第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

  当社グループは、「JALグループ企業理念」を次のとおり定めています。

 

 (JALグループ企業理念)

  JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、

  一、お客さまに最高のサービスを提供します。

  一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。

 

(2)目標とする経営指標

  「2021~2025年度 JALグループ中期経営計画」において、次の3項目を2025年度までの経営目標としております。

 

①安全・安心

安全:中期期間を通じて航空事故・重大インシデント0件

安心:航空利用に加え、日常・ライフステージでも世界トップレベルの顧客体験を実現(NPS +4.0pt)

②財務

EBITマージン:10%以上を達成

ROIC    :9%を達成

EPS     :290円レベルを達成

③サステナビリティ

環境  :CO2削減 総排出量 909万トン未満

     使い捨てプラスチック削減 客室・ラウンジ:新規石油由来全廃、空港・貨物:環境配慮素材へ100%変更

地域社会:国内の旅客・貨物輸送量を2019年度対比+10%

人   :D&I推進 グループ内女性管理職比率 30%

 

(3)経営環境ならびに対処すべき課題

 当社グループは、2021年5月に、「安心・安全」「サステナビリティ」をキーワードとした「JAL Vision 2030」、および、その実現に向けた「2021-2025年度JALグループ中期経営計画」を策定、発表しました。また、2023年5月2日には「中期経営計画ローリングプラン2023」を策定し、新型コロナウイルス感染症の影響が収束を迎え、日本の航空需要が回復する中、不安定な世界情勢を背景とした物価高騰や、航空・観光業界の人材不足といった外部環境変化を踏まえつつも、戦略の方向性は変更せず、着実に取組みを推進することで、中期経営計画・経営目標の達成を目指します。

 また、当社グループが対処すべき課題については、中期経営計画の中で目標達成の時間軸に従い以下の通り課題を整理し、取組みを推進していくこととしております。

 

1.長期レンジの課題

① ESG戦略の推進による企業価値の向上    (~2030年)

② 「CO2排出量実質ゼロ」に向けた取組みの推進(~2050年)

2.中期レンジの課題(~2025年)

① 事業構造改革の加速

② DX戦略、人財戦略、GX戦略の推進

③ リスク耐性強化と成長の両立、持続的成長に向けた財務戦略

 

1.長期レンジの課題

1―①:ESG戦略の推進による企業価値の向上(~2030年)

2030年のSDGs達成に向けた社会の意識は日増しに高まっており、企業はその活動の中でESGを強く意識した判断を行うことが求められております。当社はこのような社会の変化に対応し、2022年5月に策定した「中期経営計画ローリングプラン2022」において、ESG戦略を軸に経営戦略を推進加速することといたしました。社会の変化がさらに加速する中で、「中期経営計画ローリングプラン2023」ではESG戦略を価値創造ストーリーに基づく最上位の戦略と位置づけ、「回復・安定の戦略」から「中長期的な成長戦略」へシフトしてまいります。環境負荷の低減を前提に、コロナ禍を経て見直されつつある「移動・つながりの価値」を追求し、サステナブルな人流・商流・物流と関係人口を創出することで地域社会の衰退や幸福度の低下といった社会課題の解決を目指します。また、このESG戦略の推進を通じて当社の社会的・経済的価値を高め、企業価値の向上を実現します。

 

1―②:「CO2排出量実質ゼロ」に向けた取組みの推進(~2050年)

 当社グループは、航空機による人・モノの流動を創出することを主たる事業とする性質上、他の移動手段に比べて単位当たりCO2排出量が格段に多いことから、排出を抑制するための取組みについて、真摯に、かつ、主体的に取り組む必要があると認識しております。

 当社グループは、中期経営計画において2050年までに「CO2排出量実質ゼロ」とすることを定め、その実現に向けた取組みを着実に推進しております。「省燃費機材への更新」や「運航の工夫」に加え、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel、以下「SAF」)の安定的かつ適正な価格での調達を実現するため、官民・業界で一体となり、連携して取組んでまいります。

 

2.中期レンジの課題(~2025年)

2−①:事業構造改革の加速

 当社グループは、高いレジリエンスを備えたポートフォリオの構築を目指し、事業構造改革を加速させます。航空領域では、基幹事業であるFSC事業の収益性改善に加え、LCC事業や貨物・郵便事業での事業拡大を、また、非航空領域(マイル・ライフ・インフラ)では、強みである顧客基盤やヒューマンスキルを活かし、成長する分野へ積極的に展開することで事業構造改革を牽引します。これらの取組みにより、変化する外部環境の中においても、安定的な事業運営を実現してまいります。

 

2−②:DX戦略、人財戦略、GX戦略の推進

 DX戦略では、グループ全事業におけるデジタル活用を加速し、お客さまに安全・安心な移動と新たな体験を提供します。人財戦略では、多様な価値観を尊重し、新たな価値創造に挑戦し変革を起こす人財を育成・採用することで人的資本経営を推進します。また、GX戦略では2050年の「CO2排出量実質ゼロ」に向けた「SAFの活用」等の取り組みに加え、「排出権取引」や「CO2回収の新技術」も活用し、国際線を運航する航空会社のCO2排出量削減義務量を確実に達成した上で、ネット・ゼロエミッションに向けた航空のリーディングカンパニーとして、経済社会システムの変革と航空産業の成長を両立します。

 

2−③:財務基盤の再構築と持続的成長に向けた財務戦略

 ポストコロナにおける財務戦略については、リスク耐性の強化を進めながら、持続的な成長に向けた取組みを加速します。経営資源の配分については、省燃費機材の導入や社会課題の解決に貢献する資産投資に加え、環境対応をはじめとするESG戦略や人的資本経営を推進するための費用も投資と捉え、積極的に配分していきます。株主還元については、業績の回復に伴って徐々に拡大し、配当性向35%程度以上を早期に実現します。

 

 以上の取り組みを通じて「JAL Vision 2030」で掲げた『「安全・安心」と「サステナビリティ」を未来への成長のエンジンとして、多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来の実現』を目指します。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

  当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を取締役会で審議・決定しています。取締役会への付議にあたり、社長を議長とするサステナビリティ推進会議において、以下の事項を主な議題とし、マネジメントレビューを行っています。

 ● サステナビリティの実現に向けた取組の重要課題・年度目標の決定、進捗のモニタリング・評価

 ● 気候変動のリスクと機会に関する対応の決定

 ● 環境マネジメントシステムのモニタリング・評価

 ● 人権デューデリジェンスのモニタリング・評価

  サステナビリティ推進会議の下部会議体であるサステナビリティ推進委員会(委員長:総務本部長)を月次で開催し、取組の進捗確認と議論を行っています。

 

②戦略

  当社グループは、2021年5月に、「安心・安全」「サステナビリティ」をキーワードとした「JAL Vision 2030」、および、その実現に向けた「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」を策定、発表しました。また、2023年5月2日には「中期経営計画ローリングプラン2023」を策定し、ESG戦略を価値創造ストーリーに基づく最上位の戦略と位置づけ、環境負荷の低減を前提に、サステナブルな人流・商流・物流と関係人口を創出し、コロナ禍を経て見直されつつある「移動」と「つながり」の力で、地域社会の衰退や幸福度の低下といった社会課題の解決を目指します。また、このESG戦略の推進を通じて当社の社会的・経済的価値を高め、企業価値の向上を実現します。

 

③リスク管理

当社グループでは、リスクを組織の使命・目的・目標の達成を阻害する事象または行為と定義し、半期ごとにリスク調査と評価を行っています。特にインパクトが大きいと評価されたものを優先リスクと位置づけ、社長を議長とするグループリスクマネジメント会議と、その傘下に設置したリスクマネジメント・情報セキュリティ委員会で審議・決定します。

 

④指標と目標

当社グループが取り組む4つの領域・22の課題それぞれに中期目標を設定し、事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指し、SDGsの達成に向けたESG経営を推進しています。

特に以下の指標については、「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」における、サステナビリティに関する経営目標としております。

●環境  :CO2削減(総排出量 909万トン未満)

            使い捨てプラスチック削減(客室・ラウンジ:新規石油由来全廃、空港・貨物:環境配慮素材

100%変更)

●地域社会:国内の旅客・貨物輸送量を2019年度対比+10%

●人   :DEI推進(グループ内女性管理職比率 30%)

 

上記以外のサステナビリティに関する指標と目標については、当社Webサイトで開示しています。(https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives_sdgs/)

 

(2)気候変動への対応

①ガバナンス

当社グループでは、気候変動への対応に関する課題全体の方針および重要事項を取締役会で審議・決定しています。重要な目標設定および取組については、社長が議長を務めるサステナビリティ推進会議で審議・決定し、定期的に取締役会に報告しています。また、具体的な目標の達成に向けては、2021年6月にNZE(ネット・ゼロエミッション)プロジェクトを立ち上げ全社横断で取り組むとともに、環境マネジメントシステム(EMS)を通じてPDCAサイクルを回しており、その結果をサステナビリティ推進会議に報告しています。また、外部ESG評価やCO2排出削減目標などを指標として役員報酬に反映しています。

 

 

  ②戦略

気候変動への対応は社会の持続可能性にとって重要な課題であるとの認識のもと、当社グループは、2018年に環境省が主管する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」へ参画し、国際エネルギー機関(IEA)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による今世紀末までの平均気温上昇が「4℃未満」と「2℃未満」の2つのシナリオ(RCP8.5(注1)、RCP2.6(注2))に基づき、2030年の社会を考察しました。 また、航空運送事業者の責務として、CO2排出量の削減をはじめとするさまざまな取組を着実に推進すべく、2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)を目指すことを2020年6月に宣言しました。その後、IEA SDSシナリオ(注3)などをふまえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成し、2021年の「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」および2022年の同ローリングプランに反映しました。さらに2023年の同ローリングプランでは、2050年までのカーボンニュートラルに向け、1.5℃シナリオの世界の実現を目指すことを前提に、GX戦略を策定しました。

上記に加え、2021年2月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、2022年3月にはSBT(Science Based Target=科学と整合した目標)イニシアティブへの賛同を表明するなど、グローバルな枠組みでの情報開示に努めています。

なお、2022年のICAO(国際民間航空機関)の総会にて、国際航空分野における「2050年までのカーボンニュートラル」を目指す長期目標、および、CO2 排出削減の枠組みであるCORSIA(注4)の見直しが採択され、国際航空に課せられるCO2排出規制は今後さらに進む可能性があります。

このような環境下、当社が掲げる削減目標達成に向け、省燃費機材への更新、日々の運航での工夫(JAL Green Operations)、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の活用による従来の取組を加速させてまいります。その上で、CORSIAによるオフセット義務の取組として、排出権取引の活用を追加するとともに、中長期的には世界で開発中の合成燃料、ネガティブエミッション(CO2回収等)といった新技術を有するサプライヤー・パートナーとの連携を促進し、新たな技術を活用することも進めてまいります。

 

(注)1.RCP8.5 シナリオ:IPCC 第五次報告書における高位参照シナリオ(2100 年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当するシナリオ)

2.RCP2.6 シナリオ:IPCC 第五次報告書における低位安定化シナリオ(将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発された排出量の最も低いシナリオ)

3.IEA SDS シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)による持続可能な開発目標を完全に達成するための道筋である、持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)

4.Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:航空会社全体の国際線のCO2排出量において、基準値を超える排出分を参加国の航空会社で分担してオフセット義務を課す制度。2024年以降は「2019年の排出量を超えない」から「2019年比85%を超えないこと」に見直され、ベースラインが15%深掘りされました。

 

③リスク管理

気候変動に関するリスクを重大なリスクと認識し、環境マネジメントシステム(EMS)におけるPDCAサイクルを通じて都度リスクを特定しながら、気候変動に関する国際社会の法・規制や政策動向などをふまえてリスク管理を実施しています。その内容は取締役会に報告され、討議・評価されます。

 

④指標と目標

 当社グループでは、航空運送という事業の特性上、CO2排出量の約99%が航空機からの直接排出であるため、航空機からのCO2排出量削減を最優先課題として対応していきますが、地上施設からの間接排出によるCO2削減についても同様に高い目標を掲げ、真摯に取り組んでいます。国内外のさまざまなステークホルダーとの連携・協働を強化しつつ、CO2削減の国際的な枠組みに則り、日本政府の「クリーンエネルギー戦略」とも整合しながら、最先端の取組で業界をリードしていきます。

 当社グループの航空機が排出するCO2の削減については、1.5℃シナリオを前提としてICAOやIATAでの最新の検討資料やATAG(注5)の「Waypoint 2050」などの最新のシナリオを参照しつつ、2050年までのCO2削減のシナリオを検討し、今後の課題と打ち手について議論を進めています。

 なお、シナリオ作成にあたっては、総需要に基づくRTK(有償輸送トンキロ)の伸びを国際線・国内線それぞれに設定の上、2050年までのCO2総排出量を算出し、各取組による効果を反映しました。

 

(注)5.Air Transport Action Group:航空業界のサステナビリティを推進するグローバル連合

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 当社グループは、2021年5月に本邦航空会社として初めて2030年度の具体的な目標(2019年度対比で総排出量を10%削減)を掲げ、アライアンスでのSAF共同調達や機材更新時のESGファイナンス活用などに率先して取組み、世界の航空業界の脱炭素化を推進してきました。安定した財務基盤に基づく省燃費機材への着実な更新、日々の運航の工夫の着実な実施、またSAFの具体的な搭載目標を定めた上での戦略的な調達といった取組により、目標の達成に向けて果敢に挑戦します。

 なお、SAFについては海外における製造・サプライチェーン構築の動きが加速していますが、日本国内でも政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」や「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で、SAFの製造・流通を推進していくことが明記されました。当社グループは、2030年度に全搭載燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を実現するため、官民の連携や国内外のステークホルダーとの協働を通じ、SAFの商用化に向けて積極的に取組みます。

 

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(3)人財への取組

 ①戦略

■人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

 2022年度は需要回復による本格的な反転攻勢に向けて、経営戦略の3本柱のうちESG戦略を軸に据え、事業活動を通じた社会課題の解決と事業構造改革を加速推進していくことを目指しました。こうした持続的な企業価値向上ストーリーを支える最も重要な要素は人財であるとの認識のもと、人財戦略を策定しています。

 

a.人財育成方針

 事業領域の多様化を実現し、企業の持続的な成長・発展につなげていくため、多様な知見を持った人財を獲得するとともに、人財への投資を積極的に行うことで社員の能力を高め、エンゲージメントを強化するという方針の元、以下取組を進めてきました。

具体的には経験者の通期採用やスキル要件を明示したジョブ型採用を実施するとともに、社内インターン、グループ内外への出向などによる実務経験の充実、社内外の研修機会の増加などを通じた社員の知識・経験の多様化を推進しました。

 

b.社内環境整備方針

 人的資本を最大限活用することを目的に、社内環境整備方針として以下3つの方針を定め、取組を進めてきました。

[基盤となる取組 ~DEI(注6)・DX推進~]

人財戦略の全体に関わる基盤となる取組として、DEIとDXを推進してきました。性別、文化、職域の壁を越えて多様な人財が多様な働き方で働くことで画一的な考え方から脱却し、そこにDXを掛け合わせることでイノベーションを起こし、新たな価値の創造や生産性の向上につなげていきます。

 

[業務プロセス改革]

 業務プロセス改革により売上を伸ばしつつ工数を減らし、生産性を向上してきました。コロナ禍からの需要回復に伴う生産量拡大のフェーズにおいて、JALグループ内で重複している間接業務の集約やデジタル技術の活用によるFSCの業務効率化に取組み、インプット(投入)を最小化しています。同時に、従来型の航空券販売から包括的な地域課題の解決に向けたソリューション営業への転換を図るため支社体制の導入を進め、積極的な人財投資を通じた社員個々人の能力底上げによりアウトプット(産出)の最大化を目指してきました。

 

[成長領域への人財配置]

 LCCやマイレージなどの成長領域を伸ばし、収益源の多様化を実現するための人員体制を確立してきました。フルサービスキャリア(FSC)を中心とした既存領域から今後収益を拡大させる成長領域へ人財をシフトし、2025年度には成長領域への人財配置を3,500名増加(2019年度対比)させ、人員体制を整えていきます。成長領域のポストにおける公募制度・登用の拡充や、高い専門性、創造性、自律性が求められるポストで業績に連動した成果型の報酬制度を新たに導入することで、社員の挑戦意欲を促進してきました。

 

(注)6.DEI=ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン

 

②指標と目標

 

カテゴリー

KPI

目標(FY25)

実績(FY22)

人財育成方針

多様な人財の採用と社員の成長機会の付与

エンゲージメントの高い社員割合(注7)

+10pt

(2019年度対比)

△2.7pt

(2019年度対比)

社内環境整備方針

基盤となる取組 ~DEI・DX推進~

女性管理職比率

30%

22.8%

業務プロセス改革

一人当たり売上高の拡大

+15%

(2019年度対比)

△2%

(2019年度対比)

成長領域への人財配置

成長領域への人財配置

+3,500名

(2019年度対比)

+2,200名

(2019年度対比)

(注)7.社員意識調査でポジティブな回答をした社員の割合

 

 

 

3【事業等のリスク】

 

投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、定期航空運送事業および不定期航空運送事業を中心とする当社グループの事業の内容に鑑み、当社グループにおいては様々なリスクが存在しております。

当社グループは、「JALグループリスクマネジメント基本方針」において、重大な損失につながる要素ならびに「業務の有効性と効率性」、「財務報告の信頼性」、「法令等の遵守」、「資産の保全」を阻害する要素、加えて市場環境の変動や疫病・震災・テロ等の外的要因のみならず、グループ全体・自社・自組織の目標達成を阻害する業務執行上の要素もリスクと定め、リスクに強靭な企業グループとして事業を継続できるよう、適切なリスクマネジメントを実施してまいります。

グループ全体のリスク総括のために社長を議長とする「グループリスクマネジメント会議」を置き、JALグループが抱えている主要なリスクを俯瞰的に把握し適正なリスク管理に努めるとともに、連結業績に影響を及ぼす事象が発生した場合は「財務リスク委員会」と連携して対応しております。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のあると認識している主要なリスクは次のとおりです。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)世界的な疫病の蔓延拡大に関わるリスク

①短期的な業績に与える影響に関わるリスク

当社グループは、日本および世界各地に航空運送事業を展開しております。2020年初頭から全世界規模で感染が拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)のように未知の疫病の世界的な拡大が発生した場合には、各国政府による入境制限や移動の制限・自粛要請といった人の移動に関する規制の発動や、企業や利用者の感染防止を目的とした自発的な航空機利用の回避により、航空旅客需要は大幅に減少する可能性があります。当社グループが営む航空運送事業は、航空機や人件費等の固定費比率が高いことから、短期的な需要の急減は、当社グループを含む航空運送事業者の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

②中長期的な事業環境の変化に関わるリスク

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、一時的に人の移動が大きく制限を受けたことにより、ITを活用し、移動を伴わず非対面での働き方が社会に広く浸透しております。こうした社会・行動様式の変化により、航空機を使った業務渡航の需要に変化が生じることで、当社グループが営む航空運送事業の事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。

ポストコロナにおける業務渡航需要の変化を見据え、当社グループでは、LCCやマイレージ・ライフスタイル事業領域を強化する事業構造改革を進め、事業リスクの分散を図っております。

 

(2)自然災害・テロ攻撃等の災害に関わるリスク

当社グループの航空機の利用者の過半数は羽田空港および成田空港を発着する航空機を利用しており、当社グループの事業における羽田・成田両空港の位置付けは極めて重要です。また、当社グループの運航管理・予約管理等、航空機の運航に重要な情報システムセンター、ならびに全世界の航空機の運航管理やスケジュール統制等を実施する「IOC(Integrated Operations Control)」は東京地区に設置しています。

そのため、東京地区を含む首都圏において、大規模な震災や火山の噴火、大型台風等による被害が発生した場合、もしくは当該重要施設において火災やテロ攻撃等の災害が発生し、羽田・成田両空港の長期間閉鎖や、当社グループの情報システムやIOCの機能が長期間停止した場合、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

IOCの機能停止に備え危機管理体制及びBCPを整備しており、その一環として、大阪国際空港内にオペレーションコントロールの一部機能を移管しています。その機能は東京地区のIOCの機能の全てを代替できるものではありませんが、東京地区のIOCの機能が停止した場合、その再稼働までの間、暫定的に東京地区のIOCを代替します。

 

(3)気候変動・地球温暖化・環境規制に関わるリスク

世界では、地球温暖化等に起因する気候変動が大きな課題となっており、地球温暖化に起因し、日本国内において大規模な自然災害の発生頻度が多くなるような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループが属する航空業界は、気候変動の要因となる化石燃料を大量に消費する業界であることから、CO2排出量の削減が社会的な要請であり、当社グループにおいても極めて重要な経営課題となっております。温暖化防止を始めとした地球環境に係わる企業の社会的責任が高まるなか、CO2排出量、騒音、有害物質等に関する環境規制が強化され、消費行動にも影響を及ぼしつつあります。今後、温室効果ガス排出量取引制度等、温室効果ガス排出への課金等費用負担を伴う環境規制のさらなる強化等が行われた場合、また、消費者の行動様式に変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。加えて環境負荷軽減への取り組みが不十分な場合には、当社グループの社会的な評価が低下し、当社グループの事業運営に影響を与える可能性があります。

そのため、当社グループでは、2023年5月に公表した「2021-2025年度JALグループ中期経営計画ローリングプラン2023」において、ESG戦略を価値創造・成長を実現する最上位の戦略と位置づけ、社会課題の解決を加速化してまいります。当社グループでは、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指しており、その実現に向けて、省燃費機材への更新促進、運航の工夫、代替航空燃料の安定的且つ適正な価格での調達の実現に努めてまいります。

 

(4)国際情勢や経済動向等の外部経営環境に関わるリスク

①外部経営環境に関わるリスク

当社グループは、日本および世界各地に航空運送事業を展開しており、航空需要は、世界の経済動向、テロ攻撃や地域紛争、戦争等により大幅に減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業務は、整備業者、空港職員、航空保安官、燃油取扱業者、手荷物取扱者、警備会社等の第三者の提供するサービスに一定程度依存しており、第三者が、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

②競争環境に関わるリスク

当社グループは、国内および海外において、路線、サービスおよび料金に関して激しい競争に直面しています。

国内線では、既存の航空会社との競争に加え、LCCを含む低コストキャリアや新幹線との競争、国際線では、海外および日本の主要航空会社との競争が激化しており、それに加えて海外および日本の航空会社によって形成されるアライアンス、コードシェアおよびマイレージ提携が競争を激化させています。

上述のように、現在の当社グループの競争環境や事業環境が大幅に変化した場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、航空運送事業においては、a)共同事業、b)複数の航空会社によるアライアンスへの加盟、c)コードシェア提携、d)マイレージ提携等、様々な形式で世界中の航空会社との提携を展開しております。また、マイル事業等の非航空事業分野においても、他業種との広範な提携関係を構築することで顧客基盤の強化を図っておりますが、これらの提携パートナーの経営状況や、提携関係に大きな変化が生じた場合には、当社グループの提携戦略に影響を及ぼす可能性があります。

 

これらのリスクの軽減に向け、地政学的なリスクをモニターする体制、関係当局、提携パートナーとの良好な関係の構築、商品・サービス競争力の向上、柔軟な需給適合の実施、適切な委託先管理に努めております。

 

(5)航空機導入に関わるリスク

当社グループは、航空運送事業において、燃費効率に優れた新型機への更新や機種統合による効率化を目指し、ボーイング社、エアバス社等に対して航空機を発注しておりますが、これらの航空機メーカーやエンジン等の重要な部品のサプライヤーにおける技術上・財務上・その他の理由により納期が遅延した場合、当社グループの機材計画は変更を余儀なくされ、当社グループの中長期的な事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、航空機メーカー等と状況を常時把握し、都度、航空機導入・退役計画を見直すことでかかるリスクの低減に努めております。

 

(6)市況変動に関わるリスク

①燃油価格の変動に関わるリスク

当社グループの業績は、燃油価格の変動により影響を受けます。当社グループは、燃油価格の上昇分を一部燃油特別付加運賃として顧客に転嫁しておりますが、これは燃油価格の変動を直ちに反映することができず、また、顧客に全てを転嫁することは困難です。また、当社グループは、燃油価格の変動リスクを軽減するため、原油のヘッジ取引を行っております。なお、ヘッジ取引手法やヘッジポジションの状況等によっては、原油市況の下落の効果を直ちに業績に反映することができず、短期的な当社グループの業績の改善に寄与しない可能性があります。

②為替変動に関わるリスク

当社グループは、日本国外においても事業を展開しており、外貨建により、収益の一部を受領し費用の一部を支払っています。特に当社グループにおける主要な費用である航空機燃料の価格の大半は米ドルに連動した金額となることから、当社グループにおいては米ドルの為替変動による影響は収益よりも費用が大きくなっております。これら為替変動による収支変動を軽減する目的で、収入で得た外貨は外貨建の支出に充当することを基本とし、加えてヘッジ取引を行っております。また航空機価格の大半は米ドルに連動した金額となることから、資産計上額および減価償却費が為替変動により増減するリスクがあります。これら為替変動によるリスクを軽減する目的で為替取得機会の分散を図るべくヘッジ取引を行っております。

③資金・金融市場・財務に関わるリスク

当社グループは、航空機の購入等の多額の設備投資を必要としており、その資金需要に応じる為に金融機関や市場からの資金調達を行う可能性があります。当社グループの資金調達能力や資金調達コストについては、資金・金融市場の動向や当社グループの信用力の変動等により、資金調達の制約や資金調達コストの上昇を招く可能性があります。

また、当社グループは繰延税金資産を計上しておりますが、当社グループの将来の課税所得の見込み額が低下した場合、もしくは税制改正等により、過去に計上した繰延税金資産の取り崩しが発生し、当社グループの財務状況に一時的に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、キャッシュ・フロー創出力の向上と資金調達能力の維持向上に向け、強固なリスク耐性を備えた財務体質を保つべく財務戦略を計画・遂行してまいります。

 

(7)航空安全に関わるリスク

当社グループでは、航空機の運航の安全性の確保のため、日々様々な取り組みを実施しておりますが、ひとたび死亡事故を発生させてしまった場合、当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼および社会的評価が失墜するだけでなく、死傷した旅客等への補償等に対応しなければならないことから、当社グループの業績に極めて深刻な影響を与える可能性があります。さらに、当社グループや、当社グループが運航する型式の航空機、また当社のコードシェア便において安全問題が発生した場合、当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼および社会的評価が低下し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、「安全」をJALグループ存続の大前提と位置付け、全社員が日々航空安全の実現に向けたゆまぬ努力を継続しております。また、航空事故対応の専門部門を配置するとともに社長を議長とする「グループ安全対策会議」を置き、グループ全体の安全に対して徹底した管理を行っています。なお、航空事故に伴う各種損害の軽減、ならびに被災者への確実な賠償を行う目的で、現在業界水準と同程度の補償額・補償範囲の損害賠償保険に加入しております。

 

(8)法的規制・訴訟に関わるリスク

当社グループの事業は、様々な側面において、国際的な規制ならびに政府および地方自治体レベルの法令および規則に基づく規制に服しています。これらの規制の変化等により、当社グループの事業がさらに規制され、また、大幅な費用の増加が必要となる可能性があります。

①法的規制に関わるリスク

当社グループは、航空法をはじめとする航空事業関連法令、二国間航空協定を含む条約その他の国際的取り極め、独占禁止法その他諸外国の類似の法令、ならびに着陸料等の公租公課等の定めに基づき事業を行っておりますが、これらに変更が生じた場合や、法令に基づき耐空性改善通報等が発出された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、羽田空港等、当社グループの航空運送事業において重要な位置付けをもつ空港における発着枠の割当て等が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、公正な競争環境が確保されるよう、国土交通省をはじめ国内外の関係当局等に対して要望しております。

②訴訟に関わるリスク

当社グループは事業活動に関して各種の訴訟に巻き込まれるおそれがあり、これらが当社グループの事業または業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは訴訟の提起等を受けており、事態の進展によっては、追加的な支出や引当金の計上により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、重大なリスクとなり得る法令違反及び競争阻害行為等の防止に万全を期すべく、全社員及び役員に対してコンプライアンス遵守を徹底させるべく、教育・啓発活動等に努めております。

 

(9)IT(情報システム)、顧客情報の取り扱いに関わるリスク

当社グループは、業務の多くを情報システムに依存しています。コンピュータ・プログラムの不具合やコンピュータ・ウィルス等のサイバー攻撃によって情報システムに様々な障害が生じた場合には、重要なデータの喪失に加えて、航空機の運航に支障が生じる等、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。また、情報システムを支える電力、通信回線等のインフラや、メールコミュニケーション等の当社が利用するクラウドサービスに大規模な障害が発生した場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。

また、当社グループが保有する顧客の個人情報が取り扱い不備または不正アクセス等により漏洩した場合には、当社グループの事業、システムまたはブランドに対する社会的評価が傷つけられ、顧客および市場の信頼が低下して、当社グループの事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報漏えい対策とウイルス対策を推進し、24時間365日体制で不正アクセスやウイルス感染などの脅威を監視しています。インシデント発生時にはサイバーインシデントへの対応体制を構築し、迅速な対応と再発防止を行っています。なお、個人情報の漏洩に備えた保険にも加入しております。

 

 

(10)人材・労務に関わるリスク

当社グループの事業運営には、航空機の運航に関連して法律上要求される国家資格を始めとする各種の資格や技能を有する人材の確保が必要ですが、当社グループの従業員がその業務に必要なこれらの資格や技能を取得するまでには相応の期間を要することから、当社グループが想定する人員体制を必要な時期に確保できない場合には、当社グループの事業運営が影響を受ける可能性があります。

また、当社グループの従業員の多くは労働組合に所属しておりますが、当社グループの従業員による集団的なストライキ等の労働争議が発生した場合には、当社グループの航空機の運航が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、採用競争力の向上、離職率の低減に努めるとともに、良好な労使関係の維持に努めております。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)は、新型コロナウイルス感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた動きが浸透し、国内外における航空旅客需要は着実に回復してまいりました。当社グループは、新型コロナウイルスの感染の状況に合わせて日本国内および日本と海外を結ぶ航空輸送ネットワークの確保に柔軟に対応しました。また、旅客需要は回復基調にあるものの想定より時間を要する中、徹底的なコスト削減の取り組みと貨物事業における売上最大化により収益の改善に努め、コロナ禍からの回復に全力を尽くしました。

2024年3月期以降、アフターコロナの新たな航空需要に対応すべく、当社グループは引き続きこうした努力を継続し、公共交通機関としての社会的使命を果たしてまいります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く経営環境を概括すると、主要国に比べ回復が遅れていた日本発着国際および国内旅客需要は着実に復調してきております。ロシア・ウクライナ情勢の影響、世界的な景気減速への懸念、為替・燃油価格をはじめとする市況の変動等、外部環境に不透明な部分は残っております。しかしながら、中長期的な成長に向けて、人財の採用を再開するなど需要回復に向けた反転攻勢のための体制を確実に整えております。

 

以下、当連結会計年度における当社グループの経営状況につき概括します。

ESG戦略

当社グループの経営戦略の軸であるESG戦略については、公共交通インフラとして持続可能な航空ネットワークを提供する社会的使命を果たしながら、航空業界の最重要課題の一つであるCO2排出量実質ゼロを達成すべく取り組んでおります。

CO2削減に関する取り組みの柱の一つであるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の活用については、2022年11月に世界最大級の再生可能燃料製造会社であるNeste社と、また2023年1月に都市ごみ等の廃棄物から再生可能燃料の製造を目指すRaven社と新たに今後のSAFの調達について合意したことを発表し、海外からの調達先を確実に増やしております。また、2022年11月に本邦初となるCO2排出量実質ゼロの「サステナブルチャーターフライト」を東京(羽田)-沖縄(那覇)線で運航しました。さらに、当社は現在運航中の小型機の更新機材としてボーイング737-8型機21機の導入を決定しており、省燃費性能の高い最新鋭機材への更新を着実に進めております。以上、当社グループのESGに関する情報開示やパフォーマンスが評価され、2022年12月には世界中の投資家から重要な投資判断基準として活用されているESG投資の代表的指数「DJSI Asia Pacific Index」の構成銘柄に初めて選定され、また国際的な環境非営利団体CDPより気候変動「A-」評価を獲得しました。

DEIの観点では、女性・グローバル・シニア人財等、多様な人財の活躍・働き方の整備を推進してまいりました。健康経営にも積極的に取り組んだ結果、当社が「健康経営銘柄2023」に2年連続選定、当社グループ24社が「健康経営優良法人2023」に認定されたほか、若手社員を中心に取り組んだ当社グループの統合報告書が日本経済新聞社主催「日経統合報告書アワード2022」において、環境に関する記載がとりわけ優れていた企業に贈られる「グランプリE賞」を受賞しました。また、日本証券アナリスト協会より「ディスクロージャー優良企業」として運輸部門で2018年以来過去5年間で4回目となる第1位を獲得いたしました。さらに、当社グループのサステナビリティに関する取り組みやサービス品質等が世界最高水準と評価され、APEX社(Airline Passenger Experience Association)「WORLD CLASS」を2年連続で受賞しました。当社グループは今後も持続的な成長に向けて、ESG戦略を推進してまいります。

 

非航空事業領域

航空運送事業以外の事業領域拡大に向け、当社グループの強みである人財と顧客基盤に先進的なテクノロジーを融合させ、航空運送事業により培われたブランド力・ノウハウを活かした新たな商品・サービスやビジネスの創造に取り組んでおります。

国内最大級のポイントサービス「楽天ポイント」とのマイルの相互交換を開始したほか、スマートフォン決済サービス「JAL Pay」を開始し、お近くの対応店舗や機内販売等でご利用いただけるようになりました。航空機搭乗以外のさまざまな日常の生活シーンでもマイル関連サービスの提供を進めております。2022年3月期に連結子会社化した株式会社JALUXは、「JALふるさと納税」サイトの運営を通じ地域の発展とさらなる交流人口・関係人口創出に向けた仕掛けづくりに取り組んでおります。また、2022年10月に株式会社ジャルセールスの当社への吸収合併を決定し、航空券販売に留まらず当社グループ全体のアセットを活用したソリューション営業体制への転換を図ることで、地域や顧客の皆さまの課題解決につながる取り組みを強化してまいります。さらに、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)において「空飛ぶクルマ」の運航事業者として選定されました。2025年大阪・関西万博において安全・安心に「空飛ぶクルマ」を運航し、実際にお客さまにご搭乗していただきます。当社グループは今後も航空運送事業により培ったノウハウを生かし新たなサービスやビジネスの創造に取り組んでまいります。

 

安全・安心

当社グループの存立の大前提であり、中期経営計画における経営目標である「安全・安心」については、お客さまと社員の感染防止に努めつつ、国内外の航空ネットワークの維持に努めております。

安全・安心に関する取り組みについては、中期経営計画において、「航空事故ゼロ、重大インシデントゼロ」という経営目標の達成を目指してまいりました。しかしながら、お客さまや客室乗務員の骨折の事象3件が国土交通省により航空事故として認定されました。これらの事象を重く受け止め、国土交通省による事故調査に協力するとともに、再発防止の徹底に取り組み、安全を守るための不断の努力を継続してまいります。また、ロシア・ウクライナ情勢により、ロシア領域内への離着陸および上空の飛行を中止し、安全に飛行できる代替ルートに変更して運航しております。当社グループはこれからも、事業環境の変化に柔軟に対応し、さまざまな安全施策を実施してまいります。さらに、保安検査の高度化と検査に要する時間の短縮、UV殺菌装置の活用による衛生・清潔性向上を実現する保安検査レーン「JAL SMART SECURITY」の羽田空港国内線への導入が完了しました。復便が進む中においても混雑緩和・保安検査の省人化に大いに役立っており、今後もより安全・安心・ストレスフリーな空港サービスの向上に努めてまいります。

 

財務戦略

財務戦略においては、省燃費性能の高い最新鋭機材への更新を着実に進めるため、2023年3月に航空会社として本邦初となる、資金使途特定型トランジション・リンク・ローンにより約265億円の資金調達を実施しております。また、同月の日経平均株価の構成銘柄の定期見直しにより当社が採用され、4月の算出から反映されております。今後も市場・投資家の皆さまとのより良い対話の実現に向けて、さらなる情報開示の充実と質の向上に努めてまいります。

 

新型コロナウイルスは、航空を含む多くの業界に甚大な影響を与え、社会・経済の前提を覆す大きな変化をもたらしました。旅客需要は回復傾向にあるものの、リモートワークの浸透、為替の変動や燃油市況の高騰等により、特に日本発の旅客需要の回復スピードは未だ勢いを欠いております。しかしながら、当社グループは急激かつ大幅に需要が減少するという未曽有の事態を乗り越え、中長期的な成長に向けて人財の採用を再開するなど、需要回復に向けた反転攻勢のための体制を確実に整えております。「2021-2025年度JALグループ中期経営計画ローリングプラン2023」に沿って、強固な財務体質の再構築と持続的な成長に向けた取り組みを同時に実現し、「世界で一番お客さまに選ばれ、愛されるエアライングループ」を目指し、すべてのお客さまに快適な空の旅をご提供できるようチャレンジしてまいります。

 

a.財政状態

当連結会計年度末における資産については、前連結会計年度末に比べ1,448億円増加し、2兆5,206億円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べ1,339億円増加の1兆6,636億円となりました。資本については、前連結会計年度末に比べ108億円増加の8,569億円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度における売上収益は1兆3,755億円(前年同期比101.5%増加)、営業費用は1兆3,446億円(前年同期比43.0%増加)となり、財務・法人所得税前利益(△は損失)(当社は、当期利益から法人所得税費用、利息およびその他の財務収益・費用を除いた「財務・法人所得税前利益」をEBITと定義しております。以下「EBIT」という。)は645億円(前年同期は△2,394億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)は344億円(前年同期は△1,775億円)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりです。

 

<航空運送事業セグメント>

当連結会計年度における航空運送事業セグメントの経営成績については、売上収益は1兆2,610億円(前年同期比 96.3%増加)、投資・財務・法人所得税前利益(△は損失)(以下「セグメント利益(△は損失)」という。)は、507億円(前年同期は△2,501億円)となりました。(売上収益およびセグメント利益(△は損失)はセグメント間連結消去前数値です。)

フルサービスキャリアにおける国際旅客収入は4,175億円(前年同期比507.0%増加)、国内旅客収入は4,511億円(前年同期比91.9%増加)、貨物郵便収入は2,247億円(前年同期比2.9%増加)、LCCにおける国際旅客収入は271億円、国内旅客収入は35億円でした。

 

部門別売上収益は次のとおりです。

 

 

科目

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

構成比

(%)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

構成比

(%)

対前年

同期比

(%)

国際線(FSC)

 

 

 

 

 

旅客収入(百万円)

68,785

10.7

417,526

33.1

607.0

貨物収入(百万円)

182,877

28.5

188,902

15.0

103.3

郵便収入(百万円)

11,089

1.7

12,241

1.0

110.4

手荷物収入(百万円)

746

0.1

1,766

0.1

236.7

小計(百万円)

263,499

41.0

620,437

49.2

235.5

国内線(FSC)

 

 

 

 

 

旅客収入(百万円)

235,100

36.6

451,127

35.8

191.9

貨物収入(百万円)

20,751

3.2

20,017

1.6

96.5

郵便収入(百万円)

3,653

0.6

3,631

0.3

99.4

手荷物収入(百万円)

312

0.0

409

0.0

131.4

小計(百万円)

259,817

40.4

475,187

37.7

182.9

国際線・国内線(FSC)

合計(百万円)

523,316

81.4

1,095,624

86.9

209.4

旅客収入(LCC)   (百万円)

 

 

 

 

 

ZIPAIR

717

0.1

22,449

1.8

スプリング・ジャパン

2,021

0.3

8,224

0.7

406.8

小計(百万円)

2,738

0.4

30,674

2.4

その他        (百万円)

116,509

18.1

134,753

10.7

115.7

合計(百万円)

642,565

100.0

1,261,052

100.0

196.3

(注)1.金額については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。

   2.FSCはフルサービスキャリアを指します。

   3.スプリング・ジャパンについては取得日(2021年6月28日)から2021年6月末までの業績に重要性が

     ないため、同社の2021年7月以降の旅客収入を旅客収入(LCC)として含めております。

   4.対前年同期比について、増減率が1,000%以上となる場合は「-」を記載しております。

 

 

輸送実績(フルサービスキャリア)は次のとおりです。

 

項目

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年同期比

(利用率は

 ポイント差)

国際線

 

 

 

 

有償旅客数

(人)

892,471

4,348,562

487.2%

有償旅客キロ

(千人・キロ)

6,027,871

27,310,618

453.1%

有効座席キロ

(千席・キロ)

22,780,657

38,039,283

167.0%

有償座席利用率

(%)

26.5

71.8

45.3

有償貨物トン・キロ

(千トン・キロ)

3,113,671

2,795,737

89.8%

郵便トン・キロ

(千トン・キロ)

160,474

125,904

78.5%

国内線

 

 

 

 

有償旅客数

(人)

16,238,833

30,109,920

185.4%

有償旅客キロ

(千人・キロ)

12,089,054

23,090,624

191.0%

有効座席キロ

(千席・キロ)

24,535,597

35,243,210

143.6%

有償座席利用率

(%)

49.3

65.5

16.2

有償貨物トン・キロ

(千トン・キロ)

231,515

280,599

121.2%

郵便トン・キロ

(千トン・キロ)

22,689

22,044

97.2%

合計

 

 

 

 

有償旅客数

(人)

17,131,304

34,458,482

201.1%

有償旅客キロ

(千人・キロ)

18,116,925

50,401,243

278.2%

有効座席キロ

(千席・キロ)

47,316,254

73,282,493

154.9%

有償座席利用率

(%)

38.3

68.8

30.5

有償貨物トン・キロ

(千トン・キロ)

3,345,186

3,076,337

92.0%

郵便トン・キロ

(千トン・キロ)

183,164

147,949

80.8%

 

輸送実績(LCC)は、次のとおりです。

 

項目

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年同期比

(利用率は

 ポイント差)

ZIPAIR

 

 

 

 

有償旅客数

(人)

25,791

488,210

有償旅客キロ

(千人・キロ)

98,667

2,471,419

有効座席キロ

(千席・キロ)

1,791,942

4,674,955

260.9%

有償座席利用率

(%)

5.5

52.9

47.4

スプリング・ジャパン

 

 

 

 

有償旅客数

(人)

82,788

481,206

581.3%

有償旅客キロ

(千人・キロ)

77,235

409,361

530.0%

有効座席キロ

(千席・キロ)

163,207

760,306

465.9%

有償座席利用率

(%)

47.3

53.8

6.5

 

(注)1.旅客キロは、各区間有償旅客数(人)に当該区間距離(キロ)を乗じたものであり、座席キロは、

各区間有効座席数(席)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。輸送量(トン・キロ)は、

各区間輸送量(トン)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。

2.区間距離は、IATA(国際航空運送協会)、ICAO(国際民間航空機関)の統計資料に準じた算出基準の大圏距離方式で算出しております。

3.フルサービスキャリア(国際線):日本航空(株)

フルサービスキャリア(国内線):日本航空(株)、(株)ジェイエア、

                日本エアコミューター(株)、(株)北海道エアシステム、

                日本トランスオーシャン航空(株)、琉球エアーコミューター(株)

4.スプリング・ジャパンの輸送実績には国際線および国内線の合計を記載しております。

5.スプリング・ジャパンについては取得日(2021年6月28日)から2021年6月末までの業績に重要性が

  ないため、同社の2021年7月以降の輸送実績をLCCにおける輸送実績として含めております。

6.数字については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。

7.対前年同期比について、増減率が1,000%以上となる場合は「-」を記載しています。

 

<その他>

株式会社ジャルパックと株式会社JALUXおよび株式会社ジャルカードの概況は、次のとおりです。

 

 

株式会社ジャルパック

項目

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

 対前年

 同期比

 (%)

海外旅行取扱人数(万人)

0.0

1.7

国内旅行取扱人数(万人)

100.4

213.1

212.3%

売上収益    (億円)(連結消去前)

458

1,088

237.5%

 

 株式会社JALUX

項目

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

 対前年

 同期比

 (%)

売上収益    (億円)(連結消去前)

279

 

株式会社ジャルカード

項目

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

対前年

同期比

(%)

カード会員数  (万人)

346.1

344.3

99.5%

売上収益    (億円)(連結消去前)

185

171

92.7%

 ※対前年同期比について、増減率が1,000%以上となる場合は「-」を記載しています。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,450億円増加し、6,392億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税引前利益524億円に減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算等を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フロー(インフロー)は2,929億円(前年同期は△1,035億円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

固定資産の取得による支出を主因として、投資活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,127億円(前年同期は△1,737億円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

長期借入金の返済による支出およびリース債務の返済による支出を主因として、財務活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△384億円(前年同期は3,592億円のキャッシュ・インフロー)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産、受注及び販売に該当する業種・業態がほとんどないため、「① 財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断および見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財

務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。

 経営者が行った連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積りは次のとおりです。

 

・収益認識

航空輸送に係る収益は、航空輸送役務の完了時に認識しております。

航空輸送に使用される予定のない航空券販売(失効見込の未使用航空券)は、航空券の条件や過去の傾向を考慮して適切な認識のタイミングを見積り、収益認識しております。

また、当社グループは会員顧客向けのマイレージプログラム「JALマイレージバンク」を運営しており、旅客輸送サービス等の利用に応じて付与するマイレージの内、将来顧客が行使することが見込まれる分を履行義務として認識し、顧客がマイレージの利用に際して選択するサービスの構成割合を考慮して独立販売価格を見積り、取引価格はこれらの履行義務に対して独立販売価格の比率に基づいて配分しております。マイレージプログラムの履行義務に配分された取引価格は契約負債として認識し、マイレージの利用に従い収益計上しております。

 

・航空機等の減価償却費

航空機、航空機エンジン部品および客室関連資産等の各構成要素の耐用年数決定にあたり、将来の経済的使用可能予測期間を考慮して、減価償却費を算定しております。

 

 ・固定資産の減損

当社グループは、期末日現在の対象資産について、減損が生じている可能性を示す事象があるかを検討し、減損の兆候が存在する場合には減損損失の計上要否の検討を行っております。

 

・繰延税金資産の認識

 当社グループは、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除および繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で繰延税金資産を認識しております。

 

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたっての見積りに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等連

結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末における資産については、現金及び現金同等物の増加などを主因として前連結会計年度末に比べ1,448億円増加し、2兆5,206億円となりました。

 

(負債合計)

当連結会計年度末における負債については、契約負債の増加などを主因として、前連結会計年度末に比べ1,339億円増加の1兆6,636億円となりました。

 

(資本合計)

当連結会計年度末における資本については、主に親会社の所有者に帰属する当期利益などにより、前連結会計年度末に比べ108億円増加の8,569億円となりました。

 

2)経営成績

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、収入面では、国際旅客収入(FSC)は日本への入国に関する規制の緩和によりインバウンドを中心に需要が回復し、前年対比3,487億円の増収となりました。国内旅客収入(FSC)は、政府の需要喚起策「全国旅行支援」等を追い風に観光需要を中心に回復したことに加え、選好性の向上や生産体制が整っていることで、前年対比2,160億円の増収となりました。この結果、売上収益は1兆3,755億円(前年同期比101.5%増加)となりました。

費用面では、燃油費は復便による使用量の増加や燃油市況上昇による燃油単価の増加等により1,778億円の増加、人件費は業績回復に応じ社外に出向していた人財が戻ってきたことや業績に連動した賞与の増加などにより465億円増加しました。一方、コストマネジメントに努めた結果、営業費用全体としては1兆3,446億円(前年同期比43.0%増加)となりました。

 

以上の結果、EBITは645億円(前年同期は△2,394億円)となりました。また、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)は、344億円(前年同期は△1,775億円)となりました。

 

セグメント別の分析は次のとおりです。

 

<航空運送事業>

当社グループはコロナ禍においても、社員の雇用を維持し安全運航のための知識・技量の向上に努め、国内線の主力航空機を省燃費性能の高い最新鋭のエアバスA350型機へ更新を進めるなど、需要回復に向けて着実に準備してまいりました。

(国際線 フルサービスキャリア事業領域)

国際旅客事業では、2022年10月中旬まで1日5万人とされていた日本への入国制限者数の上限が撤廃されたことに加え、観光目的の短期滞在ビザ取得免除等の大幅な規制緩和が進み、日本発着旅客数はインバウンドを中心に徐々に回復してきました。加えて、需要回復スピードの早いアジア=北米間を中心とする通過需要を取り込むべく成田空港での乗り継ぎ利便性の高い運航ダイヤを設定するなど、環境の変化に柔軟に対応してまいりました。今後は中国の水際緩和措置等を背景に、力強い需要回復が期待されます。当連結会計年度の有償旅客数は前年同期比 387.2%増有償旅客キロは前年同期比353.1%増有効座席キロは前年同期比67.0%増有償座席利用率71.8%となりました。

 

(国内線 フルサービスキャリア事業領域)

国内旅客事業では、政府の需要喚起策「全国旅行支援」が実施されたことなどもあり、旅客需要は観光を中心に着実に回復しました。当社では臨時便の設定や航空機材の大型化を行うなど万全な供給体制を整え、その結果、ゴールデンウィークや年末年始、春休みの旅客数は2019年比で約9割まで回復するなど、高需要期を中心に多くのお客さまにご搭乗いただきました。当連結会計年度の有償旅客数は前年同期比85.4%増有償旅客キロは前年同期比91.0%増有効座席キロは前年同期比43.6%増有償座席利用率は65.5%となりました

 

(貨物)

貨物事業においては、夏以降、航空貨物総需要が減少に転じる中、当社便の需要はアジア=北米間を中心に好調を持続しておりました。旅客機を利用した貨物便や他社貨物便を積極的に活用し、できる限り需要を取り込みました。単価も下落傾向にはあるものの、依然としてコロナ前に比べ高い水準を維持しております。その結果、コロナ前に比べて大きく収入を伸ばしております。当連結会計年度の、貨物郵便収入は前年同期比2.9%増となりました

 

(LCC事業領域)

国際線中長距離LCCである株式会社ZIPAIR Tokyo(以下、ZIPAIR)は、日本だけでなく海外においてもお客さまの認知度が高まり利用率が向上、特に高需要期においては満席便が頻出するなど早期に黒字化を達成し、事業運営は順調に推移しております。また、2022年12月から就航したサンノゼ線も好調なスタートを切っており、2023年6月からサンフランシスコ線を新規就航、2023年7月からマニラ線の新規就航を予定するなど国際旅客需要の回復と歩調を合わせ着実に成長しております。中国線にターゲットを置くスプリング・ジャパン株式会社(以下、スプリング・ジャパン)は、厳しい入国規制の影響で当面需要回復が見込めなかったことから、生産資源を有効に活用するため一時的に国内線の運航便数を増やすなど収支改善に努めました。今後は中国の水際緩和措置により力強い需要回復が期待されます。上記2社に加え、主に国内線を運航するジェットスター・ジャパン株式会社(以下、ジェットスター・ジャパン)も含めた特徴の異なるLCC3社による成田空港をハブとしたネットワーク構築に努め、事業規模を拡大してまいります。当連結会計年度のLCCにおけるZIPAIRの旅客事業は、有償旅客数は488,210(人)、有償旅客キロは2,471,419(千人キロ)、有効座席キロは4,674,955(千席キロ)、スプリング・ジャパンの旅客事業は、有償旅客数は481,206(人)、有償旅客キロは409,361(千人キロ)、有効座席キロは760,306(千席キロ)となりました。

 

(今後の見通し)

当社グループは、「2021-2025年度JALグループ中期経営計画」で掲げた経営ビジョンの達成に向け、より一層ESG経営を推進すべく、2023年5月2日に発表した「2021-2025年度JALグループ中期経営計画ローリングプラン2023」の着実な遂行に向け努力してまいります。

2023年3月期はコロナ禍が収束に向かうなか、通期の連結黒字化を果たすことができ、復配もしております。2024年3月期はアフターコロナにおける安定的な収益構造を確立してまいります。2024年3月期の通期連結業績予想につきましては、同中期経営計画ローリングプランでお示しした事業環境等を踏まえ、連結売上収益1兆6,580億円、EBIT1,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は550億円、と予想いたします。

なお、算出にあたり、米ドル円為替レートは135円、航空燃油費の一指標であるシンガポール・ケロシンの市場価格を1バレルあたり115米ドルとしています。

 

3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が収束を迎え、日本の航空需要が回復する中、不安定な世界情勢を背景とした物価高騰や航空・観光業界の人材不足といった変化が顕在化しております。一方、SDGs達成や気候変動に対する社会の意識はさらに高まり、企業はESG経営を強く意識した上でその対応を加速していくことが求められております。このような環境の変化を踏まえ、当社は、「中期経営計画ローリングプラン2023」を策定し、ESG戦略を価値創造ストーリーに基づく最上位の戦略と定め、目標達成に向けた各事業領域での取組みを加速・具体化いたします。当社グループは、社会インフラ・ライフラインとしての責務を果たし、「安全・安心」と「サステナビリティ」を成長のエンジンとして、「JAL Vision 2030」の実現を目指して全社員一丸となって進んでまいります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

1)財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。

強固な財務体質の維持に関しては、格付評価上の自己資本比率の水準を50%程度に保ち、「シングルAフラット」以上の信用格付(日本の格付機関)の取得・維持を目指し、リスク耐性の強化を図ります。

同時に、持続的な成長に向けた取り組みも加速させます。設備投資に関しては、当社グループの全ての投資はESG戦略を推進するためと位置付け、ESG戦略と事業構造改革推進のための投資を着実に実施してまいります。投資判断には新たにInternal Carbon Pricingを導入し、GXの推進を進めます。

 

2)経営資源の配分に関する考え方

当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大により甚大なる影響を受けた経験を踏まえ、適正な手元現預金の水準について検証を実施した結果、イベントリスク発生時に大きな影響を受ける旅客収入規模に応じ、航空券払戻リスクにも一定程度耐えうる水準を設定しております。リスク耐性の強化および資産効率の両立を図るべく、旅客収入の5.0~5.6か月分(毎月末)を安定的な経営に必要な手元現預金水準(コミットメントライン含む)として確保してまいります。

ESG戦略を加速するための投資を前向きに推進しつつ、業績の回復に伴い、配当性向35%程度の早期実現を目指して株主還元も拡大させることで、企業価値向上に資する経営資源の配分に取り組んでまいります。

 

3)資金需要の主な内容

当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、航空運送事業に関わる燃油費、運航施設利用費、整備費、航空販売手数料、機材費(航空機に関わる償却費、賃借料、保険料など)、サービス費(機内・ラウンジ・貨物などのサービスに関わる費用)、人件費などがあります。

また、投資活動に係る資金支出は、全てESG戦略を推進し企業価値向上に資する目的としております。CO2排出量削減に寄与する省燃費性能に優れた航空機の導入(E)、安全・安心の強化や顧客利便性を向上させるための施設設備・ITへの投資(S)、BCP対応やITセキュリティ強化(G)等に関する投資などがあります。

 

4)資金調達

当社グループは、事業活動の維持および将来の成長のために必要な資金について、安定的かつ機動的に確保することに努めております。

設備投資は、内部資金および外部資金を有効に活用して実施してまいります。設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、十分な手元流動性の確保、資金調達手段の多様化、資本効率の向上を企図し、主要な事業資産である航空機などの調達に当たっては、金融機関からの借入、社債の発行、航空機リース等の有利子負債を一部活用しております。また、今後のESG投資の推進に向けては、2023年3月に航空業界として本邦初となる、資金使途特定型トランジション・リンク・ローンを実行するなど、今後もESGファイナンスを積極的に活用してまいります。

当社は従前から、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、資金調達能力の源泉である強固な財務体質の維持向上に努めてまいります。また、当社は国内2社の格付機関から信用格付を取得しております。本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付は「シングルA(ネガティブ)」、格付投資情報センターの格付は「シングルAマイナス(安定的)」となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、健全な財務体質を有していることから、必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題ないと認識しています。コロナ禍を耐え抜くために機動的な資金調達を実施したことで、有利子負債残高はこの3年間で大幅に増加しましたが、2023年3月末時点においても、格付評価上の自己資本比率は39.3%、ネットD/Eレシオは0.1倍と、航空業界においては世界最高レベルの強固な財務基盤を維持できております。

 

d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「2021~2025年度JALグループ中期経営計画」において、以下を経営目標としており、経営目標の達成に向け取り組んでまいります。

 

(安全・安心)

経営目標である「航空事故(注1)ゼロ・重大インシデント(注2)ゼロ」を達成し、安全のリーディングカンパニーを目指します。目標達成に向けて、安全・安心を最優先に考える文化・意識の継承と継続的な浸透を更に進めるとともに安全・安心を取り巻く社内外の環境変化に対応するために、以下を重点に取り組んでまいります。

・ビッグデータを活用した航空機の故障予測で機材トラブルを削減

・観測・通信技術の進化によりタイムリーな気象情報を入手し、飛行中の揺れを防止

2022年度は目標未達成となっておりますが、発生した事案を踏まえて再発防止策を強化し、安全で安心できる社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

指標

2025年度までの目標

2022年度実績

航空事故

0件

3件(注3)

重大インシデント

0件

0件

 

(注)1.航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機の損傷(大修理相当)等

2.航空事故には至らないものの、その恐れがあったと認められる事態。滑走路からの逸脱、非常脱出等

3.航空事故:2022年10月3日、日本トランスオーシャン航空036便において、客室乗務員が骨折した事案、11月7日、日本エアコミューターが運航する日本航空3760便において、お客さまが骨折した事案、および2023年1月7日、日本航空687便において、お客さまが骨折した事案。

 

安全運航の堅持とともに、顧客満足度はNPS(Net Promoter Score)を指標とし、目標達成に向け取り組んでいます。

2022年度は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2021年度までと比べて需要が回復するなか、衛生・清潔の向上とともに商品・サービス品質の向上を図ってまいりました。前年度に引き続き、2022年10月にAPEX(注1)の「WORLD CLASS」(注2)、2023年2月にSKYTRAX(注3)「5スター」(注4)に認定されるなど高評価をいただいたものの、国際線においては感染症流行を受けたサービス変更や急激な需要回復による混雑への対応が課題となりNPSが低下しました。

今後課題の解決に取り組むほか、お客さまの多様なニーズに合わせて商品・サービスを提供し、心地よい安心をお届けすることで世界トップレベルの顧客体験を実現いたします。

 

 

指標

2025年度までの目標

(2021年度期初対比)

2022年度実績

(2021年度期初対比)

NPS 国内線

+4.0ポイント

+3.0ポイント

NPS 国際線

+4.0ポイント

△3.3ポイント

 

(注)1.お客さまの搭乗体験向上のために航空会社や航空関連メーカー、旅行関連企業などで構成する米国を拠点とする非営利団体

2.ポストコロナ時代に航空会社へ求められる最も重要な価値を「サステナビリティ」、「安全・安心とウェルビーイング」、「サービス品質」と定め、世界トップレベルの評価を認定するアワード

3.英国を拠点とする航空会社の格付け会社

4.格付けプログラム「ワールド・エアライン・スター・レイティング」において世界最高品質を示す評価

 

(財務)

これまで築き上げた高い収益性と強固な財務安定性を兼ね備えつつ、成長に向けた積極的な投資および経営資源の有効活用により常に成長し続けるために、「EBITマージン(売上高利益率)2025年度に10%以上を達成、ROIC(投資利益率)2025年度に9%を達成、EPS(1株当たり純利益)2025年度に290円レベルを達成」を目指します。

2022年度は未達成となっておりますが、高い収益性と強固な財務安定性を目指してまいります。

指標

2025年度までの目標

2022年度実績

EBITマージン(売上高利益率)(注1)

10%以上

4.7%

ROIC(投資利益率)(注2)

9%

3.3%

EPS(1株当たり純利益)

290円レベル

79円

(注)1.EBITマージン=EBIT / 売上収益

2.投資利益率(ROIC)=EBIT(税引後)/ 期首・期末固定資産(*)平均

*固定資産=棚卸資産+非流動資産-繰延税金資産-退職給付に係る資産

 なお、ROICは社会的価値を考慮した新しい投資効率指標として、「サステナブルROIC(仮称)」の導入を今後検討してまいります。

 

(サステナビリティ)

環境目標について、「省燃費機材への更新」「運航の工夫」「持続可能な航空燃料(SAF)の活用」によるCO2排出量削減と、客室・ラウンジでの新規石油由来プラスチック全廃、および貨物・空港での環境配慮素材配合への置き換えによる使い捨てプラスチック削減に取り組んでまいります。

地域社会目標について、多くの人々やさまざまな物の流動を創出し、航空会社の根源的な価値である輸送力を活かして、地域活性化に貢献してまいります。

DEI推進目標について、女性社員の意思決定への参画をさらに促すほか、多様な人財の登用と活躍を推進し、会社の持続的な成長と発展に向けて努めてまいります。

 

 

指標

2025年度までの目標

2022年度実績

環境

CO2削減

総排出量909万トン未満

 (2019年度実績)

819万トン

使い捨てプラスチック削減

新規石油由来全廃

環境配慮素材へ100%変更

新規石油由来を45%廃止

環境配慮素材へ91%変更

地域社会

国内の旅客(注1)・

貨物輸送量

2019年度対比+10%

旅客△15%

貨物△17%

グループ内女性管理職比率

30%

22.8%

(注)1.観光需要喚起や新規流動の創造による旅客数の増

 

 

5【経営上の重要な契約等】

重要な契約の内容

会社名

契約の名称

または種類

契約の内容

契約相手先

締結年月

契約期間

国名

日本航空株式会社

航空機調達契約

(注)

ボーイング社製787型航空機の発注に関する契約

ザ・ボーイング・カンパニー

2005年

5月

米国

アライアンス

世界的な航空連合であるワンワールドへの加盟に際し、基本的な規約事項を定めた契約

ワンワールドマネジメントカンパニー及び加盟各社

2007年

4月

解約しない限り継続

米国

アメリカン航空との共同事業

アメリカン航空との包括的な業務提携に関する契約

アメリカン航空

2010年

2月

5年経過後は自動更新

米国

航空機調達契約

(注)

エアバス社製A350型航空機の発注に関する契約

エアバス

2013年

10月

仏国

ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンランド航空及びイベリア航空との共同事業

ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンランド航空及びイベリア航空との包括的な業務提携に関する契約

ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンランド航空及びイベリア航空

2016年

10月

5年経過後は自動更新

英国

フィンランド

スペイン

マレーシア航空との共同事業

マレーシア航空との包括的な業務提携に関する契約

マレーシア航空

2020年

4月

5年経過後は自動更新

マレーシア

航空機調達契約

(注)

ボーイング社製737型航空機の発注に関する契約

ザ・ボーイング・カンパニー

2023年

3月

米国

 

(注)当該契約に基づく航空機の調達については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載しております。

 

 

 

6【研究開発活動】

 研究開発費を発生させる活動はありません。