文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「安全の確保は社業の基盤である」との認識のもとに、よいサービスと商品を社会に適正な利潤を得て安定的に供給すると共に、すべてのコストについて不断の削減につとめ、効率的な経営を行うことを基本方針としております。
なお、その実行にあたっては社会的要請へ適応し、環境に配慮した行動をとることとしております。
(核となる事業)
企業集団の人的・物的資源を生かしながら、当社グループは引き続き次の3つの事業を核として推進します。
・全世界にわたる水域で原油、石油化学製品、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、発電用石炭、肥料、木材チップなどの基礎原料の輸送を行う外航海運業
・国内、近海を中心とした水域で液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、石油化学ガスなどの基礎原料の輸送を行う内航・近海海運業
・東京都心とロンドン中心部における賃貸オフィスビルの所有、運営、管理及びメンテナンス並びにフォトスタジオの運営を行う不動産業
(2)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2030年に向けたグループ企業の一層の成長を見据えて策定した3ヵ年の中期経営計画 「Be Unique and Innovative. : The Next Stage‐2030年に向けて‐」(計画期間:2020年4月~2023年3月、以下「本計画」という) を2020年度より進めています。
本計画では、2030年に向けた目標“IINO VISION for 2030”を掲げ、時代の要請に応え自由な発想で進化し続ける独立系グローバル企業としての地位確立を目指しています。独自のビジネスモデルである“IINO MODEL”の形成、高品質なサービス“IINO QUALITY”の提供を更に追求し、自社の経済的価値を高めると同時に、サステナビリティへの積極的な取り組みにより環境保全を含めた社会的ニーズに対応することで社会的価値をも創造し、当社グループの理解する共通価値の創造(CSV)を目指したいと考え、本計画を策定しました。
本計画では「共通価値の創造を目指して」をテーマとしており、3つの重点強化策として挙げた「グローバル事業の更なる推進」、「安定収益基盤の更なる盤石化」及び「サステナビリティへの取組み」を重点的に実行してきました。
各重点強化策の具体的な推進事項・主な取り組みは以下の通りです。
本計画ではこれらの重点強化策に加え、ESG・SDGsへの対応強化のため、環境・社会等の課題の克服に真正面から取り組み、経済的価値に加えて社会的価値を創造する経営(以下、ESG経営)の推進を掲げております。経営理念に基づいたESG経営を実践し、持続可能な社会の実現と企業の成長を追求していきます。
なお、本計画の詳細につきましては当社ホームページをご参照ください。
https://www.iino.co.jp/kaiun/ir/plan.html
(サステナビリティの推進体制)
社会と企業のサステナビリティ(持続可能性)を経営の中心に据えることが今まで以上に求められる時代となりました。当社では、以下の通り組織を設立し、サステナビリティの推進体制を強化しました。
当社のESG経営では、ステークホルダー・社会にとって重要で、かつ、当社の企業価値に大きく影響するマテリアリティ(重要課題)を克服することで社会的価値及び経済的価値を創造することを目標としています。マテリアリティと当社の経営戦略とを結合させ、着実に実行に移すことでこの目標を実現します。
これらのマテリアリティは、各部・グループ各社の年度ごとの業務遂行計画で進捗管理をしていきます。また、外部環境の変化にも対応するため、PDCAサイクルに基づき、取締役会において議論・評価を行い、定期的に見直すことで取り組みを推進します。
なお、当社のサステナビリティへの取り組みの詳細につきましては当社ホームページをご参照ください。
https://www.iino.co.jp/kaiun/csr/
(新型コロナウイルス感染症への対応)
世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、「感染症」という。)の拡大は一進一退ながら、ワクチン接種が進展したことで重症化率が低下し、一部地域を除き活動の制約が緩和されつつあります。一方、今後も新たな変異株の流行等の可能性は否定できず、世界経済や当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が継続する見込みです。状況が悪化した場合には、当社グループでは以下の影響が長期化する可能性があります。
・海運業 …港湾の検疫強化による滞船、船員交代可能国への寄港による離路の発生等
・不動産業…保有する賃貸ビルの商業フロアの賃料低下や空室率上昇、イイノホール&カンファレンスセンターの稼働低下等
当社グループとしては、感染症への対応として、海運業においては安全・安定的な海上輸送を止めず、社会インフラとしての役割を果たすこと、不動産業においては感染症対策を徹底し、安全なオフィス空間の提供を継続することを社会的使命と考えております。
安全・安心を支える当社グループの役職員及び本船乗組員の安全確保・感染防止に注力し社会的使命を果たすために、陸上職員においては在宅勤務体制をハード・ソフト両面で強化し、事業継続可能な体制の確立に努めております。海上職員においては船内防疫の徹底として、外部からの訪船者の限定、乗船者への検温等を実施するほか、乗組員に対する支援としては、積極的な精神的支援や、配乗交代の円滑化への取り組み等を実施しております。引き続き感染症の拡大状況を注視しつつ、社会的使命を果たすために適切な対応を行って参ります。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業及び不動産業の事業活動におきましては、船舶の就航水域・寄港地・入渠地、市場、契約先の属する国や地域、プロジェクト等の投資地域等全ての事業地域で、政治情勢、経済情勢、社会的な要因、自然災害や人災等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的なリスクとしては以下のようなものがあります。
(1) 船舶・建物における重大な事故・事件等によるリスク
当社グループは「安全の確保が社業の基盤」を経営理念の第一に掲げ、事業に使用する船舶や建物での安全優先を経営上の使命としています。各事業部門に共通する安全対策については毎月一回開催される「安全環境委員会」にてレビューされ、さらに海運業においては国際的な基準に基づいた品質管理マネジメントシステムを導入し、また「安全管理委員会」を定期的に開催して事故防止や安全対策の徹底に努め、緊急事態にも適応できる体制を構築しております。しかしながら、もし船舶や建物での不測の事故が起こり人命・財産に関わる重大な事故や事件が発生した場合、あるいは油濁等の環境汚染や所有不動産に土壌汚染が認められ搬出や浄化の必要が生じた場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(2) 海運市況・不動産市況の変動によるリスク
当社グループは海運市況や不動産市況の一時的な変動に左右されないよう、中長期契約を主体として安定的な営業収益の確保に努めておりますが、海運業においては中長期契約の更改時期やスポット運航を余儀なくされる場合に、海上輸送量の増減、競争の激化、船腹需給の変動等の影響により、運賃収入及び貸船料収入等が大きく変動する可能性があります。不動産業においては、当社グループは東京都心部のオフィスビルを中心に不動産資産を保有しており、不動産市況の動向、特に東京都心のオフィス市場の空室率が変動する等の場合、賃貸料収入等が大きく変動する可能性があります。以上の結果、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、前述の営業収益の安定策には、市況変動によるリスクをある程度軽減する一方、市況が逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。
(3) 資産価格の変動に関するリスク
当社グループの保有する資産(船舶、土地、建物、投資有価証券等)には、経済状況、市況の変動等の要因で資産価格に変動がある可能性があります。特に、外航海運業においては、海上輸送量の増減、競争の激化、船腹需給の変動等により運賃が大きく変動することから、減損損失の認識要否の判定及び回収可能価額の算定に重要な影響を及ぼす将来の運賃予測には高い不確実性を伴います。当社グループは四半期に一度、減損の兆候がある資産の把握をする等、資産価格や市況の大きな変動を注視しております。しかしながら、想定外の当該資産の売却等に伴う損益の実現や、減損損失の認識等により、当社グループの業績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 他社との競合によるリスク
当社グループは海運業及び不動産業において、国内外で多くの企業と競合関係にあります。国内及び海外で幅広い顧客に営業展開をする等、本リスクの軽減に努めておりますが、他企業とのサービス・価格競争が激化した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(5) 燃料油価格の変動によるリスク
海運業においては、当社グループが購入する舶用燃料油の価格は原油の需給バランスや産油国・地域の情勢等により変動しますが、補油地域・時期の分散や減速航海の実施等による燃料油の消費量節減、荷主との燃料油価格変動調整条項の合意等の対策を講じ、業績に与える影響を軽減するよう努めております。しかしながら、燃料油価格の著しい変動等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(6) 船舶・不動産の稼働状況に関するリスク
当社グループが使用する船舶や建物等においては天災、人災による事故、粗悪油やその他の不測の事態により、想定外の不稼働が発生する可能性があります。その他、不動産業においてはオフィス賃貸借契約の未更新や中途解約その他の事由等により不稼働が発生する場合があります。不稼働損失保険への加入や解約予告期間を長期に設定すること等で本リスクを軽減するよう努めておりますが、想定外の不稼働が発生した場合に当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(7) 船舶の売却や中途解約等におけるリスク
海運業においては、海運市況の動向や船舶の新技術開発・導入による既存船舶の陳腐化、安全・環境規制その他の諸規則の変更等による船舶の使用制限等により、当社グループが保有する船舶を売却する場合や、当社グループが用船する船舶の用船契約を中途解約する場合があります。市場の動向を見極めた売船、自社保有や用船といった船舶の保有形態のバランスを適切に保つこと等により本リスクの低減に努めておりますが、想定外の売船や用船契約の途中解約が発生した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(8) 為替の変動によるリスク
当社グループの事業のうち海運業においては外貨建費用に比べ外貨建収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える状況にあります。また設備投資においては、外貨建の投資も多くあります。そのため、費用のドル化を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響を軽減するよう努めております。しかしながら、為替レートが大きく変動した場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。なお、前述のヘッジ取引には、為替レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、為替レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。
(9) 金利変動によるリスク
当社グループは、船舶や不動産等の取得に要する設備投資及び事業活動に要する運転資金に内部資金を充当する他、外部からも資金を調達しております。この外部資金には変動金利で調達している部分があり、金利情勢を勘案の上、金利の固定化等により、金利変動による影響を軽減するよう努めておりますが、将来の金利変動によって資金調達コストが変動し、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。また、このような金利固定化等の取引には、金利レートの変動によるリスクをある程度軽減する一方、金利レートが逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性と、固定化した期間中に条件の変更を余儀なくされた場合、解約料を負担することがあります。
(10) 規制の実施・改廃等によるリスク
当社グループが使用する船舶の建造・登録・運航は、各種の国際条約による法的規制や、近年の環境保護や安全重視の高まりに起因する特定顧客及び船級協会等の規則や規制等の影響を受けます。その他の事業分野を含め、今後の事業活動の展開にあたって法的規制、特定顧客及び船級協会等の規則や規制等が新たに実施又は改廃された場合、それらに対応するためのコストの増加、当事業からの撤退や遵守できなかった場合の事業活動の制限等により、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(11) 世界各地域の政治情勢、経済情勢、社会的な要因等によるリスク
当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における政治情勢、経済情勢、社会的な要因等により影響を受ける可能性があり、具体的には以下のようなリスクがあります。これらリスクに対しては当社グループ内外からの情報収集活動等を通じ、その予防と回避に努めておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(ア) 政治的又はインフレ等の経済的要因
(イ) 事業・投資許可、税制、会計基準、為替管理、安全、環境、通商制限、私的独占の禁止等に関する公的規制とその改廃、商慣習、実務慣行、解釈
(ウ) 他社との合弁事業・提携事業の動向
(エ) 事故、火災、戦争、暴動、テロ、海賊、伝染性疾患の流行、ストライキその他の要因による社会的混乱
(12) 世界各地域の自然災害及び二次災害並びにそれらに付随する風評被害によるリスク
当社グループは新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下「感染症」という。)が世界経済・事業環境に与える影響を厳しく受け止めており、感染拡大の状況によっては、海上輸送量の減少、船員交代の制限及びオフィス市場における空室率の上昇等の事態を引き起こし、当社グループの事業活動に対して大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは感染症への対応として、陸上職員においては在宅勤務体制をハード・ソフト両面で強化し、事業継続可能な体制の確立に努めています。海上職員においては船内防疫の徹底として、外部からの訪船者の限定、乗船者への検温実施等を実施する他、乗組員に対する支援としては精神的支援の積極的実施、配乗交代の円滑化への取組み等に努めています。
また、当社グループの事業活動は、日本を含むアジア、中東、欧米、その他の地域に及んでおり、各地域における感染症以外の自然災害及びその二次災害によっても影響を受ける可能性があります。特に、当社グループ本社所在地であり保有する不動産資産が集中している首都圏や東日本において自然災害及びその二次災害が生じた場合は、当社グループの事業活動全般に大きな影響を及ぼすことが考えられます。また、自然災害及び二次災害に付随する風評被害が当社グループの事業活動全般に影響を及ぼす可能性もあります。当社グループでは、感染症を含む自然災害及びその二次災害発生時にも、可能な限りの事業継続を図るため、これらの事態を想定したBCP(事業継続計画)を策定しておりますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(13) 取引先の倒産等に関するリスク
当社グループは、取引先と締結した用船契約・不動産賃貸借契約に基づき営業収益を確保しております。取引先の与信状態は契約締結時及び履行途中に調査しておりますが、輸送契約先、貸船契約先、借船契約先、テナント契約先等の取引先が抱えるリスクにより倒産等の不測の事態があった場合、当社グループにおいて不良債権の発生や、契約の中途解約、借船元の船舶差し押え・競売等が発生することが予想され、これら損失の額によっては、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(14) 投資計画の進捗に関するリスク
当社グループは、海運業においては船隊整備、不動産業においてはビル建設等に関する投資を計画しておりますが、今後の海運市況や不動産市況、金融情勢、造船会社や建設会社の動向等によって、これらが計画通りに進捗しない場合、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
(15) 情報・会計システムに関するリスク
地震等の自然災害、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウィルス侵入等、また新システムの導入・新規機能の追加時に情報・会計システムに障害が発生した場合、業務が遅延・停止する可能性があります。日々高度化する本リスクへの対応として、適切な情報セキュリティ対策等を行っておりますが、顧客への情報提供及び業務処理が滞ることとなった場合、当社グループの業績、株価及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(16) 中期経営計画に基づく経営目標が達成できないリスク
当社グループは2020年4月に3ヵ年の中期経営計画「Be Unique and Innovative. : The Next Stage‐2030年に向けて‐」を策定し、達成に向けて取り組んでおります。しかし、本中期経営計画は、様々な外的要因により影響を受ける可能性があり、当初の目標を達成できない可能性があります。
(17) 気候変動に関するリスク
当社グループでは、経営理念にて「社会的要請へ適応し環境に十分配慮」することを掲げており、行動憲章にて「グループの事業から生ずる環境への負荷を低減するため、内外の関連法規および国際ルールを遵守し、海洋、港湾、所有ビル隣接地域の環境保全に努める。」と定めています。経営理念・行動憲章の実践のために、2020年度に策定した中期経営計画「Be Unique and Innovative. : The Next Stage ‐2030年に向けて‐」において「サステナビリティへの取組み」を重点強化策として挙げ、温室効果ガスの削減等、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。
当社グループは、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、その分析と対応を強化し、関連情報の開示拡充を進めるため、2021年7月に気候関連財務情報開示タスクフォースの提言(以下、「TCFD提言」という。)に賛同を表明しました。TCFD提言に沿って当社が抽出した主なリスクは以下の通りです。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績、株価及び財務状況等が影響を受ける可能性があります。
■海運業
・化石燃料の需要減少による売上の減少
・カーボンプライシングによる費用の増加
・燃費規制対応による船舶建造費の増加
・燃費規制対応(次世代燃料使用)による燃料費の増加
■不動産業
・建物の省エネ化に関する建設・改修費の増加
・立地エリアにおいて保有ビルの環境性能等が劣後した場合、賃料、入居率、資産価値の下落
なお、気候変動の問題は、新たな輸送需要の創出や、保有資産の環境性能向上による差別化を促す可能性もあり、当社グループにとって新規ビジネス機会の増加につながる側面があります。
上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度(以下、「当期」という。)の世界経済は、依然として新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、「感染症」という。)の影響が続き、先進国及び新興国でインフレが急加速したことに加え、当期末にはロシアがウクライナに侵攻したことで先行き不透明感が増したものの、一部の国を除き景気回復の動きが見られました。
米国では、インフレが加速する中、個人消費や雇用は堅調に推移しました。中国では、固定資産投資や輸出が景気拡大を牽引していたものの、年明け以降はゼロコロナ政策に伴う厳しい活動制限により、個人消費の減速基調が継続しました。欧州では、感染症の変異株の拡大による一時的な行動制限の再導入や、期末にかけてはウクライナ侵攻の影響があったものの、個人消費は堅調に推移し、景気は緩やかに回復しました。我が国の経済は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による下押し圧力はあったものの、回復基調を維持しました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、ドライバルク船では期中を通して高い水準で推移し、ケミカルタンカーにおいても回復基調となりました。一方で、感染症の影響による船員交代の制限等の運航上のリスクは解消されず、予断を許さない状況が続きました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組み等により、運航採算の向上を図った他、売船市場の動向を見極め船舶の処分を行い、固定資産売却益(特別利益)を計上しました。不動産業においては、当社所有ビルの商業フロアの営業やイイノホール&カンファレンスセンター等で感染症の影響を受けましたが、オフィスフロアは順調な稼働を継続したことから、全体としては安定した収益を確保しました。
以上の結果、売上高は1,041億円(前期比17.1%増)、営業利益は75億24百万円(前期比10.1%増)、経常利益は94億31百万円(前期比38.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は125億26百万円(前期比63.6%増)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当期の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、経済活動回復に伴い原油需要が増加し、夏場より継続してOPECプラスの協調減産幅が縮小されているにもかかわらず、依然として船腹供給圧力が強いことから、総じて低迷が続きました。
ケミカルタンカー市況は、中国港湾での検疫強化等の影響を受け、アジア域内では夏場以降に船腹需給が引き締まり、堅調に推移しました。その他の地域では、プロダクトタンカーのケミカル船市場への流入や、米国南部での悪天候によるケミカルプラントの一時的な操業停止等の影響により、総じて低調に推移しておりましたが、その後は冬場の需要期に入ったことや、ウクライナ情勢の悪化を受けて石油・ケミカル製品の米国や中東から欧州への輸送需要が増加したこと、付随してプロダクトタンカーが市場から退出したこと等を背景に、市況の上昇が見られました。
大型ガス船のうち、LPG船市況は、夏場の不需要期の荷動き減少により一時軟化したものの、米国からの堅調な輸出や、中国のPDHプラント及びインドの家庭向けの旺盛な需要に加え、入渠船の増加やパナマ運河の滞船等による船腹需給の引き締まりに支えられ、期中を通して概ね堅調に推移しました。LNG船市況は、中国を中心としたアジアや欧州での天然ガス需要増加によって秋口に高騰しました。しかしながら、年明け以降は北半球の冬場の需要が落ち着いたことで軟化し、ウクライナ情勢悪化により米国から欧州への荷動きが増加したものの、市況改善には至りませんでした。
ドライバルク船市況は、各国の経済活動回復に牽引され期中を通して堅調に推移しました。原材料や燃料価格の高騰から中国の粗鋼生産量が減少し、また、同国港湾での滞船状況が夏場と比較して改善したことにより、秋口から年初にかけて市況はやや軟調に転じる場面もありましたが、アジアの旧正月明け後の経済活動回復に伴い太平洋を中心に再び上昇し、底堅い状況で当期末を迎えました。
なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥112.06/US$(前期は¥105.79/US$)、船舶燃料油価格についてはC重油380cStの平均価格はUS$423/MT(前期はUS$269/MT)、適合燃料油の平均価格はUS$558/MT(前期はUS$346/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、支配船腹を長期契約に継続投入し安定収益を確保しました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けの安定的な数量輸送契約に加え、北アフリカからインド及びパキスタン向けの燐酸液や、アジア域からの高運賃スポット貨物を積極的に取り込んだことで、夏場以降採算は大きく改善しました。当社と米国オペレーターの合弁事業は、第3四半期にパートナーシップの形態を変更し、米国オペレーター向けのプロフィットシェア付定期用船契約に移行しました。
大型ガス船においては、第2四半期におけるLNG船の定期修繕により営業費用が増大しましたが、LPG・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保しました。また、当期末には、LPGを推進燃料とすることにより温室効果ガスの排出量を削減できる当社初のLPG二元燃料主機関を搭載する大型LPG船が竣工しました。
ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。また、ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船においても、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努めた他、一部では好市況を享受したことで、運航採算は当初の予想を大きく上回る水準で推移し、収益の確保に寄与しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は825億46百万円(前期比19.1%増)、営業利益は28億60百万円(前期比16.1%増)となりました。
②内航・近海海運業
当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、石油化学ガスや産業用LPGのプラント間転送需要により概ね堅調に推移しました。一方、民生用LPGの輸送需要は、感染症拡大による外食及び観光産業需要減少の影響を受け続け、低調に推移しましたが、冬場には季節的要因によりわずかながら持ち直しました。
近海ガス輸送の市況は、主要貨物であるプロピレン、塩化ビニルモノマーの国内生産量が中国向け輸出関連需要に牽引され堅調に推移しました。夏場から続いた中国港湾での検疫強化による滞船は一時期より改善されましたが、新造船の竣工が限定的であること、安定的な海上輸送需要があること等により、当社が主力とする3,500㎥型高圧ガス船のアジア域市況は夏場以降堅調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、感染症拡大により民生用LPG需要が低迷しているものの、中長期契約に基づく安定的な収益確保と効率配船に取り組みました。
近海ガス輸送においては、夏場までの市況軟化の影響を完全に避けることはできませんでしたが、第4四半期に堅調な市況下で一部契約を更改できたことにより、採算は改善の兆しを見せました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は95億35百万円(前期比11.1%増)、営業利益は5億13百万円(前期比1.7%増)となりました。
③不動産業
当期の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、10月に緊急事態宣言が解除された以降もまん延防止等重点措置が取られる等、感染症拡大の影響による下降基調は継続しました。国内企業はリモートワークを拡充し、これまでの増員計画をベースにした増床移転の見直しや固定費削減のための事業所縮小等を行い、オフィス需要が減少したことから賃料は下落し、空室率は6%台での推移となりました。
貸ホール・貸会議室においては、繰り返される感染症の再拡大とイベント開催制限により、総じて厳しい状況が続きました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、感染症拡大の影響により撮影需要は依然として低調なまま推移しました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸市況は、感染症拡大が一時落ち着いたことで夏場以降空室率がわずかに改善し、回復傾向となりました。しかしながら、変異株等の新たな感染拡大により、冬場には政府が一時的に原則在宅勤務を勧告する等再び規制が強化されました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、商業フロアの営業に感染症の影響があったものの、6月末に竣工した日比谷フォートタワーも含め、オフィスフロアは概ね堅調な稼働を継続し、安定した収益を維持することができました。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、感染症の拡大により稼働と収益に大きな影響を受けましたが、10月以降はイベント開催制限が緩和されたことによりイベント需要にわずかながら回復の兆しが見られ、稼働は改善に向かいました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、撮影需要が減少する中でも万全の感染症対策を実施して顧客確保に努めたものの、低調な広告需要の影響も重なり、厳しい状況が継続しました。
英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、商業フロアの営業に感染症の影響があったものの、オフィスフロアが順調に稼働したため、収益を維持することができました。
以上の結果、不動産業の売上高は122億54百万円(前期比9.8%増)、営業利益は41億50百万円(前期比7.4%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、157億82百万円のプラス(前期は192億82百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益129億91百万円を計上したことによるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は31億15百万円のマイナス(前期は229億91百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶及び不動産への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出124億98百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却による収入86億6百万円を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は148億24百万円のマイナス(前期は28億94百万円のプラス)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出237億77百万円が、長期借入れによる収入140億97百万円を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は116億54百万円(前期末は133億1百万円)となりました。
生産、受注及び販売の実績
この項目は「業績等の概要(1)業績」の記載に含めて記載しております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産・負債の報告金額及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。当社グループ経営陣は、債権の貸倒、棚卸資産、投資、法人税等、財務活動、退職金、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおける重要な会計上の見積りに関する情報は、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照下さい。会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」に含めて記載しております。
(2) 経営成績の分析
① 損益の分析
当期における売上高は、前期比17.1%増の1,041億円となりました。なお、各セグメントの売上高の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
営業利益は前期比10.1%増の75億24百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益の概要は、「業績等の概要(1)業績」に記載の通りであります。
経常利益は、前期比38.5%増の94億31百万円となりました。これは主に受取配当金や為替差益の増加といった営業外収益の増加と支払利息の減少に伴う営業外費用の減少によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比63.6%増の125億26百万円となりました。これは主に船舶の処分に伴い計上した固定資産売却益によるものです。
② 財政状態の分析
当期末の総資産残高は前期末に比べ15億19百万円増加し、2,471億30百万円となりました。これは主に売掛金の増加によるものです。
負債残高は前期末に比べ99億79百万円減少し、1,557億97百万円となりました。これは主に船舶の売却等に伴う設備資金の返済によるものです。
純資産残高は前期末に比べ114億97百万円増加し、913億33百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益計上に伴う利益剰余金の増加によるものです。
以上の結果、当期末の連結自己資本比率は36.9%(前期末は32.5%)となりました。
(3) 流動性及び資金の源泉
① 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは当社グループの外航海運業と内航・近海海運業により構成される海運業に関わる運航費、船費、借船料と不動産業に関わる管理費、営繕費等の不動産業費用、各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては船舶投資と不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産投資等があります。
② 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用や金融機関からの借入及び社債の発行により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
当社グループの主要な事業資産である船舶の調達に当たっては、船主からの中長期用船や裸用船のバランスも考慮に入れ、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。円建て、米ドル建ての借入金を含む当期末の有利子負債残高(リース債務を除く)は1,209億28百万円となりました。
また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう、設備資金の借入の大部分について金利スワップなどの手段を活用しております。
当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所:
「BBB+」、格付投資情報センター:「BBB」となっております。また、金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において複数年を含む合計180億円並びにUS$6千万のコミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。
③ キャッシュ・フロー
「業績等の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご覧下さい。
記載すべき事項はありません。
記載すべき事項はありません。