第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであり、実際の数値と異なる可能性があります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、グループ理念「東京を走らせる力」の実現を目指して、中期経営計画及び事業計画に基づき、東京を中心とした首都圏の鉄道ネットワークの中核を担う交通事業者として、お客様の安全を第一に様々な取組を進めることで、持続的な企業価値の向上を目指しています。

 


<東京メトログループ理念>

 

 

東京を走らせる力

 

 

私たち東京メトログループは、

 

鉄道事業を中心とした事業展開を図ることで、首都東京の都市機能を支え、

 

都市としての魅力と活力を引き出すとともに、

 

優れた技術力と創造力により、安全・安心で快適なより良いサービスを提供し、

 

東京に集う人々の活き活きとした毎日に貢献します。

 

 

 

<私たちの決意>

私たちは、お客様の安全を第一に、たゆみなき「安全」の追求とお客様視点に立った質の高い「サービス」の提供によって、すべてのお客様に「安心」をお届けすることを使命とし、より一層取り組んでまいります。

 

(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

(当社を取り巻く経営環境について)

当社が事業基盤とする東京は、2030年まで安定的な人口増加、インバウンドによる観光需要の増加等、人流の拡大が今後も見込まれます。

 


 

(注) 1 2000年時点の人口を100としたときの各人口指数の推移。東京都政策企画局「「未来の東京」戦略」、東京都の統計「東京都の人口」、e-Stat「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」を参照。

2 実績値は日本政府観光局「訪日外客数統計」、2024年の年間訪日外客数は2024年7月時点累計人数、将来値は国土交通省「明日の日本を支える観光ビジョン」における2030年の政府目標6,000万人を参照。

 

当社は、鉄道各社との直通運転により、郊外から都心への移動の結節点として、首都東京の都市機能を支えています(相互直通運転先を含む総距離は556.6km)。定時性・安全性も相当に高く、信頼感のある鉄道ネットワークを構築しています。当社は、1日平均652万人(2023年度)のお客様にご利用いただいており、都心部での短距離・大量輸送を提供する輸送効率性の高さが特徴です。

また、当社の路線は、以下のとおり、東京の1日当たり利用者数上位10駅のうち9駅をカバーしています(「2022年度 国土交通省統計データ」より)。なお、品川駅には南北線が延伸予定です。

 


 

また、東京中心部では複数の大規模複合施設の再開発プロジェクトが継続的に計画されています。2023年度には、全面開業した虎ノ門ヒルズ等の影響で、近隣の当社駅の乗降人員数の増加が見られました。

 


 

(注) 1 森ビル株式会社「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査2024」を参照。各年度に竣工した大規模オフィスビル(事務所延床面積10,000㎡以上のオフィスビル)(自社ビルを含む)のうち、店舗、住宅、ホテル等の事務所以外の用途を除いた事務所部分の延床面積(グロス)を集計。

2 国土交通省HPより作成。虎ノ門ヒルズ駅は虎ノ門ヒルズの最寄り駅、神谷町駅は麻布台ヒルズの最寄り駅。

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた旅客運輸収入は、テレワークの定着等の影響はあるものの、インバウンド等のご利用増もあり、回復傾向にあります。足許の2024年7月の旅客運輸収入は、コロナ前と比較して95%となりました(注)。

 


 

(注)  コロナ前は2019年2月から2020年1月の期間を想定し、同月を比較しています。2023年3月18日から旅客運輸収入にバリアフリー料金加算分が含まれます。

 

これに加え、コスト構造改革による設備・業務のスリム化により、当社の経営状況は着実に回復してきました。

このような状況を踏まえ、引き続き「構造変革」の取組として、設備投資・経費の抜本的な見直しを図るとともに、「新たな飛躍」としてさらなる成長の取組を積極的に進めていきます。

2024年度においても、安全の確保を前提としたコスト構造改革や、メトポ活用による新たなお出かけ機会の創出、CBM(状態基準保全)の導入、自動運転(GOA2.5)の実現に向けた検討等、新技術やDXの推進等により鉄道事業の進化に努めていきます。また、都市・生活創造事業におけるREIT組成による不動産事業の拡大やお客様の「新たな日常」を支える各種事業の展開、海外鉄道ビジネスの拡大、新規ビジネスの開発を通じて成長を目指していきます。さらに、社員の「自律」・「挑戦」・「協働」を促し、働きがいを高め、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以後、「DE&I」といいます。)を推進するとともに、人権の尊重、組織体制・ガバナンスの強化により、経営基盤の強化を図っていきます。

また、全てのお客様が安全・安心で快適にご利用できる環境を整えるため、2023年3月に収受を開始した鉄道駅バリアフリー料金も活用し、2025年度までのホームドア全路線整備(一部の大規模改良工事実施中の駅を除く。)をはじめ、各種バリアフリー設備整備を着実に推進していきます。

 

なお、2023年3月に工事施行認可を申請した新線建設については、十分な公的支援を前提に、引き続き2030年代半ばの開業に向け、着実に取り組んでいきます。

 

(当社グループの中期経営計画「東京メトロプラン2024」に基づく取組について)※

※当社グループの中期経営計画「東京メトロプラン2024」は、社会経済環境、法的規制、人口動向、競争環境、電力料金・原材料価格・労務費、為替動向、地球環境、その他事業環境等について一定の前提のもとに作成されています。将来の見通しに関する記述には、別段の記載がない限り、本書提出日現在における当社グループが入手可能な情報並びに当社の計画及び見込みに基づいた当社グループの想定、将来の見通し及び推測が含まれますが、これらが達成される保証はありません。

 

① コスト構造改革による持続可能な事業運営の実現

ポストコロナにおける行動変容を見据え、安全の確保を前提に、施工の優先順位や時期、仕様等、計画内容を見直すとともに、設備・業務のスリム化等の抜本的なコスト構造改革による固定費の削減にグループ一体となって取り組むことにより、持続可能な事業運営を実現していきます。

また、設備の状態監視の充実やAI・ビッグデータ分析技術の活用等により、コスト削減や保全業務の質的向上を進めていきます。

コロナ禍に実施した緊急抑制の成果を活かしつつ、引き続き設備の状態等を踏まえた検査・更新周期等の見直し等を実施していきます。今後、物価上昇が見込まれる中でも、電力料金を除く鉄道事業経費(当社単体)は、1,000億円を下回る水準(2019年度比△15%程度)の維持を目指します。

 


 

2022年度の電力料金の大幅な高騰を踏まえ、2023年度より調達先を変更し、従前より燃料価格や市場価格の影響を受けにくい新たな電力料金制度のもとで電力を使用しております。その結果、2023年度は電力料金が減少し、足許においても資源価格が安定傾向にあることから、今後、電力料金は一定程度安定化すると見込んでいます。

 

② さらなる安全・安心の提供と鉄道事業の進化による東京の多様な魅力と価値の向上
1. 安全性・利便性の向上(セキュリティ強化等)

激甚化する自然災害への対策、社会情勢の変化に応じたセキュリティ強化及び列車運行の安定性向上に向けた取組により、安全で安心な鉄道サービスを提供していきます。

 

2. 安全性・利便性の向上(バリアフリー化促進)

2023年3月から収受を開始している「鉄道駅バリアフリー料金制度」も活用し、ホームドアやエレベーター整備等のバリアフリー化を促進し、お客様の円滑な移動を実現していきます。

 


 

3. 有楽町線延伸・南北線延伸等によるネットワーク発展・充実

有楽町線・南北線の延伸とその事業運営は、未来への成長戦略です。経営に悪影響を及ぼさないよう、補助金等の十分な公的支援をもとに、鉄道ネットワークの強化を通じて、臨海部・都心部へのアクセス利便性の向上や沿線のまちづくりへの寄与、東京圏の国際競争力の強化に貢献し、当社の成長戦略の一環として推進していきます。また、2023年7月の虎ノ門ヒルズ駅と周辺の一体的整備による交通結節機能の強化、駅まち一体となったゆとりある空間の構築を図るほか、2023年3月の東急新横浜線及び相鉄新横浜線との直通運転開始による直通先の拡大を踏まえた地域間の連携とより一層の活性化を図り、各地域のさらなる発展に貢献していきます。

 


 

4. 地域との連携・メトポの活用等による新たなお出かけ機会の創出

都内の観光地や商業施設等と連携し、City Tourism(東京の都市内観光)の促進や、ポイントサービスの魅力向上に向けた取組を進め、お出かけ機会を創出することによりお客様のwell-beingを実現し、地域の皆様とともに東京の魅力と価値を共創していきます。また、「my! 東京MaaS」を推進し、様々なサービスを提供する事業者と連携したお出かけを提案するとともに、多様な移動手段を一元的に提供し、お客様の利便性を高め、新たな需要を喚起していきます。また、クレジットカードのタッチ決済及びQRコード(注)を活用した乗車サービスの実証実験を開始予定です。

 


(注)QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

 

また、当社は2024年3月に交通・観光プラットフォーム事業会社であるリンクティビティ株式会社と資本業務提携を実施しました。企画乗車券の販売増強、インバウンド向け新商品の開発を推進します。

 


 

5. 新技術の導入とDXによる鉄道オペレーションの進化

新技術の導入、開発やDXの推進を図るとともに、「将来にわたる安心の提供」の実現と「社員の新たな働き方」の確立に向けた「次世代型業務変革プロジェクト」を推進し、お客様の生活様式の変化や生産年齢人口の減少といった経営環境の変化に適応することで、事業運営の持続性を向上させ、企業価値の向上を図っていきます。

 

③ 都市・生活創造事業の成長等により東京に集う一人ひとりの活き活きとした毎日に貢献

1.不動産事業の拡大とまちづくりとの連携

賃貸住宅(弥生町五丁目用地開発)やホテルの増築棟(池袋二丁目用地開発)の新築工事を進めています。また、新宿駅西口地区開発計画(竣工予定:2029年度、延床面積:251,000㎡、共同開発者:小田急電鉄・東急不動産)に並行して、関係者とともに新宿駅周辺の価値向上につながる持続可能なエリアマネジメントの実現を目指し、取組を進めています。今後も、東京という「都市」を創造する不動産開発を強化していくとともに、駅周辺の都市開発と一体となって魅力的な空間の構築を図ることで、人やまちの進化に貢献していきます。

 

2.お客様の「新たな日常」を支える各種事業の展開

流通事業において、浦安駅の高架下の商業施設(2024年度開業予定)等における駅まち一体の賑わいを創出するような既存施設のリニューアルと未利用・低利用地を有効活用した開発を推進しています。広告事業において、中づりやまど上、駅ばりポスターの貸切商品等、クライアントのニーズを捉えた柔軟な媒体の販売を展開しています。半蔵門線渋谷駅においては、多くの人が行き交うコンコースに沿って並ぶ大型ポスターボード「半蔵門線 渋谷プレミアムセット」や、コンコース動線に正対する約94インチのLEDサイネージ「渋谷55ストリートビジョン」への広告掲出、さらにオプションとして「柱巻広告」を追加することでコンコース全体をジャックすることが可能となる広告サービスである「渋谷駅集中展開」の提供を行っております。今後も、流通事業、広告事業及び情報通信事業の展開や成長を通じて、お客様の新たな日常を支え、ニーズに迅速に対応することにより、より豊かな生活の実現に貢献していきます。

 

3.海外鉄道ビジネスの拡大・新規ビジネスの開発推進

今後の当社の成長を支える源泉の1つとすべく、海外鉄道ビジネスへの参画やその拡大を図り、海外各都市の持続的な発展に向けた取組を進めるとともに、当社にないノウハウを持つ様々な分野の方々とスピード感をもって連携し、社会の新しいニーズに合わせた事業の開発により、多様なライフ・ワークスタイルの実現に貢献していきます。

 

④ ESGの取組による持続可能な社会の実現への貢献

1.脱炭素・循環型社会への貢献

脱炭素社会への取組として、TCFD提言への賛同及び情報開示や、省エネルギー・再生可能エネルギー施策等を推進するとともに、循環型社会への取組として、資源の分別、リサイクルや廃棄物の削減等をより一層推進することで、持続可能な社会の実現を目指していきます。

 

2.安全文化の醸成、人財育成を通じた経営基盤の強化

各種訓練や研修を通じて、お客様の安全を第一に、安全・安定輸送の確保に対する社員の使命感・技術力を高めるとともに、時代のニーズに即した知識・技能を備えた人財を育成していきます。また、社員の働きがいの創出や社員とその家族のこころとからだの健康づくりに取り組むことで、首都東京の都市機能を支える企業グループとして成長していきます。さらに、デジタル技術の活用やデータ分析のさらなる推進のため、社内を牽引するデジタル人財の育成を強化し、業務変革や新しい領域でのビジネス展開につなげていきます。

 

3.人権の尊重やDE&Iの推進、ガバナンス強化等を通じた経営基盤の強化

社員の「自律」・「挑戦」・「協働」を促し、働きがいを高め、多様な人財が活躍できる職場づくりを推進するとともに、サステナビリティ経営の推進を図るべく、ステークホルダーとの対話を通じて、各種取組を確実に実行していきます。

 

当社グループは、中長期的視点で期待される様々な施策を実現していくとともに、新たな価値の創造により、持続的な企業価値の向上を図り、全てのステークホルダーから信頼され、選択され、支持される企業グループを目指していきます。

 

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 

当社グループは、2023年3月24日に中期経営計画「東京メトロプラン2024」における経営目標値を変更しました。引き続き、キャッシュ創出力を持続的に向上させていくという観点から3か年連結EBITDA総額、本業から得られるキャッシュと負債のバランスを踏まえて一定の財務健全性を確保するという観点から連結純有利子負債/EBITDA倍率、これまでの積極的な設備投資に伴う総資産・営業費の増加を踏まえた上でも一定の資産効率性を確保するという観点から連結ROAの3つを定め、目標値を上方修正しています。なお、目標値は当社グループの経営上の目標を示すものにすぎず、その達成を保証するものではありません。当該目標の達成については、後記「3 事業等のリスク」に記載しているリスクの顕在化により影響を受けます。

 

経営指標

2025年3月期末目標

3か年連結EBITDA総額(注1)

3,600億円
(2023年3月期から2025年3月期までの3か年総額)

連結純有利子負債/EBITDA倍率(注2、3)

7.7倍

(新線除く 6.3倍)

連結ROA(注3、4)

3.2%

(新線除く 3.5%)

 

(注)1 営業利益に減価償却費を加え、簡易的に計算したものとします。
   2 (債務残高-現金同等物)/(営業利益+減価償却費)で計算したものとします。
   3 新線建設推進長期借入金(1,921億円)及び新線建設費を含めた数値とします。
    4 営業利益/((期首総資産+期末総資産)/2)で計算したものとします。

 

 

「東京メトロプラン2024」において目標とする経営指標である連結EBITDA、連結純有利子負債/EBITDA倍率、連結ROAに関連する各連結指標並びにセグメント毎の連結経営指標の推移は以下のとおりです。

 

回次

第16期

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

第1四半期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2024年6月

営業収益(注)2

(百万円)

433,147

295,729

306,904

345,370

389,267

101,950

 

運輸業

(百万円)

383,889

255,784

276,255

312,260

356,467

93,445

 

不動産事業

(百万円)

13,913

13,474

13,630

13,740

13,654

3,520

 

流通・広告事業

(百万円)

41,750

31,086

21,746

23,656

23,920

6,044

 

その他

(百万円)

3,402

3,160

3,308

3,707

3,726

998

 

調整額

(百万円)

△9,808

△7,776

△8,035

△7,994

△8,500

△2,058

営業利益又は

営業損失(△)(注)2

(百万円)

83,917

△40,299

△12,117

27,777

76,359

29,097

 

運輸業

(百万円)

70,999

△50,791

△23,656

14,604

63,785

25,641

 

(営業利益率)

(%)

(18)

(△20)

(△9)

(5)

(18)

(27)

 

不動産事業

(百万円)

4,667

4,499

4,609

5,347

4,563

1,369

 

(営業利益率)

(%)

(34)

(33)

(34)

(39)

(33)

(39)

 

流通・広告事業

(百万円)

8,327

5,344

6,793

7,687

7,969

2,039

 

(営業利益率)

(%)

(20)

(17)

(31)

(32)

(33)

(34)

 

その他

(百万円)

52

43

40

35

△64

18

 

(営業利益率)

(%)

(2)

(1)

(1)

(1)

(△2)

(2)

 

調整額

(百万円)

△129

604

96

103

106

28

EBITDA(注)3

(百万円)

166,580

46,475

76,101

98,155

150,106

46,660

 

運輸業(注)4

(百万円)

149,964

31,835

60,588

81,567

133,968

42,314

 

不動産事業(注)4

(百万円)

6,903

6,854

6,947

7,536

6,881

1,969

 

流通・広告事業(注)4

(百万円)

9,902

7,167

8,461

8,943

9,248

2,338

 

その他(注)4

(百万円)

75

63

61

47

△50

22

有利子負債残高

(百万円)

756,051

903,872

971,295

1,139,988

1,118,898

1,107,210

現金及び現金同等物(注)5

(百万円)

65,542

70,820

111,664

88,982

90,665

68,678

純有利子負債(注)6

(百万円)

690,508

833,052

859,630

1,051,006

1,028,233

1,038,532

連結ROA(注)7、9

(%)

4.9

△2.3

△0.7

1.5

3.8

純有利子負債/EBITDA倍率(注)8、9

(倍)

4.1

17.9

11.3

10.7

6.9

 

(注) 1 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第18期の期首から適用していますが、上表の第17期以前の連結経営指標等については、当該会計基準の変更を反映していません。

2 セグメント毎の営業収益はセグメント間の内部営業収益又は振替高を含めた金額を記載しています。また、セグメント毎の営業利益又は営業損失(△)は、セグメント間の取引消去前の金額を記載しています。なお、セグメント毎の営業利益率は、セグメント毎の営業利益又は営業損失(△)をセグメント毎の営業収益で除して算出しており、小数点以下第1位を四捨五入しています。

3 営業利益又は営業損失(△)+減価償却費により算出したものです。

4 セグメント毎の営業利益又は営業損失(△)+セグメント毎の減価償却費により算出したものです。なお、セグメント利益又は損失(△)の調整額は含めていません。

  また、第20期におけるセグメント毎のEBITDA比率は以下のとおりです。なお、EBITDA比率については、セグメント毎のEBITDA÷各セグメント毎EBITDAの合計により算出したものであり、小数点以下第1位を四捨五入しています。

 

第20期(2024年3月期)

運輸業

(百万円)

133,968

(EBITDA比率)

(%)

(89)

不動産事業

(百万円)

6,881

(EBITDA比率)

(%)

(5)

流通・広告事業

(百万円)

9,248

(EBITDA比率)

(%)

(6)

その他

(百万円)

△50

(EBITDA比率)

(%)

(△0)

 

5 現金及び現金同等物は、手許現金、随時引き出し可能な預金及び容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない取得日から3か月以内に償還期限の到来する短期投資からなっています。

6 有利子負債残高-現金及び現金同等物により算出したものです。

7 営業利益又は営業損失(△)/((期首総資産+期末総資産)/2)で計算したものです。また、小数点以下第2位を四捨五入しています。

8 小数点以下第2位を四捨五入しています。

9 四半期連結累計期間における指標については、記載を省略しています。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

従前、サステナビリティに関する議論は社長を議長とするサステナビリティ推進会議で行ってきましたが、2023年4月、新たに社内規程化したサステナビリティ推進委員会を設置しました。全業務執行役員をメンバーとし、必要に応じて外部有識者を交えて議論を進める形とすることで体制を強化しています。引き続き重要案件については取締役会に付議し、より一層サステナビリティ経営の推進を図っています。


 

②戦略

当社グループは、「安心で、持続可能な社会」の実現を目指し、2022年に策定したサステナビリティ経営ビジョン及び10個のサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に基づき、環境・社会・経済の持続可能性に配慮し、事業を通じた社会課題の解決を図るべく、サステナビリティを経営の中心に据え、対応方針や具体的な目標を設定し、サステナビリティ経営を推進しています。

 

 


 


 


 

③リスク管理

サステナビリティ推進委員会において、サステナビリティ戦略に関するフォローアップを実施し、全社的なリスクマネジメントとの連携を含め、サステナビリティに関するリスクの管理を進めています。具体的には水害などを含む自然災害リスクやハラスメントリスクを全社リスクとして位置付けているとともに、2023年度より環境・人権に関するリスクも個別リスクとして、管理しています。

(リスクマネジメント体制等の詳細については、当社のサステナビリティレポート2023(https://www.tokyometro.jp/corporate/csr/report/pdf/sr2023.pdf)をご覧ください。)

 

④指標及び目標

社会課題の解決を着実に行うため、マテリアリティごとに2030年を目標とするKPI(「(1)サステナビリティ全般 ②戦略」をご覧ください。)を設定しています。これらの進捗を報告することで、社会課題の解決に向けた取組を推進していきます。

 

 

(2)気候変動

①ガバナンス

「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」と同様の体制にて議論を行っています。社長が議長を務めるサステナビリティ推進委員会で環境基本方針や長期環境目標、気候関連非財務指標の設定等を行うとともに、気候関連のリスク/機会の検討・承認・フォローアップを実施し、重要案件は取締役会に付議しています。

また、気候変動や資源循環関連対応を中心とした環境保全活動を全社的に推進するため、サステナビリティ推進部担当執行役員が委員長を務める環境委員会において、環境目標に対する各部門の活動進捗状況の検証・評価、結果の報告等を行い、マテリアリティテーマ4「地球にやさしいメトロに」の実現に向けた環境保全活動の継続的な改善に取り組んでいます。さらに、東京メトログループ各社でも環境マネジメントシステムを運用しており、グループ共通の環境目標及びグループ会社ごとの環境目標を設定し、グループ全体で環境保全活動に取り組める体制としています。

 

②戦略

他の交通手段と比較してCO₂排出量が少ない鉄道事業の特性を活かし、 運輸部門の脱炭素化に貢献しています。また、気候変動による水害の激甚化を想定し、浸水深に応じた駅出入口の止水板の改良、防水扉の設置、上屋建て替えによる完全防水型出入口への改良、換気口浸水防止機の改良、換気塔の嵩上げ、地上駅・地上設備の外壁の鉄筋コンクリート化、トンネル坑口への防水ゲートの設置等のハード面の対策とBCP(事業継続計画)の策定や関係自治体等との連携等のソフト面の対策を行っています。

さらに、長期環境目標「メトロCO₂ゼロ チャレンジ 2050」を設定し、当社グループ全事業が排出するCO₂排出量について「2030年度に△50%(2013年度比)」「2050年度実質ゼロ」を目指しています。2024年3月には当社の持つ環境優位性によるCO₂削減貢献量を算出・公表するとともに、同年4月からインターナルカーボンプライシングを導入し、省エネの推進及び再エネの推進の加速を図ることで、各ステークホルダーとの連携を深め、モーダルシフトや当社線のご利用を促し、脱炭素社会の実現への寄与を図ります。

なお、当社はTCFD提言への賛同を表明しており、それに向けた同フレームワークに準じた情報開示を行っています。


 


 

③リスク管理

脱炭素社会実現シナリオ、温暖化進展シナリオの各シナリオ分析に基づき12のリスクと5の機会を設定しています。今後は、設定したリスクについてサステナビリティ推進委員会においてTCFD提言に基づく気候関連リスクのフォローアップを実施するとともに、全社的なリスクマネジメントとの連携も含めた気候関連リスクの管理体制構築の検討を進めます。

なお、「主な移行・物理的リスク/機会」については、「(2)気候変動 ②戦略」に記載しています。

 

④指標及び目標

当社グループでは、長期環境目標「メトロCO₂ ゼロ チャレンジ 2050」を設定し、当社グループ全事業が排出するCO₂排出量について「2030年度に△50%(2013年度比)」「2050年度実質ゼロ」を目指しています。

当社グループが排出するCO₂量は、そのほとんどが電力由来です。これまでもエネルギー効率に優れた車両への更新等により省エネを推進してきており、今後も継続していきます。その上で、2030年度時点では、一部の電力を再生可能エネルギー由来の電力に置き換えることで2030年度目標(2013年度比△50%)の達成を目指します。2030年度から2050年度に向けては、大規模再生可能エネルギーによる電力調達を実施し、電力を100%再エネ由来電力に置き換える方針です。なお、電力以外のその他燃料からのCO₂排出量は僅少ですが、クレジットによるオフセット等を活用し、2050年度実質ゼロ実現を目指します。

なお、2023年度の連結CO₂排出量(Scope1、2)は、36.1万t、Scope3におけるCO₂排出量は、64.3万t(注)となりました。当該排出量については、第三者認証を取得予定です(第三者認証取得に伴い数値が変動する可能性があります。)。

項目

2030年度目標

2013年度

(基準年度)

2023年度実績

基準年度増減

CO₂排出量(Scope1、2)

50%削減

58.4万t

36.1万t

△38.2%

CO₂排出量(Scope3)

64.3万t

 

2024年4月からは、丸ノ内線・南北線に水力発電由来の再生可能エネルギーを導入しました。よって、2024年度からは両路線で使用する全電力がCO₂排出量ゼロとなり、CO₂排出量(Scope1、2)も減少します。

環境負荷低減に向けた取組、リスクマネジメント体制等の詳細については、当社のサステナビリティレポート2023(https://www.tokyometro.jp/corporate/csr/report/pdf/sr2023.pdf)をご覧ください。

(注)Scope3の対象カテゴリーはカテゴリー1 21%、カテゴリー2 61%、カテゴリー3 12%、その他6%(カテゴリー5、6、7、13)。カテゴリー1のみ単体。Scope3の目標設定等については今後検討します。

 

(3)人的資本・多様性

①ガバナンス

「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載しています。

 

②戦略

1.人財戦略の全体像

[『構造変革・新たな飛躍』の実現に向けた“あるべき組織の姿”]

経営環境の変化や将来的な生産年齢人口の減少が見込まれる中、社員の働き方や業務の在り方についても転換期を迎えています。このような状況のもと、DX等により既存の勤務形態(時間・場所)に捉われない、柔軟かつ自律性の高い働き方を実現し、人手に頼っていた業務を変革することで、社員一人ひとりがより創造的な業務に従事することを目指しています。

また、多様な社員がお互いに認め合い、アイデアを出し合い、切磋琢磨することでさらなる価値を創出し続ける組織となることを目指していきます。

 

目指す組織像の実現に向けて、DE&Iをさらに推進し、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる企業風土を醸成していきます。2023年には、人事部担当執行役員を委員長とした「DE&I推進委員会」を設置し、DE&I推進に関わる事項を協議・報告する場を設けるとともに、「DE&I宣言」を制定しました。

 

[人財戦略の中核となる求める人財像]

『構造変革・新たな飛躍』の実現のために、求められる基本的な3つの人財像を新たに策定しました。

(1)「自律」できる人財

高い規範意識のもと、自ら学び、自分の考えを大切にして発信できる

(2)「挑戦」できる人財

変化の兆しを感じ取り、変化を恐れず行動できる

(3)「協働」できる人財

異なる価値観を受容・尊重し、周囲と連携することができる

求める人財像に合致するよう、人財戦略を組み立て、人的資本経営の実現を図ります。

 

2.人財の多様性の確保を含む人財育成に関する方針(注)

[メンバー・チームの安心感を高め、成長と挑戦を促すリーダーシップの発揮]

社員一人ひとりが、「自律」「挑戦」を実現し、社員同士の「協働」により組織としてのアウトプットを最大化できるよう、まず組織のリーダー自身の行動を変革していきます。具体的には、リーダーが、最前線で業務に従事している組織のメンバーの声に耳を傾けるとともに、安心感を高め挑戦の意欲を引き出すリーダーシップを発揮できるようにすることを目指します。

 

[求める人財像の実現に向けた人財育成]

当社にとって変わらぬ責務である「安心の提供」を実現するための研修・訓練を日々、継続的に行うとともに、「「自律」・「挑戦」・「協働」の実現に向けたマインド醸成、知識・スキル向上」に向けた各種研修等を実施しています。社員がより自律的に学べる機会を提供するために、動画視聴型ビジネススクール等の受講を促進しています。

さらに、時代のニーズに即した知識・技能を備えた人財を育成していきます。デジタル技術の活用やデータ分析のさらなる推進のため、社内を牽引するデジタル人財の育成を強化し、業務変革や新しい領域でのビジネス展開につなげていきます。

また、人財育成の質を維持することを前提に、研修・訓練の実施内容及び実施方法の最適化を図っています。

 

[知識・技能の向上と行動変革に向けた取組]

社員一人ひとりの考えや主体性を重視し評価するとともに、幅広い選択肢のもとキャリアを形成できるようにしていきます。自部門に閉じた業務遂行だけでなく、社内外の様々な価値観に触れる機会を提供することで、社員のさらなる成長を促していきます。

 

<DE&I推進の取組>

全社員を対象として、DE&Iの必要性を理解し、多様な価値観を持つ社員が活き活きと働くことができる企業となることを目的に研修を実施しています。

 

<評価・報酬等各種人事制度>

人財育成・処遇面から社員のモチベーションを維持・向上させることを目的とし、一人ひとりの活躍に応じた適切な評価、役職・評価結果に応じたメリハリのある報酬、適切な評価による登用・配置等が実現できるよう各種人事制度を検証し、必要に応じて見直しを行います。

 

<1on1ミーティング>

上司・部下間のコミュニケーションの絶対量を増やし、部下の自律的な業務遂行やキャリア形成を支援することを目的として、2020年度より順次、本社及び現業の監督職を対象として導入しました。2023年10月からは現業の係員級にも同様の取組を拡大し、全社員が対象となりました。

 

 

<社内複業制度>

社員が新たな視点やスキルを獲得すること及び新たな価値の創出を目的として、本社各部が募集する業務について、職種、部門を越えて一時的に従事する社内複業制度を2022年度より導入し、2023年度末までに8件の募集事例、累計活用実績37名の活用事例があります。

 

3.社内環境整備に関する方針(注)

[働きやすさ向上施策の推進]

交替勤務という特殊な勤務形態であることを踏まえ、ライフステージに合わせた働き方を実現するため、働きやすさ向上を進めています。

 

<育児休職制度>

育児休職制度については、子が3歳の年度末まで取得可能であり、2022年10月より、男性の育児休職制度を一部有給化することで従来よりも取得しやすい制度としました。なお、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定・実施等により「くるみん認定」を受けています。

 

<短時間勤務制度>

1日の労働時間又は労働日数を減らす勤務制度であり、子が小学校3年生まで取得可能です。

 

<不妊治療支援>

不妊治療を理由に最大1年取得可能な休職等の制度を設けており、アプリを活用して妊活の疑問等について専門家のアドバイスを受けられるサービスを社員に提供しています。

 

<職場環境整備>

長期的な計画に基づき、職場環境の整備等を推進することにより、誰もが長く活躍できる職場を実現していきます。

 

[健康経営の推進]

人事部担当執行役員を委員長とした「健康経営推進委員会」において、健康課題を確実に解決していくために重点取組項目(喫煙対策・運動・睡眠等)の目標値を定め、組織的かつ計画的に健康づくり活動を推進しています。

また、「東京メトログループ健康宣言」をふまえ、当社グループの社員・会社・健康保険組合が一体となって、お客様に安心を提供し続け、社員とその家族が幸せで豊かな人生を送れるよう、こころとからだの健康づくりに積極的に取り組んでいます。

社員が心身ともに健康で働ける職場づくりに向けた取組を実施した結果、優良な健康経営を実践している企業として、2024年3月に健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定されました。

 

[労働安全衛生の推進]

お客様に安心して当社グループをご利用いただくためには、社員が万全な状態で業務を遂行できる職場環境づくりが必要です。社員の安全確保と健康保持、職場環境の維持向上を図るため、職場ごとに安全衛生委員会等を設置し、労働災害の防止、疾病の予防等について調査・審議しています。

技術部門では、危険予知トレーニング活動やゼロ災運動、リスクアセスメント等の取組を通じて、社員の安全意識の高揚や職場における安全水準の向上に努めています。一方で、駅係員や乗務員への暴力行為による労働災害が多発していることから、駅に暴力行為の防止を呼びかけるポスターを掲出する等、鉄道業界全体で暴力行為の撲滅に向けた啓発活動に取り組んでいます。

 

(注)施策については、特に記載がない限り、当社における施策を記載しています。

 

 

③リスク管理

「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」に記載しています。

 

④指標及び目標

項目(注)1

指標

2024年3月期目標

(注)1

2024年3月期実績

(注)1、2

2025年3月期目標

(注)1

人財育成方針

メンバー・チームの安心感を高め、成長と挑戦を促すリーダーシップの発揮

部長研修受講率

100

92

100%

新任マネジメント層への研修受講率

100

98

100%

求める人財像の実現に向けた人財育成

従業員あたり研修受講時間

前年度実績

72.1時間/人

並み

75.6時間

前年度実績並み

社内環境整備方針

働きやすさ向上施策の推進

女性社員比率

2030年度10以上

7.0

2030年度10%以上

健康経営の推進

健康経営優良法人認定

毎年度認定取得

2024認定取得

毎年度認定取得

労働安全衛生の推進

労働災害件数(鉄道重大災害件数)

0

1

0件

 

(注)1 連結ベースでの指標・目標を定めていないことから、当社における指標、実績及び目標を記載しています。

(注)2 実績の対象期間は、女性社員比率(2023年4月1日時点)を除き、2024年3月期となります。

<人材戦略に関する詳細はこちらをご覧ください。>https://www.tokyometro.jp/corporate/work_life/index.html

 

(4)人権

①ガバナンス

当社グループは、グループ理念「東京を走らせる力」のもと、「安心で、持続可能な社会」の実現に向け、当社グループの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を尊重すべく、2023年3月に「東京メトログループ人権方針(以下、「本方針」といいます。)」を定めました。本方針は、グループ理念、私たちの決意、サステナビリティ経営ビジョン、行動規範・行動基準に基づき、人権尊重の取組についての約束を示すものであり、人権に関する国際規範等を踏まえ、東京メトログループ全ての役員及び社員(雇用形態を問わない)に適用するとともに、取引先・パートナー等に対しても、本方針の理解と支持を求め、ともに人権尊重を推進します。

本方針を実現するため、当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」と同様、取締役会の監督のもと、サステナビリティ推進委員会を中心とした推進体制を構築し、人権尊重の取組を進めています。

 

②戦略

当社グループは、以下の課題を優先して取り組むべき人権課題として認識しています。なお、以下の課題は有識者意見交換会の内容を反映しており、社会の変化や事業の動向などを踏まえ、適宜見直しを図ります。

・安全に商品・サービスの提供を受ける権利の侵害

・安全かつ健康的な作業・生活環境を享受する権利の侵害

・過重労働の発生、休息・余暇を持つ権利の侵害

・ハラスメントの発生

・プライバシーの侵害

・雇用条件・待遇における差別

・機会・評価における差別

人権を尊重する責任を果たすために、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて、人権への負の影響を特定し、その防止又は軽減に取り組みます。対応策に優先順位をつける必要がある場合には、規模、範囲、救済可能性を考慮し、人権に対する最も深刻な負の影響に対処することを優先します。その上で、人権への負の影響を直接的又は間接的に引き起こした場合は、適切な手続きを通じて、是正及び救済に取り組みます。サプライチェーンにおいて東京メトログループの取引先・パートナー等が人権への負の影響を引き起こしている場合、東京メトログループは、当該関係者に対し、人権を侵害しないよう働きかけを行います。2023年12月には、取引先に遵守を求めている「東京地下鉄株式会社 調達ガイドライン」を改定し、人権や環境に関する指針を充実させました。さらに、2024年3月、取引先との共存共栄を進めるため「パートナーシップ構築宣言」を公表しています。

2023年度は、取引先、お客様、社員の各ステークホルダーにおける人権への負の影響を特定し、その防止又は軽減に取り組むために影響調査を実施しました。

影響調査の結果、取引先については、対応が必要な企業に対して是正措置を申し入れ、是正を依頼しました。また、取引金額等を踏まえて5社を選定しヒアリングを行い、人権デュー・ディリジェンスへの取組への理解を求め、リスク防止及び軽減へ向けた協力を依頼しました。

お客様については、「提供する施設の安全衛生」、「多様なお客様が利用できる環境」について不足感を感じており、人権課題として認識している可能性があることが判明しました。今後も継続して影響調査を行うとともに、各種清掃業務の着実な実施や、バリアフリー移動経路情報等を伝える「東京メトロmy!アプリ」や「バリアフリー便利帳」の更なる周知を図っていき、お身体の不自由なお客様をはじめとした全てのお客様に安心してご利用いただけるよう、エレベーター、エスカレーター及びバリアフリートイレの整備を進めます。

社員については、「人権方針の理解不足」「相談窓口の認知不足及び利用に係る不安」「ハラスメント」等に課題が見られました。今後も継続して、各種研修を通じて人権方針の浸透や相談窓口の周知徹底・信頼性向上を推進することで、さらなる人権尊重の取組を進めていきます。また、2024年3月には、暴力行為等のカスタマーハラスメントに対して毅然と対応することを表明する「東京メトログループカスタマーハラスメント対応ポリシー」を制定し、カスタマーハラスメントの抑制、安全な就業環境の確保を図っています。

2024年4月には、多様なステークホルダーとの価値共創が重要となっていることを踏まえ、「マルチステーク ホルダー方針」を策定しました。今後も、関連するステークホルダーと誠実に対話し協議することにより、人権尊重の取組の向上及び改善に努めるほか、役員及び社員に対して、教育・研修を通じて取引先・パートナー等に対しても、人権を侵害しないよう理解浸透に努めます。

■人権尊重に向けた取組の流れ


 

③リスク管理

当社グループの事業活動を通じ人権を侵害する行為が発生した場合には、当社グループが社会的非難を受け、業績等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて、人権への負の影響を特定し、その防止、軽減に取り組んでいきます。

また、「(4)人権 ①ガバナンス」に記載している推進体制の構築に合わせて、当該リスクに関しての評価や管理を行うための体制を整備していきます。

なお、詳細なリスク情報は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)自然災害、感染症、気候変動等に関連するリスク ④人権について」に記載しています。

 

④指標及び目標

「(1)サステナビリティ全般 ②戦略」に掲載している非財務KPIの2024年度目標値(中計)に沿って、取組を進めていきます。

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについては、次のようなものがあります。

なお、当社グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や蓋然性、リスクの性質等に応じて、分類しています。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。また、以下のリスクは当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、予想される主なリスクを例示したものです。

 

(1) 当社グループの経営環境に関連するリスク

① 人口動向等について

当社グループは、東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開しています。わが国における経済的中心地である東京都区部に強固な基盤を有することは、高い営業収益力を保つ上で当社グループの強みの一つであり、この営業基盤の特性を最大限活用していきます。

しかしながら、首都圏の人口動向については、中長期的には減少傾向となることが予想されています。また、首都圏における就業・就学人口の減少、高齢化の進展等による人口構造の変化や、テレワークやウェブ会議の進展・定着とこれに伴う通勤・移動需要の減少等の社会構造の変化が進んだ場合、さらには今後、首都圏における経済情勢の大きな変化、大企業の本社機能又は政府機関の東京都区部からの移転等が生じた場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 電力料金、原材料価格及び労務費の高騰について

当社グループは、今後も効率的な事業運営に努めていきますが、列車の運行等に際し多大な電力を消費するほか、継続的な設備投資やトンネルをはじめとした鉄道設備の維持補修等を行っていることから、電力料金、原材料価格及び労務費の動向が、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、2022年度の電力料金の大幅な高騰を踏まえ、2023年度より調達先を変更し、従前より燃料価格や市場価格の影響を受けにくい新たな電気料金制度のもとで電力を使用しておりますが、電力料金が高騰し、それが長期にわたって継続する場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、これらのコストが上昇する要因としては、円安の進行や燃料価格等の高騰、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増額、労働需給のひっ迫等が想定されます。

 

(2) 自然災害、感染症、気候変動等に関連するリスク

① 自然災害・事故等について

当社グループは、安全の確保を常に念頭に置き、技術面からの更なる安全性向上に向けた取組を実施するとともに、安全管理規程に基づく安全マネジメント体制の運用等制度面からの取組も推進し、安全の確保を目指しています。さらに、首都直下地震や大規模浸水等に備えた鉄道事業における自然災害対策として、施設の耐震性の強化、帰宅困難者対策、洪水等による浸水対策等の諸課題への取組を強化するとともに、危機管理機能の強化を推進しています。

しかしながら、地震・洪水・台風等の自然災害、大規模停電又は電力の使用制限や、これらに伴う保守部品等のリソース供給不足、重大な犯罪行為やテロリストによる攻撃等により当社の路線の運行に支障を来す事態となった場合や、当社の路線において重大な事故等が発生した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

特に当社の路線、コンピューターシステム及び本社施設等は、そのほとんどが東京都区部に位置していることから、当該地域に大地震をはじめとする重大な自然災害・事故等が発生した場合には、当社グループの多くの施設等に被害が及ぶ可能性があります。また、当社の路線、施設の大半は地下にあるため、火災、浸水等の災害が発生した場合には、その被害が大きくなる可能性があり、これにより、事業が復旧するまでに相応の時間を要する等、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 感染症について

新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が当社沿線地域において大規模に流行し、外出自粛等により通勤・通学・業務・私事利用を問わず鉄道利用者が大幅に減少した場合、世界的な流行に伴い訪日外国人が大幅に減少した場合や、列車運行等の事業運営に支障を来す場合等には、当社グループの業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 気候変動について

近年、気候変動は大きな社会経済リスク及び機会をもたらす要因の一つであり、世界中の政府や企業において脱炭素化の動きが広がっています。東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開する当社グループは、自然災害による事業リスクに加え、主要事業である鉄道事業が電力を消費するという特性を有することから、当社グループのサステナビリティ戦略を推進していくことを目的に、2019年4月からサステナビリティ推進体制を新たに整備し、社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)テーマに「地下鉄を安全に、そしてつよく」及び「地球にやさしいメトロに」を掲げ、気候変動問題に関する取組を強化してきました。なお、サステナビリティ推進会議については、2023年4月からサステナビリティ推進委員会と名称を改め、体制を強化しました。

当社グループは、このような取組を引き続き推進していく予定ですが、今後、政策・法規制の見直しやエネルギーミックスの変化による電力料金の上昇等のほか豪雨の激甚化による鉄道施設の損傷・沿線地域の被災、平均気温の上昇による感染症の発生・拡大等が生じた場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは2022年3月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、主要事業である鉄道事業への気候関連リスク/機会を開示しました。当社グループは、開示情報を活用してステークホルダーの皆様との対話を活性化させ、気候変動問題に関する取組を今後も推進していく予定です。しかしながら、このような取組にも関わらず、ステークホルダーの皆様から気候変動に関する情報開示に十分に対応していないと判断される場合には、当社グループの社会的信用の低下等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 人権について

日本国内における労働力人口減少や働き方改革等といった雇用環境等の変化が生じる中で、当社グループの事業に関わる人的資本は多様化しており、社会的、国際的に人権意識が一層高まっていることも踏まえ、人権問題に対しては、より多面的に対処する必要性が高まっていると考えています。そのため、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に「人権の尊重」を掲げ、人権尊重に向けた取組を強化し、2023年3月に「東京メトログループ人権方針」を制定・公表しました。

しかしながら、こういった取組にも関わらず、当社グループ内のみならず、取引先、事業パートナー等を含む当社グループを取り巻く国内外のステークホルダーに関し、当社グループの事業活動を通じ人権を侵害する行為が発生し、当社グループの社会的信用の低下が生じた場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 当社グループの経営に関連するリスク

① 法的規制等について

鉄道事業においては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別について許可を受ける必要があります(同法第3条)。

収益の中心となる運賃面においては、上限運賃を設定するときは国土交通大臣の認可を受けなければならず、上限運賃の範囲内で運賃を改定する場合にも、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(同法第16条)。

当社が現在取得しているこれらの国土交通大臣の許可及び認可には期間の定めは無く、当社の現在の運賃は、2019年9月5日に変更の認可を受けたものです(2019年10月1日より改定後の運賃を適用)。

なお、運賃の改定を施行するに当たっては、所定の手続を経る必要があることから、機動的な運賃の改定を行うことができない場合等には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、2021年12月に軌道法施行規則(大正12年内務省・鉄道省令)及び鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)の改正により創設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づき、バリアフリー設備の整備費等に充当するための料金を定める場合には、バリアフリー整備・徴収計画を作成の上、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(鉄道事業法第16条第4項)。鉄道駅バリアフリー料金は、第二次交通政策基本計画(2021年5月8日閣議決定)に基づき、利用者に過度の負担感を与えないものとする必要があるとされており、また、その総徴収額はバリアフリー整備・徴収計画における総整備費を超えない額とすることとされています。

当社は2023年3月18日から、運賃に加算して鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始しておりますが、法令又は運用の変更等により、バリアフリー整備・徴収計画に定めたとおりに料金の徴収ができない場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

鉄道事業を休廃止する場合には、事前に(廃止の場合は廃止日の1年前までに)国土交通大臣に届出を行うこととされています(同法第28条、第28条の2)。また、鉄道事業法、同法に基づく命令、これらに基づく処分、許可・認可に付した条件に違反した場合、正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しない場合、同法第6条に定める事業許可の欠格事由に該当することとなった場合などの際には、国土交通大臣は事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができるとされています(同法第30条)。仮に、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消しを受けた場合には、事業活動の継続に支障を来すこととなりますが、現在、同法に抵触する事実等は存在せず、事業活動の継続に支障を来す要因は発生していません。

当社は鉄道事業法に加えて、東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)や安全、環境、バリアフリー等の規制に関する様々な法令の適用を受けており、これらの法令が改正され又はその運用が変更された場合、その内容によっては当社の事業活動における柔軟性の減少、費用の増加等を招き、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法の概要は以下のとおりですが、この法律においては、国及び同法附則第11条の規定により営団から株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする旨規定されています(東京地下鉄株式会社法附則第2条)。

また、2021年4月2日に開催された、第3回交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会において、国土交通省が配布した資料には、「東京メトロが完全民営化(政府が株式を全て売却)した場合には、JR本州3社・JR九州の例を踏まえると、現行の東京メトロ法に基づく監督規定は廃止される一方、引き続き、鉄道事業法等の規定に基づき鉄道事業を運営することとなる。」旨記載されています。

(ⅰ) 制定趣旨・目的等

 東京地下鉄株式会社法は、当社の設立について定めるとともに、その目的、事業に関する事項について規定しています。同法は、鉄道事業法に加えて当社を規制するとともに、商号の使用制限等の特例措置を定めています。

 なお、東京地下鉄株式会社法に基づく政府の規制は、当社の経営の自主性の確保を前提とするものであり、毎事業年度の開始前に事業計画を国土交通大臣に提出することは求められているものの、事業計画の認可、関連事業の実施についての認可等は不要とされています。

(ⅱ) 概要

ア 国土交通大臣による認可を必要とする事項

(ア) 発行する株式又は新株予約権を引き受ける者の募集等の認可(東京地下鉄株式会社法第4条第1項)

 会社法(平成17年法律第86号)第199条第1項に規定するその発行する株式若しくは会社法第238条第1項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換若しくは株式交付に際して株式、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。

(イ) 代表取締役等の選定等の決議の認可(同法第5条)

代表取締役又は代表執行役の選定及び解職並びに監査等委員である取締役若しくは監査役の選任及び解任又は監査委員の選定及び解職の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

(ウ) 定款の変更等の認可(同法第7条)

定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く)、合併、分割及び解散の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

イ その他の規制事項

国土交通大臣への事業計画及び財務諸表の提出義務(同法第6条、第8条)、国土交通大臣の監督・命令権限並びに報告指示及び検査権限(同法第9条、第10条)が規定されています。

ウ 特例措置

(ア) 商号の使用制限(同法第2条)

当社でない者は、その商号中に東京地下鉄株式会社という文字を使用してはなりません。

(イ) 一般担保(同法第3条)

社債権者は、当社の財産について、民法の規定による一般の先取特権に次いで優先弁済を受けることができます。

 

② 鉄道事業に関する道路占用料について

当社の路線は、主として道路の地下を運行しているため、道路法(昭和27年法律第180号)第39条第1項の規定により、道路占用料徴収の対象となっていますが、本書提出日現在、指定国道及び指定国道以外の道路のいずれについても、出入口等の地上施設を除く地下施設については、各種法令・条例等の減免措置の適用により、道路占用料の全額を免除されています。このうち、指定国道の地下施設の道路占用料については、2022年12月に、国土交通省より、当社株式の上場後は、他の第三セクターの地下鉄事業者と並びを取り、道路法施行令(昭和27年政令第479号)で定める金額の10%として取り扱うこととし、当社の完全民営化後の指定国道の道路占用料の取扱いについては、現時点では取扱いを決めず、完全民営化の時期が具体化した段階で改めて協議するとの方針が示されております。かかる方針に変更があった場合や、将来において当社の完全民営化の時期が具体化した際の指定国道の道路占用料の取扱いの具体的な内容によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、指定国道以外の道路については、当社の株式上場後も継続して減免措置が適用される予定ではありますが、今後、現行の各種法令等の改正により、これらの指定国道以外の道路においてもこの減免措置が受けられなくなった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 中期経営計画について

当社グループは、2022年4月に、持続可能な鉄道事業の運営と成長戦略による収益拡大を実現すべく、「構造変革」・「新たな飛躍」を基本方針に掲げ、4つの重点戦略を設定した、2022年度から2024年度までの中期経営計画「東京メトロプラン2024」を公表しました。また、2023年3月には、コロナ禍における行動制限の緩和等による旅客運輸収入の回復や電力料金の高騰等、同計画策定時の前提が大きく変化したことを踏まえ、設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を内容とする「東京メトロプラン2024」の変更を行いました。

中期経営計画においては、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、「構造変革」に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、「新たな飛躍」を目指した取組を推進することを基本方針としています。

しかしながら、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因により中期経営計画に掲げる取組が計画どおりに進捗しない可能性や、中期経営計画を策定するための各種の前提が変化する可能性があります。このような場合には、当社グループは、かかる状況や変化に対応した成長戦略又は事業運営を立案又は実行するよう努めますが、適時に成長戦略や事業運営を変更し、又は改善することができないなど様々な要因により、中期経営計画で掲げた経営目標について、当初計画した期間内に又は当該期間経過後においても達成できない可能性があります。

 

④ 他事業者との競合等について

当社グループは、運輸業において一部の鉄道事業者及びタクシー、バス等の交通機関と競合関係にあるほか、自家用車等の他の交通手段の利用の多寡にも影響を受けます。したがって、他事業者による新線開業や、他事業者同士による相互乗り入れ等の新しいサービスの提供は、当社の路線の輸送人員を減少させ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は他事業者との相互乗り入れ等により、当社の利用者の利便性向上及び輸送人員の拡大を図っていますが、自然災害や事故、停電又は電力の使用制限その他の理由により相互乗り入れ等のサービスを提供できなくなった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 長期債務について

当社は、前身の営団時代から地下鉄ネットワークの整備拡充に努め、その建設資金の多くを財政融資資金法(昭和26年法律第100号)に基づく財政投融資による政府からの借入金及び交通債券等の長期資金にて調達してきました。また、当社は、これら債務の償還や鉄道事業を中心とした継続的な設備投資のために、社債の発行や借入金により長期資金を調達しています。さらに、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)、南北線延伸(品川・白金高輪間)及び豊洲駅の改良事業(以下、「有楽町線、南北線延伸事業等」といいます。)に充当するため、2023年3月30日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、「鉄道・運輸機構」といいます。)から、1,921億円の長期資金(新線建設推進長期借入金)を調達しており、2024年3月31日現在の社債及び借入金残高は1兆1,188億9千8百万円となっています。

なお、新線建設推進長期借入金による資金は、分別管理を目的として信託を設定しており、2024年3月31日現在の当該長期借入金残高は1,921億円となっています。

当社グループは、債務残高を収益力との関係性において一定の水準に抑制するなど財務規律を堅持し、財務健全性の維持・向上を図っていますが、金利が大幅に上昇した場合や当社の信用格付が引き下げられた場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 不動産事業及び流通・広告事業等について

今後の人口動向やそれに伴う競争激化等の経営環境の変化を踏まえると、運輸業の拡大には一定の限度があるため、当社グループの今後の成長及び収益基盤の強化という観点から、不動産事業及び流通・広告事業等、運輸業以外の事業分野である事業領域・規模の拡大を追求することが将来的な課題となっています。そのため、今後さらにこれら事業の積極的な展開を促進していきますが、当社グループの経営資源の制約や経済環境の悪化等で、期待される収益が獲得できず、又は、新たな事業分野におけるリスクが顕在化した場合等には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 都営地下鉄との一元化について

特殊会社である当社の使命は、東京地下鉄株式会社法の趣旨を踏まえて、できる限り速やかに完全民営化を目指すことであると認識しており、そのため、財務基盤の充実・強化を図るなどにより、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都との合意に基づき、将来の完全民営化を見据えつつ、当社株式の上場に向けて取り組んでいます。

当社は、当社と同じく東京都区部及びその周辺地域における地下鉄道事業を営む都営地下鉄とのサービスの一体化は、当社の利用者の利便性向上につながるものと考えており、地下鉄利用者の利便性向上への取組の検討を進めていきます。

また、当社は国及び東京都との間で、当社の完全民営化並びに当社と都営地下鉄とのサービスの一体化及び経営の一元化に関して従来から意見交換を行っています。これらの課題について具体的な解決策やサービス向上策の実現に向けて実務的な検討を行うことを目的として、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が2010年8月に設置されました。また、2013年7月には都営地下鉄と当社とのサービスの改善・一体化を推進することを目的として「東京の地下鉄の運営改革会議」が設置されました。当社・都営地下鉄間の運賃の乗換負担軽減策を含むサービスの一体化に関するこれらの協議の結果によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

他方、都営地下鉄については、公営企業という組織形態や累積欠損を抱えていること等を考慮すると、当社との経営の一元化を図るために解決されなければならない多くの問題が残されており、仮に経営の一元化を実施する場合においても、相当程度の時間を要することが想定されます。また、経営の一元化を実施する場合には、都営地下鉄の経営状況の改善や当社の企業価値向上が図られることが基本と考えますが、経営の一元化の具体的な内容によっては、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 新線建設について

当社は、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)及び南北線延伸(品川・白金高輪間)(以下「両路線」といいます。)については、沿線の開発状況等を勘案した輸送需要予測の動向を踏まえ、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都の合意に基づく十分な公的支援及び当社株式の売却が確実に実施されることを前提に、当社ネットワークに関連する両路線の整備主体となることがさらなる企業価値向上に資するものと判断し、2022年1月に国土交通大臣に対し第一種鉄道事業許可の申請を行い、同年3月に許可を受け、2023年3月に工事施行認可の申請を行いました。

しかしながら、両路線の新線建設を進めるにあたり、輸送需要を含めた事業環境の変化、想定外の建設スケジュールの長期化や追加コストの発生、公的支援の実施状況等によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

今後も当社は、両路線を除き新線建設を行わず、また、新線建設に対する協力を求められる場合には、都市鉄道ネットワークの一部を構成する事業者としての立場から、「当社の経営に悪影響を及ぼさない範囲内において行う」という方針で対応していきたいと考えています。

なお、1982年1月に免許申請を行った8号線(豊洲・亀有間14.7km)については、半蔵門線(水天宮前・押上間)の開業や輸送需要予測の減少等、免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、当社としては、整備主体となることは極めて困難と認識しています。

 

⑨ コンプライアンスについて

当社グループは、「コンプライアンスに関する規定」、「東京メトログループコンプライアンス行動基準」などの周知、徹底に加え、コンプライアンス教育を定期的に実施するなどの啓発活動を行うとともに、コンプライアンスに反する行為等を通報できる「企業倫理向上窓口」を設置するなど、コンプライアンス体制の整備・拡充に努めています。

しかしながら、当社グループの役職員によるコンプライアンスに反する行為が発生した場合には、法令等に基づく罰則や規制当局による処分、コンプライアンス違反に起因する損害賠償請求等を受けること等により、当社グループの社会的信用が低下するとともに、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

例えば、2024年9月12日、国土交通省関東運輸局からの鉄道車両における輪軸の緊急点検の指示を受け、当社の輪軸組立作業についての検査を実施したところ、全体の約2%にあたる222軸において、車輪圧入作業における圧入力値が社内基準値を超過していたこと、及び社内基準値を満たすために、関連記録を手動で修正する慣行が当該作業に従事している当社グループ従業員の間で常態化していたことが判明しました。なお、当該社内基準値は、日本産業規格(JIS E4504)に基づく圧入力値の最大値となっています。一般的に、高い圧入力は車軸に損傷を与える可能性がありますが、社内基準値の+10%以内であった220軸については、安全性を確認した上で使用しており、社内基準値に対して+10%を超えた2軸については、直ちに使用を中止しています。当社は、今後同様の問題が発生しないよう対策を実施していますが、上記の不正行為に関連して、規制当局による処分の対象となった場合や新たな対策を求められることとなった場合等には、コンプライアンスへの取組に関連する費用の発生等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 財務大臣及び東京都の当社株式保有について

本書提出日現在において、当社の発行済株式のうち、53.42%を財務大臣が、46.58%を東京都が保有しております。当社株式の上場後においても、26.71%を財務大臣が、23.29%を東京都が保有する予定であることから、財務大臣及び東京都は引き続き当社の経営に重要な影響を及ぼしうることになります。当社グループの事業その他に関する政府や東京都の利益は、当社の他の株主の利益と相反する可能性があり、当社グループの他の株主の利益に反する影響力の行使がなされる可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法附則第2条により、「国及び東京都は、特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」旨規定されております。また、2021年7月15日に交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」(交通政策審議会答申第371号)において、当社株式の売却に当たっては、国及び東京都が当面当社株式の2分の1を保有することが適切であり、その後の当社株式の売却について国と東京都は、これまでの閣議決定や法律において完全民営化の方針が規定されていることを堅持しつつ、その中で、首都の中枢エリアを支える地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展を踏まえながら対応することが求められるとの考え方が示されております。さらに、2022年3月28日に財政制度等審議会が答申した「東京地下鉄株式会社の株式の処分について」及び同日に東京都が公表した「東京地下鉄株式会社の株式の処分の基本的な考え方」において、新規公開後の「その後の売却においては、国と東京都の協議を踏まえて対応すること」が適当であるとの考え方が示されております。以上のとおり、今後、地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展等を踏まえつつ、国と東京都が保有する当社株式の全部又は一部を売却することが想定されており、かかる売却が実施される場合には、短期的に当社株式の需給バランスに影響が生じ、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システム関連のリスク

① 情報システムについて

当社グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。当社グループでは、サイバーセキュリティ推進体制の整備や専門機関による定期的なシステム監査の実施等の施策に取り組んでいます。しかしながら、上記(2)①に記載した自然災害・事故等のほか、人為的ミス及びコンピューターウィルス等並びに第三者による妨害行為等により、列車運行や電力供給に関するシステム等に障害が発生した場合には、正常な列車運行その他の事業運営に支障を来す可能性や、これに伴う当社グループの社会的信用の低下等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 個人情報保護について

当社グループでは、各事業において顧客情報等の個人情報を保有しています。個人情報については当社グループの「個人情報保護方針」や「情報管理規程」に基づき厳正な管理を行っていますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償等による費用を負担する必要が生じるほか、当社グループに対する信用が損なわれる等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 ① 財政状態及び経営成績の状況

第20期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当連結会計年度における我が国経済は、緩やかに回復しているものの、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇等による金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

このような状況下で、当社グループは、2022年4月に公表した中期経営計画「東京メトロプラン2024」(2022年度~2024年度)に基づき、各種施策を積極的に推進しており、2023年3月には、「東京メトロプラン2024」を変更し、設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を行いました。本計画期間において、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、『構造変革』に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、『新たな飛躍』を目指した取組を推進しました。

当連結会計年度の業績は、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加し、営業収益が3,892億6千7百万円(前期比12.7%増)となり、営業利益が763億5千9百万円(前期比174.9%増)、経常利益が658億6千6百万円(前期比234.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が462億6千2百万円(前期比66.6%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

[運輸業]

ⅰ 安全性・利便性の向上

 (セキュリティ強化)

テロ行為や犯罪に備え、車内セキュリティカメラの導入を進めています。また、「車内非常用設備等の表示に関するガイドライン」を踏まえ、全車両を対象にピクトグラムを活用したステッカーの貼り付けを進めており、分かりやすい表示の共通化にも取り組んでいます。

 (自然災害対策)

東日本大震災の対策は完了し、現在、熊本地震後の通達に基づき震災対策として、震災時の早期運行再開を目的にトンネル中柱の耐震補強工事を進めています。

大規模浸水対策として、駅出入口において浸水深に応じた改良や防水扉・止水板等の設置、トンネル坑口への防水ゲートの設置を進めており、現在60.4%の進捗となっています。また、大規模停電対策として、停電等により駅間に停止した列車を最寄駅まで走行可能とするため、丸ノ内線2000系車両に非常用バッテリーを搭載しました。

 (お客様の円滑な移動の実現)

安全性及び車内での快適性を向上させ、環境にも配慮した新型車両として、丸ノ内線に2000系車両の導入が完了しました。また、混雑緩和を目的として南北線9000系車両の一部において、8両編成化を実施し、2023年12月から運行を開始しました。

 

お身体の不自由なお客様をはじめとした全てのお客様に安心してご利用いただけるよう、エレベーター、エスカレーター及びバリアフリートイレの整備を進めており、日比谷線神谷町駅にエレベーターを設置したほか、銀座線浅草駅にバリアフリートイレを増設しました。また、ホームと車両床面の段差・隙間縮小のため、日比谷線においてホームの嵩上げ、くし状ゴムの設置を進めています。

※銀座線・丸ノ内線・千代田線は設置完了

ホームドアの整備については、2025年度までの全路線全駅への設置完了を目指しており、3路線において設置工事を進めてきましたが、2024年3月に日比谷線全駅の設置を完了しました。なお、2024年3月31日現在の全線及び設置工事中2路線の整備率は、以下のとおりです。

 

全線

東西線

半蔵門線

整備率

92%

52%

79%

 

※他路線は全駅設置完了

(その他)

2021年6月に発生した日比谷線八丁堀駅における多機能トイレの機能不備によるお客様の発見遅れについては、公表した再発防止対策報告書に基づく取組を確実に推進し、当社施設の確実な施工、保守・点検及び適切な取扱いを徹底しています。

 

ⅱ 有楽町線延伸・南北線延伸等によるネットワーク発展・充実

 (有楽町線・南北線の延伸)

有楽町線延伸・南北線延伸に向けては、各種手続き等について関係各所との協議・調整に加え、地質及び埋設物の調査並びに設計を行っています。

 

ⅲ 鉄道事業の成長に向けたアクションプラン

 (目的地と連動した移動価値)

沿線施設と連動したお出かけ機会の創出に向けて、企業や自治体とタイアップしたスタンプラリーや商業施設で使用可能なクーポンと東京メトロ24時間券をセットにして発売しました。また、東京メトロ沿線での街歩きを楽しんでいただくため、株式会社レッツエンジョイ東京と共同で、2023年4月にフリーマガジン「Alku Tokyo(アルクトーキョー)」を創刊するとともに、WEBサイト「Alku Tokyo.Web」を開設しました。

  (他サービスと連携した移動価値)

地下鉄から一歩先に踏み出した東京観光を提供するために、東京都交通局と共同で、両社局の公式アプリ(「東京メトロmy!アプリ」及び「都営交通アプリ」)を介した観光遊覧船(シンフォニークルーズ)の利用予約を2023年4月から開始しました。

(頻度に応じた移動価値)

休日のお出かけ機会の創出に向けて、メトポ会員を対象に、事前に登録料を支払うと土日祝日にPASMOで当社線を利用した金額分が全額ポイントで還元されるサービス「休日メトロ放題」を2023年11月から開始しました。

(その他)

2024年3月に交通・観光プラットフォーム事業会社であるリンクティビティ株式会社と資本業務提携契約を締結しました。また、既存の旅行者向け企画乗車券の販売強化のほか、東京ならではの魅力ある複数の観光施設や体験を凝縮したインバウンド向けフリーパス(企画乗車券付き)を開発するなど、新たなインバウンド戦略を推進していきます。

 

ⅳ 新技術の導入とDXによる鉄道オペレーションの進化

 (技術開発ビジョン)

新技術の導入・開発やDXの推進等により、持続的な企業価値向上を図り、将来にわたる安心の提供を実現するため、状態基準保全(CBM)の一環として、車両・設備の状態監視を進めています。また、故障予知技術・劣化予測技術の促進の検討を進めています。

 

 

ⅴ 不動産事業の拡大とまちづくりとの連携

 (まちづくりとの連携)

駅周辺開発を計画・検討する都市開発事業者等と連携した「えき・まち連携プロジェクト」として、11駅において開発提案を募集しています。

また、虎ノ門ヒルズ駅において2023年7月に虎ノ門ヒルズステーションタワー及びグラスロックと接続し、「駅まち一体」となった駅を整備しました。

 

ⅵ 海外鉄道ビジネスの拡大・新規ビジネスの開発推進

 (海外鉄道ビジネス)

海外鉄道ビジネスについては、ベトナム、フィリピン等において鉄道整備、技術支援に係る各プロジェクトを推進しています。また、世界の鉄道関係者向けオンライン講座・訪日研修「Tokyo Metro Academy」を開催しました。

 (新規ビジネスの開発)

2024年3月に外部企業との共創を目的としたオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro ACCELERATOR 2023」の最終審査会を実施し、株式会社なんでもドラフトを採択企業として決定しました。また、2024年1月から3月に、個室型ワークスペース「CocoDesk」を16台増設しました。

 

ⅶ 脱炭素・循環型社会への貢献

 (脱炭素社会への取組)

脱炭素社会の実現に向けた取組として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、当社の気候関連リスク、機会等を開示するとともに、2024年3月、当社初となる「グリーンボンド」を発行しました。また、長期環境目標「メトロCO₂ゼロ チャレンジ 2050」達成に向けたロードマップを策定、2022年度における東京メトログループのCO₂排出量(Scope1、2、3)を算出し、「サステナビリティレポート2023」にて開示したほか、2024年3月に東京電力エナジーパートナー株式会社と「アクアプレミアム(水力発電由来の電力を供給する再生可能エネルギーメニュー)」を丸ノ内線及び南北線に導入する契約を締結しました。今後も再生可能エネルギーの活用や、車両・設備の省エネルギー化に取り組んでいきます。さらに2024年3月、当社の鉄道運行を通じて生まれた、社会における環境面でのポジティブインパクト(削減貢献量)を算定、公表しました。これを活用し、鉄道事業の成長を環境課題の解決につなげていきます。

 (循環型社会の実現に向けた取組)

2023年12月、当社グループが運営する一部の飲食店から排出される廃食用油をSAF(Sustainable Aviation Fuel:化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料)の原料に再利用する取組に関する合意書を締結しました。鉄道事業者初となる「Fry to Fly Project」(国内資源循環による脱炭素実現に向けたプロジェクト)にも参加し、SAFの重要性や当該プロジェクトを発信していきます。

 

ⅷ 経営基盤の強化

 (安全文化の醸成)

お客様の安全を第一とし、事故の未然防止、再発防止に取り組むため、グループ全役員・社員を対象にした安全研修を実施したほか、安全推進発表会、ヒューマンファクター分析等を実施しました。社員一人ひとりが自ら考え行動を起こすことができる安全文化の醸成に努めています。

(豊かな社会のためのパートナーシップ)

女子駅伝部や車いすフェンシング選手である安直樹選手の活動支援のほか、東京マラソンへの参画を通じて、スポーツ選手が活躍できる環境づくりに貢献するとともに地域・社会の活性化に取り組んでおり、2023年6月及び11月に沿線地域住民等を対象としたスポーツ体験会を他企業と共催しました。

また、2024年3月に総合研修訓練センターにおいて沿線の特別支援学校の生徒等を対象に鉄道施設体験会を実施したほか、地域振興・文化支援を目的として、銀座駅にて地方自治体が開催する「ふるさとPRイベント」、公益財団法人メトロ文化財団の地下鉄博物館特別展等を支援しました。加えて、2024年3月に沿線地域のさらなる活性化を目的として、台東区と包括連携に関する協定を締結しました。

このほか、銀座線浅草駅4番出入口上屋等の4か所が2023年11月付けで文化庁から登録有形文化財に登録されました。

運輸業の当連結会計年度の業績は、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加し、営業収益が3,564億6千7百万円(前期比14.2%増)、営業利益が637億8千5百万円(前期比336.8%増)となりました。

 

(運輸成績表)

種別

単位

第19期連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)

第20期連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

営業日数

365

366

旅客営業キロ

キロ

195.0

195.0

客車走行キロ

千キロ

290,315

289,825

輸送人員

定期

千人

1,166,475

1,248,078

 

定期外

1,005,435

1,136,653

 

2,171,910

2,384,731

旅客運輸収入

定期

百万円

111,990

124,581

 

定期外

169,374

199,427

 

281,364

324,009

乗車効率

42

 46

 

(注)1 記載数値は、千キロ未満、千人未満、百万円未満を切り捨てて表示しています。

   2 乗車効率の算出方法:人キロ÷(客車走行キロ×客車平均定員)×100

      3 第16期から第18期の各連結会計年度における、旅客運輸収入は下表のとおりです。

種別

単位

第16期

第17期

第18期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

旅客運輸収入

定期

百万円

155,188

107,587

105,483

定期外

191,354

116,341

139,609

346,542

223,928

245,092

 

 

[不動産事業]

不動産事業においては、収益性の向上を図るべく、駅周辺の都市開発と一体となった建物の整備や、神宮前六丁目用地再開発建物の竣工、東上野四丁目A―1地区再開発準備組合への事業協力者としての参画、新宿駅西口地区開発計画の新築工事に着手しました。また、不動産事業の成長を目的とした不動産アセットマネジメント事業への参入に向け、「東京メトロアセットマネジメント株式会社」設立の準備を進めました。

不動産事業の当連結会計年度の業績は、営業収益が136億5千4百万円(前期比0.6%減)、営業利益が45億6千3百万円(前期比14.7%減)となりました。

 

[流通・広告事業]

流通・広告事業においては、収益性の向上を図るとともに、お客様の「新たな日常」を支え、ニーズに迅速に対応するため、各種開発を推進しました。

流通事業については、2023年6月に、東西線行徳駅高架下において「M’av行徳」、2024年3月に、「小伝馬町メトロピア」を開業したほか、駅構内店舗、商業ビル等において、空き区画の解消や店舗入替を行うとともに、駅構内の空きスペースを有効活用しました。

広告事業については、昨年度新設した駅構内デジタルサイネージの販売促進や各施策を実施しました。

流通・広告事業の当連結会計年度の業績は、営業収益が239億2千万円(前期比1.1%増)、営業利益が79億6千9百万円(前期比3.7%増)となりました。

 

当社グループの財政状態については、当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末に比べ197億2百万円増の2兆225億2千4百万円、負債合計は153億4千8百万円減の1兆3,541億2千8百万円、純資産合計は350億5千1百万円増の6,683億9千5百万円となりました。

資産の部の増加については、流動資産において旅客運輸収入増加に伴う未収運賃の増加、固定資産において設備投資に伴う固定資産の増加等によるものです。

負債の部の減少については、流動負債において旅客運輸収入等の増加に伴う未払法人税等が増加したものの、固定負債において、長期債務の償還等があったことにより減少したものです。

純資産の部の増加については、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等によるものです。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、33.0%となりました。

 

第21期第1四半期連結累計期間(自 2024年4月1日 至 2024年6月30日)

当第1四半期連結累計期間における我が国経済は、緩やかに回復しているものの、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇等による金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。

このような状況下で、当社グループは、2022年4月に公表し、2023年3月に設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を行った中期経営計画「東京メトロプラン2024」(2022年度~2024年度)に基づき、各種施策を積極的に推進しています。本計画期間において、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、『構造変革』に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、『新たな飛躍』を目指した各種施策に取り組んでいます。

当第1四半期連結累計期間の業績は、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加し、営業収益が1,019億5千万円(前年同期比6.4%増)となり、営業利益が290億9千7百万円(前年同期比33.7%増)、経常利益が262億9千万円(前年同期比38.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益が180億6千4百万円(前年同期比37.8%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

[運輸業]

ⅰ 安全性・利便性の向上

(セキュリティ強化)

テロ行為や犯罪に備え、車内セキュリティカメラの導入を進めており、2024年度中に全路線設置完了予定です。

(自然災害対策)

阪神・淡路大震災及び東日本大震災後の通達に基づく耐震補強(高架橋、石積み擁壁)は完了しています。また、熊本地震後の通達に基づく震災対策として、早期運行再開を目的としたロッキング橋脚、こ線道路橋・人道橋の補強は完了し、現在はトンネル中柱の耐震補強工事を進めています。

大規模浸水対策として、浸水深に応じた駅出入口の止水板の改良、防水扉の設置、上屋建て替えによる完全防水型出入口への改良、換気口浸水防止機の改良、換気塔の嵩上げ、地上駅・地上設備の外壁の鉄筋コンクリート化、トンネル坑口への防水ゲートの設置等を進めており、現在60.4%の進捗となっています。

(お客様の円滑な移動の実現)

お身体の不自由なお客様をはじめとした全てのお客様に安心してご利用いただけるよう、エレベーター、エスカレーター及びバリアフリートイレの整備を進めており、東西線南砂町駅にエレベーターを設置しました。また、ホームと車両床面の段差・隙間縮小のため、日比谷線、東西線、半蔵門線、南北線及び副都心線においてホームの嵩上げ、くし状ゴムの設置を進めています。

※銀座線・丸ノ内線・千代田線は設置完了

ホームドアの整備については、2025年度までの全路線全駅への設置完了を目指しており、2路線において設置工事を進めています。現在の全線及び設置工事中2路線の整備率は、以下のとおりです。

 

全線

東西線

半蔵門線

整備率

92%

52%

79%

 

※他路線は設置完了

また、東西線南砂町駅においては、2024年5月に第1回線路切替工事を行い、新設したホーム、出入口、改札等の供用を開始しました。

(その他)

2021年6月に発生した日比谷線八丁堀駅における多機能トイレの機能不備によるお客様の発見遅れについては、公表した再発防止対策報告書に基づく取組を確実に推進し、当社施設の確実な施工、保守・点検及び適切な取扱いを徹底しています。

 

ⅱ 有楽町線延伸・南北線延伸等によるネットワーク展開・充実

(有楽町線・南北線の延伸)

有楽町線延伸・南北線延伸に向けては、2024年6月に都市計画決定が告示されたことを踏まえ、地質及び埋設物の調査並びに設計、今年度内の着工に向けた各種協議・手続きを行っています。

 

ⅲ 鉄道事業の成長に向けたアクションプラン

(目的地と連動した移動価値)

沿線施設と連動したお出かけ機会の創出に向けて、企業や自治体とタイアップしたスタンプラリーを実施しました。

(頻度に応じた移動価値)

より分かりやすくお得に多くのお客様にご利用いただけるよう、2024年4月に、PASMOをお持ちの方を対象とした「メトロポイントクラブ」とTo Me CARDをお持ちの方を対象とした「メトロポイント」の2つのポイントサービスを統合しました。また、同年5月に、モバイルのPASMOをご利用のお客様において、モバイルPASMOアプリ上でメトロポイントクラブの登録手続き及びポイントからのチャージを可能にしました。

 

ⅳ 新技術の導入とDXによる鉄道オペレーションの進化

(技術開発ビジョン)

新技術の導入・開発やDXの推進等により、持続的な企業価値向上を図り、将来にわたる安心の提供を実現するため、状態基準保全(CBM)の一環として、車両・設備の状態監視を進めています。また、故障予知技術・劣化予測技術の促進の検討を進めています。

 

ⅴ 不動産事業の拡大とまちづくりとの連携 

(まちづくりとの連携)

駅周辺開発を計画・検討する都市開発事業者等と連携した「えき・まち連携プロジェクト」として、11駅において開発提案を募集しています。

 

ⅵ 海外鉄道ビジネスの拡大・新規ビジネスの開発推進

(海外鉄道ビジネス)

海外鉄道ビジネスについては、ベトナム、フィリピン等において鉄道整備、技術支援に係る各プロジェクトを推進しています。「ベトナム国鉄道学校における都市鉄道研修能力強化プロジェクト」においては、ベトナムの鉄道関係者を対象に訪日研修を実施しました。また、世界の鉄道関係者向けオンライン講座・訪日研修の「Tokyo Metro Academy」においては、プロモーションとして無料オンライン講座を実施しました。

(新規ビジネスの開発)

新規事業の創出を目的とした社内事業開発プログラム「メトロのたまご」を通じて社員が提案したスケートボードパーク&スクール事業「RAMP ZERO」を、日比谷線南千住駅高架下において2024年4月に営業開始しました。また、「Tokyo Metro ACCELERATOR 2022」で最終審査を通過したSTUDIO BUKI株式会社との協業施策として、子どもが作中で東京メトロの運転士になれるパーソナライズド絵本「僕は私は運転士!」を同年4月に販売開始しました。同様に、最終審査を通過した株式会社休日ハックとの協業施策として、漫画・謎解き・街歩きを掛け合わせたオリジナル体験型エンターテイメント「メトロタイムゲート」を同年5月から8月までの期間限定で実施しています。

加えて、「東京メトロ×プログラボ」15校目となるプログラボ晴海を、東京2020大会選手村の跡地に開発された「HARUMI FⅬAG(晴海フラッグ)」内にオープンしました。

 

 

ⅶ 脱炭素・循環型社会への貢献

(脱炭素社会への取組)

脱炭素社会の実現に向けた取組として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、当社の気候関連リスク、機会等を特定し、開示しています。指標、目標として掲げている長期環境目標「メトロCO₂ゼロ チャレンジ 2050」の達成に向け、2024年4月から丸ノ内線・南北線で使用する全ての電力を水力発電由来の再生可能エネルギーに置き換えてCO₂排出量ゼロで運行を開始しました。それに合わせ、当社の環境負荷低減の取組に触れていただきたいという想いから、同年4月から5月に「乗ってエコ」スタンプラリーを実施しました。また、東西線では、家庭用太陽光発電の余剰電力の環境価値を調達し、使用する電力の一部を実質再生可能エネルギー化して運行を開始しました。今後も再生可能エネルギーの活用や、車両・設備の省エネルギー化に取り組んでいきます。

加えて、当社の鉄道運行を通じて生まれた、社会における環境面でのポジティブインパクト(削減貢献量)を活用し、同年6月、東京都交通局と共同で、環境負荷の少ない移動手段の利用促進を目的として「エコボーナスWキャンペーン」を実施しました。引き続き他者と連携した施策の実施等を通じて、鉄道事業の成長を環境課題の解決につなげていきます。

(循環型社会の実現に向けた取組)

当社グループが運営する一部の飲食店、社員食堂等から排出される使用済み油をSAF(Sustainable Aviation Fuel:化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料)の原料に再利用する取組として、「Fry to Fly Project」(国内資源循環による脱炭素実現に向けたプロジェクト)に参加し、2024年6月には、東西線浦安駅で使用済み油回収イベントを実施しました。今後も、お客様に楽しく体感いただけるイベントを企画・実施し、SAFの重要性や当該プロジェクトを発信していきます。

 

ⅷ 経営基盤の強化

(安全文化の醸成)

お客様の安全を第一とし、事故の未然防止、再発防止に取り組むため、グループ全役員・社員を対象にした安全研修を実施したほか、事故防止オープンセミナー、ヒューマンファクター分析等を実施しました。社員一人ひとりが自ら考え行動を起こすことができる安全文化の醸成に努めています。

 

(豊かな社会のためのパートナーシップ)

女子駅伝部や車いすフェンシング選手である安直樹選手の活動支援のほか、東京マラソンへの参画を通じて、スポーツ選手が活躍できる環境づくりに貢献するとともに地域・社会の活性化に取り組んでいます。

 

運輸業の当第1四半期連結累計期間の業績は、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加し、営業収益が934億4千5百万円(前年同期比6.5%増)、営業利益が256億4千1百万円(前年同期比39.8%増)となりました。

 

(運輸成績表)

 

 

 

 

種別

単位

前第1四半期連結累計期間

(自 2023年4月1日

至 2023年6月30日)

当第1四半期連結累計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年6月30日)

営業日数

91

91

旅客営業キロ

キロ

195.0

195.0

輸送人員

定期

千人

319,502

333,105

 

定期外

278,600

300,306

 

 計

598,102

633,412

旅客運輸収入

定期

百万円

31,383

33,122

 

定期外

48,995

52,503

 

 計

80,379

85,626

 

(注) 記載数値は、千人未満、百万円未満を切り捨てて表示しています。

 

 

[不動産事業]

不動産事業においては、収益性の向上を図るべく、駅周辺の都市開発と一体となった建物の整備を進めています。2024年4月には神宮前六丁目用地再開発建物が東急プラザ原宿「ハラカド」として開業しました。また、新宿駅西口地区開発計画においては新築工事を推進し、東上野地区においては東上野四丁目A―1地区再開発準備組合へ事業協力者として参画しています。加えて、遊休資産の有効活用として同年5月には北馬込一丁目用地(旧家族寮)に介護付有料老人ホームのチャームスイート旗の台が竣工しました。そのほか、同年4月に「東京メトロアセットマネジメント株式会社」を設立し、不動産事業の成長を目的とした不動産アセットマネジメント事業への参入に向け、準備を進めています。

不動産事業の当第1四半期連結累計期間の業績は、営業収益が35億2千万円(前年同期比4.7%増)、営業利益が13億6千9百万円(前年同期比5.0%減)となりました。

 

[流通・広告事業]

流通・広告事業においては、収益性の向上を図るとともに、お客様の「新たな日常」を支え、ニーズに迅速に対応するため、各種開発を推進しました。

流通事業については、駅構内店舗等において店舗入替を行うとともに、駅構内の空きスペースにおいて自動販売機、コインロッカー等の増設を行ったほか、日本橋駅及び錦糸町駅において新規店舗の開発を進めました。

広告事業については、デジタルサイネージの販売促進に加え、中づりやまど上、駅ばりポスターの貸切商品等、クライアントニーズに応じたインパクトのある商品の展開により、収益拡大に努めました

流通・広告事業の当第1四半期連結累計期間の業績は、営業収益が60億4千4百万円(前年同期比5.0%増)、営業利益が20億3千9百万円(前年同期比4.3%増)となりました。

 

当社グループの財政状態については、当第1四半期連結会計期間末における資産合計は前連結会計年度末に比べ240億5千1百万円減の1兆9,984億7千2百万円、負債合計は231億5千4百万円減の1兆3,309億7千3百万円、純資産合計は8億9千6百万円減の6,674億9千8百万円となりました。

資産の部の減少については、固定資産において設備投資に伴う固定資産の増加等があったものの、流動資産において有価証券(譲渡性預金)の減少等により減少したものです。

負債の部の減少については、流動負債において工事代金等の未払金の支払、固定負債において長期借入金の償還等によるものです。

純資産の部の減少については、配当の支払等によるものです。

この結果、当第1四半期連結会計期間末における自己資本比率は、33.4%となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

第20期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ16億8千2百万円増加し、当連結会計年度末には906億6千5百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、1,350億6千6百万円(前期比468億8千8百万円の収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益655億4千1百万円(前期比455億7千9百万円の収入増)と非資金科目である減価償却費737億4千7百万円(前期比33億7千万円の収入増)を計上したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、1,002億3千万円(前期比1,694億4千3百万円の支出減)となりました。これは主に、設備投資等を中心に有形及び無形固定資産の取得による支出が1,041億3千2百万円(前期比224億1千7百万円の支出増)あったものの、前期発生した新線建設推進資金信託の設定による支出が発生しなかったこと(前期比1,921億2千万円の支出減)等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、331億5千3百万円(前連結会計年度は1,588億1千4百万円の資金の増加)となりました。これは、社債の発行による収入が99億4千3百万円(前期比198億4千8百万円の資金の減少)、長期借入れによる収入が100億円(前期比50億円の資金の減少)あった一方で、社債の償還による支出が300億円(前期比250億円の資金の増加)、長期借入れの返済による支出が110億8千9百万円(前期比23億3千7百万円の資金の増加)があったことに加え、前期発生した新線建設推進長期借入金が発生しなかった(前期比1,921億2千万円の資金の減少)こと等によるものです。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの業種構成はサービス業が中心であり、受注生産形態をとらない会社が多いため、「① 財政状態及び経営成績の状況」においてセグメントの業績を記載することとしています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

   ① 財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容

第20期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

財政状態及び経営成績の分析は次のとおりです。

当連結会計年度の財政状態については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。

  (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

増減額

増減率

 

 

 

 

営業収益

345,370

389,267

43,897

12.7

営業費

317,592

312,908

△4,684

△1.5

営業利益

27,777

76,359

48,581

174.9

営業外収益

2,480

2,055

△424

△17.1

営業外費用

10,563

12,548

1,985

18.8

経常利益

19,694

65,866

46,171

234.4

特別利益

5,236

13,074

7,838

149.7

特別損失

4,968

13,398

8,430

169.7

税金等調整前当期純利益

19,962

65,541

45,579

228.3

親会社株主に帰属する

当期純利益

27,771

46,262

18,491

66.6

 

 

[営業収益、営業費及び営業利益]

当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度に比べ438億9千7百万円増の3,892億6千7百万円となりました。

 これは、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加したこと等によるものです。

営業費は、前連結会計年度に比べ46億8千4百万円減の3,129億8百万円となりました。これは、車両更新に伴う減価償却費の増等があったものの、電気料が減少したこと等によるものです。

以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ485億8千1百万円増の763億5千9百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。

 

[営業外損益及び経常利益]

当連結会計年度の営業外収益は、持分法投資利益の減等により、前連結会計年度に比べ4億2千4百万円減の20億5千5百万円となりました。

営業外費用は、前連結会計年度に比べ19億8千5百万円増の125億4千8百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ461億7千1百万円増の658億6千6百万円となりました。

 

[特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益]

当連結会計年度の特別利益は、鉄道施設受贈財産評価額等の計上により、前連結会計年度に比べ78億3千8百万円増の130億7千4百万円となりました。

特別損失は、固定資産圧縮損等の計上により、前連結会計年度に比べ84億3千万円増の133億9千8百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は655億4千1百万円となり、法人税等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ184億9千1百万円増の462億6千2百万円となりました。

 

第21期第1四半期連結累計期間(自 2024年4月1日 至 2024年6月30日)

財政状態及び経営成績の分析は次のとおりです。

当第1四半期連結累計期間の財政状態については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。

  (単位:百万円)

 

前第1四半期

連結累計期間

(自 2023年4月1日

  至 2023年6月30日)

当第1四半期

連結累計期間

(自 2024年4月1日

  至 2024年6月30日)

増減額

増減率

 

 

 

 

営業収益

95,827

101,950

6,123

6.4

営業費

74,062

72,852

△1,209

△1.6

営業利益

21,764

29,097

7,333

33.7

営業外収益

402

260

△141

△35.2

営業外費用

3,208

3,067

△140

△4.4

経常利益

18,958

26,290

7,332

38.7

特別利益

365

1,132

767

210.1

特別損失

346

1,119

772

223.0

税金等調整前四半期純利益

18,977

26,303

7,326

38.6

親会社株主に帰属する

四半期純利益

13,106

18,064

4,957

37.8

 

 

[営業収益、営業費及び営業利益]

当第1四半期連結累計期間の営業収益は、前第1四半期連結累計期間に比べ61億2千3百万円増の1,019億5千万円となりました。

これは、経済活動が活性化したこと等により、旅客運輸収入が増加したこと等によるものです。

営業費は、前第1四半期連結累計期間に比べ12億9百万円減の728億5千2百万円となりました。これは、修繕費の増等があったものの、固定資産除却費が減少したこと等によるものです。

以上の結果、当第1四半期連結累計期間の営業利益は、前第1四半期連結累計期間に比べ73億3千3万円増の290億9千7百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。

 

[営業外損益及び経常利益]

当第1四半期連結累計期間の営業外収益は、前第1四半期連結累計期間に比べ1億4千1百万円減の2億6千万円となりました。

営業外費用は、前第1四半期連結累計期間に比べ1億4千万円減の30億6千7百万円となりました。

以上の結果、当第1四半期連結累計期間の経常利益は、前第1四半期連結累計期間に比べ73億3千2百万円増の262億9千万円となりました。

 

[特別損益及び親会社株主に帰属する四半期純利益]

当第1四半期連結累計期間の特別利益は、固定資産売却益等の計上により、前第1四半期連結累計期間に比べ7億6千7百万円増の11億3千2百万円となりました。

特別損失は、固定資産圧縮損等の計上により、前第1四半期連結累計期間に比べ7億7千2百万円増の11億1千9百万円となりました。

以上の結果、当第1四半期連結累計期間の税金等調整前四半期純利益は263億3百万円となり、法人税等を加減した親会社株主に帰属する四半期純利益は前第1四半期連結累計期間に比べ49億5千7百万円増の180億6千4百万円となりました。

 

   ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

第20期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、営業活動により得られた資金並びに社債及び借入金を設備投資等に充当しています。

当社グループの主な資金需要は、営業活動に係る資金支出では、鉄道事業に係る修繕費や管理委託費等の経費、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金支出では、車両更新やホームドア整備などの安全対策、バリアフリー整備などの旅客サービス等の運輸業への投資、持続的な成長を実現する不動産事業及び流通・広告事業への投資のほか、有楽町線、南北線延伸事業等に係る投資があります。

資金調達の方法は、償却前営業利益を基本に、不足する資金を金融市場動向等に鑑み、社債の募集及び金融機関からの借入により長期資金を調達しています。また、運転資金として短期的に資金を必要とする場合は、国内金融機関との当座貸越契約により短期資金を調達することで、緊急時の流動性を確保しています。これらにより、当社グループの事業運営に必要な運転資金、設備投資資金の調達は問題なく対応可能と認識しています。

 

   ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成され、連結財務諸表の作成にあたっては連結決算日における資産・負債及び当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りを行った上で、継続して評価を行っています。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

ⅰ固定資産の減損

当社グループは多くの固定資産を保有しており、回収可能価額を将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しています。そのため、景気低迷、他事業者との競合、市場価格の下落、感染症の発生等により当初見込んだ収益が得られなかった場合、又は算出の前提条件に変更があった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失を認識する可能性があります。

 

ⅱ繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

ⅲ退職給付債務及び費用

従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される割引率、退職率、死亡率及び長期期待運用収益率等の前提条件に基づいて算出しています。
 実際の結果が、前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

   ④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社の経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の推移につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。なお、第17期及び第18期において、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、旅客人員の減少等により営業損益がマイナスとなったため、EBITDAが減少しましたが、その後は回復傾向にあり、足元の状況は堅調に推移しているものと判断しています。また、連結純有利子負債/EBITDA倍率につきましても、第20期において6.9倍となっており、堅調に推移しているものと判断しています。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

有楽町線、南北線延伸事業等の資金として、2023年3月17日に総額1,921億円の金銭消費貸借契約を鉄道・運輸機構と結んでいます。

 

借入目的

 借入金額

 返済期限

 返済方法

その他

有楽町線延伸(豊洲・住吉間)

 95,150百万円

40年

元金均等返済

13年据置

南北線延伸(品川・白金高輪間)

 67,370百万円

40年

元金均等返済

13年据置

豊洲駅の改良事業資金

 29,600百万円

40年

元金均等返済

11年据置

 

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。