第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第29期

第30期

第31期

第32期

第33期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高

(千円)

68,999,416

74,597,912

79,913,787

80,286,796

94,765,891

経常利益

(千円)

7,001,643

8,575,047

9,368,145

11,346,554

13,748,679

親会社株主に帰属する

当期純利益

(千円)

4,506,481

5,428,687

6,147,224

7,518,383

9,330,772

包括利益

(千円)

4,556,280

5,460,546

6,193,073

7,605,003

9,288,303

純資産

(千円)

51,137,007

55,698,637

60,965,925

66,873,055

73,460,423

総資産

(千円)

104,879,914

114,315,904

135,867,479

168,954,164

227,029,651

1株当たり純資産

(円)

3,314.13

3,609.82

3,951.19

4,334.08

4,761.07

1株当たり当期純利益

(円)

292.06

351.83

398.40

487.27

604.74

潜在株式調整後1株当たり

当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

48.8

48.7

44.9

39.6

32.4

自己資本利益率

(%)

9.2

10.2

10.5

11.8

13.3

株価収益率

(倍)

5.8

4.8

5.5

7.2

6.8

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

9,059

9,371,076

12,860,955

32,213,870

35,440,533

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

799,878

1,060,030

4,819,913

603,217

1,047,115

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

12,990,634

6,411,011

16,708,627

22,506,207

51,339,616

現金及び現金同等物の

期末残高

(千円)

31,019,369

26,999,274

26,027,033

15,716,152

30,568,120

従業員数

(人)

363

380

397

404

419

(外、臨時従業員数)

(384)

(606)

(619)

(666)

(705)

 (注)1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

第29期

第30期

第31期

第32期

第33期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高

(千円)

57,712,105

58,798,368

59,291,719

60,248,885

67,071,852

経常利益

(千円)

4,736,532

6,420,244

6,754,531

8,518,966

9,665,532

当期純利益

(千円)

3,162,277

4,196,938

4,595,845

5,832,686

6,912,008

資本金

(千円)

1,983,000

1,983,000

1,983,000

1,983,000

1,983,000

(発行済株式総数)

(株)

(15,465,600)

(15,465,600)

(15,465,600)

(15,465,600)

(15,465,600)

純資産

(千円)

44,331,565

47,942,824

51,658,732

55,880,166

60,048,770

総資産

(千円)

91,013,620

98,937,781

116,370,325

143,833,744

198,497,524

1株当たり純資産

(円)

2,873.08

3,107.16

3,347.99

3,621.62

3,891.84

1株当たり配当額

(円)

40.00

40.00

90.00

150.00

185.00

(内1株当たり中間配当額)

(20.00)

(20.00)

(40.00)

(60.00)

(85.00)

1株当たり当期純利益

(円)

204.94

272.00

297.86

378.02

447.97

潜在株式調整後1株当たり

当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

48.7

48.5

44.4

38.9

30.3

自己資本利益率

(%)

7.3

9.1

9.2

10.8

11.9

株価収益率

(倍)

8.2

6.2

7.4

9.3

9.2

配当性向

(%)

19.52

14.71

30.22

39.68

41.30

従業員数

(人)

220

224

207

192

210

(外、臨時従業員数)

(10)

(11)

(12)

(13)

(14)

株主総利回り

(%)

123.4

125.7

169.8

275.4

332.0

(比較指標:TOPIX(配当込))

(%)

(142.1)

(145.0)

(153.4)

(216.8)

(213.4)

最高株価

(円)

1,909

1,829

2,290

3,730

5,080

最低株価

(円)

1,110

1,519

1,604

2,118

3,220

 (注)1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

    2.最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所プライム市場におけるものであり、それ以前については東京証券取引所市場第一部におけるものであります。

 

 

2【沿革】

年月

事項

1992年5月

大阪市北区西天満に、日本エスリード株式会社(現、エスリード株式会社)を設立。

1992年6月

宅地建物取引業免許(大阪府知事免許)を取得。

1992年9月

福岡市中央区渡辺通に福岡支店(現、福岡市中央区天神)を設置。

1993年3月

宅地建物取引業免許(建設大臣免許)を取得。

1993年5月

エスリードシリーズ第1棟「エスリード福島」を販売開始。

1993年11月

本店を大阪市北区梅田に移転。

1995年11月

本店を大阪市北区梅田一丁目1番3-2400号に移転。

1996年4月

エスリード企画株式会社を吸収合併。

1996年5月

エスリード管理株式会社(現、エスリード賃貸株式会社)を設立(当社100%出資)。

1997年4月

株式の額面金額を変更するため、イーエルコーポレーション株式会社(形式上の存続会社)と合併。

1998年9月

老朽化マンション建替え事業物件「エスリード堂ヶ芝」を販売開始。

1999年4月

ホームワランティを日本で初めて標準装備。

1999年7月

神戸市総合設計制度許可及び住宅市街地総合整備事業適用マンション「エスリード六甲第2」を販売開始。

1999年10月

大阪証券取引所市場第二部に株式を上場。

2000年2月

社団法人日本高層住宅協会(現、一般社団法人不動産協会)に加盟。

2001年3月

大阪証券取引所市場第一部に株式を上場。

2001年11月

東京証券取引所市場第一部に株式を上場。

2005年1月

エスリードシリーズ供給戸数10,000戸目となる「エスリード長岡天神」を販売開始。

2006年5月

綜電株式会社を設立(当社100%出資)。

2006年6月

関西で初めて「マンション建替え円滑化法」を適用した「エスリード高野台」を販売開始。

2006年6月

イー・エル建築工房株式会社(現、イー・エル建設株式会社)を設立(当社100%出資)。

2007年5月

エスリード住宅流通株式会社を設立(当社100%出資)。

2008年4月

大阪市で初めて「マンション建替え円滑化法」を適用した「エスリード帝塚山」を販売開始。

2009年9月

本店を大阪市福島区福島六丁目25番19号(現所在地)に移転。

2012年2月

森トラスト株式会社と資本業務提携契約を締結。

2013年1月

森トラスト株式会社による当社株式に対する公開買付けに賛同表明。

2013年3月

森トラスト株式会社による当社株式に対する公開買付けが成立。同社が当社の親会社となる。

2016年6月

エスリードハウス株式会社を設立(当社100%出資)。

2018年10月

名古屋市中村区名駅に名古屋支店を設置。

2018年11月

2019年1月

エスリード建物管理株式会社を設立(当社100%出資)。

エスリードホテルマネジメント株式会社を設立(当社100%出資)。

2019年4月

名古屋支店を名古屋市中区栄に移転。

2019年4月

エスリード管理株式会社の不動産管理事業及び保険代理店事業をエスリード建物管理株式会社へ吸収分割。

2019年4月

エスリード管理株式会社の商号をエスリード賃貸株式会社に変更。

2019年10月

日本エスリード株式会社からエスリード株式会社に商号変更。

2019年11月

Eクリーンアップ株式会社を設立(エスリード建物管理株式会社100%出資)。

2020年6月

東海圏第1号となる「エスリード名古屋東別院」を販売開始。

2021年3月

エスリード・アセットマネジメント株式会社を設立(当社100%出資)。

2021年10月

南都ビルサービス株式会社の全株式を取得し、同社を連結子会社化(エスリード建物管理株式会社の100%子会社)。

2022年4月

東京証券取引所市場第一部からプライム市場に移行。

2023年4月

2025年2月

エスリード住宅流通株式会社の商号をエスリードリアルティ株式会社に変更。

エスリードアパートメント株式会社を設立(当社100%出資)。

 

3【事業の内容】

 当社グループは、当社及び子会社12社により構成されており、事業は総合不動産事業及びマンションの開発分譲を中心として、マンションの管理事業、賃貸関連事業、電力供給事業、建設・リフォーム事業、不動産の仲介・買取再販事業、戸建分譲事業、デジタルマーケティング事業、宿泊施設の運営・管理事業、不動産証券化事業、アパートの開発・販売事業、マンション・ビルの清掃事業、ビルメンテナンス事業等を行っております。

 事業内容と当社及び子会社の位置づけは、次のとおりであります。

区分

主要な事業内容

主要な会社

不動産販売事業

総合不動産事業

マンションの分譲事業

エスリード株式会社(当社)

その他事業

マンションの賃貸事業

エスリード株式会社(当社)

 

マンションの管理事業

エスリード建物管理株式会社

 

マンションの賃貸管理事業

エスリード賃貸株式会社

 

電力供給事業

綜電株式会社

 

建設・リフォーム事業

イー・エル建設株式会社

 

不動産の仲介・買取再販事業

エスリードリアルティ株式会社

 

戸建分譲事業

エスリードハウス株式会社

 

デジタルマーケティング事業

デジメーション株式会社

 

宿泊施設の運営・管理事業

エスリードホテルマネジメント株式会社

 

不動産証券化事業

エスリード・アセットマネジメント株式会社

 

アパートの開発・販売事業

エスリードアパートメント株式会社

 

マンション・ビルの清掃事業

Eクリーンアップ株式会社

 

ビルメンテナンス事業

南都ビルサービス株式会社

(注)1.上記の他、親会社として株式会社森トラスト・ホールディングス、森トラスト株式会社があります。

     親会社の森トラスト株式会社は、不動産開発、ホテル経営及び投資事業を営んでおります。また、森トラスト株式会社の親会社である株式会社森トラスト・ホールディングスは、グループ会社の株式保有を行っております。

   2.2025年2月3日に、エスリードアパートメント株式会社を設立いたしました。

 

 なお、事業内容と当社グループ及び親会社(株式会社森トラスト・ホールディングス、森トラスト株式会社)の位置づけは、次のとおりであります。

0101010_001.png

 

 

4【関係会社の状況】

(1)親会社

名称

住所

資本金

(千円)

主要な事業内容

議決権の被所有割合

(%)

関係内容

役員の兼任

資金援助

営業上の取引

業務提携等

同社

役員

(人)

同社

従業員

(人)

㈱森トラスト・ホールディングス

(注1)

東京都港区

51,000

グループ会社の株式保有

53.9

(53.9)

森トラスト㈱

東京都港区

30,000,000

不動産開発、ホテル経営及び投資事業

53.9

資本業務提携

 (注)1.「議決権の被所有割合」欄の( )内は、間接被所有割合で内数であります。

2.上記親会社は有価証券届出書または有価証券報告書を提出しておりません。

 

(2)連結子会社

名称

住所

資本金

(千円)

主要な事業内容

議決権の所有割合

(%)

関係内容

役員の兼任

資金援助

営業上の取引

設備の賃貸借等

当社

役員

(人)

当社

従業員

(人)

エスリード建物管理㈱

大阪市北区

10,000

その他事業

100.0

分譲物件の管理

建物及び設備の賃貸

エスリード賃貸㈱

大阪市北区

10,000

同上

100.0

賃貸物件の管理及び賃貸借管理

建物及び設備の賃貸

綜電㈱

大阪市北区

90,000

同上

100.0

電力関連商品等の販売

建物及び設備の賃貸

イー・エル建設㈱

大阪市北区

200,000

同上

100.0

建設工事の受注・本社設備及び宿泊施設の修繕工事

建物及び設備の賃貸

エスリードリアルティ㈱

大阪市福島区

10,000

同上

100.0

販売物件の買取・売却・仲介

建物及び設備の賃貸

エスリードハウス㈱

大阪市北区

10,000

同上

100.0

分譲物件の販売代理及び販売物件の仲介

建物及び設備の賃貸

デジメーション(株)

大阪市福島区

10,000

同上

100.0

デジタルマーケティング業務の受託

建物及び設備の賃貸

エスリードホテルマネジメント㈱

大阪市北区

10,000

同上

100.0

宿泊施設の運営業務の受託

建物及び設備の賃貸

エスリード・アセットマネジメント㈱

大阪市福島区

10,000

同上

100.0

アドバイザリー業務の受託

建物及び設備の賃貸

エスリードアパートメント㈱

大阪市福島区

10,000

同上

100.0

アパートの開発・販売

建物及び設備の賃貸

Eクリーンアップ㈱

(注5)

大阪市北区

10,000

同上

100.0

(100.0)

本社設備等の清掃

建物及び設備の賃貸

南都ビルサービス(株)

(注5)

奈良市大宮町

10,000

同上

100.0

(100.0)

本社設備のメンテナンス及びモデルルームの清掃

 (注)1.上記子会社は、特定子会社ではありません。

2.上記子会社は、有価証券届出書または有価証券報告書を提出しておりません。

3.上記子会社は、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が100分の10以下であるため、主要な損益情報等の記載を省略しております。

4.「主要な事業内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。

5.「議決権の被所有割合」欄の( )内は、間接被所有割合で内数であります。

 

(3)持分法適用関連会社

  該当事項はありません。

(4)その他の関係会社

  該当事項はありません。

5【従業員の状況】

 

(1)連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

不動産販売事業

167

9

その他事業

209

691

全社(共通)

43

5

合計

419

705

 (注)1.従業員数は就業人員数であります。

2.臨時従業員数は、( )内に当連結会計年度末人員を外数で記載しております。

3.臨時従業員には準社員、嘱託社員、派遣社員及びパートタイマーを含んでおります。

4.全社(共通)には、特定のセグメントに区分できない管理部門に所属する従業員数を記載しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与(円)

210

14

33

7ヶ月

5

10ヶ月

8,719,180

 

セグメントの名称

従業員数(人)

不動産販売事業

167

9

その他事業

-)

全社(共通)

43

5

合計

210

14

 (注)1.平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金、業績給、その他の臨時手当及び賞与を含んでおります。

2.従業員数は就業人員数であります。

3.臨時従業員数は、( )内に当事業年度末人員を外数で記載しております。

4.臨時従業員には準社員、嘱託社員、派遣社員及びパートタイマーを含んでおります。

5.全社(共通)には、特定のセグメントに区分できない管理部門に所属する従業員数を記載しております。

 

(3)労働組合の状況

  労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

 

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

   (注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

   (注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1.

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

1.8

23.0

48.3

47.8

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

     「労働者の男女の賃金の差異」のうち「パート・有期労働者」の「-」は、女性のパート・有期労働者がいないため比較できないことを示します。

   2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

② 連結子会社

 

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合

 (%)

(注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1.

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

 

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

エスリード建物管理株式会社

(注)1.

88.2

57.8

76.5

南都ビルサービス株式会社

(注)1.

73.0

83.2

72.1

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

 

 

第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 私たちは、総合デベロッパーとしてお客様の暮らしのステージを支えたい、都市と住まいの未来を見据えたサービスをご提供したい、このような想いのもと経営理念を掲げています。

 

 <経営理念>

  総合デベロッパーとして。

  都市と住まいの未来を見据えて。

 

 ◇都市と住まいは日々の暮らしのステージです。そのステージが快適で豊かなものとなるよう、エスリードグルー

  プが一体となって、将来にわたり皆様の暮らしを幅広くサポートし永く快適にお住まい頂くことが、私たちの想

  いです。

 

 また、事業を通じて経営理念を実現するための経営方針を掲げています。

 

 <経営方針>

  厳選された良質なマンション供給体制を維持する。

  グループ一体となりシナジーを生みながらマンション周辺事業を拡充する。

  マンション事業に縛られず、多様化する社会のニーズに適合できる総合不動産会社として新たな事業領域に挑戦

  する。

 

 ◇私たちは、立地に優れ、ご納得いただける価格で供給できる土地だけを、厳選して取得してきました。また、培

  ってきた人脈、ノウハウとマーケティング分析を駆使するとともに、細部まで商品企画にこだわって、マンショ

  ンを分譲してきました。今後もこのマンション供給体制を堅持します。

 ◇お住まいの方の安心を支えるマンション管理、長期保証、修繕維持に加えて、ご転居の際には買取再販のお手伝

  いも行うことで、マンションを適切に維持管理し、その価値の向上も実現してきました。今後は、シナジーが見

  込まれる新規事業にも参入するなど、さらにマンション周辺事業を拡充してまいります。

 ◇不動産に関する社会のニーズは多様化しています。私たちは、総合不動産会社として、マンション分譲事業に縛

  られず、新たな事業領域に積極的に挑戦し、社会の多様なニーズに対応できる事業体制を実現します。

 

 そして、経営理念及び経営方針をもって事業活動を行うことで、私たちは社会に貢献します。

 

 <社会的使命>

  総合不動産会社として都市の豊かさに貢献する。

  お客様の暮らしの豊かさ向上に貢献する。

  多様化する社会のニーズへの対応を通じ、持続可能な社会に貢献する。

 

 ◇総合不動産会社として、都市の価値向上に努め、都市の豊かさに貢献します。

 ◇厳選された良質な住まいは、お客様の暮らしの豊かさに貢献します。

 ◇多様化する社会のニーズは、私たちが総合デベロッパーとしての力を発揮できる環境であり、中古物件再生や再

  生可能エネルギーの活用などあらゆるチャレンジを通じて持続可能な社会に貢献します。

 

(2)経営戦略

 当社グループは、創業30周年にあたる2022年5月に、グループ総力を結集し「真の総合不動産会社」になることを標榜しました。

 マンション分譲事業では、建築費の値上がり等を考慮しつつ、良質なマンション供給によって着実に成長してまいります。良質なマンションを数多く供給してきた実績と、創業以来培ってきた高い用地仕入力・商品企画力を生かし、これからもお客様に選ばれるマンションづくりを徹底してまいります。

 マンション周辺事業では、マンション分譲事業などの既存事業とのシナジーを生みながら、さらなる拡大・充実を目指します。マンション周辺事業は当社グループを支える収益源へと成長しましたが、今後さらなる拡大・充実を図るため、グループ外からの収益獲得を強化し、シナジーが見込まれる新規事業にも積極的に進出してまいります。

 総合不動産事業については、当社グループが「真の総合不動産会社」として永続的に成長するための原動力と位置付けており、マンション事業に縛られない多岐にわたる事業の積極的な拡大成長を推し進めています。オフィスビル開発やホテル事業、総合建設業等の既存事業に加え、スーパーマーケットやホームセンター等のロードサイド店舗開発など、新たな事業を見据えて事業体制の強化を図ってまいります。

 加えて、当社グループは多様化する社会のニーズへの対応を通じ、持続可能な社会に貢献することを社会的使命として掲げています。グループ一体となって積極的に新たな取り組みにチャレンジし、ZEHなどの環境配慮型マンション開発や、太陽光発電事業などのクリーンエネルギー活用といった脱炭素社会の実現に向けた事業展開を推進してまいります。

 

(3)経営環境

 当連結会計年度におけるわが国経済は、円安が続く為替状況とそれに伴う物価上昇、地政学的リスクの高まりによる原材料価格の高騰、米国の通商政策等に注視が必要な状況が継続しているものの、雇用・所得環境の改善や高い水準にある企業収益などの要因により、緩やかな回復基調で推移しました。

 当社グループの属する不動産業界においては、インバウンド需要の回復や円安の長期化を背景に、国内外の投資家の投資意欲は依然として底堅く、また、住宅市場は政府による継続的な各種支援制度等により横ばいの範囲で推移しております。一方、用地取得原価・建築原価の上昇が見込まれることから、当社は物件の特性を把握したうえで、物件ごとに保有期間をコントロールしながら適切な時期に販売するとともに、販売方法として個別分譲、一棟販売を的確に見極めることによって利益を最大化させるビジネスモデルへの転換を図ってまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 上記(3)の経営環境の中、当社は総合不動産会社として、マンション事業以外の、総合不動産事業において積極的な拡大成長を推し進めています。既存事業であるオフィスビル開発やホテル事業、総合建設業などを拡大成長させるとともに、スーパーマーケットやホームセンター等のロードサイド店舗開発など、多岐にわたる新たな事業を見据えています。また、当社は1992年に大阪で創業して以来、関西圏を中心に良質なマンションを提供して成長してまいりました。コスト増が見込まれるマンション分譲事業においても、引き続きお客様から選ばれるマンションづくりに努め、良質なマンション供給によって着実に成長してまいります。

 マンション周辺事業ではマンション分譲事業とのシナジーを生みながら、更なる拡大充実を目指してまいります。より一層強固な収益源とするため、グループ外の収益獲得を強化してまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、経常利益を採用しております。

 採用理由は、当社グループの主要事業であるマンション分譲事業において、棚卸資産の取得を目的とした資金調達を行うことも多いことから、いわゆる稼ぐ力にあたる営業利益に加えて支払利息などの財務コスト等も含めた経常利益が、当社グループの本来の稼ぐ力を測る最適な指標だと判断したためであります。

 なお、当連結会計年度における経常利益の実績は137億48百万円となり、期初に公表した業績予想の137億円を上回ることができました。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社は「不動産業界をリードする(real EState LEAD)」という想いのもと、1992年5月に設立された総合不動産会社です。

 当社グループは「総合デベロッパーとして。都市と住まいの未来を見据えて。」を経営理念とし、「多様化する社会のニーズへの対応を通じ、持続可能な社会に貢献する。」を社会的使命の一つとして掲げています。

 企業を取り巻く環境が大きく変化する中、当社グループは持続可能な社会の実現と企業の持続的成長を両立していくことが重要な経営課題であるとの認識に立ち、サステナビリティに関する取組を推進しています。

 サステナビリティに関する諸課題の中でも、当社グループにとって特に重要であると認識しているのが気候変動と人的資本・多様性です。

 気候変動が原因の一つとされる近年の異常気象や自然災害は、当社グループが各事業において開発・販売する不動産や保有・運営する不動産へ深刻な被害をもたらす可能性があります。当社グループは創業以来、マンション分譲事業を中心として成長してきましたが、現在の事業領域は戸建事業やホテル事業、更には総合建設業や太陽光発電事業など多岐にわたっており、今後も事業領域を拡大していくことを目指しております。事業領域の拡大に伴い取り扱う不動産が増えるにつれ、気候変動による当社グループの経営への影響はより重大になっていくことが見込まれます。当社グループは2022年6月にTCFD(気候変動財務開示タスクフォース)提言への賛同を表明しており、TCFD提言に基づく情報開示を通じて、ステークホルダーの皆様との対話を進め、分析をさらに精緻化し取組を進化させてまいります。

 また、人的資本・多様性は、当社が総合不動産会社として永続的に成長するための重要な要素であり、将来にわたって投資を継続していく必要があるものと考えております。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティを経営に重大な影響を与える課題の一つとして認識しています。リスク管理委員会をサステナビリティについて検討する機関と位置づけています。

 リスク管理委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、営業本部・事業本部・管理本部の本部長及び副本部長によって構成されています。その他、必要に応じてグループ会社の役職員、内部監査室長やその他の者が出席します。

 リスク管理委員会は、リスク管理規程に基づき月に1回以上開催され、議事内容は取締役会に報告しています。

 

(2)戦略

(気候変動)

 気候関連に伴うリスクと機会には、低炭素な社会へ移行していく過程での政策や市場、技術等の変化によって生じる「移行リスク・機会」と、地球温暖化に伴い慢性的な気温上昇や急性的な自然災害の激甚化によって生じる「物理的リスク・機会」に大別されます。

 当社グループでは、「移行リスク・機会」が大きいシナリオとして①2℃シナリオを設定し、IPCC第5次報告書のRCP2.6シナリオや経済産業省の「グリーン成長戦略」等を参照しました。一方、「物理的リスク・機会」が大きいシナリオとして②4℃シナリオを設定し、IPCC第5次報告書のRCP8.5シナリオを参照しました。

 分析の事業範囲は、エスリード株式会社と全グループ会社を含むエスリードグループとしました。また、分析期間は2050年までを想定し、2030年までを中期、2031年以降を長期として、相対的な事業への影響度の大きさを大・中・小の3段階で分析しました。

 

①2℃シナリオ

項目

事業への影響

影響度

期間

政策・

規制

省エネルギー規制の強化

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)対応

<リスク>

・省エネ基準引き上げによる基準適合のため原価が増加

・ZEHマンション・戸建住宅の提供により原価が増加

<機会>

・政府目標に沿った支援策の拡充

・炭素クレジット市場の創設

・ESG融資の増加

・省エネ技術の進展により原価が減少

・省エネ物件やZEHの需要増加

中~長期

炭素税の導入

<リスク>

・販売後不動産の利用者が負担する光熱費が増加

・事業活動にともなう化石燃料由来の光熱費が増加

<機会>

・省エネ化に対する需要増加

・再生可能エネルギーの利用機会が増加

・HV車やEV車の利用機会が増加

中期

市場・

評判

建材、部材等の調達原価の増加

<リスク>

・炭素集約度の高い建材、部材等の調達原価が増加

<機会>

・技術の進展、価格の低廉化

 

中期

ZEHなど省エネ住宅の普及

<リスク>

・ZEHを含め省エネ物件の提供が遅れることによる顧客からの評価低下

<機会>

・消費者の環境負荷低減への意識の高まり

・ZEHや省エネ住宅の需要が増加

中~長期

再生可能エネルギー事業の拡大

<機会>

・再生可能エネルギーの需要が増加

・当社グループの綜電株式会社の事業拡大

中~長期

 

 

②4℃シナリオ

項目

事業への影響

影響度

期間

慢性

屋外作業の効率の低下

<リスク>

・施工現場での熱中症発生リスクが増加

・工期の遅延リスクが増加

中~長期

建物や設備の劣化

<リスク>

・高温多湿により建物や設備が早く劣化

・劣化点検、修繕工事の費用が増加

<機会>

・修繕工事やリフォームの需要が増加

・当社グループのイー・エル建設株式会社の修繕工事受注が増加

中~長期

 

空調コストの増加

<リスク>

・販売後不動産の利用者が負担する光熱費が増加

・省エネ性能を高めるため原価が増加

・事業活動にともなう光熱費が増加

<機会>

・ZEHや省エネ住宅の需要が増加

中~長期

急性

自然災害の増加

<リスク>

・台風や集中豪雨による工期の遅延リスクが増加

・建物や設備の損傷リスクが増加

・浸水リスクが増加

<機会>

・耐久性が高い物件の需要が増加

・災害時や緊急時の建物管理の需要が増加

 

中~長期

 

③リスク・機会への対応策/戦略のレジリエンス

 当社グループは、環境配慮型住宅の開発とクリーンエネルギーの活用の2つを軸として、脱炭素社会の実現へ向けた取り組みを推進しております。

 

(1)環境配慮型住宅の開発

①ZEHへの取組み

 中期的には原価の増加が見込まれるものの、市場の拡大や省エネ技術の進展に伴う低廉化により長期的には収益増加が見込まれます。政府のグリーン成長戦略では、2030年までに「新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という目標が掲げられており、政府目標に沿った支援策の拡充や省エネ技術の進展が見込まれ、当社グループにおいても、これらの機会を活用してZEH販売戸数を増加させていく所存です。また、炭素税の導入により化石燃料由来の光熱費が増加することが見込まれるため、ZEHや省エネ物件の提供により販売後不動産の利用者が負担する光熱費の減少に努めます。

 2022年2月17日には、エスリード神戸大倉山ヒルズが投資用ワンルームマンション業界で初めて「ZEH Oriented」認証を取得しており、業界最速供給を達成いたしました。また、経済産業省が導入している「ZEHデベロッパー」登録制度において、2022年6月に「ZEHデベロッパー」として登録認定されました。

 現在は、全ての投資用ワンルームマンションをZEH仕様として開発しております。

 さらに、戸建分譲事業を展開する当社グループのエスリードハウス株式会社でもZEH仕様の戸建を販売しております。

 

②NSモールド×NSコート

 NSモールド×NSコートは当社グループのイー・エル建設株式会社が実用新案権を取得した、建物の外観を損なわないタイル剥落対策工法です。タイルを使用しないタイル調意匠付けトータルシステム工法で、タイル製作過程の成型や焼成時に発生する二酸化炭素排出を抑制します。

 

③枠無メーターボックスドア

 当社グループのイー・エル建設株式会社が枠無メーターボックスドアを共同開発・特許取得いたしました。枠のないシンプルなデザインを採用し、CO2排出量は材料と施工手間で約1/2まで抑制されます。

 

④建材見直し

 マンション建設に使用する建築材料及び建築製品を見直すことで建設時のCO2排出量を削減します。

 

(2)クリーンエネルギーの活用

①太陽光発電設備

 当社グループにて電力供給事業及び太陽光発電事業を手掛ける綜電株式会社は、現在10基のメガソーラーを保有しており、クリーンエネルギーを供給しております。クリーンエネルギー供給量は、当社のファミリーマンションの約43%、約5,500戸の消費電力に相当します。

 また、2023年1月31日に綜電株式会社が8基目の太陽光発電所を取得するにあたり、当社グループ初となるグリーンローン契約を株式会社滋賀銀行と締結いたしました。グリーンローンは資金使途が環境に配慮したプロジェクトに限定される融資で、融資後の資金使途の管理や環境改善効果の実績報告を通じて透明性が確保されます。綜電株式会社が策定したグリーンローン・フレームワークは、第三者評価機関より認証を得ております。

 

②EVカーシェアリングサービス

 当社が2023年2月に引き渡したエスリード京都梅小路公園について、居住者向けにEVカーシェアリングを提供いたしました。

 再生可能エネルギー需要の増加に伴い、自動車のHV化やEV化が進行することが見込まれます。当社グループでは、多様化する社会のニーズに応えるべく積極的に新たな取り組みにチャレンジしていきます。

 

③電気自動車の活用

 エスリードの社用車の一部をガソリン車からPHV(プラグインハイブリッド車)に変更いたしました。エスリード本社敷地内にEV急速充電設備を設置する予定です。

 

(人的資本・多様性)

 当社グループは、人的資本と多様性への投資を当社グループの事業を支える重要な戦略として位置づけています。当社グループにおける人的資本戦略は、M&A等の人材を含む仕組みの買収以上に、社内人材の育成・能力開発に向けた投資、外部専門人材の積極採用、従業員エンゲージメントの向上に向けた取組、従業員の健康増進に向けた投資など、“人材”そのものを重要視した投資を目標としています。

 人的資本戦略立案については、中期的な財務目標の設定を行い、非財務情報可視化等の現状把握の後、実現に必要な分野への積極的な投資を実施しています。

 上記方針に基づき、昨今の物価上昇等の社会情勢への対応、従業員満足度の上昇による人的資本価値の向上等を目的として、2024年4月より当社グループ全社を対象に5.0%のベースアップを実施しました。また、2025年度もベースアップを実施するとともに、2026年度以降入社の新卒初任給についても優秀で多様な人材を確保するため、引き上げを実施する予定です。

 今後もヒトへの投資を通じて、持続的な企業価値向上を実現するべく、様々な施策に取り組んでまいります。

 

①人材育成

(1)人材育成(研修・スキル向上)

 新卒の新入社員に対して、前に踏み出す力や考え抜く力、チームで働く力等の社会人の基礎力を身に着けることを目的に、入社前合宿研修を実施しています。入社後は、ビジネスマナー研修や企業全体の把握を目的としたグループ会社を含む各部署の理念、事業内容の研修を実施しています。また、顧問弁護士によるコンプライアンス研修を実施し、企業風土の向上に努めています。さらには、外部及び社内講師による不動産市場動向や資産運用マンション営業、金融市場動向に関するセミナーを実施するとともに、宅地建物取引士の資格取得プログラムの導入、各種資格手当によるスキルアップの推奨を実施し、不動産に精通した人材育成を図っています。

 

(2)人材確保

 母集団形成として求人サイトへの掲載、人材紹介会社の利用、ダイレクトリクルーティング、合同企業説明会の出展、リファラル採用等、各募集職種に適した手法を協議し実行しています。当社方針として、新卒社員に対しては主体性や向上心があり、論理的に物事を考えられる人材、中途社員に対しては実務経験や所有資格、人柄を鑑み即戦力として共に働くことができる人材の確保を目指しています。

 

②従業員エンゲージメント

 当社グループ全体で3カ月通算表彰式や年間表彰式を開催し、社員のモチベーションの最大化に努めています。また、福利厚生の一環として持ち株制度を導入し、グループ全体の企業価値向上という共通目標を促すことで従業員エンゲージメントの向上に努めています。加えて、福利厚生の一環として親会社である森トラスト株式会社及びグループ会社であるエスリードホテルマネジメント株式会社のホテル優待の提供、プロ野球やJリーグサッカーの年間シートの提供等も実施しています。

 

③流動性

 当社グループは、従業員のモチベーション向上及び離職防止策としてジョブローテーションを推進しています。当社グループは、デベロッパー業務のみならずマンション管理事業や賃貸事業、建設・リフォーム事業、仲介・買取再販事業、戸建分譲事業、宿泊施設の運営・管理事業、ビルの清掃・メンテナンス事業、デジタルマーケティング事業など多岐にわたる事業を展開しています。部署やグループ間での転籍希望についてヒアリングし、グループ内の流動性を高めることで、従業員の適正職種の見極めや柔軟で多様な経営実行体制の構築、従業員のモチベーション向上を図り、業務慢性化による生産効率の低下や離職を防止しています。

 

④ダイバーシティ

 当社グループは、多様な人材を適材適所に配置し能力の最大化を図ることを目標としています。宿泊施設の運営・管理事業における外国籍人材の雇用、マンション管理事業における管理人や清掃員を対象とした高齢者雇用、グループ会社であるエスリード・アセットマネジメント株式会社が推進している高度シニア人材の活用など、幅広い雇用の創出に努めています。

 男女における労働環境について、現状は従業員の男性比率が高いものの、性別や年齢、勤続年数を考慮しない成果主義人事制度を導入しているため、人材採用や育成に関しては公平な評価を実施しています。また、育児介護休業については男女問わず取得を希望する従業員が取得することができる職場の実現に向けて、規程の改定を実施し社内イントラネットを通じて育児介護休業制度の周知を行っています。

 

⑤健康・安全

 当社グループは、新型コロナウイルス感染症拡大の期間において、従業員が安心して働くことができる環境を実現するために、職場クラスター発生への防止策を徹底しました。換気・マスク着用の徹底、座席間隔の確保、アクリル板の設置といった飛沫感染防止策に加え、全従業員の健康管理、厳格な自宅待機基準の運用、時差出勤やリモートワークの導入、本社オフィス入口に設置したサーモグラフィによる従業員並びに来訪者の体温管理など、さまざまな対策を講じてきました。また、従業員のみならずご家族やご友人、当社開発マンションにお住いの方を対象に新型コロナウイルスの職域接種を実施し、従業員に対しては接種完了後もPCR検査を定期的に実施しました。

 また、同感染症以外の健康管理については定期的な法定健康診断やインフルエンザワクチンの無料接種を実施するとともに、30歳以上はバリウム検査、40歳以上より人間ドックを実施しています。さらには、消防職員を招いた消防訓練や安全運転管理者講習を行い、従業員の安全確保に努めています。

 

⑥コンプライアンス・労働慣行

 当社グループは、行動規範や内部通報制度運用規程等、コンプライアンス体制に関する規程について法令・定款を遵守した行動をとるための規範として制定し、社内イントラネットを通じて周知徹底を継続的に実施しています。また、内部通報制度運用規程に則り、コンプライアンス上の疑義ある行為については総務部・内部監査室・外部法律事務所を窓口として情報を収集し、取締役会及び監査等委員会へ報告のうえ適切に対処することを内部統制システム構築基本方針に明記しています。

 加えて、内部監査室はグループ会社を含む各部署における業務活動が、法令・定款及び諸規程に準拠した組織及び制度を通じて経営目的達成のために適正に行われているか、年間を通して監査しています。

 さらに、顧問弁護士によるコンプライアンス研修を実施し、従業員への意識浸透を図り企業風土の向上に努めています。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、サステナビリティに関するリスクを経営に重要な影響を与える課題の一つとして認識し、代表取締役社長が委員長を務めるリスク管理委員会において審議します。リスク管理委員会は当社グループのリスク管理規程に基づき、各本部及び子会社のリスク管理責任者及びリスク管理担当者を置いています。また、委員会の事務局は管理本部が務めます。

 

(4)指標及び目標

(気候変動)

 気候変動にともなうリスク及び機会を評価管理する指標として、Scope1・2・3のCO2排出量を算出しました。

 また、Scope1・2の削減目標については、2021年度の排出量(t-co2)と比較して、2030年までに△46%、2050年までに△100%と定めております。そして、Scope3の削減目標については、2021年度の面積(※1)当たり排出量(t-CO2/㎡)と比較して、2030年までに△30%、2050年までに△100%と定めております(※2)。

 

※1 当社グループが開発したマンション及び戸建等の建築物の延床面積

※2 前提条件:第6次エネルギー基本計画の2030年の電源構成の実現

   最新の第7次エネルギー基本計画(2025年閣議決定)においては、2030年度の電源構成についての明示的な変更は示されていないため、従来の第6次エネルギー基本計画で示された構成比率を前提としています。

   社会情勢により前提条件に変更があった場合、排出削減目標を再検討する可能性があります。

 

 当連結会計年度におけるCO2排出量の実績は以下のとおりです。

①Scope1・2

(単位:t-CO2)

 

2021年度

(基準年)

2024年度

Scope1

75.0

204.4

Scope2

624.4

1,732.3

Scope1・2合計

699.4

1,936.7

 

②Scope3

(単位:t-CO2/㎡)

 

2021年度

(基準年)

2024年度

Scope3

6.3

7.1

 

(人的資本・多様性)

 ・新卒採用 女性比率

  <目標>2026年度25.0%  <実績>2025年度10.1%

 ・育児休業復職率

  <目標>2026年度90.0%  <実績>2024年度85.7%

 

 ※ 目標及び実績は、当社グループを対象としております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、発生しうるリスクに係る管理体制の整備、発生したリスクへの対応等を行うことにより業務の円滑な運営に資することを目的として、リスク管理規程を設け、これに基づきリスク管理委員会を開催しております。また、リスクを「事象発生の不確実性」と定義し、リスクには損失等発生の危険性のみならず、新規事業進出による利益又は損失の発生可能性等も含むものとしております。

 リスク管理委員会においては、当社グループのリスク管理に関する方針、体制及び対策の検討を適時に行っております。また、各本部等のリスクに係る総合的な調整や、以下に記載する個別のリスク等の重大性、緊急性等のあるリスクの管理等を行うことで、効果的かつ効率的なリスク管理を実施しております。

 なお、以下に掲げる個別のリスクについては、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に与える影響の内容を考慮し、特に重要なリスクを順に記載するとともに、その個別の対応策についても記載しております。

 

(1)将来の事業環境に関するリスク

 少子高齢化などからくる需要の減退や社会構造の変化、顧客ニーズの多様化が進んだ場合、当社グループの主力事業である不動産販売事業のみで事業活動を永続的に発展させていくことは困難となる可能性があります。

 その対応策として、当社グループの事業戦略において、マンション分譲事業以外にマンション周辺事業と総合不動産事業を展開しており、これらをさらに拡大・充実させることで、収益源の多角化を進めております。

 

(2)コンプライアンス違反に関するリスク

 当社グループ内でハラスメントや法令違反など重大なコンプライアンス違反が発生した場合、当社グループの信用失墜や、損害賠償を請求されるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、当社グループは、コンプライアンス体制の強化を経営上の重要課題として位置づけ、コンプライアンス経営によるリスク管理の徹底に努めております。また、これらコンプライアンス経営をより迅速に機能させるため、顧問弁護士や会計監査人等の第三者から業務遂行上の必要に応じて適宜相談を行い、助言・指導を受けております。

 さらに、当社グループ内へコンプライアンスの意識を浸透させるため、「エスリードグループ行動規範」を定めており、役員及び社員は日常の業務遂行において法令・社内規程等を遵守することはもとより、社会倫理を尊重し、この規範に定める事項を誠実に実施しなければならないとしております。特に、職場内の優位性を背景にした精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為であるパワーハラスメントや、性的嫌がらせであるセクシャルハラスメント、差別的行為、インサイダー取引、個人情報保護を含む情報セキュリティなどについては、適時適切に社員教育及び注意喚起を実施しております。

 

(3)新規事業に関するリスク

 当社グループにおいて、マンション周辺事業や総合不動産事業を担う子会社12社の拡大・充実にあたって新規事業への進出を図る際、これを取り巻く事業環境が当初の思惑から変化することやその他予見できない事象が生じた場合、それらの影響により投資の回収に至らず固定資産の減損損失や棚卸資産の評価損が発生する可能性があります。

 その対応策として、当社グループは子会社が新たな事業を行う際には、その重要性に応じてエスリード株式会社における取締役会の承認も必要であるとする規程を整備・運用しており、当社グループ全体における業務の適正を確保するとともにリスクを適切に把握したうえで投資判断を行うことができるよう努めております。

 

(4)不動産販売事業に関するリスク

 当社グループの主力事業である不動産販売事業は、景気動向、金利動向、新規供給物件動向、不動産販売価格動向、住宅税制等の影響を受けやすいため、景気見通しの悪化や大幅な金利の上昇、あるいは供給過剰による販売価格の下落の発生等の諸情勢に変化があった場合には、購買者のマンション購入意欲を減退させる可能性があり、その場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、上記経済情勢の変化は、事業用地の購入代金、建築費等の変動要因ともなり、これらが上昇した場合には、当社グループの事業利益が圧迫され、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

① 開発用地の取得について

 開発用地の取得にあたり、新規供給物件の動向や不動産販売価格の動向、将来の景気見通し、宿泊事業など他の業界の活性化などからくる用地取得競争によって用地価格が高騰した場合、当社グループの事業利益が圧迫され、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
 その対応策として、用地取得前のマーケティング調査により開発用地エリアの需給バランスや適正価格水準等を詳細に検討するなど、適切な価格での開発用地取得が可能となるよう努めております。

 

② 建築工事について

 当社グループは、多くの建築工事を外注していることから、工事中の事故、外注先の倒産や請負契約の不履行、その他予期せぬ事象が発生した場合、工事の中止又は遅延、建築コストの上昇等が生じる可能性があります。

 その対応策として、品質維持及び工期遅延防止のため、当社の設計室が定期的に現場監理を行い、外注先との定例会議を随時開催し、施工図及び工期スケジュール等の確認を行い、リスクの適時適切な把握に努めております。また、関連法令の改正等についても当社設計室やリスク管理委員会等により適時に情報収集を行っております。さらに、外注先の選定にあたっては品質、建築工期及びコスト等を勘案して決定しており、特定の外注先に依存しないように努めております。

 

③ 販売活動について

 販売活動は、景気動向や金利動向、住宅税制等の諸情勢の変化の影響を受けやすいため、景気見通しの悪化や大幅な金利の上昇があった場合には、お客様のマンション購入意欲が減退してしまう可能性があります。特に、外的要因等により住宅ローン審査が厳格化した場合、更なる購入意欲の減退が懸念されます。

 その対応策として、発売物件を無理なく完売できるだけの営業社員を採用・教育するとともに、良質な開発用地の取得からマンション竣工に至るまでの品質管理を徹底することで、契約数の維持向上に努めております。

 

④ 販売エリアについて

 マンション市場の販売環境は、地域間によってある程度の格差があるため、当社グループのマンションプロジェクトが集中している近畿圏や東海圏のマンション市場の販売環境が他のエリアに比べて著しく悪化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、マンションの適切な維持管理に加えてマンションのみならず多様化する社会のニーズに適合した新たなサービスを提供することで、収益源の多角化を推進しております。

 

⑤ 金利動向について

 金利動向については、「③ 販売活動について」で示したリスクに加え、開発用地の取得資金を主として金融機関からの借入金により調達しており、他業種に比べて有利子負債への依存度が高い水準になりやすいことから、金利水準が上昇した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、事業用地の取得から物件の竣工まで約2年程度と比較的長期間にわたる資金回収が前提となっていることから、その影響は比較的長期間にわたる可能性があります。

 その対応策として、マンションプロジェクトの始まりである開発用地の取得段階においては金融機関からの借入を前提としていますが、他社との競争優位性を堅持するべく、迅速な意思決定で手許資金による用地取得が可能となるよう一定以上の資金水準を保ちつつ、マンション引渡による資金回収については、従来の竣工後即引渡のビジネスモデルから、物件の特性を把握したうえで、物件ごとに保有期間をコントロールしながら適切な時期に販売するとともに、販売方法として個別分譲、一棟販売を的確に見極めることによって利益を最大化させるビジネスモデルへの転換を図ることで、建築コストや金利分を含めたマンションプロジェクトの資金回収を当該マンションに係る事業利益で賄うことを前提とした健全な財務体質を追求しております。

 当社グループ全体においては、新規事業をはじめ様々な事業拡大に向けた積極的かつ機動的な意思決定を行うべく一定以上の資金水準を維持することとしており、余剰資金は必要に応じてグループ間融資を行うなど、グループ資金マネジメントによる効率的な活用に努めております。

 

⑥ 資産価値の下落による影響について

 今後の景気動向や不動産市況の悪化等により、当社グループ保有の棚卸資産の資産価値が低下した場合は、棚卸資産の簿価切り下げ処理が適用され、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、当社グループは、「① 開発用地の取得について」「② 建築工事について」「③ 販売活動について」で示したように適切な事前調査とプロジェクト審査を経たうえで、マンション竣工に至るまで徹底した品質管理を行うことで、景気の動向や不動産市況の悪化など外部要因リスクにも耐えうるよう資産価値の維持向上に努めております。

 

(5)重要な訴訟に関するリスク

 当社グループは、開発用地の取得、建築工事請負契約、お客様との分譲マンションの販売契約、その他さまざまな契約を締結しております。契約書の内容の不備、契約不履行、契約の取消や契約の無効、その他の苦情などのトラブルが訴訟に発展するおそれがあり、重要な訴訟が提起された場合には、訴訟費用の発生や損害賠償金の支払いなどの損失が生じる可能性があります。

 その対応策として、契約の相手先からの苦情、クレーム、その他さまざまなトラブルについては、お客様相談室、総務部及び担当部署において対応をしており、お客様の声に迅速かつ適切に対応できる体制を整えております。また、クレーム台帳は全社分を総務部で一元管理して社内研修等で活用し、再発防止に努めています。

 

(6)情報漏洩・セキュリティに関するリスク

 当社グループはマンション・戸建住宅をご購入いただいたお客様、もしくはご検討いただいたお客様、並びにマンション管理業務・電力管理業務等における区分所有者等の重要な個人情報をお預かりしており、「個人情報の保護に関する法律」に定められる個人情報取扱事業者に該当します。

 サイバー攻撃や不正アクセス等により当社のシステムが正常に利用できない場合や個人情報漏洩が発生した場合は、当社グループの営業活動や業務処理の遅延、信用失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償請求など当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、当社グループとしましては、個人情報管理に関する基本的な方針を「プライバシーポリシー(個人情報保護方針)」として定めるとともに、個人情報の取扱に関するルール(規程・細則)を設け、体制整備を行い、社内研修等を通じて全従業員の意識を徹底させております。

 また、システム上においては、個人情報のファイル保管の厳重化、社内ネットワークの常時監視及び異常の検知、適切な権限に基づくアクセスコントロールを行っており、個人情報以外の情報の取扱いも含めて情報管理全般にわたる体制強化を図っております。

 そして、万一の情報漏洩等の事故発生に備え、サイバー保険を付保しております。

 

 

(7)気候変動に関するリスク

 気候変動によって慢性的な気温上昇や急性的な自然災害の激甚化などが発生した場合、進行中のマンションプロジェクト建設現場やその他当社グループの管理・保有する物件等において物理的・人的な損害を受ける可能性があります。また、気候変動への対策として低炭素社会へ移行していく過程において、消費者の嗜好の変化による売上の減少や、環境問題に関する法令規制の強化によるコストの増加等が生じた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示を行い、将来的な気候変動が事業にもたらすリスクと機会に関するシナリオ分析や戦略策定等を行っております。戦略の進捗についてはリスク管理委員会においてモニタリングを実施し、必要に応じて見直しを行う体制を構築しております。

 

(8)感染症や疫病の拡大に関するリスク

 新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症や疫病(以下、「感染症等」という。)の拡大が発生した場合に、当社の事業活動全体を停止若しくは休止せざるを得なくなる可能性があります。また、建築工事の外注先等の当社取引先の事業活動の停止や、顧客との対面販売の機会の減少などにより、売上高及び利益水準が低下する可能性があります。

 その対応策として、当社グループは、感染症等に対し、平常時からの対策、感染症等拡大時の体制、対応、行動基準等の必要な事項を定めることにより、社員の安全及び事業の継続を確保しております。また、取引先と緊密に連携し工期に遅れが生じないよう計画的に行動すること、オンラインでの商談に対応できる体制を整え販売活動の機会を確保することなどで、当社グループの経営成績への影響の抑制に努めております。

 

(9)大規模地震や気候変動などの自然災害等に関するリスク

 大規模地震や気候変動などの自然災害等(以下、「地震等」という。)が発生した場合に、進行中のマンションプロジェクト建設現場やその他当社グループの管理・保有する物件等において物理的・人的な損害を受ける可能性があり、また、社会インフラの機能不全やこれに伴う経済環境の悪化も想定され、そのような場合には当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、当社グループは、地震等に対し、平常時からの対策、地震等発生時の体制、対応、行動基準等の必要な事項を定めることにより、当社グループの地震等による人的・物的被害を最小限にとどめ、社員の安全及び事業の継続を確保するとともに、地震等発生後の復旧活動を迅速に行うことを目的として事業継続計画(BCP)及び各状況に応じたマニュアルを策定しております。

 

(10)法的規制に関するリスク

 当社グループが事業活動を行うにあたり、「宅地建物取引業法」、「国土利用計画法」、「建築基準法」、「都市計画法」、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」、「建設業法」などの法的規制があります。これらの法規制に基づき、不動産販売、不動産賃貸、不動産管理、マンションの建設等の事業を行っており、規制の改廃や新たな法的規制が設けられる場合に、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 その対応策として、当社グループは、各種業界団体へ加入するとともに、同団体主催の研修会に参加するなどして事前に業界動向の把握や規制の改廃その他新たな法的規制等についての情報収集に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、円安が続く為替状況とそれに伴う物価上昇、地政学的リスクの高まりによる原材料価格の高騰、米国の通商政策等に注視が必要な状況が継続しているものの、雇用・所得環境の改善や高い水準にある企業収益などの要因により、緩やかな回復基調で推移しました。

 当社グループの属する不動産業界においては、インバウンド需要の回復や円安の長期化を背景に、国内外の投資家の投資意欲は依然として底堅く、また、住宅市場は政府による継続的な各種支援制度等により横ばいの範囲で推移しております。一方、用地取得原価・建築原価の上昇が見込まれることから、当社は物件の特性を把握したうえで、物件ごとに保有期間をコントロールしながら適切な時期に販売するとともに、販売方法として個別分譲、一棟販売を的確に見極めることによって利益を最大化させるビジネスモデルへの転換を図ってまいります。

 

 当社グループは、創業当初のマンション専業体制から事業領域を着実に広げ、現在では「真の総合不動産会社」としての確かな基盤を築いております。その取り組みとして、マンション事業以外に、大阪・関西万博(Expo 2025 Osaka)のシンガポールパビリオン建設、ラウンドワン三宮駅前店取得、冷凍冷蔵倉庫開発、ヘルスケア関連施設開発、ホテル開発、オフィスビル取得を手掛けるなど、商業・事業施設事業や総合建設業など多岐にわたる事業を展開してまいりました。今後も新たな事業領域に積極的に挑戦し、総合不動産会社としての使命を果たしてまいります。

 

 これらの結果、当社は創業以来最高の売上高・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益を達成しました。連結売上高は947億65百万円(前期比18.0%増)、連結営業利益は145億48百万円(前期比25.1%増)、連結経常利益は137億48百万円(前期比21.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は93億30百万円(前期比24.1%増)となりました。

 当社グループは、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標として経常利益を採用しています。当連結会計年度における経常利益の実績は137億48百万円となり、期初に公表した業績予想の137億円を上回ることができました。

 

② セグメント別販売実績

(1)不動産販売事業
 不動産販売事業の中でもマンション分譲事業においては、底堅い住宅需要に加え、従来の個人・法人顧客に加えて国内外の機関投資家など充実した出口戦略等により、マンションの販売・引渡が好調に推移した結果、外部顧客への売上高657億10百万円(前期比10.4%増)、セグメント利益は114億51百万円(前期比12.4%増)となりました。

(2)その他事業

 既存のマンション周辺事業においては、外部顧客への売上高は290億55百万円(前期比40.1%増)、セグメント利益は53億56百万円(前期比51.0%増)となりました。

③ 不動産販売事業における販売実績

 最近2連結会計年度の不動産販売事業の販売実績は次のとおりであります。

区分

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

物件名

引渡戸数

金額(千円)

物件名

引渡戸数

金額(千円)

中高層住宅

エスリード大阪リエート

153

2,721,249

エスリード神戸三宮ヒルズ

172

3,676,389

ファステート難波デラックス

168

2,681,753

エスリード神戸兵庫駅ミッドポート

189

3,207,254

エスリード新栄グラティア

144

2,615,886

エスリードレジデンス大阪福島シティウエスト

196

3,098,000

エスリード箕面船場阪大前

43

2,487,587

エスリードレジデンスグラン神戸三宮シティ

112

2,590,000

エスリード大阪プライムゲート

144

2,429,495

ファステート名古屋駅前アルティス

126

2,396,535

エスリードレジデンス大阪難波

140

2,370,000

エスリード新大阪ラヴァーグ

126

2,288,944

エスリードレジデンス大阪天王寺

126

2,320,000

レジデンシャル御堂筋あびこ

53

2,111,000

エスリード住吉公園グラース

54

2,171,272

アドバンス神戸マーレ

149

2,104,123

エスリード大阪デュアルゲート

119

2,092,624

エスリードレジデンス大阪桜ノ宮

119

2,050,000

エスリード住道ザ・プレイス

48

2,080,444

サンメゾンなかもず駅前Ⅱ

47

2,049,970

その他

1,505

28,042,738

その他

1,883

36,376,980

小計

2,644

52,013,053

小計

3,172

61,949,198

 中古マンション

63

1,175,454

 中古マンション

55

1,050,263

 学生寮

154

2,325,000

 学生寮

土地建物

 土地建物

2,456,634

 土地建物

1,082,114

その他

1,824,312

2,697,507

 

合計

59,794,455

合計

66,779,084

(注)区分「その他」は一部の棚卸資産から収受した賃貸料収入等であります。

④ 不動産販売事業における契約実績

 最近2連結会計年度の不動産販売事業の契約実績は次のとおりであります。

区分

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

期中契約高

期末契約残高

期中契約高

期末契約残高

戸数

金額(千円)

戸数

金額(千円)

戸数

金額(千円)

戸数

金額(千円)

中高層住宅

3,220

65,863,120

2,698

53,059,748

2,986

59,611,086

2,457

49,671,373

土地建物

2,456,634

4,003,694

2,921,580

3,220

68,319,754

2,698

53,059,748

2,986

63,614,780

2,457

52,592,953

 

⑤ 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて580億75百万円増加して2,270億29百万円となりました。これは主に販売用不動産の増加250億84百万円、仕掛販売用不動産の増加167億25百万円、現金及び預金の増加150億2百万円によるものです。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて514億88百万円増加して1,535億69百万円となりました。これは主に長期借入金の増加386億70百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加142億90百万円によるものです。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて65億87百万円増加して734億60百万円となりました。この結果、自己資本比率は32.4%となりました。

 

⑥ キャッシュ・フローの状況

(1)キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ148億51百万円増加し、当連結会計年度末には305億68百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果減少した資金は354億40百万円(前年同期は322億13百万円の減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益137億48百万円、棚卸資産の増加418億9百万円、法人税等の支払額39億7百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は10億47百万円(前年同期は6億3百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出8億54百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果増加した資金は513億39百万円(前年同期は225億6百万円の増加)となりました。これは主に長期借入れによる収入821億88百万円、長期借入金の返済による支出292億27百万円によるものです。

 

(2)キャッシュ・フロー指標の推移

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率

44.9%

39.6%

32.4%

時価ベースの自己資本比率

25.0%

32.3%

28.1%

キャッシュ・フロー対
有利子負債比率

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(注)各指標の基準は以下のとおりであります。いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

1)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3)営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

4)各期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率とインタレスト・カバレッジ・レシオにつきましては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(1) 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績

「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

(2) 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(1)当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ⑥ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(2) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性

(契約債務)

 2025年3月31日現在の契約債務の概要は次のとおりであります。

 

年度別要支払額(千円)

 

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

4,010,000

4,010,000

社債

1,500,000

1,000,000

500,000

長期借入金

134,137,175

32,577,416

77,641,761

16,382,974

7,535,024

リース債務

1,228,596

138,889

258,729

228,376

602,601

その他有利子負債

(支払委託)

880,045

451,666

428,378

合計

141,755,816

37,177,971

79,328,868

17,111,350

8,137,625

 上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

 

(財務政策)

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、不動産販売事業における事業用地の取得を目的とした資金であります。事業用地は、その取得から物件の竣工まで約2年程度と比較的長期間にわたる資金回収が前提となっております。このような中でマンションプロジェクトの始まりである開発用地の取得段階においては金融機関からの借入を前提としつつも、迅速な意思決定によって同業他社との競争優位を図るべく手許資金での用地取得が可能となるよう一定以上の資金水準を保っております。当該資金のうち、借入による資金調達に関しましては、主として変動金利の長期借入金で調達しております。

 また、マンション引渡による資金回収については、従来の竣工後即引渡のビジネスモデルから、物件の特性を把握したうえで、物件ごとに保有期間をコントロールしながら適切な時期に販売するとともに、販売方法として個別分譲、一棟販売を的確に見極めることによって利益を最大化させるビジネスモデルへの転換を図ってまいります。

 当社グループ全体においては、新規事業をはじめ様々な事業拡大に向けた積極的かつ機動的な意思決定を行うべく一定以上の資金水準を維持することとしており、余剰資金は必要に応じてグループ間融資を行うなど、グループ資金マネジメントによる効率的な活用に努めています。

 株主還元については、企業価値の向上に応じて配当総額を持続的に高めることを基本方針としており、成長投資や必要な手許資金を考慮したうえで決定しています。

 なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は305億68百万円であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

5【重要な契約等】

(重要な契約)

 2012年2月23日付で森トラスト株式会社との間で、資本業務提携契約を締結しております。当社と森トラスト株式会社は、本提携を通じて、当社と同社が相互に経営ノウハウを提供することにより、国内におけるマンションの企画・開発・販売等を協力して推進し、両社の企業価値向上を図ることを目的としております。

 

(財務上の特約が付された金銭消費貸借契約)

 当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結しております。

 契約に関する内容等は、以下のとおりであります。

 ①提出会社

契約締結日

契約相手の属性

当連結会計年度末の債務残

(千円)

弁済期限

当該債務に付された担保の内容

財務上の特約

資本合計

損益

2020年9月25日

地方銀行

492,000

2045年9月30日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における単体の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における単体貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2事業年度連続して経常損失とならない。

2023年12月28日

地方銀行他(シンジケート団)

7,800,000

2028年12月29日

なし

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して経常損失とならない。

2024年8月27日

地方銀行

490,000

2027年8月27日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して営業損失とならない。

2024年10月4日

地方銀行

313,000

2026年12月31日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して経常損失とならない。

 

 

契約締結日

契約相手の属性

当連結会計年度末の債務残

(千円)

弁済期限

当該債務に付された担保の内容

財務上の特約

資本合計

損益

2024年11月22日

地方銀行

2,000,000

2029年11月30日

なし

2連結会計年度連続して営業損失とならない。

2025年2月13日

都市銀行

2,390,400

2028年2月29日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して経常損失とならない。

2025年2月28日

地方銀行他(シンジケート団)

2,600,000

2030年2月28日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して経常損失とならない。

2025年3月28日

都市銀行他(シンジケート団)

6,599,000

2026年9月30日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して経常損失とならない。

 

 

   ②連結子会社

名称

住所

代表者の氏名

契約
締結日

契約相手の属性

当連結会計年度末の債務残

(千円)

弁済期限

当該債務に付された担保の内容

財務上の特約

資本合計

損益

綜電㈱

大阪市北区

黒川博志

2023年
3月30日

地方銀行

859,150

2037年
2月27日

抵当権

売上債権譲渡担保

融資期間の各事業年度末日における単体の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、融資期間直前の期末の80%以上かつ前事業年度末の80%以上に維持すること。

2事業年度連続して経常損失とならない。

エスリード賃貸㈱

大阪市北区

中澤博司

2024年
3月29日

都市銀行

418,576

2029年
3月31日

抵当権仮登記

融資期間の各事業年度末日における連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、直近の事業年度末日又は融資期間直前の期末における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額のいずれか大きい方の75%に相当する金額以上に維持すること。

2連結会計年度連続して経常損失とならない。

 

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。