今後の世界経済は、米国の通商政策による影響の広がりから、景気は中国で足踏み状態が続くと見込まれるほか、欧州では持ち直しの動きが弱まり、米国でも景気拡大の勢いが弱まる可能性があります。またわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されますが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが懸念されます。
こうした経済情勢にあって、当社グループを取り巻く事業環境は、物流業界においては、人手不足やインフレを背景としたコストの増加が続くことが予想されます。他方、不動産業界においては、賃貸オフィスビルの新規供給が増加する予定であるものの、オフィス需要は底堅く推移する見通しであり、空室の消化は順調に進むことが期待されます。
2024年度に策定した当社グループパーパス「いつもを支える。いつかに挑む。」”Supporting Today, Innovating Tomorrow.”のもと、当社グループは「トータルロジスティクスと街づくりを世界で展開し、社会のいつもを支え、非連続な成長を実現する」を「MLC2030ビジョン」の目指す姿として掲げ、その実現に向けてグループ全体でサステナビリティ経営と経営計画を推進しています。
ビジョン達成に向けた最終フェーズとして、2025年度から開始となる経営計画[2025-2030]において掲げた5つの成長戦略及び財務戦略を推進し、持続的な成長を図ります。
成長戦略1「物流事業の飛躍」では、トータルロジスティクスサービスの強化、カテゴリー戦略の推進、物流サービスの機能強化と品質向上を進めることで、売上の伸長と利益率の改善を図ります。
成長戦略2「不動産事業の進化」では物流事業とのシナジーが見込める新たなアセットクラスへの展開を拡大するほか、アセットマネジメント事業に進出し、資産回転型ビジネスを本格稼働させます。また海外不動産ビジネスへ進出し、事業拡大を図ります。
成長戦略3「海外事業の拡大」ではASEAN、北米、インドを最重点領域と定め、有力物流事業者とのパートナーシップ戦略等により事業成長速度を加速させることで、2030年度の海外売上高目標として、2024年度比2倍以上の収益規模となることを目指します。
成長戦略4「先端技術の活用等による業務プロセスの改善と新ビジネス創出」では先端技術を積極的に導入することにより物流・不動産両事業での社会課題解決と事業成長の実現を図ります。
成長戦略5「グループ経営基盤の強化」では人的資本経営の推進、広報・IRの強化、グループ経営推進、グループ資産の価値向上、リスクマネジメントの強化を推し進めることで非連続な成長に向けた事業基盤を構築します。
財務戦略においては、2030年までにDOE4%以上、機動的な自己株式取得、政策保有株式の縮減を進めるほか、純資産を4,000億円前後の水準でコントロールします。
これらの戦略をグループ全体で推進することで、2030年度において事業利益630億円程度、純利益410億円程度、ROE10%以上の財務目標をそれぞれ達成することを目指します。
なお、事業利益は営業利益に持分法投資損益と資産回転型ビジネス損益を加えたものであり、資産回転型ビジネス損益とは以下①②③の損益です。このうち①については営業利益に含みます。
① 売却を目的とした資産の取得による運用損益及び売却損益
② 売却を目的とした資産に係る出資による運用損益及び売却損益
③ 今後組成を予定する不動産ファンドへの固定資産売却損益
※事業利益=営業利益+持分法投資損益+資産回転型ビジネス損益
また、当社グループパーパスを実現するため、そして経営環境の変化に適応しながら、経済・環境・社会の各面で持続可能な価値を提供し続け、サステナビリティ経営を推進するためにマテリアリティを次のとおり見直しました。
・災害に強く、安全・安心で持続可能な社会的インフラサービスの提供
・気候変動対策と環境保護の取組みの強化
・先端技術の活用と多様なパートナーシップによるイノベーション創出
・成長のための人的資本経営の推進
・コンプライアンスの徹底・人権の尊重
・リスクマネジメントの強化
各マテリアリティにおける施策・KPI・目標を再設定し、MLC2030ビジョンと同じ2030年度に達成することを目指しています。サステナビリティ委員会を中心に進捗を管理し、定期的に検証と入れ替えを実施し、統合報告書やホームページ等を通じて社内外のステークホルダーとのコミュニケーションを拡充する等、質の高い取組みを進めます。
当社グループは、物流・不動産両分野でのインフラサービスを通じ、環境対応等、社会課題の解決に取り組む中で事業の成長機会を見出し、グループの持続的な成長を目指します。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、「いつもを支える。いつかに挑む。」”Supporting Today, Innovating Tomorrow.”をパーパスとして定めており、パーパスを実現するため、そして経営環境の変化に適応しながら、経済・環境・社会の各面で持続可能な価値を提供し続けるために マテリアリティを設定し取組みを進めています。2025年3月6日に再公表した「三菱倉庫グループ サステナビリティ経営について」では、マテリアリティ別の主な施策、KPIと目標を取りまとめました。物流及び不動産分野でのインフラサービスを通じ、これからも社会の“いつもを支え”続け、持続可能で豊かな未来を創造します。
(2) ガバナンス
2021年7月に、サステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ経営に関する施策・目標値の検討、進捗管理や審議を行ってきましたが、2022年7月にはサステナビリティに関する推進体制強化を目的として、戦略会議と連絡会議を設けています。
社長を委員長とし取締役会長及び常務執行役員以上の役付執行役員が参加する戦略会議は、年1回以上開催しています。サステナビリティ課題の設定・見直しや、マテリアリティに係る施策・目標値見直しの審議、重要課題の審議等を行っています。サステナビリティ委員会の活動状況を含め、サステナビリティ経営に関する事項については、戦略会議での審議内容も踏まえて、取締役会や常務会に年1回以上報告し、適切な監督が図られるよう体制を整えています。
サステナビリティ推進担当常務執行役員が主宰し、部室店長で構成される連絡会議は、年1回以上開催しています。戦略会議での審議・検討内容の共有及びサステナビリティ課題に関する施策や目標に対するモニタリングを行っています。


(3) リスク管理
サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会連絡会議の構成員である各部室店長や分科会を通じてサステナビリティ委員会戦略会議に報告されています。戦略会議では、報告されたリスクを評価した上で、リスクへの適応や緩和に向けた対応策の審議・検討を行います。戦略会議において審議・検討された内容は、年1回以上取締役会や常務会に報告され、報告を受けた取締役会や常務会は、リスク管理に関する審議・監督を行っています。
(4)戦略
当社グループはマテリアリティをサステナビリティ経営の中心課題として、その解決を通じて経済・環境・社会の各面で持続可能な価値を提供し続ける取組みを行っています。2025年2月28日に公表した経営計画[2025-2030]においては、経済面では高付加価値サービスの提供を、環境面では未来に豊かな地球を残すことを、社会面では社会のいつもを支えることを提供価値としています。これからも同計画との両輪でサステナビリティ経営を推進していきます。
(5)指標及び目標
当社グループは、マテリアリティ候補の抽出から重要度分析を行い、マテリアリティを特定しています。各マテリアリティにおける優先課題と事業活動を通じた施策を戦略として、取組みを推進しています。KPI、目標は以下のとおり設定しています。

2024年度の実績につきましては、当社グループのホームページ及び統合報告書2025に掲載を予定しています。
(6)気候変動対応
2024年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく開示を行い、取り組んでいます。
①ガバナンス
サステナビリティ委員会が気候変動に関する事項を含むサステナビリティ課題について年1回以上取締役会に対して報告を行っています。取締役会は、その取組みや目標の管理に関する議論等を通じ、サステナビリティ課題に対する監督を行っています。また、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標の策定や経営戦略等における重要な気候変動に関する事項についても取締役会において決定しています。
また、社長が主宰し、取締役会長及び常務執行役員以上の役付執行役員で構成され、 経営に関する重要事項を協議する常務会においても、サステナビリティ委員会から気候変動に関する事項を含むサステナビリティ課題に関して適宜報告を受けており、その取組みや目標の管理について協議の上、常務執行役員以上の役付執行役員が関係部門に対して指示・監督を行っています。
②リスク管理
気候変動に関するリスクは、サステナビリティ委員会連絡会議の構成員である各部室店長や分科会を通じてサステナビリティ委員会戦略会議に報告されています。戦略会議では、報告されたリスクを評価した上で、当社グループにおけるサステナビリティ経営に向けた取組みに関する マテリアリティとして定めている、気候変動に関する事項を含むサステナビリティ課題の設定・見直しや、マテリアリティ毎の施策・目標等への反映などを通じ、リスクへの適応や緩和に向けた対応策の審議・検討を行います。気候変動に関するリスクについて戦略会議において審議・検討された内容は、他の審議事項と合わせて年 1 回以上取締役会や常務会に報告され、報告を受けた取締役会や常務会は、リスク管理に関する審議・監督を行っています。
また、戦略会議へ報告されたリスクについては、全社的なリスクの洗い出しや分析、対応の検討等のリスク管理を所管するグループリスクマネジメント委員会へ適宜共有され、急性リスクを中心に、気候変動に関するものを含め、全社的なリスク管理の観点からリスク対応や対策を審議・検討しています。
③戦略
1.5℃、4℃のシナリオにもとづき、短期・中期・長期における移行リスク(低炭素社会への移行に伴うリスク)、物理的リスク(地球温暖化の進行に伴う気候リスク)、機会を洗い出し、影響度を検討しました。主なリスク、機会についての緩和策、対応策は次のとおりです。
◆移行リスク
一例として、CO2等の地球温室効果につながるガス(GHG)等の排出量に応じた炭素税等の税金の影響や、それらガスの排出量を抑制するための設備投資・更新費用の増加の影響度が大きいとの結果でした。
緩和策として、物流事業では「災害に強いECO倉庫」の展開や環境に配慮した輸配送の提案、不動産事業では「災害に強い環境配慮型オフィスビル」の展開や再生可能エネルギーの導入等を行います。
◆物理的リスク
従業者等の熱中症等による労働生産性の低下や、それらを防止するための機器等の導入対策費の増加の影響度が大きいとの結果でした。
緩和策として、高効率な作業オペレーションの一層の推進や、作業負荷軽減を可能とする新技術の導入とともに、働き方の見直しを含めた働きやすい労働環境の提供に向けた取組みを推進します。
◆機会
低・脱炭素社会への移行にあたり、CO2排出量が少ないサービスのニーズが増加するほか、気温上昇による温度管理輸配送や、気候変動による激甚化した災害発生頻度が上がる状況下においても事業継続やサプライチェーンの維持を可能にしたいとのニーズが増加することが、機会=チャンスにつながり、影響度が大きいとの結果でした。
対応策として、今後も、ハード面では「災害に強いECO倉庫」、「災害に強い環境配慮型オフィスビル」を積極的に展開することとし、ソフト面では、低環境負荷の物流提案や、再生可能エネルギーの導入・供給を行います。これまでの災害対策等の経験をふまえ、施設修繕・風水害対策の計画的実施・強化等により施設の安全性を高める、災害時の代替ルート・取扱施設の選定等のノウハウを活かして強靭な物流サービスを提供する等により、顧客ニーズに対応します。
④指標と目標
2023年9月に公表した「三菱倉庫グループ脱炭素社会の実現に向けたロードマップ」(以下ロードマップ)において、「三菱倉庫グループネットゼロ宣言」を掲げ、2050年度までにCO2排出量ネットゼロを目指しています。
今後、ロードマップに示した重点分野の取組み施策を中心に、当社グループの事業及びサプライチェーンにおける脱炭素化を促進していきます。
◆評価の指標

◆GHG排出実績
目標値の対象範囲におけるGHGのうち、CO2排出量の実績は次のとおりです。


(7) 人的資本
①戦略
当社グループは、2025年3月6日に再公表した「三菱倉庫グループ サステナビリティ経営について」におけるマテリアリティに「成長のための人的資本経営の推進」を掲げております。
◆人材育成方針
当社は、求める人材像(※)を定め、会社の発展、ひいては社会の発展に寄与する人材の育成に努めております。人材を、新たな発想や創造により高付加価値サービスを生み出し、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する資本と捉え、今期から開校した企業内大学「MLCアカデミー」に於いて、デジタル人材、海外事業の拡大を見据えたグローバル人材等、様々な分野で高付加価値をもたらす専門性の高い人材を育成する研修を実施する等、人的資本への投資強化に努めます。
また、事業環境の変化に適切かつ柔軟に対応するためには、性別・国籍・入社形態等に関わらず、多様な人材が、管理職として組織の意思決定に参画することが重要であり、それぞれの個性と能力を最大限発揮できるよう育成に努めます。
(※)求める人材像
1. 信義を守り、誠実かつ公正に行動する。
2. 自律的に行動する。
3. 環境変化に対して柔軟に対応する。
4. 高い専門性を発揮し創造的に活動する。
5. チームワークを保ち周囲と協力する。
◆社内環境整備方針
当社は、社員の成長と仕事・家庭生活の充実を支援するとともに、それによって得られる会社の持続的な発展を通して、社員と会社がおたがいの価値を高め合うことを人事の基本理念としております。この理念を実現するために、様々な人事制度や教育制度によって社員の働きがいと働きやすさを向上させ、その個性と能力を最大限に発揮できる環境の整備に努めます。マテリアリティである「成長のための人的資本経営の推進」においては、健康への取組み、適正な労働環境の確保、多様な働き方に対応した人事制度の構築、次世代育成等のためのワーク・ライフ・バランスのさらなる充実、仕事と家庭の両立を後押しする環境づくりに努めます。また、2022年度からは提出会社及び国内連結子会社を対象としたエンゲージメントサーベイを実施し、「若手社員の働きがい」及び「女性活躍推進」を優先課題として定めて、タウンホールミーティングの実施等の取組みを行うことで、エンゲージメントの向上を図っております。
②指標及び目標
上記「戦略」において記載した「成長のための人的資本経営の推進」についての指標及び目標は、「(5)指標及び目標」のとおりであります。
当社グループのリスクマネジメント基本方針・体制および当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、企業理念を実現するうえでの不確かさの影響をリスクと定義し、リスクを適時・適切に特定・分析・評価し、リスク対応計画の策定・実行及びモニタリング・レビューを通じて負のリスク顕在化の頻度及び影響度を極小化することを基本方針として、以下基本目的及び行動指針に基づきリスクマネジメントシステムを構築・運用しております。
及び的確なリスクコントロールを支える環境を整えます。
を醸成します。
重点的に取り組むリスクを特定します。
PDCAサイクルマネジメントを実施します。
・リスクマネジメントシステムの有効性について定期的に確認・点検し、維持・向上に繋げます。
グループリスクマネジメント最高責任者を社長とし、リスクマネジメント担当常務執行役員を委員長とした「グループリスクマネジメント委員会」を設置し、子会社を含めた当社グループ全体でリスクマネジメント活動を推進しています。「グループリスクマネジメント委員会」では、リスク管轄部門からの報告をもとに、リスクの網羅的な把握を行い、評価・分析および対策について協議し、今後の方針を定めています。
また、危機事態の発生時には、対応要領を定めた危機管理基本マニュアルに基づいて迅速かつ的確な初動対応を行うことにより、影響の拡大防止及び早期の収束に努めます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
当社グループの主たる事業は、倉庫事業を中核とする物流事業並びにビル賃貸を中心とする不動産事業であり、計画的な設備投資や高度なサービスの提供により安定した成長を図るよう努めておりますが、物流事業では国内外の景気変動や顧客企業の物流合理化・事業再編の影響等、不動産事業では賃貸オフィス市場における需給バランスや市況動向等、事業環境の変動の影響を受けます。
倉庫や賃貸ビル等の事業用資産については、建物の耐震・免震対策や外部保険の付保のほか、日常の点検・整備、自然災害等の危機発生時の対応マニュアルの作成・更新、定期的な訓練実施等の必要な措置を講じておりますが、地震、台風、大雨、洪水、津波、噴火等の大規模自然災害が発生した場合は、保険で担保しきれない重大な被害を受けるおそれがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により、土地、建物、のれん、顧客関連資産等の時価下落や収益性低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合、将来に損失を繰り越さないため、回収の可能性を反映させるように減損処理を行う可能性があります。
2025年3月期において、収益性が低下した当社グループのコンテナターミナル施設(構築物等)について減損損失(8千7百万円)を特別損失として計上しました。
当社グループは、主として営業上の取引関係維持・強化のため、取引先の株式を中心に当連結会計年度末において1,637億1千6百万円の投資有価証券を保有しておりますが、「金融商品に関する会計基準」の適用により、株式相場等の時価変動の影響を受けております。なお、当社は、その他有価証券で市場価格のない株式等以外のものについて、時価が取得原価に比べて30%以上下落した場合、回復の可能性を考慮のうえ減損処理を行うこととしております。また市場価格のない株式等のうち発行会社の純資産額が簿価を下回るものについて、回復の可能性を考慮し投資損失引当金を計上もしくは減損処理を行うこととしております。
2025年3月期において、ベトナムにおける景気減速等によりITL Corporationの業績が悪化し、投資等許認可の遅れもあり事業計画の進捗に遅れが発生する見込みとなったため、同社事業計画を保守的に再検討した結果、投資に伴うのれん相当額の未償却残高(88億1千8百万円)全額を持分法による投資損失として計上しました。
当社グループは、社員が業務を遂行する際の規範として法令遵守、反社会的勢力の排除等を内容とする「行動基準」を制定し、その遵守状況の自己点検やコンプライアンス研修の推進・徹底により、社員一人ひとりに企業倫理にもとづくコンプライアンス意識を浸透させるとともに、法令及び各種規制等の遵守の徹底を図っています。また、内部統制・コンプライアンス委員会を設け、内部統制機能の整備状況、コンプライアンス態勢を検証し、それらの充実を図っています。これと併せて、企業理念を実現する前提となる人権尊重責任を果すため、「三菱倉庫グループ人権方針」を制定し、人権尊重の取組みを推進しています。
通報者の不利益取扱い禁止を明確に定めた内部通報窓口(ヘルプライン)に加え、取引先通報窓口を設置して、法令等に抵触するおそれのある行為及び人権侵害のおそれのある行為を防止し、また早期に発見して是正するよう努めています。
しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスク及び人権侵害リスクは完全には払拭できず、法令等に抵触する事態又は人権問題が生じた場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分、取引先等からの損害賠償、信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社は、海外において北米、中国・アジア及び欧州に合計25社(北米6社、中国・アジア16社、欧州3社)の子会社を設置し、主に倉庫・国際運送取扱等の物流事業を営んでおります。海外での事業展開においては、現地特有の政治的リスク、法的リスク、経済的リスク、環境リスク等の把握に努め、対策を講じています。
当社グループの連結財務諸表の作成に当たっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しているほか、当社及び一部連結子会社において、外貨建債権・債務を有していることから、為替レートが変動した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、環境問題の重要性を認識し、環境方針や環境ボランタリープランを定めているほか、サステナビリティ経営のマテリアリティに気候変動対策と環境保護の取組みの強化を掲げ、地球環境に配慮した事業活動を推進しております。具体的には、「災害に強いECO倉庫」、「災害に強い環境配慮型オフィスビル」の建設等により、倉庫や不動産賃貸施設の省エネ対策に取り組むほか、環境負荷の少ない機器又は設備の導入や、お客様や委託先等と協力のうえ環境負荷を軽減するサービスの開発に努めております。また、TCFD提言にて推奨される気候変動に関する情報について開示を行っており、移行リスク、物理的リスクへの緩和策を実施することとしています。しかしながら、今後、関係法令や規制の強化等により、新たな設備投資等の必要性が生じた場合には、資金やコスト負担の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、ITを活用して事業の推進と業務の効率化を図っており、事業活動を通じて取引先の機密情報やお客様の個人情報を取り扱っております。
情報システムや情報ネットワークの管理においては、安定稼働やセキュリティ対策に注力しており、適切なサーバーの管理や情報のバックアップなど必要な措置を講じています。
また、情報セキュリティポリシーに基づいた管理策を整備するとともに、CSIRTを設置してサイバー攻撃などのセキュリティインシデント発生時の迅速な対応や被害拡大防止、ならびに平時における役職員向けセキュリティ教育や標的型攻撃に対する訓練等、グループ全体のセキュリティレベル強化に取り組んでいます。
しかしながら、サイバー攻撃に起因する外部からの不正アクセスやコンピューターウイルス感染、災害等により事業活動の停止や情報漏洩が発生した場合には、取引先等からの損害賠償、信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
新型コロナウイルス感染症をはじめ、新興・再興の感染症の地域的な流行や、世界的なパンデミックにより、物流事業においては、貨物の荷動きの低迷、不動産事業においては、テナントの退去等に伴う空室率の上昇等、当社グループの事業活動・業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の世界経済は、中国や欧州の一部で景気に足踏みがみられたものの、米国では景気の拡大が続き、全体としては持ち直しました。また、わが国経済は、引き続き消費者物価の上昇による家計への影響が懸念される中、個人消費や設備投資、輸出に持ち直しの動きがみられ、景気は緩やかに回復しました。一方で、いずれの地域においても米国の通商政策による先行き不透明感がみられました。
こうした経済情勢にあって、当社グループを取り巻く事業環境は、物流業界においては、輸出入貨物取扱は堅調に推移した一方、人手不足やインフレを背景としたコストの増加が続きました。他方、不動産業界においては賃貸オフィスビルの需給改善により空室率が減少するなど比較的堅調に推移しました。
このような状況の下、当社グループは、経営計画[2022-2024]に沿ってDXに取組み、スキルとノウハウの集積である現場力と、先端技術を活用した新手法を組み合わせて業務の効率化と顧客への付加価値創出を進めるとともに、営業体制を強化し、営業活動を一層推進しました。物流事業では、配送センター業務等の拡大、国際輸送貨物の取扱拡大等に努め、不動産事業では、テナントの確保及び賃料水準の維持・向上に努めました。他方、コスト上昇に見合う適正料金の収受やコスト管理の徹底を一層推し進め、業績の確保に努めました。
また、医薬品物流事業の拡充を図るため、同事業を米国・英国で展開するCavalier Logisticsグループの株式を2023年10月に取得し、2024年3月期第3四半期末から連結に組入れております。
この結果、当連結会計年度の営業収益は、物流及び不動産の両事業で収入が増加したため、全体として前期比295億6千1百万円(11.6%)増の2,840億6千9百万円となりました。また営業原価は、物流及び不動産の両事業で増加、全体として前期比253億6千2百万円(11.4%)増の2,476億3千3百万円となり、販売費及び一般管理費は、Cavalier Logisticsグループの顧客関連資産・のれん償却等により、同28億2千9百万円(21.3%)増の161億2千4百万円となりました。
営業利益は、物流事業で減益、不動産事業で増益、全体として前期比13億6千9百万円(7.2%)増の203億1千万円となりました。
経常利益は、当社の持分法適用関連会社でベトナムにおいて総合物流サービスを行うITL Corporationに係るのれん相当額の未償却残高全額を持分法による投資損失として計上したほか、受取配当金の減少、支払利息の増加等により、同57億3千8百万円(23.6%)減の186億2千万円となりました。また親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益で固定資産処分益、投資有価証券売却益の増加により、前期比40億7千7百万円(14.7%)増の318億6千4百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 物流事業
・倉庫事業は、Cavalier Logisticsグループの通期寄与、医薬品、食品の取扱増加等により、営業収益は前期比2.0%増
・陸上運送事業は、電機設備、医薬品の取扱増加等により、同7.2%増
・港湾運送事業は、コンテナ貨物の取扱減少等により、同4.1%減
・国際運送取扱事業は、Cavalier Logisticsグループの通期寄与、輸出入貨物の取扱増加等により、同23.6%増
この結果、物流事業全体の営業収益は、前期比202億1千2百万円(9.3%)増の2,376億8千6百万円となりました。また営業費用は、Cavalier Logisticsグループの連結組入れに伴う諸費用のほか、人件費の増加等により、前期比209億5百万円(10.3%)増の2,238億2千3百万円となりました。このためセグメント利益(営業利益)は海上運賃単価の正常化等に伴う国際運送取扱事業の粗利益減少もあり、前期比6億9千2百万円(4.8%)減の138億6千2百万円となりました。
② 不動産事業
不動産事業の営業収益は、不動産(分譲マンション)販売収入の増加、芝浦ダイヤビルディング、神戸須磨シーワールドの新規施設稼働により、前期比91億7千5百万円(23.8%)増の477億7千6百万円となりました。また営業費用は、不動産販売原価の増加、新規稼働施設に係る不動産取得税等の一時費用計上により、前期比63億6千6百万円(23.0%)増の340億7千9百万円となりました。このためセグメント利益(営業利益)は、マンション販売事業における利益率向上もあり、前期比28億8百万円(25.8%)増の136億9千7百万円となりました。
なお、当社グループは経営計画[2022-2024]における最終年度業績目標として、営業収益2,600億円、営業利益200億円、ROE7%を掲げており、同計画最終年度に当たる当連結会計年度の経営成績については、営業収益2,840億6千9百万円、営業利益203億1千万円、経常利益186億2千万円、ROE8.2%となりました。
当社グループの主たる事業は、倉庫事業を中核とする物流事業及びビル賃貸を中心とする不動産事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難であります。
これに代えて、当連結会計年度におけるセグメント毎の主要業務の営業収益及び取扱高等を示すと、次のとおりであります。
① 総資産
政策保有株式の縮減・上場株式の時価減少等に伴い「投資有価証券」が減少したため、前期末比530億8千4百万円減の6,260億5千8百万円となりました。
② 負債合計
政策保有株式の縮減・上場株式の時価減少等に伴い「繰延税金負債」が減少したほか、償還に伴い「社債」が減少したため、前期末比206億5千6百万円減の2,467億8千2百万円となりました。
③ 純資産
政策保有株式の縮減・上場株式の時価減少等に伴い「その他有価証券評価差額金」が減少したため、前期末比324億2千7百万円減の3,792億7千6百万円となりました。
④ 自己資本比率
前期末を0.1ポイント上回る59.8%となりました。
⑤ 有利子負債
「社債」の償還等により前期末に比べ69億3千万円減少し、1,124億1千2百万円となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローの増加、投資活動によるキャッシュ・フローの増加、財務活動によるキャッシュ・フローの減少に現金及び現金同等物に係る換算差額(16億2千7百万円の増加)を加えた全体で25億6千2百万円の増加となり、現金及び現金同等物の期末残高は610億6百万円となりました。
なお、当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー(25億6千2百万円の増加)は、前期(38億5千3百万円の減少)に比べ、64億1千5百万円上回りました。
税金等調整前当期純利益、減価償却による資金留保等により、296億2千2百万円の増加となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前期(417億6千8百万円の増加)に比べ、121億4千5百万円下回りました。
固定資産の取得による支出、投資有価証券の取得による支出があったものの、投資有価証券の売却による収入、固定資産の売却による収入等により、155億円の増加となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前期(314億7千7百万円の減少)に比べ、469億7千8百万円上回りました。
自己株式の取得による支出、配当金の支払、社債の償還による支出等により、441億8千8百万円の減少となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前期(148億5千8百万円の減少)に比べ、293億3千万円下回りました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、財務健全性の維持を原則としつつ、運転資金並びに当社グループの成長、拡大を図るための設備投資資金については、主に事業活動から生じる自己資金で賄うほか、必要に応じて金融機関からの借入及び社債の発行により資金調達を行っております。なお、次期のキャッシュ・フローについては、次期の利益及び減価償却による資金の留保や投資有価証券の売却による収入等を見込む一方、成長投資のほか、配当金の支払い、自己株式の取得等が予定されるため、現金及び現金同等物の期末残高は、概ね当期末並みの水準になるものと予想しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
該当事項はありません。
該当事項はありません。