第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「地域共栄 未来創成」の企業理念のもと、以下のビジョン及び行動指針に則り、輸送サービスを中心として地域の発展とともに企業価値を向上させていくことを基本方針としております。

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(2)経営戦略等

当社グループは、コロナ禍に策定した2022年度を初年度とする中期経営計画において、「利益水準の回復と事業構造改革」を基本方針に掲げ、重点戦略及び各施策に取り組んでまいりました。新型コロナウイルス感染症の5類移行による人流回復に加え、設備投資やコストを抑制したことにより、中期経営計画の目標数値(2024年度:売上高480億円、営業利益24億円)は達成したものの、当社グループを取り巻く事業環境は、不安定な国際情勢や円安による物価高騰、労働力不足など依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような状況において、2030年のあるべき姿を示した「グループ構想2030」に掲げる「まちづくり・地域づくり企業」へ進化すべく、中期経営計画の最終年度となる2024年度についても、引き続き様々な取り組みを実施してまいります。

 

1.当社のパーパス及びグループ構想2030

<パーパス>

移動をベースに地域を活性化させるとともに、地域の人々の生活を支援し、地域と共に従業員・家族の幸せを向上する。

<グループ構想2030(2030年のあるべき姿)>

地域に不可欠、なくてはならない「まちづくり・地域づくり企業」へ進化する

~地域の移動を支え、暮らしを豊かにするとともに、地域の魅力を発掘・創出・発信し、地域価値を高める~

 

2.中期経営計画(2022年度~2024年度)

<基本方針>

『利益水準の回復と事業構造改革』

<重点戦略>

・神戸エリアでの路線拡充、観光周遊バスの充実をはじめとする事業拡大

・中山間地での地域に適した交通体系への転換と地域密着サービスの提供によるサステナブルな事業モデル確立

・不動産業の拡大

・ノンコア、かつ不採算事業はグループ内再編による効率化・収益力強化、又は売却・撤退

・未来への成長投資の実行(人材・環境・デジタル分野)

 

(3)優先的に対処すべき課題と具体的施策

<自動車運送業>

輸送人員の回復ペースに一服感が見られる中、処遇改善による人件費の増や燃料費の高騰、コロナ禍に抑制していた車両の更新など設備投資の再開による減価償却費の増により、今後は厳しい見通しとなっております。業界全体で運転士不足が深刻化する中、路線再編による輸送の効率化を進めるとともに、重点戦略エリア(神戸、大阪、淡路島)や高速バスの収益路線における事業拡大を図ってまいります。中山間地エリアにおいては、オンデマンドバスやコミュニティバスなど輸送形態の見直しにより、持続可能な交通体系への転換を進めてまいります。

 

<不動産業>

住宅部門は、加古川展示場における魅力的なモデルハウス展示、専門人材の採用による営業力強化、M&Aの探索を通じて姫路から播磨エリア全域へ事業エリアを拡大し、さらに神戸エリアへ事業拡大を目指すと共に、建売住宅販売を強化して在庫回転率を向上させ、収益力を拡大します。建設部門においても専門人材の積極採用、M&Aの探索を通じて業容拡大を行うと共に、強みのある木造建築においてさらに実績を積み重ね、収益力の拡大と同時に脱炭素化にも貢献してまいります。賃貸部門は、中長期的に優良な収益物件の取得に努めると共に、自社用地の開発にも取り組んでまいります。

 

<旅行貸切業>

旅行部門は、訪日外国人向けの1dayツアーや人気の観光地を結ぶルートツアーを充実させ、拡大するインバウンド需要を確実に獲得してまいります。また、2024年4月より、快適な空間とアテンダントによるワンランク上のサービスを提供する専用バス「YUI PRIMA OLIVIA」で巡る瀬戸内周遊ツアーを開始し、瀬戸内地域の魅力を国内外の人々へ伝える新たな観光コンテンツとしての需要創出に取り組んでまいります。貸切部門は、処遇改善や人事制度の見直し等により運転士を確保し、稼働増を図ってまいります。

 

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画においては、最終年度である2025年3月期の連結数値目標を以下の通り定めております。当連結会計年度の実績は、当該数値目標に対し、以下の通り推移いたしました。

 

 

前連結会計年度

実績

(2023年3月期)

当連結会計年度

実績

(2024年3月期)

翌連結会計年度

予想

(2025年3月期)

中期経営計画

数値目標

(2025年3月期)

連結売上高 (百万円)

44,820

49,480

51,600

48,000

連結営業利益(百万円)

2,362

3,145

2,600

2,400

連結経常利益(百万円)

2,622

3,283

2,740

2,500

親会社株主に帰属する

当期純利益 (百万円)

1,766

2,251

1,800

1,700

売上高経常利益率

5.9%

6.6%

5.3%

5.2%

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは企業理念「地域共栄 未来創成」に基づき、事業を通じて社会との共通価値を創り、「人と環境にやさしい社会」の実現を目指しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の枠組みに基づき取り組んでおります。

サステナビリティに関する取り組みを推進するガバナンス体制として、中期経営計画会議及びサステナビリティ推進会議を活用いたします。中期経営計画会議は当社社長、専務、経営企画部長、各部門長及びグループ会社役員で構成され、各部門、グループ各社において特定したサステナビリティに関するリスクや機会、それらの評価(発生可能性や規模、経営への影響度等)を踏まえて策定された中期経営計画を承認し、サステナビリティ推進会議に対し、マテリアリティとして提案及び進捗報告を行います。サステナビリティ推進会議は当該提案を受け、当該マテリアリティの特定、対応方針や目標の決定、中期経営計画の進捗管理を行い、必要に応じて審議結果を取締役会に報告いたします。また、サステナビリティ推進会議は原則毎月開催される当社常勤役員会の場に合わせて必要に応じて開催され、必要に応じて事業部組織と協議内容を共有し、当社グループ全体でサステナビリティに取り組む体制を構築しております。

事務局は当社総務部内に設置し、各会議の運営補佐及び議事録作成等の役割を担います。

 

 

取締役会

サステナビリティ推進会議

中期経営計画会議

メンバー構成

全役員

常勤役員

(議長:社長)

社長・専務・経営企画部長

各部門長・グループ各社役員

(議長:社長)

機能・役割

指示

・マテリアリティの特定、進捗管理

・中期経営計画会議のモニタリング

・取締役会への報告

・サステナビリティ関連のリスク、機会の特定評価、対応方針・実行計画・目標の決定

・上記を踏まえたマテリアリティの特定

・事業活動の進捗管理

・サステナビリティ推進会議への報告・提案

開催頻度

毎月

毎月の常勤役員会開催に合わせ、

必要の都度議案上程

半期ごと

 

≪フロー図≫

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≪マテリアリティ特定のステップ≫

①課題の抽出

各部門、グループ各社がそれぞれの事業におけるサステナビリティに関する課題を抽出します。

②実行計画の策定

各部門、グループ各社が事業活動を通じて、それぞれの課題に対応するための実行計画(中期経営計画)を策定します。

③マテリアリティの抽出

各部門・グループ各社の課題うち、特に重要と位置付けられる項目を当社グループのマテリアリティとして抽出します。

④マテリアリティの特定・報告

特定したマテリアリティをサステナビリティ推進会議で協議・特定し、取締役会へ報告します。

 

(2)重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)は以下の通りであります。

 

①地球環境の保全

気候変動対応として、脱炭素に向けた取り組みに努めます。気候変動に関する主なリスクと機会については、当社グループの基幹事業かつCO2排出量の大半を占める一般旅客自動車運送事業(乗合バス事業)において、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovermental Panel on Climate Change)が示す2℃と4℃のシナリオに基づき、検討いたしました。その結果、以下の移行リスク(低炭素経済への移行に関するリスク)及び物理リスク(気候変動による物理的変化に関するリスク)を特定し、リスク、機会及び戦略を分析しております。

 

移行リスク 「EV・FCVなどカーボンゼロ車両(以下「EV等」)への代替」

リスク

・国の規制強化や社会の強い要請により、EV等へ代替できなければ事業継続が困難となる。

・EV充電設備等の設置及び維持管理コストが発生する。

機会

・普及促進するための国の政策・補助金制度の拡充により導入しやすくなる。

・EV等は、ディーゼル車と比べて、ランニングコストが減少する。

・EV等の普及による低価格化が進む。

・耐用年数の延長により車両コストが低下する。

戦略

・各メーカーにおける開発・生産の状況や運用データなど、EV等に関する情報収集を行い、導入を積極的に推進する。

・エネルギーコストの低減と効率的な運行を実現させるための最適なエネルギーマネジメントシステムを構築する。

 

移行リスク 「環境意識の変化」

リスク

・環境対策を推進していなければ、利用者の環境意識の向上により利用されなくなる。(売上高減少)

・EV自家用車の普及率によってはバスの環境優位性がなくなり利用者が減少する。(売上高減少)

・企業の取り組みとしてテレワークが拡大し、通勤利用者が減少する。(売上高減少)

機会

・環境意識の向上により、自家用車より輸送量単位のCO2排出量が少ないバスへのシフトが進み、売上が増加する。

・企業に対してバス移動を推奨することは、従業員の出張や通勤におけるCO2排出量の削減につながるため、売上が増加する。

・電力費用の高騰に伴い、EV自家用車からバスへのシフトにより売上が増加する。

戦略

・EV等の導入推進だけでなく、現行車両でも使用できる新燃料も合わせて活用する。

・環境に優しい交通手段として訴求する広報活動を推進する。

・企業の通勤ニーズを調査し、バスへのシフトを提案する。

 

 

 

移行リスク 「エネルギーコスト」

リスク

・再エネ電力の逼迫により電力価格が高騰し、利益が減少する。

・EVの充電は、夜間帯に集中するため、電力調達コストが増加する。

・FCVの燃料である水素の価格が軽油と比較して割高となっている。

・現時点での新燃料(バイオ燃料・合成燃料)の製造コストは軽油と比較して相当高くなっている。

機会

・化石燃料の需要減少による原油価格が低下することで、利益が増加する。

戦略

・省エネ設備の導入や節電活動等により、調達電力量の削減に努める。

・車両の効率的な運用により、エネルギー使用量を削減する。

 

物理リスク 「気候変動による影響」

リスク

・降雨、気象の変化(強雨等)を原因とする営業所、道路等の浸水によって、事業停止(バスの運休等)や施設損壊が発生し、売上及び利益が減少する。

・台風の強大化に伴う運休回数増により売上が減少する。

・猛暑日の増加による外出機会の減少に伴い、移動需要が低下し、売上は減少する。

・降雨日数の減少に伴い、バス利用者数が減少し、売上が減少する。

機会

戦略

・利用者と従業員の安全確保を確実に行うことにより事故リスクを軽減する。

・気象情報の的確な把握及び自治体等との連携により災害対策に努める。

・BCP対策の徹底により被害を最小限にとどめる。

・需要に応じた供給体制とすることにより運行の効率化を図る。

・CO2排出の少ない事業の拡大により、バス事業が利益に与える影響を小さくする。

 

なお、当連結会計年度における当社グループのCO2排出量の実績は、Scope1(事業者自らによる直接排出)が51千t-CO2、Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)が5千t-CO2であります。

 

地球環境の保全に向けた各戦略を推し進めてまいりますが、一方で環境負荷の低い車両や燃料などの市場動向はいまだ流動的であると判断しております。今後の状況を注視しつつ柔軟に検討し、適切な目標を設定してまいります。

 

 

②地域との結びつき強化

リスク

人口減少によってサービス利用者が減少する。

機会

地域ごとの社会課題の解決や魅力の創出によってグループ全体の売上が増加する。

戦略

地域の人口減少によって、サービス提供事業者の減少や質・量の低下、それによる生活環境の悪化が想定されます。地域に合わせたモビリティサービスの提供など、地域の人々の安心かつ豊かな生活に向けた様々な支援事業に取り組むとともに、定住・交流・関係人口の増加に向けた地域の魅力を発信などにより、地域の活性化に努めます。

・様々なモビリティサービスの組み合わせやIT活用等による利便性の向上

・安全・安心なサービスの提供(運輸安全マネジメントシステム、乗務員の健康管理など)

・行政、地域関係者と連携した地域課題の解決、地域の魅力発信(地域コンテンツの開拓、

 ECプラットフォーム構築、貨客混載輸送、健康生活・子育て支援など)

 

③人権の尊重と人材の確保・育成

リスク

・対応しなければ、人材の確保が困難となる。

・企業イメージが低下する。

・事業計画を円滑に推進することが困難となる。

機会

・パーパス実現に向けた多様な人材、視点を確保する。

戦略

≪人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針≫

グループ構想2030で掲げる「まちづくり・地域づくり企業」を実現するためには、社会や社内の課題を自ら発見し、解決手段を構築できる人材の確保、育成が重要であると考えており、そのための組織風土づくりに努めております。

採用面では、組織として視点、発想、ノウハウなど多様性の幅を持たせるため、性別や年齢、国籍などに関わらず積極的に雇用すること、また、グループ内での人材流動活用やOB・OGの有効活用も積極的に行ってまいります。

育成面では、役職に応じた階層別の研修のほか、eラーニングや通信教育等によるリスキリングの促進、ビジネスカレッジへの入学、自己啓発書籍の購入補助、社内ベンチャー制度、外部企業との交流制度など、役職や従業員の希望に合わせた教育を受けられる体制を構築しております。

 

≪社内環境整備に関する方針≫

個々の従業員が自身のライフスタイルに合わせて働き、活躍できるよう、勤務形態や各種休暇制度など社内環境整備に努めております。

また、従業員の健康増進に向けて健康経営にも注力しており、保健師による保健指導や相談窓口対応の実施、乗務員を対象にしたSAS(睡眠時無呼吸症候群)検査・脳ドック・心疾患検査のほか人間ドックやがん検診等への補助制度も構築しております。

さらに、従業員エンゲージメントサーベイを実施し、社内の制度や上司・部下のコミュニケーション不足の解消等による働きがいの促進に努めております。

 

また、当社グループでは、上記において記載した、人材の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次の通りであります。

指標

目標

目標年度

実績

(当連結会計年度)

女性管理職比率

10.0

2025年度

8.0

男性労働者の育児休業取得率

30.0

2025年度

36.4

労働者の男女の賃金の差異(全労働者)

45.0

2025年度

41.3

女性運転士数(注)1、2

50

2025年度

37

女性管理職数(注)1、2

10

2025年度

5

(注)1.当社単独の指標であります。

      2.出向者を含み、出向受入者を除いております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)自動車運送業に係る補助金

自動車運送業においては、不採算路線であっても補助金制度を活用しながら社会的要請の高い路線運行を守っております。将来、補助金制度の廃止や一部削減が行われた場合、路線廃止等による事業規模の縮小、それによる地域社会の信用低下及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)原油相場の動向

バスの動力源として、原油に大きく依存しており、その価格の動向は業績に影響を及ぼします。今後、EVバスへの移行がなされたとしても、電力価格は原油相場に依拠するところが多く、変わらず業績へ影響を及ぼすと考えます。購入単価が1円変動した場合、営業利益に与える影響は年間約20百万円と試算しております。

 

(3)自動車運送業に係る重大事故

自動車運送業の特性上、重大事故の可能性は常にあります。死亡・重大事故が発生すれば、賠償費用はもとより、行政処分により新たな事業計画が抑制される可能性があり、また社会的信用の失墜により、当社グループの運送業以外の事業へも影響を及ぼす可能性があり、規模によっては経営基盤を揺るがす可能性もあります。

運輸安全マネジメント制度の導入により、「輸送の安全の確保」が義務付けとなっておりますが、当社グループとしましても「安全は全てに優先する」という基本理念の下、①3悪(飲酒運転・無免許運転・無車検運行)の撲滅、②死亡事故・重大事故ゼロ、③横断歩道上の事故ゼロ、④自転車との事故ゼロ、⑤交通事故件数の減少の5項目を目標に掲げ、トップから現場まで一丸となった安全管理体制(安全風土、安全文化)の構築に努めております。また、車両欠陥事故を絶対に起こさないよう、グループ内整備で法令に基づく点検・整備を徹底しており、加えて自社独自の追加整備など整備管理に細心の注意を払っております。

 

(4)労働力の確保

当社グループが求める人材・労働力の確保、育成が計画通りに進捗しない場合は、事業計画の停滞が発生し、ひいては当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、乗務員確保のための柔軟な働き方の創設やバス運転体験会・体験ツアーの実施のほか、イメージアップポスターのバスラッピング、採用サイト・SNS・駅前ビジョンへの動画配信による採用活動をしております。また、大学等教育機関との連携や、階層別研修等により社内の人材育成に努めております。

 

(5)主要取引

不動産業における主要賃貸物件や、自動車運送業における特定契約輸送等、特定の取引先との取引の消滅により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、レジャーサービス業等においては一部フランチャイズ契約によっておりますので、提供される商品やサービスに重大な欠陥等が生じた場合や、本部の経営方針の転換や業績が悪化した場合には、当社グループの経営成績及び事業戦略等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、不動産業や自動車運送業においては、特定の取引先と友好な関係を築きつつ、事業拡大を進め取引先を増やし、リスクを分散させることに努めてまいります。また、レジャーサービス業においては、提供される商品やサービス等についてはフランチャイザーと十分に協議を進めながら重大な欠陥が生じないよう注意を払っております。

 

(6)伝染病等

新型コロナウイルス感染症の拡大では、緊急事態宣言が発出され、休校や休業など外出自粛要請がなされました。この様な対処法が確立していない、もしくは感染力が強い伝染病が流行した場合、人の移動が収益へと繋がる自動車運送業、旅行貸切業、レジャーサービス業等においては収益性の低下を招き、業績及び資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、このような事態においても公共交通事業者としての責務を果たすため、利用者の動向を見極めながら柔軟なダイヤ編成を行うとともに、固定費のさらなる削減、不採算事業の整理等の効率化に努めております。

 

(7)自然災害、異常気象

台風や地震等の自然災害が発生した場合、保有資産の毀損や道路環境の変化による迂回運行など自動車運送業等の費用が増大し、業績に影響を及ぼします。また、冷夏暖冬、長雨、大雪などでは、旅行貸切業、レジャーサービス業等の収益性の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業継続計画や災害対応マニュアルを策定し、有事の際には車両等資産の保全・バス運行復旧に向けた行動計画等マニュアルに則り、いち早い復旧に努め被害を最小限に抑える努力をしてまいります。

 

(8)法令順守・不正行為

当社グループが展開する主要な事業は、道路運送法に基づく一般乗合旅客自動車運送業及び一般貸切旅客自動車運送業で国土交通大臣の許可を得て営業を行っております。また、その他の各事業も様々な法令・規則等による規制を受けており、これらの規制に違反した場合、又は規制に重大な変更があった場合、当社グループの事業活動が制限されるほか、法令・規制等を遵守する費用が発生する等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、ガバナンス強化、各種法令及び社会的規範を順守するため、コンプライアンス委員会を設置しグループ全社の不正防止と法令順守、企業倫理の醸成に努めております。コンプライアンス委員会では内部監査を実施し、コンプライアンス活動の調査・ヒアリングを行っております。また、社内及び社外に「内部公益通報に関する規定」に基づく通報相談窓口を設置し、法令違反等の未然防止とコンプライアンス体制の充実を図っております。

 

(9)保有資産の減損

保有資産においては「棚卸資産の評価に関する会計基準」、「固定資産の減損に係る会計基準」等を適用しており、資産の回収可能額が帳簿価額を下回った場合等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、収益性の低下等により投資額の回収が見込めないことにより減損処理が必要となる場合には、減損損失を計上するとともに、追加損失の計上が無いように収支改善策に取り組んでおります。

 

(10)退職給付債務

従業員の退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産、退職給付信託の期待運用収益率に基づいて予測計算されております。運用実績や金利変動、想定外の従業員の変動により実際の結果が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用に影響を与えます。今後の資産運用環境や金利動向次第では、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)個人情報の漏洩

自動車運送業、レジャーサービス業及び旅行貸切業等では、大量の顧客情報を保有しておりますが、個人情報の流出等が発生した場合、顧客離れや企業イメージの失墜、更には多額の損害賠償請求による財務的リスクを負うなど、その後の事業展開、経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、内部からの情報漏洩に対しUSBメモリ等の記憶媒体システムの使用を制限し、さらにパソコン上の操作履歴も記録する等対策をとっております。また、外部からの不正アクセスに対してはファイヤーウォール等の防御対策をとっております。

 

(12)食品の安全性

当社グループは、お客様に安全・安心な食品を提供するため、衛生管理や品質管理を徹底し、トレーサビリティの強化にも注力しております。しかしながら、そうした取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合、関連商品の消費の縮小や安全性確保のための費用により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行や雇用・所得環境改善による個人消費の増加、インバウンド需要の回復により緩やかな回復基調となりました。しかしながら、資源価格高騰に伴う物価高や為替相場の変動、労働需給回復による人手不足など先行きは依然として不透明な状況が続いております。

このような状況の中、当社グループは2022年度を始期とする中期経営計画に定める「利益水準の回復と事業構造改革」に基づき、旅客運送、旅行、飲食サービスなどコロナ禍から回復しつつあるサービス需要及びインバウンド需要の取り込み、神戸エリア・大阪エリアへのバス路線拡充、賃貸物件の取得など各事業において収益基盤強化に取り組みました。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ2,443百万円増加し、63,070百万円となりました。増減の主なものは、有形固定資産の増加4,926百万円、投資その他の資産の増加895百万円、現金及び預金の減少4,006百万円などであります。

負債は、前連結会計年度末に比べ41百万円減少し、15,678百万円となりました。増減の主なものは、借入金の減少873百万円、未払金の増加510百万円、リース債務の増加196百万円、繰延税金負債の増加147百万円などであります。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などによる利益剰余金の増加2,040百万円、その他有価証券評価差額金の増加239百万円、退職給付に係る調整累計額の増加195百万円などにより前連結会計年度末に比べ2,484百万円増加の47,392百万円となり、自己資本比率は75.1%となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の売上高は前期比4,660百万円(10.4%)増の49,480百万円、営業利益は前期比782百万円(33.1%)増の3,145百万円、経常利益は前期比660百万円(25.2%)増の3,283百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比485百万円(27.5%)増の2,251百万円となりました。

 

セグメントの経営成績は次の通りであります。売上高、営業利益はセグメント間の内部売上高又は振替高控除前の金額であります。

 

(自動車運送)

乗合バス部門においては、三田~大阪・新大阪線を増便するなど重点戦略エリアである大阪・神戸エリアで利便性向上を図りました。ICカード利用者数はコロナ禍前の水準には戻っていないものの、前期と比較し6.0%の増加となり、新型コロナウイルス感染症の5類移行などの影響により輸送人員は緩やかに回復しております。また、12月に一般路線バスの運賃改定を実施いたしました。高速バス部門においては、姫路~関西国際空港リムジンバスの運行を再開したことや、淡路島線において他社との共同運行を拡大するなど利便性向上に取り組み、三宮~淡路・四国線、中国ハイウェイ線(大阪~岡山県津山市)を中心に収益は回復傾向となっております。車両管理部門においては、スクールバスなどの運行管理業務を新たに請け負ったことにより増収となりました。

以上の結果、売上高は前期比1,353百万円(6.3%)増の22,773百万円、営業利益は前期比367百万円(58.4%)増の998百万円となりました。

 

 

 

(車両物販・整備)

車両物販部門においては、自動車整備の需要拡大により補修部品の出荷が好調に推移したことに加え、大型設備機器の販売や自動車販売台数の増加により増収となりました。整備部門においては、車検整備台数や車両架装案件の増加、送迎バスへの置き去り防止装置の設置義務化に伴う受注増などにより増収となりました。

以上の結果、売上高は前期比689百万円(7.8%)増の9,508百万円、営業利益は前期比125百万円(21.5%)増の708百万円となりました。

 

(不動産)

賃貸部門においては、新たに賃貸用事業用地を取得したことや、前期に建設したサービス付き高齢者向け住宅などが増収に寄与いたしました。住宅部門においては、注文住宅、分譲住宅及び分譲地の引渡件数が増加したことにより増収となりました。建設部門においては、保育園やドラッグストアなどの建設工事を請け負ったことにより増収となりました。

以上の結果、売上高は前期比777百万円(14.8%)増の6,027百万円、営業利益は前期比182百万円(14.0%)増の1,487百万円となりました。

 

(レジャーサービス)

サービスエリア部門においては、高速道路の交通量回復に伴い利用者が増加したため増収となりました。飲食部門においては、外食消費が回復基調に入ったことに加え、10月に「炭火焼き豚丼 豚小家高槻店」を出店したことなどにより増収となりました。ツタヤFC部門においては、新たにトレーディングカードの取扱いや文具雑貨の売場拡大を実施しましたが、レンタル市場の逓減と書籍販売の減少により減収となりました。

以上の結果、売上高は前期比459百万円(11.4%)増の4,487百万円、営業利益は30百万円(前期は営業損失44百万円)となりました。

 

(旅行貸切)

旅行部門においては、暖冬によりスキーツアーは集客に苦戦いたしましたが、インバウンド需要回復に伴い訪日外国人向け周遊ツアーの集客数が増加したことに加え、コロナ禍で差し控えられていた団体旅行需要が持ち直したことなどにより増収となりました。貸切バス部門においては、会社団体からの受注回復に加え、貸切バスの公示運賃改正により受注単価が上昇したことなどにより増収となりました。

以上の結果、売上高は前期比1,336百万円(29.4%)増の5,885百万円、営業利益は前期比89百万円(435.4%)増の110百万円となりました。

 

(その他)

経営受託部門においては、新たに三田市都市公園、三木市有料スポーツ施設などの指定管理を獲得したことや、書写山ロープウェイなど既存施設の利用者が増加したことなどにより増収となりました。農業部門においては、バスの八百屋2店舗を新たに出店したことにより増収となりました。介護部門においては、ショートステイを廃止したことにより減収となりました。

以上の結果、売上高は前期比677百万円(17.6%)増の4,530百万円となりましたが、経営受託部門において新規受託施設の初期運営費用や、農業部門においてバスの八百屋新規出店費用を計上したことなどにより営業損失は170百万円(前期は営業損失134百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて4,006百万円減少し、5,946百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益3,243百万円、減価償却費1,712百万円、法人税等の支払額1,165百万円などにより3,664百万円の収入(前期は3,497百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出6,491百万円などにより6,469百万円の支出(前期は3,315百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出913百万円、配当金の支払額210百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出102百万円などにより1,230百万円の支出(前期は1,364百万円の支出)となりました。

 

なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フロー(営業活動におけるキャッシュ・フローと投資活動におけるキャッシュ・フローを合算したもの)は2,805百万円のマイナスとなりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

当社グループはサービス業を主体とし、その生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であるため、生産実績・受注状況に代えて各セグメントの大半を占める提出会社及び特定の子会社の状況をb.その他の実績として記載するとともに、「(1)経営成績等の状況の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

a.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

自動車運送

22,558

106.4

車両物販・整備

7,110

104.1

不動産

5,098

112.1

レジャーサービス

4,487

111.4

旅行貸切

5,772

130.2

 報告セグメント計

45,027

109.7

その他

4,453

117.8

合計

49,480

110.4

(注)1.セグメント間の取引については消去しております。

2.総販売実績の100分の10以上の相手先は、前連結会計年度、当連結会計年度ともありません。

 

 

b.その他の実績

①自動車運送

会社名

事業内容等

単位

当連結会計年度

前年同期比(%)

神姫バス㈱

一般乗合旅客・車両数(注)

750

101.8

   同   ・輸送人員(注)

千人

47,223

104.0

(注)1.一般旅客・車両数のうちリース車両は1両(前期は1両)であります。

2.一般乗合旅客・車両数及び輸送人員のうちには、特定旅客に対するものが58両(前期比95.1%)、

  1,494千人(前期比93.9%)含まれております。

 

②車両物販・整備

会社名

事業内容等

単位

当連結会計年度

前年同期比(%)

神姫産業㈱

自動車部品・タイヤ仕入高

百万円

5,379

106.3

神姫商工㈱

自動車整備・車検台数

5,755

100.0

自動車販売・販売台数

328

106.5

 

 

③不動産

会社名

事業内容等

単位

当連結会計年度

前年同期比(%)

神姫バス㈱

賃貸料

百万円

2,340

105.4

神姫バス不動産㈱

土地分譲・区画数

区画

26

123.8

建物販売・戸数

42

135.5

建設事業・完成工事高

百万円

1,226

120.1

 

④レジャーサービス

会社名

事業内容等

単位

当連結会計年度

前年同期比(%)

神姫バス㈱

ツタヤFC業・有効会員数

100,239

91.2

神姫フードサービス㈱

飲食業・仕入高

(売店の物販を含む)

百万円

1,500

119.2

 

 

⑤旅行貸切

会社名

事業内容等

単位

当連結会計年度

前年同期比(%)

神姫観光㈱

一般貸切旅客・車両数(注)

90

105.9

   同   ・延実働車両数

15,037

98.7

神姫観光㈱及び神姫バス㈱

旅行業・ツアー集客数

132,506

126.3

(注)一般貸切旅客・車両数のうちリース車両は6両(前期比22.2%)であります。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

売上高は、自動車運送業において新型コロナウイルス感染症の5類移行により輸送人員が緩やかに回復したことに加え、旅行貸切業において訪日外国人向けツアーの集客が好調であったこと、不動産業において新規物件の賃貸料収入を計上したことに加え、土地・建物の販売や建設工事が好調に推移したことにより、前期に比べ4,660百万円(10.4%)増加し、49,480百万円となりました。

営業利益は、人件費の増加や燃料費の高騰があったものの、上記の増収により、前期に比べ782百万円(33.1%)増加し、3,145百万円となりました。

経常利益は、営業外収益においてコロナ関連助成金が減少したものの、営業利益の増加に伴い前期に比べ660百万円(25.2%)増加し、3,283百万円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失において固定資産除却損を計上したものの経常利益の増加に伴い前期に比べ485百万円(27.5%)増加し、2,251百万円となりました。

なお、売上高経常利益率は6.6%(前期比0.8ポイント増)、ROA(総資産経常利益率)は5.3%(前期比0.9ポイント増)となりました。

セグメントごとの分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度末の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

資本の財源及び資金の流動性につきましては、当社グループの運転資金及び設備資金を内部資金又は金融機関からの借入により資金調達することとしています。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入金での調達を基本としております。また、当社グループではキャッシュ・マネジメントシステム(CMS)を導入し、グループ内資金を集中管理することにより資金効率向上及び有利子負債の圧縮に努めております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,333百万円となり、前連結会計年度に比べ677百万円減少しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

研究開発活動は行っておりません。