本資料に記載されている当社グループの業績予想、目標、計画、予想その他の将来情報については、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき作成した当該時点における当社の判断又は考えに過ぎず、実際の当社グループの業績、財政状態その他の結果は、国内外の政治、経済、金融情勢の変動や、意図する施策の状況その他の本資料の作成時点で不確実な要素等により、本資料の内容又は本資料から推測される内容と大きく異なる場合があります。
当社グループは、メガトレンドや昨今の経営環境の変化に対し、グループの持つ強みを生かし、社会的価値と企業価値を極大化していくため、不動産事業を核とした成長戦略からなる長期戦略を2024年5月9日に策定いたしました。2035年のありたい姿(アウトカム)を「Resilience & Sustainability」とし、「安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する」企業グループを目指してまいります。
当社グループとしては以下4点の取り組みを踏まえ、株価や資本コストを重視した経営をおこない、今後とも持続的かつ健全な成長を目指してまいります。
<長期戦略及び中期経営計画の取り組み>
長期戦略及び中期経営計画の2年目を迎えるにあたって、当社グループの企業価値をさらに向上させていくために、以下の課題の解決に取り組んでまいります。
①不動産事業を核として持続的な成長を実現
2025年4月より始動した不動産4社体制により、「保有」と「キャピタルリサイクル」の両輪での成長を目指します。キャピタルリサイクルに関しては、不動産回転型ビジネスを加速させるために、開発・新規物件の取得を継続するとともに、聖域なき流動化を検討し、持続的に進捗させてまいります。また、保有物件をファンドに拠出し、運用から得られるフィービジネスに加え、管理・運営を通じて、不動産事業の収益最大化を図ります。なお、2024年10月に新たに設立した株式会社西武不動産投資顧問においては、2026年度中に投資運用業のライセンスを取得し、2026~2027年度で西武ファンドを組成することを目指します。その後は、ダイヤゲート池袋の一部フロアやエミテラス所沢なども候補として、西武ファンドへの流動化を予定しております。
また、モルガン・スタンレー・キャピタル株式会社(以下、「MSC」)及びMSC又はMSCの関係会社が運営もしくは助言をおこなう不動産ファンドとの共同SPC(特別目的会社)に賃貸住宅資産を組み入れ、2027年度までには運用資産残高(AUM)1,000億円を目指してまいります。
これらの取り組みを踏まえて、不動産流動化による含み益の顕在化、得られた資金の再投資を通して、不動産価値の最大化(NAV成長)を着実に進展させてまいります。
事業所の収益力・資本効率性の改善に向けては、2024年度より導入した西武ROICにより事業所モニタリングを徹底し、各事業所の収益力向上を追求いたします。また、改善が見込めない既存事業所については在り方を見直し、事業価値を創出する事業に対して適切に資本を配分してまいります。
②インバウンド需要の取り込み、値上げの継続、国内外250ホテル体制の構築(MC拡大)によるホテル・レジャー事業の収益性向上
国内ホテル業における堅調なインバウンド需要の取り込みや値上げの取り組みなどにより、売上の最大化をはかってまいります。また、2024年4月25日より開始した国内外共通会員プログラム「Seibu Prince Global Rewards(セイブ プリンス グローバル リワーズ)」などを活用し、顧客ロイヤルティのさらなる醸成をはかります。また、会員プログラムの顧客データの活用をおこない、直販率の向上、さらなる効率化をはかってまいります。
加えて、RevPAR向上に向けた投資を着実に実行していくとともに、次期中期経営計画期間中に品川プリンスホテルのバリューアップ投資を実施してまいります。足許、品川プリンスホテルは事業別ハードルレート・全社ハードルレートを超える高いROIC水準を誇りますが、さらなるNAV成長ならびに、収益力の向上を目指します。また、バリューアップ投資後の一部流動化も検討してまいります。
引き続き、国内外250ホテル体制を目指して、運営ホテル数の拡大を着実に進めてまいります。
③企業価値向上につながる成長投資を優先しつつ、株主還元の安定性および継続的な強化を図る
今後も、長期戦略で定めた株主還元方針に則り、DOE2.0%を下限とする累進配当を実現し、安定的な配当とあわせ、収益向上を通じた増配を目指してまいります。
また、2024年12月13日より700億円の自己株式取得を実施しておりますが、引き続きバランスシートの状況を踏まえ、機動的に対応してまいります。
④新たな長期戦略・中期経営計画を実行するための基盤となるコーポレート・ガバナンスを強化
取締役会と経営会議の実効性を向上させるべく、それぞれの役割を再定義し、運用の見直しなどをおこなってまいりました。今後これらの取り組みを着実に実行してまいります。
さらに、筆頭株主である株式会社NWコーポレーションとの関係については、当連結会計年度に同社の株式を追加取得し連結子会社化しましたが、今後は完全子会社化に向けて検討を進めてまいります。
加えて、保有継続の合理性が認められない政策保有株式については縮減をしてまいります。
<突発的な地政学リスクに向けて>
持続的な成長に向けて、突発的な地政学リスクに対して引き続き注視し、影響が顕在化した際には速やかに対策を講じてまいります。特に、インバウンド減少の影響、株価下落・企業業績悪化に起因した消費マインドの低下、輸出産業への波及効果、金融市場への影響などにともなう日本経済全体へのリスクを想定し、機動的に対応してまいります。
<重視する経営指標>
2035年度当社グループの営業利益1,000億円以上の達成に向けて、不動産事業を核とした成長戦略からなる「西武グループ長期戦略2035」を実行してまいります。なお、資本効率や最適資本構成を示す経営指標等について、下記4つの「財務KPI」を設定しております。
・ROE 恒常的に8%を達成(2035年度に10%以上を目指す)
・ROA 2.7%以上
・自己資本比率 25~30%
・格付け機関の評価 A格を維持
今後、これらの重視する経営指標の水準に到達できるよう努めてまいります。
当社グループは、これまでもこれからも「でかける人を、ほほえむ人へ。」を変わらぬスローガンとして掲げ、お客さま、地域社会とともに成長していく企業として、お客さまの行動と感動を創造し、豊かで持続可能な社会を実現してまいります。また、「Resilience & Sustainability - 安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する -」ことを目指し、社会的価値と株主価値の極大化に向けて企業運営をおこなってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいて当社グループが判断したものであり、種々の要因により実際の結果とは異なる可能性があります。
(1) サステナビリティ全般についての考え方及び取組
当社グループは、西武グループ長期戦略2035において、2035年のありたい姿 (アウトカム) を「Resilience & Sustainability」とし、「安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する」企業グループを目指すこととしております。このアウトカムを実現するためには、社会課題のみではなく時流に応じた様々なニーズと、当社グループにとってのリスク・機会を的確に把握し、しなやかに対応していくことが必要です。当社グループでは、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的かつ力強い成長を目指すための取組を「サステナビリティアクション」と呼び、社会課題や当社の事業環境を踏まえて6つのマテリアリティ (重要テーマ) を設定しております。戦略体系図においても、マテリアリティを長期戦略や中期経営計画の上位概念として位置付け、グループの全施策で、アウトカム実現に向けた取組を強く推進しております。
〈グループの戦略体系図〉
以下では、当社グループのサステナビリティ全般に関するガバナンス体制、戦略、リスク管理ならびに指標及び目標について記載し、後記「
(ガバナンス体制)
サステナビリティアクションを持続的・積極的かつ体系的に進めるため、「西武グループサステナビリティアクション推進体制規程」を制定しております。本規程に基づき、当社CEOを委員長・議長とし、当社社長執行役員兼COO、当社経営戦略部担当執行役員、主要事業会社社長などにより構成される当社CEOの諮問機関である「西武グループサステナビリティ委員会」を設置し、原則年2回開催しております。本委員会では、当社グループのサステナビリティアクションへの取組方やグループ各社におけるサステナビリティアクションの推進状況、気候変動及び生物多様性・自然関連課題に関するリスクや機会、人的資本等に関連する対応、その他グループ横断的事項について報告・ディスカッションをおこなっております。その内容は、当社取締役会に報告しております。また、本委員会での議論により実効性を持たせるため、当社経営戦略部長を議長とし、主要事業会社に設置しているサステナビリティアクション推進部署の代表者により構成される「西武グループサステナビリティアクション推進者会議」において情報共有をおこなっております。
(戦略)
当社グループはすべての活動の出発点であり、変わることのない基本姿勢である「グループビジョン」に基づき、すべての事業・サービスを展開しております。当社の事業・サービスを取り巻く環境は刻一刻と変化しておりますが、サステナビリティアクションの推進により将来想定されるリスクを低減しながらビジネスチャンスを創出することで、当社グループの持続的かつ力強い成長につなげていくことができると考えております。
サステナビリティアクションでは、社会課題や当社にとってのリスク・機会を踏まえて、特に取組むべき6つのマテリアリティを特定し、目指す姿を定めた上でマテリアリティに沿った対応をおこなっております。なお、マテリアリティの特定は以下のプロセスで実施いたしました。
〈マテリアリティ特定のプロセス〉
〈マテリアリティの目指す姿と経営計画での取組〉
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マテリアリティ |
目指す姿 |
経営計画での取組 |
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成長 |
脱炭素・資源有効活用 |
常に自然環境、地球環境へ配慮し、脱炭素社会や資源循環型社会の実現に貢献します。 |
●設備の省エネ化、再生可能エネルギーの導入促進 ●森林維持・保全、森林活用、CO₂吸収量維持 ●取水量・廃棄物等の資源利用の適正化 ●食品ロスの削減、資源循環サイクルの構築 |
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住みたいまち・ 訪れたいまちづくり |
様々な暮らしの1シーンを彩り、住みたくなるまちづくりをおこないます。多様な人々を惹きつける、訪れたいまちづくりを推進します。 |
●沿線価値向上に向けた沿線開発 ●グループの強みを生かした都心再開発・リゾート 開発 ・地域等と連携した施策 ・訪れたい商業施設の提供 ・来訪目的地の魅力向上・発信 |
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五感を揺さぶる体験創造 |
楽しみ、感動、興奮、生きがいを提供し、人々がほほえむ特別な時を創造します。 |
●西武グループならではの体験価値の創造 ・ホテル利用者の満足度向上、キラー体験 (絶景) 開発・実施 ・すべての人が楽しめる球場・ライオンズ コンテンツ提供、熱く熱狂できるチームづくり ・公園等でのイベントやアウトドア体験提供 |
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基盤強化 |
安全・安心なサービス 提供 |
常に安全を基本にすべての 事業・サービスを推進し、 すべての人に安心な日常を提供します。 |
●安全確保、災害防止、バリアフリー化に向けた 設備投資 ●自治体等と連携した各種訓練、協定等による災害 対策 ●HACCPに対応した食の安全管理 ●情報管理・セキュリティに関する教育 |
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多様な人財の育成・活躍 |
個人がスキルを高め、働きがいのある組織づくりにより、 はたらく人のほほえみを創出 します。はたらく人の専門性を高め、プロフェッショナルな 人財を育成します。 |
●戦略的な配置や公募型制度、自己研鑽のための コンテンツ拡充など、個人主体の自律的な成長 促進による人財スキルの向上 ●インナーコミュニケーション強化や人事制度 改革、施設環境改善、健康経営などによる従業員 の働きがい向上 ●多様性を尊重し、一人ひとりが最大限活躍できる 組織づくり |
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コンプライアンスと協働 |
コンプライアンスを徹底し、 経営の健全性・透明性を確保 します。ステークホルダーとの対話を重視し、適切な協働に 努めます。 |
●コーポレートガバナンス・コードを踏まえた環境 整備、経営高度化 ●コンプライアンス教育の継続実施 ●投資家や協力企業など多様なステークホルダー との対話 ●人権デュー・ディリジェンスの実施 |
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サステナビリティアクションの具体的な対応策や進捗は、当社WEBサイトをご覧ください。
当社WEBサイト
https://www.seibuholdings.co.jp/sustainability/
当該サイトは、年1回夏頃に各種取組の更新をおこなっております。
(リスク管理)
当社では、サステナビリティや人的資本・多様性に関するリスクを含むあらゆる事業等のリスクについて抽出し、分析・評価するために、年2回リスクマネジメント会議を開催しております。詳細は、「
また、特に気候変動及び生物多様性・自然関連課題に関するリスクは西武グループサステナビリティ委員会においても抽出し、分析・評価しております。当該委員会において、気候変動がもたらすリスク及び機会が当社グループに及ぼす影響を、外部のパラメーターや定量評価の手法によって推計することで、影響の大きさを大・中・小で評価し、その対応策を検討しております。生物多様性・自然関連課題に対しても、当社グループの評価対象事業における重要な自然への依存と影響を評価し、当社グループの事業特性も考慮して、評価対象事業におけるリスク・機会を整理し対応策を検討しております。
(指標及び目標)
当社グループでは、マテリアリティを達成するために、非財務KPIを設定し、達成に向けて各施策を推進しております。
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マテリアリティ |
主な非財務KPI |
目標値 |
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脱炭素・資源有効活用 |
CO₂排出量 |
長期目標:2050年度にネットゼロ 中期目標:2030年度までに2018年度比46%削減 短期目標:毎年度 前年度比5%削減 |
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再生可能エネルギー導入率 |
長期目標:2050年度100% 中期目標:2030年度50% |
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社有地の環境保全地区化率 |
2030年度までに社有地の30%(3,000万㎡) ※面積は2024年2月時点 |
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安全・安心なサービス 提供 |
責任事故、インシデント等 |
毎年度0件 (鉄道) |
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死亡事故、 車外・車内人身重傷事故 |
毎年度0件 (バス) |
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食中毒事故 |
毎年度0件 |
(注) 非財務KPIの一部を抜粋して掲載しております。
人的資本及び多様性に関する指標及び目標は、「
また、CO₂排出量の実績をはじめとした各種非財務データについては、当社がWEBサイト等で公表している統合報告書、又は非財務データブックをご覧ください。なお、どちらの開示資料も、例年、夏頃から秋頃にかけて最新版を公表しております。
サステナビリティアクションの推進によって持続的な社会の実現と当社の力強い成長を目指すため、 非財務KPIを今後も追加してまいります。
(2) 気候変動及び生物多様性・自然関連課題への対応
当社では、長期戦略2035においてマテリアリティの一つである「脱炭素・資源有効活用」に基づき、常に自然環境、地球環境へ配慮し、脱炭素社会や循環型社会の実現に貢献することを掲げ、特に気候変動や生物多様性・自然関連課題に関して、将来のリスクを低減し、西武ならではの強みを生かし収益機会を獲得していくことを目指しております。
「気候変動」については、TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) 提言に賛同し、下記「戦略」に記載のとおり、気候変動が事業に与えるリスクと機会について、気候変動による平均気温上昇を1.5℃未満に抑制したシナリオと平均気温が4℃上昇したシナリオの複数シナリオについて検証を実施しております。
また、「生物多様性・自然関連課題」については、当連結会計年度において、TNFD (自然関連財務情報開示タスクフォース) 提言を採用する「TNFD Adopter」に登録するとともに、TNFDが推奨するフレームワークに基づいて、当社グループの事業における自然への依存と影響の特定、及びリスクと機会の分析・評価を実施しております。
(ガバナンス体制)
上記のとおり、気候変動や生物多様性・自然関連課題への対応を含むサステナビリティ全般のガバナンスは、西武グループサステナビリティ委員会にておこなっております。同委員会では、TCFD提言やTNFD提言に基づく取組についてモニタリング及び方向性の決定をおこなっております。
同委員会の構成員等は、「
(戦略)
・依存と影響の評価(生物多様性・自然関連課題)
当社では、「LEAPアプローチ」に沿って、自然関連のリスク及び機会の評価を実施しております。今回は自然との関連性の大きい「不動産事業」「ホテル・レジャー事業」を対象に、分析をおこないました。
まず、重要な自然への依存と影響を特定し、その大きさの評価に関して、TNFDが推奨するツール (ENCORE) や社内情報等を参考にして実施し、ヒートマップで結果を整理しております。
直接操業では、文化的サービスへの依存が大きいことが分かりました。当社グループが管理・運営するオフィスビルや商業施設の中には、敷地内や周辺に緑地がある拠点も多く存在しております。それらの拠点では、豊かな緑が利用者の訪問やそのエリアの魅力向上などにもつながることが期待され、自然の持つアメニティやふれあいの場の提供などの機能に依存していると言えます。また、周辺の四季折々の自然の観察・体験や森林浴などを目的に当社グループが管理・運営する施設にご宿泊いただくお客さまも多く、観光資源となる自然に依存していると言えます。
サプライチェーン上流では、オフィスビルや商業施設の建設に必要な建材や、ホテルで提供する食材の調達が、多くの自然への依存・影響をともなっていることを再確認いたしました。当社では2022年に、「西武グループサステナブル調達方針」及び「西武グループサプライヤーガイドライン」を策定し、当社グループはもとより、協力企業の事業活動における生態系等への配慮にも働きかけをおこなっております。また、資源循環の取組なども実施しており、サプライチェーン全体における自然への依存・影響の把握・対処を進めております。
・リスクと機会の特定(気候変動、生物多様性・自然関連課題)
以下の表は、TCFD提言及びTNFD提言などで示されているリスク・機会の項目を中心に、当社における気候変動、生物多様性・自然関連課題にともなうリスク・機会を抽出したものです。低炭素社会への移行に関する移行リスクと、気候変動による物理的変化に関する物理的リスク及び低炭素社会への移行等にともない発生する機会について分類し、気候変動による平均気温上昇を1.5℃未満に抑制したシナリオ (IEA NZE シナリオ) と平均気温が4℃上昇したシナリオ (IPCC RCP8.5 シナリオ) を設定し、当社グループへの影響評価をおこなっております。
生物多様性・自然関連課題に対して、依存と影響の評価結果及び当社グループの事業特性を踏まえて、当社グループの評価対象事業における自然関連のリスク・機会の評価をおこなっております。
リスク
機会
(期間欄 短期:1~3年 中期:4~10年 長期:10年以上)
(影響度欄 小:5億円未満 中:5~10億円 大:10億円以上)
抽出されたリスクに対しては適切なマネジメントを、機会に関してはビジネスチャンスに変えるべく、グループ各社では取組を進めるとともに、西武グループサステナビリティ委員会などでその状況をモニタリングしております。
・優先地域の評価(生物多様性・自然関連課題)
当社グループが保有運営し、営業活動をおこなう国内拠点を評価対象として、その周辺にある自然の状態などをTNFDが定義している5つの基準 (保全重要度、生態系の完全性、生態系の完全性の急激な劣化、水関連の物理リスク、生態系サービスの重要度) に沿って、外部ツールなどを用いて分析いたしました。その結果、軽井沢エリア、伊豆・箱根エリア、西武鉄道沿線の埼玉県内の拠点 (以下、沿線埼玉エリア) が、生物多様性・自然関連課題に関する取組を重点的におこなうべき地域である、優先地域として特定されました。
優先地域の3エリアにおけるリスク・機会、今後の取組を深掘りした結果は以下のとおりとなりました。
(リスク管理)
気候変動及び生物多様性・自然関連課題に関するリスクについては西武グループサステナビリティ委員会にて抽出し、分析・評価されたリスク・機会については「サステナビリティアクション推進体制」において対応するサステナビリティアクション及び「リスクマネジメント体制」において対応するリスクマネジメントにて、適切に対応してまいります。また、気候変動及び生物多様性・自然関連課題などのサステナビリティに関するリスクについては「西武グループリスクマネジメント規程」 に基づき毎年策定している「リスクマネジメント計画」において特に重要なリスクとして設定しており、全社的なリスクマネジメントに統合し、管理をおこなっております。リスクマネジメント体制等は、
(指標及び目標)
気候変動への対応として環境負荷削減目標を設定しております。また、生物多様性・自然関連課題に関する環境パフォーマンスもモニタリングしております。また、一部指標においてはTNFDが定めるグローバル中核開示指標に基づく目標を設定しており、定量的な進捗の管理もおこなっております。詳細は、「
(3) 人的資本・多様性
当社グループでは、「はたらく人を、ほほえむ人へ。」をスローガンとして、経営計画と連動した「西武グループ人財戦略」を策定しております。「西武グループ人財戦略」は、経営戦略を実現するために、戦略上取組優先度の高いスキルと必要人数の確保を目指し、「人財スキル・人員数の確保」を実行するとともに、「働きがいのある組織」に向けた取組を実行し、「個人の成長」を促進していきます。そのうえで「一人ひとりが最大限活躍できる組織づくり」をおこなうことで、プロフェッショナル集団を目指してまいります。
(ガバナンス体制)
人的資本・多様性に係るガバナンスの体制については、上記「
また健康経営に関しても、グループとして健康経営促進体制を整備することを目的として、当社及び主要事業会社人事担当部長と西武健康保険組合常任理事により構成される「西武グループ健康経営推進会議」(事務局:当社人財戦略部) を原則年1回開催しております。本会議では、グループにおける重点健康テーマや定量目標の設定、グループ各社の健康課題や取組の報告をおこなっております。本会議での報告・ディスカッションの内容は西武グループサステナビリティ委員会及び当社取締役会に報告しております。
(戦略)
「西武グループ人財戦略」における「人財スキル・人員数の確保」については、既存社員の自律的な育成支援に加え、新卒やキャリア採用などを通じて実現していきます。特に取組優先度の高いスキルを「強化人財」として設定しております。「デジタル経営」のより一層の推進を企図し、グループ共通の強化人財として、2026年度までに「DXリーダー」を300人確保していきます。また、株式会社西武ホールディングスでは「経営企画人財」、西武鉄道株式会社では「鉄道計画人財」及び「沿線活性化人財」、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドでは「GM人財(総支配人候補)」、株式会社西武不動産等では、「AM人財」や「開発人財」を確保していきます。そして「強化人財」をはじめとする従業員の人財育成に際し、個人主体の自律的な成長を促進していくためのツールとして「SEIBU ACADEMY」(セイブアカデミー)を積極的に展開いたします。「SEIBU ACADEMY」では、グループ従業員向けの「教育・育成カリキュラム提供」として、公開講座や通信講座などの自己啓発プログラムやオンライン学習サービスの提供に加え、社内講師や経営者レクチャーなどの講座を提供していきます。また、「バッジ制度に基づくスキル獲得促進」として、「SEIBU Smile バッジ」を導入し、あらかじめ設定した要件を満たした従業員に対し、スキル認証バッジを進呈するなどして、グループ従業員のスキル獲得意欲を高めております。上記のほか、キャリアパスについては、年齢、勤続、性別等に関わらず、能力や成果に基づいた昇進を実現するとともに、若手や女性などを積極的に登用し、本人の希望と会社からの期待を一致させ、それぞれの成長につながるよう適所適材な人財配置をおこなっております。これらの取組をさらに推進し、人財確保をはかってまいります。
また同時に、スキルが最大限発揮される「働きがいのある組織」をつくっていくため、働きがい(エンゲージメント)調査を実施し、その結果や従業員の声などを参考にしながら働きがい向上のための課題を明確化し、「エンゲージメント優先指標」を定め、それに基づく様々なアクションプランを実行しております。例えば、事業に応じて柔軟な働き方を推進するとともに、生涯にわたり健康で幸福度の高い生活が送れるような環境を整備しております。
その上で、組織として最大限の成長と成果を実現するため、一人ひとりが最大限活躍できる組織づくりを進めております。イノベーションを創出できる組織を将来的なありたい姿として描きながら、「組織の成長」にむけて様々な取組を推進してまいります。
(指標及び目標)
人的資本及び多様性に関する指標及び目標を設定しております。(下記、管理職比率については該当年度末時点。下記取得率については該当年度中)
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(参考:2024年度) |
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現状以上 |
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現状以上 |
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※ 上記の対象会社:株式会社西武ホールディングス、西武鉄道株式会社、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド、株式会社西武リアルティソリューションズ(現株式会社西武不動産)
(1) 当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくため、当社の経営戦略部を当社及び西武グループ全体のリスクマネジメント統括部署とし、同部担当の業務執行担当役員を、グループ全体のリスクマネジメントの実施及び運用の責任と権限を有するリスクマネジメント総括責任者とするとともに、当社において、当該リスクマネジメント総括責任者を議長とし、当社の各部長・室長を構成員とするリスクマネジメント会議を開催しております。
また、グループ内子会社のうち、主要8社各社に、当該各社及びそれぞれの会社がガバナンスの観点から監督すべき系列の会社(以下、「ガバナンス系列の会社」といいます。)におけるリスクマネジメントに関する社内体制を統括する部署としてリスクマネジメント統括部署を設置しています。さらに、当該主要8社各社のリスクマネジメント統括部署を担当する業務執行役員を、当該各社及びそれぞれの会社に属するガバナンス系列の会社におけるリスクマネジメントの実施及び運用の責任を有するリスクマネジメント責任者としております。
各社リスクマネジメント統括部署は、リスクマネジメントの状況を取りまとめ、各社のリスクマネジメント総括責任者又はリスクマネジメント責任者に報告いたします。かかる報告を受けたリスクマネジメント責任者は、当該報告を取りまとめ、各社の取締役会及び内部監査部門、ならびに当社のリスクマネジメント総括責任者に報告しております。さらに、リスクマネジメント総括責任者は、これらの報告を取りまとめ当社の取締役会及び監査・内部統制部に報告しております。
(2) 当社グループのリスクマネジメントの運用
当社グループにおけるリスクマネジメントは、毎事業年度におこなうリスクマネジメント計画の策定と当該計画に基づく継続的なモニタリングにより運用しております。
リスクマネジメント計画は、①リスクの洗い出し(抽出)、②リスクの大きさ算定(分析)と優先順位付け(評価)、③リスク対策(行動計画)の決定、というプロセスを経て、策定しております。
また、計画開始後のモニタリングは、外部環境の変化にともなうリスクの変動及びリスク対策の進捗等を踏まえた残余リスク(リスクコントロールの実施後に残るリスク)に着目して実施しております。
当社グループは、当社グループが策定した「西武グループ長期戦略2035」(以下、「長期戦略」といいます。)及び「中期経営計画(2024~2026年度)」(以下、「中期経営計画」といいます。)と有機的一体となった運用により、当社グループの戦略目標達成を支える質の高いリスクマネジメントをおこなってまいります。
以下では、当社グループのリスクマネジメント計画の策定プロセスの具体的内容について記載いたします。
①リスクの抽出
リスクの抽出は、次のとおり、当社グループ内においてトップダウン及びボトムアップの双方向のアプローチに基づくプロセスを経ております。
当社は、当社のリスクマネジメント会議での議論及び当社の社外取締役との意見交換も経ながら、当社グループ全体の目標達成を阻害する可能性のあるリスク要因を抽出しております。並行して、主要8社各社も、主要8社各社及び各社のガバナンス系列の会社の目標達成を阻害する可能性のあるリスク要因を抽出しており、双方で抽出したリスク要因をあわせることで、リスクの網羅的な抽出をおこなっております。
②リスクの分析・評価
当社グループでは、発生可能性及び影響度の観点からリスク分析をおこなっております。具体的には、主要8社各社が、発生可能性ならびに主要8社各社及び各社のガバナンス系列の会社の目標達成に対する影響度を分析し、当社は、主要8社各社の分析結果も踏まえ、当社グループ全体としての発生可能性及び目標達成に対する影響度を分析、評価しております。
当事業年度末時点においては、上記分析に基づき、当社は、14項目の主要なリスクカテゴリーのうち、特に重要なリスクカテゴリーとして9項目を決定いたしました(リスク評価)。
当該分析及び評価の結果は次のとおりです。
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発生可能性 |
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低 |
中 |
高 |
||
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影 響 度 |
大 |
・安全・安心 |
・自然災害・感染症・ 地政学的リスク等 ・旅行・観光消費動向 ・収支構造・金利 |
・不動産領域 ・人財確保 ・少子高齢化 ・経済情勢 ・技術革新・価値変容 |
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中 |
・情報システム・
情報管理 |
・法的規制・ コンプライアンス等 |
・気候変動 |
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小 |
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・協力企業との取引・共創 |
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③リスク対策
当社グループは、リスクマネジメント計画策定時に、残余リスクとして残存したとしても経営上許容し得るリスクの程度について議論をおこない、かかる議論を踏まえて具体的なリスク対策を決定しております。
主要なリスクカテゴリーに対するリスク対策の概要については、後掲(3) 及び(4) に記載いたします。なお、後掲(3) 及び(4) に記載する事項には将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は原則として当事業年度末現在において判断したものであります。
(3) 特に重要なリスクの内容及びリスク対策の概要
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①不動産領域に関するリスク |
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発生可能性:高 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 当社グループの長期戦略においては、都市交通・沿線事業やホテル・レジャー事業は、不動産事業とともに成長していくものであり、不動産事業が当社グループの成長の核となります。そのため、不動産領域に存在するリスクは、当社グループの長期的な成長に大きな影響を与える可能性があります。具体的には、2025年4月に株式会社西武リアルティソリューションズから商号変更した株式会社西武不動産(以下、「SRE」といいます。)が総合不動産会社へと飛躍していくうえで、(ア)投資判断上の課題、(イ)開発用地・不動産の取得、(ウ)不動産開発・建替、(エ)不動産価値の低下、及び(オ)不動産の管理といったあらゆるリスクに対処する必要があります。 特に、(ウ)不動産開発には長い開発期間と巨額の投資が必要となり、当社グループではコントロールできない多くの外部要因により、影響を受ける可能性があること、及び、(エ)不動産市況の変化や老朽化によって不動産価値が減少し、又は工事費をはじめとする各種コストの高騰により売却利益の減少や損失が発生する可能性があること、について注視する必要があります。 東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化をはじめとし、今後より一層不動産回転型ビジネスを加速していくこととしていますが、上記のリスクのうち特に(エ)不動産市況の変化による不動産価値の減少等に起因する売却利益の減少や損失の発生等のリスクに留意する必要があります。 |
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●リスク対策 当事業年度においては、キャピタルリサイクルモデル(不動産流動化とその資金を活用した再投資を持続的に実施し成長するモデル)の実現に向けた体制整備をおこなってまいりました。今後は、引き続き専門人財の登用をおこないながら、新規物件取得や不動産開発を加速していき、リスク顕在化による影響を低減いたします。 (ウ)不動産開発に関するリスク等、当社でコントロールできないリスクについては一定のリスクの発生を織り込んだうえで投資判断・事業をおこない、また、遅延や異常が発生した場合には、速やかな対応ができる体制を構築することでリスク顕在化による影響を低減いたします。 (エ)不動産価値の低下リスクについては、貸借対照表の適正なコントロールや最適なポートフォリオの構築を通じて、リスク耐性のある事業基盤を構築するとともに、資本効率性を意識した商品企画・サービスの向上及びバリューアッドを通じた市場競争力の強化によって、リスクの発生可能性及び顕在化による影響を低減いたします。 |
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②人財確保に関するリスク |
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発生可能性:高 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 日本全体の少子高齢化・人口減少はメガトレンドとして避けられず、働き手が慢性的に不足し、採用市場は売り手市場が続くことが予想されます。当社グループにおいても、想定どおりの採用が実施できなかった場合や、キーパーソンや若手社員が働きがいを感じられず人財の外部流出が進む場合など、人員が不足した結果、事業機会を逸失、事業戦略の実行力低下を招く、といったリスクが想定されます。 特に成長戦略の核を担うSREでは、不動産回転型ビジネスや都心・リゾート再開発等を担う専門人財の確保が遅れる場合、これらのビジネスが停滞し、損失を招くリスクが想定されます。 |
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●リスク対策 当社グループは、長期戦略におけるマテリアリティ(重要テーマ)の一つとして「多様な人財の育成・活躍」を位置づけ、その一環として「西武グループ人財戦略」を実行しております。当社グループの各社が「人財スキル・人員数の確保」「働きがいのある組織」に向けた取組みをおこなうことにより「個人の成長」を促進し、「個人×個人が最大限活躍できる組織」をつくっていくことで本社・現場全員が一丸となって「プロフェッショナル集団」を目指します。 全社的に、従来の新卒定期採用に加え、キャリア採用や副業等の市場に着目し、人財確保につなげるとともに、確保した人財や既存従業員に当社グループで活躍できるように、働きがいを向上させます。働きがいに関する調査結果を踏まえ、人事施策をブラッシュアップしていくことにより、従業員が会社の目指す姿に共感し、一体となって挑戦している組織の状態を築くとともに、社内外に開けたオープンマインドや高い心理的安全性を前提としたダイバーシティやインクルージョンを実践してまいります。これらの施策を着実に実行することでリスクを回避いたします。 当事業年度におきましては、2025年度初任給及び既存社員の給与引き上げをおこなうことを決定しましたが、引き続き成長を支える原動力となる人財へ投資し、「最高の処遇」を実現してまいります。 |
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③少子高齢化に関するリスク |
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発生可能性:高 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 日本全体の少子高齢化・人口減少はメガトレンドとして避けられず、当社グループの事業においては、具体的には、(ア)鉄道沿線の人口減少による運輸収入や沿線での各種事業(西武ライオンズ等も含みます。)の収入減、観光客の減少によるホテル・レジャー事業等の収入減、(イ)お客さまの高齢化にともなうニーズの変化に適応できなかった場合のお客さま満足度低下、収入減、及び(ウ)不動産需要の低下、市況の悪化による地価等の下落、等のリスクが想定されます。 |
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●リスク対策 不動産事業を核とする成長戦略を実行し、キャピタルリサイクルによりグループの成長に寄与するキャッシュ・フローを生み出す方向性へ事業ポートフォリオ変革を進めていくこと、また、グループ外のスタートアップ企業等と連携しながら、新規事業創出にも挑戦し続けることで、リスク顕在化による影響を低減いたします。 また、リゾート開発において付加価値の高い国際的リゾートを創造していくこと、ホテル・レジャー事業において富裕層をターゲットとするラグジュアリーブランドの出店も含めたホテル展開を加速させていくこと、グループマーケティング基盤上のデータを利活用しながら、お客さまのニーズをタイムリーに把握しサービス変革を果たすこと、及び、あらゆる年代のお客さまにとって快適なサービスの形を追求し(施設、接遇等)、当社グループ独自の体験価値を提供すること、を通じて市場での競争力を強化し、リスク顕在化による影響を低減いたします。 さらに、西武鉄道株式会社(以下、「SR」といいます。)の沿線地域の土地が強固な地盤であることも強みに、SRとSREが連携してSR沿線エリアの街づくりに取り組んでいくこと等を通じて、SR沿線地域の少子高齢化・人口減少を抑制し、リスクの発生可能性も低減いたします。 |
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④経済情勢に関するリスク |
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発生可能性:高 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 (経済危機) 地政学リスク等に端を発する世界経済の減速は、日本経済にも影響を及ぼす可能性があります。特に旅行・観光需要が減少すると、「旅行・観光消費動向に関するリスク」が高まる可能性があります。 (燃料費、原材料費等の不足、高騰) 気候変動や自然災害に起因する原材料の不足(原材料費の高騰)や、原油価格高騰に起因する燃料費の増加等の外部的な要因により燃料費、原材料費等が増加することにより、業績に悪影響を及ぼし、又は、事業活動の継続が困難となる可能性があります。 (為替変動) 為替価格が当初予定されていた価格と相違することにより、日本円表示している連結財務諸表や、外貨建て資産・負債に損失が発生し、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 (株式市場の変動) 株式市場の変動によって、当社の株価下落、また、当社グループが保有する投資有価証券の価値が変動し、損失を被ることで、業績への打撃をもたらす可能性があります。 (退職給付費用・退職給付債務) 当社グループの従業員の退職給付費用及び債務は、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の数理計算で設定される前提条件に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と相違した場合又は前提条件が変更された場合は、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 |
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●リスク対策 経済情勢・市況を常時把握し、大幅な情勢の変化の際には、迅速なグループ方針の決定と正確なグループ展開に努めるとともに、効率的な事業運営体制を構築することでリスク顕在化による影響を低減しております。今後も、経済情勢をあらかじめ踏まえたうえでの計画策定や、変化をとらえた機動的な対応等により、リスクコントロールをおこなってまいります。 |
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⑤技術革新・価値変容に関するリスク |
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発生可能性:高 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 新型コロナウイルス感染症の蔓延を契機とした人々の生活様式の変化によって、人々の価値観にも変容が生じ、複雑化・多様化しております。また、ディープラーニングの発展を背景としたAIの急激な進歩等、技術革新(デジタルディスラプションを含みます。)が目まぐるしく生じ、当該技術を活用した新たな価値(新たなサービス)が次々と世に生み出されております。これに対して当社グループの商品・サービスが、お客さまのニーズの変化に適応したものとなっていない場合、賃貸稼働率の低下や賃料の減少、販売売上の減少等によって経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす、等のリスクが想定されます。 |
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●リスク対策 当社グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタルよりもトランスフォーメーションに重きを置き、企業全体の変革を実現するものとしています。デジタル技術、データの利活用は不可欠であるとの認識に基づき、(ア)当社グループの従業員にデジタルスキルの習得機会を提供し、データの分析及び利活用を高度におこなうことのできる人財を育成していくこと、ならびに、(イ)特定の専門家、分析担当者だけでなく、あらゆる従業員がデータを理解したうえで効果的な施策を実行できるようにしていくこと(データの民主化)、の両軸で、お客さまに対して、これまでにない「新しい体験価値」を創出していくことで、リスクの発生可能性を低減いたします。また、データに基づく経営判断をおこない、お客さまのニーズに見合ったサービス変革を継続的に実行するとともに、業務プロセスも効率化することにより、当社グループらしい不動産開発、生活者に選ばれる沿線、お客さま・オーナーさまに選ばれるホテル、など競争優位性の高い状態を実現することで、リスクの発生可能性を低減いたします。 |
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⑥気候変動に関するリスク |
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発生可能性:高 |
影響度:中 |
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●リスクの内容 (移行リスク) 地球環境バランスの崩壊と、世界的な資源循環の要請がメガトレンドとして存在しているところ、事業者にとっては、社会や投資者等のステークホルダーから、温室効果ガスの削減を含む環境への取組みが要請され、その取組みが重視・評価される時代となっております。そのため、例えば、(ア)気候変動を考慮した企業ニーズや消費動向の変化(例:不動産需要の変化等)をとらえきれず、お客さま満足度を低下させ、事業機会を逸失する、(イ)当社グループによる取組み不足により、当社グループのイメージが低下し、当社グループ各社による事業機会を逸失する、等のリスクが想定されます。 (物理的リスク) また、(ウ)豪雨・土砂災害等の異常気象の激甚化による交通事業の運休・施設の休業により売上が減少し、又は、建物・設備等の改修コストが増加する等の要因により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす、(エ)夏期の気温上昇による出控えや、冬期の降雪量の減少等によるスキー客の減少等を要因として売上が減少し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす、等のリスクも想定されます。 |
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●リスク対策 当社グループは長期戦略におけるマテリアリティ(重要テーマ)として「脱炭素・資源有効活用」を設定し、環境負荷低減目標及び資産・ブランド価値向上指標を非財務KPIとして設定しております。具体的には、CO₂排出量を2050年度ネットゼロにする、延床面積30,000㎡以上のオフィスビルにおける環境認証(CASBEE、DBJ等)の取得率100%、等の目標を掲げ、例えば、森林の活用、省エネ車両や設備の導入による使用エネルギーの削減、太陽光発電等再生可能エネルギーの導入、等の具体的施策を検討・実施しております。また、特にホテル・レジャー事業では、環境意識の高いお客さまニーズを踏まえたサービスを提供してまいります。これらの取組みにより、移行リスクの発生可能性を低減いたします。 また、建物・設備等の改修及び浸水・防止対策その他各種メンテナンスの徹底、ならびに総合復旧訓練等の異常時訓練の実施を通じた対応力の強化により、物理的リスクによってお客さまの安全が脅かされることのないよう、最大限の努力をおこなっております。さらに、売上の減少や改修コストの増加が業績に大きな悪影響を及ぼすことがないよう計画的な修繕等を通じて、物理的リスクの顕在化による影響を低減いたします。 |
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⑦自然災害・感染症・地政学的リスク等に関するリスク |
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発生可能性:中 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 当社グループの事業においては、地震、津波及び台風等の自然災害、新型インフルエンザ等の感染症、ならびに戦争及びテロ等の地政学的リスク等を要因として、(ア)生活者、観光利用者の動きに影響が生じ、都市交通・沿線事業やホテル・レジャー事業等において売上高が減少する、(イ)事業拠点が1か所(主に首都圏)に集中することで、自然災害又は地政学的リスク等が発生した際に甚大な影響を受け全社的に事業継続が困難となる可能性がある、等のリスクが想定されます。 |
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●リスク対策 前・中期経営計画において実施したグループ再編以降、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド(以下、「SPW」といいます。)はホテル出店においてはマネジメントコントラクト(以下、「MC」といいます。)受託によることを基本とすることでリスク顕在化による影響を低減しております。 また、不動産回転型ビジネスの展開により、安定利益(開発・賃貸業)と売却利益(投資運用業)のバランスをとることに、また海外ホテル展開においては、地政学リスクをより一層注視しながら、エリアごとのリスク分散をはかることにより、リスク顕在化による影響を低減いたします。さらに、運輸安全マネジメント体制をはじめとする都市交通・沿線事業においては、沿線自治体とも連携し、防災体制を強化しております。 気候変動に対するリスクマネジメントとの連動・一体性も意識しながら、リスクが顕在化した場合であっても、お客さまや従業員の安全性が保たれるとともに、事業への影響が極小化できている状態を目指します。 |
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⑧旅行・観光消費動向に関するリスク |
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発生可能性:中 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 (国内情勢の変化) 国内景気の悪化による旅行・観光消費の冷え込みによって、日本国内における旅行・観光客の減少が生じ、売上(ホテル・レジャー事業、都市交通・沿線事業の定期外収入等)が減少する可能性があります。 (海外情勢の変化) 海外進出先での政治的混乱や、外交的問題による日本との関係悪化により、現地での事業継続への支障もしくは事業の中断・停止、又は、日本へのインバウンドの減少等が生じ、特にホテル・レジャー事業において業績への悪影響やホテル数拡大の遅延が生じる可能性があります。 |
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●リスク対策 ホテルのグローバル展開など単一市場に依存しないマーケティングや旅客誘致プロモーション活動の強化、国内施設・海外施設間の相互送客、リスクを機とした新たな商品開発、及びグループ共通の会員サービスやマーケティング活動の強化等に加え、前・中期経営計画期間ではアセットライトをテーマとしたビジネスモデルの変革により企業体質を進化させるなど、リスク顕在化による影響を低減しております。 さらに、当社グループのマテリアリティ(重要テーマ)である「五感を揺さぶる体験創造」に従い、あらゆる場面で楽しみと感動を体験できる設計やMICE・リゾート等の独自の強みの発揮を通じて、「日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン」として差別化をはかり、グループのロイヤルカスタマーを育成し、リスク顕在化による影響を低減いたします。 また、足もとでは米国の政策により世界的な景気後退の懸念がされております。米国の政策による海外情勢の変化によって特に日本への送客数の減少は、当社の業績へ悪影響を及ぼすため、経済情勢に関するリスク及び地政学に関するリスクと連動させてリスクコントロールをおこない、リスク顕在化による影響を低減いたします。 |
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⑨収支構造・金利に関するリスク |
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発生可能性:中 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 (収支構造) 当社グループの事業においては、営業コストの相当部分が、人件費、減価償却費等の固定費で構成されているため、営業収益の比較的小幅な減少であっても、営業利益に大きな影響を及ぼすリスクがあります。特に、社会全体として賃上げ気運が高まっており、当社グループにおいても「最高の処遇」実現のため人件費を上昇させていくことが想定されます。 (金利・有利子負債) 当社グループは、鉄道業をはじめ、継続して多額の設備投資を必要とする事業をおこなっており、市場金利の上昇は、既存の有利子負債の残高に係る支払利息及び新規の資金調達に係る調達コストの増加のほか、不動産購入需要の停滞による分譲収益減少や不動産価値の低下を招くおそれもあります。 |
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●リスク対策 損益分岐点が高い収支構造の問題については、前掲のホテルのМC受託によることを基本とするネットワーク拡大や不動産回転型ビジネスの展開による資産効率性の向上に加え、当社グループのシェアードサービス会社である株式会社西武プロセスイノベーションも活用したコーポレート業務のスマート化を進めるとともに、各事業のオペレーションにおいてもデジタルを活用した効率化を進めることで、リスクの発生可能性を低減いたします。 また、市場金利の上昇に対しては、大規模開発や新規物件の取得など一定程度のレバレッジをかけつつも流動化の実施及び設備投資の厳選等、ならびに資金調達先・手法の多様化を通じてBSマネジメントを強化しリスク顕在化による影響を低減(分散)するほか、不動産取引市場におけるキャップレートの変動を注視して事業計画の立案やスケジュール策定を実施することで、リスク顕在化による影響を低減いたします。 |
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(4) その他の主要なリスクの内容及びリスク対策の概要
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⑩法的規制・コンプライアンス等に関するリスク |
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発生可能性:中 |
影響度:中 |
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●リスクの内容 (法的規制・環境規制) 当社グループの事業活動に関係する法的規制は業法、環境規制、会計基準、税制等をはじめとして多岐にわたるところ、これらの各法的規制への違反が生じると、刑事罰、事業改善命令や資格停止等の行政上の措置、損害賠償義務の負担、及びイメージダウン等を招く可能性があります。 また、現在の規制に重要な変更がおこなわれた場合や新たな規制が設けられた場合には、規制を遵守するために必要な費用が増加する可能性があり、規制に対応できなかった場合は、当社グループの活動が制限される等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 (重要な訴訟等) 通常の業務過程において、契約を巡る紛争、損害賠償、労働紛争、環境汚染等に関連して第三者から訴訟その他の法的手段を提起されたり、政府から調査を受けたりする可能性があります。法的手続対応の負担に加え、仮に当社グループに不利に判決、決定等が下された場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 |
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●リスク対策 契約締結時におけるリーガルチェックの徹底や、講習会の実施等による法務知識の向上、顧問弁護士と連携した適切な対応をおこなっております。今後も、各法的規制を遵守するために、法規制の遵守体制を徹底し、また、法令改正や各種規制に関する情報収集及び社内教育の見直しをおこなった上で実施・徹底をはかることで、リスクの発生可能性及び顕在化による影響を低減いたします。 |
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⑪安全・安心に関するリスク |
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発生可能性:低 |
影響度:大 |
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●リスクの内容 (事業用資産等の管理、サービスの品質管理、安全・事故防止活動) 事業用資産等もしくはサービスの安全面・品質面等の管理プロセス、又は安全・事故防止プロセスの不備・欠陥等により、事故等が未然に防止できず、お客さま、従業員等に重大な損失を被らせ、又は行政機関から業務停止命令や改善命令を受けること等を通じて、社会的信用の失墜、イメージダウン、損害賠償義務の発生等を招く可能性があります。 (食の安全・安心の不備) 食中毒の発生、異物の混入、表示と異なる食材の提供、アレルギー食材や宗教上の理由により食べられない食材の提供等により、お客さまの心身に悪影響・損失を生じさせ、社会的信用の失墜やインバウンド含む既存のお客さま及び未来のお客さまの逸失を招く可能性があります。 |
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●リスク対策 当社グループは「安全で快適なサービス」の提供をグループ理念に掲げ、常に、「安全」を基本にすべての事業・サービスを推進しております。 当社グループの事業においては、「安全・安心」を最重要課題と認識し、運輸安全マネジメント体制をはじめとする都市交通・沿線事業における安全性向上の取組みや運輸マネジメント体制の整備・運用、ホテル・レジャー事業における食の安全確保の施策の実行、施設の安全対策の実施等安全管理には万全の注意を払っております。このような日頃のマネジメントにより、お客さまの生命・身体に重大な影響を与える事故等を決して起こさない決意をもって、引き続き安全管理体制の整備、安全監査及び安全教育・訓練等の各種プロセスを着実に遂行することで、継続的にリスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減いたします。 |
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⑫協力企業との取引・共創に関するリスク |
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発生可能性:中 |
影響度:小 |
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●リスクの内容 (与信管理・債権管理の不備、賃貸収入の減少) 協力企業の資金繰りの悪化等により代金の回収等に支障を来した場合等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 (特定の協力企業への依存) 特定の協力企業へ取引が集中していることにより、当該協力企業への依存度が高い場合、協力企業における何らかの障害(倒産・災害等)や協力企業の意向に当社グループの事業活動が左右され、追加費用の発生、事業活動、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。 (協力企業における人権、コンプライアンス上の問題等の発生) 協力企業が人権、コンプライアンス等において社会からの要請を果たすことができなかった場合等は、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 (協力企業の選定基準の不備) 当社グループが長期戦略に基づき力強く成長していくにあたっては、どの事業においてもオープンマインドを持ち、協力企業との新たな価値の共創やM&Aによる当社グループにない企業文化の取込み・多様化等に取り組んでまいりたいと考えております。その中で、協力企業(事業提携のパートナー、購買先、外部委託先等)の選定上の基準、取引内容及び取引の正当性を評価する基準が存在せず、又は不適切な基準である場合、協力企業との価値共創や企業文化の取込み・多様化が困難となり、ひいては当社グループの事業機会の逸失や当社グループのイメージダウンを招くおそれがあります。 |
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●リスク対策 「西武グループ人権方針」の開示をおこない協力企業に理解を求めることや、管理・監督、業務委託管理体制の整備により、協力企業が当社又はお客さまへ提供するサービスがコンプライアンスを遵守し、確実に高い基準を満たしたものになるように努め、リスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減しております。また、特定の協力企業に依存することなく、様々な協力企業と多面的な協力を実施していくとともに、協力企業の選定やモニタリングにあたっては、与信管理、債権管理といった基本的な管理のみならず、良好なリレーションから取得される情報等も考慮した深度ある検証を多面的な観点から実施することで、リスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減いたします。 |
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⑬情報システム・情報管理に関するリスク |
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発生可能性:低 |
影響度:中 |
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●リスクの内容 (物理的要因による情報漏洩・改竄) 万一、個人情報の流出等の問題が発生した場合、当社グループへの損害賠償請求や当社グループの信用の低下により当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 (情報システム・ネットワークダウン、データの損傷・消失) 事故・災害、人為的ミス等により情報システム機能に重大な障害が発生した場合、又は他社のシステム障害による影響を受けた場合、当社グループの業務運営に影響を与え、営業収益の減少又は対策費用の発生により、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 |
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●リスク対策 当社グループでは、事業上のあらゆる場面において、情報システムが不可欠なものになってきたことを強く認識しており、障害(攻撃)対応・復旧への訓練の実施、高可用なシステム導入を実現するプロジェクト管理及び権限棚卸、ならびに協力企業の安全性確認等の対策をおこなっております。また、(ア)個人情報を含む情報管理の適正に向けた各社内規程に基づく体制整備と運用の確保、(イ)情報システムへのアクセスを適切に管理することによる情報への不正アクセスの防止、及び、故意による情報の持出しを防ぐための情報記憶媒体の利用制限やアプリケーション・システムのログ監視等の技術的な対応、ならびに、(ウ)eラーニング等による研修等を通じた従業員の意識醸成にも努めており、これらの対策を通じて外的要因によるリスク及び内的要因によるリスク双方の発生可能性を低減しております。今後はこれらの取組みに加え、協力企業と連携したオペレーションの改善や人財マネジメント、さらには情報システムの最適化をはかっていくことにより、技術革新が目覚ましい社会に適応する形でリスクコントロールをおこなってまいります。 |
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⑭ブランド・風評に関するリスク |
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発生可能性:低 |
影響度:中 |
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●リスクの内容 (第三者による西武ブランドの使用) 当社グループのブランドと同一又は類似のブランドを使用する第三者も存在するため、これらのブランドイメージを損なうような第三者の行為・言動等が間接的に当社グループの評判を損なう可能性があります。 (風評) 上記いずれかの当社における主要なリスクが現実となった場合を含め、当社グループのブランドイメージが損なわれた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。 |
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●リスク対策 ブランドマネジメントの実行、適切な情報管理、開示体制の整備、及びCS・ES向上施策の実行等により、リスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減しております。 |
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(1) 業績
当社グループは、メガトレンドや昨今の経営環境の変化に対し、グループの持つ強みを生かし、社会的価値と企業価値を極大化していくため、不動産事業を核とした成長戦略からなる「西武グループ長期戦略2035」(以下、「長期戦略」)を2024年5月9日に策定いたしました。2035年のありたい姿(アウトカム)を「Resilience & Sustainability」とし、「安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する」企業グループを目指してまいります。
当連結会計年度においては、長期戦略における「種まき期」の「西武グループ中期経営計画(2024~2026年度)」の1年目として、株価や資本コストを重視した経営をおこない、今後とも持続的かつ健全な成長を目指していく上で、以下4点の取り組みを進めてまいりました。
<長期戦略及び中期経営計画の取り組み>
①不動産事業を核として持続的な成長を実現
2025年2月28日に株式会社西武リアルティソリューションズ(2025年4月1日より株式会社西武不動産に商号変更)が、収益の極大化を企図するとともに、西武グループの不動産回転型ビジネスの推進による西武グループ全体の企業価値を向上させることを目的とし、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化を実行いたしました。また、当社グループのキャピタルリサイクルモデルの実現に向けた体制整備として、2024年10月1日にアセットマネジメント機能を有する「株式会社西武不動産投資顧問」、PM/BM/CMを融合させた質の高いサービスをワンストップで提供するため、2024年11月15日に不動産運営会社である「株式会社西武不動産プロパティマネジメント」を設立いたしました。あわせて、当社グループのキャピタルリサイクルの流れを本格化する仕組みの整備に向けて、モルガン・スタンレー・キャピタル株式会社(以下、「MSC」)及び MSC又はMSCの関係会社が運営もしくは助言をおこなう不動産ファンド(以下、「PRIME Asia」)の間で、パートナーシップに関する基本合意書を締結いたしました。
さらには、事業ポートフォリオの最適化を実現するため、当連結会計年度より、資本効率性の判断材料として、西武ROIC※を導入いたしました。
※ 営業利益×0.7/(有形無形固定資産*+販売用不動産)
*負担金工事の前受金分(固定資産を圧縮する金額)を控除
②インバウンド需要の取り込み、値上げの継続、国内外250ホテル体制の構築(MC拡大)によるホテル・レジャー事業の収益性向上
国内ホテル業における堅調なインバウンド需要の取り込みや値上げの取り組みなどに加え、今後250ホテル体制を目指すにあたり、H.A.アドバイザーズ株式会社の阿部博秀氏をエグゼクティブアドバイザーとして迎えております。また、2024年6月18日に株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドが、「プリンス スマート イン 名古屋栄」を開業いたしました。
さらには、ホテル・レジャー部門の顧客化や相互送客を強化することを企図し、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドが、当社の国内を中心とした会員プログラム及びオーストラリアを拠点とする子会社 Seibu Prince Hotels Worldwide Asia Pacific Pty Ltdや米国・ハワイ州にあるガバナンス会社 Prince Resorts Hawaii Inc.の会員プログラムを統合し、国内外共通会員プログラム「Seibu Prince Global Rewards(セイブ プリンス グローバル リワーズ)」を創設し、「Seibu Prince Global Rewards」及びSeibu Prince Global Rewards アプリの運用を2024年4月25日より開始いたしました。
③企業価値向上につながる成長投資を優先しつつ、株主還元の安定性および継続的な強化を図る
DOE2.0%を下限とする累進配当を導入しており、安定的な配当とあわせ、収益向上を通じた増配を実現していくことを配当方針としております。そして、当事業年度の年間配当金につきましては、株主へ長期継続的に還元することを意識し、1株当たり40円(中間配当金15円、期末配当金25円)といたしました。
また、自己株式取得につきましては、バランスシートの状況を踏まえ、機動的に実施することとしておりますが、資本効率性の向上(BSコントロール、ROE・EPS向上)を企図し、2024年12月13日より700億円の自己株式取得を実施しております。
④新たな長期戦略・中期経営計画を実行するための基盤となるコーポレート・ガバナンスを強化
コーポレート・ガバナンスの強化に向けて、不動産事業の体制を強化すべく、2024年6月21日付で石原雅行氏を取締役に選任いたしました。あわせて、2024年6月21日付で、新たに小林洋子氏、高橋雅美氏及び池田唯一氏が社外取締役に就任し、社外取締役比率が上昇しております。
そして、筆頭株主である株式会社NWコーポレーション(以下、「NW社」)との関係の在り方を見直し、当連結会計年度にNW社の株式の追加取得をおこない、連結子会社化いたしました。
当連結会計年度における経営成績の概況は、国内ホテル業における堅調なインバウンド需要の取り込みや鉄道業における定期外収入の好調などに加え、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化にともない、営業収益は、9,011億31百万円と前期に比べ4,235億32百万円の増加(前期比88.7%増)となりました。営業利益は、増収により、2,927億35百万円と前期に比べ2,450億23百万円の増加(同513.6%増)となり、償却前営業利益は、3,471億25百万円と前期に比べ2,452億57百万円の増加(同240.8%増)となりました。
経常利益は、2,876億39百万円と前期に比べ2,446億39百万円の増加(同568.9%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、増収に加え、NW社株式の追加取得にともなう連結子会社化により、2,581億82百万円と前期に比べ2,311億91百万円の増加(同856.6%増)となりました。
各セグメントにおける業績は以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度よりセグメントの区分を変更しております。
(単位:百万円)
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営業収益 |
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営業利益 |
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償却前営業利益 |
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セグメントの名称 |
当連結 会計年度 |
前期比 増減 |
前期比 増減率 (%) |
当連結 会計年度 |
前期比 増減 |
前期比 増減率 (%) |
当連結 会計年度 |
前期比 増減 |
前期比 増減率 (%) |
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不動産事業 |
480,608 |
401,528 |
507.8 |
237,617 |
224,900 |
- |
248,118 |
223,882 |
923.8 |
|
ホテル・レジャー事業 |
241,259 |
13,149 |
5.8 |
18,640 |
△840 |
△4.3 |
33,708 |
△1,359 |
△3.9 |
|
都市交通・沿線事業 |
152,667 |
3,841 |
2.6 |
11,315 |
△1,977 |
△14.9 |
33,962 |
△683 |
△2.0 |
|
その他 |
51,297 |
6,423 |
14.3 |
2,064 |
627 |
43.6 |
6,625 |
962 |
17.0 |
|
合計 |
925,832 |
424,942 |
84.8 |
269,637 |
222,709 |
474.6 |
322,415 |
222,801 |
223.7 |
|
調整額 |
△24,701 |
△1,409 |
- |
23,097 |
22,314 |
- |
24,709 |
22,455 |
996.4 |
|
連結数値 |
901,131 |
423,532 |
88.7 |
292,735 |
245,023 |
513.6 |
347,125 |
245,257 |
240.8 |
(注)1 調整額については、主に連結会社間取引消去等であります。
2 償却前営業利益は、営業利益に減価償却費及びのれん償却額を加えて算定しております。
3 当連結会計年度より、2024年4月より連結子会社化した株式会社DAY ONEとともにペット事業をリモデルするため、株式会社西武ペットケアのセグメントを「ホテル・レジャー事業」から「その他」へ変更しており、前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
①不動産事業
不動産事業の内訳は開発・賃貸業、投資運用業、マネジメント業、その他であり、それぞれの営業収益は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減額 |
|
|
営業収益 |
79,079 |
480,608 |
401,528 |
|
|
|
開発・賃貸業 |
43,869 |
44,345 |
476 |
|
|
|
投資運用業 |
2,219 |
403,263 |
401,044 |
|
|
|
マネジメント業 |
8,059 |
8,353 |
293 |
|
|
|
その他 |
24,931 |
24,645 |
△286 |
|
(注) 当連結会計年度より、キャピタルリサイクルの実施にともない、不動産事業の内訳を変更しております。前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
開発・賃貸業では、当社グループが手掛ける所沢エリア開発の集大成となる「エミテラス所沢」を2024年9月24日に開業いたしました。また、将来的な流動化を見据えた新規物件の取得を5件実施いたしました。新規取得した物件につきましては、バリューアッドを実施し、物件価値向上をはかってまいります。
投資運用業では、収益の極大化を企図するとともに、西武グループの不動産回転型ビジネスの推進による西武グループ全体の企業価値を向上することを目的とし、2025年2月28日に東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化を実行いたしました。
マネジメント業では、アセットマネジメント業及びビルマネジメント業をおこなっており、不動産事業の各機能の専門性強化を目的に2025年4月1日に組織再編をおこないました。
不動産事業の営業収益は、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化にともない、4,806億8百万円と前期に比べ4,015億28百万円の増加(同507.8%増)となりました。営業利益は、増収により、2,376億17百万円と前期に比べ2,249億円の増加(前期は、営業利益127億16百万円)となり、償却前営業利益は、2,481億18百万円と前期に比べ2,238億82百万円の増加(同923.8%増)となりました。
不動産事業の定量的な指標は以下のとおりであります。
(建物賃貸物件の営業状況)
|
|
期末貸付面積 (千㎡) |
期末空室率 (%) |
||
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
商業施設 |
256 |
290 |
1.9 |
1.6 |
|
オフィス・住宅 |
203 |
111 |
1.6 |
2.9 |
(注) 土地の賃貸は含んでおりません。当連結会計年度の期末貸付面積(オフィス・住宅)の減少及び期末空室率(オフィス・住宅)の増加については、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化によるものです。
②ホテル・レジャー事業
ホテル・レジャー事業の内訳は国内ホテル業(保有・リース)、国内ホテル業(MC・FC)、海外ホテル業(保有・リース)、海外ホテル業(MC・FC)、スポーツ業(保有・リース)、スポーツ業(MC・FC)、その他であり、それぞれの営業収益は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減額 |
|
|
営業収益 |
228,109 |
241,259 |
13,149 |
|
|
|
国内ホテル業(保有・リース) |
136,446 |
151,698 |
15,252 |
|
|
|
国内ホテル業(MC・FC) |
11,598 |
12,892 |
1,293 |
|
|
|
海外ホテル業(保有・リース) |
36,964 |
33,933 |
△3,030 |
|
|
|
海外ホテル業(MC・FC) |
457 |
529 |
72 |
|
|
|
スポーツ業(保有・リース) |
14,695 |
15,551 |
855 |
|
|
|
スポーツ業(MC・FC) |
2,276 |
2,447 |
170 |
|
|
|
その他 |
25,670 |
24,205 |
△1,464 |
|
(注) 2024年3月期より、ホテル・レジャー事業の内訳を変更しております。また、当連結会計年度より、2024年4月に連結子会社化した株式会社DAY ONEとともにペット事業をリモデルするため、株式会社西武ペットケアのセグメントを「ホテル・レジャー事業」から「その他」へ変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
国内ホテル業では、お客さまに非日常体験を提供できるように努め、ホテルオペレーターである株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドが運営をおこなう、ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町、ザ・ホテル青龍 京都清水の2ホテルで、ミシュランガイドが発表したアジア初のミシュランガイドホテルセレクションにおいて、1ミシュランキー(ワンミシュランキー)に認定されるなど、国際的に高い評価を獲得いたしました。また、サービスの向上に合わせ、レベニューマネジメントを強化し、値上げに取り組んでおります。新規出店も進めており、「プリンス スマート イン 名古屋栄」を2024年6月18日に開業いたしました。そのほか、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化にともなう資金を活用し、建物機能の維持・向上を企図した修繕等(約44億円)をおこないました。
海外ホテル業では、2025年度のオープンに向けて、マウナ ケア ビーチ ホテルの改装工事を開始いたしました。
そのほか、2024年4月25日より国内外共通会員プログラム「Seibu Prince Global Rewards(セイブ プリンス グローバル リワーズ)」を開始いたしました。
ホテル・レジャー事業の営業収益は、国内ホテル業における堅調なインバウンド需要の取り込みや値上げの取り組みなどにより、2,412億59百万円と前期に比べ131億49百万円の増加(同5.8%増)となりました。営業利益は、増収ではあったものの、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化にともなう資金を活用し、建物機能の維持・向上を企図した修繕等をおこなったことなどにより、186億40百万円と前期に比べ8億40百万円の減少(同4.3%減)となり、償却前営業利益は、337億8百万円と前期に比べ13億59百万円の減少(同3.9%減)となりました。
ホテル・レジャー事業の国内ホテル業(保有・リース)、国内ホテル業(MC・FC)、海外ホテル業(保有・リース)、海外ホテル業(MC・FC)の定量的な指標は以下のとおりであります。
(国内ホテル業の運営形態別施設概要)
|
|
施設数 (か所) |
客室数 (室) |
宴会場数 (室) |
宴会場面積 (㎡) |
|
国内ホテル業 |
60 |
20,258 |
319 |
78,094 |
|
保有・リース |
42 |
13,303 |
238 |
51,022 |
|
MC・FC |
18 |
6,955 |
81 |
27,072 |
(国内ホテル業のエリア別施設概要)
|
|
施設数 (か所) |
客室数 (室) |
宴会場数 (室) |
宴会場面積 (㎡) |
|
首都圏・中日本 |
26 |
10,928 |
222 |
47,817 |
|
高輪・品川エリア |
4 |
5,138 |
101 |
20,000 |
|
東日本 |
19 |
5,502 |
38 |
14,252 |
|
軽井沢エリア |
3 |
687 |
11 |
3,670 |
|
西日本 |
15 |
3,828 |
59 |
16,025 |
(注)1 面積1,000㎡以上の宴会場は21室であります。
2 首都圏・中日本の代表例として高輪・品川エリア、東日本の代表例として軽井沢エリアを記載しております。
3 高輪・品川エリアに含まれるホテルはザ・プリンス さくらタワー東京、グランドプリンスホテル高輪、グランドプリンスホテル新高輪、品川プリンスホテルであります。
4 軽井沢エリアに含まれるホテルはザ・プリンス 軽井沢、ザ・プリンス ヴィラ軽井沢、軽井沢プリンスホテルであります。
(海外ホテル業の施設概要)
|
|
施設数 (か所) |
客室数 (室) |
宴会場数 (室) |
宴会場面積 (㎡) |
|
海外ホテル業 |
26 |
3,910 |
87 |
13,791 |
|
保有・リース |
12 |
1,499 |
33 |
4,932 |
|
ハワイエリア |
3 |
1,064 |
22 |
4,090 |
|
The Prince Akatoki |
1 |
82 |
3 |
162 |
|
MC・FC |
14 |
2,411 |
54 |
8,859 |
(注)1 海外ホテル業(保有・リース)の代表例としてハワイエリア、ラグジュアリーブランドであるThe Prince Akatokiを記載しております。
2 ハワイエリアに含まれるホテルはプリンス ワイキキ、マウナ ケア ビーチ ホテル、ウェスティン ハプナ ビーチ リゾートの3ホテルであります。
(国内ホテル業の運営形態別営業指標)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
|
RevPAR(円) |
保有・リース |
14,327 |
16,852 |
|
MC・FC |
11,694 |
13,809 |
|
|
宿泊部門全体 |
13,548 |
15,919 |
|
|
平均販売室料(円) |
保有・リース |
20,454 |
22,622 |
|
MC・FC |
19,225 |
21,184 |
|
|
宿泊部門全体 |
20,126 |
22,221 |
|
客室稼働率(%) |
保有・リース |
70.0 |
74.5 |
|
MC・FC |
60.8 |
65.2 |
|
|
宿泊部門全体 |
67.3 |
71.6 |
(国内ホテル業のエリア別営業指標)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
|
RevPAR(円) |
首都圏・中日本 |
15,094 |
18,235 |
|
高輪・品川エリア |
14,095 |
17,362 |
|
|
東日本 |
11,441 |
13,181 |
|
|
軽井沢エリア |
25,779 |
29,959 |
|
|
西日本 |
10,927 |
12,038 |
|
|
宿泊部門全体 |
13,548 |
15,919 |
|
|
平均販売室料(円) |
首都圏・中日本 |
21,257 |
24,131 |
|
高輪・品川エリア |
19,271 |
21,389 |
|
|
東日本 |
19,844 |
21,708 |
|
|
軽井沢エリア |
38,628 |
44,195 |
|
|
西日本 |
16,432 |
16,789 |
|
|
宿泊部門全体 |
20,126 |
22,221 |
|
客室稼働率(%) |
首都圏・中日本 |
71.0 |
75.6 |
|
高輪・品川エリア |
73.1 |
81.2 |
|
|
東日本 |
57.7 |
60.7 |
|
|
軽井沢エリア |
66.7 |
67.8 |
|
|
西日本 |
66.5 |
71.7 |
|
|
宿泊部門全体 |
67.3 |
71.6 |
(注)1 首都圏・中日本の代表例として高輪・品川エリア、東日本の代表例として軽井沢エリアを記載しております。
2 高輪・品川エリアに含まれるホテルはザ・プリンス さくらタワー東京、グランドプリンスホテル高輪、グランドプリンスホテル新高輪、品川プリンスホテルであります。
3 軽井沢エリアに含まれるホテルはザ・プリンス 軽井沢、ザ・プリンス ヴィラ軽井沢、軽井沢プリンスホテルであります。
(海外ホテル業の営業指標)
・ハワイエリアの営業指標
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
RevPAR (円) |
44,909 |
43,358 |
|
RevPAR (米ドル) |
345.45 |
321.17 |
|
平均販売室料 (円) |
54,591 |
53,939 |
|
平均販売室料 (米ドル) |
419.93 |
399.54 |
|
客室稼働率 (%) |
82.3 |
80.4 |
・The Prince Akatoki Londonの営業指標
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
RevPAR (円) |
42,546 |
44,851 |
|
RevPAR (ポンド) |
254.10 |
246.66 |
|
平均販売室料 (円) |
58,000 |
61,083 |
|
平均販売室料 (ポンド) |
346.40 |
335.92 |
|
客室稼働率 (%) |
73.4 |
73.4 |
(注)1 海外ホテル業の代表例としてハワイエリア、ラグジュアリーブランドであるThe Prince Akatokiのうち、直営のThe Prince Akatoki Londonを記載しております。
2 ハワイエリアに含まれるホテルはプリンス ワイキキ、マウナ ケア ビーチ ホテル、ウェスティン ハプナ ビーチ リゾートの3ホテルであります。
(国内ホテル業における宿泊客の内訳)
(単位:名、%)
|
|
2024年3月期 |
|||||
|
邦人客 |
外国人客 |
計 |
||||
|
|
比率 |
|
比率 |
|
比率 |
|
|
宿泊客 |
3,460,328 |
71.8 |
1,361,566 |
28.2 |
4,821,894 |
100.0 |
|
保有・リース |
2,361,307 |
|
1,007,702 |
|
3,369,009 |
|
|
MC・FC |
1,099,021 |
|
353,864 |
|
1,452,885 |
|
|
|
2025年3月期 |
|||||
|
邦人客 |
外国人客 |
計 |
||||
|
|
比率 |
|
比率 |
|
比率 |
|
|
宿泊客 |
3,320,629 |
66.6 |
1,665,633 |
33.4 |
4,986,262 |
100.0 |
|
保有・リース |
2,238,258 |
|
1,179,196 |
|
3,417,454 |
|
|
MC・FC |
1,082,371 |
|
486,437 |
|
1,568,808 |
|
③都市交通・沿線事業
都市交通・沿線事業の内訳は鉄道業、バス業、沿線生活サービス業、スポーツ業、その他であり、それぞれの営業収益は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減額 |
|
|
営業収益 |
148,826 |
152,667 |
3,841 |
|
|
|
鉄道業 |
100,739 |
104,238 |
3,499 |
|
|
|
バス業 |
23,894 |
24,877 |
982 |
|
|
|
沿線生活サービス業 |
18,190 |
17,228 |
△962 |
|
|
|
スポーツ業 |
2,291 |
2,461 |
170 |
|
|
|
その他 |
3,710 |
3,861 |
151 |
|
(注) 2024年3月期より、都市交通・沿線事業の内訳を変更しております。
鉄道業では、永続的に鉄道事業を運営し、お客さまへ良質かつ快適なサービスを提供するため、2026年3月(予定)の改定実施に向けて、2025年3月に鉄道旅客運賃の変更認可申請をおこないました。また、ホームドア整備、車内防犯カメラ設置をはじめとした安全・安心なサービスのさらなる追求のための設備投資を着実に実行し、2024年12月よりクレジットカードやスマートフォン等で利用可能なタッチ決済による乗車サービスの実証実験を開始する等、DX・デジタル化施策にも積極的に取り組みました。そのほか、沿線地域を活性化させるエリアマネジメントを実現するため、2024年8月に飯能市、株式会社ムーミン物語、西武鉄道株式会社の3者で「地域活性化に向けた連携に関する基本協定」を締結する等、沿線自治体・地域との連携を深める施策に取り組みました。
バス業では、乗合バスに関して、いわゆる2024年問題をはじめとした乗務員の人員不足の影響等があるものの、堅調に回復する移動需要の着実な取り込みとともに、効率的な事業運営に努めました。また都区内エリアにおいては、2025年6月の実施に向けて、2024年12月に運賃改定を申請いたしました。加えて、貸切バスについても、運賃単価向上に取り組みました。
都市交通・沿線事業の営業収益は、定期外利用やレジャー施設の利用が進み、1,526億67百万円と前期に比べ38億41百万円の増加(同2.6%増)となりました。営業利益は、設備投資の増加にともなう減価償却費の増加や電気動力費、人件費の増加などにより、113億15百万円と前期に比べ19億77百万円の減少(同14.9%減)となり、償却前営業利益は、339億62百万円と前期に比べ6億83百万円の減少(同2.0%減)となりました。
都市交通・沿線事業の主要な会社である西武鉄道株式会社の鉄道業の運輸成績は以下のとおりであります。
(西武鉄道株式会社の鉄道業の運輸成績)
|
種別 |
単位 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
|
営業日数 |
日 |
366 |
365 |
|
|
営業キロ |
キロ |
176.6 |
176.6 |
|
|
客車走行キロ |
千キロ |
169,850 |
170,407 |
|
|
輸送人員 |
定期 |
千人 |
348,589 |
355,907 |
|
定期外 |
千人 |
239,127 |
249,221 |
|
|
計 |
千人 |
587,716 |
605,128 |
|
|
旅客運輸収入 |
定期 |
百万円 |
39,574 |
40,434 |
|
定期外 |
百万円 |
55,604 |
58,112 |
|
|
計 |
百万円 |
95,178 |
98,547 |
|
|
運輸雑収 |
百万円 |
3,528 |
3,256 |
|
|
収入合計 |
百万円 |
98,706 |
101,803 |
|
|
一日平均収入 |
百万円 |
260 |
269 |
|
|
乗車効率 |
% |
35.4 |
36.2 |
|
(注)1 乗車効率は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)×100 により、算出しております。
2 千キロ未満、千人未満及び百万円未満を切り捨てて表示しております。
3 運輸雑収は鉄道業以外の収入を含んでおります。
④その他
スポーツ事業では、プロ野球球団である埼玉西武ライオンズの試合開催のほか、ベルーナドームを最大限活用したサービスや演出、イベント開催などにより、楽しんでいただけるスポーツ・エンターテインメント体験の提供に努めてまいりました。伊豆箱根事業では、バス事業を中心に観光需要の取り込みに努めたほか、近江事業においては、2024年4月より鉄道事業の公有民営方式による上下分離に移行し、運営を開始しております。新規事業では、ツアー造成による体験価値の創出ノウハウのシナジーを企図し、2024年12月25日に奥ジャパン株式会社の全株式を取得し子会社化するなど、当社グループの新規事業分野創出に向けた取り組みをおこなっております。
営業収益は、2024年度よりデジタル広告の強化を企図し、西武グループのコンテンツビジネスを推進する株式会社ブルーミューズ(2025年4月1日より株式会社西武メディア・コミュニケーションズに商号変更)に西武鉄道株式会社の広告事業を移管したことや、埼玉西武ライオンズにおける観客動員数の増加などにより、512億97百万円と前期に比べ64億23百万円の増加(同14.3%増)となりました。営業利益は、上記広告事業移管にともなう費用の増加はあったものの、株式会社西武ライオンズの営業収益の増加などにより、20億64百万円と前期に比べ6億27百万円の増加(同43.6%増)となり、償却前営業利益は、66億25百万円と前期に比べ9億62百万円の増加(同17.0%増)となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
当社グループは役務提供を中心とした事業展開をおこなっており、生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の実績については、「(1)業績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
(3) 財政状態、経営成績の分析
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載されているとおりであります。
② 財政状態の分析
1 資産
流動資産は、3,598億16百万円と前連結会計年度末に比べ2,585億53百万円増加いたしました。その主たる要因は、現金及び預金の増加(2,023億27百万円)であります。
固定資産は、1兆4,743億4百万円と前連結会計年度末に比べ594億52百万円減少いたしました。その主たる要因は、有形固定資産の減少(832億2百万円)であります。
以上の結果、総資産は1兆8,341億20百万円と前連結会計年度末に比べ1,991億1百万円増加いたしました。
2 負債
流動負債は、4,300億79百万円と前連結会計年度末に比べ449億73百万円増加いたしました。その主たる要因は、未払法人税等の増加(818億92百万円)であります。
固定負債は、8,369億12百万円と前連結会計年度末に比べ191億33百万円増加いたしました。その主たる要因は、繰延税金負債の増加(586億42百万円)であります。
以上の結果、負債合計は1兆2,669億92百万円と前連結会計年度末に比べ641億6百万円増加いたしました。
3 純資産
純資産は、5,671億28百万円と前連結会計年度末に比べ1,349億94百万円増加いたしました。その主たる要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上(2,581億82百万円)及び自己株式の増加(1,324億79百万円)であります。
なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ4.5ポイント上昇し30.6%となっております。
③ 経営成績の分析
1 営業収益及び営業利益
営業収益は、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化の実施による大幅な増収に加え、円安にともなうインバウンド観光客の増加や値上げの取り組み、鉄道業における定期・定期外旅客の増加などにより、9,011億31百万円(前期比88.7%増)となり、営業利益は増収による増益により、2,927億35百万円(同513.6%増)となりました。
なお、各セグメントにおける業績につきましては、「(1) 業績」をご覧ください。
2 営業外損益及び経常利益
営業外収益は、前期に計上した為替差益(7億50百万円)が今期は為替差損(7億円)に転じたことなどにより、42億78百万円(同4.8%減)となり、営業外費用は、93億73百万円(同1.8%増)となりました。
以上の結果、経常利益は2,876億39百万円(同568.9%増)となりました。
3 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は、負ののれん発生益(540億96百万円)の計上などにより、759億39百万円(同224.6%増)となりました。
特別損失は、減損損失の減少(100億57百万円)などにより、137億65百万円(同39.5%減)となりました。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は3,498億13百万円(同701.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,581億82百万円(同856.6%増)となりました。
(4) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,451億23百万円増加し、当連結会計年度末には2,769億53百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益3,498億13百万円に、減価償却費や棚卸資産の増減額、法人税等の支払額などを調整した結果、4,743億78百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ3,824億2百万円の資金収入の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、936億92百万円の資金支出となり、前連結会計年度に比べ497億58百万円の資金支出の増加となりました。その主たる要因は、有形及び無形固定資産の取得による支出の増加であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,363億94百万円の資金支出となり、前連結会計年度に比べ939億56百万円の資金支出の増加となりました。その主たる要因は、借入金の返済の増加及び自己株式の取得による支出の増加であります。
(5) 資本の財源及び資金の流動性について
(キャピタルリサイクルの実施)
当社グループは不動産事業を核として持続的な成長を実現するため、資本効率性を追求し、保有とキャピタルリサイクルの両輪で成長させるビジネスモデルで成長してまいります。当連結会計年度は、「キャピタルリサイクルの最大の原動力」として東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化を実施いたしました。今後についても、聖域なき流動化の検討、継続的なキャピタルリサイクルの実施により得られた資金を再投資に振り向け、不動産価値を最大化してまいります。
(資金調達〈キャッシュイン〉)
当社グループでは、鉄道業及びホテル業を中心とした日々の事業活動によって営業キャッシュ・フローを安定的に確保し、必要な資金に充当しております。不動産事業での新規取得物件に対するバリューアッドの展開、既存物件の賃料引き上げや最有効活用の検討、ホテル・レジャー事業でのMC(マネジメントコントラクト)を中心とした国内外250ホテル体制の実現に向けた、ホテル新規出店数の拡大やブランド力の向上による値上げの実施等により、営業キャッシュ・フローの最大化をはかっております。
さらに、上記に加えて、継続的なキャピタルリサイクルを実施することで、持続的な企業価値創出の基盤となる資金を生み出しております。
不足する資金については、金融機関からの借入や社債の発行など、市場環境や金利動向を総合的に勘案し、最適な資金調達手段を選択しております。加えて、固定資産の比率が高い事業特性を踏まえ、長期負債を中心とした資金調達をおこなうとともに、年度ごとの返済額平準化を進めております。併せて、調達手段の多様化や外部格付の維持・向上にも取り組んでおります。
また、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化で得た資金や、今後当社グループが推進する保有とキャピタルリサイクルの両輪で成長させるビジネスモデルを通じて得られる資金を活用し、将来の大規模開発(高輪・品川・芝公園エリア等)に向けたデットキャパシティの創出を目的に、借入の適正な水準の維持に努めてまいります。
(資金使途〈キャッシュアウト〉)
当社グループでは、「成長投資を優先しつつ、株主還元も拡充させていく」方針のもと、資金使途を決定しております。
当連結会計年度は総額1,032億51百万円の設備投資を実施いたしました。不動産事業においては、当連結会計年度にエミテラス所沢(所沢駅西口開発計画)が竣工いたしました。加えて、沿線価値向上を目指した設備投資を継続的におこなうとともに、新規物件の取得を実施してまいりました。都市交通・沿線事業においては、より一層の安全・安定輸送の実現、環境負荷の削減を目指すとともに、おでかけしたくなる駅・まちづくり、及び次世代に向けた技術革新に充当しております。加えて、都市交通・沿線事業に限らず、ホテル・レジャー事業などの多くの事業において職場環境の改善や、従業員の満足度向上を企図して設備投資を実施してまいりました。
当事業年度の配当金につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおり、1株当たりの普通配当を過去最高額である40円としております。また、2024年12月13日より700億円の自己株式取得を実施しております。2026年3月期の配当予想についても、1株当たり配当金40円としており、長期戦略で定めた株主還元方針に則り、DOE2.0%を下限とする累進配当を実現し、安定的な配当とあわせ、収益向上を通じた増配を目指してまいります。自己株式の取得についても、引き続きバランスシートの状況を踏まえ、機動的に対応してまいります。
また、今後の成長投資については、営業キャッシュ・フローやキャピタルリサイクルで得た資金を活用し、投資規律を遵守したうえで、不動産事業での都心再開発や西武鉄道沿線の再開発、リゾート開発、新規物件の取得及びバリューアッド、ホテル・レジャー事業でのホテル改装、海外ホテルのM&A、ブランド価値及び収益力向上を目的とした主要ホテル(品川プリンスホテル等)のバリューアップ投資、都市交通・沿線事業での沿線価値向上施策、デジタル化などに積極的に投資してまいります。
(資金の流動性)
鉄道業・ホテル業を中心とした日々の収入金により必要な流動性資金を確保するとともに、キャッシュマネジメントシステム(CMS)などによりグループ内余剰資金の有効活用に努めております。
(6) 経営者の問題意識と今後の方針について
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有価証券報告書提出日現在、コロナ禍で生じた価値変容・行動変容の定着に加え、地政学リスク、技術革新や日本国内の少子高齢化の加速、SDGs(持続可能な開発目標)・カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識の高まり、低PBRの是正など、社会経済環境や事業環境は急速に変化し、将来予想が非常に困難な時代、いわゆる「VUCAの時代」に突入しております。 そのような状況下において、2024年5月9日に「西武グループ長期戦略2035(以下、長期戦略)・中期経営計画(2024~2026年度)」を策定し、概ね10年後の2035年度を見据え、西武グループのありたい姿(アウトカム)として「Resilience & Sustainability -安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する-」を設定し、着実に取組を進めてまいりました。あらゆる状況下においても対応できる力 |
「Resilience(レジリエンス)」と、それをもとに持続的に成長できる力「Sustainability(サステナビリティ)」を兼ね備えた企業グループを目指してまいります。
長期戦略では下図のとおり、アウトカム実現に向けての価値創造ストーリーを定めており、6つのマテリアリティに基づいた成長戦略を進めております。
昨今では、米国の関税政策をはじめとした地政学リスクの高まりがあり、注視すべき課題であると認識しております。当社グループへ与える影響について、有価証券報告書提出日現在発現していないものの、このような事態に対しては、当社グループへの短期的・直接的な影響のみならず、より長期的かつ日本経済全体へのリスクを想定し、機動的に対応していく所存です。
長期戦略では、「恒常的にROE8%を達成、2035年度に10%以上を目指していく」という財務KPIを掲げており、その達成に向けて、収益性と効率性を向上させていくことが急務であると認識しており、長期戦略において、不動産事業におけるキャピタルリサイクルの推進や、ホテル・レジャー事業における国内外250ホテル体制の構築・ブランド力向上、さらには成長の源泉となる人財への投資に重点的にキャッシュアロケーションをおこなうことで、資本効率性を高めていく所存です。
当連結会計年度は、長期戦略の中で「種まき期」と位置付けた中期経営計画期間の初年度であり、「不動産を核とした持続的な成長」に向けて、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化をはじめとしたキャピタルリサイクルの実行や、西武ファンドのアセットマネジメント機能を担う株式会社西武不動産投資顧問の設立を含む不動産4社体制のスタートなど、様々な取組を進めることができました。一方、一般的なPBRに対して、賃貸等不動産や今後再開発を予定しているエリア(高輪、品川、芝公園、軽井沢エリア)の含み益を考慮したNAVに対するPBRは大きく伸びしろがあると認識しております。引き続き、モルガン・スタンレー・キャピタル株式会社及びPRIME Asiaとの共同SPC運営や、株式会社西武不動産投資顧問による投資運用業等のライセンス取得、西武ファンドの設立及び運用開始など体制を整備したうえで、不動産流動化を進めるとともに、高輪地区をはじめとする都心の再開発、軽井沢、箱根、富良野、日光などのリゾートエリアの開発や品川プリンスホテルの改装バリューアップ投資、新規物件の取得に充当するなど、キャピタルリサイクルを実現し、さらなる資本効率性の向上と、着実なNAVの成長、そして株主価値の向上につなげてまいります。
加えて、ホテル・レジャー事業においても、国内外250ホテル体制を引き続き目指してまいります。MCをはじめとしたホテルを新規出店していくことに加え、ブランド力をさらに高め、日本をオリジンとしたグローバルオペレーターを実現していく所存です。
また、都市交通・沿線事業においても、安全・安心を事業の根幹とし、「住みたい沿線」「訪れたい沿線」を実現すべく沿線価値向上に向けた施策をおこなってまいります。
株主還元につきましては、企業価値向上につながる成長投資を優先しつつも、DОE2.0%を下限とする累進配当を基本とし、安定的な配当とあわせ収益向上を通じた増配を目指してまいりますが、今期は東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化の資金の活用により、2024年12月13日より700億円の自己株式取得を実施するとともに、年間配当金は、過去最高額の1株当たり40円の実現を予定しております。今後も、資本効率性の向上により、株主還元の強化をはかってまいります。
今後の時代を力強く生き抜き、社会に貢献しながら持続的な成長を遂げていくため、総力を挙げて各種施策に取り組んでいます。その中でも、日本全国に優良な不動産を保有するとともに、日本有数のホテル・レジャーのネットワーク、強固な地盤を有する都市交通・沿線事業という事業ポートフォリオは、他にないユニークなものであり、その強みを活かしていくことにより、力強い成長が実現できると考えております。西武ならではの再開発やバリューアップ投資を積極的にはかり、当社グループの企業価値の最大化、そして地域社会ひいては日本全体の社会課題解決に貢献していくことができると認識しております。長期戦略の実現により、社会的価値・株主価値の極大化に努めてまいります。
(1)東京ガーデンテラス紀尾井町流動化に関する基本協定書等の締結
当社は、2024年12月12日開催の取締役会において、Blackstone Inc.(NYSE: BX)又はその関連会社が運用又は投資アドバイザーを務める特定のファンド(以下、総称して「ブラックストーン」といいます。)が出資するエス・エー・ケー・ワン・ホールディング合同会社及び SAK SG Holdings Pte. Ltd.(以下、「本件当事者」といいます。)との間で、当社の連結子会社である株式会社西武リアルティソリューションズが保有する東京ガーデンテラス紀尾井町(以下、「本資産」といいます。)について、収益の極大化を企図するとともに、西武グループの不動産回転型ビジネスの推進による西武グループ全体の企業価値向上に寄与し、かつ、当社グループとブラックストーンとの長期的なパートナーシップを構築することを目的として、法的拘束力を有する基本協定書(以下、「本基本協定書」といいます。)を締結することを決議いたしました。そして、同日付で当社と本件当事者は、本基本協定書を締結いたしました。
また、同日開催の取締役会において、株式会社西武リアルティソリューションズが本資産を、ブラックストーンが出資するさくら・ホールディング特定目的会社へ譲渡することを規定した信託受益権等譲渡契約書を締結すること、併せて、本資産の一部区画において運営されるホテルに関する契約上の地位等を、会社分割の方法により、ブラックストーンが出資するホテル経営会社に承継させることを決議し、同日付で上記各契約を締結しております。
なお、株式会社西武リアルティソリューションズは、2025年4月1日に株式会社西武不動産に商号変更しております。
①対象資産の概要
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名称 |
東京ガーデンテラス紀尾井町 |
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所在地 |
東京都千代田区紀尾井町1番2ほか |
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資産の概要 |
オフィス、ホテル、住宅、商業 ほか |
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帳簿価額 |
約1,396億円 |
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譲渡価額 |
約4,000億円 |
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譲渡益 |
約2,604億円 |
②基本協定書の締結相手の概要
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名称 |
エス・エー・ケー・ワン・ホールディング合同会社 |
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本店所在地 |
東京都千代田区丸の内一丁目4番1号 |
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代表者の役職・氏名 |
職務執行者 本郷 雅和 |
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事業内容 |
株式、社債等の有価証券への投資、保有及び運用 |
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資本金 |
50万円 |
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設立年月日 |
2024年11月19日 |
※ 当社と当該会社との間には、資本関係、人的関係、取引関係及び関連当事者として特筆すべき事項はありません。
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名称 |
SAK SG Holdings Pte. Ltd. |
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本店所在地 |
3 Church Street, #30-01 Samsung Hub, 049483, Singapore |
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代表者の役職・氏名 |
取締役 Alan Kekoa Miyasaki |
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事業内容 |
株式、社債等の有価証券への投資、保有及び運用 |
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資本金 |
非開示 |
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設立年月日 |
2024年11月11日 |
※ 当社と当該会社との間には、資本関係、人的関係、取引関係及び関連当事者として特筆すべき事項はありません。
③信託受益権等譲渡契約書の締結相手の概要
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名称 |
さくら・ホールディング特定目的会社 |
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本店所在地 |
東京都千代田区丸の内一丁目4番1号 |
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代表者の役職・氏名 |
取締役 北川 久芳 |
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事業内容 |
特定資産の流動化に係る業務及びその付帯業務 |
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資本金 |
10万円 |
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設立年月日 |
2024年11月14日 |
※ 当社と当該会社との間には、資本関係、人的関係、取引関係及び関連当事者として特筆すべき事項はありません。
④譲渡契約締結日及び譲渡の実行日
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基本協定書、信託受益権等譲渡契約書、 会社分割契約書の締結日 |
2024年12月12日 |
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譲渡の実行日 |
2025年2月28日(譲渡完了済) |
(2)不動産事業再編にともなう連結子会社間の会社分割
当社は、2024年12月12日開催の取締役会において、2025年4月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である西武鉄道株式会社の不動産事業の一部を、当社の連結子会社である株式会社西武リアルティソリューションズに承継することを決議し、同日付で吸収分割契約を締結いたしました。
また、当社は、同日開催の取締役会において、2025年4月1日を効力発生日として、株式会社西武リアルティソリューションズの不動産事業の一部を吸収分割により、当社の連結子会社である株式会社西武不動産プロパティマネジメントに承継することを決議し、同日付で吸収分割契約を締結いたしました。
なお、株式会社西武リアルティソリューションズは、2025年4月1日に株式会社西武不動産に商号変更しております。
詳細は下記のとおりです。
①本会社分割の背景・目的
2024年5月9日に公表した「西武グループ長期戦略 2035」では、当社グループを取り巻く外部環境の急速な変化や変わりつつある社会を踏まえ、当社グループの強みを活かした『不動産事業を核とした成長戦略』を掲げております。核となる不動産事業においては、「保有型モデル(保有前提で賃料収益を獲得するモデル)」と「キャピタルリサイクルモデル(不動産流動化とその資金を活用した再投資を持続的に実施し成長するモデル)」の両輪で利益成長を目指す方向に転換いたしました。キャピタルリサイクルモデルの実現に向けた体制整備として、不動産事業における各機能の専門性強化をはかり、総合不動産会社への飛躍を企図した組織再編をおこないます。
②会社分割の概要
(ア)日程
吸収分割契約の締結日 2024年12月12日
吸収分割の効力発生日 2025年4月1日
(イ)会社分割の方式
西武鉄道株式会社を吸収分割会社とし、株式会社西武リアルティソリューションズを吸収分割承継会社とする会社分割(吸収分割)
また、株式会社西武リアルティソリューションズを吸収分割会社とし、株式会社西武不動産プロパティマネジメントを吸収分割承継会社とする会社分割(吸収分割)
(ウ)吸収分割承継会社となる会社の概要
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西武鉄道株式会社、株式会社西武リアルティソリューションズ間の会社分割 |
株式会社西武リアルティソリューションズ、株式会社西武不動産プロパティマネジメント間の会社分割 |
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商号 |
株式会社西武リアルティソリューションズ |
株式会社西武不動産プロパティマネジメント |
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事業内容 |
不動産の所有、売買、管理、賃貸借、仲介業務等、ホテルの経営 |
不動産の運営、管理、売買、仲介業務等 |
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本店所在地 |
東京都豊島区南池袋一丁目 16 番地 15 号 |
東京都豊島区南池袋一丁目 16 番地 15 号 |
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代表者の役職・氏名 |
代表取締役社長 齊藤 朝秀 |
代表取締役社長 齊藤 朝秀 |
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資本金 |
8,600百万円 |
100百万円 |
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発行済株式数 |
414,119,820株 |
4,000株 |
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決算期 |
3月31日 |
3月31日 |
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大株主及び持株比率 |
当社100% |
株式会社西武リアルティソリューションズ100% |
※ 発行済株式数については、2025年3月31日時点における株式数を記載しております。
(3)東京都への固定資産の譲渡
当社の連結子会社である西武鉄道株式会社は、2024年10月29日開催の取締役会において、固定資産を東京都に譲渡する契約を締結することを決定し、2024年11月15日に当該固定資産を譲渡いたしました。
当該契約の主な内容は、以下のとおりです。
①譲渡の理由
東京都市計画公園第5・5・10号練馬城址公園事業に協力するため。
第18期有価証券報告書「5 経営上の重要な契約等 (2) 東京都への固定資産の譲渡」及び第19期有価証券報告書「5 経営上の重要な契約等」に記載した固定資産の譲渡に続き、旧としまえん用地の一部区画を譲渡するもの。
②譲渡施策の内容等
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資産の名称及び所在地 |
資産の内容 |
譲渡契約締結日 |
譲渡資産引渡日 |
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旧としまえんの一部 東京都練馬区向山三丁目 1551番1外9筆 |
土地 20,549.43㎡ |
2024年11月15日 |
2024年11月15日 |
③譲渡先の概要
譲渡先は東京都です。
なお、当該譲渡先と当社の間には特筆すべき資本関係、人的関係はなく、また当社の関連当事者には該当いたしません。
該当事項はありません。