第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、グループの目指す姿として「経営理念(ミッション)」、「経営ビジョン」、「行動指針(バリュー)」を以下のとおり定めております。

<経営理念(ミッション)>

グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えます

<経営ビジョン>

持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険・金融グループを創造します

<行動指針(バリュー)>

お客さま第一     :わたしたちは、常にお客さまの安心と満足のために、行動します

誠実         :わたしたちは、あらゆる場面で、あらゆる人に、誠実、親切、公平・公正に接します

チームワーク     :わたしたちは、お互いの個性と意見を尊重し、知識とアイデアを共有して、ともに成長します

革新         :わたしたちは、ステークホルダーの声に耳を傾け、絶えず自分の仕事を見直します

プロフェッショナリズム:わたしたちは、自らを磨き続け、常に高い品質のサービスを提供します

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは2024年度よりスタートした中期経営計画(2022-2025)第2ステージにおいて、グループ全体の業績を示す経営指標として「グループ修正利益」(注1)、「グループ修正ROE」(注2)、「IFRS純利益」、「修正ROE」(注3)、「ESR(Economic Solvency Ratio)」(注4)を掲げており、目標値は次のとおりであります。なお、当社グループは2025年度末決算からIFRS(国際財務報告基準)を適用する予定であります。

 

 

(2024年度実績)

2025年度目標

グループ修正利益

(7,317億円)

7,600億円

グループ修正ROE

(15.7%)

16%

IFRS純利益

4,500億円

修正ROE

12%

ESR

(226%)

180~250%

(注)1 グループ修正利益 =連結当期利益+異常危険準備金等繰入・戻入額-その他特殊要因(のれん・その他無形固定資産償却額等)+非連結グループ会社持分利益

2 グループ修正ROE=グループ修正利益÷グループ修正純資産(連結純資産+異常危険準備金等-のれん・その他無形固定資産)

3 修正ROE    =IFRS純利益÷(IFRS純資産-政策株式の含み損益)

4 ESR      =時価純資産÷統合リスク量(信頼水準99.5%)

 

(3) 経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題

今後のわが国を含む世界経済は、景気の緩やかな回復が持続することが期待される一方、米国の通商政策の動向、欧米における高金利の継続、中国における不動産市場の停滞の継続に加え、複数の地域で進行する地政学的な緊張の高まりによる影響など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクが懸念されます。

保険業界においては、保険料調整行為等の不適切事案の発生を受けて、金融庁において「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」及び金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」が開催され、保険市場に対する信頼の確保とその健全な発展に向けた方策について議論が重ねられました。今後、これらの議論を踏まえた保険業法の改正等に業界として適切に対応し、お客さまと社会からの信頼回復に向けた取組みを推進するとともに、引き続き保険とその周辺サービスの提供を通じて社会のレジリエンスを高める社会インフラとしての役割を果たしていくことが求められております。

このような中、当社グループとしても、グループの「ミッション・ビジョン・バリュー」に立ち返って、全役職員及び代理店の行動を見直し、「ビジネススタイルの大変革」を進めるとともに、お客さまの信頼回復に全力で取り組んでまいります。そのうえで、デジタル技術の進展や人手不足の進行などの事業環境の変化を踏まえ、中期経営計画(2022-2025)に掲げた基本戦略やその基盤取組みを進めてまいります。

 

[ビジネススタイルの大変革]

 当社グループでは、「お客さま第一の業務運営」「ガバナンスの強化」「コンプライアンス」を基礎に据えて、「提供価値の変革」「事業構造の変革」「生産性・収益性の変革」を柱とするビジネススタイルの大変革を、引き続き進めてまいります。

 

 

提供価値の変革

事業構造の変革

生産性・収益性の変革

○適正な競争環境の構築

商品・サービスにおける競争優位性の強化

○リスクソリューション提案力の強化

「保険本来の機能」+「補償・保障前後のソリューション」の強化

○引受管理の強化

リスク関連情報・データを活用したアンダーライティング強化

○新たな成長投資

開拓余地・市場成長が見込める事業への新たな投資の拡充

○デジタル・人財への投資

生成AI等新たなソリューションへのDX投資、人的資本投資の拡大

○1プラットフォーム戦略の完遂

本社機能の一体運営の推進、グループへの拡大

○オーバースペックな業務の見直し

ペーパーレス化・デジタル化推進

○資産運用の強化

市場環境の変化を踏まえた収益性の追求

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お客さま第一の業務運営

ガバナンスの強化

コンプライアンス

○お客さま第一の業務運営の再徹底

○お客さま・社会の要請・期待に応える自発的な行動

○経営陣によるガバナンス態勢強化

○3ラインディフェンスにおける第2線・第3線の機能強化

○コンプライアンス知識・意識の向上

○リスクの予見、予兆検知能力向上

○モニタリング、知見の蓄積とグループ内共有

 

当社は、これらの取組みをグループ各社が確実に進め、三井住友海上火災保険株式会社及びあいおいニッセイ同和損害保険株式会社がそれぞれの業務改善計画を着実に実行していくよう、持株会社として、経営管理態勢の強化、ガバナンスの発揮、グループ全体におけるコンプライアンスの徹底に引き続き取り組んでまいります。

 

 

[中期経営計画の基本戦略・基盤]

 中期経営計画(2022-2025)第2ステージ(2024~2025年度)では、ビジネススタイルの大変革を進めつつ、お客さまと真摯に向き合い、お客さまと社会の課題を解決していくことにより、CSVの実現と持続的な成長を引き続き追求することとしております。レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループを実現するため、3つの基本戦略「Value(価値の創造)」「Transformation(事業の変革)」「Synergy(グループシナジーの発揮)」とこれらの基本戦略を支える4つの基盤「サステナビリティ」「品質」「人財」「ERM」それぞれについて着実に取組みを進めてまいります。

 

 

基本戦略

Value

(価値の創造)

提供価値の変革の推進

 

・デジタル技術・データを活用した補償・保障前後を含む新たな商品・サービスの開発・収益化を推進し、お客さま・社会の課題解決を実現します。

・自然災害ロス等の増加、インフレの継続等の事業環境変化を踏まえ、自動車保険・火災保険の収益力強化、生産性の向上を図ります。

Transformation

(事業の変革)

事業構造の変革の推進

 

・国内損害保険市場の中長期的な成長鈍化を踏まえ、海外事業・生保事業の拡大により、分散の効いた事業ポートフォリオを実現します。また、事業管理の高度化(業績改善や不採算事業の見極め)による資本効率の向上を図ります。

・生成AI等デジタル技術の急速な進化と利活用の加速を踏まえた最適なソリューションを追求することで、ビジネススタイルの変革を進め、事業の変革に取り組みます。

Synergy

(グループシナジーの発揮)

生産性・収益性の変革の推進

 

・人手不足の進行等を踏まえ、1プラットフォーム戦略の推進によるグループ会社間のシナジーを発揮し、持続可能な事業運営体制の構築とさらなる効率化と品質向上に取り組みます。

・加えて、グループ各社の顧客基盤を活かした生損及び生保2社間の提携販売の拡大や、本社と海外拠点間のコミュニケーションを強化し、国内外でノウハウの相互展開を推進します。

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基盤

サステナビリティ

品質

人財

ERM

ステークホルダーと当社双方にとって重要度が高い社会課題の解決を目指し、3つの重点課題

「地球環境との共生

(Planetary Health)」「安心・安全な社会

(Resilience)」

「多様な人々の幸福

(Well-being)」に統合的に取り組みます。

従来の品質取組みに加えて、業務運営ルールの明確化や第2線・第3線のリスク管理態勢の強化を行い、代理店も含めたお客さま第一の業務運営・コンプライアンスの再徹底を図ります。

人手不足の進行に対応するため、人的資本への投資を拡大し、社員のエンゲージメントの向上を図ります。

法務リスク・コンダクトリスク等の定量化が難しいリスクの定性的な評価とガバナンス態勢を強化します。また、2030年3月末までに政策株式の保有ゼロを実現することにより、リスクの削減と資本効率の向上を図ります。ROEの向上に向けて、各事業会社が利益創出力を強化するとともに資本収益性を高めていきます。

 

 

[事業領域別の取組み]

主な事業領域別の取組方針は以下のとおりであります。

国内損害保険事業においては、事業のあり方を見直し、お客さま第一の業務運営を徹底して、お客さまに向き合った企業活動を実践してまいります。また、自然災害の甚大化・頻発化、インフレの継続等、保険引受損益の悪化要因を踏まえつつ、自動車保険、火災保険及び新種保険の収益力強化を図ります。

国内生命保険事業においては、長期的な人口減少や高齢化社会の進展等の環境変化に対応した商品・サービスの開発や販売チャネルの強化、外貨建て保険等リスク性金融商品も含む販売管理態勢の強化を進めます。また、三井住友海上あいおい生命保険株式会社と三井住友海上プライマリー生命保険株式会社それぞれの商品特性に応じた資産運用を基本としつつ、金利等の市場の変動を捉えて運用収益の拡大にも取り組んでまいります。

海外事業においては、MS Amlinのロイズ・再保険事業の安定的な拡大やトヨタリテール事業の収益改善に取り組むとともに、米国・アジア事業のさらなる拡大を図るため事業投資等を検討し、加えて、ガバナンス態勢の強化を図るなど、リスク分散を図りつつ資本効率の向上・企業価値向上を実現してまいります。

資産運用においては、金利上昇などの市場環境の変化に対応しつつ、時価純資産価値(注)を持続的に拡大するため、分散されたポートフォリオを構築してグループ全体のリスク対比リターンの向上を図るとともに、政策株式の削減に継続して取り組んでまいります。また、グループ各社の運用方針・戦略・計画や投資情報の共有、人財育成や外国資産運用に係る共通プラットフォームの活用等を通じてグループ内の知見やリソースを有効に活用してまいります。

(注)時価純資産価値

経済価値ベースで評価した時価資産から時価負債を控除した差額であり、実質的な自己資本のこと。

 

なお、当社は、三井住友海上火災保険株式会社とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社を2027年4月を目途に合併させるため、今後、具体的な検討・対応準備を進めることを決定しました。当社グループのビジョンである「世界トップ水準の保険・金融グループの創造」を実現し、レジリエントでサステナブルな経済・社会の発展を支えるため、より強固な国内損害保険事業体制を構築してまいります。

また、当社は、2025年6月23日開催予定の第17期定時株主総会での承認を条件として、監査等委員会設置会社へ移行します。これにより、取締役会の監督機能を強化するとともに、重要な業務の執行に関する決定の一部を取締役に委任し、意思決定及び業務執行の迅速化を図ります。加えて、取締役会の構成について社外取締役を過半数とし、取締役会における経営判断の客観性を高め、ガバナンス体制の一層の充実を図ります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 会社の経営の基本方針」に掲げる経営理念実現に向けて「MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方」を定め、取組みを進めております。

 

当社グループの経営理念は平易でわかりやすく社会的存在意義を示していること、また、すでにグループ内に浸透していることから、当社グループではパーパスを経営理念と同一であると定めております。

MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方

 

MS&ADインシュアランス グループは、経営理念の実現に向け「価値創造ストーリー」を紡ぐ企業活動を通じて、社会との共通価値を創造し、「レジリエントでサステナブルな社会」を目指します。

信頼と期待に応える最高の品質を追求し、ステークホルダーとともに、地球環境と社会の持続可能性を守りながら、誰もが安定した生活と活発な事業活動にチャレンジできる社会に貢献し続けます。

<以下略>

 

なお、本項に記載した将来に関する事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 価値創造ストーリー

当社グループは、保険事業という公共性の高い事業を中心に、社会課題を解決し社会への価値を提供するとともに、我々自身も売上や利益といった価値を享受するというビジネスモデル「価値創造ストーリー」を掲げております。

当社グループは、「MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方」に基づき、保険・金融サービス事業者として、事故や災害をはじめ様々なリスクを引き受け、万一の際の補償を提供します。また、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」、この取組みにより、企業活動を通じた社会との共通価値の創造を実現してまいります。

 

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② めざす姿「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」

中期経営計画(2022-2025)では、価値創造ストーリーを実践し、社会課題の解決へ貢献し社会とともに成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざす姿としました。

経営理念の実現に向けて、社員一人ひとりが様々な社会課題に向き合い、当社のビジネスモデルを通じた商品・サービスを提供することで、お客さまが安心して生活や事業活動を行うことのできる社会を支えてまいります。

 

③ 重点課題の設定

当社が取り組む主な社会課題については、世界共通の目標や国際的なガイドラインやフレームワーク等を踏まえ、解決が望まれる社会課題を洗い出したうえで、ステークホルダーにとっての影響と、当社グループにとっての影響を評価し、双方にとって重要度の高いものを重点課題と設定しております。

重点課題の分析は、中期経営計画を策定するタイミングで見直すことを基本としておりますが、社会情勢の変化等に応じて、適宜見直すこととしております。

 

[STEP1] 社会課題についての分析

社会で解決が求められている課題を的確に把握するために、世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)や、ISO26000、GRI Standard、SASBなどの国際的なガイドラインやフレームワーク、政府や国内外諸団体が公表する報告書等を踏まえ、解決が望まれる社会課題を洗い出し、21項目を選定しました。

 

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[STEP2] サステナビリティの重点課題の設定

選定した社会課題について、「当社が社会に与える影響(ステークホルダーにとっての重要度)」、「社会から当社が受ける影響(当社にとっての重要度)」の2つの観点で分析しました。ステークホルダーと当社の双方にとって重要度の高い社会課題として絞り込んだ14項目を整理して、3つの重点課題「地球環境との共生(Planetary Health)」、「安心・安全な社会(Resilience)」、「多様な人々の幸福(Well-being)」及び基盤取組(品質、人財、ERM)を定めました。

 

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[STEP3] 重点課題における主な取組み

気候変動への対応や防災・減災、人権尊重の推進等、特定した3つの重点課題に基づき、リスクと機会を踏まえたCSV(Creating Shared Value)取組を推進しております。

 

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[STEP4] 経営への報告

中期経営計画(2022-2025)では、「Value(価値の創造)」、「Transformation(事業の変革)」、「Synergy(グループシナジーの発揮)」を基本戦略とし、「サステナビリティ」は基本戦略を支える基盤の一つと位置付けております。「サステナビリティ」については、重点課題ごとにKPIを設定しており、取組状況及びKPIの進捗を定期的に経営に報告しております(重点課題ごとのKPIは「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 指標・目標」参照)。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ関連の課題に対して取締役会、グループ経営会議、及び課題別委員会によるガバナンス体制を敷いております。

取締役会の役割をはじめとするコーポレート・ガバナンス全般に関する事項は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

① 取締役会

グループの経営方針、経営戦略、資本政策等、グループ経営戦略上の重要なサステナビリティ関連の事項及び会社経営上の重要な事項の論議・決定・各施策の進捗状況のモニタリングを行うとともに、取締役、執行役員の職務の執行を監督しております。

取締役会は、執行役員を選任するとともに、その遂行すべき職務権限を明確にすることにより、取締役会による「経営意思決定、監督機能」と執行役員による「業務執行機能」の分離を図っております。執行役員は、取締役会より委ねられた業務領域の責任者として業務執行を行い、その業務執行状況について取締役会に報告します。

 

 

② 課題別委員会

業務執行に係る会社経営上の重要事項に関する論議及び関係部門の意見の相互調整を図ることを目的として7つの課題別委員会を設置しております。サステナビリティ関連の課題や取組みは、主として、課題別委員会のサステナビリティ委員会及びERM委員会での論議を経て、取締役会とグループ経営会議の双方に報告し、決定します。

サステナビリティ委員会は、サステナビリティ戦略を推進する役割を担うグループCSuO(Group Chief Sustainability Officer)が運営責任者となり、サステナビリティ課題の取組み・方針計画・戦略等の論議及び各施策の進捗状況のモニタリングを行っております。2024年度は4回開催しました。主な論議テーマは、仕事とのつながりの強化、情報開示の動向と課題・対応状況、「サステナビリティの考え方」の改定、取引先に係る温室効果ガス排出量の削減状況、サーキュラーエコノミー取組の現状と今後の対応、自然資本に関する取組状況、グループ人権尊重取組の現状と今後の取組等で、外部の有識者も委員会に参加しております。

ERM委員会は、グループCFOとグループCROが運営責任者となり、ERMに関する重要事項の協議・調整等を行うとともに、サステナビリティ関連を含むリスク管理の状況等について、モニタリング等を行っております。2024年度は7回開催し、2025年2月に開催したERM委員会では、経営が管理すべき重要なリスク(グループ重要リスク)として、「気候変動」にも引き続き留意してリスクを管理していくこと等を論議し、取締役会にてグループ重要リスクを決定しております。また、ERM委員会では気候変動を含む自然災害リスク管理の高度化や、中長期的に当社グループ経営に影響を与える可能性があり経営が認識しておくべきリスク事象(グループエマージングリスク)の1つとして自然資本の毀損(資源の枯渇、生態系の劣化・危機、環境に甚大な損害を与える人為的な汚染や事故)に関して引き続きモニタリングしていくこと等についても論議しており、論議内容は取締役会に報告しております。

 

③ 役員報酬

中期経営計画(2022-2025)では、「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」の実現に向け、収益性、健全性等財務指標のみならず、サステナビリティ関連項目についても非財務指標に係るKPIを設定し、定期的にモニタリングを行っております。

非財務指標に係るKPIは、3つの重点課題それぞれにおいて設定しています。主なKPIとして、温室効果ガス排出量削減率、社会のレジリエンス向上に資する商品の引受件数増加率、健康関連の社会課題解決につながる商品の保有契約件数などがあり、社外取締役を除く取締役の業績連動報酬に反映させております。業績連動報酬は、取締役会長・取締役副会長・取締役社長の報酬全体の50%、その他の役位の場合は約30~40%を占めております。

 

④ 取締役会の実効性確保

取締役会の内部委員会である人事委員会では、グループの成長戦略の実現に向けて多様な視点から論議を行うため、経営戦略等の重要な事項の判断及び職務執行の監督の観点より、取締役会の実効性確保に必要なスキル(知識、経験、能力)を審議・決定しております。スキルについては、①一般に求められるベースとなるスキル(企業経営、人事・人財育成、法務・コンプライアンス・内部監査、リスク管理、財務・会計)、②当社グループのコア事業が保険事業であり、グローバルな事業展開をしていることを踏まえたスキル(保険事業、国際性)、③現在の当社の事業環境を踏まえた、事業変革及び市場が重視している課題への対応に必要なスキル(IT・デジタル、サステナビリティ)に区分しております。

 

(2) 戦略

当社グループの中期経営計画(2022-2025)では、補償・保障前後における商品・サービスのシームレスな提供や、リスクコンサルティングによるソリューションの提供など、リスクソリューションのプラットフォーマーとして気候変動をはじめとした社会課題の解決に貢献し、社会と共に成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざしております。

また、「地球環境との共生(Planetary Health)」、「安心・安全な社会(Resilience)」、「多様な人々の幸福(Well-being)」の3つをサステナビリティの重点課題として定めております。

社会で解決が求められている様々な課題は、当社グループの事業活動へのリスクとなる一方で、これらの課題解決につながる商品・サービスの提供は、社会との共通価値を創造する新たな事業機会になることから、社会との共通価値を創造するCSV取組を進めております。

 

① 気候と自然との統合的な戦略

将来の気候変動や生物多様性の損失に関するリスクの変動は、保険業界に多大な影響を与えます。例えば、気候変動が進行すると、温暖化による熱波、干ばつ、森林火災などの災害が頻繁に発生し、その規模も増加する可能性があります。更に、降水パターンにも影響を与えることで豪雨や洪水のリスクが高まるほか、氷河の融解や海水の熱膨張による海面上昇も起きると沿岸地域の浸水リスクが増加します。

日本国内においても、年平均気温の上昇や猛暑日・豪雨の増加などが予想されており、上述のリスクの顕在化や、サプライチェーンの分断による企業活動への影響が見込まれております。

気候変動の深刻化に伴い生物多様性の喪失が危惧されております。生物多様性が失われると、自然が提供する土壌の安定といった生態系サービスが減少することにより、洪水・土砂災害リスクが増加したり、水質浄化の生態系サービスが減少したりすることで、水資源の枯渇や水質悪化が進行するといった、農業・工業をはじめ多くの企業活動への影響が見込まれます。

こうした自然災害の頻度と規模が増加することで、保険金の支払いが増加するなど、保険会社の収益性に影響する可能性があります。

このような状況に対応するため、当社グループでは、地球温暖化とそれに伴う自然災害の増加を受け、気候変動への適応と自然資本の保全・回復に統合的に取り組んでいくことが重要と考えております。

国際的な目標であるパリ協定や国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2050年までのネットゼロ達成と2030年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させ、自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の方向性が示されており、当社は自然資本の毀損がもたらすリスクを適切に評価し、開示するためのTNFD開示提言にも対応してまいります。

私たちのミッションである「安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支える」ため、ネットゼロとネイチャーポジティブの同時実現をめざし、社会やビジネスモデルの変革を推進してまいります。

 

a.気候・自然関連のリスクと機会

(a)気候・自然関連のリスク

イ.物理的リスク

当社グループでは、台風や豪雨による風水災のほか、森林火災や雹災など、気候変動に関連する自然災害リスクの増大が既に保険引受において財務的影響を及ぼしております。また、気候だけでなく水資源の枯渇など自然資本関連の様々なリスクによる影響が、社会や事業活動において中長期的に高まっていくと想定されます。

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注 時間軸については、短期:2025年(中期経営計画期間末)、中期:2030年(中間目標のターゲットイヤー)、長期:2050年を想定しております。

 

 

 

ロ.移行リスク

当社グループでは、ネットゼロやネイチャーポジティブな社会への移行にあたり、社会の様々な分野での急激な変化による企業活動のリスク(移行リスク)は保険引受や資産運用の収益低下につながる可能性があると考えております。ただ、保険引受では、一部商品を除き、移行リスクを直接補償している保険商品はほとんどないため、影響は限定的と考えております。技術革新や法規制の導入は、保険提供の新たな機会にもなりますが、こうしたニーズに対応できない場合はリスクにもなる可能性があります。

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※1 会社役員賠償責任保険の略称。会社役員が役員として行った行為(含む不作為)に起因して損害賠償請求がなされたことにより、会社役員が負う損害賠償金や争訟費用等を補償

※2 賠償事故が発生した場合のブランドイメージの回復に必要な措置等にかかった費用を補償

 

ハ.シナリオ分析

(イ)保険引受における物理的リスクの分析

物理的リスクのシナリオ分析として、地球温暖化に伴う台風の変化が保険金支払に与える影響について分析しました。

当社は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が立ち上げたプロジェクトにおいて、保険引受に与える影響が大きい台風やハリケーンの分析を行うグループに参画し、将来、地球温暖化が進展した際に、台風やハリケーンがもたらすリスク量等への影響について検討しました。

4℃シナリオ(RCP8.5)における2050年において、台風の保険金支払は、「勢力」の変化によって約+5%~約+50%、また、「発生頻度」の変化によって約▲30%~約+28%、各々変化する可能性があるという結果になりました。

台風による高潮の変化では、2℃シナリオ(RCP4.5)、4℃シナリオ(RCP8.5)における2030年及び2050年の分析結果は、いずれの場合でも、保険金支払は数%程度増加する可能性があるという結果となりました。

2021年度には、上記の分析とは別に、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)で検討されているシナリオの前提等を参考として、日本銀行・金融庁と連携して、シナリオ分析のエクササイズを実施し、気候変動影響によって勢力が強まった自然災害による保険金支払について分析を行いました。また、上記に加えて、当社グループでは、学術機関と連携した研究プロジェクト等により知見の向上に努めるとともに、気候変動による台風の勢力変化を反映した分析手法を構築するなど、シナリオ分析の精度向上に取り組んでおります。

 

(ロ)投融資における物理的リスクの分析

当社グループでは気候変動による投融資先の重要拠点の水災被害増加は、運用収益悪化につながる可能性があると考えております。そのため、主要な投資先の資産の物理的リスクの分析を行い、資産運用における気候変動リスクを確認しております。また、投融資先の事業拠点と自然関連の要注意地域との関係性についても分析を行いました。

当社グループではお客さまとの取引を通じて気候変動リスクと強い関係性を有しており、投融資(株式・社債・企業融資)ポートフォリオを対象に、気候変動シナリオ下での物理的リスクを定量的に評価しました。気候変動に起因して洪水、風災等の物理的リスクが増大すると、投融資先の売上や資産に影響を与える可能性があります。そこで、当社グループ投融資ポートフォリオ上位500社を選定し、気候変動による洪水・風災リスクの影響について、株式・社債・企業融資ごとに、売上損害・資産損害の双方を分析しました。

分析の結果、最もリスクが増大する株式の4℃超シナリオにおいて、2050年時点で売上損害、資産損害の影響がそれぞれ5.2%程度(洪水、風災の合計)増大する可能性があることがわかりました。ただし投融資先の売上対比では、投融資ポートフォリオ全体としての影響は限定的と考えられます。

 

(ハ)自社事業拠点における物理的リスクの分析(洪水)

当社グループの自社事業拠点における気候変動シナリオ下での物理的リスクを定量的に評価しました。当社グループが保有する国内の主要70拠点の不動産を対象に、気候変動シナリオ下での洪水被害を把握し、気候変動による洪水の浸水被害の増大を分析しました。

年1%の確率で発生する洪水について、SSP1-2.6シナリオでは2050年に浸水深が高くなる傾向がありますが、これは気候変動シナリオの分析における不確実性などが原因と考えられます。新たに浸水する可能性がある拠点はありませんでした。

SSP5-8.5シナリオでは、2020年に浸水する可能性があった拠点で、2050年に浸水深が増加する傾向が多く見られます。また、2080年時点では、新たに1拠点が浸水する可能性があることが確認されました。

0.1%の確率で発生する洪水について、SSP1-2.6シナリオでは、2080年に新たに浸水する可能性がある拠点が1つ増えると予測されております。

SSP5-8.5シナリオでは、2050年には既存の拠点で2m以上の浸水が見られる拠点が増加し、新たに浸水する拠点が1つ増えると予測されております。更に、2080年には新たに浸水する拠点がもう1つ増加する可能性があります。

 

(ニ)投融資における移行リスクの分析(カーボンコスト)

温室効果ガス排出量に応じた費用を負担する「カーボンプライシング」(炭素の価格付け)は、温室効果ガス排出量の削減を促す政策として世界で導入が検討されており、企業にとってはカーボンコストの負担が増加するリスクがあります。

当社では温室効果ガス排出量の削減を目的として、再生可能エネルギー契約や省エネルギー設備への投資を行っております。これらの追加コストの支払い及び更新投資の意思決定を行う際に、内部炭素価格を活用して判断しております。

内部炭素価格の設定は、契約切替に伴う追加コストや炭素価格のベンチマークを勘案し、10,000円/t-CO2としております。

移行リスクのシナリオ分析として、将来のカーボンコストによる負担増加が当社グループの投資ポートフォリオに与える影響について分析しております。

分析にあたっては、炭素排出量をはじめとする環境データや気候変動のリスクを分析するツールを使用し、投資先企業が将来負担するカーボンコストに対して、現時点でどの程度支払う能力(カーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)(※))があるのかを算出しました。なお、EBIT at Riskが極端に大きくなった投資先のものは外れ値として集計から除外しています。

※ 企業のカーボンコストの将来負担増加分(Unpriced Cost of Carbon:UCC)を企業の利益(Earnings Before Interest and Taxes:EBIT)で割ったもので、シナリオごとの投資ポートフォリオに与える財務的な影響を示しています。

 

また、TCFDが2℃以下を含む気温上昇シナリオに基づく分析を推奨していることを踏まえ、当社グループでは、次の3つのシナリオに基づいて分析しました。

 

高位シナリオ:2100年までに気温上昇を2未満に抑えるという国際目標(パリ協定)と整合する十分な政策手段が講じられるシナリオ

中位シナリオ:気温上昇を2に抑えるための政策が長期的には講じられるものの、短期的には政策実施が遅れることを想定したシナリオ

低位シナリオ:各国が自主的に定めた目標を実施するものの、気温上昇が3程度となるシナリオ

 

なお、分析対象は、当社グループの2023年3月末の投資ポートフォリオのうち、上場企業の国内外株式(時価ベースで約99%をカバー)と国内外社債(簿価ベースで約95%をカバー)としております。また、企業の利益については、財務パフォーマンスの変動を緩和するため直近3ヵ年平均値を用いており、温室効果ガス排出量については、投資先企業が直接排出したスコープ1と、電力などの使用によって間接排出したスコープ2を対象としております。

分析結果は下表のとおりであり、より大きい政策手段が講じられる高位シナリオや中位シナリオでは、カーボンコストの負担が大きくなり、移行リスクが大きくなります。当社グループの2023年3月末の投資ポートフォリオでは、2050年にカーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)が、株式では低位シナリオで約8%、中位・高位シナリオで約31%、社債では低位シナリオで約14%、中位・高位シナリオで約48%程度となる可能性があるとの分析結果となりました。

 

[MS&ADグループカーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)]

<株式(2023年3月末時点)>

 

低位シナリオ

中位シナリオ

高位シナリオ

2030年

4.5%

13.2%

18.2%

2040年

7.2%

22.1%

27.5%

2050年

8.4%

31.1%

31.1%

 

<社債(2023年3月末時点)>

 

低位シナリオ

中位シナリオ

高位シナリオ

2030年

7.8%

21.5%

29.1%

2040年

12.0%

34.9%

42.9%

2050年

13.9%

48.4%

48.4%

 

この分析は、投資先企業における現在の温室効果ガス排出量をもとに実施したものであります。投資先企業が脱炭素の取組みを進めていけば、その投資先企業が負担するカーボンコストは低下し、将来のカーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)も低減が見込まれます。

 

シナリオ分析に関する詳細の内容は、当社の「グリーンレジリエンスレポート2024」を参照ください。

https://www.ms-ad-hd.com/ja/csr/main/05/teaserItems1/01/link/greenresiliencereport2024.pdf

 

 

ニ.リスク評価に対する不確実性の存在

(イ)気候予測モデルの不確実性

複数の気候予測モデルを比較・評価し、その結果を統合することで気候変動に関する科学的理解を深めることを目的とする国際的なプロジェクトのCMIP(Coupled Model Intercomparison Project)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書においても、気候予測やシナリオ分析のためのデータ提供を行っておりますが、その気候予測モデルには以下のような不確実性を内包しております。

a.モデルの構造的不確実性

各モデルは異なるパラメータを使用しているため、モデル間で結果が異なることがあります。特に温暖化に伴う雲の温室効果や日傘効果がモデルごとに異なり、これが気候変動予測の不確実性の最大の要因(※)となっています。

b.外部強制力の不確実性

太陽放射、火山活動、人為的な温室効果ガスの排出など、外部強制力の将来の変動に関する不確実性も存在します。

c.内部変動の不確実性

気候システムには自然の内部変動(エルニーニョ現象等)が存在し、これがモデルの予測に影響を与えることがあります。

d.データの不確実性

モデルの検証や初期条件の設定に使用される観測データの精度に不確実性が存在します。日本の短時間強雨発生回数の変化に関する気象庁のレポートにおいても、極端な大雨の発生頻度が少ないことや、アメダスの観測時間が比較的短いことから、これらの長期変化傾向を確実に捉えるためには今後のデータの蓄積が必要であることが示唆されています。

e.スケールの不確実性

モデルはグリッドベースで計算を行うため、空間解像度に限界があります。これにより、地域的な気候変動の詳細な予測には限界が生じます。

※ Zelinka et al., Causes of Higher Climate Sensitivity in CMIP6 Models,

 

このように、IPCCの評価報告書に提供される気候モデルにおいても複数の不確実性が存在し、最も温暖化が進行するシナリオ(RCP8.5/SSP5-8.5)における分析結果においてもなお、その影響が上振れする可能性があることを認識しております。

 

(ロ)洪水対策後の被害額に関する不確実性

当社グループが有するポートフォリオに対して、特に影響が大きい自然災害は洪水でありますが、適応策(洪水に対する防止対策)を実施した後においても、気候変動や社会経済の発展状況によっては洪水被害が現在の被害額よりも増加してしまうという「適応の限界」が生じる可能性があります。これは洪水を防御するための構造物を建設する間に発生する洪水被害などが大きいためであり、できるだけ早期に適応策の実施を意思決定することと、そのための資金確保が重要なことが明らかになっております。

当社グループはこれらの点を考慮し、自然災害発生時の被害を回避するために要した費用を補償する「災害時車両緊急避難特約」などを開発しております。

 

(ハ)土砂災害における被害額に関する不確実性

多様な生態系によって、私たちは洪水緩和や土壌・堆積物保持といった生態系サービスを享受しております。しかし、将来的に生物多様性が失われることで、こうしたサービスが得られずに被害を受けるリスクがあります。

例えば、森林には降雨時における表層崩壊の発生を抑制するという土砂災害防止機能があります。この機能は、森林の成熟あるいは劣化に伴って向上又は低減します。また、成熟した森林は若い森林と比較して、より規模の大きい豪雨に対しても土砂災害防止機能を発揮できますが、一方で、土砂災害が発生した場合の流木量は成熟した森林の方が大きくなることがあります。

日本は国土の67%が森林であり、そのうちの約4割は成熟した状態にある人工林であることに加え、前述のように、気候変動による豪雨の増加が予想されることから、今後は土砂災害における損害額の増加が見込まれるものの、そのリスク量の大きさは想定できていない可能性があります。

当社グループはこれらの点を考慮した森林整備なども含めた流域治水が重要であると考えており、熊本県で土砂災害の防災・減災に貢献する球磨川流域における「緑の流域治水プロジェクト」や“熊本のウォーターポジティブ実現のための取組み”などの「グリーンレジリエンス(※)」の取組みを進めております。

※ 当社グループは、自然の恵みを生かし、生物多様性を守りながら、脱炭素化を進め、自然災害の被害を和らげ、その魅力で地域も活性化する好循環を生み出す考え方を2015年から「グリーンレジリエンス」と称し、自然環境の保全・回復活動や、自治体・大学との共同活動に取り組んできました。

 

(b)気候・自然関連の機会

当社グループは、特定した気候・自然関連の物理的リスク、移行リスクを踏まえ、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。

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(c)気候・自然関連のリスクと機会によるビジネスモデル、バリュー・チェーン(保険引受先・投融資先)への影響

当社グループのビジネスモデルは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ①価値創造ストーリー」のとおり、保険・金融サービスにより「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」という活動を通じて、社会課題へのソリューションを提供することであります。

気候変動による自然災害の頻発化・激甚化、生態系の喪失による気候変動への適応・緩和能力の低下は、支払保険金の増加につながり、当社グループの収益に大きな影響を与えます。

また、当社のバリュー・チェーンを形成する保険引受先と投融資先にも、上記(a)の「イ.物理的リスク」「ロ.移行リスク」のとおり、影響を与えます。

一方、気候変動への対応には、保険引受先・投融資先をはじめ社会全体において大幅な投資が見込まれております。上記(b)のとおり、外部環境に応じた当社グループの機会が考えられます。例えば、再生可能エネルギーへの移行や省エネルギー技術の採用による設備投資、防災・減災を目的としたグリーンインフラへの投資等が考えられ、このような成長マーケットへのリスクソリューション提供は当社グループの機会となっております。

 

 

b.気候・自然関連のリスクと機会を踏まえた取組み

(a)リスクを見つけ伝える

イ.「リスクを見つけ伝える」取組み ~サステナビリティを考慮した事業活動~

当社グループは、「サステナビリティの考え方」に基づき、サステナビリティを考慮した事業活動を実践し、ステークホルダーとともに社会課題の解決をめざしております。保険引受・投融資においては、環境・社会に負の影響を与えるリスクを評価・分析し、取引先とともにリスク低減に取り組んでおります。リスクの評価にあたっては、国際協力銀行(JBIC)の「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」や国際金融公社(IFC)の「パフォーマンススタンダード」等を参考に、気候・自然関連の物理的リスク及び移行リスクに加え、脱炭素化に向け、急速に普及が進む再生可能エネルギー事業や未開拓の場所への大規模な開発を伴う新規の農林水産事業における自然や地域社会への影響、先住民の権利に関するリスク等を評価・分析しております。発見されたリスクに対する予防・低減、課題の解決に貢献する商品やリスク・コンサルティングサービスの提供を通じ、ネットゼロ、ネイチャーポジティブを支援しております。

 

ロ.気候・自然関連リスク・機会の分析、評価と情報開示の支援

MS&ADインターリスク総研株式会社では、気候・自然関連の物理的リスクと移行リスクを評価・分析し、情報開示を支援するサービスを提供しております。特に気候変動の物理的リスクの定量的な評価は、先進的な知見をもつ社外の組織と連携し注力してまいりました。2020年に米国のスタートアップと連携しAIを活用した気候変動影響評価をもとに、将来の多様な自然災害リスクを全世界対象に90m四方の精度で定量評価するサービスを開始しております。また2018年に開始したプロジェクトでは、全世界の高精度な浸水深分布の推定を実現し、その成果をコンサルティングに活用しております。また、2023年度から全世界の洪水リスク評価が可能なSaaS型プラットフォーム「洪水リスクファインダー」の提供を行っております。

自然関連のリスクについては、直接の事業活動だけでなく、原材料調達などを含むバリュー・チェーン全体を対象とする必要があります。事業が接点を持つ各地域の自然・生態系の状態や、事業のあり方によって異なることから、分析・評価には、地域単位の科学的な評価・分析を行うことが重要であり、当社グループは、2022年に自然資本ビッグデータを有する企業と提携するなど、画期的な技術をもつ企業との実証を重ねながら、全般的な支援に加え、都市不動産向けや淡水資源にフォーカスしたTNFD開示支援など、自然との接点が特に強い業種に焦点を当てた支援を提供しております。

 

ハ.ネイチャーポジティブへの移行を後押しするコレクティブアクション

地域の課題解決に向け、自然への依存の内容・度合いや、土地利用の変化による自然へのインパクトを踏まえ、ネイチャーポジティブに向けた明確な目標を共有することが重要であり、効果的な対策を立案し、様々なステークホルダーによる協働(コレクティブアクション)を進める必要があります。MS&ADグリーンアースプロジェクトでは、全国3ヵ所での自然環境の保全・再生活動を通じて、研究機関と連携し、地域の事業者、NPOなどを巻き込み、ネイチャーポジティブに向けたコレクティブアクションを推進しております。ネイチャーポジティブの実現と自然を活用した防災・減災、水資源の涵養などの課題解決を進め、安心・安全で活力ある地域モデルの構築をめざしております。

 

(b)リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする

イ.保険引受・投融資を通じた取組み

<保険引受先・投融資先に係る温室効果ガス排出量削減目標と対話>

当社グループは、保険引受先及び投融資先に係る温室効果ガス排出量の削減について、2030年までの中間目標を設定しております。削減率目標とその進捗については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 指標・目標」を参照ください。

 

目標達成に向け、2023年度より、温室効果ガス排出量削減をはじめとするサステナビリティの課題に関する保険引受先との対話活動を開始しました。従来も、CSV取組として、サステナビリティの重点課題の解決に向けた保険引受先への商品・サービスの提案活動を行っておりますが、2023年度からは、サステナビリティ課題に完全にフォーカスした対話活動を新たに開始しております。対話を通じ、保険引受先のサステナビリティ課題を把握し、課題解決に向けたソリューション提案を進めております。取組みの推進にあたり、代理店・ブローカーともサステナビリティ課題の解決に向けたソリューション提案に関する対話を開始しております。

 

ロ.投融資を通じた脱炭素社会の支援

投融資先企業の温室効果ガス排出量削減に向けて、気候変動に対応した対話取組の推進、太陽光・風力・バイオマスといった再生エネルギーの発電所建設に係るプロジェクトファイナンスやファンドへの投融資を行っております。また、三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、三井住友海上あいおい生命保険株式会社、三井住友海上プライマリー生命保険株式会社の4社が合同で気候変動を中心とするインパクトファンドへの投資の実行とともにノウハウ構築も進めております。

気候変動に対応した対話に関しては、投資先企業の気候変動対応の組織体制、温室効果ガス排出量削減目標に向けた取組み、技術革新計画や課題の把握等に取り組んでおります。

 

ハ.当社グループの温室効果ガス排出量削減取組

当社グループは、2010年度に温室効果ガス排出量削減の中長期目標を設定し、事業活動に伴って排出される温室効果ガス排出量の削減に取り組んでまいりました。2020年度には当初の温室効果ガス排出量削減目標(2009年度基準比30%削減)を達成し、2021年5月、パリ協定に沿った新たな目標を設定しました。新たな目標では、温室効果ガス排出量を2050年度ネットゼロとし、2030年度の中間目標と再生可能エネルギー導入率目標も設定しました。

自社のオフィスビルへの最新鋭の省エネルギー設備の導入や太陽光発電設備の設置、社有車の低燃費車両への入替等により、エネルギー使用量の削減と再生可能エネルギーの導入を進めております。また、リモートワークや在宅勤務、オンライン会議の積極的な活用など、ビジネススタイルの変革は、社員のWell-beingの実現とともに、社員の移動やオフィススペースを削減することで、ガソリンや電力の使用量の削減につながり、通勤や出張に係るエネルギーの削減、いわゆるスコープ3の温室効果ガス排出量削減につながります。保険契約のお申込み、保険金のご請求手続、各種お知らせ等のWeb化といったビジネスプロセス改革も、紙の使用量の削減などの自然への負荷軽減と同時にスコープ3削減として取り組んでおります。

 

ニ.気候・自然関連のイニシアティブ・アライアンスへの参加

ネットゼロ、ネイチャーポジティブに向けた取組みは、科学的知見に基づき、社会全体の移行を進めることが不可欠であり、研究の推進と、ビジネスにおける基準やルールづくり、推進体制の構築が鍵をにぎります。当社グループは、学術機関との共同研究に積極的に参加するとともに、気候・自然関連のイニシアティブやアライアンスへの参加、また自らが連携の仕組みを主体的に構築するなど、様々なステークホルダーとともに社会の移行に積極的に取り組み、「レジリエントでサステナブルな社会」をめざしております。こうした移行プロセスにおけるステークホルダーとの接点強化やペインポイントの発見を、新たなマーケットの開拓や保険・サービスの開発につなげ、あるべき社会の創造と当社の持続可能な成長のシナジー創出に取り組みます。

グループ会社がそれぞれに様々な研究機関と共同研究を行っておりますが、特に気候や自然に関連して次の研究プロジェクトに参画しております。

 

 

研究機関との主な共同研究

LaRC-Flood®プロジェクト(東京大学、芝浦工業大学)

2018年、IPCCにも成果が紹介されるなどの実績を持つ芝浦工業大学の平林教授、東京大学生産技術研究所の山崎准教授と気候変動による洪水リスクへの影響評価の研究及び研究成果の社会への還元をめざしたプロジェクトを始動し、「気候変動による洪水頻度変化予測マップ」を公開。2021年度からNEDOとのマッチング助成事業の採択を受け、「将来洪水ハザードマップ」の開発、提供やSaaS型「洪水リスクファインダー」の開発に至っている。

地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点 [ClimCOREプロジェクト](東京大学)

過去から現在までの日本域の大気状態を高解像度で再現する「日本域気象 再解析データ」を整備し、大気状態の全体像を長期にわたり均質に4次元的に再現するとともに、こうした気象・気候ビッグデータの利活用とその体制構築も研究するプロジェクト。当社グループは、本プロジェクトへの参画を通じ、台風のリスク評価に関する共同研究を行っている。

※2020年(国研)科学技術振興機構(JST)による「共創の場形成支援プログラム」(COI-NEXT)の助成対象

「流域治水を核とした復興を起点とする持続社会」地域共創拠点[緑の流域治水プロジェクト](熊本県立大学)

球磨川流域を襲った令和2年7月豪雨を踏まえ、熊本県は、河川の整備だけでなく、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現していく「緑の流域治水」を提唱。この考え方を核に、安全・安心に住み続けられ豊かな環境と若者が残り集う持続可能な地域の実現に向け、治水技術や環境再生、避難体制の強化につながる地域DX等の研究を進める。2021年にJSTのCOI-NEXTの助成を受ける。当社グループは、「MS&ADグリーンアースプロジェクト」として湿地の保全に参画するとともに、流域治水を促す保険・金融商品や防災に資するDX等の研究を進めている。

※2021年(国研)JSTによるCOI-NEXTの助成対象

ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(東北大学)

自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」の理念に基づき、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体、市民等が連携し、①自然の価値を見える化し、持続的に高める、②ネイチャーポジティブに向けてお金が流れる仕組みを作る、③ネイチャーポジティブ発展社会を支える人を育てる取組みを進める。当社グループは、生物多様性の評価手法や認証の開発に取り組み、ネイチャーポジティブに向けてお金が流れる仕組みづくりとその実装をめざす。

※2024年(国研)JSTによるCOI-NEXTの助成対象

 

(c)経済的な負担を小さくする

イ.気候変動の適応に貢献する商品・サービスの開発・提供

住宅や事業所向けの火災保険に付帯される「水災補償」は、洪水などによる建物や家財、設備等の損害を補償します。迅速な損害補償は、被災者の生活再建を支援する上で極めて重要であります。「天候デリバティブ」は、異常気象や天候不順による売上の減少やコストの増加といった企業の損失を回避・軽減し、収益の安定化を図ります。オーストラリアでは、オンラインでリアルタイムに保険見積りを実施できる「農家向け天候インデックス保険プラットフォーム」をインシュアテックの技術を活用して提供し、迅速かつ簡便に補償を得ることが可能になると考えております。また、保険市場が十分に発達していない国々では一定規模の自然災害が発生した場合、復旧や復興は困難を極め、更なる貧困や政情不安につながる可能性があり、世界銀行等の国際機関と連携し、公的自然災害補償制度への参画を通じて、こうした国々へ復興資金の迅速な提供に貢献しております。

 

ロ.自然災害の補償・保障前後への取組拡大

当社グループでは、頻発する自然災害に対して、「リアルタイム被害予測ウェブサイト・アプリcmap」や「防災減災システム『防災ダッシュボード』」等のサービスを通じて、地域の防災減災活動を支援しております。国内初の降雹の予測情報を通知するアラートサービスは、降雹発生確率が高まっているエリアのサービス利用者に対し、プッシュ型のアラートを配信することで、雹災による被害の回避・軽減に貢献しております。

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また、実証実験中の「内水氾濫予測システム」は、都市部で頻発する内水氾濫を予測し、住民の避難や浸水対策に役立て、被害の軽減をめざします。

さらに、被災された方々の生活再建を早期に支援すべく、補償後サービスとして、罹災証明書の迅速な発行や交付事務の効率化を支援しております。

こうした様々なサービスや地域の防災減災活動を実装するため、代理店等と連携した「防災パートナー」制度を運営しております。当社グループが核となり、地域特性に応じた防災活動を行う代理店等と連携し、自治体や災害支援組織との協力体制を構築し、地域の防災力の向上とともに、お客さまとの接点強化による事業機会の創出につなげます。

 

ハ.保険商品を通じた、ネットゼロ、ネイチャーポジティブ移行への支援

当社グループでは、再生可能エネルギー事業に伴うリスクの補償など、ネットゼロ、ネイチャーポジティブへの移行に向けた企業の事業を支援する保険を提供しております。

自然災害でJ-クレジットを創出する予定だった機器が被災した場合、その販売収益の減少を補償する保険を提供しております。また、脱炭素を支援するため、追加費用を補償する特約も開発しております。従来の保険は、元の状態に復旧する費用までしか保険金をお支払いできませんでしたが、「Build Back Better(※)」の考えを踏まえ、ネットゼロ社会への移行を後押ししております。「カーボンニュートラルサポート特約」は、被災建物の復旧時にCO2排出量削減設備の導入費用を補償し、「電気自動車(EV)等買替費用特約」は、ガソリン車が事故により大きな損害を被り、EV等へ買い替える場合に発生する費用を補償します。

ネイチャーポジティブへの移行において、資源利用の削減は重要な要素であり、循環経済(サーキュラーエコノミー)の推進が不可欠と考えております。「衣料品循環費用補償(燃やさない保険)」は、アパレル業界の大量廃棄の社会課題を受け、衣料品メーカーや販売店が損害を受けた際、リサイクルに係る費用を補償し、衣料品の循環利用を支援します。また、自動車の修理においてはお客さまとともにリサイクル部品の活用に取り組んでおり、循環経済の実現に貢献しております。

自然資本や生物多様性の保全・回復に資する商品・サービスとして、「海洋汚染対応追加費用補償特約」では、従来、補償の対象外であった船舶運航者の社会的責任を補完するため、自然環境への損害に対する保全・回復活動等の費用を補償しており、「再造林等費用補償特約(フォレストキーパー)」では、罹災した森林の保全と再生に向けた再造林費用を補償しております。また、熊本県阿蘇地方の草原維持に欠かせない「野焼き」による延焼リスクを補償する保険制度も提供しております。一部では、延焼リスクの手当が得られず、中断を余儀なくされていましたが、当社グループの「野焼き保険」提供により、阿蘇の自然や歴史に密接に結びついた伝統は維持され、農畜産物を育み、豊富な水資源の保全などに貢献しております。

※ 災害発生後の復興段階において、元の状態に戻すだけでなく、より強靱な対策を講じてまちづくりを実現するという、防災分野で提唱されている概念。

 

② 重点課題「安心・安全な社会(Resilience)」

a.リスクと機会

当社グループは、イノベーションの進展や産業構造の変化などに伴う新しいリスクの発現、感染症の拡大、自然災害や大規模地震、地域産業の衰退などの社会課題を重点課題「安心・安全な社会(Resilience)」と位置づけております。これらは取引先の事業活動におけるリスクにもなり、当社グループにおいても保険金支払の増加や保険料収入の減少につながります。

一方、増加するサイバーリスクや、新たに発現しているAI、宇宙開発、拡張・仮想現実などでのリスクへの対処は、当社グループ事業における機会でもあると考えております。

 

b.リスクと機会を踏まえた当社グループの取組み

(a)社会の変革に伴い発現する新たなリスクへの対応

・2024年7月、EVが公道で電池切れを起こした際の「電欠現場駆け付け充電サービス」のトライアルを開始しました。将来的なEVのさらなる普及を見据え、ロードサービスの拡充を通じてEVユーザーの不安解消へつなげるとともに、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

・2024年11月、CCS(※)事業の圧入・貯留事業者向けに、海底下へのCO2の圧入・貯留に係るリスクを包括して補償する「CCS事業者専用保険」の販売を開始しました。本商品の提供を通じて、CCSの事業化を後押しし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

※ Carbon dioxide Capture and Storage の略。工場や発電所から排出されるCO2を回収して貯留場所に輸送し、地下帯水層等の大気への影響のない場所に貯留することで、工業プロセスにおけるCO2の削減を実現する技術。

・2025年4月、近年増加している太陽光発電所のケーブル盗難被害の軽減を実現するため、太陽光発電事業者向けに、侵入者を検知するセンサーの設置と警備会社への自動通報・現場駆け付けをパッケージ化したケーブル盗難防止サービスの提供を開始しました。

 

(b)データ分析やAIを活用した防災・減災

・2024年6月、個人のお客さま向けに降雹の危険をお知らせする「雹(ひょう)災緊急アラート」の提供を開始しました。個人向けの自動車保険や火災保険で登録されている契約者住所において降雹リスクが高まった際、事前アラートや防災につながるアドバイスをSMSで配信し、被害の回避行動を促します。

・2024年8月、自然災害発生時に住宅修理や保険金の請求手続代行を勧誘し、不当に高額な手数料を請求する業者等からお客さまを保護するため、トラブル懸念業者の介入可能性が高い保険金請求事案を、AIを活用して早期に検知できるシステムを開発し、運用を開始しました。

・2024年12月、佐川急便株式会社と共同で、物資拠点を有する自治体や企業向けの防災支援サービスを開発しました。本サービスによって物資拠点のリスクを可視化・分析し、災害対応力の向上を支援することで、物資拠点の安全性と事業継続力の強化に貢献いたします。

・2025年3月、事故に遭われたお客さまの負担軽減と迅速な事故解決を実現するため、専用ドライブレコーダーに、事故発生時の音響で事故を検知するAIを開発し機能を追加しました。

 

(c)レジリエントで包摂的な地域社会づくり(地方創生)

・当社グループは、自治体や研究者、地域のNPOと協働し、自然環境を再生して保全する「MS&ADグリーンアースプロジェクト」に取り組んでおり、社員と家族が参加しております。

・自治体と連携して水災時に罹災証明書の発行手続を支援する「被災者生活再建支援サポート」サービスを提供しております。

 

③ 重点課題「多様な人々の幸福(Well-being)」

a.リスクと機会

当社グループは、高齢化・少子化の進展、人権侵害・多様性の排除、貧困・格差拡大といった社会課題を重点課題「多様な人々の幸福(Well-being)」と位置づけており、これらは、人口減少や少子高齢化の進展による国内保険市場の中長期的な成長鈍化や企業価値の毀損等、当社グループの事業活動にとってもリスクとなります。

一方、自治体や地域企業、金融機関等と連携した地方創生取組は当社事業における機会になると考えております。また、人権デュー・ディリジェンスの推進・支援や、女性、高齢者、障がい者、LGBTQのお客さまの保険・金融アクセス向上など、課題解決に向けた取組みは、当社グループ事業の中期的な成長実現につながる機会と考えております。

 

b.リスクと機会を踏まえた当社グループの取組み

(a)お客さまのWell-being

・企業の健康経営の支援や健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスや、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスを提供しております。

・病気の予防・早期発見から健康に関するご相談、重症化・再発予防など、お客さまの健康をトータルでサポートすることを目指すヘルスケアサービス「MSAケア」を提供しております。

・社員の知識、理解向上のために認知症サポーター養成講座の受講をグループ共同で推進しております。

 

(b)人権尊重の推進

・当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に依拠した、人権尊重のマネジメントシステムである人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、幅広いステークホルダーとの対話をとおして得られた意見を反映しております。

・2024年12月に、グループ人権基本方針の下にカスタマーハラスメントに関する規定・マニュアルを整備し、当社グループの国内規定体系を統一しました。これに基づき、社員の人権を守るため毅然とした姿勢で取り組んで行くことを公表するとともに、社員への理解浸透を促す研修を実施しております。

・2024年度は、当社グループのバリュー・チェーンとステークホルダーから人権リスクの発生する接点を整理し直し、2021年度の評価の結果、特定した3つの重点課題の枠組みはそのままに、具体的かつ的確な対応ができるよう、「公平・公正なお客さま対応」、「代理店・委託先、保険引受先・投融資先における人権対応の考慮」、「社員の心身の健康への配慮と安心安全な職場環境の実現」に名称変更しました。

・海外拠点では、国・地域によって抱える課題が異なるため、2022年6月に実施した海外拠点向けアンケート結果をもとに、各国の人権リスク対応状況を確認したうえで、予防・改善策やモニタリング方法を定めて人権尊重取組を推進しております。

・従来から対策を進めている人権リスクに加えて、LGBTQのお客さまへの対応、テクノロジー・AIに関する人権侵害への対応、外部委託先・代理店の人権課題に対する認識度の引上げ・人権尊重取組推進の支援に取り組み、継続的に防止・軽減に努めております。

・人権課題の救済については、自社社員を対象とした内部通報制度の継続整備に加え、2023年7月からは、外部委託先向けの第三者プラットフォームを活用した救済窓口を開設しました。2024年11月からは利用対象を全保険代理店に拡大しております。

 

(c)社員のWell-being

グループの最大の財産は人財であり、グループ社員一人ひとりの能力・スキル・意欲が最大限発揮できるよう、基本戦略の実現に必要なスキルを明確化して、自律的なキャリア形成機会、柔軟で効率的・効果的な働き方、チャレンジ精神を後押しする企業文化といった職場環境の整備を進めております。

 

(3) リスク管理

当社グループは、サステナビリティに関連するものを含め、当社グループを取り巻くリスクについて、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を経営の最重要課題として取り組んでおります。当社グループのリスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

上記に加え、「MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方」で「サステナビリティを考慮した事業活動」として、保険引受・投融資における環境・社会リスクへの対応を定め、当該リスクを評価・管理する体制を構築し、高度化に努めております。

 

① 事業別の対応ガイドライン

セクター

区分

ガイドライン

石炭

取引禁止

石炭火力発電所、主に一般炭を産出する炭鉱の開発と運営に関する新規の保険引受や投融資を行わない(※1)

取引禁止

石炭を主業とする企業のエネルギー採掘プロジェクトに関する新規の保険引受を行わない(※2)

石油・ガス

取引禁止

オイルサンド採掘及び北極圏における石油・ガス採掘プロジェクトに関する新規の保険引受や投融資を行わない(※3)

慎重に取引を判断

石油火力発電と油田、オイルサンドの採掘、ガス田の新規建設プロジェクト

非人道的

兵器製造

取引禁止

クラスター弾、生物・化学兵器や無差別殺傷につながる対人地雷製造企業の保険引受や投融資を行わない

農林水産

慎重に取引を判断

未開拓の場所への大規模な開発を伴う新規農林水産事業

水力発電

慎重に取引を判断

水力発電所の新規建設事業

太陽光発電

慎重に取引を判断

国内の太陽光発電所の新規建設事業

陸上風力発電

慎重に取引を判断

国内の陸上風力発電所の新規建設事業

バイオマス発電

慎重に取引を判断

国内のバイオマス発電所の新規建設事業

自然保護区域

慎重に取引を判断

ユネスコ世界条約で保護対象となる自然・文化遺産及びラムサール条約で保護対象となる湿地を破壊するおそれのある事業

人権

慎重に取引を判断

先住民族・地域住民の人権を侵害するおそれのある事業

※1 パリ協定の合意事項達成を目的に、脱炭素化等の技術・手法を取り入れている既設の石炭火力発電所及び主に一般炭を産出する炭鉱の開発と運営に関する案件については、慎重に検討の上、対応を行う場合がある

※2 収入の25%以上を石炭火力発電、主に一般炭を産出する鉱山から得ている企業、または25%以上のエネルギーを石炭で発電している企業

※3 パリ協定の合意事項達成を目的に、温室効果ガス排出量削減計画を策定している企業やプロジェクトを除く

 

② 環境・社会リスクの管理プロセス

a.保険引受

・審査プロセス

グループ方針に沿った取引であることを確認し、該当する案件のみ保険引受を行っております。確認の結果、サステナビリティに関するリスク(ESGリスク)が高いと判断された案件については、エスカレーションプロセスを設け、グループサステナビリティ委員会に報告しております。

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b.投融資

(a)ESG投融資取組

ESG要素の投融資判断への組込み(Integration)、建設的な対話(Engagement)、サステナビリティに貢献する投融資案件(Positive Impact)の取組みを柱として実践しております。

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※ アクティブ投資、パッシブ運用、運用の外部委託先にも適用

 

(b)投融資プロセスへのESG要素の体系的な組込み

当社グループが自社運用として行う株式、社債、融資、プライベート・アセット等のアセットクラスにおいて、従来の財務分析・非財務分析等のほかに、グループのサステナビリティを考慮した事業活動への対応、グループESG課題の外部評価機関を活用したリスク評価・分析を投融資判断に体系的に組み込んでおります。

また、社債や株式の運用を委託する運用会社に対して、原則年次で質問票を送付し、ESG取組を確認しております。

 

(4) 指標・目標

当社グループは、3つの重点課題ごとにリスクと機会に関する指標・目標を次のとおり定めております。

 

① 地球環境との共生(Planetary Health)

当社グループは、当社グループやサプライチェーンを通じて排出する温室効果ガスの削減に向けて、次のa.及びb.を指標・目標として取り組んでおります。

a.温室効果ガス排出量削減率

指標

2030年度目標

2050年度

目標

実績

スコープ1・2(※1)

基準年度(2019年)比▲50%

ネット
ゼロ

2023年度

▲35.3%

スコープ3

(※2)

カテゴリ
1・3・5・6・7・13

基準年度(2019年)比▲50%

2023年度

▲24.8%

保険引受先・

投融資先

基準年度(2019年)比▲37%

(国内主要取引先(※3))

お客さまとともに温室効果ガス排出量削減に向けた取組みを進めるため、対話を深め、削減に向けた課題の把握と、課題解決に向けたソリューションの提案を実施

2022年度
▲18.3%

※1 スコープ1は社有車のガソリン等、当社グループが直接排出するもの、スコープ2は電力などの使用により間接排出するもの。

※2 当社グループの事業活動に伴って間接的に排出するもののうち、スコープ2以外のもの。カテゴリ1は購入した製品・サービス(対象:紙・郵送)、カテゴリ3はスコープ1、2以外の燃料及びエネルギー活動、カテゴリ5は事業から出る廃棄物、カテゴリ6は従業員の出張、カテゴリ7は従業員の通勤、カテゴリ13はリース資産。

※3 収入保険料を基に選定した国内主要取引先(約3,300社)。

 

(a)事業活動における温室効果ガス排出量

項目

対象範囲

単位

2023年度実績

温室効果ガス総排出量

スコープ1・2・3

グループ連結

t-CO2

187,177

温室効果ガス排出量

(スコープ1)

グループ国内+その他

12,439

グループ連結

15,589

温室効果ガス排出量

(スコープ2)

グループ国内+その他

38,965

グループ連結

41,634

温室効果ガス排出量

(スコープ1+2計)

グループ国内+その他

51,404

グループ連結

57,222

温室効果ガス排出量

(スコープ3)(※1)

グループ連結(※2)

129,955

※1 カテゴリ1・2・3・5・6・7・13

※2 カテゴリ1・7については「グループ国内+その他」を対象範囲としました。

 

(b)スコープ3 カテゴリ別温室効果ガス排出量

項目

対象範囲

単位

2023年度実績

カテゴリ1:購入した製品・サービス(※)

グループ国内+その他

t-CO2

39,607

カテゴリ2:資本財

グループ連結

48,766

カテゴリ3:スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

グループ連結

11,760

カテゴリ5:事業活動において生じる廃棄物

グループ連結

1,498

カテゴリ6:従業員の出張

グループ連結

15,232

カテゴリ7:従業員の通勤

グループ国内+その他

7,733

カテゴリ13:下流におけるリース資産

グループ連結

5,360

カテゴリ15:投融資

下記(d)を参照

※ 対象:紙・郵送

 

(c)国内主要取引先の温室効果ガス排出量(※1)

項目

対象範囲

単位

2022年度実績

保険引受

三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の国内主要取引先(※2)

千t-CO2

1,153

投融資

3,125

※1 当社の保険引受(インシュアランスアソシエイテッドエミッション)及び投融資に係るもの(ファイナンスドエミッション)。

PCAFの金融機関向け温室効果ガス計測スタンダード(Part A及びPart C)に基づき算出(2023年3月末時点)。保険引受の計測対象種目は、自動車保険、火災保険、新種保険(除く工事保険)、貨物保険、船舶保険、航空保険の法人契約とし、国内主要取引先の温室効果ガス(スコープ1+2)を算出。投融資の計測対象資産は、国内上場の株式、社債、企業融資とし、国内主要取引先のうち投融資のある対象の温室効果ガス(スコープ1+2)を算出。取引先の排出量は、情報ベンダーデータ及びPCAFデータベースから引用した収益額あたりの排出係数を利用。

※2 収入保険料を基に選定した国内主要取引先(約3,300社)。

 

(d)投融資先の温室効果ガス排出量(ファイナンスドエミッション)

項目

対象範囲(※1)

単位

2022年度(※2)

株式

上場企業の国内外株式(時価ベースの約99%)

千t-CO2

2,111

社債

国内外社債(簿価ベースの約97%)

1,944

企業融資

国内外企業融資(簿価ベースの約95%)

225

※1 当社グループの2023年3月末の投融資ポートフォリオを対象としています。

※2 2023年3月末日時点の保有残高を用いて2023年度に算出しています。

 

温室効果ガスの排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき算定しております。

 

b.再生可能エネルギー導入率

指標・目標

進捗状況

・2030年度:60%

・2050年度:100%

・2023年度:23.0%

 

当社グループは、脱炭素社会・環境汚染対策につながる循環型経済への移行に向けて、次のc.を指標・目標として、技術革新と社会実装を支える商品・サービスの提供を行っております。

c.社会の脱炭素化、循環型経済に資する商品

指標・目標

進捗状況

・保険料増収率:平均18%

・2023年度:24.5%

 

② 安心・安全な社会(Resilience)

当社グループは、イノベーションの進展や産業構造の変化に伴う、サイバーリスクなど新たなリスクに対応するため、次のa.を指標・目標として、商品・サービスの提供を行っております。

a.社会のレジリエンス向上に資する商品

指標・目標

進捗状況

・引受件数増加率:年平均20%

・2024年度:25.0%

 

当社グループは、次のb.を指標・目標として、自治体や商工団体等、地域を取り巻くステークホルダーと連携した社会課題解決の推進や、持続可能なインフラへの移行、地域産業の活性化、多様なモビリティサービスの実現等による地方創生の推進に取り組んでおります。

b.地域企業の課題解決支援数

指標・目標

進捗状況

・コンサルティングサービス、研修・セミナー等:

 2025年度 年1万件

・2024年度:11,091件

 

③ 多様な人々の幸福(Well-being)

当社グループは、次のa.及びb.を指標・目標として、企業の健康経営の支援、健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスの提供、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスの提供を行っております。

a.健康関連の社会課題解決につながる商品

指標・目標

進捗状況

・保有契約件数:260万件(2025年度末)

・2024年度:225万件

 

b.長寿に備える資産形成型商品

指標・目標

進捗状況

・保有契約件数:10万件(2025年度末)

・2024年度:12万件

 

 

当社グループは、次のc.を指標・目標として、企業の人権関連対応の支援を行っております。

c.企業の人権関連対応の支援数

指標・目標

進捗状況

・コンサルティングサービス、研修・セミナー等:

 2025年度 年1,000件

・2024年度:1,111件

 

当社グループは、次のd.を指標・目標として、グループ一体感の醸成と社員がいきいきと活躍できる企業文化をめざし、社員が参加できるグループ横断活動に取り組んでおります。

d.社員意識調査

指標・目標

進捗状況

CSVを実感している:前年同水準以上

・2024年度:4.5 pt(2023年度:4.5 pt)

MVV(※)を意識している:前年同水準以上

※ ミッション(経営理念)、ビジョン(経営ビジョン)、バリュー(行動指針)

・2024年度:4.7 pt(2023年度:4.6 pt)

 

(5) 人財育成方針

① 基本的な方針

・当社グループには、国内外の連結会社に約4万人の社員がおり、グループの最大の財産は人財と考えております。人財はグループの企業価値向上の原動力であり、人財育成に積極的に投資します。

・当社グループがめざす人財像は、「自律的に行動し、変革にチャレンジし、新たな価値を創造する人財」であります。このような人財を継続的に輩出するよう、人財育成に取り組みます。

・当社グループの強みである多様性を活かして組織を牽引することができる、多様なリーダーの育成に取り組みます。経営をリードする人財、女性リーダーなどの育成を、グループ共同で進めます。

 

② 中期経営計画(2022-2025)を踏まえた方針

・経営戦略を実現するのは人財であり、戦略実現のために必要なスキルを明確化し、リスキリングやアップスキルなどへの人財投資により社員の自律的な成長機会を拡充するとともに、外部人財を含めた専門人財の確保・活躍を推進し、最適な人財ポートフォリオを構築します。

・特に、CSV×DXのグローバルな展開や、事業・リスクポートフォリオの変革などを担う「デジタル人財」「海外人財」については、KPIを設定し、人財育成の進捗を確認しながら、重点的に育成に注力します。

・併せて、社員のコンプライアンス知識・意識の向上・徹底に取り組みます。

 

a.デジタル人財の育成

すべての社員がベーシックなデジタルスキルを身につけることに加えて、大学等との連携育成プログラムなどを活用し、ビジネスサイド、データ分析サイドの両面からデジタル人財の育成を進めます。

(a)ビジネスサイド :DXを活用してビジネスを創造・拡大することのできる人財

デジタルスキルに関するオンライン教育ツールの拡充や、グループ各社のデジタル人財認定制度、大学等(※)との連携講座などを活用して体系的に進めることで、多くの社員がスキルを身につけ、向上するよう取り組みます。

 

(b)データ分析サイド:高度なデータ分析等、ビジネスを実現するための高いスキル・専門性を有し発揮できる人財

大学等(※)との連携講座や、データサイエンスに関する高度なスキルの認定制度を活用して育成に取り組みます。また、ジョブ型の社員区分を設け、外部専門人財の確保・活躍に適した環境を整備・活用します。

 

〔KPI〕 2025年度7,000人  (上記(a)と(b)合計)

デジタル人財の推移(グループ国内保険会社5社合計)            (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

3,601人

5,814人

8,490人

 

(※)MS&ADデジタルアカデミー(INIAD:東洋大学情報連携学部)

累計参加人数1,081人(2018年度~2024年度)

MS&ADデジタルカレッジfrom京都(KUAS:京都先端科学大学)

累計参加人数643人(2020年度~2024年度)

 

b.海外人財の育成

海外事業を担う人財を、ポストに対して質・人数ともに十分に確保することを必要としております。現状、必要な人数は確保できており、世代交代を進めながら持続的に人財を育成・確保するためのプログラムに取り組んでおります。

 

〔KPI〕 2025年度1,200人

海外人財の推移(※)                           (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

1,182人

1,189人

1,243人

 

(※)三井住友海上火災保険株式会社・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社・三井住友海上あいおい生命保険株式会社・三井住友海上プライマリー生命保険株式会社の4社合計

 

具体的には、海外事業に必要な「経営人財」や「専門人財(経理・財務、IT、リスク管理等)」について、短期の海外拠点体験、原則1年以上の海外派遣研修、海外拠点経営を担う人材の育成研修などを多面的に実施しております。

<育成プログラム例>

・海外拠点体験:1週間程度の海外雇用社員との協働プログラムを通じてグローバルビジネスを疑似体験することで、海外人財に求められるスキル・要素の習得をめざす取組み。

・海外派遣研修:公募による海外派遣研修制度。派遣期間は原則1年以上で、海外事業展開を支える人財を中長期的視点で育成する取組み。

・海外拠点経営を担う人財の育成:経営人財(グローバルリーダー)や専門人財(グローバルエキスパート)を養成するための指名型研修。

 

(6) 社内環境整備方針

① 基本的な方針

・経営戦略を実行するのは、社員一人ひとりであります。社員の能力・スキル・意欲を最大限発揮できる職場環境を整備することで、エンゲージメントを高め、経営戦略の実効性を高めます。

・中期経営計画(2022-2025)の基本戦略「Transformation」にある「新たなビジネスの創造等、事業の構造を変革し、事業環境の変化に適応する」などの実現にあたっては、多様な人財の意見やアイデアを引き出し、活かすことが重要であります。多様性の発揮に向けた取組みを推進し、意思決定層の多様性を確保し、当社グループの特長である多様性のメリットを最大化します。

 

② 中期経営計画(2022-2025)を踏まえた方針

・人財戦略の特に重要な要素にKPIを設定して取組みを進め、社員がいきいきと活躍し、グループの多様性を企業価値向上に結びつける環境を整えます。

 

a.魅力ある職場環境の整備

社員のエンゲージメントを向上させるためには、自律的なキャリア形成機会、柔軟で効率的・効果的な働き方、チャレンジを後押しする企業文化といった職場環境の整備が重要であり、それぞれ次のような取組みを進めます。

(a)自律的なキャリア形成機会の提供

自らが希望するポスト・部門に異動し、活躍のステージを広げるための公募制度(ポストチャレンジ)の活用を拡大し、グループ会社間での人事異動、人財育成、キャリア形成取組を活性化します。また、社員が既存組織の枠を越えて会社施策に参画する仕組みなど、自律的なキャリア形成機会の提供を拡充します。

ポストチャレンジ応募実績:2024年度 970人

(b)多様で柔軟な働き方の推進

・在宅勤務と出社を効率的に組み合わせ、リモートワークを活用した業務運営を進めます。また、ジョブ型雇用の活用や、副業・兼業の緩和により、スキル向上・活用の機会を拡大します。

・キャリアビジョンやライフイベント等に応じた転居転勤の可否選択を柔軟に認めていきます。

(c)新たなチャレンジを後押しするマネジメント

チャレンジを奨励し、社員の意欲を引き出し活かす意識改革・風土醸成につながるマネジメントを展開します。

 

これらの取組みとともに、心理的安全性が確保された職場環境の浸透、企業風土の醸成を進めていきます。

 

b.多様性の発揮に向けた取組み

(a)意思決定層の多様化

イ.女性の役員や管理職への登用に向けたパイプライン整備の取組みを強化しております。また、2030年度末までのKPIとして、女性管理職比率を30%に設定するとともに、組織の長となる「女性ライン長」の比率をその半数に定め、意思決定者の多様化を促進します。

〔KPI〕 女性管理職比率  30% (2030年度末)   2025年4月時点23.8%

女性ライン長比率15% (2030年度末)   2025年4月時点21.3%

                  (当社及びグループ国内保険会社5社合計)

グループ各社におけるパイプライン整備の取組例は次のとおりであります。

・当社が直接出資する関連事業会社の非常勤取締役への女性登用

2025年4月新任8人、2019年度以降累計40人

・副部長・副支店長ポストへの女性の配置

2025年4月時点32人

 

ロ.外部人財の登用について、管理職に占める外部人財の比率向上を進めるなど、多様な経験を意思決定に活かす取組みを進めます。

〔KPI〕 管理職に占める経験者採用比率:現行水準以上

 2025年4月時点24.5%、2024年4月時点23.0% (グループ国内保険会社5社合計)

 

(b)男性労働者育児休業

男性労働者育児休業の取得促進は、企業の社会的責任・社会への貢献であるとともに、男性が育児や育児休業への理解を深める機会であります。多様な価値観を受け容れる職場環境整備の一環として、KPIを設定して取組みを進めます。

〔KPI〕 2025年度男性労働者育児休業:取得率100%、取得日数4週間をめざす

 2024年度 取得率93.2%、取得日数13.1日 (グループ国内保険会社5社合計)

 

(c)意見やアイデアを積極的に引き出し活かすマネジメントノウハウの展開

当社グループの特長である多様性を活かすためには、様々な人財の知識・経験・価値観を引き出し、組織の意思決定に活かすインクルーシブな組織運営が不可欠であります。そのためのマネジメントノウハウである「インクルーシブ・リーダーシップ」の実践・浸透に取り組みます。

 

(d)グループ社員の交流・意見交換機会の提供

多様な人財が集まり、知識・経験の共有や、新たな気づきや価値観を創出する契機とするため、グループ各社の社員がグループ横断で参加する交流・意見交換会などを実施し、多様性とインクルーシブな体験の機会を提供します。

 

c.社員のWell-being

社員が自律的にいきいきと働き、その能力を最大限発揮するためには、社員の「心身の健康」「働きがい」「働きやすさ」の維持・向上が不可欠であります。労働時間や休暇等の時間管理の徹底、メンタル不調への対策強化・復帰支援などにより、社員の心身の健康を保持・増進するとともに、働きがいや働きやすさの向上につながる各種施策に取り組み、社員のWell-beingを推進します。

〔KPI〕 ・年次有給休暇取得日数:前年同水準以上 2024年度16.9日、2023年度16.5日

休暇取得を促進し、社員の心身の健康保持に取り組みます。

・運動習慣者比率:現行水準以上 2024年度29.0%、2023年度27.8%

「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」の運動習慣のある社員の比率をKPIに設定し、健康保持・増進への意識を高めております。

                        (当社及びグループ国内保険会社5社合計)

 

上記のような環境整備を進め、以下の設問に対する回答スコアを社員のエンゲージメントを測る指標として、KPIを「前年同水準以上」と設定し、進捗を確認しております。

〔KPI〕 社員意識調査

・設問「私は、今の仕事に誇りと働きがいを持っている」

:スコア 2024年度4.4、2023年度4.4

・設問「私の職場は、年齢・経験・国籍・性別・障がいの有無等で差別することなく、多様な人財の多様な価値観や意見が受け容れられ、人権を尊重し、いきいきと活躍できる環境にある」

:スコア 2024年度4.7、2023年度4.7

 (6段階スコア、当社及びグループ国内保険会社5社合計)

 

3【事業等のリスク】

(1) 当社グループのリスク管理

 ① リスク管理基本方針

当社グループは、持続的成長と企業価値向上を追い続ける世界トップ水準の保険・金融グループを創造することを経営ビジョンに掲げており、その実現を阻害するあらゆる不確実性を「リスク」と捉え、リスク管理態勢を整備し、経営の最重要課題としてリスク管理に取り組んでおります。

当社グループでは、「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」を定め、グループ内で共有された基本的な考え方のもとでリスク管理を実行しております。

「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」には、リスク管理の基本プロセスと体制、保険グループとして認識すべきリスクの定義や管理の考え方等が定められております。

グループ国内保険会社では、この基本方針に沿って各社の実態に合わせた「リスク管理方針」を制定し、主体的にリスク管理を行っております。

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 ② リスク管理体制

当社では、取締役会の課題別委員会の1つであるERM委員会にてリスク管理に係るモニタリング等を行い、重要事項についてはERM委員会の協議を踏まえて、グループ経営会議及び取締役会に報告を行う体制としております。また、当社及びグループ国内保険会社の役員が出席するグループリスク対策会議を2024年度に設置し、当社グループに内在するリスク及び外部環境の変化に伴うリスクに関する論議を通じ、当社グループ全体のリスクの検知力と管理体制の強化を図っております。

グループ国内保険会社は、国内外の子会社も含め各社それぞれのリスク管理を実行します。リスク管理部は、グループ全体のリスク及び各社のリスク管理の状況をモニタリングし、グループ全体の統合リスク管理を行い、ERM委員会へその結果を報告しております。

 

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 ③ ERMをベースにしたグループ経営

ERM(Enterprise Risk Management)は、保険会社の経営において重要なリスク・収益(リターン)・資本という3つの経営指標をバランスよく管理していく機能を担っております。

当社グループでは、現中期経営計画の基本戦略を支える基盤の1つとして、ERMを位置づけ、リスク・リターン・資本のバランスを取った経営資源配分により、企業価値向上に取り組んでおります。

a.ERMの機能と役割

ERMでは、資本の健全性(ESR※1)を維持しつつ、リスク対比の収益性(ROR※2やVA※3)が高い事業領域におけるリスクテイクを高めることで、目標とする資本効率性(グループ修正ROE※4)の達成を図ります。これら3者の関係は下図のようになります。

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※1 ESR(Economic Solvency Ratio):経済価値ベースのソルベンシー・レシオ:後述b.(a)参照

※2 ROR(Return on Risk):後述b.(b)参照

※3 VA(Value Added):後述b.(c)参照

※4 修正ROE(Return on Equity):後述b.(d)参照

 

b.ERMで注視する指標

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※5 統合リスク量:200年に一度の確率で当社グループ全体が被る損失の予想額(時価)

※6 時価純資産:経営のバッファとしての純資産管理を徹底するために使用している指標(修正純資産+保険負債の含み損益+その他負債性資本等)

 

(a) ESR(Economic Solvency Ratio)とは

リスク量に対する資本の充実度を示す指標(=「時価純資産」÷「統合リスク量」)です。リスク量は、事業や資産に係る損失や価値変動のリスクを統計的に数値化したものであり、統合リスク量は当社グループ全体のリスクの総額となります。

(b) ROR (Return on Risk)とは

リスク量に対して利益(リターン)がどの程度確保されているか(リスク量対比の収益性)を示す指標です。

リスクを引き受けるためには、それに見合う資本の確保が必要になります。したがって、RORが高い(すなわち、引き受けたリスクに対して得られる利益が大きい)事業は、必要な資本に対して、得られる利益がより大きい事業と言えます。

(c) VA (Value Added)とは

リスクを引き受けることによって、どれだけの付加価値が得られるかを示す指標です。資本コストは、資本資産価格モデル(CAPM)により推計しています。

(d)修正ROE(Return on Equity)とは

資本に対する利益の割合で、資本の効率性を示す指標です。

 

 ④ ERMとリスク管理

当社グループでは、リスク選好方針に沿って経営計画を策定し、ERMサイクルをベースに、健全性の確保と、収益力と資本効率の向上を図っております。ERMサイクルに沿って、リスクに見合った資本の配賦を行い、引き受けたリスクに対するリターン(ROR)のモニタリングを通じて、リスクコントロールやアンダーライティングの強化等を行っております。

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a.ERMサイクル

ERMは、企画・執行・モニタリングのサイクルを通じて実践しております。

b.ROR向上に向けた取組み

引き受けたリスクに対しどれだけの利益が得られるかを示すRORの推移は、当社グループのリスクポートフォリオの収益力の状況を表しております。当社グループでは、ERMサイクルをベースにRORの向上に取り組んでおります。

c.ストレステストの実施

当社グループは自然災害の発生、資産価値の下落など、様々な事象の発現による影響を分析して、資本の十分性、期間損益への影響、ポートフォリオの脆弱性の確認を行うためにストレステストを実施しております。

また、事象発現時の状況を分析し、資本を毀損する因子の洗い出しを行い、リスク耐性の向上に有効な対策の検討にも活用しております。

 

(2) 当社グループの主要なリスク

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

なお、本項に記載した将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

① グループ重要リスク

グループ各社が洗い出した主要なリスク事象リストに基づき、下表のように発生可能性と影響度を目安として、総合的な判断により、経営が管理すべき重要なリスク事象を「グループ重要リスク」として選定し、グループ重要リスク管理取組計画を策定したうえで、リスク対策の実行や各リスクの状況を定期的にモニタリングしております。

 

 

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※7 発生可能性:当面(5年以内)の発生可能性。統計的な発生頻度(確率)に加え、統計的手法で捉えきれない切迫度、予兆等を勘案し、総合的に判断。

※8 影響度:「経済的損失」「ブランド力・信用力への影響」等を勘案し、総合的に判断。

 

2025年度も引き続き、コンダクトリスクや地政学的なリスク(インフレへの懸念を含みます)、気候変動、サイバーリスク、保険市場・人財市場の変化、生成AI活用に係るリスクを適切にコントロールし、当社グループの持続的な成長を図ることが必要であることから、グループ重要リスクは2024年度と同様のものとしております。

一方で、各リスクの状況は変化しているため、各リスクの「主な想定シナリオ」に以下a~dの環境変化を明示・反映し、管理・取組みを強化しております。

a.コンダクトリスクへの対応

2024年度に新設したグループリスク対策会議で論議したコンダクトリスクの発生構造の理解や、2024年度のリスク発現状況を踏まえ、「主な想定シナリオ」等の内容を見直し、同リスクの管理・取組みの強化に繋げてまいります。下表No.4「グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生」に、経営理念等の不浸透、不適切な業界慣行や行動インセンティブによる社会的信用の失墜、商品・サービスにおけるお客さま視点の欠如、不正競争、受入出向者・社外出向者・代理店による情報漏えい、事業活動の過程で生じる権利侵害、財務報告に係る内部統制の重大な不備を明示しております。

b.業界慣行の見直し・ビジネススタイル等の変革の必要性

金融庁や金融審議会の報告書、一般社団法人日本損害保険協会の取組等を踏まえて、下表No.8「保険市場の変化」には、業界慣行の見直しやビジネススタイルの変革の必要性に対して当社グループが適切に対応できないリスク(リスクソリューションの提案力の不足等による保険市場での競争力の低下)を明示し、同No.9「人財を取り巻く環境の変化」には、魅力ある職場環境(労働条件を含みます)が実現できない場合に採用力低下のリスクがあることを明示しております。

c.米国政権交代

下表No.10「国家間・他国内等での対立激化や政治・経済・社会的な分断・分極化、安全保障の危機」に、金融市場全般の変動に関するリスクや課税強化に関するリスクを明示しております。

d.その他

下表No.3「信用リスクの大幅な増加」では国内の「金利のある世界」や金融機関の与信基準の厳格化に関して明示し、同NO.8「保険市場の変化」では公共インフラの老朽化、同No.9「人財を取り巻く環境の変化」では海外人財強化の必要性、同No.10「国家間・他国内等での対立激化や政治・経済・社会的な分断・分極化、安全保障の危機」ではサイバーセキュリティに関する規制強化などの環境変化を明示しております。

 

2025年度グループ重要リスクは下表のとおりであります。

これらのリスクが発現することにより、多額の保険金・給付金の支払い、保有資産の価値の低下、競争環境や評判の変化等が生じ、当社グループの業績や財務状況に影響が生じるリスクがあります。当社グループでは、これらのリスクに対して、グループ重要リスク管理取組計画を策定(取締役会で決議)したうえで、リスク対策の実行を通じて、リスクの軽減やコントロールを実施しております。

 

 

 

No.

グループ重要リスク

(点線枠内は「主な想定シナリオ」/「留意事項」は主な想定シナリオの策定において留意する事項)

 

大規模自然災害の発生                          (留意事項:気候変動)

 

・気候変動の影響も受けた国内及び海外の大規模な風水災・森林火災・雪雹災・干ばつや地震・噴火等の発生による保険金支払の増加

・大規模自然災害の発生等に伴う出再保険料の高騰や再保険会社の引受キャパシティの減少等により、方針どおりのリスクコントロールが困難になる事態の発生

・大規模自然災害の発生により当社グループが適切にビジネス・サービスを実行できない状態の発生

金融マーケットの大幅な変動                   (留意事項:インフレーション)

 

・世界的な景気・経済活動の停滞懸念による株式等の保有資産価値の下落

・物価動向等を踏まえた各国の金融政策の変更や財政規律の欠如に伴う各国の国債の格下げ等に伴う金利・為替の変動による資本余力の低下

信用リスクの大幅な増加                         (留意事項:気候変動)

 

・実体経済の悪化や金利上昇、金融機関による与信の厳格化、脱炭素社会への移行に向けた規制の強化・対応の遅延等による投融資先企業の業績悪化やデフォルト

・世界経済の減速懸念等に伴う投資家のリスク回避姿勢の強まり等による保有債券等の価値の下落

グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生

(留意事項:コンダクトリスク、デジタライゼーション、気候変動、人権)

※企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為とは、法令等に違反する行為、お客さま等のステークホルダーの視点が欠如した行為、社会規範等から逸脱した行為、当社グループの行動指針等に反する行為等(いずれも不作為によるものや業界等の慣行に基づくものを含む)をいう。

 

・当社グループの経営理念等(ミッション・ビジョン・バリュー、お客さま第一の業務運営等)が当社グループの業務運営における役職員等の行動にまで浸透せず、お客さま本位や健全な競争環境等の実現ができないことによる当社グループの社会的信用の失墜

・業界慣行や当社グループ内の行動目標(経営目標や営業・損害サービスに関する目標等)、社員等の評価制度(人事制度・代理店評価制度等)等に基づく行動がお客さま等の視点を欠くことによる当社グループの社会的信用の失墜

・商品・サービス(事務・システムを含む)の設計がお客さま等の視点(ニーズ・適合性・利便性・わかりやすさ等)を欠くことによるお客さまの不利益の発生

・グループ戦略遂行上の組織改編・業務変革・システム開発に伴う業務混乱やそれに起因する苦情の増加

・国内関係法令等及び事業を営む海外現地の法令等への違反(不正競争や不当な取引制限、優越的地位の濫用を含む)、長時間労働・ハラスメント等の重大な労務問題等の発生

・当社グループ(受入出向者を含む)又は外部委託先(代理店や社外出向者を含む)等における情報漏えい等の発生

・生成AIの活用推進・規制変更・社会的な認識の変化等に伴う権利侵害・不適切な情報開示・関係当局等が策定するガイドライン等への抵触・評判の低下等の発生

・当社グループにおける気候変動対応等のサステナビリティに関わる開示や課題への対応不備、事業活動の過程(取引先等を含む)で生じる人権等の権利侵害、それらに伴う訴訟等による評判の低下や財務的な負担

・財務報告に係る内部統制の重大な不備、国際財務報告基準(IFRS)ベースの連結財務諸表の開示や経済価値ベースの資本規制の導入に向けた態勢整備の遅延・不備等による開示情報の重大な誤りの発生

サイバー攻撃による大規模・重大な業務の停滞・情報漏えい   (留意事項:デジタライゼーション)

 

・デジタライゼーションの進展等に伴う世界的なサイバー攻撃被害の拡大、サイバー攻撃の巧妙化・多様化(技術進展が著しい生成AI等を利用したものを含む)、クラウドの活用やサプライチェーンの拡大に伴うサイバー攻撃による影響範囲の拡大等による当社グループ及び外部委託先等における業務の停滞・情報漏えいの発生

 

 

 

 

 

システム障害の多発や重大なシステム障害の発生、大規模システム開発の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現                        (留意事項:デジタライゼーション)

 

・デジタライゼーションの進展に伴うお客さま・代理店向けシステムにおける障害の複数同時発生、大規模自然災害の発生等に伴うシステム関連施設の罹災、資金決済インフラの停止、宇宙天気現象の影響も懸念される通信衛星・通信回線の不具合・事故等に伴う通信障害によるビジネス・サービスの停滞

・休日や営業時間外に稼働するお客さま・代理店向けシステムの大規模な障害発生によるお客さま等への対応の遅れ

・大規模システム開発の進捗遅延・未達・予算超過・期待効果未実現による経営計画の未達成

新型インフルエンザ等の感染症の大流行                  (留意事項:気候変動)

 

・地球温暖化の影響も受けた新種の感染症の大流行・影響長期化等に伴い当社グループが適切にビジネス・サービスを実行できない状態の発生

・世界的な感染拡大による保険金・給付金支払の増加や感染症の影響長期化に伴う経済活動の長期停滞等による収益の低下

保険市場の変化   (留意事項:デジタライゼーション、気候変動、少子高齢化、インフレーション)

 

・業界慣行の見直しや環境変化(お客さまの意識や社会的要請の変化を含む)に応じたビジネスモデル(販売チャネルを含む)・ビジネススタイルの変革が想定どおりに実行できないことによる保険市場での競争劣位

・運転支援・自動運転技術の進展による自動車事故の減少等による収益構造への影響

・補償・保障前後のサービス拡大に伴うアプリ・システム・IoT機器等の不具合、業務委託先・事業提携先の不正・事務ミスによる風評被害、機器等の供給制約等による販売戦略への影響

・低炭素・脱炭素技術等の気候変動への対応に係る新たな保険引受、循環型社会の進展や化学物質等の健康被害・環境被害等による保険金支払の増加

・少子高齢化の進展・人口減少等に伴う市場規模・構造の変化による事業ポートフォリオへの影響

・外部環境変化(社会的要請の変化、企業等の建物・設備や公共インフラの老朽化、気候変動リスクやサイバーリスクといった国・地域をまたがるリスクの出現を含む)に伴うリスクの高まり・集積やインフレ(ソーシャル・インフレーションを含む)等による保険金・事業費の増加

人財を取り巻く環境の変化             (留意事項:少子高齢化、デジタライゼーション)

 

・人財市場・労働需給等の外的な変化やDX推進・海外事業等の戦略実行に必要なスキル・専門性の変化等による、経営戦略と人財ポートフォリオのギャップ及びその解消に向けた人財の確保・育成の不足

・自律的なキャリア形成機会・柔軟で多様な働き方・人権や多様性の尊重等に対する社員の意識の変化を的確に捉えた環境整備(労働条件を含む)やハラスメント(カスタマーハラスメントを含む)に対する組織的対応の不足による社員のエンゲージメントの低下や人財の流出、採用力の低下

10

国家間・他国内等での対立激化や政治・経済・社会的な分断・分極化、安全保障の危機

 

・国家間・他国内等での対立激化や政治・経済・社会的な分断・分極化(各国大統領等のグローバルリーダーの交替やグローバルサウスの台頭等に伴うものを含む)等に伴う金融市場の変動による保有資産価値の下落

・各国の経済安全保障関連規制の強化等によるサプライチェーンの分断等に伴う実体経済の悪化等による投融資先企業の業績悪化やデフォルト

・当社グループ又は外部委託先等における経済安全保障上の問題等による当社グループの評判の低下

・大国間の対立激化等に伴う世界的なサイバー攻撃被害の拡大等による当社グループ及び外部委託先等における業務の停滞・情報漏えいや、サイバーセキュリティ関連法規制の強化による財務的な負担等の発生

・大国間の対立激化や保護主義の台頭等に伴う規制変更や軍事的行動等による特定の国や地域での事業の制限・中断・撤退(人的被害を含む)、戦争危険等を担保する特約等の保険金支払の発生、課税強化による財務的な負担

 

 ② グループエマージングリスク

中長期的な視点から当社グループ経営に影響を与える可能性のある事象や、現時点では当社グループ経営への影響の大きさ、発生時期の把握が難しいものの、経営が認識すべき事象を次のとおり「グループエマージングリスク」として特定し、定期的にモニタリングしております。

 

No.

グループエマージングリスク

経済・消費者行動・ビジネスモデルの大きな変化・変革を及ぼす新たな仕組みや革新的な技術の出現・台頭

自然資本の毀損(資源の枯渇、生態系の劣化・危機、環境に甚大な損害を与える人為的な汚染や事故)

当社グループに大きな影響を及ぼす可能性がある国内外の法令・制度・規制等の新設・改廃

社会資本(橋梁・トンネル・河川施設・港湾施設・上下水道等)の維持管理・更新の大幅な停滞・遅延、エネルギー等の大幅かつ恒常的な供給不足

 

③ グループ重要リスクとグループエマージングリスクの管理

グループ重要リスクとグループエマージングリスクの管理の概要は下図のとおりです。

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4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当期の世界経済は、米国においては、個人消費や設備投資の増加等を背景に拡大基調で推移し、欧州においては、一部に足踏みがみられたものの物価上昇の鈍化等を背景に個人消費が回復するなど景気持ち直しの動きが見られました。また、日本においては、物価上昇等の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善に伴い個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかに回復しました。

当期からスタートした中期経営計画(2022-2025)第2ステージ(2024~2025年度)では、第1ステージ(2022~2023年度)に引き続き、「リスクソリューションのプラットフォーマーとして、社会と共に成長する」ことを目指し、「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」を実現するため、3つの基本戦略「Value(価値の創造)」「Transformation(事業の変革)」「Synergy(グループシナジーの発揮)」に取り組みました。さらに、三井住友海上火災保険株式会社(以下「三井住友海上」といいます。)とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社(以下「あいおいニッセイ同和損保」といいます。)における企業保険分野での保険料調整行為等の反省を踏まえ、従来の事業のあり方を見直し、「お客さま第一の業務運営」「ガバナンスの強化」「コンプライアンス」を基礎とし、「提供価値の変革」「事業構造の変革」「生産性・収益性の変革」のビジネススタイルの大変革を進めました。

当期の業績は、政策株式の売却益の大幅な増加や海外事業における利益の拡大などにより、グループ修正利益は年初予想(6,100億円)を上回り、過去最高益である7,317億円となりました。また、資本効率においては、グループ修正ROEが年初予想(13.0%)を上回る15.7%となりました。財務の健全性の観点では、ESRが目標レンジ(180~250%)内の226%となりました。

 

中期経営計画(2022-2025)3つの基本戦略の取組み

Value

(価値の創造)

「CSV×DX(注1)」のグローバル展開により、すべてのステークホルダーに価値を提供し、企業価値を向上させること、ビジネス・商品・サービスの収益性を高め、収益基盤を強化することを目指し、以下の取組みを進めました。

(取組内容)

・自然災害の甚大化・頻発化、インフレの継続を受けた商品改定(保険料率の適正化を含む)、アンダーライティング(注2)の強化、DX推進による業務プロセスの見直し等を通じた事業効率化・生産性向上等、国内損害保険事業における収支改善策の推進

・デジタル・データを活用したリスクマネジメント事業の拡大、補償・保障前後の商品・サービスの開発・提供の推進

 

Transformation

(事業の変革)

新たなビジネスの創造等により、事業構造を変革し事業環境の変化に適応すること、事業・商品・リスクポートフォリオを変革し、安定的な収益基盤を構築することを目指し、以下の取組みを進めました。

(取組内容)

・MS Transverseを通じた米国MGA(注3)市場の開拓、MS Amlinの収益力の回復・拡大、トヨタリテール事業の収益改善、事業管理の高度化取組み(業績改善や不採算事業の見直し)の推進による事業ポートフォリオの変革

・火災保険の収支改善(保険料率の適正化等)と新種保険の収益拡大(中小企業向け商品、サービス一体型商品の拡販)により、自動車保険中心から利益の源泉が分散された商品ポートフォリオへの変革

・政策株式削減取組み(現在保有している上場政策株式を2030年3月末までにゼロとする)の加速等によるリスクポートフォリオの変革

 

Synergy

(グループシナジーの発揮)

1プラットフォーム戦略(注4)による業務品質と生産性の向上、グループの多様性を活かした連携強化による一層の成長の実現、グローバルベースでのシナジー発揮を目指し、以下の取組みを進めました。

(取組内容)

・グループ会社間における本社機能の一体運営、共通業務に係る一体的な外部委託の拡大、システムの大胆な廃止・統合などの推進

・損害保険の販売チャネルを通じた生命保険の販売や、三井住友海上プライマリー生命の商品の三井住友海上あいおい生命における提携販売の推進

・国内・海外の拠点が双方向で商品・サービスや様々な知見を双方向で共有し活用する「TENKAIプロジェクト」の推進

 

(注1)CSV×DX

社会との共通価値の創造(Creating Shared Value)にデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)を掛け合わせることによって生産性と競争力の向上を図り、持続的成長と企業価値向上を実現するための取組み。

(注2)アンダーライティング

保険契約を引き受ける際、引受けの可否を判断することや引受条件を決めること。

(注3)MGA

保険会社から権限を付与され、保険募集に加えて引受けや損害額認定・査定の業務などの幅広い業務を担う代理店(Managing General Agent)。

(注4)1プラットフォーム戦略

三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保のミドル・バック部門を中心に、グループで戦略的に差異を残すものを除いて共通化・共同化・一体化を進める取組み。

 

コンプライアンスの徹底

当社グループを含む複数の国内保険会社におきまして、保険代理店及び保険代理店への出向社員に起因する保険会社間の情報漏えいが発覚しました。情報漏えいが確認された三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保、三井住友海上あいおい生命保険株式会社、三井住友海上プライマリー生命保険株式会社では、徹底した調査を行い、事実関係、対応方針、発生原因及び再発防止策等について公表しました。この情報漏えい行為に関して、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、2025年3月、金融庁より保険業法に基づく業務改善命令を受けました。

また、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、企業保険分野における保険料調整行為に関して、2024年10月、公正取引委員会より排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。

当社は、かかる事態に至ったことを厳粛に受け止め、社会やお客さまからの信頼を回復すべく、持株会社として、経営管理態勢の強化、ガバナンスの発揮、グループ全体におけるコンプライアンスの徹底に取り組んでおります。

 

 

 

このような中、当連結会計年度の経営成績は次のとおりとなりました。

経常収益は、保険引受収益が5兆4,005億円、資産運用収益が1兆1,993億円、その他経常収益が608億円となった結果、6兆6,608億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が4兆5,794億円、資産運用費用が2,571億円、営業費及び一般管理費が8,460億円、その他経常費用が492億円となった結果、5兆7,318億円となりました。

以上の結果、経常利益は前連結会計年度に比べ5,125億円増加し、9,289億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ3,223億円増加し、6,916億円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

イ  国内損害保険事業(三井住友海上火災保険株式会社)

経常収益は、保険引受収益が1兆8,417億円、資産運用収益が6,054億円、その他経常収益が63億円となった結果、2兆4,535億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆5,616億円、資産運用費用が648億円、営業費及び一般管理費が2,441億円、その他経常費用が68億円となった結果、1兆8,775億円となりました。

以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ3,617億円増加し、5,760億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ2,921億円増加し、4,599億円となりました。

ロ  国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)

経常収益は、保険引受収益が1兆5,166億円、資産運用収益が1,861億円、その他経常収益が72億円となった結果、1兆7,100億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆3,209億円、資産運用費用が494億円、営業費及び一般管理費が1,965億円、その他経常費用が30億円となった結果、1兆5,699億円となりました。

以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ610億円増加し、1,401億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ526億円増加し、1,087億円となりました。

ハ  国内損害保険事業(三井ダイレクト損害保険株式会社)

経常収益は、保険引受収益が391億円となったことなどにより、393億円となり、経常費用は、保険引受費用が283億円、営業費及び一般管理費が125億円となったことなどにより、411億円となりました。

これらにより、経常損益は前事業年度に比べ2億円改善したものの、17億円の損失となりました。経常損益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純損益は、前事業年度に比べ2億円減少し、17億円の損失となりました。

ニ  国内生命保険事業(三井住友海上あいおい生命保険株式会社)

経常収益は、保険料等収入が4,646億円、資産運用収益が744億円、その他経常収益が46億円となった結果、5,438億円となりました。一方、経常費用は、保険金等支払金が2,954億円、責任準備金等繰入額が930億円、資産運用費用が69億円、事業費が776億円、その他経常費用が201億円となった結果、4,931億円となりました。

以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ15億円増加し、506億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ14億円増加し、296億円となりました。

ホ  国内生命保険事業(三井住友海上プライマリー生命保険株式会社)

経常収益は、保険料等収入が1兆4,058億円、資産運用収益が1,652億円、その他経常収益が782億円となった結果、1兆6,494億円となりました。一方、経常費用は、保険金等支払金が1兆4,637億円、責任準備金等繰入額が1億円、資産運用費用が681億円、事業費が611億円、その他経常費用が123億円となった結果、1兆6,055億円となりました。

以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ708億円増加し、439億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ60億円増加し、257億円となりました。

ヘ  海外事業(海外保険子会社)

海外保険子会社セグメントについては、正味収入保険料は前連結会計年度に比べ2,935億円増加し、1兆5,272億円となりました。

経常利益は、前連結会計年度に比べ741億円増加し、2,312億円となり、出資持分考慮後の当期純利益(セグメント利益)は、前連結会計年度に比べ306億円増加し、1,844億円となりました。

 

当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。

 

総資産は前連結会計年度末に比べ7,189億円減少し、26兆2,412億円となりました。

当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ63.1ポイント低下し、708.7%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,107億円増加し、6,601億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2,819億円減少し、△5,587億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ4,280億円減少し、△6,595億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より4,942億円減少し、2兆2,394億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

保険持株会社としての業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、本項に記載した予想、予測、見込み、見通し、方針、予定等の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性が内在しており、将来生じる実際の結果とは大きく異なる可能性があります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。

 

[連結主要指標]

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

比較増減

増減率

正味収入保険料 (百万円)

4,261,736

4,674,301

412,564

9.7%

生命保険料   (百万円)

735,249

608,678

△126,571

△17.2%

経常利益    (百万円)

416,440

928,989

512,549

123.1%

親会社株主に帰属する当期純利益      (百万円)

369,266

691,657

322,391

87.3%

 

正味収入保険料は、国内損害保険事業において火災保険や自動車保険などで増収し、海外事業においてもロイズ・再保険事業をはじめアジア、欧州、米州で増収したことや為替影響もあり、前連結会計年度に比べ4,125億円増加し、4兆6,743億円となりました。

生命保険料は、三井住友海上プライマリー生命保険株式会社などで減収となり、前連結会計年度に比べ1,265億円減少し、6,086億円となりました。

経常利益は、国内損害保険事業、国内生命保険事業及び海外事業が増益となったことにより、前連結会計年度に比べ5,125億円増加し、9,289億円となりました。

経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ3,223億円増加し、6,916億円となりました。

 

 

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保険種目別の保険料・保険金は次のとおりであります。

 

a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

1,003,286

22.2

8.7

1,230,655

24.7

22.7

海上

267,731

5.9

3.8

301,128

6.1

12.5

傷害

303,471

6.7

2.4

315,593

6.3

4.0

自動車

1,741,903

38.6

4.1

1,865,272

37.4

7.1

自動車損害賠償責任

245,448

5.5

△12.1

244,972

4.9

△0.2

その他

949,757

21.1

24.6

1,028,104

20.6

8.2

合計

4,511,598

100.0

7.6

4,985,727

100.0

10.5

(うち収入積立保険料)

(31,658)

(0.7)

(△23.5)

(28,450)

(0.6)

(△10.1)

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)

 

b 正味収入保険料

区分

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

785,976

18.4

8.3

990,955

21.2

26.1

海上

207,868

4.9

4.1

240,502

5.2

15.7

傷害

259,781

6.1

4.9

279,826

6.0

7.7

自動車

1,813,439

42.6

5.0

1,927,756

41.2

6.3

自動車損害賠償責任

255,550

6.0

△7.3

243,543

5.2

△4.7

その他

939,120

22.0

24.0

991,718

21.2

5.6

合計

4,261,736

100.0

8.4

4,674,301

100.0

9.7

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

c 正味支払保険金

区分

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

448,816

19.6

△12.3

448,205

18.0

△0.1

海上

92,540

4.0

8.1

110,557

4.4

19.5

傷害

131,858

5.8

△14.8

140,202

5.6

6.3

自動車

1,033,472

45.1

8.6

1,136,149

45.7

9.9

自動車損害賠償責任

192,389

8.4

4.8

194,103

7.8

0.9

その他

392,104

17.1

10.5

459,812

18.5

17.3

合計

2,291,182

100.0

2.2

2,489,031

100.0

8.6

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 

イ 国内損害保険事業(三井住友海上火災保険株式会社)

ロ 国内損害保険事業(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社)

三井住友海上火災保険株式会社では、高齢者支援の専門研修を修了し、三井住友海上が認定した保険募集人「MSシニアライフパートナー」が、お客さまの困りごとに応じた専門事業者を紹介して、ワンストップで解決を支援するサービスを開始しました。

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社では、大規模雹(ひょう)災発生時の保険金支払い迅速化のため、被害車両の損害確認を自動化する「ヘイルスキャナー」及び修理期間を大幅に短縮できる補修技術「デント補修」を活用した雹(ひょう)災被害復旧スキームを構築しました。

両社共同の取組として、大企業の関係会社や取引先を一括で診断し、サイバーリスクを可視化して月次や四半期ごとに提供するサービスを開始しました。また、ライドシェアの一部解禁に合わせ、一般ドライバーの自家用持込み車両等を包括して補償する「移動支援サービス事業用自動車保険特約」を開発し、運行管理を担うライドシェア事業者に対して販売を開始しました。さらに、住宅が全焼・全壊して再築等を行う際に、省エネルギー基準に適合させるための追加費用を補償する「建物省エネ化費用特約」を業界で初めて開発し、個人向け火災保険の特約として販売を開始しました。

 

三井住友海上火災保険株式会社の経営成績は次のとおりとなりました。

 

[三井住友海上火災保険株式会社(単体)の主要指標]

 

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

比較増減

増減率

正味収入保険料 (百万円)

1,623,307

1,679,248

55,941

3.4%

正味損害率    (%)

65.6

66.7

1.1

正味事業費率   (%)

32.7

32.0

△0.7

保険引受利益  (百万円)

20,709

54,601

33,892

163.7%

経常利益    (百万円)

214,319

576,026

361,707

168.8%

当期純利益   (百万円)

167,777

459,900

292,123

174.1%

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 正味損害率=(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料

3 正味事業費率=(諸手数料及び集金費+保険引受に係る営業費及び一般管理費)÷正味収入保険料

 

保険引受の概況は次のとおりであります。

正味収入保険料は、自動車保険や火災保険で増収したことなどにより前事業年度に比べ559億円増加し、1兆6,792億円となりました。一方、正味支払保険金は、自動車保険や新種保険(以下の各表における区分上は「その他」に含まれる。)で増加したことなどにより前事業年度に比べ557億円増加し、1兆58億円となりました。以上により、正味損害率は66.7%と、前事業年度に比べ1.1ポイント上昇しました。また、正味収入保険料が増加したことなどにより、正味事業費率は32.0%と、前事業年度に比べ0.7ポイント低下しました。

 

 

これらに収入積立保険料、満期返戻金、支払備金繰入額、責任準備金戻入額などを加減した保険引受利益は、国内の自然災害による発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)が減少したことなどにより、前事業年度に比べ338億円増加し、546億円となりました。

 

資産運用の概況は次のとおりであります。

有価証券売却益が前事業年度に比べて3,439億円増加し4,505億円となったことなどから、積立型保険の満期返戻金などに充当する運用益を控除した残額の資産運用収益は、前事業年度に比べ3,529億円増加し、6,054億円となりました。一方、資産運用費用は、金融派生商品費用が125億円増加したことなどにより前事業年度に比べ260億円増加し、648億円となりました。

 

これらの結果、経常利益は前事業年度に比べ3,617億円増加し、5,760億円となりました。当期純利益は、前事業年度に比べ2,921億円増加し、4,599億円となりました。

 

保険種目別の保険料・保険金は次のとおりであります。

 

a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

367,272

19.6

△2.6

398,941

20.5

8.6

海上

109,858

5.9

1.0

112,773

5.8

2.7

傷害

195,713

10.5

△0.1

203,737

10.5

4.1

自動車

703,894

37.6

1.2

722,567

37.1

2.7

自動車損害賠償責任

116,361

6.2

△12.2

115,287

5.9

△0.9

その他

377,812

20.2

2.4

392,705

20.2

3.9

合計

1,870,912

100.0

△0.4

1,946,012

100.0

4.0

(うち収入積立保険料)

(23,364)

(1.2)

(△25.6)

(21,648)

(1.1)

(△7.3)

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)

 

 

b 正味収入保険料

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

250,590

15.5

△5.8

267,943

16.0

6.9

海上

73,466

4.5

△3.4

75,803

4.5

3.2

傷害

158,616

9.8

4.5

163,895

9.8

3.3

自動車

698,382

43.0

1.4

722,883

43.0

3.5

自動車損害賠償責任

130,287

8.0

△8.3

123,417

7.3

△5.3

その他

311,963

19.2

2.2

325,305

19.4

4.3

合計

1,623,307

100.0

△0.4

1,679,248

100.0

3.4

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

c 正味支払保険金

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

対前年増減(△)率 (%)

正味損害率(%)

金額

(百万円)

対前年増減(△)率 (%)

正味損害率(%)

火災

173,502

△13.0

72.1

169,189

△2.5

65.6

海上

39,263

12.2

56.2

37,671

△4.1

52.6

傷害

79,551

△3.7

55.6

87,135

9.5

58.8

自動車

393,128

7.0

67.2

425,108

8.1

69.3

自動車損害賠償責任

103,916

4.4

89.4

104,477

0.5

94.4

その他

160,799

0.2

54.2

182,311

13.4

58.7

合計

950,161

0.6

65.6

1,005,894

5.9

66.7

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 正味損害率は正味支払保険金に損害調査費を加えて算出しております。

 

運用資産、有価証券及び利回りの状況は次のとおりであります。

 

a 運用資産

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

569,605

7.2

233,392

3.4

コールローン

60,000

0.9

買現先勘定

86,904

1.3

買入金銭債権

2,121

0.0

133,444

2.0

金銭の信託

570

0.0

3,114

0.0

有価証券

6,266,431

79.7

5,307,331

77.8

貸付金

390,765

5.0

366,908

5.4

土地・建物

178,120

2.3

172,524

2.5

運用資産計

7,407,614

94.2

6,363,620

93.3

総資産

7,864,388

100.0

6,822,620

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

b 有価証券

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

573,288

9.2

507,187

9.6

地方債

75,469

1.2

71,426

1.3

社債

526,310

8.4

538,010

10.1

株式

2,600,340

41.5

1,608,060

30.3

外国証券

2,332,051

37.2

2,420,479

45.6

その他の証券

158,970

2.5

162,166

3.1

合計

6,266,431

100.0

5,307,331

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

c 利回り

運用資産利回り(インカム利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

2,787

633,038

0.44

3,338

335,221

1.00

コールローン

55

14,207

0.39

買現先勘定

56

18,432

0.30

買入金銭債権

61

5,348

1.15

285

71,265

0.40

金銭の信託

12

462

2.66

35

4,107

0.87

有価証券

143,033

3,908,056

3.66

157,647

3,924,076

4.02

貸付金

2,808

396,874

0.71

3,372

374,411

0.90

土地・建物

5,848

187,228

3.12

5,476

180,182

3.04

小計

154,551

5,131,009

3.01

170,267

4,921,905

3.46

その他

226

207

合計

154,777

170,474

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 収入金額は、「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」及び「金銭の信託運用損」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。

3 平均運用額は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、コールローン、買現先勘定及び買入金銭債権については日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

  資産運用利回り(実現利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

11,969

633,038

1.89

1,329

335,221

0.40

コールローン

55

14,207

0.39

買現先勘定

56

18,432

0.30

買入金銭債権

61

5,348

1.15

285

71,265

0.40

金銭の信託

76

462

16.57

△1,448

4,107

△35.28

有価証券

213,668

3,908,056

5.47

559,821

3,924,076

14.27

貸付金

3,580

396,874

0.90

13,058

374,411

3.49

土地・建物

5,848

187,228

3.12

5,476

180,182

3.04

金融派生商品

4,012

△12,518

その他

△176

△903

合計

239,039

5,131,009

4.66

565,211

4,921,905

11.48

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 資産運用損益(実現ベース)は、「資産運用収益」及び「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。

3 平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、コールローン、買現先勘定及び買入金銭債権については日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の経営成績は次のとおりとなりました。

 

[あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(単体)の主要指標]

 

前事業年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

比較増減

増減率

正味収入保険料 (百万円)

1,368,988

1,430,364

61,375

4.5%

正味損害率    (%)

66.4

66.6

0.2

正味事業費率   (%)

34.2

33.7

△0.5

保険引受利益又は保険引受

損失(△)  (百万円)

△33,195

13,482

46,677

経常利益    (百万円)

79,064

140,105

61,040

77.2%

当期純利益   (百万円)

56,081

108,747

52,665

93.9%

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 正味損害率=(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料

3 正味事業費率=(諸手数料及び集金費+保険引受に係る営業費及び一般管理費)÷正味収入保険料

 

 

保険引受の概況は次のとおりであります。

正味収入保険料は、火災保険や自動車保険で増収したことなどにより前事業年度に比べ613億円増加し、1兆4,303億円となりました。一方、正味支払保険金は、火災保険で減少したものの、自動車保険で増加したことなどにより前事業年度に比べ391億円増加し、8,659億円となりました。以上により、正味損害率は66.6%と、前事業年度に比べ0.2ポイント上昇しました。また、正味収入保険料が増加したことにより、正味事業費率は33.7%と、前事業年度に比べ0.5ポイント低下しました。

これらに収入積立保険料、満期返戻金、支払備金繰入額、責任準備金戻入額などを加減した保険引受利益は、前事業年度に比べ466億円増加し、134億円となりました。

 

資産運用の概況は次のとおりであります。

有価証券売却益が前事業年度に比べ28億円減少し1,115億円となったものの、利息及び配当金収入が前事業年度に比べ160億円増加し896億円となったことなどから、積立型保険の満期返戻金などに充当する運用益を控除した残額の資産運用収益は、前事業年度に比べ103億円増加し、1,861億円となりました。一方、資産運用費用は、有価証券売却損が減少したことなどにより前事業年度に比べ57億円減少し、494億円となりました。

 

これらの結果、経常利益は前事業年度に比べ610億円増加し、1,401億円となりました。当期純利益は前事業年度に比べ526億円増加し、1,087億円となりました。

 

保険種目別の保険料・保険金は次のとおりであります。

 

a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

269,934

19.7

△6.9

318,180

22.0

17.9

海上

4

0.0

傷害

75,235

5.5

△2.4

74,647

5.2

△0.8

自動車

719,197

52.5

1.2

742,735

51.4

3.3

自動車損害賠償責任

129,087

9.4

△12.0

129,685

9.0

0.5

その他

177,129

12.9

3.6

178,841

12.4

1.0

合計

1,370,583

100.0

△1.8

1,444,094

100.0

5.4

(うち収入積立保険料)

(8,293)

(0.6)

(△16.8)

(6,802)

(0.5)

(△18.0)

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)

 

b 正味収入保険料

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

対前年増減(△)率 (%)

火災

207,372

15.2

△7.7

254,314

17.8

22.6

海上

5,147

0.4

△34.4

4,978

0.3

△3.3

傷害

60,725

4.4

0.2

60,467

4.2

△0.4

自動車

812,260

59.3

6.1

831,094

58.1

2.3

自動車損害賠償責任

124,982

9.1

△6.2

119,907

8.4

△4.1

その他

158,499

11.6

10.1

159,601

11.2

0.7

合計

1,368,988

100.0

2.5

1,430,364

100.0

4.5

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

c 正味支払保険金

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

対前年増減(△)率 (%)

正味損害率(%)

金額

(百万円)

対前年増減(△)率 (%)

正味損害率(%)

火災

160,804

△9.9

81.4

149,921

△6.8

62.0

海上

4,757

△30.6

93.2

4,930

3.6

100.1

傷害

29,992

△3.6

55.1

32,088

7.0

59.4

自動車

459,047

9.9

63.4

500,151

9.0

67.4

自動車損害賠償責任

88,109

5.2

78.0

89,267

1.3

82.1

その他

84,110

△8.1

56.3

89,604

6.5

59.4

合計

826,822

2.2

66.4

865,963

4.7

66.6

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 正味損害率は正味支払保険金に損害調査費を加えて算出しております。

 

運用資産、有価証券及び利回りの状況は次のとおりであります。

 

a 運用資産

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

277,424

6.7

182,254

4.9

金銭の信託

3,419

0.1

3,580

0.1

有価証券

2,873,118

69.9

2,542,985

68.6

貸付金

269,267

6.6

270,163

7.3

土地・建物

161,332

3.9

160,325

4.3

運用資産計

3,584,561

87.2

3,159,310

85.2

総資産

4,111,688

100.0

3,706,643

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

b 有価証券

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

378,531

13.2

363,308

14.3

地方債

12,549

0.4

12,461

0.5

社債

220,379

7.7

189,508

7.4

株式

1,091,267

38.0

805,582

31.7

外国証券

1,059,859

36.9

1,079,118

42.4

その他の証券

110,531

3.8

93,006

3.7

合計

2,873,118

100.0

2,542,985

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

c 利回り

運用資産利回り(インカム利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

221

288,486

0.08

587

186,288

0.32

金銭の信託

0

2,535

0.00

0

2,728

0.01

有価証券

64,458

1,959,359

3.29

77,366

1,921,669

4.03

貸付金

3,157

273,353

1.16

3,118

273,523

1.14

土地・建物

4,672

165,642

2.82

4,782

162,329

2.95

小計

72,510

2,689,377

2.70

85,855

2,546,539

3.37

その他

1,132

3,799

合計

73,643

89,655

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 収入金額は、「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。

3 平均運用額は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

資産運用利回り(実現利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

1,833

288,486

0.64

264

186,288

0.14

金銭の信託

0

2,535

0.00

0

2,728

0.01

有価証券

144,155

1,959,359

7.36

154,748

1,921,669

8.05

貸付金

3,160

273,353

1.16

3,121

273,523

1.14

土地・建物

4,672

165,642

2.82

4,782

162,329

2.95

金融派生商品

△19,947

△15,153

その他

1,522

3,993

合計

135,396

2,689,377

5.03

151,757

2,546,539

5.96

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 資産運用損益(実現ベース)は、「資産運用収益」及び「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。

3 平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

ハ 国内損害保険事業(三井ダイレクト損害保険株式会社)

三井ダイレクト損害保険株式会社では、お客さまがインターネットを通じて保険料の見積りや契約手続をより「早く」「かんたんに」「わかりやすく」行うことができるシステムをリリースし、従来以上に、お客さま一人ひとりへの最適なご提案やサービスの提供を可能としました。

 

三井ダイレクト損害保険株式会社の経営成績は次のとおりとなりました。

 

正味収入保険料は前事業年度に比べ21億円増加し、373億円となりました。一方、正味支払保険金は前事業年度に比べ22億円増加し、237億円となりました。正味損害率は70.4%と、前事業年度に比べ1.8ポイント上昇しました。

また、諸手数料及び集金費並びに保険引受に係る営業費及び一般管理費は前事業年度並みの131億円となりました。正味事業費率は35.1%と、前事業年度に比べ2.0ポイント低下しました。

保険引受損益は前事業年度に比べ4億円増加し、17億円の損失となりました。当期純損益は前事業年度に比べ2億円減少し、17億円の損失となりました。

(注) 正味損害率=(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料

 正味事業費率=(諸手数料及び集金費+保険引受に係る営業費及び一般管理費)÷正味収入保険料

 

ニ 国内生命保険事業(三井住友海上あいおい生命保険株式会社)

三井住友海上あいおい生命保険株式会社では、主力商品である収入保障保険と定期保険の商品改定を行いました。収入保障保険においては、保障範囲(介護・就労不能)の拡大や入院・在宅医療に備える新たな保障の創設等を実施し、定期保険においては、市場金利等の環境変化を踏まえた予定利率を改定するなど、商品競争力の向上を図りました。また、ヘルスケアサービス「MSAケア」に、女性の健康課題である月経トラブルや更年期症状に関する相談や診療等を行う新サービスを追加したほか、専用プラットフォームの開設により企業の福利厚生制度としての利便性を高めるなど、保障前後のサポートを強化しました。さらに、代理店を介在しないご契約のお客さまのアフターフォローと、アフターフォローを通じた保障内容の見直しに伴う保険募集を強化すること等を目的に、直接出資代理店「MSAライフサポートエージェンシー」を設立しました。

 

三井住友海上あいおい生命保険株式会社の経営成績は次のとおりとなりました。

 

保険料等収入は、個人保険の保険料が減少したことなどにより前事業年度に比べ104億円減少し、4,646億円となりました。

経常利益は、外貨建債券の積み上げや金利上昇、円安影響等により利息及び配当金等収入が増加したことなどにより、前事業年度に比べ15億円増加し、506億円となりました。当期純利益は前事業年度に比べ14億円増加し、296億円となりました。

 

保有契約高、新契約高及び保有契約年換算保険料の状況は次のとおりであります。

 

a 保有契約高

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額 (億円)

対前年増減(△)率(%)

金額 (億円)

対前年増減(△)率(%)

(1) 個人保険

218,930

△3.4

210,454

△3.9

(2) 個人年金保険

5,724

△4.2

5,459

△4.6

(3) 団体保険

96,076

△2.4

99,453

3.5

(4) 団体年金保険

2

8.2

2

△4.6

 

個人合計((1)+(2))

224,655

△3.4

215,914

△3.9

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 個人年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものであります。

3 団体年金保険については、責任準備金の金額であります。

 

b 新契約高

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

新契約+転換

による純増加

(億円)

新契約

(億円)

転換によ

る純増加

(億円)

新契約+転換

による純増加

(億円)

対前年増減 (△)率

(%)

新契約

(億円)

転換によ

る純増加

(億円)

(1) 個人保険

12,906

12,906

12,047

△6.7

12,047

(2) 個人年金保険

21

21

15

△26.7

15

(3) 団体保険

1,803

1,803

481

△73.3

481

  ―

(4) 団体年金保険

  ―

 

個人合計

((1)+(2))

12,928

12,928

12,062

△6.7

12,062

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 新契約の個人年金保険の金額は年金支払開始時における年金原資であります。

 

c 保有契約年換算保険料

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(億円)

対前年増減(△)率

(%)

金額(億円)

対前年増減(△)率

(%)

個人保険

4,001

△0.8

3,942

△1.5

個人年金保険

354

△4.3

339

△4.2

合計

4,356

△1.1

4,281

△1.7

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)であります。

 

個人保険・個人年金保険を合計した新契約高は、収入保障保険の減少などにより前事業年度に比べ865億円減少し、1兆2,062億円となりました。一方、個人保険・個人年金保険を合計した解約失効契約高は前事業年度に比べ18億円増加し、1兆4,758億円となりました。これらの結果、個人保険・個人年金保険を合計した保有契約高は前事業年度末に比べ3.9%減少し、21兆5,914億円となりました。

保有契約年換算保険料は前事業年度末に比べ74億円減少し、4,281億円となりました。

 

運用資産、有価証券及び利回りの状況は次のとおりであります。

 

a 運用資産

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

234,479

4.5

111,363

2.1

有価証券

4,749,619

92.1

4,872,124

94.0

貸付金

62,341

1.2

63,952

1.2

土地・建物

255

0.0

210

0.0

運用資産計

5,046,695

97.8

5,047,652

97.3

総資産

5,160,831

100.0

5,187,244

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

b 有価証券

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

3,376,278

71.1

3,370,137

69.1

地方債

88,361

1.9

83,776

1.7

社債

628,348

13.2

588,628

12.1

株式

1,039

0.0

744

0.0

外国証券

578,089

12.2

699,572

14.4

その他の証券

77,501

1.6

129,266

2.7

合計

4,749,619

100.0

4,872,124

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

c 利回り

運用資産利回り(インカム利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

0

512,099

0.00

23

329,911

0.01

コールローン

13

4,904

0.28

有価証券

56,677

4,634,828

1.22

69,536

4,932,078

1.41

貸付金

1,700

61,380

2.77

1,721

62,905

2.74

土地・建物

311

263

小計

58,377

5,208,620

1.12

71,295

5,330,062

1.34

その他

512

271

合計

58,890

71,566

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 収入金額は、「利息及び配当金収入」であります。

3 平均運用額は日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

資産運用利回り(実現利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

0

512,099

0.00

23

329,911

0.01

コールローン

12

4,904

0.26

有価証券

64,651

4,634,828

1.39

71,683

4,932,078

1.45

貸付金

1,700

61,380

2.77

1,721

62,905

2.74

土地・建物

311

263

金融派生商品

△6,180

△5,020

その他

437

△925

合計

60,608

5,208,620

1.16

67,495

5,330,062

1.27

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 資産運用損益(実現ベース)は、「資産運用収益」から「資産運用費用」を控除した金額であります。

3 平均運用額(取得原価ベース)は日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

ホ 国内生命保険事業(三井住友海上プライマリー生命保険株式会社)

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社では、次世代への円滑な資産承継を目的とした贈与型保険「やさしさ、つなぐ」シリーズにおいて、ご契約いただける保険料の上限金額の引上げや取扱範囲の拡大等の商品改定を行った結果、2024年6月には累計販売額が3兆円を突破しました。また、円建て資産での運用ニーズの高まりや早期の年金受取りニーズに対応するため、個人年金保険「みのり10年」等に短期の据置期間(外貨建て3年、円建て3年・5年)のプランを追加しました。あわせて、お客さまのご意向やニーズに合致した商品を開発する態勢の強化や金融機関代理店に対する適切な保険販売体制強化の支援などに取り組みました。

 

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社の経営成績は次のとおりとなりました。

 

保険料等収入は、前事業年度に新商品発売により販売が増加したことの反動などにより前事業年度に比べ1,609億円減少し、1兆4,058億円となりました。

経常利益は、有価証券売却損の減少や外貨建保険に係る責任準備金繰入負担の減少などにより前事業年度に比べ708億円増加し、439億円となりました。特別損失として価格変動準備金繰入額を118億円計上したことにより、当期純利益は前事業年度に比べ60億円増加し、257億円となりました。

 

保有契約高、新契約高及び保有契約年換算保険料の状況は次のとおりであります。

 

a 保有契約高

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額 (億円)

対前年増減(△)率(%)

金額 (億円)

対前年増減(△)率(%)

(1) 個人保険

52,671

13.1

54,250

3.0

(2) 個人年金保険

26,386

15.9

27,055

2.5

(3) 団体保険

(4) 団体年金保険

 

個人合計((1)+(2))

79,057

14.0

81,306

2.8

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 個人年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資(ただし、個人変額年金保険については保険料積立金)と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものであります。

 

b 新契約高

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

新契約+転換

による純増加

(億円)

新契約

(億円)

転換による純増加

(億円)

新契約+転換

による純増加

(億円)

対前年増減 (△)率

(%)

新契約

(億円)

転換による純増加

(億円)

(1) 個人保険

10,399

10,399

9,606

△7.6

9,606

(2) 個人年金保険

3,970

3,970

3,564

△10.2

3,564

(3) 団体保険

(4) 団体年金保険

 

個人合計

((1)+(2))

14,370

14,370

13,171

△8.3

13,171

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 新契約の個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資(ただし、個人変額年金保険については契約時の保険料積立金)であります。

 

c 保有契約年換算保険料

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(億円)

対前年増減(△)率

(%)

金額(億円)

対前年増減(△)率

(%)

個人保険

5,274

13.9

5,329

1.0

個人年金保険

2,882

10.1

3,000

4.1

合計

8,156

12.5

8,329

2.1

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)であります。

 

個人保険・個人年金保険を合計した新契約高は前事業年度に比べ1,199億円減少し、1兆3,171億円となりました。一方、個人保険・個人年金保険を合計した解約失効契約高は前事業年度並みの5,829億円となりました。個人保険・個人年金保険を合計した保有契約高は、新契約獲得による増加等により前事業年度末に比べ2.8%増加し、8兆1,306億円となりました。

保有契約年換算保険料は前事業年度末に比べ172億円増加し、8,329億円となりました。

 

運用資産、有価証券及び利回りの状況は次のとおりであります。

 

a 運用資産

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

817,589

10.9

460,237

6.2

買入金銭債権

69,995

0.9

85,929

1.1

金銭の信託

2,416,000

32.1

2,656,350

35.5

有価証券

3,755,611

49.9

3,878,260

51.9

貸付金

267,371

3.6

206,979

2.8

土地・建物

218

0.0

201

0.0

運用資産計

7,326,787

97.3

7,287,958

97.4

総資産

7,528,672

100.0

7,479,488

100.0

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

b 有価証券

区分

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

118,807

3.2

418,010

10.8

地方債

社債

67,648

1.8

96,458

2.5

外国証券

2,069,759

55.1

2,096,749

54.1

その他の証券

1,499,396

39.9

1,267,041

32.7

合計

3,755,611

100.0

3,878,260

100.0

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 「その他の証券」は、証券投資信託の受益証券等であります。

 

c 利回り

運用資産利回り(インカム利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

収入金額

(百万円)

平均運用額

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

258

747,455

0.03

257

613,971

0.04

買入金銭債権

24

72,332

0.03

352

120,438

0.29

金銭の信託

81,347

2,311,909

3.52

73,498

2,638,374

2.79

有価証券

97,261

2,124,792

4.58

108,683

2,366,818

4.59

貸付金

10,060

271,230

3.71

9,095

263,930

3.45

土地・建物

227

212

小計

188,952

5,527,947

3.42

191,888

6,003,746

3.20

その他

0

27

合計

188,952

191,916

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る収入金額及び平均運用額については除外しております。

2 収入金額は、「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。

3 平均運用額は日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

資産運用利回り(実現利回り)

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

資産運用損益

(実現ベース)

(百万円)

平均運用額

(取得原価

ベース)

(百万円)

年利回り

(%)

預貯金

△16,686

747,455

△2.23

△7,003

613,971

△1.14

買入金銭債権

24

72,332

0.03

352

120,438

0.29

金銭の信託

249,591

2,311,909

10.80

45,019

2,638,374

1.71

有価証券

240,444

2,124,792

11.32

82,776

2,366,818

3.50

貸付金

35,614

271,230

13.13

△2,332

263,930

△0.88

土地・建物

227

212

その他

3,359

353

合計

512,347

5,527,947

9.27

119,164

6,003,746

1.98

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る資産運用損益及び平均運用額については除外しております。

2 資産運用損益(実現ベース)は、「資産運用収益」から「資産運用費用」を控除した金額であります。

3 平均運用額(取得原価ベース)は日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

ヘ 海外事業(海外保険子会社)

当社グループでは、中期経営計画で掲げるMS Amlinの収益拡大、アジア市場の成長捕捉、トヨタリテール事業の収益改善、事業投資による成長加速及びグループシナジーの発揮に取り組み、前期を大きく上回る収益を挙げました。

MS Amlinにおいては、前期に引き続き、市場環境を踏まえ保険料を引き上げるとともに、自然災害リスクの引受けを抑制しつつそれ以外のリスクの引受けを選別して拡大することで収益が拡大しました。また、アジア市場においては、プラットフォーマーと連携しデジタル技術を活用したリテール市場の開拓などに取り組み、収益が順調に拡大しました。

トヨタリテール事業については、アンダーライティングの強化に加えて、欧州における収益性の低い事業からの撤退を含めた選択と集中を進め、収支の改善を図りました。

事業投資については、MS Transverseを通じて、成長する米国MGA市場を捕捉する取組みを進めるとともに、米国のスペシャルティ保険のリーディングカンパニーであるW.R.Berkley Corporationに対し15%出資することを決定しました。これにより最大の保険市場である米国での大幅な収益拡大につなげ、米国に強い新規出資先と日本・アジア・ロイズをはじめとするその他地域・市場に強い当社グループを組み合わせることで、世界トップクラスのグローバルネットワークを持った保険グループ連合をつくることを目指してまいります。

 

海外保険子会社セグメントの経営成績は次のとおりとなりました。

 

[海外保険子会社の主要指標]

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

比較増減

 増減率

正味収入保険料 (百万円)

1,233,673

1,527,256

293,582

23.8%

経常利益       (百万円)

157,077

231,262

74,184

47.2%

セグメント利益 (百万円)

153,815

184,417

30,601

19.9%

(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 セグメント利益は出資持分考慮後の当期純利益に相当する金額であります。

 

正味収入保険料は、ロイズ・再保険事業をはじめアジア、欧州、米州で増収したことや為替影響もあり、前連結会計年度に比べ2,935億円増加し、1兆5,272億円となりました。

経常利益は、ロイズ・再保険事業や米州を中心に各地域が増益したことなどにより前連結会計年度に比べ741億円増加し、2,312億円となりました。

出資持分考慮後の当期純利益(セグメント利益)は前連結会計年度に比べ306億円増加し、1,844億円となりました。

 

当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。

総資産は前連結会計年度末に比べ7,189億円減少し、26兆2,412億円となりました。主な総資産の内訳は、有価証券が17兆7,600億円(前連結会計年度末比4,065億円減少)、金銭の信託が2兆6,633億円(同2,431億円増加)、現金及び預貯金が2兆1,397億円(同7,715億円減少)であります。

 

当社及び国内保険子会社のソルベンシー・マージン比率の状況は、以下のとおりであります。

 

保険会社グループでは、保険金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。この「通常の予測を超える危険」を示す「リスクの合計額」(以下の各表の(B))に対する「資本金・準備金等の支払余力」(すなわちソルベンシー・マージン総額:以下の各表の(A))の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「ソルベンシー・マージン比率」(以下の各表の(C))であります。

ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社又は保険持株会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。

 

イ 当社

連結ソルベンシー・マージン比率

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

(百万円)

(A)ソルベンシー・マージン総額

6,531,328

5,791,564

(B)リスクの合計額

1,692,314

1,634,204

(C)ソルベンシー・マージン比率

[(A)/{(B)×1/2}]×100

771.8%

708.7%

(注)「連結ソルベンシー・マージン比率」は、保険業法施行規則第210条の11の3及び第210条の11の4並びに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出された比率であります。

 

国内株式の時価下落および残高削減を主因に、ソルベンシー・マージン総額が前連結会計年度末に比べて7,397億円減少したことなどにより、ソルベンシー・マージン比率は前連結会計年度末に比べて63.1ポイント低下し、708.7%となりました。

 

ロ 三井住友海上火災保険株式会社

単体ソルベンシー・マージン比率

 

前事業年度

(2024年3月31日)

(百万円)

当事業年度

(2025年3月31日)

(百万円)

(A)ソルベンシー・マージン総額

4,133,628

3,593,924

(B)リスクの合計額

1,196,153

1,017,541

(C)ソルベンシー・マージン比率

[(A)/{(B)×1/2}]×100

691.1%

706.3%

(注)「単体ソルベンシー・マージン比率」は、保険業法施行規則第86条及び第87条並びに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出された比率であります。

 

国内株式の残高削減による資産運用リスク相当額の減少を主因に、リスクの合計額が前事業年度末に比べて1,786億円減少したことなどにより、ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて15.2ポイント上昇し、706.3%となりました。

 

ハ あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

単体ソルベンシー・マージン比率

 

前事業年度

(2024年3月31日)

(百万円)

当事業年度

(2025年3月31日)

(百万円)

(A)ソルベンシー・マージン総額

1,572,188

1,359,559

(B)リスクの合計額

402,936

359,082

(C)ソルベンシー・マージン比率

[(A)/{(B)×1/2}]×100

780.3%

757.2%

(注)上記ロの(注)に記載のとおりであります。

 

国内株式の時価下落に伴いその他有価証券の評価差額が減少したことを主因に、ソルベンシー・マージン総額が前事業年度末に比べて2,126億円減少したことなどにより、ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて23.1ポイント低下し、757.2%となりました。

 

ニ 三井ダイレクト損害保険株式会社

 単体ソルベンシー・マージン比率

 

前事業年度

(2024年3月31日)

(百万円)

当事業年度

(2025年3月31日)

(百万円)

(A)ソルベンシー・マージン総額

16,137

13,938

(B)リスクの合計額

5,089

5,280

(C)ソルベンシー・マージン比率

[(A)/{(B)×1/2}]×100

634.1%

527.8%

(注)上記ロの(注)に記載のとおりであります。

 

当期純損失による株主資本の減少を主因に、ソルベンシー・マージン総額が前事業年度末に比べて21億円減少したことなどにより、ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて106.3ポイント低下し、527.8%となりました。

 

ホ 三井住友海上あいおい生命保険株式会社

単体ソルベンシー・マージン比率

 

前事業年度

(2024年3月31日)

(百万円)

当事業年度

(2025年3月31日)

(百万円)

(A)ソルベンシー・マージン総額

355,345

273,728

(B)リスクの合計額

76,569

83,701

(C)ソルベンシー・マージン比率

[(A)/{(B)×1/2}]×100

928.1%

654.0%

(注)上記ロの(注)に記載のとおりであります。

 

保有債券の時価下落に伴いその他有価証券の評価差額が減少したことを主因に、ソルベンシー・マージン総額が前事業年度末に比べて816億円減少したことなどにより、ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて274.1ポイント低下し、654.0%となりました。

ヘ 三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

単体ソルベンシー・マージン比率

 

前事業年度

(2024年3月31日)

(百万円)

当事業年度

(2025年3月31日)

(百万円)

(A)ソルベンシー・マージン総額

771,366

774,790

(B)リスクの合計額

203,346

234,205

(C)ソルベンシー・マージン比率

[(A)/{(B)×1/2}]×100

758.6%

661.6%

(注)上記ロの(注)に記載のとおりであります。

 

外貨建保険の新契約獲得による予定利率リスクの増加等により、リスクの合計額が前事業年度末に比べて308億円増加したことなどにより、ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて97.0ポイント低下し、661.6%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

比較増減

営業活動によるキャッシュ・フロー (百万円)

549,466

660,188

110,721

投資活動によるキャッシュ・フロー (百万円)

△276,825

△558,725

△281,900

財務活動によるキャッシュ・フロー (百万円)

△231,549

△659,578

△428,028

現金及び現金同等物の期末残高   (百万円)

2,733,760

2,239,475

△494,284

 

当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、保険料の収入額が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ1,107億円増加し、6,601億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却・償還による収入が増加した一方で、有価証券の取得による支出が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ2,819億円減少し、△5,587億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や社債の償還による支出が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ4,280億円減少し、△6,595億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より4,942億円減少し、2兆2,394億円となりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。

成長投資をはじめとする長期的な投資資金等に対しては、主に営業活動と投資活動から得た資金及び内部留保による自己資金を活用するほか、社債の発行や金融機関からの長期借入による外部からの資金調達を行っております。

また、資金の流動性につきましては、大規模自然災害時に保険金の支払や市場の混乱等により資金繰りが悪化する場合に備え、当社グループは、流動性資産を十分に保有するとともに、資金の流出入の動向を踏まえて資産・負債両面から流動性についての評価を行い、適切な資金繰りを行っております。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の事項を会計上の重要な見積りと考えております。

イ 時価の算定方法

 資産・負債の一部は時価をもって貸借対照表価額としており、時価の算定は市場価格等に基づいております。一部のデリバティブ取引において市場価格がない場合には、将来キャッシュ・フローの現在価値や取引対象の市場価格、契約期間等の構成要素に基づく合理的な見積りによって算出された価格を時価としております。

ロ 有価証券の減損

 保有している有価証券は有価証券市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。将来、有価証券市場が悪化した場合には有価証券評価損が発生する可能性があります。

ハ 固定資産の減損

 収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、減損処理を行っております。資産又は資産グループの回収可能価額は、正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される価額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定及び予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しております。したがって、関連する事業の環境が変化した場合、固定資産の使用方法を変更した場合又は不動産取引相場や賃料相場等が変動した場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。

ニ 繰延税金資産

 繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合は繰延税金資産が変動する可能性があります。

ホ 貸倒引当金

 債権の貸倒れによる損失に備えて、回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。貸付先の財務状況の変化などにより、回収不能となった金額や貸倒引当金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。

ヘ 支払備金

 保険契約に基づいて支払義務が発生した、又は発生したと認められる保険金等のうち、まだ支払っていない金額を見積もり、支払備金として積み立てております。損害調査の進展、裁判等の結果、インフレーションや為替の変動などにより保険金等の支払額や支払備金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。

ト 責任準備金等

 保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金等を積み立てております。当初想定した環境・条件等が大きく変動し予期せぬ損害の発生が見込まれる場合には、責任準備金等の積増しが必要になる可能性があります。

チ 退職給付費用及び退職給付債務

 退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や将来の退職率及び死亡率など、いくつかの前提条件に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件を変更する必要が生じた場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務が変動する可能性があります。

 

 なお、上記のうち「ハ 固定資産の減損」及び「ヘ 支払備金」については、関連する事項を「第5 経理の状況」の「重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

④ 目標とする経営指標等の分析等

 

目標項目

 

2023年度

 

2024年度

 

 

実績

修正予想

実績

 

グループ修正利益    (億円)

 

3,799

 

6,700

7,317

 

 

国内損害保険事業  (億円)

 

1,867

 

4,530

4,875

 

国内生命保険事業  (億円)

 

497

 

510

522

 

海外事業      (億円)

 

1,395

 

1,660

1,888

 

金融サービス/リスク

関連サービス事業  (億円)

 

40

 

0

31

 

グループ修正ROE

 

9.0%

 

14.3%

15.7%

 

ESR(Economic Solvency Ratio)

 

229%

 

226%

 

(注)グループ修正利益=連結当期利益+異常危険準備金等繰入・戻入額-その他特殊要因(のれん・その他無形固定資産償却額等)+非連結グループ会社持分利益

グループ修正ROE=グループ修正利益÷期初・期末平均修正純資産(除く新株予約権・非支配株主持分)

修正純資産=連結純資産+異常危険準備金等-のれん・その他無形固定資産

ESR=時価純資産÷統合リスク量(信頼水準99.5%)

 

2025年度までの中期経営計画の第3年度となる2024年度は、国内損害保険事業における政策株式売却益・利配収入の増加や保険引受利益の拡大、海外事業における保険引受利益・資産運用益の拡大などにより、グループ修正利益とグループ修正ROEは2023年度実績を大きく上回り、期中に公表した修正予想も上回る水準を達成しました。財務健全性を表すESRは、目標とする幅(180~250%)の範囲内を維持しております。

 

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⑤ 問題認識と今後の方針について

問題認識と今後の方針は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 当社の子会社である三井住友海上火災保険株式会社は、2025年3月28日付で、W.R.Berkley Corporationの創業家と協力関係協定を締結いたしました。関係当局による認可等を前提として、2025年度中に同社の株式の15%を取得する予定であります。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。