第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社を中心とする神奈川中央交通グループは、以下のとおり経営理念を掲げ、事業活動を通じて社会に貢献するとともに、関わり合うすべてのステークホルダーの発展と企業価値の向上を目指すことを経営の基本方針としております。

 

神奈中グループ経営理念

お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。

経営方針

・お客さまの視点に立ち、期待に応える価値を提供します。

・地域の明日を考え、みなさまとともに歩みます。

・従業員が働くよろこびを実感できる、活気ある企業を目指します。

 

 

 

(2) 会社の経営環境および対処すべき課題

当社グループを取り巻く事業環境は、本格的な少子高齢社会を迎え、人口減少による国内マーケットの縮小が進んでおります。また、コロナ禍による新しい生活様式の定着は、当社グループのお客さまの行動や価値観を大きく変化させました。今後はデジタル技術の急速な進展により、新たなサービスが拡充していくとともに、カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)など、企業のサステナビリティへの取り組みが加速していくことが想定されます。
 このような状況のもと、当社グループは、私たちの「ありたい姿」(「多様化するお客さまニーズに応え続けるために、時代の変化に柔軟に対応し、新たなサービスの創造に挑戦し続ける」)の実現に向けて、2030年度を最終年度とする長期ビジョン「Vision 2030 NEXT 神奈中~地域価値創造型企業にむけて~」を策定しました。
 長期ビジョンでは、以下の3つの方針を掲げております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

長期ビジョン実現に向けた方針

1.地域価値の創造

当社グループは、時代のニーズに即したサービスの提供や事業を通じて社会・環境問題の解決に貢献し、地域に新しい価値を創造してまいります。

2.事業ポートフォリオの再構築

不動産関連領域へ重点的に投資を行うなど、不動産事業を拡大し、事業ポートフォリオを再構築してまいります。

3.サステナビリティ経営の推進

 サステナビリティへの取り組みを推進していくため、「サステナビリティ基本方針」を基に特定した5つのマテリアリティの課題解決に取り組んでまいります。

 

 

 

当社グループでは、2021年に当社創立100周年を迎え、次の100年に向けた更なる成長とコロナ禍からの回復を基本方針に掲げ、「神奈中グループ中期経営計画(2021年度~2023年度)」を策定し、同中期経営計画期間を「体質変革期」として位置づけ、重点課題に取り組んでまいりました。旅客需要はコロナ禍前までは戻らないものの、費用構造改革および収益基盤の強化等の構造改革に注力した結果、目標として設定した2023年度の経営指標(売上高営業利益率6.0%以上、有利子負債/EBITDA倍率5.0倍以下)を達成いたしました。
 今後は、2024年4月に策定しました「神奈中グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)」を、長期ビジョンの実現に向けた「飛躍期」の第1ステージと位置づけ、以下の3つの重点課題と3つの重点戦略に取り組んでまいります。

 

 

 

重点課題

1. 持続可能なモビリティサービスの実現

 自動運転バスや新たな交通モード(オンデマンド交通等)への転換を実現していくとともに、当社グループで連携し輸送の効率化・最適化を図り、グループ全体で地域交通ネットワークの確保・維持に努め「持続可能なモビリティサービス」を実現してまいります。

2. 不動産関連領域の強化

 当社グループが保有する資産の管理を一元化し、高度利用の推進および管理の効率化を図ってまいります。あわせて、再開発事業やまちづくりプロジェクト等への参画により、分譲事業を強化してまいります。

3.「ゆたかなくらし」への貢献

 少子高齢化や環境問題等の様々な地域社会の課題に向き合い、バス沿線地域を中心に課題解決に取り組み、時代の変化に対応しながら新しい価値を創造していくことで、持続可能な社会と当社グループの持続的な成長につなげてまいります。

 

 

 

重点戦略

1.環境戦略

 当社グループカーボンニュートラルロードマップの中間目標(2030年度に2013年度比35%削減)達成に向けて、「EVバスの導入」や「太陽光発電設備設置等による再生可能エネルギーの創出」などに取り組んでまいります。

2.人財戦略

 働きやすい職場環境で、社員全員のパフォーマンスを向上させ、新たなサービスを創造する人材を生み出し、持続的な企業価値の向上につなげます。人材育成や社内環境の整備、健康経営の推進を軸に、サステナビリティ基本方針のもとで特定したマテリアリティの目標達成に向けて取り組んでまいります。

3.デジタル戦略

  デジタルツールを活用する人材を育成し、ビジネスモデルの変革に向けて、顧客接点のデジタル化や業務の省人化、生産性向上に取り組みます。あわせて、情報セキュリティ強化を念頭においたITインフラの整備を推進してまいります。

 

 

(3) 目標とする経営指標

財務健全性を確保しつつ、着実な利益成長と資本コストを意識した経営に取り組むため、以下の経営指標を目標値として定め、長期ビジョンの実現を目指してまいります。

 

経営指標

2026年度(計画)

(参考)

2030年度(目標)

利益の成長

営業利益

60億円

 76億円+α
(過去最高益)

財務健全性の確保

 有利子負債/
EBITDA倍率

6倍台

5倍台

 資本コストを
 意識した経営

 ROE
(自己資本利益率)

6%水準

7%水準

 

 

なお、当社グループでは、経営理念の実現と持続的な企業価値の向上を図るため、将来への事業投資や財務の健全性の維持に努めるとともに、業績の動向を踏まえた安定的な配当を実施し株主還元の充実を図ることを資本政策の基本的な方針としております。
 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループでは「持続可能な社会の実現」と「持続的な企業価値の向上」に向け、サステナビリティへの取り組みを推進していくために「サステナビリティ基本方針」を策定し、特定した5つのマテリアリティの課題解決に取り組んでおります。

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関する事項

〔ガバナンス〕

 当社は、全社的な事業リスクやサステナビリティ、環境リスク等について検討し、取り組みを推進するため、取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。さらに、下部機関の「リスク・コンプライアンス分科会」、「環境分科会」および「サステナビリティ分科会」において具体的取組み内容や目標を設定しております。各分科会は定期的に開催され、検討された重要な事項については、リスクマネジメント委員会および執行役員会へ報告を行うとともに、取締役会が監督を行っております。

 

   〔リスク管理〕

 サステナビリティに関連する当社グループのリスク及び機会については、サステナビリティ分科会が特定し、リスクマネジメント委員会で検討・モニタリングを行っております。リスク及び機会はSDGs等の国際的なガイドラインやバス沿線自治体の社会課題を参照し、事業環境を踏まえ当社グループが中長期的に取り組むべき課題として特定しております。また、特定したリスク及び機会は「ステークホルダーにとっての重要度」と「神奈中グループにとっての重要度」の2軸でマッピング・重要性評価を行い、マテリアリティとして整理しております。

 

   〔戦略〕

当社グループは、サステナビリティへの取り組みを推進していくための指針として、以下の通り「サステナビリティ基本方針」を策定しております。

 

  <神奈中グループ サステナビリティ基本方針>

 私たちは、グループ経営理念のもと、安全・安心なサービス・商品を提供することを通じて、環境負荷の低減や社会課題の解決など地域に新しい価値を創造し、「持続可能な社会の実現」と「持続的な企業価値の向上」を目指します。

 

 

また、マテリアリティ(重要課題)として「安全・安心の追求」「脱炭素社会への貢献」「地域社会との共創」「多様な人材が活躍できる職場づくり」「ガバナンスの充実」を特定し、次のとおり、各目標の達成に向けた取り組みを推進しております。

 

 

  <マテリアリティ(重要課題)>

マテリアリティ

主なリスク

主な機会

主な取り組み

安全・安心の追求

・人身事故による損害、信用低下、行政処分のリスク

・安全性の高い商品、サービスの提供による収益機会の獲得

・運輸安全マネジメントの推進

脱炭素社会への貢献

・環境規制強化によるコスト増

・資源価格高騰による
コスト増

・EV導入による運用コスト削減

・脱炭素ライフスタイル、企業の脱炭素に伴う市場拡大

・CO2排出量削減の取り組み

・環境配慮型建物の拡大

地域社会との共創

・利用人員の減少

・新たな競合の出現

・地域社会との共生

・地域活性化による人口流入

・まちづくり・地域活性化への貢献

・少子高齢社会への取り組み

・地域の課題解決への取り組み

多様な人材が活躍

できる職場づくり

・中核人材の不足

・乗務員等の不足

・健康に起因する損害

・労働規制の強化

・社員エンゲージメントの向上

・組織の活性化

・人材の育成

・労働環境の整備

・健康経営の推進

ガバナンスの充実

・企業価値の毀損

・法令違反

・システム障害

・個人情報、機密情報の漏洩

・企業価値の向上

・ステークホルダーとの関係強化

・コーポレート・ガバナンスの充実

・リスクマネジメントの強化

・コンプライアンスの徹底

 

※指標及び目標は(3)多様な人材が活躍できる職場づくりに記載しております。

 

 〔指標及び目標〕

マテリアリティ

KPI

実績値

(2023年度)

目標値

安全・安心の追求

死者、重傷者数

死者0名、重傷者4名

0名

有責人身事故件数

63件

34件以下(2025年度)

飲酒運転件数

0件

0件

脱炭素社会への貢献

CO2排出量

(2013年度比)

△16.5%

△35%(2030年度)

EVバス導入率

0.16%

15%以上(2030年度)

本社・バス営業所の照明LED化率

89.5%

100%(2025年度)

地域社会との共創

路線バス輸送人員

198百万人

モニタリング実施

小児IC利用人員

2,435千人

モニタリング実施

路線バス営業エリア人口

8,006千人

モニタリング実施

ガバナンスの充実

独立社外取締役比率

50.0%

過半数

女性取締役人数

1名

1名以上

重大な法令違反の発生件数

0件

0件

 

 

 

(2)気候変動に関する取り組み及び体制

 〔ガバナンス〕

 気候変動に係る基本方針や重要事項、リスクや機会などの検討、審議については、会社のリスクに関する具体的な施策について全社的な調整にあたる組織である「リスクマネジメント委員会」において行います。

 当委員会において多角的な検討を行うとともに、重要な事項については取締役会に報告を行い、取締役会は各部門の事業運営の監督を適切に行います。

 

 〔戦略〕

「気候変動」を中長期的なリスクの一つとして捉え、当社グループの旅客自動車事業、不動産事業におけるリスク及び機会について、1.5℃※シナリオ(移行シナリオ)及び4℃※シナリオ(物理シナリオ)を用いて分析を行いました。

なお、その他の当社グループが運営する事業に関しても、順次シナリオ分析を進めていきます。

(※)産業革命前と比較した今世紀末の世界の平均気温の上昇温度

 

 ≪気候変動に関する主なリスクと機会及び施策≫


  (※1) 自社での燃料の使用等、直接的な排出

  (※2) 自社が購入した電気・熱等エネルギーの使用に伴う間接的な排出

  (※3) Greenhouse Gasの略称。温室効果ガス。

 

 〔リスク管理〕

 上記シナリオ分析を行った結果、リスク及び機会の発生可能性と影響度が大きいと考えられる事項について、継続的に「リスクマネジメント委員会」において確認していきます。

 気候関連リスクの管理プロセスとして、「リスクマネジメント委員会」を通じて、当該リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。

 なお、「リスクマネジメント委員会」で検討した内容のうち重要なものは、取締役会に報告し、全社的なリスク管理を行います。

 

 〔指標及び目標〕

 当社は、国が定める2050年度のカーボンニュートラル実現に向けて、グループ全体のCO2排出量削減の具体的な目標数値の設定及びロードマップを策定しました。

 当社グループは、Scope1排出量の比率が高い事業特性を持つ旅客自動車事業を中核事業としておりますが、脱炭素社会へ貢献するため、CO2排出量削減に取り組みます。具体的には、ロードマップに示すCO2排出量削減策を実行し、当社グループ全体として2030年度に35%削減(2013年度比)、及び2050年度にカーボンニュートラルを目指します。

 

≪神奈中グループカーボンニュートラル達成に向けたロードマップ≫

(CO2排出量実績及び目標)

 


 

                                   (単位:万t-CO2)

 

2013年度

2021年度

2022年度

2023年度

Scope1

12

10

10

10

Scope2

1

1

1

1

総量

13

11

11

11

 

 

 

(主なCO2排出量削減策)


(※)Power Purchase Agreementの略。電気販売契約と直訳され、PPA事業者がサービス利用者の所有する敷地や屋根のスペースなどに太陽光パネルを設置する。そこで発電された電力をサービス利用者が使用し、電気料金をPPA事業者に支払う仕組み。

 

(3)多様な人材が活躍できる職場づくり

 〔戦略〕

    <基本方針>

  当社グループ経営理念および行動指針のもと、地域社会の課題解決に取り組み、ステークホルダーとの共創を通じて新しい価値を創造し「持続可能な社会の実現」と「持続的な企業価値の向上」を目指すため、多様性の確保に向けた取り組みを推進しております。

 

    <推進体制>

  当社グループの人的資本経営を推進するため、取締役社長を委員長とした「人財戦略委員会」を設置するとともに、委員会の下部組織として、「人材育成」「社内環境」「健康経営推進」の3つの分科会を設置し、課題に沿った取り組みや目標を推進しております。なお、分科会で検討された事項については、委員会に上申し、重要な事項については執行役員会に報告し議論するとともに、必要に応じて取締役会へ報告を行うこととしております。主な取り組みは以下の通りです。

 

      ① 人材育成  

バス事業を中心として、多様化するお客さまニーズに応え続けるため、先端技術を積極的に取り込み、新たなサービスの提供、生産性の向上など、新しい価値を創造する人材の採用・育成を進めています。

    <主な取り組み>

採用

大型バス運転体験会の実施、経験者・リファラル採用の強化

人材育成

自社のバス専用教習コースを使用した運転訓練の実施

 

 

 

      ② 社内環境整備  

多様な人材が活躍する働きがいのある職場を目指し、人事部内プロジェクトチームを設置し、定期的な意見交換や研修会等を実施し、各部門と連携の上、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを全社で横断的に推進しています。また、仕事と育児介護の両立を支援する取り組みについては、特に重要なテーマと認識し、様々な取り組みを進めています。

    <主な取り組み>

D&Iを実現する環境整備

女性休憩室の充実、障がい者定着面談の実施

働きやすい環境の整備

有給取得・男性の育児休業取得支援、エンゲージメント診断の実施

 

 

      ③ 健康経営の推進  

プロフェッショナルな技能を持つ社員に健康で長く活躍してもらうことの実現が、事業活動を推進する上での重要課題であることから、健康状態に起因する事故防止を目的とした健康管理の徹底に加えて、社員の心と身体の健康づくり支援を進めています。また、2024年3月には、社員のウエルビーイングの実現に向けた経営トップメッセージ「健康経営宣言」を発出しました。

    <主な取り組み>

特定保健指導の実施、産業医・専門医による面接指導の受診を推奨

 

 

 〔指標及び目標〕

区分

項目

2023年度(実績)

2025年度(目標)

人材の

多様性の確保

女性労働者の割合

運転職

0.9

3.0%以上

整備職

0.6

3.0%以上

事務職

26.9

30.0%以上

女性管理職比率(係長職以上)

1.9

5.0%以上

男女間賃金格差(正規雇用労働者)

78.3

80.0%以上

労働環境の整備

有給取得率

運転職

87.3

90.0%以上

整備職

83.7

90.0%以上

事務職

66.8

90.0%以上

男性従業員の育児休業取得率

77.3

100.0

特定保健指導受診率

66.8

100.0

肥満者率

37.2

30.0%以下

喫煙者率

35.9

30.0%以下

自動車運送事業者の「働きやすい職場認証制度」

2つ星

3つ星

 

(注)当社の取り組みが当社グループに属する全ての企業において行われてはいないことから、連結グループにおける主要な事業を営む会社単体(当社)の指標および目標の開示をしております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、公共性の高い旅客自動車事業をはじめとして、不動産事業、自動車販売事業、その他の事業を展開しておりますが、特にグループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があると考えられるリスクについては、以下のようなものがあります。

当社グループといたしましては、これらのリスクを認識したうえで、その発生の抑制、回避および発生した場合の対応に努めてまいります。

なお、各事項中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。また、以下のリスクは、当社グループにおける事業等のすべてのリスクを網羅したものではありませんのでご留意願います。

 

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

(1)人材の不足

当社グループは、主要な事業である旅客自動車事業をはじめ労働集約型の事業が多いことから、人材の不足は乗合バス事業における路線の維持が困難となることやタクシー事業において稼働率の減少につながることなどが予想され、当社グループの業績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。昨今の人材不足は業績に負の影響を与えております。

当社グループでは、従業員が働きやすい会社・働きたい会社を目指し、多様な働き方に対応した環境の整備を進めております。

グループ従業員の多くを占める旅客自動車事業の運転士については、多様な広告媒体の活用により採用活動を強化しているほか、乗務に必要な運転免許取得を支援することにより、新卒者をはじめとする免許未取得者に対しても採用の門戸を広げております。

さらに、自社教習コースを活用した基礎訓練の反復など充実したプログラムにより運転技術を習得させるほか、定期的なフォローアップにより従業員の定着を促進してまいります。

(2)輸送中の事故

当社グループは、旅客自動車事業を中核として事業展開していることから、業務中に交通事故を多発させることや重大事故を発生させることは社会的信頼を低下させるだけでなく、これらの事故の結果、行政処分を受けることによって当社グループの業績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

お客様の安心・安全な運行への信頼を得るため、運輸安全マネジメント制度のより一層の推進を図り、輸送の安全に関する計画等のPDCAサイクルを確実に実施し、輸送の安全性向上に努めております。

また、各営業所においてドライブレコーダー映像などを活用し、事故防止・安全運行に関する教育を実施しているほか、事故防止対策委員会など各種委員会を組織し、定期的に議論する場を設け原因究明と事故防止対策を検討しております。

さらに、運行管理業務においてデジタル技術を導入することにより、対面点呼の実効性を向上させるとともに、乗務員の健康に起因する事故を防止するため、乗務員の健康管理の充実を図っております。また、バス車両についてはドライバー異常時対応システム(EDSS)搭載車の導入を進めるなど安全性の向上に努めてまいります。

(3)感染症の拡大

  および長期化

当社グループは、各種感染症の拡大および長期化により、旅客自動車事業をはじめとする多くの事業でお客様の行動変容に伴い需要が減少するほか、従業員が罹患することによって事業継続が困難となり、業績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、各種感染症の拡大や長期化が想定される際には、お客様および従業員の安全を最優先に考え、グループ間でより緊密な連携を取りながら関係機関の指針に則った感染予防および感染拡大防止対策を実施し、事業の継続を図る体制を整えております。

また、コロナ禍に伴い生じたお客様の行動変容に対応した営業施策を展開し、収益の確保に努めております。

 

 

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

(4)機密情報の

  漏えい

当社グループは、各事業において情報システムを活用していることから、サイバー攻撃、コンピューターウイルスへの感染、人為的ミス等により個人情報を含む機密情報が漏えいすることにより、当社グループの信用が失墜し、業績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、個人情報保護ならびに情報セキュリティに関する規程に基づく情報管理体制を整備しており、個人情報などの機密情報については利用者を制限するなど厳正な情報管理を行っております。また、情報システム機器に関しては、セキュリティ面の定期的な更新を行うとともに、複数のセキュリティソフトなどによる対策を実施しているほか、従業員へ定期的な情報提供や注意喚起を行うことでセキュリティ意識の向上を図り、情報漏洩の防止に取り組んでおります。

(5)自然災害

当社グループは、地震、津波、その他大規模自然災害が生じた場合、施設の損壊被害に加え、道路や電力、水道などの社会インフラ機能の低下、燃料の供給不足等により事業運営に支障をきたし、業績と財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

有事発生時に想定されるリスクの逓減を目的として、国や自治体からの情報収集を随時行い、事業領域ごとに事業の継続および早期復旧するための事業継続計画を策定しております。

また、事業継続計画の実効性を高めるため、全グループ会社を対象とした災害時対応訓練を定期的に実施し、安否確認や被害報告など、不測の事態に備えた対応力の強化に努めております。

(6)気候変動

気候変動対策としてカーボンニュートラルに向けた取り組みが一層求められる中で、会社としての取り組みが不十分であると評価された場合、ステークホルダーからの信頼が失墜し、企業価値が低下することで資金調達が困難となり、結果として業績と財政状況に負の影響を及ぼす可能性があります。

当社では、国が定める2050年度のカーボンニュートラル実現に向けて、グループ全体のCO2排出量削減の具体的な目標数値の設定およびロードマップを策定しております。

当ロードマップに従い、環境配慮車両の導入や太陽光発電設備の導入を進めるとともに、省エネのための各種取り組みを継続するなど、グループ全体でCO2排出量削減に取り組んでおります。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中で個人消費が緩やかに増加し、持ち直しの動きが見られました。一方、資源価格高騰に伴う物価上昇や円安の進行など先行きは依然として不透明な状況が続いております。

このような状況のもと、当社グループ各社は、各部門において積極的な営業施策を図るとともに、経営の効率化に努めた結果、当期における売上高は、117,067百万円(前期比12.7%増)、営業利益は7,516百万円(前期比73.8%増)、経常利益は7,747百万円(前期比57.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、3,262百万円(前期比183.9%増)となりました。

 

セグメントの業績の概況は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、従来の報告セグメントである「一般旅客自動車運送事業」を「旅客自動車事業」に名称変更しております。また、当該セグメントに含まれる「乗合事業」「貸切事業」および「乗用事業」を「乗合バス事業」「貸切バス事業」および「タクシー事業」にそれぞれ変更しております。この変更がセグメント情報に与える影響はありません。

 

(旅客自動車事業)

乗合バス事業においては、商業施設「ジ アウトレット湘南平塚」の開業に伴い、4月に平塚駅北口および本厚木駅南口~ツインシティ大神間を結ぶ新系統の運行を開始し新たな需要に対応いたしました。また、子育て世代応援の取り組みとして小児IC運賃の一律50円を開始したことや、7月に当社全路線(当社横浜市均一運賃区間等を除く)にて運賃改定を実施するとともに、通学定期券の割引率引き上げを行うなど、利用促進を図ったことにより増収となりました。

タクシー事業においては、神奈中タクシー㈱にて新型コロナウイルス感染症が感染症法上「5類」へ引き下げられたことで、夜間を中心に旅客需要の回復が見られたことや、11月に運賃改定を実施したことにより増収となりました。

貸切バス事業においては、神奈中観光㈱にて旅行需要の回復に伴い旅行エージェントからの受注が増加したことなどにより増収となりました。

以上の結果、旅客自動車事業全体の売上高は54,967百万円(前期比11.6%増)、営業利益は3,027百万円(前期比377.6%増)となりました。

 

(不動産事業)

賃貸事業においては、前期に賃貸を開始した「神中本藤沢物流センター」や「アドベル明石町ビル」が通期寄与したことなどにより増収となりました。

分譲事業においては、デベロッパーとのマンション分譲共同事業による藤沢市羽鳥の「プレミスト湘南辻堂」が前期に完売し、販売戸数が減少したことにより減収となりました。

以上の結果、不動産事業全体の売上高は6,130百万円(前期比3.8%増)、営業利益は2,570百万円(前期比2.8%増)となりました。

 

(自動車販売事業)

商用車販売事業においては、神奈川三菱ふそう自動車販売㈱にてトラック・バスの販売台数が増加したことに加え、既存のお客さまに対する車検や点検等メンテナンスの営業活動に努め、車両整備が増加したことにより増収となりました。

輸入車販売事業においては、神奈中相模ヤナセ㈱にて高価格帯の新車販売台数が増加するとともに、中古車の販売も好調に推移したことにより増収となりました。

以上の結果、自動車販売事業全体の売上高は37,387百万円(前期比28.8%増)、営業利益は1,176百万円(前期比62.6%増)となりました。

 

(その他の事業)

流通事業においては、㈱神奈中商事にてバス運賃箱等の部品販売が増加したことなどにより増収となりました。

商用車架装事業においては、横浜車輌工業㈱にて半導体不足の解消に伴いメーカーの生産台数が回復し、受注が増加したことなどにより増収となりました。

情報サービス事業においては、㈱神奈中情報システムにてドライブレコーダなどバス車載器の販売が増加したことなどにより増収となりました。

レジャー・スポーツ事業においては、㈱神奈中スポーツデザインにて4月に学童施設「ASHITA∞キッズ神奈中本厚木」を開業し会員獲得に努めましたが、不採算店舗を閉店したことなどにより減収となりました。

飲食・娯楽事業においては、前期に営業譲受した「ドトールコーヒーショップ」の8店舗が通期寄与したことなどにより増収となりました。

ホテル事業においては、室料を改定したことにより宿泊部門は増収となりましたが、料飲部門において前期末にピザ店2店舗を閉店したことによりホテル事業全体では減収となりました。

以上の結果、その他の事業全体の売上高は29,385百万円(前期比5.4%増)、営業利益は954百万円(前期比39.4%増)となりました。

 

 

②財政状態

(資産の部)

流動資産は、分譲土地建物の取得による商品及び製品の増加などにより、前連結会計年度末に比べて4,869百万円増加し、30,075百万円となりました。

また、固定資産は、減価償却により減少しましたが、投資有価証券の時価評価額が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて3,752百万円増加し、129,115百万円となりました。

この結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて8,622百万円増加し、159,191百万円となりました。

 

(負債・純資産の部)

負債は、借入金やリース債務の返済が進んだものの、支払手形及び買掛金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて2,229百万円増加し、99,918百万円となりました。なお、借入金、社債及びリース債務残高は、前連結会計年度末に比べて2,805百万円減少し、56,338百万円となりました。

また、純資産は、その他有価証券評価差額金や利益剰余金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて6,392百万円増加し、59,272百万円となりました。

なお、自己資本比率は、前連結会計年度末と比べて2.0ポイント増加し、34.0%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べて547百万円増加し、3,169百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益5,009百万円に、減価償却費などを加減した結果、9,671百万円の資金収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出6,110百万円などにより、5,792百万円の資金支出となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済による支出などにより、3,331百万円の資金支出となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

当社グループは、その主要な事業である旅客自動車事業をはじめ、受注生産の形態をとらないものが多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

なお、販売の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの経営成績に関連付けて示しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況を勘案し合理的と考えられるさまざまな要因に基づき、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り、判断および仮定設定を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の重要な会計方針のうち、連結財務諸表の作成において当社の重要な見積り、判断および仮定設定に大きな影響を及ぼすものは以下のとおりです。

 

(投資の減損)

当社グループでは、時価のある有価証券について個々の銘柄ごとに有価証券の期末時価が取得価額に比べ50%以上下落し、かつ、その下落が一時的でない場合は回復可能性がないと判断して減損処理を行っております。また、期末時価が取得価額に比べ30%以上50%未満下落した場合につきましては、対象銘柄の過去3年間の毎月末の時価の平均値が、30%以上の下落率の場合は回復可能性がないと判断して減損処理を行っております。

(固定資産の減損)

当社グループは、旅客自動車事業および不動産事業を中心に多くの固定資産を保有しております。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づき算出しているため、当初見込んだ収益が得られなかった場合、または算出の前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。

(繰延税金資産)

当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少又は増加した場合には、評価性引当額の追加計上又は取崩が必要となる場合があります。

(退職給付費用)

従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務および年金資産の見込額に基づき計上しております。当社グループの採用した見込額は妥当なものと考えておりますが、実績との差異または見込額自体の変更により、退職給付の費用および債務に影響を与える可能性があります。

 

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

(売上高および営業損益)

売上高は、旅客自動車事業において、新型コロナウイルス感染症の5類移行による旅客需要の改善や運賃改定効果が寄与したことに加え、自動車販売事業において、半導体の供給不足解消によりメーカーの生産が回復し、トラックを中心に新車販売台数が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ13,201百万円増加し、117,067百万円(前期比12.7%増)となりました。

営業利益は、旅客自動車事業において、乗務員の待遇改善を実施し人件費が増加したものの、上記増収などにより、前連結会計年度に比べ3,192百万円増加し、7,516百万円(前期比73.8%増)となりました。

なお、セグメントごとの売上高および営業利益については、前掲の「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(営業外損益および経常損益)

営業外収益は、新型コロナウイルス感染症関連の助成金収入が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ256百万円減少し、744百万円となりました。

営業外費用は、金融費用が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ98百万円増加し、512百万円となりました。

この結果、経常利益は7,747百万円(前期比57.8%増)となりました。

(特別損益および親会社株主に帰属する当期純損益)

特別利益は、投資有価証券売却益が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ277百万円減少し、169百万円となりました。

特別損失は、バス営業所や賃貸施設の建替工事に伴う固定資産除却損が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ479百万円増加し、2,907百万円となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,262百万円(前期比183.9%増)となりました。

 

③資本の財源及び資金の流動性についての分析

(資金調達)

当社グループの資金調達は、社債および市中金融機関からの借入金のほか、㈱日本政策投資銀行からの借入金など、市場環境や金利動向を総合的に勘案しながら決定しております。

なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しております。

(資金の流動性)

当社グループは旅客自動車事業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しております。

 

なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、前掲の「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 

(3)目標とする指標の進捗状況

 当社グループでは、持続可能な経営を実現するために、中期経営計画(2021年度~2023年度)の3ヵ年を「体質変革期」と位置付け、厳しい経営環境下においても利益を創出できるように構造改革に取り組み、2023年度を目安に売上高営業利益率および有利子負債/EBITDA倍率を感染症拡大前の水準に回復させることを目指してまいりました。
  当連結会計年度においては、旅客自動車事業における旅客需要の改善や運賃改定の実施などにより営業利益が計画を上回りました。その結果、当連結会計年度における売上高営業利益率は6.4%、有利子負債/EBITDA倍率は4.4倍となりました。
  当連結会計年度における実績と当初業績予想数値については以下の通りであります。

 

経営指標

2023年度

(目安)

当連結会計年度

実績

計画

売上高営業利益率

6.0%以上

6.4%

4.4%

有利子負債/EBITDA倍率

5.0倍以下

4.4倍

6.8倍

 

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。