(1)会社の経営の基本方針
当社は、グループ企業理念(平成13年4月策定)において、以下の通り3つの柱を掲げております。
<商船三井グループ企業理念>
①顧客のニーズと時代の要請を先取りする総合輸送グループとして世界経済の発展に貢献します
②社会規範と企業倫理に則った、透明性の高い経営を行ない、知的創造と効率性を徹底的に追求し企業価値を高めることを目指します
③安全運航を徹底し、海洋・地球環境の保全に努めます
(2)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は平成29年度をスタートとする経営計画「ローリングプラン2017」を策定し、財務規律を意識しながら当社グループが競争優位にある事業・プロジェクトに経営資源を優先的に投入し、将来の安定利益の積み増しを図ってまいりました。
平成30年度はこの方向性を踏襲し、更に取組み内容を深度化させた「ローリングプラン2018」を策定しました。10年後のありたい姿に向けて、3つの長期目標(ストレスフリーなサービスな提供、環境・エミッションフリー事業のコア事業化、競争力No.1事業の集合体)を柱として、以下の施策を実行してまいります。
①投資・事業戦略
・平成29年度に引き続き、新規投資を優先度が高い案件に絞り、投資と財務規律の両立を図る。
・海運部門においては、当社が強みを持つ事業分野、及び安定利益が見込める事業分野に効果的な経営資源の投入を行う。
・海洋事業、フェリー事業、ロジスティクス事業等の海運関連部門では、成長の見込める事業分野の拡大・強化を目指す。
②長期目標の深度化と価格競争力の強化
・従来の営業活動の枠組みを超えてお客様のニーズを把握し、デジタル技術も活用したソリューション(ストレスフリーなサービス)を提供する。
・お客様の声を受け、当社の価格競争力向上に向けた船隊コストや事務コストの競争力を高める。
・目標達成に向けた施策を強力に推進していくための組織・体制の見直し。
③長期目標を支える重点強化項目のテーマ絞り込み
重点強化項目として、海技力強化、ICT活用、技術開発、環境・エミッションフリー事業とこれらを有機的に結びつける働き方改革推進の計5項目の取組みを継続し、活動2年目となる平成30年度は、それぞれの項目において注力テーマを絞り込み、具体化に向けた取組みを推進する。
<中長期的利益水準・財務指標>
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中期的にイメージする水準 |
2027年目標 |
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経常利益 |
800~1,000億円 |
1,500~2,000億円 |
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ROE |
8~12% |
- |
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ギアリングレシオ |
2.0倍以下 |
1.0倍 |
定期コンテナ船事業統合により同事業の損益改善・黒字化を実現すると共に、ドライバルク船・油送船や成長分野であるLNG船・海洋事業においては、投資効率に十分留意しつつ中長期契約に基づく安定利益を一層積み上げていきます。加えて当社が強みを持つケミカル船やフェリー等においても事業を拡大・強化し、これらの施策を通じて、損益並びに財務指標の改善に道筋をつけてまいります。
<株主還元>
当面は連結配当性向20%を目安とし、中長期的課題として配当性向の向上に取り組みます。
<定期コンテナ船事業統合>
定期コンテナ船事業統合後、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.は当社にとって出資比率31%の持分法適用会社となりますが、コンテナ船事業は、引き続き当社にとってコア事業の一つと位置づけています。当社はOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.の持株会社の取締役6名中2名を派遣しており、今後もこの持株会社を通じたガバナンスを強化していく所存です。
<技術革新本部の新設>
当社は新たな取り組みとして、「技術革新本部」を新設しました。「ストレスフリーなサービスの提供」の実現に向け、技術開発先行だけでなく、お客様の潜在ニーズを掘り起こした上でこれに技術的なシーズをマッチさせ、新たな物流革命を起こしていくことを目指していきます。当面は以下3つの分野について重点的に取り組む方針です。
①LNG燃料船の推進
・目的:NOx・SOx規制強化への対策、LNG燃料の普及による地球温暖化防止
・ドライバルク船・自動車船・フェリーなどでLNG燃料船の建造を検討中
・LNG燃料供給船を2020年竣工予定で建造中
②ウィンドチャレンジャープロジェクトの推進
・ウィンドチャレンジャー=風力を利用した帆を主体に推進機が補助する次世代の帆船
・2018年に帆の搭載船を決定、詳細設計を実施の上、2020年の搭載を目指す
③自律航行の推進
・目的:ヒューマンエラーの防止、将来の船員不足への対応、貨物の状態の可視化やタイムリーな運航情報の共有などのサービス品質向上、最適航路選定による環境負荷低減など
・2025~2030年頃に向けて自律航行の実現を目指す
また、平成28年10月に合意した川崎汽船株式会社、日本郵船株式会社との定期コンテナ船事業統合について、これまで鋭意準備を進めてきましたが、平成30年4月1日に統合新会社OCEAN NETWORK EXPRESS PLE. LTD.が営業を開始しました。今後、同社が早期に統合によるシナジー効果を実現できるよう、適切なガバナンスの下、株主として同社の事業基盤確立に向け協力してまいります。
なお、当社グループは、平成24年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が米国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。
当社グループの主たる事業である海上輸送の分野において、世界各国の経済情勢やテロ・戦争その他の政治的、社会的な要因、自然現象・災害、及び伝染病、ストライキ、その他の要因による社会的混乱等により、予期せぬ事象が発生した場合には、関連の地域や市場において、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
この他に当社グループの事業活動や業績、株価及び財務状況等において、悪影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、次のようなものがあります。
(1) 海運市況の変動
当社グループの主たる事業分野である海運業の運賃・傭船市況は、世界各国の景気動向や商品市況、政治・社会的な要因及び自然現象・災害等の影響、海上荷動き量や船腹供給量等の増減を受けた船腹需給の不均衡等の影響により、大きく変動する可能性があります。当社グループは、海運市況の変動リスク耐性を高めるため中長期契約等の安定利益の確保及び運航コスト削減に努めておりますが、大幅な市況下落は当社グループの損益に悪影響を及ぼします。
(2) 為替レートの変動
当社グループの事業では、売上のうち、米ドル建ての海上運賃収入が多くを占めております。費用についても、船舶資本費、燃料費、海外における荷役費・一般管理費等、米ドル・現地通貨建ての費用があります。費用のドル化を進めるとともに、通貨ヘッジ取引を行い、米ドルの為替レート変動による悪影響を最小限に止める努力をしておりますが、外貨建て収入が費用を上回っていることにより、他の通貨に対する円高(特に米ドルに対する円高)は当社グループの損益に悪影響を及ぼします。また、海外子会社が保有する船舶資産やそれにかかわる負債等、外貨建てのものを有するため、円建ての連結貸借対照表においては、換算時の為替レートにより、元の現地通貨における市場価値が変わらなかったとしても、計上する換算価値が影響を受ける可能性があります。
(3) 船舶燃料油価格の変動
当社グループの事業では、船舶運航のための燃料の調達が不可欠なものとなっております。燃料費については、燃料ヘッジ取引により調達コストの平準化・削減に努めておりますが、その上昇は当社業績へ悪影響を及ぼします。船舶燃料油の市場価格は概ね原油価格に連動しており、世界の景気動向、産油地域の情勢、米国を中心とする在庫水準、投機資金の流入等により影響を受ける可能性があります。
(4) 金利の変動
当社グループの事業では、船舶等の新設や更新のために、継続的な設備投資を行っております。有利子負債の削減に努めていますが、運転資金及び設備資金は主として外部借入れにて行っております。固定金利での借入れや金利スワップ取引により金利の固定化を進めていますが、変動金利で調達している資金については、金利の変動の影響を受けます。また、金利の変動により、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。
(5) 公的規制
当社グループの主たる事業分野である外航海運業では、設備の安全性や船舶の安全運航のために、国際機関及び各国政府の法令、船級協会の規則等様々な公的規制を受けております。また、その他の事業分野も含め、事業を展開する各国において、事業・投資の許可をはじめ、運送、通商、独占禁止、租税、為替規制、環境、各種安全確保等の法規制の適用を受けております。これらの規制を遵守するためにはコストが発生しており、また、これらの規制が変更された場合、若しくは新たな規制等が導入された場合には、新たなコストが発生する可能性があります。加えて、当社グループは、これらの規制の遵守体制を構築し、運用状況について情報収集を行っおりますが、関係当局による調査の対象となることや、その調査の結果によっては処分や処罰を受けることがあります。それらにより、当社グループの活動が制限される可能性や、事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 取引先との関係
当社グループが船舶を調達するにあたっては、自らが保有するほか第三者からの傭船による場合があります。また船舶の投入先については、特に鉄鋼原料船、油送船、LNG船部門等において、顧客との中長期契約に基づく安定利益の積み上げを重視しております。それらの取引先の経営状態の悪化や船舶を投入予定のプロジェクトの遅延等により、契約の全部または一部が履行されない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの顧客は、製造業、小売業、エネルギー関連等多岐にわたっております。これら取引先の開発、生産、販売計画等の動向により、当社グループの事業及び業績が影響を受ける可能性があります。
(7) 船舶の運航
当社グループは、「安全運航と海洋・地球環境の保全」を企業理念に掲げ、独自の「MOL安全管理制度」を確立し、船員教育や訓練システムを充実させて事故を起さないよう万全の体制をとっております。しかしながら、常時約850隻(短期傭船等を含む)の船舶を世界中に運航しており、万一洋上で不慮の事故、特に油濁事故及びそれに起因する海洋汚染が起こった場合は事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは運航する船舶への海賊・テロ行為について対策を講じておりますが、万一襲撃を受けた場合は事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づいて繰延税金資産の回収可能性を評価しております。その見積額が減少し、将来において繰延税金資産の一部又は全部が回収できないと判断した場合、或いは税制変更等による税率の変更があった場合、繰延税金資産を取崩し、税金費用を計上することとなり、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(9) 投資有価証券における評価損の影響
当社グループは、投資有価証券のうち時価のあるものについて、期末最終営業日の市場価格による時価評価を行っております。その結果、株式市況の変動等により投資有価証券評価損を計上し、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(10) 船舶等の売却等における影響
当社グループは、海運市況の動向や船舶の技術革新による陳腐化、又は公的規制の変更等による使用制限等により、保有する船舶を売却する場合や傭船する船舶の傭船契約を中途解約する場合があります。また、海運市況の悪化に伴い、保有する船舶の固定資産の収益性が低下し、減損損失を計上する可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
なお、上記は当社グループの事業その他に関し、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、ここに
記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。また、将来の予測等に関する記述は、現時点で入手された情報に基づき合理的と判断した予想であり、潜在的なリスクや不確実性その他の要因が内包されております。従い、実際の業績は、見通しと異なる結果となる可能性があります。
Ⅰ 業績等の概要
(1) 業績
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前連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
増減額 / 増減率 |
|
売上高 (億円) |
15,043 |
16,523 |
1,480 / 9.8% |
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営業損益 (億円) |
25 |
226 |
201 / 786.7% |
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経常損益 (億円) |
254 |
314 |
60 / 23.8% |
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親会社株主に帰属する |
52 |
△473 |
△526 / - % |
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為替レート |
\108.57/US$ |
\111.08/US$ |
\2.51/US$ |
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船舶燃料油価格 ※ |
US$284/MT |
US$354/MT |
US$70/MT |
※平均補油価格
当期における世界経済は、昨年から引き続き世界全体で安定的に拡大する傾向となりました。米国経済は、良好な雇用・所得環境を背景に個人消費は回復が継続し、企業部門でも生産や輸出の回復が続き、拡大傾向を維持しました。欧州経済は、雇用環境の改善を背景に個人消費は底堅く、緩やかな回復が持続しました。中国経済は、良好な雇用・所得環境を受けて個人消費は安定的に拡大し、輸出も世界経済の回復を背景に拡大し、堅調に推移しました。わが国では、良好な雇用・所得環境が継続し個人消費は緩やかな回復を続け、企業部門では国内外の需要回復により、景気回復が継続しました。
海運市況のうち、ドライバルク船市況は、鉱石の荷動きが旺盛になり、南米東岸積穀物貨や、主要貨物である石炭の荷動きも概して好調だったため、全体的に前期より大幅に上昇した水準で堅調に推移しました。原油船市況は、船腹供給が増加する中、老齢船撤退の進捗が遅かったことよる船腹過剰感や、OPEC加盟国減産の浸透等を背景に、冬場の需要期に市況が盛り上がらず、通期全体でも前期の水準を下回りました。コンテナ船については、北米、欧州、南米の各航路において需給環境の改善を背景にスポット運賃市況の回復が見られました。上記のように、一部回復基調も見られましたが、全体としては勢いが鈍く、本格的回復にまでは至りませんでした。
当期の対ドル平均為替レートは、前期比\2.51/US$円安の\111.08/US$となりました。また、当期の船舶燃料油価格平均は、前期比US$70/MT上昇しUS$354/MTとなりました。
尚、定期コンテナ船事業統合会社(OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.)設立に伴い、次年度以降に同社への貸船に関わる損失や当社代理店の整理損失等の発生が見込まれるため、これらの損失の引当を大宗として事業再編関連損失を計上しました。
以上の結果、当期の業績につきましては、売上高1兆6,523億円、営業損益226億円、経常損益314億円といずれも前期を上回ったものの、親会社株主に帰属する当期純損益は△473億円となりました。
セグメント毎の売上高、セグメント損益(経常損益)及び概況は次のとおりです。
上段が売上高(億円)、下段がセグメント損益(経常損益)(億円)
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
増減額 / 増減率 |
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|
ドライバルク船事業 |
2,678 |
2,729 |
50 / 1.9% |
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119 |
154 |
34 / 28.7% |
||
|
エネルギー輸送事業 |
2,662 |
2,709 |
47 / 1.8% |
|
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264 |
136 |
△128 / △48.6% |
||
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製品輸送事業 |
8,733 |
10,130 |
1,396 / 16.0% |
|
|
△280 |
△63 |
216 / △77.4% |
||
|
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うち、コンテナ船事業 |
6,225 |
7,516 |
1,290 / 20.7% |
|
△328 |
△106 |
221 / -% |
||
|
関連事業 |
1,175 |
1,184 |
9 / 0.8% |
|
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123 |
126 |
3 / 2.6% |
||
|
その他 |
239 |
225 |
△14 / △6.0% |
|
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20 |
26 |
5 / 26.8% |
||
(注)売上高にはセグメント間の内部売上高又は振替高が含まれております。
① ドライバルク船事業
ケープサイズ市況は、上半期については東豪州で発生したサイクロンの影響長期化等により下落が続きましたが、夏場からブラジル積レート反発に伴い上昇し、11月以降は鉱石の荷動きが旺盛となり更に上昇、12月半ばに約4年ぶりに30千ドル/日を記録する等、堅調に推移しました。パナマックス市況は、4月中旬に12千ドル台/日まで上昇して以降6月中旬にかけて低迷し、6月中旬以降は上昇と下落を繰り返していましたが、7月下旬以降は南米東岸積穀物貨や主要貨物である石炭の荷動きが概して好調であったため、需給が締まり堅調に推移しました。ハンディマックス船型以下も、ドライバルク市況の全体的な底上げを受けトレードの荷動きも活性化・需給改善し、滞船・天候事由による船腹緊急手配も多く、堅調に推移しました。
このような市況環境の中、従前に取り組んだ構造改革の継続的な効果、コスト削減により前期を上回る利益を確保しました。
② エネルギー輸送事業
<油送船>
原油船市況は、新造船が着々と竣工する一方で老齢船撤退の進捗が遅かったことによる船腹過剰感やOPEC加盟国減産の浸透等を背景に、冬場の需要期に市況が盛り上がらず、通期全体でも前期の水準を下回りました。石油製品船市況は、夏場に米国を直撃したハリケーンの影響による一時的な高騰はあったものの、東西の荷動きの低迷や新造船の供給圧力増により低調に推移し、また冬場には米国・欧州が寒波に見舞われたものの市況高騰の影響は限定的であり、前期に比べ全体的に低調に推移しました。LPG船市況も、上半期はLPG価格の地域差の縮小により、米国からアジア向けの裁定取引が縮小して下落傾向となりました。一方、秋口から冬場にかけては、需給バランスの変動により一時的な上下を繰り返しつつも、主に米国からの堅調なLPG出荷を背景に上昇基調となり、通期全体では前期と概ね同水準で推移しました。
このような事業環境下において油送船部門は、定期傭船契約等の長期契約の安定的な履行や確実な契約延長の実施、更にはプール運航による運航効率の改善やコスト削減にも継続して努めた結果、前期比で減益となったものの、通期黒字を計上しました。
<LNG船・海洋事業>
LNG船部門は、長期契約からの安定的な収益を享受し黒字を確保しました。期中には、世界初の砕氷LNG船プロジェクト向け第1船を含む5隻が竣工しました。海洋事業部門においても、既存プロジェクトに加えFPSO 1隻、FSRU 1隻の期中稼働があり、前期に続き安定的に黒字を計上しました。
③ 製品輸送事業
<コンテナ船>
北米航路のスポット運賃は、第1四半期は伸び悩んだものの、当期も荷動きが過去最高のペースで推移し、夏場に上昇しました。冬場は供給圧力が目立ち弱含みましたが2月の旧正月前の繁忙時に再び上向きました。欧州航路は、荷動き量の大幅な回復があったにもかかわらず各社大型船就航により上昇を抑えられ、スポット運賃は1年を通じて比較的安定して推移しました。また、アジア向け復航の貨物量増加が目立ちました。南米東岸航路はブラジル経済の底打ちにより荷動きが急回復し、スポット運賃が春先から急上昇、時に大きく跳ね上がり損益改善に大きく貢献しました。大型船投入によるスペース増加を生かすべく、春先に精力的に年間契約貨物を確保したことから、夏場以降の上昇したスポット運賃による利益享受は限定されました。尚、昨年7月に設立しました定期コンテナ船事業統合会社(OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.)の設立関連費用を持分法投資損失として計上しておりますが、コンテナ船事業全体では、大型船投入によるスロットコスト低減と、従来からのコスト削減の効果もあり、前期比で損失は縮小しました。
<自動車船>
完成車の荷動きは、北米・アジア・オセアニア向けが引き続き堅調に推移しましたが、資源国向けは資源価格の低迷を背景に本格的な回復の兆しは見られませんでした。減船やトレードパターンの変化に対応した運航効率改善の取り組みを継続し、前期を上回る黒字を計上しました。
<フェリー・内航RORO船>
フェリー・内航RORO船については、トラックドライバーの不足や高齢化、労務管理の強化を背景としたモーダルシフトの流れは更に加速し、荷動きは堅調に推移しました。当社グループは堅調な荷動きなどビジネスの流れを堅実に掴んだだけではなく、旅客においてもカジュアルクルーズをコンセプトとしたプロモーション活動が奏功し、瀬戸内海航路・南九州航路を中心に堅調に推移しました。しかしながら、新造船の竣工遅延や燃料油価格の上昇等により、フェリー・内航RORO船事業全体では前期比で減益となりました。
④ 関連事業
客船事業は、にっぽん丸は好調な集客を続けたものの、台風によるクルーズ催行中止等の影響により、前期比で減益となりました。不動産事業は、首都圏を中心に堅調な賃貸オフィスマーケットに支えられ、当社グループの不動産事業の中核であるダイビル(株)の売上が増加したこと等により、前期比で増益となりました。その他の曳船や商社等の業績も総じて堅調に推移し、関連事業セグメント全体は前期比で増益となりました。
⑤ その他
主にコストセンターであるその他の事業には、船舶運航業、船舶管理業、貸船業、金融業などがありますが、前期比では増益となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、27億円増加し、1,895億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失が287億円となった一方、減価償却費が866億円となったこと等から、983億円(前年同期176億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△1,008億円(前年同期△739億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入等により92億円(前年同期871億円)となりました。
Ⅱ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)は「第1 企業の概況 3.事業の内容」に記載したとおり、5つの事業区分からなり、提供するサービス内容も、多種多様であります。従って、受注の形態、内容も各社毎に異なっているため、それらをセグメント毎に金額、数量で示しておりません。
セグメントの売上高
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) |
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金額(百万円) |
前年同期比(%) |
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ドライバルク船事業 |
272,960 |
101.9 |
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エネルギー輸送事業 |
270,957 |
101.8 |
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製品輸送事業 |
1,013,030 |
116.0 |
|
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うち、コンテナ船事業 |
751,624 |
120.7 |
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関連事業 |
118,462 |
100.8 |
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その他 |
22,514 |
94.0 |
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計 |
1,697,925 |
109.6 |
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調整額 |
(45,531) |
- |
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合 計 |
1,652,393 |
109.8 |
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(注)記載金額には消費税等は含まれておりません。
Ⅲ 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1) 財務戦略
①資金調達の方針
当社は事業活動を支える資金調達に際して、調達の安定性と低コストを重視しております。
また、金利変動リスクや為替変動リスク等の市場リスクを把握し、過度に市場リスクに晒されないように金利固定化比率や借入通貨構成を金利スワップや通貨スワップ等の手法も利用しながら、リスクを許容範囲に収めるようにしております。
②資金調達の多様性
当社は調達の安定性と低コスト調達を実現するために、調達方法の多様化や調達期間の分散を進めております。
運転資金並びに船隊整備に必要な設備資金は、直接・間接調達に加え、従来より船主からの傭船といった手法も活用し、有利子負債を過度に増加させることなく、低コストかつ安定的な船腹の整備を行っております。
直接調達については、平成29年度に新規の社債発行は行いませんでしたが、平成30年3月末の国内普通社債発行残高は745億円、ユーロ米ドル建取得条項付転換社債型新株予約権社債発行残高は5億米ドルとなっております。円滑な直接調達を進めるため、当社は国内2社及び海外1社の格付機関から格付を取得しており、平成30年3月末時点の発行体格付は格付投資情報センター(R&I)「BBB」、日本格付研究所(JCR)「A-」、ムーディーズ(Moody's)「Ba1」となっております。また、短期債格付(CP格付)についてはR&I/JCRより
「a-2」/「J-1」を取得しております。
当社は1,000億円の社債発行登録や1,000億円のCP発行枠を設定しているほか、政府系や内外金融機関との幅広い取引関係をベースとする銀行借入により、運転資金需要や設備資金需要にも迅速に対応できるものと考えております。
更に、安定的な経常運転資金枠の確保・緊急時の流動性補完を目的に国内金融機関から円建て及び米ドル建てのコミットメントラインを設定しており、資金の流動性確保に努めております。
③グループ資金の効率化
当社及び主要子会社間でキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化を図ることにより、外部借入の削減に努めております。
(2) 損益状況
売上高は、円安や主にコンテナ船における市況改善等により、前連結会計年度に比べ1,480億円増収の1兆6,523億円となりました。
経常利益は、燃料油価格の上昇や油送船の市況悪化等の減益要因があったものの、コンテナ船やドライバルク船における市況改善の影響がそれらを上回り、前連結会計年度に比べ60億円増益の314億円となりました。ドライバルク船事業は、市況の改善に加え、従前に取り組んだ構造改革の継続的な効果やコスト削減により前年を上回る利益を確保し、前連結会計年度に比べ34億円増益の154億円となりました。エネルギー輸送事業では、LNG船・海洋事業において安定的な収益を引き続き確保したものの、油送船市況が大幅に悪化した結果、前連結会計年度に比べ128億円減益の136億円となりました。製品輸送事業のコンテナ船は、定期コンテナ船事業統合会社(OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.)の設立関連費用を持分法投資損失として計上していますが、市況の改善に加え、大型船投入によるスロットコスト低減と従来からのコスト削減の効果もあり、前連結会計年度に比べ221億円損失が縮小し、106億円の赤字となりました。自動車船は本格的な荷動きの回復が見られない中、運航効率改善の取り組みを継続し前年を上回る黒字を計上しました。
親会社株主に帰属する当期純利益は473億円の赤字となりました。経常利益が60億円の増益となりましたが、上述の定期コンテナ船事業統合会社(OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.)設立に伴い、次年度以降に同社への貸船に関わる損失や当社代理店の整理損失等の発生が見込まれるため、これらの損失の引当を大宗として事業再編関連損失を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ526億円の損益悪化となりました。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ81億円増加し、2兆2,256億円となりました。これは主に投資有価証券が増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ636億円増加し、1兆5,975億円となりました。これは主に短期借入金が増加したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ555億円減少し、6,280億円となりました。これは主に利益剰余金が減少したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、2.8ポイント減少し、23.0%となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「Ⅰ.業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
<定期コンテナ船事業統合>
当社は、平成28年10月31日開催の取締役会における決議に基づき、川崎汽船株式会社及び日本郵船株式会社と定期コンテナ船事業統合会社を設立し、平成30年4月1日より営業を開始しております。本事業統合に伴い、当社は事業運営会社と貸船契約を締結し、当社がこれまで運航していたコンテナ船を事業運営会社に貸船していますが、次年度以降に貸船に関わる損失や当社代理店の整理損失等の発生が見込まれるため、これら損失の引当を大宗として計734億円の事業再編関連損失を計上しました。
当社グループの研究開発は、主に船舶を対象に、以下の3点を基本方針としています。
1.環境保全・省エネルギーの技術で、経済性との両立が期待できるもの
2.安全性・信頼性の向上に寄与するもの
3.新しい輸送技術・輸送システムに関するもの
具体的には、「船舶」、「コンテナ・物流」、「新輸送技術」、「その他」の4分野について、主に当社技術部、スマートシッピング推進室および海上安全部の各部門がそれぞれの研究開発テーマに取り組んでおります。
近年は省エネ・環境対策技術の開発に特に力を入れております。当連結会計年度における主たる研究開発としては、「高度安全運航支援技術」の研究開発、機関状態監視技術、パワープラントの燃焼状態改善による燃費向上、帆主機従風力推進船の開発などの「環境負荷低減技術」の研究開発、燃料油性状の評価手法の研究などが挙げられます。
また技術研究所では、世界各地で補油された燃料油や船内で使用される機器潤滑油の性状を継続的に分析することで、低質油や潤滑油劣化に起因する機関事故の防止に成果を上げております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は248百万円となっております。
なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。