文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営理念、経営方針
当社グループでは以下のとおり、「東武グループ経営理念」、「東武グループ経営方針」を定めております。
東武グループでは、「奉仕」「進取」「和親」を経営の拠り所としています。
「奉仕」:東武グループは、東武グループの全ての事業が社会に支えられていることを深く自覚し、豊かな社会の実現に貢献します。
「進取」:東武グループは、現状に甘んじることなく、常に研鑚に励み、時代を切り開く開拓者精神をもって新たな挑戦を続けます。
「和親」:東武グループは、人の和や環境との調和をもとに事業の発展と従業員の幸福を図り、社会の進展に寄与します。
お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、安全・安心を根幹に「運輸」「レジャー」「不動産」「流通」等の事業を多角的、複合的に展開します。
お客様の視点に立ち、質の高い先進性や独創性あふれるサービスを提供し、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指します。
事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たします。
当社グループは、2024年4月より新たに定めた長期経営ビジョン「挑戦と協創で進化させる社会と沿線」の実現に向けて、「営業利益段階における非鉄道事業割合の増加」、「観光需要を捉えた収益力強化」、「持続的な事業運営体制の確立」の3つを経営戦略方針とし、重点戦略として「成長をけん引する事業の確立」、「事業基盤(沿線)の継続的な強化」、「事業領域拡張を見据えた新規事業の育成」及び「環境負荷の低減と人的資本の強化」の4項目を掲げております。
今後の外部環境として、旺盛なインバウンド需要は継続すると想定するものの、物価・人件費・金利などの上昇や労働力不足の拡大が見込まれます。こうした環境下においても、当社グループは、成長領域として定めた観光事業、まちづくり等のプロジェクトの本格化や、東武スカイツリーラインと東京メトロ有楽町線との新たな相互直通運転実施など、大型プロジェクトを順調に進捗させることを通じて、さらなる成長が可能であると考えており、足元の収益性や大型プロジェクトの完成時期の見通しなどを踏まえ、長期経営ビジョンの目標について、時期を変更したうえで、目標数値を引き上げ、「2030年代半ばに営業利益1,000億円以上を目指す」といたしました。

「成長をけん引する事業の確立」については、インバウンドを中心として市場の成長が見込めるホテル業やスカイツリー業をはじめとする「観光事業」と、沿線での開発余地のある「開発事業(まちづくり)」を成長に資する中核事業と位置付け、経営資源を重点的に配分し、中長期的な収益力の強化を進めてまいります。
「事業基盤(沿線)の継続的な強化」については、当社グループの強みである首都圏の広域な事業エリアと、多種多様に展開する事業を活かし、デジタル技術を積極的に活用することで、収益力と生産性を向上させるとともに、グループシナジーの創出と他社との差別化を図り、事業基盤である沿線の継続的な発展を目指してまいります。
「事業領域拡張を見据えた新規事業の育成」については、中長期的には、沿線内の東京圏でも人口減少を迎えると予測されていることから、既存事業の領域を超えた新たな事業フィールドを探索し、将来を見据えた収益源の確立を目指してまいります。
「環境負荷の低減と人的資本の強化」については、昨今の環境に関する意識の高まりを好機と捉え、奥日光エリアの当社グループアセットにおいて、「国際エコリゾート日光」の確立によるブランディングと集客力強化地域との連携を図るべく、脱炭素への取組みを強化してまいります。当社グループ全体としては、2030年度のCO2排出量を、2022年度比30%削減する目標を掲げ、取組みを進めてまいります。さらに、『長期経営ビジョン』の実現を目指した人材の獲得並びに活躍できる環境づくりにより、人的資本の強化を図ります。
当社グループは、1897年の設立以来、社会とともに持続的な発展を遂げてまいりました。1969年には当社社是として「奉仕」「進取」「和親」を制定、現在はこれを「東武グループ経営理念」として掲げ、安全・安心を根幹に、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指す「東武グループ経営方針」のもと、事業を通じて社会課題の解決に取組むことで、社会の持続的な発展の一端を担いつつ、当社グループも発展してまいりました。
これからも、沿線の特長や経営資源を活かしながら、社会課題の解決を通じて、将来にわたって新たな価値を創造し、「人にやさしく 人と地域が共に輝きつづける社会」を実現することで、社会に不可欠な企業集団として存続してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、広域な鉄道ネットワークに広がる沿線地域が事業基盤であり、これまで以上に沿線を中心とした社会の持続的な発展を実現することは、最も重要な課題であると考えております。
当社グループを取り巻く外部環境は、様々な社会課題に直面しており、課題の解決とともに新たなビジネスモデルの構築が必要であります。
当社グループは、1897年の設立以来、事業を通じて社会課題の解決を図り、「人にやさしく 人と地域が共に輝きつづける社会」を実現することで、社会に不可欠な企業集団となることを目指してきました。
この考え方のもと、当社が特定したマテリアリティ(重要課題)と、課題解決により社会の発展と企業価値の向上を持続的に創出するプロセス(価値創造プロセス)については、以下のとおりであります。
「特定したマテリアリティ」
①地域社会の持続的な発展
②企業価値創造に資するコーポレート・ガバナンス
③多様な社員の「能力と可能性」向上
④環境優位性の更なる向上などによる環境負荷の低減
⑤グループ全ての事業の根幹である安全・安心の確保

「価値創造プロセス」
「人にやさしく 人と地域が共に輝きつづける社会」の実現に向けた価値創造を行ってまいります。
詳細は当社ホームページ「
当社が特定したマテリアリティは、経営会議において審議するとともに、独立社外取締役が議長を務めるガバナンス委員会において審議、評価を行い、議長からコーポレート・ガバナンスに資する旨、取締役会に報告しております。
また、ガバナンス委員会は年2回開催され、危機管理委員会、コンプライアンス委員会、情報セキュリティ委員会、環境推進委員会等サステナビリティに資する各委員会の委員長から、活動計画及び活動報告、提言を受け、審議、評価を行い、取締役会へ上申しております。
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
・気候変動
・人的資本・多様性
・情報セキュリティ
・コンプライアンス
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
東武グループでは、鉄道事業を中心とした高い環境優位性を更に向上させ、環境負荷・気候変動リスクの低減につなげております。また、あらゆる事業分野において、GHGの排出量の削減をはじめとした環境保全活動や自然災害によるリスクを低減させる取組みを推進して、持続可能な社会の構築に寄与し、企業の成長との両立を図っております。
当社では、この取組みを推進すべく、環境推進委員会担当執行委員を委員長とし、各本部長及び環境経営に関係する部・室の担当執行役員及び部・室長で構成する環境推進委員会を設置し、気候変動に係るリスク・機会(以下、「気候変動リスク等」と言います。)について議論・検証を行っております。
代表取締役、社外取締役及び常勤監査役を委員とし、社外取締役が議長となり会議を主宰するガバナンス委員会において、環境推進委員会委員長は気候変動リスク等にかかる活動計画及び活動報告、提言を行います。ガバナンス委員会では、その内容について審議、評価を行い取締役会へ報告する等、気候変動リスク等に対する取組みにかかるガバナンス体制を構築しております。
また、気候変動リスク等にかかる取組みについては、東武グループにおける危機管理上重要な事項と捉え、危機管理委員会へ共有を図り、適切に管理される体制を構築しております。

a.シナリオ分析
連結決算上、最大の財務的影響を及ぼす当社の鉄道事業を対象に、気候変動の影響について、気候変動研究の分野で用いられる国立環境研究所による社会経済シナリオ(SSPシナリオ)のうち、持続可能な社会シナリオ(SSP1、2℃未満シナリオ)と地域分断社会シナリオ(SSP3、4℃シナリオ)を比較し、それぞれの社会における「リスク」と「機会」並びに「収益」への影響について分析しました。
▼SSPシナリオ(Shared Socioeconomic Pathways)

※ IPCC:気候変動に関する政府間パネル
SSP1とSSP3それぞれに、気候変動による当社鉄道事業への影響を「物理リスク」(洪水や暴風雨をはじめとした異常気象による倒壊など)と「移行リスク・機会」(低炭素経済への移行による規制の強化や新技術の導入、消費者の嗜好・行動の変化による市場や評判の変化など)に分類し、以下のとおり分析を行いました。
b.物理リスク
異常気象の増加に伴う水災リスクとして、鉄道事業の「施設」「設備」への財務的影響を分析しました。この分析では、洪水リスク評価モデル(注1)や気候予測データベース(注2)を使用し、鉄道事業に関する個々の資産(駅舎、線路、電気設備等)が洪水によって物理的にどの程度の損害を受けるか評価しております。過去の気象データをもとに、当社線全線における100年に一度レベルでの災害発生による被害額を計算しております。また、災害発生により運行に支障が生じた場合の収入への影響について概算で算出を行いました。
その結果、鉄道事業全体での水災リスクの影響については、SSP1とSSP3ではいずれも被害額が現行よりも増大するリスクがあるものの、SSP1の方が被害額が少ないことがわかりました。そのため、持続可能な社会を実現して気温上昇を2℃未満に抑えることは、当社が事業を営むうえで、水災リスク低減の観点からも重要と認識しております。
なお、当社では法面・橋梁強化、変電所嵩上げといった施設の補強や車両避難計画の策定等、自然災害の被害軽減のための対策にも取組んでおります。今後も環境負荷低減の取組みと合わせて、リスク低減のための取組みも進めてまいります。
(注)1 過去の気象データをもとに、数万通りの降水可能性をコンピュータ上で仮想的に再現した評価モデル
2 文部科学省による「気候変動リスク情報創生プロジェクト」等による大規模気候予測データベース
c.移行リスク・機会
SSP1では、炭素税の導入や脱炭素に向けた規制強化等により、エネルギーや資材の調達費用が増加し、財務的な負担が増加するリスクがあります。一方、クリーンエネルギー技術の進展等をはじめとした次世代技術の普及、特にMaaSや自動運転の実験など当社で既に取組んでいる施策を機会と捉え、鉄道運行等の関連コストの減少や業務効率化の可能性のほか、鉄道の環境優位性を維持することによる代替輸送機関からの転移等、収益向上の機会を得られることが推定されました。
d.収益に与える影響
物理リスク・移行リスクのほかに考慮すべき要素として、将来的な人口動態変化による鉄道収入への影響を分析しました。日本の人口動向は少子高齢化や人口減少は見込まれるものの、社会的に子育て環境を整えるシナリオのSSP1に対して、SSP3では経済停滞等により一層人口減少が進行することが見込まれます。
その結果、SSP1とSSP3では、2050年度には鉄道収入でSSP3の方が大きく減収することがわかりました。そのため、持続可能な社会を実現して気温上昇を2℃未満に抑えることは、当社が事業を営むうえで、将来的な収益確保の観点からも重要と認識しております。
以上を踏まえ、今後も地域社会とともに持続的な成長を目指していく東武グループは、事業を運営するうえでSSP1の実現を目指すことが重要と考え、今後も気候変動に関する各種取組みを進めてまいります。
なお、上記シナリオ分析にて抽出したリスクと機会、それぞれの評価と対策の詳細については、当社ホームページ「

当社では、環境優位性のさらなる向上等による環境負荷の低減を解決すべき重要課題として捉えております。当社グループ全体においては、2030年度に、CO2排出量2022年度比30%削減並びに奥日光エリアのカーボンニュートラルを目標として掲げております。当社グループの事業の基盤である鉄道事業では、2030年度にCO2排出量2013年度比約50%削減の達成を見込み、その実現のため「省エネ車両への置き換え・保有車両数の適正化」「駅、車両等の照明LED化」「高効率変圧器への更新」を中心に様々な環境負荷低減への取組みを行っております。特に日光・鬼怒川エリアについては、日光・鬼怒川エリアを走行する電車や都心から同エリアへアクセスする特急列車にかかる電力相当を再生可能エネルギー由来の電力に実質的に置き換えることにより、同エリアの電車運行にかかるCO2排出量実質ゼロを実現しています。これに加え、環境配慮型MaaSである「Nikko MaaS」を基盤としつつ、脱炭素先行地域の取組みを推進する日光市や地域とも連携しながら取組みを加速化し、「国際エコリゾート日光」としてのブランド強化を図ってまいります。
2050年でのCO2排出量実質ゼロに向けて、今後も東武グループでは環境負荷低減のための取組みを進めてまいります。
・2024年度 温室効果ガス排出量
※ 各エネルギーの使用量等実績にもとづき、CO2排出量算定・削減支援クラウドサービスにより算出した集計値です。
※ 集計値は第三者保証前の数値であり、集計値が変更となる可能性があります。
確定値については、2025年度下期に発行する統合報告書及びサステナビリティサイトにて開示予定です。
当社グループは、鉄道事業をはじめ多くの労働力を必要としております。出生率の低下による人口減少と高齢化は、一層早いスピードで進むことが想定され、新たな採用チャネルによる人材確保や働き続けられる制度の最適化、活躍できる人材の持続的な育成は、当社グループの業績にも影響を及ぼす課題として認識しています。
長期経営ビジョンのもと、10年後を見据えた経営戦略及び中期経営計画の実現においては、重点戦略(成長戦略)で掲げる「人的資本の強化」は持続的な事業推進の原動力と考えており、そこで求める人材像及びそれに至る人材戦略を明確にし、求める人材に資する社員育成の基本的な考え方を「人材育成方針」として、また、求める人材の育成に必要となる社員支援の基本的な考え方を「社内環境整備方針」として掲げています。経営戦略と連動させた人材戦略及び各方針のもと、「会社と社員の絆・エンゲージメント向上」と「生産性向上」の連動により、社員及び組織のパフォーマンス最大化を目指していきます。
当社グループ経営理念である、「奉仕」「進取」「和親」を行動原理とし、長期経営ビジョンで掲げる「挑戦」・「協創」に資する人材こそ、事業と地域社会の持続的成長を担う原動力であるとの信念のもと、3つの戦略的アプローチ『採用』『育成』『能力発揮・定着』と、その連携により、「多様な人材」と「組織」を相互に連動させる“新たな施策”と“支援の強化”をたゆみなく推進することで、顧客創造できる「人材」及び「組織」のパフォーマンス最大化を目指していきます。

中でも、中期経営計画の期間中においては、「採用」「育成」「能力発揮・定着」の各戦略的アプローチを連携させながら、以下4つの重点的な取組みを具体的な施策に反映させ実施しております。

取組み① 人材育成・自律的なキャリア形成支援
当社グループの「安全・安心」の磨き上げによる『信頼』の醸成、そして「挑戦」と「協創」を推進し『価値創造』する原動力は、「社員」であることを再認識し、人材育成方針である「自ら考え自ら行動できる人材育成」に向け、社員と伴走するOJT教育の充実に加え、「対話」機会を増やしたoff-JTや社外スクール研修、各種手挙げ式研修の拡充等を積極的に推進しています。特に、2023-2025年度にかけては、人材育成の要となる「管理監督者層支援」を重点的に実施し、人材の基盤整備と挑戦できる風土の醸成を図っています。
取組み② ダイバーシティ&インクルージョン推進
当社グループでは、2022年に制定した東武グループダイバーシティ&インクルージョン宣言にもとづき、性別・年齢・国籍・障がい・性的指向・性自認・価値観・働き方等に依らずに、お互いを尊重し、個々人が持つ能力を最大限に発揮しながら共に高め合い協働することで、エンゲージメント向上や生産性向上を目指しています。その実現には、土台となる一人ひとりの意識醸成や意識変革が環境整備や風土醸成につながると考え、当社グループ全従業員を対象とした人権啓発推進教育や、傾聴・対話によるコミュニケーションを通じたキャリア支援策を講じています。
取組み③ 人的資本の最適化・制度設計
労働人口の減少や働き方に対する価値観が多様化する中、鉄道事業のみならず、新たな分野に挑戦しうる人材を獲得するため、採用広報活動や社外への情報発信機能を強化し、新卒採用に依らない経験者採用・アルムナイ採用等の採用チャネルを拡大したほか、新卒初任給の引き上げや経験者採用における経験に応じた初任給を設定いたしました。さらには、評価制度の刷新をはじめ、社員一人ひとりがパフォーマンスを最大限発揮し、働き続けられる・続けたいと思えるような制度設計等により、人材の最適化を目指した社内環境整備を図っています。
取組み④ 健康経営・ウェルビーイング推進
当社では、社員が心身共に健康で生き生きと働くことで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上にもつながると考えており、2021年に健康宣言を制定いたしました。そのために、会社・社員・健康保険組合が一体となり社員とその家族の心身の不調を未然に防ぐとともに、健康意識の向上を図る教育を実施する等、健康面に不安なく自身のパフォーマンスを発揮できるような健康づくりに取組んでいます。なお、健康推進体制の強化をはじめ、特定保健指導の実施率や特定健診受診率の向上、健康施策の実施が評価され、健康経営優良法人(大規模法人部門)を4期連続認定取得しています。
(注) 1 管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「
2 当社グループ全体における指標及び目標となります。上記1.人材育成・キャリア形成支援の2項目以外は、当社及び主に鉄道事業に係る業務を担務する東武ステーションサービス株式会社・東武エンジニアリング株式会社・東武インターテック株式会社・東武シェアードサービス株式会社における指標及び目標としております。また、障がい者雇用率については、株式会社シンフォニア東武(特例子会社)を含む指標及び目標としております。
なお、当社グループの多岐にわたる事業特性や事業規模をふまえ、各社で一部関連する指標や具体的な取組みを推進しておりますが、本指標及び目標は必ずしも当社グループ全体での取組みを包含しておりません。
3 年次有給休暇のほか、当社独自の有給休暇制度を含む1人当たりの取得日数を記載しております。
当社では、出産・子育てを経ても安心して働き続けられる両立支援を継続して実施したことにより、「プラチナくるみん」を認定取得(2024年2月)したほか、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」を4期連続で認定取得しております。
当社グループは、鉄道や電波塔などの重要な社会インフラをはじめとした様々なサービスを提供する企業グループとして、多くの情報システムを使用しております。これらへのサイバー攻撃や不正なアクセス、コンピューターウイルスへの感染や人為的不正操作等により、当該システム機能に重大な障害が発生し事業の運営に支障することで、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、事業を安定かつ継続的に行うべく、情報システム機能の確保を図るために各種の情報セキュリティ対策を講じております。
当社における情報セキュリティマネジメントに関するガバナンス体制として、ICT推進部担当執行役員を委員長とした情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティマネジメントの実施状況及び実施計画の報告を行い、同委員会の議事についてはガバナンス委員会に報告を行っております。
当社グループにおいては、「情報セキュリティポリシー」に則り規程類を制定し、適時見直しを行っているほか、グループ事業統括部にてグループ会社の情報セキュリティに関する取組み状況のモニタリングを実施し、PDCAサイクルにより情報セキュリティ対策に取組んでおります。また、定期的にグループ会社に対する教育を行い、役職員の情報セキュリティに対する意識の向上を図っております。
当社においては、重要なインフラである鉄道事業の持続性を確保するため、鉄道運行にかかわる重要なシステムの社外ネットワークとの隔離や許可されたプログラムのみ実行できる環境を構築しております。役員を含めた全パソコンユーザーに対しては、情報セキュリティeラーニング、標的型メール攻撃を模擬した実体験型の訓練を実施しております。あわせて、高度化、複雑化するサイバー攻撃等の情報セキュリティインシデントに対応するため、専門チーム「TOBU-CSIRT」により、「有事における迅速な対応」と「平時における未然防止活動」に取組んでおり、外部専門家が業務用ネットワークを常時監視し、異常検知の際は担当者に発報を行いインシデントに迅速に対応できる体制を確保しているほか、当社内での情報セキュリティインシデント発生を想定したシナリオにもとづく対応訓練を実施しております。また、サプライチェーン対応として、当社との契約にセキュリティ対策を組み入れ、万が一の際に迅速な調査が行える体制を整えております。
当社グループにおいては、「東武グループコンプライアンス基本方針」を制定し、法令順守や健全な職場環境の形成などを記載したコンプライアンス・マニュアルの整備や、グループ全社員へコンプライアンス教育の強化を図るなど、法令順守の徹底と不祥事発生の防止に努めるほか、東武グループ全社員に対してコンプライアンスに関する通報・相談窓口である内部通報窓口(コンプライアンス・ホットライン)の周知による利用促進等を行うなど、コンプライアンスの確保に取組んでおります。
当社では、取引先等と相互に信頼関係を構築するために法令及び健全な商習慣に従い、公平・公正かつ透明な選定・取引を行うことをコンプライアンス・マニュアルにおいて定め、研修・教育などを通じ、贈収賄・汚職の防止に取組んでおります。また、インサイダー情報について厳重な管理を行うとともに、eラーニング等を活用した教育などにより、インサイダー取引禁止の徹底を図っております。さらに、当社グループにおいては、反社会的勢力に対し、毅然とした対応を行うとともに、その排除に向け、「東武グループ連絡協議会」を開催し、グループ内において反社会的勢力に対する防備を固め、情報及び対応策などを共有する体制を構築しております。
なお、当社は取引先との共存共栄の構築を目指し、2023年4月に「パートナーシップ構築宣言」を公表いたしました。同宣言の取組みを推進することで、取引先の事業継続と取引適正化に貢献してまいります。
また、当社グループでは、人権に係わる取組みとして、当社グループの事業活動において配慮すべき人権侵害リスクの範囲や対象が拡大していることから、さらなる人権尊重への取組みを推進するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、2024年9月に「東武グループ人権方針」を制定いたしました。
本方針制定に伴い、当社グループ全社員に対し方針内容の周知浸透を図り、eラーニング等を活用し「人権」の理解と「人権尊重」に向けた取組み内容について理解を深めるとともに、今後も毎年度テーマ設定し継続的な教育を実施してまいります。さらには、当社に設置した人権啓発推進委員会が中心となり、社員一人ひとりの意識啓発はもとより、人権デュー・ディリジェンスによる人権侵害リスクの把握・防止に向けた取組みを把握・推進しております。
加えて、新入社員教育・階層別研修・新任管理者研修等における「人権教育」にて、人権侵害や不当な差別を防止する研修のほか、当社の社員向けに人権尊重を考える機会として社内広報誌等を通じた情報提供・意識啓発に取組んでおります。あわせて、当社グループ社員に対する人権侵害の観点から、2024年9月に「東武グループカスタマーハラスメント対応方針」を制定いたしました。これは、お客様に対しサービスの質を向上させていくとともに、カスタマーハラスメントから社員の人権を守り、安心して働くことでパフォーマンスの向上・人材定着につなげることを趣旨としております。
なお、当社では、「ハラスメント・人権相談窓口」を社内に設置しており、人権に関する相談を受け付ける体制を整え、働きやすい職場づくりに取組んでおります。
当社では、総務法務部担当執行役員を委員長としたコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス経営の推進、コンプライアンス経営の実施状況の把握、評価及び見直し等を行うとともに、同委員会の議事について社外取締役が議長を務めるガバナンス委員会に報告を行っております。また、コンプライアンス委員会のもとに人事担当執行役員を委員長とした人権啓発推進委員会を設置し、全社的に影響を与える重要な事項については、コンプライアンス委員会に報告のうえ、対応方針を策定することとしております。なお、コンプライアンス上の重大な事象が発生した場合は、コンプライアンス委員会を開催して対応にあたるとともに、危機管理委員会等と連携し、必要に応じて適時ステークホルダーに対して情報開示を行い、事態の早期収束を図る体制を構築しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクとして、「事業環境・ビジネスモデルに影響を与えるリスク」「安全・安心の確保に関するリスク」「経営資源の確保に関するリスク」「ガバナンスに関するリスク」の4つを設定いたしました。それぞれのリスク顕在化を防ぐための取組みは以下に記載のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。
東武鉄道が展開している鉄道事業においては、鉄道事業法第3条により、路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の認可を受けなければなりません。同様に、運賃の設定・変更についても同法第16条により、鉄道事業者は旅客運賃等の上限を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならず、国土交通大臣は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して認可しております(総括原価方式)。また、認可を受けた運賃等の上限の範囲内で運賃等を設定・変更する場合は、国土交通大臣に届け出ることとなっております。
鉄道を取り巻く社会経済環境が大きく変化している中、コストコントロールを徹底しても生じる原価を適時適切に運賃に反映できない場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、鉄道事業以外の当社グループ会社が展開する各種事業においても、様々な法令・規則等の規制の適用を受けており、これら法的規制が変更された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
わが国の合計特殊出生率は2016年より減少傾向に転じ、出生数の減少も続いております。昨今の経済・社会環境の影響により出生率と出生数の低下にさらに拍車がかかっており、今後地域によって差はあるものの、人口減少と少子高齢化がさらに進行することが想定されます。
そのため、当社グループにおいては、相互直通運転を活用したシームレスな輸送をはじめ利便性や速達性の向上、ホーム柵の整備等により安全・安心・快適な通勤・通学輸送と魅力ある観光輸送の提供、並びに良質で暮らしやすい住環境・サービスの提供や観光誘客を推進しております。これらの取組みをとおして当社沿線の価値向上を図り、定住化促進と交流人口の創出に努めております。
しかしながら、消費活動の基盤となる人口減少と少子高齢化が沿線地域で急激に加速した場合、鉄道事業を中心に東武沿線を主たるマーケットとして事業を展開している当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これまでの新型コロナウイルス感染症の影響により、働き方等において新しいライフスタイルが浸透・定着し、今後もニーズや価値観の変化・多様化が続くことを想定しております。
そのため、当社グループにおいては、事業環境が変化する中でも利益を確保できるよう事業構造改革を行い、事業運営体制の見直しやコスト削減施策による効率化と省力化を進めてまいりました。また、集客拠点を強化する沿線開発とグループの総力を活かしたまちづくりの実施等による非鉄道事業の強化や観光需要を捉えた収益力強化により、事業の持続的発展を目指してまいります。
しかしながら、移動を前提としないライフスタイルが定着した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、鉄道事業をはじめ幅広い事業を展開しており、事業環境の大きな変化や急速な技術革新に伴う新たな競合サービス・競合事業者の出現等により、需給関係の悪化や競争激化が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、「挑戦と協創で進化させる社会と沿線」と定めた長期経営ビジョンのもと、事業環境の変化やお客様ニーズの変容を的確にとらえ、グループ各社で培ったノウハウやデジタル技術などを活かしつつ、新たな技術や外部からの知見を取り入れて事業に活かしてまいります。それにより、お客様へ最適なサービスを迅速かつ柔軟に提供しサービス向上を図るとともに、生産性を向上することで利益の確保につなげてまいります。
⑤ パンデミック等の発生
パンデミック等により外出制限や出控えが発生した場合には、運輸事業やレジャー事業を中心に利用者が急減し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、パンデミック等により従業員の感染が多発した場合には、事業運営に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、従業員の基本的な感染症予防策を継続的に実施するとともに、感染状況に応じた事業継続計画や感染対策を講じることでお客様が安全・安心にご利用いただけるよう取組み、国民の安定的な生活の確保に欠かせない社会インフラの1つである鉄道事業を中心に社会を支え、事業を継続してまいります。
当社グループでは、安全・安心の確保はお客様の信頼を得るうえで最も重要であると考え万全を期しておりますが、万が一、重大な事故を発生させ長期的に事業を運営できなくなった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、「安全はすべての事業の根幹である」との信念のもと、お客様と従業員の安全確保を最優先に安全管理体制の確立に努めるとともに、安全のための設備投資や教育・訓練などに継続して取組み、安全・安心の確保に努めております。
気候変動による事業運営・維持に関するリスクの内容については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)重要なサステナビリティ項目 ① 気候変動」に記載のとおりであります。
当社グループは、鉄道事業をはじめ幅広い事業を展開しておりますが、不測の事故や災害、テロ・戦争の発生等外的要因により、長期的に事業を運営できなくなった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、大規模な自然災害等の緊急事態に備え事業継続計画を整備するなど危機管理体制の充実強化に努めるとともに、自然災害に強いインフラの整備やテロ対策など、安全確保のための対策にも継続して取組んでまいります。
当社グループは、各事業において顧客の個人情報を含むデータベースを管理しており、情報が流出した場合には損害賠償や信用の低下等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、情報の取得及び利用に際しての社内での保護規程類を定め管理体制を整備するとともに社員教育を実施し、関係者の情報管理を徹底するほか、情報処理を社外に委託する場合も秘密保持の整備、監督を強化する等、取り扱いには十分留意し情報管理を行っております。
情報セキュリティに関するリスクの内容については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)重要なサステナビリティ項目 ③ 情報セキュリティ」に記載のとおりであります。
当社グループは、鉄道事業をはじめ多くの労働力を必要としております。出生率の低下による人口減少と高齢化は、一層早いスピードで進むことが想定され、労務費の高騰及び採用難等により人手不足が顕在化した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、人材確保のために、多様な知識や価値観を持つ人材の登用や育成、安定した雇用や多様化する働き方への対応、福利厚生の充実等、働きやすく働き続けられる柔軟で安心な就労環境の確保を図ってまいります。さらに、労働力人口減少下でも安定輸送を提供するため、ワンマン運転区間の拡大や自動運転等を含むデジタル技術の活用等により生産性の向上を進め、効率的な事業運営体制を構築してまいります。
当社グループは、鉄道事業をはじめとして多くのインフラ設備を活用し、動力として電力や燃料を使用しております。また、各事業においてはさまざまな原材料を使用しています。自然災害の発生や海外情勢の悪化、為替の影響などにより原材料や資源の価格が高騰した場合や、調達不足が継続した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては省エネに資する高効率車両や設備を導入するほか、設備の適正化や見直しによるエネルギー消費や温室効果ガス排出量の削減、適切な時期での調達を行う等、コスト抑制とともに持続可能な社会の構築に取組んでおります。
当社グループは、各事業で継続的に行っている設備投資等の必要資金を、主として社債や金融機関からの外部借入れによって調達しており、将来への成長投資等により高水準の有利子負債残高を保有しています。今後、金利が一段と上昇した場合や、格付機関が当社の格付を引き下げた場合には、金利負担の増大や資金調達条件の悪化を招くことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、財務健全性を確保しつつ、財務レバレッジを活用した成長戦略を推進するとともに、昨今の金利上昇傾向を踏まえた連結有利子負債残高の適切な管理や、資金の調達手段の多様化を進めることにより、中長期の金利環境を勘案し適時最適な方法による調達を行っております。
当社グループは、多様な事業展開を行う上で必要な資産や、株式などの投資有価証券等を保有しております。収支管理の徹底や確実な利益確保のための事業構造改革を実施するとともに、中長期的な収益・利益の拡大に資する事業の育成を推進し、資産価値の向上を図っております。また、投資有価証券については保有意義の検証を行い、中長期的に希薄と考えられる場合は段階的に縮減を図っております。
しかしながら、保有資産のキャッシュ・フロー創出力の低下や株価の大幅な下落等によりその時価が著しく下落した場合は、減損損失または評価損等を計上することにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
コンプライアンスに関するリスクの内容については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)重要なサステナビリティ項目 ④ コンプライアンス」に記載のとおりであります。
人権に関するリスクの内容については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)重要なサステナビリティ項目 ④ コンプライアンス」に記載のとおりであります。
なお、上記は当社グループの事業等について予想される主なリスクを例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や、インバウンド需要の拡大等を背景に、緩やかな回復基調が続きました。一方、物価上昇や為替の変動、欧米における高い金利水準の継続に伴う海外の景気が、国内経済や個人消費に与える影響等を注視する必要があります。
当社グループにおきましては、当期より新たに定めた長期経営ビジョン「挑戦と協創で進化させる社会と沿線」の実現に向けて、「営業利益段階における非鉄道事業割合の増加」、「観光需要を捉えた収益力強化」、「持続的な事業運営体制の確立」の3つを経営戦略方針として掲げ、中長期的な収益・利益拡大に資する事業の育成を推進してまいりました。
2024年度の連結業績は、以下のとおりであります。
鉄道業において通勤利用の回復や行楽期間における利用増があったほか、ホテル業、スカイツリー業及び百貨店業におけるインバウンド需要の着実な取り込みによる増収があったものの、旅行業における受託収入減や不動産分譲業における分譲マンションの持分換算後計画販売戸数減により、営業収益は631,461百万円(前期比0.7%減)となりました。
営業収益全体では減収であったものの、鉄道業及び百貨店業における増収による増益のほか、建設業における利益率の改善により、営業利益は74,604百万円(前期比1.0%増)となりました。
営業外収益については、5,791百万円(前期比10.7%増)、営業外費用については、7,678百万円(前期比8.4%増)をそれぞれ計上し、経常利益は72,716百万円(前期比0.9%増)となりました。
特別利益については、政策保有株式売却に伴う投資有価証券売却益の計上等により、13,639百万円(前期比73.8%減)となり、特別損失については、10,448百万円(前期比81.4%減)をそれぞれ計上いたしました。
これらの結果、税金等調整前当期純利益は75,907百万円(前期比11.9%増)を計上し、法人税等を控除した当期純利益は51,633百万円(前期比6.7%増)となりました。また、ここから非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は51,330百万円(前期比6.6%増)となりました。
セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。
各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。また、各セグメントの営業成績のうち「調整額」は内部取引消去額を表しております。
なお、(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)に記載のとおり、前連結会計年度の連結財務諸表を組み替えております。これにより、前期比較については、変更後のセグメント情報にもとづいて記載しております。
(運輸事業)
鉄道業におきまして、当社では、時季需要に応じた特急料金の繁忙期・閑散期料金を導入いたしました。営業運転開始から2025年2月までに累計100万人に乗車いただいた「スペーシア X」をはじめとした特急列車の臨時運行により、お客様の乗車機会の拡大及び日光・鬼怒川エリアへの誘客を図りました。また、サービス向上のため、東上線でダイヤ改正を実施したほか、東武アーバンパークラインでは新型車両80000系を導入いたしました。さらに、沿線自治体と連携し、「ベリーベリーハッピートレイン」の運行や「SL大樹」初となる栃木駅から下今市駅への運行を行ったほか、沿線スポーツチームと連携した企画を行い、地域の魅力創出・発信を図りました。
安全面では、高架化工事を推進し、とうきょうスカイツリー駅付近高架化・1か所の踏切廃止、春日部駅付近で上り仮線の切替えを行いました。また、ホーム上の安全対策としてホーム柵の整備を進めました。
バス・タクシー業におきまして、東武バスグループでは、柏の葉・和光市の各エリアにおいて自動運転バスの実証実験を実施したほか、「国際エコリゾート日光」の価値最大化を目指し、東武日光駅~中禅寺温泉間の急行バスや客貨混載バスを運行いたしました。
運輸事業全体としては、通勤利用の回復やゴールデンウィーク及び紅葉シーズン等における行楽利用の増加等による定期・定期外の輸送人員増加等により、営業収益は216,054百万円(前期比3.7%増)、営業利益は31,285百万円(前期比9.9%増)となりました。
(営業成績)
(提出会社の鉄道業成績)
(注) 1 乗車効率の算出方法
乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)÷(客車走行キロ×平均定員)×100
乗車効率とは、客車走行車両定員に対する旅客輸送量を見るためのものであります。
2 定期外旅客収入は、特急料金及び座席指定料金を含んでおります。
(東武鉄道株式会社路線図)

スカイツリー業におきまして、「東京スカイツリー®」では、営業時間の拡大、人気コンテンツとのコラボレーションイベント及び海外オンライン旅行代理店と連携したプロモーション強化や広告配信強化による積極的なインバウンド獲得施策の実施等により入場者数の増加に努めるとともに、料金改定により増収を図りました。
ホテル業におきまして、当社及び㈱東武ホテルマネジメントでは、都内ホテルを中心に、旺盛なインバウンド需要を捉え、稼働率及び客室単価の上昇を図りました。特に「コートヤード・マリオット銀座東武ホテル」では、全室リニューアルオープンし、新たに加わった5つのショップがさらなる活気をもたらすなど増収に努めました。
旅行業におきまして、東武トップツアーズ㈱では、企業活動の活発化等による団体旅行需要や伸長する訪日旅行案件の取込みを図るとともに、地域の課題を解決する地域活性化事業等を受託するなど、増収に努めました。
レジャー事業全体としては、インバウンド需要の取込みによりスカイツリー業及びホテル業では増収増益となったものの、旅行業における受託収入の減少により、営業収益は175,563百万円(前期比5.0%減)、営業利益は17,242百万円(前期比11.2%減)となりました。
(営業成績)
(不動産事業)
スカイツリータウン業におきまして、「東京スカイツリータウン®」では、ビアガーデンやイルミネーション等、年間を通じた様々なイベントを実施し、国内外の観光需要を捉えることができ、前期に続き過去最高の年間売上を達成いたしました。
不動産賃貸業におきまして、当社では、「EQUiA(エキア)竹ノ塚」を新たにオープンしたほか、「新越谷ヴァリエ」をリニューアルオープンし増収とお客様の利便性向上を図りました。また、店舗併設の駅前賃貸マンション「ソライエアイルときわ台」を、坂戸駅前において学生向けマンションをそれぞれ開設したことにより、恒常的な収益の確保を図りました。
不動産分譲業におきまして、当社では、沿線価値向上と沿線定住人口増加を目的として、分譲マンション「ソライエ新柏プレミスト」(柏市)及び分譲戸建住宅「WELL BIND CITY(ウェルバインドシティ)獨協大学前」(草加市)等を販売いたしました。
不動産事業全体としては、マンションの計画販売戸数の減少等により、営業収益は59,921百万円(前期比4.8%減)、営業利益は14,745百万円(前期比13.5%減)となりました。
(営業成績)
(流通事業)
百貨店業におきまして、㈱東武百貨店では、近隣競合環境の変化へ対応したほか、人気キャラクターとのコラボレーションイベントの開催、地域連携や産学連携施策の実施及び情報発信の強化によるインバウンドの積極的な取込み等により、集客と増収に努めました。
ストア業におきまして、㈱東武ストアでは、EQUiA竹ノ塚内に「東武ストア竹ノ塚店」をオープンしたほか、創業65周年キャンペーンとして特別セールの実施や自社オリジナル商品の開発・販売等に注力し、集客と増収に努めました。
以上の結果、流通事業全体としては、営業収益は172,641百万円(前期比4.0%増)、営業利益は7,558百万円(前期比50.2%増)となりました。
(営業成績)
(その他事業)
建設業におきまして、東武建設㈱では、千葉県夷隅郡大多喜町において宿泊施設の建設工事を、東武谷内田建設㈱では、墨田区において公共施設の建設工事をそれぞれ完了いたしました。
そのほか、東武ビルマネジメント㈱では、世田谷区において病院の清掃業務を受注するなど増収に努めました。
その他事業全体としては、完成工事減により減収となったものの、利益率の改善により、営業収益は87,290百万円(前期比5.0%減)、営業利益は6,339百万円(前期比6.5%増)となりました。
(営業成績)
なお、当社グループのサービス、生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種のサービス、製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産の取得等により1,753,200百万円となり、前連結会計年度末と比べ49,137百万円(前期比2.9%増)の増加となりました。
負債は、有利子負債及び前受金の増加等により1,192,447百万円となり、前連結会計年度末と比べ30,097百万円(前期比2.6%増)の増加となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により560,753百万円となり、前連結会計年度末と比べ19,039百万円(前期比3.5%増)の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、34,936百万円となり、前連結会計年度末に比べて3,677百万円の増加となりました。
当連結会計年度末に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益75,907百万円に、減価償却費53,539百万円等を加減算した結果、90,072百万円の資金収入となりました。前連結会計年度に比べて税金等調整前当期純利益が増加したものの、売上債権及び契約資産の回収額が減少したこと等により1,617百万円の資金収入の減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、86,778百万円の資金支出となりました。前連結会計年度に比べて固定資産の取得による支出が増加したこと等により25,152百万円の資金支出の増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、321百万円の資金収入となりました。前連結会計年度に比べて短期借入金の借入による収入が増加したこと等により68,239百万円の資金収入の増加となりました。
当社グループの資金需要は、営業取引に係る運転資金、設備投資等に係る資金、有利子負債の返済並びに配当等の資金を主としております。
設備投資につきましては、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
短期的な運転資金は、各事業が生み出す営業キャッシュ・フローに加え、取引銀行との総額90,000百万円の貸出コミットメント契約やコマーシャル・ペーパーの発行並びに、当社グループではキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によりグループ内の余剰資金を有効に活用しております。
また、運輸事業や流通事業を中心に日々の収入金があり、必要な流動性は確保しているとともに、十分な水準の資金を保有しております。
設備投資等の長期的な必要資金については、営業活動で得た資金に加え、主力事業である鉄道事業の特性を鑑み、長期安定的な資金調達を行うために、借入金のほか、社債の発行及びシンジケート・ローンの組成、リース等の多様な選択肢の中から最適な調達方法を採用しております。
同時に、年度別償還額の集中を避けることで、将来の借り換えリスクの低減に努めているとともに、金利上昇リスクに備え、固定金利と変動金利のそれぞれの負債残高のバランスを考慮しております。
当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境、対処すべき課題」に記載のとおり、成長領域事業の本格化や大型プロジェクトの順調な進捗などを通じて、さらなる成長が可能であると考え、長期経営ビジョン並びに中期経営計画の財務目標について、時期を変更したうえで、一部見直し、2025年4月30日に公表いたしました。意識する経営指標の想定値は以下のとおりとしております。
(意識する経営指標の想定値)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にもとづき作成されております。その作成にあたり経営者は、資産・負債及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わねばなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
① 株式等の投資
当社グループが保有する株式等の有価証券については、将来の株式市況の悪化または投資対象会社の業績不振等により時価の著しい下落が生じた際には、損失の計上が必要となる場合があります。
② 販売用不動産の評価
当社グループが保有する販売用不動産については、地価の下落や市況悪化等により正味売却価額が帳簿価額を下回った場合には、損失の計上が必要となる場合があります。
当社グループが保有する固定資産のうち、減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたって、経営環境に変化が生じ当初想定した収益が見込めないなど、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた仮定に変更があった場合には、減損損失の計上が必要となる場合があります。
④ 退職給付費用及び債務
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率にもとづいて算出されております。前提条件の変化や制度の変更が生じた場合には、退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得の計画にもとづき慎重にかつ実現(回収)可能な範囲において繰延税金資産を計上しておりますが、将来において既に計上している繰延税金資産の全部または一部を実現(回収)できないと判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できないと判断した繰延税金資産を取崩すとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額に加算し、当期純利益を減少させる場合があります。同様に、現時点で評価性引当額として繰延税金資産を計上していない項目について、将来においてその全部または一部を実現(回収)できると判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できると判断した金額を繰延税金資産として計上するとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額から控除し、当期純利益を増加させる場合があります。
当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結しております。契約に関する内容等は、以下のとおりであります。
2024年12月13日
地方銀行、第二地方銀行、その他
金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高は20,000百万円であり、弁済期限は2031年12月18日から2034年12月18日までの間に到来いたします。なお当該債務に付された担保はございません。
各年度の決算期における連結の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%以上に維持することを確約しております。
2025年3月26日
都市銀行、信託銀行、地方銀行、生命保険会社、その他等
金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高は23,500百万円であり、弁済期限は2028年3月15日から2039年3月15日までの間に到来いたします。なお当該債務に付された担保はございません。
各年度の決算期における連結の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%以上に維持することを確約しております。
2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
当社グループは、長期経営ビジョン「挑戦と協創で進化させる社会と沿線」のもと経営戦略方針にもとづき、社会環境の変化を踏まえたうえで、新技術等を活用した持続可能な事業の実現を目指しています。
(1) 運輸事業
従来から取組んでいる鉄道の自動運転技術の検証については、人口減少・労働力不足といった社会課題に対し、安全かつ利便性の高い輸送サービスの維持継続といった観点から重要な技術と位置づけており、早期の実現に向け研究開発を進めています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は
(2) レジャー事業、不動産事業、流通事業、その他事業
該当事項はありません。