当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、
「物流の未来を見つめ、物流に関わるすべての事業の創造に挑戦します」
「お客様の期待に応えて信頼を築き、豊かな社会の創造に貢献します」
「社員の創意を活かし、仕事の喜びと心豊かな生活の創造を目指します」
を基本理念としております。
この理念に基づき、当社グループの総力を結集して品質の高い物流サービスを提供し、株主の皆様をはじめとしたステークホルダーの皆様の期待に応えて、企業価値を高める努力を続けてまいります。また、コンプライアンスの徹底とコーポレート・ガバナンスの強化に努め、経営品質を高めて社会の発展に貢献することを目指してまいります。
2023年度を初年度とする3ヶ年の中期経営計画(以下、「中期経営計画2025」)におきましては、「New Challenge」を基本方針としております。この方針の下、常に改善意識を持って新たな挑戦を行い、「環境変化に適応した強固な体制づくり」「適切な利益を安定確保できる収益構造の確立」「社会課題解決への貢献」を実現することにより、経済的価値および社会的価値を高め、信頼される企業グループとして成長を目指してまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、上記(1)の方針に基づき、「収益力の向上」「強固な物流サービスの構築」「サステナビリティの推進」「人財力の強化」「グループ経営基盤の強化」を重点施策として、取り組みを進めております。
① 収益力の向上
・安定利益を確保できる収益構造の構築
・営業強化による得意先との取引範囲の拡大
・インドシナ半島地域における物流事業の拡大
② 強固な物流サービスの構築
・安全および品質の追求による現場力の強化
・物流DX推進による生産性の向上
・持続的に物流サービスを提供できる体制の整備
③ サステナビリティの推進
・サステナビリティ推進体制の構築
・SDGsを踏まえた重要課題への取り組み強化
・環境や社会への負荷低減につながる事業活動の推進
④ 人財力の強化
・リーダー人財、プロフェッショナル人財等の育成
・多様な人財が活躍できる組織、人事制度づくりの推進
・エンゲージメントの向上
⑤ グループ経営基盤の強化
・最適なグループ体制の検討
・リスクマネジメントの強化
・新基幹システムの活用によるグループ経営管理および業務効率化の推進
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、営業収益の拡大および安定した営業利益の確保により、競争力ある収益性の高い事業展開が図れるものと考えております。この観点から、中期経営計画の策定にあたっては、目標とする指標に「営業収益」「営業利益」「売上高営業利益率」を採用し、最終年度に数値目標を設定しております。
現行の「中期経営計画2025」につきましては、最終年度となる2025年度に営業収益710億円、営業利益18億円、売上高営業利益率2.5%の達成を目指しております。
(4)経営環境および優先的に対処すべき課題
今後の経済の見通しにつきましては、国内需要が底堅く推移し、高い水準の賃上げ実現が期待されるなど、景気は緩やかな回復基調を維持すると考えております。しかしながら、物価上昇による個人消費の鈍化が懸念されるほか、米国の相互関税導入や混迷する国際情勢を受け、海外経済の不確実性が高まっていることから、見極めの難しい状況が続くものと想定しております。
当社グループが属する物流業界につきましては、荷動きが伸び悩む状況にあって、各種コストは上昇を続けており、引き続き厳しい事業環境となる見込みであります。こうした環境の中で、2024年問題を背景に物流関連法が改正されたこともあり、荷主企業や協力会社とともに構造上の問題に取り組み、持続可能な物流を実現することが喫緊の課題となっております。また、物流DXの推進や多様な人財の活用による人手不足への対応、さらにサステナビリティの観点から地球環境の保全や社会課題への取り組みも重要であると認識しております。
以上のことを踏まえ、当社グループは、現行の中期経営計画において重点施策とした「収益力の向上」「強固な物流サービスの構築」「サステナビリティの推進」「人財力の強化」「グループ経営基盤の強化」への取り組みを通じて、課題に対応していく方針であります。これにより経済的価値および社会的価値を高め、信頼される企業グループとして成長を目指してまいります。
国内におきましては、新設した拠点の稼働開始に加えて、期中に当社グループ最大規模となる拠点の開設を予定していることから、これらの円滑な立ち上げに注力し営業基盤を強化してまいります。また、事業環境の変化に応じた料金の収受に継続して取り組むとともに、拠点網の最適化や物流DX等により業務の効率化を図り、収益性を高めてまいります。さらに、法改正に適切に対応しながら、得意先ニーズに応え続けられる強固な輸送体制の構築に取り組んでまいります。
海外におきましては、各進出地のビジネス事情に即した営業戦略の実行により、既存事業を一層強化してまいります。中核を担うベトナムにつきましては、物流や旅客運送をはじめ多様な事業を展開する強みを活かした営業活動を推進し、同国における優位性を確保してまいります。さらに、インドシナ半島地域における輸送ネットワークの拡充を図りながら、国際陸上輸送ニーズの開拓に取り組んでまいります。
これらの施策に加えて、人財育成の強化や多様な人財の確保により環境変化に適応できる強い組織づくりに取り組むとともに、安全・品質の追求、リスクマネジメントの強化、デジタル技術の活用等を進め、経営基盤を強化してまいります。併せて、サステナブル経営を推進し、サステナビリティに関する重要項目に事業活動を通じて取り組むことにより、社会課題の解決に貢献してまいります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、物流価値の創造による持続可能な社会の実現をめざしています。その実現に向けて、多様性のある創意にあふれた人財・組織づくりを行うとともに、持続可能なサプライチェーンの強化に取り組んでおります。さらに、すべての事業活動において基本的人権を尊重し、社員、取引先、地域社会を含むすべてのステークホルダーに対して責任を果たすことを重要な使命と考えております。
また、「人財価値の向上」「取引先との協働」「環境への配慮」「リスク管理の強化」の4つをマテリアリティに掲げ、社員と家族、取引先、地域社会など全てのステークホルダーを尊重するとともに、地球環境問題に関しては、カーボンニュートラルに向けた取り組みや、生物多様性への配慮など環境負荷ならびにリスクの低減を意識した事業を推進することにより、よりよい未来の創造に貢献してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①サステナビリティ推進体制とガバナンスについて
当社グループは、2023年度にCSR本部を設け、その下部組織としてサステナビリティ推進部を設けております。また、当社グループにおける「中期経営計画2025」の重点施策となっているサステナビリティの推進を実現するために、代表取締役副社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を定期的に開催し、その活動の一環として、「サステナビリティ・マニュアル」を新たに定めました。また、「サステナビリティ・レポート」を作成し、サステナブル経営の取り組みについて開示を行っております。
当委員会では、サステナビリティに関わる課題への対応やリスク管理を行い、重要な事項は取締役会へ付議・報告することで経営の実効性を確保しております。
サステナビリティ推進体制(ガバナンス)
②リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ推進委員会においてサステナビリティに関連するリスクの管理を行っております。当委員会では、マテリアリティに基づくテーマごとの分科会を開催しており、リスクマネジメント委員会の活動とあわせ、リスクの特定や低減に取り組んでおります。
(2)気候変動への対応
当社グループでは、気候変動への対応を重要な経営課題として捉えております。そのため、マテリアリティの一つに「環境への配慮」を掲げ、温室効果ガス排出量削減と大気汚染物質の削減の目標を定めております。この取り組みをより具体化するために、2024年度はScope1、Scope2の排出量を算定し、現状把握を行いました。2025年度はScope3の排出量算定や分析によりホットスポットを特定し、課題解決に向けた施策を実施します。
当社グループはこれらの活動を通じて、2050年のカーボンニュートラルに向けて取り組んでまいります。
(3)人的資本・多様性の考え方
①戦略
当社グループは、物流価値の創造を通じて社会に貢献することを使命とし、「日本一信頼される企業グループ」を目指しております。その実現のためには、あらゆる活動の根幹であり競争力の源泉である「人財」の力を高めることが重要と考えております。
「中期経営計画2025」においては、基本戦略の一つとして「人財力の強化」を掲げ、その中で多様化するニーズに的確に応えられる人財の育成強化や、エンゲージメントの向上に取り組んでおります。社員一人ひとりが個性や能力を活かして会社と共に成長できる組織を目指し、社員が互いに多様性を尊重し合い、安心して意欲的に仕事にチャレンジできる、働きがいと誇りを持てる会社づくりに取り組んでおります。さらに、採用活動においても性別、国籍、思想、信条を問わず多様な人財を受け入れることで、人財の多様性と持続可能性を高めてまいります。
<人財の育成および社内環境整備に関する方針>
企業を取り巻く環境がめまぐるしく変化する中で、当社グループは企業価値を高め、持続的な成長を目指すために「サステナビリティ基本方針」を制定し、これに基づき「人財方針」を策定しております。
この方針を踏まえ、以下の5つの指針を柱として、心理的安全性の確保やハラスメント防止、アンコンシャス・バイアス教育などの実施を通じた多様性への理解促進と、誰もが働きやすい職場環境の整備を進めております。さらに、従来の集合型研修に加え、多言語対応のイーラーニングを併用するなど、組織を構成する全ての社員が学びを通じて成長し、気持ちよく働ける環境づくりに向けて、今後も様々な取り組みを推進してまいります。
1.学ぶ機会の提供
事業活動を通じてステークホルダーの期待に応え、社会に貢献できるよう、役員およびすべての社員に対して、学び、成長する機会を積極的に提供します。
2.キャリア形成の支援
一人ひとりの個性を尊重し、中長期的な視野でのキャリア形成を支援します。
3.学び続ける組織風土の醸成
自ら研鑽し、互いに学び合う組織風土を醸成します。
4.多様な意見の尊重
社員が互いの価値観や考え方を尊重しあい、自由に意見を出しあえる組織風土を醸成します。
5.社内環境の整備
年齢、性別、性的指向や性自認、国籍、障がいの有無、採用・雇用形態の違い等にかかわらず、一人ひとりの社員にとって働きやすい職場環境と、公正な処遇・制度を構築します。
②指標および目標
当社グループは、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画において、「採用人数に占める女性社員の割合20%以上」を目標としております。当連結会計年度の実績としましては、当社における採用人数に占める女性社員の割合は13.1%であります。内訳は新卒採用21.7%、中途採用7.9%となっており、中途採用ではドライバーを中心とした技能職社員の採用が主であったことから、目標には及びませんでした。今後も、女性社員の採用拡大に向けた取り組みを進めるとともに、多様性を尊重した職場環境づくりに努めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定得意先との営業契約について
当社グループが営業契約を締結している得意先の中で、営業収益に占める割合が10%を超える大口得意先グループがあります。その契約期間は1年間で、双方より申し出のない場合は1年間の自動延長となっております。当社グループは、得意先の期待に応えるため品質の高い物流サービスを提供し、強固な信頼関係の構築および維持に努めておりますが、予期せぬ事象等により契約解消となった場合は、当社の業績等に多大な影響を与える可能性があります。
(2)法的規制等について
当社グループは、貨物自動車運送事業、センター事業、アセット事業を主要な事業としております。これらの事業を営むにあたっては、貨物自動車運送事業法や倉庫業法などの許認可をはじめ、安全や環境に関する各種法的規制を受けております。そのため、各種法令の改正や新たな法令の制定があった場合には、それらに対応するための費用負担が生ずる可能性があります。また、当社グループは、法令順守に努めておりますが、何らかの事由により各種法令に違反した事実が認められた場合には、事業の停止や許可の取り消しなどの罰則を受ける場合があります。したがって、これらの事象が発生した際には当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)重大事故について
当社グループは、法令順守と安全最優先を原則とした安全方針を掲げ、安全研修の強化、事故撲滅運動の実施、事故防止対策などに取り組んでおりますが、万一重大な交通事故または労災事故を発生させ、得意先の信頼および社会的信用の低下、事業許可取消し等の行政処分、被害者からの損害賠償請求等を受けた場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)自然災害・感染症等について
当社グループは、大地震や風水害などの自然災害や、新型感染症の流行などの予期せぬ事態に備え、事業継続計画書(BCP)を策定し、事業の中断を早期に復旧させるための方針、体制、手順を定めるなどの対策を講じております。しかし、これらの事象により事業活動が停止したり、社会インフラの大規模な損壊、従業員の稼働率低下など、予想を超える事態が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(5)人財の確保・育成および労務費について
当社グループは、ドライバーや商品管理士など多様な人財を雇用し事業を営んでおります。人手不足が深刻化する中、貨物自動車運送事業およびセンター事業においては、従来から労働集約型産業の側面が強いことに加えて、物流ニーズの多様化・高度化への対応などから一定割合の労働力を要する環境にあります。当社グループは、定期採用や中途採用により人財確保を図るとともに、人財育成の強化、労働環境の整備等により定着率の向上に努めておりますが、これらの取り組みが不十分であった場合には適正なサービスの提供ができない事態となる可能性があります。また、人財の確保や育成を進める一方で、自動化や省人化を推進し作業生産性の向上を図ること等により労務費の抑制に努めておりますが、今後の法改正や労働需給の動向等により労務費が上昇した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(6)外部委託について
当社グループの貨物自動車運送事業は、運送の一部を外部の協力会社等に委託しております。また、センター事業においても、物流3PL事業者として倉庫内作業を外部の協力会社に委託する場合があります。当社グループは、これらの協力会社等との連携を強化し強固な信頼関係の構築に努めておりますが、需給状況や時季により委託費が上昇した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)施設等の稼働率について
当社グループのアセット事業は、倉庫保管および不動産賃貸を中心に展開しております。その施設、設備につきましては自社保有または賃借にて営業しており、これらの費用は固定費となっております。当社グループは、営業活動を推進し一定水準の稼働率維持に努めておりますが、景気変動、得意先の荷動き動向により稼働率が低下した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)エネルギーコストの動向について
当社グループは、貨物自動車運送事業をはじめとする物流全般の事業活動を展開しており、燃料価格や電気料金などのエネルギーコストが事業運営において重要な要素となっております。そのため、燃料価格や電気料金の上昇により、運送費用や施設運営費用が増加する可能性があります。当社グループは、運送の効率化、エコドライブの推進、LED照明設備の導入などの自助努力に加え、得意先に対して料金改定交渉を行うなど、エネルギーコストの変動に伴う影響の低減に努めておりますが、その費用増加分を運賃やその他料金に転嫁できない場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(9)為替レートの変動について
当社グループの海外の所在地別売上高比率は、2024年3月期13.3%、2025年3月期13.6%であります。換算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらないとしても、円換算後の価値に影響を及ぼす可能性があります。
(10)与信リスクについて
当社グループは債権管理委員会を定期的に開催し、売上債権の回収状況の把握や適正な与信限度額の設定を行っておりますが、今後の社会情勢、景気の動向ならびに企業収益状況の変化等により、売上債権回収が悪化した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(11)カントリーリスクについて
当社グループが事業活動を行う主要な市場である日本、ベトナム、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、および中華圏の政情不安、治安の悪化、経済環境等の動向につきましては、グループ各社との月次会議等により情報を収集し状況把握に努めておりますが、不測の事態が発生し社会・経済環境が急激に変化した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(12)減損会計について
当社グループは、所有する土地や建物、リース資産等を事業用不動産・倉庫設備として使用しておりますが、土地の時価下落、事業環境の変化による収益性の低下に伴い、固定資産の減損に係る会計基準および適用指針を適用し減損処理を行った場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(13)株価の下落について
当社グループは、中長期的な経済合理性や取引先との総合的な関係の維持・強化の観点から、事業の円滑な推進を図るため必要と判断する日本企業の株式を保有しております。保有の意義が薄れたと考えられる株式については、できる限り速やかに処分・縮減をしていく方針でありますが、これらの株式が日本経済の停滞等によって急激に下落し、保有株式の評価損が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(14)金利の上昇について
当社グループは、主に金融機関からの借入により資金を調達しております。キャッシュ・フローの改善や収益性の向上に取り組み、有利子負債の圧縮に努めておりますが、今後金利が大幅に上昇した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)新リース会計基準の適用について
当社グループは、アセット事業において一定規模の物流不動産をオペレーティングリース取引により賃借し、事業を展開しております。新リース会計基準の適用により使用権資産およびリース負債が著しく増加した場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(16)情報セキュリティについて
当社グループは、事業運営において顧客情報や取引情報、機密情報などの重要な情報を取り扱っております。これらの情報を保護するため、情報セキュリティ対策を講じ、システムの強化や従業員への教育を実施しております。しかしながら、サイバー攻撃や不正アクセス、情報漏洩、システム障害などの予期せぬ事象が発生した場合には、当社グループの事業運営に支障をきたす可能性があります。また、これにより顧客や取引先からの信頼が損なわれ、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(17)環境・気候変動について
当社グループは、物流業界に属しており、事業運営において環境規制や気候変動に関連するリスクに直面する恐れがあります。特に、温室効果ガス排出削減に関する規制の強化や、異常気象の頻発による物流網の混乱、施設の損壊などが発生した場合には、環境対応車両の導入やエネルギー効率の向上に向けた投資が必要となるリスクが考えられます。また、環境対応が不十分であると認識された場合、社会的信用の低下や取引先からの評価に影響を及ぼす懸念があります。これらの要因により、当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益やインバウンド需要の拡大に加えて、雇用・所得環境の改善が進んだことから、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。しかしながら、原材料価格の高騰に伴う物価の上昇、中国経済の減速、不安定な国際情勢等の影響が懸念されるなど、依然として先行き不透明な状況が続きました。
当社グループが属する物流業界につきましては、物価上昇による個人消費の停滞もあり全般的に荷動きが伸び悩む一方で、人件費や燃料費等のコスト上昇圧力が高まるなど、取り巻く環境は厳しいものでありました。さらに、2024年問題への対応として、法改正や業界再編により物流の効率化を目指す動きが一段と加速いたしました。
このような状況の中、当社グループは、中期経営計画(2023年度から2025年度まで)においてテーマとした「環境変化に適応した強固な体制づくり」「適切な利益を安定確保できる収益構造の確立」「社会課題解決への貢献」に取り組んでまいりました。
国内におきましては、前連結会計年度に開設した拠点の安定稼働に注力するとともに、得意先との取引深耕や料金交渉に継続して取り組み、収益力の向上を図りました。また、2024年4月に開設した「海老名南営業所」(神奈川県海老名市)をはじめ既存拠点への得意先誘致を軸に営業活動を推進したほか、得意先ニーズに応え2025年3月に冷凍冷蔵機能を備える「大阪茨木営業所」(大阪府茨木市)を開設するなど、3PL事業の強化に取り組みました。
海外におきましては、中国経済の減速等を受け、輸出入関連貨物の取り扱いが低調となる状況を踏まえて、各進出地における国内需要の獲得を推進し事業の拡大を図りました。同時に業務の効率化や費用低減に努め、利益率の改善に取り組みました。また、台湾において化粧品製造の品質・安全性に関する国際規格である化粧品GMP認証を取得するなど、物流サービスの強化に向けた施策を実施いたしました。
これらの取り組みにより、営業収益につきましては、新規得意先との取引開始に伴い低温物流事業が拡大したこと、新たな業務の受託により取扱量が増加したこと、さらにベトナムやタイの現地通貨に対して為替が円安水準となり収益を押し上げたことなどから、増収となりました。営業利益および経常利益につきましては、人件費やシステム関連費用等のコストが増加したものの、営業収益の拡大による利益の増加に加えて、倉庫内作業の効率化が進展しセンター事業の利益率が向上したこと、ベトナムにおいて収益構造の改善が進んだことなどから、増益となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、収益性が低下した事業所等に関する固定資産の減損損失を特別損失に計上したことから、減益となりました。
その結果、当連結会計年度の営業収益は660億1百万円(前連結会計年度比4.8%増)、営業利益は12億28百万円(同20.8%増)、経常利益は11億56百万円(同16.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4億61百万円(同7.7%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、経営管理手法の見直しを行い、当連結会計年度より、「貨物自動車運送事業」に区分していた引越移転および施工に関する運送業務を「その他事業」に区分する引越移転事業または施工関連事業にそれぞれ含める取り扱いといたしました。これに伴い、以下は前年同期の数値を変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。
貨物自動車運送事業
新規得意先の獲得に加えて、スポット輸送需要の積極的な取り込みが奏功し、貨物輸送量が増加したこと、運送コストの上昇に対応するため料金改定を進めた効果があったこと、さらにベトナムにおいて自社車両の輸送効率が向上したことなどから、増収増益となりました。
その結果、営業収益は、259億80百万円(前連結会計年度比4.5%増)、セグメント利益は、19億57百万円(同5.7%増)となりました。
当事業の営業収益は、当社グループ営業収益全体の39.4%を占めております。
センター事業
前連結会計年度に開設した拠点において冷凍冷蔵食品の物流センター業務を開始したほか、新たな業務の受託や得意先の事業拡大に伴い入出荷作業量が増加したこと、また倉庫内作業の効率化が進展したことなどから、増収増益となりました。
その結果、営業収益は、157億35百万円(前連結会計年度比9.9%増)、セグメント利益は、9億63百万円(同221.5%増)となりました。
当事業の営業収益は、当社グループ営業収益全体の23.8%を占めております。
アセット事業
営業収益につきましては、拠点数の増加に伴い保管面積が拡大したこと、営業活動の強化により新規得意先の保管貨物を獲得したことなどから、増収となりました。一方、セグメント利益につきましては、得意先の移管や倉庫改修工事の実施等により既存倉庫に空きスペースが生じ、稼働率が低下したことなどから、減益となりました。
その結果、営業収益は、174億92百万円(前連結会計年度比3.1%増)、セグメント利益は、8億99百万円(同14.4%減)となりました。
当事業の営業収益は、当社グループ営業収益全体の26.5%を占めております。
その他事業
施工関連事業やベトナムにおける旅客自動車運送事業は堅調に推移したものの、得意先との取引終了により構内作業請負事業が縮小したこと、海外各社において輸出入関連事業が伸び悩んだことなどから、減収減益となりました。
その結果、営業収益は、67億92百万円(前連結会計年度比0.3%減)、セグメント利益は、9億96百万円(同2.8%減)となりました。
当事業の営業収益は、当社グループ営業収益全体の10.3%を占めております。
財政状態の概況は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ、現金及び預金が4億55百万円増加ならびに受取手形、営業未収入金及び契約資産が4億72百万円増加したこと等により、160億42百万円(前連結会計年度末比10億89百万円増)となりました。固定資産は、建設仮勘定が6億54百万円増加、敷金及び保証金が2億26百万円増加したものの、土地が1億89百万円、リース資産が7億74百万円減少したこと等により327億85百万円(前連結会計年度末比1億30百万円減)となりました。これらにより、総資産は488億27百万円(前連結会計年度末比9億58百万円増)となりました。
(負債)
流動負債は、営業未払金が3億18百万円、1年内返済予定の長期借入金が5億67百万円増加したこと等により、183億71百万円(前連結会計年度末比12億67百万円増)となりました。固定負債は、長期借入金が2億35百万円、リース債務が4億82百万円減少したこと等により148億61百万円(前連結会計年度末比9億95百万円減)となりました。これらにより、負債合計は332億32百万円(前連結会計年度末比2億72百万円増)となりました。
(純資産)
純資産は、利益剰余金が3億52百万円および為替換算調整勘定が5億15百万円増加したこと等により、155億94百万円(前連結会計年度末比6億86百万円増)となり、自己資本比率は31.8%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて4億9百万円増加し、当連結会計年度末は38億7百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、25億34百万円(前連結会計年度は32億77百万円の資金の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が8億24百万円および減価償却費が23億94百万円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、13億41百万円(前連結会計年度は20億4百万円の資金の減少)となりました。これは主に固定資産の取得による支出が15億99百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、8億92百万円(前連結会計年度は10億57百万円の資金の減少)となりました。これは主に長期借入れによる収入が42億50百万円あったものの、長期借入金の返済による支出が39億25百万円およびリース債務の返済による支出が10億66百万円あったことによるものであります。
③輸送・保管能力の状況
a.貨物自動車運送事業
輸送能力
|
2025年3月31日現在 |
|
区分 |
保有台数(台) |
前年同期比(%) |
積載トン数(t) |
前年同期比(%) |
|
普通車 |
359 |
102.3 |
2,952.7 |
101.5 |
|
小型車 |
388 |
103.2 |
463.4 |
103.2 |
|
特殊車 |
158 |
101.9 |
2,299.5 |
101.3 |
|
軽貨物 |
44 |
97.8 |
15.4 |
97.8 |
|
合計 |
949 |
102.4 |
5,731.1 |
101.6 |
b.アセット事業
保管能力
|
2025年3月31日現在 |
|
セグメントの名称 |
所有倉庫 |
借用倉庫 |
合計 |
||||
|
棟数(棟) |
面積(㎡) |
棟数(棟) |
面積(㎡) |
棟数(棟) |
面積(㎡) |
前年同期比 (%) |
|
|
アセット事業 |
28 |
128,975 |
102 |
1,102,095 |
130 |
1,231,071 |
102.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績につきましては、「3(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
また、現行の中期経営計画2025(2023年度から2025年度まで)の重点施策「収益力の向上」「強固な物流サービスの構築」「サステナビリティの推進」「人財力の強化」「グループ経営基盤の強化」に関する当連結会計年度の取り組み状況は以下のとおりであります。
(収益力の向上)
事業環境が変化する中で安定した物流サービスを提供していくため、適切な収益の確保に取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、得意先との料金交渉に継続して取り組み、収益構造の改善を図りました。また、事業拡大に向けて、前連結会計年度に開設した「横浜港北センター」において低温物流事業を開始したほか、拠点展開を進め2024年4月に「海老名南営業所」、2025年3月に「大阪茨木営業所」を開設するなど、3PL事業の強化に取り組みました。海外につきましては、ベトナムにおいて教育関連事業を開始し、事業領域の拡大を図りました。また、台湾では化粧品製造の品質・安全性に関する国際規格である化粧品GMP認証を取得するなど、物流サービスの強化に向けた施策を実施いたしました。
(強固な物流サービスの構築)
慢性的な人手不足や2024年問題等の課題を踏まえ、物流ニーズに応え続けられる体制づくりを進めております。当連結会計年度におきましては、出資先であるハコベル株式会社との協業により、新たな配送サービス「ロジキャリー」を開始し輸送体制を強化いたしました。また、物流現場の効率化に向けて先端技術を活用した自動化・省人化設備の導入を推進いたしました。安全面につきましては、リスクアセスメント活動や協力会社も含めた安全対策の推進により、現場力の強化を図りました。
(サステナビリティの推進)
基本理念に基づき、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを推進しております。当連結会計年度におきましては、サステナビリティマニュアルを制定したほか、各種リスクに関する対応協議、国内外で社会貢献活動を実施いたしました。また、レポートを作成しサステナビリティに関する取り組み状況を開示いたしました。
(人財力の強化)
あらゆる活動の根幹であり競争力の源泉となる人財力の強化に取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、多様なテーマの研修を実施し人財育成を推進するとともに、従業員満足度調査の結果に基づいた施策の実行によりエンゲージメントの向上を図りました。また、人手不足に対応するため多様な人財の確保に向けた取り組みを進めました。
(グループ経営基盤の強化)
環境変化に適応していくため、強固かつ健全なグループ体制づくりに取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、新基幹システムが稼働を開始したほか、グループ内の資本関係の整理や政策保有株式の縮減を進めました。また、2027年度から適用されることとなった新リース会計基準の対応に向け準備に着手いたしました。
②資本の財源および資金の流動性
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.契約債務
2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
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年度別要支払額(千円) |
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契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
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短期借入金 |
5,820,770 |
5,820,770 |
- |
- |
- |
|
社債 |
700,000 |
200,000 |
400,000 |
100,000 |
- |
|
長期借入金 |
11,995,956 |
4,217,527 |
5,204,719 |
2,381,710 |
192,000 |
|
リース債務 |
4,570,967 |
1,091,041 |
2,036,902 |
913,746 |
529,276 |
上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
c.財務政策
当社グループは、運転資金につきましては、内部資金の活用および金融機関からの短期借入金により調達しております。また、設備資金につきましては、内部資金の活用および金融機関からの長期借入金を基本としておりますが、金利動向や市場環境などを考慮しつつ、必要な場合には社債などにより資金調達もおこなっております。2025年3月31日現在、長期借入金の残高は11,995,956千円、社債の残高は700,000千円であります。
③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。