独立監査人の監査報告書

 

 

 

2024年9月12日

 

東京地下鉄株式会社

取締役会 御中

 

 

有限責任監査法人トーマツ

   東 京 事 務 所

 

 

 

 

指定有限責任社員
業務執行社員

 

公認会計士

小    口    誠    司

 

 

 

指定有限責任社員
業務執行社員

 

公認会計士

後   藤   久   美  子

 

 

 

監査意見

 当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている東京地下鉄株式会社の2022年4月1日から2023年3月31日までの連結会計年度の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項及びその他の注記について監査を行った。

 当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、東京地下鉄株式会社及び連結子会社の2023年3月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。

 

監査意見の根拠

 当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。

 

強調事項

会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更及び会計上の見積りの変更に記載されているとおり、会社及び連結子会社は、有形固定資産の減価償却方法について、従来、主として定率法を採用していたが、当連結会計年度より主として定額法に変更するとともに、減価償却方法の変更を契機に当連結会計年度より有形固定資産の耐用年数を見直している。

当該事項は、当監査法人の意見に影響を及ぼすものではない。

 

監査上の主要な検討事項

 監査上の主要な検討事項とは、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、連結財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

 

旅客運輸収入に係る収益認識

監査上の主要な検討事項の

内容及び決定理由

監査上の対応

連結財務諸表の注記(セグメント情報)に記載のとおり、当連結会計年度における運輸業の外部顧客への営業収益は310,085百万円である。

運輸業の主たる事業である東京地下鉄株式会社(以下、「会社」という。)の鉄道事業は、東京都区部を中心に9路線からなる地下鉄ネットワークを保有し、鉄道の運行及び運営並びに鉄道施設等の保守管理を行っている。会社における旅客運輸収入281,364百万円は、当連結会計年度の営業収益345,370百万円の大部分(81.5%)を占めており、グループ全体の経営成績に与える影響が大きい。

会社における主要な乗車券は交通系ICカード乗車券であり、鉄道利用者が自動券売機や定期券印刷発行機の駅務機器を通じて、交通系ICカードの購入、チャージ及び運賃の精算を行うことにより、交通系ICカードの利用データが生成される。当該利用データは、各駅に設置している駅務機器から交通系ICカードを発行している収入清算業務委託先(以下、「委託先」という。)のITシステムに送信され、管理されている。

また、委託先のITシステムから会社の運輸収入管理システムに連携された利用データを日々の売上データとして蓄積し、月次集計されたデータが会社の会計システムへ連携されることにより、会計数値として反映される。

これらのとおり、取引の発生から会計への計上に至るまでの主要なプロセスはシステム間の情報連携等により自動処理が行われており、広範囲に渡ってITシステムが利用されている。

 

会社における旅客運輸収入の金額的な重要性は大きく、その金額の正確性及び網羅性は自動化されたITシステム自体が安定的かつ適切に運用されていることが前提となる。そのため、当監査法人は、ITシステムに関する相応の専門的な知識を用いて、日次多数の利用データから正確かつ網羅的に旅客運輸収入を計上するための委託先の管理を含めたIT全般統制の有効性評価を行うとともに、会計システムへのデータ連携を確かめることとなる旅客運輸収入の収益認識が極めて重要であると判断した。

 

したがって、当該事項が監査上の主要な検討事項に該当すると判断した。

当監査法人は、ITシステムに係る内部統制の整備及び運用状況を確かめるにあたり、当監査法人内のIT専門家と連携して、以下の監査手続を実施した。

   IT専門家により、アクセス権の登録、変更、削除についての責任者承認証跡の閲覧、アクセス権の棚卸証跡の閲覧、システム上の職務分掌の確認、セキュリティ設定値の確認、システム変更の責任者承認証跡の閲覧、システム運用管理の責任者承認証跡の閲覧等を実施し、旅客運輸収入に関連する運輸収入管理システム及び会計システムにおける全般統制の整備及び運用状況に係る有効性を確かめた。

   IT専門家により、委託先の業務に係る内部統制の保証報告書の査閲及び会社を通じた当該保証報告書の内容についての委託先への質問を実施し、委託先のITシステムにおける全般統制の整備及び運用状況に係る有効性を確かめた。

   委託先におけるITシステムと会社の運輸収入管理システム及び会計システム間との売上情報の自動連携について、運輸収入管理システム及び会計システムの処理に関する基本設計書を閲覧し処理概要を理解した。委託先におけるITシステムと会社の運輸収入管理システム間で処理された金額、及び運輸収入管理システムと会計システム間で処理された金額について、サンプルを抽出して正確性を確かめることにより、IT業務処理統制である自動連携の整備及び運用状況に係る有効性を確かめた。

 

また、上記を踏まえて、以下の旅客運輸収入計上額の正確性を確かめるため、主として以下の監査手続を実施した。

    委託先から送付される清算金額と会計数値との照合、清算金額の入金証憑の閲覧及び債権債務の残高確認を実施することにより、委託先のITシステムと会社の会計システムの旅客運輸収入に関して網羅的に金額の整合性を確かめた。

 

 

有形固定資産の減価償却方法の変更及び耐用年数の変更

監査上の主要な検討事項の

内容及び決定理由

監査上の対応

連結財務諸表の注記(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更及び会計上の見積りの変更)に記載のとおり、会社及び連結子会社は、従来、有形固定資産の減価償却方法について、主として定率法を採用していたが、当連結会計年度より主として定額法に変更した。また、従来、有形固定資産の耐用年数は、法人税法に規定する方法と同一の基準によっていたが、減価償却方法の変更を契機に、当連結会計年度より耐用年数を経済的な使用可能予測期間とすることに変更した。

会社を取り巻く経営環境の変化を踏まえて策定した中期経営計画において、会社は東京2020大会の開催に照準を合わせたバリアフリー設備やホームドアの設置、新型車両の導入など鉄道施設の整備拡充の推進から、鉄道設備の機能維持に軸足を移し、設備投資を平準化していくことを基本方針とした。当該投資方針の変更を受けて、鉄道事業を始めとする有形固定資産全体の将来の経済的便益の費消パターンを再検討した結果、設備の安定的な稼働が見込まれることから、会社は2022年4月1日より有形固定資産の減価償却方法を主として定額法に変更することが経済実態をより適切に反映すると判断した。また、減価償却方法の変更を契機として、耐用年数についても物理的耐用年数並びにその使用実績等を総合的に考慮し、耐用年数を経済的な使用可能予測期間とすることに変更することが適切であると判断した。

有形固定資産の減価償却方法の変更及び耐用年数の変更の結果、従来の方法と比べて、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ15,104百万円増加しており、連結財務諸表に重要な影響を及ぼしている。

有形固定資産に係る減価償却方法の変更の理由が合理的かどうかの判断及び耐用年数の見直しに用いた使用可能予測期間の見積りの合理性の判断は、経営者の主観的な判断を伴うものである。また、必要十分な注記開示が適切に行われているか否かという判断は、重要であると判断した。

 

したがって、当該事項が監査上の主要な検討事項に該当すると判断した。

当監査法人は、有形固定資産の減価償却方法及び耐用年数の変更に至る判断の妥当性を評価し、注記の適切性を確かめるにあたり、以下の監査手続を実施した。

(減価償却方法及び耐用年数の変更に至る判断の妥当性の評価)

   鉄道事業に関するバリアフリー設備やホームドアの設置、新型車両の導入状況等の過去の投資推移、経営環境の変化を裏付ける資料を閲覧するとともに、今後の設備の投資方針につき中期経営計画を閲覧し、経営者に質問を実施した。これにより、減価償却方法の変更が経営環境の変化に基づく変更であるかどうか、適時な変更であるかどうか、さらには経営者の恣意的な判断が含まれていないかを確かめた。

   主な鉄道事業固定資産の稼働状況や保守点検方針等に関する資料の閲覧及び経営者に質問を実施し、従来の定率法と比較して定額法が設備の将来の経済的便益の費消パターンに合致しているかどうかを確かめた。

   主な鉄道事業固定資産の使用年数等に関する資料の閲覧、経営者への質問により、耐用年数の見直しに用いた使用可能予測期間の見積りの合理性を確かめた。

 

(注記の適切性の評価)

   経営者が算出した当連結会計年度の連結損益計算書の各段階損益に与える影響額につき、基礎データの正確性、並びに影響額算定の正確性及び網羅性を再計算により確かめた。

   連結財務諸表の注記(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更及び会計上の見積りの変更)に変更の旨、その理由及び影響額が適切に開示されていることを確かめた。

 

 

その他の記載内容

その他の記載内容は、有価証券届出書 第二部【企業情報】に含まれる情報のうち、連結財務諸表及び財務諸表並びにこれらの監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

 当監査法人の連結財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。

 連結財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と連結財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。

 当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。

 その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

 

連結財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任

 経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。

 連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。

 監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

 

連結財務諸表監査における監査人の責任

監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての連結財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から連結財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、連結財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。

監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。

・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。

・ 連結財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。

・ 経営者が継続企業を前提として連結財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において連結財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する連結財務諸表の注記事項が適切でない場合は、連結財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。

・ 連結財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた連結財務諸表の表示、構成及び内容、並びに連結財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。

・ 連結財務諸表に対する意見を表明するために、会社及び連結子会社の財務情報に関する十分かつ適切な監査証拠を入手する。監査人は、連結財務諸表の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、単独で監査意見に対して責任を負う。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。

 

利害関係

 会社及び連結子会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。

以 上

 

(注) 1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券届出書提出会社)が別途保管しております。

2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。

 

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