文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「安全の確保は社業の基盤である」との認識のもとに、よいサービスと商品を社会に適正な利潤を得て安定的に供給すると共に、すべてのコストについて不断の削減につとめ、効率的な経営を行うことを基本方針としております。
なお、その実行にあたっては社会的要請へ適応し、環境に配慮した行動をとることとしております。
(核となる事業)
企業集団の人的・物的資源を生かしながら、当社グループは引き続き次の3つの事業を核として推進します。
・全世界にわたる水域で原油、石油製品、石油化学製品、液化天然ガス、液化石油ガス、発電用石炭、肥料、木材チップなどの基礎原料の輸送を行う外航海運業
・国内、近海を中心とした水域で液化天然ガス、液化石油ガス、石油化学ガスなどの基礎原料の輸送を行う内航・近海海運業
・東京都心を中心に、賃貸オフィスビルの所有、運営、管理及びメンテナンス並びにフォトスタジオの運営を行う不動産業
(2)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが2017年4月に策定した前中期経営計画「Be Unique and Innovative. ‐創立125周年(2024年)に向けて‐」 (計画期間:2017年4月~2020年3月、以下「前計画」という) では、「バランス経営の推進と先進性への挑戦」をテーマとし、3つの重点強化策として、「更なる差別化の追求」、「安定収益の盤石化」及び「次世代ビジネスへの挑戦」に取組みました。「更なる差別化の追求」としては、オイルタンカーでの競争力強化や内航ガスビジネスでの優位性確保に努めました。「安定収益の盤石化」としては、不動産業でのターゲットエリア内への資産集約の一環として新橋田村町地区市街地再開発事業を推進すると共に、ケミカルタンカーの中東シェアの維持・拡大に努めました。また、「次世代ビジネスへの挑戦」としては、英国ロンドンのオフィスビルを取得し、メタノールを推進燃料とすることができる当社初の2元燃料主機関搭載船を建造しました。
前計画では海運業と不動産業を両輪とした経営の進化に注力して参りましたが、当社グループはこの度、2030年に向けたグループ企業の一層の成長を見据え、3ヵ年の中期経営計画 「Be Unique and Innovative. : The Next Stage‐2030年に向けて‐」(計画期間:2020年4月~2023年3月、以下「本計画」という) を策定しました。
本計画では、時代の要請に応え自由な発想で進化し続ける独立系グローバル企業としての地位確立を2030年に向けての目標に掲げます。本計画において当社グループは、前計画の方針を踏襲し、独自のビジネスモデルである“IINO MODEL”の形成、高品質なサービス“IINO QUALITY”の提供を更に追求し、自社の経済的価値を高めると同時に、サステナビリティへの積極的な取組みにより環境保全を含めた社会的ニーズに対応することで社会的価値をも創造し、当社グループの理解する共通価値の創造(CSV)を目指して参りたいと考えております。
本計画において、当社グループは、「共通価値の創造を目指して」をテーマとし、新たな3つの重点強化策として、「グローバル事業の更なる推進」、「安定収益基盤の更なる盤石化」及び「サステナビリティへの取組み」を重点的に実行します。重点強化策とするに当たって認識した課題、具体的な取組みについては以下の通りです。
①グローバル事業の更なる推進
増大する三国間輸送需要の取り込みに向けた海外展開への対応を重要課題として認識していることから、「グローバル事業の更なる推進」を重点強化策とします。具体的にはケミカルタンカーにおける既存の中東航路以外の航路進出に向けての取組み強化やガスキャリア・ドライバルクキャリアにおける海外顧客への営業展開の加速等を図り、更にはグローバル体制を支える組織力の強化を推進します。
②安定収益基盤の更なる盤石化
ボラタリティの大きい海運業の収益安定化及び顧客・社会のニーズが多様化する不動産業への対応を重要課題として認識し、「安定収益基盤の更なる盤石化」を重点強化策とします。具体的には不動産業において長期的視野での安定収益源となる都心基幹物件の獲得や海外・地方物件への進出に取組むと共に、オイルタンカーやLPGキャリアにおいて定期的な船体整備を実施します。
③サステナビリティへの取組み
地球環境・社会課題・新規ビジネスへの対応も重要課題として認識しており、「サステナビリティへの取組み」を重点強化策とします。具体的には社会的価値の創造に向けて、環境負荷低減に資する資産への投資や次世代燃料船への取組み強化、新規ビジネスへの開拓等を推進します。
更に、環境・社会を意識した経営を進めるべくESG・SDGsへの対応を強化し、デジタル基盤を整備し新たな価値を創造すべくデジタルトランスフォーメーションの推進も加速させます。
また、足元では新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、「感染症」という)の拡大に収束の目途が立っておらず、更に感染症が拡大する可能性も否定できないことから、今後の世界経済、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続く見込みであり、感染症が今後、世界経済に与える影響を厳しく受け止めております。
当社グループとしては感染症への対応として、海運業においては安全・安定的な海上輸送を止めず、社会インフラとしての役割を果たすこと、不動産業においては感染症対策を徹底し、安全なオフィス空間の提供を継続することを社会的使命と考えております。
安全・安心を支える当社グループの役職員及び本船乗組員の安全確保・感染防止に注力し、社会的使命を果たす為に、陸上職員においては在宅勤務体制をハード・ソフト両面で強化し、事業継続可能な体制を国内外の拠点で確立します。海上職員においては船内防疫の徹底として、外部からの訪船者の最小化、乗船者への検温実施等を実施する他、乗組員に対する支援としては精神的支援の積極的実施、配乗交代の円滑化への取組み等を実施します。
なお、本計画の詳細及び感染症に対する当社対応につきましては当社ホームページをご参照ください。
https://www.iino.co.jp/kaiun/index.html
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業及び不動産業の事業活動におきましては、船舶の就航水域・寄港地・入渠地、市場、契約先の属する国や地域、プロジェクト等の投資地域等全ての事業地域で、政治情勢、経済情勢、社会的な要因、自然災害や人災等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的なリスクとしては以下のようなものがあります。
(1) 船舶・建物における重大な事故・事件等によるリスク
当社グループは「安全の確保が社業の基盤」を経営理念の第一に掲げ、事業に使用する船舶や建物での安全優先を経営上の使命としています。各事業部門に共通する安全対策については毎月一回開催される「安全環境委員会」にてレビューされ、さらに海運業においては国際的な基準に基づいた品質管理マネジメントシステムを導入し、また「安全管理委員会」を定期的に開催して事故防止や安全対策の徹底に努め、緊急事態にも適応できる体制を構築しております。しかしながら、もし船舶や建物での不測の事故が起こり人命・財産に関わる重大な事故や事件が発生した場合、あるいは油濁等の環境汚染や所有不動産に土壌汚染が認められ搬出や浄化の必要が生じた場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(2) 海運市況・不動産市況の変動によるリスク
当社グループは海運市況や不動産市況の一時的な変動に左右されないよう、中長期契約を主体として安定的な営業収益の確保に努めておりますが、海運業においては中長期契約の更改時期やスポット運航を余儀なくされる場合に、海上輸送量の増減や競争の激化、又は船腹需給のバランス等の影響により、運賃収入及び貸船料収入等が大きく変動する可能性があります。不動産業においては、当社グループは東京都心部のオフィスビルを中心に不動産資産を保有しており、不動産市況の動向、特に東京都心のオフィス市場の空室率が変動する等の場合、賃貸料収入等が大きく変動する可能性があります。以上の結果、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、前述の営業収益の安定策には市況変動によるリスクをある程度軽減する一方、市況が逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。
(3) 資産価格の変動に関するリスク
当社グループの保有する資産(船舶、土地、建物、投資有価証券等)には、経済状況、市況の変動等の要因で資産価格に変動がある可能性があります。当社グループは四半期に一度、減損の兆候がある資産の把握をする等、資産価格や市況の大きな変動を注視しております。しかしながら、想定外の当該資産の売却等に伴う損益の実現や、減損損失の認識等により、当社グループの業績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 他社との競合によるリスク
当社グループは海運業及び不動産業において、国内外で多くの企業と競合関係にあります。国内及び海外で幅広い顧客に営業展開をする等、本リスクの軽減に努めておりますが、他企業とのサービス・価格競争が激化した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(5) 燃料油価格の変動によるリスク
海運業においては、当社グループが購入する舶用燃料油の価格は原油の需給バランスや産油国・地域の情勢等により変動しますが、補油地域・時期の分散や減速航海の実施等による燃料油の消費量節減、荷主との燃料油価格変動調整条項の合意等の対策を講じ、業績に与える影響を軽減するよう努めております。しかしながら、燃料油価格の著しい変動等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(6) 船舶・不動産の稼働状況に関するリスク
当社グループが使用する船舶や建物等においては天災、人災による事故、粗悪油やその他の不測の事態により、想定外の不稼働が発生する可能性があります。その他、不動産業においてはオフィス賃貸借契約の未更新や中途解約その他の事由等により不稼働が発生する場合があります。不稼働損失保険への加入や解約予告期間を長期に設定すること等で本リスクを軽減するよう努めておりますが、想定外の不稼働が発生した場合に当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(7) 船舶の売却や中途解約等におけるリスク
海運業においては、海運市況の動向や船舶の新技術開発・導入による既存船舶の陳腐化、安全・環境規制その他の諸規則の変更等による船舶の使用制限等により、当社グループが保有する船舶を売却する場合や、当社グループが用船する船舶の用船契約を中途解約する場合があります。市場の動向を見極めた売船、自社保有や用船といった船舶の保有形態のバランスを適切に保つこと等により本リスクの低減に努めておりますが、想定外の売船や用船契約の途中解約が発生した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(8) 為替の変動によるリスク
当社グループの事業のうち海運業においては外貨建費用に比べ外貨建収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える状況にあります。また設備投資においては、外貨建の投資も多くあります。そのため、費用のドル化を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響を軽減するよう努めております。しかしながら、為替レートが大きく変動した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。なお、前述のヘッジ取引には為替レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、為替レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。
(9) 金利変動によるリスク
当社グループは、船舶や不動産等の取得に要する設備投資及び事業活動に要する運転資金に内部資金を充当する他、外部からも資金を調達しております。この外部資金には変動金利で調達している部分があり、金利情勢を勘案の上、金利の固定化等により、金利変動による影響を軽減するよう努めておりますが、将来の金利変動によって資金調達コストが変動し、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、このような金利固定化等の取引には金利レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、金利レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性と固定化した期間中に条件の変更を余儀なくされた場合、解約料を負担することがあります。
(10) 規制の実施・改廃等によるリスク
当社グループが使用する船舶の建造・登録・運航は、各種の国際条約による法的規制や、近年の環境保護や安全重視の高まりに起因する特定顧客及び船級協会等の規則や規制等の影響を受けます。その他の事業分野を含め、今後の事業活動の展開にあたって法的規制、特定顧客及び船級協会等の規則や規制等が新たに実施又は改廃された場合、それらに対応するためのコストの増加、当事業からの撤退や遵守できなかった場合の事業活動の制限等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(11) 世界各地域の政治情勢、経済情勢、社会的な要因等によるリスク
当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における政治情勢、経済情勢、社会的な要因等により影響を受ける可能性があり、具体的には以下のようなリスクがあります。これらリスクに対しては当社グループ内外からの情報収集活動等を通じ、その予防と回避に努めておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(ア) 政治的又はインフレ等の経済的要因
(イ) 事業・投資許可、税制、会計基準、為替管理、安全、環境、通商制限、私的独占の禁止等に関する公的規制とその改廃、商慣習、実務慣行、解釈
(ウ) 他社との合弁事業・提携事業の動向
(エ) 事故、火災、戦争、暴動、テロ、海賊、伝染性疾患の流行、ストライキその他の要因による社会的混乱
(12) 世界各地域の自然災害及び二次災害並びにそれらに付随する風評被害によるリスク
新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下「感染症」という)の世界的な拡大を受けて世界経済は総じて急速に悪化しました。当社グループは感染症が今後の世界経済・事業環境に与える影響を厳しく受け止めており、収束時期や収束状況によっては海上輸送量の減少やオフィス市場における空室率の上昇といった事態を引き起こし、当社グループの事業活動に対して大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは感染症への対応として、陸上職員においては在宅勤務体制をハード・ソフト両面で強化し、事業継続可能な体制の確立に努めています。海上職員においては船内防疫の徹底として、外部からの訪船者の最小化、乗船者への検温実施等を実施する他、乗組員に対する支援としては精神的支援の積極的実施、配乗交代の円滑化への取組み等に努めています。
また、当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における感染症以外の自然災害及びその二次災害によっても影響を受ける可能性があります。特に、当社グループ本社所在地であり保有する不動産資産が集中している首都圏や東日本において自然災害及びその二次災害が生じた場合は、当社グループの事業活動全般に大きな影響を及ぼすことが考えられます。また、自然災害及び二次災害に付随する風評被害が当社グループの事業活動全般に影響を及ぼす可能性もあります。当社グループでは、感染症を含む自然災害及びその二次災害発生時にも、可能な限りの事業継続を図るため、これらの事態を想定したBCP(事業継続計画)を策定しておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(13) 取引先の倒産等に関するリスク
当社グループは、取引先と締結した用船契約・不動産賃貸借契約に基づき営業収益を確保しております。取引先の与信状態は契約締結時及び履行途中に調査しておりますが、輸送契約先、貸船契約先、借船契約先、テナント契約先等の取引先が抱えるリスクにより倒産等の不測の事態があった場合、当社グループにおいて不良債権の発生や、契約の中途解約、借船元の船舶差し押え・競売等が発生することが予想され、これら損失の額によっては、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(14) 投資計画の進捗に関するリスク
当社グループは、海運業においては船隊整備、不動産業においてはビル建設等に関する投資を計画しておりますが、今後の海運市況や不動産市況、金融情勢、造船会社や建設会社の動向等によって、これらが計画通りに進捗しない場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(15) 情報・会計システムに関するリスク
地震等の自然災害、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウィルス侵入等、また新システムの導入・新規機能の追加時に情報・会計システムに障害が発生した場合、業務が遅延・停止する可能性があります。日々高度化する本リスクへの対応として、適切な情報セキュリティ対策等を行っておりますが、顧客への情報提供及び業務処理が滞ることとなった場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(16) 中期経営計画に基づく経営目標が達成できないリスク
当社グループは2020年4月に3ヵ年の中期経営計画「Be Unique and Innovative. : The Next Stage‐2030年に向けて‐」を策定し、達成に向けて取り組んでおります。しかし、本中期経営計画は、様々な外的要因により影響を受ける可能性があり、当初の目標を達成できない可能性があります。
上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度(以下、「当期」という)の世界経済は、米国の通商政策や各国経済の低迷により総じて減速基調で推移し、当期末にかけて新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、「感染症」という)の世界的な拡大で減速傾向がさらに強まりました。米国では、中国との通商問題の緩和や個人消費の増加等から景気は緩やかな回復基調にありましたが、感染症の影響により下振れのリスクが高まりました。欧州では、独国の製造業の落ち込みや英国のEU離脱問題を巡る混乱に加えて、感染症の影響から景気は急速に減速しました。中国では、感染症の影響で経済活動が大幅に縮小し、景気は顕著に減速しました。
わが国経済は、雇用・所得の環境改善が続いていましたが、当期末にかけて感染症の影響により大幅に落ち込みを見せ、先行き不透明な状況となりました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、オイルタンカーや大型ガスキャリアでは堅調に推移しました。しかしながら、ドライバルクキャリアでは感染症の影響もあり、当期末にかけて不透明感が強まりました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改への取り組みをはじめとして、効率配船及び運航採算の向上を図りました。不動産業においては、一部事務所テナントの移転に伴い空室が生じていた飯野ビルディングで、新規テナントの入居が開始される等、収益は改善に向かいました。
以上の結果、売上高は891億79百万円(前期比5.1%増)となりました。外航海運業においては増益となったものの、内航・近海海運業及び不動産業においては減益となったため、営業利益は39億76百万円(前期比16.8%減)、経常利益は34億55百万円(前期比26.5%減)となりました。また、売船市場の動向を見極め老齢船の処分を行い、固定資産売却益(特別利益)を計上したこと等から親会社株主に帰属する当期純利益は37億88百万円(前期比19.1%減)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当期の外航海運市況は以下の通りです。
オイルタンカー市況は、当期初においては製油所の定期修繕に伴う需要の落ち込み等の影響で低迷していましたが、夏場以降、サウジアラビア石油施設への攻撃による被災及び米国によるイラン産原油の輸送に従事した中国船社への制裁等により高騰しました。冬場にかけても、需要期入りやSOx規制対応に伴う船腹供給の引き締まり等から市況は高い水準で推移しました。当期末には感染症の影響で原油需要低下により一時市況は落ち込んだものの、OPECプラスの協調減産体制の決裂、サウジアラビアの増産への方針変更により原油価格が急落した影響で洋上備蓄需要が高まったこと等から市況は再び高騰しました。
ケミカルタンカー市況は、中東域での地政学的リスクや世界経済の減速の影響等により低調に推移していましたが、秋口よりオイルタンカー市況の上昇やSOx規制対応のための燃料油の切り替えに伴う燃料コストの上昇に引きずられる形で市況も上昇した影響等により回復基調となりました。しかしながら、当期末には感染症の影響等により荷動きが減少し、市況は若干弱含みました。
大型ガスキャリアのうち、LPGキャリア市況は、夏場以降、米国からアジア向け裁定取引の活発化や、季節的要因による滞船等により船腹需給が引き締まったこと等から上昇しました。当期末にかけ輸送需要の減少により市況が弱含む場面はあったものの、燃料費下落の影響もあり、市況は概ね好調に推移しました。LNGキャリア市況は、一部軟調な局面があったものの、夏場および冬場のエネルギー需要期に例年通り輸送需要が見られ、概ね堅調に推移しました。
ドライバルクキャリア市況は、貿易摩擦やブラジルの鉱山ダム事故等の影響が前年から継続し、軟調な幕開けとなりました。夏場から秋口にかけては、南米出し鉄鉱石や穀物の荷動きが増加し、一旦市況は好転しましたが、SOx規制発効を前に冬場以降から再び下落しました。更にはアジアでの旧正月による減速に加え、感染症の影響による経済活動の縮小もあり、市況が低迷する中で当期末を迎えました。
なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥109.13/US$(前期は¥110.67/US$)、船舶燃料油価格についてはC重油380cStの平均価格はUS$412/MT(前期はUS$430/MT)、適合燃料油の平均価格はUS$598/MT(前期は使用せず)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
オイルタンカーにおいては、支配船腹を引き続き長期契約に投入しておりましたが、第1四半期中に入渠船があった影響等から損益は悪化しました。また、当期末には当社初のSOxスクラバーを搭載したVLCCが竣工しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州向け及びアジア向けの数量輸送契約に加え、北アフリカからの燐酸液やスポット貨物を積極的に取り込むことにより稼働の維持に努めました。当社と米国オペレーターとの合弁事業においても、既存船から燃費の良い船への代替を進め、数量輸送契約やスポット貨物の集荷により効率的な配船に努めました。また、サステナビリティへの取り組みとして、従来の重油のみならず、メタノールを推進燃料とすることが可能な当社初の2元燃料主機関搭載船が竣工し、長期契約に投入されました。
大型ガスキャリアにおいては、LPGキャリア及びLNGキャリア共に既存の中長期契約へ継続投入することで安定収益を確保したことに加え、LPGキャリアの一部が好市況を享受しました。
ドライバルクキャリアにおいては、石炭専用船とチップ専用船については順調に稼働しました。ポストパナマックス船については、市況上昇のタイミングを捉えた配船や数量輸送契約に投入し採算改善に努め、ハンディ船については、短期貸船により市況エクスポージャーの低減も図りつつ、契約貨物を中心に効率配船に努めました。その結果、ポストパナマックス船及びハンディ船では運航採算は市況と比較し堅調に推移しましたが、市況悪化の影響を完全に避けることはできませんでした。
以上の結果、外航海運業の売上高は683億91百万円(前期比5.4%増)、営業利益は6億51百万円(前期比11.8%増)となりました。
②内航・近海海運業
当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、夏場のLPG不需要期及び暖冬の影響で出荷は低調に推移したものの、製油所間転送需要は底堅く、堅調に推移しました。石油化学ガスもプラントの定期修繕及び設備検査等に伴い出荷は低調に推移しましたが、業界全体として修繕期間中の洋上ストレージ需要及び船員不足に伴う稼働隻数の減少も影響し、船腹需給は均衡して推移しました。
近海ガス輸送の市況は、主要貨物であるプロピレン、塩化ビニルモノマーの国内生産量がプラントの定期修繕等に伴い低調であったため、軟調に推移しました。また、5,000㎥型高圧ガス船において余剰が生じたため、当社が主力とする3,500㎥型高圧ガス船の市況も軟化しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、LPGの季節的要因による輸送量減少と石油化学ガス出荷プラントの定期修繕及び設備検査等による出荷量減少の影響を受けましたが、中長期契約に基づく安定的な売上確保と効率配船の実施に努めました。しかしながら、当期に入渠工事が重なった影響により減益となりました。
近海ガス輸送においては東南アジアの荷動きが軟調で市況下落の影響はありましたが、定期用船契約を締結していることで、安定した貸船料収入を維持することができました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は92億44百万円(前期比1.9%減)、営業利益は5億70百万円(前期比38.5%減)となりました。
③不動産業
当期の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、企業の人員拡大等への対応に伴うオフィス拡張、統合移転需要により新築及び築年数の経過していない大規模ビルを中心に入居スペースの減少が進み、既存ビルを含めた全体の空室率は低下したこと等から上昇傾向で推移しました。
貸ホール・貸会議室においては、多数の競合施設がある中、厳しい顧客獲得競争が続きました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、広告需要が引き続き堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
賃貸ビルにおいては、飯野ビルディングで一部事務所テナントの移転に伴い空室期間が生じましたが、その後の好調なオフィスビル賃貸市況を反映し、新規テナントの誘致に成功しました。一方、この移転時にLED照明の入替工事などを実施し、設備更新費用も増加したこと等から、同ビルは総じて減益となりました。その他の各所有ビルにおいては順調な稼働を維持しました。また、新橋田村町地区市街地再開発事業では、新築建物の鉄骨建方工事に着手しており、現在のところ2021年6月末の竣工を予定しています。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、催事の積極的な誘致と映像設備の更新により高稼働を維持していましたが、当期末において、感染症の影響による催事自粛要請により稼働に著しい影響を受けました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門の稼働が堅調に推移し、安定した収益を確保しました。
また、当社は次世代ビジネスへの取組みの一環として、連結子会社を2020年1月に設立の上、2020年3月に英国ロンドンのオフィスビルを取得しました。なお、同社財務諸表の当社連結財務諸表への反映は、翌第1四半期連結会計期間からとなります。
以上の結果、不動産業の売上高は116億67百万円(前期比9.4%増)、営業利益は27億55百万円(前期比15.8%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、130億79百万円のプラス(前期は145億49百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益41億93百万円と減価償却費97億40百万円によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は148億40百万円のマイナス(前期は212億2百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶及び不動産への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出177億11百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却による収入22億25百万円を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は62億34百万円のプラス(前期は58億26百万円のプラス)となりました。これは主に長期借入れによる収入330億28百万円が、長期借入金の返済による支出226億90百万円を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は142億8百万円(前期末は98億26百万円)となりました。
尚、現金及び預金のうち約52億円は、決算日を12月31日とする連結子会社2社における固定資産の取得に伴い2020年3月に支出しております。これらの取得資産は翌第1四半期連結会計期間において有形固定資産として計上する予定です。
生産、受注及び販売の実績
この項目は「業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、連結財務諸表作成において固定資産の減損判定における将来キャッシュ・フローの見積りが、特に重要であると考えております。これらの見積りは減損の認識判定及び減損損失計上金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。減損判定における将来キャッシュ・フローの見積りは、中期経営計画等に基づいており、第三者における評価を活用するとともに、一般に入手可能な市場情報を考慮に入れています。会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響は、「第5 経理の状況 注記事項(追加情報)」に含めて記載しております。
(2) 経営成績の分析
① 損益の分析
当期における売上高は、前期比5.1%増の891億79百万円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
営業利益は前期比16.8%減の39億76百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
経常利益は、前期比26.5%減の34億55百万円となりました。これは主に受取配当金や為替差益の減少といった営業外収益の減少によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比19.1%減の37億88百万円となりました。これは主に老齢船の処分に伴い計上した固定資産売却益によるものです。
② 財政状態の分析
当期末の総資産残高は前期末に比べ86億52百万円増加し、2,310億88百万円となりました。これは主に船舶の竣工による増加や現金及び預金の増加によるものです。
負債残高は前期末に比べ83億1百万円増加し、1,576億60百万円となりました。これは主に借入金の増加によるものです。
純資産残高は前期末に比べ3億51百万円増加し、734億28百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益計上に伴う利益剰余金の増加によるものです。
以上の結果、当期末の連結自己資本比率は31.7%(前期末は32.8%)となりました。
(3) 流動性及び資金の源泉
① 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費等の不動産業費用、各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資等があります。
② 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高(リース債務を除く)は1,263億27百万円となりました。
また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、設備資金の借入の大部分について金利スワップなどの手段を活用しております。
当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:
「BBB+」、格付投資情報センター:「BBB」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において複数年を含む合計180億円並びにUS$6千万のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。
③ キャッシュ・フロー
「業績等の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご覧下さい。
記載すべき事項はありません。
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