本項に記載されている将来に関する事項は、当連結会計年度末において入手可能な情報に基づき、判断したものであります。
京急グループは、「都市生活を支える事業を通して、新しい価値を創造し、社会の発展に貢献する」ことなどをグループ理念として掲げております。また、グループ理念の持続的な実現が、社会と京急グループの持続可能性を高めることにつながるという考えのもと、グループ理念と不可分一体の方針として、サステナビリティ基本方針を策定しております。引き続き、社会価値および企業価値の持続的な向上を図ってまいります。
イ.第20次総合経営計画の概要
2024年度から、2040年度を長期ビジョンの実現年度、2024年度から2026年度までを中期経営計画期間とした第20次総合経営計画を推進しています。
サステナビリティ基本方針に基づき社会価値・企業価値向上を目指す「サステナビリティ推進方針」を、あらゆる事業・経営活動の基礎として掲げたうえで、移動プラットフォームとまち創造プラットフォームの相互価値共創を軸とする「沿線価値共創戦略」と、その推進を支える「経営基盤重点項目」を設定しています。また、経営計画期間中に、当社グループならではの強みを活かし、特に重点的に取り組む事業として「重点事業展開」を設定しています。
(京急グループ総合経営計画体系図・骨子)


(注)下線部分は、前回公表時(2024年5月)の内容から一部変更した箇所(2025年5月12日公表)
(注)京急グループ総合経営計画の詳細は、当社ウェブサイト
(https://www.keikyu.co.jp/ir/policy/vision/)に掲載しております。
ロ.第20次総合経営計画の一部変更(2025年5月12日公表)
当社は、2024年5月に公表した第20次総合経営計画について、2025年5月12日に目標経営指標等の変更を含めた内容の見直しを公表しました。
本見直しは、第20次総合経営計画公表後に実施した株主・投資家との対話を通じて、目標経営指標と資本市場の期待との間に乖離が生じていることを認識したため実施したもので、不動産事業戦略や各事業における資本収益性の向上、資本政策の見直し等により目標経営指標の水準を引き上げるとともに、達成時期を明確化しました。各施策を着実に実行し、持続的な企業価値向上の実現を目指してまいります。
(目標経営指標の見直し内容)


(注)第20次総合経営計画の一部変更内容(2025年5月12日公表)については、当社ウェブサイト
(https://www.keikyu.co.jp/ir/policy/vision/)に掲載しております。
ハ.沿線価値共創戦略
沿線価値共創戦略は、社会課題や価値観の多様化に、移動とまち創造の両プラットフォームの「相互価値共創」のスパイラルアップによって新しい価値を創出することで対応し、地域と当社グループの持続的な発展を目指す戦略です。「相互価値共創」とは、鉄道事業をはじめとする「移動プラットフォーム」が、あらゆる交通手段を用いた移動環境の最適化を通じて、まちの価値向上と沿線範囲を拡大する一方で、不動産・レジャー事業などの「まち創造プラットフォーム」が、移動のきっかけや人の流れの需要を創出することで、相互の事業による相乗効果を最大化し、新しい価値を生み出すことを意味します。
この沿線価値共創戦略を通じて、鉄道会社やデベロッパーの枠を超えた、地域事業者や自治体等の沿線全体で価値を共創する「ローカルプラットフォーマー」として、沿線の各地域に「移動」と「住・働・楽・学」が揃う多極型まちづくりを推進しています。
(沿線価値共創戦略の概念図)

ニ.経営基盤重点項目
(イ)事業構造変革
不動産事業において、不動産価値の顕在化による資本収益性の向上と成長投資の原資確保を目的に、長期保有前提の賃貸事業から回転型事業への本格転換を図ります。具体的には、私募ファンドに加えて私募リートを組成し、安定的・継続的な流動化を図り、2030年度までに総額1,000億円以上の不動産を流動化し、その不動産価値の顕在化を目指します。また、私募リート・私募ファンドへの不動産売却により、沿線地域のプラットフォーマーとして継続的な関与余地を残すことで、まちづくり・沿線価値共創に貢献するとともに、アセットマネジメント、プロパティマネジメント、ビルマネジメント業務等を通じたフィービジネス収益源の確保を目指します。さらに、これらの取り組みを着実に推進するため、2025年4月に新設したCRE戦略部をはじめ、回転型事業、フィービジネスなど不動産事業の推進体制の強化を図ってまいります。
このほか、鉄道事業においては、ワンマン運転をはじめとする次世代型オペレーションを推進するほか、バス事業においては、さらなる路線最適化等を実施し、効率化・省人化を図るなど、各事業において資本収益性向上に資する施策に取り組みます。
(ロ)顧客視点の徹底
顧客の多様なニーズに応じたサービス提供による顧客体験価値向上を目指し、当社グループが提供しているサービスを通じて蓄積したデータの一元化・可視化、グループ全体での横断的活用を推進することに加え、体制整備や人財育成による意識・風土改革を進めています。
(ハ)人的資本経営の推進
多様な視点・顧客視点で物事を捉え、価値創造・共創ができる「個」の成長の後押しと、信頼と協力を大切にして、異なる「個」の創発を促す組織・カルチャー醸成の両輪により、長期ビジョンの実現・企業価値の向上を目指します。また、エンゲージメントサーベイを継続的に実施し、人的資本経営に関わる各取り組みの仮説検証を組織・職場の様々なレベルで実行できる体制を確立します。
(ニ)財務マネジメントの強化
当社グループは、大規模成長投資を着実に推進するための財務健全性の確保と資本効率向上の両立、および資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を長期的な基本方針として、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けた取り組みを推進しています。2025年5月12日に公表した目標経営指標等の見直しにおいては、ROE目標の引き上げと達成時期を明確化するとともに、株主還元の強化とその前提となるキャッシュアロケーションを明確化しました。
また、当社グループが注力する品川駅周辺開発をはじめとする成長投資を着実に実行するため、重要経営指標として「純有利子負債/EBITDA倍率」に加え、最適資本構成をもとに「自己資本比率」目標を明確化することで、バランスシートマネジメントを推進します。さらに、各事業の資本収益性の向上に向けた事業別ROIC(注1)-WACC(注2)管理を拡充・継続するなど、様々な取り組みを徹底することで財務マネジメントの強化を推進してまいります。
(注1)投下資本利益率(投下した資本に対して生み出した利益の割合)
(注2)加重平均資本コスト(資金調達に要する費用の平均値)
(不動産回転型ビジネスの推進イメージ図)

ホ.重点事業展開
第20次総合経営計画において、当社グループならではの強みを活かし、特に重点的に取り組む事業として「重点事業展開」を設定しており、各エリアにおいて取り組みを進めています。具体的には、品川・羽田・横浜を結んだ「成長トライアングルゾーン」と各エリアとの相互連携により、沿線の発展・活性化を図ります。
品川エリアにおいては、トヨタ自動車㈱と共同で高輪3丁目地区事業計画の2029年度竣工・開業を目指すとともに、当社グループが行う開発・品川駅整備のみならず、周辺開発やリニア中央新幹線の開業等の効果を最大限取り込み、沿線全体に波及させます。
羽田エリアにおいては、羽田空港第1・第2ターミナル駅引上線の整備によって抜本的に輸送力を増強するとともに、周辺エリアの活性化を図り、日本の玄関口・羽田空港のポテンシャルを最大限に活用します。
このほか、川崎や横浜エリアにおける開発プロジェクトのほか、都市近郊リゾートみうらの創生、沿線各地に「住・働・楽・学」が揃う中核拠点を整備する多極型まちづくりの推進等により、沿線全体の活性化に取り組んでいます。
(重点事業展開の全体像)

(1)サステナビリティに関する取り組みの全体像
グループ理念・サステナビリティ基本方針に基づき、当社グループが持つ強みを最大限に活かし、事業活動を通じて、沿線地域の経済的・社会的価値を持続的に創造してまいります。
また、本項に記載されている将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、判断したものであります。
サステナビリティへの取り組みを経営戦略と一体的に推進するため、経営戦略室長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において経営戦略およびサステナビリティに関する諸課題を議論し、リスク管理委員会との連携を図ったうえで、取締役会に提言・報告することで、取締役会が適切に管理・監督を行っております。
当社グループでは、グループ理念と一体不可分のサステナビリティに関する方針として、「サステナビリティ基本方針」を定めており、「社会の持続的発展への貢献と、京急グループの持続的発展のよりよい循環を目指します。」として、3つのテーマを設定し、グループ理念を補完しております。
この基本方針のもと、社会価値・企業価値のさらなる向上を目指し、マテリアリティ分析に基づき、ステークホルダーおよび当社グループにとって重要度の高い課題を抽出したうえで、各課題をカテゴライズして、サステナビリティ重要課題を特定しております。また、特定したサステナビリティ重要課題の解決を目的に非財務KPIを改めて設定し、PDCAサイクルを通じて進捗管理を行うとともに、施策・KPIの改善を図り、中長期的な社会価値・企業価値の向上を目指します。(後述の「ホ.指標および目標」を参照)
さらに、第20次総合経営計画においては、長期経営方針の一つとして「サステナビリティ推進方針」を定め、サステナビリティ基本方針を基礎として経営・事業活動を推進することで、社会価値・企業価値の向上を推進することを掲げております。
ハ.人財の育成および社内環境整備に関する方針、戦略
人財の育成および社内環境整備に関する方針、戦略、指標および目標(後述の(3)人的資本・多様性に関する取り組みを参照)
当社グループの持続可能性は、沿線地域の持続可能性と極めて関連が深く、人口減少等による沿線地域の活力低下は重大なリスクと認識しております。また、気候変動に関する移行・物理的リスクおよび人的資本に関するリスクについても、持続可能な企業活動に大きな影響を及ぼすリスクと認識しております。
これらのリスクについては、サステナビリティ委員会をはじめとするガバナンス体制(前述の「イ.ガバナンス体制」を参照)のもと、適切な対応に努めてまいります。
サステナビリティ重要課題および主な非財務KPI
(注)当社実施の調査に基づく
(2)気候変動への取り組み
当社グループは、世界全体における気候変動による経済をはじめとしたさまざまな分野における影響の大きさに鑑み、「地球環境保全への貢献」を当社グループのサステナビリティ重要課題として認識しております。
当社グループが運営する公共交通機関は、自家用車と比べ温室効果ガス排出量が少なく、環境にやさしい交通手段であることから、これまでも公共交通の利用促進・モーダルシフトを推進するため、「ノルエコ(乗るだけでエコ)」としてPR活動等を続けてまいりました。
さらに持続可能な社会の形成と事業活動を推進するため、2021年度に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同する旨を表明し、2022年度に長期環境目標として「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」を策定のうえ、TCFD提言に基づく情報開示を実施しました。以降毎年見直しを行い、気候変動に対する取り組み施策および開示内容の拡充を図っています。
今後も引き続き、シナリオ分析の深化等による開示内容の充実化を図るとともに、温室効果ガス排出量の削減に向けた「省エネ」「創エネ」「再エネ」に資する取り組みを積極的に検討・実施し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
イ.ガバナンス
(イ)ガバナンス体制
「(1)サステナビリティに関する取り組みの全体像」の「イ.ガバナンス体制」を参照
(ロ)気候変動に関するガバナンスの状況
(ハ)役員報酬制度への環境指標の導入
2023年度から、サステナビリティへの取り組みを一層推進することを目的に、執行役員賞与の評価項目の一部に、非財務指標であるESG指標を採用しています。環境については、CDP(注1)による評価結果を指標としております。また、ESG指標で評価される報酬の割合は、執行役員賞与のうち連結業績評価分(注2)の10%となります。
(注)1.企業等の環境関連の戦略や取り組みなどを評価する外部団体
2.執行役員賞与のうち、連結業績を評価し決定する部分(職責や業務分担を考慮し、設定)
ロ.戦略(シナリオ分析)
(イ)分析対象事業
京急グループすべての事業
(交通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、流通事業、その他の事業)
(ロ)シナリオの設定
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等が公表しているシナリオを参照のうえ、移行リスクと物理的リスクがもたらす影響の全体的な幅を捉えるため、設定シナリオを脱炭素社会が実現するシナリオ(世界的な平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃程度に抑える)と地球温暖化が進展するシナリオ(平均気温の上昇が4℃以上となる)に分け、リスク・機会の特定と影響度評価、またリスクへの対処および機会を捉えた取り組みや今後の方向性を定めました。
(注)脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等と想定
(ハ)気候変動によるリスク・機会の特定ならびに時間軸および影響度の評価
(注)1.交:交通事業、不:不動産事業、レ:レジャー・サービス事業、流:流通事業、他:その他の事業
2.時間軸:短期0~1年(中期経営計画の最終年である2026年度までを想定)、
中期1~5年(2030年度までを想定)、長期5~25年(2050年度までを想定)
(ニ)財務的な影響の定量評価(事業別)
特定した気候変動にともなうリスク・機会において、公表されているデータ等を基に、一部の項目においてシナリオごとの2030年および2050年時点の影響額を試算ならびに影響度の定量評価を行いました。
(注)事業への財務影響度:大(10億円以上)、中(1億円~9億円)、小(1億円未満)と評価
(影響額の主な試算結果)
a.対象:すべての事業
移行リスク(政策・法規制)
(注)1.4℃シナリオでは、環境政策の積極的な推進はなく、炭素税は導入されないと想定
2.ネットゼロ達成のため炭素税の課税はないと想定
b.対象:鉄道事業
(a)移行リスク(技術)
(注)1.4℃シナリオでは、環境政策の積極的な推進はなく、炭素税は導入されないと想定
2.2024年度から開始した鉄道全線再エネ化にともなう削減効果は加味し、その他において適切な
投資等を行わず、Scope1排出量が削減されなかった場合を想定
3.2031年以降の具体的な省エネ設備等の更新・投資は今後検討
(b)移行リスク(市場)
(注)長期における使用電力量は中期よりも低減することが推測されるため、各シナリオにおける2050年
時点のエネルギー調達コストは2030年時点を上回らないと想定
(c)物理的リスク(急性)
当社沿線に並行・横断する河川のうち、浸水による影響が特に大きいと考えられる以下の河川周辺における、鉄道資産等への影響額を試算しました。
(対象河川) ①多摩川・鶴見川 ②帷子川・宮川 ③平作川
(注)1.現在の100年に一度規模の影響額に対する、各年時点のリスク増加分
(2030年時点における洪水発生頻度は、現在と概ね同等であると想定)
2.脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等と想定
3.リスク増加分を含む全体の影響額と比較し評価
(d)物理的リスク(慢性)
(注)1.電力調達価格および夏日・真夏日・猛暑日の日数を基準に試算した、2020年時点の推計コスト
に対する増加分
2.脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等
と想定
3.増加分を含む全体のコストと比較し評価
4.2030年および2050年における真夏日ならびに猛暑日は増加する見込み
ただし、電力調達価格は低減することが推測されるため、1.5℃シナリオにおける2050年時点
のエネルギー調達コストは2020年時点の推計コストを上回らない想定
(e)機会
(注)1.4℃シナリオでは、現状以上の省エネ推進の取り組みはなく、炭素税も導入されないと想定
2.2031年以降の具体的な省エネ設備等の更新・投資は今後検討
(ホ)シナリオ分析による考察と今後の方向性
シナリオ分析の結果、脱炭素社会が実現する世界では、当社グループすべての事業において、炭素税が導入された場合の課税コストやエネルギー調達コストの増加が想定されます。また、地球温暖化が進展する世界では、自然災害の激甚化・頻発化に伴い、浸水害による資産への被害および鉄道事業においては運休による収入の減少、さらには平均気温の上昇による空調コストの増加等が見込まれることが財務的な評価により明らかとなりました。
一方で、脱炭素社会が実現する世界においては、「省エネ」「再エネ」による脱炭素の取り組みによってエネルギー調達コストや炭素税の課税コストが低減できることが分かりました。また、自然災害や気温上昇の影響はあるものの、地球温暖化が進展する世界と比べ、資産等への被害、収入の減少や空調に対するエネルギー調達コストの増加が限定的であることも分かりました。その他、環境優位性の維持・向上による公共交通機関利用者の増加、環境性能の高い不動産物件による競争力上昇と売上増加等の機会を得ることも予想されます。
これらを踏まえ当社グループでは、脱炭素社会が実現する世界に向けて「省エネ」「創エネ」「再エネ」に資する取り組みを加速するとともに、引き続きリスク・機会に対する財務影響評価を行います。特に影響の大きいリスクと認識した事項を中心に対処方針を検討し、リスクの最小化とレジリエンスの向上に努めることで「社会の持続的発展への貢献」と「京急グループの持続的発展」のよりよい循環による豊かな沿線の実現を目指してまいります。
ハ.リスク管理
「(1)サステナビリティに関する取り組みの全体像」の「ニ.リスク管理」を参照
ニ.指標および目標
(イ)温室効果ガス排出量の削減
当社グループは、脱炭素社会の実現および持続的発展が可能な社会の形成に貢献するため、「京急グループ 2050年カーボンニュートラル」を掲げ、以下の目標を定めております。
a.長期目標
2050年度において、京急グループ全体での温室効果ガス排出量を実質ゼロ
b.中間目標
2035年度において、京急グループ全体での温室効果ガスの排出量を2019年度実績と比較して70%削減(2024年度から実施している、京急線全線において運行に使用する電力を再生可能エネルギー由来の電力へ置き換える取り組みにより、従来目標である「2030年度における京急グループ全体での温室効果ガス排出量を2019年度実績と比較して30%削減」の大幅な前倒し達成を見込んでいるほか、日本政府による温室効果ガス排出量中間目標の見直しに基づき、2025年度から目標を上方修正)
各年度の実績の詳細は、当社ウェブサイト
(
(ロ)サステナビリティ重要課題に基づくKPI
当社では、2024年5月に公表した第20次総合経営計画とあわせて、当社グループが長期的・持続的に社会へ価値を提供するため、サステナビリティ重要課題を見直し、「地球環境保全への貢献」をサステナビリティ重要課題のひとつとして特定しています。さらに、関連する非財務KPI(重要業績指標)の指標および目標を設定し、適切な取り組みの推進とともに、モニタリングを図っております。
「(1)サステナビリティに関する取り組みの全体像」の「ホ.指標および目標」を参照
その他、気候変動への取り組みの詳細は、当社ウェブサイト
(
(3)人的資本・多様性に関する取り組み
イ.戦略
(イ)人的資本経営の推進
多様な視点・顧客視点で物事を捉え、価値創造・共創ができる「個」の成長の後押しと、多様な価値観の尊重、信頼と協力を大切にして、チャレンジできる組織・カルチャー醸成の両輪により、長期ビジョンの実現・企業価値の向上を目指してまいります。また、エンゲージメントサーベイを継続的に実施し、人的資本経営に関わる各取り組みの仮説検証を組織・職場のさまざまなレベルで実行できる体制を確立してまいります。

(ロ)推進項目
a.人財・「個」の成長
働く一人ひとりが自身の貢献領域を広げ、新たなチャレンジに踏み出し、個の力を最大限に発揮することを後押しし、成長を実感できる状態を実現するとともに、そのための制度・仕組みづくりを推し進めてまいります。
当社では、従業員一人ひとりのキャリアの充実化を図るため、職階・コースに応じたさまざまな研修を提供しております。課長~部長相当職以外の一般職においては、鉄道コース、事務コース、総合コースの3つのコースに分けており、各コースに期待する役割、能力に応じて、個々の専門性や経験を最大限に活かしながら、従業員の能力の伸長とキャリア形成を図っております。
(施策例)
・リスキリングの機会創出 DX研修の実施
・ICT人財の育成方針および教育体系見直し
・一部鉄道現業職において希望制での選考および登用を実施
b.組織・カルチャー醸成
働く人々の意識やマネジメントのあり方を、多様な価値観の尊重、信頼と協力を大切にし、自律・共創を促すものへと変革できるよう、社内環境の整備を行ってまいります。職責に応じたマネジメント研修の強化や、各種対話の機会創出、チャレンジしやすい組織風土づくりを推進しています。
(施策例)
・リーダーシップ・マネジメント研修の充実(経営職・現業)
・経営職に対する多面観察およびフィードバック研修の実施
・社長とのタウンホールミーティングの実施
・新価値創造プログラム「ICHIRYU(一粒)」の充実化
c.「個」・組織の土台づくり
前述の「人財・『個』の成長」「組織・カルチャー醸成」を効果的に進めていく土台づくりとして、人財の戦略的確保や、働くための十分な環境整備を推進しています。
採用の拡充による人財確保や、職場環境施設の充実や健康経営の推進等による働きやすい環境の整備、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンとワークライフバランスに関するさまざまな制度の充実化に取り組んでいます。
(施策例)
・カムバック採用やITなど専門人財をはじめとした採用拡充
・寮の住環境改善、寮生支援充実の取り組み実施
・休暇制度をはじめとした法定以上の制度拡充
・経済産業省が推進する「健康経営優良法人 2025(大規模法人部門)」に認定
・グループ合同の健康促進イベントをはじめとした健康管理に関するイベントやセミナーの実施
・ハラスメント防止や人権に関する啓発活動の継続実施
ロ.指標および目標
人的資本経営を推進するうえで、年齢、性別、家庭事情等を問わず、働きやすく、活躍でき、そして満足度の高い企業を目指し、以下の指標の進捗管理を重点的に行ってまいります。
(人的資本における指標および目標)
(注)1.障がい者雇用比率を除く各指標については、単体ベースの数値を記載しております。
2.外部調査会社の提供する従業員エンゲージメント調査サービスにおける肯定的・中立的回答率であります。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
当社グループの財政状況および業績に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項については、以下のようなものがあります。当社グループは、これらの事業等のリスクを認識したうえで、事態発生の回避および発生時の対応に努めております。
当該リスクの顕在化する可能性の程度や時期については、現時点において、明確に想定できませんが、事業の遂行にあたっては、取締役会において、想定されるリスクとその対応を含めて、意思決定を行っております。
また、グループ重要リスク調査を実施し、想定しうるリスクの洗い出し、リスクを最小化するための取組計画の策定および取組状況を集約し、取締役会でリスクの確認と対応の方向性について報告した後、グループ会社社長が出席するグループ社長会で共有しております。さらに、リスク管理委員会では当社グループのリスク情報を集約し、一元的に管理することでリスク管理体制の強化に努めております。
また、本項に記載されている将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、判断したものであります。
(1)社会的・経済的な影響
イ.少子高齢化の進行による影響
少子高齢化の進行などの要因により地域人口が減少した場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.リスクが沿線全域に与える影響
当社グループの事業は、都心から品川、羽田空港、川崎、横浜を経て三浦半島に至る当社線沿線を中心とした地域に集中して展開しているため、沿線地域の発展と当社グループの業績は密接な関係にあります。このため、社会的・自然的要因等により沿線地域の発展が阻害された場合、あるいは沿線地域が壊滅的な被害を受けた場合、当社グループは大きな経済的影響を受ける可能性があります。
ハ.生活様式の変化による影響
在宅勤務の増加による移動減をはじめとした生活様式の変化によっては、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ニ.品川駅周辺開発による影響
国土交通省による品川駅西口基盤整備事業の推進に伴い、当社所有地の段階的な譲渡や施設の一部閉鎖など、一時的に当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新しい生活様式や社会的価値観の変化などにより、不動産の賃貸需要が著しく減少した場合、もしくは建設工事費が高騰した場合、開発計画が変更となる可能性があります。
ホ.羽田空港への新たなアクセス路線による影響
羽田空港への新たなアクセス路線が検討されているため、この推移によっては、将来的に競争の激化により、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ヘ.訪日外国人の減少による影響
世界的な恐慌とりわけアジア諸国における景気の急速な減退、東ヨーロッパおよびロシア地域における政治的・軍事的緊張の高まりによる安全保障情勢の変化、感染症等による国際的な渡航制限等により訪日外国人が大幅に減少した場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)法的規制・規制緩和等による影響
イ.法的規制による影響
当社グループの基幹事業である交通事業は、鉄道、バスなど公共輸送機関としての性格上、厳格な法規制の下に事業を行っているため、鉄道事業法、道路運送法および労働諸法制の定めにより、事業の拡大・縮小、通常の業務運営、運賃および料金の設定・変更や乗務員の労働条件などにおいて規制を受けており、規制の強化や社会情勢等の変化によっては、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.規制緩和による影響
バス事業等においては、規制緩和による他業種などからの新規参入が容易であることから、引き続き厳しい競争にさらされる可能性があり、これらの推移によっては、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ハ.環境規制による影響
交通事業は、公共交通機関として環境負荷が小さいという長所があるものの、今後、環境に対する規制が強化された場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)財政的な影響
イ.金利変動・格付引下げによる影響
当社グループは、鉄道事業をはじめ各事業において多額の設備投資を行っており、金融機関からの借入金や社債等の有利子負債残高が高水準で推移しております。このため、今後、市場金利の大幅な変動や格付機関による当社発行債券の格付の引下げがあった場合、利息負担の増加や調達金利の変動などにより、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.金融市場の混乱等による影響
金融市場の混乱等により、資金調達に制約を受けた場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ハ.地価・株価の変動や税制の改正による影響
当社グループは、事業の性格上必要な土地(事業用および販売用)や株式などの投資有価証券等を多く保有しておりますが、市況の動向等による地価や株価の大幅な下落や保有に対する課税強化などの税制の改正等があった場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ニ.人件費負担増による影響
当社グループは、主として労働集約型の事業を展開しているため、退職者の増加、採用難による人手不足の影響により、賃金水準が急激に高騰した場合、人件費負担増などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
ホ.物価・燃料費の高騰による影響
当社グループは、修繕工事等の継続的な実施や事業に必要な電力、軽油等を多大に消費しているため、物価や燃料価格が高騰した場合、あるいはその供給不足が発生した場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)事故等による影響
イ.安全を阻害する事態による影響
当社グループは、鉄道、バス、ホテル、百貨店、ストアなどの営業施設を多くのお客さまにご利用いただいており、安全の確保、無事故の継続を最も重要な課題として取り組んでおります。このうえで、不慮の火災や事故・障害の発生など、安全に対する信頼を損なうような事態が発生した場合、当社グループ全体の根幹を揺るがすような重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、食品等を取り扱う各事業において、衛生管理には十分注意しておりますが、当社グループ固有の管理および社会全般にわたる一般的な品質問題等が発生した場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.個人情報流出等の問題による影響
当社グループは、鉄道やカード事業をはじめ、各事業において個人情報を保有しており、適正な管理に努めておりますが、万一、個人情報が流出するなどの問題が発生した場合、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)災害・テロ、疾病等による影響
イ.自然災害または不法行為による影響
地震、台風等の自然災害あるいはテロ等の不法行為等により、当社グループの営業施設やコンピューターシステム等の設備の損壊を受けた場合、当社グループの財政状態や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
ロ.疾病の発生・流行による影響
新型ウイルスなどによる疾病の発生・流行等による恐慌等により、お客さまや従業員等が罹患し被害を受けた場合、当社グループの財政状態や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(6)不正・不法行為、不祥事等による影響
当社グループは、「コンプライアンス規程」、「京急グループ・コンプライアンス指針」および「京急グループ・役員および従業員行動基準」に基づいてコンプライアンス順守に関する教育を定期的に実施するなどの啓発活動に努めておりますが、役職員等による重大な不正・不法行為、不祥事等が発生した場合、当社グループへの信頼の低下などにより、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記の記載事項は、当社グループの事業その他について予測される主なリスクを可能な限り具体的に例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものとは限りません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
また、本項に記載されている将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当期のわが国経済は、雇用および所得環境が改善するなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。
このような事業環境のなか、当社グループは、「京急グループ第20次総合経営計画」をスタートさせ、鉄道事業における次世代型オペレーションの推進や不動産事業における流動化の継続による資産の組み換えを強化するなど、キャッシュ創出に向けた事業構造変革を進めるとともに、財務健全性の確保と資本収益性の向上を目指す財務マネジメントの強化に努めました。
以上の結果、営業収益は2,938億6千万円(前期比4.7%増)、営業利益は356億4千2百万円(前期比27.1%増)、経常利益は349億7千1百万円(前期比23.1%増)となりましたが、前期に品川駅西口地区における当社土地持分の一部譲渡に伴う固定資産売却益を計上した反動などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は243億1百万円(前期比71.0%減)となりました。
次に、セグメント別の業績についてご報告いたします。
(イ)交通事業
鉄道事業では、前期に実施した鉄道旅客運賃の改定により、旅客運輸収入が増加しました。また、全線の輸送人員は、移動需要が増加したことなどにより、前期比で2.9%増(定期2.5%増、定期外3.4%増)となりました。さらに、羽田空港駅の輸送人員は、羽田空港国内線および国際線の航空旅客数が増加したことなどにより、前期比で10.4%増(第1・第2ターミナル駅9.8%増、第3ターミナル駅12.4%増)となりました。このほか、ダイヤ改正を実施し、沿線における各拠点の利便性向上とさらなるまちの活性化を目指してイブニング・ウィング号の乗車駅を追加したほか、羽田空港をご利用のお客さまの利便性の向上を図るため、早朝および夜間時間帯において羽田空港発着の列車を新設および増発しました。また、訪日外国人の受け入れ体制強化とさらなる利便性向上のため、京急線全72駅においてクレジットカードによる乗車券の販売を開始したほか、一部の駅でクレジットカードやデビットカード等のタッチ決済による乗車サービスの実証実験を開始しました。さらに、引き続き安全対策を最重要課題とし、青物横丁駅、生麦駅および金沢八景駅にホームドアを設置しました。
バス事業では、京浜急行バス㈱は、前期に実施した運賃改定などにより、一般路線および空港中距離路線が好調に推移しました。また、川崎鶴見臨港バス㈱は、移動需要の増加などにより、一般路線等が好調に推移しました。
以上の結果、交通事業の営業収益は1,185億3千1百万円(前期比7.5%増)、営業利益は188億7千7百万円(前期比74.1%増)となりました。
(業種別営業成績)
(提出会社の鉄道事業運輸成績)
(注)乗車効率の算出方法
(ロ)不動産事業
不動産販売業では、当社および京急不動産㈱は、分譲マンション「プライム横浜岸谷」、「プライムスタイル横浜生麦」、「プライム横浜井土ヶ谷」、「プレミアムレジデンス横須賀中央」および「プライム川崎」を完売しました。また、「プライムパークス横浜並木 ザ・レジデンス」および「プライムフィット横浜富岡」の販売および引渡しを行いました。
不動産賃貸業では、賃貸オフィスビルや商業施設が順調に稼働したほか、投資した不動産ファンドからの配当収入が増加しました。また、みなとみらい21中央地区において、複合施設「横浜シンフォステージ」を開業しました。
このほか、当社は、リスクの分散および早期の資金回収を図るため、事業用地の一部の持分を売却したほか、当社および京急不動産㈱は、保有資産の組み換えによる収益性の向上を図るため、賃貸物件等を売却しました。
しかしながら、前期の分譲マンションの売上の反動などにより、不動産事業の営業収益は539億6千4百万円(前期比11.0%減)、営業利益は69億2千8百万円(前期比28.3%減)となりました。
(業種別営業成績)
(ハ)レジャー・サービス事業
ビジネスホテル業では、京急EXホテル・京急EXインは、国内宿泊需要およびインバウンド需要の増加により、客室単価および稼働率が上昇し、好調に推移しました。また、「京急 EXホテル みなとみらい横浜」を開業したほか、「京急 EXイン 品川・新馬場駅北口」をリニューアルオープンしました。
レジャー関連施設業では、京急開発㈱は、「ボートレース平和島」や「BIG FUN平和島」などにおいて、来場者の獲得に努めました。また、「ボートレース平和島」において、安全の確保および施設運営の効率化を図るため、スタンド建替え工事に着手しました。
このほか、当社は、沿線価値共創戦略に基づく事業の選択と集中を進めるため、当社および㈱長野京急カントリークラブが運営する長野京急カントリークラブ事業を会社分割により他社に承継しました。
以上の結果、レジャー・サービス事業の営業収益は317億4百万円(前期比6.0%増)、営業利益は49億4千6百万円(前期比8.3%増)となりました。
(業種別営業成績)
(ニ)流通事業
ストア業では、㈱京急ストアは、既存店舗が好調に推移したほか、「京急ストア杉田店」を開業したことなどにより、売上が増加しました。また、鉄道輸送人員が増加したことなどにより、㈱セブン‐イレブン・ジャパンと業務提携した駅構内や駅前の店舗の売上が増加しました。このほか、当社は、将来的な沿線人口の減少や少子高齢化の進展など、事業を取り巻く環境の変化に対応し、流通事業における持続的な成長を目指すため、㈱エフ・クライミングの株式を取得しました。
百貨店業では、京急百貨店は、大型専門店が好調に推移したほか、スポーツ用品専門店「スポーツデポ」を誘致したことなどにより、来店客数が増加しました。
ショッピングセンター業では、人流の増加などにより、「ウィング新橋」などの都内店舗を中心に好調に推移しました。
以上の結果、流通事業の営業収益は812億5千1百万円(前期比12.1%増)となったものの、㈱京急ストアにおいて、賃金改定によって人件費が増加したことなどにより、営業利益は20億8千3百万円(前期比0.1%減)となりました。
(業種別営業成績)
(ホ)その他
京急建設㈱および京急電機㈱は、ホームドアをはじめとした鉄道の安全対策工事等を行いました。
このほか、当社は、取り組むべき事業への経営資源集中を図るため、㈱京急自動車学校の全株式を他社に譲渡しました。
以上の結果、その他の事業の営業収益は483億3千4百万円(前期比4.7%増)、営業利益は36億4千6百万円(前期比138.2%増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金や建設仮勘定の減少などにより、前連結会計年度末と比べ471億9千4百万円減少しました。
セグメントごとの資産の状況は、次のとおりであります。
負債は、未払法人税等および長期前受工事負担金の減少などにより、前連結会計年度末と比べ620億8千3百万円減少しました。
また、純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ148億8千9百万円増加しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上などにより、148億4千7百万円の資金収入(前期は662億2百万円の資金収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、692億2千8百万円の資金支出(前期は296億5千6百万円の資金収入)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出などにより、209億3千3百万円の資金支出(前期は37億5千1百万円の資金支出)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ750億6千5百万円減少し、740億7百万円となりました。
当社グループの事業内容は広範囲かつ多種多様であり、そのほとんどが生産、受注および販売の形態をとっていないため、「生産、受注および販売の状況」については、「(1)経営成績等の状況の概要」の「イ.経営成績の状況」において業種別営業成績等として記載しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。また、本項に記載されている将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債および報告期間における収益・費用の金額ならびに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況および今後の見通しに応じて合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、異なる場合があります。重要な会計上の見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において判断したものであります。
(イ)棚卸資産の評価
当社グループは、分譲土地建物については、原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)を採用しており、これらの価値は、個別物件の販売計画によって見積りを行っております。なお、当該見積りには、営業収益に影響する市況や周辺相場の変動の見込みなどの仮定を用いております。そのため、市況の変化による販売計画の見直し等により、当該見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、損失が発生する可能性があります。
(ロ)固定資産の減損
当社グループは、資産または資産グループに減損が生じている可能性を示す事象がある場合には、減損損失を認識するか否かの判定を行っております。この判定は、資産または資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産または資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。なお、回収可能価額は使用価値及び正味売却価額により測定しており、いずれか高い方の金額としております。
減損損失を認識するか否かの判定や使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローの見積りは、各事業の外部環境に関する情報を総合的に勘案して策定している「京急グループ総合経営計画」に基づいており、当該見積りには、各事業に影響を及ぼす市況の見込みなどの仮定を用いております。
そのため、市況の悪化や各事業の収益力の低下等により、当該見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降において、減損損失が計上され、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、将来キャッシュ・フローの見積り算出における主要な仮定は、ビジネスホテル事業での稼働率、宿泊単価及び正味売却価額等であります。
(ハ)繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の収益力に基づく課税所得の発生時期及びその金額に基づき回収可能性を判断したうえで計上しております。
課税所得の見積りは、各事業の外部環境に関する情報を総合的に勘案して策定している「京急グループ総合経営計画」に基づいており、当該見積りには、各事業に影響を及ぼす市況の見込みなどの仮定を用いております。
そのため、市況の悪化や各事業の収益力の低下等により、当該見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降において、繰延税金資産の追加計上または取り崩しが必要となるなど、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、将来の課税所得の見積り算出における主要な仮定は、鉄道事業での輸送人員、ビジネスホテル事業における稼働率や宿泊単価であります。
(ニ)退職給付債務および費用の計算
当社グループは、退職給付債務および費用について、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率および長期期待運用収益率等の仮定が含まれます。そのため、将来の不確実な経済条件の変動等により、実際の結果が前提条件と異なることとなった場合、または前提条件に変更が生じた場合、退職給付に係る負債および退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の決算については、前期に実施した交通事業における運賃改定による旅客運輸収入の増加や、移動需要の回復などにより、営業収益は2,938億6千万円(前期比4.7%増)、営業利益は356億4千2百万円(前期比27.1%増)となりました。
交通事業は、前期に実施した鉄道事業およびバス事業における運賃改定により、旅客運輸収入が増加したほか、移動需要が回復し、鉄道事業では羽田空港輸送はじめ全線の輸送人員が増加したこと、バス事業では一般路線および空港中距離路線が好調に推移したことなどにより、83億5百万円の増収、80億3千6百万円の増益となりました。
不動産事業は、不動産賃貸業において、賃貸オフィスビルや商業施設が順調に稼働したほか、投資した不動産ファンドからの配当収入の増加や、保有資産の組み換えによる収益性の向上を目的とした賃貸物件等の売却があったものの、不動産販売業における、前期の分譲マンションの売上の反動減や、不動産賃貸業における新規開業費用の増加などにより、不動産事業全体で66億8千7百万円の減収、27億3千2百万円の減益となりました。
レジャー・サービス事業は、レジャー関連施設業において、前期にホテル京急油壷観潮荘が営業終了したことなどによる収入の減少はあったものの、ビジネスホテル業において、国内宿泊需要およびインバウンド需要の増加に伴って客室単価および稼働率が上昇し、好調に推移したことなどにより、17億8千2百万円の増収、3億7千7百万円の増益となりました。
流通事業は、百貨店業において外商売上が増加したこと、ショッピングセンター業において都内店舗を中心に好調に推移したことに加え、ストア業においても、スーパーマーケット既存店および駅構内や駅前のコンビニエンスストアの売上が増加したものの、百貨店業およびストア業において、人件費が増加したことなどにより、流通事業全体では、88億1百万円の増収、2百万円の減益となりました。
その他の事業は、工事請負関係において、完成工事が増加したほか、工事損失引当金が減少したことなどにより、21億7千1百万円の増収、21億1千5百万円の増益となりました。
当連結会計年度の営業外収益は、投資有価証券売却益が減少したことなどにより、前連結会計年度の50億2百万円から8億2千6百万円減少し、41億7千6百万円となりました。
営業外費用は、資金調達手数料の増加などにより、前連結会計年度の46億4千万円から2億6百万円増加し、48億4千7百万円となりました。
この結果、経常利益は349億7千1百万円(前期比23.1%増)となりました。
当連結会計年度の特別利益は、工事負担金等受入額の増加はありましたが、前期に計上した品川駅西口地区における当社土地持分の一部譲渡に伴う固定資産売却益の反動減などにより、前連結会計年度の955億8千6百万円から511億2百万円減少し、444億8千3百万円となりました。
特別損失は、固定資産圧縮損の増加などにより前連結会計年度の47億1千万円から431億8千4百万円増加し、478億9千4百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は315億6千1百万円となり、ここから法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、243億1百万円(前期比71.0%減)となりました。
(ニ)指標水準
当社グループでは、「1 経営方針、経営環境および対処すべき課題等」の「(2)総合経営計画」に記載のとおり、2024年度から2026年度までを中期経営計画期間と定め、移動とまち創造の両プラットフォームによる相互価値共創の具現化に向けた取り組みを進めるとともに、品川駅周辺開発事業の着実な推進、財務健全性の確保と資本収益性の中長期的な向上を両立させる財務マネジメントを強化する方針としております。
2025年5月12日に公表した目標経営指標等の見直しにおいては、ROE目標の引き上げと達成時期を明確化し、中期経営計画期間の最終年度である2026年度の指標水準を以下のとおり設定しております。
(2026年度指標水準)
・営業利益 :450億円
・純有利子負債/EBITDA倍率:7倍台以下
・ROE :8%
(ヘ)資本の財源および資金の流動性についての分析
a.財務戦略
当社グループでは、大規模成長投資を着実に推進するための財務健全性の確保と資本効率向上の両立、および資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を、長期的な財務戦略の基本方針としております。
なお、2024年度から2026年度までの中期経営計画期間においては、資本収益性の向上に向けた事業別ROIC(注1)-WACC(注2)管理の導入等により、グループ全体で財務マネジメントを強化してまいります。
(注1)投下資本利益率(投下した資金に対して生み出した利益の割合)
(注2)加重平均資本コスト(資金調達に要する費用の平均値)
b.資金調達
当社グループでは、鉄道事業をはじめ各事業において多額の設備投資を継続して行っており、事業の特性に鑑み、その資金は金融機関からの借入や社債の発行など長期の負債を中心に、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら調達しております。
c.資金の流動性
当社グループでは、鉄道事業を中心に日々の収入金があり、また、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、グループ内余剰資金の有効活用に努めているほか、災害等緊急時においても機動的な資金確保ができるよう震災対応型コミットメントラインを設定していることから、緊急時の一時的な対応も含め、必要な流動性資金は十分に確保しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。