重要情報漏洩、システムの不正使用、又はサービス停止をすることで損失を被るリスク

グローバルな体制を構築し、組織運営、システム対応、人的対応、外部連携の軸で対策を推進。社内でのセキュリティ教育プログラムを強化。

暗号資産取引におけるウォレット残高をVaRの計算対象として、重点的にリスク量を計算(1.(3)で詳細を記載)

システム構築リスク

システムダウンや誤作動およびシステムの不正使用等により顧客ならびに当社が損失を被るリスク

第三者による定期的脆弱性診断の実施や脆弱性検知時における即時対応

事務リスク

従業員等のヒューマンエラーおよび清算機構やシステムベンダーなどの第三者に頼る事務リスク

新規プロジェクトや商品サービス導入時の主要事務リスクのレビューによる形式知化等

内部不正リスク

役職員等の不正により損失を被るリスク。各リスクの一類型としても管理されるが、主に内部不正の発生防止の観点から別途管理するもの

役職員への教育や内部通報制度の周知徹底により、透明性の高い業務運営を推進

マネー・ロンダリング及びテロ資金供与リスク

マネー・ロンダリング、及びテロ資金供与に利用されそうになるリスク

各グループ会社における対策の徹底及びグローバルな報告体制構築を通じたマネー・ロンダリング対策に係る課題の把握と対応

リーガルリスク

業務遂行の過程において、法令諸規則等違反、各種取引上の法律的な不確実性、解釈の相違および不完全な事実認識により損失を被るリスク

コンプライアンス責任者からの定期的な法令遵守項目の周知徹底や、契約締結における確認フローのシステム化

レピュテーションリリスク

マスコミ報道、風評・風説等により会社の評判が悪化することで損失を被るリスク(気候変動を含む環境問題への対応が遅れることにより、当社の評判が悪化し、顧客取引の減少等により損失を被るリスクを含む)

マスコミ関係者やPR支援会社との連携強化による、風評被害発生リスクの最小化努力

気候変動対応に関する取組みを積極的に情報開示

災害リスク

大災害やパンデミック等によるビジネス持続性リスク(自然災害による取引先の事業停滞に起因する資産の毀損リスクを含む)

当社グループの主要な拠点において災害、テロ攻撃等の発生に備えた事業継続計画の策定や、有事の対応策の事前検討

人的リスク

人材のポートフォリオの偏り、人事評価の不公平・不公正や差別的行為等によるモラルの低下、労働災害やメンタルヘルス等に起因する人手不足により、事業目的の達成を制限されるリスク

人材の多様性の確保と公正な評価制度(報酬体系)

マネジメントやハラスメントをテーマにした各種研修や1対1のコミュニケーションやコーチング

時間や場所の制約を受けない働き方を可能にする様々な人事制度

組織エンゲージメントサーベイ

内部通報制度の周知徹底

情報開示リスク

開示する情報の誤りや不備、開示の遅延等により、企業の評判を損ない、投資家からの信頼を失うリスク

適切な内部統制の構築・運用に加え、公認会計士資格を有する社外取締役と会計監査人の連携等による、不正な会計処理を未然に防止する体制構築

情報開示委員会による適時開示等プレスリリースの事前チェック

その他リスク

その他リスク

カントリーリスク、政治リスク

グローバル拠点間の経営陣が出席する会議における、グローバルな経営環境等の情報共有

(*)上記のリスクカテゴリー2に対応する残存リスク(グループ全体の影響度×発生確率/統制)を算出

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

 ① 経営成績の状況

  当社グループ(当社及び連結子会社)は、金融商品取引業、暗号資産交換業、有価証券の投資事業を主要な事業として、「日本」・「米国」・「クリプトアセット事業」・「投資事業」の4つの報告セグメントとしています。

ⅰ)マネックス証券株式会社の事業について

 当社は2023年10月4日付で、当社、マネックス証券株式会社及び株式会社NTTドコモの三社間で資本業務提携契約(以下「本資本業務提携契約」といいます。)を締結しました。本資本業務提携契約に基づき、2024年1月4日付で当社はマネックス証券株式会社の単独株式移転により設立された中間持株会社の株式を株式会社NTTドコモに一部譲渡し、中間持株会社は株式会社NTTドコモを割当先とする第三者割当増資を完了しました。これにより、中間持株会社に対する議決権所有割合は、当社が約51%、株式会社NTTドコモが約49%となりますが、実質支配力基準に基づきマネックス証券株式会社と中間持株会社は株式会社NTTドコモの連結子会社となり、当社においては持分法適用会社となりました。

 これに伴い、前連結会計年度において、マネックス証券株式会社の事業に関わる損益を非継続事業に分類しています。

ⅱ)Monex Boom Securities (H.K.) Limited 他2社の事業について

 当社は2024年6月21日開催の取締役会においてMonex Boom Securities (H.K.) Limited、Monex Solutions Limited及びBaby Boom Limited(以下「当該3社」といいます。)の全ての株式をIgnition Holdings Limitedに譲渡することを決議しました。また、同日付で当該3社の株式を保有する当社の子会社であるMonex International Limited及びIgnition Holdings Limitedの2社間で、株式譲渡契約を締結しました。なお、2024年10月4日付で本株式譲渡を完了しております。

 これに伴い、当連結会計年度において、当該3社の事業に関わる損益を非継続事業に分類するとともに、前連結会計年度についても非継続事業として再表示しています。また、当社グループは、従来「アジア・パシフィック」を報告セグメントとしていましたが、「アジア・パシフィック」における主要子会社であった当該3社を非継続事業に分類したことに伴い、「アジア・パシフィック」を報告セグメントから除外しています。なお、前連結会計年度についても、この変更を反映した報告セグメントに再表示しています。

 

  なお、報告セグメントの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6セグメント情報」をご参照下さい。

 

 (連結)                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減

増減率

継続事業

 

 

 

 

受入手数料

26,676

32,151

5,475

20.5%増

トレーディング損益

8,380

11,854

3,474

41.5%増

金融収益

25,782

25,864

82

0.3%増

売上収益

253

27

△225

89.1%減

その他の営業収益

4,635

3,917

△718

15.5%減

営業収益

65,726

73,814

8,088

12.3%増

その他の収益

16,812

2,265

△14,547

86.5%減

持分法による投資利益

473

1,943

1,470

311.0%増

収益合計

83,855

79,570

△4,285

5.1%減

金融費用

7,915

6,819

△1,096

13.8%減

販売費及び一般管理費

49,256

61,325

12,070

24.5%増

その他の費用

1,151

15,485

14,333

費用合計

58,531

84,196

25,665

43.8%増

税引前当期利益又は損失

25,324

△4,626

△29,950

法人所得税費用

8,082

3,385

△4,697

58.1%減

継続事業からの当期利益又は損失(A)

17,242

△8,011

△25,253

非継続事業

 

 

 

 

非継続事業からの当期利益(B)

14,233

813

△13,419

94.3%減

当期利益又は損失(A)+(B)

31,475

△7,197

△38,672

親会社の所有者に帰属する当期利益又は損失

31,293

△5,067

△36,360

・継続事業

  税引前当期損失は4,626百万円(前連結会計年度は25,324百万円の税引前当期利益)となり、継続事業からの当期損失は8,011百万円(前連結会計年度は17,242百万円の継続事業からの当期利益)となりました。

・営業収益

  日本セグメント、米国セグメント及びクリプトアセット事業セグメントでその他の受入手数料が増加したことなどにより、受入手数料が32,151百万円(前連結会計年度比20.5%増)となりました。また、クリプトアセット事業セグメントで暗号資産取引が増加したことにより、トレーディング損益が11,854百万円(同41.5%増)となりました。さらに、投資事業セグメントで保有銘柄の評価損益及び売却損益を計上して減少したものの、米国セグメントで受取利息が増加したことなどにより、金融収益が25,864百万円(同0.3%増)となりました。その結果、営業収益は73,814百万円(同12.3%増)となりました。

・収益合計

  持分法による投資利益に、主に日本セグメントにおけるドコモマネックスホールディングス株式会社(マネックス証券株式会社の完全親会社)にかかるものが含まれています。なお、前連結会計年度においては、第4四半期の3か月分の利益のみが含まれています。

・費用合計

  販売費及び一般管理費は、主にクリプトアセット事業セグメントにおいて、Coincheck Group N.V.のDe-SPAC上場にかかる一過性の費用4,531百万円を含む専門家報酬などが増加した結果、61,325百万円(同24.5%増)となりました。その他の費用は、Coincheck Group N.V.のDe-SPAC上場にかかる一過性の株式報酬費用(上場関連費用)13,714百万円(後述)を計上した結果、15,485百万円(前連結会計年度は1,151百万円)となり、費用合計は84,196百万円(同43.8%増)となりました。

・非継続事業

  前連結会計年度において、第3四半期までの9か月分のマネックス証券株式会社にかかる利益及びドコモマネックスホールディングス株式会社株式の売却益が非継続事業からの当期利益として表示されています。また、前連結会計年度の年度通期12か月分及び当連結会計年度の第2四半期までの6か月分のMonex Boom Securities (H.K.) Limited他2社にかかる損益が非継続事業からの当期利益として表示されています。

 

各セグメントの詳細は「セグメント別の状況」でご説明します。

 

 セグメント別の状況は以下のとおりです。

 (日本)                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

2,771

5,730

2,959

106.8%増

 金融収益

2,352

834

△1,518

64.5%減

 その他の営業収益

4,506

3,572

△933

20.7%減

 営業収益

9,629

10,136

507

5.3%増

 金融費用

2,392

823

△1,570

65.6%減

 販売費及び一般管理費

7,505

10,457

2,952

39.3%増

 その他の収益費用(純額)

16,524

59

△16,464

99.6%減

 持分法による投資利益又は損失(△)

501

2,003

1,502

299.8%増

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

16,756

919

△15,837

94.5%減

 

 日本セグメントは、主にマネックスグループ株式会社、マネックス・アセットマネジメント株式会社、3iQ Digital Holdings Inc.及びドコモマネックスホールディングス株式会社で構成されています。

 なお、マネックス証券株式会社の事業に関わる損益について、前連結会計年度においては第3四半期までの9か月分の利益が非継続事業として再表示されているため日本セグメントには含まれていませんが、前連結会計年度における2024年1月から3か月分の利益及び当連結会計年度における年度通期12か月分の利益がマネックスグループ株式会社の持分法適用会社として、ドコモマネックスホールディングス株式会社にかかる持分法による投資利益を通じて日本セグメントに表示されています。

 当連結会計年度の日本経済は、製造業・非製造業ともに景況感が概ね横ばいで推移しました。製造業では、自動車や機械分野に持ち直しの動きが見られた一方、鉄鋼や素材分野では悪化が続くなど、業種間でばらつきが見られました。非製造業では、これまで国内景気をけん引していたインバウンド需要が一服したものの、サービス関連が底堅く推移し、全体として景気を下支えしました。物価はコメ価格を中心に食料品が上昇し、コア指標は前年同月比で3%台と高水準での推移が続きました。日本銀行は物価上振れを確認しつつも、全体として想定内との評価のもと、1月に政策金利を0.25%引き上げ、0.5%としました。日米金利差の縮小も重なり、当連結会計年度末時点での為替は1ドル149円と円高が進行しました。株式市場は、前連結会計年度末に日経平均株価が4万円を超えていたものの、円高や長期金利の上昇、米政権の政策運営を巡る不透明感などを背景に軟調に推移し、当連結会計年度末時点には35,617円となりました。

 こうした中、3iQ Digital Holdings Inc.の連結子会社化の影響などにより投資信託関連収益等が増加したことにより、受入手数料は5,730百万円(同106.8%増)となりました。また、金融収益は、為替変動の影響を受け834百万円(同64.5%減)となりました。その他の営業収益は3,572百万円(同20.7%減)となりました。その結果、営業収益は10,136百万円(同5.3%増)となりました。

 金融費用は823百万円(同65.6%減)となり、金融収支は12百万円(前連結会計年度は△40百万円)となりました。

 販売費及び一般管理費は、3iQ Digital Holdings Inc.の連結子会社化及び業績連動賞与による人件費の増加などの結果、10,457百万円(同39.3%増)となりました。

 その他の収益費用(純額)は59百万円の利益(同99.6%減)となりました。なお、前連結会計年度はドコモマネックスホールディングス株式会社の株式についての公正価値評価益15,767百万円が含まれています。

 持分法による投資利益は、ドコモマネックスホールディングス株式会社(マネックス証券株式会社の完全親会社)にかかるものです。なお、前連結会計年度においては、第4四半期の3か月分の利益が表示されています。

 以上の結果、セグメント利益(税引前利益)は919百万円(同94.5%減)となりました。

 

 

 (米国)                                     (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

23,176

24,921

1,745

7.5%増

 金融収益

23,978

26,265

2,287

9.5%増

 売上収益

368

27

△340

92.5%減

 その他の営業収益

660

689

29

4.4%増

 営業収益

48,182

51,902

3,721

7.7%増

 金融費用

6,241

6,762

522

8.4%増

 売上原価

321

24

△297

92.5%減

 販売費及び一般管理費

35,352

36,501

1,150

3.3%増

 その他の収益費用(純額)

△595

85

680

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

5,674

8,700

3,026

53.3%増

 

 米国セグメントは、主にTradeStation Securities, Inc.で構成されています。米国セグメントにおいてはアクティブトレーダー層を主要な顧客層としており、当該顧客層の取引量増加が収益に貢献する傾向にあります。また、顧客の預り金を運用することで金融収益を獲得しています。

 当連結会計年度の米国経済は、堅調な個人消費を背景に底堅く推移しました。一方、当連結会計年度末にかけては天候要因などにより個人消費や雇用に鈍化が見られたほか、トランプ新政権の関税政策を巡る不確実性が高まる中で、企業や個人の景況感を示すソフトデータには悪化の兆しが現れ始めました。FRBは、労働市場の悪化に先手を打つかたちで、9月以降3会合連続で利下げを実施しましたが、その後は経済動向や新政権の政策を見極める姿勢に転じ、政策金利を据え置いています。こうした中、株式市場は2024年末にかけて、堅調な経済や新政権への期待を背景に上昇基調となり、史上最高値を更新する場面も見られましたが、年明け以降は中国テクノロジー企業の台頭や関税政策への警戒感から調整局面に入り、NYダウ平均は当連結会計年度末時点で42,001ドルとなりました。

 なお、米ドルの対円レート(期中平均)は前連結会計年度比で5.45%円安となったことから、米国セグメントの業績はその影響を受けています。

 このような環境の下、米国セグメントにおいては、当連結会計年度のDARTs(Daily Average Revenue Tradesの略称で、1営業日当たりの収益を伴う約定もしくは取引の件数)は227,996件(前連結会計年度比6.2%増)となりました。株式・先物取引からの手数料は増加した一方で暗号資産取引サービスの廃止などにより、委託手数料は米ドルベースで0.9%減少したものの、株式の取引量の増加などにより、その他の受入手数料は米ドルベースで6.7%増加しました。その結果、受入手数料は米ドルベースでは2.0%増加し、円換算後では24,921百万円(同7.5%増)となりました。また、金融収益は、顧客預り金からの金利収益は減少したものの、信用取引の受取利息が増加したことにより米ドルベースでは3.9%増加し、円換算後では26,265百万円(同9.5%増)となりました。以上のことから、営業収益は米ドルベースで2.2%増加し、円換算後で51,902百万円(同7.7%増)となり、過去最高を記録しました。

 金融費用は6,762百万円(同8.4%増)となり、金融収支は米ドルベースで4.3%の増加、円換算後では19,502百万円(同10.0%増)となりました。

 販売費及び一般管理費は、人件費が増加したものの、情報料等が減少した結果、米ドルベースで2.1%減少し、円換算後では36,501百万円(同3.3%増)となりました。

 その他の収益費用(純額)は85百万円の利益(前連結会計年度は595百万円の損失)となりました。

 以上の結果、セグメント利益(税引前利益)は、8,700百万円(同53.3%増)となり、当社グループ入り後過去最高を記録しました。

 

 

 (クリプトアセット事業)                              (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減

増減率

 受入手数料

729

1,500

771

105.8%増

 トレーディング損益

8,380

11,854

3,474

41.5%増

 金融収益

63

63

 売上収益

248

△248

 その他の営業収益

61

61

 営業収益

9,356

13,478

4,122

44.1%増

 金融費用

4

30

26

579.7%増

 売上原価

121

△121

 販売費及び一般管理費

6,758

14,645

7,886

116.7%増

 その他の収益費用(純額)

365

△12,350

△12,715

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

2,838

△13,547

△16,385

 

 クリプトアセット事業セグメントは、主にCoincheck Group N.V.及びコインチェック株式会社で構成されています。

 なお、コインチェック株式会社の完全親会社となった当社連結子会社Coincheck Group N.V.は、2024年12月11日(米国東部時間)にDe-SPAC取引により米国NASDAQに上場しました。

 当連結会計年度の暗号資産市場は、トランプ米大統領の発言や政策スタンスに影響を受けつつも、前連結会計年度末比で高値圏を維持して推移しました。政府機関等によるビットコイン売却への懸念が広がり、価格が軟調となる局面も見られましたが、米国における利下げ期待が相場を下支えしました。その後、米国大統領選挙で暗号資産推進を掲げる共和党が勝利したことを受け、市場では「トランプトレード」が加速しました。ビットコインは、現物ETFへの資金流入や企業による積極的な購入が追い風となり、一時は1,500万円を突破して史上最高値を更新しました。しかし、トランプ米大統領の就任後は、暗号資産関連の大統領令が市場予想より無難な内容にとどまったことに加え、強硬的な対外関税政策の発表によってリスクオフムードが広がりました。これを受けて、当連結会計年度末にかけてはビットコインを含むリスク資産全般で利益確定売りが強まりました。

 このような環境の下、コインチェック株式会社においては、当連結会計年度における取引所暗号資産売買代金は5兆2,460億円となり、前連結会計年度比で76%増加しました。販売所暗号資産売買代金は3,375億円となり、前連結会計年度比で44%増加しました。また、IEO関連の収益を計上したことにより、受入手数料が1,500百万円(前連結会計年度105.8%増)となり、ビットコイン及びアルトコインの販売所取引が増加したことによりトレーディング損益は11,854百万円(同41.5%増)となりました。さらに、ステーキング収益等を計上したことにより、その他の営業収益は61百万円となりました。以上のことから、営業収益は13,478百万円(同44.1%増)となりました。

 販売費及び一般管理費は、Coincheck Group N.V.のDe-SPAC上場にかかる一過性の費用を含む専門家報酬の増加及び市況に応じた広告宣伝費の増加等により、14,645百万円(同116.7%増)となりました。

 その他の収益費用(純額)は、Coincheck Group N.V.のDe-SPAC上場にあたりCoincheck Group N.V.が合併によりその地位を引き継いだThunder Bridge Capital Partners IV, Inc.の既存株主に対し発行した株式と受け入れた純資産の差額として一過性の株式報酬費用(上場関連費用)13,714百万円を計上したことにより、12,350百万円の損失となりました。

 以上の結果、セグメント損失(税引前損失)は13,547百万円(前連結会計年度は2,838百万円のセグメント利益)となりました。

 

 ※当社の連結財務諸表において、子会社であるコインチェック株式会社の暗号資産販売所の収益は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」だけでなく、IFRS第9号「金融資産の分類と測定」も適用されると判断し、暗号資産の販売価額と購入価額の純額を収益として計上(以下「純額表示」という。)しています。しかし、当社の子会社であるCoincheck Group N.V.社の米国のナスダック上場申請プロセスにおいて、登録申請書類の一部であるコインチェック株式会社の財務諸表における同取引にはIFRS第15号のみが適用され、結果として両者を総額で表示(以下「総額表示」という。)する必要があるとの結論に達しております。一方、当社の連結財務諸表においては、報告主体が異なることに加え、以下の理由により引き続き純額表示を継続する方針です。当社は、純額表示はIFRSに準拠していると考えており、また、これまで純額表示で連結財務諸表を提出してきたことを踏まえると、総額表示に変更することは、却って日本の資本市場参加者を混乱させる恐れがあると考えています。従って、日本の資本市場参加者の意思決定に資する情報の提供及び有価証券報告書又は半期報告書の提出という目的においては、継続して純額表示を行うことにより、より有用な情報を提供することができると考えています。現行の会計方針は日本の会計基準(実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」)と整合的であり、日本において連結子会社で暗号資産交換業を営んでいる他のIFRS適用企業においても純額表示が採用されています。このため、当社は、日本の資本市場においては、純額表示を継続することが同業他社との財務情報の比較可能性を確保することにつながり、日本の資本市場における財務諸表利用者にとってより有用であると考えております。なお、 仮に当社が、2024年3月期における連結財務諸表においてコインチェック株式会社の暗号資産販売所の収益と費用を総額で表示した場合、関連する収益は224,049百万円、費用は221,543百万円となり、総額表示によった場合、純額表示と比べて連結ベースで収益が214,666 百万円、費用が214,666百万円多く計上されることになります。但し、収益と費用を純額表示と総額表示のどちらによって表示した場合であっても、2024年3月期および2025年3月期の連結ベースの当期利益および期末時点の資本合計の金額に影響はありません。

 

 

 

 (投資事業)                                    (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減

増減率

 金融収益

287

△560

△847

 その他の営業収益

51

51

 営業収益

287

△509

△796

 金融費用

183

△183

 販売費及び一般管理費

108

128

20

18.6%増

 その他の収益費用(純額)

45

△0

△45

 持分法による投資利益又は損失(△)

△28

△60

△32

 セグメント利益又は損失(△)

(税引前利益又は損失(△))

13

△697

△710

 

 投資事業セグメントは、主にマネックスベンチャーズ株式会社、MV1号投資事業有限責任組合、MV2号投資事業有限責任組合、東京ウェルネスインパクト投資事業有限責任組合で構成されています。

 当連結会計年度は、保有する複数の銘柄の評価損益及び売却損益を計上したことにより、金融収益は△560百万円(前連結会計年度は287百万円)となり、営業収益は△509百万円(前連結会計年度は287百万円)となりました。

 販売費及び一般管理費は、128百万円(同18.6%増)となりました。

 以上の結果、セグメント損失(税引前損失)は697百万円(前連結会計年度は13百万円のセグメント利益)となりました。

 

 

 ② 財政状態の状況

 (連結)                                 (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月末)

当連結会計年度

(2025年3月末)

増減

 資産合計

761,642

709,641

△52,001

 負債合計

628,519

583,387

△45,133

 資本合計

133,123

126,254

△6,869

 親会社の所有者に帰属する持分

131,712

123,984

△7,728

 

 当連結会計年度において、Monex Boom Securities (H.K.) Limited他2社を売却したことに伴い、Monex Boom Securities (H.K.) Limited他2社の事業に関わる資産及び負債が減少しました。

 資産合計は、その他の金融資産などが増加したものの、現金及び現金同等物、金銭の信託などが減少した結果、709,641百万円(前連結会計年度末比52,001百万円減)となりました。また、負債合計は、受入保証金などが増加した一方、預り金、社債及び借入金などが減少した結果、583,387百万円(同45,133百万円減)となりました。

 資本合計は、配当金の支払、自己株式の取得などにより減少した結果、126,254百万円(同6,869百万円減)となりました。

 なお、Coincheck Group N.V.のNASDAQ上場にあたりCoincheck Group N.V.が合併によりその地位を引き継いだThunder Bridge Capital Partners IV, Inc.の既存株主に対し発行した株式と受け入れた純資産の差額をIFRS第2号に基づき株式報酬費用(上場関連費用)として一時的費用13,714百万円を計上しております。連結財政状態計算書(貸借対照表)においては支配の喪失とならない子会社に対する所有持分の変動として資本の中で勘定振替が生じ、現預金が減少するものではなく、連結上の資本も毀損しません。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

 (連結)                                 (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月期)

当連結会計年度

(2025年3月期)

増減

 営業活動によるキャッシュ・フロー

8,055

13,300

5,245

 投資活動によるキャッシュ・フロー

△86,353

△32,178

54,174

 財務活動によるキャッシュ・フロー

△5,106

△25,191

△20,085

 現金及び現金同等物の期末残高

97,935

53,467

△44,468

 

 当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による収入13,300百万円(前連結会計年度は8,055百万円の収入)、投資活動による支出32,178百万円(同86,353百万円の支出)及び財務活動による支出25,191百万円(同5,106百万円の支出)でした。この結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物は53,467百万円(前連結会計年度末比44,468百万円減)となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動により取得した資金は、13,300百万円となりました。

 法人所得税の支払により10,737百万円、短期差入保証金の増減により10,591百万円の資金を支出する一方、金銭の信託の増減により25,530百万円、利息及び配当金の受取額により28,605百万円の資金を取得しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動により使用した資金は、32,178百万円となりました。

 定期預金の払戻による収入により5,000百万円の資金を取得する一方、子会社の売却による支出により22,935百万円、子会社の取得による支出により7,350百万円の資金を使用しました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動により使用した資金は、25,191百万円となりました。

 社債の発行による収入により3,496百万円の資金を取得する一方、社債の償還による支出により7,981百万円、配当金の支払額により7,727百万円、短期借入債務の収支により7,469百万円の資金を使用しました。

 

 ④ 生産、受注及び販売の実績

  金融商品取引業を営む会社を中心とする企業集団であるため、「生産、受注及び販売の実績」は該当する情報がないので記載していません。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

  2024年1月よりスタートした株式会社NTTドコモ及びマネックス証券株式会社との資本業務提携に基づく経営施策が順調に推移すると共に、Coincheck GroupがNASDAQ上場を果たし、当社グループのグローバル化の布石を打ちました。さらに、配当政策の強化や自社株買い、そして株主優待の拡充等の株主還元にも取り組みました。

  業績面では、日米での証券事業の収益は安定して推移しています。Tradestationはアクティブトレーダー層にフォーカスして顧客獲得を目指す戦略のもと、顧客の取引が堅調に推移する中、顧客預り金からの金利収益も増加し、営業収益は過去最高を記録、当期利益も当社グループ入り後最高となりました。クリプトアセット事業セグメントも、Coincheck GroupのDe-SPAC上場に係る一過性費用として株式報酬費用(上場維持費用)13,714百万円及び専門家報酬4,531百万円を計上したものの、暗号資産市場が活況であったことに加え、IEO(Initial Exchange Offering)実施に伴う収益を計上した結果、前期比で44%の増収となるなど、グループとしての収益力は確実に上がってきました。今後カナダの暗号資産運用会社である3iQや米国の資産運用会社であるWestfieildも収益の安定性を高め、収益源の多様化に寄与すると期待しています。

 

 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 (キャッシュ・フローの状況)

  当社グループの事業活動における主な資金使途としては、有価証券担保貸付金に関するものの他、M&A及び事業投資等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、社債による直接金融、シンジケートローン及び銀行借入等による間接金融により資金を調達しております。

  なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 

 (資本の財源)

  当連結会計年度末の資本合計は1,263億円であり、固定的な資産993億円を上回っています。差額については子会社の自己資本維持に関する規制対応の他、以下の原資とする予定です。

  1.将来の事業投資に備える内部留保

  2.株主還元(配当金及び自己株式取得)

 

 (重要な資本的支出の予定)

  重要な資本的支出の予定は、証券子会社における設備投資であり、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

 

 (資金の流動性)

  当社グループでは、経営に必要な資金を大手金融機関をはじめとする複数の金融機関からの借入、インターバンク市場からの調達、また資本市場における社債の発行により調達し、一時的な余資は流動性の高い短期金融資産で運用しています。当社グループでは資金繰り状況及び見通しの把握を随時行っており、かつ、複数の金融機関との間で当座借越契約、コミットメントライン契約等を締結していることで、十分な流動性を確保しています。なお、債務の期日別の残高については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.金融リスク管理」に記載のとおりです。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループは、グローバルなオンライン金融機関グループとして事業展開を推進する中で、財務情報の国際的な比較可能性を向上させるため、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。

  当社グループの連結財務諸表を作成するにあたって、のれんの減損テストにおける使用価値の算定等重要な判断や見積りを行っていますが、これらの見積りは実際の結果と異なる場合があります。当社が採用した重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」、同「22.無形資産」に記載のとおりです。

 

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。