第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、以下の企業理念に則り、会社の経営を行っております。

 

企業理念  :  「私たち空港施設グループは、価値ある施設とサービスの提供を通じて、

航空の未来と魅力ある街づくりに貢献します。」

 

(2) 経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき課題

①中長期経営計画

 当社では2022年5月に中長期経営計画(FY2022~FY2028)を策定、2025年5月9日付で計画見直しについて開示いたしました。

 当初の中長期経営計画につきましては、公表後3年が経過し、航空需要の回復等に支えられ、また、成長に向けた各種取り組みを推進した結果、2025年度の業績予想は、2028年度の数値目標を一部早期達成するなど、事業計画は堅調に推移しております。

 一方で、中長期経営計画で掲げた重点施策の一つである「羽田空港一丁目プロジェクト」については、建築費高騰等の影響を踏まえた再構築に取り組むとともに、資本市場からの要請を踏まえ、企業価値向上を目的としたIR・株主還元等に取り組むなど、当社が直面する課題に対処しながら本計画の着実な進捗と収益基盤の強化に努めてまいりました。

 今般、本計画開始後3年が経過するなかで、当社を取り巻く事業環境が大きく変化したことを踏まえ、改めて重点施策の進捗等、事業戦略を精査し、また、当社の特性を踏まえた資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、当社の中長期経営計画の見直しを行うことといたしました。

 

(中長期経営計画の見直し概要)

◆事業戦略の再構築

 羽田空港一丁目プロジェクト計画方針の一部決定を踏まえた重点施策の再編

◆資本政策の強化

 資本効率改善と市場評価向上に向けた資本政策の強化

◆FY2028数値目標

 見直し後の計画に基づき上方修正(一部数値目標の変更)

 

 事業戦略及び資本政策の両輪を着実に推進することで、各事業における収益力を向上させ経営基盤の強化により持続的な成長を続け、次のステージへ向けた収益基盤の構築を目指してまいります。

 

(計画見直し・骨子)

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②資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

 当社では2025年5月9日付で中長期経営計画の見直しと併せて、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」のアップデートについて開示いたしました。

 現状認識として、当社PBRは0.5倍程度で推移しておりますが、PERは業界平均並みを概ね維持しており、低PBRの要因はROEが低位であることです。直近のROE低迷の要因は、コロナ禍による一時的な収益の低下があったことに加え、羽田空港一丁目地区再編に伴う資産除去債務の計上(FY2022以降)による収益減が影響しております。

 一方、当社における株主資本コストは、CAPMベースの算出で5%~6%程度の水準と認識しており、上記の要因もあり直近のROE(FY2024:4.3%)は株主資本コストを下回る状況であります。

 本計画の見直しにおける重点施策・資本施策等の実施により、本計画終了時のROE水準目標を6.0%とし、成長投資・資本施策の継続的な実施等により、本計画期間以降も更なる資本収益性の向上を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、サステナビリティに関する課題への対応を重要な経営課題と位置付け、サステナビリティ基本方針に基づき推進体制を整備し、事業活動と一体となった取り組みを展開しております。このため当社グループでは、取り巻く環境の変化を見据え、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)の対応項目及びKPIを定め、リスクと事業機会の両面からサステナビリティ推進の着実な実現に向けて取り組んでおります。

 

(1) ガバナンス

 当社グループは、「私たち空港施設グループは、価値ある施設とサービスの提供を通じて、航空の未来と魅力ある街づくりに貢献します。」という企業理念のもと、SDGs及びESGに関する課題に対応し、当社グループの持続的な成長と持続可能な豊かな社会の実現に向けて行動することを基本的な方針としております。

 このため当社グループでは、ステークホルダーの皆様の様々な要請や期待に応えるために、事業課題に限定せずに広く社会課題の解決を含めてサステナビリティへの取り組みを中長期経営計画等に織り込み、事業活動と一体となり、SDGs等のサステナビリティ推進の着実な実現に向けて取り組みを展開しております。

 当社グループでは、サステナビリティ経営を一層促進することを目的とした「サステナビリティ推進会議」(議長:社長執行役員)及び下部組織として環境対策委員会、災害対策委員会、安全衛生推進委員会及び改善推進委員会を設置しております。各委員会では、気候変動をはじめとするサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の審議・報告を行い、グループ全体の活動やその進捗状況を管理しております。

 このような取り組みについては、必要に応じて取締役会等の経営に関する会議で報告し、目標の設定、進捗状況の確認、モニタリングが行われ、その都度、必要な検討を行っております。

 

(2) 戦略

 当社グループは、サステナビリティを経営戦略の中核に位置付け、それを競争力の源泉に、経営基盤を確保しつつ、目まぐるしく変化する社会のニーズや価値観を的確に捉え、中長期的な企業価値の向上に繋げております。

① 環境について

 法律で定める環境基準を守るだけでなく、社会が抱えている様々な環境課題の克服や環境に配慮した事業を構築することを目的に、環境対策委員会を中心に取り組みを推進しております。

 気候変動への対応は、地球環境を考慮した事業活動を行うことの重要性と、気候変動問題の深刻化及び脱炭素社会への動きが加速していることを踏まえ、2030年度においてCO2排出量の2013年度比46%削減を目指し、施設のLED化や高効率機器に切り替えるなどの施策に取り組んでおります。太陽光発電設備設置による再生可能エネルギーの利用促進、航空機汚水処理施設(SDプラント)及び大型航空機洗機施設は法定の基準値内に運用し水質保全の貢献など、環境に対してどのような影響を及ぼすかを考慮した上で、様々な手法・技術を検討し、気候変動等の環境対応に関する取り組みを進めております。

 また当社は、気候変動への取り組みを実践していくとともに、気候関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言の趣旨に賛同しTCFDが推奨する開示事項(「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目)について検討と対応を実施の上、それに基づく情報開示をしております。

 

② 社会について

 法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、役職員の安全と健康を確保するための措置を継続的かつ計画的に講ずることを目的に、当社グループの労働安全衛生管理の体制を確立しております。

 その対応として、当社施設及び空港・航空機を利用するお客様、地域社会などのすべての人が安全・安心を実感できる施設展開と運営を目指し、災害時の迅速な復旧に向けた態勢を整え、訓練を実施するなど実際の災害時に有効な手段となるように、万全の態勢確保に努めております。

 また当社グループは、新しい価値を生み出していく上で、人財として社員一人ひとりの役割が重要であると認識しており、その対応として、人財育成・意識改革プロジェクトによる社内説明会及び勉強会を実施など人財の育成に力を入れております。役職員の個性や能力を発揮できる社風を推進するために、継続的に働き方改革を推し進めることや、持続的な成長に向けた人財戦略に取り組んで参ります。

 地域社会貢献活動は、地域社会の一員として、周辺地域の清掃活動への積極的な参加、災害用備蓄品の寄贈など地域社会への貢献に努めております。

 

 

③ ガバナンスについて

 当社グループの企業理念の下、株主をはじめステークホルダーの皆様から信頼される企業を目指しております。これを実現するためにコーポレート・ガバナンス体制の整備と運用を重要課題の一つと位置付け、経営監督と業務執行の役割を明確化し、経営の透明性に努めることを基本としております。

 またコンプライアンス委員会やリスクマネジメント委員会等において、業務遂行における課題の抽出や必要な対応に取り組み、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を進めております。

 なお詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」をご確認下さい。

 

(3) リスク管理

 当社グループでは、事業継続を困難とする重大なリスク発生時にも、その被害を最小限にとどめ、復旧を早期かつ円滑に行うことでリスクに強い体質にすることを目的に、当社グループのリスク管理・危機管理体制を確立しております。

 リスク管理に関しては、リスクマネジメント委員会がリスクマネジメントを統括し、人的資本リスク等の業務リスクなどの広範囲にわたるリスクを管理しております。また、気候変動等のリスクに適切に対応するため、サステナビリティ推進会議の下部組織である環境・安全・災害に係る委員会において、必要な管理・活動を行っております。さらに、取締役会が、サステナビリティ推進会議からの報告を受け、リスクを監督しております。

 併せて、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」もご参照ください。

コンプライアンスに関しては、コンプライアンス委員会を定期的に開催し、当社グループのコンプライアンスの維持・向上を図っています。また公益通報窓口を社内と社外に設置し、業務に関する役職員等からの組織的又は個人的なコンプライアンス違反行為に関する相談又は通報の適切な処理の仕組みを設けております。

 当社グループは、会社単位及び組織単位におけるリスク管理・危機管理全般の方針、リスクの把握・分析、計画・対策、検証を行い、想定されるリスクの管理とリスクの発生による影響を未然に防ぐ仕組みを構築しております。

 想定されるリスクが発生した場合には、その影響を最小限にとどめると共に、通常状態への回復を図るための危機管理の仕組み、または大規模災害の発生時において、影響を最小化して、事業を早期に復旧させるための方針と手順を定めたBCPを策定し、対策の訓練及び検証の仕組みを構築しております。

 

(4) 指標及び目標

 当社グループは、サステナビリティの目標達成に向けて、グループ全体で取り組みを進めております。

 気候変動対策として、2050年のカーボンニュートラルを実現するために2030年度にCO2排出量を2013年度比で46%削減を目標に設定しております。東京空港冷暖房㈱に高効率のターボ冷凍機の導入やエンジンメンテナンスビル南棟とコンポーネントメンテナンスビル、神戸の格納庫増築棟、シンガポールのパイロット訓練施設に新たな太陽光発電設備設置による再生可能エネルギーの活用など、様々な施策を実施して参ります。

 また社員一人ひとりの多様性を認識し、活き活きとエンゲージメント高く持ち働き続けられるように、様々なアプローチで人財を育成して参ります。そして役職員一人ひとりが社会の一員であるとの自覚の下、その責任や役割を認識・共有しながら、日々の仕事を通じて、成長できる環境づくりをして参ります。働く環境としては、フレックスタイム制度、在宅勤務制度などを通じて、より良い環境づくりを目指し、社員が健康で長く働き続けられるように、専門医によるメンタルヘルス面談など健康経営にも力を入れております。具体的な実績例としては、年次有給休暇の平均取得日数は14日(2023年度:15日間)、月平均の所定外労働時間は13時間(2023年度:18時間)、新卒採用6名(2023年度:3名)となっており、引き続き、年次有給休暇の取得促進、時間外労働の低減に取り組んで参ります。そして、2025年4月1日より「次世代育成支援対策推進法」に基づき新たな行動計画を策定し、①仕事と子育ての両立しやすい「働き方」の推進と、自律的な「キャリア形成」を支援するために、フルタイム従業員1人あたりの時間外・休日労働(月間)を20時間未満とすること②仕事と子育ての両立しやすい「職場環境」をつくるために、育児休業の取得率を60%以上、配偶者の出産による特別休暇の取得率を100%とすることを目標に取り組んで参ります。

 なお従業員の情報については、「第1 企業の概況 5.従業員の状況」に記載のとおりであります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 特定の取引先への依存リスクについて

当社グループは、空港を拠点に空港に必要な施設と機能を提供している特性上、主要な顧客は、航空会社及び航空関連会社となります。特に、日本航空株式会社及び全日本空輸株式会社は当社グループの有力テナントで、さらに日本空港ビルデング株式会社と共に熱供給事業及び給排水事業における有力な供給先であり、当該3社は当社グループ売上の38.7%を占める重要顧客であります。

このため、航空需要の低迷等から、重要顧客をはじめ航空会社及び航空関連会社による事業の合理化、あるいは事業計画の見直し等が行われた場合は、不動産の入居率の低下、熱供給や給排水の利用量の減少等の影響が想定されます。

当社グループとしては、中長期経営計画に定めた長期戦略に基づき、これまで培ってきた経験・知見を最大限活用し、顧客の多様なニーズに対して的確・柔軟に対応し航空関連需要を確実につかみ、長期的なお互いの信頼関係と取引を維持することで、リスクへの影響を抑えることに努めております。

 

(2) 国の施策等のリスクについて

当社グループは、空港の設置管理者である国、行政当局及び空港会社の空港計画や運営方針の変更等により、当社グループの事業計画、経営・財務状況等に影響を受けることが想定されます。

当社グループとしては、国や行政等の動向を注視し、変化に対して迅速に対応できるように努めております。

また、中長期経営計画で定めた長期戦略に基づき、空港内外・海外において新たな事業展開を進めることで、リスクの分散にも取り組んでおります。

 

(3) 災害リスクについて

天変地異や火災等の災害が発生した場合、所有施設の損壊、空港の機能停止等により、当社グループの事業計画、経営・財務状況等に影響を与えることが想定されます。当社グループでは、すべての施設で耐震診断を行い、必要に応じて補強工事の対策を実施している他、火災保険等にも加入しております。また、災害等が発生することを想定し、適切に対応できることを目的に社内及び関係機関との連絡及び情報収集の仕組み、迅速な復旧等の対策の体制整備に努めております。

 

(4) 自然環境の影響リスクについて

熱供給事業及び給排水運営事業は、気温上昇等の季節的要因に伴い、経営・財務状況等に影響を及ぼす傾向があります。冷夏・暖冬においては、冷房・暖房及び上下水道の需要減少が見られ、当初の売上予測を下回る一方、猛暑・厳冬による予想以上の売上となることもあります。

 

(5) 海外事業のリスクについて

海外での事業展開は、為替相場の変動やその国の政治・経済・社会情勢に起因して生じる不測の事態、法律・規制の予期せぬ変更等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、現地法・事業展開に係るカントリーリスク等について現地での業務委託先等を通じ情報収集に努め、リスクの軽減に努めております。

 

(6) 固定資産の減損のリスクについて

当社グループは、不動産賃貸事業を行っております。そのため、投資した固定資産の著しい収益性の悪化や市場価値が下落した場合には、固定資産の減損会計の適用により、減損損失を計上し当社グループの経営成績ならびに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 繰延税金資産の回収可能性に関するリスクについて

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得に関する予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部または全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) その他の事業環境等の変動リスクについて

当社グループは、(1)~(7)以外の項目におきましても偶発事象に起因する事業環境の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

 当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における当社グループの事業環境は、航空業界では大幅な為替変動や物価高といった厳しい状況に直面しながらも、旺盛な訪日需要等に支えられ好調に推移しました。一方、原材料費の高騰や人手不足による物流費・人件費の上昇が、建築費をはじめ物価全体に影響を及ぼしています。また、米国の政策動向による影響など引き続き注意が必要な状況です。

 このような状況のもと、当社グループの連結業績につきましては、空港内不動産事業における既存物件の賃貸条件の見直しや臨時使用による賃貸収入の増加、ノンアセット事業における事務所ビル(販売用不動産)の売却、給排水運営事業における給排水使用量の増加や昨年度実施された公募入札における給排水単価の見直し等により、売上高は31,121百万円(前年同期比19.9%増)、営業利益は4,469百万円(同40.4%増)となりました。経常利益は匿名組合等投資利益や受取配当金等の増加により、4,629百万円(同45.7%増)となりました。一方で、羽田空港一丁目地区内の一部の賃貸用施設について減損損失を計上しましたが、増収要因が上回った結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,577百万円(同27.6%増)となりました。

 

  セグメント別の業績は、次の通りであります。

  なお、当連結会計年度より、従来の「不動産事業」、「熱供給事業」及び「給排水運営その他事業」の3区分から、「空港内不動産事業」、「空港外不動産事業」、「空港内インフラ事業」及び「その他の事業」の4区分にセグメントを変更しております。

①空港内不動産事業

 空港内不動産事業は、既存物件の賃貸条件の見直し、臨時使用による賃貸収入、羽田空港における貨物地区の生鮮センター稼働に係る再配置による賃料収入等の増加により、売上高は16,891百万円(前年同期比6.2%増)、セグメント利益は3,393百万円(同42.8%増)となりました。

 

②空港外不動産事業

 空港外不動産事業は、2022年5月より開始したノンアセット事業において、これまで複数棟の事務所ビルを取得し、当該物件の付加価値増大に傾注して参りました。今般、事務所ビルを1棟売却したこと等により、売上高は6,372百万円(同112.9%増)、セグメント利益は1,476百万円(同25.7%増)となりました。

 

③空港内インフラ事業

 熱供給事業における冷温熱の販売量の増加及び給排水運営事業における給排水使用量の増加や前述の給排水単価の見直し等により、売上高は7,078百万円(同12.3%増)となりました。セグメント利益は865百万円(同5.3%増)となりました。

 

④その他の事業

 在外子会社における海外事業を主とするその他の事業は、円安の影響により、売上高は777百万円(同1.6%増)となりました。一方、海外現地機能強化を推進したことによる費用増もあり、セグメント利益は295百万円(同0.7%減)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前年同期比3,689百万円減少の7,159百万円となりました。

 

①営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動による資金は、5,239百万円の収入(前年同期は784百万円の収入)となりました。これは主に、棚卸資産の増加や法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益、非資金項目である減価償却費や減損損失の計上、営業貸付金の減少があったことによるものであります。

 

②投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動による資金は、3,419百万円の支出(前年同期は3,831百万円の支出)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出があったことによるものであります。

 

 

③財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動による資金は、5,656百万円の支出(前年同期は5,101百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済や配当金の支払いがあったことによるものであります。

 

(3)生産、受注及び販売の状況

①熱供給の生産実績

品目

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

前年同期比(%)

冷 房(MJ)

532,486,466

12.9

暖 房(MJ)

163,823,853

0.9

(注)1.数量はセグメント間の内部振替後の数量によっております。

2.数量は販売量にて表示しております。

 

②受注状況

当社グループ(当社及び連結子会社)は、受注生産を実施しておりません。

 

③販売実績

品目

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

前年同期比(%)

販売高(千円)

空港内不動産事業

16,891,979

6.2

空港外不動産事業

6,372,855

112.9

空港内インフラ事業

7,078,346

12.3

その他の事業

777,923

1.6

合計

31,121,104

19.9

(注)1.販売実績は、外部顧客に対する売上高に該当いたします。

2.最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先名

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本航空㈱

4,028,707

15.5

4,385,501

14.0

日本空港ビルデング㈱

3,562,415

13.7

3,979,274

12.7

全日本空輸㈱

3,613,146

13.9

3,705,300

11.9

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りを行っております。ただし、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字については、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①概況

 24年度の当社グループの連結業績につきましては、空港内不動産事業における既存物件の賃貸条件の見直しや臨時使用による賃貸収入の増加、ノンアセット事業における事務所ビル(販売用不動産)の売却、給排水運営事業における給排水使用量の増加や昨年度実施された公募入札における給排水単価の見直し等により、売上高は31,121百万円(前年同期比19.9%増)、営業利益は4,469百万円(同40.4%増)となりました。経常利益は匿名組合等投資利益や受取配当金等の増加により、4,629百万円(同45.7%増)となりました。一方で、羽田空港一丁目地区内の一部の賃貸用施設について減損損失を計上しましたが、増収要因が上回った結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,577百万円(同27.6%増)となりました。

 

②売上高

 売上高は前年同期比19.9%増加の31,121百万円となりました。

 空港内不動産事業は、既存物件の賃貸条件の見直し、臨時使用による賃貸収入、羽田空港における貨物地区の生鮮センター稼働に係る再配置による賃料収入等の増加により、売上高は16,891百万円(前年同期比6.2%増)となりました。

 空港外不動産事業は、2022年5月より開始したノンアセット事業において、これまで複数棟の事務所ビルを取得し、当該物件の付加価値増大に傾注して参りました。今般、事務所ビルを1棟売却したこと等により、売上高は6,372百万円(同112.9%増)となりました。

 空港内インフラ事業では、熱供給事業における冷温熱の販売量の増加及び給排水運営事業における給排水使用量の増加や前述の給排水単価の見直し等により、売上高は7,078百万円(同12.3%増)となりました。

 在外子会社における海外事業を主とするその他の事業は、円安の影響により、売上高は777百万円(同1.6%増)となりました。

 

セグメント毎の売上高

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

空港内

不動産事業

空港外

不動産事業

空港内

インフラ事業

その他の

事業

合    計

2025年3月期

16,891,979

6,372,855

7,078,346

777,923

31,121,104

2024年3月期

15,893,791

2,992,092

6,299,631

765,381

25,950,897

 

③営業利益

 営業利益は、前年同期比40.4%増加の4,469百万円となりました。

 

④営業外収益(費用)

 営業外収益は、匿名組合等投資利益や受取配当金の増加等により、前年同期比42.2%増加の616百万円となりました。

 営業外費用は、前年同期比3.7%増加の457百万円となりました。

 

⑤経常利益

 経常利益は、前年同期比45.7%増加の4,629百万円となりました。

 

⑥特別利益(損失)

 特別利益は、投資有価証券売却益の計上により、前年同期比124百万円の増加となりました。

 特別損失は、減損損失を計上したこと等により、前年同期比1,245百万円増加の1,257百万円となりました。

 

⑦税金等調整前当期純利益

 税金等調整前当期純利益は、前年同期比10.5%増加の3,496百万円となりました。

 

⑧法人税等

 法人税等は、前年同期比15.5%減少の868百万円となりました。

 

 

⑨非支配株主に帰属する当期純利益

 非支配株主に帰属する当期純利益は、東京空港冷暖房㈱の非支配株主に帰属する当期純利益からなり、前年同期比56.1%減少の49百万円となりました。

 

⑩親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比27.6%増加の2,577百万円となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

  経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(4) 戦略的現状と見通し

  戦略的現状と見通しについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

(5) 資本の財源及び流動性についての分析

①キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前年同期比3,689百万円減少の7,159百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金は、5,239百万円の収入(前年同期は784百万円の収入)となりました。これは主に、棚卸資産の増加や法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益、非資金項目である減価償却費や減損損失の計上、営業貸付金の減少があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金は、3,419百万円の支出(前年同期は3,831百万円の支出)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金は、5,656百万円の支出(前年同期は5,101百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済や配当金の支払いがあったことによるものであります。

 

(キャッシュ・フローの指標)

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率(%)

54.5

52.6

55.1

時価ベースの自己資本比率(%)

27.3

27.5

28.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

13.5

40.9

5.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

6.9

2.6

16.3

(備考)自己資本比率                        : 自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率            : 株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率  : 有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ    : 営業キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

4.営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。

 

②資金需要

  当社グループの運転資金需要の主なものは、建物等の修繕費の他、人件費、旅費・交通費、通信費等の営業費用によるものであります。

 

③契約債務

  2025年3月31日現在の当社グループの契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合  計

1年以内

1年超2年以内

2年超3年以内

3年超

社債

6,100

100

6,000

長期借入金

20,945

3,390

3,718

2,578

11,257

 

④財政政策

当社グループは現在、運転資金及び設備投資資金につきましては、主として内部資金または借入により資金調達をすることとしております。

このうち、運転資金については期限が1年以内の短期借入で各々の連結会社が調達することとしております。これに対して、建物、設備などの長期借入は、原則として固定金利で調達しております。2025年3月31日現在、長期借入金の残高は20,945百万円であります。

 

(6) 経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するようにしております。「価値ある施設とサービスの提供を通じて、 航空の未来と魅力ある街づくりに貢献する。」ことを企業理念としている当社グループとして、2025年5月に見直しを行った中長期経営計画に基づき、各種の課題に着実に取り組むことを通じて顧客・社会のニーズに適切に応えた施設・サービスを提供することで、社会価値を創造してまいります。

なお、業績等に重要な影響を与える要因については、「3.事業等のリスク」に、経営方針と今後の方針については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にそれぞれ記載しております。

 

 

5【重要な契約等】

使用許可

相手先

使用許可の内容

許可期間

国土交通省航空局

土地  (事務所用ビル、格納庫、工場用建物の敷地等)

国土交通省所管行政財産

1~3年毎に更新

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。