第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1) 経営方針

当社では外部環境を分析しつつ、付加価値を高めることのできる素材としての不動産を取得した上で、周囲の状況や経済の状態に応じた最高レベルの企画を施し、最も高い価値を実現できる方法で「作品」を提供することを経営方針としております。

(2) 経営上の目標

目標とする経営指標といたしましては、引き続き強固な財務基盤の確立のため、自己資本比率40%以上の安定した資本確保を継続するべく、努力してまいります。

(3) 中長期的な経営戦略

当社は、分譲開発事業、賃貸開発事業、バリューアップ事業の3つの事業をバランス良く組み合わせることで事業展開を図ってまいります。

分譲開発事業では、首都圏エリアを中心に当社の強みである企画力やデザイン力を活かした分譲マンションを開発し、単身層やパワーカップルを対象とした魅力あるマンションを販売します。

賃貸開発事業では、首都圏エリアにおいて、駅近の利便性の高いマンション用地の取得を目指します。当該土地で中規模かつ中低層のRC(鉄筋コンクリート)造の賃貸マンションの開発を行います。マンションに当社のデザインを活かした、ハイセンスな賃貸マンションを国内外の富裕層や投資ファンドを中心に提供します。

バリューアップ事業は、首都圏エリアを中心に3億円~10億円程度の中古の収益ビル等を取得し、年数が経過したことにより外観や設備が経年劣化した不動産に効率的に改修を行ったり、築年の浅い物件においても、賃料の見直しや居住率のアップを目的としてリーシングを行ったりすることにより収益性を向上させ、既存の建物の付加価値を高め、新たな価値を生み出すビジネスです。国内外の富裕層を中心に売却を実施します。物件価格に応じた改修工事やリーシングを実施することで効果的に付加価値を高め、短期間での売却及び資金回収を図ります。

また、上記の施策等により、事業拡大に伴う資産の増加と自己資本の規模とのバランスを考慮しながら、安定的な財務基盤の確立を目指します。

(4) 経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

地価及び建築費が共に上昇しており、新築マンションの販売価格は一段と上昇する可能性があります。物価の上昇や金融当局による利上げの動き等から金利上昇に伴う需要低下懸念はあるものの、供給が抑制されていることや販売価格の先高感等から、需要は底堅く推移することが見込まれます。

当社としましては、これまでと同様に首都圏エリアにおける駅近等の利便性の高いレジデンス物件を中心に仕入れを行い、分譲開発物件については単身層やパワーカップルを主たる顧客ターゲットとして捉えると共に、賃貸開発物件やバリューアップ物件については国内外の富裕層や投資ファンドを主たる顧客ターゲットとして事業展開を図る方針です。

物件取得に関しては立地や価格に関して、売却想定価格を意識しつつ、より厳選した物件の取得を進めてまいります。

また、今後の不動産市況の様々な変化にも対応できるように、借入金の過度な増加を抑制すると共に収益拡大を図ることで自己資本比率を高め、財務基盤の強化を図ってまいります。併せて、事業環境に応じて多様な資金調達方法を模索してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は持続可能な社会環境づくりのため、当社のありたい姿を描き、新たにサステナビリティ基本方針を「洗練された作品を残し続ける、元気な総合不動産ディベロッパー」と定めました。従業員の成長を重視し、都心部における経済・社会・環境に応じた自由な創造デザイン力を武器に、すべてのステークホルダーの皆様を笑顔にし、成長し続ける企業を目指します。

 

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当社ではステークホルダーを従業員、お客様、株主、協力会社、地域社会の5つと定めており、各ステークホルダーに対し、以下のように考えております。

 

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•従業員:人材を人財と捉え、当社の求められる人物像「プロパストイズム」に共感し、会社と共に個の成長も促します。

 

•お客様:お客様との適切な距離感を大事にしており、お客様にプロパストの「ファン」になっていただき、魅力的な作品を提供することでファンを増やします。

 

•株主:非財務情報は昨今の情勢から可能な限り開示を行うべきと考えており、企業の透明性、公平性、持続可能性を高め、株主に継続した適切な配当を実施してまいります。

 

•協力会社:ゼネコンから設計事務所、広告代理店、設備業者まで数多くのパートナー様と「ワンチーム」で取り組みます。

 

•地域社会:市場動向、土地の特性、地域性、周辺環境とのバランスを考え、プロジェクト毎に自由な発想で環境、健康、安全に配慮した素材の提案を行い、空間デザインを提供します。

 

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1.E(環境:Environment)

環境にやさしい都市開発の推進

 

主なサステナビリティプログラム

•省エネ性能の向上を図る取り組み

•ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)マンションの開発

 

2.S(社会:Social)

多様な人財の活躍を支える職場環境の整備

 

主なサステナビリティプログラム

•プロパスト研修制度(カフェテリアプラン)

•次世代リーダー育成プログラムの構築

•報奨金制度の充実

•宅地建物取引士資格取得支援制度

•リファーラルリクルーティング(社員紹介制度)の活用

•慰安と親睦の場(全国懇親会、国内外ホテル視察、意見交換会、社内打合せ等)

•ベビーシッター派遣利用支援制度の導入

 

3.G(ガバナンス:Governance)

企業価値を高める持続的なガバナンス体制およびリスクマネジメントの強化

 

主なサステナビリティプログラム

•全役職員へのコンプライアンス意識の徹底浸透

•コンプライアンスおよび法令遵守の強化

 

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社は、サステナビリティに関連するリスクおよび機会を適切に監視・管理するため、2023年6月12日付の取締役会決議により「サステナビリティ委員会」を設置し、ガバナンス体制の強化を図っております。これは、ダイバーシティ&インクルージョンなどの人的資本を含む、持続的な企業価値向上に向けたサステナビリティ経営の実現に資するものです。

 

①体制・手続

サステナビリティ委員会は、年2回以上行われ、下記の事項を検討の上、決議します。

1) サステナビリティ経営方針の策定

2) 重要なサステナビリティ課題(マテリアリティ)特定および見直し

3) マテリアリティに対応するサステナビリティプログラムの策定・管理

以上の決議された事項の内、重要なものについては取締役会へ報告することになっており、取締役会による監督・モニタリングが行われる体制としております。

サステナビリティ委員会では、各マテリアリティに対応したプログラムの進捗について、関係部署からの報告を受けて定期的にモニタリングを行い、必要に応じて助言・勧告等を実施。重大な課題が認められる場合は取締役会に報告します。

②方針の浸透と運用

抽出されたマテリアリティに基づき、目標の設定、具体的な対応方針の策定、進捗の管理、情報開示を進めております。あわせて、サステナビリティに関する当社の考え方や具体的取組内容について、従業員への周知・浸透活動を推進し、全社的な理解と実行力の向上を図っております。

 

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(2)戦略

当社は競争力の源となる要素を「タクティクス」と総称しており、当社の従業員それぞれが体現すべき「解析力」、「創造デザイン力」、「高品質実現力」、「プレゼンデザイン力」、「建築監理・アフター対応力」の5つを「プロパストイズム」と定義しております。

当社の人財育成方針は、当該「プロパストイズム」を体現できる従業員を育成するため、社内プログラムを充実させてまいります。また、従業員のモチベーションを持続させるため、当社では働きがいと働きやすさの両方の観点から各種施策を設けております。

 

①求められる人物像「プロパストイズム」

当社従業員が「プロパストイズム」を体現するために必要となる5つの要素「タクティクス」はそれぞれ次のとおりです。

プロパストイズムを体現できる従業員を育成することで、ありたい姿を実現し、持続可能な社会に貢献してまいります。

 

(ア)解析力:順序、進め方、趣旨に拘りを持ちすぎない

(情報整理とスピーディな判断)

•データベースによる情報共有化(地域特性、購買者層、周辺の物件状況、法令の改正等)

•仕入交渉は、経営会議で迅速な意思決定実施

•仕入れの進捗情報を社内メール等で全員が把握する事で、物件毎の交渉方法を認識共有化

 

(イ)創造デザイン力:お客様を笑顔にする最適解を見つけ出す

(同じ物は創らない、コンセプトから派生する無限の空間デザイン)

•同じ物は創らず、市場動向、土地の特性、地域性、周辺環境とのバランスを考え、プロジェクト毎に独立

した「コンセプト」による空間デザインを提供

•環境、健康、安全に配慮した素材、空間の提案実施

 

(ウ)高品質実現力:最適解を見出した後も、更なるお客様の満足度を向上させるため、細部にまでこだわる

(本質を見極める。唯一無二の存在が生まれる)

•デザイン性の追及にとどまらず、耐震性能、耐火性能、劣化対策、セキュリティー等、あらゆる品質面に独

自の基準を設定

•廊下や玄関に手摺を設置できる事前の下地補強や、フラットフロアの採用等高齢化対策を考慮した設計を実

 

(エ)プレゼンデザイン力:理屈だけでは決めきれない、最後は総合的な感覚で決める

(潜在意識まで問いかけるイメージ戦略)

•それぞれの物件の地域特性やコンセプトに相応しい個別のネーミングを設定

•照明、音響、香り、チェアの座り心地等細部まで空間に配慮した販売活動を実施

 

(オ)建築監理・アフター対応力:全員参加で取り組む

(完成度の高さはクレームの少なさに反映されている)

•プロジェクト管理を主導し、ゼネコンから設計事務所、広告代理店、設備業者まで数多くのパートナー様と

ワンチームで実施

 

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②社内環境整備

「働きがい」と「働きやすさ」の観点から、以下の施策を実施しております。働きがいとしては、経営理念に基づき、従業員に適切に報いるため、充実した報奨金制度を整えております。また「働きやすさ」としては、慰安と親睦も兼ねて、トップクラスのホテル等を視察し、従業員の感性を磨くことで最高レベルの「作品」をお客様に提供してまいります。

 

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(3)リスク管理

当社では、サステナビリティに関連するリスクを、従来の事業リスク管理の枠組みに組み込み、全社的なリスクマネジメント体制の中で一体的に管理しています。特に、コンプライアンスなどの中長期的な影響が想定される領域については、サステナビリティ委員会および取締役会を中心に、継続的なモニタリングと対応の高度化を図っています。

具体的には、サステナビリティ委員会で、サステナビリティプログラムの進捗状況について、推進部署へ報告を求める等サステナビリティプログラムの内容に応じた適切な手段により、定期的にモニタリングを行います。

その上で、前項のモニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて推進部署に助言勧告等を行うとともに、重大な懸念がある場合はこれを取締役会へ報告します。

 

①リスクの特定と評価

サステナビリティに関するリスクは、マテリアリティの特定・見直しプロセスにおいて網羅的に抽出されます。

重要度(事業への財務的影響、社会的影響、ステークホルダー関心度)および発生可能性の観点から評価を実施し、優先順位を定めています。

 

②リスク管理体制

サステナビリティに関して、重要なリスクはサステナビリティ委員会が所管し、経営戦略との整合性を踏まえた方針・対応を検討します。サステナビリティ委員会の議論内容の内、重要なものは取締役会に報告され、経営全体としてのリスク認識と対応に反映されます。また、リスクの性質に応じて、内部監査室、コンプライアンス委員会、法務部門等との連携体制を整備し、部門横断的な対応を推進します。

 

(4)指標及び目標

当社は、サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)に対し、適切なKPI(主要業績評価指標)および定量・定性の目標を設定し、進捗管理と改善を図っています。指標は、事業活動と密接に関連し、実効性ある改善行動につながることを重視して選定しています。これらは、取締役会およびサステナビリティ委員会を通じて定期的にモニタリングされ、継続的な改善につなげていきます。

 

1. 環境にやさしい都市開発の推進

• エネルギー消費性能評価:★1つ取得

• 断熱性能評価(家マーク):4つ取得

• ZEH基準を満たす不動産開発:年間1プロジェクト以上の実施

 

2. 多様な人財の活躍を支える職場環境の整備

• 慰安と親睦の実施:年2回以上

• 宅地建物取引士資格取得対象者に対する半年間の資格取得コースの実施:年1回

 

3. 企業価値を高める持続的なガバナンス体制およびリスクマネジメントの強化

• コンプライアンスチェックテストの実施:年1回

• コンプライアンス委員会の開催:年1回以上

• プロパスト行動4原則に基づく自己評価の実施:年2回

 

3【事業等のリスク】

当社の事業内容その他に関するリスクについて、投資家の皆様の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家の皆様に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(特に重要なリスク)

(1) 経済状況及び不動産市況の影響について

当社は、分譲開発事業、賃貸開発事業及びバリューアップ事業を主に行なっておりますが、経済状況の悪化に伴う地価の下落や需要の低下及び金利水準の変動等が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため当社としては、定期的に景気動向・不動産市況等の状況について各種経済指標などの動向を確認すると共に、金融機関や同業他社等から情報を取集することで、エリア・規模・用途・物件特性に応じたマーケット観の醸成、投資判断力の強化等により、リスクの低減に努めております。

地価及び建築費が共に上昇しており、新築マンションの販売価格は一段と上昇する可能性があります。物価の上昇や海外の金融当局による利上げの動き等から金利上昇に伴う需要低下懸念はあるものの、供給が抑制されていることや販売価格の先高感等から、需要は底堅く推移することが見込まれます。

物件取得に関しては、立地や価格に関して、売却想定価格を意識しつつ、より厳選した物件の取得を図ることでリスク低減に努めております。

(2) 売上計上時期の集中及びそれに伴う収益発生時期の偏重リスクについて

当社は、物件の販売については顧客への引渡しを基準として売上計上を行なっております。そのため、引渡し時期によっては、ある特定時期に売上及び収益が偏重する可能性がある他、想定した売上及び収益が翌事業年度にずれ込む場合があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 販売用不動産等について

当社は、複数の販売用不動産を保有しておりますが、売却までの間の当該物件に対する買主及びテナントの需要動向の変化、並びに景気動向、金利動向及び地価動向の変化、更には不動産賃貸物件の賃料水準の低下及び空室率の上昇等により評価損や売却損が発生する可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 資金調達について

用地取得及び物件の取得資金や建築費等の資金調達においては、特定の金融機関に依存することなく、案件毎に金融機関に対して融資を打診し、融資実行を受けた後に各プロジェクトを進行させております。今後、新たに計画した資金調達が不調に終わった場合には、当社の業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(その他の重要なリスク)

(1) 法的規制について

当社が属する不動産業界は、国土利用計画法、宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法、住宅品質確保促進法等により、法的規制を受けております。当社は、不動産業者として、「宅地建物取引業法」に基づく免許を受けて、分譲開発事業、賃貸開発事業及びバリューアップ事業を行っております。今後、これらの規制の撤廃や新たな法的規制が設けられた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 免許登録について

当社の主要な事業活動の継続には、下表に掲げる免許・登録が前提になります。

宅地建物取引業免許につきましては、宅地建物取引業法第66条等に該当する場合に取り消されることがあります。また、宅地建物取引業法では、宅地建物取引士について一定人数を確保すること等の要件が、法律上要求されており、法定最低人数を欠く場合には免許や登録が取り消される可能性があります。一級建築士事務所登録については、建築士法第26条等に該当する場合、また、第二種金融商品取引業登録につきましては、金融商品取引法第52条等に該当する場合に、それらの登録を取り消される可能性があります。

 

免許・登録等の別

番号

有効期間

宅地建物取引業免許

東京都知事免許
(8)第61084号

2022年4月13日から
2027年4月12日まで

一級建築士事務所登録

東京都知事登録
第52707号

2021年10月25日から
2026年10月24日まで

第二種金融商品取引業登録

関東財務局長(金商)
第1675号

──────────

 

今後、これら免許・登録が取り消された場合、あるいは有効期間の更新ができなかった場合等には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 株式の希薄化について

当社は、取締役の会社業績の向上に対する意欲や士気を高めることを目的として、ストック・オプション制度を導入しております。今後、行使がなされた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

(4) 訴訟の可能性について

当社が開発又は販売している不動産については、取引先又は顧客等による訴訟その他の請求が発生する可能性があります。これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社の業績と財務内容に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 情報の漏洩について

当社は、多数のお客様の個人情報をお預かりしている他、様々な経営情報を保有しております。これらの情報の管理に関しては、社内の情報管理システムを強化すると共に、従業員等に対する教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底を図っております。しかし、これらの対策にも関わらず重要な情報が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用等に影響を与え、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 災害の発生及び地域偏在について

地震、暴風雨、洪水等の自然災害、戦争、暴動、テロ、火災等の人災が発生した場合、当社が所有する不動産の価値が著しく下落する可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が保有する不動産は、経済規模や顧客のニーズを考慮に入れ、東京を中心とする首都圏エリアが中心であり、当該地域における地震その他の災害、首都圏経済の悪化等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度のわが国経済は、緩やかに回復していますが、米国の通商政策等により不透明感がみられます。雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により、緩やかな回復が支えられることが期待される一方で、米国の通商政策の影響によって景気の下振れリスクも高まっております。また、物価上昇の継続が消費者マインドの低下を通じて個人消費に影響を及ぼす可能性もあり、これもわが国の景気を下押しするリスクとなっています。さらに、中東地域をめぐる情勢や金融資本市場の変動等の影響についても、より一層注意する必要があります。

個人消費については、消費者マインドが弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、持ち直しの動きがみられます。「家計調査」(4月)では、実質消費支出が前月比1.8%減となり、2カ月ぶりに前月水準を下回りました。一方で、消費者マインドを示す消費者態度指数(5月)は、前月比1.6ポイント上昇し、6か月ぶりの上昇となりました。「商業動態統計」によれば、小売業販売額(4月)は前月比0.5%増となりました。設備投資については、持ち直しの動きがみられます。「法人企業統計季報」(含むソフトウェア)では1~3月期が前期比1.6%増加し、4四半期連続での増加となりました。輸出に関しては、持ち直しの動きがみられます。アジア向け、アメリカ向けの輸出は、このところ持ち直しの動きがみられます。一方で、EU及びその他の地域向けの輸出は、おおむね横ばいで推移しております。

当社が属する不動産業界においては、弱含みの動きがみられます。先行指標となる新設住宅着工戸数は、2025年4月が季節調整済年率換算値で626,000戸となりました。4月は前月比42.0%減となり3カ月ぶりの減少に転じました。また、首都圏マンションの初月契約率は、5月に57.9%となり、好不況の分かれ目とされる70%を2カ月連続で下回っております。

このような状況の中、当社は、事業のリスク管理をより強化し、財務体質のさらなる健全化を図るため、在庫の削減や回転率を重視し、総資産圧縮に注力してまいりました。

賃貸開発事業及びバリューアップ事業においては、より厳選した新規物件の取得を行い、保有物件の積極的な売却を進めてまいりました。

この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

当事業年度末の資産合計は、前事業年度末と比較して1,705百万円減少し、30,182百万円となりました。

当事業年度末の負債合計は、前事業年度末と比較して3,433百万円減少し、18,007百万円となりました。

当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末と比較して1,728百万円増加し、12,175百万円となりました。

b.経営成績

当事業年度の経営成績は、売上高27,839百万円(前年同期比19.5%増)、営業利益3,334百万円(同9.1%増)、経常利益2,826百万円(同8.9%増)、当期純利益1,957百万円(同7.5%増)となりました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

分譲開発事業は、売上高はゼロ(前年同期は、売上高3,755百万円)、セグメント損失0百万円(前年同期は、セグメント利益443百万円)となりました。

賃貸開発事業は、売上高18,002百万円(前年同期比4.5%増)、セグメント利益3,278百万円(同7.0%減)となりました。

バリューアップ事業は、売上高9,824百万円(同323.5%増)、セグメント利益1,324百万円(同278.1%増)となりました。

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動により7,641百万円増加いたしました。また、投資活動において53百万円増加し、財務活動においては4,064百万円減少いたしました。この結果、資金は前事業年度末に比べて3,621百万円増加し、当事業年度末残高は6,568百万円(前事業年度末比122.9%増)となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

前年同期比
(%)

金額(百万円)

分譲開発事業

賃貸開発事業

18,002

104.5

バリューアップ事業

9,824

423.5

その他

11

合 計

27,839

119.5

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年6月1日

  至 2024年5月31日)

当事業年度

(自 2024年6月1日

  至 2025年5月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱BRI

3,064

13.1

いちごオーナーズ㈱

2,640

11.3

 

b.契約実績

当事業年度の契約実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

前年同期比
(%)

金額(百万円)

分譲開発事業

賃貸開発事業

19,711

132.6

バリューアップ事業

9,975

339.4

その他

13

合 計

29,700

166.8

 

c.契約残高

当事業年度末における契約残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度末

(2025年5月31日)

前年同期比
(%)

金額(百万円)

分譲開発事業

賃貸開発事業

5,971

145.0

バリューアップ事業

1,106

143.6

その他

1

合 計

7,079

144.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に関して適切な仮定の設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(流動資産)

当事業年度末における流動資産は、前事業年度末と比較して1,786百万円減少し、29,422百万円(前年同期比5.7%減)となりました。これは、在庫の販売を積極的に推進したことにより、現金及び預金が3,540百万円増加したものの、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて5,183百万円減少したことによるものであります。

(固定資産)

当事業年度末における固定資産は、前事業年度末と比較して81百万円増加し、759百万円(前年同期比12.0%増)となりました。これは主に、繰延税金資産が102百万円増加したことによるものであります。

(流動負債)

当事業年度末における流動負債は、前事業年度末と比較して166百万円減少し、11,769百万円(前年同期比1.4%減)となりました。これは主に、物件の契約による前受金が161百万円、未払法人税等が92百万円、その他の流動負債が98百万円増加したものの、物件の売却により、短期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が556百万円減少したことによるものであります。

(固定負債)

当事業年度末における固定負債は、前事業年度末と比較して3,266百万円減少し、6,238百万円(前年同期比34.4%減)となりました。これは主に、物件の売却を進めたことにより、長期借入金が3,268百万円減少したことによるものであります。

(純資産)

当事業年度末における純資産は、前事業年度末と比較して1,728百万円増加し、12,175百万円(前年同期比16.5%増)となりました。これは主に、当期純利益の計上等により繰越利益剰余金が1,821百万円増加したことによるものであります。

 

2)経営成績

(売上高、売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上高は、前事業年度と比較して4,537百万円増加し、27,839百万円(前年同期比19.5%増)となりました。

分譲開発事業の売上高は、売上計上する引渡物件がなく、ゼロとなりました(前年同期は、売上高3,755百万円)。

賃貸開発事業の売上高は、前事業年度と比較して776百万円増加し、18,002百万円(前年同期比4.5%増)となりました。

バリューアップ事業の売上高は、前事業年度と比較して7,504百万円増加し、9,824百万円(同323.5%増)となりました。

売上原価については、売上高や建築コストが増加したため、前事業年度と比較して4,174百万円増加し、22,753百万円(同22.5%増)となりました。

売上総利益については、売上原価が増加したため、前事業年度と比較して362百万円増加にとどまり、5,085百万円(同7.7%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は、前事業年度と比較して85百万円増加し、1,751百万円(前年同期比5.1%増)となりました。主な要因は、販売契約件数の増加により、仲介手数料等が増加したことによるものであります。

この結果、営業利益は、前事業年度と比較して277百万円増加し、3,334百万円(同9.1%増)となりました。

(営業外損益、経常利益)

営業外収益は、前事業年度と比較して1百万円減少し、27百万円(前年同期比4.0%減)となりました。主な要因としては、受取配当金が8百万円増加したものの、前事業年度にあった受取保険金9百万円がなくなったことによるものであります。営業外費用は、前事業年度と比較して44百万円増加し、535百万円(前年同期比9.1%増)となりました。主な要因としては、金利が上昇したことにより、支払利息が46百万円増加したことによるものであります。

この結果、経常利益は、前事業年度と比較して231百万円増加し、2,826百万円(同8.9%増)となりました。

(特別損益、当期純利益)

特別損失は、前事業年度と比較して4百万円増加し、4百万円(前年同期は0百万円)となりました。主な要因としては、本店の不要固定資産を除却したことによるものであります。

当期純利益は、税引前当期純利益が前事業年度と比較して212百万円増加したものの、法人税等合計が75百万円増加したことにより、前事業年度と比較して136百万円の増加となり、1,957百万円(同7.5%増)となりました。

 

3)キャッシュ・フロー

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動により7,641百万円増加しました。また、投資活動において53百万円増加し、財務活動においては4,064百万円減少しました。この結果、資金は前事業年度末に比べて3,621百万円増加し、当事業年度末残高は6,568百万円(前事業年度末比122.9%増)となりました

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は、7,641百万円(前年同期は1,882百万円の支出)となりました。主な要因は、税引前当期純利益として2,822百万円を獲得し、棚卸資産が5,184百万円減少したことに加えて、法人税等の支払いが877百万円発生したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により獲得した資金は、53百万円(前年同期は75百万円の獲得)となりました。主な要因は、定期預金の預入により133百万円の支出が発生したものの、定期預金の払戻により219百万円を獲得したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は、4,064百万円(前年同期は480百万円の支出)となりました。主な要因は、物件の取得に伴い、長期借入金及び短期借入金として新たに融資契約を締結したことにより、14,418百万円を獲得したものの、物件の売却や借入期間の終了などに伴い、長期借入金及び短期借入金を返済したことにより、18,241百万円の支出が発生したことによるものであります。

b.経営成績に重要な影響を与える要因についての分析

当社の経営に影響を与える大きな要因としては、3.事業等のリスクに記載のとおりであります。

c.資本の財源及び資金の流動性

当社の資金需要の主なものは、運転資金需要と販売用不動産の取得及び建築費に必要な資金等であります。運転資金については、内部資金を充当し、必要に応じて金融機関より短期借入金で調達を行っております。また、販売用不動産の取得及び建築費等については、金融機関より短期借入金及び長期借入金で調達を行っております。

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当事業年度末における自己資本比率は、前事業年度末と比べて7.6ポイント上昇し、40.1%となりました。

なお、当社は自己資本比率を重要な経営指標として位置づけており、引き続き自己資本比率40%以上の安定した資本確保を目指していく方針です。

収益の原資となる販売用不動産の取得については、厳選した上での取得に努めることで総資産の過度な増加を抑制すると共に、着実な利益確保により安定的に自己資本を高めてゆく所存です。

e.セグメント毎の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(分譲開発事業)

当事業年度の販売物件は、引渡物件がありませんでした。この結果、売上高はゼロとなりました(前年同期は、売上高3,755百万円)。しかしながら、当初賃貸開発事業として開発予定の物件を分譲開発事業へ変更するプロジェクトが発生したことから、セグメント損失0百万円(前年同期は、セグメント利益443百万円)となりました。

(単位:百万円)

 

2025年5月期

2024年5月期

増減率

売上高

3,755

セグメント利益又は損失(△)

△0

443

セグメント資産

376

(注)当事業年度は売上高がなく、セグメント損失を計上していることから、売上高及びセグメント利益又は損失それぞれの増減率を表示しておりません。セグメント資産につきましては、前事業年度末は分譲開発物件を完売引渡後、新たな物件の仕入れがなく、資産がありませんでした。

(賃貸開発事業)

当事業年度は、販売プロジェクト数は19プロジェクトと前事業年度と同数でしたが、物件の規模が若干大きくなった結果、売上高は前年同期比776百万円増加し、18,002百万円(前年同期比4.5%増)となりました。また、依然として高い収益性を維持しており、売却物件の地域優位性が評価されているものの、コスト高の影響により、前年同期比では収益性が低下したため、セグメント利益は3,278百万円(同7.0%減)となりました。セグメント資産については、保有物件の売却を積極的に推進すると共に、エリアや駅からの距離等を勘案の上、より厳選をして新規物件の取得を進めました。物件の取得よりも売却が多くなった結果、前事業年度と比較して580百万円減少し、20,604百万円(同2.7%減)となりました。

(単位:百万円)

 

2025年5月期

2024年5月期

増減率

売上高

18,002

17,226

4.5%

セグメント利益

3,278

3,524

△7.0%

セグメント資産

20,604

21,184

△2.7%

(バリューアップ事業)

当事業年度の売上高は、販売プロジェクト数が5プロジェクトから18プロジェクトへと増加したため、前年同期比7,504百万円増加し、9,824百万円(同323.5%増)となりました。セグメント利益については、売上高が増加したことから前年同期比974百万円増加し、1,324百万円(同278.1%増)となりました。セグメント資産については、保有物件の売却活動を積極的に推進したことから、前事業年度と比較して5,008百万円減少し、1,572百万円(同76.1%減)となりました。

(単位:百万円)

 

2025年5月期

2024年5月期

増減率

売上高

9,824

2,320

323.5%

セグメント利益

1,324

350

278.1%

セグメント資産

1,572

6,580

△76.1%

 

5【重要な契約等】

 財務上の特約の付されている借入に関する契約は以下のとおりであります。

 

財務上の特約が付された金銭消費貸借契約

借入先

契約締結日

期末残高

返済期日

担保の内容

財務制限条項※

地方銀行

2023年9月29日

800百万円

2026年2月27日

仕掛販売用不動産

要件1.3

地方銀行

2024年2月28日

470百万円

2026年3月31日

仕掛販売用不動産

要件1.4

都市銀行

2024年5月7日

790百万円

2026年6月30日

仕掛販売用不動産

要件2.3

都市銀行

2025年3月19日

520百万円

2028年2月26日

仕掛販売用不動産

要件2.3

※各金銭消費貸借契約に付された財務制限条項の特約要件は以下となります。

1.当社の貸借対照表について、事業年度末の純資産額が直前事業年度末の純資産額の75%以上を維持すること

2.当社の貸借対照表について、事業年度末の純資産額が直前事業年度末の純資産額の80%以上を維持すること

3.当社の損益計算書について、2期連続して経常損失を計上しないこと

4.当社の損益計算書について、各事業年度末に経常損失を計上しないこと

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。