第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」を使命として定め、長期スパンで沿線・地域の発展に貢献してまいりました。2024年3月には、経営ビジョン「私たちは、信頼の源泉となる『安全』を基盤として、『驚き』から『感動』、そして『憧れ』につながる名鉄グループならではの価値を提供し続けます」を策定いたしました。

この経営ビジョンには、これからも、最優先である「安全」を確保し、お客さまに「安心」していただけるサービス・商品の提供に努めていく、そして築いてきた「信頼のトップブランド」をさらに磨き上げ、新しいことにも挑戦し、「名鉄、すごいね!」と思っていただけるような価値を提供し続ける、そんな企業集団に変わっていくという決意を込めております。

 

(2) 目標とする経営指標・中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

当社グループでは、コロナ禍を経て、ライフスタイル、企業行動、社会情勢の変化が加速していることに加え、人口減少社会、少子高齢化が確実に進展していく中においても、使命・経営ビジョンを実現し、当社グループが持続的に成長し、企業価値の向上を実現していくため、中長期的に名鉄グループが目指していく方向性やその戦略として「名鉄グループの2040年のありたい姿」及び5つの重点テーマからなる「名鉄グループ中長期経営戦略」を策定するとともに、名鉄グループ中長期経営戦略に基づき、2024年度を初年度とする3ヵ年を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置付けた「名鉄グループ中期経営計画」(2024年度~2026年度)を策定しております。

 

■名鉄グループの2040年のありたい姿

 「地域」を創る、「社会」を支える、そして「まち」を彩る

         ~リーディングカンパニー~

■名鉄グループ中長期経営戦略

―魅力ある地域づくり・まちづくり

  「リニア中央新幹線開業」、「セントレア滑走路増設」を千載一遇の機会と捉え、沿線・地域に国内外から人を呼び込むため、都市としての名古屋の魅力を高めグループ成長の起爆剤ともなる「名鉄名古屋駅地区再開発」をはじめ、観光活性化や定住促進につながる魅力ある地域づくり・まちづくりを地域とともに推進する。

―公共交通を中心とするモビリティネットワークの実現

  人口減少・少子高齢化時代に対応したコンパクト・プラス・ネットワーク型の地域構造や持続可能な社会を築くことに貢献するため、名鉄名古屋駅をはじめとする交通拠点整備や、エリア版MaaSの進化・展開などを通じて、公共交通を中心とするモビリティネットワークを実現する。

―稼ぐ力の強化・構造改革の推進

  需要に応じた構造改革を継続的に推進するとともに、成長市場に向けた事業展開、競争優位となる戦略構築、提供商品・サービスの高付加価値化、当社グループのブランドアップに注力し、グループ全体の収益力の向上を図る。

―攻守両立による経営の強靭化

  資本コストや資本収益性、ならびに財務健全性を意識したうえで、将来の成長に資する設備投資や人的資本への投資、事業ポートフォリオの見直し等の取組みを推進することにより、適切な経営資源の配分を行い、経営の強靭化を図る。

―人的資本の充実

  中長期経営戦略を実現するための源泉は「人財」であり、人財投資による当社グループで働く人々のウェルビーイング向上を通じて、人財の確保・育成など人的資本の充実を図る。

 

■名鉄グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)

 基本方針

沿線・地域に国内外から人を呼び込む起爆剤となる「名鉄名古屋駅地区再開発計画」を推進し、2030年代以降も名鉄グループが持続的な成長を実現していくために、本中計策定期間を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置付け、今後の成長に向けた基盤の構築に引き続き取組むとともに、収益力の早期回復・強化を図る。

 

なお、目標とする経営指標につきましては、重視する経営指標として設定した「営業利益」、「純有利子負債(※)/EBITDA倍率」及び「ROE(純利益/自己資本)」のそれぞれについて、中期経営計画最終年度にあたる2026年度の数値目標を2025年3月に設定しております。

※純有利子負債:有利子負債-現預金・短期有価証券

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、2021年9月に「名鉄グループ サステナビリティ基本方針」を策定し、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という名鉄グループの使命のもと、引き続き当社グループの事業領域=「地域を活性化する事業+社会を支える事業」を推進していくことにより、持続可能な社会の実現を目指していくことを宣言いたしました。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

■「名鉄グループ サステナビリティ基本方針」

―私たち名鉄グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という使命のもと、地域を活性化し、 また社会を支える事業活動を通じて、持続可能な社会の実現を目指します。

 

(1) サステナビリティ全般に関する取組

 

 (ガバナンス)

当社は、2021年7月に当社グループのサステナビリティに関する取組みを包括的に推進する機関として、「ESG推進委員会」を設立いたしました。本委員会は、当社の代表取締役社長を委員長とし、委員である総括役員及びESGに関係する部署の担当役員、オブザーバーである常勤監査役により構成されております。本委員会では、グループ全体のサステナビリティに関する取組みを検討、推進するとともに、必要に応じて取締役会へ上程・報告を行っております。ESG推進委員会で抽出されたリスクについては、必要に応じてリスク管理委員会、企業倫理委員会と連動しています。一方、取締役会はESG推進委員会を監督しており、サステナビリティに関する取組み全般におけるガバナンス体制を構築しております。

また、2024年4月に、サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進する専門組織として当社経営戦略部に「サステナビリティ推進担当」を設置しました。2024年度から当組織が中心となって、グループ各社と連携しながら、目標設定や進捗状況のモニタリング、達成度評価(PDCAサイクル)を実施しています。


 

 

2024年度のESG推進委員会は3回開催しており、詳細は以下のとおりです。

実施日

出席率

(人数)

議題

(審議事項に対する)

審議結果

2024年

4月19日

90%

(9/10)

(1)[審議事項]マテリアリティ「誰もが活躍できる職場づくり・人づくり」

        KPIの見直しについて

(2)[報告事項]前中期経営計画期間中におけるESG推進活動の振り返りと

        今後の取り組みについて

(1)提案の内容にて承認

7月29日

90%

(9/10)

(1)[審議事項]①サステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)KPIの

          2023年度実績報告について

        ②「名鉄グループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」の

         策定について

(1)①提案の内容にて承認

→8月9日 取締役会に上程

②提案の内容にて承認

→9月1日に策定

2025年

2月27日

90%

(9/10)

(1)[審議事項]「名鉄グループ サプライチェーン方針」の策定について

(2)[報告事項]①第三者保証の取得について

        ②ESG外部評価 今年度の状況と次年度対応について

        ③統合報告書2024振り返り、2025年度の製作について

(1)提案の内容にて承認

→3月に策定

 

 

 (リスク管理)

当社グループでは、持続可能な社会の実現につながる取組みを推進するにあたり、2022年4月に名鉄グループのサステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。

 

 ① 重要課題(マテリアリティ)特定のプロセス

社内外からみた名鉄グループに関連のある社会課題を洗い出し、その中から重要度の高いものを選定し、重要課題(マテリアリティ)を特定しました。


[フェーズ1・2] 内部・外部情報調査による社会課題の認識・洗い出し

企業理念や経営計画などの内部情報及び各種ガイドラインや評価機関などの外部情報をもとに、数ある社会課題から当社の社会課題の洗い出しを行いました。

 


[フェーズ3] 評価基準の設定・評価の実施

自社にとっての重要度及びステークホルダーにとっての重要度の2軸について、評価基準を設定しました。評価基準に沿って、フェーズ2で洗い出した社会課題を一つずつ点数付けし、重要度を評価しました。

[フェーズ4] 重要課題(マテリアリティ)の特定・妥当性確認

フェーズ3の結果のうち、自社にとってもステークホルダーにとっても重要な社会課題を重要課題(マテリアリティ)として特定しました。ESG推進委員会において、特定された重要課題(マテリアリティ)の数や粒度について妥当性を確認しました。

 

 

 ② 重要課題(マテリアリティ)

上記のプロセスを経て5つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、持続可能な社会の実現につながる取組みを推進していきます。また、それぞれの重要課題(マテリアリティ)にKPIを設定し、定期的にESG推進委員会にて確認、取締役会へ報告することでリスク評価・管理を実施しております。

1. 環境保全への貢献

当社グループでは、持続可能な社会の実現を目指して、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたCO排出量削減の取組みをはじめ、「環境保全への貢献」に取組んでまいります。

2. 安全・安心の確保

安全の確保は、多様な交通サービスを有する当社グループにおいて何よりも優先すべき社会的な責任であると考え、お客さまに安心してご利用いただけるよう「安全・安心の確保」に取組んでまいります。

3. 地域価値の向上

当社グループは、地域社会の発展とグループの発展は不可分であるとの認識のもと、「持続可能な社会の実現」に真摯に向き合い続けてきました。これからも、地域を活性化する事業や社会を支える事業を通じて、「地域価値の向上」に努め、永く社会に貢献してまいります。

4. 誰もが活躍できる職場づくり・人づくり

従業員は当社グループの持続的な成長に必要不可欠な財産です。個性や能力を発揮でき、心身共に健康で活き活きと働ける「誰もが活躍できる職場づくり・人づくり」に取組んでまいります。

5. ガバナンスとリスクマネジメントの強化

当社グループでは、コーポレートガバナンスの充実と的確なリスク管理を重要な経営課題の一つとして認識しています。適正な組織体制を整備し、経営の健全性や透明性、効率性の確保と充実に努めることにより、「ガバナンスとリスクマネジメントの強化」に取組んでまいります。

 

(2) 気候変動への対応

当社グループは、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という使命のもと、地域を活性化し、また社会を支える事業活動を通じて、持続可能な社会の実現を目指しており、中でも名鉄グループのサステナビリティを巡る重要課題(マテリアリティ)の1つとして「環境保全への貢献」を位置付けております。

2022年4月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFDという。)」提言への賛同を表明しており、今後、TCFD提言に基づく情報開示を進め、気候変動への対応をはじめとした環境保全への貢献に取組んでまいります。

 

 

 (ガバナンス・リスク管理)

「(1) サステナビリティ全般に関する取組」に記載しております。

 

 (戦略)

 ① シナリオ分析における大枠(世界観)の設定

産業革命前からの世界の平均気温上昇が2℃を十分に下回る場合(2℃シナリオ)と成り行きの4℃の場合(4℃シナリオ)を想定し、国際機関が想定している情報を基に世界観を設定しました。

 

[想定する世界観]

産業革命前からの世界平均気温上昇

2℃

4℃

2030年、当社グループを取り巻く事業環境

炭素排出に関する制度、規制が進み、脱炭素技術の高い車両・設備が導入される

企業の脱炭素化のための政策が進まず、設備更新は従来水準にとどまる

政策として炭素の価格付けがなされ、炭素排出がコストとして事業活動に組み込まれる

炭素の価格付けがなされず、炭素排出に対してコストはかからない

主力電源が火力発電から、再生エネルギー発電へ移行され、再エネ比率が高まる

主力電源は火力発電のままで、再エネ比率は従来水準にとどまる

ステークホルダーのカーボンニュートラルに対する目線が一般化され、CO排出の低い移動手段として鉄道等が選好される

カーボンニュートラルに対する厳しい目線は一部のステークホルダーに留まり、利用者の行動変容は起きない

異常気象は、現在顕在化している水準から大きくは増えない

気象災害の規模・頻度が大きくなり、影響を受ける事業所・サプライチェーン・消費者が増加。事業継続に必要な対策コストが高騰する

移行リスク・機会

IEAによるWEO2021持続可能な開発シナリオ(SDS)等

IEAによるWEO2021公表政策を基にしたシナリオ(STEPS)等

物理的リスク

IPCCによるRCP2.6シナリオ

IPCCによるRCP8.5シナリオ

 

(注)IEA       International Energy Agency(国際エネルギー機関)

WEO2021     World Energy Outlook 2021(世界のエネルギー見通し2021)

IPCC      Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)

SDS       Sustainable Development Scenario (持続可能な開発シナリオ)

STEPS     Stated Policies Scenario (公表政策を基にしたシナリオ)

RCP       Representative Concentration Pathways (代表濃度経路シナリオ)

 

 

 ② 気候変動リスク・機会による事業影響評価

当社グループの交通、運送、不動産、レジャー・サービス、流通、航空関連サービス、その他の各セグメントを対象とし、TCFDの枠組みに基づいて当社グループ事業に影響のあるリスク・機会項目を抽出しました。抽出したリスク・機会項目に対して、ESG推進委員会にて重要度を審議し、重要度の高いリスク5項目、機会5項目を選定するとともに、2℃、4℃シナリオに基づき影響度を評価しました。このうちリスク項目については、各シナリオに基づいて財務への概算影響額を試算しました。気候変動による影響を分析した結果、2℃シナリオにおいては、炭素税の導入による大幅なコスト増加が見込まれる一方、CO排出量の少ない交通手段の需要増やMaaSの拡大、DX推進などにより、収益機会の増加や業務効率向上によるコスト低減を期待できることが分かりました。

また、4℃シナリオにおいては、燃料費の高騰によるコスト増加による影響を大きく受けることに加え、保有資産の洪水被害による損壊額の増加や風水害による鉄道営業停止に伴う収益減少のリスクが増大することが分かりました。

当社グループが長期にわたり安定的な経営を続け、持続可能な社会の実現に貢献するために、連結会社を対象にインターナルカーボンプライシング制度を導入し、各社の省エネ設備投資を促進するための体制を構築しました(2024年4月以降の設備投資を対象とする)。省エネ設備投資等を漸次進めて、化石燃料の使用量を順次減らしていくことなど、気温上昇が2℃を十分に下回る世界の実現に向けた取組みを進めてまいります。

 

[事業影響評価]

事業影響評価の対象項目

内容

対象範囲

炭素税導入によるコスト増加

全セグメント

再エネ電力調達によるコスト増加

全セグメント

燃料費の高騰によるコスト増加

全セグメント

保有資産の洪水被害による損壊額の増加

鉄軌道事業

風水害による鉄道営業停止に伴う収益減少

鉄軌道事業

CO排出量の少ない交通手段需要増に伴う旅客数の増加

交通

MaaS拡大による旅客輸送関連サービス利用増に伴う収益増加

交通、その他

配送ルート最適化等の排出削減に寄与するDX推進による業務効率向上(ドライバーの生産性向上等)

運送

再エネ電力発電(洋上風力発電等)の建設・維持に伴う物資輸送需要の増加

航空関連サービス

環境配慮型商品・サービスの提供による収益増加

不動産を中心とした全セグメント

 

 

 

 (指標及び目標)

当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度のCO排出量(Scope1+2)について、連結会社全体では2020年度比25%削減、名古屋鉄道の鉄軌道事業においては2013年度比46%削減を目標に掲げています。

当社グループは、省エネ設備投資や再生可能エネルギーの活用等のCO排出量削減に向けた取組みを進めることによって、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

[カーボンニュートラル目標]

対象

CO排出削減目標

(Scope1+2)

CO排出量

基準年度

2030年度目標

2024年度実績

名鉄グループ

(連結会社)

エネルギー起源のCO排出量を2030年度に2020年度比で25%削減する

675,759 t-CO

(2020年度)

506,819 t-CO

2025年10月頃発行の統合報告書にて開示予定

名古屋鉄道

鉄軌道事業

エネルギー起源のCO排出量を2030年度に2013年度比で46%削減する

238,479 t-CO

(2013年度)

128,779 t-CO

 

 


2023年度のエネルギー起源のCO排出量の実績は、当社グループ連結で702,576t-COで基準年度である2020年度の675,759t-COに対して4.0%増加、鉄軌道事業(名古屋鉄道)単体では175,923t-COで基準年度である2013年度の238,479t-COに対して26.2%削減となりました。グループ全体で使用電力量を2022年度比84%に削減することができましたが、使用電力に係る排出係数の変動を受け、CO排出量は増加となりました。

なお、データの客観性・正確性を確保するため、以下のデータについて、LRQAリミテッドによる第三者検証(※)を実施し、保証証明書を取得いたしました。

※ISO14064-3:2019に準拠した検証、限定的保証となります。

[対象データ]

- エネルギー起源のCO の総排出量(スコープ1+スコープ2)(トンCO

- エネルギー起源のスコープ1 CO 排出量(トンCO

- エネルギー起源のスコープ2 CO 排出量(マーケット基準)(トンCO

[対象期間]

2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)

[バウンダリ]

名古屋鉄道㈱及び国内連結子会社

 

(今後対応を検討する項目)

気候変動への対応を含めたサステナビリティ活動の品質向上を引き続き目指してまいります。具体的項目としては、上記のとおり開示をしているCO排出量(Scope1+2)に加え、サプライチェーンにおける排出量であるCO排出量(Scope3)についても、算定・開示を進めてまいります。また、引き続き2024年度実績に対しても第三者保証の取得を進めてまいります。

 

(3) 人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

 

当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。

 

 ① 名鉄グループ人財育成・社内環境整備方針

当社グループは、大きく変化する社会の中においても「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」企業グループであり続けるため、多様な人財の活躍の実現を目指し、従業員の採用・能力開発・専門性向上に取組んでまいります。また、心身ともに健康にその能力を最大限に発揮し、自律・挑戦できる環境を整えてまいります。

 

また、中長期経営戦略の重点テーマの一つとして「人的資本の充実」を掲げ、人財投資による当社グループで働く人々のウェルビーイング向上を通じて、人財の確保・育成など人的資本の充実を図るとともに、中長期経営戦略と連動する形で、以下の人事ビジョン・人事戦略を推進してまいります。


 

 ② 人財力の基盤とウェルビーイング

当社グループには、高い「社会的使命感」と「地域愛」を持った従業員が集まっています。こうした人財に対し、グループ全体で積極的な人財投資を行うことで、「人財力の基盤」の確立と「人財力の向上」の実現を目指していきます。従業員一人ひとりが能力を発揮するための「人財力の基盤」として、「人権」「健康」を定義し、グループ全ての従業員が安心して働ける職場環境を提供していくとともに、従業員一人ひとりの「人財力の向上」を実現していくために、「挑戦・創意工夫」「成長・能力発揮」「DE&I」の3要素を軸とする各種施策を進めていきます。

こうした施策を通じて、自らの能力を高め、より良い職場環境の中でやりがいを感じて仕事に取組むことが、従業員エンゲージメントの向上やウェルビーイングの実現につながり、一人ひとりがより高い成果を生み出していくことで、グループとしての企業価値創出に結びついていくと考えます。同時に、グループによる企業活動がお客さまと地域社会の豊かさにつながり、地域に貢献しているという実感として従業員に還元されることで、さらなる従業員のウェルビーイング向上へとつながっていき、「お客さま・地域社会と人財の好循環」が生まれます。

なお、従業員の人財力向上やウェルビーイング、地域貢献の実感を定量的に観測するための指標として「従業員エンゲージメント」をKPIとして設定し、継続的に進捗を確認していきます。

 


 


 

■人権の尊重

当社グループでは、社内および社外全ての方々の人権を尊重し、あらゆる差別や人権侵害につながる活動を一切行わないよう、2023年4月に「名鉄グループ人権方針」を策定しました。社内の各部門に人権啓発推進委員を設置し、従業員の人権意識向上に努めています。また、従業員に対しては、ハラスメント等の相談窓口を設置するとともに、入社時および定期的に人権研修を実施し、人権問題について確実に知得し、対応する仕組みを設けています。

また、昨今社会問題化するカスタマーハラスメントに対して、従業員の人権を守り、安心して働ける環境を整えるため、2024年9月に「名鉄グループカスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定しました。

 

■健康経営の推進

当社グループは、2024年10月に「名鉄グループ健康経営方針」を策定しました。従業員の健康保持・増進に積極的に取り組んでいくこととし、推進にあたっては、当社社長を健康経営責任者、人事総括役員を推進責任者とし、人事部(産業医・保健師含む)を中心に、グループ会社・健康保険組合が一体となって課題分析や各種施策の推進に中長期目標を設定して取組んでいます。

当社では疾病予防に向けて、定期健康診断や特定健診の受診率100%を維持し、受診後の個別指導を行っています。また、2024年度からは健康アプリを導入し、健診結果の確認や日々の健康記録のほか、運動や健診受診によるポイント付与で健康行動を促進し、現状36.7%の運動習慣率を2030年度までに50%以上へ引き上げることを目指しています。職場環境整備としては、労働災害を未然に防ぐ安全教育や安全衛生委員会での発生事案共有、熱中症対策としての空調服の導入・飲料配布、年次有給休暇取得目標の設定などソフト・ハード両面で取組んでいます。なお、安全衛生委員会は、各事業場で関係部門の部署長、産業医、組合代表者などで構成し、労使で安全衛生に関するさまざまなテーマについて議論をしています。今後も信頼の源泉である「安全」を守るため、従業員の心身の健康維持と健康意識向上に継続的に取組み、誰もがいきいきと働き能力を最大限に発揮できるようにします。

 

[健康に関するKPI]※1

主な取組み

2030年度目標

2024年度実績

健康診断有所見者の受診率※2

 100 

97.8

BMI有所見率※3

  25 以下

28.0

運動習慣率※4

  50 以上

 36.7

高ストレス者率※5

   7 以下

7.6

年次有給休暇の取得率

  90 以上

96.6

 

(注)1 ※1いずれも名古屋鉄道単体の数値であります。

   2 ※2健康診断の結果、会社より受診指示を受けた者のうち、指示どおり受診した者の割合でありま
      す。(2025年6月時点)

   3 ※3BMI 25.0以上=肥満度Ⅰ以上となった者の割合であります。

   4 ※4問診にて、運動習慣について「週1~2回」以上と回答した者の割合であります。

   5 ※5ストレスチェックで高ストレス判定をされた者の割合であります。

 

 ③ 人財力の向上に向けて

経営ビジョンに掲げるような当社グループならではの価値を提供するチャレンジングな取組みを行っていくためには、価値創造に共感し、「社会的使命感」や「地域愛」を持った多様な従業員一人ひとりが、「挑戦していく意欲を持ち」、「自身の能力とスキルを向上させ」、「多様な価値観を受け入れながら、さまざまな視点から考えることができる」ことが重要です。これらの力を伸ばすことが「人財力の向上」であると考え、「挑戦・創意工夫」「成長・能力発揮」「DE&I」を「人財力の3要素」として定義しました。

従業員一人ひとりの人財力の向上に向けて、「人財力の3要素」の観点から各種人事施策に取組んでいきます。

 

[人財力向上に関するKPI]

指標

目標

2024年度実績

女性管理職比率※1

2030年度までに  30 以上

6.7

中途管理職比率※1

2030年度までに  30 以上

34.4

育児休業取得状況※1※3

2030年度まで 100

70.4

キャリアチャレンジ制度 利用件数※2※4

継続的に前年度を上回る

17

資格取得支援制度    利用件数※2

継続的に前年度を上回る

96

 

(注)1 ※1連結会社全体の数値であります。

   2 ※2当社単体の数値であります。

   3 ※3育児休業取得状況の2024年度実績につきまして、男性は56.4%、女性は100.0%であります。

   4 ※4公募により異動した件数であります。

 

■挑戦・創意工夫

当社グループは、チャレンジとイノベーションを創出する企業風土をつくるため、従業員の「挑戦・創意工夫」を後押ししています。当社では、総合職を対象として、年齢に偏らない進級と早期登用を実現するために「挑戦と貢献度」を基準とする評価制度を導入しました。また、挑戦できる機会の創出としてグループ内副業や社内外のポジションを公募する「キャリアチャレンジ制度」の充実やグループ外の会社・自治体等との人財交流を促進しているほか、創造性を生み出していくために、グループ全体でさまざまなスキルやバックグラウンドを持った人財の獲得に取組んでいます。なお、グループの中で優れた能力を発揮している従業員やチームには、各種表彰制度でその成果を表彰しています。

 

■成長・能力発揮

当社グループは、信頼されるサービスの提供と新たな価値創造ができる人財の育成に向けて、従業員の能力開発・専門性向上に取組むとともに、能力を最大限に発揮し、自律・挑戦できる環境と制度を整えています。また、従業員一人ひとりが主体的にキャリアを考え選択していく中で自主性を育てていくことで、組織全体の活力向上を目指しています。

 

■DE&I

「人財力」の3要素におけるDE&Ⅰとは、個人が多様な価値観を受け入れる柔軟性や行動の公平性を指しています。企業という枠内に個人が収まっている同質的な人財集団ではなく、企業として共通な軸は持ちつつも、個人として多様な価値観を持った人財集団になることで、新たな価値やイノベーションが生まれると考えています。

ライフステージの変化等によって能力発揮が妨げられることがなく、従業員一人ひとりがやりがいをもって、いきいきと働き続けられるよう、会社として、組織の多様性や公平性を提供する制度の策定などを通じて、さまざまな意見や個性が受容される職場環境づくりに取組んでいきます。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループ各社の事業に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のとおりであります。当社グループは、「名鉄グループリスク管理運用規則」に基づき、当社社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、原則として年1回、グループ全体のリスク管理の状況を把握するとともに、事態の発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。

リスク把握の具体的な方法としては、リスクの棚卸調査を定期的に実施し、グループ会社ごとに想定されるリスクを網羅的に洗い出し、影響度及び発生頻度の2つの観点から評価を行い、リスクマップを作成しております。加えて、グループ各社の調査結果を集約し、グループ全体のリスクマップを作成したうえで、優先的に対処すべきリスクについて、リスク管理委員会で協議しております。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判明したものであります。また、これらのリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 自然災害・感染症のリスク

鉄軌道事業、不動産事業など多種多様な事業を展開する当社グループは、多くの設備等を保有しております。耐震補強工事の実施等により被害の軽減対策に努めるほか、大規模災害を想定した事業継続計画(BCP)を策定するなど事前対策に取組んでおりますが、南海トラフにおける巨大地震の発生等により施設や設備等に大きな被害が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、感染症のリスクについては、新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が大規模に流行した場合、交通事業、レジャー・サービス事業、流通事業を中心に、幅広いセグメントで影響を受ける可能性があります。

 

(2) 事故等のリスク

当社グループでは、鉄軌道・バス等の交通事業、トラック等の運送事業を営んでおり、常に輸送の安全の確保に取組んでおりますが、人為的なミスや不慮の事故等により重大な事故が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このほか、テロ等不法行為、火災などの事故によって、当社グループの施設・設備等への被害が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、流通事業及びレジャー・サービス事業において、当社グループが販売する商品の品質及び食品の安全性に関わる信用毀損が発生した場合、減収等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業環境の変化に関するリスク

 ① 原油価格・原材料費等の高騰

当社グループの主要な事業である交通事業及び運送事業では、大量の電力を消費するほか、営業用車両及び船舶の燃料として軽油等を使用しております。これらの価格やその他原材料費等が大きく上昇した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 法律・制度・規制の改変

当社グループは、交通事業・運送事業・不動産事業等において、鉄道事業法、道路運送法、建築基準法等の関連法令等を遵守して事業運営を行っておりますが、安全・バリアフリー化をはじめ、各種法的規制が強化された場合や新たな法的規制が追加された場合には、これらの規制を遵守するために費用が増加する可能性があるほか、一方で規制が緩和された場合には、それぞれの事業で他企業との競争が激化することにより、グループが展開する各事業に影響を及ぼす可能性があります。

 ③ 調達金利の上昇

当社グループは、鉄軌道事業をはじめとする各種事業において、継続的に設備投資を行っており、借入金や社債等により資金を調達しています。市場金利が上昇した場合や格付け機関による当社格付が引き下げられた場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④ 地価及び株価の下落

当社グループは、不動産や株式などの固定資産及び棚卸資産を多く保有しております。これらの時価が著しく下落した場合、減損損失または評価損等の計上により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ⑤ 経済情勢等の変化

当社グループは、中部圏を基盤に交通事業を中心とした各種サービス事業を展開しております。同地域の経済状況、消費動向及び人口動態の変化、他事業者との競合等、これらの経営環境の悪化が今後当社グループの見込みを上回るペースになった場合、グループの収益性低下の要因となるなど、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 事業遂行に関するリスク

 ① 人財の確保・育成

当社グループは、交通事業を中心とした各種サービス事業を展開しており、事業運営に必要な人財の確保・育成、働きやすい職場環境や健全な労働環境の維持に努めておりますが、これを達成できない場合、グループ各事業の運営に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 個人情報の漏洩

当社グループでは、鉄軌道事業やバス事業におけるICカード発行等、また百貨店業、ホテル業及び情報処理業などの各種事業において個人情報を保有しております。こうした個人情報は、情報セキュリティポリシーや個人情報保護規則、特定個人情報取扱規則を制定して情報管理体制を整備して厳重に管理しておりますが、万一漏洩した場合、社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償による費用の発生等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 ③ 情報システムの故障・停止等

当社グループでは、各種事業において多くの情報システムを使用しており、様々な業務分野で重要な役割を果たしております。これらの情報システムが、自然災害、人的ミス、コンピュータウィルス、サイバーテロなどにより故障・停止等した場合、事業運営に支障をきたすおそれがあるほか、システムの復旧等に係る費用の発生や営業収益の減少などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ④ コンプライアンス

当社グループは、交通事業を中心とした各種事業を展開していますが、各事業における関連法令等を遵守し、企業倫理に従って事業運営を行っております。また、「名鉄グループ企業倫理基本方針」に基づき、コンプライアンス遵守に関する教育を定期的に実施するなどの啓発活動に努めておりますが、役職員等による重大な不正・不法行為、不祥事等が発生した場合、当社グループの社会的信用が低下するとともに、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況

<経営成績>

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境等の改善により、緩やかな回復の動きが見られました。一方、不安定な国際情勢による世界経済の減速リスクのほか、原材料やエネルギー価格高騰に伴う物価上昇の影響等により、先行きは不透明な状況が続いています。

このような状況のもと、当社グループでは、安全を最優先にした事業運営の継続と積極的な営業活動に努めるとともに、当期を初年度とする「名鉄グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)」に基づく諸施策を推進しました。その結果、営業収益は、事業統合を行った運送事業に加え、不動産事業や交通事業を中心に全事業で増収となり690,720百万円(前期比14.9%増)となりました。営業利益は、業務委託料や人件費が増加したものの、増収により42,076百万円(前期比21.1%増)となりました。経常利益は、営業増益に加え、持分法による投資利益の増加などにより営業外損益の改善もあり47,671百万円(前期比27.0%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常増益に加え、負ののれん発生益の計上等による特別損益の改善もあり37,733百万円(前期比54.6%増)となりました。

セグメント別の主な取組み及び経営成績は、次のとおりであります。

 

(交通事業)

〔主な取組み〕

鉄軌道事業では、当社は、国や自治体による都市計画事業の一環として、高架化工事を4ヵ所で進めたほか、AI画像解析機能を備えた踏切監視システムを導入した踏切の拡大や、線路のゆがみを測定する「軌道変位モニタリング装置」搭載車両の試験走行の実施など新たな技術も活用し、引き続き安全面の強化に取り組みました。営業施策面では、当社の創業130周年を記念し、通常配色を反転して塗装した「ブルーミュースカイ」の運行や、記念乗車券の発売や各種イベントの実施などにより収益力向上に努めました。

また、定期乗車券購入時の混雑緩和などお客さまサービス向上のため、「名鉄定期券web予約サービス」を開始し、事前にインターネットからの申し込みを行うことにより、自動券売機において定期乗車券(manaca定期券)のスムーズな購入を可能にしました。

このほか、エリア版MaaSアプリ「CentX(セントエックス)」においては、デジタルチケットの取扱商品や決済手段の拡充を進めたほか、実証実験として、東海旅客鉄道㈱などとデジタル乗車サービスの実用性の検証を行うなど、利便性の向上に取り組みました。

バス事業では、岐阜乗合自動車㈱は、プレミアム観光バスツアー「きわみ」において、高付加価値商品の提供に取り組み、新たな顧客層への訴求を図りました。

 

 

〔経営成績〕

交通事業の営業収益は、鉄軌道事業やバス事業において運賃改定の効果があったほか、輸送人員の増加などにより159,825百万円(前期比9.0%増)となり、営業利益は、人件費や修繕費の増加があったものの、増収により19,602百万円(前期比51.0%増)となりました。

 

  (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

鉄軌道事業

97,910

88,338

10.8

15,418

10,366

48.7

バス事業

42,120

39,056

7.8

3,550

2,172

63.4

タクシー事業

21,936

21,186

3.5

492

305

61.2

調整額

△2,141

△1,998

140

136

159,825

146,582

9.0

19,602

12,980

51.0

 

 

(提出会社の運輸営業成績表)

 鉄軌道事業

種別

単位

当期

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

対前期増減率(%)

営業日数

365

△0.3

営業キロ

キロ

444.2

走行キロ

客車

千キロ

181,193

0.0

 

貨車

0

△14.3

乗車人員

定期

千人

245,268

1.4

 

定期外

121,323

2.1

 

366,591

1.6

貨物トン数

千トン

0

△33.3

旅客収入

定期

百万円

38,830

9.3

 

定期外

53,227

13.5

 

92,058

11.7

手小荷物収入

4

△16.6

貨物収入

0

△30.4

運輸雑収

4,046

△5.7

収入合計

96,109

10.8

1日平均収入

263

11.1

乗車効率

31.2

 

 

 

(注)1 乗車効率の算出方法は

延人キロ

 ×100 によります。

客車走行キロ×1車平均定員

 

2 鉄道と軌道との乗車人員は重複しておりません。

 

 

(運送事業)

〔主な取組み〕

トラック事業では、名鉄NX運輸㈱は、特別積合せ運送事業(※)においてNXトランスポート㈱、日本通運㈱のアロー便事業を統合し、同事業の経営基盤の強化を図りました。なお、同社は、2025年1月1日をもって、日本通運㈱との特別積合せ運送事業に関する事業統合が完了したことに伴い、「名鉄運輸㈱」から商号変更しました。

(※)不特定多数の荷主の貨物をまとめて積載し、全国規模のネットワークで運ぶ運送形態

 

〔経営成績〕

運送事業の営業収益は、事業統合を行ったトラック事業の収入が寄与し180,183百万円(前期比30.3%増)となりました。一方、営業損益は、海運事業で増益となったものの、トラック事業の収支悪化により前期に比べ5,513百万円収支悪化し3,721百万円の損失となりました。

 

  (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

トラック事業

196,601

154,118

27.6

△5,303

1,117

海運事業

18,554

16,778

10.6

1,493

601

148.3

調整額

△34,973

△32,588

88

73

180,183

138,308

30.3

△3,721

1,792

 

 
(不動産事業)

〔主な取組み〕

不動産事業では、不動産回転型ビジネスへの本格的な参入の一環として、名鉄都市開発㈱がアセットマネージャーを務める第一号不動産私募ファンドを組成し、運用を開始しました。また、アライアンス戦略の施策として、当社は、不動産再生事業を中心に展開するトーセイ㈱との資本業務提携を行いました。
 不動産賃貸業では、当社は、商業施設として、神宮前駅に「あつたnagAya」、東岡崎駅に「SWING MALL」を開業したほか、「meLiV(メリヴ)」ブランドの賃貸マンションを三好ケ丘駅と西一宮駅に開業するなど、魅力ある地域づくり・まちづくりを推進しました。

不動産分譲業では、名鉄都市開発㈱は、同社分譲マンションの最上位ブランドとなる「FUDE(フューデ)」の第一号物件「橦木町レジデンス ザ・フューデ」(名古屋市東区)や「メイツ ザ・マークス新横浜」(横浜市港北区)の販売を行うなど、分譲マンション開発に取り組みました。

 
〔経営成績〕

不動産事業の営業収益は、分譲マンション販売の引渡戸数の増加に加え、不動産ファンドへの資産売却収入もあり129,028百万円(前期比19.6%増)となり、営業利益は、不動産賃貸業で減益となったものの、不動産分譲業の増益により18,947百万円(前期比18.7%増)となりました。

 

   (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

不動産賃貸業

57,140

53,258

7.3

8,952

9,764

△8.3

不動産分譲業

66,159

49,150

34.6

9,251

5,550

66.7

不動産管理業

15,519

14,139

9.8

700

648

8.0

調整額

△9,791

△8,642

42

4

129,028

107,906

19.6

18,947

15,967

18.7

 

 

 

(レジャー・サービス事業)

〔主な取組み〕

ホテル業では、インバウンドの増加や国内観光需要の回復をうけ、各ホテルにおいて、適切な価格設定と需要の取り込みにより、引き続き収益力の向上に努めました。

観光施設事業では、奥飛観光開発㈱は、段階的にリニューアルを進めてきた、標高2,000m超の山頂エリア「頂の森」において、散策ルート等の整備を完了し、新穂高ロープウェイのさらなる魅力向上を図りました。

 

〔経営成績〕

レジャー・サービス事業の営業収益は、観光需要の回復によるホテル業を中心とした増収が寄与し102,682百万円(前期比4.0%増)となり、営業利益は、ホテル業で増益となったものの、旅行業の減益により2,546百万円(前期比4.7%減)となりました。

 

   (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

ホテル業

24,402

21,838

11.7

1,514

339

346.4

観光施設事業

20,634

19,382

6.5

665

428

55.4

旅行業

58,184

58,133

0.1

386

1,914

△79.8

調整額

△538

△582

△20

△11

102,682

98,772

4.0

2,546

2,671

△4.7

 

 

(流通事業)

〔主な取組み〕

流通事業では、㈱名鉄生活創研と㈱オンセブンデイズを子会社とする中間持株会社「㈱名鉄リテールホールディングス」を設立し、運営ノウハウの共有や経営の効率化に取り組みました。

また、㈱名鉄生活創研は、神宮前駅に開業した商業施設「あつたnagAya」内に新店舗「名鉄商店ATSUTA」をオープンするなど、積極的な営業活動に努めました。

 

〔経営成績〕

流通事業の営業収益は、店舗閉鎖による百貨店業の減収があったものの、その他物品販売業の増収により69,112百万円(前期比3.7%増)となり、営業損失は、増収に加え、百貨店業の不採算店舗の閉鎖による収支改善もあり前期に比べ1,405百万円収支改善し1,292百万円となりました。

 

  (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

百貨店業

17,209

17,762

△3.1

△1,507

△2,173

その他物品販売

52,159

49,088

6.3

317

△437

調整額

△256

△173

△102

△86

69,112

66,676

3.7

△1,292

△2,697

 

 

 

(航空関連サービス事業)

〔経営成績〕

航空関連サービス事業の営業収益は、機内食事業の増収に加え、ヘリコプター事業や調査測量事業の受注増加もあり29,781百万円(前期比13.3%増)となり、営業利益は、増収により2,266百万円(前期比108.4%増)となりました。

 

  (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

航空関連サービス事業

30,133

26,605

13.3

2,256

1,076

109.6

調整額

△351

△326

10

10

29,781

26,278

13.3

2,266

1,087

108.4

 

 

(その他の事業)

〔経営成績〕

その他の事業の営業収益は、前期に連結加入した建設子会社の収入が寄与したことに加え、設備工事の受注増加もあり67,973百万円(前期比20.6%増)となり、営業利益は、増収により4,622百万円(前期比40.1%増)となりました。

 

  (業種別営業成績表)

 

営業収益

営業利益

当期

前期

増減率

当期

前期

増減率

 

百万円

百万円

百万円

百万円

設備保守整備事業

39,049

31,039

25.8

2,981

1,748

70.5

その他事業

29,799

26,252

13.5

1,716

1,617

6.1

調整額

△875

△908

△74

△66

67,973

56,383

20.6

4,622

3,299

40.1

 

 

 

<財政状態>

当期末における総資産は、設備投資による有形固定資産の増加や株式取得による投資有価証券の増加などにより、前期末に比べ145,702百万円増加し1,448,908百万円となりました。

負債は、鉄道高架化工事等に関する工事負担金の前受金や有利子負債の増加などにより、前期末に比べ111,445百万円増加し950,597百万円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前期末に比べ34,256百万円増加し498,311百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ3,532百万円減少し、56,493百万円となりました。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が増加したことなどにより、前期に比べ23,195百万円増加し78,729百万円となりました。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出が増加したことなどにより、69,701百万円減少し△138,132百万円となりました。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの増減額が増加したことなどにより、37,819百万円増加し55,854百万円となりました。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの事業は、交通事業のほか運送事業、不動産事業、流通事業等の広範囲かつ多種多様なサービス業が主体であり、また受注生産形態をとらない事業がほとんどでありますので、セグメントごとに網羅的に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、事業の特性上、多額の固定資産を保有しており、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得や税務計画を合理的に見積っております。従って、将来の課税所得の見積額や税務計画が変更された場合には、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。

 

(退職給付債務及び費用の計算)

当社グループは、従業員退職給付債務及び費用の計算について、割引率や年金資産の期待運用収益率等の前提条件に基づき行っております。従って、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付債務及び退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

(財政状態の分析)

当連結会計年度の財政状態の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

(経営成績の分析)

当連結会計年度の経営成績の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

(キャッシュ・フローの分析)

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金については、社債及び長期借入金での調達を基本としております。また、当社グループにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。

なお、重要な設備投資の計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載しております。

 

(経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

当社グループは、名鉄グループ経営ビジョン、2040年のありたい姿、中長期経営戦略の実現に向けた足元の3ヵ年計画として昨年3月に策定した2024年度を初年度とする3ヵ年計画、名鉄グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)において、重視する経営指標として「営業利益」、「ROE」及び「純有利子負債/EBITDA倍率」を設定し、経営の強靭化を図ってまいりました。また本年3月には、中期経営計画(2024年度~2026年度)の最終年度である2026年度の数値目標として「営業利益500億円」、「ROE8%程度」及び「純有利子負債/EBITDA倍率6倍台」を設定しております。

当連結会計年度における各指標は、以下のとおりであります。

経営指標

当連結会計年度(実績)

2026年度(目標値)

 

百万円

百万円

 

営業利益

42,076

50,000

ROE(純利益/自己資本)

8.4%

8%程度

純有利子負債/EBITDA倍率※

6.3倍

6倍台

 

(注)※EBITDA:営業利益+減価償却費

    純有利子負債:有利子負債-現預金・短期有価証券

同計画期間を「成長基盤構築・収益力強化期」と位置づけ、今後の成長に向けた基盤の構築に引き続き取組むとともに、収益力の早期回復・強化を図っていくこととしており、中長期経営戦略に掲げる重点テーマを中心に取組みを進めております。

同計画初年度となる当連結会計年度においては、「魅力ある地域づくり・まちづくり」について、かねてより検討を進めていた「名古屋駅地区再開発計画」の事業化を当社として決定いたしました。このほか、駅隣接の商業施設の開業や、沿線における賃貸マンションの展開など積極的に取組みを推進いたしました。また「公共交通を中心とするモビリティネットワークの実現」について、エリア版MaaSアプリ「CentX」の機能強化や、交通空白地帯におけるデマンド運行の実証実験などに取組みました。「稼ぐ力の強化・構造改革の推進」については、トラック事業において、シェア拡大による競争力強化等を目的としてNXグループとの特別積合せ事業の統合を実施しました。また不動産事業において、不動産回転型ビジネスへの本格参入の一環として、名鉄都市開発㈱がアセットマネージャーを務める第1号ファンドを組成したほか、さらなる収益力強化に向けたアライアンス戦略の一環として、首都圏で不動産再生事業を中心に展開するトーセイ㈱と資本業務提携契約を締結し、持分法適用会社としました。加えて、流通事業においては、㈱オンセブンデイズと㈱名鉄生活創研を子会社とする中間持株会社「㈱名鉄リテールホールディングス」を設立し、事業戦略策定機能の強化を図りました。

重視する経営指標の実績としましては、営業利益は、NXグループとの特別積合せ事業の統合において想定と比べて物量が確保できず、非効率な配送となったことにより運送事業で減益となりましたが、特に分譲事業が好調だった不動産事業や、運賃改定効果に加えて輸送人員も増加した鉄軌道事業を中心に交通事業などで増益となった結果、前期より20%以上増加しました。またROEは、営業利益の増加に加え、持分法による投資利益の増加や負ののれん発生益の計上などによる当期純利益の増益により8%を超え、純有利子負債/EBITDA倍率は、純有利子負債残高は増加したもののEBITDAも増加したことから前期並みの6倍台前半となりました。

引き続き、業績マネジメントの強化などを通じた既存事業の収益成長・収益改善、M&Aなどのアライアンスを活用した収益成長に加え、保有資産などの積極的な売却・流動化によるアセットコントロール、株主還元の拡充による自己資本の適正化などを通じて、同計画に掲げた目標の達成に向けて取組みを進めてまいります。

 

5 【重要な契約等】

2024年4月1日前に締結された財務上の特約が付された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。