文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
当社グループは、「『出逢いをつくり、期待をはこぶ』事業を通して、“あんしん”と“かいてき”と“ときめき”を提供しつづけ、地域とともに歩み、ともに発展します。」という「にしてつグループの企業理念」に基づき、鉄道・バスの運輸業を軸に、地域に密着した多様な事業を展開しています。
当社グループは、1908年の創業以来、様々な時代の変化を乗り越えながら今日に至りますが、今後の長期的な経営環境につきましては、国内人口減少の一方で新興国を中心とした世界人口増加、テクノロジーの急激な進歩、グローバル化に伴う社会の仕組みや顧客ニーズの変化、脱炭素社会の進展等、これまで以上に変化のスピードが急激で、不確実性の高い時代が続くものと認識しています。
このような環境下においてもサステナブルな成長を実現するため、これまでの事業モデルの延長ではなく、想定した未来像から遡るバックキャストで、当社グループのありたい姿を描き、その達成に向けた長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」を2022年11月に公表いたしました。
本長期ビジョンでは、ありたい姿を実現するための基本スタンスを「濃(こま)やかに、共に、創り支える ~Grow in harmony with you~」とし、「出逢いをつくり、期待をはこぶ」事業の進化と新領域への挑戦を両輪としたビジネスモデルの変革、従業員一人ひとりが自律的な成長やチャレンジを実現しながらいきいきと働き、最大のパフォーマンスを発揮できる環境の整備や、事業の効率性とサステナビリティを意識したポートフォリオの構築等を掲げております。
※長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」の詳細は当社グループホームページでご確認ください。
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/ir/management/vison.html
わが国においては、より一層の生産年齢人口の減少、デジタル化の加速、脱炭素社会の進展、アジアを中心とした新興国の経済成長と市場拡大等、経営環境が絶えず変化していくことが想定されます。
また、各国の通商政策やウクライナ情勢等、国際情勢の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性は極めて高く、当社グループにおいても金融・為替市場やわが国経済・物価への影響を注視しています。
さらに、当社グループは、福岡都心部における地権者共働の開発プロジェクト等の推進や事業基盤となる人財の確保、デジタル技術活用等による生産性の向上等、様々な課題に直面しています。
当社グループでは、2023年3月に、「にしてつグループまち夢ビジョン2035」の実現に向けた第1ステップとして、第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定いたしました。本計画では、テーマを「サステナブルな成長への挑戦~Challenge for sustainable growth~」とし、5つの重点戦略に基づき、将来に向けた持続可能な公共交通事業の構築、福ビル街区建替プロジェクトの完遂や、ノウハウを活用した固定資産に頼らない事業モデルの基盤構築、新領域事業への挑戦、多様な人財を確保するための待遇の見直し、サステナブルな成長を支える人財力強化等に向けて取り組みを進めてまいります。
さらに、2025年3月に、第16次中期経営計画の最終年度目標の達成に向け、必要な施策の追加・修正を反映した2025年度計画を策定いたしました。本計画では、第16次中期経営計画に掲げた基本方針・重点戦略のもと、今春に開業した「ONE FUKUOKA BLDG.」をはじめとする福岡都心部の再開発、福岡空港の増設滑走路供用開始、九州における半導体関連産業の集積等、福岡・九州における事業環境の変化を適切に捉え、企業価値を高める成長戦略を推進してまいります。

〈2025年度計画〉
「にしてつグループまち夢ビジョン2035」に掲げる、モビリティサービス、「リアルな場」提供サービス、BtoC物販サービス、BtoB物流サービスおよび新領域事業への挑戦、の5つの事業領域、人財・組織戦略および財務・資本戦略における重点戦略に即した主な取り組みは以下のとおりです。

■収益改善ならびに運営コストの削減
・運賃改定に向けた検討
・完全キャッシュレスバスの実証運行を踏まえた本格導入
・駅遠隔監視制御システム導入に向けた準備
■持続可能な組織体制・事業運営体制の構築
・西鉄バス宗像㈱・西鉄バス二日市㈱の西日本鉄道㈱への吸収合併(2025年10月予定)
・天神大牟田線・貝塚線における朝ラッシュ等に対応したダイヤ設定
■お客さまの利用シーンにあわせた濃やかでシームレスな移動サービスの提供
・九州MaaSの活動推進による移動の利便性向上・活性化
■国内外の観光・MICE需要の獲得・受入環境の整備
・インバウンド増加に向けた対応
福岡空港への高速バス路線新規乗り入れ
鉄道沿線の観光需要取込み施策の実施(企画乗車券の造成・PR強化等)
■新技術を活用したサービス・事業への挑戦
・自動運転バス実証実験への積極的な参画
・nimocaのチャージ等、窓口機能のアプリ化検討
■ノウハウ等を活用した新たな収入源の獲得拡大・新たなスキームづくり
・AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の外販強化
・レトロフィット電気バスの外販強化・事業化検討
■2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
・レトロフィット電気バスの導入拡大(約30台)
・水素バスの研究
■安全性確保に向けた取り組み
・事故防止に向けた取り組み
VRおよびアイマークレコーダー(視線測定器)を活用した安全確認手順教育の推進
・安全マネジメントの取り組み継続
鉄道総合訓練、災害復旧訓練およびバスジャック対応訓練の実施

■「ONE FUKUOKA BLDG.」
・開発コンセプト「創造交差点」の実現
・集客施策の展開
■福岡都心部における地権者共働の開発プロジェクト等の推進
・(仮称)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト
・(仮称)天神一丁目15・16番街区プロジェクト
・福岡家庭裁判所跡地における複合開発(2030年開業目標)
・九州大学箱崎キャンパス跡地地区土地利用事業
■沿線開発、地域拠点を中心としたまちづくり
・ソラリアプラザ リニューアル(2025年2月~順次オープン)
・連続立体交差事業による周辺開発・店舗開発
白木原駅商業施設 開業(2025年12月予定)
春日原駅商業施設「レイリア春日原」 開業(2026年1月予定)
高宮駅改札外コンコース リニューアル(2026年春オープン予定)
沿線高架下の開発計画の推進
・柳川駅前にぎわい交流施設の企画・整備
・地域活性化を目指した他社との協業組織(「Good Local 九州」)による施策推進
■国内の事業・業容の拡大
・分譲マンション等開発事業の拡大(岐阜、京都等)
・新規ホテル出店計画の着実な推進
ソラリア西鉄ホテル大阪本町(仮称)の開業準備(2026年度冬開業予定)
ソラリア西鉄ホテル福岡エアポート(仮称)の開業準備(2027年夏開業予定)
・賃貸用物流不動産事業の拡大
■不動産ソリューション事業の強化
・次期私募ファンドおよび私募REIT組成に向けた準備
・安定した開発利益やプロパティマネジメント・ビルマネジメント受託機会の獲得
■海外でのまちづくりに向けた事業の拡大
・パートナー連携による既進出国での着実な事業推進(東南アジア・アメリカ)
・技術提案・支援による提供商品の品質向上
■2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
・既存施設への再生可能エネルギーの採用
・環境に配慮した開発の推進

■収益性の向上・改善
・物流の効率化による配送コスト低減
・キャッシュレス決済比率向上による生産性向上
・惣菜製造拠点集約に向けた検討
■新規店舗出店・リニューアルの実施
・スーパーマーケット レガネット天神 リニューアル(2025年6月)
・スーパーマーケット レガネット春日原(仮称)開業(2026年1月予定)
・飲食店ブランドの海外展開
・雑貨館インキューブ させぼ五番街店 リニューアル(2025年9月予定)
■デジタルを活用した事業拡大
・新アプリ「ユナイトアプリ」のリリース
・プラットフォーマーとの連携や移動販売による店舗外売上の拡大

■DX推進による業務効率化および営業力強化
・顧客ポータルサイトの活用による生産性の向上
・貿易情報プラットフォームとの連携
■海外ネットワークの拡大
・支店開設、各駐在員事務所の現地法人への格上げの検討・推進
2025年度末海外目標拠点数:28カ国 地域120拠点
(開設:トルコ イスタンブール、メキシコ モンテレ)
■重点品目の選択と集中
・航空宇宙、自動車、半導体、食品、アパレルにおける航空輸出入の取扱重量の拡大
■フォワーディング事業の拡大(スケールメリットの獲得)
・物量の拡大を目指した機動的な入札対応の推進
■九州での事業強化
・半導体産業の集積が進む熊本地区での事業拡大
・食品ビジネスの拡販
■2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
・グリーンロジスティクスへの取り組み
モーダルシフト[鉄道輸送活用]の推進
SAF(Sustainable Aviation Fuel)プログラムの利用促進
※SAF:主にバイオマス由来の原料から製造された航空燃料のことであり、CO2排出量を削減可能

■エネルギー領域における事業拡大
・再生可能エネルギー電源開発事業の拡大
沿線自治体との連携
・系統用蓄電池事業の事業拡大の検討
■新たな事業・サービスの創出
・新規事業創出プログラム「X-Dream(クロスドリーム)」提案内容の実証実験および事業化
・オープンイノベーションプログラム「Join up with Nishitetsu」におけるスタートアップ企業との連携

■事業拡大を見据えた多様な人財の確保
・鉄道・バス乗務員をはじめとした全従業員の待遇改善(基本給・初任給の引き上げ、各種手当の改定等)
・戦略実現に必要な人財の計画的な創出
人財ポートフォリオ、人財定義の作成
次世代経営者候補の選抜・育成方法検討
・職種や専門性に応じた人事賃金制度の検討
・定年延長の実施(現行:60歳 改定後:65歳)
・従業員の自己成長・チャレンジを実現する仕組みづくり
キャリア研修の拡大
資格取得支援施策の拡充
キャリア開発手当(自己啓発支援手当)の導入
1on1ミーティングの強化
・デジタル人財の育成(生成AI利活用による生産性向上に資する研修の実施等)
・にしてつグループまち夢ビジョン2035の実現に向けた未来洞察志向の浸透・アップデート
にしてつ未来創造プロジェクト「NIT」(Nishitetsu Innovation Team)の継続実施
■多様な価値観、ライフステージに寄り添った施策の拡充
・男性育児休業取得率向上に向けた施策の推進
・企業価値向上に向けた健康経営推進の取り組み(グループ推進体制の整備、推進計画の実施等)
・本社におけるABW(Activity Based Working)導入による働きやすい環境の構築
※ABW:その時々の仕事の内容に合わせて働く場所を自由に選択する働き方

■資本効率を意識した経営の実践
・事業ポートフォリオマネジメントの推進
・ROEの向上を意識した規律あるBSマネジメント・CFマネジメントの実施
■投資家・株主への情報開示の充実
・経営トップとの対話機会の拡充
・個人投資家向け会社説明会の強化
■株主への利益還元
・政策保有株式の保有目的に応じた保有規模見直し
・機動的な資本政策の遂行および資本効率向上を目的とした自己株式の取得
・安定的・継続的な配当の実施
※ 第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)、2024年度計画および2025年度計画の詳細は、
当社グループホームページでご確認ください。
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/ir/management/managementplan.html
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のため、収益力を高めると共に、経営の効率化を図ってまいります。達成状況を判断するための客観的な指標として、収益力の成長性を示す「連結事業利益」、「連結EBITDA」、財務健全性を示す「NET有利子負債/EBITDA倍率」、資産効率を示す「ROA」、資本効率を示す「ROE」を採用しております。
第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)における経営数値目標(連結)は次のとおりです。
(注) 1 連結事業利益=連結営業利益+事業投資に伴う受取配当金・持分法投資損益等
2 連結EBITDA=連結事業利益+減価償却費+のれん償却費(営業費)
3 総資産は鉄道の受託工事前受金相当額を除いて算出しています。
当社グループにとってサステナブル経営とは、企業理念の実践です。地域社会、お客さま、従業員等多くのステークホルダーの期待に応え続けていくことであり、グループ全従業員の行動規範(準則)を「にしてつグループコンプライアンス方針」に定め、その他の重要なテーマについても、それぞれ方針を定めて事業活動の中で実践しています。
サステナブル経営を推進するために、サステナビリティに関する重要な方針・方向性を協議し、社長執行役員の意思決定を補佐する常務会、ESG推進会議や各委員会を設置するなど推進体制を構築しています。
ESG推進会議は、社長執行役員が議長となり、全執行役員が参加して毎月開催しており、各委員会や各部門・グループ各社の担当執行役員からサステナブル経営に関する活動報告を受け、実施状況を確認し、対応策の検討等を指示しています。
取締役会は、ESG推進会議で協議した重要な事項について適宜報告を受け、適切に監督を行っています。
<サステナブル経営推進体制図>

<サステナブル経営における重要課題>
当社グループは、企業理念のもと、社会の役に立ち、社会から信頼される企業であり続けるよう地域の持続的な発展に貢献してきました。
今後、当社グループが、社会課題に取り組み、地域とともに持続的に成長・発展するために、社会的に貢献度が高く、企業価値に大きく影響を与える重要課題について、ESG推進会議等での議論を経て、以下のとおり特定しました。重要課題に取り組むことで、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献していきたいと考えています。

当社グループは、サステナビリティ課題を含め、各事業においてリスク管理計画を策定しリスク回避を行うほか、当社が資産・資金を保有・調整することで、グループ全体のリスクのコントロールに努めています。(当社が認識している主なリスクについては、「
サステナビリティに関連するリスクについては、ESG推進会議において報告を受け、各施策の実施状況の確認や対応策の検討等を指示するなど、評価・管理を行うとともに、特に重要なリスクについては、社長執行役員または社長執行役員が指名する執行役員が統括する部門横断組織を設置して対応しています。
「(1) サステナビリティ全般に関する考え方および取り組み」に記載のとおりです。重要課題の一つである気候変動問題はESG推進会議の重要議題の一つと位置付けています。ESG推進会議では、社長執行役員が議長となり、気候変動問題解決に向けた自主的目標の設定や環境負荷低減活動を取りまとめた「環境負荷低減計画」の進捗状況を確認し、対応策の検討等を指示しています。
当社は、2022年3月にTCFD提言へ賛同し、鉄道事業およびバス事業の分析結果を順次開示してまいりましたが、新たに賃貸事業、住宅事業、ストア事業、国際物流事業およびホテル事業におけるTCFD提言に基づくシナリオ分析を実施し、当社グループのCO2排出量の約90%を占める部門・グループ会社においてシナリオ分析を終えました。本報告書では、当社グループ全体に係る共通項目を記載しています。
シナリオ分析実施状況
気候変動がもたらすリスクは、脱炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響に伴うリスク(物理的リスク)の二つの側面があり、また、当社グループにとって成長の「機会」としての側面もあります。
これらリスクと機会の影響度を定量評価できるものについては定量的に評価し、発生可能性と影響度の二軸の視点から重要度を評価して対策の必要性を判断する材料としています。
なお、評価の時間軸については、短期(中期経営計画と同じ3年程度)、中期(日本政府の目標と同じ2030年)、長期(脱炭素目標の設定年である2050年)を設定して評価を実施しました。
にしてつグループ共通の移行リスク
にしてつグループ共通の物理的リスク
にしてつグループ共通の機会
1.5℃シナリオにおける世界観(2050年)

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等の専門機関が描く産業革命前と比較した世界の平均気温の上昇幅を示すシナリオの中から、パリ協定を踏まえたシステム移行により1.5℃未満に抑えられる1.5℃の外部シナリオ(1.5℃シナリオ)と、新たな政策・制度が導入されずに21世紀末には4.0℃前後上昇する4℃の外部シナリオ(4℃シナリオ)に基づき、中期(2030年)を目安に実施いたしました。
シナリオ分析に使用した主なパラメータは以下の通りです。
※為替レートは、140円/ドルで算出しています。
にしてつグループ共通のシナリオ分析
シナリオ分析の結果から、当社グループへの共通事項として、移行リスクでは、炭素税の導入による大幅なコストの増加が懸念され、省エネ対策や環境配慮型車両への更新を継続的に実施しているものの、再エネ導入拡大に伴う電力調達コストが増加することが判明しました。また、物理的リスクでは、降水パターンの変化に伴う豪雨等による施設や車両の被害の増加により損害保険料が上昇することが判明しました。1.5℃シナリオと4℃シナリオを比較すると、1.5℃シナリオにおける炭素税の影響が非常に大きいことから、炭素税の影響が最大のリスクであり、脱炭素社会の実現に向け最優先で対応する必要があることが判明しました。
当社グループが社会から信頼され長期にわたり発展し続ける企業グループであり続け、誰ひとり取り残さない持続可能な社会が実現出来るよう、脱炭素社会を目指し、カーボンニュートラルへの取り組みに関する情報を積極的に開示し、1.5℃の世界の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
にしてつグループ共通の財務影響評価(1年当たりの予想コストの増減 2030年)
(注)「+」は事業及び財務への正の影響、「▲」は負の影響を示し、符号の数は影響度の大きさを表現しています。
当社グループでは、社長執行役員を議長とするESG推進会議において、各部門・グループ各社が作成したCO2排出量の削減目標を含む「環境負荷低減計画」をベースに、グループ全体計画を策定しています。当社は、計画の進捗状況をモニタリングし、リスクと機会に対する優先順位も考慮しながら、目標達成に向け、各部門・グループ各社に計画内容の修正等を指示するなど、リスクマネジメントのPDCAサイクルを実施しています。
なお、当社グループでは、GHGプロトコルに基づく Scope1、Scope2のCO2排出量を対象として削減目標を設定しています。Scope3については、グループ全体での把握を進めており、今後開示に向けた準備を進めてまいります。
Scope1 : 事業者自らによる燃料を使用して直接排出する量
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気を使用して間接的に排出する量
Scope3 : Scope1、Scope2以外の事業者の活動に関連して排出する量
当社グループは、2022年11月に2035年度を目標年次とする長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」を策定し、ロードマップである「カーボンニュートラル(2050年)を目指して」を明示しております。また、第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)における削減目標をロードマップに合わせ設定しております。
CO2削減目標を
・2025年度 2013年度比38%削減(第16次中期経営計画)
・2035年度 2013年度比50%削減(長期ビジョン)
とし、国の目標である「CO2排出量2030年度 2013年度比46%削減」を達成し、2050年カーボンニュートラルをグループ全体で目指します。なお、GX2040ビジョンで示された国の新たな目標に対する当社グループの削減目標については、次期中期経営計画で検討します。
<カーボンニュートラル(2050年)を目指して>
長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」より

※ TCFDに基づく情報開示に関する部門別の詳細は、当社グループホームページでご確認ください。
② 人的資本・多様性に関する取り組み
「(1)サステナビリティ全般に関する考え方および取り組み」に記載のとおりです。人的資本経営については、経営戦略と人財戦略との連動を強化するため、経営戦略を担当する部門と人事部門とが協働して戦略を立案する「人的資本経営プロジェクト」を設置し、その進捗状況等を、代表取締役、各部門の執行役員等で構成される常務会において確認しています。なお、健康経営を推進するにあたっては、社長執行役員を最高責任者として取り組んでおり、具体的な方針等については、常務会で審議したうえで、社長執行役員が決定しています。また、健康経営の推進にあたっては、産業医や協会けんぽ等とも連携を図り、実効性のある体制としています。
当社グループは、従業員の多様性を尊重し、働く喜びや生きがいが実感できる「人を活かす経営」を目指しています。サステナブルな企業価値向上のためには、「従業員が幸福感を感じ、自律的に学び挑戦しつづける姿」と「事業戦略の実現による企業価値向上」、いわゆる「エンゲージメントの高い組織づくり」の実現が重要であると考え、人的資本経営に取り組んでいます。長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」において、人財・組織戦略について3つのポイントを定めており、これらのポイントを実現する各種取り組みを着実に推進していきます。

当社グループにおける、人財育成方針および社内環境整備に関する方針は、次のとおりです。
[人財育成方針]
当社グループでは、「西鉄グループで働く従業員のありたい姿」を「西鉄グループの未来を自ら創る人財」として、その人財に求められる行動を定め、その人財の確保や育成に向けた取り組みを行っています。
また、従業員が自律的に学び続ける姿を実現するため、制度の改革や各種人財育成の取り組みを行っています。
西鉄グループで働く従業員のありたい姿
[社内環境整備方針]
当社グループでは、サステナブルな成長を実現するため、多様な経験や価値観を尊重し、それらを積極的に活かしていくこととしています。多様な人財を持続的に確保するとともに、従業員の働きがい・満足度を向上させて、一人ひとりがいきいきと働き、最大のパフォーマンスを発揮できる環境の整備や、風土の醸成に取り組んでまいります。
当社では、具体的には以下の取り組みを行っています。
[人財育成]
階層別研修やグローバル人財育成施策のほか、自律的に学び挑戦することを促進するための施策として、自己啓発支援(eラーニング・社外研修派遣等)や資格取得支援、公募制でのイントレプレナーの募集、留学・通学休職制度等を導入しており、今後も拡充してまいります。
[社内環境整備]
・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
女性活躍推進や経験者採用の強化に取り組むほか、中核人財の登用においても、性別や国籍、新卒または中途等の別なく、個々の能力に応じて行い、多様性の確保に努めています。また、フレックスタイム制度や法定を上回る短時間勤務制度、育児・介護を目的とした休業・休暇制度等の導入、育児休業取得率向上に向けた施策の実施、年次有給休暇の取得促進等により、多様な働き方を支援しています。そのほか、多様な価値観、ライフステージに寄り添った施策の拡充に努めてまいります。
・従業員の働きがい・満足度の向上、パフォーマンスを最大化させる取り組み
上記「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」に記載の取り組みのほか、賃金を含めた労働諸条件の見直しや1on1ミーティング力強化のための管理職向け研修等を実施しています。また、従業員のスキル・経験・保有資格・キャリア希望等の情報を可視化する仕組みを導入し、人財の最適配置や育成に活用してまいります。
・健康経営推進計画の実施
従業員がいきいきと働くためには、健康が最も重要であるとの考えのもと、「西鉄グループ健康宣言」の制定や体制の整備を行い、それにもとづき健康経営を推進しています。健康診断後の再検査受診の徹底や禁煙への動機づけ、ストレス関連疾病の発生予防・早期発見・治療、運動機会の増進、飲酒習慣および食生活の改善等に取り組んでいます。
(指標および目標)
当社グループでは、当社およびグループ各社の事業特性等に応じてそれぞれ具体的な取り組みをすすめているため、指標および目標については連結会社での記載が困難であります。このため、指標に関する目標および実績は当社のものを記載しています。
(注)男性労働者の育児休業等取得率について、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における「育児休業等及び育児目的休暇」の取得割合にて算出しています。
当社グループは「第1 企業の概況」に記載のとおり、多岐にわたる事業を営んでおり、各事業においてリスク管理計画を策定しリスク回避を行うほか、当社が資産・資金を保有・調整することで、グループ全体のリスクのコントロールに努めていますが、当社の営む事業の内容や経営方針等に照らし、当社の財政状態および経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えるリスクとしては、主として以下のようなものがあります。
なお、これらのリスク、「1 経営方針、経営環境および対処すべき課題等」および「4 経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析」のうち将来に関する記述は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。
また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきまして、合理的に予見することが困難であるものについては記載していません。
地震や大雨等の自然災害が発生し、営業活動に必要な駅施設や車両、商業ビル等の施設が毀損した場合や電力・燃料・建設資材・商品等の調達が困難となった場合、営業活動の停止に伴う減収や復旧のための多額の費用の支出、調達価格の高騰等により、当社グループの業績に深刻な影響を与える可能性があります。
また、当社グループの事業エリアにおいて、新型ウイルス等の感染症が発生・流行した場合、個人消費者の出控えに伴う減収、勤務する従業員の確保が困難となることによる営業活動の縮小等のほか、感染症拡大を契機とした消費行動の変化に伴う既存事業の不振等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは多角的な事業を展開するとともに、北部九州圏域以外での事業を拡大することでグループ全体の事業継続性を確保するよう努めており、各事業においても安全性の確保を最優先とし、危機管理体制や事業継続計画の継続的な改善を行うことで、社会的使命の実現と業績への影響の最小化を図っています。
また、安定的かつ継続的な調達を行うため、調達先との良好な取引関係の維持発展に努めるとともに、日頃から調達先の分散化や計画的な発注、十分な価格交渉を行うことで、影響の最小化を図っています。
海外における政治経済情勢の大幅な変動、テロや紛争の発生、各国の法的規制の変更等によって、海外における事業活動の縮小・停止が生じた場合、各事業の営業収益の減少等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、経営会議や常務会等の会議体において、適宜、事業の状況をモニタリングし、社会情勢の変動等によるリスクを踏まえたうえで戦略等の見直しを行うとともに、各事業間の連携や専門家の活用により、法的規制等に適切に対応しています。
また、海外投資にはそのリスクの大きさを反映し制限を設け、その範囲内で実施することで、当社グループ全体の経営成績等に甚大な影響を及ぼすことがないようにしています。
外交関係等の国際情勢の変化によって、訪日旅行者が減少した場合、各事業の営業収益の減少等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
また、各国の通商政策、ウクライナや中東情勢等の影響等により電力・燃料・建設資材・商品等の調達が困難となる場合や調達価格が高騰した場合等には、事業規模の縮小や費用の増加等により、業績に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、経営会議や常務会等の会議体において、適宜、事業の状況をモニタリングし、社会情勢の変動等によるリスクを踏まえたうえで戦略等の見直しを行っています。
また、燃料や建設資材等の調達については、安定的かつ継続的にこれを行うため、調達先との良好な取引関係の維持発展に努めるとともに、調達先の分散化や計画的な発注、十分な価格交渉を行うことで、影響の最小化を図っています。
当社グループが大規模な事故や火災を発生させた場合、死傷した利用者等の補償等の対応だけでなく、事業の安全性に対する利用者の信頼や当社グループ全体に対する社会的評価が失墜し営業活動に支障をきたすなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
また、各種コンプライアンス違反(雇用問題、ハラスメント、人権侵害等)、独占禁止法等の法令違反、個人情報の漏洩等の不祥事が発生した場合、罰則金支払、損害賠償請求のほか、信用失墜による売上減少等により業績に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、安全性の確保を最優先とし、特に重要なものについて、代表取締役である執行役員が統括する部門横断組織を設置し、グループ横断的に対応する等、各事業において事故の絶滅のための取り組みを実施するとともに、保安施設や防災設備の整備・管理に努めることで、事故等の防止に取り組んでいます。
また、法令・倫理遵守等、従業員が従うべき行動準則となる「にしてつグループコンプライアンス方針」を制定し、役員が率先してこれを遵守するとともに、具体的行動指針等を示したコンプライアンスマニュアルを定め配布するなど、コンプライアンス体制の整備、充実に努めています。
なお、各種損害保険に加入し、業績に与える影響を低減していますが、すべての損害や賠償費用の支出に対応できるものではありません。
鉄道事業およびバス事業において運行本数や運賃を変更しようとする際には、原則として、国土交通大臣の認可や事前届け出が必要であるため、社会情勢が変動し当社グループの事業環境に急激な変化が生じた場合、需要との乖離をただちに修正することができず、これらの事業の利益率が低下するなど、業績に大きな影響を与える可能性があります。
また、法的規制が強化された場合や新設された場合、あるいは国や地方公共団体の各種政策が変更された場合、その対応のための費用の増加、事業戦略の見直しによる収支の変動等により、業績に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、社会情勢の変化を踏まえ、国や地方公共団体とも連携しながら、事業戦略の策定や事業運営にあたるとともに、監督官庁の指導のもと法的規制等に適切に対応するよう努めています。
また、経済情勢の変化や規制等の変更に伴う顧客需要の変化を適切に捉え、魅力ある商品・サービスを提供するよう努めています。
金融情勢の変動等により金利が大幅に上昇した場合の支払利息の増加や、為替相場に大幅な変動が生じた場合の為替差損等の発生、また、株価の大幅な変動等により投資有価証券について時価の著しい下落等が生じた場合の評価損の計上等により、業績に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら財務健全性の維持に努めるとともに、海外での事業展開にあたっては、投資判断基準を設け、経営会議や常務会等の会議体において為替変動等によるリスクを踏まえたうえで実施の可否を判断しています。
また、投資有価証券については、毎年、保有の適否について経営への影響を分析したうえで個別銘柄毎にその保有目的や資本コストを考慮した便益とリスク、将来の見通し等を踏まえて総合的に検証し確認を行っており、評価損の計上を最小化するよう努めています。
①国内人口の減少、少子高齢化
当社グループの事業エリアの人口減少傾向に歯止めがかからない場合や、高齢者の利便性に資する移動手段、商品・サービス等を提供できない場合、当社グループの鉄道事業およびバス事業の輸送人員の減少による営業収益の継続的な減少や各事業の縮小、廃止を招くなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
また、人口減少や少子高齢化の進行により、当社グループが想定する人員体制を必要な時期に確保できない場合には、各事業の規模縮小等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、沿線各エリアの「まちづくり構想」の策定・実現への取り組みや交通ネットワークの強化・再整備等により住みたくなる沿線づくりを進めるとともに、住宅事業やホテル事業においてアジアや首都圏等の域外での事業拡大を進めています。
また、MaaS等持続可能な公共交通のあり方の研究やオンデマンドバス・自動運転の実証実験等、ICTを活用した商品・サービスの提供に取り組むとともに、シニアマンション「サンカルナ」やサービス付き高齢者向け住宅「カルナス」の事業展開等、シニアマーケットを捉えた収益力強化に取り組んでいます。
人員体制については、積極的な採用活動のほか、有資格者確保のためのバス運転士の教習所の設置等により、必要な人員の確保に努めるとともに、AIを活用した自動運転技術の実験を進めるなど、人手不足の状況下においても事業規模の維持を可能とするための対策に取り組んでいます。
当社グループの既存事業において、ICTの進展やデジタル技術を活用した生産性向上が進まない場合や、これらに対応した新たな商品・サービスを提供できない場合、提供する商品・サービスの品質低下やそれに伴う各事業の営業収益等の減少等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
また、情報システムや通信ネットワークに重大な障害が生じた場合、事業運営に支障を来たし、営業収益が減少するなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、グループ全体でDXを推進し、MaaSの研究やキャッシュレス決済システムの導入を進めるなど、デジタル技術を活用した商品・サービスの提供に取り組むとともに、生成AIの利活用推進やデジタル人財育成に取り組んでいます。
また、ICT統制を強化し、情報の適切な管理とセキュリティを確保するため、「西鉄グループICTマネジメント委員会」を設置するとともに、情報システム等については、通信ネットワーク機器にファイアウォール等の物理的対策を講じるほか、データセンターの常時有人監視やセキュリティ規則の整備とそれに基づく体制を構築するなど、システム障害等の防止に努めています。
当社グループでは、気候変動の物理的リスクとして、豪雨等による施設や車両への被害によるコストの増加、それらに伴う鉄道やバスの運行不能等、各事業において営業停止による営業収益の減少等により、業績に影響を与える可能性があります。移行リスクとしては、炭素税の導入、再生可能エネルギー普及の進展、省エネ規制の強化等によるコストの増加や、顧客行動・消費者選好の変化に伴う営業収益の減少等により、業績に影響を与える可能性があります。
また、当社の取り組みについて株主・金融機関等のステークホルダーの理解を得られない場合、市場からの資金調達を困難にし、必要な時期に必要な資金を調達できなくなる可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、地球環境の保全を重要課題と認識し、環境と調和ある事業活動を通じて、循環型社会の実現と地球温暖化の抑制を目指すとともに、これらの取り組みについて適切な開示に努めています。風水害等に強い施設や車両の整備、BCPの継続的見直し等に取り組むとともに、長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」で策定した2050年カーボンニュートラルを目指すロードマップに基づき、脱炭素社会への取り組みを進め、気候変動への対応に努めています。
※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに基づく開示情報は、
「2 サステナビリティに関する考え方および取り組み (2) ①気候変動への対応」に記載しています。
当社グループは、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、当社グループの持続的な成長を確保する上での強みとなるとの認識のもと、従業員一人ひとりがいきいきと働き、それぞれの個性や能力を発揮できる機会および環境の整備・拡充を進めています。また、当社グループが事業を展開する国・地域には、人種差別や政治不安に起因する人権課題が存在する地域もあり、取引先と協働した取り組みが求められています。
しかしながら、当社グループの事業拠点、協業先や顧客等を含む範囲において、これらの課題に適切に対応できなかった場合、多様な人財を持続的に確保できず各事業が縮小、廃止となる可能性に加え、地域住民、顧客・消費者、株主・投資家等のステークホルダーからの信頼を損なうことによるブランド価値の低下等、業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社グループでは、多様な人財の確保、サステナブルな成長を支える人財力強化を重要課題と認識し、女性活躍推進に取り組むほか、中核人財の登用においても、性別や国籍、新卒または中途等の別なく、個々の能力に応じて行うとともに、働きがいを向上させる環境の整備やワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいます。
また、2022年3月に制定した「西鉄グループ人権方針」に基づき事業活動に関わるすべての人の人権の尊重を求めるとともに、人権・同和問題、ハラスメント・障がい者・LGBTQ等に関する職場研修等を通じて人権意識の醸成に努めています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
(1) 経営成績
(連結経営成績)
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善や、インバウンド需要の増加などもあり、緩やかな回復基調の中で推移しました。一方で、物価上昇の継続に加え、米国の通商政策による影響など先行き不透明な状況が続いています。
このような情勢のなか、当社グループでは、長期ビジョン「まち夢ビジョン2035」の実現に向けた第1ステップである第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)の目標達成に向け、各施策に取り組みました。
この結果、当社グループにおける当連結会計年度の営業収益は、物流業における国際物流事業で輸出入取扱高の増加や、レジャー・サービス業におけるホテル事業で客室単価の上昇に加え、運輸業におけるバス事業で運賃改定効果などもあり4,434億9千5百万円(前期比 7.7%増)となり、営業利益は266億5千5百万円(前期比 3.0%増)となりました。
経常利益は、持分法による投資損益の改善などもあり287億3千9百万円(前期比 17.1%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産売却益の減少などにより208億1千万円(前期比 15.8%減)となりました。
その結果、当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなりました。
なお、連結損益計算書の主要項目ごとの前連結会計年度との主な増減要因等は、次のとおりです。
① 営業収益及び営業利益
当連結会計年度の営業収益は、物流業における国際物流事業で輸出入取扱高の増加や、レジャー・サービス業におけるホテル事業で客室単価の上昇に加え、運輸業におけるバス事業で運賃改定効果などもあり、前連結会計年度から318億4千6百万円増加し、4,434億9千5百万円(前期比 7.7%増)となりました。
営業利益は、前連結会計年度から7億7千7百万円増加し、266億5千5百万円(前期比 3.0%増)となりました。
セグメントごとの営業収益及び営業利益は、次のとおりです。
② 営業外損益及び経常利益
営業外収益は、持分法による投資利益の計上等により、前連結会計年度から7億5千1百万円増加し、52億6千4百万円となりました。
営業外費用は、持分法による投資損失の減少等により、前連結会計年度から26億7千1百万円減少し、31億8千万円となりました。
この結果、経常利益は、前連結会計年度から42億円増加し、287億3千9百万円(前期比 17.1%増)となりました。
③ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は、不動産流動化における信託受益権や西新パレスの売却等による固定資産売却益の減少などにより、前連結会計年度から134億9千6百万円減少し、115億7千5百万円となりました。
特別損失は、固定資産除却損の減少などにより、前連結会計年度から7億5千6百万円減少し、94億2千6百万円となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度から85億3千9百万円減少し、308億8千8百万円(前期比 21.7%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度から39億1千3百万円減少し、208億1千万円(前期比 15.8%減)となりました。
鉄道事業では、天神大牟田線・貝塚線が開業100周年を迎えました。より一層地域の足として愛される西鉄電車を目指して、新たな公式キャラクター「ガタンコとゴトンコ」を起用し、ラッピング電車の運行、CM放映やグッズ販売等の各種施策を実施しました。また、雑餉隈~下大利駅間連続立体交差事業を推進し、春日原駅の新駅舎の供用を開始しました。さらに、より安全・あんしんな輸送サービスを提供していくため、西鉄福岡(天神)駅のホームドア整備、高宮駅周辺の耐震補強工事を進めました。そのほか、駅集中管理方式を貝塚線に導入し、天神大牟田線においても対象駅を拡大するなど、駅運営体制の見直しを行い、駅業務の省力化を推進しました。
バス事業では、持続可能な公共交通ネットワークを提供するため、西鉄バス大牟田㈱、西鉄バス久留米㈱および西鉄バス佐賀㈱において運賃改定を実施したほか、定時性確保や乗務員の負担軽減に向け、国土交通省が主導する「完全キャッシュレスバス実証運行」に参画しました。また、長期休暇限定で実施していた「こども50円バス」をすべての土曜・日曜・祝日に拡大し、公共交通の利用促進に努めました。さらに、カーボンニュートラルの実現に向けて、レトロフィット電気バスの製作・導入を進めました。
経営成績については、バス事業で、運賃改定(2024年1月実施)の効果などにより増収となりました。鉄道事業で、旅客人員の回復などにより増収となりました。これらの結果、運輸業の営業収益は809億4千万円(前期比 4.1%増)、営業利益は49億7千9百万円(前期比 32.2%増)となりました。
※バス事業の内部取引を除くと5.5%の増となります。
賃貸事業では、福ビル街区建替プロジェクトにおいて、「ONE FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング)」(2025年4月24日開業)の開業に向け、九州初出店の店舗等魅力あるテナントの誘致に努めました。また、西鉄久留米駅ビル内商業施設「エマックス久留米」を「レイリア久留米」としてリニューアルしたほか、雑餉隈~下大利駅間連続立体交差事業に伴う駅周辺開発および店舗開発を進めるなど、沿線の活性化と収益の拡大を図りました。さらに、ソラリアステージビル1階の「ステージ広場ビジョン」のリニューアル工事を行い、名称を「SOLARIA DAIGAMEN」とし、新たに運用を開始しました。そのほか、天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト、天神一丁目15・16番街区プロジェクト等、福岡都心部における地権者共働の開発プロジェクト等の取り組みを着実に推進しました。
住宅事業では、「ウエリス八千代村上」、「つくばグランヴィラ」等、マンションの供給・販売に努めました。また、東南アジア、アメリカにおいて現地デベロッパーと共同で住宅開発を行うなど、海外における不動産事業の拡大を図りました。
その他不動産事業では、「西鉄アセットマネジメント株式会社」を設立し、不動産流動化による資本効率の向上や事業機会の創出に努めました。
経営成績については、住宅事業で、分譲販売区画数は増加したものの、前期に比べ販売単価は減少し減収となりました。一方、賃貸事業で、「ONE FUKUOKA BLDG.」の竣工(2024年12月)や商業施設での賃貸収入の増加などにより増収となりました。これらの結果、不動産業の営業収益は877億7千7百万円(前期比 2.1%増)となりました。営業利益は、賃貸事業での「ONE FUKUOKA BLDG.」竣工による費用の発生などにより97億3千6百万円(前期比 12.7%減)となりました。
イ 業種別営業成績
ロ 分譲販売区画数
ストア事業では、「レガネット砂津」をリニューアルオープンするなど、収益力の強化に努めました。
生活雑貨販売業では、「雑貨館インキューブイオンモール直方店」を開業するなど、収益の拡大を図りました。
経営成績については、ストア事業で、前期に改装した店舗等が寄与し増収となりました。生活雑貨販売業で、「イオンモール直方店」の開業(2024年4月)などにより増収となりました。これらの結果、流通業の営業収益は719億8千1百万円(前期比 1.5%増)となりました。営業利益は、ストア事業での人件費などの費用が増加したことなどにより6億5千4百万円(前期比 32.3%減)となりました。
業種別営業成績
④ 物流業
国際物流事業では、「関東ロジスティクスセンター」や台湾現地法人(NNR GLOBAL LOGISTICS TAIWAN INC.)初のロジスティクス拠点となる「桃園ロジスティクスセンター」を開設するなど、物流拠点の拡充、域内物流ネットワークの強化を図りました。また、半導体産業の集積が進む熊本地区において、熊本営業所を開設し、九州全域のセールス強化に努めました。さらに、「りんくうロジスティクスセンター」、「成田ロジスティクスセンター」において太陽光発電設備および蓄電池を導入するなど、カーボンニュートラルの実現のための取り組みを実施しました。
経営成績については、国際物流事業で、荷動きの回復による取扱数量の増加や為替変動による円換算額の増加などにより増収となりました。その結果、物流業の営業収益は1,480億2千3百万円(前期比 14.9%増)となりました。営業利益は、仕入価格の上昇などにより38億4千9百万円(前期比 15.0%減)となりました。
イ 業種別営業成績
ロ 国際貨物取扱高
※TEU:20フィートの海上輸送コンテナを1単位とした換算個数
ホテル事業では、タイ・バンコク2店舗目となる「西鉄ホテル クルーム バンコク シーロム」を開業するなど、収益の拡大を図りました。また、「ONE FUKUOKA HOTEL」の運営会社として「株式会社Nishitetsu One Style」を設立し、開業準備を進めました。
飲食事業では、「ONE FUKUOKA BLDG.」内において、「天神福食堂」の開業準備を進めました。
経営成績については、ホテル事業で、客室単価の上昇や前期に開業した「ソラリア西鉄ホテル台北西門」(2023年8月)の寄与などにより増収となりました。その結果、レジャー・サービス業の営業収益は527億1千7百万円(前期比 17.0%増)、営業利益は59億3千2百万円(前期比 28.1%増)となりました。
業種別営業成績
ICカード事業では、nimocaバスシステムを導入している交通事業者のキャッシュレス化支援に取り組んだほか、車両整備事業等の各事業において積極的な営業活動に努めました。
経営成績については、車両整備関連事業で受注が増加したことなどにより、その他の営業収益は309億5千6百万円(前期比 1.9%増)となりました。営業利益は、建設関連事業での粗利の増加などにより23億6千4百万円(前期比 32.5%増)となりました。
業種別営業成績
(2) 財政状態
(注)有利子負債は、借入金 + 社債により算出しています。
資産は、現金及び預金が減少した一方、有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ551億2千3百万円増加し、7,821億2千6百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金が減少した一方、有利子負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ349億2千2百万円増加し、5,260億8千6百万円となりました。
純資産は、自己株式の取得による減少の一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ202億円増加し、2,560億3千9百万円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ183億3百万円減少し、504億4千1百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益308億8千8百万円、減価償却費201億3千2百万円、棚卸資産の増加額(支出)121億6千4百万円等により156億1千1百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ466億2百万円の収入減となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出832億5千2百万円、投資有価証券の売却による収入53億5千2百万円等により、745億4千6百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ325億1千7百万円の支出増となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の純増による収入277億8千4百万円、社債の純増による収入200億円等により、392億2千8百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ651億8千7百万円の収入増となりました。
当社グループの資金調達については、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金等、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら行っています。
なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しています。
資金の流動性については、当社グループは、運輸業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。
資金の配分方針については、手許現金及び現金同等物は、売上高の約1ヶ月分程度を安定的な経営のための適正な水準としています。
成長投資については、2024年度は「第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)」に沿って、ONE FUKUOKA BLDG.新築工事や「(仮称)台東区柳橋1丁目計画新築工事」等を進めました。2025年度は「第16次中期経営計画2025年度計画」に沿って、春日原駅商業施設「レイリア春日原」開発工事や佐賀県鳥栖市永吉用地における賃貸用物流施設開発等について着実に進めてまいります。投資計画の詳細については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。
株主還元については、経営における重要課題の一つと考えており、当社は、株主の皆様への安定した利益還元を重視し、適切な内部留保の確保による財務体質及び経営基盤の強化を図りながら、安定的・継続的な配当を実施することを利益配分についての方針としています。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
当社グループの各事業において提供するサービスや製品は多種多様であり、同じセグメント内のサービスや製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではないため、生産、受注及び販売の実績について、セグメントごとに生産規模あるいは数量で示すことはしていません。
そのため、生産、受注及び販売の状況については、「(1) 経営成績」における各セグメント業績に関連付けて示しています。
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。