当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「人々の安全で快適な『くらし』の提案を行い、豊かで健全な社会の実現を目指す」ことを企業理念としております。
この企業理念の下、都市型賃貸マンションの開発・1棟販売を中心とした事業活動を行い、事業を通して社会の発展とサステナビリティを巡る課題解決に寄与するとともに、持続的な成長と企業価値の向上を図ることにより、ステークホルダーに貢献することを経営の基本方針としております。
(2)経営戦略
当社グループは、東京23区をメインの開発エリアとした都市型賃貸マンションの開発・1棟販売及び東京・川崎・横浜の戸建・テラスハウス分譲及びアパート開発を基軸事業として、経営基盤を拡充し、安定的な収益の向上に努めてまいります。当社グループは物件ごとに地域性を重視した外観やエントランス、機能性を重視した居住空間をデザインし、購入する方と居住する方双方の満足を追求してまいります。
さらに、M&Aを活用した事業領域の拡大や、シルバー層向け住居やホテル開発にも市場動向を見極めながら取り組むとともに、他社との共同事業や提携、東京都心以外での開発も視野に入れ、持続的な成長を図ってまいります。
なお、ホテル事業につきましては、インバウンド及び国内旅行需要等の拡大により、客室稼働率と客室単価の向上を図り、事業収益の最大化に努めてまいります。
(3)経営環境
当社グループの基軸事業である都市型賃貸マンションの市場は、賃貸については、分譲マンションの高騰、未婚化の進行や高齢化による単身世帯の増加、各世代における単身者の都心再流入等により堅調に推移しており、都心の好立地で居住空間の充実した物件に関しては、今後さらに人気が高まるものと考えております。
また、実需については、企業による人員確保のための社宅需要や、若年層による将来の資産形成、富裕層の相続税対策に対応できる堅実な運用商品として、購入者層の拡大を見込んでおります。さらに、東京23区においては国内のファンドやリートに加え、円安等を背景とした海外投資家の購入意欲は依然として高いものと思われます。
このような要因により、急激な金利上昇が見込まれない状況においては、販売面での底堅さは維持されるものの、仕入面においては、都心好立地の用地購入で競合が続き、価格も高止まりしていること、さらに、昨今の建設資材の価格や人件費の高騰により、工事原価が上昇していることから、利益率の低下という問題に直面しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、安定的な収益を確保し、持続的な成長を図り、株主への利益還元を安定的に行うことを基本方針に、売上総利益率を重視しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、安定的な収益を確保し、持続的な成長を図るため、経営環境の変化に対応しつつ、以下の課題に取り組んでまいります。
① コンプライアンスとコーポレートガバナンス・コード遵守の経営
当社グループは、コンプライアンスとコーポレート・ガバナンスが、これからの企業経営において非常に重要であることを強く認識し、コンプライアンスを遵守した経営を推進いたします。また、不正を防止する内部統制システムの整備・充実を図るとともに、サステナビリティを巡る課題解決とコーポレート・ガバナンスの強化に努め、コーポレートガバナンス・コードの基本原則に基づく、健全で効率的な経営を行うよう一層の努力をしてまいります。
② 利益率の維持・向上のための競争力のある事業用地の取得
日本全体としては人口減少問題を抱えるなかで、大手不動産業者及び資金力のある開発業者等により、利便性の高い好立地の用地獲得競争は続くものと認識しております。
こうした状況の下で安定的な収益を確保するためには、更なる土地の選別と開発物件の差別化が最重要課題であると認識しております。
当社グループは、優秀な仕入要員の採用を進めるほか、新卒を含めた若手・中堅社員の育成に努めます。また、権利関係が複雑な都心の用地情報を収集・分析し、有効活用提案等を通じて権利関係を調整していく事業を拡充してまいります。
③ 販売先及び不動産開発販売事業の多様化
当社グループの基軸事業である都市型賃貸マンションの開発・1棟販売(卸売)は、土地価格の高止まりや建設資材及び人件費高騰等による建築コストの上昇に直面しております。
これに対応するため、従来からの卸先であるマンション販売会社だけではなく、国内外の投資家や相続税対策を含む様々な目的で不動産を購入する日本の富裕層、人員確保のための社宅や寮を必要とするようになった事業法人、シルバー層向け住居の運営業者等、多方面への販売チャネル確保に注力してまいります。
また、当社グループは、設立以来、販売先がレジデンス関連業者に限られていたこともあり、販売先の多様化を図る目的でホテル事業に参入し、2020年10月より自社保有ホテルを運営しております。
当社グループは、今後も他社との共同事業を含む不動産開発販売事業の多様化を図ってまいります。
④ 事業領域の拡大と持続的な成長に向けた取り組み
当社グループは、企業価値の向上と持続的成長を重要視しており、そのためには事業領域の拡大に取り組む必要があると認識しております。これに対応する一環として、2024年2月に株式会社ケーナインを子会社化し、東京南西部や川崎市・横浜市内における戸建・テラスハウス分譲事業や、アパートの開発事業をグループの基軸事業として取り込んでおります。これに伴い、シナジー効果も含めた新たな事業展開や優秀な人員確保による売上高・利益の持続的拡大が可能と認識しております。また、国内外の富裕層による旅行・レジャー需要は年々高まっていることから、北海道等の一部地域において、当社の強みを生かした宿泊施設等の開発事業にも取り組んでまいります。
当社グループは今後も、既存事業の拡大を図るとともに、M&Aを含めた新規事業への取り組みを進め、企業価値向上と持続的成長の実現を進めてまいります。
⑤ 財務体質の一層の強化
当社グループは、現在の世界情勢及び日本経済の動向を注視し、将来の大規模な経済変動に耐え得る企業であるためには、一層の企業価値の向上と、財務体質の強化が必要であると認識しております。
当社グループは、リーマンショックにおいて多くの不動産関連企業が破綻する中を耐え抜いた経験により、キャッシュポジションと担保物件の重要性を認識したことから、これまで公募増資や、新株予約権の発行、シンジケートローンによる資金調達等により財務体質の強化とキャッシュポジションの安定化に努めてまいりました。
当社グループは今後も、強固な財務体質の構築を推進してまいります。
⑥ 人的資本経営の充実と体制強化
当社グループは、これからの企業経営において人的資本経営が極めて重要と認識しており、価値創造の源泉として社員への投資を積極的に行っております。ここ数年で、新人事制度の制定に伴う給与の大幅アップや、従業員向け株式給付信託の創設、住宅補助制度や新オフィスへの移転による職場環境の充実、育児休暇や介護休暇などを含む休暇制度の改定、資格取得補助制度の改正等に取り組んでまいりました。
当社グループは引き続き、経営の根幹として社員を大事にしていくことで、持続的成長と企業価値の増大を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人々の安全で快適な『くらし』の提案を行い、豊かで健全な社会の実現を目指します」という企業理念のもと、サステナビリティ経営に取り組んで収益に結びつけ、事業活動を通じて、持続的な成長を目指しております。当社グループは持続可能な社会の実現に貢献するために、以下の「サステナビリティ基本方針」を2021年11月18日に制定しており、企業価値の向上を目指してまいります。
1.事業を通じたサステナビリティへの取り組み
事業活動を通じて環境をはじめ、貧困等の社会問題や、文化・芸術活動等の社会貢献活動に取り組みます。
2.ステークホルダーとの関係強化
お客様、取引先、株主、投資家、従業員、地域社会等すべてのステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通じて関係性を強化し、事業活動を通じて当社らしい価値を創造し、持続可能な社会の実現に取り組みます。
3.社会からの信頼の確立
コンプライアンスを遵守し、理想の住まいを開発・提供するとともに経営基盤を強化し、持続的な経済の発展に寄与することで、社会から高い信頼を得る経営に取り組みます。
(1)ガバナンス
当社グループは、上記の「サステナビリティ基本方針」に基づき、サステナビリティの視点を踏まえた経営を促進するため、2021年10月に「サステナビリティ委員会規程」を設け、この規程に従って「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ促進に関する体制を整備しております。本委員会は、当社管理本部長を委員長とし、委員長が選任した委員により構成され、当社グループのサステナビリティについての取り組み及び課題等について討議を行い、委員長が必要であると判断した事項は取締役会へ提言及び報告を行うこととしております。2025年6月期は、四半期ごとに4回開催され、サステナビリティに関する施策や進捗状況等について、2025年6月開催の定時取締役会にて報告を行っております。取締役会は、その提言及び報告を通じて、サステナビリティについての取り組み状況を監督しております。
(2)戦略
当社グループは、サステナビリティへの取り組みに関して、当社企業理念を鑑み、4項目の重点課題を設けております。なお、詳細につきましては、年1回(毎年6月)に発行している「サステナビリティレポート」(
① 理想の住まいの開発
主な取り組み事例として、定期的な居住者アンケートの実施・分析を踏まえた居住者スペースの絶えざる改善等を行っております。
② 芸術・美術活動への取り組み
主な取り組み事例として、若手芸術家の発掘・支援のため、美術・芸術を学ぶ学生限定の立体アートコンペ (アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション)を継続実施しております。
③ 環境等への取り組み
主な取り組み事例として、ZEH-Mマンション普及による脱炭素社会への貢献、アーバネット防災プログラムへの取り組みを通じた気候変動への対応等を行っております。
④ 魅力ある職場の実現
主な取り組み事例として、「健康優良法人2025」認定取得、各種研修体制の充実に取り組んでおります。
(3)リスク管理
当社グループは、事業環境を取り巻くリスク及びサステナビリティに関する機会に対応するため、事前の予防対策、緊急事態発生時の対応等について定めた「リスク管理規程」を制定し、リスク及び機会の識別・評価・管理を含むリスク管理体制を構築しております。また、管理本部長が委員長となり全本部長及び全部室長をメンバーとするリスク管理委員会を設置しております。同委員会は年間2回、定期的に開催しており、全社的なリスク及び機会の共有並びに対応等について協議しております。なお、特に、気候変動に係るリスク及び機会等のサステナビリティに関する事項につきましては、四半期ごとに開催されるサステナビリティ委員会にて協議後、取締役会に提言及び報告することでモニタリングが図られております。
(4)指標と目標
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係わる指標について、関連する指標のデータとともに、具体的な取り組みが行われているものの、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事業のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため、記載しておりません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済情勢の変動に係わるリスクについて
当社グループの主要事業である不動産開発販売事業は、景気動向・金利動向・不動産需要動向・住宅税制等各種税制の影響を受けやすく、景気の急速な悪化や大幅な金利上昇、需給悪化による販売価格の下落、住宅税制や建築基準法等の変更・改廃等によって、販売先の需要動向が変化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、金融市場の混迷及び先行き不透明感により、ローン構築の不成立や顧客購入意欲の低下の可能性があり、販売価格や保有不動産の評価を下げる必要がある等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当該リスクの対応策として、景気動向・金利動向等のモニタリング、販売先の財務状況管理、各種法令の改廃情報の取得等を十分に行った上で開発・販売計画を策定しており、建築確認が下りた開発物件は速やかに販売先を選定し、売買契約を締結するよう努めております。
なお、当社グループは東京・蒲田駅前にてホテルを運営しておりますが、景気が急速に悪化し、宿泊需要が低下したことにより、客室稼働率や客室料金の低下が起こった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)気候変動及び自然災害に係わるリスクについて
当社グループでは、開発エリアを主に東京23区及び川崎市、横浜市等としておりますが、従前から報告されている大地震発生のリスクに加え、ここ数年気候変動に起因すると思われる大型台風の直撃やゲリラ型豪雨が頻発する事例が発生しており、当社グループが開発途中の物件において、地盤への影響や建設中の建物の倒壊等のリスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、開発用地購入においてハザードマップの確認を義務づけており、建築途中の物件現場においては、作業員の安全に留意しつつ、台風や豪雨等の被害を最小限にとどめるよう必要な対策をいたしております。
(3)事業用地の仕入に係わるリスクについて
① 事業用地の取得について
当社グループでは、主に東京23区及び川崎市、横浜市等の利便性、人気とも高い事業用地を求めておりますが、他社との競合や価格の上昇等によって用地の取得が計画通りに行えない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの持続的な成長のためには、安定的な用地取得は不可欠であり、当該リスクの対応策として、既存情報取得先との関係強化及び新規情報取得先の開拓を行っております。
② 土壌汚染等によるリスクについて
当社グループは用地仕入に際し、土壌汚染・地中埋設物・埋蔵文化財・産業廃棄物の地中廃棄物等によるコスト排除を明確にするため、事前調査を徹底し、売買契約においても原則としてこれらのコストを売主負担としてまいりましたが、現在は開発用地獲得を優先する環境下のため、同コストは当社グループ負担となっており、想定外の土壌汚染問題等が発生した場合、処理費用が追加発生することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)特定取引先との取引集中に係わるリスクについて
① アウトソーシングに係わるリスクについて
当社グループは、都市型賃貸マンションにおいて、アウトソーシングを最大限活用した少人数体制を経営の基本方針としており、当連結会計年度においても、株式会社合田工務店への建築工事のアウトソーシングが集中しております。
当社グループと同社との取引関係に急激な変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当該リスクの対応策として、建築工事の新たなアウトソーシング先を開拓しており、過度な集中とならないよう努めてまいります。
② 販売先に係わるリスクについて
当社グループと開発物件の販売先は安定的な取引関係にあり、今後もその取引関係に急激な変化はないと考えておりますが、当社グループの主たる販売先に不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当該リスクの対応策として、マンション販売会社及び資産家やファンド等、多方面への販売チャネル確保に注力してまいります。
(5)販売に関連するリスクについて
① 販売用不動産の売却可能性について
当社グループの開発プロジェクトにおいて販売先との売買契約締結が長引いた場合、その間に不動産市況の急激な悪化等により売却可能性に問題が生じ、評価損の計上ひいては在庫が滞留するリスクがあります。
また、戸建やマンション、テラスハウス分譲事業、アパート事業においては、エンドユーザー向けの分譲となるため、景気の変動等により売却可能性に問題が生じ、評価損の計上ひいては在庫が滞留するリスクがあります。
都市型賃貸マンションに関しては不動産市況等を勘案しながら、用地購入から建築確認までの期間を短縮し、販売価格とのバランスを取りつつ販売先との売買契約を最短にするよう努力をしてまいります。
また、分譲マンションに関しましては、景気変動の可能性のある時期においての開発を抑制しております。
② 営業エリアに関連するリスクについて
当社グループでは、営業エリアを主に東京23区及び川崎市、横浜市等にしていることで、不動産需要の減少に対して相対的に影響を受けにくくなっておりますが、同地区においてテロ等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)固定資産の減損に関するリスクについて
当社グループは、不動産賃貸収益の獲得及び将来的な自社開発物件の確保を目的として、賃貸用不動産の保有及び効率的活用を進めておりますが、経済情勢や不動産市況の悪化により賃料水準の低下や空室率の上昇等、賃貸用不動産の収益性が低下した場合等には固定資産の簿価切下げに伴う損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは東京・蒲田駅前にホテルを保有しておりますが、感染症の再拡大や経済情勢の悪化等により、ホテルの稼働率や1室当たりの客室単価が低下した場合等には固定資産の簿価切下げに伴う損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループが保有・管理する賃貸用不動産及びホテルに関して、管理上の不備が発生した場合は、当社グループの信用の失墜、想定外の費用の発生等が生じ当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループでは、当該リスクの対応策として、万が一の不備や事故等に備え、損害保険を付保しております。
(7)借入金への依存に関連するリスクについて
① 金利の上昇リスクについて
当社グループは、事業資金を金融機関からの借入により調達しており、当連結会計年度末における総資産額に占める有利子負債の割合は、67.2%と高水準であります。
従いまして、金融情勢の変化により金利水準が上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 調達のリスクについて
当社グループは、用地仕入に際し、その資金を金融機関による間接金融に負っております。
金融機関の不動産融資の姿勢に変化が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、資金調達に際して、特定の金融機関に依存することなく、多数の金融機関と良好な関係を構築する一方で、新たな金融機関との新規取引による間接金融の拡大、エクイティ等の直接金融での資金調達を実施し、資金調達の円滑化と多様化に努めております。
(8)設計・建築工事について
当社グループは、都市型賃貸マンションにおいて、意匠設計及びプラン設計以外を設計事務所及び建設会社等にアウトソーシングしております。設計会社及び建設会社の選定から工程の進捗に至るまで、入念にアウトソーシング先の管理をしておりますが、アウトソーシング先の倒産や工事中の事故等が発生した場合に、工事の遅延・中止、また、海外紛争等によるサプライチェーンの混乱や円安、追加関税を起因とした建築資材価格の高騰及び人件費等の上昇に伴い、工事費用が上がっていくことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当該リスクの対応策として、アウトソーシング先の財務調査及び各種情報収集を継続的に行うとともに、工事の早期発注や建築資材の代替品の活用、調達先の多様化等を実施しております。
また、建築事業においては、協力会社の業績悪化等に伴う工事の遅延や中止により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)物件の引渡し時期について
当社グループの不動産開発販売事業において、売上計上は物件引渡しによって行われます。
このため、建設業界の慢性的な人手不足、働き方改革関連法の適用、天候不順、自然災害及び感染症蔓延等を原因とした工期遅延により、引渡時期が決算期を越えて遅延する場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
販売会社との売買契約につきましても、竣工引渡後原則4ヶ月後決済(ただし戸別決済に応じる)となっておりますことから、決算期に跨る売買契約における計上戸数については、販売会社の販売状況によっては、当社グループの当該決算期業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)人材確保について
当社グループは、事業用地の仕入・設計・施工監理・建築・自治体との調整及び近隣との調整や竣工マンションの1棟販売等、専門的な知識・経験及び資格が要求されることから、人材の獲得・育成が重要であると認識しております。しかしながら、優秀な人材の確保・育成が計画通りに進行しない場合、若しくは保有人材の流出が大規模に発生した場合は、当社グループの今後の事業運営及び事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(11)法的規制について
当社グループの事業は、「建設業法」・「建築士法」・「宅地建物取引業法」・「金融商品取引法」・「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」・「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」・「旅館業法」・「公衆浴場法」・「温泉法」等により、法的規制を受けております。
また、当社グループの事業においては、事業活動に際して、以下の免許、許認可等を受けております。当社グループは、これまでにこれら法的規制によって重大な影響を受けたことはありませんが、今後新たな規制の制定や改廃が行われた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後何らかの理由により免許等の取消・更新・欠格による失効等の事象が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障をきたすとともに、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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許認可等の名称 |
会社名 |
許認可番号等 有効期間 |
規制法令 |
免許取消 条項等 |
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一級建築士事務所登録 |
株式会社アーバネットコーポレーション |
東京都知事登録 第42424号 2022年9月10日 ~2027年9月9日 |
建築士法 |
第26条等 |
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株式会社ケーナイン |
東京都知事登録 第62947号 2024年2月20日 ~2029年2月19日 |
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宅地建物取引業者免許 |
株式会社アーバネットコーポレーション |
東京都知事 (6)第75706号 2022年10月18日 ~2027年10月17日 |
宅地建物取引業法 |
第66条等 |
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株式会社アーバネットリビング |
東京都知事 (3)第97760号 2025年4月25日 ~2030年4月24日 |
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株式会社ケーナイン |
東京都知事 (1)第111662号 2024年12月7日 ~2029年12月6日 |
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第二種金融商品取引業登録 |
株式会社アーバネットコーポレーション |
関東財務局長(金商)第1178号 |
金融商品取引法 |
第52条等 |
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マンション管理業者登録 |
株式会社アーバネットリビング |
国土交通大臣 (3)第034154号 2025年3月19日 ~2030年3月18日 |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 |
第83条等 |
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株式会社ケーナイン |
国土交通大臣 (1)第034608号 2022年3月10日 ~2027年3月9日 |
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賃貸住宅管理業者登録 |
株式会社アーバネットリビング |
国土交通大臣 (01)第001830号 2021年10月13日 ~2026年10月12日 |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 |
第23条等 |
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特定建設業許可 |
株式会社ケーナイン |
東京都知事許可 (特-5)第142913号 2024年3月15日 ~2029年3月14日 |
建設業法 |
第29条等 |
なお、最低住戸面積の引き上げ等ワンルームマンションの建設を規制する条例等が制定された場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(12)情報セキュリティについて
当社グループの保有している営業機密や個人情報等の重要情報が、何らかの事由により漏洩した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティを維持・管理するための体制や基本原則等を定め、当社グループが保有及び運用管理する情報資産を過失・事故・災害・犯罪の脅威等から保護し、事業活動を正常かつ円滑に行うことに努めております。
(13)訴訟等の可能性について
当社グループは、役職員及び近隣対策会社等への啓蒙活動や近隣住民との対話回数の増加等により、訴訟等の発生を最大限回避する企業努力を行っておりますが、開発エリアを主に東京23区及び川崎市、横浜市等としていることから、近隣住民からの苦情等を完全に排除することは難しく、法令に基づいて実施しているとはいえ、開発用地にある既存建物の解体やマンション建設等に関連する騒音・振動・電波障害・日照問題・景観変化等への近隣住民等からのクレーム等に起因する訴訟及びその他の請求が発生する可能性があります。
当社グループは、品質管理に万全を期しておりますが、万が一、当社グループの販売した物件に重大な問題があることが判明した場合には、その直接的な原因が当社グループの責めに帰すべきものでない場合であっても、売主としての契約不適合責任を負わなければならない場合があり、その結果として生じる訴訟及びその他の請求が発生する可能性があります。当社グループでは、当該リスクの対応策として、万が一の不備や事故等に備え、損害保険を付保しております。
また、マンション管理・賃貸管理事業においても入居者等からのクレームや賃料滞納等に起因する訴訟及びその他の請求が発生する可能性があります。
これらの訴訟等の内容、結果、対応によっては、レピュテーションリスクが生じる可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)ホテル事業について
ホテル事業につきましては、感染症の再拡大や経済情勢の悪化等による稼働率の低下、客室単価の下落、また、地震、台風等の自然災害や、事故、火災等の人的災害の発生等の予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)感染症等の発生について
当社グループでは、新型コロナウイルス等の感染症の拡大に備え、従業員及び取引先の安全を第一に考え、時差出勤やテレワーク・web会議を可能とするIT環境の整備を完了しております。また、新型コロナウイルス感染症に関しては規制が撤廃されており、当社グループにおいても通常の感染対策を維持するとともに、クラスター発生時においては新型コロナウイルス感染症対策で培った感染予防体制を実行してまいります。
なお、当社グループの開発現場において新型コロナウイルス等の感染症が蔓延した場合には、工事の一時的な停止等により竣工時期が遅延する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)その他について
当社グループは、事業展開上様々なリスクがあることを認識し、それらを最大限の努力で回避するとともに、リスクが発現した場合に備えて対策を十分に行うよう努めております。
しかしながら、事業遂行に当たり、予期できぬ事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高339億33百万円(前連結会計年度比21.3%増)、営業利益34億81百万円(同27.7%増)、経常利益27億87百万円(同14.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益18億50百万円(同8.8%増)となり、いずれの数値も、期初の業績予想を上回ることができました。
これは、当社グループが主に不動産事業において、「ものづくり」にこだわり、東京23区、駅徒歩10分圏内での都市型賃貸マンション開発・1棟販売というビジネスを推進し販売先から高い評価を得たことに加え、建築コストの急激な上昇の中においても、将来不安を抱えた若年層の不動産投資意欲、相続税対策を目的とした富裕層による需要及びファンド・リートを含めた国内外投資家による賃貸用不動産への需要に応えることができたことによるものであります。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりであります。
(不動産事業)
不動産事業につきましては、売上高は336億95百万円(前連結会計年度比21.4%増)、セグメント利益は50億19百万円(同29.6%増)となりました。
このうち、不動産開発販売につきましては、都市型賃貸マンション等12棟607戸及び戸建・テラスハウス分譲等43戸並びに用地9件の売却により、売上高は321億55百万円(同18.6%増)となりました。都市型賃貸マンション開発については、棟数・戸数ともに期初予定以上の売上を計上することができました。また、戸建・テラスハウス分譲等につきましては、株式会社ケーナインが主に東京23区南西部や川崎市・横浜市等において売上計上したものであります。不動産仕入販売につきましては、中古賃貸マンションの買取再販(1棟)により、売上高は7億27百万円(前連結会計年度は中古分譲マンション1戸46百万円)となりました。その他不動産事業につきましては、不動産仲介及び不動産賃貸業等により、売上高は8億11百万円(同38.6%増)となりました。
(ホテル事業)
ホテル事業につきましては、「ホテルアジール東京蒲田」の宿泊料等により、売上高は2億38百万円(前連結会計年度比9.2%増)、セグメント利益は45百万円(同46.8%増)となりました。
これは、国内旅行需要及びインバウンドの増加等を背景に、前連結会計年度に比べて客室単価及び客室稼働率が上昇したことによるものであります。
当連結会計年度末における財政状態については、総資産が前連結会計年度末に比べ153億49百万円増加した623億22百万円、負債が前連結会計年度末に比べ130億66百万円増加した449億74百万円、純資産が前連結会計年度末に比べ22億83百万円増加した173億47百万円となりました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ143億66百万円増加し、537億47百万円となりました。これは主として、都心のマンション用地について厳しい仕入環境が続く中、用地購入要員の増強や若手社員の成長により好立地のプロジェクト用地購入が進んだこと、また、株式会社ケーナインによる積極的な戸建・アパート用地等の購入により、棚卸資産が112億14百万円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末に比べ9億82百万円増加し、85億75百万円となりました。これは主として、賃貸用不動産等の購入により有形固定資産が9億26百万円増加したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ8億61百万円増加し、146億70百万円となりました。これは主として、短期借入金が4億98百万円減少する一方で、1年内返済予定の長期借入金が5億50百万円、未払法人税等が3億4百万円、買掛金が2億65百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末に比べ122億4百万円増加し、303億4百万円となりました。これは主として、シンジケートローン等の運転資金及び用地購入に伴う借入金の増加が、物件の販売に伴う返済を上回ったことにより、長期借入金が123億61百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ22億83百万円増加し、173億47百万円となりました。これは主として、新株予約権の行使等により資本金及び資本剰余金の合計が11億27百万円増加し、利益剰余金についても、配当金支払による6億96百万円の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益18億50百万円の計上により11億53百万円増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動及び投資活動において資金が減少した一方、財務活動において資金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ28億89百万円増加の113億98百万円となりました。
これは主に、積極的なプロジェクト用地及び賃貸用不動産の購入により、営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなった一方で、用地購入に伴う長期借入等による収入が物件の販売に伴う長期借入金の返済による支出を上回った結果、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなったことによるものであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の減少は、72億79百万円(前連結会計年度は29億78百万円の増加)となりました。これは主に、棚卸資産の増加が税金等調整前当期純利益の計上等を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は、26億1百万円(前連結会計年度は81百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の増加は、127億70百万円(前連結会計年度は35億17百万円の減少)となりました。これは主に、用地購入に伴う長期借入等に伴う収入及び新株予約権の行使による株式の発行による収入が、物件の販売に伴う長期借入金の返済及び配当金の支払等による支出を上回ったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは不動産事業及びホテル事業を行っており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
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セグメント名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
前年同期比(%) |
||
|
不動産事業 |
不動産開発販売 |
32,155,913 |
94.8 |
18.6 |
|
|
不動産仕入販売 |
727,823 |
2.1 |
- |
|
|
その他 |
811,640 |
2.4 |
38.6 |
|
|
計 |
33,695,377 |
99.3 |
21.4 |
|
ホテル事業 |
238,329 |
0.7 |
9.2 |
|
|
合計 |
33,933,706 |
100.0 |
21.3 |
|
(注)1.不動産事業の不動産仕入販売の対前年同期比は1,000%を超えているため「-」と記載しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
||
|
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
|
三井不動産投資顧問株式会社 |
- |
- |
8,100,000 |
23.9 |
|
ケネディクス株式会社 |
7,926,863 |
28.3 |
7,095,070 |
20.9 |
|
東急不動産株式会社 |
8,249,688 |
29.5 |
6,636,574 |
19.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度における売上高は、期初の業績予想を上回る339億33百万円(前連結会計年度比21.3%増)となりました。
これは主に、当社が都市型賃貸マンション開発事業において高品質な「ものづくり」に強くこだわってきた結果、ワンルームマンション業界だけでなく、大手不動産業者を含む不動産市場において高い評価を受けていることに加え、施工業者との長期的な信頼関係を構築できており、綿密な協議等を重ねることで工程管理を徹底したことで、当連結会計年度に予定していたすべてのプロジェクトを完工・引き渡しができたことによります。また、物件ごとの販売戦略を明確化し、利益の極大化に努めた結果、期初に計上を予定していなかった1棟52戸の販売用不動産について、当連結会計年度の売上計上となったこと、さらに、株式会社ケーナインとのシナジー効果を徐々に具現化しつつ、同社が開発した高品質の戸建・テラスハウス等を適正な価格で売上計上できたことも、当連結会計年度の売上計上の伸張に大きく貢献いたしております。
b.営業利益
当連結会計年度における営業利益は、34億81百万円(前連結会計年度比27.7%増)となり、期初の業績予想を上回りました。
これは、主に、当社グループが創業以来、都心の都市型賃貸マンション開発を中核事業として、少人数体制で、「ものづくり」に拘り差別化に取り組んできた結果、国内外の販売先・投資家から商品性について高く評価されたことに加え、ゼネコン各社と協議しつつ工事原価の上昇抑制に努めたこと、ホテル事業の利益拡大及び株式会社ケーナインの利益が通期で上積みされたことによります。なお、当社グループが重要指標とする売上総利益率は、19.0%(前連結会計年度比2.4ポイント増)となりました。
しかしながら、開発用地の高騰と建設資材及び人件費の値上がりによる建築コストの上昇が続いており、今後も、売上総利益率を維持すべく、一層の営業努力が必要であると認識しております。
なお、販売費及び一般管理費は、本社移転や給与水準アップ等の人的資本への投資、租税公課及び株主優待制度への取り組みに係る費用等の増加に加え、株式会社ケーナインの通期費用計上等により、前連結会計年度比10億76百万円増加しております。
c.経常利益
当連結会計年度における経常利益は、27億87百万円(前連結会計年度比14.9%増)となりました。
当社グループは、開発プロジェクトにおける開発用地資金を金融機関からの間接金融によって賄っているため、開発プロジェクトの増加及び大型化と建築工期を中心とした開発期間の長期化等により、営業外費用である支払利息が増加する傾向にあります。当連結会計年度については借入金の増加により金融関連費用は増加しておりますが、融資に関する金利等の条件は市場金利の上昇分を除けば、前連結会計年度と概ね変化なく、取引金融機関とは引き続き良好な関係を維持しており、資金調達に問題はございません。しかしながら、金融環境の急変や支払条件変更等の不測の事態に備え、2024年12月にシンジケートローン形式による長期運転資金20億円を調達しております。
引き続き、金融政策の動向、物価の上昇、人手不足に起因する賃金上昇等、今後の経済状況や金融機関の動きについては、十分留意してまいります。
d.親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、18億50百万円(前連結会計年度比8.8%増)となりました。これは、経常利益に特別損益項目を加減し、法人税等合計を差し引いたものであります。
前連結会計年度は、特別利益は保険解約返戻金等で1億7百万円、特別損失はありませんでした。当連結会計年度は特別利益、特別損失ともありませんでした。
法人税等合計については、前連結会計年度は7億99百万円、当連結会計年度は9億37百万円でした。また、法人税等調整額は、前連結会計年度は△80百万円、当連結会計年度は△3億48百万円となり、利益を増加させております。なお、当社では基本的な配当方針として、親会社株主に帰属する当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の40%を配当することとしております。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
a.財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、主に都市型賃貸マンション開発事業又は戸建・テラスハウス分譲の開発販売事業を行うための事業計画に照らして、必要な資金を主に銀行からの長期借入により調達しております。長期借入金の返済期間は、事業計画における竣工・販売時期に対応して概ね1年~3年半であります。一時的な余資は主として安全性の高い金融資産(銀行預金)にて運用しております。
b.経営資源の配分に関する考え方
資金の流動性における最大の項目である現金及び預金については、当社は過去のリーマンショックの経験から、東京23区、駅徒歩10分圏内という当社開発用地における土地価格の下落率を最大35%と想定し、毎月の用地購入から売買契約締結前の棚卸不動産総額の35%を確保するとともに、2年分の固定経費を保持することを目安としております。
c.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要の主なものは、不動産開発販売事業における開発用地の取得及び建築工事代金等のプロジェクト資金であります。資金調達につきましては、各プロジェクトや物件ごとに取引金融機関より調達しており、調達コストの低減に留意しつつ、借入金、現金及び預金の残高を検討材料としております。
d.資金調達
当社グループは、事業活動の維持及び将来の成長のために必要な資金について、安定的かつ機動的に確保することに努めております。
当社グループは、資金調達に際して、特定の金融機関に依存することなく、多数の金融機関と良好な関係を構築する一方で、新たな金融機関との取引開始による間接金融の拡大、エクイティ等の直接金融での資金調達を実施し、資金調達の円滑化と多様化に努めております。また、主要な取引金融機関とは良好な取引関係を長期にわたり維持しており、必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題ないと認識しております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況
当社グループは大規模な経済変動に耐え得る企業であるために、キャッシュポジションの重要性を常に認識し、財務体質を強化するとともに、持続的成長と企業価値の向上を最重要項目として掲げてまいりました。
これまでの当社のビジネスモデルは、少人数かつアウトソーシングの活用を前提に、東京23区、駅徒歩10分圏内に都市型賃貸マンションの開発・1棟販売するというものでありましたが、昨今の都心土地価格高騰とプロジェクト用地の取得競争激化、さらには工事原価の上昇等の厳しい経営環境において「持続的成長」を展望するためには、事業領域の拡大が必要との考えに至りました。
この方針のもと、当社グループは2024年2月29日に株式会社ケーナインをM&Aでグループに取り込むことで、東京23区等におけるテラスハウスや戸建分譲、アパート開発事業等、事業領域の拡大が可能となりました。また、持続的成長への基盤構築に向けて、人的資本への投資を推進することで、グループ社員一人一人が活力に満ちた仕事ができるよう努めてまいりました。
こうした状況を踏まえ、当社グループは中期経営計画を策定し、2025年5月13日に「アーバネットグループ中期経営計画策定に関するお知らせ」を公表いたしました。当社グループは、この計画達成に向けて、都心好立地での都市型賃貸マンション開発を継続する一方、東京近郊での250戸を超える大型プロジェクトに取り組む等、物件を選別しつつも新しい領域に挑戦いたします。また、好調が続く東京23区内のテラスハウス開発事業、国内外の富裕層の集まる地域での宿泊施設開発に着手する等、持続的成長を見据えた投資を進めてまいります。
なお、当社の経営方針・経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標は売上総利益率であります。当連結会計年度の売上総利益率は、「② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 b.営業利益」に記載のとおり、前連結会計年度を2.4ポイント上回る19.0%となりました。これからも、引き続き売上総利益率の維持向上に努めてまいります。
当連結会計年度の実績値につきましては、売上高・営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益のいずれについても、期初の業績予想を上回ることができました。
当連結会計年度における期初の予想数値に対する実績の状況を示すと、次のとおりであります。
|
項目 |
売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
親会社株主に 帰属する 当期純利益 (百万円) |
1株当たり 当期純利益 (円) |
|
予想数値 (A) |
32,000 |
2,800 |
2,450 |
1,730 |
53.77 |
|
実績値 (B) |
33,933 |
3,481 |
2,787 |
1,850 |
56.26 |
|
差額 (B)-(A) |
1,933 |
681 |
337 |
120 |
2.49 |
|
予想比 (%) (B)/(A) |
106.0 |
124.3 |
113.8 |
107.0 |
104.6 |
2025年6月期につきましては、都市型賃貸マンション・戸建等販売についての販売計画は588戸でしたが、実績は650戸と当初予定を上回りました。
該当事項はありません。
該当事項はありません。