第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社は、グループ経営の方向性を明確にするために、当社グループが事業を通じて果たすべき役割・責任や社会に存在する意義を示した「グループ経営理念」を掲げ、この理念を実現しグループ価値の最大化を図ることを経営の基本方針としています。

「グループ経営理念」の内容は以下のとおりです。

<グループ経営理念>

1  経営理念

小田急グループは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。

2  行動指針

私たちは、経営理念の実現のため、3つの精神を忘れることなく、お客さまに「上質と感動」を提供します。

(真摯)

私たちは、安全・安心を基本にすべての事業を誠実に推進します。

(進取)

私たちは、前例や慣習にとらわれず、よりよいサービスの追求に挑戦します。

(融和)

私たちは、グループ内に留まらない外部との連携、社会・環境との共生に取り組みます。

 

当社グループでは、「グループ経営理念」を実現するため、経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業に向けて~」を策定し、企業価値・地域価値の向上に努めています。

 

経営ビジョン「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業に向けて~」

① 全体方針

「地域価値創造型企業に向けて」

私たちは、小田急沿線や事業を展開する地域とともに成長するために、

既成概念に捉われず常に挑戦を続けることで、お客さまの体験や環境負荷の低減など

地域に新しい価値を創造していく企業に進化します。

 

グループ経営理念のもと、サステナビリティ経営を根幹に、地域経済圏発想での事業展開および事業ポートフォリオの最適化を図ることで、地域価値創造型企業としての持続的成長と企業価値向上を両立し、経営ビジョンの実現を目指してまいります。

 

(参考)経営計画体系
 

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② 2030年度に向けた成長ストーリー

新たな連結財務目標を達成するため、成長領域への積極投資、株主還元の強化、人的資本の拡充の3つの柱に特に重点的に取り組むことで、資本コストや株価を意識した経営の実践を加速させてまいります。

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③ 企業価値向上に向けた財務方針

 エクイティ・スプレッドの拡大に向けたROE向上と株主資本コストのコントロールを課題とし、なかでもROE向上のため、「セグメント別営業利益ROAによる目標管理」「継続的な資産入替え」「株主還元の強化」に注力してまいります。

 

ア 連結財務目標

重要指標

2026年度計画

2030年度目標

資本コストや株価

を意識した経営

ROE※1

8.0%

前回目標※2

6.2%(+1.8P)

10%以上

前回目標※2

7%以上(+3P)

利益の成長

営業利益

540億円

前回目標※2

500億円(+40億円)

800億円

前回目標※2

700億円(+100億円)

財務健全性の

確保

有利子負債/

EBITDA倍率

7倍台でコントロール

※1 親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(有価証券評価差額除く)

※2 2024年5月公表目標

 

イ 株主還元
 2025~2030年度累計で2,000億円の株主還元を実施し、2030年度までに自己資本比率を30%に圧縮してまいります。

基本方針

(2023~2026年度)

自己資本比率30%の確保を前提に、2023~2026年度の平均で、連結総還元性向40%以上を目標とした安定的な配当および機動的な自己株式取得を実施

※ 4ヵ年合計総還元額/4ヵ年合計親会社株主に帰属する当期純利益額≧40%

配当

2024年度:1株当たり年間40円を予定(年間30円から配当予想を修正)

2025年度:1株当たり年間50円を予定

自己株式取得

経営環境の変化や業績等を総合的に勘案したうえで実施時期を検討
金融機関等の当社株式売却による株式需給バランス悪化への対応も考慮

(取得実績)2023年度・2024年度合計:327億円

 

(2) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

インバウンド需要の拡大等を事業機会と捉え、重点施策として定めた事業や経営基盤の強化を推進してまいります。各施策の概要は、以下のとおりです。

 

① 事業強化

ア 観光需要の取り込み

日本一のインバウンド観光ハブ化を目指す新宿と観光地の箱根・湘南を拠点に、沿線全体で国内外の観光客を誘引し、観光拠点での収益拡大や拠点間の移動需要最大化に努めるほか、沿線観光の多拠点化を図ることで、2030年度における観光収益1,200億円、営業利益150億円の達成を目指してまいります。

具体的には、プロモーション強化やデジタル施策連携の実施等を通じて、宿泊・買い物等の需要の取り込み、および箱根・湘南での閑散期における収益の底上げに努めてまいります。加えて、特急の魅力向上等による当社線利用者・顧客単価の増加や、新たな目的地およびコンテンツの育成・増加による当社線への観光客誘引を図ってまいります。

 

イ ホテル業の拡大

新宿や箱根周辺地域を中心に、既存ホテルのリニューアルや新規ホテルの開発等を進め、旺盛なインバウンド需要を取り込むことで、2030年度における営業利益50億円の達成を目指してまいります。

具体的には、2030年度までに、「旧箱根レイクホテル」、「箱根ハイランドホテル」、「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」のリニューアルをはじめ、高付加価値ホテルの新規開発やホテルの運営受託を推進するとともに、M&Aの活用を図ってまいります。

※ 旧箱根レイクホテルは、「RETONA HAKONE」としてリニューアル開業予定(2025年12月)です。

 

ウ 不動産業の強化

従来から取り組む長期保有型の開発・リニューアルや既存物件の収益性向上施策のみならず、短期回収型の投資手法(国内SPC・海外不動産・回転型投資・住宅分譲)を強化し、不動産業の2030年度における営業利益300億円の達成およびROA向上を目指してまいります。

具体的には、新宿駅西口地区開発計画において、新たな体験を実現する商業機能や最新かつハイグレードなオフィス機能、顧客起点のビジネス創発機能の提供等により、新宿エリアの価値向上・収益最大化に取り組むとともに、引き続き海老名駅間地区の開発計画を推進するなど、沿線での不動産開発に努めてまいります。加えて、短期回収型の手法については、外部環境や取り組み実績のほか、リスク分散等を考慮しながら投資を配分し、短期収益の獲得とROA向上を図ってまいります。

 

エ 交通業の進化

安全・防災対策の強化とサービスの向上や持続可能な運営体制の構築に取り組むほか、観光体験の付加価値向上を図ることで、収益拡大を目指してまいります。

具体的には、当社鉄道事業において、鉄道駅バリアフリー料金制度を活用したホームドア整備や耐震補強工事、大野総合車両所の移転をはじめとした大規模設備更新を実施するほか、労働人口の減少を見据え、ワンマン運転の導入や駅業務の省力化等により、2035年度における要員30%削減(2020年度比)を図ってまいります。加えて、これらの取り組みを着実に推進するため、適切な時期での運賃改定を目指してまいります。また、大涌谷駅における新展望エリア「ちきゅうの谷」のオープン等を通じた箱根の各施設の魅力向上を図るとともに、新型特急ロマンスカーの導入に向けた検討を進めてまいります。

 

オ ストア・小売業の強化/デジタルによる事業創造

積極的な新規出店による事業規模の拡大を図るとともに、店舗運営力の強化やDX施策の実施等を通じた生産性向上に取り組むことで、2030年度におけるストア業の営業利益率3%超を目指してまいります。また、ソリューション開発・提供を強みとしたデジタルによる新規事業の創造に努めてまいります。

具体的には、ストア・小売業において、既存店舗の改装による少人数運営体制の構築および売場面積の最大化、ならびにセルフレジやAIを活用した提案発注システムによる運営効率化等に努めるとともに、MD戦略やオペレーション改革等を実行してまいります。また、デジタル領域では、沿線起点で新規事業を検討するほか、「WOOMS」をはじめとした新規事業の早期黒字化を図ってまいります。

 

② 経営基盤の強化

 

概要と取り組みの例

人的資本の拡充

構造改革の推進や人財確保をはじめとした重点課題を踏まえた人的資本の投下により、従業員エンゲージメントと労働生産性の向上を図ることで、事業成長を目指してまいります。

●私鉄業界トップを目指した労働生産性の向上および人財投資の推進

●エンゲージメントサーベイを活用した福利厚生施策等の実施

●不動産業等の成長領域における有資格者の育成や専門人財・即戦力の採用

●経営管理能力や専門スキルの獲得を可能とするモデルキャリアパスの策定・運用

環境

再エネ活用、バスのEV化等による脱炭素化およびTNFD提言に基づく情報開示を推進してまいります。

●EVバス(電動バス)を2030年度までに約500台導入

 ※ 神奈川中央交通㈱での導入台数を含みます。

●不動産(新規・既存物件)の環境性能評価の取得推進

DX

情報システム環境の最適化、情報セキュリティの確保および人財育成に向けた各種施策を推進してまいります。

●クラウド環境の活用推進による最新技術への対応力強化

●DX施策が企画・実行可能な高度スキルを有する人財の育成(2026年度末までに約520名育成)

ガバナンス

人権尊重への取り組み、リスクマネジメント方針に基づくコンプライアンス意識の醸成および取締役会の監督機能強化を通じてガバナンスの向上を目指してまいります。

●サステナビリティアンケートの実施を通じた取引先との連携拡充

●外部機関による取締役会の評価を活用した実効性向上

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般

当社グループは、経営理念を「お客さまの“かけがえのない時間(とき)”と“ゆたかなくらし”の実現に貢献します。」と定めています。環境や社会の持続性に配慮しながら継続的な企業成長を目指す「サステナビリティ経営の推進」はその根幹を成すものです。経営計画体系において、経営ビジョン「UPDATE 小田急」の上位概念となる不変の考え方として「サステナビリティ経営の推進」を位置付けることで、6つのマテリアリティ(重要テーマ)を経営の中心に据え、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を実現していきます。

 

マテリアリティ

1.安全・安心

・安全・安心を最優先した公共交通サービスの提供

・誰もが安心して暮らせる社会の追求

2.まちづくり・地域社会

・職,住,商,学・遊、ウェルネスを兼ねそなえたまちづくりの実現

・地域資源を活かしたまちの発展

3.日々のくらしと観光体験

・テクノロジーを活用したゆたかなライフスタイルの推進

・その地域ならではの観光体験の提供

4.環境(カーボンニュートラル)

・省エネ、再エネ、電動化、地域との連携による脱炭素社会の実現

・「Beyond Waste」を目指した資源循環社会の実現

5.人的資本の強化

・すべての社員が自分らしく働ける企業風土の醸成

・持続的な成長を実現するための価値創造型人財の育成・配置

6.ガバナンス

・すべてのステークホルダーの期待に応える最適なガバナンス体制の

実現

 

① ガバナンス

当社グループは、環境や社会の持続性に配慮しながら事業の継続・発展を実現するサステナビリティ経営をグループ全体で浸透・推進するとともに、お客さま・社会・市場・従業員等のさまざまなステークホルダーとの強固な信頼関係の構築を通じて企業価値の向上を実現します。

そして、サステナビリティ推進に関する施策の企画立案や推進等に関する事項の協議や推進指標の設定・進捗確認等を行う機関として、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しています。取締役社長は同委員会から報告を受け、目標に向けた進捗状況やリスク・機会等を監視するとともに、それらの内容は執行役員会、取締役会にも報告され、協議のうえ、必要により指示を出すことにしています。同委員会で協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図り、取り組みを推進します。

 

(サステナビリティ推進委員会体制図)

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② 戦略、指標及び目標

外部環境の変化や当社グループの事業特性等を踏まえ、以下のようにリスク・機会を整理しています。

 

リスク

機会

 ・少子高齢化による沿線人口・生産年齢人口の減少

・自然災害による事業影響

・物価の上昇や金利の上昇

・適正な労働力確保に対する懸念

・ライフスタイルの変化やデジタル化による

 各事業の利用者減少

・サイバー攻撃による情報漏洩や人権侵害等の

 企業不祥事による社会的信頼の棄損

・安全に対する信頼の棄損

・交通弱者の増加に伴う公共交通の利用ニーズ拡大

・デジタルの活用によるリアルサービスの質的転換、

 価値向上

・地域の社会課題解決を通じた事業領域の拡大、

 居住エリアの役割の多様化

・サステナビリティ意識の高まり

 ・インバウンドの大幅な伸び

 

 

 

当社グループは日本屈指の観光地や中核都市を複数持ち、さまざまな需要回復の影響を大きく享受することが期待できるほか、一定の人口を持つ都市が集積する小田急沿線は、多様な地域特性を有するがゆえに数多くの社会課題が存在しており、これらをビジネスとして解決することで新しい事業機会につなげるとともに、個性を持ったまちの形成を通じて新たな価値を創出していきます。

なお、マテリアリティとして選定した各項目において向き合う主な社会課題は以下のとおりです。これらの社会課題を解決することを通じて、マテリアリティの実現、ひいてはサステナビリティ経営の推進につなげます。

 

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サステナビリティ経営の推進においては、さまざまなステークホルダーとの健全かつ建設的な関係性の構築が不可欠です。小田急グループでは、すべてのステークホルダーに対する人権尊重へのコミットメントとして「小田急グループ人権方針」を制定しています。これを基盤に、人権・サステナビリティに配慮した調達・サプライチェーン構築を行うための「小田急グループ サステナブル サプライチェーン方針」を制定しているほか、従業員への還元や取引先への配慮を中心とした収益・成果の適切な配分に対する姿勢を明記した「マルチステークホルダー方針」、従業員が安全に、また安心感ややりがいを持って働き続けられる環境を維持・確保するための「カスタマーハラスメント対応方針」、社会規範や企業理念を理解し、良識と責任を持って行動することを定めた「腐敗行為防止方針」等を制定し、それぞれの方針に基づく運用を行っています。とりわけ、人権リスクを網羅したリスクシナリオによるリスクマネジメント活動への反映、「ビジネスと人権」に関する役員および従業員の幅広い階層を対象にした教育・研修、サステナビリティアンケートの実施をはじめとする取引先とのコミュニケーション等を中心に、人権対応の取り組みを強化しています。

 

③ リスク管理

地域価値創造型企業として地域に価値を提供し続けるために、環境変化を的確に捉え、社会課題を解決していくことが求められています。サステナビリティ推進委員会の事務局となる経営戦略部が主体となって、マテリアリティの進捗状況を確認し、その見直しを検討するなかで、各部・室、グループ会社と連携してリスク・機会に関する精査を行い、検討内容を同委員会で協議するとともに、必要に応じて取締役会・執行役員会および取締役社長に報告します。

 

 

(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

当社グループでは気候変動問題を含む環境対応は重要な経営課題として位置づけ、2021年9月に「小田急グループ カーボンニュートラル2050」を策定するとともに、TCFDへの賛同を表明しました。また、これらに基づきカーボンニュートラルへの取り組みを進めるとともに、当社グループの「TCFD提言に基づく情報」を取りまとめました。なお、リスクと機会については、交通業、不動産業、生活サービス業のすべての事業を対象に分析を行いました。今後もTCFD提言に基づく情報開示を進めるとともに、気候変動問題等の環境対応に積極的に取り組みます。

 

① ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しています。その中で、環境長期目標を含めた行動指針「小田急グループ カーボンニュートラル2050」推進に関する事項の協議および気候関連のリスク・機会についての特定等を行っています。

また、取締役社長は同委員会から報告を受け、目標に向けた進捗状況やリスク・機会等を監視するとともに、それらの内容は執行役員会、取締役会にも報告され、協議のうえ、必要により指示を出すことにしています。同委員会で協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図り、取り組みを推進しています。

 

② 戦略

 ア リスクと機会

当社グループにおいて交通業、不動産業、生活サービス業の重要なリスクおよび機会について分析した結果は次のとおりです。なお、気候変動がもたらすリスクは、TCFD提言に合わせて、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク、主に1.5℃シナリオ※1)と物理的な影響に伴うリスク(物理的リスク、主に4℃シナリオ※1)に分類し、検討しました。分析においては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)等のシナリオを参照しました。

 

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 イ リスク・機会への対応

当社グループでは、重要なリスク・機会に対し「小田急グループ カーボンニュートラル2050」とともに、以下の表のとおり対応しています。

 

対応策

移行リスク

省エネ車両・設備の導入/新規物件への先進技術導入/EV・FCVバスの導入/再生可能エネルギーの更なる導入

物理的リスク

異常気象時における施設への安全対策/災害時避難や復旧に備えた体制の確立/防災訓練の実施

機会

回生電力の更なる有効活用/グループ交通網の再エネ100%化等環境優位性のPR/シームレスかつ利便性の高いMaaSの推進/サステナブルなライフスタイルの提案/ウェイストマネジメント事業「WOOMS」の推進

 

③ リスク管理

「小田急グループ カーボンニュートラル2050」の実現に向けて、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会においてCO2排出量を削減するための施策の計画・立案・進捗管理を四半期に1回程度行っています。また、戦略において特定した気候変動によるリスクと機会について、分析内容の更新や取り組みの進捗を同委員会で協議するとともに、必要に応じて取締役会・執行役員会および取締役社長に報告します。協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図っています。

なお、自然災害等発生したリスクに対しては、危機管理規則および事業継続計画(BCP)に基づき対応を行います。これらはリスクマネジメント担当執行役員が委員長を務めるリスクマネジメント委員会にて定期的に見直しを図り、レジリエンス強化に努めています。

 

④ 指標及び目標

「小田急グループ カーボンニュートラル2050」の中で環境長期目標を設定しています。

 

<環境長期目標>

小田急グループは2050年度CO2排出量実質「0」をめざします。

その達成に向け2030年度CO2排出量△50%(2013年度比)をめざします。

※ 2024年度からのグループ鉄軌索道の完全再エネ化に伴い、2030年度目標を達成しました。

 

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 ※ 2024年3月、CO2排出量算定において調整後排出係数使用に変更するとともに、環境長

 期目標の対象会社をすべての連結子会社へ拡大し、基準年度(2013年度)から再集計しまし

 た。

※ 構造変化(2024年4月1日UDS㈱および沖縄UDS㈱の連結除外)を、基準年度(2013

 年度)以降のCO2排出量に反映しました。

 

 

(3) 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)

当社グループでは、地域および当社グループの持続的成長を実現させていくためには、事業と自然環境との関連性を把握し、事業リスク、機会の把握およびそれらの対応に取り組むことが重要であると考え、2025年3月に自然資本と事業との関連性やリスク、機会を評価し開示するためのフレームワークを提供している「TNFD提言に沿った情報」を開示しました。

 

① ガバナンス

ア サステナビリティ推進体制

当社グループにおけるサステナビリティ推進体制は、マテリアリティ推進体制およびTCFD

で開示している通り、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進

委員会」が社内関係部門・グループ各社と連携するという体制になっています。事業と自然との

依存、影響関係および、それらに紐づく自然関連リスク、機会においても、同様にサステナビリ

ティ推進体制に基づき管理されており、取締役社長は同委員会から報告を受け、目標に向けた進捗状況やリスク・機会等を監視するとともに、それらの内容は執行役員会、取締役会にも報告され、協議のうえ、必要により指示を出すことにしています。同委員会で協議した事項は、当社各部・室および当社グループ全体で共有・連携を図り、取り組みを推進しています。

 

イ ステークホルダーに対する方針

サステナビリティ経営の推進には、さまざまなステークホルダーとの健全かつ建設的な関係性の構築が不可欠です。人権尊重へのコミットメントとして「小田急グループ人権方針」を策定するとともに、人権尊重・サステナビリティに配慮した調達・サプライチェーン構築を行うため「小田急グループ サステナブル サプライチェーン方針」を策定しています。これらの方針は、当社グループの従業員、お客さまや地域のみなさまを含め、当社グループ事業に関わる取引先を含めたサプライチェーン全体に適応されます。各方針の遵守を通じて、すべてのステークホルダーの人権尊重およびグリーン調達の取り組みを推進しています。

 

② 戦略

事業活動により自然環境に与えるネガティブな影響を最小化し、ポジティブな影響を最大化す

るためには、事業と自然との関わり、関連するリスク、機会を把握する必要があります。そこで、2024年度よりTNFDフレームワークに沿って当社グループセグメントごとの依存、影響度およびリスク、機会の特定、評価を実施しています。2024年度における分析は、当社グループの事業と自然との関連性を網羅的に把握するために、主要セグメントである交通業、不動産業、生活サービス業および、これら事業の調達品生産、製造過程(上流)を対象としました。生活サービス業は多様な事業を含むため、飲食料や衣類などの調達品の観点で自然との関連性が強いと想定された百貨店業、ストア・小売業、ホテル業、レストラン飲食業を対象としました。TNFDフレームワークで自然関連課題の評価を行う分析手法として推奨されている、LEAPアプローチに沿って自然資本との関連性およびリスク、機会を分析、評価しています。

 

(LEAPアプローチ)

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ア 自然資本への依存、影響項目の把握

事業と自然との接点の把握においては、TNFDで推奨されている分析ツールの1つであるENCORE※1を用いて評価しています。分析結果を踏まえ、交通業、不動産業では、重機等を用いる建設やメンテナンスのプロセスが自然への影響が大きく、生活サービス業では食品や飲料などの調達物生産過程が自然への依存が大きいと認識しています。

※1 ENCORE:国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)

  他が開発した、経済活動と自然との関わりである依存、影響関係を分析するツール(2024年

  6月分析)

 

「自然資本に関連する事業プロセスの特定とヒートマップ評価」の詳細はHPをご確認ください。

https://www.odakyu.jp/sustainability/carbon-neutral/tnfd/

 

ENCORE分析の結果から、特に依存、影響度が大きい(High、Very High)と評価された

項目を、当社グループの事業が依存している重要な自然資本および、事業を通じて自然に及ぼす重要な影響と評価しました。重要な依存、影響項目と当社グループ事業の関係性をまとめた結果は、以下の図に示す通りです。

 

(当社グループ事業における生物多様性と自然資本との関わり)

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イ 優先地域

TNFDにおける優先地域とは、自然の脆弱性が高く、生物多様性にとって重要な「要注意地

域」および、事業にとって重要な自然への依存、影響、リスク、機会が存在する「マテリアルな

地域」の集合とされています。

要注意地域を把握するため、自社操業拠点および鉄道路線を対象に地域分析を実施しました。

TNFDガイダンスを参考として、生物多様性の重要性、水ストレスの観点から分析を行いまし

た。生物多様性の重要性が高い地域は、IBAT※2、QGIS※3を用いて、操業拠点1km圏内および鉄道路線上に、生物多様性重要地域(KBA)および世界保護地域データベースに登録されている保護地域に位置しているかを分析しました。また、Aqueduct Water Risk Atlas※4を用いて、操業拠点の水ストレスを評価しました。

※2 IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool):UNEP-WCMCなどが開発

  した生物多様性評価ツール

※3 QGIS:地理空間データを扱うためのGISソフト

※4 Aqueduct Water Risk Atlas:世界資源研究所が開発した水関連リスク評価のツール

 

分析の詳細はHPをご確認ください。

https://www.odakyu.jp/sustainability/carbon-neutral/tnfd/

 

分析の結果、生物多様性の重要性が高い地域として、神奈川県の箱根、江の島、大山、東京都の多摩川周辺に位置する鉄道や宿泊施設、レストランがKBAまたは保護区、あるいはその両方に位置していることを特定しました。一方で、国内拠点はいずれにおいても、水ストレスが高い地域には位置していないことを確認しています。

マテリアルな地域としては、自然資本である景観や緑地等を観光資源として活用しながら事業展開している箱根、江の島が該当すると考えています。

今後は、これら重要な優先地域を考慮して自然関連課題解決の取り組みを推進していきます。

 

ウ リスクと機会

 特定した依存・影響関係から想定される事業リスク・機会を検討した結果は次の通りです。なお、自然関連リスク・機会の特定にあたって、TNFDシナリオガイダンスを参照して当社グループ事業にとって重要な要素が将来的にどのように変化する可能性があるかを検討し、極端な二つの将来世界であるシナリオを想定しました。想定したそれぞれのシナリオでどのようなリスク、機会が顕在化するのか、影響がどう変化するのかを評価しました。

 

参照:TNFDシナリオガイダンスv1.0

https://tnfd.global/wp-content/uploads/2023/09/Guidance_on_scenario_analysis_V1.pdf?v=1695138235

シナリオ①:保全推進シナリオ(気候変動や自然保全に関する規制が進み、市場の関心も高ま

            った結果、自然劣化が抑制され、当社グループでも自然関連課題に対する取り組

            みを促進する。)

シナリオ②:劣化進行シナリオ(気候変動や自然保全に関する規制は既存の取り組み以上に発

            展せず、市場の関心も薄い結果、自然劣化が進み、当社グループの取り組み状況

            も発展しない世界)

 

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(リスク・機会一覧)

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リスク、機会の検討を通じて、自然劣化が進行することで箱根や江の島など観光地で展開している事業がリスクに晒されることが分かり、要注意地域にも該当する地域であることから、これら操業地域での事業の重要性が高いと捉えています。当社は環境ビジョンの取り組みの一つとして自然資源の保全・活用を掲げており、植林や美化清掃活動を通じた土地再生への貢献や、環境保全活動への寄付など、優先地域における自然保全活動の取り組みを進めており、持続可能な共生圏を目指しています。今回特定したリスク、機会の対応策については、今後グループ全体の事業戦略で検討すべき事項と認識しています。

 なお、影響項目である「気候調節機能」「GHG排出」に紐づくリスク、機会は「(2) 気候関連財務情開示タスクフォース(TCFD) ② 戦略」に記載のとおりです。

 

③ リスクと影響の管理

当社グループでは、「小田急グループリスクマネジメント方針」に基づき「リスクマネジメント委員会」を軸とした推進体制を構築し、自然関連課題も含めた事業のリスクの洗い出しや個別リスクへの対応を行うとともに、主要なグループ会社で構成する「小田急グループ・リスクマネジメント連絡会」を通じて情報共有や連携を図っています。当社グループのリスクマネジメントの基本原則としては、リスクを把握し顕在化を防止する未然防止と、リスク発生時の対応を検討する事業継続活動という2つのステップにおいて、適切な意思決定を行い、実行することとしています。特に未然防止ステップでは、毎年グループ全体で統一的な手法によって重要なリスクを洗い出し、対策の実行、見直しというマネジメントシステムを導入しています。

サステナビリティ関連課題は、サステナビリティ担当執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」において審議されています。自然関連課題特定のため、直接操業およびサプライチェーンの上流工程のうち、調達品生産、製造過程対象として、外部ツールを活用して事業と自然との接点である依存、影響関係の評価を行っています。自然関連のリスク、機会については、関連する依存、影響項目の評価結果、生物多様性にとって重要な地域であるか、事業規模、発生可能性などの情報を元に、定性的に評価しています。自然関連課題の分析内容の更新や取り組みの進捗は、その他のサステナビリティ課題とともに同委員会で審議しており、必要に応じて取締役会、執行役員会および取締役社長に報告します。審議した事項は、当社各部・室および小田急グループ全体で共有・連携を図っています。

④ 指標と目標

TNFDが開示を推奨しているグローバル中核指標に基づいて、自然関連の依存・インパクトに関して、当社グループでは下記の自然関連指標・目標を選定しています。また、水質や土壌の汚染につながる物質量は、法規制を遵守して管理しています。

今後、その他の指標についても、特定した依存、影響、リスク、機会の内容を踏まえ、当社グループが管理すべき自然関連指標を引き続き検討し、情報把握および目標設定に努めていきます。

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(4) 人的資本・多様性

① 戦略

 <人財に関する基本的な考え方>

 当社グループでは、経営ビジョンの実現に向けたマテリアリティの一つとして「人的資本の強化」を選定しています。また、中期経営計画において、「労働人口の減少を見据えた構造改革の推進および人財確保」「働きやすさ・働きがいの向上」「成長領域への重点的な人的投資」「次世代経営人財の計画的育成」の4つを人的資本の拡充の重点課題と設定し、各種施策を推進しています。

重点課題を踏まえた戦略的な人的資本の投下を進め、従業員エンゲージメントと労働生産性の向上を通じて事業成長を目指すとともに、従業員エンゲージメントと労働生産性の向上施策については、定期的なモニタリングを通じて視覚化し改善を進めていきます。

 

 <人財マネジメントポリシー>

 

価値創造型人財

小田急で働くすべての人が「UPDATE 小田急」につながる新しい価値を創造していく

大切にしたいこと:

・自分の仕事を通して地域に「価値」を生み出していくこと

・「価値」とは、お客さまや共に働く仲間たちの心を動かし、会社やビジネスパートナーの発展に寄与し、そして地域とともに自分自身の成長を生み出していくこと

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多様かつ持続的に価値の総和が積みあがることで、

「UPDATE 小田急~地域価値創造型企業に向けて~」の実現につながっていく

 

価値創造型人財の行動原理:

地域に新しい価値を生み出す人財とは?

1.「顧客とは?社会とは?」を自分ごととして問い続け、自ら学び続ける

2.顧客や社会にとっての価値を内部のみではなく、外部に積極的に発信して、共鳴、共感を得る

3.自前主義、委託主義を脱却し、最適なパートナーとともに、多様な視点から共創し、価値を創造していく

 

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重点課題①労働人口の減少を見据えた構造改革の推進および人財確保

・私鉄業界トップの労働生産性を目指し、人財投資を推進(当社実績)

当社鉄道事業における持続可能な運営体制(要員体制2035年度△30% ※2020年度比)を構築していくほか、2023年度から3ヵ年通算で年収ベースを約18%引き上げるなどの施策を実施しています。

例:2025年春闘では、組合要求に史上初の満額回答

 年収最大150万円以上増加(2022年度比・モデル年収)

 管理職は、最短31歳で年収1,000万円を実現

 

重点課題②働きやすさ・働きがいの向上

・エンゲージメントサーベイを活用した施策の実施

グループ独身寮の新設等の福利厚生の充実、食事補助の拡充および現業施設等の職場環境の改善を進めていきます。

 

・働きやすい環境づくり

当社では、多様な人財が仕事と家庭を両立しやすい環境を整えるために、法定を上回る内容でさまざまな両立支援制度を導入し、制度の理解・浸透・活用促進を進めています。

 

 (主な両立支援制度)

育児

育児休業:最長で子が3歳に達するまで、最大6回に分割して取得可能

育児短時間勤務:小学校4年を終了するまで取得可能

配偶者出産休暇:5日間の有給休暇を付与 等

介護

被介護者1人につき、連続休業、指定日休業、短時間勤務を最大3年取得可能 等

治療

休務・休職制度

がん等の治療短時間勤務、セルフケア休暇 等

啓発・

その他

監督者向けD&I・両立支援研修

育児者向けセミナー・介護者向けセミナー

妊活・産婦人科・小児科相談窓口の整備、情報発信 等

 

 (2024年度の数値効果)

女性育児休業取得率

100.0%

配偶者出産休暇取得率

93.0%

年次有給休暇取得率

90.2%

自己都合離職率

1.9%

入社3年後定着率(新卒)

88.9%

 

・継続的な男性育児休業取得と女性活躍の推進

当社では、女性活躍推進に関する数値目標を設定し、その実現に向けて取り組んでいます。高い男性育児休業取得率および取得日数を実現しているほか、2021年4月に初の女性執行役員登用後、2023年4月には女性グループ会社社長就任、2024年6月には女性取締役登用など、今後も女性のキャリア促進に積極的に取り組みます。

 

 (男性育児休業取得に関する実績・目標)

 

2023年度実績

2024年度実績

2030年度目標

男性育児休業取得率

92.0%

90.1%

100.0%

男性育児休業取得日数(平均値)

84.5日

82.0日

 

 (女性活躍に資する風土づくり施策)

プレママ面談

産休前に、休業中の過ごし方や復職後の働き方について考える目的で、本人・上司・人事部の三者で面談を実施しています。

育休者懇談会

復職セミナー

スムーズな復職や仕事と育児の両立に向けて、育休者同士や先輩社員との交流等の機会を設けています。

女性活躍セミナー

ライフイベントを経ても意欲的に働き続けることを目指し、セルフマネジメントを学ぶワークショップや各種啓発施策等を開催しています。

 

・若年層支援

若年層を中心とした処遇改善のほか、入社後の独身寮でのフォロー体制や帰省交通費支援制度等の社会的・経済的な自立支援を行うなど、優秀な人財の獲得と定着に向けた取り組みを継続的に推進しています。

 

・人権の尊重

小田急グループ人権方針を踏まえ、階層別研修において講義を行うなど、人権に関する教育機会の充実を図っています。

 

・社内コミュニケーションの強化

年度計画の策定を所属員全員参加型で行う「未来創造会議」をはじめとした社員同士の対話の機会を多く設けています。

管理職を中心にコーチング研修を実施し、上司のコミュニケーションスキルの向上を図っているほか、すべての社員を対象に上司と部下のキャリア対話の機会を年1回以上設けていきます。

 

・多様な人財の活躍推進

当社では、さまざまな特性を持つ社員一人ひとりが力を発揮し活躍できる職場環境づくりに努めています。2003年に特例子会社㈱ウェルハーツ小田急を設立し、障がい者の社会参加・自立をサポートしています。

 

(障がい者雇用率)

2025年3月末 3.7%

※ 法定雇用率 2.5%(2025年3月末現在)

※ 法定雇用率は段階的な引き上げが見込まれています(2026年7月に2.7%を予定)

 

・健康経営の推進

当社では、社員や社員を支える家族が心身共に健康であることが個人の活力向上や組織の活性化を生み、企業の持続的な成長につながるものと考えることから、「健康管理から疾病を未然に防ぐための健康支援」に重点を置いた健康経営に積極的に取り組んでいます。

各健康経営施策を通じて、「アブセンティーイズム※1の低減」、「プレゼンティーイズム※2の低減」、「ワーク・エンゲージメントの向上」を実現し、安全で安定したサービスの提供につなげます。

※1 病欠

※2 職場に出勤しているが、何らかの健康問題によって業務の能率が落ちている状況

 

 

・価値創造行動の加速

当社では、社員の挑戦を引き出す制度として、新規事業のアイデア公募制度や労働時間の20%を所属部署とは異なる社内プロジェクトに参画できる制度を構築し、社員の自主性に基づく挑戦を促進しています。

既に新規事業5件が事業化されるとともに、これまで本社社員の約18%(延べ人数)が社内プロジェクトに参加するなど、継続的に成果が出ています。

 

 重点課題③成長領域への重点的な人的投資

・人財ポートフォリオの構築

グループの持続的な成長を実現しながら「地域価値創造型企業」を目指すために必要な事業領域ごとの人財像を明らかにしたうえで、育成や採用を通じて最適な人財ポートフォリオの実現を目指します。具体的には、不動産・ホテル・ストア・観光・デジタル領域毎に有資格者の育成、専業会社との人財交流等をKPIに設定します。KPI実現に向け、当社ではデジタル領域においてDX施策が企画・実行可能な高度スキルを有する人財の育成(2026年度末までに約520名)を行うほか、資格・役割に応じた各種研修も計画的・体系的に実施しています。また、金融機関や不動産専業会社の役員級・事業推進者等、外部からの専門人財や即戦力の採用を推進していきます。

 

・従業員のスキルアップ

事業運営上必要な資格の保有者を確保するとともに、自己啓発意欲を高め、従業員の能力開発に資することを目的として、「資格取得支援制度」を2012年度に制定しました。2023年度にはDX推進に向けてデジタル関連の対象資格を拡充するなど、社員へ学びの機会を提供しています。

 

 (当社資格取得支援制度 対象資格数)      (当社資格取得支援制度 申請数)

2012年度

2021年度

2023年度以降

 

2022年度

2023年度

2024年度

56資格

78資格

97資格

 

168件

170件

151件

 

重点課題④次世代経営人財の計画的育成

・モデルキャリアパスの策定

経営管理能力や事業の専門スキルが獲得できるモデルキャリアパスを策定するほか、モデルに基づく積極的な若手社員の登用等の配置や教育を実施していきます。

 

・部長クラスの意思決定力・組織マネジメント力向上

役員候補者である部長クラスは、トップビジネスリーダーに必要なスキルとマインドを獲得するための他流試合型研修プログラムを受講し、意思決定力・組織マネジメント力を高めるなど、経営人財候補の母集団を確保しています。

 

② 指標及び目標

 (女性活躍推進に関する当社グループの実績・目標)

 

2024年度実績

2030年度目標

2050年度目標

女性従業員(正社員)比率

14.8%

20.0%

35.0%

女性管理職比率

8.6%

15.0%

30.0%

男性育児休業取得率

76.5%

100.0%

100.0%

(注)1 当社および連結子会社を合計して算出したものです。

(注)2 男性育児休業取得率について、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉

    に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族

    介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号

    における育児休業等の取得割合を算出したものです。

 

 

 

 (女性活躍推進に関する当社の実績・目標)

 

2024年度実績

2030年度目標

2050年度目標

女性従業員(正社員)比率

9.8%

15.0%

35.0%

女性管理職比率

6.5%

12.0%

30.0%

男性育児休業取得率

90.1%

100.0%

100.0%

(注) 男性育児休業取得率について、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

3【事業等のリスク】

当社グループでは、「小田急グループリスクマネジメント方針」に基づきグループ全体のリスクマネジメント体制を構築し、企業経営に重大な影響を与えるリスクの対策を検討・推進する取り組みを行っています。これらを通じて把握したリスクのうち、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものです。また、以下のリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではありませんのでご留意ください。

その他、気候変動がもたらすリスクについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」にも記載しています。

 

(1)災害等

① 大規模な地震・津波の発生

大規模な地震等が発生した場合、当社グループの各事業において、人的被害、建物・設備が損傷するなどの直接的被害のほか、電力不足等による営業への制約、消費マインドの冷え込みによる収益の減少といった間接的被害により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの事業エリアの一部は南海トラフ地震防災対策推進地域、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域に含まれています。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)の制定、建物・設備の耐震補強工事を推進するとともに、一部の駅において災害発生時の避難場所を示した案内や外国語案内の掲出、行政機関と連携した異常時対応訓練を行い、さらに、全ての駅・関係施設において災害備蓄品を整備するなどの諸施策を実施しています。

② 自然災害の発生

当社グループでは、集中豪雨および暴風等、大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの各事業において、人的被害、建物・設備の損傷、被害箇所の復旧等に伴う費用の増大等のほか、列車運休等の営業上の制約、消費マインドの冷え込み等による収益の減少により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、防災計画に基づいた警戒体制、運行規制の徹底、各種構造物に対する防護工事や雨量計、風速計の設置、危険箇所への定点観測カメラによる監視等を実施しています。

③ 感染症の流行

当社グループは、鉄道・バス・商業施設等多数のお客さまが利用されるサービスを展開しています。当社グループの事業エリアにおいて、新型インフルエンザ等の感染症が大規模に流行した場合、施設を利用されるお客さまの減少や、従業員の感染が多発することで、鉄道の列車運行等の事業運営に支障をきたし、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)を制定し、マスクやアルコール消毒液等の備蓄、情報収集体制の構築等の諸施策を実施しています。

 

(2)事故等

① 事故等の発生

当社グループの各事業において、人為的なミスや機器の誤作動、テロ等の不法行為等によって大きな事故や火災等が発生した場合、人的被害や事業の中断等が生じるとともに、被害者に対する損害賠償責任や施設の復旧等に伴う費用が発生する可能性があります。また、顧客の信頼および社会的評価の低下により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)の制定、リスク事案の共有、計画的な設備更新・点検、各種訓練・教育の充実等により類似事案の発生防止・対応力強化を図っています。

② 保有資産および商品の瑕疵・欠陥

当社グループが保有する資産に、瑕疵や欠陥が見つかった場合または健康や周辺環境に影響を与える可能性等が指摘された場合、改善・原状復帰、補償等にかかる費用が発生する可能性があります。また、当社グループにおいて販売した商品等について瑕疵や欠陥が見つかった場合についても、改善および補償等に伴う費用の発生や信用低下等に伴い当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、構造物への法令に基づく各種検査、商品への衛生検査・表示検査・細菌検査、外部機関による監査等の諸施策を実施しています。

③ システム障害の発生

当社グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。そのため、事業活動に不可欠なシステムやネットワークの安定稼働に必要な対策を実施していますが、コンピューターウイルス等の第三者による妨害行為、自然災害および人為的ミス等により重大な障害が発生した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、「小田急グループの情報システムにおける情報セキュリティ基本方針」を制定し、グループ全体で情報セキュリティに取り組んでいます。また、ネットワーク障害への耐性向上施策のほか、増加するサイバー攻撃に対して、情報セキュリティ体制の構築や、ファイアウォール等の設置、最新の脅威情報等を共有する取り組みを実施しています。

(3)コンプライアンス等

① コンプライアンス

当社グループでは、コンプライアンスを「法令、社内規則、社会通念等のルールを守るとともに、誠実に事業活動を実践していくための考え方およびその取り組み」と定め、推進していますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、法令等に基づく制裁や社会的制裁等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、コンプライアンスアンケートの実施とその結果に基づく活動計画の策定・運用の推進、問題の早期発見・対応のためのコンプライアンス・ホットライン整備、各種研修やセミナーの充実等の諸施策を実施しています。また、ステークホルダーとの健全な関係性構築に向けて、人権尊重およびそれに配慮したサプライチェーン構築へのコミットメントである「小田急グループ 人権方針」「小田急グループ サステナブル サプライチェーン方針」を策定しており、リスク対応、教育・浸透、取引先コミュニケーション等、方針に基づく具体的な運用を推進しています。

② 機密情報管理

当社グループはクレジットカード事業を行っているほか、各種事業において顧客情報等の個人情報を含む機密情報を保有しています。機密情報については厳正に管理していますが、何らかの理由で情報の漏洩等の事態が生じた場合、損害賠償や信用の低下等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、事業継続計画(BCP)を制定し、情報にかかる規程類やマニュアルの整備、セキュリティ対策、定期的な研修・資格取得支援等の諸施策を実施しています。

③ 情報開示

人為的ミス等により不適切な情報開示等があった場合、顧客の信頼および社会的評価の低下等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、それぞれの事業特性に応じた内部統制の整備、運用に努めることで、適時適切な情報開示に取り組んでいます。

(4)経営環境等

① 人財の確保

当社グループの事業は労働集約型の事業が多く、労働力として質の高い人財の確保が重要となります。そのため、優秀な人財を確保、育成し、働きやすい職場環境の確保と健全な労働環境の維持に努めていますが、これを達成できない場合、当社グループの事業展開が制約され、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクへの対応策として、採用WEBサイトの整備、中途採用や多様な採用手法の推進、36協定の順守や処遇改善、福利厚生の充実、業務のシステム化や見直しによる業務効率化等の諸施策を実施しています。

② 法的規制

当社グループは、鉄道事業法、道路運送法、大規模小売店舗立地法、建築基準法等の各種法令や排ガス規制をはじめとした公的規制のもとさまざまな事業を展開していますが、これらの法令・規制、特に東京都・神奈川県における諸制度の変更は当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、鉄道事業における運賃制度については以下のとおりです。

鉄道運送事業者は、旅客の運賃の上限を定め、または変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更ならびに特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条)。

当社グループでは、法改正等に適切かつ迅速に対応するため、定期的な法令改正情報の共有や法令改正に対応した各種研修・セミナーの充実等の諸施策を実施しています。

③ 金利の変動

当社グループは鉄道事業を中心に継続的な設備投資を行っており、借入金や社債等により資金を調達しています。よって、金利の変動および当社の格付の変更が、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、有利子負債に占める長期・固定金利の割合を高く保つことで、金利が大きく変動した場合でも支払利息が急激に増えることのないよう努めています。

④ 重要な訴訟

当社が当事者となる重要な訴訟はありませんが、通常の業務の過程において第三者から訴訟その他の法的手段を提起されたり、行政等から調査を受けたりする可能性があります。これらの対応の負担に加え、仮に当社に不利な判決、決定等が下された場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当該リスクを回避するために、訴訟リスクの低減や法務対応力強化に向けて、契約書様式の制定・活用や顧問弁護士との連携強化、法務教育の充実等の諸施策を実施しています。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績

当期のわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境が緩やかに改善する中、個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、全体として緩やかな景気の回復が続きました。

このような状況のもと、生活サービス業を中心に増収となったことから、営業収益は422,700百万円(前期比3.1%増)、営業利益は51,431百万円(同1.3%増)となりました。また、経常利益は50,474百万円(同0.4%減)となったほか、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に小田急センチュリービルの売却に伴う固定資産売却益を計上した反動等により、51,958百万円(同36.3%減)となりました。

セグメントごとの業績は、次のとおりです。

なお、当社は、2030年度営業利益目標の達成に向けた事業ポートフォリオの最適化のため、業績管理区分を変更しました。これに伴い、従来「運輸業」「流通業」「不動産業」および「その他の事業」としていたセグメント区分を、当連結会計年度から、「交通業」「不動産業」および「生活サービス業」に変更しました。そのため、前連結会計年度の実績を変更後のセグメント区分に組み替えたうえで比較しています。

 

ア 交通業

鉄道業では、輸送面において、本年3月、ご利用ニーズの高い平日夜間の特急ロマンスカー増発や、列車種別ごとの停車駅の見直し等、利便性の向上を目的としたダイヤ改正を実施しました。また、通勤車両5000形2編成を増備したほか、通勤車両3000形について、多様なお客さまのニーズに対応すべく、全車両へ「車いす・ベビーカースペース」を設けるとともに、環境面に配慮したリニューアルを実施し、3編成が営業運転を開始するなど、輸送サービスの向上を図りました。

営業面では、昨年4月、特急ロマンスカーをお得にご利用いただけるサブスクリプション電子チケット「EMot(エモット)ロマンスカーパスポート」の販売を開始しました。さらに、昨年9月、インバウンド旅行者向けに、月間6,500万人が訪問する旅行・レジャー予約サイト「Klook(クルック)」で購入した交通・体験等のチケットを「EMotオンラインチケット」で発券できるデジタルチケットサービスを開始するなど、MaaSアプリケーション「EMot」を活用した諸施策を引き続き実施しました。また、多摩線開業50周年を記念した各種イベントを開催するなど、積極的な旅客誘致による収益の向上に努めました。

施設面では、列車運行の安全性を一層高めるため、相模大野駅、海老名駅、中央林間駅および大和駅にホームドアを設置したほか、大規模地震による被害を抑制すべく、相模大野駅~東林間駅間の橋梁等の耐震補強工事を実施しました。また、犯罪の抑止や事件の早期解決等を目的として、特急車両2編成および通勤車両32編成に車内防犯カメラを設置しました。

バス業では、小田急バス㈱において、昨年10月、乗車ポイントサービス「小田急おでかけポイント」を導入し、乗車時にPASMOを利用したお客さまに対して小田急ポイントの付与を開始するなど、利便性の向上を図りました。また、各社において、運転士不足が生じている状況を踏まえ、安定した輸送サービスを今後も持続的に提供していくため、適正な労働環境の確保を目的としたダイヤ改正や待遇改善等に向けた運賃改定を実施しました。

以上の結果、鉄道業において定期・定期外ともに輸送人員が増加したことに加え、バス業において運賃改定を実施したことなどにより、営業収益は174,927百万円(前期比1.9%増)、営業利益は26,495百万円(同2.2%増)となりました。

 

 

(提出会社の鉄道事業運輸成績表)

種別

単位

当連結会計年度

(2024.4.1~2025.3.31)

 

対前期増減率(%)

営業日数

 

365

△0.3

営業キロ

 

キロ

120.5

0.0

客車走行キロ

 

千キロ

172,355

△1.0

 

定期

千人

404,556

2.0

輸送人員

定期外

294,315

2.5

 

698,871

2.2

 

定期

百万円

42,454

2.3

旅客運輸収入

定期外

72,854

2.0

 

115,309

2.1

運輸雑収

 

3,199

3.7

運輸収入合計

 

118,508

2.2

乗車効率

 

43.8

(注) 乗車効率の算出方法

乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)×100

 

イ 不動産業

不動産分譲業では、小田急不動産㈱において、「リーフィア狛江 蒼翠の街」等の戸建住宅や、「リーフィアレジデンス調布小島町」をはじめとしたマンションを分譲するなど、収益の確保に努めました。

不動産賃貸業では、当社、東京地下鉄㈱および東急不動産㈱を事業主体とする新宿駅西口地区開発計画において、新築工事や、旧小田急百貨店新宿店本館跡地の地下部分等の解体工事を引き続き実施しました。加えて、当社は、㈱小田急SCディベロップメント等と協働のうえ、昨年6月、「藤沢市立鵠沼海浜公園」について、スケートパークのスケールアップおよび商業機能の新設等を行い、「鵠沼海浜公園HUG-RIDE PARK(ハグ-ライド パーク)」としてリニューアルオープンするなど、各エリアの開発計画を鋭意推進しました。また、㈱小田急SCディベロップメントにおいて、新宿駅西口地区開発計画の進捗に伴う「新宿ミロード」の閉館に先立ち、「新宿ミロード フィナーレキャンペーン」を開催し、各種イベントの実施を通じた集客に努めたほか、商業施設「新百合ヶ丘エルミロード」や「本厚木ミロード」のリニューアルを実施するなど、施設の充実および活性化を図りました。

このほか、小田急不動産㈱において、昨年9月、物流施設「小田急不動産ロジスティクスセンター蟹江」が竣工するなど、事業規模拡大に努めました。

以上の結果、不動産分譲業においてマンション販売価格が上昇したことに加え、不動産賃貸業において商業施設やオフィスの賃料収入が増加したことなどにより、営業収益は95,897百万円(前期比4.2%増)となりました。一方、不動産分譲業において前期に利益率の高い自社用地開発物件を売却した反動や販促費の増加等により、営業利益は15,852百万円(同10.7%減)となりました。

 

 

ウ 生活サービス業

百貨店業では、㈱小田急百貨店の全店において、昨年9月、㈱NTTドコモが提供するポイントサービス「dポイント」を導入したことに加え、催事をはじめとする各種営業施策を積極的に展開するなど、収益の確保に努めました。

ストア・小売業では、小田急商事㈱が運営するスーパーマーケット「Odakyu OX」において、愛甲石田店が新規オープンするとともに、狛江店の専門店フロアがリニューアルオープンしました。加えて、各店で買い回りしやすい売り場づくりに努めるなど、お客さまの利便性向上を図りました。

ホテル業では、UDS㈱を外部譲渡したものの、㈱ホテル小田急サザンタワーが運営する「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」において、昨年6月、「サザンタワーダイニング」のメニューを充実させるとともに、眺望を楽しめる食事スペースを増席するなど、より使いやすく、居心地の良い食体験の提供に努めました。

レストラン飲食業では、ジローレストランシステム㈱において新規業態を開発したほか、㈱小田急レストランシステムにおいて新規出店を実施するなど、集客力の強化を図りました。

また、グループ通算制度の適用に伴い、百貨店業およびストア・小売業において決算期を変更し13ヵ月間を連結したことなどにより、増収となりました。以上の結果、営業収益は168,695百万円(前期比4.5%増)、営業利益は9,062百万円(同28.4%増)となりました。

② キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益72,054百万円に減価償却費や法人税等の支払額等を加減した結果、55,877百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ、15,748百万円の資金収入の減少となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、74,495百万円の資金支出となりました。

この結果、これらを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは18,618百万円の資金支出となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、7,040百万円の資金支出と、前連結会計年度に比べ、95,038百万円の資金支出の減少となりました。これは、借入れや社債の発行による収入が増加したことなどによるものです。

なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ25,580百万円減少し、34,952百万円となりました。

③ 生産、受注および販売の実績

当社グループは、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産および受注の実績を金額あるいは数量で示すことはしていません。

そのため生産、受注および販売の実績については、「① 経営成績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しています。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成に際し、経営者は、決算日における資産・負債および報告期間における収入・費用の金額ならびに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針および見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において判断したものです。

また、連結財務諸表の作成における会計上の見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

ア 棚卸資産の評価

当社グループは、多くの棚卸資産を保有しており、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2008年9月26日)を適用しています。これらのうち、分譲土地建物については原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切り下げの方法により算定)を採用しており、市場価格が下落した場合には、簿価の切り下げにより費用が発生する可能性があります。

イ 有価証券の減損

当社グループは、金融機関や取引先の有価証券を保有しています。これらのうち、市場価格のない株式等以外の有価証券については、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っています。

これらの有価証券は価格変動リスクを負っているため、損失が発生する可能性があります。

ウ 固定資産の減損

当社グループは、多くの固定資産を保有しています。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等多くの前提条件に基づき算出しているため、前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。

エ 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しています。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少または増加した場合には、評価性引当額の追加計上または取崩しが必要となる場合があります。

オ 退職給付債務および費用

従業員の退職給付債務および費用は、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務および費用に影響する可能性があります。

② 財政状態および経営成績

(財政状態)

総資産は、新宿駅西口地区開発計画の進捗に伴い建設仮勘定が増加したものの、現金及び預金が減少したことなどから、1,299,991百万円(前連結会計年度末比1,586百万円減)となりました。

負債は、有利子負債が増加したものの、新宿駅西口地区開発計画に係る未払金が減少したことなどから、820,728百万円(同20,673百万円減)となりました。

純資産は、自己株式を取得したものの、利益剰余金が増加したことなどから、479,263百万円(同19,086百万円増)となりました。

(経営成績)

ア 営業収益および営業利益

当連結会計年度における営業収益は422,700百万円(前期比3.1%増)、営業利益は51,431百万円(同1.3%増)となりました。なお、各セグメントの営業収益および営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しています。

イ 営業外損益および経常利益

経常利益は50,474百万円(同0.4%減)となりました。

ウ 特別損益および親会社株主に帰属する当期純利益

前期に小田急センチュリービルの売却に伴う固定資産売却益を計上した反動等により、税金等調整前当期純利益は72,054百万円(同29.1%減)となり、ここから法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は51,958百万円(同36.3%減)となりました。

③ 資本の財源および資金の流動性についての分析

ア 設備投資による資本の投下

当社グループは、鉄道事業において、安全・防災対策の強化やサービスの向上、持続可能な運営体制の構築に努めているほか、他の事業においても、沿線価値の向上を目指して継続的な設備投資を行っています。当連結会計年度は総額65,388百万円の設備投資を実施しました。

なお、各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」の「1 設備投資等の概要」に記載しています。

イ 資金需要の主な内容と動向

当社グループの主要な資金需要は、鉄道事業における安全・防災対策の強化やサービスの向上、持続可能な運営体制の構築に不可欠な設備投資や、沿線価値の向上に資する開発投資等ですが、そのほかに人件費等の事業運営のための運転資金の支出があります。また、今後の動向としては、設備投資が資金需要の中で最も高い割合を占める状況が続くと考えています。

ウ 資金調達

当社グループの資金調達は、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金等、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しています。

なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、資金繰りの波動により、短期的な資金需要が発生する場合には、極力グループ内資金を活用するほか、適宜、コマーシャル・ペーパー(CP)の発行等により緊急時の流動性を確保しています。

エ 資金の流動性

当社グループは、鉄道事業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。

 

④ 経営指標

当社グループでは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営の基本方針 ③ 企業価値向上に向けた財務方針」に記載のとおり、ROE、営業利益、有利子負債/EBITDA倍率を重要指標としています。

なお、当連結会計年度については、以下のとおりです。

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

ROE(注)

20.3%

11.7%

営業利益

50,766

51,431

有利子負債/EBITDA倍率

6.5倍

6.8倍

(注) 親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(有価証券評価差額除く)

 

(参考)

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

借入金・社債等

576,974

609,051

鉄道・運輸機構長期未払金

49,976

43,737

有利子負債計(注)

626,950

652,789

EBITDA

96,552

95,386

(注) リース債務および社内預金は除いています。

5【重要な契約等】

(財務制限条項等が付された借入金契約)

(1) 財務制限条項が付された借入金契約

会社名

契約締結日から

弁済期日まで

契約締結先

当連結会計年度末残高

(百万円)

担保の有無

財務制限条項

小田急電鉄㈱

自 2012年9月21日

至 2027年9月24日

生命保険会社

地方銀行

17,500

なし

(2)①のとおり

自 2015年7月31日

至 2025年8月7日

都市銀行

地方銀行

第二地方銀行

10,000

(2)②のとおり

自 2015年12月25日

至 2025年12月29日

地方銀行

第二地方銀行

10,000

自 2016年8月5日

至 2026年8月10日

都市銀行

地方銀行

10,000

自 2024年8月27日

至 2034年8月31日

地方銀行

第二地方銀行

協同組織金融機関

外国銀行

50,000

 

(2) 財務制限条項の内容

① 株式会社格付投資情報センターによる借入人の発行体格付または株式会社日本格付研究所による借入人の長期優先債務格付をBBB-以上に維持すること

② 株式会社格付投資情報センターによる借入人の発行体格付または株式会社日本格付研究所による借入人の長期発行体格付をBBB-以上に維持すること

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、グループ経営理念および経営ビジョンを踏まえて選定した6つのマテリアリティ(重要テーマ)を経営の中心に据え、社会課題の解決を通じた持続可能な成長を目指しています。

なかでも、社員が自由に提案できる公募制度「climbers(クライマーズ)」では、社会課題起点で顧客と社会に新しい価値を提供する事業の立ち上げを推進しています。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は146百万円です。