第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

①経営理念

 当社は、東京海上グループの全役職員が共有する経営理念を策定しており、その内容は次のとおりです。

<東京海上グループ経営理念>

 東京海上グループは、お客様の信頼をあらゆる活動の原点におき、企業価値を永続的に高めていきます。

 ○お客様に最高品質の商品・サービスを提供し、安心と安全をひろげます。

 ○株主の負託に応え、収益性・成長性・健全性を備えた事業をグローバルに展開します。

 ○社員一人ひとりが創造性を発揮できる自由闊達な企業風土を築きます。

 ○良き企業市民として公正な経営を貫き、広く社会の発展に貢献します。

②東京海上グループ中期経営計画2026 ~次の一歩の力になる。~

 東京海上グループは、お客様や社会のいざをお守りすることをパーパスとし、2035年にめざす姿として、お客様や社会の課題およびリスクに対して「イノベーティブなソリューションを届け続けるパートナー」を掲げています。

 この実現に向けて、中期経営計画(2024年度~2026年度)においては、グローバルなリスク分散およびグループ一体経営をグループの基本戦略とし、成長の3本柱(①価値提供領域の飛躍的な拡大、②ディストリビューションの多様化・複線化および③生産性の徹底的な向上)ならびに規律の2本柱(①内部統制およびガバナンスの強化および向上ならびに②事業ポートフォリオおよび資本管理の高度化)をグループの重点戦略として取り組んでいます。

 

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③目標とする経営指標等

 東京海上グループは、企業価値を的確に把握しその拡大に努める観点から、グループ全体の業績を示す経営指標として修正純利益および修正ROEを掲げており、中期経営計画(2024年度~2026年度)においては、修正純利益の持続的な成長および規律ある資本政策を通じて、修正EPSの年平均成長率(CAGR)+8%以上(含む政策株式売却益では+16%以上)、修正ROE14%以上(含む政策株式売却益では20%以上)をめざしています。

 2024年度の修正純利益および修正ROEは、当事業年度の半期報告書提出日時点においては、それぞれ10,400億円、19.5%を見込んでいましたが、政策株式売却益の増加等により、その実績はそれぞれ12,150億円、22.7%となりました。

 2025年度の修正純利益および修正ROEは、米国の商業用不動産担保付貸付金にかかる予想信用損失の減少や国内の自動車保険の収益改善を見込む一方、政策株式売却益の減少を見込むこと等により、本有価証券報告書提出日現在においては、それぞれ11,000億円、20.7%を見込んでいます。

 なお、修正純利益および修正ROEは、次の方法で算出します。

・修正純利益*1

 修正純利益=連結当期純利益*2+異常危険準備金繰入額*3+危険準備金繰入額*3+価格変動準備金繰入額*3+自然災害責任準備金*4繰入額*3+初年度収支残*5の影響額*6-ALM*7債券・金利スワップ取引に関する売却・評価損益-事業投資に係る株式・固定資産に関する売却損益・評価損+のれん・その他無形固定資産償却額-その他特別損益・評価性引当等

・修正EPS

 修正EPS=修正純利益÷発行済株式総数

・修正純資産*1,8

 修正純資産=連結純資産+異常危険準備金+危険準備金+価格変動準備金+自然災害責任準備金*4+初年度収支残-のれん・その他無形固定資産

・修正ROE

 修正ROE=修正純利益÷修正純資産

*1 各調整額は税引後です。

*2 連結財務諸表上の「親会社株主に帰属する当期純利益」です。

*3 戻入の場合はマイナスとなります。

*4 大規模自然災害リスクに対応した火災保険の未経過保険料です。

*5 保険料から発生保険金の一部と事業費を控除した残高を、翌期以降の保険事故に備えて繰り越すものです。

*6 普通責任準備金積増額のうち、未経過保険料の積増額を控除したものです。

*7 ALMとは、資産・負債の総合管理をいいます。

*8 平均残高ベースで算出しています。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 2025年度も気候変動による災害の激甚化、不透明感を増す各国の政治・社会情勢および地政学リスク等の状況は変わらず、世界経済も米国の通商政策の影響を受け大きく減速すると想定されるなど、今後も先行きが見通しがたい環境が続くものと見込まれます。

 こうした状況のなかにあっても、東京海上グループは、長期ビジョン「世界のお客様にあんしんをお届けし、成長し続けるグローバル保険グループ」の実現に向け、健全性を維持しつつ積極果敢に挑戦してまいります。2025年度は、「東京海上グループ中期経営計画2026〜次の一歩の力になる。〜」の2年度目となります。引き続き、「お客様や社会の課題・リスクに対してイノベーティブなソリューションを届け続けるパートナー」になることをめざし、保険に留まらない価値提供領域の飛躍的な拡大、ダイレクトチャネルの拡充等の販売チャネルの多様化・複線化およびAI・データ等を活用した生産性の徹底的な向上と同時に、内部統制・ガバナンスの強化および規律ある資本管理にも徹底して取り組んでまいります。

 国内損害保険事業では、東京海上日動は、同社の中期経営計画のキーコンセプトである「Re-New」のもと、引き続き、適正な競争を阻害してきた業界慣行をはじめ、あらゆる業務プロセスをお客様起点で見直し、「本当に信頼されるお客様起点の会社」となることをめざします。業界慣行等に起因して発生した保険料調整事案およびその再発防止の取組みのなかで自浄作用を発揮して発見した同根同軸の不適切事案である情報漏えい事案については、確実に再発防止策を実行するとともに、社員のリスク感度の向上にも努めてまいります。また、保険の提供に留まらず、事前・事後の領域を含め、「リスクソリューション(保険+α)で次代を支える会社」になることをめざし取り組んでまいります。政策株式については、2029年度末までには政策株式(非上場株式および資本業務提携による出資等を除く)の残高をゼロにすべく売却を進めてまいります。

 国内生命保険事業では、あんしん生命は、お客様をお守りする領域を拡大すべく、未病・早期発見・重症化予防等の領域で新たな保障やサービス開発等に引き続き取り組みます。加えて、お客様の健康状態に応じた保障と一体型のヘルスケアサービス提供等にも引き続き取り組みます。また、デジタル技術の進化に対応することで、お客様への直接アプローチを拡大しながら、生産性を向上させ、持続的な成長の実現をめざします。

 海外保険事業では、引き続き、高度な保険引受能力や専門性を活かした保険料収入の拡大、保険料率の見直し等を通じて、保険引受利益を持続的かつ安定的に拡大してまいります。加えて、競争力ある商品のグローバル展開や資産運用の高度化等、海外保険事業全体におけるシナジーの拡大に取り組むとともに、デジタル活用および業務のアウトソーシング等による生産性の向上およびオペレーションの高度化を進めます。また、戦略的なM&Aの実行に向けた市場動向調査にも継続的に取り組み、優良な投資機会を着実に捉えてまいります。

 資産運用では、国内外のグループ会社と連携しながら、資産と負債の総合管理(ALM)を軸としたグローバルな運用態勢の強化に引き続き努めてまいります。北米を中心とした市場での不動産投資ローン等については、足下の市況を踏まえ、管理体制を強化してまいります。また、米国の政策、日本銀行の金融政策等の動向により国内外のマクロ経済および金融市場の変動が見込まれますが、今後も情勢を注視しつつ、資産ポートフォリオの多様化とリスク分散を進めることによって、長期安定的な運用収益の確保と健全な財務基盤の維持に取り組んでまいります。

 ソリューション事業では、東京海上グループの収益の柱とすることをめざし、今後、ID&Eホールディングス社および東京海上日動等の共創による防災・減災領域のソリューションを提供することでの収益拡大に加え、モビリティ、ヘルスケア(予防・未病)や脱炭素社会への移行支援といった複数の領域での事業化を加速してまいります。

 これらの各事業を支えるのは人です。東京海上グループは、人材を資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」に注力しています。「People's Business」(人とその信用・信頼からなる事業)である保険事業を営む東京海上グループの競争力の源泉は、昔も今もこれからも人です。社員一人ひとりが適材適所で情熱と意欲をもって活躍できるよう支援し、多様な人材が持てる力を遺憾なく発揮できる公正な環境を整えます。将来に向けた人材投資も行い、100年後もお客様や社会のいざをお守りする存在であり続けるための人的資本および人材基盤の強化にグループを挙げて取り組んでまいります。

 株主還元については、配当を基本とする方針としています。事業を通じた利益成長と配当の拡大は整合的であるべきとの考えに基づき、力強い利益成長を通じ、継続的な増配を実現できるよう努めてまいります。

 東京海上グループは、「お客様の信頼をあらゆる活動の原点におく」という経営理念を掲げ、健全性と透明性の高いガバナンス体制を基盤に、収益性と成長性を兼ね備えた企業グループとしてさらに発展していくため、グループを挙げて業務に邁進してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ共通

 東京海上グループは、「お客様や社会のいざをお守りする」というパーパスを起点に、時代ごとの社会課題を自ら探し出し、保険本業を通じてその課題解決に貢献することで成長してきました。東京海上グループの事業活動は社会課題解決そのものであるため、使命感を持って事業活動に取り組むことで、安心・安全に生活し、かつ果敢に挑戦できるサステナブルな社会の実現に貢献できると考えています。

①ガバナンス

 グループ全体でサステナビリティ戦略を推進するため、グループCEO、グループサステナビリティ総括(以下「CSUO」といいます)、グループ資本政策総括(以下「CFO」といいます)、グループリスク管理総括(以下「CRO」といいます)を含むチーフオフィサー、海外の経営陣等で構成されるサステナビリティ委員会を設置し、取組内容や方針等をグローバルベースで審議しています。サステナビリティ委員会は原則として年4回開催し、サステナビリティ課題への対応方針等に関する審議および各施策の進捗状況のモニタリングを行っています。CSUOは、サステナビリティ戦略の推進および浸透を総括し、取締役会に方針を諮るとともに進捗状況を報告する役割を担っています。また、リスクベース経営(ERM)に基づき、ERM委員会での論議等を通じて、気候変動および自然関連リスクを含むグループ全体のリスク管理を行っています(リスクベース経営(ERM)については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです)。

 取締役会は定期的にその報告を受けサステナビリティに関する取組みについて審議し、執行を適切に監督しています。2024年度は、以下のとおり取締役会において審議しました。

実施月

審議事項

2024年4月

2023年度年次計画の下期取組報告

2024年5月

2023年度取組みの振返りおよび2024年度年次計画

2024年10月

2024年度年次計画の上期取組報告

2025年3月

2024年度年次計画の下期取組報告

 

 上記の体制により、グループ社員にサステナビリティ戦略を浸透させ、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。

 また、取締役の業績連動報酬にサステナビリティ戦略に係る非財務指標を取り入れています。

 

○サステナビリティ推進体制図

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②戦略

 東京海上グループは、「次の世代に明るい未来を引き継ぐことは私たちの責務である」との強い想いから、「お客様」、「社会」、「社員」および「株主・投資家」に加え、「未来世代」をステークホルダーに位置付けています。

 東京海上グループは、パーパスを起点に取り組むべき8つの重点領域を設定しています。事業活動により社会課題を解決しながらサステナブルな社会づくりに貢献し、その結果として社会的価値と経済的価値を同時に高めていきます。

 

東京海上グループの8つの重点領域

重点領域

取組み

a.気候変動対策の推進

・2050年カーボン・ニュートラルの実現(含む保険引受・投融資先)

・保険引受・投融資先企業とのエンゲージメントやグリーントランスフォーメーション(以下「GX」といいます)関連の保険・ソリューションの提供を通じたトランジションへの貢献

b.災害レジリエンスの向上

・自然災害対応の高度化(大規模災害時に速やかに保険金をお支払いする「商品・サービスの開発と提供」、「業務プロセスの効率化」)

・事前・事後領域(現状把握、対策実行、避難・退避、復旧・再建)における災害リスクマネジメントサービスの提供

c.健やかで心豊かな生活の支援

・新たなヘルスケア商品・サービス(予防・未病)の開発・提供、寿命の延長により増加する資産形成・貯蓄ニーズへの対応

・中小企業支援を通じた社会・地域課題解決

d.人と多様性の尊重

・人的資本のさらなる強化・経営戦略の実現に資する人事戦略の実行

・多様性の確保と多様性が活きるカルチャーの醸成・浸透

・保険引受・投融資先、バリューチェーン、自社オペレーションにおける人権デューデリジェンスの推進

 

 

重点領域

取組み

e.イノベーティブなソリューションの提供

・デジタル、データを活用した、GX、災害レジリエンス、ウェルビーイング等の社会課題を解決するソリューションの提供

f.自然の豊かさを守る

・2030年ネイチャーポジティブ(自然資本や生物多様性の損失を止め、回復させること)への貢献

・マングローブ植林やアマモ場の保全・再生活動、海を守る活動等による地球温暖化防止および生物多様性・湿地の保全

g.未来世代の育成支援

・各種教育プログラム等の提供を通じた未来を担う人材の育成支援

・未来世代の意見を活かした経営の高度化

h.誠実かつ透明性の高いガバナンス

・全てのバリューチェーンにおける業務品質の向上、内部統制の強化

・海外を含む全てのグループ会社におけるリスクベース経営(ERM)の強化

・適時適切かつ透明性の高い情報開示

 

上表のとおり、重点領域において、主力事業である保険事業の商品やサービス等の提供や投融資等を通じて社会課題の解決に取り組んできましたが、さらなる事業の拡大とお客様への価値創造をめざすべく、2025年2月に、主に建設コンサルティング事業、都市空間事業およびエネルギー事業を有するID&Eホールディングス株式会社を子会社化しました。ID&Eグループは「誠意をもってことにあたり、技術を軸に社会に貢献する。」を経営理念としています。同社の工学技術に基づく計画、評価、設計、調査等についての経営資源(人財、実績、実務経験、ノウハウ、技術力、研究開発力等)を保険と組み合わせることで、温室効果ガスの可視化や、災害リスクの評価および把握、被災からの早期復旧支援等、気候変動対策の推進や災害レジリエンスの向上等において、さらに高度なソリューションの提供が可能な体制を構築し、お客様への価値創造に取り組んでまいります。

 

③リスク管理

 東京海上グループを取り巻くリスクは、グローバルな事業進展や経営環境の変化等を受けて一層多様化・複雑化してきています。また、不透明感が強く、変化の激しい昨今の政治・経済・社会情勢においては、新たなリスクの発現を常に注視し適切に対応していかなければなりません。そのため、東京海上グループは、リスクの軽減、回避等を目的とした従来型のリスク管理に留まらず、定性・定量の両面での網羅的なリスク把握に取り組んでいます。環境・社会に関しては、環境基本方針、人権基本方針および人事に関する基本方針に基づいて、当該リスクが発生する可能性の高いセクターを特定し、負の影響を与えるリスクを適切に把握、管理できるよう努めています。

 

④指標と目標

 東京海上グループは、サステナビリティに関する中長期目標(非財務指標)を課題ごとに掲げ、実効性のあるPDCAサイクルを回し続けることで各種取組みを着実に進めています。

 

(2)気候変動対策と自然資本・生物多様性の保全

 気候変動は、グローバルな課題であるとともに、異常気象や自然災害の増加をもたらすものであり、損害保険業界に直接的な影響を及ぼします。そのため、東京海上グループは、気候変動対策を、本業である保険事業はもとより、機関投資家、そしてグローバルカンパニーとして真正面から取り組むべき最重要課題に位置付けています。

 また、地球の環境を守るためには、気候変動対策だけでなく、自然資本や生物多様性の損失を止め、回復させるネイチャーポジティブの取組みが不可欠です。気候変動によって、植物の生育ができない環境となり、自然が失われるという影響が出ています。自然が失われることによって、吸収・固定される温室効果ガスが減少し、地球の温暖化が進行するという影響も出ています。このように気候変動と自然資本・生物多様性は相互に影響を与えるものであり、同時に取り組むべき課題と認識しています。

 東京海上グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下「TCFD」といいます)および自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、以下「TNFD」といいます)の提言を支持しており、そこで推奨されている「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」(TNFDにおいては「リスクとインパクトの管理」)および「指標と目標」の4つの柱に沿った情報開示を行っています。なお、両提言に沿った気候関連情報開示および自然関連情報開示の詳細については、東京海上グループのTCFDレポートおよびTNFDレポートに記載のとおりです。

①ガバナンス

 「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」に記載のとおりです。

 

②戦略

 戦略にはその前提となるリスク認識が重要です。東京海上グループは、気候変動リスクおよび自然関連リスクが高まることを想定し、事業への影響を特定・評価しています。気候変動リスクおよび自然関連リスクには、気候変動および自然の損失に伴う自然災害の頻度の高まりや規模の拡大等によって生じる物理的リスクに加え、脱炭素社会や自然共生社会への移行が投融資先の企業価値や東京海上グループの保有資産価値に影響を及ぼすこと等によって生じる移行リスクがあります。

 また、気候変動の緩和および気候変動への適応ならびに自然との共生に向けた対応から生まれるビジネス機会を認識し、保険商品・サービスの開発・提供を通じて、脱炭素社会および自然共生社会への移行に取り組んでいきます。

 物理的リスク、移行リスクおよび機会について、TCFD提言およびTNFD提言の分類ごとの事象例および東京海上グループの事業活動における具体例は以下のとおりです。

事象例

東京海上グループの事業活動における

リスク・機会の例

時間軸

物理的リスク

急性

・自然災害の頻度の高まりや規模の拡大の可能性

・土壌の保水力低下や沿岸浸食による損害の発生・拡大

・保険収益の減少(保険金支払への影響等)

・拠点ビル等が被災することによる事業継続への影響

短期~

慢性

・気温の上昇

・干ばつや熱波等、その他気象の変化

・海面の上昇

・節足動物媒介感染症への影響

中期・長期

移行リスク

政策および法規制

・炭素価格の上昇

・環境関連の規制・基準の強化

・気候・自然関連の訴訟の増加

・炭素価格上昇による投融資先企業の企業価値や東京海上グループの保有資産価値の下落

・賠償責任保険に係る支払保険金の増加

中期・長期

技術

・脱炭素社会・自然共生社会への移行に向けた技術革新

・脱炭素社会・自然共生社会への移行が十分ではない投融資先企業の企業価値や東京海上グループの保有資産価値の下落

・技術革新やお客様ニーズの変化を捕捉できないことによる収益の低下

中期・長期

市場

・商品・サービスの需要と供給の変化

短期~

評判

・脱炭素社会・自然共生社会への移行の取組みに対するお客様や社会の認識の変化

・東京海上グループの取組みが不適切とみなされることに伴うレピュテーションの毀損

短期~

機会

資源の効率性、エ

ネルギー源、製品・サービス、市場、レジリエンス

・エネルギー源の変化やレジリエンス向上に向けた製品・サービス需要や社会の認識の変化

・再生可能エネルギーや自然関連事業に関する保険ニーズの飛躍的増大

・脱炭素社会・自然共生社会への移行に伴う企業の資金需要の増加による投融資機会の増大

・災害レジリエンス向上に向けた防災・減災ニーズの増加

短期~

(注)表中の時間軸における「短期」は3年未満、「中期」は3年以上10年未満、「長期」は10年以上の期間を指します。

 

東京海上グループは、物理的リスクおよび移行リスクに関するシナリオ分析を行い、気候変動が及ぼす保険金支払、投融資先の企業価値および東京海上グループの保有資産価値への影響を評価しています。そして、サステナビリティ戦略を、シナリオ分析の結果も踏まえ、充実させながら実践しています。損害保険事業は比較的短期の保険契約が多いことや東京海上グループの運用資産は流動性の高い金融資産が中心であることから、これらの影響に柔軟に対応し、レジリエンスを確保することが可能であると考えています。

東京海上グループは、保険商品・サービスによる再生可能エネルギーの普及支援、脱炭素化を目的とした取引先との建設的な対話(エンゲージメント)、保険引受・投融資方針の厳格化等を通じて、2050年カーボン・ニュートラルの実現に取り組んでいます。また、自然共生社会の実現に向けて、自然共生サイトの認定に向けた取組みや、取引先企業との対話を通じた支援を実行しています。東京海上グループの移行に向けた計画は次のとおりです。

 

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③リスク管理

 東京海上グループは、リスクベース経営(ERM)に基づいてグループ全体のリスク管理を行うとともに、その高度化に取り組んでいます。気候変動リスク・自然関連リスクについてもERMの枠組みのなかで適切に管理しています(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです)。

 

④指標と目標

 東京海上グループは、パリ協定を踏まえ、以下の指標と目標を設定しています。

・2050年度までに、東京海上グループが排出する温室効果ガスの実質ゼロをめざす(含む保険引受・投融資先)。

・2030年度までに、東京海上グループが排出する温室効果ガスを2015年度対比60%削減するとともに、東京海上グループの主要拠点において使用する電力を100%再生可能エネルギーとする。

・2026年度までに、東京海上グループにおける脱炭素社会の実現に直接的に貢献する脱炭素関連保険料を450億円とする。

・2030年までに、グループのなかで企業取引を多く扱う東京海上日動火災保険株式会社において、保険引受に伴う温室効果ガス排出量の約9割を占める大口顧客200社と対話し、160社以上について深度ある提案・対話を行う。また、当該大口顧客200社に対しては、対話のなかで脱炭素計画の策定を求め、2030年までに脱炭素計画を有していない企業とは取引を行わない。

 

(3)災害レジリエンス

①ガバナンス

 「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」に記載のとおりです。

 

②戦略

 東京海上グループにとって、災害に関する課題を解決することによる「災害レジリエンスの向上」は重要課題です。災害リスクをカバーする保険商品を提供し、人工衛星やAI等を活用した迅速な保険金支払体制を整備するなど、お客様のいざをお守りするサービスの開発・提供を強化しています。

 また、有事における保険金の支払いに留まらず、事故を未然に防ぎ、万が一発生してもその負担を軽減し早期復旧等に繋げるための「事前・事後」のサービスを継続的に提供することを通じて、災害に負けない社会づくりに貢献していきます。そのために、業界の垣根を超えた防災コンソーシアムをリードし、各社が持つ技術やインフラを活用した防災・減災ソリューションを開発しています。2023年11月には防災・減災領域の新規事業に特化した子会社として、東京海上レジリエンス株式会社を設立し、防災・減災のソリューション事業を立ち上げました。気象リスクをリアルタイムで把握できる「レジリエント情報配信サービス」や、企業担当者の管理・配布の負担を軽減する「防災備蓄品」等の防災・減災サービスを提供しています。また、2025年2月に東京海上グループに加わったID&Eホールディングス株式会社とのシナジーを活用した取組みも始まっています。同社の工学技術に基づく計画、評価、設計、調査等についての経営資源(人財、実績、実務経験、ノウハウ、技術力、研究開発力等)を保険と組み合わせることで、災害リスクの評価・把握といった「現状把握」、都市計画・防災設計やエネルギー最適化といった「対策実行」、財物・工事・利益補償といった「経済的補償(保険金支払)」、被災からの早期復旧支援、再発防止といった「復旧・維持管理」という社会の強靭化に関わる4つの領域において、一気通貫でソリューションを提供できる体制を構築しました。保険と技術の両面で、さらに付加価値の高い防災・減災ソリューションの提供を開始しています。

 さらに、産学連携に基づく科学的知見を踏まえた気候変動および自然関連リスクの研究を行うとともに、セミナーの開催、子どもたちへの「ぼうさい授業」の継続的な実施等の防災教育・啓発活動を推進しています。

 

③リスク管理

東京海上グループは、ERMに基づいてグループ全体のリスク管理を行うとともに、その高度化に取り組んでいます。災害に関するリスクについても、ERMの枠組みのなかで自然災害が保険引受に及ぼす影響等を考慮しながら適切に取り組んでいます(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです)。

 

④指標と目標

東京海上グループの指標と目標は以下のとおりです。

・社会の災害レジリエンス向上に不可欠な火災保険制度を持続的に運営する。

・防災・減災につながる保険商品を開発し、提供するソリューションを増加させる。

・BCP(事業継続計画)策定支援の内容を充実させるとともに、支援の提供先を増加させる。

 

(4)人的資本

①ガバナンス

 グループ全体へのガバナンスとして、内部統制基本方針に基づき人事に関する基本方針を定め、人事に関しての基本的な考え方、統括部署の設置、各種基準の策定等の態勢整備等を示すとともに、グループ会社における重要な人事制度改定等における承認および報告の基準を定め、人事に関するガバナンス体制を構築しています。また、取締役会は関連議案の報告を受けて人的資本に関する取組みについて審議し、執行を適切に監督しています。

 グループの人事を統括するチーフオフィサーは、東京海上グループの人的資本経営に関する議題および施策を取締役会に報告することで人事戦略と経営戦略の連動性を高め、人事戦略に基づく施策の実行によって人的資本を強化し、経営戦略がめざす姿の実現を図ります。

 

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②戦略

a)人事戦略の全体像

<人的資本経営に関する考え方>

 “People’s Business”と呼ばれる保険事業を祖業とする東京海上グループは、創業以来、一貫して「人」を最も重要な資産と位置づけています。パーパスの実現に向けて挑戦を重ねる「人」の力を高めていくことが、企業としての成長の原動力、競争優位の源泉に繋がるとの考えのもと、社員一人ひとりを尊重し、そのポテンシャルを最大限に発揮できる環境を整えることをめざしています。

 

<経営戦略と連動した人事戦略>

 東京海上グループは、2035年にめざす姿を「お客様や社会の課題/リスクに対して“イノベーティブなソリューションを届け続けるパートナー”」と設定し、その実現に向けて、下図の中期経営計画を掲げています。人事戦略は、当社の強みである「グループ基本戦略」を支え、中期経営計画の達成確度を高めるための基盤として、「グループ一体経営を支える“人材”の安定的・継続的な輩出」および「グループ一体経営を支える“企業文化”のさらなる浸透」を両軸として取組みを進めています。

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 経営戦略における重点施策ごとに人事面から対応すべき課題を特定し、人事施策を立案・実行しています。また、その進捗状況をモニタリングするための指標を設定し、各施策がめざす姿と現状とのギャップを明確にしながらPDCAを実施しています。

 

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(注)1.DE&I:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

2.CVS:Culture & Values Survey(以下「CVS」といいます)

3.TLI:Tokio Marine Group Leadership Institute

4.MAP:Management Associate Program

 

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(注)1.各年度末時点におけるCxO、Deputy CxO等のうち外国人の比率。

2.東京海上日動火災保険株式会社で採用し、当社に出向中の社員を含む。

3.エンゲージメントの状況やパーパスの浸透度等を測るCVSの関連項目にかかるスコア平均(5点満点)。CVSは、2024年度に質問項目を一部変更しています。

4.各年度初日時点、管理職以上(役員含む)に女性が占める割合。2024年度については、2024年4月の人事制度改定により新設した役職であるユニットリーダーを含む。

 

b)人材育成方針:グループ一体経営を支える“人材”

 グループ一体経営を担う人材の安定的・継続的な輩出に向けて、グループ経営体制の強化と戦略整合的な人材ポートフォリオの構築に取り組み、経営戦略のめざす姿の実現に必要なケイパビリティを強化しています。

イ)グループ経営体制の強化

●多様な人材で構成された経営体制構築

 海外子会社人材のグループ経営への積極登用等を通じたグループ横断での知見活用や、取締役会における女性比率の向上等を通じて、執行・監督の両面から経営判断の質を高めることをめざした体制構築に取り組んでいます。

 

●グループ経営人材の安定的・継続的な輩出

<Tokio Marine Group Leadership Institute>

 経営陣の強いコミットのもと、グループ経営人材候補の特定、能力開発、登用、配置を一体的に組み合わせた次世代人材育成プログラム「Tokio Marine Group Leadership Institute」を基軸にしています。多様なバックグラウンドをもつ参加者たちが、自社や自国市場の枠を超えて東京海上グループのパーパスのもとに団結し、経営課題に対する高い視座や解決アプローチを身につける独自のプログラムです。

 

<タレントマネジメント>

 CEOを含む経営陣が参加し、年3回のタレントマネジメント会議を開催しています。グループ横断のタレントプールに約300名の候補者を選定し、ストレッチアサインメントやグローバル研修等、タレントごとのキャリアディベロップメント・プランを議論します。

 

<Management Associate Program>

 経営戦略の遂行に必要な高い専門性を有する若手人材の育成を目的にした、グループ横断の研修プログラムを実施しています。海外大学からの新卒社員および国内外のグループ会社の若手社員が、2年間で複数のグループ会社・部門・チームをローテーションし、専門性やグローバルな視点の獲得をめざします。

 

ロ)戦略整合的な人材ポートフォリオの構築

●成長領域への人材の配置

 事業環境の変化を成長機会として捉えるために、ソリューション事業等の成長領域に積極的に人材を配置しています。また、各領域における専門性を有する人材を積極的にキャリア採用し、事業に必要なケイパビリティを確保しています。

 

●イノベーションを生む環境創出

 グループの成長に資するビジネスモデルの創造・新規事業創出を目的とした社内公募制プログラム「Tokio Marine Innovation Program」を開催しています。優秀案に選定された応募者は、新規事業を担う部門への異動等を通じて、事業化をめざすことができます。本制度を通じて会社全体のイノベーションマインドを高め、一人ひとりの発意にあふれた挑戦を後押ししています。

 

●デジタル・ケイパビリティの向上

 環境変化に対応していくために、全ての社員がDX推進の担い手として学び、成長していく必要があるという考えに基づき、Tokio Marine DX Academyを運営しています。担当業務や役割に応じて対象層ごとに研修や育成プログラムを提供することで、全社のDX人材育成を推進しています。

 

●ガバナンス強化に向けた専門人材の拡充

 グローバルな事業の拡大・多様化が進むなかで、成長とガバナンスの高位均衡を実現するために、リスク管理、法務・コンプライアンス、内部監査等の領域における専門人材の採用・育成を継続し、グループ会社横断での活用を推進しています。また、東京海上日動火災保険株式会社では、「本当に信頼されるお客様起点の会社」を実現するため、人材育成の目的である「個人と組織の成長」に不可欠なものとして「規律」を重視し、インテグリティや高い規範意識を持った人材の育成に取り組んでいます。

 

c)環境整備方針:グループ一体経営を支える“企業文化”

 国内外で5万人を超えるグループ社員が持つ力を最大限発揮していくために、多様な人材が一体となり、社員一人ひとりがいきいきと働ける風土づくりを推進していきます。

イ)グループ一体感の醸成

●パーパスの浸透

 グループ社員が熱意と一体感を持って社会課題の解決に取り組むためには、グループ共通の羅針盤・拠り所となるパーパスが不可欠です。また、健全なガバナンスの観点からも、良いカルチャーをグループ全体に浸透させることは極めて重要であると考えています。グループCEO自らがグループカルチャー総括(CCO)として先頭に立って継続的なメッセージを発信するとともに、CCOオフィス(部門横断のバーチャル組織)が研修プログラムやグループ表彰等のパーパス浸透施策を推進しています。

 

●DE&Iの推進

 東京海上グループでは、DE&Iを成長戦略の最重要課題と位置付けています。全ての人が持てる力を最大限発揮できる人事制度、人事施策および職場環境の整備に向けて様々な取組みを推進することで、グループベースのシナジー・イノベーション創出、意思決定層の多様化やエンゲージメント向上に繋げることをめざしています。

 

<ダイバーシティカウンシル>

 グループCEO直轄のDE&I推進に関する諮問機関として、2021年より年2回開催しています。経営陣・社員代表・社外有識者が集い、多様な知見・意見を共有し、グループベースでDE&I推進に向けた議論を進めています。

 

<女性社員のエンパワーメントを図る取組み>

 女性社員一人ひとりが自律的にキャリアを構築し、より広いフィールドで活躍するための環境創りや人材育成を、積極的に推進しています。2024年には「Global Women’s Conference」を初めて開催し、有識者による講演やテーマごとのディスカッションを行い、世界中から集まった参加者の学びとネットワーキングの機会としています。

 

<男女間賃金格差解消に向けた取組み>

 東京海上日動火災保険株式会社では、真にインクルーシブで自由闊達な組織風土のもと、多様な社員がエンゲージメント高く働くことで、全ての社員と会社双方が持続的に成長することをめざしています。なかでも、ジェンダーギャップ解消を優先すべき課題と捉え、賃金格差の解消に向けた取組みを進めています。

 

[男女間賃金格差の主な要因]

 東京海上日動火災保険株式会社において、男性と女性の間で賃金格差が生じている要因の分析を行った結果、勤務地区分および勤続年数の差異による影響が大きいことを確認しています。

・勤務地区分

 転居を伴う転勤(以下「転居転勤」といいます)の有無で賃金差を設けており、転居転勤がある「総合職」に男性が多く、転居転勤が原則無い「総合職(エリア限定)」に女性が多いことから、男性の賃金水準が高い傾向がある。

・勤続年数

 男性と女性を比較すると、男性の平均勤続年数が長く、これに伴い男性の賃金水準が高い傾向がある。

 

          <勤務地区分>                     <勤続年数>

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[男女間賃金格差解消に向けた主な取組み]

 2026年4月に以下の人事制度・運用変革を実現し、全ての社員が持てる力を最大限発揮できる環境を実現します。

・My Aspiration(社員一人ひとりの想い)を起点とした転居転勤政策への転換

「総合職」「総合職(エリア限定)」の勤務地区分を廃止し、「総合職」に統一するとともに、全ての総合職が「本拠地」を定め、毎年、転居転勤への同意有無を申告する制度を導入

・成果・実力・職責に応じた評価・処遇

「4つのフリー(注)」の考え方を軸に、属性によらず、成果・実力・職責に応じて適正に評価・処遇する制度・運用へと変革

 

 仕事とライフ(育児・介護)の両立支援策のさらなる拡充

・スーパーマイセレクト制度(5時から22時の間で、始業および終業時刻の変更を可能とする制度)やリモートワーク等により、時間・場所を問わず柔軟な働き方を実現

・パートナー参加型の仕事・育児の両立支援セミナー「すくすくペンギン会」や上司が育児疑似体験を行う「もしもチャレンジ」等の施策を通じた、「仕事とライフの両立」をしやすい職場風土の醸成

 

(注)東京海上日動火災保険株式会社がDE&I推進のために掲げる4つの方針:ジェンダーフリー(LGBTQへの取組みや性別の壁の打破)、エイジフリー(入社年次や社員間の年齢の壁の打破)、ボーダーフリー(コース区分・国籍・障がい・キャリア採用等の壁の打破)、ワークスタイルフリー(個々人のライフスタイルに合わせた働き方の壁の打破)

 

<障がい者の雇用促進>

 東京海上グループは「障がい者の雇用促進と働く環境創りを通じて社会課題を解決し、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に貢献すること」をめざし、グループ各社において障がい者雇用とノーマライゼーションの意識浸透に努めています。

 

ロ)エンゲージメントの向上

●働きがいの向上

<エンゲージメント向上のためのPDCAサイクルの実行>

 社員一人ひとりの働きがいを高め、持っている力を最大限発揮するためには、エンゲージメントの状況および課題を的確かつ網羅的に把握し、改善に繋げていくことが必要です。東京海上日動火災保険株式会社では、2020年度より「エンゲージメントサーベイ」を導入し、各組織において定性的かつ定量的な分析結果をもとに課題を特定し、対策の実行および効果測定を行っています。

 

<働きがい向上のための取組み>

 当社および東京海上日動火災保険株式会社では、「個人および会社双方の成長の実現」というゴールに向けて、社員一人ひとりの想い(=My Aspiration)と会社のパーパスとの“つながり”を強めていく取組み(LINK)を推進しています。上司・部下間の1on1や、お互いのMy Aspirationを共有して組織の一体感を高めるダイアローグ等、様々な施策で対話の質の向上を図り、社員のキャリア形成の実現を支援しています。

 また、東京海上日動火災保険株式会社では、社員自らが希望する職務に手を挙げて異動をする「JOBリクエスト制度」を実施しています。その他、グループ全体では、社員が自らの意思で東京海上日動火災保険株式会社に1年間の研修出向ができる「Group-wide Open Training」や、海外グループ会社の社員を最長3か月間当社で受け入れ、業務を通じて専門知識を深める機会を提供する「Short-term Group-wide Job Training Scheme」等を実施しています。

 

●働きやすさの向上

<社員が心身ともに健康でいきいきと働くためのグループ全体の環境整備>

 「お客様に“あんしん”をお届けし、選ばれ、成長し続ける会社」であるために、その原動力となる社員の心身の健康は重要なテーマです。そのために、当社は「東京海上グループ健康憲章」を定め、グループを挙げて健康経営を推進しています。2024年度より毎年6月を「Tokio Marine Wellness Month」とし、メッセージリレー、ウォーキングイベント、仕事と介護との両立に関するセミナー等、グループが一体となって社員の心身の健康の保持・増進を図る取組みを実施しています。

 

d)人的資本経営の成果を測る指標

 人事戦略が有効に機能し、社員が生み出す価値の持続的な向上に繋がっていることを測る観点から「一人あたり創出価値(注)1」を指標として設定しています。

 

<一人あたりの創出価値>

 

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(注)1.一人当たり創出価値=修正純利益(Normalizedベース)÷連結従業員数

2.実力を示す指標として、各年度の利益実績から一過性要素(自然災害関連保険金、コロナ関連の保険金等)を補正した「Normalizedベース」の利益水準を使用

3.東京海上日動火災保険株式会社および東京海上日動あんしん生命保険株式会社の事業別利益(Normalizedベース)ならびに従業員数をもとに算出(東京海上日動火災保険株式会社のみ為替の影響を控除)

4.北米の3社(Philadelphia Insurance Companies, Delphi Financial GroupおよびTokio Marine HCC)の事業別利益(Normalized ベース)および従業員数をもとに算出

 

 東京海上グループの人的資本経営、人事戦略の詳細およびグループにおける取組みの具体例については、人的資本レポート「Human Capital Report」(2025年版は同年7月末発行予定)に記載しています。

 

③リスク管理

 形のない保険や関連するサービスを中核事業とする東京海上グループにおいては、「人」が創り上げる信頼が全ての源泉であり、「人」の力の最大化がパーパスの実現を通じた成長の原動力です。人材の流動性が高まるなか、人材マーケットにおける競争力低下は、人材採用の計画未達および社員の離職に繋がり、当社の経営戦略の遂行を困難にさせる大きなリスクです。人事戦略の実践を通じて、社員一人ひとりへ成長機会を提供し、活躍できる環境を整えることで、このようなリスクの低減に努めています。

 

④指標と目標

 「②戦略 a)人事戦略の全体像」に記載のとおりです。

 

 なお、本項の記載には将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

3【事業等のリスク】

 東京海上グループは、「リスク」、「資本」および「リターン」の関係を常に意識し、リスク対比での健全性と収益性を両立しながら高いROEをめざす「リスクベース経営(ERM:Enterprise Risk Management)」を行っています。

 

○リスクベース経営(ERM)のイメージ図

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 具体的には、リスクアペタイト・フレームワークを起点に、事業計画の策定および検証ならびに事業計画に基づいた資本配分計画を決定するERMサイクルにより「リスク」、「資本」および「リターン」を適切にコントロールし、企業価値の持続的な拡大をめざしています。

 

○ERMサイクルのイメージ図

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(注)1.環境変化等により新たに現れるリスクであり、従来リスクとして認識されていないものおよびリスクの程度が著しく高まったものをいいます。

 

2.財務の健全性、業務継続性等に極めて大きな影響を及ぼすリスクをいいます。具体的には、エマージングリスクおよび前事業年度のグループの重要なリスクにつき、影響度(経済的影響、業務継続への影響およびレピュテーションへの影響で評価し、最も大きいものを採用)ならびに頻度・蓋然性を評価し、以下の5×5のマトリクスを用いて特定しています。

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3.重要なリスクについて、対応策のPDCAを実施しています。

 

(1)定性的リスク管理

 事業運営を行うなかで直面する様々なリスクを網羅的に把握して対応するため、エマージングリスクの洗出しならびに重要なリスクの特定、評価および対応策のPDCAを実施し、毎年取締役会に報告しています。

 当社ではこのようなリスク管理を実施してきましたが、東京海上日動で情報漏えい事案が発生したことを踏まえ、「重要なリスク」の一つである「法令・規制への抵触/コンダクトリスク」の対応を進めるとともに、「重要情報の漏えい」を追加して対応策を策定しました。

 

○重要なリスクの一覧

重要なリスク/シナリオ

対応例

①経済・金融危機

〇リーマンショック級の世界金融危機、地政学リスクや大規模災害等に起因する金融・資本市場の混乱等により、東京海上グループの保有資産の価値が下落する。

〇政府への信認毀損による日本国債暴落、ハイパーインフレーション等により、東京海上グループの保有資産の価値が下落する。

<経済的影響への対応>

・地政学リスク等の市場への影響を調査する。

・信用リスク集積管理等により、エクスポージャーをコントロールする。

・ストレステストを行い、資本十分性や資金流動性を確認する。

・金融危機のアクションプランを整備する。

②巨大地震

〇首都直下地震、南海トラフ巨大地震、米国における大規模地震が発生し、人的・物的被害が甚大となり、東京海上グループの事業を含む社会や経済活動が停滞するとともに保険金支払が多額になる。

<経済的影響への対応>

・リスクの集積を含めて適切にリスクを評価し、お客様のニーズに沿った商品の開発を行いつつ、リスクに見合った引受け、リスク分散および再保険手配を行うことで利益の安定化を図る。

・②、③および⑤はストレステストを行い、②および⑤については資本十分性や資金流動性を、③については資金流動性を確認する。

 

<事業継続への影響やレピュテーションへの対応>

・危機管理態勢(後記(3)参照)や事業継続計画等を整備し、有事訓練により実効性を確認する。

・⑥については、外部委託管理に関する施策の展開やサイバーセキュリティ態勢も整備し、有事訓練により実効性を確認する。

③巨大風水災・セカンダリーぺリル

(含む気候関連物理的リスク)

〇巨大台風や集中豪雨の発生や、雹災・森林火災・洪水等のセカンダリーぺリルの多発により、物的被害が甚大となり、東京海上グループの事業を含む社会や経済活動が停滞するとともに保険金支払が多額になる。

④火山噴火

〇富士山噴火等が発生し、降灰等により物的被害が甚大となり、東京海上グループの事業を含む社会や経済活動が停滞するとともに保険金支払が多額になる。

⑤新ウイルスのまん延

〇致死率の高い感染症がまん延し、保険金支払が多額になる。

⑥サイバーリスク

〇多くの東京海上グループの顧客やそのサプライチェーンがサイバー攻撃を受け、保険金支払が多額になる。

〇東京海上グループや外部委託先のシステムがサイバー攻撃を受け、事業活動の停滞が発生する。

⑦重要情報の漏えい

○東京海上グループや外部委託先へのサイバー攻撃、クラウドシステム等における不適切なアクセス設定により重大な情報漏えいが発生し、お詫び費用等によって多額の損失が発生するとともに、レピュテーションを毀損する。

〇従業員による他社の重要情報の不正取得や、当社グループの重要情報の不正持出しによってお詫び費用等が生じ、多額の損失が発生するとともに、レピュテーションを毀損する。

<事業継続への影響やレピュテーションへの対応>

・情報セキュリティや情報保護について、各社の運用状況をモニタリングし、グループとして必要な支援を行う。

・情報セキュリティ研修等の従業員のセキュリティ意識・知識向上に向けた対策を行う。

⑧法令・規制への抵触/コンダクトリスク

〇競争法(独占禁止法や不正競争防止法)、個人情報保護、マネー・ローンダリング防止、米中対立やウクライナ戦争に関連した経済制裁強化等に関する規制等に抵触し、罰金等を科されるとともに、レピュテーションを毀損する。

〇業界・企業慣行と世間の常識との乖離や重要法令への意識・知識不足により顧客に不利益が発生すること、適切な企業文化の醸成が不足すること等で東京海上グループの取組みが社会から不適切とみなされることにより、レピュテーションを毀損する。

<事業継続への影響やレピュテーションへの対応>

・グループ会社の法令遵守状況をモニタリングし、態勢整備に向けた支援を行う。

・国内外の社会環境、行政機関の動向、法令規制改正等を把握し、必要な対策を講じる。

・従業員の意識や行動に関する調査について、グループとしてめざす姿に関連した設問を拡充したうえで、好取組事例の収集や展開を行い、東京海上グループの取組みを改善する。

⑨地政学リスク

○国家間の対立が軍事衝突に発展し、人的・物的被害が甚大となり、東京海上グループの事業を含む社会や経済活動が停滞する。

〇国際秩序の乱れにより事業環境が悪化し、東京海上グループの事業を含む社会や経済活動が停滞する。

<事業継続への影響やレピュテーションへの対応>

・危機管理態勢(後記(3)参照)や事業継続計画等を整備し、有事訓練により実効性を確認する。
(経済的影響への対応は上記①に記載)

・情報収集や外部専門家の知見も活用し、適切な状況把握や将来予測を行う。

⑩インフレーション

〇原材料費の高騰や世界的な物価の急激な上昇等により、保険金支払単価が上昇し、リスクに見合った商品改定や再保険調達ができず保険引受利益が減少する。

<経済的影響への対応>

・インフレーションの保険商品への影響を分析し、リスクに見合った商品改定や引受けを行う。

⑪当社事業領域におけるディスラプション

〇デジタルトランスフォーメーションや革新的な新規参入者、規制・市場環境の変化等により、産業構造が大きく転換するようなイノベーションが発生し、既存のビジネスモデルが陳腐化することで東京海上グループの競争優位性が失われ、収入保険料や利益が大きく減少する。

<経済的影響への対応>

・デジタルトランスフォーメーションの基本戦略推進とプロジェクトの実行を通じて、保険事業の競争優位性を確保する。

・保険に留まらないソリューション事業の確実な成長に向けた取組みを展開する。

⑫AI/データガバナンスの不足

〇AIやデータの利活用を進めるなかで、脆弱性・誤情報の出力や倫理上の問題の課題等を適切に管理できないことにより、訴訟の発生やレピュテーション毀損が発生する。または、生産的な事業活動が阻害される。

<事業継続への影響やレピュテーションへの対応>

・AIやデータの利活用に関するグループ共通のルール、AIガバナンス基盤の整備等を通じて、当社やグループ会社の態勢整備を行う。

 

 

○エマージングリスクの例

エマージングリスク/シナリオ

対応例

①脱炭素・自然共生社会への不適切な対応
(気候・自然関連移行リスク)

〇脱炭素・自然共生社会への移行に乗り遅れた投資先企業の企業価値が下落し、東京海上グループの保有資産の価値も下落する。

〇脱炭素・自然共生社会への東京海上グループの取組みが社会から不適切とみなされ、レピュテーションを毀損する。

・「環境および社会リスクに対処する東京海上グループポリシー」を表明し、引受禁止/留意事業を特定している。

・新たな脱炭素技術に関連する保険商品・リスクコンサルティングサービスの開発を加速している。

・従来の情報に加え、非財務情報についても投資判断に考慮する「ESGインテグレーション」を実施している。

・東京海上日動では、保険引受に伴う温室効果ガス排出量の約9割を占める大口顧客に、保険商品・サービスの提供や対話を通じた脱炭素計画の策定を求めている。また、2030年までに脱炭素計画未策定の場合は取引を行わない方針であることを公表している。加えて、自然共生社会への移行に向けてエンゲージメントも実施している。

②地球温暖化、自然資本・生物多様性の喪失
(気候・自然関連物理的リスク)

〇地球温暖化や自然資本・生物多様性の喪失の進行により自然災害の激甚化等が進み、短期的にも長期的にも保険金支払が増大する。

・自然災害リスク評価の高度化に向け、自然災害に関するリスク計測モデル精緻化や、気候変動の影響を評価する手法の開発等に取り組んでいる。

・事業の自然への依存や影響について、研究・分析に取り組んでいる。

・保険引受・投融資ポートフォリオの自然資本・生物多様性へのインパクト・影響度を分析し、TNFDレポートにおいて公表している。

③ビジネスパートナーリスク

〇企業活動に対するバリューチェーン全体を見渡した責任・期待が高まっているなか、業務提携・委託・協業先において、不祥事や事故が発生し、当社の事業継続やレピュテーションに重大な影響が生じる。

・「責任ある調達のためのガイドライン」を定め、基本的な考え方をグループ内へ周知したうえで、ビジネスパートナーにも取組みへの協力を促している。

・外部委託先やビジネスパートナー選定における経済安全保障に関する観点を整理のうえ、各社での取組みを推進している。

④事業ポートフォリオの拡大・変遷に伴う経営管理リスク

〇グループ会社に対して、業態・規模・地域性等に即した最適な経営管理を行えず、不適正事案の発生や経営状態の悪化が生じる。

・ソリューション事業の新たな取組みについては、経営支援チームを組成して内部統制の態勢整備を行うとともに、PoC(実証実験)を通じてリスクの抑制を図っている。

・ソリューション事業の買収案件に関しては、PMIチームを編成して買収先の実態を把握したうえで、内部統制の整備や当社における経営管理態勢の構築を行っている。

⑤グローバルな人権尊重対応の遅れ

〇人権尊重に関する東京海上グループの取組みが社会から不適切とみなされ、レピュテーションを毀損する。

・「人権基本方針」を定め、バリューチェーンを含むあらゆる事業活動における人権尊重を推進する姿勢を示すとともに、ビジネスパートナーに対しても本方針の実践を促している。

・保険引受・投融資先における人権尊重を推進する取組みとして、特定セクターにおける人権リスクの予防・軽減を評価する「環境・社会リスクへの対応方針」を定め、対外公表している。

・当社役職員向けのホットラインに加えて、外部ステークホルダー向けのホットラインを設置している。

 

 

(2)定量的リスク管理

 格付けの維持および倒産の防止を目的として、保有しているリスク対比で実質純資産が十分な水準にあることを多角的に検証し、財務の健全性が確保されていることを、取締役会において確認しています。

 具体的には、リスクをAA格相当の信頼水準である99.95%バリューアットリスク(VaR)(注)1で定量評価し、実質純資産(注)2をリスク量で除したエコノミック・ソルベンシー・レシオ(以下「ESR」といいます)の水準により、資本の十分性を確認するとともに、事業投資機会や今後の市場環境の見通し等を総合的に勘案して資本政策を決定しています。

 東京海上グループのESRのターゲットレンジは100~140%です。2025年3月末時点におけるESRは149%となり、資本が十分な水準にあることを確認しています。なお、2025年度は、自己株式取得について年間を通じて2,200億円を、期中の市場環境や株価の状況等を総合的に勘案して機動的に実施する方針を2025年5月20日付で公表しており、これを考慮した場合のESRは143%となります。

また、重要なリスクのうち、経済・金融危機、巨大地震および新ウイルスのまん延については、経済的損失が極めて大きいと想定されるシナリオならびに複数の重要なリスクが同時期に発現するシナリオに基づき、資本十分性および資金流動性に関するストレステストを実施しています。また、巨大風水災についても資金流動性に関するストレステストを実施しています。その結果、いずれも問題がないことを確認しています。

(注)1.将来の一定期間のうちに、一定の確率の範囲内で被る可能性のある最大損失額のことをいいます。99.95%VaRとは、今後1年間の損失が99.95%の確率でその額以内に収まる金額水準です。

2.財務会計上の連結純資産に、資産と負債を時価評価し、異常危険準備金の加算やのれんの控除等の調整を加えて算出します。

 

○ESRの状況

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(3)危機管理

 定性的リスク管理および定量的リスク管理を行っていても、全てのリスクを完全にコントロールすることは困難であり、また、自然災害のように発生を抑えることが不可能なリスクも存在します。

 そのため、有事に際して被る経済的損失等を極小化し、迅速に通常業務へ復旧するため、危機管理態勢や緊急事態時アクション等を整備しています。

 また、当社はグループ会社に対し支援・指示・指導を行い、グループ会社は当社に対し報告・連絡・相談を行うことで、グループ会社においても平時から危機管理態勢や緊急事態時アクション等の整備を行うとともに、緊急事態時においては復旧や事業継続を迅速・的確に対応できるよう努めています。

 さらに、自然災害やサイバー攻撃等、緊急事態(注)となり得る事象を想定した模擬訓練を実施し、緊急事態時の実践力・応用力も高めています。

(注)東京海上グループの各社と顧客・代理店等の利害関係者との関係に重大な影響が生じる事態または東京海上グループの各社の業務に著しい支障が生じると判断される事態です。具体的には、自然災害、パンデミック、システム障害、サイバー攻撃、重要情報の漏えい、重大な法令違反および業務停止命令等、重要なリスクの発現やそれに準じた事態の発生を想定しています。

 

○東京海上グループの危機管理態勢

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 なお、本項の記載には将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりです。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の世界経済は、米国では労働市場や個人消費は徐々に減速したものの全体としては堅調さを維持し、中国では政策効果もあり持ち直しましたが、欧州では弱い動きが続きました。わが国経済は、引き続き物価上昇等を背景にした内需の弱さがみられ、回復のペースは緩やかなものに留まりました。また、気候変動による災害の激甚化、不透明感を増す各国の政治・社会情勢および地政学リスク等、東京海上グループを取り巻く環境は一層複雑化しています。

 このような情勢のもと損害保険・生命保険を中心に国内外で事業展開を行った結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は、以下のとおりとなりました。

 連結総資産は、前連結会計年度末に比べて6,424億円増加し、31兆2,373億円となりました。

 保険引受収益6兆2,755億円、資産運用収益1兆9,886億円等を合計した経常収益は、前連結会計年度に比べて1兆154億円増加し、8兆4,401億円となりました。一方、保険引受費用4兆9,933億円、資産運用費用5,446億円、営業費及び一般管理費1兆4,013億円等を合計した経常費用は、前連結会計年度に比べて3,980億円増加し、6兆9,801億円となりました。

 この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べて6,174億円増加し、1兆4,600億円となりました。

 経常利益に特別利益、特別損失、法人税等合計などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べて3,594億円増加し、1兆552億円となりました。

 また、親会社株主に帰属する当期純利益から保険事業特有の各種準備金の影響や資産の売却・評価損益等の当該年度の特殊要因を控除した修正純利益(グループ全体の業績を示す管理会計上の経営指標)は、前連結会計年度に比べて5,034億円増加し、1兆2,150億円となりました。

 

 報告セグメント別の状況は、以下のとおりです。

 

[国内損害保険事業]

  国内損害保険事業においては、経常収益は、前連結会計年度に比べて6,197億円増加し、3兆8,865億円となりました。経常利益は、前連結会計年度に比べて5,698億円増加し、8,933億円となりました。国内損害保険事業における保険引受および資産運用の状況は、以下のとおりです。

 

a)保険引受業務

イ)元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

537,264

18.72

1.19

586,753

19.53

9.21

海上保険

93,848

3.27

△1.61

96,407

3.21

2.73

傷害保険

248,522

8.66

△0.26

255,115

8.49

2.65

自動車保険

1,253,172

43.67

1.58

1,295,782

43.13

3.40

自動車損害賠償責任保険

197,491

6.88

△11.60

198,589

6.61

0.56

その他

539,352

18.80

4.88

571,383

19.02

5.94

合計

2,869,651

100.00

0.80

3,004,031

100.00

4.68

(うち収入積立保険料)

(42,515)

(1.48)

(△15.78)

(44,183)

(1.47)

(3.92)

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

2.元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金および元受その他返戻金を控除したものです(積立型保険の積立保険料を含みます。)。

ロ)正味収入保険料

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

444,538

17.14

1.36

478,971

17.70

7.75

海上保険

85,127

3.28

0.13

90,761

3.35

6.62

傷害保険

200,423

7.73

4.07

205,176

7.58

2.37

自動車保険

1,247,816

48.12

1.53

1,290,266

47.68

3.40

自動車損害賠償責任保険

209,040

8.06

△7.20

200,441

7.41

△4.11

その他

406,214

15.66

4.26

440,742

16.29

8.50

合計

2,593,160

100.00

1.29

2,706,360

100.00

4.37

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

ハ)正味支払保険金

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

262,398

17.29

△4.14

235,238

15.15

△10.35

海上保険

49,117

3.24

24.71

53,103

3.42

8.12

傷害保険

98,604

6.50

△3.63

105,121

6.77

6.61

自動車保険

726,078

47.83

9.20

773,333

49.80

6.51

自動車損害賠償責任保険

162,918

10.73

3.22

162,500

10.47

△0.26

その他

218,785

14.41

2.09

223,450

14.39

2.13

合計

1,517,902

100.00

4.50

1,552,748

100.00

2.30

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

b)資産運用業務

イ)運用資産

区分

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

402,551

4.60

425,489

5.58

買現先勘定

999

0.01

299,812

3.93

買入金銭債権

2,722

0.03

121,697

1.59

金銭の信託

7

0.00

7

0.00

有価証券

6,459,527

73.77

4,937,787

64.71

貸付金

549,723

6.28

545,912

7.15

土地・建物

199,763

2.28

197,158

2.58

運用資産計

7,615,295

86.97

6,527,864

85.55

総資産

8,756,578

100.00

7,630,349

100.00

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

ロ)有価証券

区分

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

1,094,092

16.94

1,016,756

20.59

地方債

48,344

0.75

26,287

0.53

社債

513,930

7.96

466,464

9.45

株式

3,567,463

55.23

2,163,818

43.82

外国証券

1,214,275

18.80

1,234,364

25.00

その他の証券

21,420

0.33

30,096

0.61

合計

6,459,527

100.00

4,937,787

100.00

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

ハ)利回り

ⅰ)運用資産利回り(インカム利回り)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

327

388,377

0.08

350

440,309

0.08

コールローン

8

0.00

75

16,360

0.46

買現先勘定

0

999

0.01

34

12,539

0.28

買入金銭債権

16

32,611

0.05

986

223,648

0.44

金銭の信託

675

0.00

0

7

0.07

有価証券

153,142

3,232,250

4.74

156,170

3,041,566

5.13

貸付金

27,664

481,471

5.75

29,082

538,553

5.40

土地・建物

5,267

201,837

2.61

5,405

197,992

2.73

小計

186,419

4,338,231

4.30

192,105

4,470,977

4.30

その他

4,542

4,727

合計

190,961

196,833

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

2.収入金額は、連結損益計算書における「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額です。

3.平均運用額は、原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。ただし、コールローン、買現先勘定および買入金銭債権については、日々の残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。

 

ⅱ)資産運用利回り(実現利回り)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

13,243

388,377

3.41

3,080

440,309

0.70

コールローン

8

0.00

75

16,360

0.46

買現先勘定

0

999

0.01

34

12,539

0.28

買入金銭債権

16

32,611

0.05

978

223,648

0.44

金銭の信託

0

675

0.02

0

7

0.13

有価証券

339,928

3,232,250

10.52

933,804

3,041,566

30.70

貸付金

46,342

481,471

9.63

15,929

538,553

2.96

土地・建物

5,267

201,837

2.61

5,405

197,992

2.73

金融派生商品

△128,363

△72,974

その他

7,686

1,728

合計

284,123

4,338,231

6.55

888,063

4,470,977

19.86

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

2.資産運用損益(実現ベース)は、連結損益計算書における「資産運用収益」および「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額です。

3.平均運用額(取得原価ベース)は、原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。ただし、コールローン、買現先勘定および買入金銭債権については、日々の残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。

[国内生命保険事業]

国内生命保険事業においては、経常収益は、前連結会計年度に比べて16億円減少し、6,393億円となりました。経常利益は、前連結会計年度に比べて130億円増加し、701億円となりました。国内生命保険事業における保険引受および資産運用の状況は、以下のとおりです。

 

a)保険引受業務

イ)保有契約高

区分

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

金額

(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

個人保険

27,858,055

△1.86

27,225,275

△2.27

個人年金保険

1,796,195

△4.40

1,699,456

△5.39

団体保険

1,664,237

△12.98

1,617,708

△2.80

団体年金保険

2,712

△2.04

2,650

△2.27

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

2.個人年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものです。

3.団体年金保険については、責任準備金の金額です。

 

ロ)新契約高

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

新契約+転換による純増加

(百万円)

新契約

(百万円)

転換による

純増加

(百万円)

新契約+転換による純増加

(百万円)

新契約

(百万円)

転換による

純増加

(百万円)

個人保険

1,935,517

1,935,517

1,746,053

1,746,053

個人年金保険

団体保険

8,970

8,970

61,634

61,634

団体年金保険

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

2.新契約の個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資の額です。

3.新契約の団体年金保険の金額は、第1回収入保険料です。

 

b)資産運用業務

イ)運用資産

区分

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

70,567

0.80

234,147

2.96

買入金銭債権

5,331

0.07

有価証券

8,345,140

94.21

7,170,877

90.77

貸付金

253,418

2.86

248,471

3.15

土地・建物

1,514

0.02

1,579

0.02

運用資産計

8,670,640

97.88

7,660,407

96.97

総資産

8,858,300

100.00

7,900,008

100.00

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

ロ)有価証券

区分

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

7,061,540

84.62

5,838,082

81.41

地方債

5,610

0.07

5,609

0.08

社債

533,032

6.39

526,098

7.34

株式

194

0.00

130

0.00

外国証券

448,014

5.37

462,656

6.45

その他の証券

297,178

3.56

338,300

4.72

合計

8,345,140

100.00

7,170,877

100.00

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

ハ)利回り

ⅰ)運用資産利回り(インカム利回り)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

0

64,290

0.00

14

139,047

0.01

債券貸借取引支払保証金

5

16,349

0.03

買入金銭債権

68

3,926

1.74

有価証券

106,945

7,948,564

1.35

103,934

7,403,356

1.40

貸付金

18,639

254,874

7.31

17,778

250,739

7.09

土地・建物

1,411

0.00

283

1,877

15.11

小計

125,584

8,269,141

1.52

122,085

7,815,296

1.56

その他

合計

125,584

122,085

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る収入金額および平均運用額については、除外しています。

2.収入金額は、連結損益計算書における「利息及び配当金収入」です。

3.平均運用額は、原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。ただし、債券貸借取引支払保証金および買入金銭債権については、日々の残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。

 

ⅱ)資産運用利回り(実現利回り)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

124

64,290

0.19

0

139,047

0.00

債券貸借取引支払保証金

5

16,349

0.03

買入金銭債権

112

3,926

2.87

有価証券

115,617

7,948,564

1.45

△103,552

7,403,356

△1.40

貸付金

14,034

254,874

5.51

7,869

250,739

3.14

土地・建物

1,411

0.00

283

1,877

15.11

金融派生商品

△39,725

△19,928

その他

合計

90,050

8,269,141

1.09

△115,208

7,815,296

△1.47

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る資産運用損益および平均運用額については、除外しています。

2.資産運用損益(実現ベース)は、連結損益計算書における「資産運用収益」から「資産運用費用」を控除した金額です。

3.平均運用額(取得原価ベース)は、原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。ただし、債券貸借取引支払保証金および買入金銭債権については、日々の残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。

[海外保険事業]

海外保険事業においては、経常収益は、前連結会計年度に比べて6,590億円増加し、4兆3,098億円となりました。経常利益は、前連結会計年度に比べて356億円増加し、4,884億円となりました。海外保険事業における保険引受および資産運用の状況は、以下のとおりです。

 

a)保険引受業務

イ)正味収入保険料

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

488,140

21.87

28.72

639,242

24.60

30.95

海上保険

106,918

4.79

19.77

123,637

4.76

15.64

傷害保険

38,720

1.73

9.54

40,765

1.57

5.28

自動車保険

521,910

23.38

19.33

567,626

21.84

8.76

その他

1,076,191

48.22

11.09

1,227,598

47.24

14.07

合計

2,231,880

100.00

16.85

2,598,869

100.00

16.44

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

ロ)正味支払保険金

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

232,701

21.93

51.61

237,484

19.57

2.06

海上保険

43,657

4.11

27.71

46,343

3.82

6.15

傷害保険

21,520

2.03

46.26

19,798

1.63

△8.00

自動車保険

279,599

26.35

25.16

322,907

26.61

15.49

その他

483,548

45.57

16.44

586,980

48.37

21.39

合計

1,061,026

100.00

26.15

1,213,514

100.00

14.37

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

b)資産運用業務

イ)運用資産

区分

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

385,933

2.90

369,623

2.35

買入金銭債権

2,323,601

17.44

2,924,898

18.56

有価証券

5,873,400

44.08

7,144,080

45.33

貸付金

2,276,805

17.09

2,605,581

16.53

土地・建物

131,152

0.98

214,718

1.36

運用資産計

10,990,894

82.49

13,258,903

84.14

総資産

13,324,604

100.00

15,758,495

100.00

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。

 

ロ)利回り

ⅰ)運用資産利回り(インカム利回り)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

8,770

346,487

2.53

13,632

377,779

3.61

買入金銭債権

150,329

2,196,602

6.84

184,203

2,708,700

6.80

有価証券

198,122

5,586,802

3.55

248,195

6,680,476

3.72

貸付金

213,385

2,137,613

9.98

238,459

2,444,982

9.75

土地・建物

14,378

126,474

11.37

7,257

172,935

4.20

小計

584,986

10,393,980

5.63

691,748

12,384,874

5.59

その他

2,088

2,234

合計

587,074

693,983

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。なお、連結貸借対照表における有価証券には持分法適用会社に対する株式が含まれていますが、平均運用額および年利回りの算定上は同株式を除外しています。

2.収入金額は、連結損益計算書における「利息及び配当金収入」です。

3.平均運用額は、期首・期末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。

 

ⅱ)資産運用利回り(実現利回り)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

10,215

346,487

2.95

11,388

377,779

3.01

買現先勘定

211

659

買入金銭債権

148,809

2,196,602

6.77

182,203

2,708,700

6.73

有価証券

274,298

5,586,802

4.91

385,705

6,680,476

5.77

貸付金

162,111

2,137,613

7.58

111,912

2,444,982

4.58

土地・建物

14,378

126,474

11.37

7,257

172,935

4.20

金融派生商品

17,512

5,709

その他

1,082

2,030

合計

628,621

10,393,980

6.05

706,865

12,384,874

5.71

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺前の金額です。なお、連結貸借対照表における有価証券には持分法適用会社に対する株式が含まれていますが、平均運用額および年利回りの算定上は同株式を除外しています。

2.資産運用損益(実現ベース)は、連結損益計算書における「資産運用収益」から「資産運用費用」を控除した金額です。

3.平均運用額(取得原価ベース)は、期首・期末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しています。

 

(参考)全事業の状況

 

a)元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

1,269,427

22.88

15.65

1,466,014

24.21

15.49

海上保険

228,033

4.11

4.45

248,941

4.11

9.17

傷害保険

292,603

5.27

1.34

302,634

5.00

3.43

自動車保険

1,778,543

32.06

6.77

1,879,013

31.03

5.65

自動車損害賠償責任保険

197,491

3.56

△11.60

198,589

3.28

0.56

その他

1,781,269

32.11

8.76

1,959,681

32.37

10.02

合計

5,547,369

100.00

8.10

6,054,874

100.00

9.15

(うち収入積立保険料)

(42,515)

(0.77)

(△15.78)

(44,183)

(0.73)

(3.92)

(注)1.諸数値は、セグメント間の内部取引相殺後の金額です。

2.元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金および元受その他返戻金を控除したものです(積立型保険の積立保険料を含みます。)。

 

b)正味収入保険料

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

932,678

19.33

14.05

1,118,213

21.08

19.89

海上保険

192,046

3.98

10.19

214,399

4.04

11.64

傷害保険

239,136

4.96

4.92

245,941

4.64

2.85

自動車保険

1,769,725

36.68

6.20

1,857,893

35.02

4.98

自動車損害賠償責任保険

209,040

4.33

△7.20

200,441

3.78

△4.11

その他

1,482,358

30.72

9.13

1,668,292

31.45

12.54

合計

4,824,986

100.00

7.94

5,305,182

100.00

9.95

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺後の金額です。

 

c)正味支払保険金

区分

  前連結会計年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

  当連結会計年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減

(△)率(%)

火災保険

495,099

19.20

15.89

472,723

17.09

△4.52

海上保険

92,693

3.59

26.14

99,361

3.59

7.19

傷害保険

120,123

4.66

2.84

124,561

4.50

3.69

自動車保険

1,005,289

38.99

13.17

1,096,240

39.64

9.05

自動車損害賠償責任保険

162,918

6.32

3.22

162,500

5.88

△0.26

その他

702,331

27.24

11.56

810,430

29.30

15.39

合計

2,578,456

100.00

12.44

2,765,817

100.00

7.27

(注)諸数値は、セグメント間の内部取引相殺後の金額です。

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、利息及び配当金の受取額の増加等により、前連結会計年度に比べて2,729億円収入が増加し、1兆3,450億円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却・償還による収入の増加等により、前連結会計年度に比べて7,922億円収入が増加し、1,646億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達目的の債券貸借取引受入担保金の純増減額の減少等により、前連結会計年度に比べて7,822億円支出が増加し、1兆1,884億円の支出となりました。

 これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より3,828億円増加し、1兆4,697億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 保険持株会社としての業務の特性から、該当する情報がないので記載していません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

 なお、本項に含まれる将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には、経営者による会計方針の選択適用、合理的な見積りを必要としますが、実際には見積りと異なる結果となることもあります。

 当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5 経理の状況の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針および見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えています。

a)金融商品の時価の算定方法

 有価証券、デリバティブ取引等について、時価の算定は原則として市場価格に基づいていますが、一部の市場価格のない有価証券、デリバティブ取引等については、将来キャッシュ・フローの現在価値や契約期間等の構成要素に基づく合理的な見積りによって算出された価額等を時価としています。

b)有価証券の減損処理

 売買目的有価証券以外の有価証券について、時価または実質価額が取得原価に比べて著しく下落した場合、回復する見込みがあると認められるものを除き、減損処理を行っています。なお、その他有価証券(市場価格のない株式等を除く。)については、原則として、連結会計年度末の時価が取得原価に比べて30%以上下落した場合に減損処理を行っています。

c)固定資産の減損処理

 収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、帳簿価額を減額する会計処理を行っています。資産または資産グループの回収可能価額は、正味売却価額(資産または資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される価額)と使用価値(資産または資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い方の金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定および予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しています。従って、固定資産の使用方法を変更した場合、不動産取引相場や賃料相場等が変動した場合およびのれんが認識された取引において取得した事業の状況に変動が生じた場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。

d)繰延税金資産

 繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。将来の課税所得は過去の業績等に基づいて見積っているため、将来において当社グループを取り巻く環境に大きな変化があった場合、税制改正によって法定実効税率が変更された場合等においては、繰延税金資産の回収可能額が変動する可能性があります。

e)貸倒引当金

 債権の貸倒れによる損失に備えて、回収不能見積額を貸倒引当金として計上していますが、貸付先の財務状況が変化した場合には、貸倒損失や貸倒引当金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。

f)支払備金

 保険契約に基づいて支払義務が発生したと認められる保険金等のうち、未だ支払っていない金額を見積り、支払備金として積み立てています。このうち既発生未報告の支払備金については、主に統計的見積法により算出しています。各事象の将来における状況変化、為替変動の影響等により、支払備金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。

g)責任準備金等

 保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金等を積み立てています。当初想定した環境や条件等が大きく変化し、責任準備金等を上回る支払が発生する可能性があります。

h)退職給付債務等

 退職給付費用および退職給付債務は、連結会計年度末時点の制度を前提とし、割引率や長期期待運用収益率、将来の退職率および死亡率等、一定の前提条件に基づいて計算しています。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、また前提条件を変更する必要が生じた場合には、将来の退職給付費用および退職給付債務は変動する可能性があります。

② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、以下のとおりです。なお、当社グループの課題認識および経営成績に重要な影響を与えるリスクについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境及び対処すべき課題」および「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

a)経営成績の分析

 当連結会計年度の状況については、以下のとおりです。

連結主要指標

 

 

(単位:百万円)

 

   前連結会計年度

 (自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

   当連結会計年度

 (自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

増減

増減率

経常収益

7,424,667

8,440,114

1,015,446

13.7%

正味収入保険料

4,824,986

5,305,182

480,196

10.0%

生命保険料

1,049,852

586,772

△463,080

△44.1%

経常利益

842,576

1,460,007

617,430

73.3%

親会社株主に帰属する

当期純利益

695,808

1,055,276

359,468

51.7%

修正純利益

711,634

1,215,063

503,428

70.7%

 

 経常収益は、前連結会計年度に比べて1兆154億円増加し、8兆4,401億円となりました。

 経常利益は、国内損害保険事業において、政策株式売却益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて6,174億円増加し、1兆4,600億円となりました。

 経常利益に特別利益、特別損失、法人税等合計などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べて3,594億円増加し、1兆552億円となりました。

 また、親会社株主に帰属する当期純利益から保険事業特有の各種準備金の影響や資産の売却・評価損益等の当該年度の特殊要因を控除した修正純利益(グループ全体の業績を示す管理会計上の経営指標)は、前連結会計年度に比べて5,034億円増加し、1兆2,150億円となりました。

 

 報告セグメント別の状況は、以下のとおりです。

[国内損害保険事業]

 国内損害保険事業において、東京海上日動火災保険株式会社は、「本当に信頼されるお客様起点の会社」になるために、「Re-New(新しい会社につくりかえる)」に取り組みました。具体的には、組織風土の改革、適正な競争を阻害する業界慣行等の解消、ガバナンス態勢の強化、お客様起点での業務プロセスの抜本的見直し等に取り組みました。また、「リスクソリューション(保険+α)で次代を支える会社」になることをめざし、事前・事後の領域を含め、保険以外の商品・サービスの提供にも取り組みました。政策株式については、2029年度末までには政策株式(非上場株式および資本業務提携による出資等を除く)の残高をゼロにすべく、2024年度は計画を上回る9,224億円分を売却しました。

 多様化・複雑化する社会課題に対し、グリーントランスフォーメーション(化石燃料をクリーンエネルギーに転換して活用していくための変革)、ヘルスケア、中小企業、サイバーリスクおよびレジリエンス(自然災害等の被害の極小化および早期復旧)を重点分野として定め、社会課題解決に貢献することを通じた新たなマーケット創造をめざし取組みを推進しました。例えば、ヘルスケア分野では、主に大企業向けに、「健康アシスト保険」の販売を開始しました。この保険は、健康診断で生活習慣病およびがんのリスクが高いと判定された従業員に対する二次検査の受診勧奨を、企業に代わり東京海上日動が直接サービス提供(給付)するものです。これにより企業における人的資本経営や健康経営の推進を支援していきます。

 レジリエンス分野では、2025年2月に岩手県大船渡市で発生した林野火災に対し、夜間や火災の煙が多い状態でも観測可能な特殊なレーダーを搭載する人工衛星を活用し、火災によって延焼した住宅の被害状況を早期に把握して保険金を迅速にお支払いしました。また、自治体に提供した解析画像結果は被害の状況把握等に活用されています。

 

 上記のとおり事業に取り組んだ結果、正味収入保険料は、自動車保険や火災保険における商品・料率改定による増収効果等により、前連結会計年度に比べて1,131億円増加し、2兆7,063億円となりました。経常利益は、政策株式売却益が増加したことを主因として、前連結会計年度に比べて5,698億円増加し、8,933億円となりました。

 

 

(単位:百万円)

 

   前連結会計年度

 (自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

   当連結会計年度

 (自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

増減

増減率

正味収入保険料

2,593,160

2,706,360

113,199

4.4%

経常利益

323,498

893,316

569,818

176.1%

 

 

[国内生命保険事業]

 国内生命保険事業において、東京海上日動あんしん生命保険株式会社は、強みである生損一体のビジネスモデルを活かしつつ、長寿社会の新たな課題の解決に向け、中堅・中小企業、シニア層および若年層それぞれのニーズに対応した商品・サービスを開発し、お客様をお守りする領域の拡大に取り組んでいます。

 長い老後に備えた資産形成ニーズが高まるなか、保障ニーズおよび計画的な資産形成ニーズの双方にお応えする変額保険「マーケットリンク」がご好評をいただいています。2024年度には、お客様をお守りする領域の拡大に向け、主に中堅・中小企業向けに、「スマート総合福祉団体定期」を発売しました。従業員の健康維持・重症化予防サービスの提供等により、中堅・中小企業の福利厚生の充実等を実現し、優秀な人材の確保等を図りたいというニーズにお応えする商品です。また、主に持病をお持ちのお客様向けに引受基準緩和型の死亡保険「あんしん定期エール」および「あんしん終身エール」を発売しました。

 各国における金融政策転換等によって、市場・経済環境の不確実性が増しているなか、資産と負債の総合管理(ALM)を基本とした資産運用に継続的に取り組み、既に引き受けている生命保険契約の長期負債の一部を再保険会社に出再するなど、金利リスクコントロールの多様化および高度化に努めました。

 上記のとおり事業に取り組んだ結果、生命保険料は、リスク管理手法の多様化を目的として保有契約の一部を再保険に出したこと等により、前連結会計年度に比べて5,971億円減少し、△1,683億円となりました。経常利益は、前連結会計年度に比べて130億円増加し、701億円となりました。

 

 

(単位:百万円)

 

   前連結会計年度

 (自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

   当連結会計年度

 (自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

増減

増減率

生命保険料

428,831

△168,313

△597,145

△139.2%

経常利益

57,156

70,159

13,003

22.8%

 

[海外保険事業]

 海外保険事業においては、グループ全体のグローバルな成長と分散の効いたポートフォリオの構築を実現すべく、持続的な内部成長と戦略的なM&Aを取組みの両輪としています。また、グループ各社の優れたノウハウを相互に活用し、保険料収入の拡大、資産運用の高度化、業務効率の向上等のシナジー実現にも幅広く取り組みました。

 世界中の各拠点が事業の成長実現をめざし、新たな保険商品の拡充、高度な保険引受能力や専門性の活用、市場環境を踏まえた保険料率の見直しおよび販売チャネルの拡充による保険引受利益の拡大に取り組みました。M&Aについては、これまで市場環境を見据えながら実行してきており、現在も常に規律をもって優良な投資機会をうかがっています。また、規律をもった事業売却にも継続的に取り組み、事業ポートフォリオの最適化を追求しています。加えて、デジタル活用および業務のアウトソーシング等による生産性の向上およびオペレーションの高度化に取り組みました。

 グループの資産運用の中核会社であるDelphi Financial Group, Inc.においては、米国で商業用不動産担保付貸付金にかかる予想信用損失が発生しましたが、利子、配当等のインカム収益は計画を上回り、トータルでは市場平均を上回るリターンを安定的に確保しています。

 2024年度は、北米のHCC Insurance Holdings, Inc.およびPrivilege Underwriters, Inc.が4年連続で過去最高益を達成しました。

 上記のとおり事業に取り組んだ結果、正味収入保険料は、北米、欧州およびブラジルの子会社における市場環境を踏まえた保険料率の見直しや引受拡大等に伴う増収ならびに円安等により、前連結会計年度に比べて3,669億円増加し、2兆5,988億円となりました。生命保険料は、北米の子会社における引受拡大等に伴う増収ならびに円安等により、前連結会計年度に比べて1,340億円増加し、7,550億円となりました。経常利益は、米国で商業用不動産担保付貸付金にかかる予想信用損失が発生した一方、北米でのインカム収益の増加や円安等により、前連結会計年度に比べて356億円増加し、4,884億円となりました。

 

 

(単位:百万円)

 

   前連結会計年度

 (自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

   当連結会計年度

 (自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

増減

増減率

正味収入保険料

2,231,880

2,598,869

366,989

16.4%

生命保険料

621,028

755,092

134,064

21.6%

経常利益

452,838

488,497

35,658

7.9%

 

b)財政状態の分析

イ)連結ソルベンシー・マージン比率

  当社は、保険業法施行規則第210条の11の3および第210条の11の4ならびに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づき、連結ソルベンシー・マージン比率を算出しています。

  当社グループの子会社では、損害保険事業、生命保険事業や少額短期保険業を営んでいます。保険会社グループは、保険金の支払等に備えて準備金を積み立てていますが、巨大災害の発生や資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。こうした「通常の予測を超える危険」を示す「連結リスクの合計額」(下表の(B))に対する「保険会社グループが保有している資本金・準備金等の支払余力」(すなわち連結ソルベンシー・マージン総額:下表の(A))の割合を示すために計算された指標が、「連結ソルベンシー・マージン比率」(下表の(C))です。

  連結ソルベンシー・マージン比率の計算対象となる範囲は、連結財務諸表の取扱いと同一ですが、保険業法上の子会社(議決権が50%超の子会社)については、計算対象に含めています。

  連結ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社グループを監督する際に活用する客観的な判断指標のひとつですが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされています。

  当連結会計年度末の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末と比べて61.9ポイント低下して590.8%となりました。これは、その他有価証券評価差額金の減少による連結ソルベンシー・マージン総額の減少が主因です。

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

(A)連結ソルベンシー・マージン総額

6,485,705

5,829,765

(B)連結リスクの合計額

1,986,901

1,973,232

(C)連結ソルベンシー・マージン比率

  [(A)/{(B)×1/2}]×100

652.8%

590.8%

 

ロ)国内保険会社の単体ソルベンシー・マージン比率

  国内保険会社は、保険業法施行規則第86条および第87条ならびに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づき、単体ソルベンシー・マージン比率を算出しています。

  保険会社は、保険金の支払等に備えて準備金を積み立てていますが、巨大災害の発生や資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。こうした「通常の予測を超える危険」を示す「単体リスクの合計額」(下表の(B))に対する「保険会社が保有している資本金・準備金等の支払余力」(すなわち単体ソルベンシー・マージン総額:下表の(A))の割合を示すために計算された指標が、「単体ソルベンシー・マージン比率」(下表の(C))です。

  単体ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に活用する客観的な判断指標のひとつですが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされています。

  当事業年度末の国内保険会社の単体ソルベンシー・マージン比率は、以下のとおりとなっています。東京海上日動火災保険株式会社については、前事業年度末と比べて56.5ポイント上昇して920.2%となりました。これは、価格変動等リスク相当額の減少が主因です。

 

ⅰ)東京海上日動火災保険株式会社

 

 

(単位:百万円)

 

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

(A)単体ソルベンシー・マージン総額

6,454,659

5,649,397

(B)単体リスクの合計額

1,494,546

1,227,811

(C)単体ソルベンシー・マージン比率

  [(A)/{(B)×1/2}]×100

863.7%

920.2%

 

ⅱ)日新火災海上保険株式会社

 

 

(単位:百万円)

 

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

(A)単体ソルベンシー・マージン総額

121,134

112,455

(B)単体リスクの合計額

22,865

23,130

(C)単体ソルベンシー・マージン比率

  [(A)/{(B)×1/2}]×100

1,059.5%

972.3%

 

ⅲ)イーデザイン損害保険株式会社

 

 

(単位:百万円)

 

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

(A)単体ソルベンシー・マージン総額

14,548

9,689

(B)単体リスクの合計額

4,259

4,184

(C)単体ソルベンシー・マージン比率

  [(A)/{(B)×1/2}]×100

683.1%

463.0%

 

ⅳ)東京海上日動あんしん生命保険株式会社

 

 

(単位:百万円)

 

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

(A)単体ソルベンシー・マージン総額

531,822

559,668

(B)単体リスクの合計額

111,583

133,545

(C)単体ソルベンシー・マージン比率

  [(A)/{(B)×1/2}]×100

953.2%

838.1%

 

 

c)資金の流動性に係る情報

 当社グループの短期的な資金需要として、主に日々の保険金の支払等がありますが、強固なリスク管理態勢の下で保険事業を運営し、安定的にプラスの営業キャッシュ・フローを確保することにより、十分な流動性を保持しています。また、大規模自然災害による大口の支払や市場の混乱等により資金繰りが悪化する局面に備え、流動性の高い債券を保有すること等により、適切な流動性管理を行っています。

 事業投資等の中長期的な資金需要に対しては、グループ内の自己資金を活用するほか、外部からの資金調達を行う等、資金需要の性質に応じて適切な資金源を確保しています。

 

d)目標とする経営指標の分析

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針 ③目標とする経営指標等」に記載のとおりです。

 

5【重要な契約等】

 当社は、2024年11月19日開催の取締役会において、ID&Eホールディングス株式会社の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付け(以下「本公開買付け」といいます)により取得することを決議し、本公開買付けを2024年11月20日から2025年2月5日の期間で実施した結果、2025年2月13日付で、同社の株式を12,895,763株(所有割合:85.5%)取得し、同日付で、同社は当社の連結子会社となりました(なお、その後当社は、東京海上日動火災保険株式会社が所有する同社の株式の全てを現物配当として受け取ったこと等により、2025年3月31日時点での同社株式の所有割合は85.8%となっています)。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。