第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を以下の通り設定しています。

 脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まるなか、輸送にとどまらない事業領域への拡大やそれに伴う価値観の変化を反映し、更なる成長を実現するために、社会における当社グループの存在意義、目指す姿、および価値観を確認したものです。

 

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(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社は、2017年度よりローリング方式の経営計画を導入し、2027年のありたい姿に向けて、財務体質の改善と事業ポートフォリオの変革を進めてきました。昨年度の経営計画「Rolling Plan 2022」では、「グループ総合力を発揮し、グローバルな成長に挑む」をテーマに、3つの戦略に沿って様々な取組を進めました。ポートフォリオ戦略では、不動産事業やクルーズ事業をはじめとする非海運事業への投資を積極的に進めました。環境戦略では、「環境ビジョン2.1」に沿って環境投資を着実に積み上げました。地域戦略では、インドをはじめとした海外での営業活動強化とそれを支える体制整備を進めました。また、当社は2022年4月にサステナビリティ計画「MOL Sustainability Plan」を策定し、「Rolling Plan 2022」と「MOL Sustainability Plan」を企業活動の両輪として取り組むことで、持続可能な社会の実現及び当社グループの企業価値向上を目指してきました。

 その結果、2022年度は前年度から続く好調な海運市況の恩恵を受け、2年連続で過去最高益を更新する業績を達成することができました。

 今年度から開始する新たな経営計画「BLUE ACTION 2035」ではローリング方式を改め、2035年度をゴールとする中長期経営計画として策定しました。2021年度以降、コンテナ船事業を含む当社グループの各事業の業績が好調に推移した結果、当初2017年に掲げた2027年度の財務目標を2年連続で達成し、財務体質は急速に改善しています。グローバルな社会インフラ企業への飛躍に向け、次のステージをあらためて構想・設定し、長期的な戦略に基づき、ありたい姿へ向かう道筋を示しています。

 「BLUE ACTION 2035」では、「Rolling Plan 2022」と「MOL Sustainability Plan」それぞれの要素を融合させ、サステナビリティ経営をより強く表現しています。当社グループのサステナビリティ経営は、長期的な戦略に基づき、社会課題や環境面からも受容できる、持続的な成長の実現をめざすものです。企業理念・MOL CHARTSの精神に沿って「BLUE ACTION 2035」に取り組むことで、サステナビリティ課題を解決し、さらには企業価値の向上、最終的にはグループビジョンの実現へと繋げていきます。

 

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 当社は、「BLUE ACTION 2035」の策定にあたり、長期的な外部環境の変化を独自に分析し、当社グループの強みを再確認した上で、2035年のありたい姿をグループビジョンと定義しました。それを実現するためのメインシナリオが事業ポートフォリオ変革です。その実行に向けて、「Rolling Plan 2022」から継承する“3つの主要戦略”に加えて、その基盤整備にもあたる“サステナビリティ課題への取組”のうち最重点5項目を「BLUE ACTION 2035」の中心に据えています。

 “サステナビリティ課題への取組”の詳細については第2 事業の状況 2「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 「BLUE ACTION 2035」では、2035年度をグループビジョン実現の時期として設定していますが、ゴールまでの期間を3年+5年+5年の3フェーズに分け、バックキャスト思考で計画を策定しています。2023~2025年度のPhase1では、今回掲げる“2035年のありたい姿”と“目指す事業ポートフォリオ”を堅持します。2024年度以降は毎年、Core KPIをモニタリングしながらアクションプランを更新していきます。

 

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<BLUE ACTION 2035で目指す事業ポートフォリオ>

 BLUE ACTION 2035で目指す姿として以下2点を設定しました。

 •海運不況時でも黒字を維持できるポートフォリオへの変革

 •成長投資の積上げと株主の期待に応える利回り(ROE 9~10%)の両立

 

 これを達成するための事業ポートフォリオとして「税引前利益 4,000億円/総資産 7.5兆円」と「市況享受型:安定収益型= 40:60 のアセット比率」の目標を設定し、以下のような具体的なリバランス計画を策定しました。

海運市況との相関性が高い市況享受型事業において海運好況時には高リターンを得る一方、安定収益型事業の比重をより高め、海運不況時でも黒字を確保することを目指します。安定収益型事業では、海運の長期契約のみならず、Rolling Planから標榜してきた非海運事業をさらに成長させます。

 

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<BLUE ACTION 2035における主要なテーマ>

 BLUE ACTION 2035では3つの主要戦略とサステナビリティ課題への取組の内最重点5項目を中心に据えていま

す。各戦略・項目の要点は以下の通りです。

(1)ポートフォリオ戦略

 ・事業別ROA目標を設定し、個別投資採算基準もそれに沿ったものに変更する。利益規模だけでなく資本効率の改善を図り、全体としてROA資本コストを上回るROAを達成すべく、高リターンを期待する市況享受型事業に継続投資する一方、低リターンながら安定収益型である事業への投資の傾斜を高める。

 ・IFRS(国際会計基準)の早期適用に取り組む。

 ・効率的なポートフォリオ変革のため、M&Aをスピード感を持って推進する。

(2)地域戦略

 ・事業ポートフォリオ変革を支えるグローバルな事業推進体制へ移行する。

 

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(3)環境戦略(サステナビリティ課題「環境」への取組)

 ・2023年4月に更新した環境ビジョン2.2の下、環境への取組をリードする存在であり続ける。

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 ・2020年代の外航ゼロ・エミッション船就航に向けた準備も進める。

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 ・燃料需要家としての立場を活かして燃料調達・サプライチェーンに参画し海運業界におけるクリーン燃料サプ

  ライチェーンの構築を後押しする。

 

(4)サステナビリティ課題への取組 「安全」

 ・海運のみならず非海運事業を包摂する当社グループ全体の安全指針「安全ビジョン」と、具体的な行動計画

  「SAFETY ACTION 1.0」を2023年度中に策定する。

 

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(5)サステナビリティ課題への取組 「人財」

 ・2023年4月に発表した「商船三井Human Capital(HC)ビジョン」の下、グループ・グローバル一元化での人財計画を推進する。

 ・2023~2025年度のPhase 1を「変革期」と位置づけ、行動計画「HC ACTION 1.0」に着手する。

 

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(6)サステナビリティ課題への取組 「DX」(Digital Transformation)

 ・2023年2月に発表したDXビジョンの下、全体ロードマップに加えてPhase1の3か年における行動計画「DX

  ACTION 1.0」も策定。ビジネスとカルチャーの両面から変革を推進する。

 

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(7)サステナビリティ課題への取組 「ガバナンス」

 ・グループビジョンの実現を支えるガバナンス全般の高度化を推進する。

 

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<BLUE ACTION 2035 Phase 1の具体的なアクションプラン>

 各事業本部の目指す方向性とPhase 1のアクションプランは以下の通りです。

 

ドライバルク事業

2035年に向けた方向性:

貨物構成の変化に対応しつつ市況エクスポージャーを戦略的に取って、好況時には高リターンを獲得する。

Phase 1の具体的なアクションプラン:

・脱炭素・低炭素化社会の進展により創出される新規貨物・拡大が見込まれる既存貨物の輸送需要取り込み
(バイオ燃料、穀物、肥料、半製品など)

・世界経済のサプライチェーン・トレードパターンの変化に対応するグローバルな営業ネットワーク整備

・貨物需要・トレードパターン・船腹需給の変化に適切に対応するためのインテリジェンス機能の強化

・GHG排出削減に寄与する環境対応船整備の強化

・高いリターンを実現するための市況エクスポージャー許容度の引き上げ

エネルギー事業

2035年に向けた方向性:

エネルギーシフトの大きな流れに積極的に対応し、Green Transformationをリードする存在であり続ける。

Phase 1の具体的なアクションプラン:

≪タンカー(含むケミカル船)≫

・Methanex社との提携なども活かした、船舶燃料としてのクリーンメタノールの調達、事業機会の獲得

・代替燃料船隊による脱炭素ソリューションの提供

≪液化ガス船≫

・今後の需要増を見据えLNG船の中短期契約向け船隊を整備、一定の範囲内で市況リスクテイクを進める

・LPG/アンモニア船隊の整備

≪海洋事業・洋上風力発電≫

・欧州中心に広がる見通しのCCUS事業(二酸化炭素回収・貯留)へ参画

・台湾・日本での洋上風力発電への参画実績を積み上げ、かつ周辺事業の取り込みに繋げる

製品輸送事業

2035年に向けた方向性:

コンテナ船・自動車船の競争優位を磨く一方、物流への積極投資で非海運分野での成長を遂げる。

Phase 1の具体的なアクションプラン:

≪コンテナ船≫

・ONE発足を通じて獲得した規模のメリットの維持・拡大

・環境・デジタル戦略を柱とする更なる優位性の構築

≪自動車船≫

・環境への対応をリードし顧客の評価を高め、パートナーとして選ばれる存在となる

・増加する中国・インド発ビジネスでの優位性構築

≪物流≫

・宇徳・商船三井ロジスティクスをコアと位置づけ、両社を中心に成長を図る

・主にアジアでのM&Aによる事業拡大

ウェルビーイングライフ事業

2035年に向けた方向性:

不動産・フェリーに加えクルーズなどの多彩な事業群を形成し、非海運分野の柱に育てる。

Phase 1の具体的なアクションプラン:

≪不動産≫

・国内:アセットタイプの拡充、再開発・街づくりに取り組む

・海外:ベトナム・豪州の事業拡大に加え、東南アジア他国・インドへ進出

≪フェリー≫

・現行2社の統合のメリット最大化

・貨物・旅客それぞれのマーケティング強化

≪クルーズ≫

・「にっぽん丸」ブランドを革新すべく、新規投入船に向けた準備を進める

・国内顧客に加え、インバウンドを中心に海外顧客の基盤を拡大する

 

<BLUE ACTION 2035の定量目標(利益計画・財務計画・投資計画・株主還元策)>

(1)利益計画

 利益計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。

(2)財務計画・投資計画

 財務計画・投資計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。

(3)株主還元策

 株主還元策については第4 提出会社の状況 3「配当政策」をご参照ください。

 

<コンプライアンス上の対処すべき課題>

 当社グループは、2012年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が英国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。

 なお、当社におけるコンプライアンスに関する取り組みについてはP106に記載のとおりです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループでは、グループビジョンの実現を通じて、社会と共に持続的な発展を目指すための重要課題として、5つの「サステナビリティ課題」(マテリアリティ)として特定しています。経営基盤となる「Governance(事業を支えるガバナンス・コンプライアンス)」の強化を基本とし、「Innovation(海の技術を進化させるイノベーション)」と「Human & Community(人の活躍と地域社会の発展)」への取組みを相互に作用させながら、「Safety & Value(安全輸送・社会インフラ事業を通じた付加価値の提供)」と「Environment(海洋・地球環境の保全)」の達成を目指します。

 2019年度にサステナビリティ課題を最初に特定した際は、当社の事業活動が社会に与えるネガティブ・インパクトとポジティブ・インパクトを検討した上で、社会課題との関連性を整理しました。その上で、ステークホルダーと当社グループにおける重要性の2軸から絞り込み、5つの課題にまとめました。また、2021年度には、気候変動や人権問題等の社会環境の変化に加え、当社グループの事業環境にも大きな変化が起きていることを踏まえ、サステナビリティ課題の一部見直しを行うとともに、各課題に紐づく具体的な目標・KPI・アクションプランを設定した「MOL Sustainability Plan」を策定し、サステナビリティ課題への取組みを加速してまいりました。

 2023年度からは、この「MOL Sustainability Plan」を経営計画「BLUE ACTION 2035」の一部として位置付け、経営計画と一体となった取組を推進していきます。これにより、当社グループの企業価値の更なる向上を図るとともに、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

サステナビリティ課題の概念図

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 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。

(1)ガバナンス

 気候変動対策、海洋環境保全、生物多様性保護、大気汚染防止などの重要な環境課題を含む、サステナビリティ全般に関する課題に関しては、経営会議の下部機関である「環境・サステナビリティ委員会」を設置し、同委員会にて審議を行っております。同委員会の委員長は代表取締役副社長が務め、副委員長をCESO(チーフ・エンバイロメント・サステナビリティ・オフィサー)が務めております。サステナビリティに関する取組みへの監督責任は取締役会が負い、特に重要な事項に関しては取締役会での決議を経て決定しています。

 

(2)リスク管理

 リスク管理については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」をご参照ください。

 

(3)戦略、指標及び目標(サステナビリティ課題への取組)

 2022年度は、「Rolling Plan 2022」から継承する3つの主要戦略(ポートフォリオ戦略、地域戦略、環境戦略)に加えて、その基盤整備にもあたるサステナビリティ課題への取組のうちの最重点5項目(環境、安全、人財、DX、ガバナンス)を組み込んだ新経営計画「BLUE ACTION 2035」を策定しました。「BLUE ACTION 2035」では、グループビジョン実現の時期を2035年度と設定し、ゴールまでの期間を3つのフェーズに分けました。まず、Phase1(2023-2025年度)では、今回掲げた2035年のありたい姿・目指すべき事業ポートフォリオを基本的に堅持し、2024年度以降、毎年Core KPIをモニタリングしながら、アクションプランの更新を続けていきます。

 

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 また、「BLUE ACTION 2035」で取り上げるサステナビリティ課題への取組を含む、課題解決に向けた行動計画として「MOL Sustainability Plan」を策定し、取組を着実に進めてまいります。

 

① Safety & Value(安全輸送・社会インフラ事業を通じた付加価値の提供)

 海運を中心とした社会インフラ事業を展開する中で、さまざまな物資やエネルギーを安全・安定的、経済的に輸送またはサービスを提供することで、世界中の人々の豊かな暮らしと産業を持続的に発展させていくことを目指します。

 

取組テーマ

目標

指標(KPI)

戦略

(2023~2025年度アクションプラン)

本業を通じた価値

海上輸送・社会インフラ事業を通じた持続的な価値の提供

輸送量(トンマイル)

経営計画で掲げる各戦略の遂行

安全品質

・安全運航の徹底及び事故の撲滅

数値目標

・4ゼロの達成

-重大海難事故 ゼロ

-重大貨物事故 ゼロ

-油濁による海洋汚染 ゼロ

-労災死亡事故 ゼロ

・SPI(2025、2030、2035年度目標)*1

 

 

指標/年度

2025

2030

2035

LTIF*2

0.50
以下

0.40
以下

0.30
以下

運航停止平均時間(時間/隻・年)*3

24.00
以下

22.00
以下

20.00
以下

運航停止発生率(件/隻・年)*4

1.00
以下

0.80
以下

0.60
以下

 

・重大海難事故件数

・重大貨物事故件数

・油濁による環境汚染件数

・労災死亡事故件数

・LTIF

・運航停止平均時間

・運航停止発生率

・ICT技術の活用を含めた安全運航サポートの強化

-乗組員の技能向上や注意力維持の支援、並びに安全意識の向上に繋がるシステム及び体制の構築

-船上のDX促進及び働き方改革

-陸上からの支援体制及び機能の強化

 

・安全品質向上に繋がる取り組みの推進

-運航船、船舶管理会社及び船主の訪問を通じた改善活動・改革の推進

-安全文化を醸成する研修等の継続的な実施

-Safety Visionの策定(2023年度予定)

さらなる付加価値

・社会ニーズに対応したサービスの創出

・サステナビリティ起点の新サービスに関する実績

・新規事業提案制度の事業化数

・既存プロジェクトの推進及び新サービスの模索

-外国人人材事業、ブルーカーボン事業、(株)MOL PLUSの事業等

・新規事業提案制度の継続的な実施

*1 Safety Performance Indicatorの略。

*2 100万人・時間あたりの労災事故発生件数。下船に至らずとも、発生日に軽作業を含む労働に復帰できなかった職務傷病も集計対象に含めている。

*3 機器故障や事故による船舶の年間運航停止時間を1隻当たりで表したもの。

*4 船舶の運航停止に至る機器故障や事故の年間発生件数を1隻当たりで表したもの。

 

② Environment(海洋・地球環境の保全)

 事業を通じて与える海洋および地球環境への負のインパクト(海洋環境汚染、大気汚染、生物多様性の阻害、気候変動等)を最小化し、世界中の人々が暮らす地球を持続可能なものとすることを目指します。

 特に、気候変動対策は喫緊の課題と認識しており、「2050年 ネットゼロ・エミッション」に向け、「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」に掲げる各アクションを実行してまいります。なお、2022年度の当社グループのGHG排出量は、13,330千トン(うち、Scope1 10,086千トン、Scope2 19千トン、Scope3 3,224千トン)であります。

 

取組テーマ

目標

指標(KPI)

戦略

(2023~2025年度アクションプラン)

気候変動対策

・2050年までにグループ全体でのネットゼロ・エミッションの達成 *1

数値目標

-2035年までに輸送におけるGHG排出原単位45%削減(2019年比)*2

-2030年までにGHG排出総量23%削減(2019年比)*3

-GHG排出原単位 1.4%/年削減(2019年比)*4

-2030年までにLNG燃料・メタノール燃料外航船隻数90隻

・GHG排出量・排出原単位

・LNG燃料・メタノール燃料外航船隻数

・気候変動対策にかかる環境投資額

・環境ビジョン2.2における各戦略の実行

-アクション1:クリーンエネルギーの導入

-アクション2:さらなる省エネ技術の導入

-アクション3:効率オペレーション

-アクション4:ネットゼロを可能にするビジネスモデルの構築

-アクション5:グループ総力を挙げた低・脱炭素事業拡大

・TCFD提言への対応強化

・グループ会社との連携強化

海洋環境保全

海洋環境及び生物多様性への悪影響の軽減

※今後、国際ガイドライン等に基づきKPI設定予定

・自然リスク及び機会の把握と分析の実施

・新しいKPI及び目標の検討

生物多様性保護

大気汚染防止

・船舶から排出される大気汚染物質の軽減

数値目標

-2030年までにトンマイル当たりのSOx排出量14%削減(2020年比)

・NOx排出量・排出原単位

・SOx排出量・排出原単位

*1 当社グループ全体(連結範囲)における、スコープ1、2、3の全てが対象。

*2 当社グループの外航自社運航船における、スコープ1及びスコープ3の一部が対象。

*3 当社グループ全体(連結範囲)における、スコープ1及びスコープ2が対象。

*4 当社グループの外航自社運航船における、スコープ1及びスコープ3の一部が対象。2030年までの平均。

 

 

③ Human & Community(人の活躍と地域社会の発展)

 多様な個性と価値観を尊重し、一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮し活躍できる企業グループとして、その事業活動を通じ、当社グループに関わる全ての人々との共生、地域社会の持続可能な発展・振興を目指します。

 また、2023年4月には「商船三井グループ Human Capital(HC)ビジョン」を発表。新たな事業を牽引する専門人財や地域戦略強化のためのグローバル人財の登用・育成、人材計画のグループ・グローバルでの一元化など、人財方針・施策の抜本的な転換を図り、経営計画、ひいてはグループビジョンの実現を目指すことを明らかにしております。

 

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取組テーマ

目標

指標(KPI)

戦略

(2023~2025年度アクションプラン)

多様性(DE&I)

・多様な人財が活躍できる就業環境の実現

数値目標

・単体陸上職 女性管理職比率 15%(2025年度目標)

・MOL Group Key

Positions(MGKP)*1在任者の構成比率(2025年度目標)

-女性 8%

-本社外出身者 30%

-40代以下 15%

・単体陸上職 女性管理職比率

・MGKP在任者の構成率(女性、本社外出身者、40代以下)

・人的資本獲得・配分の実行

・適所適材の実現に向けた施策の実施

・テクノロジーを活用したタレントマネジメントの実施

・自律的なキャリア形成支援

・エンゲージメント向上に向けた施策の実施

・人財部門の機能強化

・海技者を惹きつける「魅力」の強化

共走・共創

・個人の能力とグループ全体での組織能力が最大限発揮されるよう、共走・共創のための環境の構築

数値目標

・MVVの実現・実践に向けた対話機会の実施率 100%(2025年度目標)

・公募による異動件数 50件以上(2025年度目標)*2

・MVVの実現・実践に向けた対話機会の実施率

・公募による異動件数

働き甲斐

・働いている意義や安心感を日々実感できるグループの実現

数値目標

・エンゲージメントサーベイ(ES)回答率 90%以上(2025年度目標)

・ES結果のうち「エンゲージメント」のKPIスコアが向上した組織の割合 70%以上(2025年度目標)

・ESの回答率

・ES結果のうち「エンゲージメント」のKPIスコアが向上した組織の割合

 

 

取組テーマ

目標

指標(KPI)

戦略

(2023~2025年度アクションプラン)

地域との共生

・事業で関わる地域の発展及び人々の活躍に寄与する活動の拡大

・企業市民活動の実績

・モーリシャス地域貢献活動の進捗状況

・企業市民活動

・NGO・NPOとの関係構築

・グループ会社との連携強化及び取組拡充

・社員の社会課題意識を高める研修・制度の拡充

・海洋教育等を通じた人財育成に資する活動の強化

・モーリシャス地域貢献活動

・2つの基金を通じたNGO・NPO、学術機関等との関係構築

・助成団体間のネットワーキングによる地域の活性化

-マングローブ保全、現地産業支援、教育・女性活躍の促進等

・社会的インパクト評価による活動成果の見える化

*1 本社部長級ポスト及び当社グループ会社において本社部長級相当職と指定されたポスト(国内外を問わない)。

*2 2023年度~2025年度の累計

なお、上記のうち、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針についての指標(KPI)および実績(当連結会計年度)は、次の通り。

・単体陸上職 女性管理職比率 : 9.2%

・MOL Group Key Positions(MGKP)在任者の構成率 : 女性比率4.7%、本社外出身者比率18.3%、40代以下比率9.5%

・エンゲージメントサーベイ(ES)の回答率 : 81.2%

 

④ Innovation(海の技術を進化させるイノベーション)

 クリーンエネルギーやICTを活用する技術を高めることで、当社事業にイノベーションを起こし、「安全輸送・社会インフラ事業を通じた付加価値の提供」「海洋・地球環境の保全」にも通じる様々な社会課題の解決に貢献することを目指します。

取組テーマ

目標

指標(KPI)

戦略

(2023~2025年度アクションプラン)

クリーンエネルギーの導入・普及

・船舶のクリーン代替燃料の導入と利用拡大

数値目標

・2035年までにネットゼロ・エミッション外航船130隻

・2020年代中にネットゼロ・エミッション外航船運航開始

・2030年のゼロエミッション燃料使用割合5%

・ネットゼロ・エミッション外航船の隻数

・ゼロエミッション燃料の使用割合

・関連技術開発の推進

-アンモニア燃料船、メタノール燃料船、水素利用船、燃料電池・バッテリー利用等

・社会でのクリーンエネルギーの普及に寄与する技術の開発

・次世代クリーンエネルギー運搬・供給船の開発状況

・次世代クリーンエネルギ―運搬・供給船の開発推進

-大型アンモニア運搬船・バンカリング船、液化水素運搬船、CO2運搬船等

・ウインドハンタープロジェクトの研究開発推進

船舶の省エネルギー化

・自然エネルギーの活用及び推進性能向上に寄与する省エネ技術の確立・普及

数値目標

・2030年までにウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)搭載隻数25隻

・ウインドチャレンジャーの搭載隻数

・その他省エネ技術の採用隻数

・ウインドチャレンジャーの軽量化及び量産化(量産化規模の検討も含む)

・ローターセイル実装に向けた検討*1

・その他省エネ技術の導入の促進

-PBCF*2、最適トリムシステム*3等

ICTを活用した安全運航・効率運航

・船舶のビッグデータ活用プラットフォームの構築・拡充(FOCUSプロジェクト等)

・FOCUSプロジェクトの進捗状況

・Fleet Guardianプロジェクトの進捗状況*4

・FOCUSのバージョンアップ

-効率運航にかかるデータ項目の拡充・精査、LNG燃料船、代替燃料船への対応等

・Fleet Guardianの開発・実証・実装

・船舶の自律化技術の構築

・自律化技術の開発状況

・実証実験を踏まえた開発計画の策定

・協業先の選定及び実装化に向けた検証の実施

DX

・デジタルを活用した、会社の生産性の改善及び組織・業務の最適化

数値目標

・価値創造業務・安全業務への転換率(累計)

-10%(2025年度)

-20%(2030年度)

-30%(2035年度)

・価値創造業務への転換率(陸上業務)*5

・安全業務への転換率(船上業務)*6

・チェンジリーダーの数*7

・機能別標準業務の新設計・導入等の陸上向けDX案件の推進

・船上書類作業のデジタル活用最大化等の海上向けDX案件の推進

・チェンジリーダー育成施策の実行

*1 風力を活用した推進補助装置。

*2 プロペラ装着型効率改善装置。船のプロペラ後方に発生するハブ渦を削減することで効率改善に貢献する。

*3 当社船長の経験に基づいた船舶の航行姿勢の知見を水槽試験・実船試験を通じて定量的に評価し、乗組員が容易に活用できるようグラフに表したもの。

*4 本船上の主機関等に取り付けた各種センサー情報をもとに、主機関のトラブルや故障を未然に防止する為の予兆診断を行うシステム。

*5 従業員が定型作業に掛けている工数を、デジタル活用、業務・組織の最適化により、新しい価値創造への工数に転換した比率。

*6 従業員が定型作業に掛けている工数を、デジタル活用、業務・組織の最適化により、安全業務への工数に転換した比率。

*7 チェンジリーダーを「ビジネスモデル・業務プロセス・企業風土などの変革を担う存在」、「ビジネスやプロセスの課題を把握し、ありたい姿を描き、変革をリードする存在」と定義し、従業員をトレーニングによってチェンジリーダーへと育成した数。

 

⑤ Governance(事業を支えるガバナンス・コンプライアンス)

 コーポレート・ガバナンスの充実およびコンプライアンスの徹底を通じ、当社グループ経営における透明性を確保し、事業活動を通じた社会課題への取り組みの基盤の構築、また、人権や安全・環境に配慮した持続可能なバリューチェーンの構築を目指します。

取組テーマ

目標

指標(KPI)

戦略

(2023~2025年度アクションプラン)

経営の透明性

・グループ総合力を発揮し、グローバルな成長に向けた経営の実現

・実効性の高いコーポレート・ガバナンス体制の構築

・ステークホルダーとの対話を促す開示内容の充実

・取締役会の実効性評価の結果

・コーポレート・ガバナンス審議会の審議状況

・コーポレート・ガバナンス基本原則3か条に基づく各種施策の実行

-取締役会の実効性評価に基づく改善措置の継続的な実施

-スキルマトリックスに基づく取締役会構成の実現に向けたロードマップの策定

-全社重要リスクに関する議論の充実

-コーポレート組織、営業組織及び地域組織の権限強化と相互牽制機能の充実

情報セキュリティ

数値目標

・重大ICTインシデント発生件数ゼロ*1

・重大ICTインシデント発生件数

・ランサムウェア対策の強化

・セキュリティインシデント運用プロセスの最適化

・情報資産の管理強化及び運用状況の可視化

・ウィルス感染等の予兆となる動作の検知及び防止策の強化

責任ある調達

・バリューチェーン全体における環境・安全・人権等に関わるリスクの把握・低減

・バリューチェーンマネジメントの実施状況

・人権関連の研修の実績

 

・関連する方針類のグループ内及び取引先への周知・理解浸透

・取引先向けのESG調査の継続的な実施及び対象先の拡大

・人権デューデリジェンスの継続的な実施

・人権教育プログラムの拡充

人権尊重

公正取引

数値目標

・コンプライアンス違反件数ゼロ*2

・コンプライアンス違反件数

・コンプライアンス窓口相談件数

・コンプライアンス関連の研修・e-learningの実績

・内部監査の体制強化及び監査結果に基づく改善措置の実施

・コンプライアンス関連の教育・啓発活動の継続的な実施

贈収賄防止

*1 影響範囲に応じて定めた4つのインシデントレベルの内、レベル4(最も重大)に該当するもの。

*2 公正取引及び贈収賄に関連する重大なもの。

 

 

3【事業等のリスク】

<リスク管理に関する基本的な考え方>

 世界中で幅広く事業を展開する当社グループは、様々なリスクに晒されています。下表の通り、当社グループの事業が晒される主要なリスクを、管理手法に基づき「エマージングリスク」、「業務遂行上のリスク」に分類し、種別ごとに担当部門を置き、管理規程やガイドライン等に従って、リスク量の把握やヘッジによるエクスポージャーの削減、保険付保等によるリスク移転を含めたリスク低減策を講じています。各担当部門によるリスク管理の状況は定期的に経営会議(重要なものについては、取締役会)に報告され、情報の一元管理と必要な判断・対応が行われています。また、新規の投資判断を含む重要な意思決定にあたっては、予め専任の社内審査部門によってリスクの洗い出しを行い、必要に応じて起案する各担当部門のアセスメントを経て、意思決定プロセスに入ります。意思決定の内容・重要性に応じて、経営会議の下部機関として6つの委員会(P.101参照)を設け、事前審議をおこなうことにより、リスクの掘り下げや論点整理がなされます。また、最重要案件については、経営会議における慎重な審議を経て取締役会に付議され、リスク管理を重視した判断を行っています。

 

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<リスク管理の高度化に向けた施策>

 当社事業に影響を与える外部環境の不可逆的な変化のうち、発生確率や影響度合いを定量的に把握できないものを「エマージングリスク」と定義しています。近年、エマージングリスクへの対応はリスク管理の点で重要性が高まっており、エマージングリスクを全社横断的に管理し、取締役会が対応策の意思決定する仕組みを導入することを目指しています。2021年度から全社リスクマッピング策定に向けた検討を開始し、2022年度はエマージングリスク・業務遂行上のリスクそれぞれの管理手法の確立に向けて取締役会での議論を行いました。

 

 当社グループの事業リターンの主な源泉でもある海運市況変動に伴うアセット価値の変動リスクに対しては、2014年からアセットリスクコントロールと呼ぶ仕組みを導入し、バリューアットリスク(VaR)に基づくリスク量に対して自己資本が十分な水準にあることを検証する形でのリスクの定量評価を行い、半年に一度、取締役会と経営会議に報告し監督を受けています。

 更に、オペレーション、事業継続(BCP)、コンプライアンス等に係わるリスクに対する管理体制の高度化も続けています。2020年7月26日にモーリシャス沖で発生したWAKASHIOの油濁事故を踏まえ、2021年には、当社又は当社グループ全体の事業活動に対して甚大な影響を及ぼしうる事象(クライシス)が発生した場合に、事業継続と企業価値維持を図るべく、社会的インパクトを考慮しつつ当社グループ一丸となってクライシス対策を講じる組織として、社長を本部長とするクライシス対策本部を設置し、適切且つ迅速に対応する体制を整備しました。当社は、重大海難事故を含む海難事故、地震・感染症やテロ等の災害、及び重大ICTインシデントが生じた場合には、それぞれ「重大海難対策本部規程」、「海外安全管理本部規程」、「災害感染症対策本部規程」、及び「重大ICTインシデント対策本部規程」に基づき、事業継続を含む早期復旧・再開を図るための組織として、各対策本部を設置し、適切に対処していますが、これら各対策本部の枠組みにとどまらないクライシス発生時においては、「クライシス対策本部規程」に基づき、クライシス対策本部を設置します。また、同年にはグループ会社の一部を対象に重要リスクの洗い出しとその評価を定期的に行うリスクアセスメントのプロセスを整備し、試験的に運用を開始しています。

 

<エマージングリスク管理の考え方>

 重要なリスクシナリオとして特定されたものについて、取締役会は経営の基本方針に則り、直近の兆候情報と専門家の見解を踏まえ、当社事業への影響、及び当社が取り得る対応策について議論を行います。また、エマージングリスクを事業機会としても認識し、経営計画や事業戦略策定の為の十分な議論を取締役会と執行が行います。

 

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<アセットリスクコントロールの考え方>

 金融機関で幅広く利用されているリスク管理手法を海運業向けに応用したもので、保有アセットに対して同時に相当程度のストレスシナリオを適用し、それが一定期間継続した場合に想定される最大の損失額を計算し、その総額を総リスク量と見做して、自己資本との比較で過大とならないように管理するものです。また、アセット毎の市況が、異なるタイミングで変動することによる分散効果も考慮しています。カントリーリスクや顧客信用リスク、グループ会社の事業リスクも含めて、より適切にリスク量を計測できる仕組みです。

 

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<主要なリスクの概要と対応策>

1.経営計画・投資計画の進捗に関わる影響

 当社グループは、海運事業を中心として当社グループが強みを持つ分野に経営資源を重点的に投入していますが、以下に記載する各種リスクによって、投資が想定通りに進捗せず、投下資金の回収不能、追加損失が発生するリスク、及び計画した利益が上がらないなどのリスクを負っています。

 新規の投資決定にあたっては、投資の意義・目的を明確にした上で、投資のリスクの発生可能性・影響度を認識・測定し、投下資金に対する利回りが期待収益率を上回っているか否かを評価し、選別を行っています。しかしながら、このような投資評価の段階での案件の選別を厳格に行っているものの、期待する利益が上がらないというリスクを完全に回避することは困難であり、事業環境の変化や案件からの撤退等に伴い、当社の業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

 

(1)運航・操業リスク

 海運業を中心として、約800隻の多様な船舶や海上プラントを運航・操業し、様々な社会インフラを提供する当社にとって、衝突・座礁・火災といった事故による船体・積み荷・乗組員への損害や損傷、貨物油や燃料油流出による環境汚染(油濁)は最も重大なリスクの一つです。当社は事故を未然に防ぐため、保有船・傭船の区別に関わらず、安全運航本部と各営業本部、船主(傭船の場合)、及び船舶管理会社との緊密な連携のもと、船員に対する教育・指導や、安全を担保する船体仕様の整備などソフト面・ハード面で様々な対策を講じています。また、海賊やテロの危険に対しても、十分な訓練、緻密な運航ルール設定、陸上からのサポート、必要な設備の設置など、様々な備えを行っています。

 なお、最善を尽くした上でも避けきれない事故によって当社自身もしくは関係者に損害が発生した場合においても、業績に大きな影響を受けることを回避するため、また十分な原資を確保するため、必要な金額の各種保険(賠償責任保険・船体保険・戦争保険・不稼働損失保険)を付保し、備えとしています。

 また、レピュテーションリスクを抑えるため、事故発生時のメディア対応や情報発信について、年に一度重大海難対応訓練を実施しているほか、必要に応じメディアコンサルタントを起用しています。

 

(2)サイバーセキュリティリスク

 当社グループの事業及び業務は、情報システムに大きく依存しており、重大ICTインシデント(ICTシステム障害、サイバー攻撃、自然災害、オペレーションミス等を起因として発生または発生の可能性があるセキュリティ・プライバシーの侵害及び当社グループの信頼低下等)が発生した場合には、当社グループの事業が大きな影響を受ける可能性があります。当社グループでは「重大ICTインシデント対策本部規程」及び「重大ICTインシデント対応ガイドライン」において、グループ共通のインシデントレベルの判断基準、インシデントレベルに応じた対応方針を定めています。重大なICTインシデントが発生した場合には、対策本部が設置され、ステークホルダー(株主、顧客、メディアなど)への報告・説明、技術的・法的対応等を速やかに組織的に実施し、当社グループの利益、ブランド、信用を著しく損なう事態の発生を防ぐ体制としています。

 

(3)災害・疫病リスク

 大規模な災害や疫病等は当社グループ運航船の船員のみならず、陸上で勤務する従業員の活動を制限し、当社グループの持続的な事業活動に大きく影響が及ぶことが想定されます。

 大規模な地震等の災害発生時にも船舶の運航・操業を維持し、サプライチェーンを支える社会的役割を果たすため、当社はBCPマニュアルを定め、サテライトオフィスやシステムのバックアップ体制を整備した上、十分な訓練を実施しています。また、本社役職員全員にノート型PCを配布することにより、クラウド型ツール等を活用してリモート環境から勤務可能な就労体制を整備しています。当社グループでは、災害や感染症の流行に際して、運航船と役職員の安全を最優先に確保し、事業の中核である「海上運送サービス」の提供継続と、万が一それが中断した場合に早期復旧を図ることを目的に、事業継続計画(BCP)を策定しています。また、以前から災害等を想定した本社・社外での訓練等を定期的に実施し、そこで明確になった課題に対処することで、より実効性を高めています。

 

(4)グループガバナンスリスク

 当社は本社組織に属するグループ会社である商船三井システムズ株式会社、商船三井ドライバルク株式会社、MOL Chemical Tankers Pte. Ltd.、株式会社宇徳、商船三井ロジスティクス株式会社、ダイビル株式会社をはじめ、子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、子会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対応するため、2023年度から「チーフ・オフィサー制」を整備して、当社グループのコーポレート機能を横断的に統括し、一体的且つ戦略的な取り組みを強力に支援する体制に移行しました。各チーフ・オフィサーは、社長(CEO)の権限と責任の一部について委任を受け、特定の横断的機能において、当社(本社)のみならず当社グループ全体を指揮・統制することをその任務としています。

 また2022年度から国内外グループ会社に対するリスクアセスメントを導入しました。各グループ会社のセルフアセスメントを通じ、各社及び本社管理担当部がリスクの所在・内容を把握し、また本社経営陣及びコーポレート部門がグループ全体のリスクについて把握することで、それぞれがより実効的なリスク管理体制の構築を行うための基礎資料とすることを目的としています。

 

 

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(5)人権に関わるリスク・バリューチェーンにおける各種リスク

 当社グループにおける全てのバリューチェーンにおいては、人権・安全・環境面等、バリューチェーン全体の持続可能性に関する様々なリスクが存在します。特に、あらゆる形での差別・長時間労働・ハラスメント・強制労働・児童労働等の人権に関わるリスクは、社会的な関心事となっていることから当社グループの企業価値の毀損につながる恐れがあります。

 このため、当社グループでは、サステナビリティ課題「“Governance” 事業を支えるガバナンス・コンプライアンス 」の取組テーマに「人権尊重」と「責任ある調達」を掲げ、関連する取り組みを強化しています。当社グループでは「商船三井グループ 人権方針」、「商船三井グループ調達基本方針」、及び「取引先調達ガイドライン」を整備しており、当社グループとしての「人権尊重」への姿勢を改めて社内外に示すとともに、人権・安全・環境等に配慮した持続可能なバリューチェーン構築のため、取引先を含む、多様なステークホルダーに理解・協力が得られるような内容としています。

 また、社内方針整備のみならず、バリューチェーンマネジメントの仕組みを構築します。以下に示す各ステップの通り、人権デューデリジェンスを包含したバリューチェーンのモニタリングスキームの立案・実装を進め、環境・人権・ガバナンス関連のリスクについての実態の把握及び改善に努めます。これらは適時適切に効果の検証と情報の開示を行うことにより、ステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たします。

 

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(6)海運市況・顧客・カントリーリスク

 当社は以下の考え方の下、海運市況・顧客・カントリーリスク管理を行っています。

・市況リスク

  中長期契約を前提としないアセットに投資する場合、将来的な需給バランスの見通しを注意深く精査した上で、選別的に実行しています。各アセットへの投資については、市況変動パターンが異なる幅広い種類の船舶や海運関連事業を手掛けるとともに、海洋事業、洋上風力発電事業、物流事業、或いは不動産事業といった非海運事業への積極投資を掲げるポートフォリオ戦略によって、事業ごとに市況リスクを打ち消し合う体制とし、同リスクの分散に努めています。 また、期中リスクの低減については、例えばケープサイズバルカーやVLCCといった船舶において、FFA(運賃先物取引)をヘッジ手段として活用することにより、既に進行中の事業年度におけるエクスポージャーを削減し、損益とリスクの安定化を図っています。

・顧客信用リスク

  国内外の信用力の高いお客様との中長期契約獲得を積極的に推し進め、当社グループの保有アセットのうち市況に晒されるアセット量とその期間を限定することに加え、保有アセットの契約投入期間と保有期間を極力整合させ、市況に対してニュートラルな状態とすることを原則としています。 また、融資においては、融資先の信用リスクの悪化に伴う貸倒引当金の計上等により、当社の業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。このため、融資先の財務状況等は定期的にモニタリングする体制としております。

・カントリーリスク

  カントリーリスクについては、重要リスクの見込まれる国・地域、及び顧客別の投下資本全体(保有アセット総額)について、「アセットリスクコントロール」(前述)と同様に、半年に一度、取締役会、及び経営会議にて定期的に把握する体制としています。

  なお、現時点において地政学リスクが発現しているロシア関連の事業については、LNG船15隻、コンデンセートタンカー1隻が貸船契約に従事中、もしくは貸船契約開始前の状態にあります。この内、砕氷機能を有する等特殊仕様の7隻(合計投資額約1,448億円(*))は他事業への転用が難しいため、万一契約が継続できない状況になった場合、関係先への船舶の売却など最大限の対策を講じるものの、資産価値が減少する可能性があります。しかしながら、当社自己資本に対する割合は小さく、影響は限定的と考えられます。

 

 (*)当連結会計年度末投資残高798億円及び今後投資予定の650億円の合計であり、関連会社保有分は当社持分

   相当を含めて算出している。

   なお、いずれの隻数も関連会社保有分を含めた隻数。

 

(7)為替・金利・燃料油価格変動リスク

・為替

  外航海運業においては、収入のほとんどが米ドル建てであるのに対し、日米間の金利水準なども踏まえてコストや借入の一部を円建てとしているため、為替リスクが生じます。当社は財務部門を通じた将来的な金融環境の見通しを踏まえ、必要に応じて費用のドル化やドル借入によりエクスポージャーを限定し、その上で期中に機動的な為替ヘッジも行うことで、リスク低減に努めています。

・金利

  当社グループでは、船舶の新規建造や更新のために継続的な設備投資を行っていますが、長期の設備資金調達時には、固定金利借入や金利スワップを活用することで金利変動リスクを回避することを原則としています。

・燃料油価格

  燃料油コストは船舶運航費用の大きな部分を占めることから、かつてその価格変動は当社グループの損益に多大な影響を及ぼしていました。しかしながら、現在では中長期契約の大部分に燃料油価格変動リスクをお客様にご負担いただく条項が含まれているほか、短期契約においても、その時々の燃料油価格に基づく運賃提示を行うか、一定の算式によって燃料油価格変動を運賃に反映する契約としています。それでも残る限られたエクスポージャーに関しても、燃料油先物取引を活用してリスク量の縮減に努めており、燃料油価格変動による損益影響は今では極めて限定的となっています。

 

(8)気候変動リスク

 地球温暖化をはじめとする気候変動は、気象・海象の変化をより激しくし、安全運航の妨げに繋がる危険性があります。また、気候変動対策としての脱炭素化の流れは、大量の燃料油を必要とし、主要貨物として様々な化石エネルギー資源を輸送する当社にとって、公的規制等によるコスト増大や輸送需要の構造的減少などの形で事業環境を大きく変える可能性があります。

 当社グループはこうした流れに即して「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」において2050年までのGHGネットゼロ・エミッション目標を掲げ、その達成に向けてロードマップを策定・公表し、クリーン代替燃料や省エネ技術の導入、効率運航の深度化等を進めています。また、代替燃料輸送や低・脱炭素化に資するソリューションを開発・提供することにより、脱炭素化の流れを新たな需要喚起に繋げ、ビジネスチャンスとしていきます。当社グループが負う気候変動リスクの全体像や対処方針については、TCFDの枠組みを活用し、その詳細を開示しています。

 

(9)技術革新・公的規制

 当社グループは、技術革新によるアセットの陳腐化、又は公的規制の変更等により、保有アセットの価値低下に伴う損失を計上する可能性があります。また、保有アセットの価値低下に伴う売却や傭船・リース契約の中途解約を行う場合があり、その結果として、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

・技術革新

  当社グループの主たる事業分野である外航海運業では、投資主体となる船舶等アセットの保有期間は約20年を超える長期なものとなります。インターネットや代替燃料に関する技術が急速な発展を遂げている中、当社グループが保有するアセットの陳腐化、或いは競争力の低下等が生じる可能性があります。また、技術革新に対応するために、設備投資等の負担が増加する可能性があり、かかる場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、このような技術革新や情報技術の動向を捉えて、国内外造船所や外部研究機関との密な連携を始め、社内でも先進的な技術開発を行うことで、新規技術の評価・検証を実施し事業展開に活用しています。

・公的規制

  外航海運業では、設備の安全性や船舶の安全運航のために、国際機関及び各国政府の法令、船級協会の規則等様々な公的規制を受けております。また、その他の事業分野も含め、事業を展開する各国において、事業・投資の許可をはじめ、運送、通商、独占禁止、租税、為替規制、環境、各種安全確保等の法規制の適用を受けております。これらの規制を遵守するためにはコストが発生しており、また、これらの規制が変更された場合、若しくは新たな規制等が導入された場合には、新たなコストが発生する可能性があります。加えて、当社グループは、これらの規制の遵守体制を構築し、運用状況について情報収集を行っておりますが、関係当局による調査の対象となることや、その調査の結果によっては処分や処罰を受けることがあります。

 

(10)コンプライアンスリスク

 当社グループにおいて、各種ハラスメント、贈賄、独禁法・競争法違反、インサイダー取引等のコンプライアンス関連のリスクは、時に巨額の損害賠償請求につながる恐れがあり、当社グループの持続的な事業活動に大きく影響が及ぶことが想定されます。

・コンプライアンス実現に向けた取り組み

  当社は、2014年に公正取引委員会から、特定自動車運送業務の取引に関連して独占禁止法第3条に違反する行為があったと認定されました。当社グループでは、コンプライアンス遵守が企業活動の大前提であることを役職員一人ひとりが深く心に刻み、日々の業務において適切な判断を下せるよう、規範とすべき行動基準を定めたコンプライアンス規程を整備し、継続的な研修によりその徹底を図っています。また、コンプライアンス委員会を3カ月ごとに開催し、グループ内のコンプライアンス事案を審議、違反案件への対応を行っているほか、事例の件数や内容を社内に公開することにより、役職員の意識向上を促しています。

・コンプライアンス相談窓口

  当社グループでは、当社及び当社グループの役職員、派遣社員が日本語・英語で利用することのできるコンプライアンス社内・社外相談窓口を設置しています。社外相談窓口については社外の弁護士がその任にあたり、受け付けた報告・相談をコンプライアンス委員会事務局に伝えるとともに、それ以降も報告・相談者と会社間の連絡を取り次ぎます。いずれの窓口においても報告・相談者の秘密は厳守されるとともに、調査協力者も含めて、不利益な処遇がなされないことが保証されています。さらに、当社Webサイトにおいて、国内外取引先など一般外部からのコンプライアンスに関する問い合わせも受け付けています。

・独禁法遵守及び腐敗防止への取り組み

  当社グループでは、独禁法遵守行動指針及び贈賄等防止規程、加えてより具体的なガイドラインである「DO!s &DON’T!sガイド」等を作成し、各種研修を通じて国内外における法規制の概要と留意点を全従業員に周知することにより、独禁法遵守及び腐敗防止の徹底に努めています。

 

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 また、上記は当社グループの事業その他に関し、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。加えて、将来の予測等に関する記述は、現時点で入手された情報に基づき合理的と判断した予想であり、潜在的なリスクや不確実性その他の要因が内包されております。従い、実際の業績は、見通しと異なる結果となる可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減額/増減率

売上高     (億円)

12,693

16,119

3,426 /   27.0%

営業損益    (億円)

550

1,087

537 /   97.6%

経常損益    (億円)

7,217

8,115

898 /   12.4%

親会社株主に帰属する
当期純損益   (億円)

7,088

7,960

872 /   12.3%

為替レート

¥111.52/US$

¥134.67/US$

¥23.15/US$

船舶燃料油価格 ※

US$585/MT

US$745/MT

US$160/MT

※平均補油価格(全油種)

 

 当期の業績につきましては、売上高1兆6,119億円、営業損益1,087億円、経常損益8,115億円、親会社株主に帰属する当期純損益は7,960億円となりました。

 なお、当社持分法適用会社OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(以下「ONE社」)における利益の積み上げなどにより、営業外収益で持分法による投資利益として6,684億円を計上いたしました。うち、同社からの持分法による投資利益計上額は6,208億円となります。

 

 売上高は、ドライバルク、エネルギー、自動車船の好市況に加え、通期で円安基調であった影響もあり、前期比増収となりました。

 経常損益は、上半期に高水準の運賃を継続したコンテナ船事業で前年並みの利益を確保したことに加え、油送船事業や自動車船事業における損益改善と、LNG船・海洋事業における安定的な利益の確保が寄与し、前期比増益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純損益は、経常損益の増益に加えて、船舶売船益や有価証券売却益等の特別利益の積み上げもあり、前期比増益となりました。なお、経常損益と親会社株主に帰属する当期純損益では前年度に続き、過去最高益を更新しました。

 

セグメントごとの売上高及びセグメント損益(経常損益)、それらの対前期比較及び概況は以下のとおりです。

 

上段が売上高(億円)、下段がセグメント損益(経常損益)(億円)

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

増減額/増減率

ドライバルク事業

3,607

4,296

688 /   19.1%

432

576

143 /   33.3%

エネルギー事業

2,940

3,887

947 /   32.2%

198

395

197 /   99.6%

製品輸送事業

5,153

6,773

1,619 /   31.4%

6,629

7,054

424 /    6.4%

 

うち、コンテナ船事業

566

530

△36 /  △6.4%

6,340

6,201

△138 /  △2.2%

不動産事業

389

395

6 /    1.7%

97

81

△16 / △17.0%

関連事業

445

571

125 /   28.2%

△23

△5

17 /     -%

その他

157

196

39 /   24.8%

27

17

△9 / △34.7%

(注)「売上高」は外部顧客に対する売上高を表示しております。

 

① ドライバルク事業

 ケープサイズの市況は、上半期は堅調なインド向け石炭需要を背景に5月中旬をピークに上昇しましたが、世界経済の先行き不透明感及び新型コロナウイルス感染症の規制緩和・撤廃による船腹稼働率上昇に起因する船腹需給の緩みを受けて夏場にかけて大幅に下落しました。下半期は一時的に上昇する局面がみられたものの、上値の重い展開が続きました。パナマックス及びハンディマックス船型以下の市況は、上半期は石炭・穀物の堅調な輸送需要により高水準でスタートしましたが、7月以降は世界経済の減速及び中国向け荷動きの減少により次第に軟化し、下半期も中国向け石炭や、南米積穀物、鋼材等の荷動きの減少により、概して弱い基調で推移しました。

 市況は軟化したものの、長期契約の安定的な履行とオープンハッチ船や多目的船事業の貢献に加え、当社連結子会社において、持分法適用会社GEARBULK HOLDING AGに対する貸付金について過去計上していた貸倒引当金の一部を同社財務状況改善に伴い戻し入れたため、前期比で増益となりました。

 

② エネルギー事業

<タンカー>

 原油船は、ロシアのウクライナ侵攻によるトレードパターン変化に伴い、トンマイルの伸長及び米国の戦略備蓄放出等を背景に、夏場以降の市況は堅調に推移しました。石油製品船は、原油船同様ロシア出し石油製品の代替調達によるトンマイルの伸長もあり、年間を通じて堅調な荷動きとなりました。

 好調な市況環境に加えて、安定的な長期契約の履行やコスト削減に努めた結果、タンカー事業全体では前期比大幅増益を達成しました。

 

<オフショア>

 FPSO事業は、新たに2隻竣工したほか、既存の長期貸船契約により引き続き安定的な利益を積み上げました。

 

<液化ガス>

 LNG船事業は、既存の長期貸船契約により引き続き安定的な利益を確保する中、一部長期契約の満了の影響もあり、前期比で減益となりました。FSRU事業は、既存船の短期契約への投入により、前期比で損益改善となりました。

 

③ 製品輸送事業

<コンテナ船>

 当社持分法適用会社ONE社において、上半期は北米・欧州航路を中心に旺盛な輸送需要が継続しましたが、下半期は夏場以降港湾の混雑緩和に加え、顕著となった北米商品在庫の積み上がりとインフレ進展による欧州での消費減退に伴い、船腹供給量の回復と輸送需要の急激な減退により短期運賃市況が急速に弱含みしました。しかしながら、上半期における利益の積み上げもあり、結果として前期並みの損益を維持しました。

 

<自動車船>

 世界的な半導体不足や新型コロナウイルス感染症拡大の影響により完成車荷動きが変動する中、柔軟に配船計画を見直すことで前期並みの輸送台数を確保しました。輸送効率の改善にも努めた結果、前期比で増益となりました。

 

<港湾・ロジスティクス>

 港湾事業は、夏場以降の北米コンテナターミナルでの混雑緩和を受けて荷動きが正常化する中でもコンテナ取扱量は堅調に推移しました。ロジスティクス事業は、航空・海上運賃市況軟化の影響を受けましたが、上半期で積み上げた利益の貢献もあり前期比で増益となりました。

 

<フェリー・内航RORO船>

 旅客に関しては、新型コロナウイルス感染症拡大による行動制限が緩和され、前期比で乗船客数が大幅に回復しました。物流に関しては、自動車部品関連の回復が遅れているものの、概ね安定的に推移した結果、フェリー・内航RORO船事業全体で、前期比で損益改善となりました。

 

④ 不動産事業

 当社グループの不動産事業の中核であるダイビル㈱が保有する一部オフィスビルの建替えに伴い若干の減益となりましたが、概ね安定的な損益で推移しました。

 

⑤ 関連事業

 クルーズ事業は、新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けた行動制限が緩和されたことにより需要が回復し、営業運航の増加により、前期比で損益改善となりました。曳船事業は各社各港において状況に差はあるものの、作業対象船の入出港数の増加や作業料金改定などにより、前期比で増益となりました。

 

⑥ その他

 主にコストセンターであるその他の事業には、船舶運航業、船舶管理業、貸船業、金融業などがありますが、前期比で減益となりました。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)は「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載したとおり、6つの事業区分からなり、提供するサービス内容も、多種多様であります。従って、受注の形態、内容も各社毎に異なっているため、それらをセグメント毎に金額、数量で示しておりません。

 

セグメントの売上高

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

ドライバルク事業

429,602

119.1

エネルギー事業

388,709

132.2

製品輸送事業

677,352

131.4

 

うち、コンテナ船事業

53,060

93.6

不動産事業

39,582

101.7

関連事業

57,113

128.2

その他

19,623

124.8

合 計

1,611,984

127.0

 

(3)財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ8,775億円増加し、3兆5,642億円となりました。これは主に投資有価証券が増加したことによるものです。

 負債は、前連結会計年度末に比べ2,747億円増加し、1兆6,266億円となりました。これは主に短期借入金が増加したことによるものです。

 純資産は、前連結会計年度末に比べ6,027億円増加し、1兆9,376億円となりました。これは主に利益剰余金が増加したことによるものです。

 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、6.6ポイント上昇し、54.0%となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、60億円減少し、910億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、持分法適用会社からの受取配当金等により5,499億円(前年同期3,076億円)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得等により△2,819億円(前年同期△1,074億円)となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により△2,817億円(前年同期△1,917億円)となりました。

 

(5)財務戦略

 2023年3月に策定した経営計画「BLUE ACTION 2035」において、海運不況時でも黒字を維持できる事業ポートフォリオへの変革に取り組み、着実に利益を積み上げる計画です。Phase1と位置づけております2023~2025年の3年間で約12,000億円の投資を計画しておりますが、成長投資を実行する過程においても、財務規律を維持する方針です。具体的には、ネットギアリングレシオは、0.9~1.0にコントロールしていきます(有利子負債額はIFRS導入後に織り込むべき将来傭船料などオフバランス資産(約9,000億円)を含んだものを想定。なお、本数値は当社が一定の想定の下に試算した概算値で、IFRSを正式に適用した場合の算出値とは相違する可能性があります)。

 

① 資金調達の方針

当社は事業活動を支える資金調達に際して、調達の安定性と低コストを重視しております。

また、金利変動リスクや為替変動リスク等の市場リスクを把握し、過度に市場リスクに晒されないように金利固定化比率や借入通貨構成を金利スワップや通貨スワップ等の手法も利用しながら、リスクを許容範囲に収めるようにしております。

 

② 資金調達の多様性

当社は調達の安定性と低コスト調達を実現するために、調達方法の多様化や調達期間の分散を進めております。

直接調達については、2022年度に新規の社債発行は行いませんでしたが、2023年3月末の国内普通社債発行残高は595億円、劣後特約付社債発行残高は500億円となっております。円滑な直接調達を進めるため、当社は国内社及び海外1社の格付機関から格付を取得しており、2023年3月末時点の発行体格付は格付投資情報センター(R&I)「A-」、日本格付研究所(JCR)「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's)「Ba3」となっております。また、短期債格付(CP格付)についてはR&I/JCRより「a-1」/「J-1」を取得しております。

当社は1,000億円の社債発行登録や1,500億円のCP発行枠を設定しているほか、政府系や内外金融機関との幅広い取引関係をベースとする間接調達により、運転資金需要や設備資金需要にも迅速に対応できるものと考えております。

更に、安定的な経常運転資金枠の確保・緊急時の流動性補完を目的に国内金融機関から円建て及び米ドル建てのコミットメントラインを設定しており、資金の流動性確保に努めております。

当社の環境戦略を資金調達の面から支えるESGファイナンスについては、2022年10月に風力推進装置を搭載したばら積み船向けのトランジション・リンク・ローンを組成すると共に2022年12月と2023年3月に事業性資金調達を使途としたトランジション・リンク・ローンによるグローバル・コミットメントライン契約を2系列組成しました。

 

③ 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、各事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業の運営に関わる労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。また、設備資金需要としては、船舶への投資に加え、非海運事業の拡大方針に則った不動産・物流設備・フェリー等への投資があり、当連結会計年度中に2,721億円の設備投資を実施しました。

 

④ グループ資金の効率化

当社及び主要子会社間でキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化を図ることにより、外部借入の削減に努めております。

 

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)並びに2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針) 」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。また、当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目は、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

・固定資産の減損

当社グループは、資産又は資産グループが使用されている事業の経営環境及び営業活動から生ずる損益等から減損の兆候判定を行っており、減損の兆候が識別された場合、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。将来の市況悪化等により減損の兆候及び認識の判定の前提となる事業計画等が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。

・貸倒引当金

当社グループは、売上債権及び貸付金等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

(7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当期の業績は、前年度から続く好調な海運市況の恩恵を受け、経常利益8,115億円、親会社株主に帰属する当期純利益7,960億円となり、2年連続で過去最高益を更新しました。また、主な財務指標は、ROE 49.8%、ギアリングレシオ0.60倍(ネットギアリングレシオ0.55倍)となり、経営計画「Rolling Plan 2022」で設定した2027年度の目標値を前年度に引き続き達成しました。

コンテナ船事業は、上半期は旺盛な輸送需要を背景に運賃市況が高水準で推移しました。下半期はサプライチェーンと船腹需給の正常化に伴い運賃市況は下落しましたが、通期では歴史的な好業績となった前期を上回る結果となりました。ドライバルク事業は、下半期から世界経済の減速や荷動きの減少により市況は下落しましたが、長期契約の安定的な履行やオープンハッチ船や多目的船事業の利益貢献もあり、前期比で増益となりました。エネルギー事業は、LNG船事業・海洋事業の安定利益に加え、原油船市況が下期以降回復し、石油製品船も市況は高水準で推移したため、前期比で増益となりました。自動車船事業では、柔軟な配船計画の見直しと輸送効率の改善により、前期比で増益となりました。フェリー・内航RORO船事業では、新型コロナウイルス感染症拡大による行動制限の緩和により旅客が回復し、前期から損益改善となりました。

 2023年度は、歴史的高値圏を推移したコンテナ船の賃率が2022年度後半急速に弱含んだ水準から、荷動きの増加傾向に伴い一定程度回復することを見込んでいます。また世界経済の回復に応じて、完成車荷動きも段階的な回復を想定すると共に、ドライバルク船・原油船の荷動き・市況は世界経済の回復に応じていずれも堅調に推移することを見込んでいます。ロシア・ウクライナ情勢等の地政学的緊張や世界的なインフレ・金融不安等、当社グループを取り巻く事業環境の不確実性は引き続き高いですが、「BLUE ACTION 2035」に基づき、グローバルな社会インフラ事業への飛躍に向けて邁進します。

 

 

 経営計画の主な内容は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、「BLUE ACTION 2035」で掲げるCore KPI・利益計画・投資計画・財務計画は以下の通りです。

 

<Core KPI>

 昨年度の経営計画「Rolling Plan 2022」とサステナビリティ課題への取組である「MOL Sustainability Plan(MSP)」を融合させた経営計画「BLUE ACTION 2035」では、その目標の達成状況を判断するための指標(Core KPI)として、3つの財務KPI・4つの非財務KPIを設定しています。

 

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<利益計画>

 2017年度にローリング型経営計画を導入した際、2027年度の利益目標として経常利益2,000億円を設定していましたが、2021年度に前倒しで達成し、また財務体質が顕著に改善したことから、「BLUE ACTION 2035」では2035年度4,000億円という高い利益目標を設定しました。なお、国際会計基準(IFRS)の適用を想定し、利益目標の数値は税引前当期純利益(*)としています。

(*)日本会計基準を前提に算出しており、国際会計基準(IFRS)を適用した場合の算出値とは相違する可能性があります。

 

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<投資計画>

 グループビジョンの実現に向けて、「Rolling Plan 2022」で進めてきた積極投資をさらに強化していきます。投資規模(*)は、2023~2035年度の13年間で総額3.8兆円を想定しています。

Phase 1(2023~2025年度)では総額1.2兆円の投資(*)を見込みます。このうち6,500億円を代替燃料船隊の整備や低・脱炭素エネルギー事業の拡大といった環境投資に充てるほか、「BLUE ACTION 2035」で示すリバランス計画の実行に向けて安定収益型事業への投資を重点的に進めます。

(*)いずれも対象期間中に発生する投資キャッシュアウト額を示す。

 

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<財務計画>

 上記で示す1.2兆円の投資計画を実行するため、毎年2,500億円以上の営業CFを安定的に創出することに加えて、資産の入れ替えによるキャッシュ化を今後も継続します。また、現在オフバランスになっている負債も有利子負債に含めたネットギアリングレシオを0.9~1.0倍の範囲でコントロールしながら、外部資金を活用します。

 またPhase 1における株主還元においては、配当性向30%及び下限配当150円/株とする方針ですが、想定を上回る利益を得られた場合には自社株買いを含めた追加株主還元策を検討し、ROE 9~10%を意識した資本コントロールを実施します。

 

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 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。

 

5【経営上の重要な契約等】

(ダイビル株式会社株式に対する公開買付け)

 当社は、2021年11月30日開催の取締役会において、株式会社東京証券取引所市場第一部(プライム市場)に上場しているダイビル株式会社(以下「ダイビル」といいます。)の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付け(以下「ダイビル公開買付け」といいます。)によって取得することを決議し、ダイビル公開買付けを2021年12月1日から2022年1月18日の期間で実施しました。公開買付けの目的は、当社の連結子会社であるダイビルを完全子会社化することにより、グループの経営資源をより強固な形で結集させ、グループ経営の強化を図るためであります。その後、ダイビルの株主を当社のみとするための一連の手続(株式併合)を経て、2022年4月28日付で株式取得の効力が発生したことをもって、ダイビルは当社の完全子会社となりました。

 

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。

 

(INTERNATIONAL TRANSPORTATION INC.の株式譲渡)

 当社は、2022年10月31日開催の取締役会において、連結子会社であるINTERNATIONAL TRANSPORTATION INC.の株式を譲渡することを決議しております。本件株式譲渡の譲渡相手先は2社(以下、譲渡相手先のうち、一方を「譲渡相手先1」、他方をOcean Network Express Pte. Ltd. (以下、「ONE社」といいます。) であり、当社は、2022年11月11日に譲渡相手先1と、2022年12月27日にONE社と株式譲渡契約を締結しておりますが、主務官庁の承認手続き日程の影響により、株式譲渡が完了しておりません。

 

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報) (連結子会社の異動(株式譲渡))」に記載しております。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発は、主に船舶を対象に、以下の3点を基本方針としております。

1.ゼロエミッション技術に関連するもの

2.安全性・信頼性の向上に寄与するもの

3.新しい輸送技術・輸送システムに関するもの

 上記3点に基づき、スマートシッピング推進部、技術部、海洋技術部、商船三井システムズ株式会社で構成される技術革新本部を中心に、海上安全部と各営業本部が連携して研究開発に取り組んでおります。

 近年は、省エネ、環境技術と高度な安全運航を実現するための技術の開発に力を入れております。当連結会計年度における主たる研究開発は、DXの推進、AIを活用した実海域性能推定技術の開発やICTを活用した船内環境見える化システムの構築などの「高度安全運航支援技術」に関する研究開発、帆主機従型風力推進船の開発、代替燃料の利用に関する研究開発、主機関の廃熱利用や船内機器の最適調和運転などの「環境負荷低減技術」に関する研究開発などが挙げられます。

 また技術研究所では、世界各地で補油された燃料油や船内で使用される機器潤滑油の性状を継続的に分析することで、低質油や潤滑油劣化に起因する機関事故の防止に成果を上げております。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は1,694百万円となっております。

 なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っておりません。