第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 

前連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

増減額 /  増減率

売上高     (億円)

17,122

15,043

△2,078 / △12.1%

営業損益    (億円)

23

25

2 /   10.1%

経常損益    (億円)

362

254

△108 / △29.9%

親会社株主に帰属する
当期純損益   (億円)

△1,704

52

1,757 /    - %

 

為替レート

\120.62/US$

\108.57/US$

△\12.05/US$

船舶燃料油価格 ※

US$265/MT

US$284/MT

US$19/MT

 

※平均補油価格

 

 当期における世界経済は、米国や中国等を中心に、概ね昨年後半より勢いを増す傾向となりました。米国経済は、堅調な雇用・所得環境を背景に改善傾向が続く個人消費に牽引され、拡大基調を維持しました。欧州経済は、底堅く推移する個人消費に支えられ、緩やかながら安定的な成長が続きました。中国経済は、底堅い個人消費を背景に減速傾向が一服していましたが、今年に入り加速し始めた固定資産投資等にも支えられ、期後半からは回復に転じました。わが国では、景気回復の足踏み状態が続きましたが、足下では伸び悩んでいた個人消費等で持ち直しの兆しも見えてきました。

 

 海運市況のうち、ドライバルク船市況は、西豪州の主要荷主による集中的な船腹手配や中国の石炭輸入量増加等を背景に前期第4四半期の記録的低水準を脱しました。その後は上値の重い展開が続きましたが、秋口以降、ブラジル主要港からの堅調な鉄鉱石出荷や北米産穀物の出荷増加等を追い風に再度上昇に転じ、概ね回復基調を維持しました。原油船市況は、船腹供給が増加する中、季節的な需要の変動や西アフリカ産油国の政情等により期中で大きく変動しました。通期平均では、高騰した前期を下回ったものの、堅調でした。コンテナ船については、北米、欧州、南米の各航路において需給環境の改善を背景にスポット運賃市況の回復が見られましたが、前期の市況低迷の影響を受ける形で北米航路を中心とした年間契約運賃が期初に大幅に下落したこと等により、厳しい事業環境が続きました。

 

 当期の対ドル平均為替レートは、前期比\12.05/US$円高の\108.57/US$となりました。また、当期の船舶燃料油価格平均は、前期比US$19/MT上昇しUS$284/MTとなりました。

 

 以上の結果、当期の業績につきましては、売上高1兆5,043億円、営業損益25億円、経常損益254億円、親会社株主に帰属する当期純損益は52億円となりました。

 

 セグメント毎の売上高、セグメント損益(経常損益)及び概況は次のとおりです。

上段が売上高(億円)、下段がセグメント損益(経常損益)(億円)

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

増減額 /  増減率

不定期専用船事業

8,456

7,444

△1,011 / △12.0%

548

390

△158 / △28.9%

コンテナ船事業

7,211

6,225

△986 / △13.7%

△298

△328

△30 /    - %

フェリー・内航RORO船事業

433

421

△11 /  △2.8%

43

45

1 /    2.8%

関連事業

1,269

1,175

△94 /  △7.4%

101

123

21 /   21.3%

その他

133

132

△0 /  △0.6%

35

18

△17 / △49.0%

 (注)売上高にはセグメント間の内部売上高又は振替高が含まれております。

 

① 不定期専用船事業

<ドライバルク船>

 ケープサイズ市況は、期初、西豪州の主要荷主による集中的な船腹手配等を背景に前期第4四半期の記録的低水準を脱しました。その後は上値の重い状態が続きましたが、秋口以降、ブラジル主要港からの堅調な鉄鉱石出荷や資源価格の上昇に伴う市場センチメントの好転等に支えられ上昇に転じました。年末年始の一時的な低迷を経て、2月下旬からは再び鉄鉱石出荷の増加やFFA(運賃先物取引)の改善等を追い風に急上昇し、期末には一時およそ1年8か月ぶりに2万ドル/日を超えました。この結果、通期平均市況は前期を上回る9千ドル台/日となりました。パナマックス船型以下の中小型船市況も、期初、中国による石炭輸入量の増加等を背景に低迷を脱し、秋口以降は北米産穀物の出荷増加等が牽引役となり、上昇しました。年末年始の一時的下落を経て、中国旧正月明けからは南米産穀物の出荷が市況を牽引しています。

 市況はなお回復の途上にありますが、一方でドライバルク船部門ではケープサイズバルカーのスポット運航船の縮小、並びに中小型バルカーに関するビジネスモデルの抜本的な見直しを根幹とする構造改革を進めました。この結果、前期比で損益は大幅に改善し、当期において黒字を計上しました。

 

<油送船・LNG船・海洋事業>

 原油船では新造船の供給が前期を上回り、市況は、夏場の荷動き減少や内乱に伴うナイジェリアからの原油出荷停止等により、9月下旬頃まで下落傾向を辿りました。秋口以降は、同国からの原油出荷の再開や冬場の需要増に支えられて大幅に改善しましたが、その後、春先にかけて軟化しています。通期平均市況は、高騰した前期を下回ったものの、堅調でした。石油製品船市況は、植物油等の荷動き低迷や新造船の竣工が続く中、東西裁定取引の低迷や、世界的な石油製品在庫の余剰を背景とした製油所マージンの悪化等が重荷となり、通期平均で前期の水準を下回りました。LPG船市況も、新造船竣工による供給圧力の増加に加え、LPG価格の地域差縮小を背景とした東西裁定取引の抑制や新パナマ運河開通による長距離トレードの減少等により、前期と比べ低調に推移しました。

 このような事業環境下において油送船部門は、前期に引き続き市況エクスポージャーの縮減や長期契約の安定的な履行に注力すると共に、海外顧客向け原油船等の新規契約の獲得にも取り組みました。また、プール運航による運航効率の改善やコスト削減にも継続して努めた結果、前期比で大幅な減益となったものの、当期において黒字を計上しました。

 LNG船部門は、長期契約からの安定収益を引き続き確保する中、世界初の大型エタン船を含む新規竣工船の稼働開始もあり、前期比で増益となりました。また、海洋事業部門は、新規開始の1基を含むFPSOの順調な稼働により、前期比で増益となりました。

<自動車船>

 完成車の荷動きは、米国及び欧州向けが堅調に推移しましたが、一方で資源価格下落等を背景に経済不振が続く資源国・新興国向けは低迷しました。こうした中、自動車船部門は、減船や、トレードパターンの変化に対応した運航効率の改善に取り組んだものの、前期比で大幅な減益となりました。

 

② コンテナ船事業

 北米航路のスポット運賃市況は、第1四半期に記録的な安値水準まで下落したものの、アジア出し荷動きが過去最高のペースで堅調に推移する中、第2四半期以降概ね上昇基調を維持しました。欧州航路のスポット運賃市況は、夏場まで上昇した後に一旦調整局面を迎えたものの、冬場に入ってから旺盛な需要を背景に再上昇するなど、期を通じては堅調なアジア出し荷動きに支えられ上昇基調を辿りました。南米航路においては、第1四半期よりスポット運賃は大きく上昇し、期を通じても概ね高水準で推移しました。アジア域内航路においては、荷動きが伸び悩み、スポット運賃市況は低迷しました。一方で年間契約運賃が、前期のスポット運賃市況低迷の影響を受け、北米航路を中心に多くの航路で期初に大幅な下落となったことが、期を通じて重荷となりました。

 このような事業環境下、コンテナ船部門は、構造改革による船舶コストの低減や、営業力強化による消席率の改善に加え、イールドマネジメント強化による空コンテナ回送費等の運航コストの削減に継続的に取り組んだ結果、第3四半期以降は前年同期比で損益が改善しましたが、通期では若干損失が拡大しました。

 

③ フェリー・内航RORO船事業

 フェリー・内航RORO船については、トラックドライバーの不足や高齢化、労務管理の強化を背景に、トラックでの長距離輸送をフェリー輸送へ切り替えるモーダルシフトの流れが更に加速し、荷動きは堅調に推移しました。旅客については熊本地震の影響を受けた航路も一部ありましたが、燃料油価格の低下にも支えられ、フェリー・内航RORO船事業全体では前期と同水準の利益を確保しました。

 

④ 関連事業

 客船事業は、にっぽん丸の好調な集客により前期比で増益となりました。不動産事業においても、首都圏を中心に堅調な賃貸オフィスマーケットに支えられ、当社グループの不動産事業の中核であるダイビル㈱の売上が増加したこと等により、前期比で増益となりました。その他曳船や商社等の業績も総じて堅調に推移し、関連事業セグメント全体では前期比で増益となりました。

 

⑤ その他

 主にコストセンターであるその他の事業には、船舶運航業、船舶管理業、貸船業、金融業、造船業などがありますが、前期比では減益となりました。

 

(2) キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ273億円増加し、1,868億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によって得られた資金は176億円(前年同期比1,915億円の収入減)となりました。これは主に減価償却費が871億円となった一方、引当金の減少額が200億円、関係会社株式売却損益が199億円、法人税等の支払額が85億円となったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によって支出された資金は739億円(前年同期比472億円の支出増)となりました。これは主に船舶を中心とした有形及び無形固定資産の売却による収入が713億円、投資有価証券の売却及び償還による収入が277億円となった一方、有形及び無形固定資産の取得による支出が1,431億円、長期貸付による支出が213億円となったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によって得られた資金は871億円(前年同期は1,487億円の支出)となりました。これは主に長期借入れによる収入が2,390億円、社債の発行による収入が100億円となった一方、長期借入金の返済による支出が1,192億円、社債の償還による支出が450億円となったことによるものであります。

2【生産、受注及び販売の状況】

 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)は「第1 企業の概況 3.事業の内容」に記載したとおり、5つの事業区分からなり、提供するサービス内容も、多種多様であります。従って、受注の形態、内容も各社毎に異なっているため、それらをセグメント毎に金額、数量で示しておりません。

(1) セグメントの売上高

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

不定期専用船事業

744,455

88.0

コンテナ船事業

622,531

86.3

フェリー・内航RORO船事業

42,143

97.2

関連事業

117,543

92.6

その他

13,227

99.4

      計

1,539,901

88.0

     調整額

(35,527)

     合 計

1,504,373

87.9

(注)記載金額には消費税等は含まれておりません。

 

(2) 前事業年度及び当事業年度の営業実績(提出会社)

  部門別営業収益及び構成比

部門

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

海運業

 

 

 

 

不定期専用船部門

429,751

35.8

397,063

37.7

油送船/LNG船部門

160,663

13.4

140,763

13.4

定期船部門

601,853

50.1

506,195

48.1

その他

7,139

0.6

7,228

0.7

その他事業

1,111

0.1

949

0.1

1,200,518

100.0

1,052,200

100.0

(注)記載金額には消費税等は含まれておりません。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社は、グループ企業理念(平成13年4月策定)において、以下の通り3つの柱を掲げております。

 

<商船三井グループ企業理念>

①顧客のニーズと時代の要請を先取りする総合輸送グループとして世界経済の発展に貢献します

②社会規範と企業倫理に則った、透明性の高い経営を行ない、知的創造と効率性を徹底的に追求し企業価値を高めることを目指します

③安全運航を徹底し、海洋・地球環境の保全に努めます

 

(2)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社は、平成28年度に単年度経営計画を策定し、構造改革の完遂、今後の成長戦略の基盤構築に取り組みました。その結果、当期連結経常収支の黒字化を達成しました。構造改革で実現した船隊のコスト競争力を基盤とし、今年度以降の収益積上げを図るため、当社は今年度から始まる新しい経営計画として「ローリングプラン2017」を策定しました。

  新経営計画「ローリングプラン2017」策定に当たっては、経営環境の変化が著しい状況下、商船三井グループの10年後のありたい姿と中長期的な経営の方向性を定め、それに基づき3か年及び長期的な事業戦略を策定する形を取りました。リソース配分について選択と集中を行い、財務体質の改善とともに事業ポートフォリオの変革を図っていきます。

 

<商船三井グループの10年後のありたい姿>

世界中で「お客様にとって使い勝手がよくストレスフリーなサービス」を提供し、「いつもお客様の傍にいる強くしなやかな存在」をめざす。

・環境・エミッションフリー事業をコア事業のひとつに育てる。

・相対的に強い事業の選択と集中を行い、「競争力No.1事業の集合体」になる。

 

<ありたい姿達成のための戦略>

①投資・事業戦略

    ・当面新規投資を優先度の高い案件に絞り、投資と財務規律の両立を図る。

    ・海運事業においては、安定利益が見込める事業分野に絞った効果的な経営資源の投入を行う。

・ロジスティクス事業、フェリー事業、海洋事業等の海運関連部門では、成長の見込める事業分野の拡大・強化を目指す。

②環境・エミッションフリー事業への取組み

  環境規制の強化、環境意識の高まりを背景に、外航海運が排出する温室効果ガスのオフセットを図りつつ、成長する再生可能エネルギー事業での収益確保のため、環境・エミッションフリー事業を推進・育成する。

③働き方改革の推進

 役職員が生き生きと働ける企業風土で人的競争力No.1の企業グループを目指し、技術とビジネスモデルのイノベーションを実現する。

海技力強化、ICT戦略推進、技術開発に向けた取組み

「海技力強化」 海技力を生かしたサービス提供

「ICT戦略推進」 洋上の見える化(安全運航と最適運航)と顧客への付加価値提供

「技術開発」  “船舶維新NEXT”プロジェクト推進(高度安全運航支援技術・環境負荷低減技術)

<中期的利益水準・財務指標>

 

 

中長期的にイメージする水準

2027年目標

経常利益

800~1,000億円

1,500~2,000億円

ROE

8~12%

ギアリングレシオ

2.0倍以下

1.0倍

 

また、平成28年10月に合意した日本郵船株式会社、川崎汽船株式会社との定期コンテナ船事業統合については、平成30年4月の統合新会社による円滑な営業開始に向け協議・準備を進め、統合によるシナジー効果が早期に発揮されるよう取り組みます。あわせて、統合新会社の収益基盤確立のためにも、同事業の損益回復に努めます。また、当社においては、定期コンテナ船事業統合後を見据えた国内外拠点網の再構築をはじめ、統合後の当社グループの営業基盤強化に向けた取組みを着実に進めます。

 

なお、当社グループは、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国、欧州その他海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が米国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。

4【事業等のリスク】

当社グループの主たる事業である海上輸送の分野において、世界各国の経済情勢やテロ・戦争その他の政治的、社会的な要因、自然現象・災害、及び伝染病、ストライキ、その他の要因による社会的混乱等により、予期せぬ事象が発生した場合には、関連の地域や市場において、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

この他に当社グループの事業活動や業績、株価及び財務状況等において、悪影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、次のようなものがあります。

 

(1) 海運市況の変動

当社グループの主たる事業分野である海運業の運賃・傭船市況は、世界各国の景気動向や商品市況、政治・社会的な要因及び自然現象・災害等の影響、海上荷動き量や船腹供給量等の増減を受けた船腹需給の不均衡等の影響により、大きく変動する可能性があります。当社グループは、海運市況の変動リスク耐性を高めるため中長期契約等の安定利益の確保及び運航コスト削減に努めておりますが、大幅な市況下落は当社グループの損益に悪影響を及ぼします。

 

(2) 為替レートの変動

当社グループの事業では、売上のうち、米ドル建ての海上運賃収入が多くを占めております。費用についても、船舶資本費、燃料費、海外における荷役費・一般管理費等、米ドル・現地通貨建ての費用があります。費用のドル化を進めるとともに、通貨ヘッジ取引を行い、米ドルの為替レート変動による悪影響を最小限に止める努力をしておりますが、外貨建て収入が費用を上回っていることにより、他の通貨に対する円高(特に米ドルに対する円高)は当社グループの損益に悪影響を及ぼします。また、海外子会社が保有する船舶資産やそれにかかわる負債等、外貨建てのものを有するため、円建ての連結貸借対照表においては、換算時の為替レートにより、元の現地通貨における市場価値が変わらなかったとしても、計上する換算価値が影響を受ける可能性があります。

 

(3) 船舶燃料油価格の変動

当社グループの事業では、船舶運航のための燃料の調達が不可欠なものとなっております。燃料費については、燃料ヘッジ取引により調達コストの平準化・削減に努めておりますが、その上昇は当社業績へ悪影響を及ぼします。船舶燃料油の市場価格は概ね原油価格に連動しており、世界の景気動向、産油地域の情勢、米国を中心とする在庫水準、投機資金の流入等により影響を受ける可能性があります。

 

(4) 金利の変動

  当社グループの事業では、船舶等の新設や更新のために、継続的な設備投資を行っております。有利子負債の削減に努めていますが、運転資金及び設備資金は主として外部借入れにて行っております。固定金利での借入れや金利スワップ取引により金利の固定化を進めていますが、変動金利で調達している資金については、金利の変動の影響を受けます。また、金利の変動により、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。

 

(5) 公的規制

  当社グループの主たる事業分野である外航海運業では、設備の安全性や船舶の安全運航のために、国際機関及び各国政府の法令、船級協会の規則等様々な公的規制を受けております。また、その他の事業分野も含め、事業を展開する各国において、事業・投資の許可をはじめ、運送、通商、独占禁止、租税、為替規制、環境、各種安全確保等の法規制の適用を受けております。これらの規制を遵守するためコスト増加となる可能性があり、当社グループの活動が制限され、事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 取引先との関係

当社グループが船舶を調達するにあたっては、自らが保有するほか第三者からの傭船による場合があります。また船舶の投入先については、特に鉄鋼原料船、油送船、LNG船部門等において、顧客との中長期契約に基づく安定利益の積み上げを重視しております。それらの取引先の経営状態の悪化や船舶を投入予定のプロジェクトの遅延等により、契約の全部または一部が履行されない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの顧客は、製造業、小売業、エネルギー関連等多岐にわたっております。これら取引先の開発、生産、販売計画等の動向により、当社グループの事業及び業績が影響を受ける可能性があります。

 

(7) 船舶の運航

  当社グループは、「安全運航と海洋・地球環境の保全」を企業理念に掲げ、独自の「MOL安全管理制度」を確立し、船員教育や訓練システムを充実させて事故を起さないよう万全の体制をとっております。しかしながら、常時約850隻(短期傭船等を含む)の船舶を世界中に運航しており、万一洋上で不慮の事故、特に油濁事故及びそれに起因する海洋汚染が起こった場合は事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは運航する船舶への海賊・テロ行為について対策を講じておりますが、万一襲撃を受けた場合は事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づいて繰延税金資産の回収可能性を評価しております。その見積額が減少し、将来において繰延税金資産の一部又は全部が回収できないと判断した場合、或いは税制変更等による税率の変更があった場合、繰延税金資産を取崩し、税金費用を計上することとなり、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(9) 投資有価証券における評価損の影響

当社グループは、投資有価証券のうち時価のあるものについて、期末最終営業日の市場価格による時価評価を行っております。その結果、株式市況の変動等により投資有価証券評価損を計上し、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(10) 船舶等の売却等における影響

当社グループは、海運市況の動向や船舶の技術革新による陳腐化、又は公的規制の変更等による使用制限等により、保有する船舶を売却する場合や傭船する船舶の傭船契約を中途解約する場合があります。また、海運市況の悪化に伴い、保有する船舶の固定資産の収益性が低下し、減損損失を計上する可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

 なお、上記は当社グループの事業その他に関し、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、ここに

記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。また、将来の予測等に関する記述は、現時点で入手された情報に基づき合理的と判断した予想であり、潜在的なリスクや不確実性その他の要因が内包されております。従い、実際の業績は、見通しと異なる結果となる可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

(1) ハイブリッド・ローンによる資金調達

  当社は、平成28年9月30日開催の取締役会における決議に基づき、同日付けでハイブリッド・ローン(以下「本ローン」)による1,000億円の資金調達に関する契約を以下の通り締結し、同年10月7日に実行致しました。

 

① 当社は、平成28年度に、ドライバルク船とコンテナ船を中心とした構造改革の完遂を含む単年度経営計画に取り組み、成長軌道への早期回復と次期経営計画に向けた収益基盤の強化、また、安定成長を支える財務基盤の再構築に注力しましたが、成長戦略と財務健全性の両立を図ることを目的として、本ローンによる資金調達の実施を決定致しました。

 本ローンは、格付機関により一定の資本性が認められることで、株式の希薄化無しに実質的な当社の財務体質の強化に寄与します。

 

② 本ローン概要

イ.調達額      1,000 億円

ロ.契約締結日    平成28年9月30日

ハ.実行日      平成28年10月7日

ニ.返済期日     平成88年10月7日

  但し、借入実行日から5年を経過した場合および貸付人と合意した場合等において本ローンの元本の一部または全部を期限前弁済することが可能

ホ.資金使途     LNG・海洋事業を中心とする船舶設備資金のほか、事業競争力強化に向けた必要資金など当社の収益基盤強化のための成長投資に活用

ヘ.特約       ・当社について清算手続、破産手続、会社更生手続・民事再生手続等の開始が決定された場合、または日本以外でこれらに準ずる手続が開始された場合、本ローンの貸付人は、一般債権者が全額の弁済を受けた後に本ローンの弁済を受けることができます。

 ・本ローンに係わる契約は、いかなる意味においても、一般債権者に対して不利益を及ぼす内容に変更することは認められておりません。

ト.利息に関する制限 本ローンの利息の支払については、当社の裁量により、または契約に規定する一定の事由が発生した場合に、全部または一部の支払が繰り延べられる支払制限条項を規定しております。

 

(2) 定期コンテナ船事業統合

  当社は、平成28年10月31日開催の取締役会における決議に基づき、川崎汽船株式会社及び日本郵船株式会社と関係当局の許認可等を前提として、新たに定期コンテナ船事業(海外ターミナル事業を含む)統合を目的とした合弁会社を設立し、定期コンテナ船事業を統合すること(以下「本統合」)について事業統合契約及び株主間契約を締結致しました。概要は以下の通りであります。

 

① 本統合の概要

 定期コンテナ船事業は成長産業であるものの、ここ数年は貨物需要の成長が鈍化する一方で、新造船竣工による船腹需要が増加し、需給バランスが大幅に悪化しました。その結果、市況の低迷が続き、収益の安定的確保が困難な状況となっています。これを受けて、昨年来、業界内では買収、合併など、運航規模拡大により競争力を高める動きが顕在化し、業界の構造自体が大きく変わろうとしています。この様な事業環境下、当社は定期コンテナ船事業を安定的かつ持続的に運営するために、同事業の統合を行うことを決定致しました。

 

② 合弁会社の概要(予定)

イ.出資比率     当社     31%

 川崎汽船   31%

 日本郵船   38%

ロ.出資額      約3,000億円(船舶、ターミナル株式の現物出資等を含む)

ハ.事業内容     定期コンテナ船事業(海外ターミナル含む)

ニ.船隊規模     約140万TEU(※)

 注)平成28年10月時点での3社船隊規模合計(発注残を除く)

 (※TEU:Twenty-foot Equivalent Unit, 20フィートコンテナ換算)

 

③本統合の日程

イ.契約締結日    平成28年10月31日

ロ.合弁会社設立日  平成29年7月1日(予定)

ハ.サービス開始日  平成30年4月1日(予定)

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、主に船舶を対象に、以下の3点を基本方針としています。

1.環境保全・省エネルギーの技術で、経済性との両立が期待できるもの

2.安全性・信頼性の向上に寄与するもの

3.新しい輸送技術・輸送システムに関するもの

具体的には、「船舶」、「コンテナ・物流」、「新輸送技術」、「その他」の4分野について、主に当社技術部及び海上安全部の各部門がそれぞれの研究開発テーマに取り組んでおります。

近年は省エネ・環境対策技術の開発に特に力を入れております。当連結会計年度における主たる研究開発としては、「高度安全運航支援技術」の研究開発、船舶の風圧抵抗低減、燃料電池を使用したハイブリッド電力供給システム、環境に優しい機関システム、機関状態監視技術、パワープラントの燃焼状態改善による燃費向上などの「環境負荷低減技術」の研究開発、燃料油性状の評価手法の研究などが挙げられます。

また技術研究所では、世界各地で補油された燃料油や船内で使用される機器潤滑油の性状を継続的に分析することで、低質油や潤滑油劣化に起因する機関事故の防止に成果を上げております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は181百万円となっております。

なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 財務戦略

①資金調達の方針

当社は事業活動を支える資金調達に際して、調達の安定性と低コストを重視しております

また、金利変動リスクや為替変動リスク等の市場リスクを把握し、過度に市場リスクに晒されないように金利固定化比率や借入通貨構成を金利スワップや通貨スワップ等の手法も利用しながら、リスクを許容範囲に収めるようにしております。

 

資金調達の多様性

当社は調達の安定性と低コスト調達を実現するために、調達方法の多様化や調達期間の分散を進めております。

運転資金並びに船隊整備に必要な設備資金は、直接・間接調達に加え、従来より船主からの傭船といった手法も活用し、有利子負債を過度に増加させることなく、低コストかつ安定的な船腹の整備を行っております。

直接調達については、2016年度に新規の社債発行は行いませんでしたが、2017年3月末の国内普通社債発行残高は945億円、ユーロ米ドル建取得条項付転換社債型新株予約権社債発行残高は5億米ドルとなっております。円滑な直接調達を進めるため、当社は国内2社及び海外1社の格付機関から格付を取得しており、2017年6月27日現在の発行体格付は格付投資情報センター(R&I)「BBB」、日本格付研究所(JCR)「A-」、ムーディーズ(Moody's)「Ba1」となっております。また、短期債格付(CP格付)についてはR&I/JCRより
「a-2」/「J-1」を取得しております。

当社は1,000億円の社債発行登録や1,000億円のCP発行枠を設定しているほか、政府系や内外金融機関との幅広い取引関係をベースとする銀行借入により、運転資金需要や設備資金需要にも迅速に対応できるものと考えております。

更に、安定的な経常運転資金枠の確保・緊急時の流動性補完を目的に国内金融機関から円建て及び米ドル建てのコミットメントラインを設定しており、資金の流動性確保に努めております。

 

グループ資金の効率化

当社及び主要子会社間でキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化を図ることにより、外部借入の削減に努めております。

 

(2) 損益状況

 売上高は、円高やコンテナ船・油送船等における市況悪化により、前連結会計年度に比べ2,078億円減収の1兆5,043億円となりました。

 経常利益は、構造改革効果によるドライバルク船の大幅改善があったものの、円高に加え油送船の市況低下や自動車船の事業環境悪化の影響がこれを上回り、前連結会計年度に比べ108億円減益の254億円となりました。不定期専用船事業は、構造改革の推進により前年度赤字であったドライバルク船が大幅改善し黒字化を達成、また、LNG船・海洋事業部門においても安定収益を引き続き確保する中、世界初の大型エタン船を含む竣工船の稼働開始もあり増益となったものの、前年度高い水準で推移した油送船市況が下落、自動車船においても、資源価格下落等を背景に経済不振が続く資源国・新興国向けが低迷し損益が悪化した結果、前連結会計年度に比べ158億円減益の390億となりました。コンテナ船事業は、営業力強化による消席率の改善とイールドマネジメントの深化が効果をあげたものの、期初の低市況下で決めた年間契約が期を通じて重荷になり、前連結会計年度に比べ30億円損失が拡大し、328億円の赤字となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は52億円の黒字となりました。経常利益が108億円の減益となりましたが、前連結会計年度ではドライバルク船及びコンテナ船事業において構造改革関連特別損失を計上したこと等もあり、前連結会計年度に比べ1,757億円の損益改善となりました。

 

(3) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ20億円減少し、2兆2,175億円となりました。これは主に船舶が減少したことによるものです。

負債は、前連結会計年度末に比べ387億円減少し、1兆5,339億円となりました。これは主に短期社債が減少したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べ366億円増加し、6,836億円となりました。これは主に繰延ヘッジ損益が増加したことによるものです。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、1.4%上昇し、25.8%となりました。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「1.業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。