第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

当社グループは、鉄道事業、不動産事業、ホテル事業、流通事業を中核とする生活関連事業の幅広い展開を通じて、誠実な企業活動により暮らしの安心を支え、果敢な挑戦により新たな価値を創出し、多様な人々との協働により社会の発展、繁栄に貢献することを経営の方針としております。

 

(2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題

新型コロナウイルス感染症の国内外における急激な拡大により、訪日外国人の減少だけでなく外出自粛等により国内の消費需要が急速に減少し、当社グループにも深刻な影響を与えております。当社グループにおきましては、「感染予防と感染拡大の防止を最優先して取り組む」ことを基本に、政府の基本方針や地方自治体の行動計画に基づき迅速に対応しておりますが、外出や営業の自粛要請が解除された後も消費需要の回復には相当の時間を要すると思われ、厳しい経営環境は当面続くものと予想されます。当社といたしましては、鉄軌道事業をはじめとして、地域の生活・経済を支える事業の遂行に全力を傾けるとともに、感染症拡大がもたらした行動様式の変化など社会の変化に対応して各事業のあり方を見直してまいります。

当社では昨年、長期目標と5カ年の中期計画からなる新「近鉄グループ経営計画」を策定いたしました。各部門別の中期的な重点施策は以下のとおりでありますが、今後の進め方につきましては、新型コロナウイルス感染症が当社グループに与える影響を見極めたうえで検討してまいります。新3大プロジェクトについても、実施の時期や規模について慎重に検討したうえで進めてまいります。

 

  ① 運輸

運輸業におきましては、引き続き安全の確保を最優先に位置付け、鉄軌道事業で、激甚化する災害に備え防災・安全対策を推進いたします。また、勤務態様の変化により通勤利用の減少が見込まれるなか、観光やイベントなど目的を持ったご利用に重点を置いて、新型名阪特急「ひのとり」や観光列車の投入により特急サービス網を充実させるとともに、タイムリーな情報発信や案内サービスのさらなる向上に取り組むことで、交流人口の拡大に注力いたします。さらに、将来的な列車運転の自動化等も見据え、テクノロジーを活用して効率的な運営体制を構築してまいります。

  ② 不動産

不動産業におきましては、都市圏のターミナルにおいて大規模な都市再開発の検討を進めるほか、近鉄沿線では人口減少やライフスタイルの変化に対応し、スマートシティやコンパクトシティなど、生活・社会インフラの効率的な提供を目指したまちづくりに取り組み、新しい沿線開発の仕組みを追求してまいります。また、首都圏エリア等でオフィスビル等の賃貸優良資産の取得を進めるとともに、シニアビジネスなど新たな事業領域に挑戦するなど、事業拡大を推進いたします。

  ③ 流通

流通業におきましては、百貨店業で、商圏のニーズに合わせて店舗開発や売場編成を図るなど、将来の発展に向けた事業モデルの構築に取り組むとともに、EC(電子商取引)ビジネスの強化や、地域の自治体、生産者等と連携した地域商社事業への進出を推進いたします。ストア・飲食業では、既存店における営業力強化を図るとともに、新業態による店舗展開を行ってまいります。

  ④ ホテル・レジャー

ホテル・レジャー業におきましては、きわめて厳しい経営環境が続くものと予想されますが、ホテル業で、既存ホテル改装により収益拡大を図るとともに、「ウェスティン都ホテル京都」では、京都を代表する高級ラグジュアリーホテルへとグランドリニューアルを行うことで、収益の確保を目指してまいります。旅行業では、ウェブ販売の強化やシニア向けテーマ商品の充実を図るなど個人旅行事業の再構築を推進するほか、令和3年に延期されたオリンピック・パラリンピックの取扱い拡大や団体顧客との関係強化により収益拡大を図ってまいります。

 

(3)目標とする経営指標

新「近鉄グループ経営計画」における中期計画(2019~2023年度)の最終年度である2023年度において、①営業利益730億円、②有利子負債残高9,800億円、③有利子負債/EBITDA倍率7.3倍の連結経営指標目標を設定しております。

 

2【事業等のリスク】

「第2 事業の状況」「第5 経理の状況」等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。

なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)景気、個人消費動向、国際情勢等の変動

当社グループの中核をなす運輸業、流通業及びホテル・レジャー業は、いずれも主に一般消費者を顧客としており、景気、個人消費動向等の経済情勢のほか、冷夏、暖冬などの異常気象や天候不順等の影響により、業績が悪化するおそれがあります。また、近年、これらの事業は訪日外国人の増加により収益を拡大しており、通商問題やテロリズム・戦争等による国際情勢の悪化により訪日外国人が減少し、業績が悪化するおそれがあります。

当社グループとしては、各種営業施策の展開とコスト削減等によってこれらの影響を最小化するよう、努めてまいります。また、特定の国からのインバウンドに偏らない事業展開のために、幅広い国への営業活動や国内需要のさらなる掘り起こしを図ってまいります。

(2)感染症の拡大

新型コロナウイルス感染症の国内外における拡大により、訪日外国人の減少だけでなく、外出自粛等により国内の消費需要が低下しており、当社グループも深刻な影響を受けております。また、集団感染により勤務する従業員を確保することが困難となる事態も予想され、業務の遂行が困難となるおそれがあります。さらに今後、感染症がもたらした社会構造や行動様式の変化による影響も受けると予想されます。

当社グループでは、感染予防と感染拡大の防止に最優先で取り組むとともに、感染症がグループに与える影響を見極めつつ、社会・経済環境の変化に応じた各事業の構造改革に努めてまいります。

(3)沿線人口の減少及びモータリゼーションの進展、他社との競合

少子高齢化及び都心への人口移転により、近鉄沿線での人口、特に就労人口及び通学人口が減少しており、今後も減少傾向が続くと予想されます。また、近鉄線と競合する高速道路網の整備等によりモータリゼーションが一層進展しているほか、一部路線では鉄道他社と競合関係にあります。これらの状況は、鉄軌道業収入、流通業収入や不動産業収入等の減少をもたらすおそれがあります。また、沿線の観光地は、他の観光地と競合関係にあるため、観光客が減少し、鉄道事業のほかホテル・レジャー業の収入が影響を受ける可能性があります。さらに、大阪・奈良・三重地区等で競合する他の百貨店や異業態の新店舗開業・改装により、流通業の収入が影響を受ける可能性があります。

当社グループとしては、豊富な沿線観光資源の活用やお客様・地域社会のニーズに対応した商品・サービスの拡充に努めるほか、競争力のあるエリアでの不動産業等の展開、テクノロジーを活用した新たなビジネスモデルや効率的な運営体制の構築などの諸施策を積極的に進め、グループ各社の連携によりグループ事業全体の基盤強化を図ってまいります。

(4)大規模災害又は大規模事故の発生

南海トラフ地震等とそれらに伴う津波や、主要ターミナル等における火災、テロなどが発生した場合、長大橋梁・鉄道トンネル・線路等鉄道施設の毀損、特急券オンライン発券システムのトラブルなどのほか、ホテルや百貨店、賃貸施設、レジャー施設等についても大きな被害が生じるおそれがあり、当社グループにおいて大規模な損害及び復旧費用が発生する可能性があります。また、当社グループの経営資源が大阪府、奈良県、三重県をはじめ、近鉄沿線に集中していることから、特に南海トラフ地震が発生した際は、グループ全体の業績に深刻な影響を与えるおそれがあります。

また、万一大規模事故が発生した場合、その復旧と損害賠償に巨額の費用が必要となり、業績に深刻な影響を与えるおそれがあります。鉄道事業においては、遮断中の踏切への進入など外的要因により事故が発生し、列車の運行に支障が出るおそれもあります。

当社グループでは、公共交通機関として多数のお客様の輸送に当たる鉄軌道事業やバス事業をはじめ、その他の各事業においてもお客様の安全の確保を第一義に考えております。このため、従業員の教育・訓練はもちろんのこと、鉄軌道事業における運転保安設備の新設、増強など計画的な投資の継続をはじめ、各事業とも耐震補強など防災対策工事を推進するとともに、各種の安全対策には万全を期しております。また、大規模地震に対する事業継続計画の定期的な見直し等、大規模な災害・事故等の発生に備えた危機管理体制の整備を一層推し進めております。

(5)気候変動及びその対応

気候変動により、急性リスクとして、大型台風、豪雨に伴う風水害や土砂災害により列車が運行不能になるおそれがあります。また、旅行やホテルのキャンセルや、買物・レジャーの出控えが発生します。慢性リスクとしては、猛暑等で冷房等の空調に使用する電力使用量が増加し、エネルギーコストが増加するおそれがあります。さらに、消費者行動の変化や法律等の規制強化により、大規模な設備投資や事業構造の見直しを迫られるおそれがあります。

当社グループとしては、CO削減目標の策定、省エネルギー等の取組みを通じ、地球温暖化防止に努めております。

(6)人手不足、賃金高騰

当社グループにおいては、鉄軌道事業をはじめとする多くの事業が労働集約型であり、人材の安定的な確保が不可欠であります。しかしながら、少子高齢化により生産年齢人口の減少が続いており、今後十分な人材が確保できない場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。また、採用競争の激化等により賃金は上昇傾向にあり、今後さらに賃金が上昇した場合、収支に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、採用区分や採用エリアの拡大により、引き続き人材の確保に努めるとともに、業務の合理化・システム化等により、効率的な運営体制の構築にも取り組んでまいります。

(7)法令による規制

鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより旅客運賃の設定・変更は国土交通大臣の認可を受けなければならず、鉄道事業における運賃の設定・変更を制限される可能性があります。また、当社グループの事業活動においては各種法令の規制を受けており、法令改正の内容によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、法令に関する情報収集、定期的な社内研修や内部監査を実施するとともに、「法令倫理相談制度」を整備することで、法令遵守の徹底に努めております。

(8)商品の品質並びに食品の安全性及び表示に対する信用毀損

主として一般消費者を顧客としている流通業及びホテル・レジャー業において、当社グループが販売する商品の品質や食品の安全性・表示について信用毀損が生じた場合、お客様の減少による減収や損害賠償、争訟費用等のコスト発生により業績が悪化するおそれがあります。

当社グループでは、関係法令の遵守状況の確認や品質・衛生管理・食品表示のチェック、従業員に対する定期的な研修などを実施し、商品の品質・食品の安全性の確保、適切な食品表示に努めております。

(9)地価の下落等

不動産市況の低迷や地価の下落に伴う販売用土地及びマンションの販売不振、不動産賃料収入の減少、販売土地建物及び固定資産についての評価損失の計上などにより、業績が悪化するおそれがあります。

当社グループとしては、地価変動の影響を極力避けるため保有資産の入替え、競争力のあるエリアでの事業展開を進め、付加価値の高い新規物件の開発を促進するとともに、低利用地の更なる有効利用によって、不動産業の業績向上に努めております。

(10)原油等の資源価格の高騰

原油等の資源価格の上昇は、当社グループの鉄道事業、バス事業、タクシー事業、物流業などに大きな影響を与えます。また、不動産業におけるマンション建築工事費やホテル業、飲食店業におけるエネルギーコストの上昇は、利益減の要因となります。

当社グループとしては、各事業において原価の抑制に努めているほか、各社及びグループ共同で資源の供給会社に対する価格交渉を随時行っております。

(11)調達金利の変動

景気の急激な変動や金融市場の混乱等により、今後市場金利が上昇又は乱高下した場合や、信用格付業者による格付の下方修正が行われた場合には、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、令和元年度末の連結有利子負債残高は1兆582億74百万円、D/Eレシオは2.8倍、令和元年度の連結営業外費用における支払利息及び社債利息は79億92百万円であります。

当社グループでは、有利子負債残高を平成22年度末をピークに順次削減を進めており、また、金利変動による影響を軽減するため、金利の長期固定化を図っております。

(12)株式相場の変動

株式相場の変動により、時価のある投資有価証券の価格が下落し、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、年金資産(退職給付信託を含む。)の一部は上場株式で運用しており、株価の下落は退職給付費用の増加や掛金拠出の増加につながるおそれがあります。

当社グループでは、定期的に投資有価証券の市場価格を把握し、リスクを抑制しております。年金資産の運用については、外部の専門家によるアドバイスを参考にしつつ、定期的に運用状況の確認と見直しを行っております。

(13)デジタル情報技術の進化による生活様式の変化

ITの進化により在宅勤務やオンライン会議の環境が整備されつつある中、新型コロナウイルス感染症の拡大によりこれらが急速に普及し、公共交通機関を利用した通勤や遠距離の出張が減少しております。今後この動きがさらに進んだ場合は、鉄道・バスなどの運輸収入やオフィスビルなどの不動産賃貸収入が減少するおそれがあります。

当社グループとしては、乗ること自体を目的とした鉄道車両の開発、伊勢志摩や奈良など沿線観光地の一層の魅力向上等により観光旅客の増加を図るとともに、競争力のあるエリアでの不動産賃貸事業の展開に加え、施設のリニューアル等により資産価値の維持・向上を図ってまいります。また、新しい生活様式の定着を見据えたサービスの提供に努めてまいります。

(14)情報の漏洩等

当社グループは、定期乗車券の発売やカード会員の募集、ホテル、百貨店、旅行業等の営業を通じ、お客様の個人情報その他の機密情報を保有しております。万一これらの情報への不正なアクセス、情報の紛失、改ざん、漏洩、消失等が発生した場合、損害賠償等による費用が発生するほか、信用失墜などにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報の漏洩等を防ぐため、法令、「近鉄グループ情報セキュリティ基本方針」並びに各社が制定する規程等に基づき、各社がその責任において情報セキュリティを確保し、情報を厳重に管理しております。

(15)企業買収等

当社グループ各社は、今後の成長に向けた競争力強化のため企業買収等を行っており、また、将来行うことがあります。

当社グループとしては、個々の案件の規模等に応じて、取締役会及び各社における各種の会議体での審議並びに投資先に対するデューデリジェンスを十分に実施することにより、企業買収等の検討を進めるとともに、買収先の資産効率の向上及び利益の最大化に努めてまいります。

なお、買収先企業の業績が買収時の想定を下回る場合、又は事業環境の変化や競合状況等により期待する成果が得られないと判断された場合には、企業買収等を行ったグループ各社においてのれん等の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。平成27年5月には、持分法適用関連会社の株式会社近鉄エクスプレスが、グローバルにロジスティクス事業を展開するAPL Logistics Ltdの買収を行っており、令和2年3月末時点において、株式会社近鉄エクスプレスの固定資産における当該買収に関連するのれん等を含めた資産残高は1,136億円です。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(以下、「当期」という。)における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

  ① 財政状態及び経営成績の状況

当期のわが国経済は、期前半は緩やかな景気回復傾向をたどりましたが、期末にかけて新型コロナウイルス感染症の影響が深刻化し、政府による休校・イベント自粛要請、入国制限措置後は、個人消費や企業収益が急激に悪化し、きわめて厳しい状況のうちに推移しました。

当社グループでは、昨年5月に策定した新「近鉄グループ経営計画」に基づき、重点戦略である新3大プロジェクト(万博・IR関連事業、上本町ターミナル事業、伊勢志摩地域の活性化事業)の検討を進めるとともに、基本戦略である「沿線強化」、「新規事業・事業分野の拡大」、「事業エリアの拡大」の具体的な施策を推し進めました。阿部野橋ターミナルビル「あべのハルカス」周辺におきましては、近鉄百貨店「あべのハルカス近鉄本店」や商業施設「Hoop」、「and」のリニューアルに取り組んだほか、天王寺動物園てんしばゲート横に新エリア「てんしばi:na」を開業するなど、あべの・天王寺エリアのさらなる魅力向上に取り組みました。鉄道事業では、「くつろぎのアップグレード」をコンセプトとする新型名阪特急「ひのとり」の運行を開始し特急サービス網の充実に努めたほか、ホームページなどでの多言語対応を充実させるなど訪日外国人へのサービス拡充を図りました。ホテル事業では、「都ホテル 博多」を開業したほか、「ウェスティン都ホテル京都」のリニューアルを推進いたしました。

感染症の拡大が深刻化した本年2月以降は、鉄軌道事業をはじめとする運輸業では交通インフラとして事業の継続に努めたほか、レジャー施設、文化施設を休業するなど、グループ全体で感染の予防や拡大防止のための対策を講じつつ、事業の遂行に注力いたしました。しかしながら、感染症の拡大により国内外の消費需要が急速に減少したため、運輸、ホテル・レジャーなど各事業で大幅な減収となりました。

この結果、連結営業収益は、前期に比較して3.4%減の1兆1,942億44百万円となり、営業利益は27.1%減の493億80百万円、経常利益は29.7%減の472億24百万円となりました。これに特別利益および特別損失を加減し、法人税等を控除した後の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比較して42.8%減の205億61百万円となりました。

 

各報告セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 

a.運 輸

運輸業におきましては、鉄軌道部門で、激甚化する災害への対応として、施設の補強や災害発生時の体制整備を進めるとともに、更新工事を進めていた南大阪線列車運行管理システムの運用を開始するなど、運転保安度の一層の向上に取り組みました。訪日旅行者への取組みとしては、東南アジア、ヨーロッパ、オーストラリア等の地域への営業、宣伝活動を強化し、誘致に努めるとともに、運行情報の多言語対応を行うなど、受入れ態勢整備を図りました。本年3月に運行開始した新型名阪特急「ひのとり」では、全席にバックシェルを設置するなど車内環境を大幅に向上させ、特急サービスの拡充に取り組みました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、減収となりました。

この結果、営業収益は前期に比較して2.2%減の2,217億11百万円、営業利益は16.0%減の276億86百万円となりました。

 

 

業   種

単 位

当   期

(平成31年4月~令和2年3月)

前期比(%)

鉄軌道事業

百万円

152,724

△2.4

バス事業

百万円

33,721

△2.6

タクシー業

百万円

11,089

△3.9

鉄道施設整備業

百万円

26,710

△5.8

その他運輸関連業

百万円

22,226

3.7

調整

百万円

△24,760

営業収益計

百万円

221,711

△2.2

 

(近畿日本鉄道㈱ 運輸成績表)

区   分

単 位

当   期

(平成31年4月~令和2年3月)

前期比(%)

営業日数

366

0.3

営業キロ程

キロ

501.1

0.0

客車走行キロ

千キロ

288,975

1.0

旅客人員

定期

千人

341,885

△0.2

定期外

千人

230,086

△2.3

千人

571,971

△1.0

旅客運輸収入

旅客収入

定期

百万円

47,371

△0.5

定期外

百万円

98,658

△3.0

百万円

146,029

△2.2

荷物収入

百万円

27

△18.3

合計

百万円

146,056

△2.2

運輸雑収

百万円

6,667

△6.3

営業収益計

百万円

152,724

△2.4

乗車効率

28.6

(注)乗車効率の算出は、延人キロ/(車両走行キロ×平均定員)によります。

 

b.不動産

不動産業におきましては、不動産販売部門で、需要の見込まれる都市部を中心にマンション分譲を進めるとともに、学研奈良登美ヶ丘など近鉄沿線を中心に戸建分譲を推進しました。不動産賃貸部門では、博多駅直結の「近鉄博多ビル」の賃貸を開始したほか、首都圏エリアでの事業拡大に努めました。しかしながら、戸建事業において販売戸数が減少したほか、新型コロナウイルス感染症による展望台「ハルカス300」の休業等もあり、減収となりました。

この結果、営業収益は前期に比較して1.8%減の1,612億48百万円、営業利益は4.2%減の179億19百万円となりました。

 

 

業   種

単 位

当   期

(平成31年4月~令和2年3月)

前期比(%)

不動産販売業

百万円

75,597

△2.7

不動産賃貸業

百万円

47,713

0.7

不動産管理業

百万円

43,583

0.4

調整

百万円

△5,646

営業収益計

百万円

161,248

△1.8

 

c.流 通

流通業におきましては、百貨店部門で、「あべのハルカス近鉄本店」、「Hoop」、「and」の3館においてリニューアルを実施し、あべの・天王寺エリアの魅力向上を図るとともに、郊外店では専門店を取り入れた店舗構造改革により、効率的な運営体制の整備を推進しました。ストア・飲食部門では、駅ナカ商業施設やサービスエリア店舗のリニューアルを推進したほか、台湾では鰻料理店「江戸川」を出店するなど、事業エリアの拡大にも取り組みました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、減収となりました。

この結果、営業収益は前期に比較して0.2%減の3,927億96百万円、営業利益は百貨店部門における基幹システム更新に伴う減価償却費の負担増もあり、33.8%減の51億52百万円となりました。

 

 

業   種

単 位

当   期

(平成31年4月~令和2年3月)

前期比(%)

百貨店業

百万円

283,047

0.3

ストア・飲食業

百万円

111,039

△1.4

調整

百万円

△1,291

営業収益計

百万円

392,796

△0.2

 

d.ホテル・レジャー

ホテル・レジャー業におきましては、ホテル部門で、「都ホテル 博多」を開業したほか、創業130年を迎えた「ウェスティン都ホテル京都」では、京都を代表する高級ラグジュアリーホテルを目指し、リニューアル工事を推進しました。旅行部門では、ゴールデンウィークが10連休となったことにより販売が好調であったほか、MICEを中心に団体旅行の取扱いを拡大し、団体旅行事業の一層の強化に努めました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響によりホテルの稼働率が著しく低下し、旅行のキャンセルも相次いだことにより、大幅な減収減益となりました。

この結果、営業収益は前期に比較して6.8%減の4,492億76百万円となり、営業損益は遺憾ながら36億93百万円の損失となりました。

 

 

業   種

単 位

当   期

(平成31年4月~令和2年3月)

前期比(%)

ホテル業

百万円

51,559

△10.2

旅行業

百万円

385,362

△6.4

映画業

百万円

3,882

7.3

水族館業

百万円

8,626

△6.0

調整

百万円

△153

営業収益計

百万円

449,276

△6.8

 

e.その他

その他の事業におきましては、営業収益は前期に比較して5.1%増の191億10百万円、営業利益は6.1%増の15億81百万円となりました。

 

資産合計は、前期末に比較して451億17百万円減少し、1兆8,913億円となりました。これは、受取手形及び売掛金や旅行前払金の減により流動資産が減少したほか、固定資産の投資その他の資産で、足もとの株式市況の低迷等を受け、退職給付に係る資産や投資有価証券が減少したことによるものであります。

負債合計は、前期末に比較して373億63百万円減少し、1兆4,860億4百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金や旅行前受金等が減少したことによるものであります。

純資産合計は、前期末に比較して77億54百万円減少し、4,052億95百万円となりました。これは、利益剰余金が純利益の計上から配当を差し引き増加しましたが、その他の包括利益累計額で退職給付に係る調整額や為替換算調整勘定が減少したことによるものであります。

 

  ② キャッシュ・フローの状況

当期末における現金及び現金同等物は397億87百万円で、前期末に比較して123億2百万円減少いたしました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得た資金は、582億66百万円で、売上債権の増減により収入が増加しましたが、仕入債務の増減による支出や販売土地及び建物の取得が増加したほか、旅行前受金の減少もあり、前期に比較して440億53百万円収入額が減少しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は574億40百万円で、固定資産の取得による支出の減少により、前期に比較して67億8百万円支出額が減少しました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は129億52百万円で、社債の発行による調達が増加しましたため、前期に比較して259億52百万円支出額が減少しました。

 

  ③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため、生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

  ① 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しておりますが、この作成にあたり、当期末の資産及び負債並びに当期に係る収益及び費用の報告金額に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況等に応じた合理的な判断に基づき仮定及び見積りを行っております。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況」「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

a.固定資産の減損

当社グループは、運輸業、不動産業、流通業、ホテル・レジャー業等、多くの事業を展開する特性上、多額の固定資産を保有しており、これらの固定資産の回収可能額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき見積っております。このうち賃貸施設、百貨店店舗、ホテルやレジャー施設等につきましては、不動産市況の著しい下落や消費環境の悪化による収益性の低下等のリスクをはらんでおります。従って、当初見込んでいた収益が得られない、あるいは正味売却価額が下落したことにより、将来キャッシュ・フローが減少するなど前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。

b.繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得を合理的に見積もり、タックスプランニングを行った上で、税務上の繰越欠損金や将来減算一時差異のうち、将来課税所得を減算できる可能性が高いものについて繰延税金資産を認識しております。従って、今後、経営環境の変化や将来の収支予測の変更などにより将来の課税所得の見積額やタックスプランニングが変更された場合には、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。

c.退職給付債務及び費用の計算

当社グループは、退職給付債務及び費用の計算について、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件に基づき行っており、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合には、その影響額は数理計算上の差異や過去勤務費用として累積され、将来にわたって規則的に認識されます。従って、年金資産の運用結果が長期期待運用収益率と乖離した場合のほか、割引率や長期期待運用収益率の見直しあるいは退職給付制度の変更がなされた場合には、退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。

 

  ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績に重要な影響を与える要因)

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載しております。

このうち、当連結会計年度において特に留意すべき要因についての分析は次のとおりです。

a.景気、個人消費動向、国際情勢等の変動及び感染症の拡大

当連結会計年度は、消費税増税後の消費マインドの低下に加えて、新型コロナウイルス感染症の国内外における拡大により、訪日外国人の減少だけでなく、外出自粛等により国内の消費需要が低下しており、鉄軌道部門、百貨店部門、ホテル部門や旅行部門など各部門において大幅な減収となりました。

b.沿線人口の減少及びモータリゼーションの進展、他社との競合

当連結会計年度は、雇用環境が安定的に推移したこともあり、鉄軌道部門の通勤定期の旅客人員が増加しましたが、郊外の住宅地から都市部への居住エリアのシフト等もあり1人あたり運賃が低下していることに加え、少子化により通学定期は引き続き減少傾向にあり、定期旅客運輸収入は減収となりました。

c.人手不足、賃金高騰

当連結会計年度は、雇用環境の改善等に伴う労働需給のひっ迫により、競合他社や業界間での人材獲得競争が激化し、人件費の増加等が各事業の収支に影響を与えました。

d.地価の下落等

当連結会計年度は、不動産市況が底堅く推移し、大阪地区のオフィス空室率が低水準で推移したこともあり、当社グループの賃貸事業は順調に推移したほか、マンション販売につきましても、駅近、好立地の物件に対する根強い需要を背景に、想定通りの収益を確保することができました。

 

e.原油等の資源価格の高騰

当連結会計年度は、電力料金の引き下げにより鉄軌道部門の動力費が減少したほか、原油価格も下落傾向にあったことから、バス部門等で燃料油脂費が減少しました。

f.調達金利の変動

当連結会計年度は、前期に引き続き金利が低水準で推移するなど、概ね良好な調達環境が持続しました。

 

(経営成績の状況に関する分析)

経営成績に重要な影響を与える各要因を踏まえた当連結会計年度の経営成績の状況に関する分析は、次のとおりであります。

a.営業収益及び営業利益

営業収益は、昨年5月の大型連休期間の行楽需要により、主に運輸業における鉄軌道部門やホテル・レジャー業における旅行部門が好調に推移したものの、本年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて各部門で大きく減収となりましたため、前期に比較して3.4%減の1兆1,942億44百万円となり、営業利益は、前期に比較して27.1%減の493億80百万円となりました。

運輸業では、鉄軌道部門において、昨年5月の大型連休期間の増収効果があったものの、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う出控えの影響を受け、運輸業全体の営業収益は、前期に比較して2.2%減の2,217億11百万円となりました。営業利益は、鉄軌道部門における防災対策等による修繕費の増加もあり、前期に比較して16.0%減の276億86百万円となりました。

不動産業では、主要賃貸物件が堅調に推移したことに加え、「近鉄博多ビル」等新規物件の稼働もあり賃貸料が増加しましたが、戸建住宅の販売戸数が減少したほか、新型コロナウイルス感染症による展望台「ハルカス300」の休業等もあり、不動産業全体の営業収益は、前期に比較して1.8%減の1,612億48百万円となり、営業利益は、前期に比較して4.2%減の179億19百万円となりました。

流通業では、百貨店部門での内装子会社の大口受注等による増収があったものの、消費税率の引き上げに伴う消費マインドの低下や、新型コロナウイルス感染症拡大により百貨店売上が減少したほか、ストア・飲食部門においても、主に飲食業において新型コロナウイルスの影響を受けたため、流通業全体の営業収益は、前期に比較して0.2%減の3,927億96百万円となり、営業利益は、百貨店部門でのシステム関連費用の増加もあり、前期に比較して33.8%減の51億52百万円となりました。

ホテル・レジャー業では、ホテル部門で「ウェスティン都ホテル京都」の大規模リニューアル工事による客室の一部売り止めや、京都駅周辺等における近隣ホテルとの競争激化の影響を受けたことに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、ホテルの稼働率が著しく低下しました。また、旅行部門で国内・海外旅行のキャンセル、出控えが生じたほか、水族館部門で「海遊館」や「ニフレル」も臨時休業を実施したこと等もあり、ホテル・レジャー業全体の営業収益は、前期に比較して6.8%減の4,492億76百万円となり、営業損益は36億93百万円の損失となりました。

b.経常利益

当連結会計年度における経常利益は、営業外収益で、持分法による投資利益が減少しましたため、前期に比較して29.7%減の472億24百万円となりました。

c.親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、各段階利益の減少により、前期に比較して42.8%減の205億61百万円となりました。

 

(経営判断のために採用している経営指標とその達成状況及びその理由)

当社は、新「近鉄グループ経営計画」において、令和元年度から令和5年度までの5か年を計画期間とする「中期計画(2019~2023年度)」に基づき、財務健全性を確保しながら、グループの業績向上を図ってまいります。

本経営計画において、当社グループとしては、「営業利益」、「有利子負債残高」、「有利子負債/EBITDA倍率」を重要な指標として位置付けております。

当連結会計年度は、期末にかけて新型コロナウイルス感染症の拡大により国内外の消費需要が急速に減少したため、運輸業やホテル・レジャー業で大幅な減収減益となりました。これによる連結全体の影響額は、営業収益で470億円、営業利益で160億円程度と推定しております。また、事業環境の急速な悪化に対して手元資金を確保するため、資金調達を機動的に行った結果、期末の有利子負債残高は前期末に比し23億円増の1兆582億円となり、有利子負債/EBITDA倍率は1.4ポイント悪化し10.2倍となりました。

今後、新型コロナウイルス感染症により減退した消費需要の回復には相当の時間を要するものと予想しております。さらに、感染症が収束した後も従前の働き方や生活様式に変化が生じるなど、各事業を取り巻く環境は大きく変容するものと予想されます。当社グループでは、事業環境の変化に対応して各事業のあり方を見直してまいります。

 

 

当連結会計年度実績

(令和2年3月期)

経営指標目標

(令和6年3月期)

営業利益

493億円

730億円

有利子負債残高

10,582億円

9,800億円

有利子負債/EBITDA倍率

10.2倍

7.3倍

 

  ③ キャッシュ・フローの状況の分析内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループでは、令和5年度を最終年度とする「中期計画(2019~2023年度)」において、「成長への礎づくり」を基本方針とし、収益力と財務基盤のさらなる強化に取り組むこととしております。グループの持続的な成長のために必要な投資をその効果を見極めて厳選して行うとともに、原則としてグループ各社の事業活動に必要な資金を当社が一元的に調達することで、資金調達の安定と最適な財務バランスの実現を図ってまいります。また、将来を見据えて、万博・IR関連事業等の新3大プロジェクトを推進するため、今回新たに戦略投資枠を設定いたしましたが、これは各事業が生み出すキャッシュ・フロー等を財源といたします。

資金需要の主なものは、各事業の運転資金、販売用不動産など棚卸資産の取得に加え、既存設備の維持更新、安全関連投資、鉄道車両の新造、不動産賃貸物件の取得及び所有不動産の建替や改装といった設備投資に関するものであります。

これらの資金需要に対応すべく、短期資金については、各事業が生み出す営業キャッシュ・フローに加え、当座貸越やコミットメントラインなどによる金融機関からの借入れ、コマーシャル・ペーパーの発行などにより資金の流動性を確保しております。また、長期資金については、金融機関からの借入れ、シンジケート・ローンの組成、社債の発行及びリースなどの多様な選択肢の中から最適な調達手法を採用しております。さらに、返済年限の長期化を図り、固定金利で調達することで金利上昇リスクに対応するとともに、年度別返済額を平準化することで将来の借り換えリスクの低減にも努めております。

なお、本年2月以降、新型コロナウイルス感染症が拡大し、その影響が深刻化したため、当社グループの事業活動も大幅な縮小を余儀なくされました。これに対し、当社グループでは、当座貸越枠の拡大や長期資金の借り換えの前倒しでの調達等を実行し、資金の流動性の確保に万全を期しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

5【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。