第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は、経営理念として掲げている「金融サービスを通じて、社会・経済の発展に貢献する」、「金融サービスにおける革新者を目指す」、「健全な事業活動を通じて、関わる全ての人を大切にする」の三つの基本理念を踏まえ、各事業の企業価値を向上させ、株主利益を最大化させていくことを会社経営の基本的な方針としております。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、1999年の創業以来、個人投資家向けに最先端の金融デリバティブ取引サービスを提供するリーディング・カンパニーとなることを目指して成長を遂げてきた実績と、高いノウハウによる安定性と豊富な実績を誇るシステム開発能力で、多くの方にご支持いただけるサービスを構築してまいりました。スピード感あるサービス提供及びシステムの開発体制を原動力とし、新たな金融サービスの創出、協業先との連携をさらに強固に推し進め、更なる価値を創造してまいります。

金融商品取引事業においては、高金利通貨にフォーカスした競争戦略を起点として、顧客に訴求できる特徴を打ち出したサービスの強化及び顧客データを徹底的に分析し費用対効果の追求とターゲット層を明確にしたマーケティング戦略を実行してまいりました。また、金融商品取引事業の収益性を左右するカバーディーリング手法の精度向上にも注力し、効率的かつ収益性を高める手法の研究を重ね、着実に実績を積み上げてまいりました。さらに、『みんなのFX』と商品趣向を変えた『LIGHT FX』を立ち上げ顧客層の拡大、顧客資産の増加を達成し、更なる収益力の強化を図ることにも成功しました。

グループ体制としては、2015年12月に実施した株式交換により完全子会社となったシステム事業会社がシステム開発の中核となり、自社システムを稼働させ、高い安定性と企画開発スピードの早期化、システム関連の低コスト化を実現したことで競争力を高めてまいりました。

グループの中核事業である金融商品取引事業とシステム開発・システムコンサルティング事業が連携し、早期に問題抽出・分析・改善が行える体制を構築することにより、事業シナジーを生み出しています。

以上のような取り組みによる成果が結実したことにより、金融商品取引事業の顧客預り資産はFX業界の中でも著しい増加を達成し、連結業績の飛躍的な改善によってFX事業の根幹となる自己資本の充実と資金確保を継続的に図ることができました。

今後当社グループが経営の健全性を保ちつつ成長を加速させるための経営戦略としては、これまで獲得した強みを武器に、さらに預り資産が業界トップ3へ到達するための各分野の戦略を遂行しつつ、事業リスクを過小評価せず、慎重な経営判断を行うことをベースに、強い経営体質の確立を目標としてまいります。

具体的には、限られた経営資源を金融デリバティブの事業とシステム事業の拡大に集中し、本業の収益強化を目指します。スピード感をもって提供する商品の多様化を図り収益力を強化すること、システム事業会社が高付加価値と競争力あるシステムを開発し続けるための開発体制を拡充することに重点的に取り組むとともに、体制面では経営監視が適切に機能するガバナンスの強化にも力を入れてまいります。

なお、各分野における具体的な取り組みについては、「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、収益の源泉であり、「お客様からの信頼の証」である顧客口座数、預り資産に加え、グループ全体の事業活動の成果を示す連結営業利益率を重要視しております。中でも預り資産におきまして、2027年3月期末までに約1,450億円まで積み上げ、業界ポジションにおいてFX専業の中でトップ3に位置付けることを中期的目標としております。

また、企業価値の向上を目指し、資本を有効活用することが重要であるという認識のもと、自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標として位置づけております。ROEは25%台の維持を目標としております。

 

 

(4)経営環境

当社グループの事業領域である金融サービス分野では、AIやビッグデータ解析等の情報技術の進歩により投資対象となる金融商品や投資手法の多様化・高度化が進んでおります。我が国経済は、2022年3月より米国金利の上昇により日米に金利差が生じたことによる歴史的な円安局面を迎えております。そうした中、FX取引業界においては、個人投資家を中心に資金の流入は継続し取引量も拡大していますが、競合他社とのスプレッド競争及びスワップポイント競争の激化により収益は圧迫され、顧客獲得のための広告宣伝費等の支出増加が避けられない厳しい状況が続いています。また、相場変動でFX取引高が膨らんでも、上位数社に取引シェアが集中する傾向が顕著となっており、すべての店頭FX業者に対して決済リスクの管理強化のため、事業遂行上の財務の健全性を継続的に向上させることを求める規則(ストレステスト)を遵守していくには、中位・下位に位置する店頭FX業者にとって、とりわけ厳しい経営環境が続いており、FX業界での生き残りを図るため競合他社同士の合併・業務提携が行われる等、競争は一段と激化しています。

このような経営環境において、業界中位に位置するトレイダーズ証券は、近年、顧客預り資産の増加額及び増加率において順調な伸びを記録しており、安定した利益を確保できるようになってまいりました。今後は、自社グループ内にシステム事業会社を有する強みを活かし、早期に業界トップ3へ到達できるよう、より一層の努力を重ねてまいります。

当社グループにおいては、「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」への取り組みを着実に推進し、今後、外部環境に大きな変化があった場合にも対応できる経営体制を整備し、持続的成長と企業価値の向上を図ってまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、下記の課題について重点的に取り組み、預り資産の増加による収益力の強化並びに経営基盤の強化に努めるとともに、法令を遵守する内部管理体制を充実させることで、企業体質の健全性をより一層高めてまいります。

 

① 店頭デリバティブ取引の充実・強化

業界競争が熾烈を極める金融デリバティブ取引の事業領域において、当社グループが力強く成長して行くためには、店頭デリバティブ商品、特に収益性の高い店頭FXサービス(外国為替証拠金取引サービス)に経営資源を集中していくことが不可欠であり、今後もこうした店頭FXサービスをお客様のニーズに沿った投資商品として魅力を高めていくことが重要であると認識しております。

そのため、主力商品である『みんなのFX』・『LIGHT FX』においては、業界最高水準のスプレッド・スワップ等の取引条件面での競争優位性を維持し、独自の商品性を打ち出すことで、あらゆる投資家ニーズに対応することにより、新規口座数の増加及び預り資産の純増を図ってまいります。

また、『みんなのシストレ』については、国内で唯一、他の投資実績が良い投資者の取引を追従する形で取引選択が可能な「選択型システムトレード」を提供しており、差別化され競争優位性をもつサービスとなっています。今後、約定システムを当社独自のシステムに載せ替えることにより、大量の取引を迅速に処理することが可能となり、『みんなのFX』及び『LIGHT FX』と同規模の収益力の商品へと成長させてまいります。

今後、さらなる新規口座の獲得及び預り資産の純増強化を図るため、デジタルマーケティングの推進やWEBメディア、マス広告等の多様な媒体への短期的かつ効果的な展開による宣伝・露出の拡充を図ることに加えて、中長期的な認知度向上のためのブランディング広告を積極的に実施するなどマーケティングを強化するとともに、顧客層の投資選好ニーズに応じたコミュニケーションやアプローチを実施し、お客様との持続的なリレーションを強化する営業施策にも注力することで、顧客ターゲット層をより一層広げ、収益の安定性を強固なものとし、事業の持続的な成長を追求してまいります。

 

② システム開発力の強化

金融事業においてシステムは事業基盤の中枢であり、システム開発力は金融商品の画一的な商品性の中で唯一お客様に対する競争力の差が出る部分であり、さらに、システムのリリースの早さそのものが新商品のその後の市場シェアの獲得の優劣を決める重要な要素にもなります。

そして、当社グループは、金融・証券業界の中でも数少ない自社グループ内ですべてのシステム開発を行うことができる体制を有しており、技術力の高さと現場の緊密さがリリースの早さと付加価値の差を生み出し、これらが成長戦略を追求する上で重要な優位性につながるものと自負しております。

このようなシステム開発を担う事業会社がシステム開発を計画どおりに行いクオリティが高いシステムを提供するためには、今後も国内・海外の開発拠点において優秀なエンジニアの確保が益々重要になってまいります。

当社グループは、システム事業会社がさらに競争力の高いシステムの開発を加速するため、経営計画においてシステム開発の人員の拡充及び国内拠点の育成を中期的な重要テーマと位置づけ、これに積極的な投資を行ってまいります。

③ 地政学的リスクへの対応

当社グループでは、子会社であるトレイダーズ証券等で利用する金融商品取引システムの開発、運用保守を、主に、中国(大連市)及びベトナム(ハノイ市)に所在する海外子会社2社において行っており、金融商品取引システム開発のコア領域や高度な運用保守業務を担う重要なオフショア開発拠点に成長しております。

一方で、米中関係の動向や北朝鮮・ウクライナの情勢をはじめ、国際関係の緊張化や各国での保護主義的な経済・通商政策への転換、情報・通信に関する法規制・監視の強化や政治情勢の急変等、当社グループが事業や投資(出資)を行う国・地域で地政学的リスクが顕在化した場合、事業活動にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、こうした地政学的リスクへの対応として、事業継続計画の見直しを行うとともに、一定規模の人材投資を行い、高度な技術者集団を確保し、国内におけるシステム開発体制の強化・拡充を図るとともにシステム品質の向上に継続的に取り組むことで、各海外子会社で行っているシステムの保守・運用を日本国内及び海外子会社二社間で相互に補完できる体制の構築を図ってまいります。

 

④ 優秀な人材の確保

当社グループが今後も持続的に成長し、業容を拡大させていくためには、優秀な人材を確保し続けていくことが最も重要な課題であると認識しております。

一方、国内経済において、労働力人口の趨勢的な減少と、コロナ禍に起因した労働供給の低下を背景に、人手不足が常態化しております。こうした中、大手企業は労働力を優位に確保するためいち早く賃上げを実施するなど、企業間における人材獲得競争は一層激化し、特に専門スキルや高度な技術を有する優秀な人材を安定的に確保することはますます難しくなっております。

当社グループでは、社会的な信用力や認知度の向上のため、2023年4月に立地条件がよく知名度が高いオフィスビルに本社移転を行い、また、従業員の労働意欲と生産性を高めるべく魅力的なオフィス環境の構築に積極的な設備投資を行いましたが、今後は、専門性の高い優秀かつ多様な人材の確保と長期定着化に資する人事諸制度の改善、高度な技術や知見を有する人材を公正に評価し処遇できる体系の整備等によって、人的資本への重点的な投資を実践し、グループの持続的な業績拡大と価値創造に寄与する人材獲得戦略を強化することで、優秀な人材の安定的な確保を目指してまいります。

 

⑤ コーポレート・ガバナンスの充実

当社の持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上には、実効性あるコーポレート・ガバナンスのあり方を不断に追求しながら確立・強化していくことが不可欠であり、当社グループに対する経営の健全性、信頼性を向上させる観点から、内部管理体制の強化を図り、特に、東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンス・コードの趣旨・精神を尊重して、コーポレート・ガバナンスの充実に向けて、特に以下の課題に重点的に取り組んでまいります。取締役会等の責務・役割については、多角的な意見を反映した公正性の高い経営の意思決定の実現のため、取締役会等の実効性を高める制度・仕組みの検討・整備や独立社外役員の機能強化を図ること等により、株主様に対する受託者責任を全うしうる取り組みを実践してまいります。

株主様との対話については、当社の持続的な成長に対する支援と評価を得ていくために不可欠であると認識し、今後は経営陣幹部と機関投資家等との建設的な対話をより積極的に推進してまいります。

適切な情報開示と透明性の確保については、適時開示情報のみならず、当社の中長期的に目指す理念や方針をはじめ、投資家にとって有用な非財務情報等をわかりやすく記載し、幅広く提供してまいります。

また、すべてのステークホルダーとの適切な協働を図ることは、当社の持続的な成長に不可欠であり、当社経営理念にも掲げる重要なテーマと認識しております。今後は、社会問題や環境問題等のサステナビリティを巡る諸課題の対応に向けて、当社グループの事業内容や特性を活かし、課題の解決に貢献し得る活動内容を具体化し、積極的に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社は、「金融サービスを通じて、社会・経済の発展に貢献する」という経営理念のもと、グループにおけるサステナビリティに関する中期的な取り組みを議論し、推進するための社内機関として、2021年6月にESG推進委員会を設立いたしました。ESG推進委員会は、常勤取締役、事業子会社2社の代表取締役を委員として構成され、当社グループ全体のサステナビリティ経営を推進する役割を担っており、サステナビリティを巡る活動のPDCAサイクルの中心的な機能を果たしております。同委員会は、サステナビリティに関する方針を決定の上、社会・環境分野における重要課題(マテリアリティ)を明確化しながら、各事業活動に通じた取り組みを実践し、また、サステナビリティを巡る課題の洗い出しと解決策の策定、モニタリングと必要な事項の決定、マテリアリティに沿った取り組みの事業評価・見直し(監視)を行っております。2025年3月期において同委員会は四半期毎に計4回開催され、同委員会で検討された事項は、適宜、取締役会や経営会議へ報告・フィードバックする体制を構築し、重要事項は取締役会で審議・決議を行うなど、取締役会等と連携して推進しております。

マテリアリティの策定にあたっては、主軸の金融事業・システム開発事業を通じて、社会・環境とともに持続的(循環的)に成長するために不可欠な課題を抽出、特定しております。当該マテリアリティに真摯に取り組むことこそが当社グループの企業行動指針と位置付けており、SDGsなどの国連の持続可能な開発目標として掲げる、社会・環境その他諸課題の解決に向けた目標(ターゲット)の中から、各テーマを抽出・特定して活動しております。当該活動は取締役会や各子会社と連携し、ステークホルダーと適切に協働しながら展開しております。

 

(2)戦略

当社グループは、社会課題・経営課題を経営上のサステナビリティ課題として認識し、その解決に向けて取り組んでおります。特に、当社グループ事業と密接な関係のある金融経済教育活動を特に重要なマテリアリティと位置づけ、とりわけ若年層の金融リテラシー向上に資する取り組みとして学校への出張授業の実施、職場体験プログラムの実践、その他諸機関・団体等との協働による金融や投資に関する「学び」の機会の提供を通じて、適切な金融知識の習得や金融に関わるリスクの認識を高め、より適切な金融・経済活動を担う人財を創り上げる一助となるべく取り組みを継続・強化しております。また、地球環境分野に対する責任ある企業行動を実践していくにあたり、気候変動の緩和と適応への貢献についても当社グループ事業活動上において対応すべき重要課題であり、特にグループ事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)の削減は重要な取り組み事項として、CO2排出量をモニタリング指標と定め、各種節電、会議資料の電子化や社内手続き書面(紙媒体)の削減、契約書の電子化推進、環境への影響(負荷)がより少ない設備・機器・備品類の購入選定など、環境負荷低減の社内施策に鋭意取り組んでおります。

また、当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針を、「トレイダーズグループは、グループの価値観を共有できる人財、即ち「関わるすべての”人”を大切にし「コンプライアンス」と「ダイバーシティ」を尊重し、変革にチャレンジし続ける」人財を育成する観点から、人財一人ひとりに対し、研修や学び直しの機会を提供することとする。」と定めるとともに、当社グループにおける、社内環境整備に関する方針を、「トレイダーズグループは、職場の安全と社員一人ひとりの心身の健康を守り、従業員が社会的にも満足するという状態を作り出すために、ウェルビーイング経営に取り組む」と定め、人財の育成並びに労働環境の充実に関する取り組みを図り人的資本への積極的な投資を強化しております。

人財育成の土台である人事制度につきましては、より透明性の高い制度を創り、人財と共に企業価値を高め、人財の育成と個々の人財のエンゲージメントを高めるべく人事制度改定プロジェクトを進め、2025年4月より新人事制度へ移行いたしました。当社グループが掲げるミッション「Create the New Values ~ 新たな価値を創造し続ける~」、ビジョン「お客様から最も信頼される“FinTech”グループとなり、だれもが未来に投資できる社会を実現させる」、バリュー「当社:関わるすべての“人”を大切にしながら、コンプライアンスとダイバーシティ(多様性)を尊重した経営で、変革にチャレンジし続ける」「トレイダーズ証券:金融リテラシーの向上に貢献しながら、お客様と社会が求める新たなサービスの提供にチャレンジし続ける」「FleGrowth:競争力のあるサービスを提供しながら、スピード感をもって安定的かつ革新的なシステム開発にチャレンジし続ける」及び上記人財育成方針を基軸として制度設計されたものであり、求める人物像、即ち人財ビジョンとして、当社は「コンプライアンスとダイバーシティを尊重したコミュニケーションで“人”を大切にできる人財」を、トレイダーズ証券は「協調性を持った未来の豊かさへ貢献できるイノベーション人財」を、FleGrowthは「スピード感を持った革新的なシステムを開発できる人財」と明確化いたしました。

社内環境整備方針におけるウェルビーイング経営の取り組みの一環として、従業員の心とからだの健康維持・増進のための各種施策を積極的に推進しております。具体的には、定期的な健康診断の実施やメンタルヘルスケアの充実、ワークライフバランスの改善、そして運動機会の増進などを通じて、従業員一人ひとりの健康と幸福度の向上に努めております。これらの継続的な取り組みが評価され、当社は「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)」に認定されました。この認定は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践している企業として認められたものであり、今後も従業員のウェルビーイング向上に向けて、さらなる施策の拡充と改善に取り組んでまいります。

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(3)リスク管理

当社では、サステナビリティを巡る活動において、内在するリスクと機会を適切に管理し、事業継続に深刻な影響を及ぼす事態に対処するとともに、新たな価値創造の機会を捉えるため、以下のプロセスで包括的なリスクと機会の管理を行っております。

① マテリアリティ分析と項目の抽出・整理(リスクと機会の特定)

② アクションプランや目標(ターゲット)の策定・実行(リスク軽減と機会活用の戦略立案)

③ 活動後の検証・評価(リスク対応と機会活用の効果測定)

④ 新たな課題の洗い出しや目標値の再設定等を繰り返すPDCAサイクルをESG推進委員会において実践(リスクと機会の継続的な見直しと改善)

さらに、当社グループの業態や経営環境、企業価値へ特に大きな影響等を及ぼし得る危機管理(リスク発生)事案となる場合には、代表取締役社長を統括責任者とする危機管理委員会を設置し、事前対策としての予防的対処、及び問題拡大防止や損害・損失の極小化による利益確保のための事後的対処により、迅速かつ適切な対策を講じる危機管理方法・プロセスを策定しております。

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(4)指標及び目標

・人財の育成並びに労働環境の充実

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する実績値と推移は、次のとおりであります。また、各指標の選定理由は以下であります。

[指標]

管理職に占める女性労働者の割合

男性労働者の育児休業取得率

労働者の男女の賃金の差異

女性従業員比率

外国人労働者比率

[選定理由]

当社グループは、上記(2)で記載のとおり、「ダイバーシティ」を尊重しており、適正かつ透明性・公平性のある人事採用や能力評価システムの導入によって、上記重要指標も当社にとって企業価値を最大化できる適正水準に推移していくものと認識し、今後も多様な人財がその能力に応じた適確な活躍ができるよう、推進していくことにより、多様な人財の強みを発揮させていきたいと考えております。

[指標]

月平均残業時間

[選定理由]

当社グループは、上記(2)で記載のとおり、「職場の安全と社員一人ひとりの心身の健康を守り、従業員が社会的にも満足するという状態を作り出す」ことを目指しております。従業員のウェルビーイングな社内環境として、労働生産性(業務効率性)を高め、ライフワークバランスを考慮した働きやすい職場であることが、従業員の意欲向上とさらなるエンゲージメント深化につながり、企業の新たな価値創造に結びつくものと認識しております。

 

◇当社グループの人的資本に関連する指標の各実績値

指標

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

前期比

管理職に占める女性労働者の割合 ()

20.0

21.4

21.2

0.3%減

男性労働者の育児休業取得率 ()

33.3

100.0

100.0

労働者の男女の賃金の差異 ()

74.3

72.2

77.1

5.0%増

女性従業員比率 ()

30.5

33.9

33.6

0.3%減

外国人労働者比率 ()

3.9

7.9

8.4

0.5%増

月平均残業時間 (時間/月)

16.0

19.5

21.0

1.5時間増

※当社及び連結子会社2社(トレイダーズ証券、FleGrowth)を対象としております。

 

上記の<人財ビジョン>のもと、当社グループは、2025年4月以降、人事関連諸制度の大幅な改定を行いました。今後、企業理念の実現という目的に向かって、厳正なる社員等級制度、業績評価や能力評価にチャレンジ評価を加味した公正かつ透明性のある評価制度体系の強化、また能力開発と育成計画を通じた自己成長実現のための教育制度(資格支援や研修制度充実化)を整備したことで、能力や意欲がより高い社員が競争を通じて適正に処遇(採用・登用・昇格)されるよう運用を行ってまいります。当該運用のプロセスにおいて、性別や国籍等のタイバーシティに関する属性情報は排除しており、公平な機会を設けた制度設計としております。このため、上記指標については、従前は定量的な目標数値を設定しておりましたが、今後は、結果としての目標数値自体を追求するのではなく、数値の年度推移を適切に分析・評価しながら、企業価値を極大化しうる社内環境(労働環境)改善に継続して取り組んでまいります。

 

(各指標に関する補足説明)

・労働者の男女の賃金に差異が生じているのは、管理職における女性労働者の割合が約2割に留まっており、非管理職に比べ給与水準の高い管理職の男性比率が高いためですが、同じ職種・等級では性別の違いによる賃金の差異はございません。

・男性労働者の育児休業取得率は100%となっており、今後も当該対象社員への社内育児休業制度の周知を継続してまいります。

・女性従業員と外国人労働者の合計比率(ダイバーシティ)は、当社グループの業態や規模に鑑みると、概ね適正な比率以上の水準を確保していると考えておりますが、今後も能力重視の採用や全ての社員の技能向上施策、離職防止策などを強化していくことで、社員間の公平な競争機会を確保しつつ、より良い労働環境(職場環境)へと改善を継続してまいります。

・月平均残業時間は逓増しておりますが、当社グループの業績の拡大の中で、業務量や範囲が拡大したことなどが要因となり、一部従業員の労働時間が増加したことによるものです。現在、業務DX化のより一層の推進や生成AI機能の業務活用による効率化・生産性の向上(例:システム子会社(FleGrowth)が提供する生成AIを活用した「AIサポートデスク」や「書きあげクン」の業務利用推進など)に加え、フレックスタイム制度の有効利用や社内会議の時間短縮含む効果的な運用方法の周知活動を通じて、社員それぞれが適正な労働時間となるよう取り組んでおります。

 

・地球環境負荷低減

気候変動リスクへの対処として地球環境負荷の低減の取り組みを継続して実施しており、温室効果ガス(GHG)の削減が重要なポイントであることから、CO2排出量を指標と定めております。

省エネ・節電対策が功を奏し電力使用量は前期比11%減少しましたが、オフィス空調の主なエネルギー源である冷温熱の使用量がほぼ変わらなかったことから、CO2排出量 [Scope 1 + Scope 2]は前期比1%減の59(t-CO2)となりました。尚、2023年4月に本社を渋谷区の恵比寿ガーデンプレイスタワーに移転以来、実質再生可能エネルギー由来の電力の供給を受けていることから、同電力消費に係るマーケット基準でのCO2排出量はゼロとなります。

 

当社グループの電力使用量及びGHG排出量実績値

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

前期比

電力使用量(kWh)

286,462

260,442

232,579

11%減

CO2排出量 [Scope 1 + Scope 2] (t-CO2)

61

60

59

1%減

Scope 1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope 2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

(注)上記実績値は当社及び連結子会社2社(トレイダーズ証券、FleGrowth)の集計データです。

また、第三者保証を受けていない概算値となります。

 

3【事業等のリスク】

当社の経営成績、事業運営及び財務状態その他に関する事項のうち、投資家の投資判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項として、以下のようなリスクがあげられます。これらのリスクは複合、連鎖して発生し、様々なリスクを増大させる可能性があります。

当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいります。

なお、本項目に記載の事項は必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、また、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1 顕在化の可能性が高いと想定している主なリスク

(1)外部環境に起因するリスク

① 業界競争の激化に伴う収益性低下のリスク

当社グループの主力事業である外国為替証拠金取引サービスは、インターネットを通じた個人投資家向け金融サービスとして市場の拡大を続け多くの金融機関や新規参入事業者がひしめく成熟市場となっておりました。

こうした環境下では、各社がスプレッドの引き下げやスワップポイントの引き上げ、取引ツールの機能強化など、顧客獲得を巡って激しい競争を繰り広げており、結果として、業界全体として収益性の低下傾向が続いています。特に、FXサービスにおいては顧客の取引条件に対する感度が非常に高く、わずかな差異が資金流出入に直結するため、当社が競争条件において劣後した場合、預り資産の流出や顧客数・取引量の減少といった負の連鎖が起こるリスクが存在します。

加えて、顧客獲得のための広告費やプロモーション費用も増加傾向にあり、収益性のさらなる圧迫が懸念されます。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 高取引量顧客との接点強化

優良顧客の囲い込みを目的として、預り資産や取引量の多い顧客に対してカスタマーサポートや個別対応の強化を進め、特別な関係の構築を推進しながら継続的な利用を促進しています。

■ 独自性のある機能・サービス開発

他社にはない高機能な取引ツール、データ分析機能、生成AIを活用した為替相場予測など、付加価値の高いサービスの提供により、価格以外の競争力を強化しています。

■ ブランディング及び顧客ロイヤリティ向上

情報提供コンテンツの充実や、ユーザーとの接点を増やすセミナーや勉強会の開催により、顧客満足度を高め、長期的な関係構築を図ります。

■ 多様な相場環境に対応できる体制の構築

レンジ相場のような為替相場のボラティリティの低下した期間においても収益力を強化すべく、FX事業の中でシステム・トレードやバイナリーオプションのサービスをリニューアルすることで、多様な収益源の確立に取り組んでいます。

 

② 法令・規制遵守に関するリスク

金融商品取引業を行う当社グループは、金融商品取引法をはじめとする関係法令や、日本証券業協会等の自主規制機関のルールに基づく厳格な規制の下で事業運営を行っています。

これらの法令や規制に違反した場合、行政処分(業務停止命令、業務改善命令など)を受けるリスクがあり、その結果、当社の社会的信用や顧客からの信頼が大きく損なわれる可能性があります。特に近年では、投資家保護を重視する観点から、規制当局による監視の目も厳しさを増しており、一度の不備でも重大な経営リスクとなる可能性があります。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 内部管理体制の強化

各事業部門における業務フローの見直しと文書化を進め、リスクの早期検知・是正を可能にする内部統制の充実を図っています。

■ 法令改正に対応した即応体制の構築

金融庁等の発信する動向を継続的に把握し、制度変更があった場合は全社的な体制変更・教育を迅速に実施します。

■ 定期的な社内研修の実施

法令遵守意識の浸透を目的として、コンプライアンスに関する定期研修を実施し、全社員の知識・意識の向上を図っています。

■ 第三者機関による監査の活用

客観的な視点からの監査を受けることで、潜在的なリスクの洗い出しと対策を講じるよう努めています。

③ 金融規制強化による事業制約リスク

FX市場は個人投資家の参加が多いことから、投資家保護の観点で規制強化が継続的に行われてきました。特に、最大レバレッジの引き下げや強制ロスカット水準の引き上げなど、取引に直接影響を与える規制は、取引量の減少や顧客離れにつながる要因となっています。

今後も、為替市場における過度なボラティリティ乱高下や投資家被害の発生に応じて、追加的な規制が導入される可能性があり、当社の事業活動に制約を与えるリスクとなっています。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 顧客へのリスク説明の強化

規制内容や変更の背景を丁寧に説明し、顧客が適切な判断のもとで取引を行えるよう、情報提供体制を強化しています。

■ 投資対象の多様化

FXの中で商品ラインナップを拡充することで、顧客が投資リスクを分散できる態勢を整備する一方、トレイダーズ証券における収益減少のリスクを分散するよう努めます。

 

④ 為替相場の変動等、経済環境の変化に伴うリスク

為替相場の急激な変動は、顧客にとっては損失要因となる場合があり、それに伴う預り資産の減少、取引控え、場合によっては口座解約に発展することがあります。当社としても、取引量の減少やスプレッド収入の低下、スワップ収益の変動等により、収益に対する影響は無視できません。

また、ボラティリティの高まりは、システム処理能力やオペレーション体制にも負荷を与えるため、リスク管理体制の強化が求められます。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ リスク耐性を高める運用支援機能の整備

証拠金維持率のアラートや自動ロスカット機能の高度化により、顧客資産の保全を支援します。

■ サーバー増強・バックアップ体制の強化

想定外のアクセス集中や相場変動にも耐え得るシステム基盤の強化を進めています。

 

⑤ 地政学的リスク(海外拠点依存に関する業務リスク)

当社グループでは、コスト競争力と技術力を活かす目的で、主に中国及びベトナムの現地法人において、取引システム等の開発・保守業務を行っています。これらの拠点は、当社のIT基盤を支える重要な役割を担っていますが、今後、両国の政治的・社会的情勢の変化、自然災害、パンデミック、あるいはサイバーセキュリティ上の脅威により、現地拠点での業務が停止又は制限されるリスクが存在します。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 国内開発体制の再強化

技術者の採用・育成を強化し、重要機能については国内での開発を優先する体制構築を進めています。

■ 業務の分散化

中国・ベトナム・日本の三拠点体制を構築し、一つの拠点が停止しても全業務が停止しないよう、業務の分散を図ります。

■ BCP(事業継続計画)の見直しと定期訓練

有事における代替業務手順や迅速な復旧体制の整備を進め、訓練を通じた対応力の向上を図ります。

 

(2)当社グループの事業戦略、経営基盤に関するリスク

① 新商品及びシステム開発に伴うリスク

当社グループでは、多様化する顧客ニーズに応えるため、トレイダーズ証券が新商品の導入や既存商品の改善を行い、FleGrowthがこれに対応する形でシステムの機能強化や新規開発を実施しています。しかしながら、開発された商品やサービスが顧客ニーズに合致しない場合や、技術革新のスピードが速く、製品の陳腐化が急速に進む場合には、トレイダーズ証券及びFleGrowthの業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

特に、開発した商品が市場に受け入れられない、又は競合他社の製品と比較して明確に劣ると評価される場合には、これらのリスクが顕在化する可能性があります。加えて、急速な技術進化が求められるシステム開発領域では、こうした状況がしばしば発生し得ることも念頭に置く必要があります。

また、FleGrowthのシステム開発・コンサルティング事業においては、開発したシステムの一部をソフトウエアとして固定資産に計上する場合がありますが、使用中止により除却損が発生し、業績を悪化させる可能性も想定されます。

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 市場ニーズの徹底的な検証

新商品・新システムの開発にあたっては、顧客ニーズ及び市場動向を十分に調査・検証した上で、事業性を見極めた計画的な開発を推進しています。

■ 開発コストの厳格な管理

開発初期段階からコスト管理を徹底し、費用対効果の観点から開発可否を慎重に判断しています。

■ 迅速な開発体制の構築

競争力を確保するため、開発プロセスの効率化を図り、短期間で市場投入できる体制を整えています。

 

② ストレステスト結果が経営の健全性に影響を与えるリスク

トレイダーズ証券は、金融商品取引業等に関する内閣府令に基づき、金融先物取引業協会の規則に従ってストレステストを実施しています。このストレステストは、将来発生しうる異常事態における「最大想定損失額」(A)と「固定されていない自己資本の額」(B)を比較し、BがAを上回ることを求めるものです。

自己資本の減少や、未カバーリスク・未収金リスク・カバー取引先の破綻リスクの増大などにより、最大想定損失額が増加した場合、経営の健全性を確保するために何らかの対応措置を講じる必要が生じるリスクがあります。

このリスクは、トレイダーズ証券の業績が悪化して自己資本が減少した場合、あるいは市場環境等の変化により最大想定損失額が増加した場合などに顕在化する可能性があります。

具体的には、FX取引事業において自己資本が不足する状況に陥った場合、「最大想定損失額」が「固定されていない自己資本の額」を上回らないよう、利益を犠牲にしてでも取引ポジションの調整やカバー先の分散を行う必要があり、結果として利益の減少や負の連鎖につながるおそれがあります。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 未カバーポジションの適切な管理

為替リスクに対するポジションの過不足を常時監視し、過度なリスクを回避する管理体制を構築しています。

■ カバー先の分散管理

信用リスクの集中を避けるため、カバー取引先を適切に分散し、リスク低減に努めています。

■ 自己資本の充実と強化

内部留保の積み増しを継続的に行い、自己資本の強化によるストレス耐性の向上を図っています。

 

(3)事業活動、顧客取引に関するリスク

① オンライン取引のシステム障害に伴うリスク

トレイダーズ証券では、主力商品であるFX証拠金取引において、顧客からの注文をインターネット経由で受け付け、社内のコンピュータ処理システム及び第三者機関との接続を通じて取引を執行しています。

当社グループでは、サーバーの増強や基幹システムの外部データセンターへの移設、システム改善、人材育成、障害時業務フローの整備などを通じて、システムの安定運用及び保守に努めています。しかしながら、サイバー攻撃による不正アクセスやシステム障害、誤作動などにより、システムが機能不全に陥った場合には、以下のような影響を被る可能性があります。

▶ 顧客からの注文を受け付けられず、取引の執行が不可能となる

▶ カバー先に対する取引を適時に実行できず、多額のトレーディング損失が発生する

▶ 顧客の信頼を損ない、損害賠償請求に発展する可能性がある

これらの事態は、日常的に発生し得るものであり、特に重大なシステム障害が発生した場合には、顧客対応に多大な支障をきたすおそれがあります。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 障害対応マニュアルの整備と即応体制の構築

システム障害発生時に備え、障害内容や影響に応じた代替手段の確保と、迅速な対応が可能な体制を構築しています。

■ 24時間体制のシステム監視

FleGrowthの海外子会社がシステムを24時間体制で監視し、異常を検知した際には直ちにアラートを発報、関係部門が迅速に対応できる体制を整えています。

■ 人材育成の強化

異常発生時に適切に対応可能なスキルを備えた人材の育成を、グループ全体で継続的に推進しています。

 

② 資金繰りリスク(トレイダーズ証券)

トレイダーズ証券では、顧客やカウンターパーティーとの売買代金や証拠金の受け渡し、信託銀行への顧客資産の分別信託金の預託など、多額の資金移動を日々行っており、厳格な資金繰り管理を実施しています。

ただし、海外のカウンターパーティーとの資金決済は一営業日遅延することがあり、その間、顧客への支払いなどについてトレイダーズ証券が立て替えるケースがあります。加えて、為替相場が大きく変動し、多額の立替資金が必要となる場合には、資金繰りが一時的に逼迫するリスクがあります。

このような事態は、過去の実績から見ても年に数回程度の頻度で発生する可能性があると想定されます。

特に、FX相場の急激な変動などによって、想定を超える立替資金が必要となった場合には、資金繰りへの圧迫が一時的に深刻化する可能性があります。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 借入枠及びコミットメントラインの確保

緊急時に備え、金融機関からの借入枠やコミットメントラインの設定を積極的に進めています。

■ カウンターパーティーの多様化

緊急時に対応可能な国内カウンターパーティーの数を増やし、資金移動の柔軟性を高める体制を整えています。

 

③ 市場リスク

トレイダーズ証券では、顧客とのFX証拠金取引に関して、カウンターパーティーとのカバー取引を適宜実施することで、為替相場の変動による市場リスクの低減を図っています。

しかしながら、相場が急変した際には、カバー取引が即時に行えず、多額の損失を被るリスクが存在します。これらのリスクは日常的に発生しうるものであり、特に急激な相場変動時には、カバー先からのレート配信が一時的に停止されることで、トレイダーズ証券が多額の未カバー損失ポジションを抱え、損失が拡大する可能性が想定されます。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ カバー先の多様化とリスク分散

国内外複数のカウンターパーティーとカバー取引を実施することで、特定の取引先への依存を避け、リスクを分散しています。

■ 市場監視体制の強化

相場の急変に即応するための監視体制を強化し、取引執行リスクの低減を図っています。

 

④ カバー取引先(カウンターパーティー)のリスク

トレイダーズ証券は、顧客とのFX証拠金取引において、複数の金融機関等のカウンターパーティーを相手方としてカバー取引を行い、証拠金及び決済資金を差し入れています。しかしながら、世界的な景気後退や金融危機等の外部要因により、カウンターパーティーが破綻するリスクが存在します。

このリスクは、過去の事例に鑑みると、10年に1回から数回の頻度で発生する可能性があるものと認識しています。

具体的には、カウンターパーティーの破綻により、差し入れた証拠金や決済資金が回収不能となりトレイダーズ証券に損失が発生するといった影響を想定しています

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 財務状況の継続的なモニタリング

トレイダーズ証券のリスク管理委員会(月次開催)において、カウンターパーティーの財務状況を検証し、安全性を定期的に確認しています。

■ 緊急時対応体制の構築

景況が急変した際には、トレイダーズ証券の役員間で即時に協議を行い、各カウンターパーティーの健全性を再評価し、迅速に対応できる体制を整備しています。

 

⑤ 顧客立替金が発生するリスク及び同債権が貸倒れとなるリスク

トレイダーズ証券は、個人顧客とのFX証拠金取引において、約定代金の4~100%を必要証拠金として預託を受け、建玉維持に際しては一定の証拠金維持率を求めています。また、FleGrowthが開発した自動ロスカットシステムを採用し、急激な相場変動時でも顧客に過大な損失が発生しないよう努めています。

しかしながら、FX市場終了から開始までの間(例:週明け)に極端な相場変動が発生した場合、始値が前営業日終値と大きく乖離し、顧客が損失を即時に支払えない事態が生じる可能性があります。

このリスクは、値飛び(配信レートの大幅な乖離)を伴う激しい相場変動時に顕在化する可能性があると認識しています。

具体的には、以下のような影響が想定されます。

▶ 顧客の損失が証拠金を超過し、トレイダーズ証券が一時的に立替金を負担

▶ 立替金の回収が困難となり、トレイダーズ証券が貸倒れ損失を被る

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 事前のリスク情報提供

相場急変の可能性が高まった場合には、顧客に対し建玉決済や証拠金の追加預託を促すなど、投資リスクに関する情報を積極的に提供しています。

■ 立替金回収体制の整備

万が一立替金が発生した場合でも、迅速な対応により顧客からの回収を図る体制を整えています。

■ システムの継続的改善

FleGrowthにおいて、自動ロスカットシステムの更なる高度化を図り、損失拡大の抑止とシステムリスクの低減に努めています。

 

⑥ サステナビリティ課題への取り組みに関するリスク

企業の持続的な成長には、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を経営に取り入れることが求められており、気候変動や人権問題等の社会的課題への対応が不十分な企業は、株主や顧客、取引先といったステークホルダーからの信頼を失うリスクが高まっています。

このリスクは、企業活動のあらゆる場面において、日常的に顕在化し得るものであると認識しています。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ サステナビリティへの取り組みが不十分と見なされ、顧客が取引を停止

▶ 投資家が当社への投資を控え、経営成績や財務状況の悪化を招く

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 環境配慮活動の推進

社内のペーパーレス化や電力消費の削減に取り組むほか、環境保護に資する金融商品・サービスの開発・提供を進めています。

■ 社会的責任の実行

若年層、学生、女性等を対象とした金融リテラシー向上施策として、為替ディーラーの講師派遣を行っています。

■ ガバナンス体制の強化

中長期的な企業価値の向上を目指し、実効性あるコーポレート・ガバナンスの構築・強化に継続的に取り組んでいます。

 

(4)オペレーショナルリスク、その他のリスク

① オペレーショナルリスク

当社グループでは、業務遂行過程において、オペレーショナルエラーなどが発生した場合、顧客又は取引先からの損害賠償請求や監督官庁による行政処分を受けるといった影響を被る可能性があります。

こうしたリスクは、新たな事務処理手続の導入、法令や規則の変更、従業員の退職や人員異動などの局面で顕在化しやすくなります。

具体的には、当社グループの役職員による不適切な事務処理や、内部統制の不備により、適切なサービス提供が困難となる事態を想定しています。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 人材の確保と育成

優秀な人材の採用と適切な人員配置を行い、業務遂行能力の維持・向上に努めています。

■ 教育体制の充実

外部研修や社内セミナーの実施により、従業員の知識・スキル向上を図り、オペレーショナルリスクの低減に取り組んでいます。

 

② システムの瑕疵によるリスク

当社子会社であるFleGrowthでは、金融商品取引に関するシステムの開発・保守運用を行い、外部金融機関等に提供しています。万一、提供システムに重大な品質事故や不具合が発生した場合、提供先からの賠償請求を受けるリスクがあります。

このようなリスクは、日常的に発生し得るものであり、常に注意が必要です。

具体的には、納品済みシステムに重大なバグが存在し、提供先においてシステム停止などの損害が発生し、FleGrowthが賠償責任を負うといった影響を想定しています。

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 品質管理体制の徹底

開発プロセス全体において、要件定義から設計・開発まで各工程の管理を厳格に実施しています。

■ 受入テスト(UAT)の実施

納品前に提供先と共同で受入テストを実施し、リリース前の不具合を未然に防止するよう努めています。

 

③ 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、ランサムウェア等のサイバーテロによるシステム停止や、サイバー攻撃・内部不正による個人情報や機密情報の漏洩等により、損害賠償請求や行政処分を受けるリスクがあります。

これらのリスクは、特定の時期に限らず常に存在し、日常的に顕在化し得るものと認識しています。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ FX取引に関するシステムやサーバーの暗号化による長期間の業務停止

▶ サイバーテロによる多額の身代金の支払い要求

▶ 情報漏洩に伴う損害賠償や対応コストの発生

▶ 社会的信用低下に伴う顧客資産・取引量の減少による収益悪化

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ セキュリティ体制の強化

トレイダーズ証券サイバーセキュリティ対策部及びFleGrowthを中心に情報セキュリティ管理体制を整備し、サイバー攻撃の予防に努めています。

■ 社内教育と訓練

標的型メールへの注意喚起、法令遵守研修の実施、内部管理体制の整備により、役職員による不正の未然防止を図っています。

■ テレワーク環境の整備

暗号化通信の導入、社内環境への接続制限等により、安全な勤務環境を構築しています。

■ 委託先の適正管理

外部委託先管理規程に基づき、定期的なチェックを行い、重大リスクを早期に把握・対応できる体制を整えています。

 

④ 顧客口座の不正利用に関するリスク

 当社グループが提供するオンライン取引サービスでは、インターネットを通じて顧客が自らの証券口座にアクセスし、取引や出金等を行う仕組みを採用していますが、近年では、フィッシング詐欺やマルウェア等を通じて顧客の認証情報が第三者に不正取得される事案が増加しており、業界全体で口座乗っ取り被害が深刻化しています。

 当社においても、こうした手口による不正ログインや不正出金等が発生した場合、顧客資産の毀損に対する補償対応や信頼喪失により、経済的損失や企業価値の毀損といった影響を受けるリスクがあります。とりわけ、顧客側の情報管理に依存する部分もあるため、当社単独の対策では完全に排除することが困難な側面がある点も、重大な経営上の懸念事項です。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 高度な認証技術の導入

二要素認証を用いたログイン・出金認証機能の導入により、不正アクセスの防止に取り組んでいます。

■ 不正検知・遮断システムの強化

脅威インテリジェンスと脅威ハンティングを組み合わせたプロセスにより、不正検知・対応を強化しており、将来的にはAI導入による高度化を検討しております。

■ 顧客への注意喚起および啓発活動の継続

定期的なセキュリティ警告や、偽サイト・詐欺メールへの対処方法を含む情報発信を行い、顧客のリスク意識向上と自己防衛力の強化を図っています。

■ 被害発生時の迅速対応体制の整備

不正利用が発生した場合には、関係当局への報告および被害拡大防止を含む初動対応を速やかに実施する体制を整えています。

 

⑤ データ管理の不備によるリスク

当社グループでは、顧客情報や業務データを電子媒体・紙媒体で記録・保存していますが、これらが適切に管理されなかった場合、漏洩や消失等のリスクが生じます。

このようなリスクは、バックアップの不備、媒体の故障、委託先での管理ミス等により、日常的に発生し得るものです。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ 情報漏洩に伴う損害賠償やデータ復旧費用の発生

▶ 社会的信用低下に起因する顧客・取引量・預り資産の減少

▶ FleGrowthへの損害賠償請求や取引先離脱による売上減少

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ システム管理体制の強化

トレイダーズ証券及びFleGrowthに専門部署を設置し、重要データを国内で安全に管理できる体制を整備しています。

■ 委託先の監督強化

外部委託先管理規程に基づき、委託先の適正性を定期的に確認し、早期にリスクを察知・対応できるよう努めています。

 

2 顕在化の可能性が低いと想定している主なリスク

(1)外部環境によるリスク

災害の発生によるリスク

当社グループでは、地震・津波・風水害などの大規模自然災害や事務所の火災等の発生により、従業員や保有資産の被災、必要人員の確保困難、通信障害や電力供給不足などが生じ、業務運営の継続や業績に重大な影響を及ぼす可能性があると認識しています。

このようなリスクは、過去の事例からみると、おおむね10年に1回から数回程度の頻度で発生し得るものと考えられます。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ FX取引事業において、業務継続が困難となり、長期間にわたり収益が喪失する

▶ システム開発・システムコンサルティング事業において、FXシステム等の保守・運用業務の停止、システム開発の中断による納品遅延

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ BCP(事業継続計画)の整備と訓練

トレイダーズ証券において緊急時対応を想定したBCPを策定し、代替事務所を遠隔地に確保しています。また、定期的に社内訓練を実施し、緊急時の課題抽出と備えを強化しています。

■ 拠点分散とテレワークの活用

システム開発・保守業務においては、テレワーク体制を整備するとともに、業務拠点を国内外に分散させ、リスク軽減を図っています。具体的には、宮城県仙台市にニアショア拠点を設立し、実効性のあるリスク分散策を推進しています。

 

(2)当社グループの事業戦略、経営基盤に関するリスク

自己資本規制比率が低下するリスク

トレイダーズ証券は、第一種金融商品取引業者として、金融商品取引法に基づき、自己資本規制比率(固定化されていない自己資本をリスク相当額で除した比率)を120%以上に維持することが求められています。業績の低迷等によりこの比率が低下した場合、金融当局からの業務改善命令、業務停止命令、あるいは登録取消などの行政処分を受けるリスクがあります。

このリスクは、業績の悪化に伴って自己資本が大きく減少した場合、又はリスク相当額が増加した場合に顕在化する可能性があります。具体的には、FX取引事業において業績の低迷が続き、金融当局から早期是正措置等を受けた結果、信用失墜が生じ、当社グループ全体の業績悪化につながる可能性を想定しています。

なお、2025年3月31日現在のトレイダーズ証券の自己資本規制比率は、702.6%となっております。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ リスク管理体制の徹底

トレイダーズ証券において、適切なリスク評価・管理を継続的に実施しています。

■ 収益基盤の強化

顧客の預り資産及び取引量の拡大を図り、トレーディング損益の増加を通じて自己資本の持続的な積み上げに努めています。

 

(3)事業活動、顧客取引に関するリスク

発注先の信用リスク

FleGrowthでは、システム開発及びシステム運用・保守において、発注先と契約を締結し、前受金又は納品時・サービス提供時に対価を受領していますが、発注先が信用不安や破綻に陥った場合、売掛金の回収不能やシステム開発の中止等により損失が発生するリスクがあります。

このようなリスクは、日常的に顕在化する可能性があると認識しています。

具体的には、システム開発・コンサルティング事業において、納品後に発注先の信用悪化により売掛金が回収できず、FleGrowthが損失を被る事態を想定しています。

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 信用調査の徹底

契約締結前に、発注先の財務状況や信用力を十分に審査し、信用リスクを適切に評価・判断するようFleGrowthにおいて体制を整備しています。

 

(4)オペレーショナルリスク、その他のリスク

① 役職員の不正行為によるリスク

当社グループでは、役職員による不正又は予測困難な不正行為により、ブランドイメージの毀損や信用失墜を招く可能性があります。

このようなリスクは、特定の時期に限らず、突発的に発生する可能性があるものと認識しています。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ 不正行為の発覚による風評リスクの増大

▶ 行政処分(課徴金・過怠金・業務改善命令等)の対象となる可能性

▶ 社内外の信頼性低下により事業遂行が困難となる

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 法令遵守意識の徹底

役職員向けにコンプライアンス研修を実施し、法令順守意識の定着を図っています。

■ 内部管理体制の強化

適切な統制環境を整備し、不正が発生しにくい内部統制体制を構築しています。

■ 内部通報制度の整備

社内担当部署及び外部弁護士と接続されたホットラインを通じ、匿名・安全に通報可能な環境を整備し、不正行為の早期発見・未然防止を図っています。

 

② 外部業者への業務委託に伴うリスク

当社グループは、システム開発・コンサルティング事業における一部業務を外部業者に委託していますが、委託先によるサービス品質の低下や不正行為により、当社グループの事業運営に支障を来すリスクがあります。

このリスクも予測が難しく、いつでも顕在化し得るものと考えられます。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ 委託業者による個人情報・機密情報の漏洩や改ざん

▶ 委託業者の経営悪化による成果物の品質劣化・納品遅延

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 外部委託先の適正性確認

外部委託先管理規程を整備し、定期的に委託業者の信用状況や管理体制を確認しています。

■ リスクの早期把握と是正対応

委託業者の変更や業務代替策を含む対応体制を整備し、早期にリスクを把握し適切に対応できるよう努めています。

 

③ 犯罪による収益の移転防止に関するリスク

トレイダーズ証券は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づき、顧客の本人確認、取引記録の保存、疑わしい取引の届出などの措置を講じています。しかしながら、業務の一部が法令に準拠していない場合には、行政処分や信用失墜といった影響が生じる可能性があります。

このリスクは、口座開設や取引時など、継続的に存在するものと考えられます。

具体的には、以下のような影響を想定しています。

▶ 犯罪組織による口座利用が発覚した場合、業務改善命令等の行政処分を受ける

▶ 信用失墜により顧客預り資産が減少し、取引量が減退、結果として収益が悪化し、企業価値の毀損につながる

 

このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。

■ 社内教育の実施

犯罪収益移転防止に関する法令遵守の意識向上を図るため、社内セミナーを継続的に実施しています。

■ 厳格な本人確認と記録保存

同法に基づく本人特定事項の確認を徹底し、取引記録の保存や疑わしい取引の届出を確実に行う体制を整えています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の回復に加え、高水準の企業収益を背景とした設備投資の増加などにより、緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、実質賃金の長期的な低迷、深刻化する労働力不足、拡大を続ける財政赤字といった構造的な課題が依然として残されており、政府が掲げる「成長型経済」への転換に向けては、なお多くの課題を抱えている状況です。

一方、国外においては、地政学的リスクの高まりに加え、トランプ政権による保護主義的な通商政策を背景とした貿易摩擦の激化や、サプライチェーンの混乱が顕在化してきました。さらに、一部地域では景気後退への懸念も広がっており、世界経済の先行きは依然として不透明な状況が続いています。

外国為替(以下、「FX」といいます。)市場におきましては、年間を通してボラティリティが高い水準で推移しました。2024年4月に1米ドル=151円29銭で始まった米ドル/円相場は、日米金利差を背景とした急激な円安進行から始まり、4月下旬には1米ドル=160円台前半まで円が急落、政府・日銀による為替介入などにより1米ドル=151円台まで円高に転じるも、キャリー取引の活発化などから再び円安が加速し、6月下旬には1986年以来となる161円台まで円安が進みました。7月に入り米国連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測や政府・日銀の為替介入、日銀の追加利上げ実施など、円が買われ米ドルが売られる展開が続き、8月には東京株式市場が過去最大の下落、9月にはFRBが連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利下げに踏み切るとの観測から1米ドル=139円台まで円高が進みました。10月に入り、新首相の利上げ否定発言や好調な米雇用統計結果から円安が再燃、11月にトランプ氏が米大統領選挙で勝利すると、景気刺激策への期待から1米ドル=156円台まで円安が進みました。12月に入り、FOMCでは将来の利下げペース鈍化が示唆され、日銀の追加利上げ先送り決定が重なったことで、1米ドル=157円台まで円安が進みました。第4四半期は、米国でトランプ氏が大統領に就任、2025年3月に発動されたカナダ・メキシコ・中国への関税や、4月に発表を控える相互関税など、通商政策を巡る不確実性が世界的に増大したことを受けて一時1米ドル=146円台まで米ドル安が進み、当連結会計年度末は1米ドル=149円98銭で取引を終了しました。

このような市場環境のもと、当社グループの主力事業であるFX取引事業を中核とする金融商品取引事業は、子会社であるトレイダーズ証券において、『みんなのFX』(FX証拠金取引)、『LIGHT FX』(FX証拠金取引)、『みんなのシストレ』(自動売買ツールを利用したFX証拠金取引)、『みんなのオプション』(FXオプション取引)及び『みんなのコイン』(暗号資産証拠金取引)のサービスを提供し収益確保を図ってまいりました。収益を確保する上で重要な指標となる顧客からの預り資産は、前期に引き続き好調な伸びを示し、当連結会計年度末において112,271百万円(前連結会計年度末比11,253百万円増、11.1%増)まで増加しました。当連結会計年度のトレーディング損益は、上記の預り資産の増加により13,210百万円(前年同期比3,423百万円増、35.0%増)と前期に記録した過去最高収益を更新しました。

また、子会社であるFleGrowthが営むシステム開発・システムコンサルティング事業は、トレイダーズ証券向けにFX取引システムの開発及び保守・運用を行うとともに、外部顧客向けにFX取引及び暗号資産証拠金取引に関連したシステムの開発及び保守・運用を行い収益の確保を図ってまいりました。当連結会計年度のシステム開発・システムコンサルティング事業における外部顧客に対する営業収益は、127百万円(前年同期比107百万円減、45.8%減)と前年同期を下回りました。

以上の結果、営業収益合計は、13,429百万円(前年同期比3,325百万円増、32.9%増)となり、売上原価、金融費用を差し引いた純営業収益合計は、13,299百万円(前年同期比3,387百万円増、34.2%増)となりました。

一方、販売費及び一般管理費は6,665百万円(前年同期比1,165百万円増、21.2%増)と前年より増加しました。増加の主な要因は、主に譲渡制限付株式報酬制度における報酬費用の計上について会計上の見積りの変更を行ったこと及び従業員給与の増加により人件費が3,005百万円(前年同期比730百万円増、32.1%増)、積極的にWeb広告を行ったことにより取引関係費が2,059百万円(前年同期比248百万円増、13.7%増)に増加したこと等によります。

その結果、営業利益は6,634百万円(前年同期比2,221百万円増、50.4%増)、経常利益は6,650百万円(前年同期比2,260百万円増、51.5%増)、税金等調整前当期純利益は6,643百万円(前年同期比2,283百万円増、52.4%増)となりました。

法人税等合計は、税金等調整前当期純利益の増加により法人税、住民税及び事業税が1,977百万円(前年同期比1,219百万円増、160.7%増)に増加したこと及び繰越欠損金の充当を反映して繰延税金資産を取り崩した結果、法人税等調整額を118百万円(前年同期比148百万円減、55.6%減)計上したことにより2,096百万円(前年同期比1,070百万円増、104.3%増)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は4,547百万円(前年同期比1,212百万円増、36.4%増)となりました。

セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。

 

(金融商品取引事業)

トレイダーズ証券が営む当セグメントの営業収益は13,302百万円(前年同期比3,433百万円増、34.8%増)、セグメント利益は6,109百万円(前年同期比2,215百万円増、56.9%増)となりました。

なお、FX取引事業・暗号資産証拠金取引事業の当連結会計年度末における顧客口座数、預り資産は以下のとおりとなりました。

 

顧客口座数     606,029口座(前連結会計年度末比    55,206口座増)

預り資産     112,271百万円(前連結会計年度末比    11,253百万円増)

 

(システム開発・システムコンサルティング事業)

FleGrowthが営む当セグメントの営業収益は2,960百万円(前年同期比351百万円増、13.5%増)となりました。同収益の内訳は、グループ会社であるトレイダーズ証券に対するFX取引システムの開発・保守運用等の内部売上が2,833百万円(前年同期比458百万円増、19.3%増)、外部顧客に対する売上が127百万円(前年同期比107百万円減、45.8%減)であります。セグメント利益は585百万円(前年同期比32百万円増、5.9%増)となりました。

 

② 当期の財政状態の概況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して6,855百万円増加し、125,048百万円となりました。これは主に、現金及び預金が3,270百万円及び顧客分別金信託が2,348百万円、外国為替差入証拠金が2,674百万円増加したことによるものです。

負債合計は、前連結会計年度末と比較して3,561百万円増加し、107,633百万円となりました。これは主に、外国為替受入証拠金が2,400百万円及び未払法人税等が1,167百万円増加したこと等によるものです。

純資産は、前連結会計年度末と比較して3,294百万円増加し、17,415百万円となりました。これは主に、剰余金の配当775百万円及び自己株式の取得703百万円により減少した一方で、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益が4,547百万円及び譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分165百万円等により増加したことによります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、営業活動により6,473百万円増加、投資活動により607百万円減少、財務活動により2,582百万円減少しました。この結果、資金は、前連結会計年度末と比較して3,270百万円増加し、12,090百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び当該増減の要因は、以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金は、6,473百万円の収入超過(前年同期は5,168百万円の収入超過)となりました。これは主に、FX取引にかかる短期差入保証金の増加2,513百万円による資金が減少した一方、税金等調整前当期純利益6,643百万円及びトレーディング商品の増減1,821百万円により資金が増加したものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金は、607百万円の支出超過(前年同期は329百万円の支出超過)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出343百万円並びに投資有価証券の取得による支出215百万円等により資金が減少したものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金は、2,582百万円の支出超過(前年同期は1,279百万円の支出超過)となりました。これは主に、社債償還による支出600百万円及び配当金の支払による775百万円の支出並びに自己株式の取得による703百万円の支出等により資金が減少したものです。

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

システム開発・システムコンサルティング事業(百万円)

127

△45.8

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.「金融商品取引事業」及び「その他」につきましては、生産活動を行っていないため記載を省略しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

システム開発・

システムコンサルティング事業

232

△31.7

105

△47.7

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.「金融商品取引事業」及び「その他」につきましては、受注生産形態をとっていないため、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

システム開発・システムコンサルティング事業(百万円)

127

△45.8

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

⑤ 金融商品取引事業の業務の状況

a. FX取引の売買等の状況

区   分

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

(%)

米ドル

(百万ドル)

2,282,314

3,289,145

44.1%

メキシコ

(百万ペソ)

831,674

1,127,688

35.6%

ユーロ

(百万ユーロ)

240,187

251,675

4.8%

豪ドル

(百万ドル)

208,500

240,806

15.5%

トルコリラ

(百万リラ)

33,867

148,574

338.7%

英ポンド

(百万ポンド)

191,951

141,818

△26.1%

南アフリカランド

(百万ランド)

64,234

46,111

△28.2%

ニュージーランドドル

(百万ドル)

41,675

42,809

2.7%

ハンガリーフォリント

(百万フォリント)

107,793

33,200

△69.2%

チェコ コルナ

(百万コルナ)

8,246

26,123

216.8%

その他

(百万通貨単位)

18,249

12,957

△29.0%

合計

(百万通貨単位)

4,028,693

5,360,911

33.0%

(注)「その他」には、FXオプション取引並びに暗号資産証拠金取引を含めております。

 

b. 自己資本規制比率

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

2024年3月31日

当連結会計年度

2025年3月31日

 基本的項目

(A)

10,824

13,815

 補完的項目

 その他有価証券評価差額金等

 

 金融商品取引責任準備金等

 

 一般貸倒引当金

 

23

0

 長期劣後債務

 

 短期劣後債務

 

(B)

23

0

 控除資産計

(C)

433

445

 固定化されていない自己資本の額

 (A)+(B)-(C)

(D)

10,415

13,369

 リスク相当額

 市場リスク相当額

 

6

8

 取引先リスク相当額

 

229

219

 基礎的リスク相当額

 

1,472

1,674

 控除前リスク相当額

(F)

1,708

1,902

 暗号資産等による控除額

(第17条関係)

(G)

計 (F)-(G)

(E)

1,708

1,902

 自己資本規制比率  (D) / (E) × 100

 

609.5%

702.6%

(注)1.金融商品取引業を営む子会社であるトレイダーズ証券の自己資本規制比率を記載しております。

2.上記は金融商品取引法第46条の6第1項の規定に基づき、「金融商品取引業等に関する内閣府令」で定められた計算方法により算出しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績や状況等を勘案して合理的と考えられる様々な要因に基づき判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

a. 繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金について繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得の見積り及び繰延税金資産の回収可能性の判断等に当たっては、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、課税所得の見積りは将来の経営環境の変化や当社グループの事業活動の推移、その他の要因により変化します。なお、将来、課税所得の予測に影響を与える諸要因に変化があり、当社が繰延税金資産の回収可能性がないと判断した場合には繰延税金資産を取り崩す処理を行うため、連結損益計算書の法人税等調整額が増加し、親会社株主に帰属する当期純利益が減少する可能性があります。

b. 固定資産の減損処理

当社グループは、主にインターネットを通じた金融商品取引事業を営んでおり、これらの事業に関する取引システム等については当社グループで開発しているため、多くの固定資産を保有しております。これらの保有する固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の兆候があり、減損損失を認識すべきであると判断した場合には、固定資産の減損処理を行っております。なお、将来、営む事業の収益性の悪化や経営環境の変化等により、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりです。

a. 営業収益

当連結会計年度の営業収益は、過去最高収益を計上した前連結会計年度をさらに更新しました。好調を維持した主な理由は、金融商品取引事業において、顧客預り資産金額が引き続き増加を遂げたことで、FX相場の変動率が高い状況においては大きくトレーディング損益を計上できる態勢を整備できたことが最大の要因であると認識しております。当連結会計年度のFX市場は、第1四半期は日本銀行による過去最大規模の為替介入による急激な相場変動により、営業収益が大きく増加しました。第2四半期は再び日本銀行による為替介入時の相場急変動が発生したことに加え8月上旬の急激な円高が進行したことなど、波乱の相場展開が断続的に発生し営業収益が大きく増加しました。第3四半期は上述の円高進行により高金利通貨で顧客実現損失が発生した影響で取引量が減少した一方でドル/円の取引条件を強化したことで、上期よりは落ち着いたものの安定して営業収益を獲得することができました。第4四半期前半はレンジ相場が続いて営業収益を多く稼ぐことはできなかったものの、通期では7期連続で最高営業収益となりました。営業収益の好調を維持できたことは、顧客預り資産の増加を第一の目標にかかげ、様々な施策を実行してきた当社の成果が実ったものと認識しております。

金融商品取引事業においては、戦略的なマーケティングによる費用対効果の向上を図るとともに、お客様目線に立った魅力ある施策の実行及びお客様に継続して取引を行っていただけるサービスの提供を心掛け事業を推進してまいりました。今後も、お客様に安全で快適な取引を行っていただけるよう最新のシステム環境の整備充実を図るとともに、継続して当社でお取引いただけるようカスタマーサービス体制のさらなる充実及び魅力ある商品の提供を実現するよう同事業を営むトレイダーズ証券に求めていくことが重要であると認識しております。

システム開発・システムコンサルティング事業においては、外部からの大型システム開発案件の受注が無く、さらに既存の大口顧客の事業規模の縮小に伴う案件整理の影響を受け、外部への売上は前連結会計年度に比べ減少しました。当連結会計年度における外部売上減少の要因は、FleGrowthがトレイダーズ証券向けのオンラインFX取引システムの追加開発を行い機能・安全性の強化に努めるとともに、トレイダーズ証券向けの暗号資産CFDアプリケーションの開発に注力したことに起因するものと考えております。

今後も品質の高いシステムをお客様に提供できるように、FleGrowthには、同社の海外子会社を含めてシステム開発・運用管理体制のより一層の整備・強化に努めるよう求めていくとともに、トレイダーズ証券向けのデリバティブ商品の多様化を早期に実現するため商品開発のスピード向上に向けた対応を求めていくことが重要であると認識しております。

b. 純営業収益

当連結会計年度の純営業収益は、前連結会計年度に比べ増加しました。増加の主な理由は、上記 a.と同様の理由により営業収益が増加したことによるものです。

c. 営業利益

当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ増益となりました。販売費及び一般管理費が増加したものの、上記 b.純営業収益が大きく増加したことによります。

当連結会計年度の販売費及び一般管理費が増加した第1の理由は人件費の増加です。人件費増加の主な理由は、譲渡制限付株式報酬制度における報酬費用の計上について会計上の見積りの変更を行ったこと及び給与水準の引き上げと業績拡大に伴う賞与の増加です。第2の理由は取引関係費の増加です。取引関係費増加の主な理由は、積極的にWeb広告を実施したことに伴う広告宣伝費の増加です。

その結果、販売費及び一般管理費合計は前連結会計年度と比較しますと約21.2%増加しました。

販売費及び一般管理費については、費用が適正に配分されているか、支出金額は適正な水準となっているか等を継続して注視してまいります。

d. 経常利益

当連結会計年度の経常利益は前連結会計年度に比べ増益となりました。増益の主な理由は、上記 c. 営業利益までの利益が大きく増加したことによります。

e. 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ増益となりました。増益の主な理由は、上記d.経常利益までの利益が大きく増加したことによります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

 

(金融商品取引事業)

トレイダーズ証券が営む当セグメントの営業収益は、「②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a. 営業収益」に記載したとおりです。営業収益が前連結会計年度に比べ3,433百万円増加しましたが、販売費及び一般管理費が前連結会計年度に比べ1,230百万円増加したことで、セグメント利益は前連結会計年度を2,215百万円上回りました。

トレーディング損益増加の源泉となる顧客預り資産の当連結会計年度末残高は、112,271百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,253百万円増加しました。

証券会社の財務指標となる自己資本規制比率は当連結会計年度末 702.6%(前連結会計年度末 609.5%)となり、財務の健全性を維持しております。

 

(システム開発・システムコンサルティング事業)

FleGrowthが営む当セグメントの営業収益は、トレイダーズ証券からのFX取引システムの利用料及び外部へのシステム等に係る保守運用収入及び販売収入からなります。当連結会計年度における外部売上は、システム開発等の販売収入が減少し、前連結会計年度を107百万円下回りました。一方内部売上は、主にトレイダーズ証券のトレーディング損益が増加したことからレベニューシェア型である同システム利用料収入が増加したため、前連結会計年度に比べ458百万円増加しました。その結果、当セグメントの営業収益は、前連結会計年度を351百万円上回りました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ人件費等の増加により234百万円増加しました。その結果、セグメント利益は、前連結会計年度を32百万円上回りました。

FleGrowthではFX取引システム及び暗号資産CFDアプリケーション等の金融商品取引システムの開発を中心に行っており、優秀な開発人員の確保を含め、システム開発・運用管理体制を整備・強化し、当グループ内外へのシステムの安定的な提供を可能とする体制構築を図っております。

翌連結会計年度においては、「第2[事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ③地政学的リスクへの対応」に記載しましたとおり、国内拠点における中長期的に安定したシステム開発体制の整備・拡充と専門要員の確保によるシステム品質の向上に向けて取り組むことで、中国・ベトナム・日本の3拠点における金融取引システムの開発・運用監視業務のバランスを重視した相互補完体制の構築を推進するために一定の投資を行ってまいります。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、当社グループを取り巻く経営環境・事業環境・システム環境等の面から業績に影響を及ぼす事項について「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりです。

a. キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b. 財務政策

当社グループが注力するFX取引事業は、カバー先金融機関に預託する証拠金や日々の取引損益の値洗いに伴う決済金、顧客区分管理信託の受払に伴う立替資金等多額の運転資金が必要となるため、事業を安定化させるためには多額の長期安定資金の確保が必要となります。資金繰りにおいては顧客の取引損益の増減により生じる日々のカバー先金融機関との決済、顧客区分管理信託の受払に関する必要額が予見しづらく、時として多額に上ることも想定されるため、手許の待機資金を十分厚く保持することが必要になります。とりわけ、海外カバー先金融機関からの資金の受取は1~2営業日の日数を要するため、トレイダーズ証券が一時的に多額の資金を立替えなくてはならない可能性があります。

当社グループの財務基盤は、業績の回復とともに改善してきており、利益の積み上げで資金が増加するとともに、金融機関からの融資の取り組みも徐々に増えてきております。しかしながら、当社の資金は、上記の資金需要をまだ十分に満たすには至っていないため、今後も金融機関に対する融資の交渉を続けるとともに、事業運営上の安定化を促進させるための取り組みを行ってまいります。また、万が一、将来において業績が悪化する等の状況に陥り、資金調達が必要と判断した場合には、金融機関等からの借入だけにとどまらず、第三者割当増資又は新株予約権等のエクイティ・ファイナンス及び社債等のデット・ファイナンス等、可能な限りの資金調達方法を検討し、実行することを考えております。

 

5【重要な契約等】

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約内容

契約期間

トレイダーズ証券

(連結子会社)

三菱UFJ信託銀行㈱及び受益者代理人

日本

外為分別金

信託契約

2001年6月1日

顧客から預託を受けた外国為替証拠金に係る金銭の区分管理に関する契約

2001年6月1日

~2003年5月31日

(期間更新条項あり)

SBIクリアリング信託㈱及び受益者代理人

日本

顧客区分管理

信託契約

2019年12月23日

顧客から預託を受けた外国為替証拠金に係る金銭の区分管理に関する契約

2019年12月23日

~2020年3月31日

(期間更新条項あり)

SBIクリアリング信託㈱及び受益者代理人

日本

顧客区分管理

信託契約

(暗号資産関連デリバティブ取引)

2022年1月14日

顧客から預託を受けた暗号資産関連デリバティブ取引等に係る金銭の区分管理に関する契約

2022年1月14日

~2022年3月31日

(期間更新条項あり)

㈱三井住友銀行

及び受益者代理人

日本

顧客区分管理

信託契約

2024年3月29日

顧客から預託を受けた外国為替証拠金に係る金銭の区分管理に関する契約

2024年3月29日

~2025年3月31日

(期間更新条項あり)

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は198百万円となっており、報告セグメントごとの研究開発活動の状況及び研究開発費の金額は次のとおりであります。

 

(システム開発・システムコンサルティング事業)

当事業を営むFleGrowthは、主にFX取引システムの開発及び生成AIを用いたDX領域のソリューションサービスに関する研究活動を行っております。当該研究開発活動の主な内容は、システムトレードの約定エンジン載せ替えに伴う開発、FX取引にかかる顧客管理システム及び生成AIを活用した社内業務効率化ツールの開発等です。

なお、当事業の研究開発費は198百万円です。