第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度(以下、「当期」という)の世界経済は、米国を中心とした先進国で景気拡大の動きが見られる一方で、中国等の新興国経済の減速及び原油価格の下落等により、先行き不透明感が高まりました。米国では、ドル高により輸出競争力が低迷したものの雇用・所得の改善や堅調な個人消費を背景に景気拡大が継続しましたが、利上げには慎重な姿勢が示されました。欧州では、堅調な個人消費と設備投資を背景に景気は緩やかに回復しましたが、デフレ回避のため金融緩和が拡大されました。中国では、投資の鈍化や輸出の頭打ちを背景に景気の減速傾向が強まりました

わが国経済は、企業収益や雇用情勢の改善が見られますが、中国等の新興国経済減速が輸出や設備投資の重しとなっており景気の足踏み状態が続きました

 

当社グループの海運業においては、ケミカルタンカー市況が安定的に推移したことに加え、円安が追い風となった一方、ドライバルクキャリアでは船腹の供給圧力が依然根強く市況は低迷しました。このような事業環境の下、既存契約の有利更改への取り組みをはじめとして、効率配船及び運航採算の向上を図りました

不動産業においては、飯野ビルディングをはじめとする各ビルが順調に稼働しました

 

以上の結果、売上高は948億43百万円(前期比5.3%減)、営業利益は81億15百万円(前期比1.6%増)、経常利益は76億55百万円(前期比6.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億59百万円(前期比29.8%減)となりました

各セグメント別の状況は次の通りです。

 

①外航海運業

当期の外航海運市況は以下の通りです。

オイルタンカーにおいては、通期にわたり市況は好調に推移しました。当期前半より原油安による中国の輸入増等から市況は安定的に推移しましたが、夏場には一時的に下落しました。当期後半は冬場の需要期に向けて原油の輸送需要が高まったことから、再び好調に推移しました

ケミカルタンカーにおいては、プロダクトタンカーの市況が堅調に推移しケミカルタンカー市場への流入が少なかったことや、当期後半はシェールガス由来の製品も含め北米・カリブからアジア向け等、長距離の輸送需要が増えたこと等により、船腹の需給は引き締まり、運賃市況は総じて安定して推移しました。プロダクトタンカー市況は、原油安による需要の増加や中東の新規製油所稼働による荷動きの増加等により堅調に推移しました

大型ガスキャリアのうち、LPGキャリアにおいてはインド、中国等の堅調なLPG需要増加に加え、米国積みLPGの荷動き増加等から市況は高水準にて推移しました。当期後半は新造船の竣工による船腹供給の増加から市況は軟化傾向となりました。一方、LNGキャリアは新造船の竣工に対する新規輸送需要の伸びが限定的で、スポット市況は低水準に留まりました

ドライバルクキャリアにおいては、老齢船のスクラップの進展は見られたものの、中国経済の減速や新造船の竣工圧力が続いたこと等から、市況は歴史的な低位水準に落ち込み、通期にわたり低迷しました

なお、当期における平均為替レートは¥120.61/US$(前期は¥109.19/US$)、平均燃料油価格はUS$281/MT(前期はUS$537/MT)となりました

 

このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。

オイルタンカーにおいては、支配船腹の延長契約を獲得し、引き続き長期契約に投入することで安定収益を確保しました

ケミカルタンカーにおいては、基幹航路である中東からアジア及び欧州向け航路では、既存契約に加え新規数量輸送契約を獲得し、中東の配船頻度に見合う輸送数量を確保し効率的な配船を堅持しました。アジア及び欧州からインド・パキスタン向け航路では、既存契約による輸送数量確保及びパームオイルや石油化学製品のスポット貨物の集荷により安定的な稼働を維持しました。南米向け配船も実施し、全体的な採算の向上に努めました。当社と米国オペレーターとの合弁事業会社では大西洋域内を中心に、数量輸送契約に加えてスポット貨物も効率的に集荷し高稼働を維持することが出来ました。プロダクトタンカーにおいては、支配船腹を中長期契約に継続投入し、安定収益を確保しました

大型ガスキャリアにおいては、LPGキャリア及びLNGキャリア共に既存の中長期契約へ継続投入することで安定収益を確保しました。また、期中に国内荷主向けの新造大型LPGキャリア1隻の定期用船契約を締結しました

ドライバルクキャリアのうち、石炭専用船とチップ専用船においては順調に稼働し、パナマックス船隊については数量輸送契約への投入、不採算船処分等、採算向上を図りました。一方、ハンディ船においては船隊縮小による稼働の改善、減速航行や港費削減等に努めましたが、収益改善には至りませんでした

以上の結果、外航海運業の売上高は723億64百万円(前期比8.3%減)、営業利益は37億67百万円(前期比14.7%増)となりました

 

②内航・近海海運業

当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。

内航ガス輸送においては、LPG需要は前期比微減となったものの、石油化学ガスの生産量は増加しました。内航ガス船の船腹量に大きな変化は見られず、海上荷動きは通期にわたり堅調に推移しました

近海ガス輸送においては、中国経済の減速が顕著となる中、当水域の主要貨物であるプロピレンの荷動きが減少に転じました。過去数年にわたり続いていた新造船流入の勢いは鈍化しましたが、市況は低迷を続けました

 

このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。

内航ガス輸送は、当社LPG主力荷主の販売が好調に推移し、投入船の稼働は向上しました。石油化学ガスにおいても中長期契約を中心に安定収益を確保しました

近海ガス輸送は、市況低迷の影響を受け、採算の悪化を余儀なくされました。なお、前期に返船した3,500m3型1隻の代替として、新たに同型の新造船1隻を船隊に加え、船隊の若返りを図りました

 

以上の結果、内航・近海海運業の売上高は94億24百万円(前期比2.8%減)、営業利益は3億64百万円(前期比44.0%減)となりました

 

③不動産業

当期の不動産市況は以下の通りです。

都心のオフィスビル賃貸市況は、各企業における業容・人員拡大を背景としたオフィスの拡張・統合需要により一時期未成約スペースの目立った大型新築ビルの稼働率も改善され、既存ビルを含めた全体の空室率は低下し、賃料水準は緩やかながら上昇傾向が継続しました

貸ホール・貸会議室においては、多くの競合施設がある中、厳しい顧客獲得競争が続きました

不動産関連事業のフォトスタジオにおいては、広告需要に堅調さが見られましたが、雑誌需要の低迷は続いており、使用料の単価も低調に推移しました

 

このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。

賃貸ビルにおいては、テナント退去のあった所有ビル1棟において、新たなテナントと長期契約を結ぶことが出来ました。その他の各ビルにおいても継続して良質なテナントサービスの提供に注力し、概ね順調に稼働しました

当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、セミナー、講演会、映画試写会、その他催事の積極的な誘致により、稼働の維持に努めました

スタジオ関連事業を行うイイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門及びレタッチ、ロケーションの各部門で積極的な利用誘致に努めた他、プロダクション部門では大型案件受注等があり、稼働は堅調に推移しました

 

以上の結果、不動産業の売上高は131億38百万円(前期比12.7%増)、営業利益は39億84百万円(前期比1.6%減)となりました

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、188億4百万円のプラス(前期は161億7百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益42億67百万円と減価償却費88億67百万円によるものです

投資活動によるキャッシュ・フロー」は185億51百万円のマイナス(前期は130億22百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出239億38百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却収入52億13百万円を上回ったことによるものです

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は24億75百万円のプラス(前期は85億94百万円のマイナス)となりました。これは主に長短借入金の純増額44億67百万円が、配当金の支払11億8百万円を上回ったことによるものです

以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は143億26百万円(前期末は119億65百万円)となりました

 

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

この項目は「1業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。

3【対処すべき課題】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「安全の確保は社業の基盤である」との認識のもとに、よいサービスと商品を社会に適正な利潤を得て安定的に供給するとともに、すべてのコストについて不断の削減につとめ、効率的な経営を行うことを基本方針としております。

 なお、その実行にあたっては社会的要請へ適応し、環境に配慮した行動をとることとしております。

 

(核となる事業)

 企業集団の人的・物的資源を生かしながら、当社グループは引き続き次の3つの事業を核として推進します。

・全世界にわたる水域で原油、石油製品、石油化学製品、液化天然ガス、液化石油ガス、発電用石炭、肥料、木材チップなどの基礎原料の輸送を行う外航海運業

・国内、近海を中心とした水域で液化天然ガス、液化石油ガス、石油化学ガスなどの基礎原料の輸送を行う内航・近海海運業

・東京都心を中心に、賃貸オフィスビルの所有、運営、管理及びメンテナンス並びにフォトスタジオの運営を行う不動産業

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

 当社グループは、2020年に向けたグループ企業の一層の成長を目指し、平成26年4月より3ヵ年の中期経営計画「STEP FORWARD 2020」“攻めの展開へ”(計画期間:平成26年4月~平成29年3月)を策定し、それに基づき事業を推進しております。「STEP FORWARD 2020」においては、3つの重点強化策と5つの基盤整備項目を設定することで、営業の展開をこれまでの守りから攻めへと転換し、2020年に向けて皆様に信頼されるグローバル企業への成長を成し遂げること、そして企業価値の持続的向上のために収益力をより一層強化していくことを目標としております

 「STEP FORWARD 2020」において、当社グループは、シェール革命由来の物流の変化に即応すべく米国ヒューストン事務所を開設、昨年4月には開所式を開催し本格的に業務を開始しました。これにより当社の海外営業拠点はシンガポール、ドバイ、ロンドン、大連とヒューストンの全5拠点となり全世界的な営業展開が可能となりました。重点戦略部門のケミカルタンカーにおいては、中東配船に加え中南米や北米に配船しマーケット開拓の強化を進めております。また、大型ガスキャリアにおいては、今後も輸送量拡大が見込まれる北米シェールガス随伴LPGの輸送等を担う新造LPGキャリア(VLGC)1隻の定期用船契約を期中に新たに締結し、収益基盤を強化しました。本契約により、当社はVLGC7隻体制となり、目標であるVLGC6隻体制は達成しておりますが、今後も有利契約の獲得を目指してまいります。不動産業では、ターゲットエリア内への資産の集約、新規・再開発案件などを通じた安定収益力の更なる向上に引き続き取り組んでまいります

 一方ドライバルクキャリアにおいては、大幅な市況の悪化から保有船舶の減損処理や売船に伴う特別損失を計上しました。今後も引き続き、不経済船の減船や市況変動に対する耐性を強化するため、船腹調達の期間やソースの多様化を図り、コスト競争力の強化に取り組んでまいります

 当社グループは得意分野の強みを活かした営業の展開を推進し、競争力の強化と経営効率の向上を図り、海運業と不動産業を両輪とした経営の一層の深度化に努めてまいります。

(3)当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

 

1. 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

 

 当社は、同業種あるいは異業種他社との提携や企業買収が、当社の中長期的な企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益の向上の実現に向けた有力な手段の一つとなり得ると認識しておりますが、そのような他社との提携や企業買収は、当事者同士が納得、合意した上で友好裡に進められてこそ、当社の中長期的な企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益の最大化の実現を図ることができるものであると考えております。また、大規模買付行為を受け入れるかどうかは、当社の経営を誰に委ねるべきかという問題に関連しますので、最終的には株主の皆様のご判断によるべきものであると考えます。

 しかしながら、昨今、わが国においても敵対的な企業買収の動きが活発化してきております。当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させる買収提案が経営者の保身目的で妨げられてはならないことは当然のことであり、また、当社取締役会の同意を得ない買収提案が必ずしも当社の企業価値を損ない株主の皆様の共同の利益を害するものであるとは限らないものの、このような敵対的な企業買収の中には、株主の皆様に対して当該企業買収に関する十分な情報が提供されず株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるものや、株主の皆様が当該企業買収の条件・方法等について検討し、また、当社取締役会が代替案の提示等を行うための十分な時間を確保することができないもの、その他真摯に合理的な経営を行う意思が認められないもの等の当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう企業買収もあり得るものです。

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業理念、当社の企業価値の様々な源泉及び当社を支える各利害関係者との信頼関係を十分に理解した上で、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を中長期的に確保し又は向上させることを真摯に目指す者でなければならないと考えております。したがいまして、上記のような企業買収に該当する行為等の当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう大規模買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。

 

2. 基本方針の実現に資する特別な取組みの概要

 

 当社は、多数の投資家の皆様に中長期的に継続して当社に投資して頂くため、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させるための取組みとして、下記①の中期経営計画等による企業価値向上への取組み及び下記②のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方に基づくコーポレート・ガバナンスの充実のための取組みを実施しております。

 

① 中期経営計画等による企業価値向上への取組み

 

ア. 当社の事業の概要

 

 当社は、海運業と不動産業を事業の柱とし、企業としての最大の経営課題である中長期的な企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益の最大化を図る観点から、海運市況、金利及び為替等の変動要素が多く収益の変動率が大きい海運業と、変動要素が相対的に少なく収益が安定している国内を基盤とする不動産業とを適切に組み合わせることにより、新興国を中心とした世界の経済成長を取り込む事業と国内の安定的な事業の双方をバランスよく行うことを経営の基本方針としております。

 

 当社の海運業は、オイルタンカー、ガスキャリア及びケミカルタンカーを中心とした液体貨物輸送業並びにドライバルクキャリアによるばら積み貨物輸送業から構成されております。当社は、液体貨物輸送業においては、中東諸国、アジア各国の顧客との間で長年に亘る信頼関係を築いており、また、ばら積み貨物輸送業においては、国内電力各社、製紙会社等との中長期の契約関係に基づき専用船を主体とした安定輸送に従事しており、いずれも取引先企業から高い評価を得ております。さらに、海運業において当社が輸送する主要貨物は、日本をはじめ世界各国に必要不可欠な物資であり、当社はこれを安全且つ安定的に輸送することにより顧客の信頼を獲得しており、それを当社の事業の基盤とするとともに、国内外の地域社会との共存共栄を図ることに貢献しているものと自負しております。

 一方、不動産業においては、東京都心部の中でも立地条件が良く高い稼働率が期待できる地区におけるオフィスビル賃貸事業を核として展開しており、多目的ホールの運営やフォトスタジオの運営等の不動産周辺事業の発展にも力を注いでおります。平成23年10月に開業した飯野ビルディング(東京都千代田区内幸町)は、日比谷公園を望む良好な立地に加え、高い耐震性や高度なセキュリティー機能を備えております。さらに、世界最高水準の環境性能を有し、自然環境にも配慮した快適なビジネス環境を提供するオフィスビルとなっており、国内外の多くの機関から高い評価を得ております。また、飯野ビルディングのシンボルであるイイノホールは、カンファレンスセンターとともに、落語会、演奏会及び映画試写会といった催しや講演会・式典等の様々な用途にご利用頂いており、当社の文化的事業の拠点として、確固たる地位を築いております。当社は不動産業において、ゆとりある安全な空間を提供することにより、顧客である各企業の信頼を得ており、海運業と同様に、それを当社の事業の基盤とするとともに、当社が提供するゆとりある安全な空間において顧客である各企業が安心して事業を展開することを通じて、間接的に地域社会を含む社会全体に貢献しているものと考えております。

 このような当社に対する高い評価と信頼は、当社が特定の企業系列に属さずに独立的・中立的企業として100年以上もの間に亘り、事業を営んできたことにより培われたものであり、それは当社の企業価値の基盤となっております。

 

 当社が営む海運業及び不動産業において、安全の確保は、事業の発展基盤であり、当社の企業価値の基礎であるとともに、国内外の地域社会を含む社会全体への貢献の基盤となっておりますが、両事業において安全を確保するためには、中長期的な視点からの安定的な経営が不可欠となります。変動要素が多く収益の変動率が大きい海運業と、変動要素が相対的に少なく収益が安定している不動産業とを適切に組み合わせることは、当社全体の経営の安定に資するものと考えております。

 また、当社は海運業と不動産業とを適切に組み合わせるという経営の基本方針を達成するために、双方の事業にバランスよく投資を行っております。特に、中長期的な視点からのヒトへの投資と教育が必要不可欠であると考えており、両事業間の人事交流を含め、双方の事業に対して経営資源の適切な配分を行っております。とりわけ、市況等の変動が収益に及ぼす影響の大きい海運業については、当社の企業体力にあった設備投資を志向するとともに、市況変動への耐性を強化するため、自社による保有船と他社からの調達船のバランスを考慮して投資を行い、また、調達船の傭船期間についても、短期・中期・長期と分けることにより、船腹調達の多様化を図っております。

 

 以上のとおり、当社は、常に、中長期的な視点から安定的な経営を行うことを経営判断の基盤に置きつつ、海運業と不動産業とを適切に組み合わせることによって、当社グループ全体の中長期的な業績の向上を目指しております。

 

 現在、海運業を取り巻く事業環境は厳しいものの、安定収益基盤の強化につながる専用船事業の拡充等により可能な限り事業リスクを制御しながら当社の中核的な事業としてこれを継続していくことは、中長期的には今後伸長が予想される新興国を中心とした世界の経済成長を取り込むことにつながり、これにより収益の拡大基盤を構築することが期待できます。また、収益の変動率が大きい海運業と相対的に収益が安定している国内の不動産業とを適切に組み合わせることは、両事業の発展の基盤である安全の確保のために不可欠である当社全体の経営の安定に資すると考えております。よって、海運業と不動産業を当社の事業の柱とし、双方をバランスよく行うことは、当社の企業価値の向上に資するものと考えておりますので、双方の事業について、引き続き事業基盤の整備を進めてまいります。さらに、大きな収益は見込めないものの当社グループのブランドイメージの向上や社会全体に貢献する文化的事業についても取り組んでまいります。下記イの中期経営計画もこれらの方針に基づいて策定されておりますが、その方針は、当社の中長期的な企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益の最大化に資するものと考えております。

 

イ. 中期経営計画

 

 当社グループは、平成26年4月24日に、3ヵ年の中期経営計画「STEP FORWARD 2020」(計画期間:平成26年4月~平成29年3月)(以下「本計画」といいます。)を策定いたしました。本計画においては、営業の展開をこれまでの守りから攻めへと転換し、2020年に向けてステークホルダーの皆様に信頼されるグローバル企業へと成長をすること、そして企業価値の持続的向上のために収益力をより一層強化していくことを目標としております。当社グループはこれらの目標を達成するため、以下の「3つの重点強化策」と、それらを支える「5つの基盤整備項目」の構築に取り組んでおります。

 「3つの重点強化策」の1つ目は、「差別化による競争力強化」であり、海運業のケミカルタンカー、ガスキャリアなどが対象となります。重点戦略として、ケミカルタンカーでは、中東積み貨物輸送サービスの更なる強化に加えて、今後予想される北米積み貨物の増加に対応するため海外提携先との連携を強化し大西洋航路へ進出いたします。ガスキャリアでは、シェール革命で需要が拡大する各種ガスキャリア(LNGキャリア・LPGキャリア)事業に取り組んでおります。ドライバルクキャリアでは、中東航路での収益力拡大のため相積み貨物の獲得や船型の大型化に取り組みます。

2つ目は、「国際ネットワークの強化」です。シェール革命により今後、北米では石油製品や石油化学製品の生産量が増加し海上物流が大きく変化することが見込まれます。この変化に即応するとともに、東南アジア新興国・インドの成長を取り込むべく海外への展開を加速いたします。

3つ目は、「安定収益基盤の更なる強化」です。不動産業では、飯野ビルディングを含めた既存ビルの安定的な稼働に向けてビル運営と管理業務の品質の向上に取り組むと共に、ターゲットエリア内への資産の集約、新規・再開発案件などを通じて安定収益力の更なる強化に取り組んでおります。一方、海運業では、エネルギー船(オイル・ガス・一般炭)事業への取組みを強化し、既存顧客との関係の深度化に加えて、国内外の用船者との新たな関係の構築などに取り組んでおります。

これら「3つの重点強化策」を支える「5つの基盤整備項目」は「情報共有の緊密化と有効活用」、「リスク管理の強化徹底」、「人事制度改革と組織運営強化」、「グループITインテグレーション」及び「安全の徹底と環境負荷低減への取組み」です。特に、「グループITインテグレーション」の取組みについては、当社グループ全体の更なる業務効率化を目的として総務・企画部担当役員をトップとするプロジェクトチームを立ち上げ、グループITシステムの構築・統合を行っております。

 当社グループは、本計画の遂行により、海運業と不動産業を両輪とした経営の一層の深度化に努めております。

 

 中期経営計画「STEP FORWARD 2020」の詳細については当社ホームページをご参照下さい。

「STEP FORWARD 2020」策定のお知らせ: http://www.iino.co.jp/kaiun/docs/topics140424-1.pdf

「STEP FORWARD 2020」-補足資料:http://www.iino.co.jp/kaiun/docs/topics140424-2.pdf

 

 なお、当期における本計画の進捗状況につきましては、本有価証券報告書の「第2 事業の状況 3 対処すべき課題 (2) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題」をご参照下さい。

 

② コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方

 

 コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びコーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況につきましては、本有価証券報告書の「第4 提出会社の状況 6 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの状況」をご参照下さい。

 

3. 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要

 

 当社は、平成28年4月28日開催の当社取締役会において、同年6月28日開催の当社第125期定時株主総会において出席株主の皆様の議決権の過半数のご賛同を得て承認可決されることを条件として、当社の株券等の大規模買付行為に関する概ね下記の内容の対応方針(以下「本方針」といいます。)を導入することを決定し、また、本方針の導入については上記定時株主総会において出席株主の皆様の議決権の過半数のご賛同を得て承認可決頂いております。なお、本方針の有効期間は、平成31年に開催予定の当社第128期定時株主総会の終結時までです。また、平成28年3月31日現在の当社の大株主の状況につきましては、本有価証券報告書の「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (7) 大株主の状況」をご参照下さい。

 本方針の内容の詳細については、当社ホームページをご参照下さい。

http://www.iino.co.jp/kaiun/docs/topics160428-4.pdf

 

 

① 本方針の対象となる行為

 

 本方針は、特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする当社の株券等の買付行為、結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となるような当社の株券等の買付行為、又は、結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となる当社の他の株主との合意その他の行為(いずれも事前に当社取締役会が同意したものを除きます。このような買付行為を以下「大規模買付行為」といい、大規模買付行為を行い又は行おうとする者を以下「大規模買付者」といいます。)を対象としております。

 

② 大規模買付ルールの設定

 

 大規模買付者に従って頂く大規模買付ルールは以下のとおりです。

 

ア. 大規模買付意向表明書の当社への事前提出

 

 まず、大規模買付者には、大規模買付行為に先立ち、当社代表取締役社長に対して、本方針に定められた手続(以下「大規模買付ルール」といいます。)に従って大規模買付行為を行う旨の誓約等を記載した大規模買付意向表明書を提出して頂きます。

 

 

イ. 大規模買付情報の提供

 

 当社は、大規模買付意向表明書を提出して頂いた日から10営業日(初日不算入)以内に、大規模買付者に対して、提供して頂くべき情報を記載した提供情報リストを発送いたしますので、大規模買付者には、かかる提供情報リストに従って十分な情報を当社代表取締役社長に提供して頂きます。

 

 上記の提供情報リストに従い大規模買付者から提供して頂いた情報では、当該大規模買付行為の内容及び態様等に照らして、株主の皆様のご判断及び当社取締役会の評価・検討等のために不十分であると当社取締役会が外部専門家等の助言を得た上で当社取締役会から独立した組織である特別委員会に諮問し、その勧告を最大限尊重した上で合理的に判断する場合には、当社取締役会が別途請求する追加の情報を大規模買付者から提供して頂きます。

 

 また、当社は、大規模買付者から提供された情報が、大規模買付行為に対する株主の皆様のご判断及び当社取締役会の評価・検討等のために必要且つ十分な情報(以下「大規模買付情報」といいます。)として十分であり、大規模買付情報の提供が完了したと当社取締役会が特別委員会に諮問し、その勧告を最大限尊重した上で合理的に判断するときには、速やかに、その旨を大規模買付者に通知(以下「情報提供完了通知」といいます。)するとともに、その旨を開示いたします。

 

ウ. 取締役会評価期間の設定等

 

 当社は、情報提供完了通知を行った後、必要に応じて外部専門家等の助言を得た上で、大規模買付行為の評価の難易度等に応じて、最長60日間又は90日間を、当社取締役会による評価、検討、交渉、意見形成及び代替案立案のための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)として設定します。

 当社取締役会は、取締役会評価期間中に、大規模買付行為に関する当社取締役会としての意見を慎重にとりまとめ、大規模買付者に通知するとともに、速やかに株主の皆様に開示いたします。

 なお、当社取締役会が取締役会評価期間内に当社取締役会としての意見をとりまとめることができないことにつきやむを得ない事情がある場合には、当社取締役会は、必要に応じて外部専門家等の助言を得た上で、特別委員会に対して、その是非について諮問し、その勧告を最大限尊重した上で、合理的に必要と認められる範囲内で取締役会評価期間を最長30日間延長することができるものとします。(なお、当該延長は一度に限るものとします。)

 大規模買付者は、この取締役会評価期間の経過後においてのみ、大規模買付行為を開始することができるものとします。

 

③ 大規模買付行為がなされた場合における対応方針

 

 大規模買付者が大規模買付ルールに従わずに大規模買付行為を行い又は行おうとする場合には、当社取締役会は、特別委員会に諮問し、その勧告を最大限尊重した上で、必要且つ相当な対抗措置を発動することといたします。

 これに対して、大規模買付者が大規模買付ルールに従って大規模買付行為を行い又は行おうとする場合には、原則として、当該大規模買付行為に対する対抗措置は発動しません。但し、当該大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なうものであると認められる場合には、当社取締役会は、特別委員会に諮問し、その勧告を最大限尊重した上で、必要且つ相当な対抗措置を発動することがあります。

 当社取締役会が対抗措置を発動する場合には、社外監査役を含む当社監査役全員(但し、事故その他やむを得ない事由により当該取締役会に出席することができない監査役を除きます。)の賛成を得た上で決議することといたします。

 なお、所定の場合には、対抗措置の発動に際して、その是非につき株主の皆様のご意思を確認するための株主総会(以下「株主意思確認総会」といいます。)を招集し、対抗措置を発動するか否かのご判断を株主の皆様に行って頂くことができるものとします。株主意思確認総会を招集する場合には、当社取締役会は、特別委員会への諮問の手続を経ることなく、株主意思確認総会決議の内容に従って対抗措置の発動の決議をすることができます。

 

 本方針における対抗措置としては、新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)の無償割当てその他法令及び当社の定款上認められる手段を想定しております。そして、本新株予約権については、当社の株券等の大量保有者等は非適格者として行使することができない旨の差別的行使条件を定めることを予定しております。また、当社は、上記非適格者以外の株主の皆様が所有する本新株予約権を取得し、これと引替えに本新株予約権1個につき当社の普通株式1株を交付することができる旨の差別的取得条項を定めることを予定しております。

 

 

④ 本方針の廃止及び変更

 

 本方針の有効期間の満了前であっても、(ⅰ)当社株主総会において本方針の廃止若しくは変更が決議された場合又は(ⅱ)当社取締役会において本方針の廃止が決議された場合には、本方針はその時点で廃止又は変更されます。また、(ⅲ)平成29年以降毎年の当社定時株主総会の終結直後に開催される当社取締役会において、本方針の継続が決議されなかった場合には、本方針はその時点で廃止されます。

 

4. 上記2.の取組みについての当社取締役会の判断

 

 当社は、多数の投資家の皆様に中長期的に継続して当社に投資して頂くため、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させるための取組みとして、上記2.の取組みを実施しております。これらの取組みの実施を通じて、当社の中長期的な企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させ、それを当社の株式の価値に適正に反映させていくことにより、上記のような当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう大規模買付行為は困難になるものと考えられ、これらの取組みは、上記1.の基本方針に資するものであると考えております。

 

 したがいまして、上記2.の取組みは上記1.の基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

5. 上記3.の取組みについての当社取締役会の判断

 

 上記3.の取組みは、十分な情報の提供と十分な検討等の期間の確保の要請に応じない大規模買付者及び当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう大規模買付行為を行い又は行おうとする大規模買付者に対して、対抗措置を発動できることとしています。したがいまして、上記3.の取組みは、これらの大規模買付者による大規模買付行為を防止するものであり、上記1.の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みであります。また、上記3.の取組みは、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を確保し又は向上させることを目的として、大規模買付者に対して、当該大規模買付者が実施しようとする大規模買付行為に関する必要な情報の事前の提供及びその内容の評価・検討等に必要な期間の確保を求めるために導入されるものです。さらに、上記3.の取組みにおいては、株主意思の重視(株主総会決議による導入、株主意思確認総会の招集及びサンセット条項)、合理的且つ客観的な対抗措置発動要件の設定、特別委員会の設置等の当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記3.の取組みの合理性・公正性を確保するための様々な制度及び手続が確保されているものであります。

 したがいまして、上記3.の取組みは上記1.の基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

 

 

 

4【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成28年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運事業及び不動産事業の事業活動におきましては、船舶の就航水域・寄港地・入渠地、市場、契約先の属する国や地域、プロジェクト等の投資地域など全ての事業地域で、政治情勢、経済情勢、社会的な要因、自然災害や人災等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的なリスクとしては以下のようなものがあります。

 

(1) 船舶・建物における重大な事故・事件等によるリスク

 当社グループは「安全の確保が社業の基盤」を経営理念の第一に掲げ、事業に使用する船舶や建物での安全優先を経営上の使命としています。各事業部門に共通する安全対策については毎月一回開催される「安全環境委員会」にてレビューされ、さらに海運事業においては国際的な基準に基づいた品質管理マネジメントシステムを導入し、また「船舶安全対策委員会」を定期的に開催して事故防止や安全対策の徹底に努め、緊急事態にも適応できる体制を構築しております。しかしながら、もし船舶や建物での不測の事故が起こり人命・財産に関わる重大な事故や事件が発生した場合、あるいは油濁等の環境汚染や所有不動産に土壌汚染が認められ搬出や浄化の必要が生じた場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(2) 海運市況・不動産市況の変動によるリスク

 当社グループは海運市況や不動産市況の一時的な変動に左右されないよう、中長期契約を主体として安定的な営業収益の確保に努めておりますが、海運事業においては中長期契約の更改時期やスポット運航を余儀なくされる場合に、海上輸送量の増減や競争の激化、又は船腹需給のバランス等の影響により、運賃収入及び貸船料収入などが大きく変動する可能性があります。不動産事業においては、当社グループは東京都心部のオフィスビルを中心に不動産資産を保有しており、不動産市況の動向、特に東京都心のオフィス市場の空室率が変動する等の場合、賃貸料収入などが大きく変動する可能性があります。以上の結果、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、前述の営業収益の安定策には市況変動によるリスクをある程度軽減する一方、市況が逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。

 

(3) 資産価格の変動に関するリスク

 当社グループの保有する資産(船舶、土地、建物、投資有価証券等)について、経済状況、市況の変動等の要因で資産価格に変動があった場合、当該資産の売却等に伴う損益の実現や、減損損失の認識などにより、当社グループの業績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 他社との競合によるリスク
 当社グループは海運事業及び不動産事業において、国内外で多くの企業と競合関係にあります。他企業とのサービス・価格競争が激化した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(5) 燃料油価格の変動によるリスク
 海運事業においては、当社グループが購入する舶用燃料油の価格は原油の需給バランスや産油国・地域の情勢等により変動しますが、補油地域・時期の分散や減速航海の実施等による燃料油の消費量節減、荷主との燃料油価格変動調整条項の合意等の対策を講じ、業績に与える影響を軽減するよう努めております。しかしながら、燃料油価格の著しい変動等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(6) 船舶・不動産の稼働状況に関するリスク
 当社グループが使用する船舶や建物等においては天災、人災による事故、粗悪油やその他の不測の事態により、想定外の不稼働が発生する可能性があります。その他、不動産事業においてはオフィス賃貸借契約の未更新や中途解約その他の事由等により不稼働が発生する場合があります。その結果として、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(7) 船舶の売却や中途解約等におけるリスク
 海運事業においては、海運市況の動向や船舶の新技術開発・導入による既存船舶の陳腐化、安全・環境規制その他の諸規則の変更等による船舶の使用制限などにより、当社グループが保有する船舶を売却する場合や、当社グループが用船する船舶の用船契約を中途解約する場合があります。その結果として、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(8) 為替の変動によるリスク

 当社グループの事業のうち海運事業においては外貨建費用に比べ外貨建収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える状況にあります。また設備投資においては、外貨建の投資も多くあります。そのため、費用のドル化を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響を軽減するよう努めております。しかしながら、為替レートが大きく変動した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。なお、前述のヘッジ取引には為替レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、為替レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。

 

(9) 金利変動によるリスク

 当社グループは、船舶や不動産等の取得に要する設備投資及び事業活動に要する運転資金に内部資金を充当する他、外部からも資金を調達しております。この外部資金には変動金利で調達している部分があり、金利情勢を勘案の上、金利の固定化等により、金利変動による影響を軽減するよう努めておりますが、将来の金利変動によって資金調達コストが変動し、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、このような金利固定化等の取引には金利レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、金利レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性と固定化した期間中に条件の変更を余儀なくされた場合、解約料を負担することがあります。

 

(10) 規制の実施・改廃等によるリスク

 当社グループが使用する船舶の建造・登録・運航は、各種の国際条約による法的規制や、近年の環境保護や安全重視の高まりに起因する特定顧客及び船級協会等の規則や規制等の影響を受けます。その他の事業分野を含め、今後の事業活動の展開にあたって法的規制、特定顧客及び船級協会等の規則や規制等が新たに実施又は改廃された場合、それらに対応するためのコストが増大したり、当事業からの撤退や、遵守できなかった場合の事業活動の制限などにより、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(11) 世界各地域の政治情勢、経済情勢、社会的な要因等によるリスク

 当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における政治情勢、経済情勢、社会的な要因等により影響を受ける可能性があり、具体的には以下のようなリスクがあります。これらリスクに対しては当社グループ内外からの情報収集活動等を通じ、その予防と回避に努めておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

(ア) 政治的又はインフレなどの経済的要因

(イ) 事業・投資許可、税制、会計基準、為替管理、安全、環境、通商制限、私的独占の禁止などに関する公的規制とその改廃、商慣習、実務慣行、解釈

(ウ) 他社との合弁事業・提携事業の動向

(エ) 事故、火災、戦争、暴動、テロ、海賊、伝染性疾患の流行、ストライキその他の要因による社会的混乱

 

(12) 世界各地域の自然災害及び二次災害並びにそれらに付随する風評被害によるリスク

 当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における自然災害及びその二次災害により影響を受ける可能性があります。また特に、当社グループ本社所在地かつ保有する不動産資産が集中している首都圏や東日本において自然災害及びその二次災害が生じた場合は、当社の事業活動全般に大きな影響を及ぼすことが考えられます。また、自然災害及び二次災害に付随する風評被害が当社の事業活動全般に影響を及ぼす可能性もあります。当社グループでは、自然災害及びその二次災害発生時にも、可能な限りの事業継続を図るため、これらの事態を想定したBCP(事業継続計画)を策定しておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(13) 取引先の倒産等に関するリスク

 当社グループは、取引先と締結した用船契約・不動産賃貸借契約に基づき営業収益を確保しております。取引先の与信状態は契約締結時及び履行途中に調査しておりますが、輸送契約先、貸船契約先、借船契約先、テナント契約先等の取引先が抱えるリスクにより倒産等の不測の事態があった場合、当社グループにおいて不良債権の発生や、契約の中途解約、借船元の船舶差し押え・競売等が発生することが予想され、これら損失の額によっては、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(14) 投資計画の進捗に関するリスク

 当社グループは、海運事業においては船隊整備、不動産事業においてはビル建設等に関する投資を計画しておりますが、今後の海運市況や不動産市況、金融情勢、造船会社や建設会社の動向などによって、これらが計画通りに進捗しない場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。

 

(15) 情報・会計システムに関するリスク

 地震等の自然災害、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウィルス侵入等、また新システムの導入・新規機能の追加時に情報・会計システムに障害が発生した場合、業務が遅延・停止する可能性があります。顧客への情報提供及び業務処理が滞ることとなった場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(16) 中期経営計画に基づく経営目標が達成できないリスク

 当社グループは平成26年4月に3ヵ年の中期経営計画「STEP FORWARD 2020」を策定し、達成に向けて取り組んでおります。しかし本中期経営計画は、様々な外的要因により影響を受ける可能性があり、当初の目標を達成できない可能性があります。

 

 上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。

5【経営上の重要な契約等】

 記載すべき事項はありません。

6【研究開発活動】

 記載すべき事項はありません。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

(2) 経営成績の分析

① 損益の分析

 当期における売上高は、ドライバルクキャリア市況の歴史的な落ち込みや船隊縮小等により前期比5.3%減の948億43百万円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「1業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。

 営業利益は前期比1.6%増の81億15百万円となりました。これはケミカルタンカー市況が安定的に推移したことや円安等によるものです。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「1業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。

 経常利益は、前期比6.4%増の76億55百万円となりました。これは主に営業利益の増加と持分法投資損益が利益となったことによるものです

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比29.8%減の36億59百万円となりました。これは、主に減損損失の計上によるものです。

② 財政状態の分析

 当期末の総資産残高は前期末に比べ15億85百万円増加し、2,302億78百万円となりました。これは主に船舶取得による固定資産の増加によるものです

 負債残高は前期末に比べ22億8百万円増加し、1,649億93百万円となりました。これは主に借入金の増加によるものです

 純資産残高は前期末に比べ6億22百万円減少し、652億85百万円となりました。これは主にその他有価証券評価差額の減少及び繰延ヘッジ損益の減少によるものです

 以上の結果、当期末の連結自己資本比率は前期末比0.5%減の28.3%となり、1株当たり純資産は6.21円減の587.51円となりました。

 

(3) 流動性及び資金の源泉

① 資金需要

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費などの不動産業費用、各事業についての一般管理費などがあります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資などがあります。

② 財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入と社債の発行により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、海外子会社を含め本社において一元管理しております。

 当社グループの主要な事業資産である船舶の設備資金につきましては、竣工までは本社が海外の子会社に短期資金として貸し付け、竣工後は当該船舶の船価、投入される契約内容などを勘案して設備資金に切換えて調達しております。これら海外子会社の設備資金の大部分は金利スワップ契約により変動リスクをヘッジしており、円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高は1,303億83百万円となります。

 資金調達にあたっては、金利コストの低減に努める一方、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、有利子負債の削減を図っております。

 当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:「BBB+」、格付投資情報センター:「BBB」となっております。また、優良資産の担保価値から金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において50億円のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。

③ キャッシュ・フロー

 「第2 事業の状況  1. 業績等の概要  (2) キャッシュ・フローの状況」 をご覧下さい。