文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1)グループ理念
当社グループは、「美しい時代へ―東急グループ」をグループスローガンとして掲げるとともに、「グループを共につくり支える志を持ち、共有する理念」として、以下のとおり「グループ理念」を定めております。
(グループ理念)
「存在理念」:美しい生活環境を創造し、調和ある社会と、一人ひとりの幸せを追求する。
「経営理念」:自立と共創により、総合力を高め、信頼され愛されるブランドを確立する。
〇市場の期待に応え、新たな期待を創造する。
〇自然環境との融和をめざした経営を行う。
〇世界を視野に入れ、経営を革新する。
〇個性を尊重し、人を活かす。
もって、企業の社会的責任を全うする。
「行動理念」:自己の責任を果たし、互いに高めあい、グローバルな意識で自らを革新する。
(2)サステナブル経営の方針
当社は、「安全・安心」、「まちづくり」、「生活環境品質」、「ひとづくり」、「脱炭素・循環型社会」、「企業統治・コンプライアンス」をサステナブル重要テーマ(マテリアリティ)として設定しており、これらに向き合い、「未来に向けた美しい生活環境の創造」および「事業を通じた継続的な社会課題解決」に取り組んでいくという“サステナブル経営”を経営の基本姿勢としています。
(3)中期3か年経営計画
新型コロナウイルス感染症の拡大により社会経済活動に制限がかかるなど、現在当社連結事業に大きな影響が生じており、経営環境は厳しいものとなっています。このような状況の中、当社は“サステナブル経営”の方針を前提としつつ、事業環境変化への対応と構造改革の推進により、収益の復元を目指すとともに、新たな成長への転換を果たすべく、2021年を始期とする中期3か年経営計画を策定し、推進しております。
(基本方針)
本計画の基本方針は、“『変革』~事業環境変化への対応による収益復元と進化”とし、移動・交流人口の減少や、ワークスタイル・ライフスタイル変容の加速等をはじめとする事業環境変化への対応と構造改革諸施策の推進により、収益規模の復元を目指すとともに、本期間を新たな成長への転換点として位置付けております。
(求められる価値の変化)
各事業の戦略を構築するうえで、まちづくりの観点から行動やニーズをはじめとする社会の変容をとらえ、中長期的なパラダイム変化の兆候を意識したうえで各事業における戦略を構築し、持続的な成長につなげていきます。

(環境変化と事業戦略の転換)

(重点戦略等)
1)交通インフラ事業における事業構造の強靭化
安全・安心を追求し、公益性と収益性の高次元での両立を目指すとともに、テクノロジーを活用したオペレーションの変革を実現し、事業構造の強靭化を図る
2)不動産事業における新しい価値観への対応
社会的価値を創出する“東急ならではのまちづくり”を推進し、連結事業利益の柱としての役割を果たすとともに、収益性向上により利益成長を牽引する
3)新たなライフスタイルに対応した事業・サービスへの進化
環境変化にあわせたサービスの展開により、各事業の競争力を強化し、連結利益に貢献する
- 生活インフラ事業等における需要取り込みによる利益成長
- 顧客や時代のニーズにあわせた沿線顧客サービスへの進化
4)各事業における構造改革の推進
コロナ影響以前より課題を抱える事業において構造改革を推進し、グループ各事業の戦略再構築とともに連結経営マネジメントの進化を図る
上記の重点施策に加え、当社の最重要拠点である渋谷の未来に向けた種々の取り組みの推進や、デジタルテクノロジーの活用、変革のための原動力として“個”の最大化を支援する人材戦略についても注力してまいります。
(当期の目標数値)
中期3か年経営計画の最終年度である2023年度の具体的な数値目標については以下のとおりです。
〇収益性指標として、「東急EBITDA」及び「営業利益」を採用しております。
東急EBITDAは、大規模工事の竣工等による営業利益の変動を補正したうえで、事業スキームの多様化を反映し、当社の稼ぐ力をより正確に表す指標として採用しております。
なお、東急EBITDAの算出方法は、以下のとおりです。
東急EBITDA=営業利益+減価償却費+固定資産除却費+のれん償却費+受取利息配当+持分法投資損益
〇健全性指標として、「有利子負債(※)/東急EBITDA倍率」を採用しております。
※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計
(投資計画・株主還元の考え方)
投資計画については、中期3か年経営計画の方針に基づき、安全・維持更新投資、進行中の大規模プロジェクトや各事業の構造改革に関連する投資は着実に実施していくこととしており、2023年度は1,370億円の設備投資を予定しております。加えて、不動産販売業での安定的な利益創出に向け、不動産市況を見極めながら継続的に良好な物件の仕入れに取り組んでまいります。2023年度は収益性の回復等により、有利子負債/東急EBITDA倍率については中期3か年経営計画における目標の7倍台を確保していく方針です。
また、株主還元の考え方については、安定配当を継続するとともに、中長期的には配当性向30%以上を目安とし、総還元性向も意識してまいります。2023年度の配当金額は1株当たり年間15円とし、総還元性向や資本効率の向上を意識した自己株式の取得については約300億円、16,524,300株の取得を2023年6月に実施しております。
(1)サステナビリティ(全般)
当社グループは、長期的な視点から、時代によって変化するお客さまのニーズを的確にとらえ、新たな事業・サービスを提供し、社会課題を解決していくことが重要であると考えています。そして社員一人ひとりがこの使命を共有し、新たな価値を生み出すことで、社会と共に持続的成長を図っていきたいと考えています。「美しい時代へ」というグループスローガンのもと、SDGsの17のゴールと169のターゲットやエリア・業界固有の課題を踏まえて特定した、サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)に向き合い、「未来に向けた美しい生活環境の創造」および「事業を通じた継続的な社会課題の解決」に取り組んでおります。
当社は、取締役会を経営および監督の最高機関と位置付けており、サステナビリティに係る重要事項は、取締役会で決議・監督しています。また、サステナブル経営の推進を目的として安全、コンプライアンス、ESGへの取り組み等のテーマに関して、社長執行役員を議長とするサステナビリティ推進会議にて年2回審議を行っています。また、連結でのサステナビリティ推進体制を強化するため、連結各社のサステナビリティ推進責任者が参加する「東急グループサステナビリティ推進会議」を年2回開催しています。

当社グループのサステナビリティに関するリスクは、リスクの内容に応じて定めた推進部門が、各事業部門と協働してリスク分析・対応策の検討を行っており、その結果はサステナビリティ推進会議などを通じて全事業・各社に共有します。また、サステナビリティに関するリスクを含む全体のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」のとおりです。
当社グループは2018年3月にサステナブル重要テーマを特定後、長期経営構想策定と併せて事業横断的に「向き合う社会課題」「2030年に向けて目指す姿」を設定しています。
また、中期経営計画や単年の事業計画策定時には、財務目標と併せて各策の実績を把握するための非財務目標を設定し、取り組み進捗状況は、各責任部署およびサステナビリティ推進会議にて確認しています。

※1 「ひとづくり」の指標については2022年度実績を「(3)人的資本(指標と目標)」に記載しております。
※2 従業員エンゲージメントは2022年8月調査実施(2022年度実績)
(2)気候変動/TCFD提言への取り組み
当社グループでは、気候変動による事業への影響を想定し、そのリスクマネジメントを強化し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取り組みを行っています。また、2020年9月にはTCFD(※)への賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めています。
※ 世界経済の安定性に向けて、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立し、気候変動がもたらすリスクおよび機会の財務的影響を把握し開示することを目的とするタスクフォース。
(TCFDの開示提言項目)
(ガバナンス)
気候変動を重要課題ととらえ、リスクの特定・評価および戦略、目標について、経営執行の意思決定機関である経営会議にて審議・決定のうえ、毎年取締役会に報告し、適切な監督を受ける体制としています。各事業の気候関連リスクと機会の分析は、社長室管掌の執行役員のもと、社長室ESG推進グループをプロジェクトリーダーとし、外部有識者のアドバイスをいただきながら各事業部門と協働し進めています。取締役会に上程した内容は、サステナビリティ推進会議・東急グループサステナビリティ推進会議などで共有・推進・浸透を図ります。
(戦略)
(シナリオ分析における大枠(世界観)の設定)
シナリオ分析は、2022年3月に策定した環境ビジョン2030で掲げる「環境と調和する街」の実現に向けた全事業を通じたまちづくりのほか、交通セグメント、不動産セグメント、生活サービスセグメント、ホテル・リゾートセグメントの主要な事業を対象に、次の2つのシナリオにて実施いたしました。
地球の平均気温が、産業革命(1760年代から1830年代)前と比較して、21世紀末における温暖化を1.5℃に抑制する「1.5℃シナリオ」では、「移行リスク」が強まり、電力コストや省エネ技術に対するコスト増などに起因するものや、炭素税など温暖化抑制に向けた政策や規制が強化されるとともに、重要な「機会」として、省エネ技術開発によるコスト減少、環境意識向上による公共交通利用者の増加や環境配慮物件への入居志向の向上に加え、「環境と調和する街」や「世界が憧れるまちづくり」の実現を通じた顧客および顧客生涯価値の増加などを想定しました。
また、政策導入や規制強化は行われず、温室効果ガスの排出量が増加する「4℃シナリオ」では、「物理リスク」が強まり、災害激甚化による施設の浸水などによる改修コストの増加と顧客の流出、新たな感染症により利用者が減少する世界を想定しています。
この2つのシナリオに基づくリスクと機会の検討・特定および重要度評価においては、「移行リスク」「物理リスク」「機会」に分けて実施しました。「物理リスク」への対応は、これまでも相当程度実施しており、今回の分析結果を含めた今後の取り組みの方向性と併せて「リスク管理」をご参照ください。
(重要なリスクの分析)
リスクの重要度は、「各事業への影響度」と事象の「発生度」から評価しました。「各事業への影響度」は気候関連の事業の影響を受けると想定される対象事業の影響規模を分析し、「発生度」は、自然災害などの物理リスクについてはIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(AR6)を参考に評価し、移行リスクについては、環境法令や炭素税の導入など将来的な政策目標・導入計画の動向や現在の政策導入などを基に推計・分析しています。
財務的な影響は、1.5℃シナリオにおける移行リスクでは主に、電力使用量や太陽光発電の一部導入計画などに基づき算定し、4℃シナリオにおける物理リスクは主に、河川氾濫などの最大浸水深や新型コロナウイルス感染症による影響をベースに見込みました。当社グループへの影響度は資産の多い交通事業や不動産事業においては、物理リスクの影響は幅を持って想定しています。

※1 未算出の事業区分の影響度は除く
(重要な機会の分析)
重要な機会は、1.5℃シナリオを中心に検討し、環境ビジョン2030で掲げる「環境と調和する街」や「世界が憧れるまちづくり」の実現による顧客および顧客生涯価値の増加を見込んだほか、ステークホルダーの環境意識向上による公共交通利用者の増加や環境配慮物件への入居志向の向上、再生可能エネルギーによる発電の促進に向けたインフラ投資、省エネ技術開発によるコストの減少などを見込んでいます。財務的な影響は、「環境と調和するまちづくり」による東急線沿線における当社グループ商品・サービスの利用促進や、鉄道利用への移行、環境配慮物件の賃料上昇、新造車両への代替や太陽光発電による電力コスト削減効果、などを推計しました。

※1 今後影響度を算出予定
※2 東急線全路線再生可能エネルギー由来の電力100%での運行など
(リスク管理)
気候関連のリスクと機会は、社長室ESG推進グループをプロジェクトリーダーとし、各事業部門と協働してリスク分析・対応策の検討を行い、毎年経営会議・取締役会への上程を行います。結果はサステナビリティ推進会議などを通じて全事業・各社に共有します。また、気候関連を含む全体のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」のとおりですが、毎年各事業・各社にてリスクの分析を実施する際に、気候関連リスクを含めて検討・評価・管理しています。

事業における各リスクへの対応として、下記のような取り組みを推進しております。移行リスクに対しては、自己発電導入・省エネ・再エネ調達を進めており、2022年4月より東急線全路線における再生可能エネルギー由来の実質CO2排出ゼロの電力100%での運行を開始いたしました。
また、物理リスクに対しては、すでに様々なリスク対応策に取り組んでいます。さらに、近年の災害激甚化に伴い気候変動へのレジリエンスを高めるため、各事業や事業間連携による災害対策の高度化により、リスク回避・軽減策を推進するとともに、継続して定期的な危機管理対応訓練などにも取り組んでまいります。
これらの取り組みに加えて、環境ビジョン2030では、街への取り組みとして、環境負荷を低減するサービスメニューを2030年までにさらに100件以上提供する目標を掲げており、街の脱炭素化を推進してまいります。
(指標と目標)
気候変動の緩和と移行リスクへの備えのため、事業活動の脱炭素化に向けた検討・推進を行っています。2022年3月に策定した環境ビジョン2030において、当社グループのCO2排出総量を2030年に基準年度(2019年度)から46.2%削減および再エネ比率50%、2050年までに再エネ比率100%によるRE100を目標とし、CO2排出総量実質ゼロを目指しております。また、事業活動のサプライチェーンにおけるCO2排出量を示すScope3にあっては、2030年までに30%削減する目標を新たに設定し、サプライチェーンマネジメントの推進も強化してまいります。2021年度の連結CO2排出量(Scope1,2)は、535,741t-CO2となり、基準年度から13.4%削減いたしました。また、Scope3におけるCO2排出量は、2,297,477t-CO2となり、基準年度から12.4%削減いたしました。
物理リスクへの対応については気候変動リスクだけでなく地震災害やテロ対策などを含む全体の安全管理の中で投資優先順位を定めるとともに、街のインフラを担う企業の責務として、安全な鉄道の運行や災害に強いまちづくりに向けた取り組みを、日々の業務を通じ行っています。
※ 東急線は、2022年4月より全線で再生可能エネルギー由来の電力実質100%での運転を開始しており、これに伴うCO2排出量(Scope1,2)の減少は、2022年度実績より反映される見込みであります。
(3)人的資本
(戦略)
(中期3か年経営計画の「人材戦略」コンセプト)
2021年度を始期とする中期3か年経営計画にて策定した『変革』というスローガンのもと、当社の「変革」を推進し企業価値の最大化を図るための原動力として、従業員の“個”の最大化を支援しております。従業員の誰もが当社で働くことに価値と誇りを感じ、成長の機会や自分らしい人生を歩めるよう、エンプロイーエクスペリエンス(従業員としての経験価値)を高めるような取り組みを行うとともに、従業員の成長を会社へ還元していく意識改革を推進しております。

(人材育成方針)
当社の人材育成は、「自律的なキャリア形成支援」、「グループ経営の人材育成」、「専門人材育成」の3つの枠組みで展開しております。
自律的なキャリア形成支援としては、社員が自律的にキャリアを形成できる環境を整備するため、キャリア形成のプロセスを明示した施策を展開しております。具体的には、上司部下間での定期的な1on1ミーティング、自己理解や自己のキャリアを考えるきっかけを提供する「キャリアセミナー」、社外のキャリアコンサルタントとの「キャリア相談」、視野拡大を図るため他社のメンバーとお互いの知見を提供しながら行う「異業種交流研修」、隙間時間を利用したサブスクリプション型の動画研修やWEBコンテンツ教材の提供などを通じ、自己学習の支援を行っております。
グループ経営の人材育成としては、東急グループ全体の組織力、人間力を高めることを目的とした「東急アカデミー」を2006年より開講し、これまで延べ800名以上(2023年3月末現在)の修了者を輩出してきました。「経験」「内省」「学習」の3つの学習プロセスを通じて、経営人材としての能力・スキルを高めるとともに、グループ各社の次世代を担う人材同士の相互啓発を通じて、各人が東急グループの理念を実現し続ける経営者として成長する機会を提供しております。
専門人材育成としては、公募選抜による大学院派遣を始め、各事業で求められる知識やスキル習得の支援を通じ、専門人材の育成に取り組んでおります。
その他にも、全社員を対象としたデジタル基礎研修によるDXマインドの底上げ、社内起業家育成制度によるチャレンジする人材の育成と企業風土の醸成、社内副業制度・社外複業ガイドラインの整備等、全社的に人材育成のためのさまざまな取り組みを実施しております。
(社内環境整備方針)
社会環境の急激な変化に伴い、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が社内に増えてきていることを踏まえ、当社では「誰もが働き続けたい会社」の実現に向けて社内環境整備を進めております。
当社では2000年代初頭より働き方改革に積極的に取り組み、働きやすい環境づくりを推進してまいりましたが、社会環境や人々の価値観などの急激な変化を踏まえ、より柔軟な働き方を実現し、生産性向上やイノベーション創出につながるよう、さらなる改革に取り組んでおります。
代表的な取り組みとして、自身の職務や環境に合わせて働く時間や場所を従業員が主体的に選択する「スマートチョイス」を展開し、フレックスタイム制やテレワーク制度などの整備を行っております。
また、今後目指す働き方として、従業員やチームのミッション・成果を意識し、多様な働き方を効果的に選択・組み合わせる「東急ベストハイブリッド」方針を掲げております。本方針は、働き方のニーズを把握するための全社アンケート分析結果を踏まえて策定したものです。本方針により、フレックスタイム制やテレワーク制度などの効果的な活用、そして従業員個人やチームの「ベストパフォーマンス」発揮を追求してまいります。
更に、従業員の多様化のみならずお客さまニーズも多様化していることを踏まえ、当社はダイバーシティマネジメント(多様性を生かす組織づくり)を人材戦略の要素のひとつと認識し、制度・風土・マインドの3つの観点から各種取り組みを展開しております。
なかでも女性活躍推進については、鉄道業を祖業とする当社の実情を踏まえると、ダイバーシティマネジメントに最もインパクトを与えるテーマであると認識し、特に注力してまいりました。その他、障がい者雇用についても特例子会社の設立をはじめ、障がい者が安心して長く働き続けられる環境づくりを推進しております(※)。今後は年齢、性的指向、家庭環境、経験、価値観などより広範な切り口でダイバーシティマネジメントに取り組んでまいります。※障がい者雇用率(実績):2.79%(2022年6月、当社企業グループ7社算定)
同じく人材戦略の要素である健康経営についても積極的に取り組んでおります。当社では、豊かさ・快適さ、そして、当社事業の根幹である交通事業をはじめとする「安全」と「安心」「安定」の確保は、お客さまが当社にお寄せくださる信頼の源泉であり、各種サービスを提供する従業員とその家族の健康は事業を支える根幹と考えております。東急グループの存在理念(美しい生活環境を創造し、調和ある社会と、一人ひとりの幸せを追求する)を踏まえ、その実現に欠くことのできない「健康」を追求する経営を推進するため、2016年に「健康宣言」を制定しました。
加えて、CHO(最高健康責任者)を設置し経営トップがその役割を果たすことで、従業員の心身の健康管理はもとより、沿線のお客さまの健康づくりにも積極的に取り組んでおります。CHOのリーダーシップのもと、企業立病院である東急病院を有する強みを活かし、従業員およびその家族に対してメンタルヘルス対策、がん対策、生活習慣・運動対策を重点施策とし、近年ではプレゼンティーズムの改善にも取り組むことで、安心・安全の更なる構築や労働生産性の向上、ウェルビーイングの実現を目指すことを方針としております。
(指標と目標)
(主な指標)
※1 客観的指標で評価をKPI化し、毎年定期的に調査を実施
※2 前年度に子が生まれた男性従業員のうち、前年度+当年度に育児休職等を取得した者の割合
※3 当年度に子が生まれた男性従業員に対し、当年度に育児休職等を取得した男性従業員の割合
(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3
年法律第76号)の規定に基づき算出)
(外部評価)
こうした取り組みの結果、「女性活躍推進」に優れた企業として「なでしこ銘柄」に10年連続(2012~2021年度)、「健康経営の推進」に優れた企業として「健康経営銘柄」に7年連続(2014~2020年度)、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2年連続(2021~2022年度)で選定、またLGBTへの取り組みに優れた企業としてPRIDE指標2022「ゴールド」を受賞するなど、社外からさまざまな評価をいただいております。
当社グループでは、定期的にリスク認識の再評価、及びリスク軽減に対する取り組み状況の評価を行い、発生の回避及び発生した場合の影響最小化に向けての対応に努めております。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある連結経営上の最重要リスクとして、「経営環境変化への対応に関するリスク」、「安全管理への対応に関するリスク」、「コンプライアンスに関するリスク」、「働き方・人材確保に関するリスク」の4つを設定しております。
リスクの内容およびリスクコントロールの取り組みは次のとおりであります。
なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。また、以下の記載は、当社グループの事業等のリスクをすべて網羅することを意図したものではないことにご留意下さい。
(1)経営環境変化への対応に関するリスク
① コロナ禍をきっかけとした新常態やDX加速化への対応遅れ、需要・事業性の予測見誤りにより、収益確保、事業継続が困難となるリスク
当社グループは鉄道沿線地域に経営資源が集中しており、少子高齢化や人口減少による既存事業の需要減少、生活スタイルの変化による既存の交通やオフィス・商業施設の利用減少、新たな産業やビジネスモデルの登場による既存事業の競争力低下等が起こった場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、「中期3か年経営計画」を策定し、各種施策を実施しておりますが、アフターコロナにおける需要の予測値との乖離や経済情勢の変化等によって、これらの計画が予定通り進捗しない場合や、想定した収益や期待した効果を生まない場合があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このため、経営陣が各事業の業績動向、業績変化の兆候について早期に把握するとともに、対策を議論し意思決定及びモニタリングを行う等、迅速かつ適切な対応に取り組んでおります。
② 金融市場混乱・金利環境悪化・格下げ・信用不安等により、財務状況が悪化するリスク
当社グループは、これまで鉄軌道業をはじめとする各事業の必要資金の多くを、社債や金融機関からの借入により調達しているため、市場金利が上昇した場合や、格付機関が当社の格付けを引き下げた場合、ESG関連評価機関の評価が低下した場合には、相対的に金利負担が重くなったり、資金調達の条件が悪化したりすることにより、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このため、金利の長期固定化や返済期限の平準化等により再調達リスクを抑制しつつ、コマーシャル・ペーパーの活用等、短期金融市場活用による機動的資金調達力の向上に取り組んでおります。
③ 各種市況の悪化およびCO2削減コストの負担増により、調達コストの高騰が発生し、収益性が低下するリスク
当社グループは、原材料・労務費等の市場価格動向を踏まえコスト削減を行っていますが、地政学上の問題等に起因する物流の停滞、半導体の供給不足に伴う市況の変化やCO2削減コストの負担増に伴い原材料費が高騰した場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このため、バリューエンジニアリングやコストダウン、調達チャネルの多様化、継続的な工事内容の精査等に取り組んでおります。
④ 事業展開エリアでの政権交代・税制等行政施策の変更等に伴う市況激変リスク
景気低迷の長期化による世帯年収の減少や増税等による個人消費の低迷継続、各事業における法制度の変更等が生じた場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、市況および政治・経済・法制度の変化を見据えた中長期的な運用方針を構築し、修繕・設備投資を含む適切な事業計画の策定、利便性向上や魅力的なテナントミックス、話題性の提供による施設集客力の維持向上等、各種対策に取り組んでおります。
(2)安全管理への対応に関するリスク
① 気候変動の影響も含む自然災害等への備えが不十分で、施設損壊等によりサービスの提供ができなくなるリスク
大規模な自然災害等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。自然災害や感染症蔓延等において連結各社の協力体制構築などの対応力強化、気候変動に伴う営業損失・社会的影響評価を実施し、評価結果を踏まえた対策(予防・被害最小化の両面から)を図っております。加えて、地震保険やコミットメントラインをはじめとした、リスクファイナンスの実効性向上に向けた継続的な見直し等を推進しております。
② 人為的事故の発生により、損害補償とともにサービス・施設への信頼を損なうリスク
重大な人為的事故等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、事故、設備や情報システムの故障、食品、建設工事等の品質問題、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じており、東急線全駅(※)へのホームドア・センサー付固定式ホーム柵の設置、事故等発生状況の情報収集・展開による再発防止策策定等に取り組んでおります。
※ 世田谷線・こどもの国線を除く
③ テロ、政情不安に伴う治安悪化により、施設損壊・お客さまの死傷等によりサービスの提供停止とともに、社会的信頼が損なわれるリスク
テロ等の外的要因による重大な事故等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、テロ等の不法行為による災害、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じており、東急電鉄㈱所属の全車両(※)への車両内防犯カメラの設置、駅施設や商業施設等への警備員の効果的配置、サイバー攻撃を想定した対応訓練の実施、サイバー保険への加入促進等、安全の取り組みを進めております。
※ こどもの国線を除く
(3)コンプライアンスに関するリスク
① コンプライアンス違反により、その損失処理とともに企業としての社会的信頼を損なうリスク
当社グループは、鉄軌道業、不動産事業をはじめとする各種事業において、関係法令を遵守し、企業倫理に従って事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
2023年2月28日、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が発注する東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関するテストイベント計画立案等業務委託契約等の入札談合(独占禁止法違反)事件に関し、当社子会社の株式会社東急エージェンシー及び同社の元役員1名が公正取引委員会により刑事告発され、東京地方検察庁により起訴されました。同社は、今後、裁判所より有罪判決を受け、罰金刑を言い渡される可能性があるほか、公正取引委員会より課徴金の納付が命じられる可能性があります。加えて、同社は東京地方検察庁による起訴を受け、一部の官公庁及び地方公共団体より指名停止の措置を受けているほか、今後、同組織委員会より、同社に対する損害賠償請求がなされる可能性があり、その結果次第では、当社グループの業績に影響を及ぼし得ます。
当社は、本件を厳粛に受け止め、引き続き同社の対応について全面的に指導するとともに、「東急グループコンプライアンス指針」、及び当社「行動規範」を周知、徹底し、適正な法令遵守体制を構築、運用するとともに、不正・不祥事に関する情報収集、予防・再発防止のための情報展開、コンプライアンス全般・法改正対応に関する啓発・研修体制の充実等に取り組んでおります。
② 経理統制体制の脆弱さにより、会計等処理に重大なミス・不正が生じ不適正な財務諸表を公表するなど、社会的信用力が低下するリスク
当社グループは、関係法令を遵守し、各国の会計基準に基づき、連結経理体制の最適化、ガバナンス強化に向け、各種施策を講じておりますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、連結経理体制の最適化、国内連結各社の会計システム共通化による業務標準化等に取り組んでおります。
③ ITセキュリティを含む情報管理上の不備により、機密情報、個人情報の漏洩・紛失が発生し、その処理とともに社会的信頼を損なうリスク
当社グループは、社会的なインフラを担うシステムやサービスを提供しており、サービス提供に支障をきたすような運用中の障害、個人情報を含む機密情報の大規模な漏えい・紛失等が生じた場合には、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、設備や情報システムの故障、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じており、交通・決済・通信等重要なインフラを担う連結各社において外部によるセキュリティアセスメントの実施および改善計画策定等、各種対策に取り組んでおります。
① 生産年齢人口減少傾向の中、適切な人材確保がかなわず、サービス品質劣化・事業縮小や違法就労をも誘発してしまうリスク
少子高齢化や人口減少ならびに新型コロナウイルス感染拡大に伴う就労・雇用環境の変化により、社員流出や採用難が今後深刻化し、人員不足を起因としたサービスの低下や風評等につながる場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、連結全体で人材の採用や育成を強化するとともに、連結内人材の活用を促進し必要人員の確保を行っております。加えて、人事制度や福利厚生制度の見直しを図ることで正社員・フルタイム勤務者に依存しない多様で柔軟な働き方を提供する等、各種対策に取り組んでおります。
当期における我が国経済は、原材料価格やエネルギー価格の高騰、金利上昇リスクなどの影響により、経済の先行きは不透明な状況で推移したものの、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されたことなどにより、社会経済活動には緩やかな持ち直しの動きがみられました。
このような状況のなか、当社グループにおいては、2021年度を始期とし、『変革』を基本方針とする中期3か年経営計画に基づき、足元の事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元に取り組んでまいりました。
当連結会計年度の営業収益は、交通事業やホテル・リゾート事業を中心に、利用者数の回復が見られたことなどにより、9,312億9千3百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益は446億3百万円(同41.4%増)、経常利益は473億6千9百万円(同35.3%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、持分法投資利益の増加などにより、259億9千5百万円(同196.0%増)となりました。
セグメントの業績は以下のとおりであり、各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含んで記載しております。なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。
(交通事業)
東急電鉄㈱では、事業基盤の強靭化と安全・安心のさらなる追求をはじめとした社会的価値の持続的な提供のため、自然災害対策や環境性能の高い新型車両の導入、東横線ワンマン運転実現に向けた改修工事、東急新横浜線開業関連工事等の設備投資を行いました。
これまで安全性・安定性の確保を目的に、業界水準を大きく上回る規模の設備投資を継続的に実施してきました。生活様式の変容により厳しい経営環境ではありますが、安全・安心な鉄道事業を継続し、多様化・複雑化する社会的要請に応じた価値を今後も提供していくため、さらなる経営努力を前提とした運賃改定を2023年3月に実施いたしました。
また、2023年3月、東急電鉄㈱として39年ぶりの新線となる「東急新横浜線」を開業いたしました。神奈川県から埼玉県に至る7社局14路線を結ぶ広域な鉄道ネットワークを形成することで、所要時間の短縮や乗換回数の減少などの利便性向上とともに、東海道新幹線へのアクセス向上を実現いたしました。
このほか、2022年10月、大田区と東急電鉄㈱は新空港線整備に向けて羽田エアポートライン㈱を設立しました。今後、新空港線の事業化に向けて、同社を中心として矢口渡~京急蒲田間の検討の深度化をしていきます。
東急電鉄㈱の鉄軌道業における輸送人員は、行動制限が緩和されたことなどによる外出機会の増加を受け、定期・定期外ともに前年を上回り、定期で7.0%増加、定期外で14.5%増加し、全体では10.2%の増加となりました。
連結子会社の輸送人員は、伊豆急行㈱で29.4%増加いたしました。
バス業では、東急バス㈱の輸送人員が7.2%増加いたしました。
この結果、交通事業全体の営業収益は1,840億5千4百万円(同10.5%増)、営業利益は85億3千8百万円(前年同期は39億3千7百万円の営業損失)となりました。
(東急電鉄㈱の鉄軌道業の営業成績)
(不動産事業)
不動産事業では、当社不動産賃貸業において、大型商業物件を中心に前年度の営業時間の短縮や一部店舗の休業からの反動があったものの、当社不動産販売業における前年度の大規模物件販売の反動などにより、営業収益は2,204億2千万円(同1.3%減)、営業利益は288億4千4百万円(同36.2%減)となりました。
当社は、綱島駅周辺エリアにおいて、商業施設・公益施設・住宅が一体となった複合再開発プロジェクトを推進しております。東急新横浜線 新綱島駅と地下で直結する地上29階・地下1階建、総戸数252戸の分譲マンション「ドレッセタワー新綱島」は、2021年11月の販売開始以降好調に推移し、全住戸完売となりました。
海外においては、2012年より新都市開発を進めてきたベトナム・ビンズン省において、557戸の分譲マンション「SORA gardensⅡ」が全戸完売いたしました。また、同地において、フードロスに配慮したレストランや太陽光発電施設を備えるなど環境に配慮した商業施設「Hikari」をリニューアルオープンいたしました。
また、2023年4月に「東急歌舞伎町タワー」が開業いたしました。「好きを極める」というコンセプトのもと、趣向を凝らしたイベントを実施し、多くのお客さまにご来場いただいております。配信や仮想空間等による新たな世界観の共有、ホテルを含む多様なエンターテインメント施設が融合した商品提供、外部コンテンツとのコラボレーション施策等を通して、ライフスタイルが変容する中でも新たな体験価値を提供してまいります。
このほか、2027年度の竣工を目指し、2023年1月末に営業を終了した東急百貨店本店の跡地再開発計画「Shibuya Upper West Project」を始動しました。ルイ・ヴィトンを提供するLVMHグループの不動産開発投資会社「L Catterton Real Estate」と共同し、リテール、ホテル、レジデンス等を有し、文化施設が融合した渋谷の新しいランドマークを目指します。
(生活サービス事業)
当社は、生活サービス事業を街の生活基盤として沿線価値の向上に寄与するものと位置づけるとともに、収益力の向上に取り組んでまいりました。同事業は、魅力ある施設づくりに加えて、お客さまの期待を上回る商品やサービスの提供に努めるとともに、交通事業、不動産事業をはじめとする各事業との相乗効果を発揮するため、グループ間連携をさらに促進しております。
リテール事業においては、マーケットの変化に対応するため構造改革を推進するとともに、お客さまのニーズの多様化などに対応した新業態開発を進めております。
2023年1月、55年に渡りご愛顧いただいた東急百貨店本店の営業を終了いたしました。同店跡地の再開発に伴い、同年4月に複合文化施設Bunkamuraはオーチャードホールを除き休館いたしましたが、渋谷および東急線沿線の周辺施設やグループ各施設を中心にシネマやギャラリー事業などを継続してまいります。
ICT・メディア事業においては、「美しい時代へ」というスローガンのもと、「楽しさ」「豊かさ」「美しさ」を感じて頂けるまちづくりを目指し、文化関連事業の強化、拡大を推進しております。2023年1月、文化とエンターテインメントを活かしたまちづくりを一層推進するため、㈱東急レクリエーションを完全子会社化いたしました。
生活サービス事業では、㈱東急百貨店や㈱東急レクリエーションをはじめ、前年度に一部の店舗を臨時休業・時短営業した反動などにより、営業収益は5,172億2千5百万円(同2.9%増)、営業利益は110億7千8百万円(同67.8%増)となりました。
(ホテル・リゾート事業)
ホテル・リゾート事業では、ホテル業の㈱東急ホテルズにおいて、上半期はコロナの影響が残ったものの、国内の行動制限の緩和や全国旅行支援等の効果、2022年10月以降の海外からの入国者制限の順次緩和等により、利用者数の回復があり、稼働率は70.6%(同+26.5ポイント)となりました。この結果、営業収益は708億円(同62.7%増)、営業損失は41億1千9百万円(前年同期は167億3千6百万円の営業損失)となりました。
2023年4月、ホテル事業において、経営・運営機能の分化による再成長と収益性向上を企図した事業子会社の再編を行いました。ホテル経営機能は当社と㈱東急ホテルズが、運営は新会社「東急ホテルズ&リゾーツ㈱」が担う体制といたしました。
あわせて、ブランドポートフォリオも拡充し、従来の東急ブランドのホテルの他に、より個性の際立ったホテル群「DISTINCTIVE SELECTION」の新設や、会員制滞在型リゾート「東急バケーションズ」も同社に加えるなど、価値観の多様化するお客さまや、ホテル経営・投資を検討するクライアントのニーズにお応えし、新たな事業成長を実現します。
また、2023年5月、東急歌舞伎町タワー内に「BELLUSTAR TOKYO」、「HOTEL GROOVE SHINJUKU」の2ホテルが新たに開業いたしました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は685億1千6百万円となり、前連結会計年度に比べて168億8千万円増加いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益413億8千5百万円に減価償却費829億7千3百万円、法人税等の支払額188億5千8百万円などを調整し、954億4百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、税金等調整前当期純利益の増益等により、98億2千6百万円の収入増となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出1,523億4千5百万円等があり、1,544億3千1百万円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、固定資産の取得による支出が増加したこと等により、756億2千万円の支出増となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金や社債の発行による資金調達等により、746億8百万円の収入となりました。
当連結会計年度末の総資産は、当社や連結子会社である東急電鉄㈱における有形固定資産の取得等により、2兆6,140億1千2百万円(前期末比1,348億2千9百万円増)となりました。
負債は、有利子負債(※)が、1兆2,875億1千9百万円(同917億6千2百万円増)となったこと等により、1兆8,346億3千9百万円(同1,083億9千9百万円増)となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、7,793億7千2百万円(同264億3千万円増)となりました。
※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計
当社グループの各事業は、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1)業績」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
2022年度は、9月に創立100周年を迎えるなど当社にとって記念すべき1年であり、事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元を掲げた、中期3か年経営計画の2年目でありました。
この1年を振り返ると、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰などの影響を受けながらも、社会経済活動の正常化により、企業収益には持ち直しの動きが見られました。
当社においても、交通事業やホテル・リゾート事業を中心に、利用者数の回復が見られたことなどにより、期首に掲げた利益目標を達成することができました。
施策面では、各事業で掲げた重点戦略や構造改革が確実に進捗しております。交通事業では、東急電鉄㈱において、2023年3月18日に運賃改定を実施しております。また同日には、東横線・目黒線と相鉄線を結ぶ東急新横浜線の開業に加え、技術革新による効率化の取り組みとして、東横線のワンマン運転も開始しております。不動産事業では、新宿区歌舞伎町における「東急歌舞伎町タワー」が2023年1月に竣工を迎えるなど、2023年4月の開業に向けて順調に進捗したほか、東急百貨店本店跡地で行う、「Shibuya Upper West Project」についても、2027年度の開業に向けて着実に準備が進んでおります。また、生活サービス事業、ホテル・リゾート事業についても㈱東急百貨店、㈱東急ホテルズの構造改革をはじめ各グループ会社の重点施策を確実に進捗させており、特に㈱東急ホテルズについては、固定費の削減や、店舗見直しなどの「収支構造改革」に加えて、市場変動リスクへの対応と、再成長を目指し、経営機能と運営機能の整理をした「事業機能再編」の取り組みにより、収益性を改善させております。
2022年度の業績は、営業収益は、新型コロナウイルス感染症の収束に伴う、行動制限や海外からの入国規制の緩和により、交通事業、ホテル・リゾート事業において好調に推移したものの、不動産事業の不動産販売業における一部売却物件の引き渡し時期の遅れなどにより、連結全体では期首に掲げた目標(以下、期首に掲げた目標値との比較とする)から58億円減収の9,312億円となりました。営業利益は、各事業における需要回復や構造改革による費用削減などが寄与し、46億円増益の、446億円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、持分法投資利益の増加などにより、39億円増益の259億円となりました。
中期3か年経営計画最終年度となる2023年度は、事業の収益回復に継続して努めるとともに、本年開業を迎えた「東急新横浜線」、「東急歌舞伎町タワー」をはじめとする新たな成長に向けた取り組みを着実に進めてまいります。
数値目標としては、営業収益は、東急電鉄㈱の運賃改定効果や不動産販売業におけるマンションの販売増など、前年度から全事業で増収となり10,306億円、営業利益は前年度から253億円増益の700億円を見込みます。また、営業利益の増益に伴い、親会社株主に帰属する当期純利益については140億円増益の400億円、東急EBITDA、有利子負債/東急EBITDA倍率についても、回復を見込んでおり、現中期3か年経営計画において目標として掲げていた「収益の復元」および、「有利子負債/東急EBITDA倍率7倍台」については達成の見通しが立っております。

(2)資本の財源及び資金の流動性
2021年度を始期とする中期3か年経営計画では、最終年度である2023年度末時点での有利子負債/東急EBITDA倍率7倍台への回復を財務健全性の目標として掲げております。
長期視点での財務戦略においては、健全性の確保を重視しております。当社の事業は、長期間にわたるプロジェクトを推進することに加え、大規模な施設を保有・運営・管理することに依拠するため、有利子負債の適切な管理が重要となります。中期3か年経営計画における有利子負債の金額は1兆2,000億円程度を目線とし、設備投資などの投資計画は、業績の動向に応じて一定の選別を行うものの、安全・維持更新投資、進行中の大規模プロジェクトや各事業の構造改革に関連する投資は着実に実施することとしております。
2022年度は、進行中の大規模プロジェクトの一つである東急歌舞伎町タワーの竣工などに伴い、前年度末から402億円増加の1,576億円の設備投資を実施しました。この結果、2022年度末の有利子負債は1兆2,875億円となり、前年度末からは917億円の増加となったものの、東急EBITDAについて営業利益が想定を上回るなど、目標数値を超えて復元が進んだことにより、有利子負債/東急EBITDA倍率については、前年度末の9.3倍から8.9倍に改善しております。
2023年度は、設備投資について前年度から減少し1,370億円を予定しております。有利子負債水準は1兆2,908億円を想定するなど前年度から金額規模に変動はございませんが、営業利益の向上に伴う東急EBITDA増加などにより、有利子負債/東急EBITDA倍率については7.2倍と中期3か年経営計画の目標の7倍台を確保できる見通しとなっております。

当社における資金調達については、米国をはじめとする諸外国の量的緩和の縮小、金利上昇など、今後の金融市場の動向に留意が必要な局面の中で、中長期的な安定調達手段の確保とともに、固定比率上昇と調達年限長期化の推進による調達金利の上昇抑制、市場性調達の活用による調達コストの極小化に引き続き努めてまいります。
また、運転資金の調達については、短期社債(コマーシャル・ペーパー)及びキャッシュマネジメントシステムでの調達枠を設定しており、積極的に活用することで調達コストの削減を図るとともに、危機対応型のコミットメントラインを設定し、不測の事態へも対応可能な状況にあります。
また、当社はグループスローガン「美しい時代へ」のもと「未来に向けた美しい生活環境の創造」および「事業を通じた継続的な社会課題の解決」を進めており、資金調達においても「サステナブル経営」に紐づいた調達を行っております。
当社グループのサステナブル経営を推進する資金調達手段として、「サステナブルファイナンス・フレームワーク」を策定し、本枠組みに基づき、鉄道業界初の「サステナビリティ・リンク・ボンド」を発行したほか、金融機関からサステナビリティ・リンク・ローンによる資金調達を実施いたしました。2022年3月公表の「環境ビジョン2030」で掲げた、2050年CO2排出量実質ゼロに向けたCO2排出量削減目標をKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)及びSPI(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)として設定しております。
また、東急線沿線のお客さまを含めた個人投資家の方々へ当社の社会課題、環境問題双方への取り組みを訴求していくことを目的に、前年度から引き続き「個人向けサステナビリティボンド」を発行しております。調達した資金はサステナビリティ・ビルディング(歌舞伎町一丁目地区開発計画“東急歌舞伎町タワー”)、クリーンな輸送(新型車両の導入など)、安全・安心のための鉄道関連インフラ、気候変動対応(鉄道事業に関する自然災害対策)、サテライトシェアオフィス(NewWorkなど)、nexus(ネクサス)構想に要した支出のリファイナンスに充当しております。
サステナブルな幅広い資金調達により、「次の100年」に向けたサステナブル経営を推進し、社会とともに持続的に成長することを目指してまいります。
株主還元については、安定配当を継続するとともに、中長期的には配当性向30%以上を目安とし、総還元性向も意識して取り組んでまいります。2023年度については、この考え方に基づき年間15円の配当を予定しており、総還元性向や資本効率の向上を意識した自己株式の取得についても約300億円、16,524,300株の取得を2023年6月に実施しております。
※1 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計
※2 設備投資・投融資の金額については、投資計画の進捗説明を主眼とし一部組替を行っており、「キャッシュ・フロー計算書」とは数値が異なります。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、創業以来、事業を通じて社会課題の解決に取り組み、時代の変化に適合しながら、国や都市・地域の発展とともに着実に成長してまいりました。今後も、社会環境の変化に対応しながらサステナブル経営を行うべく、2021年度を始期とする中期3か年経営計画を推進しております。
当社および連結子会社では、交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートの各セグメントにおいて多様な事業展開を行っており、多額の固定資産を保有するとともに、設備投資・投融資等、継続的な投資を実施しております。したがって、当社および連結子会社においては、固定資産を中心とした資産ポートフォリオの管理、とりわけ減損損失の判定が、重要な会計上の見積りに該当いたします。
減損損失の判定にあたっては、事業や物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性や市場性、用途変更や除売却等の意思決定の有無等により兆候判定を行っております。また減損損失の認識・測定においては、将来キャッシュ・フローを直近の実績や事業計画等の意思決定に基づいて合理的に見積りを行うほか、不動産等の時価のある資産については必要に応じ鑑定等の外部評価に基づく適正な価額を用い、投資額や帳簿価額の回収可否について判定を行っております。
加えて、当社グループでは、当社および交通セグメントに属する連結子会社において、多額の繰延税金資産が計上されております。
繰延税金資産の回収可能性の判断については、テレワークを始めとした働き方の変化による鉄道輸送人員の大幅な減少や新型コロナウイルス感染症の収束時期等の高い不確実性により、主として交通事業における繰延税金資産の回収可能性の判断に係る重要性が高まったことから、重要な会計上の見積りに該当いたします。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の収益力に基づく課税所得及びタックス・プランニングに基づき判断をしております。課税所得の見積りは翌連結会計年度の予算および中期経営計画を基礎としております。
なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社と当社の子会社である㈱東急レクリエーションは、2022年9月14日に開催された両社の取締役会において、2023年1月1日を効力発生日とし、当社を株式交換完全親会社、㈱東急レクリエーションを株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを決定し、同日、株式交換契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)共通支配下の取引等」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は、
主な研究開発活動は、㈱東急総合研究所において、経済、社会、地域等に関する消費研究や消費構造、消費者の意識・行動に関する調査・研究を行っております。