当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、鉄道事業をはじめとする交通輸送サービスを基軸に、不動産、流通、レジャー・サービス等の生活に密着した事業を幅広く展開し、社会の信頼に応え、その発展に貢献することを通じて、当社グループの企業価値増大をはかることを基本方針としております。
また、当社グループの普遍的なテーマを、以下のとおり「グループ経営方針」及び「サステナビリティ方針」として位置づけております。
<グループ経営方針>
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・安全・安心の徹底 鉄道をはじめとしたすべての事業において安全・安心を徹底します ・環境重視 「地球環境保全」を使命として認識、事業において環境に配慮します ・コンプライアンスの徹底 法令遵守、自らの社会的責任を認識、公正で健全な企業活動を行います ・顧客志向の追求 地域に密着した企業として、お客さま目線での行動を徹底します |
<サステナビリティ方針>
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沿線エリアを中心に、地域住民・自治体・企業等、さまざまなステークホルダーと共創・協働し、企業理念の実践を通じて、「持続的な企業価値の向上」と「持続可能な社会の実現」の両立をめざします。 |
(2)経営環境
当社グループは、大阪府南部や和歌山県を主たる営業基盤とし、運輸、不動産、流通、レジャー・サービス、建設等の事業を展開しております(当社グループの事業の内容については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」 をご覧下さい。)。
当社グループをとりまく経営環境として、地震・台風等の自然災害の激甚化傾向や人口減少等、一層激しい変化に直面すると予想しており、これらに対して柔軟に対応していく必要があると考えております。一方、当社グループは、近年、インバウンド旅客の増加による空港関連輸送の活性化やなんば地区を中心とする不動産業の拡充等により大きな成長を遂げてきました。今後も、大阪・夢洲へのIR(統合型リゾート)の誘致計画といった関西におけるビジネスチャンスの拡大に加え、なにわ筋線開業(2031年春目標)により、沿線のさらなる利便性向上が期待されています。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、「沿線への誇りを礎に、関西にダイバーシティ(※)を築く事業家集団」という“2050年の企業像”の実現に向け、前中期経営計画「共創140計画(2022年度〜2024年度)」において、コロナ禍を経ての「再構築」と「成長への基礎構築」に取り組み、収益拡大や未来探索等の投資に推進力を欠くなどの課題は残したものの、数値目標を超過達成するなど、一定の成果を得ることができました。このような状況を踏まえ、続く2025年度〜2027年度の3年間を対象に、当社グループが将来にわたって社会的使命を果たし続けるため、従来の在り方から脱却し、新たな南海グループに生まれ変わりをはかることをめざし、「NANKAIグループ中期経営計画2025−2027」を策定いたしました。
本計画においては、人口減少が顕著に進む事業エリアの厳しい将来を見据え、コロナ禍で傷んだ財務状況が改善した今だからこそ、積極的な攻めの一手を打つべき時期と捉え、不動産事業と公共交通事業の両事業に対して、集中的な投資を実行してまいります。成長のエンジンである不動産事業においては、「大家業から総合不動産事業への脱却」に全力を傾注して取り組み、飛躍的な不動産事業の拡大をめざすとともに、公共交通事業においては、これまで培ってきた安全・安心を大前提としながら、現状の延長線上では事業の将来的な存続が困難であるとの危機感の下、将来の人財不足対応を見据え、事業運営の高度化と最適化を進めてまいります。
また、本計画期間中の2026年4月1日には、鉄道事業を分社して新たな経営体制に移行することにより、持続的な企業価値向上に向けた強力な戦略実行体制の構築と事業特性に応じた運営体制の最適化を進めてまいります。なお、当社の現在の商号である「南海電気鉄道株式会社」は、鉄道事業を引き継ぐ新会社が承継し、分社後の当社は「株式会社NANKAI」に商号変更を行う予定であります。
また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、ROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)双方の改善に資する施策を進めるとともに、事業ポートフォリオマネジメントとして、ROIC(投下資本利益率)を活用した各事業評価に基づく定期的なモニタリングと対応を実施することで、成長性・収益性の高い事業へのシフトと最適なリソース配分を実現し、大きな成長を志向してまいります。さらに、当社グループの掲げる「サステナブル経営」の実践として、7つのマテリアリティごとに定める取組み指針に基づき、CO2排出量の削減や安全の徹底等の取組みを積極的に推進すべく、それぞれのKPIを設定し、その進捗を適時適切に把握・開示してまいります。
いずれの施策もさまざまな変化や挑戦を伴うものでありますが、企業価値創造の源泉である「人」への投資を加速しながら、役職員一丸となって「行動」を起こすことで、変革・成長し続ける企業グループへと進化してまいりたいと存じます。
(※)「多様性」に代表される“Diversity”と、「多様性あふれる街」を意味する“Diverse City”=“DiverCity”(造語)の2つの想いを
表現している
「NANKAIグループ中期経営計画 2025−2027」の骨子
<基本方針>
社会的使命を今後も果たし続けるため、利益を維持しながら、企業価値の大きな向上に向けた、コア事業(不動産事業、公共交通事業)の強化(集中投資)を最優先
<重点戦略(最優先事項)>
・飛躍的な不動産事業の拡大
M&A等のインオーガニックな手法を選択肢に加え、飛躍的な成長を実現
大家業から総合不動産事業への脱却をはかる
・未来を拓く公共交通事業への変革
現状の延長線上では、事業の将来的な存続が困難であるという危機感の下、未来のために必要な投資を集中的に実行し、事業の存続と成長に挑戦
<基盤戦略>
・新事業のスケールアップ実現と未来探索の継続
・「選ばれ続ける沿線づくり」の具現化
・コーポレート戦略(※1)と事業戦略との連動強化
(※1)人財戦略:人的資本経営の加速
DX戦略 :デジタル顧客接点の拡充
財務戦略:資本構成の最適化と投資資金の確保
<株主還元方針>
安定配当を基本方針としつつ、連結配当性向を段階的に向上させ、2027年度には30%程度とすることを目標
とし、状況に応じて機動的に自己株式取得を行う
<投資計画>
総額3,600億円の投資を短期集中で実行
収益拡大投資(未来探索含む):最大2,100億円 安全・更新投資:最大1,500億円
<数値目標>
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目標指標 |
2027年度目標 |
将来的にめざす水準 |
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営業利益 |
360億円以上 |
460億円以上 (2035年度までの早期に) |
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純有利子負債残高/ EBITDA(※2)倍率 |
7倍台 |
6倍台 |
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ROE |
7%程度 |
8%以上 |
(※2)営業利益+減価償却費+のれん償却費
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「NANKAIグループ中期経営計画 2025—2027」においては、収益性指標として「営業利益」を、財務健全性指標として「純有利子負債残高/EBITDA倍率」を採用しているほか、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、資本効率性指標である「ROE」を採用しております。
「純有利子負債残高/EBITDA倍率」におけるEBITDAの算出方法は、M&Aを推進する方針に基づき、のれん償却費を含めた総額としており、算出方法は、以下のとおりです。
EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
なお、当連結会計年度の客観的な指標等の進捗状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況」をご覧下さい。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点で当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立に向けた姿勢を社内外のステークホルダーに一層明確に示すため、「サステナビリティ方針」を定めております。さらに、同方針の下、長期的に取り組むべき重点施策として、SDGsの視点を取り入れた7つの「サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)」を設定しました。その中でも、特に「地球環境保全への貢献」における気候変動への対応や「一人ひとりが幸せや充実・成長を実感できる環境づくり」における人的資本・多様性に関する取組みは重要課題であると認識しております。
<サステナビリティ方針・サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)>
(2)サステナビリティに関する取組み
①ガバナンス
サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進する組織として、「サステナビリティ推進委員会」(年2回を目途に開催)を設置しております。本委員会が中心となって、事業部門と連携しながら、サステナビリティ施策に関する目標設定や進捗状況のモニタリング、達成度評価(PDCAサイクル)の推進や、リスクの抽出、対応方法について議論を行っております。
なお、サステナビリティ推進委員会の審議事項は、重要な事項については取締役会に年2回報告しております。
②リスク管理
当社グループの事業等のリスクについては、「リスク管理委員会」(委員長:社長兼COO)を設置するなど、グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクの回避または低減に努めております。
リスク管理委員会では、優先的に取り組むべき8つの最重要リスクを決定しており、これらのリスクには「環境」並びに「人事・労務」が含まれております。最重要リスクについては、業務リスクと経営リスクに区分したうえで、リスク対策の推進責任者であるリスクオーナーを選定し、業務リスクについては実行者であるリスクマネージャーを中心にリスク対策計画を実践するとともに、経営リスクについてはリスクの動向をオーナーからリスク管理委員会に報告することで実効性の向上を図っております。
これらリスクオーナー・リスクマネージャー(第1線)、リスク管理委員会(第2線)の取組みを内部監査室(第3線)が監査しており、いわゆる「3つの防衛線」の体制を整えております。
また、「サステナビリティ推進委員会」(委員長:会長兼CEO)では、気候変動や人的資本等についてのリスクの最小化と機会獲得に向けた各種方針・戦略の策定、取組みのモニタリングに関する管理を行う体制となっており、リスク管理委員会と連携しながら、定期的にリスク低減に向けた取組みを実施します。
[気候変動対応に関する取組み]
当社グループでは気候変動への対応を重要課題ととらえ、気候変動による事業への影響を想定し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取組みを行っております。
また2021年9月には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めております。
<TCFD提言への対応>
①戦略
当社グループでは、将来の気候変動の進展や経済社会の変化について様々な可能性を想定し、気候変動に関するリスクと機会の特定並びにその分析を行っております。2024年度は、以下の当社及びグループ会社(以下、「対象範囲」という。)を分析対象としました。
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会社 |
業種 |
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当社、泉北高速鉄道㈱※ |
鉄道事業、不動産・流通事業 |
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南海不動産㈱、南海商事㈱ |
不動産・流通事業 |
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阪堺電気軌道㈱ |
軌道事業 |
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南海バス㈱、関西空港交通㈱、 南海ウイングバス㈱、徳島バス㈱ |
バス事業 |
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南海フェリー㈱ |
海運業 |
※当社は、2025年4月1日付で泉北高速鉄道㈱を吸収合併
分析にあたっては、まず事業インパクトの大きさ等を考慮し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会項目として「炭素価格、各国の炭素排出目標・政策」、「製品及びサービスへの規制」、「電気・燃料価格、エネルギーミックスの変化」を、また気候変動がもたらす物理的リスク・機会項目として「異常気象の激甚化」を重要度評価「大」と設定しました。(分析は1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオについて行いました。)
これらのリスク・機会については、各コア事業の部門のリスク管理体制の中で、かねてから対応を進めております。
今後、認識したリスク・機会に対して適切な対応策を講じることで、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立を目指します。
イ.移行リスク
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リスク項目 |
当社グループにとってのリスク(※1) |
発生時期 (※2) |
評価 |
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脱炭素社会への 移行に伴うリスク (移行リスク) |
政策/ 規制 |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 |
[共通]炭素税課税による税負担増加 [共通]CO2削減目標達成のための再エネへの転換に伴う電力費増加 [不動産・流通]経年物件に対する排出権購入コスト増加 |
中~ 長期 |
大 |
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製品及びサービスへの規制 |
[バス]EV/FCVバス導入コストの増加 |
中~ 長期 |
|||
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業界/ 市場 |
電気・燃料価格、エネルギーミックスの変化 |
[共通]再エネ比率増による運営コスト増加 |
短~ 長期 |
||
ロ.物理的リスク
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リスク項目 |
当社グループにとってのリスク(※1) |
発生時期 (※2) |
評価 |
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気候変動の物理的 変化に関連する リスク (物理的リスク) |
急性 |
異常気象の激甚化 |
[共通]鉄道路線、保有不動産への洪水・土砂崩れ・橋梁洗掘等の発生による損害増、損害保険料増、資産価値低下 [共通]台風の大型化等に伴う商業施設の営業停止や鉄道及びバスの運休、フェリーの欠航等の発生、ホテル・旅行のキャンセル増加による減収 [共通]サプライチェーン寸断による営業支障 |
短~ 中期 |
大 |
ハ.機会
|
機会項目 |
当社グループにとっての機会(※1) |
発生時期 (※2) |
評価 |
|
資源の効率 |
[共通]省エネ投資により、操業コスト減、公的支援や減税可能性向上 |
中~ 長期 |
大 |
|
製品及びサービス |
[鉄道]炭素税導入による自動車輸送から鉄道輸送への流入 |
中~ 長期 |
|
|
[バス]EV/FCVバスの普及を促進する政策・補助金制度の実施・強化 |
中~ 長期 |
||
|
[不動産・流通]高環境性能新築ビルに対するニーズの高まりによる賃料上昇、資産価値向上 |
短~ 中期 |
||
|
[不動産・流通]BCP対応や帰宅困難者対策等、災害に強い施設への入居ニーズに応えることによる、競争力強化や増収 |
短~ 中期 |
||
|
レジリエンス |
[共通]エネルギーミックスの変化に対応できている場合、事業の強靭性が向上 |
短~ 中期 |
(※1) [共通]は鉄道事業、軌道事業、バス事業、海運業並びに不動産・流通事業で発生するもの
(※2) 短期:1年、中期:2~4年、長期:5~15年
また、特定したリスク・機会の重要度評価において「大」と評価したものの中で、気温上昇のシナリオにおける将来の客観的な予測データが公開されている項目について、2030年の社会での「対象範囲」において事業インパクトを定量的に試算しました。
その想定の前提となるシナリオについては、移行リスク・機会は気候変動に対し社会に積極的な対応が行われる1.5~2℃シナリオにより、また物理的リスクは1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオにより試算しました。
試算の結果、想定される気候変動の影響は、脱炭素社会への移行リスク・機会に起因する事業インパクトが算出されました。物理的リスクの事業インパクトについては、4℃シナリオにおける影響額が、1.5~2℃シナリオと比較して、約1.9倍となる試算結果となりました。
なお、いずれのシナリオとなった場合でも、事業インパクトは限定的と見込まれるものの、今後気候変動によるリスクの最小化と機会の最大化を図るために、鉄道車両の更新をはじめとするCO2削減施策の推進等、脱炭素社会の実現に向けた取組みを通じて、気候変動に対してレジリエントな組織であり続けたいと考えております。
②指標及び目標
当社グループでは気候変動の緩和と移行リスクへの備えのため、事業活動の脱炭素化に向けた取組みを行っており、以下の目標を掲げております。
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スコープ1,2について ・CO2排出量を2013年度比46%以上削減(2030年度) ・2050年CO2排出量実質ゼロ |
また、これらの目標を達成するため、鉄道事業部門における以下の指標の進捗を測定しております。
|
・省エネ型車両の導入割合を85%まで向上(2030年度) |
当社グループは、鉄道車両の更新・再生可能エネルギーの活用等のCO2排出量の削減に向けた取組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
※ 昨年度に続き、2023年度実績のエネルギー起源CO2排出量(スコープ1,2)について、「南海グループ エネルギー起源CO2排出量 算定報告書(2023年度)」(PDF)において第三者保証を受けております。
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スコープ1 |
スコープ2 |
スコープ1+2 |
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2023年度 エネルギー起源 CO2排出量(t-CO2) |
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[人的資本、多様性に関する取組み]
①戦略
当社グループでは、人的資本経営の取り組みをさらに加速させるため、2024年度、経営戦略と連動した「南海グループ人財戦略」を策定しました。当該人財戦略は、人財確保・育成方針と社内環境整備方針から構成されています。人財確保・育成のテーマは「多様な人財と多様な専門性の向上」と「グループ共通の価値観浸透とスキル向上」とし、社内環境整備のテーマは「いきいきと健康に働ける環境づくり」と「イノベーションに取り組む環境づくり」として、これらに基づき各種人事施策を企画・実行してまいります。
人財戦略に基づく人事施策、つまり「人への投資」を行った結果目指すのは、「社員一人ひとりが幸せや充実・成長を実感できる環境」をつくることです。さらに、多様な人財がいきいきと働ける環境を実現することで、担当事業・業務や役職などにかかわらず、全ての社員が「南海版イノベーション」に取り組む状態を実現したいと考えています。
このように、最大の資本である人と組織を充実させていくことで、事業戦略の実現や持続的な企業価値向上、当社グループが掲げる「サステナブルな社会」や「2050年の企業像」の実現を目指してまいります。
※指標①~⑦については、「②指標及び目標」の表中に記載しています。
※人財確保・育成方針、社内環境整備方針についてはこちら
https://www.nankai.co.jp/sustainability/materiality/05human_resources/human_resource_strategy
・当社グループにおける「イノベーション」の定義
「社員一人ひとりが、現在取り組んでいる事業・業務を改めて見つめ直し、大小問わず、社会やお客さまが本当に望んでいることを捉えて実現していくこと」を、当社グループが目指すイノベーションとし、南海版「イノベーション」と呼んでいます。これに取り組むことで、「事業創造」「既存事業のバリューアップ」「業務改革」などの成果が生まれると考えています。当社グループが目指す姿の実現に向け、全社員が全ての事業・業務で「南海版イノベーション」に取り組んでまいります。
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[南海グループの目指すイノベーション(南海版イノベーション)] 社員一人ひとりが、現在取り組んでいる事業・業務を改めて見つめ直し、大小問わず、社会やお客さまが 本当に望んでいることを捉えて実現していくこと ① 事業創造 ●新規領域/既存事業の周辺領域での、新ビジネス・新サービス等の開発 ② 既存事業のバリューアップ ●収益・利益の向上●事業構造の見直し●顧客満足度・認知度・愛着度などの向上 ③ 業務改革 ●事業活動への貢献・サポート●業務プロセスの抜本的な見直し、時間の有効活用 ●わかりやすさ・正確さの向上等 |
・経営戦略を実現するための当社グループ全体の人財像の構成及び必要なスキル
(人財像の構成)
当社グループは運輸業、不動産業、流通業、レジャー・サービス業、建設業、その他の事業という多様な事業会社で構成されており、今後それぞれの事業において社会やお客さまの変化に対応して事業を変革していくため、経営的視点・スキルを持つ人財(経営人財)と、各事業に精通した専門性の高い人財(専門人財)の双方を確保・育成してまいります。
さらに、専門人財のうち各事業の新たな戦略をリードする人財を「戦略人財」、主に既存事業・業務を担う人財を「基幹人財」と位置付けています。特に戦略人財については確保・育成を強化するため、求めるスキル・経験を「戦略人財像」として定めるとともに、「戦略人財ポートフォリオ」を設定のうえ、確保・育成状況をモニタリングして、事業戦略を実現するための戦力づくりを進めてまいります。
(必要なスキル)
当社グループでは、「南海版イノベーション」に取り組むために全ての社員が身につけるべきスキルを「基礎スキル」、今後の事業戦略を推進するためにスキル保有者が増加することが望ましいスキルを「発展スキル」として、それぞれ定めています。
特に発展スキルのうち「事業創造スキル」と「データ活用・デジタルスキル」をもとに、イノベーションに取り組む能力・スキルを示す指標「イノベーションスキル習熟度」を設定しており、目標水準に到達する社員が増加するよう、社員のスキルアップのための施策を実施してまいります。
(人財戦略における各種取組み)
https://www.nankai.co.jp/sustainability/materiality/05human_resources
②指標及び目標
当社グループでは、「①戦略」において記載した、人財確保・育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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方針 |
指標 |
目標 |
実績 (当連結会計年度) |
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人 財 確 保 ・ 育 成 方 針 |
①女性管理職比率 [連結] |
( |
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②新規採用者に占める女性比率 [連結] |
( |
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③マネジメントコース (※)新卒採用者に占める女性比率[単体] |
( |
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④キャリア採用の管理職比率 [単体] |
2021年度時点における水準 ( |
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⑤イノベーションスキル習熟度 [単体] |
目標水準到達者が全体の ( |
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社 内 環 境 整 備 方 針 |
⑥年次有給休暇取得率 [単体] |
( |
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⑦男性労働者の育児休業等と育児目的休暇取得率 [単体] |
( |
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※マネージャー及び経営人財としての活躍を目指すキャリアコース
当社グループの事業その他に関するリスクにつきましては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。当社グループでは、リスク管理委員会を設置するなど、グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクの回避又は低減に努めております。なお、発生の回避及び発生した場合の対応を一部記載しておりますが、係る対策が必ずしもリスク及びその影響を軽減するものではない可能性があることにご留意下さい。
本項につきましては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)経済情勢等
少子高齢化、沿線地域における人口、雇用情勢及びインバウンドをはじめとする関西国際空港利用者数の動向等により、鉄道事業をはじめとする運輸業における旅客が減少することや、国内外の景気動向、消費動向及び市場ニーズの変化により、不動産業、流通業、レジャー・サービス業等における売上高について影響を受けることがあります。このほか、金利・為替の変動、原油価格の高騰による電力料金の値上げや資材価格の高騰が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、投資有価証券に係る株価変動、保有不動産の地価変動等により株式や低収益物件等の減損処理が必要になる場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合
鉄道事業におきましては、一部路線が他社と競合しております。さらに、自家用車やバイク等の輸送手段への移行が今後も影響を及ぼす可能性があります。
バス事業におきましては、新規路線参入については自由競争下にあるため、競争の激化により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、バス乗務員の不足は全国で深刻化しておりますが、当社グループにおいても要員確保状況によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
このほか、当社の経営拠点であるなんばエリアにおいて経営する商業施設「なんばCITY」及び「なんばパークスShops&Diners」につきましては、大阪市内における他のエリア(梅田、天王寺等)の大型商業施設と競合関係にあります。
(3)法的規制
鉄道事業におきましては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならず(第3条)、さらに旅客運賃及び料金(上限)の設定・変更につき、国土交通大臣の認可を受けなければならない(第16条)こととされております。なお、これらの国土交通大臣の許可及び認可については、期間の定めはありません(一部例外あり)。
また、同法、同法に基づく命令、これらに基づく処分・許可・認可に付した条件への違反等に該当した場合には、国土交通大臣は期間を定めて事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができる(第30条)こととされております。鉄道事業の廃止については、廃止日の1年前までに国土交通大臣に届出を行う(第28条の2)こととなっております。
現時点におきまして同法に抵触する事実等は存在せず、鉄道事業の継続に支障を来す要因は発生しておりません。しかしながら、同法に抵触し、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消を受けた場合には、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記のほか、当社グループが展開する各事業については、さまざまな法令、規則等の適用を受けており、これらの法的規制が強化された場合には、規制遵守のための費用が増加する等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)大規模販売用不動産
大規模販売用不動産につきましては、計画的な分譲を実施することにより、資金回収をはかっておりますが、主に郊外地域における土地価格の下落や住宅需要の都心回帰の傾向がさらに進んだこと等により、郊外型大規模住宅開発には厳しい状況が続いております。今後も計画的な分譲を進めてまいりますが、少子化による住宅需要減や都心回帰の顧客志向がますます強くなることも予想されますので、資金回収の遅れが生じる等の影響が出る可能性があります。
(5)グループ会社に関する事項
当社連結子会社である南海辰村建設株式会社は、グループ会社で唯一の上場会社であり、またグループ内の中核会社であるため、当社ではこれまでに第三者割当増資の引受や支援金の提供等の経営支援を行っておりますが、同社において、想定外の受注環境の悪化等に見舞われた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)投資
鉄道事業における投資につきましては、連続立体交差化工事や安全運行確保のための各種更新投資が長期にわたりかつ多額となるため、その資金調達や金利負担が当社グループの業績及び財務状況に影響を与えております。
(7)M&A
成長戦略としてのM&Aの実行に際しましては、外部専門家等も交え、対象会社の財務内容等に関するデューディリジェンスを綿密に行いますが、当該デューディリジェンスの過程で検知できなかった偶発債務や未認識債務等が顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、M&A実行後の事業環境の変化に伴い、対象会社の収益力が低下した場合や期待するシナジー効果が実現できない場合、減損損失を認識する必要が生じ、投資の回収が不可能となる等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)退職給付会計
退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債につきましては、従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における見込額に基づき、退職給付債務から年金資産の額を控除した額を計上しております。数理計算上の差異は、その発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(3年から11年)による定額法により翌連結会計年度から費用処理することとしております。債務の計算における前提が変更された場合や、運用利回りの悪化があった場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)有利子負債
当社は、その事業の特性上、借入金依存割合が高い状況にあり、設備投資やM&A実行資金を使途に多額の社債発行や銀行借入を行った場合、有利子負債残高がさらに増加することが考えられます。資金調達手段の多様化をはかり、財務健全性の維持に努めますが、金利変動により金利負担が増加した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、格付機関が当社の格付を引き下げた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)自然災害等
南海トラフ地震等の大規模地震やそれに伴う津波の発生、台風等による風水害・地すべりといった自然災害により、当社の設備やインフラが多大な被害を受けた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。高架橋柱をはじめとする鉄道施設やビル等の耐震補強を計画的に実施するほか、橋梁等の防災・減災のため各種対策を講じております。
なお、(11)、(12)の事故発生等を含め、大規模自然災害が発生した場合の対処として、災害対策規程等の制定や、大規模地震を想定した事業継続計画(BCP)の策定、震災対応型コミットメントラインの導入等、被害を最小限にとどめる管理体制の強化をはかっておりますが、発生の地域、規模、時期、時間等により、被害の範囲が大きくなる可能性があります。また、当社施設に直接の被害がない場合であっても、大規模自然災害に伴う、第3種鉄道事業者の施設被害や電力供給の制限、列車運行に必要な部品の調達困難等により、鉄道輸送に大きな支障が出る可能性があります。
このほか、新型コロナウイルス等感染症の流行により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)事故・システム障害等の発生
安全安心な輸送サービスの提供を最大の使命とする運輸業を基軸に事業展開をしている当社グループにおいて、事故や自社設備の火災・爆発等が発生した場合、並びに重大インシデント(事故が発生する恐れがあると認められる事態)が発生した場合には、社会的信用の失墜を招くばかりでなく、その復旧及び損害賠償請求等により業績に多大な影響を生じる可能性があります。
また、人的原因や機器の誤作動等により、システム障害が発生した場合、事業運営に支障を来すとともに、施設の復旧や振替輸送に係る費用の発生等により、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。事故・システム障害の未然防止のため、保安諸施設や駅務システムの整備、更新や定期的なメンテナンスの実施、従業員教育の徹底等、さらなる対策に取り組んでまいります。
(12)第三者行為やテロ活動等
第三者行為による事故発生やテロ活動及び不正アクセス等につきましても、不審物への警戒や施設内巡回の強化及び情報セキュリティの確保等の対策を行っておりますが、万一、テロ活動等が発生し、その影響を受けた場合には、事業活動に支障が出る可能性があります。
(13)保有資産及び商品等の瑕疵・欠陥
当社グループが保有する資産について、瑕疵や欠陥が発見された場合、又は健康や周辺環境に影響を与える可能性等が指摘された場合、その改善・原状復帰、補償等に要する費用が発生する可能性があります。また、当社グループが販売した商品、売却した不動産、受注した工事、提供したサービス等について、瑕疵や欠陥が発見された場合、その改善及び補償等に要する費用の発生や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)気候変動への対応
当社グループでは、気候変動の緩和に向けた脱炭素社会への移行に伴う費用増や、気候変動による激甚化した災害が発生した場合に、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。その対処として、気候変動による事業への影響を想定し、事業戦略と一体化したリスクと機会への対応策を検討・実施しています。また2021年9月には、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めております。引き続き、サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)である「地球環境保全への貢献」への取組みを通じて、持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。
(15)人事政策
鉄道、バス等の運輸業におきましては、労働集約型の産業構造であるため、事業運営上必要な人財の安定的な確保が求められます。また、「選ばれる沿線づくり」や「不動産事業の深化・拡大」といった事業戦略を推進していくために多様で専門的な人財の確保・育成に努める必要もあります。これらの政策が環境変化等により遅れた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)情報資産の管理
当社グループでは、各事業においてお客さまや従業員の個人情報だけではなく、機密情報をはじめとする重要情報を保有しております。このため、リスクマネジメント強化を目的として、情報セキュリティ基本方針等の社内規程を整備するとともに、従業員に対する教育等に取り組んでおります。しかしながら、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償責任が発生する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)コンプライアンス
当社グループでは、企業倫理の確立をはかり、コンプライアンス経営を維持・推進するために、コンプライアンス遵守に関する教育を定期的に実施する等の啓発活動に努めております。また、法的・倫理的問題を早期に発見し、是正していくための体制として内部通報制度を設けておりますが、重大な不正・不法行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)重要な訴訟
現在のところ、特に経営に重大な影響を及ぼすような重要な係争事件はありません。
今後の事業展開におきましても、あらゆる取引において契約内容の真摯な履行に努めてまいりますが、相手方の信義に反する行為に対しやむを得ず訴訟等を提起する場合や、相手方との認識の相違又は相手方悪意により、訴訟等を提起される可能性があります。さらに、訴訟等の結果によっては、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のわが国経済は、雇用、所得環境の改善がはかられるなど、景気は緩やかな回復基調が続いたものの、資源・原材料価格の高騰や人手不足による影響に加え、期末にかけて米国の通商政策の動向による影響の懸念が強まるなど、先行きは依然として不透明な状況のまま推移いたしました。
このような経済情勢の下におきまして、当社グループでは、最終年度を迎えた中期経営計画「共創140計画」に基づき、引き続き各種施策への取組みを進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、9,768億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ262億27百万円増加いたしました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が126億60百万円増加したことや、投資有価証券が65億31百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、6,486億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ51億3百万円増加いたしました。これは主に、未払法人税等が25億60百万円、退職給付に係る負債が14億90百万円減少した一方、支払手形及び買掛金が62億48百万円増加したことや、繰延税金負債が38億3百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、3,282億25百万円となり、前連結会計年度末に比べ211億23百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当により59億49百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により224億96百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は31.9%(前連結会計年度末は30.8%)となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におきましては、不動産業における物件販売収入の反動減があったものの、運輸業における輸送人員の増加や2023年10月1日に実施した鉄道線の運賃改定効果等により、営業収益は2,607億87百万円(前期比7.9%増)となり、営業利益は346億55百万円(前期比12.4%増)、経常利益は355億72百万円(前期比21.4%増)となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上のあった固定資産売却益の反動減等により、224億96百万円(前期比6.0%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<運輸業>
鉄道事業におきましては、営業面では、昨年12月に南海線においてダイヤ改正を実施し、空港アクセスの速達性・利便性向上と8両編成列車の増便による車内の混雑緩和をはかりました。また、インバウンド旅客向けの二次元コード付デジタル乗車券の発売や、クレジットカードによるタッチ決済利用駅の拡大に取り組みましたほか、車いすをご利用のお客さま等のスムーズな列車乗降介助をはかるため、事前にウェブサイトでお申込みいただく「南海・泉北サポートほっとネット」の運用を開始するなど、旅客の利便性向上と旅客サービスのデジタル化を進めました。このほか、新たな需要喚起施策として、空港特急「ラピート」の運行開始30周年及び観光列車「天空」の運行開始15周年をそれぞれ記念した各種イベントを実施いたしましたほか、「大阪・関西万博ラッピングラピート」を運行し、本年4月から開催の大阪・関西万博の機運醸成による移動需要の喚起に努めました。施設・車両面では、かねて工事を進めてまいりました南海本線・高師浜線連続立体交差事業における鉄道高架化工事が完成し、昨年4月から高師浜線において鉄道運行を再開いたしましたほか、難波駅2階中央改札口の改札内コンコースにおいて、リニューアル工事を推進いたしました。また、南海線及び高野線において8300系新造車両12両を投入いたしましたほか、本年3月から開始した、泉佐野駅・和歌山市駅間における一部ワンマン運転に対応するため、運転士が車両側面付近を確認できる「車両側面カメラ」をワンマン運転対応車両に設置いたしました。
なお、本年4月1日、当社は泉北高速鉄道株式会社と合併し、泉北高速鉄道線は「泉北線」として営業を開始するとともに、初乗り運賃の二度払いを解消し、南海線及び高野線と泉北線の相互間で利用する際の運賃値下げを実施いたしました。
バス事業におきましては、当社難波駅、堺駅及び堺東駅と大阪・関西万博会場を結ぶシャトルバスの運行を決定し、予約の受付を開始いたしました。また、当社グループの事業拡充をはかるとともに、和歌山エリアを対象としたツーリズム関連事業の展開をより一層強化、加速させるため、昨年10月1日付で、南紀エリアにおいてバス事業を展開する明光バス株式会社を子会社化いたしました。
このほか、和歌山市及び和歌山バス株式会社等の協力のもと、本年3月から和歌山市雑賀崎・田野エリアで地域住民の移動課題解決及び路線バスの利便性向上を目的に、乗車定員3〜4人のグリーンスローモビリティ(通称グリスロ)(※)の実証実験を実施しております。
以上のような諸施策を進めました結果、運輸業の営業収益は1,127億38百万円(前期比10.7%増)となり、営業利益は132億61百万円(前期比63.2%増)となりました。
(※)時速20㎞未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス
提出会社の運輸成績
|
区分 |
単位 |
当連結会計年度 |
|||
|
(2024.4~2025.3) |
対前連結会計年度増減率 |
||||
|
営業日数 |
日 |
365 |
% △0.3 |
||
|
営業キロ |
キロ |
154.7 |
△0.1 |
||
|
客車走行キロ |
千キロ |
99,499 |
1.6 |
||
|
旅客人員 |
定期外 |
千人 |
96,623 |
6.0 |
|
|
定期 |
千人 |
126,411 |
0.2 |
||
|
計 |
千人 |
223,034 |
2.6 |
||
|
運輸収入 |
旅客収入 |
定期外 |
百万円 |
39,685 |
12.9 |
|
定期 |
百万円 |
22,115 |
8.3 |
||
|
計 |
百万円 |
61,800 |
11.2 |
||
|
運輸雑収 |
百万円 |
3,276 |
13.4 |
||
|
収入合計 |
百万円 |
65,077 |
11.3 |
||
|
乗車効率 |
% |
29.2 |
- |
||
(注) 乗車効率の算出は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)によります。
営業成績
|
業種 |
当連結会計年度(2024.4~2025.3) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
|
百万円 |
% |
|
鉄道事業 |
72,462 |
10.4 |
|
軌道事業 |
1,570 |
2.4 |
|
バス事業 |
25,612 |
7.4 |
|
海運業 |
2,130 |
1.0 |
|
貨物運送業 |
12,455 |
11.2 |
|
車両整備業 |
5,736 |
22.0 |
|
調整額 |
△7,228 |
- |
|
営業収益計 |
112,738 |
10.7 |
<不動産業>
不動産賃貸業におきましては、「グレーターなんばビジョン」の実現に向け、難波千日前のなんさん通り沿いにおいて建設を進めてまいりましたオフィスビル「ANAスカイコネクトなんば」を本年2月に竣工いたしました。また、南海堺東ビルにおいて、来年1月に核テナントが閉店することに伴い、新たな商業施設「HiViE(ヒビエ)堺東」へのリニューアル計画に着手いたしましたほか、昨年6月、トラックターミナルと配送センターの複合的な物流施設となる「(仮称)北大阪トラックターミナルⅡ期棟」の建設工事に着手いたしました。
駅を拠点としたまちづくりにおきましては、なんばエリアでは、歩行者空間の拡大により、まちの回遊性向上をはかることを目的として、大阪市及び地域関係者と協働で進めてまいりました「なんば駅周辺における空間再編推進事業」を本年3月に完了させました。一方、泉北エリアにおいては、当社も参画する「SENBOKUスマートシティコンソーシアム」の活動として、昨年、一昨年に続き、AIオンデマンドバスの実証実験を運行エリアと停留所を拡大のうえ実施し、泉北ニュータウン地域における住民の移動課題の解決と利便性向上に向けた施策の検討を進めました。
不動産事業の深化・拡大に向けまして、大阪市北区大淀中において開発用地を取得するとともに、高師浜駅や住ノ江駅周辺の社有地を活用した賃貸マンション開発を推進いたしました。また、回転型ビジネス強化をはかるため、収益用不動産への投資を加速させました。
このほか、当社所有地に設置の太陽光発電所から自己託送した電力を活用するなど、なんばパークス及びなんばスカイオの全使用電力を再生可能エネルギーに切り替えることにより、保有施設の付加価値向上と持続可能な社会の実現に向けた取組みを進めました。
不動産販売業におきましては、当社グループの分譲マンションブランド「ヴェリテ」シリーズを大阪府下ほかで展開し、その販売に注力した結果、大阪府大阪狭山市の「ヴェリテ金剛ルネ クロスサイト」の第1期及び第2期分譲分は、好評のうちに完売となりました。
以上のような諸施策を進めましたが、不動産販売業における物件販売収入の反動減により、不動産業の営業収益は490億87百万円(前期比7.6%減)となり、営業利益は123億65百万円(前期比16.0%減)となりました。
営業成績
|
業種 |
当連結会計年度(2024.4~2025.3) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
|
百万円 |
% |
|
不動産賃貸業 |
35,116 |
1.2 |
|
不動産販売業 |
14,151 |
△25.2 |
|
調整額 |
△180 |
- |
|
営業収益計 |
49,087 |
△7.6 |
<流通業>
ショッピングセンターの経営におきましては、なんばパークスにおいて、開業以来最大規模となる屋上公園「パークスガーデン」のリニューアル工事を実施し、新たな植栽エリアや滞在空間を設けるとともに、屋上公園全体に照明による演出を施すことで、なんばの夜の新たなランドマークとしての魅力創出に取り組みました。また、昨年4月、展示・多目的ホール機能を有したイベントホール「なんばパークスミュージアム」を開業し、漫画・アニメ・ゲーム等のサブカルチャーやラジオ番組、絵本に関する展覧会など、バラエティに富んだイベントを開催いたしましたほか、5月には、インバウンドのお客さまに「相撲」を観て、体験して、お楽しみいただけるショーホール「THE SUMO HALL 日楽座 OSAKA(ザ・スモウホール ヒラクザ オオサカ)」を誘致するなど、多様なエンターテインメントの発信を通じたなんばエリアの価値向上に取り組みました。
駅ビジネス事業におきましては、スイーツを中心としたテイクアウト商品を週替わりで提供する専門店「plus on(プラスオン)」の展開を進め、本年2月、大阪市北区に当社沿線外では初となる「plus on(プラスオン)ドーチカ店」を出店いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、流通業の営業収益は288億79百万円(前期比7.9%増)となり、営業利益は36億57百万円(前期比37.4%増)となりました。
営業成績
|
業種 |
当連結会計年度(2024.4~2025.3) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
|
百万円 |
% |
|
ショッピングセンターの経営 |
15,591 |
6.4 |
|
駅ビジネス事業 |
14,871 |
8.7 |
|
その他 |
219 |
0.8 |
|
調整額 |
△1,802 |
- |
|
営業収益計 |
28,879 |
7.9 |
<レジャー・サービス業>
旅行業におきましては、海外留学等の教育旅行の新規受注をはじめ、増加する海外からの訪日旅行の取込みに向けた営業活動を強化するとともに、出張手配管理システムの外販に注力いたしました。
また、豊富な観光資源を有する和歌山エリアにおいて、関係者と連携・共創しながら、滞在・周遊型ツーリズムの促進をめざす「和歌山エリア戦略(ラウンドトリップわかやま)」に基づき、昨年7月、和歌山県及び株式会社紀陽銀行との間で包括連携協定を締結いたしました。
ビル管理メンテナンス業におきましては、既存物件において提供するサービスの品質向上に注力するとともに、ホテルや物流施設等の新規管理物件の受託と設備工事の受注に努めました。
eスポーツ事業におきましては、昨年8月、なんばパークスにおいて、当社グループにおけるeスポーツ施設の本店機能を担う「eスタジアムなんば本店」をオープンし、eスポーツを通じた地域課題の解決や、デジタル領域での必要な知識を学ぶ機会の提供に取り組みました。なお、同店は、義務教育課程において学校以外の場所でも出席認定が得られる制度の対象施設に、eスポーツ施設として全国で初めて指定されました。
そのほか、南海ゴルフマネジメント株式会社が経営する大阪ゴルフクラブは、昨年4月、静岡県伊東市にある「川奈ホテルゴルフコース」と提携し、新たな来場者の開拓に努めました。
また、当社は「グレーターなんばビジョン」に基づくエリアマネジメントとして、なんば広場の整備や通天閣の玄関口となる新今宮駅周辺の賑わい創出など、さまざまな施策を実行してまいりましたが、さらなる加速を目的として、昨年12月、通天閣観光株式会社を新たに当社グループに加えました。これにより、同社とのシナジーを最大化させ、当社グループ全体としての企業価値を向上させてまいります。
以上のような諸施策を進めました結果、レジャー・サービス業の営業収益は455億45百万円(前期比5.7%増)となりましたが、売上原価や人件費等の増加により、営業利益は33億44百万円(前期比1.7%減)となりました。
営業成績
|
業種 |
当連結会計年度(2024.4~2025.3) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
|
百万円 |
% |
|
旅行業 |
5,561 |
42.7 |
|
ホテル・旅館業 |
793 |
5.2 |
|
ボートレース施設賃貸業 |
5,080 |
△18.8 |
|
ビル管理メンテナンス業 |
26,903 |
4.4 |
|
葬祭事業 |
3,115 |
2.1 |
|
その他 |
6,103 |
11.5 |
|
調整額 |
△2,012 |
- |
|
営業収益計 |
45,545 |
5.7 |
<建設業>
建設業におきましては、大阪IR関連工事等の民間非住宅工事のほか、大阪府下における配水管布設工事等の公共工事の受注活動に注力いたしました。
建設業の営業収益は、大阪・関西万博関連工事等の完成工事高の増加等により、540億30百万円(前期比20.6%増)となり、営業利益は24億59百万円(前期比37.1%増)となりました。
営業成績
|
業種 |
当連結会計年度(2024.4~2025.3) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
|
百万円 |
% |
|
建設業 |
54,045 |
20.6 |
|
調整額 |
△14 |
- |
|
営業収益計 |
54,030 |
20.6 |
<その他の事業>
その他の事業におきましては、営業収益は36億94百万円(前期比9.7%減)となり、営業利益は88百万円(前期比50.5%減)となりました。
営業成績
|
業種 |
当連結会計年度(2024.4~2025.3) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
|
百万円 |
% |
|
その他 |
3,719 |
△9.9 |
|
調整額 |
△25 |
- |
|
営業収益計 |
3,694 |
△9.7 |
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2億71百万円減少し、421億31百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は438億13百万円(前期は622億23百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益342億36百万円のほか、減価償却費282億40百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は392億99百万円(前期は105億28百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出363億44百万円のほか、投資有価証券の取得による支出76億77百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は47億85百万円(前期は468億32百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出386億29百万円のほか、長期借入れによる収入368億20百万円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の受注及び販売品目につきましては多種多様であり、セグメントごとに金額及び数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績につきましては、「② 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、「NANKAIグループ中期経営計画 2025—2027」における経営指標として、「営業利益」「純有利子負債残高/EBITDA倍率」及び「ROE」をそれぞれ採用しております。
当連結会計年度末における各指標の状況、及び「NANKAIグループ中期経営計画 2025—2027」で掲げる数値目標はそれぞれ以下のとおりであります。
|
経営指標 |
2024年度 (実績) |
2027年度 (目標) |
|
営業利益 |
346億円 |
360億円以上 |
|
純有利子負債残高/EBITDA(※1)倍率 |
6.2倍 |
7倍台 |
|
ROE |
7.5% |
7%程度 |
(※1)営業利益+減価償却費+のれん償却費
なお、当連結会計年度において、「(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況 ②経営成績」に記載の各種施策に取り組んだ結果、「共創140計画」で掲げる各指標の当連結会計年度末における結果は以下のとおりとなりました。
|
経営指標 |
2024年度 (目標) |
2024年度 (実績) |
|
営業利益(※2) |
280億円 |
384億円 |
|
純有利子負債残高/EBITDA(※3)倍率 |
7.5倍以下 |
5.8倍 |
(※2)営業利益+受取配当金
(※3)営業利益+受取配当金+減価償却費
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の方法及び状況
資金調達につきましては、鉄道事業等における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び金融機関からの借入金など、市場の環境や金利の動向等を総合的に勘案したうえで決定しております。
また、資金調達手法の一つとして複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
さらに、当社グループの資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、極力グループ内資金を有効活用する仕組みを構築しております。
このほか、大規模自然災害等が発生した場合の対処として、震災対応型コミットメントライン契約を締結しております。
b.資金需要の動向
「NANKAIグループ中期経営計画 2025-2027」達成に向けた3年間は、財務体質が改善してきたことを踏まえ、基礎的な財務健全性を確保しつつ、収益拡大投資、安全・更新投資を加速することとしております。なお、当連結会計年度における各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
配当の基本方針は、安定配当を基本方針としつつ、連結配当性向を段階的に向上させ、2027年度には30%程度とすることを目標としております(配当政策については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」をご覧下さい。)。なお、内部留保資金は、鉄道事業の安全対策を中心とする設備投資のほか、当社グループの持続的な成長のための投資、財務体質の強化等に充当する考えであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的だと考えられるさまざまな要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
当社グループで重要であると考える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定には、以下のようなものがあります。
a.固定資産の減損損失
当社グループは、管理会計上の区分を基礎に、事業ごと又は物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額は、資産グループの事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
b.退職給付に係る資産・負債
当社グループは、退職給付債務及び費用について、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される仮定に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。)。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって費用化されます。使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実際の結果との差異又は仮定自体の変更が生じた場合には、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.完成工事高及び完成工事原価
工事契約において、一定の期間にわたり充足される履行義務については、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づく収益及び費用を計上しております。計上にあたっては取引価格、工事原価総額及び当連結会計年度末における履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積っております。
取引価格については、当初契約金額及び追加変更契約金額に基づいておりますが、過去に実績のある一部の工事については、自社で合理的な見積りを実施しております。工事原価総額については、図面や仕様書に基づき、詳細な積み上げ計算を行い、状況の変化に応じて見直しを実施しております。
また、当連結会計年度末における履行義務の充足に係る進捗度についてはインプット法を採用し、当連結会計年度末までに発生した工事原価累計額が予想される工事原価総額に占める割合をもって決算日における進捗度とする方法を採用しております。
この見積りが、建設資材及び労務外注の調達遅れや価格高騰、市況の変動等も含め、工事着工後の状況の変化により大きく変動した場合は、当社グループの損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(吸収合併)
当社は、2024年9月30日開催の取締役会において、完全子会社である泉北高速鉄道株式会社を吸収合併(以下、当該吸収合併を「本合併」という。)することを決議するとともに、同日付で吸収合併契約を締結いたしました。
上記契約に基づき、2025年4月1日、本合併の効力が発生いたしました。
(1)本合併の目的
当社は、2014年7月1日に大阪府等から旧大阪府都市開発株式会社の株式譲渡を受けて、同社の名称を泉北高速鉄道株式会社と改めました。グループ化以降、速達性向上や運賃値下げをはじめとする鉄道の利便性向上策を通じた泉北ニュータウン等の沿線活性化に加えて、物流施設の高度化や駅ナカビジネス拡充等の収益力向上にも取り組んでまいりましたが、グループとしての更なるシナジーの発現を目的に、2022年4月1日、当社は泉北高速鉄道株式会社のすべての株式を取得し、完全子会社化いたしました。
一方、沿線人口の減少やコロナ禍を通じた生活様式の変化等により、鉄道事業の構造的な需要の減少は歯止めがかからない状況にあり、また、将来にわたって事業を担う人財の確保が困難となることは確実視されています。そうした中で当社が策定した“2050年の企業像”の実現に向けて、鉄道事業と不動産賃貸事業という同種の事業を営む両社の経営を統合し、グループ経営の効率改善を通じてサステナブルな公共交通の経営の実現や、更に競争力のある流通センターの確立に向けて経営資源を投入していく事業体制を確立していくことが最善の方策であるとの判断に至りました。鉄道が利用しやすい運賃設定等を通じて、泉北高速沿線の堺・泉北エリアにおける「暮らす・働く・訪れる」価値を高め、南海電鉄グループのまちづくりを深化してまいります。
(2)本合併の日程
合併契約承認取締役会 2024年9月30日(月)
合併契約締結日 2024年9月30日(月)
合併効力発生日 2025年4月1日(火)
(3)本合併の方法
当社を存続会社とする吸収合併方式とし、泉北高速鉄道株式会社は解散いたしました。
(4)本合併に際して発行する株式及び割当て
当社は、泉北高速鉄道株式会社の発行済株式の全部を所有していたため、本合併に際して株式その他の金銭等の交付はありません。
(5)引継資産・負債の状況
当社は、効力発生日における泉北高速鉄道株式会社のすべての資産及び負債並びに権利義務の一切を承継いたしました。
(6)吸収合併存続会社となる会社の概要
商号 南海電気鉄道株式会社(当社)
資本金 72,983百万円
事業内容 鉄道事業、不動産賃貸業、不動産販売業、ショッピングセンターの経営等
(吸収分割)
当社(2026年4月1日付で「株式会社NANKAI」に商号変更予定)は、2025年3月31日開催の取締役会において、2026年4月1日(予定)を効力発生日として、当社の鉄道事業(泉北高速鉄道株式会社(以下、「泉北」という。)との吸収合併契約に基づく吸収合併(2025年4月1日効力発生)により当社が泉北から承継した鉄道事業を含む。)を会社分割により、当社の完全子会社である南海電気鉄道分割準備株式会社(以下、「準備会社」という。2026年4月1日付で「南海電気鉄道株式会社」に商号変更予定)に承継させることを決議し、準備会社との間で吸収分割契約を締結いたしました(以下、当該会社分割を「本件分割」という。)。
なお、本件分割及び商号変更に伴う定款の一部変更については、2025年6月18日開催の当社定時株主総会決議による承認、及び関係法令に基づき要求される監督官庁の許認可が得られることを条件として実施いたします。
(1)本件分割の目的
当社グループは、大阪・なんばを拠点とし、南大阪・和歌山エリアを中心に、鉄道やバス等の公共交通サービスの提供から、オフィス・住宅の開発、ショッピングセンターの経営まで多彩な事業を展開する「総合生活企業」として、地域の発展を支え、地域とともに成長してまいりました。近年では、将来にわたってステークホルダーの皆さまからの信頼と期待に応え続けていくため、当社グループのありたき姿として“2050年の企業像”を策定し、その実現に向け、鉄道や不動産といった既存コア事業の強化と、鉄道・不動産に続く第3の事業の柱の創造に取り組んでおります。
鉄道事業においては、これまで築き上げてきた安全・安心な輸送サービスを将来にわたりサステナブルに提供し続けていくことを、また、不動産事業においては、当社グループの今後の成長を牽引する原動力としての飛躍的な成長を、それぞれめざしているところでありますが、これらの事業戦略をよりスピード感をもって推進していくためには、鉄道事業の分社化によって、それぞれの事業特性に応じた実行体制を持つ強靭な組織に改革していくことが必要との判断に至ったものであります。
今回の分社化を通じて、鉄道事業は経営の機動性強化と意思決定の迅速化をはかり、働き方改革やテクノロジーの活用を加速させるとともに、サステナブル投資の着実な実行によって、持続的な成長の実現に取り組んでまいります。また、本件分割後の当社は、不動産事業の業容拡大・競争力強化と第3の事業の柱の創造に注力するとともに、変化し続ける社会課題の解決を通じて地域の価値向上に資する「まちづくり」にグループの総力を結集して取り組み、ひと・まち・暮らしに‘なんかいいね’があふれる未来の実現に貢献し続けてまいります。
(2)本件分割の方法
当社を分割会社とし、当社の完全子会社である準備会社を承継会社とする吸収分割です。
(3)本件分割の日程
分割契約承認取締役会 2025年3月31日(月)
分割契約締結 2025年3月31日(月)
分割承認株主総会基準日 2025年3月31日(月)
分割承認株主総会 2025年6月18日(水)(予定)
分割効力発生日 2026年4月1日(水)(予定)
(4)承継会社が承継する資産・負債の状況
承継会社が当社から承継する権利義務は、効力発生日において当社が鉄道事業に関して有する権利義務として、本件分割に係る吸収分割契約において定めたものといたします。なお、承継会社が当社から承継する債務につきましては、重畳的債務引受の方法によるものといたします。
(5)本件分割に係る割当ての内容
承継会社はその株式200株を当社に対し割当交付いたします。
(6)本件分割に係る割当ての算定根拠
当社の完全子会社を承継会社とした吸収分割であることから、第三者機関による算定は実施しておりません。
(7)承継会社の概要
|
名称 |
南海電気鉄道分割準備株式会社 (2026年4月1日付で「南海電気鉄道株式会社」に商号変更予定) |
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所在地 |
大阪市中央区難波五丁目1番60号 |
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代表者の役職・氏名 |
取締役社長 大塚 貴裕 |
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事業内容 |
鉄道事業の開業準備 |
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資本金 |
10百万円 |
(財務制限条項が付されたシンジケートローン契約)
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契約締結日 |
トランシェ |
契約締結先 |
借入金額 (百万円) |
借入期間 |
財務制限条項 |
担保・保証 |
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2015年2月13日 |
トランシェB |
・地方銀行 |
10,500 |
2015年2月26日 から 2027年2月26日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
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2015年3月30日 |
トランシェA |
・都市銀行 ・地方銀行 |
10,000 |
2015年6月29日 から 2028年5月31日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
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トランシェB |
・都市銀行 ・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
5,000 |
2015年8月28日 から 2025年8月29日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
|
2018年9月26日 |
トランシェA |
・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
7,000 |
2018年9月28日 から 2028年9月29日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
|
トランシェB |
・都市銀行 ・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
3,000 |
2018年9月28日 から 2028年9月29日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
|
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2019年2月26日 |
トランシェA |
・地方銀行 |
4,000 |
2019年2月28日 から 2028年2月29日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
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トランシェB |
・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
8,000 |
2019年2月28日 から 2031年2月28日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
|
|
2020年5月27日 |
トランシェA |
・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
10,500 |
2020年5月29日 から 2029年5月31日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
|
トランシェB |
・地方銀行 |
3,500 |
2020年5月29日 から 2032年5月31日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
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トランシェC |
・都市銀行 ・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
9,500 |
2020年5月29日 から 2030年5月31日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
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2022年6月28日 |
- |
・地方銀行 |
6,000 |
2022年6月30日 から 2034年6月30日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
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2024年12月20日 |
- |
・都市銀行 ・地方銀行 ・協同組織 金融機関 |
17,000 |
2024年12月25日 から 2034年12月25日 |
あり(注) |
無担保 無保証 |
(注)当連結会計年度末の借入金のうち、当社のシンジケートローン契約には以下の財務制限条項が付されており、その特約要件は次のとおりとなっております。
借入人は、借入人の各年度の決算期の末日における借入人の連結の貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日における借入人の連結の貸借対照表における純資産の部の金額の75%の金額以上にそれぞれ維持することを確約する。
特記すべき事項はありません。