第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、兵庫県南部を基盤として、地域社会とのつながりを大切にしながら、鉄道・バス・タクシーなどの「運輸業」、百貨店などの「流通業」、不動産賃貸・分譲などの「不動産業」、飲食などの「レジャー・サービス業」、人材派遣などの「その他の事業」として5つに大別される事業を展開し、幅広く人々の生活を支える総合サービスを提供することによって、社会の発展に貢献し、「連結での成長」を目指していくことを基本方針としております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

コロナ禍を経た社会変化や人々の行動変容は、当社グループの事業展開に大きく影響しております。そうしたなか、当社グループが持続的に企業価値の向上を図るため、2023年3月30日に当社グループの「10年後(2032年度)のあるべき姿」を明確化させた「山陽電鉄グループ長期ビジョン」を設定し、あるべき姿に向かう基盤づくりの位置づけとして、第3次計画となる「山陽電鉄グループ中期経営計画(2023年度~2025年度)」を策定しました。

 

1.長期ビジョン

あるべき姿

今後の変化する社会環境下においても、

当社グループが一体となって沿線の皆さまの生活を支え、

地域発展に貢献する存在であり続ける

基本戦略

① さらなる安全・安心・快適な輸送の実現

② 沿線を中心とした主要エリアにおける再整備の推進

③ 非鉄道事業分野での成長投資を通じた経営基盤の強化

④ サステナビリティ経営の推進

 

2.中期経営計画

基本方針

当社グループが一体となって沿線のさらなる魅力向上に努め、

非鉄道事業分野での成長投資も含めて経営基盤の強化を図る

基本戦略

① 安全・安心・快適な輸送の維持・向上

② 沿線の開発可能余地についての徹底的な検証と実行

③ 非鉄道事業分野での成長投資を通じた経営基盤の強化

④ サステナビリティ基本方針を踏まえた経営の推進

 

(3)目標とする経営指標

 中期経営計画最終年度(2025年度)および長期ビジョン目標年度(2032年度)において、「営業利益」および「有利子負債/EBITDA倍率」を連結目標経営指標として定めております。

 

 

2025年度

2032年度

営業利益(連結)

3,050百万円

3,800百万円

有利子負債/EBITDA倍率(連結) ※

6倍台を維持

6倍台を維持

 

    ※EBITDA=営業利益+減価償却費

     有利子負債=借入金+社債

 

 

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の見通しにつきましては、雇用・所得環境に改善が見られるものの、少子高齢化や人口減少の進行に加え、燃料価格をはじめとした物価の高騰や人手不足に伴う人件費の上昇が想定されるなど、当社グループを取り巻く環境は依然として厳しい状況が続くと思われます。

 このような情勢に対処するため、当社では中期経営計画の基本戦略である、「安全・安心・快適な輸送の維持・向上」「沿線の開発可能余地についての徹底的な検証と実行」「非鉄道事業分野での成長投資を通じた経営基盤の強化」「サステナビリティ基本方針を踏まえた経営の推進」に基づく各種取組みを着実に実行するなかで、持続可能な社会の実現への貢献と、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

主要セグメントにおける対処すべき課題は、次のとおりであります。

 

①運輸業

 運輸業のうち鉄道事業におきましては、神戸須磨シーワールドのグランドオープン、また、マリンピア神戸の再開業、指定管理業務を受託する神戸市立須磨海づり公園の再開が予定されていることで、須磨・垂水エリアの注目度が一段と高まるなか、引き続き関連諸施設や自治体等との連携強化をはかり、さらなる旅客誘致に努めてまいります。

 設備面では、クレジットカード等のタッチ決済による乗車サービスや、QRコードを活用したデジタル乗車券サービスの導入を来春に向けて取り組むほか、霞ヶ丘駅をはじめとした駅のバリアフリー化や再整備にも注力いたします。また、6000系車両の新造工事や既存車両のリニューアル工事を行い、省エネルギー化およびお客さまサービスの向上に努めてまいります。

 

②流通業

 流通業では、山陽百貨店におきまして、引き続き魅力的なテナントを導入することで品揃えの充実をはかるとともに、催事ではよりお客さまにご満足いただけるよう工夫を凝らすなど、さらなる来店促進に努めてまいります。また、外商部門では主力商材である宝飾品・美術品等の取扱いをさらに充実させ、お客さまの新たな需要の掘り起こしと販売強化に取り組んでまいります。

 

③不動産業

 不動産業のうち分譲事業におきましては、加古川市の「ブランシエラ加古川リアラス」等の販売を引き続き進めるとともに、神戸市須磨区の宅地分譲事業や明石市二見町の新規分譲マンション「アルファリアラス西二見」の建設・販売に取り組むほか、沿線外でも積極的に事業推進するなど、さらなる収益拡大に努めてまいります。

 賃貸事業におきましては、保有土地の有効活用をはかるとともに、当社沿線のほか関西圏や首都圏等においても収益不動産の取得に引き続き注力し、事業基盤の一層の拡充を進めてまいります。また、山陽姫路駅周辺の再整備や山陽明石駅等の主要駅周辺での開発に向けた取組みを進め、さらなる地域発展への貢献に努めてまいります。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

 当社では、グループ全体でサステナビリティの取組を推進するため「サステナビリティ委員会」を設置しています。本委員会は、代表取締役社長を委員長として、常勤の取締役および執行役員のほか、委員長が必要と認めた者により構成されます。なお、サステナビリティ委員会の取組状況は、適宜取締役会へ報告しています。

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②リスク管理

 当社グループの全社的なリスク管理については、「リスク管理委員会」を設置し、リスク管理規定に基づく管理を行っています。そのうち、サステナビリティに関するリスク管理については、マテリアリティ(重要課題)を特定するプロセスにおいて、当社グループの事業環境におけるリスクや機会を抽出して重要度により定量評価し、各マテリアリティとして反映させることで、サステナビリティ委員会において、リスクの管理や評価の見直し、アクションプラン等の進捗状況の管理を定期的に実施し、取締役会に報告しています。また、審議内容は、適宜リスク管理委員会に共有することとしています。

 

③戦略

 当社グループは、サステナビリティに取り組むための基本方針を制定しており、この基本方針に従って事業活動を行っています。また、持続可能な社会の実現と、自らも持続可能な企業価値の向上を目指すために重点的に取り組む課題として、以下の6つのマテリアリティを特定したうえで、各マテリアリティに基づく目標やKPI、アクションプランを設定し、目標達成に向け取り組むことで、当社グループ全体でサステナビリティ経営を推進していきます。

 

《サステナビリティ基本方針》

「兵庫県南部を基盤として、地域とともに走り続け、人々の生活を支える企業グループであるために」

山陽電鉄グループは、鉄道事業を展開する兵庫県南部を基盤として、運輸、流通、不動産、レジャー・サービス 等の事業を営みながら、地域とともに成長してきました。

これからも、当社グループが取り組むべき課題の解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、

沿線内外のあらゆる事業機会に挑戦し、新たな価値を創出することで、持続的な企業価値の向上を目指します。

 

《重要課題(マテリアリティ)》

ESGテーマ

マテリアリティ

特定の背景

E

(環境)

環境に配慮した事業活動の推進

 地球温暖化や自然災害の激甚化をはじめとする環境問題への対応は、世界レベルの喫緊の課題であると認識しています。大量輸送が可能な鉄道・バスなどの公共交通へのシフトを促し、自らもCO2排出量の削減等に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献することは、重要課題の一つと考えています。

S

(社会)

安全・安心・快適なサービスの

提供

電車・バス・タクシーの公共交通や不動産業、百貨店業など人々の生活を支えるサービスを提供する企業グループとして、お客さまに「安全・安心・快適」をお届けすることは不可欠であり、重要課題の一つと考えています。

魅力的なまちづくり

沿線地域にお住まいの人々にとっても、通勤・通学や観光で訪れる人々にとっても「魅力的なまち」を目指すために、地域と一体となって駅を中心としたまちづくりに取り組み、賑わいを創出することは、重要課題の一つと考えています。

パートナーシップの強化

当社グループが事業を展開するうえで、お客さまや地域の方々、行政・企業などとの連携は必要不可欠です。当社グループの持続的成長を実現するうえで、パートナーシップを大切にし、強化することは、重要課題の一つと考えています。

多様な人財の育成と、

一人ひとりが能力を発揮できる

環境づくり

運輸業、流通業、不動産業、レジャー・サービス業など人々の生活を支える事業を展開する当社グループにとって、「人」こそが価値創造の源泉であると考えています。そのため、多様な人財の育成や、一人ひとりが能力を発揮できる環境づくりは、重要課題の一つと考えています。

G

(ガバナンス)

コンプライアンスの徹底と

ガバナンスの充実

すべてのステークホルダーとの安定した信頼関係の維持・向上のためには、企業の社会的責任を果たすことが必要不可欠です。その根幹となるコンプライアンスを徹底し、ガバナンスを充実させることは、重要課題の一つと考えています。

 

(2)気候変動

 当社グループは、サステナビリティのマテリアリティ(重要課題)のひとつに「環境に配慮した事業活動の推進」を掲げ、気候変動による事業への影響を想定し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取組を行っています。また、2023年3月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、同提言に基づく情報開示について段階的に進めています。

 

①ガバナンス

 気候変動関連の問題については、取締役会が設置したサステナビリティ委員会で対応しています。同委員会が中心となって各事業部門と連携しながら、想定される気候変動に関するリスク・機会の洗い出し、その特定と重要度の評価、評価の見直しを行うとともに、実行計画・対応策を検討し、定期的に実行状況を点検、フォローしています。また、サステナビリティ委員会の取組状況は、取締役会へ報告しています。

 

②リスク管理

 気候変動リスクについては、サステナビリティ委員会において、リスクと機会のそれぞれについて発生可能性、影響度、対応策などの有無などによる評価の見直しを定期的に実施し、取締役会へ報告しています。また、審議内容については、リスク管理委員会に共有しています。

 

③戦略

 対象範囲を運輸業、対象年を2030年としたシナリオ分析を行いました。シナリオ分析にあたっては、「2℃シナリオ(脱炭素社会への移行が進行)」と、「4℃シナリオ(現状を上回る温暖化対策が取られず温暖化が進行)」の2つを検討しました。

 その結果、2℃シナリオにおいては、炭素税の導入やエネルギー価格の変化によるコストの上昇が見込まれる一方、省エネ技術の導入に伴うコストの低下やCO2排出量の少ない公共交通の需要増大による収入の増加が期待できることなどが判明しました。

 また、4℃シナリオにおいては、異常気象の激甚化に伴い保有資産が被害を受けることによる長期の運休や休業が発生し、修繕コストの増加と収益が減少するリスクが増大することなどが判明しました。

 当社グループが持続可能な社会の実現に貢献し、自らも持続的な企業価値の向上を目指すために、使用するエネルギーを削減するなど、気温上昇が2℃を十分下回る水準の世界の実現に向けた取組を推進します。

 

・事業影響への評価

シナリオ

項目

事象

事業へのインパクト

重要度

主な対応策の方向性

脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会

(2℃シナリオ)

政策

炭素税の導入

リスク

カーボンプライシングの普及による炭素税などCO2排出量に応じた新たな費用負担の発生

・CO2排出量の要因分析、排出抑制策の実施検討

市場

エネルギー価格の変化

リスク

発電コストの上昇による動力費の増加

化石燃料価格の高騰による燃料費の増加

・運行や設備の保守を中心とした省エネ化の推進

・省エネ車両や設備の導入、それらの効率的な運用

機会

省エネ技術導入によるコストの低下

テクノロジー

低炭素技術活用へ移行

リスク

水素自動車や電気自動車、自動運転車両等の普及による輸送人員の減少

・新技術に関する情報の把握・分析

・省エネ車両や設備の導入

評判

顧客等からの評判変化

リスク

企業イメージの低下

・TCFDに基づく積極的な情報開示

・危機管理体制のブラッシュアップ

・災害を未然に防ぐ防災対策工事の実施

機会

公共交通機関の利用者増加、人材確保や賃金調達時における好影響

気候変動の物理的変化に関連するリスク・機会

(4℃シナリオ)

急性

異常気象の激甚化

リスク

自社拠点の被災による長期運休区間等の発生

慢性

平均気温の上昇

機会

環境対応に伴う気象被害の低減や被災時における早期復旧など事業の持続可能性の向上

リスク

電力の供給不安定化に伴う節電要請や計画停電等の発生

・危機管理体制のブラッシュアップ

・非常用発電・産業用発電設備の導入検討

リスク

猛暑による外出機会の減少

・利用者接点の多様化

 

④指標及び目標

 当社グループでは、気候変動に伴う事業への影響が大きく、エネルギーの使用量が最も多い鉄道事業において新造車両の導入や既存車両のリニューアル化を進め、2030年度には鉄道運行に係る電力の使用によるCO2排出量を、2013年度比46.0%以上削減することを目標としています。

 

(3)人的資本

(基本的な考え方)

 運輸・流通・不動産・レジャー・サービス業など人々の生活を支える事業を展開する当社グループにとって、「人」こそが価値創造の源泉であると考えています。

 そのため、当社グループではサステナビリティ経営を推進するにあたって、重要課題のひとつに「多様な人財の育成と、一人ひとりが能力を発揮できる環境づくり」を掲げ、性別や国籍、年齢等に関わらず、社員が個性・能力を最大限に発揮できるよう、人財育成や社内環境の整備などを進めています。

 なお、当社グループにおいては、鉄道事業をはじめとして専門性・特殊性の高い事業を多岐に亘って展開しており、上記の基本的な考え方を踏まえつつも、事業ごとに最適な人財育成を図る必要があることから、以下では主要会社である山陽電気鉄道株式会社の目標・指標を記載しております。

 

(人財育成方針)

 当社では、人財育成理念の一つに「目標が人間を動かし、環境が人間を変える」を掲げ、性別や国籍、年齢等に関わらず、目標・成果・能力に連動した評価・昇格システムから成る人事制度を運用し、上司からの継続的なフィードバックを通して、社員一人ひとりの成長と挑戦を促す取組を行っています。

 また、当社の教育制度として「階層別研修」を整備し、昇格時に各階層の職責に応じた教育を行い、スキルアップを図るとともに、鉄道事業においては教習所を設置し、乗務員・駅務員の育成を行うなど、職種別に体系的な技能研修を実施することで、事業継続に必要な人財を計画的に育成・配置しています。

 その他、ダイバーシティ&インクルージョンの推進と社員の職場への定着を図るため、全社員を対象としたコンプライアンス研修や女性社員を対象とした「女性特有の健康課題に関する研修」、若年層を対象とした「フォローアップ研修」、「人権研修」等を実施しているほか、自己啓発支援制度を整備し、社員の自律的な成長を促しています。

 今後も人事制度と教育制度を両輪に、社員一人ひとりの個性や能力を最大限引き出し、事業の成長・発展に繋げてまいります。

 

(社内環境整備方針)

 当社では、多様な人財が個性や能力を発揮できる職場環境の整備を進めています。具体的には法定以上の育児・介護休業制度の整備、育児や介護などの際に柔軟に利用できる積立休暇制度やフレックスタイム制度の導入ならびに年次有給休暇の取得促進などを通して、社員一人ひとりが様々なライフステージにおいても継続的に活躍できるよう取り組んでいます。

 また、健康経営の推進にも取り組んでおり、経済産業省による「健康経営優良法人2023」に選定されました。当社では経営層と労働組合委員が参加する「健康経営推進会議」を設置し、労使一体となって「健康経営戦略」を定めるとともに、社員の健康保持・増進への取組の課題や効果を検証し、改善につなげていくことで、社員のワークエンゲージメントの向上や持続的な企業価値向上を目指してまいります。

 

(健康経営推進体制)

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(健康経営戦略マップ)

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(主な指標及び目標)

目的

項目

2025年度目標

2023年度実績

ダイバーシティ

&インクルージョン推進

(女性活躍推進法行動計画)

係長級以上の指導的地位につく女性社員数(2021年度比)

200

300

勤続年数満5年以上の女性社員数(2021年度比)

200

187

人財育成

階層別研修(昇格者研修)実施率

100

100

社内環境整備

(エンゲージメント向上)

年次有給休暇取得率

95以上

93.1

社内環境整備

(健康経営)

肥満者率(BMI25以上)

25以下

26.3

 

3【事業等のリスク】

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。

  なお、文中における将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 法的規制による影響について

 当社グループは、鉄道事業法及び道路運送法による運輸業を主な事業としており、それぞれの法令等に基づく許

可、認可等が当社グループの事業遂行の前提となっているほか、他事業においても大規模小売店舗立地法や独占禁

止法及び個人情報保護法等の法規制を受けております。現在の規制に重大な変更があった場合や、これらの法律に

違反する事由が生じて企業活動が制限された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能

性があります。

 

(2) 自然災害等による影響について

 当社グループが主に事業展開している兵庫県南部において1995年1月に発生した「阪神・淡路大震災」や2011年

3月に発生して全国的な影響をもたらした「東日本大震災」のような大規模な地震・津波や、台風・洪水等の自然

災害、新型インフルエンザや2020年2月以降に日本国内において感染拡大による影響があった新型コロナウイルス感染症等を含む感染症、テロ等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 また、脱炭素社会への移行に伴う費用増や、異常気象の激甚化による災害が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。その対処として、想定される気候変動に対するリスク・機会を洗い出し、対応策を実行していくことで、持続可能な社会の実現に向けて貢献しております。加えて当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同を表明し、その提言に基づく情報開示を進めております。

 

(3) 競合路線及び人口減少等による影響について

 当社グループは、運輸部門において、他の鉄道・バス等の輸送機関や自動車等の交通手段と競合しているほか、

沿線就業人口の減少や、少子高齢化の影響を受けております。今後、景気動向やさらなる競争激化、少子高齢化の

進展等による人口減少により当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(4) 兵庫県南部地域の景気動向について

 当社グループは、兵庫県南部地域にある鉄道路線を核として展開してきたため、同地域内に経営資源が集中して

おります。このため当社の業績は、関西地域、なかでもとくに兵庫県南部地域の人口・地価・景気動向の影響を強

く受けております。よって兵庫県南部地域の景気動向等が悪化した場合、その悪化が全国的であるか局地的である

かを問わず当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(5) 運輸部門における事故について

 鉄道事業やバス事業を営んでいる当社グループにおいて、安全で質の高いサービスを提供することは最も重要

な課題の一つであると考えており、全踏切への支障報知装置の設置を既に完了しており、引き続き防災対策工事の

施工、変電所・自動列車停止装置(ATS)の更新・高機能化等、事故を未然に防ぐ対策、事故の発生時に被害を

最小限に抑える対策を進めておりますが、これらの対策で防ぎきれない大事故が発生した場合には、当社グループ

の財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(6) 流通部門における景気動向及び競合による影響について

 流通部門の中心である百貨店業において、景気低迷や天候不順等を理由とした消費低迷による収益の減少や、同

一商圏や近隣商圏における競合店の新規進出等による競争激化により、当社グループの財政状態及び経営成績が影

響を受ける可能性があります。

 

(7) 不動産部門における地価の変動及び景気動向による影響について

 不動産分譲業においては、景気低迷時における販売数減少や地価の下落に伴う評価損の発生、不動産賃貸業にお

いては、景気低迷時におけるテナント等の退出、倒産、賃料減額要求が発生する可能性があり、これらの事象によ

っては当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(8) 国際情勢等による動力費等への影響について

当社グループは、燃料価格の動向に関して国際情勢の影響を受けております。原油価格の変動や原子力発電所

運転停止による火力発電比率の上昇が、鉄道の電気料金及びバス・タクシーの燃料価格等の変動へつながり、収支に影響を与えております。今後の電気料金や燃料費の動向次第では、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(9)有利子負債への依存について

 当社グループにおいては、中心となる当社が鉄道事業の設備の維持・更新や不動産賃貸・不動産分譲業への投資にかかる資金、百貨店業における店舗改装等のための資金を、主として金融機関からの借入金により調達しているため、有利子負債への依存度が高い水準にあります。当社グループとしては、収支とのバランスを勘案した設備投資を行い、保有資産の有効活用を進めることで増益を図り、キャッシュ・フローの改善に努めたり、資金調達の多様化に積極的に取り組んだりすることにより、金利上昇リスクによる影響を最小限に抑える努力をしておりますが、現行の金利水準が大幅に変動することがあれば、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

 最近3連結会計年度における有利子負債の状況は、次のとおりであります。

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

有利子負債残高(百万円)

38,674

40,194

39,346

長期借入金(百万円)

26,471

26,069

27,536

短期借入金(百万円)

5,464

7,702

5,652

社債(百万円)

6,000

6,000

6,000

リース債務(百万円)

49

19

39

その他有利子負債(百万円)

688

402

117

総資産額(百万円)

108,755

111,167

114,533

有利子負債依存度(%)

35.6

36.2

34.4

 

(10)固定資産の減損について

 今後、景気の動向や不動産価格の変動等によって資産のキャッシュ・フローが大幅に減少したとき、あるいは時

価の下落等によって新たに減損損失の計上が必要となったとき、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受

ける可能性があります。

 

(11) 情報システムや情報セキュリティに関するリスクについて

 当社グループでは、売上管理やグループ内外との連絡等、多くの業務に情報システムを利用しております。これ

にあたっては、「個人情報保護ポリシー」及び「情報セキュリティポリシー」に基づく各種規程の整備や、情報シ

ステムによる漏洩対策等を通して、情報システムで扱うデータのほか、帳票類も含めた情報セキュリティの確保に努めております。しかしながら、これらの対策で防ぎきれない自然災害、機器故障及び不正アクセス等によって、情報システムの停止や個人情報及び機密情報の漏洩が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営者の視点による当連結会計年度の経営成績等の状況及び分析は、以下のとおりであります。

 なお、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の状況及び分析

 当連結会計年度の経営成績は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、社会経済活動の正常化が進む中で、運輸業における鉄道事業等での運輸収入の増加や、流通業における山陽百貨店での収入の増加などにより、営業収益は39,220百万円と前連結会計年度に比べ307百万円(0.8%)の増収となり、営業利益は4,326百万円と前連結会計年度に比べ834百万円(23.9%)の増益、経常利益は4,469百万円と前連結会計年度に比べ664百万円(17.5%)の増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は3,110百万円と前連結会計年度に比べて446百万円(16.7%)の増益となりました。

 

 セグメントごとの経営成績の状況及び分析は、次のとおりであります。

 

① 運輸業

 鉄道事業において、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、出控えの影響が前期より縮小したことや、鉄道駅バリアフリー料金制度を導入したほか、バス事業においても、神戸市バスの一部路線の運行受託拡大が寄与したこと等により、外部顧客に対する営業収益は19,085百万円と前連結会計年度に比べ1,076百万円(6.0%)の増収となり、営業利益は1,126百万円と前連結会計年度に比べ801百万円(246.7%)の増益となりました。

 

(イ)提出会社の運輸成績表

種別

単位

当連結会計年度

(自 2023年4月 至 2024年3月)

対前期増減率

(%)

営業日数

366

0.3

営業キロ

キロ

63.2

客車走行キロ

千キロ

31,070

△1.2

 

定期

千人

37,264

5.1

輸送人員

定期外

千人

20,738

3.9

 

千人

58,003

4.7

 

定期

百万円

6,269

7.3

旅客運輸収入

定期外

百万円

6,456

9.0

 

百万円

12,725

8.2

運輸雑収

百万円

1,593

△6.7

運輸収入合計

百万円

14,318

6.3

乗車効率

22.3

 

 (注) 乗車効率の算出は、

延人キロ

によります。

客車走行キロ×平均定員

 

 

 

 

(ロ)業種別営業成績

業種別

当連結会計年度

(自 2023年4月 至 2024年3月)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

鉄道事業

13,723

6.6

バス事業

3,747

3.7

その他

1,615

6.4

消去

△2

19,085

6.0

 

② 流通業

 山陽百貨店において、2023年4月28日に姫路初出店のテナントや有名アパレルブランド等を導入した南館をオープンしたことや、外出機会が増えたことで婦人雑貨等の売上が好調に推移したほか、コンビニエンスストア業において、近隣同業他社の閉店等で各店舗が増収になったこと等により、外部顧客に対する営業収益は9,626百万円と前連結会計年度に比べ444百万円(4.8%)の増収となり、営業利益は409百万円と前連結会計年度に比べ21百万円(5.5%)の増益となりました。

 

業種別営業成績

業種別

当連結会計年度

(自 2023年4月 至 2024年3月)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

百貨店業

8,275

2.8

コンビニエンスストア業

1,583

14.6

消去

△232

9,626

4.8

 

③ 不動産業

 分譲事業において、明石市の西新町駅前での「リアラス明石西新町」や加古川市での「ブランシエラ加古川リアラス」等の引渡しがあったものの、前期とのマンション分譲の規模の差等により、外部顧客に対する営業収益は6,972百万円と前連結会計年度に比べ1,516百万円(17.9%)の減収となり、営業利益は2,439百万円と前連結会計年度に比べ80百万円(3.2%)の減益となりました。

 

業種別営業成績

業種別

当連結会計年度

(自 2023年4月 至 2024年3月)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

不動産賃貸業

3,530

△0.2

不動産分譲業

3,451

△29.4

消去

△9

6,972

△17.9

 

 

 

④ レジャー・サービス業

 飲食業において、前期にはケンタッキー・フライド・チキンやミスタードーナツの一部店舗の改装工事により店舗休業があったことや、イートインのお客さまも回復傾向にあったこと等により、外部顧客に対する営業収益は2,207百万円と前連結会計年度に比べ229百万円(11.6%)の増収となり、営業利益は196百万円と前連結会計年度に比べ38百万円(24.4%)の増益となりました。

 

業種別営業成績

業種別

当連結会計年度

(自 2023年4月 至 2024年3月)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

飲食業

1,822

14.0

スポーツ業

286

△2.9

広告代理業

98

18.0

消去

△0

2,207

11.6

 

⑤ その他の事業

 労働者派遣事業において、受注の規模の差により、外部顧客に対する営業収益は1,328百万円と前連結会計年度に比べ73百万円(5.8%)の増収となり、営業利益は122百万円と前連結会計年度に比べ17百万円(17.2%)の増益となりました。

 

業種別営業成績

業種別

当連結会計年度

(自 2023年4月 至 2024年3月)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

労働者派遣事業

473

14.6

業務請負業

70

△5.0

ビル管理業

137

9.8

設備の保守・整備・工事業・

情報業ほか

760

△0.3

消去

△113

1,328

5.8

 

 

 

 

(2)財政状態に関する概況

① 資産、負債及び純資産の状況

  総資産は、前連結会計年度末と比較し3,366百万円増加の114,533百万円となりました。主な増減は、現金及び預金が2,593百万円の減少、建物及び構築物が2,816百万円の増加、投資有価証券が3,040百万円の増加などであります。

 負債につきましては、前連結会計年度末と比較し1,365百万円減少の60,156百万円となりました。主な増減は、長期借入金が1,467百万円の増加、短期借入金が2,049百万円の減少などであります。

 純資産につきましては、前連結会計年度末と比較し4,732百万円増加の54,377百万円となりました。主な増減は、利益剰余金2,443百万円の増加、その他有価証券評価差額金1,978百万円の増加などであります。

 これらの結果、自己資本比率は47.5%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より2,883百万円の減少となり、当連結会計年度末には5,418百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、法人税等の支払等があったものの、税金等調整前当期純利益、減価償却費の計上等により8,507百万円となり、前連結会計年度に比べ3,349百万円の増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により支出した資金は、設備投資による有形固定資産の取得による支出等により10,110百万円となり、前連結会計年度に比べ3,394百万円の増加となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により支出した資金は、長期借入金の返済による支出等により1,280百万円(前連結会計年度は1,142百万円の収入)となりました。

 

(3)生産、受注及び販売の状況

 当社グループのサービスは広範囲かつ多種多様であり、同種のサービスであっても、必ずしも一様ではなく、ま

た受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは

しておりません。

 このため生産、受注及び販売の状況については、「(1)経営成績の状況及び分析」におけるセグメントごとの

経営成績の状況に関連付けて示しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて

は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載

の通りであります。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループにおいては、当社の鉄道事業の設備の維持・更新や不動産賃貸・不動産分譲業への投資にかかる資

金、百貨店業における店舗改装等のための資金を、主として金融機関からの借入金により調達しております。

 なお、当連結会計年度末の有利子負債の残高は39,346百万円で、前期末に比し847百万円減少いたしました。

 有利子負債の状況については、「3 事業等のリスク (9)有利子負債への依存について」に記載しており

ます。

 

(6)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析

 当社グループは、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載の通り、2025年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画において、「営業利益」および「有利子負債/EBITDA倍率」を連結目標指標として定めております。

 

 当連結会計年度における各指標および中期経営計画の最終年度である2025年度の数値目標は以下のとおりです。

 

 

2023年度実績

2025年度目標

営業利益(連結)

4,326百万円

3,050百万円

有利子負債/EBITDA倍率(連結)※

4.9倍

6倍台を維持

※ EBITDA=営業利益+減価償却費

  有利子負債=借入金+社債

 

5【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。