第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、グループの使命・存在意義である経営理念として「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」を掲げています。経営の基盤である安全を堅持しつつ、数あるエアライングループのなかで、お客様に選ばれ、世界の航空業界をリードする確固たる地位を築くことを目指し、グループ経営ビジョンとして「ANAグループは、お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指します」と定めています。

 

(2) 経営環境

航空業界は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、旅客需要が大幅に減少し、甚大な影響を受けていましたが、前期に比べ、回復基調にあります。一方で国際貨物需要が堅調に推移し、貨物収入は2期連続で過去最高となりました。

資金面については、6月に民間金融機関の協調融資により1,000億円の短期借入を実施しました。また同じく6月に200億円の無担保普通社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)、及び12月に1,500億円のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行による資金調達を実施したことから、当連結会計年度末現在においては、十分な手元流動性を確保しています。

 

(3) 対処すべき課題

当社グループは、2020年10月27日に公表した「ANAグループの新しいビジネス・モデルへの変革」に基づき、コロナがもたらす人々の行動変容に対応し、感染症の再来にも耐え得る強靭な企業グループに生まれ変わるための事業構造改革プランを着実に遂行してきました。

 

① 需要に合わせた航空事業の一時的な縮小

需要動向に応じた運航規模の抑制による運航関連費用の削減に加え、固定費の大幅な削減を進めました。具体的には大型機を中心とした航空機の早期退役を実施した他、グループ役職員の報酬・賃金・一時金の削減や、休業・休職制度の拡充、外部企業への出向等の人件費抑制策を実施したことにより、変動費・固定費合計で約6,000億円(対2019年度)の費用削減を行いました。自助努力で削減した約3,250億円(雇用調整助成金の受給額を含む)のうち、固定費の約1,300億円については、コスト削減効果が恒久的に持続する見込みです。

 

② 最適な航空事業ポートフォリオの追求

ANA、Peachに加え、第3ブランドであるAirJapan(2023年度下期就航予定)の活用により、お客様の価格・サービスにおける幅広いニーズに対応できるエアライングループとして持続的な成長を目指します。各エアラインはコロナ後の新常態に適合した新しいサービス・モデルを展開するとともに、マーケティングにおいて連携を図り、顧客回遊を促進することにより、お客様のライフタイム・バリューを最大化します。

 

③ 顧客データを活用したプラットフォーム事業の確立

航空事業、旅行事業、日常的な購買を中核に、当社グループが蓄積してきた顧客データとANAアプリやホームページ等のデジタルタッチポイントを活用したプラットフォーム・ビジネスを具現化し、グループにおける非航空収益を拡大します。

 

(4) 今後の見通し等

今後の経済見通しにつきましては、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直していくことが期待されますが、ウクライナ侵攻等に伴う原油高、円安、物価上昇等の影響が懸念されます。新型コロナウイルス感染症が当社に与える影響は依然大きく、前期に引き続き業績への影響は避けられないと考えていますが、本年3月以降、まん延防止等重点措置の解除や各国の入国制限緩和に向けた動きもあり、航空需要の更なる回復の兆しがみられます。

このような状況下で当社グループでは、事業構造改革プランを引き続き着実に推進していきます。航空事業においては、機動的な運航規模の調整により回復する旅客需要を確実に取り込む他、需要が堅調な貨物事業のマーケティングを更に強化し、収入最大化に取り組んでいきます。費用面では、前期に実施した固定費の削減効果を持続させることでコスト構造の改善を進めます。また、燃料価格の高騰や物価上昇等により増加するコストについては、コスト構造と収益モデルを見直すことで抑制し、黒字化を目指します。

 

(5) 社会的価値と経済的価値の同時創造

地球環境や社会が抱える課題への対応が企業の長期的な成長に大きな影響を及ぼすなか、経営理念である「安心」と「信頼」を基礎としながら、「社会的価値」と「経済的価値」を同時に創出していくことを目指しています。

ANAグループでは、その具体的な取り組みとして、事業戦略や社会動向を踏まえ、社内外のステークホルダーへ配慮しつつ、「環境」「人権」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「地域創生」を経営における重要課題(マテリアリティ)として特定しました。グローバルレベルの観点から国際基準に基づき、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめとする国際的な目標も意識しながら活動を推進していきます。

「環境」についてはCO2排出量の削減のため、低燃費航空機の導入、並びに持続可能なジェット燃料導入の取り組み等を行っています。「人権」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」では、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」への対応や、お客様のダイバーシティに着目したサービスの開発・導入を推進しています。また「地域創生」については、ANAグループ内リソースを戦略的に活用し、国内では、訪日需要の取り込みや地域産品の宣伝・販売をはじめとした地域活性化支援事業等を行っており、海外就航地域では、当該地域の社会課題解決に向け、次世代教育や観光資源の保全等の社会貢献活動を積極的に行っています。

 

2【事業等のリスク】

当社グループは航空事業を中核とする企業グループとして、安全の確保を最も重要な社会的使命と位置づけ、それが毀損・阻害されることを「最重要リスク」と考えていますが、これ以外にも、現在も引き続き大きな影響を受けている感染症に関するリスクをはじめ、全世界的にその対策が急務となっている気候変動に関するリスクや、事業のグローバル化を進める中でその影響度合いが増している国際情勢に関するリスク、あるいは非航空事業を強化するに際しての投資に関するリスク等、様々なリスクが存在します。

当社グループが、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えているリスクの概要は以下のとおりです。なお、以下の事項は、当期末時点において当社グループが判断したものであり、その内容には将来に関する予測も含まれていることから、これらの事項は現実とは合致しない可能性もあります。また、以下に記載されていない他の事項が当社グループに影響を及ぼす可能性もあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものです。

 

重要事象等について

当社グループは新型コロナウイルス感染症の拡大により、売上高が減少する等、甚大な影響を受けました。

このような未曾有の状況下で当社グループは、人件費及び前年の大型機を中心とした早期退役による減価償却費・整備費等の削減に加え、航空機等の設備投資を精査・抑制し、実施時期も見直しています。当連結会計年度においては、転換社債型新株予約権付社債及び普通社債の発行により1,700億円を調達した他、民間金融機関から1,000億円の借り換えを行い、当連結会計年度末の現金及び預金に有価証券を加えた手元流動性は9,509億円となりました。今後も必要に応じて適宜新規借入等の資金調達を行い、グループ各社の手元流動性の確保に努めてまいりますことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しています。

 

 

(1) 最も重要なリスク

「安全」が毀損・阻害されることは当社グループにとって最も重要なリスクです。

<要旨>

当社グループは、安全が経営の基盤であり、社会への責務であると考えていますが、安全が毀損・阻害されるような事象が発生した場合、当社グループに大きな影響を与えます。特に、人的損害が生じた場合には、当社グループへの社会的な信用・信頼を根本から揺るがす可能性があります。

航空事故等によって、人的・物的損害が発生した場合、その損害賠償責任が生ずる可能性がありますが、安全が毀損・阻害された場合の影響はそれに留まらず、顧客が航空機利用を手控えることで当社グループの収入が減少したり、あるいは航空機利用に際して当社グループ以外の便を選択するといった形で、その影響は広範かつ中期にも及ぶ可能性があります。

なお、安全の確保に向けては、航空機に製造上の不具合等が発生・発覚した場合、予防的に当該航空機の運航を中止することがありますが、そういった措置が取られた場合、航空機不足に起因する欠航や減便が生じ、当社グループの収入が減少したり、他社に対する競争力が低下したりする可能性があります。

<変化・展望>

当リスクは、引き続き、当社グループにとって最も重要なリスクであり続けると考えています。

<対応>

当社グループは、安全の推進や安全の品質監査を行う専門組織を設置すると共に、安全を堅持するための持続的な「仕組み」を構築し、事後対応型の安全リスクマネジメントに留まらず、未然防止型・未来予測型の安全リスクマネジメントを取り入れ、3H(初めて、変更、久しぶり)を対象としたリスクマネジメント、運航乗務員や客室乗務員を対象とした疲労リスクマネジメント、SPI(Safety Performance Indicator)による安全の「見える化」など、更なる安全性の向上を追求しています。同時に、運航乗務員や客室乗務員をはじめ、航空機運航に直接従事する社員に対する継続的・反復的な教育・訓練の実施や、当社グループ全体を対象とした安全に関する恒常的な啓蒙活動を行い、研修施設である「ANAグループ安全教育センター」の活用等を通じて安全を守り抜く企業グループ文化の醸成・強化に努めています。また、航空機メーカー等との間でも密接な情報交換や意見交換を行いながら、安全性をはじめとする高品質なオペレーションの実現に取り組んでいます。

 

 

 

(2) 主要なリスク

今なお、当社グループは、感染症による大きな影響を受けています。

<要旨>

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症による影響は未だ収束していません。各国政府や自治体等によって移動の制限・禁止措置が講じられる、あるいは出入国管理が厳格化される場合等においては旅客需要が激減し、当社グループの収入に大きな影響を及ぼします。そのような場合においても、航空事業に関しては航空機に関する費用や、それを運航するための人件費といった固定費が大きな割合を占めるため、事業支出を抑制することは容易ではありません。また、各国政府や自治体等による公的な措置が撤廃されても、顧客の間に出張や旅行の再開を見合わせるような動きが残る場合には同種の影響が生じる可能性があります。

なお、需要回復期においては、一時的に事業規模を縮小している海外委託先等が業務受け入れ能力の復元に時間を要する等、当社グループの事業規模回復計画に影響を及ぼす可能性があります。

<変化・展望>

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症は、当リスクの重要性を改めて浮き彫りにしました。一般的に、科学的根拠の確立までには至っていないものの、気候変動(地球温暖化)は感染症リスクを高めると言われており、将来に向けて、当リスクは対処の重要性が高まっていると考えています。

<対応>

当社グループは、旅客機に加えて貨物専用機も保有することで、人的移動が減少した状況下でも物的移動に対しては積極的に対応できる体制を構築するとともに、人的移動についても3種の航空ブランド(ANA、Peach、AirJapan)を保有することで、限定された航空需要に対して、最も適切に対応できるようにしています。

また、現在、事業ポートフォリオの多角化を進めており、全世界に約3,800万人(2022年3月末日現在)の会員を有するANAマイレージクラブを基盤としたプラットフォーム型事業の拡大等を通じ、非航空事業の強化を進めています。

 

気候変動問題への対応は更に重要性や緊急性が増しています。

<要旨>

航空機運航に際しては、二酸化炭素等の温室効果ガスを排出しますが、これらの削減が急務となっています。当社グループは、燃料効率に優れた航空機への置換えを進めるとともに、SAF(Sustainable Aviation Fuel:原材料の生産・収集から燃焼までの過程で、二酸化炭素の排出量が少ない持続可能な供給源から製造されるジェット燃料)の活用等によって2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロとする目標を設定していますが、現時点で、SAFが安定的に合理的な価格で十分に供給されるという技術的な目途が立ったものではありません。

SAFが安定的かつ十分に供給されない場合、当社グループは二酸化炭素排出権(枠)を他産業等から購入する必要に迫られ、営業費用の増加をもたらす可能性があるとともに、SAFの価格が高額に留まった場合には、航空機の運航コストが増加して当社グループの収益性に影響を及ぼしたり、そのコストを運賃に転嫁することで鉄道や海運など他の交通手段に対する当社グループの競争力が低下したりする可能性があります。

また、当社グループの二酸化炭素排出削減に向けた計画が目標通りに進まない場合、顧客の間に、二酸化炭素の排出が相対的に少ない、鉄道など他の交通手段を選択する動きが出てくる可能性があるとともに、日本国内において十分なSAF供給体制が構築されない場合には、厳しい環境基準を設定する一部の国・地域等において、当社グループの航空機の乗り入れに対して制約や制限が課される可能性があります。

<変化・展望>

気候変動に対する問題認識は世界的に急速に高まっており、当リスクへの対処は、重要性や優先度が極めて高くなっていると考えています。また、当リスクについては、今後より厳格でより高度な対応が求められる可能性もあると考えています。

<対応>

燃料効率に優れた新型機材への置換えといった主体的な対応を進めるとともに、SAFの開発・供給体制構築に向けては、同業他社やSAF製造会社等を含めて横断的な協力関係を構築しながら、関連企業・関連産業が一体となった課題解決を進めていきます。

なお、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に沿った情報については、当社グループホームページにて開示しています。

 

 

国際情勢の不安定化によるリスクが高まっています。

<要旨>

当社グループは、更なる成長機会を求めて国際線事業を拡大してきましたが、米中対立やロシア・ウクライナ情勢等によって国際情勢は不安定化しており、将来に向けて不透明性が増しています。

国際線航空輸送は、これまで、経済活動のグローバル化を背景に拡大してきましたが、大国間対立によってその流れが停滞・逆行したり、あるいは戦争や紛争によって平和な環境が毀損された場合、業務渡航需要の低迷や観光旅行需要の減少等を通じて、当社グループの収入に影響を及ぼす可能性があります。

なお、国際情勢の不安定化は、当社グループにおいて、国際事業のみならず、インバウンド需要(訪日外国人観光客)の減少等を通じて国内線事業にも影響を及ぼし得る他、航空機が戦争・紛争地域上空の飛行を取りやめて迂回すること等から、事業コストの増加等の影響は広範に及ぶ可能性があります。

<変化・展望>

東西冷戦の終結を受けて進行してきた経済活動グローバル化の拡大・加速については、一部、不透明感も漂うようになっており、リスクとして管理・対処する必要性が高まったと考えています。

<対応>

当社グループは、国際線事業の展開に際し、航空ネットワーク構築等において、短期的な収益性のみで判断せず、国際情勢リスクにも配慮した展開を進めており、今後とも、当対応を継続します。また、海外における顧客獲得においても、特定国・地域に過度に偏ることがないよう、バランスを考慮して展開しています。

なお、国際情勢の悪化等によって緊急対応の必要が生じた場合には、航空便の運航計画や運航ルートを柔軟かつ迅速に変更させることで、その影響低減を図っています。

 

システム障害が発生した場合の影響が大きくなっています。

<要旨>

当社グループは、航空輸送サービスを、より高品質で、より効率的に提供すべく、事業運営のシステム化を積極的に推進しており、これらのシステムに障害が発生した場合、その理由が社内要因(自社要因)、あるいはサイバー攻撃等の社外要因であるかの如何を問わず、事業に与える影響が高まっています。航空機運航関連システムに障害が発生した場合には、航空機の運航が困難になる可能性がある他、予約・決済・搭乗管理といった周辺システムで障害が発生した場合にも、予約の受付や決済、空港における搭乗管理等が不可能となり、実質的に航空輸送サービスを提供することが困難となる可能性があります。

<変化・展望>

システムの高度化、各システム相互間の接続や通関性増加、あるいは社会一般的にサイバー攻撃が増加・巧妙化していることを踏まえれば、システム障害に関するリスクは高まっていると考えています。また、当リスクを防止・低減させることに関する社会的要請も高まっていると考えています。

<対応>

当社グループ全体のシステム運営・管理を担う専門組織として、グループIT部を設置してシステム障害発生を防止するとともに、障害発生時にはその影響を低減しつつ早期に復旧させられるように、包括的・多面的なシステム運用体制を構築しています。また、社員教育の強化やシステム障害発生対応訓練の実施等、ソフト面での対応強化も行っています。

 

情報漏洩リスクへの対処が重要性を増しています。

<要旨>

当社グループは、全世界に約3,800万人(2022年3月末日現在)の会員を有する顧客組織「ANAマイレージクラブ」会員の個人情報をはじめ、多くの情報を保持していますが、これらの情報が不正に流出した場合、損害賠償請求を受けたり、各国政府から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下するといった可能性があります。

<変化・展望>

情報全般の取り扱いに関する社会的な意識の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化等を踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっていると考えています。

<対応>

各国法令等に沿って適切な情報管理を行うと共に、コンピュータウィルス対策やメールのセキュリティチェック、不正操作の監視、情報にアクセスできる社員の制限、全社員を対象とした情報管理に関する教育活動等を行っています。また、グループ全体のシステムを対象に継続的な点検を行い、システムの老朽化、脆弱性を早期に検出して対応する等、サイバー攻撃や情報漏洩を未然に防ぐ対応を実施しています。

 

 

人権リスクについて対処すべき領域が広がっています。

<要旨>

当社グループ内のみならず、委託先や取引先、調達先等を含めて、当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権に反する行為が発生した場合、当社グループが社会的非難を浴びたり、不買運動の対象となったりする可能性があります。

<変化・展望>

日本国内における労働力人口減少への対応や海外事業の拡大を志向する中で、当社グループの事業に関わる人的リソースは多様化しており、社会的、国際的に人権意識が一層高まっていることも踏まえれば、当リスクに対しては、より多面的に対処する必要性が高まっていると考えています。

<対応>

当社グループは、国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿った事業運営を行っており、社内においては、人権に関する社員教育や啓蒙活動、経営レベルの会議体における定期的なモニター等を実施するとともに、必要に応じて、社外関係先に対しても、直接的に確認・調査を行う等、当リスクの適切な管理に努めています。

 

激甚化する自然災害のリスクが高まっています。

<要旨>

航空輸送は、点と点を空路で結ぶという特性上、運輸・運送システムの中では相対的に自然災害への耐性が強く、一部空港が機能不全に陥った場合でも近隣空港を活用した代替輸送が可能といった利点がありますが、当社グループの事業基盤は首都圏に集中しているため、羽田空港や成田空港が自然災害によって大きな影響を受けた場合には、その事業運営において大きな制約や障害が発生する可能性があります。

<変化・展望>

一般的に、気候変動(地球温暖化)は自然災害の激甚化をもたらすと言われており、将来に向けて当リスクは高まっていると考えています。

<対応>

首都圏直下型地震をはじめ、大規模自然災害が発生した場合でも、早急に運航機能を回復させて公共交通機関としての使命を果たせるよう、事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定し、定期的な見直しを行っています。また、事業運営に不可欠な各種中核機能についてはバックアップ系統を整備し、衛星電話や備蓄品、従業員安否確認システム等を用意すると共に、関係者(空港会社等)とも連携しながら、定期的な防災訓練を実施する等の対応をしています。

 

当社グループの事業は、為替・原油価格・金利といった市況の変動に大きな影響を受けます。

<要旨>

1)為替

当社グループが使用する航空機は海外メーカーによって製造されているため、円安が大きく進行した場合、航空機調達コストが増大します。また、営業費用において大きな割合を占める航空機燃料も、その原料となる原油は輸入に頼っているため、同様に、円安が大きく進行した場合には、営業費用が増加します。なお、円安は、当社グループが海外で得た収入の円建て換算額を押し上げますが、当社グループは、外貨建て収入よりも外貨建て支出の方が多いため、その効果は費用増の全てを相殺できるものではありません。

為替変動に対しては、ヘッジ取引等を活用した影響緩和策も講じていますが、これらの対策は影響の緩和や平準化を図ることはできても、その影響を完全に排除するものではなく、費用抑制効果が常に見込まれるものでもありません。

2)原油価格

航空機燃料の価格は、基本的に原油価格に連動しており、原油価格の高騰は、航空機燃料コストの増大をもたらします。当社グループは、一部事業において、燃料価格に応じた燃油特別付加運賃(いわゆる「燃油サーチャージ」)を設定・徴収するといった方策も講じていますが、それらの収入は、費用増加の全てを常に相殺するものではありません。

原油価格の変動に対しては、ヘッジ取引等を活用した影響緩和策も講じていますが、これらの対策は影響の緩和や平準化を図ることはできても、その影響を完全に排除するものではなく、費用抑制効果が常に見込まれるものでもありません。

3)金利

当社グループは、航空機の調達をはじめ、外部資金も活用した事業運営を行っており、金利が大きく上昇した場合、その資金調達コストの増加といった形で当社グループに影響を及ぼす可能性があります。

 

<変化・展望>

市況変動は、従来から常に起こり得るものですが、国際情勢や経済情勢に関する不確実性が増していることを踏まえれば、当リスクが顕在化する可能性は高まっていると考えています。

<対応>

上記のように、ヘッジ取引の活用等によってリスクの抑制・緩和・平準化策を講じるとともに、より根幹的な対策として、外貨建て収入を増やして為替影響に強い収支構造を構築する、燃料効率に優れた新型機への置換えを推進する、事業ポートフォリオの多角化によって市況変動の影響を受けにくい事業を育成する、適切な財務規律の下で資金調達を実施する等、グループ全体として、市況変動に対する耐性を高めていきます。

 

競争力の強化や新たな成長に向けた投資は、リスクも伴っています。

<要旨>

現在、当社グループは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症による大きな影響を受けていますが、この状況を克服して経営の安定性を回復し、将来に向けては新たな成長も実現するための投資を検討・実行していますが、これらの投資はリスクも伴っています。

航空事業では、他社に対する競争力の維持・向上や温室効果ガスの排出削減に向けて新型機材の導入といった投資を行っていきますが、今後、新型コロナウイルス感染症の影響によって縮小した市場が想定レベルに回復しない場合や、各種オンライン技術の浸透・定着等によって社会の行動様式に想定を上回る大きな変化が生じる場合、あるいは国際情勢に起因して経済活動のグローバル化に予期せぬ大きな変化が生じる場合等において、これらの投資は期待した効果を発揮しない可能性があります。

また、グループ全体としてのリスク耐性を高めるべく、航空事業との相乗効果が期待できる関連事業や航空事業のノウハウを活用できる可能性がある類似事業、即ち、顧客関連事業(プラットフォーム型事業)やドローン関連事業、MaaS(Mobility as a Service)関連事業、宇宙関連事業等への投資を検討・実行していますが、これらの投資は、想定した成果を発揮した場合の効果は大きいと期待される一方で、想定した成果を得られない可能性もあります。

<変化・展望>

現在、当社グループが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症によって大きな影響を受けていることを踏まえれば、投資に関するリスク管理は、より重要になっていると考えています。

<対応>

投資の検討・実行に際しては、取締役会や各種経営レベル会議体での議論・審議のみならず、グループ全社を対象とした投資管理委員会を設置して管理体制の重層化・複層化を図るとともに、その評価基準や撤退基準を予め設定する等、当リスクの適切な管理に努めています。

 

人口減少により、既存の市場が縮小したり、労働力の確保が困難になっていく可能性があります。

<要旨>

当社グループは、日本国内を最大の事業基盤としていますが、今後、日本の人口減少が進むにつれて、その市場規模は縮小する可能性があります。業務出張需要や観光旅行需要などを担う航空輸送の特性を踏まえれば、人口に関連した市場規模の変動については、総人口よりも、より速い速度で減少するとされている生産年齢人口の影響を受ける可能性もあります。

また、人口減少は、事業運営に必要な労働力の確保という観点でも影響を及ぼす可能性があり、その場合、人件費単価が増加したり、労働力不足に起因して事業運営上に制約が生じたりする可能性があります。

<変化・展望>

直ちに顕著な影響が生じるとは考えていませんが、中長期的に、当リスクは高い確率で顕在化すると考えています。

<対応>

経営戦略の立案等において、人口減少等の各種社会的変化の想定を加味・反映させるとともに、LCCブランドを活用した市場全体の活性化にも取り組んでいます。また、中長期にわたって、今後とも市場の成長が期待できる国際線事業の拡充を進めていきます。

労働力の確保に向けては、適切な分配、教育・研修機会の拡充等の、「人」に対する積極的な投資によって採用競争力を維持・向上させるとともに、労働力人口の減少に備えて、他社との競争において差別化の源泉とならない業務の機械化、省力化、無人化等を進めていきます。

 

 

 

 

更なる高速鉄道網の延伸等によって、陸上交通機関との競争が激化する可能性があります。

<要旨>

日本国内では、今後、更なる高速鉄道網の延伸が予定されており、新幹線等との競争が、より激しくなる可能性があります。整備新幹線の延伸や既存新幹線の高速化は、当社グループの国内線事業に対して、市場シェアの低下や、価格競争の発生・激化による単価下落といった影響をもたらす可能性があります。

<変化・展望>

当リスクは、今後、顕在化する可能性が高いと考えています。

<対応>

経営戦略の立案等において、高速鉄道網の延伸等の競争環境の変化を加味・反映させるとともに、LCCブランドを活用した市場全体の活性化にも取り組んでいます。また、中長期にわたって、今後とも市場の成長が期待できる国際線事業の拡充を進めていきます。

 

 

(3) その他のリスク

交通政策や航空政策に関するリスク

羽田空港等の基幹空港では、その発着可能枠が既に上限に達しているものもありますが、その処理能力向上については基本的に国策に委ねられており、当社グループの今後の事業展開において制約となる可能性があります。また、現時点で当社グループが利用しているこれらの空港における発着枠についても、今後の政策によって縮小・回収といった政策調整が行われる可能性があります。

 

税制や公租公課に関するリスク

航空事業に対しては、航空機燃料税等の税制に加えて、空港着陸料や駐機場使用料、航行援助施設利用料といった公租公課が存在します。これらの税制や公租公課に変更、新設等があった場合、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。

 

景気変動に関するリスク

航空輸送が担う中長距離輸送は、日常的な短距離輸送に比べて、景気変動の影響をより受けやすいという特性があります。

 

損益構造・財務構造・資金調達に関するリスク

航空事業は、高額である航空機を使用するとともに、貨客量に関わらず運航に連動して発生する費用(燃油費や整備費等)も多いため、需要が大きく減少した場合には、その収益性が大きく低下する可能性があります。

また、当社グループは、繰延税金資産を計上していますが、将来の課税所得見込みが減少した場合等には、この資産が取り崩される可能性があります。

なお、当社グループは、設備投資等の必要資金を金融機関や市場から調達する可能性がありますが、当社グループの信用力変動や市場の混乱等によって資金調達に制約を受ける場合は、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。

 

事業ポートフォリオに関するリスク

当社グループは、その収入・収益において航空事業が大きな割合を占めている他、それ以外の事業についても、旅行事業や航空関連事業等、航空輸送に関連した事業が多く、航空事業に大きな影響が生じた場合、これらの事業においても連動的に大きな影響が生じる可能性があります。

 

訴訟に関するリスク

国内外において、当社グループの事業活動に関する各種訴訟等が発生した場合、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日、以下「当期」という)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、企業の生産活動等において持ち直しの動きがみられます。

航空業界を取り巻く環境は、依然として厳しい状況にあるものの、需要は国内線を中心に回復基調にあり、入国制限が徐々に緩和される中で国際線の需要にも回復の兆しがみられます。

経営成績では、このような経済情勢の下、人の移動が徐々に回復し、売上高はコロナ禍の影響を大きく受けた前期から増加しました。コストに関しては、運航規模が昨年度から大きく拡大した一方で、前期からのコストマネジメントを引き続き徹底した結果、営業費用は前期と同水準に抑えました。しかしながら、コロナ禍の影響が続いていることから、各段階損益で損失を計上しています。

財政状態では、純損失の計上に加え、収益認識会計基準等の適用により利益剰余金が減少しています。

また将来の設備投資等のため転換社債型新株予約権付社債及び普通社債を発行し、1,700億円を調達しました。

収益認識会計基準等の適用が財政状態に与える影響の詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

以上の結果、当期の財政状態及び経営成績等は以下のとおりとなりました。

 

1) 財政状態

当期末の資産合計は、前期末に比べ105億円増加し、3兆2,184億円となりました。

当期末の負債合計は、前期末に比べ2,194億円増加し、2兆4,150億円となりました。

当期末の純資産合計は、前期末に比べ2,089億円減少し、8,034億円となりました。

 

2) 経営成績

当期における売上高は1兆203億円(前期比40.0%増)、営業費用は1兆1,934億円(前期比0.0%減)となり、営業損失は1,731億円(前年同期 営業損失4,647億円)、経常損失は1,849億円(前年同期 経常損失4,513億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,436億円(前年同期 親会社株主に帰属する当期純損失4,046億円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは764億円の支出となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは2,300億円の収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは936億円の収入となりました。

以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて2,507億円増加し、6,210億円となりました。

 

③生産及び販売の実績

1) セグメント別売上高

最近2連結会計年度のセグメント別売上高は次のとおりです。

 

 前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

セグメントの名称

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

航空事業

 

 

 

 

国際線

 

 

 

 

旅客収入

44,726

4.5

70,151

5.6

貨物収入

160,503

16.2

328,750

26.1

郵便収入

2,948

0.3

5,448

0.4

 小計

208,177

21.0

404,349

32.1

国内線

 

 

 

 

旅客収入

203,119

20.6

279,877

22.3

貨物収入

20,881

2.1

24,932

2.0

郵便収入

2,550

0.3

2,666

0.2

 小計

226,550

23.0

307,475

24.5

航空事業収入合計

434,727

44.0

711,824

56.6

LCC収入

22,071

2.2

37,813

3.0

その他の収入

147,216

14.9

135,459

10.8

 航空事業小計

604,014

61.1

885,096

70.4

航空関連事業

 

 

 

 

航空関連収入

222,139

22.5

206,806

16.4

 航空関連事業小計

222,139

22.5

206,806

16.4

旅行事業

 

 

 

 

パッケージ商品収入(国内)

38,530

3.9

26,243

2.1

パッケージ商品収入(国際)

492

0.1

171

0.0

その他の収入

6,028

0.6

19,868

1.6

 旅行事業小計

45,050

4.6

46,282

3.7

商社事業

 

 

 

 

商社収入

79,958

8.1

81,694

6.5

 商社事業小計

79,958

8.1

81,694

6.5

 報告セグメント計

951,161

96.3

1,219,878

97.0

その他

 

 

 

 

その他の収入

36,643

3.7

38,130

3.0

 その他小計

36,643

3.7

38,130

3.0

売上高合計

987,804

100.0

1,258,008

100.0

セグメント間取引

△259,121

△237,684

売上高(連結)

728,683

1,020,324

(注)1.セグメント内の内訳は内部管理上採用している区分によっています。

2.各セグメントの営業収入はセグメント間の売上高を含みます。

3.LCC収入は、Peach Aviation㈱の収入です。

4.収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用し、収益認識に関する会計処理方法を変更しました。

当該変更は、主に航空事業セグメントの売上高に影響しています。

 

2) セグメント別取扱実績

(a) 航空事業

(ア)ANAブランド輸送実績

 最近2連結会計年度の輸送実績は次のとおりです。

 項目

 前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

国際線

 

 

 

旅客数

(人)

427,392

825,524

座席キロ

(千席キロ)

14,465,583

20,524,342

旅客キロ

(千人キロ)

2,840,451

5,550,477

利用率

(%)

19.6

27.0

有効貨物トンキロ

(千トンキロ)

4,588,226

6,966,178

貨物輸送重量

(トン)

655,019

976,644

貨物トンキロ

(千トンキロ)

3,251,280

5,186,055

郵便輸送重量

(トン)

13,686

18,737

郵便トンキロ

(千トンキロ)

71,766

87,665

貨物重量利用率

(%)

72.4

75.7

国内線

 

 

 

旅客数

(人)

12,660,650

17,959,225

座席キロ

(千席キロ)

26,896,624

34,288,864

旅客キロ

(千人キロ)

11,567,744

16,382,448

利用率

(%)

43.0

47.8

有効貨物トンキロ

(千トンキロ)

708,266

957,661

貨物輸送重量

(トン)

218,032

251,332

貨物トンキロ

(千トンキロ)

240,422

281,992

郵便輸送重量

(トン)

23,458

24,663

郵便トンキロ

(千トンキロ)

23,203

24,180

貨物重量利用率

(%)

37.2

32.0

 

(イ)ANAブランド運航実績

 最近2連結会計年度の運航実績は次のとおりです。

 項目

 前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

国際線

国内線

国際線

国内線

運航回数(回)

26,632

212,145

38,527

276,732

飛行距離(km)

146,710,038

178,966,221

224,573,623

239,638,839

飛行時間(時間)

191,600

306,540

291,833

413,559

 

(注)  1.国内線旅客実績には、アイベックスエアラインズ㈱、㈱AIRDO、㈱ソラシドエア及び㈱スターフライヤーとのコードシェア便実績及びオリエンタルエアブリッジ㈱との一部のコードシェア便実績を含みます。また、2021年8月27日からPeach Aviation㈱とのコードシェア便実績を含みます。

2.国際線、国内線ともに不定期便実績を除きます。

3.国際線貨物及び郵便実績には、コードシェア便実績、エアラインチャーター便実績、ブロック・スペース契約締結便実績及び地上輸送実績を含みます。

4.国内線貨物及び郵便実績には、㈱AIRDO、㈱ソラシドエア、オリエンタルエアブリッジ㈱及び㈱スターフライヤーとのコードシェア便実績、エアラインチャーター便実績及び地上輸送実績を含みます。また、2020年 11月1日からPeach Aviation㈱とのコードシェア便実績を含みます。

5.座席キロは、各路線各区間の有効座席数(席)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。

6.旅客キロは、各路線各区間の旅客数(人)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。

7.有効貨物トンキロは、各路線各区間の有効貨物重量(トン)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。なお、旅客便については、床下貨物室(ベリー)の有効貨物重量に各区間距離を乗じています。また、床下貨物室の有効貨物重量には、貨物・郵便の他、搭乗旅客から預かる手荷物搭載の有効搭載重量も含まれています。

8.貨物トンキロ及び郵便トンキロは、各路線各区間の輸送重量(トン)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。

9.貨物重量利用率は、貨物トンキロと郵便トンキロの合計を有効貨物トンキロで除した数値です。

 

(ウ)LCC輸送実績

 最近2連結会計年度の輸送実績は次のとおりです。

 項目

 前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

旅客数

(人)

2,080,931

4,267,002

座席キロ

(千席キロ)

4,932,786

7,863,780

旅客キロ

(千人キロ)

2,403,357

4,846,740

利用率

(%)

48.7

61.6

(注)1.座席キロは、各路線各区間の有効座席数(席)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。

2.旅客キロは、各路線各区間の旅客数(人)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。

3.LCC実績は、Peach Aviation㈱の実績です。

 

 

(b) 航空関連事業

航空関連事業に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。

 

(c) 旅行事業

旅行事業に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。

 

(d) 商社事業

商社事業に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。

 

(e) その他

その他に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当期末時点において判断したものです。

 

①財政状態

<資産の部>

流動資産は、営業未収入金等が増加したことから、前期末に比べて676億円増加し、1兆2,939億円となりました。

固定資産は、売却及び減損損失の計上に伴い航空機が減少したこと等により、前期末に比べ566億円減少し、1兆9,228億円となりました。

以上により、当期末における総資産は前期末に比べて105億円増加し、3兆2,184億円となりました。

 

<負債の部>

負債合計は、当連結会計年度期首から収益認識会計基準等を適用し契約負債を計上したことに加え、資金調達により社債等が増加したことから、前期末に比べて2,194億円増加し、2兆4,150億円となりました。

なお、有利子負債(無利子のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債を含む)は前期末に比べて946億円増加し、1兆7,501億円となりました。

 

<純資産の部>

株主資本は、当期純損失の計上及び収益認識会計基準等の適用により利益剰余金が減少したことから、前期末に比べて2,583億円減少し、7,023億円となりました。

その他の包括利益累計額は繰延ヘッジ損益等の増加等により、前期末に比べて483億円増加し、948億円となりました。

これらの結果、純資産合計は前期末に比べて2,089億円減少し、8,034億円となりました。

なお、自己資本比率は24.8%(前期末31.4%)となり、有利子負債と自己資本の比率を示すD/Eレシオは2.2倍(前期末1.6倍)となりました。

収益認識会計基準等の適用が財政状態に与える影響の詳細については「第5 経理の状況 1. 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

②経営成績

航空業界を取り巻く環境は、依然として厳しい状況にあるものの、需要は国内線を中心に回復基調にあり、入国制限が徐々に緩和される中で国際線の需要にも回復の兆しがみられます。

このような経済情勢の下、人の移動が徐々に回復し、売上高はコロナ禍の影響を大きく受けた前期から増加し1兆203億円(前期比40.0%増)となりました。コロナ禍の影響が続いていることから、営業損失は1,731億円(前期 営業損失4,647億円)、経常損失は1,849億円(前期 経常損失4,513億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,436億円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失4,046億円)となりました。

当社は、事業における安全と品質の追求等の取り組みが評価され、米国S&P Global社の「Sustainability Awards 2022」において、2年連続で最高格付であるゴールドクラスに選定された他、世界の代表的な社会的責任投資の指標である「Dow Jones Sustainability World Index」の構成銘柄に5年連続で選定されました。

当社グループは、2050年度までに航空機の運航で発生するCO2排出量を実質ゼロにする等、中長期環境目標を刷新し、目標の達成に不可欠なSAF(Sustainable Aviation Fuel)の普及に向け、幹事企業として国産SAFの商用化等に取り組む有志団体「Act For Sky」を設立しました。さらに、航空便をご利用いただく企業の脱炭素化をサポートするプログラム「SAF Fight Initiative」を開始しました。今後も事業を通じて環境問題等の社会課題解決に取り組み、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

 

なお、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しており、当期に係る各数値については、当該会計基準を適用した後の数値となっています。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

以下、当期におけるセグメント別の概況をお知らせいたします。

(なお、各事業における売上高はセグメント間内部売上高を含み、営業利益はセグメント利益に該当します。)

 

◎航空事業

コロナ禍により甚大な影響を受けているものの、旅客需要は前期から増加した他、好調な貨物需要を積極的に取り込み貨物収入が過去最高となったこと等から、売上高は前期を上回り8,850億円(前期比46.5%増)となりました。事業構造改革プランを着実に遂行し、減価償却費、整備費及び人件費等の固定費の削減を進めたこと等により、前期に比べて損益は改善しましたが、営業損失は1,629億円(前期 営業損失4,478億円)となりました。

なお、ウクライナ侵攻の影響を受け、本年3月から羽田=ロンドン、パリ線を運休したものの、羽田=フランクフルト線、成田=ブリュッセル線ではロシア上空を迂回して運航を継続しました。一方、国際線貨物では好調な米国路線の運航規模を拡大したこと等により収入への影響は限定的なものとなりました。

当社グループは、英国SKYTRAX社による「World Airline Awards 2021」において「機内客室の清潔さ」をはじめ4部門で最も優秀な航空会社に選ばれた他、英国の航空データ分析を提供するCIRIUMの「The On-Time Performance Awards」にて、2021年の定時到着率が全世界で1位に認定されました。

 

<国際線旅客(ANAブランド)>

国際線旅客では、新型コロナウイルスの感染再拡大や変異株の流行により旅客需要が大きく低迷した状況が続きましたが、海外赴任・帰任を中心とするビジネス需要やアジア発北米行きの接続需要が回復し始めたこと等から旅客数・収入ともに前期を上回りました。通期ではコロナ禍以前の1割程度の水準にとどまりましたが、本年3月から日本の入国制限が緩和されたことにより回復の動きは一層強まっています。

路線ネットワークでは、アジア発北米行きの接続需要を取り込むため、7月より一部の北米路線を羽田から成田空港発着に移管する等、機動的な運航路線の選択や臨時便の設定等に努めました。

営業・サービス面では、顔認証技術による新しい搭乗手続き「Face Express」を7月より成田=メキシコシティ線で開始し、成田=ブリュッセル、ムンバイ、チェンナイ線に順次拡大しました。また、本年2月から日本発の米国・欧州・中国路線において、事前にオンラインで渡航書類を登録・確認するサービス「ANA Travel Ready」を導入し、スムーズにご搭乗いただけるようにする等、利便性の向上に努めました。

 

以上の結果、当期の国際線旅客数は82万人(前期比93.2%増)となり、収入は701億円(同56.8%増)となりました。

 

<国内線旅客(ANAブランド)>

国内線旅客では、上期に緊急事態宣言が繰り返され需要が低迷しましたが、宣言解除後の第3四半期(10月~12月)には需要が回復基調を辿り、旅客数・収入はコロナ禍において四半期ベースで最高となりました。第4四半期(本年1月~3月)に変異株が拡大し、まん延防止等重点措置が適用されると再び需要が減少しましたが、解除の見通しが立った本年3月中旬から需要は強く回復を始めました。その結果、旅客数・収入ともに新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前期を上回りました。

路線ネットワークでは、航空需要の変動に合わせて運航規模の調整を進め、特に10月からは回復する需要を取り込むために、週末や年末年始・春休み等において臨時便を積極的に設定しました。

営業・サービス面では、12月から全席にパーソナルモニター付きの新シートを装備した国内線新仕様のボーイング787-9型機を投入しました。また、12月からテレビアニメ「鬼滅の刃」とタイアップした搭乗キャンペーンや機内サービス等を実施し、さらにキャラクターを描いた特別デザイン機を2機就航させました。

 

以上の結果、当期の国内線旅客数は1,795万人(前期比41.9%増)となり、収入は2,798億円(同37.8%増)となりました。

 

<国際線貨物(ANAブランド)>

国際線貨物では、経済の回復による貨物需要の活発化に加え、海上輸送の混雑に伴う航空へのシフト等により、引き続き航空貨物需要は好調に推移しました。旺盛な需要を背景に、4月から成田=ロサンゼルス線、10月から成田=香港線、成田=台北線、11月から成田=青島線に大型の貨物専用機ボーイング777F型機を就航させる等、貨物専用機を最大限活用したことに加え、旅客機を使用した貨物専用便を機動的に設定したこと等により、自動車部品や半導体・電子機器、ワクチン等の医薬品の需要を積極的に取り込みました。

 

以上の結果、当期の国際線貨物輸送重量は976千トン(前期比49.1%増)となり、収入は過去最高の3,287億円(同104.8%増)となりました。

 

 

<LCC>

LCCでは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除された第3四半期(10月~12月)や本年3月には需要が好調に推移したことに加え、運航規模を拡大した効果もあり、旅客数・収入ともに新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前期を上回りました。

路線ネットワークでは、7月に関西=女満別線、10月に福岡=石垣線を新規開設しました。今後も需要回復等の動向を見極め、ネットワークの拡充を図ってまいります。国際線はアジア各国の入国制限の継続のため、期初から全路線で運休しています。

営業・サービス面では、行き先を選べない旅を提案する「旅くじ」を機内や専用の自動販売機で販売しました。「旅くじ」には指定された行き先への航空券が購入できるピーチポイントや、旅先でのミッション等が入っており、目的地を運に任せる新たな旅の体験を提供し、需要の創出に取り組みました。

 

以上の結果、当期のLCC旅客数は426万人(前期比105.1%増)となり、収入は378億円(同71.3%増)となりました。

 

<その他>

航空事業におけるその他の収入は1,354億円(前期比8.0%減)となりました。なお、航空事業におけるその他には、マイレージ附帯収入、機内販売収入、整備受託収入等が含まれています。

コロナ禍における新たな取り組みとして、駐機する国際線機材を貸し切って機内ウェディングを実施した他、当社グループの総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」において、パイロット・整備士・客室乗務員の職業体験ツアーや施設・訓練の様子を見学いただけるツアーを開催しました。

 

◎航空関連事業

グループ内における投資抑制の影響に伴いシステム開発業務の取扱高が減少したこと等により、売上高は2,068億円(前期比6.9%減)となり、営業損失は6億円(前期 営業利益36億円)となりました。

ご好評いただいている機内食のインターネット販売について、11月から商品ラインアップを拡充し、新たにANA国際線ビジネスクラスの機内食の販売を開始しました。

 

◎旅行事業

前期に引き続き当社グループが企画する全ての海外旅行の催行を中止したことに加え、国内旅行は「Go Toトラベルキャンペーン」の効果があった前期に比べて取扱高が減少しました。一方で、グループ内からデジタルマーケティング等の機能が移管されたことにより受託収入が増加しました。

以上の結果、当期の旅行事業における売上高は462億円(前期比2.7%増)、営業損失は21億円(前期 営業損失50億円)となりました。

4月にデジタル領域での販売強化に向けて、顧客データを活用したプラットフォーム事業を担うANA X㈱に旅行事業を移管するとともに、地域創生事業会社のANAあきんど㈱を設立しました。当社グループは「マイルで生活できる世界」の具現化を目指しており、航空だけでなく徒歩・電車等での移動に対して、マイル等に交換できるポイントが貯まるモバイルアプリサービス「ANA Pocket」の提供等を開始しました。

 

◎商社事業

航空需要の緩やかな回復に伴い、空港物販店「ANA FESTA」等で増収となった他、半導体市場の好調な需要を受けて電子事業の取扱高が増加しました。一方で、当期より収益認識会計基準等を適用したことによる減収影響を受けました。

以上の結果、当期の商社事業における売上高は816億円(前期比2.2%増)、営業利益は5億円(前期 営業損失42億円)となりました。

 

◎その他

新型コロナウイルスの影響により、建物・施設の保守管理事業において取扱高が減少したものの、不動産関連事業において住宅開発や物件管理等の取扱高が増加しました。

以上の結果、当期のその他の売上高は381億円(前期比4.1%増)、営業利益13億円(前期 営業損失0億円)となりました。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

税金等調整前当期純損失1,753億円に減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フローは764億円の支出となりました。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

設備投資における支出の一方で、有価証券の償還による収入等を加えた結果、投資活動によるキャッシュ・フローは2,300億円の収入となりました。

以上の結果、フリー・キャッシュ・フローは1,536億円の収入となりました。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

社債発行による資金調達を行ったことから、財務活動によるキャッシュ・フローは936億円の収入となりました。

 

④資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、運転資金及び設備投資資金(主に航空機等)につきましては、自己資金または金融機関からの借入、及び社債発行等により資金調達することとしており、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

当期においては、有利子負債の返済及び設備投資資金等の手当てのため1,700億円の社債等の発行を実施した他、民間金融機関から1,000億円の借り換えを実施しました。

当期末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、1兆7,501億円となっています。また、現金及び預金に有価証券を加えた手元流動性は9,509億円となりました。

なお、2022年3月31日現在、複数の金融機関との間で合計1,480億円のコミットメントライン契約を締結しています。

 

⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 

指標

2019年度

2020年度

2021年度

売上高         (百万円)

1,974,216

728,683

1,020,324

営業利益又は営業損失(△)                 (百万円)

60,806

△464,774

△173,127

売上高営業利益率   (%)

3.1

△63.8

△17.0

株主資本利益率(ROE)

(%)

2.6

△39.1

△15.9

総資本利益率(ROA)(%)

2.4

△16.0

△5.3

自己資本比率       (%)

41.4

31.4

24.8

 

当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大により甚大な影響を受けていますが、「ANAグループの新しいビジネス・モデルへの変革」に基づき、コロナがもたらす人々の行動変容に対応し、感染症の再来にも耐え得る強靭な企業グループに生まれ変わるための事業構造改革プランを着実に遂行してまいります。

 

⑥重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) 営業に関する重要な契約

契約会社名

契約の種類

契約先

対象区間

全日本空輸㈱

スターアライアンスへの加盟

スターアライアンス
加盟各外国航空会社

 

Joint Venture契約

旅客分野

ルフトハンザグループ
(ルフトハンザ ドイツ航空、スイス インターナショナル エアラインズ、
オーストリア航空)

日本~欧州

ユナイテッド航空

アジア~米州

(北米・カリブ・南米諸国)

シンガポール航空・シルクエアー

日本~シンガポール・オーストラリア・インド・インドネシア・マレーシア

貨物分野

ルフトハンザカーゴAG.

日本~欧州

ユナイテッド航空

アジア・日本~北中南米

 

(2) 航空機のリース契約

航空機のリース契約については「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況 (2) 航空機」に記載しております。

5【研究開発活動】

航空事業セグメントにおいては、より安全で快適かつ効率的な航空事業を提供するための多様な改良・改善活動を推進しています。

また、航空事業をはじめ各セグメントにおける事業活動が及ぼす環境負荷の逓減活動も推進しています。

なお、上記活動に関して「研究開発費等に係る会計基準」に定義する研究開発費に該当するものはありません。