当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、グループの使命・存在意義である経営理念として「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」を掲げています。
経営の基盤である安全を堅持しつつ、「世界中のグループ社員がイキイキと挑戦を続け、お客様や社会に寄り添いながら新たな価値を提供し、世界を期待や喜びで満たしたい」という想いを込め、グループ経営ビジョンを「ワクワクで満たされる世界を」と定めています。
(2) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
今後の経済見通しにつきまして、日本経済は雇用・所得環境が改善し、景気の緩やかな回復が続くことが期待されています。一方で、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響や、アメリカの通商政策等による影響が景気の下振れリスクとして想定されます。
このような状況下で当社グループは、「2023~2025年度ANAグループ中期経営戦略」の最終年度として戦略を確実に遂行し、経営ビジョンである「ワクワクで満たされる世界を」の実現に向けて取り組んでいきます。引き続き、航空事業を中核事業として、地域間の新しい多様な繋がりを創出し、社員のウェルビーイングを大切にするとともに、株主の皆さまをはじめとした様々なステークホルダーに寄り添いながら新たな価値を提供してまいります。
(3) 対処すべき課題
「2023~2025年度 ANAグループ中期経営戦略」の期間を「2030年に目指す姿の実現に向けた変革」を進める3年間と位置付けており、コロナ禍からの回復を果たし、持続的な価値成長に向けたビジネスモデルの変革を加速して成長軌道への転換を図ります。
本戦略では、経営テーマとして事業戦略の3本柱を掲げています。航空事業を中心に収益を拡大しつつ非航空事業を強化し、航空事業と非航空事業間におけるお客様の回遊を促進します。これにより、コロナ前を上回る利益の創出と強靭な財務基盤の構築を目指します。
① エアライン事業の利益最大化
ANA、Peach、AirJapanの3つのブランドで最適なポートフォリオを追求します。運賃や品揃え、運航距離等の違いに応じて役割を分担し、航空需要の変化に合わせて収益性を高めていきます。併せて、ブランド間におけるマーケティング連携・ブランド間の回遊性向上、協業・機能集約を進めることで、市場シェアと収益の拡大を目指します。
国際線旅客事業においては、中長期的な成長軌道に乗せるため、ネットワークを再編・強化しながら生産量を回復し、需要を幅広くカバーしていきます。
国内線旅客事業においては、安定した事業基盤を構築するため、グループ全体で連携しながら最適な運航スケジュールの策定を継続します。
貨物事業においては、旅客機とフレイターのネットワークバランスを最適化し、需要動向に応じた柔軟な供給量の調整で収益を拡大します。成長するアジア・欧米間の輸送需要を取り込むとともに、フレイターで大型貨物等をカバーし、貨物事業の収益を最大化します。
当社は、日本郵船株式会社との間で、同社が保有する日本貨物航空株式会社の株式全てを取得することにより、子会社化することに関し、2023年3月7日に基本合意書を締結しました。その後、具体的な取得方法について検討を行い、国内外の関係当局の認可等を得られることを前提に、当社を株式交換完全親会社、日本貨物航空株式会社を株式交換完全子会社とする株式交換を実施することに関し、日本貨物航空株式会社との間で2023年7月10日に株式交換契約を締結しました。現在は、関係当局から認可等を取得すべく、必要な対応を実施しています。
貨物事業の拡大を持続的成長の重要な手段として位置付け、中核事業であるエアライン事業の利益最大化に向けて取り組んでまいります。
② 航空非連動収益ドメインの拡大
社会の変化に応じた新たな事業の創出と更なる安定した経営に繋げるため、非航空事業における事業分類に応じた適切な経営資源配分により、収益拡大を目指します。航空事業とは一線を画した運営体制の導入、人財育成など、事業拡大を支える仕組みを整備します。
③ ANA経済圏の拡大による持続的な成長
「マイルで生活できる世界」を実現し、ANA経済圏の早期拡大を目指します。ANAマイレージクラブアプリを中核に置き、「ANA Mall」や「ANA Pay」等のコンテンツ・決済手段を拡充させるとともに、データ活用を進めることで顧客の回遊を促し、ANA経済圏内のサービス・商品の利用を促進します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、航空事業を中核として「ヒトとモノの移動」で社会に貢献し、将来にわたり社会から必要とされる企業として価値を生み出し続けていくために、グループの垣根を越えたグローバルかつ長期的な視点で「環境」「社会」「ガバナンス」に配慮したサステナビリティ経営を推進しています。
航空事業をはじめとするグループが営む事業活動を通じて、経済的価値を生み出すことに加え、社会課題の解決に寄与し、社会から必要とされる価値を同時に生み出すことにより、持続的な企業価値向上を目指していきます。そのために取り組むべき重要課題(マテリアリティ)は、「環境」「人(人財・DEI・人権)」「地域創生」であると考えています。
① ガバナンス
サステナビリティに関する様々な課題への対応については、ANAホールディングス㈱代表取締役社長を総括、ESG経営推進の最高責任者であるチーフESGプロモーションオフィサー:CEPO(グループリスク&コンプライアンス担当役員)を議長とし、当社およびグループ会社の取締役・執行役員、ならびに当社常勤監査役を委員とする「グループESG経営推進会議」にて、重要方針や施策について議論すると共に、目標に対する進捗のモニタリング等を年2回以上(2024年度実績で年4回)行っています。また、経営戦略に関わる重要な課題は、「グループ経営戦略会議」にて議論、審議し、「取締役会」に上程しています。取締役会は、サステナビリティに関する課題への対応を含むグループ全体の経営方針や目標を定めつつ、グループ各社の経営および業務執行を監督する役割を担っています。詳細は第4-4「コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。
ANAグループでは、社外有識者の皆様との定期的な対話から、最新の社会要請や関心の変容等をタイムリーに把握すると共に、事業や社会におけるインパクトを評価し、経営戦略に取り入れた上で取り組みに反映しています。
グループ各社にESG経営推進の責任者およびグループESG経営推進会議のメンバーとしてESGプロモーションオフィサー(EPO)、組織のESG経営推進の牽引役としてグループ各社・各部署にESGプロモーションリーダー(EPL)を配置し、取締役会、グループ経営戦略会議、グループESG経営推進会議で議論・決議・報告された事項は、EPOならびにEPLとの密接な連携のもとにグループ全体で共有、実践されます。EPLに対しても、年2回のEPL会議を通じて、包括的に情報を共有すると共にグループ各社・各部署における取り組みの促進につなげています。
また、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために、ESG経営の推進状況を客観的かつ多面的に把握する目的で「CO2排出量」や「ESG外部評価」等の評価指標を設定し、役員報酬にも反映させています。
② リスク管理
リスクマネジメント体制
取締役会で決定された方針のもと、当社グループにおけるリスクマネジメントに関する基本事項を規定した「ANAグループ・トータルリスクマネジメント規程」に基づき、グループESG経営推進会議にて施策の進捗のモニタリングを行っています。
グループ各社においては、ESGプロモーションオフィサー(EPO)をESG経営推進の責任者、ESGプロモーションリーダー(EPL)をESG経営推進の牽引役として、リスクマネジメント体制を構築しています。サステナビリティに関するリスクについても、トータルリスクマネジメントの仕組みの中で取り扱っています。
トータルリスクマネジメントの仕組み
グループ各社において、リスクの極小化を目的としてリスクマネジメントサイクル(リスクの洗い出し→分析→評価→対策の検討・実施→モニタリング)の仕組みを構築しています。
グループ各社で、毎年事業ごとにリスクアセスメントを実施することにより洗い出された重要なリスクについては、レビューすると共に、グループ全体で取り組むべきと判断されたサステナビリティに関するリスクを含む課題については、グループ総務部等が中心となって対策を講じ、その進捗をグループESG経営推進会議で報告しています。また、グループ全体の方針や戦略に反映させる必要があるものは、取締役会に対して上程しています。
(2)重要課題1 環境
当社グループでは「ANAグループ環境方針」を掲げ環境負荷低減に取り組んでいます。
具体的には、「2050年長期環境目標」を設定し、2050年度までのカーボンニュートラル(実質CO2排出量ゼロ)を宣言するとともに、その道筋として「2030年中期環境目標」を設定しています。
2050年度カーボンニュートラルを実現していくために設定したトランジション戦略に基づいて、SAFの活用を中核とする4つの戦略的アプローチ(運航上の改善・航空機等の技術革新、SAFの活用等航空燃料の低炭素化、排出権取引制度の活用、ネガティブエミッション技術の活用)を組み合わせ、経済合理性との両立も追求しながら環
境負荷の低減に向けた取り組みを続けています。
・TCFD提言およびTNFD提言に沿った情報開示
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures〈以下TCFD〉)提言に沿った情報開示に2019年度に賛同を表明したのに続き、2023年度には自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures〈以下TNFD〉)提言に沿った情報開示に賛同を表明して、それぞれのフレームワークに即した開示の充実に努めています。
1)ガバナンス
上記
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これまで取締役会に上程・報告された気候変動と生物多様性に関する事案(例) ・中長期目標の策定、年度実績 ・TCFD提言に沿った情報開示 ・TNFD提言に沿った情報開示 ・2050年カーボンニュートラル実現に向けたトランジション戦略の策定 ・中期経営戦略への気候変動への対応の組み込み ・気候変動問題への取り組みに関する進捗
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2)リスク管理
取締役会で決定された基本方針に則って定められた「ANAグループ・トータルリスクマネジメント規程」に基づき、「グループESG経営推進会議」にて基本方針の立案・発議、進捗のモニタリングを行っています。
※ リスクマネジメント体制については、上記
3)戦略
気候変動が当社グループ航空事業に与えるリスクと機会を特定し、収入および費用へのインパクト評価および対応策の検討を目的として、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)および国際エネルギー機関(IEA)による4℃と1.5℃のシナリオに基づき、シナリオ分析※を実施しました。
※ 詳細は
当社グループは、生物多様性の保全を重要な経営課題として「ANAグループ生物多様性方針」を制定しています。生物多様性と自然について、当社が事業活動を通して与えている影響と事業活動が依存している関係を分析し、自然関連のリスクと機会の適切な評価・管理に努めています。TNFD提言に沿った初期的な情報開示を行いました。
4)指標と目標
CO2排出にかかわる「ANAグループ中長期環境目標」
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2030年度目標 |
2050年度目標 |
2019年度 CO2排出量 |
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CO2排出量の削減 |
航空機 |
実質10%以上削減(2019年度比) 消費燃料の10%以上をSAFに置き換え |
実質ゼロ |
1,233万トン |
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航空機以外 |
33%以上削減(2019年度比) |
実質ゼロ |
10.5万トン |
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(3)重要課題2 人(人財・DEI・人権)
当社グループの価値創造の源泉は、航空に関する高い専門性やお客様に笑顔と喜びを届けようとする想いを持つ
社員の「人の力」と、互いに連携・協力して成果を生み出す「チームワーク(組織の力)」であると考えています。
主力の航空事業において、安全性・定時性・快適性などで高い品質・サービスを提供し競争優位を確立するに
は、高度の専門性を備えた様々な職種の従業員が、個々のスキルとチームワークを発揮することが極めて重要で
す。ANAでは、これら「人の力」と「チームワーク(組織の力)」を推進した結果、高品質なサービス提供やグローバルカスタマーのニーズを踏まえた継続的なサービス改善が高く評価され、英国SKYTRAX社からサービス品質において最高評価となる「5スター」に12年連続で認定されました。また、米国の非営利団体APEXから高品質なサービスの提供が評価され、最高評価となる「WORLD CLASS」を初受賞し、米国のAir Transport World誌からは優れた業績と先進的なサービスが評価され、「2025 Airline of the Year Award」を受賞しました。
今後も人的資本への投資をより一層強化しながら、「人の力」と「チームワーク(組織の力)」の最大化を図るこ
とを通じて、持続的な企業価値向上を目指します。
また、「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」の推進では、持続的成長を担う人づくり
と、お客様の多様性への対応の両面から、グループ全体で取り組みを進めています。
当社グループの事業を進める上では様々なステークホルダーの「人権」に影響を及ぼす可能性があります。グル
ープ従業員の人権はもとより、サプライチェーン上における人権尊重へも適切に対応していきます。
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① 人財 1)人財への投資を起点とした価値創造サイクル 人財はANAグループの最大の資本です。従業員一人ひとりの価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上(社会的価値・経済的価値)につなげることを目的に、人財への投資を起点に、さらなるエンゲージメント向上を図りながら生産性を向上させていきます。人財戦略の各種取組みを強化することで、価値創造サイクルの確実な循環を目指します。
「ANAグループの価値創造サイクル」 |
2)人的資本を高めるための施策
ANAグループでは経営戦略と人財戦略の連動を図りながら、人的資本を向上させるための様々な取り組みを行っています。経営戦略を実現する上での人・組織に関わる課題、および社員意識調査の分析に基づいた課題の双方に対応すべく、下記の4つの重点施策を実行しKPIの達成を目指すことを通じて、経営戦略の実現可能性を高めていきます。
3)指標および目標(ANAグループ社員意識調査「ANA’s Way Survey」)
当社グループでは、人財戦略の達成度を上げるため「社員意識調査」を毎年実施しています。この調査は「ANA’s Way」に掲げる「安全」、「お客様視点」、「社会への責任」、「チームスピリット」、「努力と挑戦」の5項目や「エンゲージメント」に関わる設問を含む68問で構成されています。2024年度はグループ従業員36,876名が回答(回答率94.8%)し、全設問の平均スコアは3.98(5点満点)と高い水準を維持しました。「私はANAグループで働いていることを誇りに思っている」のスコアが4.11となる等、従業員が会社に対して高い愛着心を持ちながら働いていることも当社グループの経営基盤となっています。
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2023年度実績 |
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2024年度実績 |
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2025年度目標 (KPI) |
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(a)全体指標 |
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全設問平均スコア |
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3.96 |
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3.98 |
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4.03 |
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(b)エンゲージメント関連指標 |
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「私はANAグループで働いて いることを誇りに思っている」 |
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4.05 |
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4.11 |
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4.09 |
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「私は今の仕事にやりがい・ 達成感を感じている」 |
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3.80 |
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3.86 |
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3.88 |
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「私は、ANAグループの将来について期待を持っている」 |
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3.87 |
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3.93 |
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3.91 |
4)人的資本の最大化による価値創造(価値関連性分析)
グループ内で展開する人財施策やグループ社員の活躍が売上・利益・株価指標などの財務価値や企業価値を生み出すことを、定量・定性の両面から見える化することによって、人的資本を基軸とした価値創造ストーリーに対するステークホルダーの共感を高めるとともに、社員のエンゲージメント向上と価値創造ストーリーの理解に基づく更なる行動の推進を目的として「Human Capital Story Book」を発行しました。人財にかかわるグループ内の施策が、どのような価値の連鎖を経て経済的価値の創出に結びつくのかについて、520種類の指標データの相関分析により検証しており、その結果、チームワークの醸成や現場における専門スキルの向上などが、基本品質や生産性の向上、お客様の喜びを通じて、売上・利益・株価などの経済的価値に連関していることが定量的に証明されました。
※分析実行:アビームコンサルティング株式会社 Digital ESG Platform
ANA Group Human Capital Story Bookより
(参照:https://www.ana.co.jp/group/csr/human_resources/pdf/human_capital_202503.pdf)
② DEI(多様性、公正性、受容・共生)
当社グループは、大きく変化するグローバル環境において、よりよい社会と豊かな生活に貢献し、持続的な成長と価値創造の実現を目指しています。そのために従業員一人ひとりの個性や強みを活かし、いきいきと働けるインクルーシブな職場作りに取り組んでいます。その進捗状況を可視化し、指標に基づいた課題抽出と対応策を実施していきます。
ジェンダー平等
意思決定の場における多様性を確保するため、人事サポート制度の見直しや能力開発・意識醸成を進めています。
[KPI]2020年代の可能な限り早い時期に当社グループの女性役員・女性管理職比率を30%以上とする。
(2025年4月 女性役員比率 当社グループ 12.2%、ANA 25.5%
女性管理職比率 当社グループ 21.6%、ANA 21.0%)
※ANAホールディングス、マネジメントルール適用会社38社 計39社
※日本国内の運用
LGBTQ+
「多様な性(LGBTQ+)の尊重」に関する基本ポリシーに基づき、従業員がその性的指向や性自認に関わらず、いきいきと働くことが出来る環境整備と職場の理解促進に取り組んでいます。2023年度にはアライ※活動をスタートし、約550名の社員がアライメンバーとして意識醸成活動に取り組んでいます。
※アライ:性的マイノリティのおかれた環境に関心を持ち、自ら理解を深めて支援する人のこと
多様な働き方(両立支援)の推進
従業員の育児や介護等と仕事との両立、一人一人の多様な働き方を支援する制度(短時間・短日数勤務、リモートワーク、事由を問わないサバティカル休暇など)の整備と職場の意識醸成を進めています。2023年度からはこれまで一部の会社で導入されていた3日間の育児休暇制度をグループ全体に展開し、男性の育児参画を促進することにより社員や家族の生活と充実した人生のサポートに取り組んでいます。
[KPI]「育児休暇制度(3日間)」対象男性社員の休暇取得率100%(2024年度 101.8%)
育児休職(休業)制度について1カ月以上取得することを推奨
※ANAホールディングス、マネジメントルール適用会社38社 計39社
※日本国内の運用
障がい者雇用の推進
2015年に障がい者雇用に関わる行動規範「3万6千人のスタート」を策定し、グループ全体で障がい者雇用に関わる理解促進を図っています。
[KPI]2025年のグループ全体の障がい者雇用率2.80%(2025年3月 2.74%)
※連結決算対象の日本法人子会社、かつ障害者雇用率制度適用となる会社 計40社
※日本国内の運用
③ 人権尊重
当社グループでは、「2023-2025年度ANAグループ中期経営戦略」において「サプライチェーン上の人権尊重の徹底」を中核的な取り組み項目とし、推進していくことを掲げています。
空港ハンドリング等にかかわる当社グループの協力会社では多数の外国人が就労しています。これらの方たちに適正な労働環境で働いてもらうため、定期的に労働状況調査や本人へ直接インタビュー等を実施し、リスクを検知した場合は、その予防・軽減・管理のための取り組みを実施します。
また、国際線航空機を利用した違法な人身取引の防止を徹底することを目的に、全客室乗務員に対しての人身取引防止に関わる教育や、官民連携での業界としての取り組みも実施しています。
これらの人権尊重に関わるグループの最新の取り組みは、当社のホームページに開示しています。
(4)重要課題3 地域創生
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① 基本的な考え方 地域創生は、地域の人口減少や少子高齢化、経済の縮小などの課題を克服し、将来にわたって地域が成長することを目指しており、航空運送事業を中核とする当社グループの持続的な成長を実現するために必要不可欠な取り組みです。 |
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当社グループでは地域創生事業を担うANAあきんど㈱を主管に、グループ各社が持つソリューションや顧客基盤を活用した「観光振興」「産農振興」「ふるさと納税」領域を軸に、地域課題を解決しながら、ヒト・モノ・コトの新たな出会いや繋がりを創出し、地域のファンを増やすことにより交流人口や関係人口の拡大に繋げる取り組みを推進しています。
これまでに航空事業や旅行事業で築いた地域との信頼関係をもとに、「社会的価値」と「経済的価値」を同時に追求しながら、持続可能な社会の実現と企業価値の向上につなげていきます。
② ANAグループが解決したい地域課題
交流人口・関係人口の拡大
・観光誘客の支援/観光素材等の磨き上げ/旅行商品の開発/地域外の人を呼び込む取り組み/デジタル分野の取り組み
地域産品の販路拡大
・第一次産業や地域事業者等の支援/地域資源を活かした商品やサービス開発・物流支援・販路拡大
地域外へのプロモーション・認知拡大
・国内外メディアやANAウェブサイト、SNSを通じた情報発信/機内誌などANA独自の媒体を活用した情報発信
地域の受入体制の環境整備
・地域のDX推進/ANAのノウハウを活かした人材研修/観光人材の育成
③ 推進体制
これらを推進すべく、ANAあきんど㈱にグループ全体の地域創生を推進する専門チームを設置し、グループの連携力をさらに強化する体制で地域課題の解決を目指します。ANAグループ各社が参加する「グループ地域創生会議」に加え、各社の担当役員で構成する「グループ地域創生ステアリング会議」を継続し、グループ会社連携による新たな価値創造を進めています。
当社グループは、航空輸送事業を中核とする企業グループとして、安全の確保を最も重要な社会的使命と位置付け、それが毀損・阻害されることを「最重要リスク」と考えていますが、それ以外にも、近年は新型コロナウイルス感染症によって甚大な影響を受けたほか、その重要性や緊急性が増している気候変動問題に関するリスク、不透明感を増している国際情勢に関するリスクなど、様々なリスクが存在します。
当社グループが、当期末時点において、投資家の判断に重要な影響を及ぼし得ると考えているリスクの概要は以下の通りです。なお、以下の内容には将来に関する予測も含まれており、それらの事項は現実とは合致しない可能性があるほか、以下に記載されていない他のリスクが当社グループに影響を及ぼす可能性もあります。
(1) 最も重要なリスク
「安全」が毀損・阻害されることは当社グループにとって最も重要なリスクです。
<要旨>
当社グループは、安全は経営の基盤であり、社会への責務であると位置付けています。安全が毀損・阻害されるような事象が発生した場合には、当社グループに大きな影響を与えます。特に、人的損害が生じた場合には、当社グループへの社会的な信用・信頼を根本から揺るがす可能性があります。
航空事故等によって、人的・物的損害が発生した場合には、その損害賠償責任が生ずる可能性がありますが、安全が毀損・阻害された場合の影響はそれに留まらず、顧客が航空機利用を手控えることで当社グループの収入が減少したり、あるいは航空機利用に際して当社グループ以外の便を選択するといった形で、その影響は広範かつ中期に及ぶ可能性があります。
なお、安全の確保に向けて、航空機に製造上の不具合等が発生・発覚した場合には、予防的に当該航空機の運航を中止することがありますが、その場合には、航空機不足に起因して欠航や減便等が発生し、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>
当リスクは、引き続き、当社グループにとって最も重要なリスクであると考えています。
<対応>
当社グループは、安全の推進や安全の品質監査を行う専門組織を設置すると共に、安全を堅持するための持続的な「仕組み」を構築し、再発防止型・未然防止型・未来予測型の安全リスクマネジメント、良好事例や当社グループ外事例の活用、SPI(Safety Performance Indicator)による安全の「見える化」と対策の検討・実施など、更なる安全性の向上を追求しています。
同時に、運航乗務員や客室乗務員をはじめ、航空機運航に直接従事する社員に対する継続的、反復的な教育・訓練の実施や、当社グループ社員全体を対象とした安全に関する恒常的な啓発活動も行い、研修施設である「ANAグループ安全教育センター」の活用等を通じて積極的な安全・保安文化の醸成・強化に努めています。また、航空機メーカー等との間でも密接な情報交換や意見交換を行いながら、安全性をはじめとする高品質なオペレーションの実現に取り組んでいます。
(2) 主要なリスク
①気候変動問題への対応は重要性や緊急性が増しています。
<要旨>
航空機運航に際しては、二酸化炭素等の温室効果ガスを排出しますが、これらの削減が急務となっています。
当社グループは、燃料効率に優れた航空機への置換えを進めるとともに、SAF(Sustainable Aviation Fuel:原材料の生産・収集から燃焼までのライフサイクルで二酸化炭素排出量を従来燃料よりも大幅に削減した航空燃料)の活用等によって2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロとする目標を設定していますが、現時点で、SAFが安定的に合理的な価格で十分に供給される目途が立ったものではありません。
SAFが安定的かつ十分に供給されない場合には、当社グループは二酸化炭素排出枠を社外の二酸化炭素削減プロジェクト等から購入する必要に迫られ、営業費用の増加をもたらす可能性があるとともに、SAFの価格が高額に留まった場合には、航空機の運航コストが増加して当社グループの収益性に影響を及ぼしたり、そのコストを運賃に転嫁することで鉄道や海運など他の交通手段に対する当社グループの競争力が低下する可能性があります。
また、当社グループの二酸化炭素排出削減に向けた計画が目標通りに進まない場合には、顧客の間に、二酸化炭素の排出が相対的に少ない、鉄道など他の交通手段を選好する動きが出てくる可能性があるとともに、日本国内において十分なSAF供給体制が構築されない場合には、厳しい環境基準を設定する一部の国・地域等において、当社グループ航空機の乗り入れに対して制約や制限が課される可能性があります。
<変化・展望>
気候変動対策は全世界的に喫緊の課題であり、当リスクへの対処は、重要性や優先度が極めて高位であると考えています。また、当リスクについては、将来、航空業界全般および当社グループに対して、より厳格で、より高度な対応を、より速やかに求められる可能性もあると考えています。
<対応>
燃料効率に優れた新型機材への置換えや、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化するネガティブエミッション技術の活用といった主体的な対応を進めるとともに、SAFの開発・供給体制構築に向けては、同業他社やSAFメーカー、あるいは政府等も含めて官民連携のもとに横断的協力関係を構築しながら、解決を進めていきます。
なお、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に沿った情報については、当社グループホームページにて開示しています。(https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/goal/)
②国際情勢の不安定化によるリスクが高まっています。
<要旨>
当社グループは、更なる成長機会を求めて国際線事業を拡大してきましたが、米中対立、ウクライナや中東地域情勢、第三極勢力の台頭など、国際情勢は不透明さを増しており、将来に向けて不確実性が存在します。
国際航空輸送は、これまで経済活動のグローバル化を背景に拡大してきましたが、その流れが停滞・逆行、あるいは戦争・紛争等によって平和な環境が毀損された場合には、業務渡航需要の低迷や観光旅行需要の減少等を通じて、当社グループの収入に影響を及ぼす可能性があります。
なお、国際情勢の不安定化は、国際線事業のみならず、インバウンド(訪日外国人観光客)需要の減少等を通じて国内線事業にも影響を及ぼし得るほか、航空機が戦争・紛争地域上空の飛行を取り止めて迂回せざるを得ないケース等、その影響が広範に及ぶ可能性があります。
<変化・展望>
国際情勢および経済活動グローバル化の行方については不確実性が増しており、リスクとして管理・対処する必要性が高まっていると考えています。
<対応>
当社グループは、国際線事業の展開に際し、航空ネットワーク構築等において、短期的な収益性のみで判断せず、国際情勢リスクにも配慮した展開を進めており、今後も当対応を継続します。また、海外における顧客獲得に際しても、特定国・地域に過度に偏ることがないよう、バランスを考慮して展開しています。
なお、国際情勢の悪化等によって緊急対応の必要が生じた場合には、航空便の運航計画や運航ルートを柔軟かつ迅速に変更させることで、その影響低減を図っています。
③大規模な感染症の発生は当社グループに甚大な影響を及ぼします。
<要旨>
当社グループは、新型コロナウイルス感染症によって甚大な影響を受けましたが、将来、大規模な感染症が再び発生した場合には、人的移動の制限・禁止等によって需要が激減し、当社グループに再度大きな影響を及ぼす可能性があります。航空事業は、航空機に関する費用や、それを運航するための人件費といった固定費が大きな割合を占めるため、短期で事業支出を抑制することは容易ではありません。また、そのような事業支出の抑制策を講じた場合には、事業体制の再構築には一定の時間を要するため、需要回復期においても、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>
一般的に気候変動(地球温暖化)は感染症リスクを高めると言われており、当リスクへの対処は重要性が高まっていると考えています。
<対応>
当社グループは、旅客機に加えて貨物専用機も保有することで、人的移動が減少した状況下でも物的移動に対しては積極的に対応できる体制を構築すると共に、人的移動についても3種の航空ブランド(ANA、Peach、AirJapan)を保有することで、限定された航空需要に対して、最も適切に対応できるようにしています。また、事業構造の多角化を進めており、航空事業非連動の収益ドメイン拡大や、グループの持続的成長に向けたANA経済圏の拡大を進めています。
④システム障害が発生した場合の影響が大きくなっています。
<要旨>
当社グループは、航空輸送サービスを、より高品質で、より効率的に提供すべく、事業運営のシステム化を積極的に推進しており、これらのシステムに障害が発生した場合には、その理由が社内要因(自社要因)、あるいはサイバー攻撃等の社外要因であるかの如何を問わず、事業に与える影響が高まっています。航空機運航関連システムに障害が発生した場合には、航空機の運航が困難になる可能性があるほか、予約・決済・搭乗管理といった関連システムで障害が発生した場合にも、予約の受付や決済、空港における搭乗管理などが不可能となり、実質的に航空輸送サービスを提供することが困難となる可能性があります。
<変化・展望>
システムのクラウド化の進展、事業関連のサプライチェーンの接続や連関性増加、あるいは地政学的視点、さらには攻撃側のAI活用などサイバー攻撃が増加・巧妙化していることを踏まえれば、システム障害・サイバー攻撃に関するリスクは高まっていると考えています。また、当リスクを予防・低減させることに関する社会的要請も高まっていると考えています。
<対応>
2024年から発足したANAグループCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の構築によりシステム障害かサイバーセキュリティ攻撃かが不明である時点から対応することを通じて、包括的・多面的なシステム運用体制を構築するとともに、サイバー事案に対しても海外ステークホルダーに対しても非常に速い対応が可能となりました。また、システム全体のアーキテクチャを監督する機能の設置や社員教育の強化やシステム障害発生対応訓練の実施など、ソフト面での対応強化も行っています。
⑤情報漏洩リスクへの対処が重要性を増しています。
<要旨>
当社グループは、顧客組織「ANAマイレージクラブ」会員の個人情報をはじめ、多くの情報を保持していますが、これらの情報が不正に流出した場合には、損害賠償請求を受けたり、各国政府等から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下したりする可能性があります。
<変化・展望>
情報全般の取り扱いに関する社会的な意識・規範の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化などを踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっていると考えています。
<対応>
各国法令等に沿って適切な情報管理を行うと共に、コンピュータウィルス対策やメールのセキュリティチェック、不正操作の監視、情報にアクセスできる社員の制限、全社員を対象とした情報管理に関する教育・啓発活動等を行っています。また、グループ全体のシステムを対象に継続的な点検を行い、システムの老朽化、脆弱性を早期に検出して対応する等、サイバー攻撃や情報漏洩を未然に防ぐ対応を実施しています。
⑥人権リスクについて対処すべき領域が広がっています。
<要旨>
当社グループ内のみならず、委託先や取引先、調達先等を含めて、当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権侵害にあたる行為が発生した場合には、当社グループが社会的非難を浴びたり、不買運動の対象となったりする可能性があります。また、海外の一部の国・地域ではサプライチェーン上の人権保護に関わる法制化も進んでいます。委託先等のグループ外も含めて人権侵害にあたる行為が発生した場合には、こうした国・地域等において、当社グループが罰則を課される可能性もあります。さらに、業務委託先等を含むサプライヤーで問題が発生し、操業停止等に至った際には、当社グループの事業運営において制約や制限を課される可能性があります。
<変化・展望>
日本国内における労働力人口減少への対応、あるいは海外事業の拡大を進める中で当社グループの事業に関わる人的リソースは多様化しており、当リスクに対しては、より多面的に対処する必要性があると考えています。
<対応>
当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」において詳述されている手順に沿い、「ANAグループ人権方針」のもと、人権デューディリジェンスの仕組みを構築しています。サプライチェーン上の人権リスク評価を実施し、必要に応じて、社外関係先や労働者本人に対しても対話等を通じて直接確認・調査を行う等、当リスクの適切な管理に努めています。
さらに労働者が直接声を上げる仕組みも整備し、グリーバンスメカニズムによる人権尊重も推進しています。
また、社内においても人権に関する社員教育や経営レベルの会議体における定期的なモニター等も実施しています。
⑦激甚化する自然災害のリスクが高まっています。
<要旨>
航空輸送は、点と点を空路で結ぶという特性上、運輸・運送システムの中では相対的に自然災害への耐性が強く、一部空港が機能不全に陥った場合でも近隣空港を活用した代替輸送が可能といった利点がありますが、当社グループの事業基盤は首都圏に集中しているため、羽田空港や成田空港が自然災害によって大きな影響を受けた場合には、当社グループの事業運営に関して制約や障害が発生する可能性があります。
<変化・展望>
気候変動(地球温暖化)が自然災害の激甚化をもたらすと言われていることを含めて、当リスクへの対処は重要性が高まっていると考えています。
<対応>
首都直下地震をはじめ、大規模自然災害が発生した場合でも、早急に運航機能を回復させて公共交通機関としての使命を果たせるよう、事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定し、定期的な見直しを行っています。また、事業運営に不可欠な各種中核機能についてはバックアップ系統を整備し、衛星電話や備蓄品、従業員安否確認システム等を用意すると共に、関係者(空港会社等)とも連携しながら、定期的な防災訓練を実施する等の対応をしています。
⑧当社グループの事業は、為替・原油価格・金利といった市況の変動に大きな影響を受けます。
<要旨>
1)為替
当社グループが使用する航空機は海外メーカーによって製造されているため、円安が大きく進行した場合には、航空機調達コストが増大します。また、営業費用において大きな割合を占める航空機燃料も、その原料となる原油は輸入に頼っているため、同様に円安が大きく進行した場合には、営業費用が増加します。なお、円安は当社グループが海外で得る外貨収入の円建て換算額を押し上げますが、当社グループは外貨建て収入よりも外貨建て支出の方が多いため、その効果は費用増加の全てを相殺できるものではありません。
為替変動に対しては、ヘッジ取引等を活用した影響緩和策も講じていますが、これらの対策は影響の緩和や平準化を図ることはできても、その影響を完全に排除するものではなく、費用抑制効果が常に見込まれるものでもありません。
2)原油価格
航空機燃料の価格は、基本的に原油価格に連動しており、原油価格の高騰は航空機燃料コストの増大をもたらします。当社グループは、一部事業において燃料価格に応じた燃油特別付加運賃(いわゆる「燃油サーチャージ」)を設定・徴収するといった方策も講じていますが、それらの収入は費用増加の全てを常に相殺するものではありません。
原油価格の変動に対しては、ヘッジ取引等を活用した影響緩和策も講じていますが、これらの対策は影響の緩和や平準化を図ることはできても、その影響を完全に排除するものではなく、費用抑制効果が常に見込まれるものでもありません。
3)金利
当社グループは、航空機の調達をはじめ、外部資金も活用した事業運営を行っており、金利が大きく上昇した場合には、その資金調達コストの増加といった形で当社グループに影響を及ぼす可能性があります。
<変化・展望>
市況変動は常に起こり得るものですが、昨今、国際情勢や経済情勢に関する不確実性も増しており、当リスクへの対処は重要性を増していると考えています。
<対応>
ヘッジ取引の活用等によってリスクの低減・緩和・平準化を図ると共に、より根本的な対策として、外貨建て収入を増やして為替影響に強い収支構造を構築する、燃料効率に優れた新型機への置換えを推進する、事業ポートフォリオの多角化によって市況変動の影響を受けにくい事業を育成する、適切な財務規律の下で資金調達を実施する等、グループ全体として市況変動に対する耐性を高めていきます。
⑨競争力の強化や新たな成長に向けた投資は、リスクも伴っています。
<要旨>
当社グループは、将来に向けて持続的な成長を実現するための投資を検討・実行していますが、これらの投資はリスクも伴っています。
航空事業では、他社に対する競争力の維持・向上や温室効果ガスの排出削減に向けて、新型機材の導入等を行っていきますが、大規模な感染症の発生による影響、各種テクノロジーの急速・急激な発達、それに伴った社会の行動様式変化、あるいは政治情勢等に起因したグローバルな経済活動の分断等が生じた場合には、これらの投資が期待したような効果を発揮しない可能性があります。
また、グループ全体としてのリスク耐性を高めるべく、航空事業との相乗効果が期待できる事業、あるいは航空事業のノウハウを活用できる事業、即ち、地域創生事業、各種エアモビリティ事業、アバター事業、ANA経済圏事業等への投資を検討・実行していますが、これらの投資は想定した成果を発揮した場合の効果が大きいと期待される一方で、想定した成果を得られない可能性もあります。
<変化・展望>
投資に関するリスク管理は、引き続き、重要であると考えています。
<対応>
投資の検討・実行に際しては、取締役会や各種経営レベル会議体での議論・審議のみならず、グループ全社を対象とした投資管理委員会を設置して管理体制の重層化を図ると共に、その評価基準や撤退基準を予め設定する等、当リスクの適切な管理に努めています。
⑩日本の人口減少により、市場が縮小したり、労働力の確保が困難となっていく可能性があります。
<要旨>
当社グループは、日本国内を最大の事業基盤としていますが、今後、日本の人口減少が進むにつれて、その市場規模は縮小する可能性があります。また、人口減少は当社グループの事業運営に必要な労働力の確保という観点でも影響を及ぼす可能性があり、その場合には、人件費単価が増加したり、労働力不足、並びに従業員のスキル・知識不足等に起因して事業運営に制約が生じたりする可能性があります。
<変化・展望>
当リスクは、今後、顕在化すると考えています。
<対応>
経営戦略の立案等において、人口減少等の各種社会的変化の想定を加味・反映させると共に、LCCブランドを活用した市場全体の活性化にも取り組んでいます。また、中長期にわたって市場の成長が期待できる国際線事業の拡充を進めています。
労働力の確保に関しては、適切な配置や教育・研修機会等の拡充によりスキルや知識等の向上を図るとともに、「人財」に対する積極的な投資によって採用競争力を維持・向上させ、機械化、省力化、無人化等を推進し、生産性も高めていきます。
⑪更なる高速鉄道網の延伸によって、陸上交通機関との競争が激化する可能性があります。
<要旨>
日本国内では、今後、更なる高速鉄道網の延伸が予定されており、新幹線等との競争が、より激しくなる可能性があります。整備新幹線の延伸や既存新幹線の高速化は、当社グループの国内線事業に関して、市場シェアの低下や価格競争の発生・激化による単価下落といった影響をもたらす可能性があります。
<変化・展望>
当リスクは、中長期的に顕在化する可能性が高いと考えています。
<対応>
経営戦略の立案等において、高速鉄道網の延伸や競争環境の変化を加味・反映させると共に、LCCブランドを活用した市場全体の活性化にも取り組んでいます。また、中長期にわたって市場の成長が期待できる国際線事業の拡充を進めています。
(3) その他のリスク
①交通政策や航空政策に関するリスク
羽田空港等の基幹空港では、その発着可能枠が既に上限に達しているものもありますが、その処理能力向上については基本的に国策に委ねられており、当社グループの今後の事業展開において制約となる可能性があります。また、現時点で当社グループが使用しているこれらの空港における発着枠についても、今後の政策によって縮小・回収といった調整が行われる可能性があります。
②税制や公租公課に関するリスク
航空事業に関しては、航空機燃料税等の税制に加えて、空港着陸料や駐機場使用料、航行援助施設利用料といった公租公課が存在します。これらの税制や公租公課に変更、新設等があった場合には、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。
③景気変動に関するリスク
航空輸送が担う中長距離輸送は、日常的な短距離輸送に比べて、景気変動の影響をより受けやすいという特性があります。
④損益構造・財務構造・資金調達に関するリスク
航空事業は、高額である航空機を使用すると共に、貨客量に関わらず運航に連動して発生する費用(燃油費や整備費等)も多いため、需要が大きく減少した場合には、その収益性が大きく低下する可能性があります。
また、当社グループは繰延税金資産を計上していますが、将来の課税所得見込みが減少した場合等には、この資産が取り崩される可能性があります。
なお、当社グループは設備投資等の必要資金を金融機関や市場から調達する可能性がありますが、当社グループの信用力変動や市場の混乱等によって資金調達に制約を受ける場合は、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。
⑤事業ポートフォリオに関するリスク
当社グループは、その収入・収益において航空事業が大きな割合を占めているほか、それ以外の航空関連事業、旅行事業、商社事業についても航空輸送に関連した事業が多く、航空事業に大きな影響が生じた場合には、これらの事業においても連動的に大きな影響が生じる可能性があります。
⑥訴訟に関するリスク
国内外において、当社グループの事業活動に関する各種訴訟等が発生した場合、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日、以下「当期」という)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当期のわが国経済は、企業収益及び雇用環境の改善が続く中、景気についてはこのところ足踏みも見られるものの、各種政策の効果もあり緩やかに回復しています。
航空業界を取り巻く環境は、ウクライナや中東地域情勢等の地政学リスクが懸念されるものの、旅客需要は回復基調が続いています。
このような経済情勢の下、航空事業を中心に増収となったことから、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高となりました。
財政状態では、売上高の増加等により利益剰余金が増加しています。
また、現金及び預金に有価証券を加えた手元流動性資金は1兆2,164億円となりました。
以上の結果、当期の財政状態及び経営成績等は以下のとおりとなりました。
1)財政状態
当期末の資産合計は、前期末に比べ507億円増加し、3兆6,202億円となりました。
当期末の負債合計は、前期末に比べ367億円減少し、2兆4,802億円となりました。
当期末の純資産合計は、前期末に比べ874億円増加し、1兆1,400億円となりました。
2)経営成績
当期における売上高は2兆2,618億円(前期比10.0%増)、営業費用は2兆652億円(前期比11.8%増)
となり、営業利益は1,966億円(前期 営業利益2,079億円)、経常利益は2,000億円(前期 経常利益
2,076億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,530億円(前期 親会社株主に帰属する当期純利益
1,570億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは3,730億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは3,436億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,701億円の支出となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて1,397億円減少し、8,627億円となりまし
た。
③生産及び販売の実績
1)セグメント別売上高
最近2連結会計年度のセグメント別売上高は次のとおりです。
|
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|
航空事業 |
|
|
|
|
|
国際線 |
|
|
|
|
|
旅客収入 |
728,168 |
30.3 |
805,530 |
30.4 |
|
貨物収入 |
155,503 |
6.5 |
187,332 |
7.1 |
|
郵便収入 |
5,048 |
0.2 |
4,911 |
0.2 |
|
小計 |
888,719 |
37.0 |
997,773 |
37.7 |
|
国内線 |
|
|
|
|
|
旅客収入 |
644,902 |
26.8 |
703,991 |
26.6 |
|
貨物収入 |
22,485 |
0.9 |
23,032 |
0.9 |
|
郵便収入 |
2,728 |
0.1 |
2,645 |
0.1 |
|
小計 |
670,115 |
27.8 |
729,668 |
27.6 |
|
航空事業収入合計 |
1,558,834 |
64.8 |
1,727,441 |
65.3 |
|
Peach収入 |
138,030 |
5.7 |
139,321 |
5.3 |
|
AirJapan収入 |
1,295 |
0.1 |
11,710 |
0.4 |
|
その他の収入 |
171,393 |
7.1 |
180,307 |
6.8 |
|
航空事業小計 |
1,869,552 |
77.7 |
2,058,779 |
77.8 |
|
航空関連事業 |
|
|
|
|
|
航空関連収入 |
298,820 |
12.4 |
337,270 |
12.8 |
|
航空関連事業小計 |
298,820 |
12.4 |
337,270 |
12.8 |
|
旅行事業 |
|
|
|
|
|
パッケージ商品収入(国内) |
44,888 |
1.9 |
37,696 |
1.4 |
|
パッケージ商品収入(国際) |
3,947 |
0.2 |
5,312 |
0.2 |
|
その他の収入 |
29,706 |
1.2 |
30,563 |
1.2 |
|
旅行事業小計 |
78,541 |
3.3 |
73,571 |
2.8 |
|
商社事業 |
|
|
|
|
|
商社収入 |
117,919 |
4.9 |
129,999 |
4.9 |
|
商社事業小計 |
117,919 |
4.9 |
129,999 |
4.9 |
|
報告セグメント計 |
2,364,832 |
98.3 |
2,599,619 |
98.3 |
|
その他 |
|
|
|
|
|
その他の収入 |
41,244 |
1.7 |
45,517 |
1.7 |
|
その他小計 |
41,244 |
1.7 |
45,517 |
1.7 |
|
売上高合計 |
2,406,076 |
100.0 |
2,645,136 |
100.0 |
|
セグメント間取引 |
△350,148 |
- |
△383,280 |
- |
|
売上高(連結) |
2,055,928 |
- |
2,261,856 |
- |
(注)1.セグメント内の内訳は内部管理上採用している区分によっています。
2.各セグメントの売上高はセグメント間の売上高を含みます。
3.前連結会計年度において、航空事業のその他収入に含めていたAirJapan収入は重要性が増したため、
当連結会計年度より独立掲記することとしました。
2)セグメント別取扱実績
(a) 航空事業
(ア) ANAブランド輸送実績
最近2連結会計年度の輸送実績は次のとおりです。
|
項目 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
国際線 |
|
|
|
|
旅客数 |
(人) |
7,134,828 |
8,072,715 |
|
座席キロ |
(千席キロ) |
53,281,075 |
57,746,182 |
|
旅客キロ |
(千人キロ) |
41,192,324 |
45,738,339 |
|
利用率 |
(%) |
77.3 |
79.2 |
|
有効貨物トンキロ |
(千トンキロ) |
6,316,267 |
6,498,949 |
|
貨物輸送重量 |
(トン) |
679,797 |
704,230 |
|
貨物トンキロ |
(千トンキロ) |
3,464,347 |
3,611,709 |
|
郵便輸送重量 |
(トン) |
13,101 |
11,414 |
|
郵便トンキロ |
(千トンキロ) |
70,701 |
67,442 |
|
貨物重量利用率 |
(%) |
56.0 |
56.6 |
|
国内線 |
|
|
|
|
旅客数 |
(人) |
40,763,692 |
44,054,508 |
|
座席キロ |
(千席キロ) |
45,956,060 |
47,037,025 |
|
旅客キロ |
(千人キロ) |
32,373,017 |
35,274,415 |
|
利用率 |
(%) |
70.4 |
75.0 |
|
有効貨物トンキロ |
(千トンキロ) |
1,455,932 |
1,539,970 |
|
貨物輸送重量 |
(トン) |
253,083 |
276,920 |
|
貨物トンキロ |
(千トンキロ) |
247,761 |
266,591 |
|
郵便輸送重量 |
(トン) |
23,388 |
22,162 |
|
郵便トンキロ |
(千トンキロ) |
20,102 |
19,200 |
|
貨物重量利用率 |
(%) |
18.4 |
18.6 |
(イ) ANAブランド運航実績
最近2連結会計年度の運航実績は次のとおりです。
|
項目 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
国際線 |
国内線 |
国際線 |
国内線 |
|
|
運航回数(回) |
48,340 |
371,895 |
51,312 |
371,927 |
|
飛行距離(km) |
256,524,853 |
262,251,166 |
270,564,625 |
263,231,467 |
|
飛行時間(時間) |
345,834 |
553,561 |
366,318 |
555,731 |
(注) 1.国際線、国内線ともに不定期便実績を除きます。
2.国内線旅客実績には、アイベックスエアラインズ㈱、㈱AIRDO、㈱ソラシドエア及び㈱スターフライヤーとのコードシェア便実績並びにオリエンタルエアブリッジ㈱、天草エアライン㈱及び日本エアコミューター㈱との一部のコードシェア便実績を含みます。
3.国際線貨物及び郵便実績には、コードシェア便実績、エアラインチャーター便実績、ブロック・スペース契約締結便実績及び地上輸送実績を含みます。
4.国内線貨物及び郵便実績には、Peach Aviation㈱、㈱AIRDO、㈱ソラシドエア、オリエンタルエアブリッジ㈱及び㈱スターフライヤーとのコードシェア便実績、エアラインチャーター便実績及び地上輸送実績を含みます。
5.座席キロは、各路線各区間の有効座席数(席)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。
6.旅客キロは、各路線各区間の旅客数(人)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。
7.有効貨物トンキロは、各路線各区間の有効貨物重量(トン)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。なお、旅客便については、床下貨物室(ベリー)の有効貨物重量に各区間距離を乗じています。また、床下貨物室の有効貨物重量には、貨物・郵便のほか、搭乗旅客から預かる手荷物搭載の有効搭載重量も含まれています。
8.貨物トンキロ及び郵便トンキロは、各路線各区間の輸送重量(トン)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。
9.貨物重量利用率は、貨物トンキロと郵便トンキロの合計を有効貨物トンキロで除した数値です。
10.利用率及び貨物重量利用率については、「前期比(%)」の欄に前期差(%)を記載しています。
11.国内線の区間距離については、2024年4月1日より国際線と同一の「大圏距離」に変更しています。これに伴い、前年同期の実績も変更しています。
(ウ) Peach・AirJapan輸送実績
最近2連結会計年度の輸送実績は次のとおりです。
|
項目 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
Peach |
|
|
|
|
旅客数 |
(人) |
9,343,805 |
9,100,553 |
|
座席キロ |
(千席キロ) |
12,192,663 |
12,710,064 |
|
旅客キロ |
(千人キロ) |
10,560,384 |
10,733,182 |
|
利用率 |
(%) |
86.6 |
84.4 |
|
AirJapan |
|
|
|
|
旅客数 |
(人) |
40,482 |
428,347 |
|
座席キロ |
(千席キロ) |
154,004 |
2,194,895 |
|
旅客キロ |
(千人キロ) |
138,445 |
1,522,088 |
|
利用率 |
(%) |
89.9 |
69.3 |
(注)1.座席キロは、各路線各区間の有効座席数(席)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。
2.旅客キロは、各路線各区間の旅客数(人)に各区間距離(km)を乗じた数値の合計です。
3.利用率については、「前期比(%)」の欄に前期差(%)を記載しています。
4.国内線の区間距離については、2024年4月1日より国際線と同一の「大圏距離」に変更しています。これに伴い、前年同期の実績も変更しています。
(b) 航空関連事業
航空関連事業に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。
(c) 旅行事業
旅行事業に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。
(d) 商社事業
商社事業に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。
(e) その他
その他に含まれる連結子会社の取扱状況等については、構成する各種事業が多岐にわたり、かつ重要性の観点から開示しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当期末時点において判断したものです。
①財政状態
<資産の部>
流動資産は、現金及び預金等が減少したことから、前期末に比べて74億円減少し、1兆6,937億円となり
ました。
固定資産は、航空機を取得したこと等により、前期末に比べ583億円増加し、1兆9,261億円となりました。
以上により、当期末における総資産は前期末に比べて507億円増加し、3兆6,202億円となりました。
<負債の部>
負債の部は、転換社債型新株予約権付社債の償還及び借入金の返済があったこと等により、前期末に比べて
367億円減少し、2兆4,802億円となりました。なお、有利子負債(無利子のユーロ円建転換社債型新株予約権
付社債を含む)は、前期末に比べて1,349億円減少し、1兆3,490億円となりました。
<純資産の部>
株主資本は、配当金の支払いがあった一方で、当期純利益の計上により利益剰余金が増加したこと等から、
前期末に比べて1,202億円増加し、1兆713億円となりました。
その他の包括利益累計額は繰延ヘッジ損益の減少等により、前期末に比べて343億円減少し、589億円とな
りました。
これらの結果、純資産合計は前期末に比べて874億円増加し、1兆1,400億円となりました。
なお、自己資本比率は31.2%(前期末29.3%)となり、有利子負債と自己資本の比率を示すD/Eレシオは
1.2倍(前期末1.4倍)となりました。
②経営成績
航空業界を取り巻く環境は、ウクライナや中東地域情勢等の地政学リスクが懸念されるものの、旅客需要は回
復基調が続いています。
このような社会・経済情勢の下、航空事業を中心に増収となったことから、売上高は2兆2,618億円(前期比
10.0%増)となりましたが、運航規模の拡大に伴う整備機会の増加や人財への投資を進めたこと等から費用が増
加し、営業利益は1,966億円(同5.4%減)となり、前期と比べて減益となりました。また、航空機等に関
わる各種補償金を計上したこと等から、経常利益は2,000億円(前期比3.6%減)、親会社株主に帰属する当期純
利益は1,530億円(同2.6%減)となりました。
なお、従業員の健康をサポートする取り組み等が評価され、3年連続で「健康経営銘柄」に選定されたほか、
当社は世界の代表的な社会的責任投資の指標である「Dow Jones Best-in-Class World Index」(本年2月に
「Dow Jones Sustainability World Index」から名称変更)の構成銘柄に8年連続で選ばれるとともに、国際的
な環境評価を手掛ける非営利団体であるCDPより、最高評価の「Aリスト企業」に3年連続で選定されました。
今後も人的資本経営を強化しつつ、事業を通じて環境問題等の社会課題解決に取り組み、持続的な成長と企業価
値の向上を目指してまいります。
以下、当期におけるセグメント別の概況をお知らせいたします。
(なお、各事業における売上高はセグメント間内部売上高を含み、営業利益はセグメント利益に該当します。)
◎航空事業
旺盛な訪日需要とレジャー需要に支えられ、国際線旅客・国内線旅客ともに好調に推移し、売上高は前期を上
回り、2兆587億円(前期比10.1%増)となりました。費用面では、整備費や人件費等を中心に増加したこと
から、営業利益は1,991億円(前期比4.3%減)となり、前期と比べて減益となりました。
なお、当社グループは英国SKYTRAX社から顧客満足度で最高評価となる「5スター」に12年連続で認定されま
した。また、米国の非営利団体APEXから高品質なサービスの提供が評価され、最高評価となる「WORLD CLASS」
を初受賞し、米国のAir Transport World誌からは優れた業績と先進的なサービスが評価され、「2025 Airline
of the Year Award」を受賞しました。
<国際線旅客(ANAブランド)>
国際線旅客では、好調な訪日需要に加え、日本発レジャー需要やビジネス需要を積極的に取り込み、北米路線・欧州路線が好調に推移したこと等により、旅客数、収入ともに前期を上回りました。
路線ネットワークでは、12月から羽田=ミラノ線、本年1月から羽田=ストックホルム線、本年2月から羽田=イスタンブール線を新規開設したほか、8月から羽田=ウィーン線、10月から成田=パース線を再開しました。
営業・サービス面では、国際線ファーストクラスやビジネスクラスの軽食メニューとして、「ANAオリジナルラーメン」の提供を開始したことに加え、機内インターネットやエンターテインメントのサービス拡充に努めました。
以上の結果、当期の国際線旅客数は807万人(前期比13.1%増)となり、収入は8,055億円(同10.6%増)と
なりました。
<国内線旅客(ANAブランド)>
国内線旅客では、「ANA SUPER VALUEセール」を継続的に実施し、レジャー需要の喚起に努めるとともに、運賃を一部改定したこと等により、旅客数、収入ともに前期を上回りました。
路線ネットワークでは、12月から羽田=能登線を1日2往復に復便したほか、夏休み期間や年末年始期間を中心に臨時便を設定し、レジャー需要を取り込みました。
営業・サービス面では、12月から2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を記念した特別デザイン機 「EXPO2025 ANA JET」の運航を開始したほか、羽田空港のANA LOUNGE内にキッズルーム「ANA ポケモン Kids TV ラウンジ」をオープンしました。また、羽田空港や伊丹空港等に続き、福岡空港において最新型保安検査機(スマートレーン)を導入し、手荷物検査場の混雑緩和に努めたほか、プレミアムメンバーのお客様の利便性向上を目的に、羽田空港のプレミアムチェックインカウンターをリニューアルしました。
以上の結果、当期の国内線旅客数は4,405万人(前期比8.1%増)となり、収入は7,039億円(同9.2%増)と
なりました。
<貨物(ANAブランド)>
国際線貨物では、アジア・中国発北米向け三国間貨物の旺盛な需要を取り込んだことに加えて、自動車関連を中心とした日本発の需要が緩やかに回復したこと等により、輸送重量・収入ともに前期を上回りました。
路線ネットワークでは、需要動向を見極め、貨物専用機の運航路線や供給量を柔軟に調整したほか、8月から他社によるエアラインチャーター便を運航する等、収益性の確保に努めました。
成田空港では、10月から新たな貨物施設の供用を開始しました。施設の集約や無人搬送車の導入による作業の効率化に加え、温度管理施設の拡充等による品質向上に取り組みました。また、12月に日本の航空会社として初めて国際航空運送協会(IATA)が策定したリチウム電池輸送における国際品質認証を取得しました。今後、需要が拡大するリチウム電池を安全かつ高品質で輸送できる体制を構築し、お客様のニーズに応えていきます。
以上の結果、当期の国際線貨物輸送重量は704千トン(前期比3.6%増)となり、収入は1,873億円(同20.5%増)となりました。
<Peach・AirJapan>
Peachでは、旺盛な訪日需要を取り込むため、使用する機材をはじめリソースを国際線へ重点的に振り分けたこと等から、国内線の旅客数は前期から減少したものの、国際線の拡大が寄与したことにより収入は前期を上回りました。
路線ネットワークでは、12月から新たに関西=シンガポール線を開設したほか、需要動向に応じて、通期で臨時 便を設定しました。
営業・サービス面では、国内・海外の旅行パッケージ商品「Peach Travel」によってレジャー需要の喚起に努めました。また、12月から機内誌を刷新したことに加え、機内食の種類を増やし、一部の国際線で温かいメニューを 再開する等、お客様へのサービスの充実を図りました。
以上の結果、当期のPeach旅客数は910万人(前期比2.6%減)となり、収入は1,393億円(同0.9%増)となりました。
昨年2月に新たなブランドとして誕生したAirJapanでは、成田=バンコク線、成田=仁川線、成田=シンガポー ル線を運航しています。
営業・サービス面では、訪日旅客に加えて日本発旅客に対する需要喚起を目的に、「AirJapanサマーセール」等 を実施したほか、航空券の支払い方法として、日本ならびに就航国であるタイ・韓国において2次元バーコード決 済を開始しました。
以上の結果、当期のAirJapan旅客数は42万人(前年実績4万人)となり、収入は117億円(同12億円)となりました。
<その他>
航空事業におけるその他の収入は1,803億円(前期比5.2%増)となりました。なお、航空事業におけるその他には、マイレージ附帯収入、機内販売収入、整備受託収入等が含まれています。
◎航空関連事業
外国航空会社の復便や新規就航に伴い、空港地上支援業務や機内食関連業務の受託が増加したほか、国際貨物
の取扱高が拡大したこと等により、売上高は3,372億円(前期比12.9%増)となり、前期を上回ったものの、シス
テム関連費用が増加したこと等から、営業利益は40億円(同40.4%減)となりました。
◎旅行事業
海外旅行については、ダイナミックパッケージ商品がハワイ方面を中心に好調に推移したことに加え、新規就
航都市をはじめとするヨーロッパ方面の需要を順調に取り込んだこと等により、売上高は前期を上回りました。国
内旅行については、主力のダイナミックパッケージ商品の集客が伸び悩んだこと等から、売上高は前期を下回りま
した。
以上の結果、当期の旅行事業における売上高は735億円(前期比6.3%減)、営業利益は1億円(同85.9%減)と
なりました。
また、モバイルペイメントサービス「ANA Pay」の会員数が11月に100万人を突破しました。本年1月には「ANA
Pay」の機能改善を実施し、日常生活で少額のマイルを使いやすくする等、お客様の利便性向上に努めました。
◎商社事業
訪日旅客と国内旅客需要の増加に伴い、免税店「ANA DUTY FREE SHOP」、空港物販店「ANA FESTA」や観光土産
品卸売「FUJISEY」が好調に推移したこと等により売上高は前期を上回ったものの、人件費が増加したこと等か
ら、営業利益は前期を僅かに下回りました。
以上の結果、当期の商社事業における売上高は1,299億円(前期比10.2%増)、営業利益は45億円(同0.2%減)
となりました。
◎その他
空港設備保守管理事業や不動産関連事業において取扱高が増加したこと等から、売上高・営業利益ともに前期を
上回りました。
以上の結果、当期のその他の売上高は455億円(前期比10.4%増)、営業利益は11億円(同110.8%増)となりま
した。
③キャッシュ・フローの状況
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
当期の税金等調整前当期純利益1,965億円に、減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減
算を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フローは3,730億円の収入となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
有価証券の取得や設備投資による支出があったこと等から、投資活動によるキャッシュ・フローは3,436億円の支出となりました。
以上の結果、フリー・キャッシュ・フローは293億円の収入となりました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
配当金の支払いや社債の償還、借入金の返済による支出があったこと等から、財務活動によるキャッシュ・フ
ローは1,701億円の支出となりました。
④資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、運転資金及び設備投資資金(主に航空機等)につきましては、自己資金または金融機関から
の借入、及び社債発行等により資金調達することとしており、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に
確保することを基本方針としています。
当期においては、設備投資資金等の手当てのため民間金融機関から900億円の借り換えを実施しました。
当期末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、1兆3,490億円となっています。また、現
金及び預金に有価証券を加えた手元流動性資金は1兆2,164億円となりました。
なお、2025年3月31日現在、複数の金融機関との間で合計1,000億円のコミットメントライン契約を締結して
います。
⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
|
指標 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
売上高 (百万円) |
1,707,484 |
2,055,928 |
2,261,856 |
|
営業利益 (百万円) |
120,030 |
207,911 |
196,639 |
|
売上高営業利益率 (%) |
7.0 |
10.1 |
8.7 |
|
株主資本利益率(ROE) (%) |
10.8 |
16.5 |
14.1 |
|
総資本利益率(ROA)(%) |
3.7 |
6.1 |
5.6 |
|
自己資本比率 (%) |
25.6 |
29.3 |
31.2 |
当社グループは、「2023~2025年度 ANAグループ中期経営戦略」(2023年2月15日開示)のもと、ビジネ
スチャンスを確実に捉え、各事業において価値創造を実現し、安定的経営基盤の構築に取り組んでまいります。
⑥重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本とな
る重要な事項)」及び「(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(1) 営業に関する重要な契約
|
契約会社名 |
契約の種類 |
契約先 |
対象区間 |
|
|
全日本空輸㈱ |
スターアライアンスへの加盟 |
スターアライアンス |
|
|
|
Joint Venture契約 |
旅客分野 |
ルフトハンザグループ |
日本~欧州 |
|
|
ユナイテッド航空 |
アジア~米州 |
|||
|
シンガポール航空 ※1 |
日本~シンガポール・オーストラリア・インド・インドネシア・マレーシア |
|||
|
貨物分野 |
ルフトハンザカーゴAG. ※2 |
日本~欧州 |
||
|
ユナイテッド航空 ※2 |
アジア~米州 |
|||
※1 2025年4月17日にシンガポール航空とJoint Venture契約を締結しました。
※2 当社貨物事業再編のため、2023年9月30日よりルフトハンザカーゴAG.およびユナイテッド航空との貨物分野にお
けるJoint Venture契約を停止しております。
(2) 航空機のリース契約
航空機のリース契約については「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況 (2) 航空機」に記載しております。
(3) 株式交換契約
当社は、貨物事業のボラティリティ耐性を強化しながら持続的に収益を拡大していくために、従来以上に同事業への経営資源の配分を行い、貨物便と旅客便を合わせ持つコンビネーションキャリアとしての強みを早期に確立する必要があると考えています。日本最大の国際線旅客便ネットワークを活用する当社グループの貨物事業と日本貨物航空株式会社(以下、「NCA」という。)の持つ大型貨物機を活用した事業を将来的に統合・再編することにより、サプライチェーンの高度化に対応し得る高品質かつ競争力のある航空貨物輸送サービスの提供が可能となることから、2023年7月10日開催の取締役会決議に基づき、NCAとの間で、株式交換契約を締結しました。その後、株式交換の効力発生日変更のため、2023年9月26日、2024年1月25日、2024年3月22日、2024年6月10日、2025年3月21日、2025年4月25日、2025年5月19日及び2025年6月25日に株式交換契約変更契約を締結しました。
株式交換の概要は、以下のとおりです。
① 株式交換の内容
当社を株式交換完全親会社、NCAを株式交換完全子会社とする株式交換
② 株式交換の日
2025年8月1日(予定)
③ 株式交換の方法
NCAの完全親会社である日本郵船株式会社に対して当社は、普通株式3,926,000株を割当交付する予定です。交付する株式については、当社が保有する自己株式を充当し、新株式の発行は行わない予定です。
④ 株式交換比率
|
|
当社 (株式交換完全親会社) |
NCA (株式交換完全子会社) |
|
本株式交換に係る割当比率 |
1 |
0.009815 |
⑤ 株式交換比率の算定根拠
本株式交換に用いられる株式交換比率の算定にあたって、公平性・妥当性を確保するため、当社とNCAから独立した第三者算定機関である株式会社KPMG FAS(以下、「KPMG」という。)に、当社及びNCAの株式価値及び交換比率の算定を依頼することとしました。
KPMGは、当社については、東京証券取引所プライム市場に上場しており、市場株価が存在していることから、市場株価法を用いて算定しました。また、NCAについては、将来の事業活動の状況を算定に反映するためディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法に加え、その事業の性質上、重要な資産である航空機を保有していることから、修正簿価純資産法を主たる方法として算定しました。
これらの算定結果を参考に当事者間で協議し、株式交換比率を決定しました。
⑥ 本株式交換の後の株式交換完全親会社となる会社の概要
|
商号 |
ANAホールディングス株式会社 |
|
本店の所在地 |
東京都港区東新橋一丁目5番2号 |
|
代表者の氏名 |
代表取締役社長 芝田 浩二 |
|
資本金の額 |
467,601百万円 |
|
純資産の額 |
現時点では確定しておりません。 |
|
総資産の額 |
現時点では確定しておりません。 |
|
事業の内容 |
航空運送事業等のグループの経営戦略策定、経営管理及びそれに付帯する業務 |
航空事業セグメントにおいては、より安全で快適かつ効率的な航空事業を提供するための多様な改良・改善活動を推進しています。
また、航空事業をはじめ各セグメントにおける事業活動が及ぼす環境負荷の逓減活動も推進しています。
なお、上記活動に関して「研究開発費等に係る会計基準」に定義する研究開発費に該当するものはありません。