文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、事業環境が急速に変化する状況下において更なる飛躍を遂げ、持続的な成長を果たしていくためには、企業グループとしての存在意義を見つめ直す必要があるとの認識から、2022年5月に『グループ理念(PURPOSE、VISION、VALUES)』を制定しております。また、事業活動を通じて新しい価値を創出し、当社グループと社会の持続的成長を実現することを目的にマテリアリティを特定しており、これと連動する『中期経営計画2022』(2023年3月期~2027年3月期)を策定しております。
<グループ理念>
グループ理念を経営の最上位概念として位置付けた上で、本グループ理念のもとで特定したマテリアリティや中期経営計画に取り組むことで、中長期的な企業価値向上を図るとともに持続可能な社会を築き、ステークホルダーの皆様と社会の期待に応えてまいります。
<マテリアリティ>
当社グループのマテリアリティは、「価値創造の基盤維持・強化」に基づく6つのマテリアリティと、それらを通じて「企業価値・社会価値の創造」を実現する2つのマテリアリティの計8項目で構成されています(下記図①~⑧)。
特定したマテリアリティそれぞれにKPIを設定しており、取締役会監督のもと各担当組織が取り組みを実施することで、サステナビリティ推進と経営の一体化による企業価値の向上を目指してまいります。
<中期経営計画2022>
『中期経営計画2022』は、一気通貫の統合ソリューションサービスの構築、圧倒的な現場力の構築、ESG経営の推進など、従来より取り組んできた施策を「深化」させることで、持続的成長の実現を目指しております。本中期経営計画の5年間では、お客様から信頼されるファーストコールカンパニーとして、以下の成長戦略の柱のもと積極的な投資を行うとともに株主還元も強化してまいります。
成長戦略
① グループ総合力結集によるトップライン成長
当社独自のビジネスモデルである統合ソリューションサービスの深化、競争優位性のある提案力と実行力を備えたサステナビリティ対応ビジネスの拡大、グループの幅広い顧客基盤と各物流機能を最大限に活用した業際業務の深掘を推進します。
② オペレーションの競争力強化
徹底した標準化への取り組みを深化させることで、人の力とテクノロジーの力を融合した「圧倒的な現場力」を実現します。業務品質の向上による競争優位性を確保し、更にはオペレーションのローコスト化による収益性向上を目指します。
③ 深化を支える経営基盤の構築
以下の4つの側面から経営基盤の強化を図ります。
DX ビジネスモデルの変革や企業風土の改革
共創 イノベーションを生み出す仕組みづくりや各種プラットフォーマーとの提携強化
事業アセット オフィスビル/物流施設の新規開発、既存施設の資産価値向上、職場環境の改善
ESG 脱炭素社会実現への取組み強化、人的資本への投資拡充、ガバナンスの強化
財務戦略
・総額1,300億円の投資を実施
-DX投資、新規設備投資(物流/不動産)、M&Aなど成長領域への戦略投資に1,000億円
-通常投資(既存施設の維持/更新投資)に300億円
・配当性向30%を基準とした株主還元の強化
・最適D/Eレシオ1.0倍を基準とした調達と運用
・高水準な資本効率の継続を目指し、ROE12%超を目標に設定
数値目標(2027年3月末)
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営業収益 |
3,500億円 |
|
営業利益 |
230億円 |
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営業キャッシュ・フロー |
300億円 |
<考え方>
当社グループは、「物流」という重要な社会インフラを支える企業集団として新たな価値を創出することで、持続可能な社会の実現、企業価値の向上を目指しております。
1. 事業活動を通じて、人権、安全衛生、ダイバーシティ、環境負荷低減等の社会課題解決に取り組みます。
2. 社会から信頼される企業グループとしてあり続けるために透明性の高い経営を行います。
3. すべてのステークホルダーとの対話を通じ、健全な関係の維持、発展に努め信頼関係を構築します。
(1)ガバナンス
サステナビリティに関する推進体制としては、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会を中心として、経営会議、コンプライアンス委員会の3つの会議体が設置されており、各関係組織が執行を担うことによって、実効性の高いガバナンス体制を構築しています。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関する戦略・方針の検討やリスクマネジメント、各取り組みの実行管理を担っており、委員会のもとには、グループ横断的な3つの常設部会(人事部会、安全部会、環境部会)を設置しています。当社グループは中長期的に優先して取り組むマテリアリティを特定しており、上記の各部会はそれぞれ「人的資本経営の推進」、「安全・高品質な物流事業の追求」、「気候変動対応・資源循環の推進」に関するKPI推進のため、戦略立案及び目標達成に向けた施策の検討・進捗管理等を行っています。加えて、サステナビリティ委員会の議論・決定内容をグループ全体に共有するサステナビリティ連絡会、サステナビリティにおけるリスク及び機会分析により新たに対応が必要なテーマの検討を行う新規検討会を設置しています。
経営会議は、「持続可能で強靭な物流インフラの提供」、「社会課題解決につながる共創を通じたサービス・事業の創出」、「DXの推進」にかかるKPIを営業施策やDX推進施策等に落とし込み、議論を行っております。
コンプライアンス委員会は、「人権の尊重」に関連するKPIを推進しています。
取締役会は各会議体からの報告を受け、監督の観点から意見や助言を行うことで、サステナビリティ推進体制を管理しています。
なお、当社は国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(United Nations Global Compact)」に署名しており、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野から成る「国連グローバル・コンパクト10原則」に連結子会社を含むグループ全体で賛同し、グループCEO自らのコミットメントのもと、その実現に向けた努力を継続してまいります。
(2)戦略
当社グループはグループ理念に基づき、企業と社会のサステナビリティを両輪で追及する経営を中長期的に実践していくため、マテリアリティを特定しています。「企業価値・社会価値の創造」、「価値創造の基盤維持・強化」という大きく2つの枠組みで計8項目のテーマをマテリアリティとして整理しており、経営の基盤を強化し(6つのマテリアリティ)、価値を創造する(2つのマテリアリティ)ことで、当社グループ、そしてお客様や社会の持続的成長に繋げてまいります。なお、マテリアリティについては中期経営計画2022と連動し、経営との一体化を図りながら取り組みを推進しています。
[マテリアリティの特定プロセス]
不確実かつ複雑化する時代においても、中長期的な経営を実践していくため、2024年にマテリアリティを改定しています。外部有識者の意見を踏まえ、バックキャスト・フォアキャスト双方の観点を取り入れたうえで、2050年にありたい未来像を描き、その想定した未来を実現するため2035年に向けて取り組むべき重要な課題として再特定しました。特定プロセス及び短・中・長期それぞれの時間軸を考慮して抽出したリスクと機会は下記のとおりです。
|
項目 |
リスク |
機会 |
|||
|
2 0 3 5 年 の 動 向 |
サプライチェーンにおけるQCD+サステナビリティ |
従来型の保管・輸送に留まることによる競争力低下 |
長 中 |
• 専門ノウハウに基づく提案力と現場力の競争力向上 |
長 中 |
|
顧客のコア業務追求に伴う物流派生業務範囲の拡大 |
|||||
|
消費者ニーズや社会課題に対応した新たな価値・事業創出 |
|||||
|
現在の社会課題・要請 |
安全・レジリエントな物流事業の追求 |
対応できないことによる顧客や従業員の離反 |
中短 |
率先した取り組みや実績による顧客からの信頼向上、自社の事業継続性向上 |
長中短 |
|
気候変動対策の推進 |
対応できないことによる競争劣位・評価低下 |
長中短 |
• 自社も含めたサプライチェーンのレジリエンス向上 |
長中短 |
|
|
人的資本経営の推進 |
従業員の採用への影響、モチベーション低下 |
長中 |
優秀な人材確保、強い組織力によるサービス品質の向上 |
長中 |
|
|
人権の尊重 |
法令や顧客要請への対応が不十分なことによるレピュテーション低下・損害発生・対応コスト増加 |
中短 |
自社も含めたサプライチェーンのレジリエンス向上 |
中短 |
|
|
サプライチェーン上のサステナビリティ推進への貢献 |
対応できないことによる競争劣位・評価低下 |
長 中短 |
サステナビリティ推進サービスのニーズ拡大 |
長中短 |
|
|
情報・サイバーセキュリティの強化 |
顧客対応の遅れやセキュリティ事故による |
中短 |
新サービス開発や生産性向上による |
中短 |
|
|
ガバナンス |
不十分な対応によるレピュテーション低下・損害発生・対応コスト増加、企業価値の毀損 |
中短 |
• 顧客やステークホルダーからの信頼維持・向上 |
中短 |
|
※2035年の動向について”短期”は現状の経営に織り込んでいるため除外
※時間軸 短期:3〜5年程度、中期:10年程度、長期:30年超
[マテリアリティの取り組みに関する事業活動]
価値創造の基盤を強化し、企業価値・社会価値の創造に資する事業活動として、当社グループ独自のサービス「SustainaLink」を展開しております。本サービスはお客様のサプライチェーンを取り巻くリスクを「環境」、「労働力」、「自然災害」の3つの視点から分析し、「知る」、「可視化する」、「改善する」の3ステップでサプライチェーンの最適化を支援するものです。持株会社に専門部署を設け、事業会社と連携を図りながらグループ一体で推進しています。
(3)リスク管理
当社グループの事業活動におけるリスクの認識とその管理については「リスク管理規程」に定め、リスクの種類ごとに体制を整備し、リスク管理を実施しています。サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会主導のもと、リスクへの対応と最小化を目指し、リスク・機会の特定や分析・評価、グループ内での情報共有や、関係部署への対応指示、取締役会への報告が行われます。なお、当社グループの横断的なリスク評価および対応の推進については、持株会社に設置したリスク管理部が行うものとしています。
(4)指標及び目標
マテリアリティに対し主要な取り組みを評価するための経営指標として、以下の通りマテリアリティKPIと目標を設定しています。
|
マテリアリティ |
推進体制 |
KPI |
対象範囲 |
|||
|
社企 会業 価価 値値 の・ 創 造 |
持続可能で強靭な 物流インフラの提供 |
経営会議 |
• 中期経営計画2022営業収益・営業利益目標 |
•国内外 連結対象会社 |
||
|
社会課題解決につながる共創を通じたサービス・事業の創出 |
経営会議 |
• 中期経営計画2022営業収益・営業利益目標 • 新規サービス・事業の創出と拡大に向けた取り組み推進 |
•国内外 連結対象会社 |
|||
|
価値創造の基盤維持・強化 |
成長基盤 |
人的資本経営の推進 |
サステナビリティ 委員会 (人事部会) |
• 人材ポートフォリオの可視化 |
• グループ各社間交流の取り組み推進 |
• MSH※1 • 中核事業会社5社※2 |
|
DXの推進 |
経営会議 |
• DX対応システム数 |
|
• MSH※1 • 中核事業会社5社※2 |
||
|
安全・高品質な 物流事業の追求 |
サステナビリティ 委員会 (安全部会) |
• 労働災害発生度数率 前年度水準改善 |
|
• MSH※1 • 中核事業会社5社※2 |
||
|
社会基盤 |
気候変動対応・ 資源循環の推進 |
サステナビリティ 委員会 (環境部会) |
• CO2排出量:Scope1+2(2014年3月期比) |
• CO2排出量:Scope3 |
• MSH※1 • 中核事業会社5社※2 •丸協運輸 (大阪・愛媛) |
|
|
人権の尊重 |
コンプライアンス 委員会 |
• 当社グループにおける人権DD実施率 100% • 教育研修実施率の向上 |
|
•国内外 連結対象会社 |
||
|
事業基盤 |
ガバナンスの高度化 |
- |
- |
|
- |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
※1 MSH:三井倉庫ホールディングス(株) |
||||||
|
※2 中核事業会社5社:三井倉庫(株)、三井倉庫エクスプレス(株)、三井倉庫ロジスティクス(株)、三井倉庫サプライチェーンソリューション(株)、三井倉庫トランスポート(株) |
||||||
なお、各KPIの経年実績につきましては、
<個別テーマ>
(1) 気候変動対応
当社グループは気候変動を重要な経営課題の一つと認識し、当社グループ自身の温室効果ガス(GHG)排出量削減への取り組みと同時に、お客様をはじめとするバリューチェーン全体での脱炭素化へ貢献することが、グループの企業価値向上につながるという考えのもと、「気候変動対応・資源循環の推進」をマテリアリティのひとつとして特定しております。
また、当社は2021年9月にTCFD提言への賛同を表明し、従来の取り組みに加え、気候関連リスクや機会の特定、各体制を含めた情報開示の強化・拡充に取り組んでおります。
①ガバナンス
サステナビリティ委員会では、取締役会の監督のもと気候変動に関連するリスク・機会の特定や分析・評価を主導し、気候変動が当社グループの事業ヘ与える影響の把握や、その対応策に関する議論を行っております。その他気候変動・環境に関連する取り組みや詳細な議論については、サステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である環境部会において具体的な取り組みや管理指標の検討、実行管理を行い、責任者である管掌役員がサステナビリティ委員会に進捗状況の報告、提言を行う体制となっております。
②戦略
当社グループの事業に気候変動が与える影響について、複数の気候シナリオ(「1.5℃シナリオ」、「4℃シナリオ」)を用い、シナリオ分析を実施しております。バリューチェーン上で発生する気候変動の影響に関する想定をふまえ、リスク・機会の特定や分析・評価、対応策の検討をすることで、短期・中長期的な事業戦略に反映し、施策の推進をより効果的なものにしてまいります。
気候関連のリスク・機会と財務影響
●:リスク 〇機会
|
移行リスク・機会 |
財務影響 |
発現時期 |
対応策 |
|||
|
1.5℃ |
4℃ |
|||||
|
政策・ 法規制 |
● |
CO2排出量削減に関する税等規制 |
小-中 |
- |
中期 |
・ 輸送の効率化 ・ 車両のZEV化 ・ 省エネ設備、施策の推進 ・ 使用電力を抑えるオペレーションの推進 ・ 再生可能エネルギーの導入促進 ・ 委託先企業の選定 |
|
● |
冷媒規制 |
小 |
小 |
中期 |
||
|
● |
その他規制 |
- |
- |
長期 |
||
|
市場・評判 |
● |
委託先運送会社のエネルギー転換 |
小 |
小 |
短中期 |
|
|
● |
顧客動向(条件) |
大 |
小 |
短期 |
・ 既存顧客・潜在顧客の気候変動に係るニーズを捉え、SustainaLinkをはじめとした社会課題起点の物流ソリューションサービスの開発・推進 |
|
|
● |
顧客動向(取り扱い商品) |
大 |
大 |
中長期 |
||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
物理リスク |
財務影響 |
発現時期 |
対応策 |
|||
|
1.5℃ |
4℃ |
|||||
|
急性 |
● |
風水害激甚化(直接影響) |
小 |
小 |
中期 |
・風水害激甚化等の気候変動影響をリスクマネジメント項目に組み込み ・BCP、BCM対応の継続実施 ・安全な労働環境の実現 |
|
● |
評判(間接影響) |
小 |
大 |
短中期 |
||
|
慢性 |
● |
海面上昇 |
小 |
小 |
長期 |
|
|
● |
気温上昇 |
小 |
小 |
中期 |
||
[凡例]
大・中・小: 財務影響試算の結果をもとに定量及び定性評価
- : 潜在リスクはあるが、現在の情報では2030年時点で顕在化可能性が高くないもの
短期 : 3年程度
中期 : 2030年
長期 : 2050年以降
[1.5℃シナリオ]
2050年カーボンニュートラル実現のための政策・規制が強化され、炭素税等が導入される。また、消費者が脱炭素の動きを企業に対してより求めるようになり、B to B企業においてもCO2排出量削減等の気候変動への対応がより一層迫られる。
[4℃シナリオ]
炭素税等の導入はされず、自然災害が激甚化することで、より防災・BCPの対応が重視される。消費者の動向は現状と大きく変化せず、企業における気候変動対応についても現状の水準にとどまる。
それぞれのシナリオにおいてバリューチェーン上で発生する気候変動の影響を「消費者」、「顧客」、「当社グループ」、当社グループのサプライヤーである「委託先企業」のそれぞれについて検討し、リスク・機会の発現時期と定量・定性的な影響の試算を実施いたしました。
今回行った定量的な試算において、当社グループにとって最も影響が大きいのは1.5℃シナリオにおけるカーボンプライシング(炭素税の導入)ですが、総じて、気候変動による当社グループへの財務影響は小さく、当社グループは気候変動に対しレジリエントであると考えます。
なお、カーボンプライシング(炭素税の導入)の影響が顕在化することへの対応策としては、自社での排出量削減施策に加え、顧客や委託先企業と協働した排出量削減施策が有効であるため、今後はこれらの施策を推進してまいります。また、定量分析項目だけでなく、定性分析項目についても情報のアップデート・モニタリングを実施し、事業への影響を確認してまいります。
③リスク管理
気候変動に関連するリスクや機会については、サステナビリティ委員会の主導のもと、リスクへの対応とその最小化を目指し、リスク・機会の特定や分析・評価、グループ内での情報共有や、関係部署への対応指示、取締役会への報告が行われます。KPIの管理やデータの分析については、サステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である環境部会で実施しております。
④指標と目標
マテリアリティである「気候変動対応・資源循環の推進」を実現するために、当社グループでは気候変動を含む環境分野のKPIを定め、進捗を管理しています。温室効果ガス(GHG)排出量に関する指標と目標については、下記のとおりです。
|
対象 |
時期 |
目標 |
|
Scope 1 + 2 |
2026年3月期 |
CO2排出量 29%削減(2014年3月期比) |
|
2031年3月期 |
CO2排出量 50%削減(2014年3月期比) |
|
|
2051年3月期 |
ネットゼロ |
|
|
Scope 3 |
- |
自社及びお客様のサプライチェーン全体でのCO2排出量削減への取り組み推進 |
なお、温室効果ガス(GHG)排出量データに関する経年の実績や、他の環境に関連するKPIにつきましては、
(2) 人的資本
<考え方>
当社グループは、自らも進化しながら成長し、心豊かで持続可能な社会の実現を支える存在でありたいと考え ています。そのための原動力となるのが人材であり、価値創造の源泉です。グループの多様な従業員が、それぞれ自らの強みと役割を認識し、組織や企業の成長を支えています。従業員一人ひとりが、誇りと責任を持って生き生きと働き続けられる環境づくり、企業風土を醸成し、会社とともに成長し続ける環境を構築していきます。
<求める人材像>
「未来を描き、動き動かし続ける人」
私たちが考える「未来」とは、お客様の未来であり、当社グループの未来であり、私たちが生きている世界の未来までをイメージしています。「動き動かし続ける人」という言葉には、自ら主体的に動くことはもちろんのこと、他を巻き込んで動かし続けるという強い想いを込めています。仲間を動かし、お客様を動かし、物流を動かし、社会を動かす。そして、お客様の期待を超え、お客様の心までを動かす存在でありたいと考えています。
①ガバナンス
人事領域における課題やリスク対応について、サステナビリティ委員会主導のもと、人的リスクが当社グループの事業ヘ与える影響の把握や、その対応策に関する議論を行っております。その他人的資本に関連する取り組みや、詳細な議論についてはサステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である人事部会において具体的な取り組みや管理指標の検討、実行管理を行い、責任者である人事管掌役員がサステナビリティ委員会に進捗状況の報告、提言を行う体制となっております。
②戦略
当社グループのマテリアリティの1つに「人的資本経営の推進」を挙げたことに伴い、主な取り組みとして4つのテーマを設定しました。
1つ目は「グループ総合力を高める人材ポートフォリオマネジメントの強化」です。経営戦略の実現に向けて中長期的にどのような人材が必要なのかを定義し、現状とのギャップを見極め、具体的かつ有効な人材施策につなげていくことが不可欠だと考えています。2026年3月期は人材情報を可視化、一元化するために提出会社において、タレントマネジメントシステムを導入し、将来的には中核事業会社5社を含めたグループ共通の人材データ基盤を構築する計画です。
2つ目は「個の進化」です。従業員一人ひとりが成長し、進化することが当社グループの持続的成長につながるという考えのもと、人材の育成及び成長支援を積極的に行っています。施策の1つとして全従業員向けに自律的な学習を促すオンライン学習プラットフォームを2026年3月期より提出会社および中核事業会社5社にて導入いたします。
また、次世代の経営幹部育成を目的として、「三井倉庫カレッジ」を立ち上げるなど管理職層向けの研修や階層別、専門スキル別のさまざまな施策を実行しています。
3つ目が「共創力の強化」です。共創力の強化は、年齢や性別、キャリアに関わらず、強みを活かし、異な
る意見や考えをぶつけ合うことで新しい価値を創出し、社会やお客様に貢献する強い組織を創りあげることが
目的です。ただし、多様な価値観をもつ人材が活躍するためには共通の目的、指針が必要であり、これこそが当社グループの理念 であると考えています。これまでグループ全体で理念研修を行い、職場の従業員が将来の三井倉庫グループのあり方を考えながら理念について話し合う場を設けて参りましたが、研修だけで浸透するものではありませんので継続的に施策を行っています。以前より推進しているダイバーシティ&インクルージョンの取り組みにつきましては、2025年3月期より女性の育成を企図したメンター制度(役員が女性管理職をメンターとして支援)を実施しており、2026年3月期はスポンサーシップ制度(上長が管理職候補の女性社員を支援)の実施等、引き続き、女性活躍を積極的に進めていきます。
4つ目が「進化と共創の環境づくり」です。進化と共創を推進するためには、これらを支える強固な基盤が
必要です。その基盤を把握するためのツールが従業員エンゲージメントサーベイだと考えています。当社グループは従業員エンゲージメントサーベイを定期的に実施することで、従業員の会社の方針への理解や業務に対する熱意、会社への愛着度等を確認し、施策へと活かしています。さらに、経営幹部と従業員が直接対話する場としてタウンホールミーティングも2025年3月期より実施しており、従業員の率直な意見を会社施策に反映させることで従業員エンゲージメントの改善に寄与すると考えています。
また、これら全ての施策は、従業員が心身ともに健康であって初めて効果が発揮されるものと考え、積極的に健康経営の推進に注力しており、2024年3月期は提出会社として健康経営優良法人の認定を受け、2025年3月期も継続することができました。
③リスク管理
人的資本に関連するリスクや機会については、サステナビリティ委員会主導のもと、リスクへの対応と最小化を目指し、リスク・機会の特定や分析・評価、グループ内での情報共有や、関係部署への対応指示、取締役会への報告が行われます。KPIの管理やデータの分析については、サステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である「人事部会」で実施しております。
④指標と目標
|
主要テーマ |
KPI※1 |
24年3月期 実績 |
25年3月期 実績 |
目標 |
達成時期 |
|
(1)グループ総合力を高める人材ポートフォリオマネジメントの強化 |
人材ポートフォリオの 可視化 |
― |
― |
可視化 |
2031年3月期 |
|
(2)個の進化 |
|
10.9時間 |
|
|
|
|
|
4.4万円 |
|
|
|
|
|
(3)共創力の強化 |
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10.1% |
|
|
|
|
|
78.0% |
|
|
|
|
|
グループ各社間交流の 取り組み推進 |
― |
― |
取り組み 推進 |
2031年3月期 |
|
|
|
68 |
|
|
|
|
|
(4)進化と共創の環境づくり |
|
66 |
|
|
|
|
|
66.8% |
|
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※1 提出会社及び中核事業会社5社(三井倉庫㈱、三井倉庫エクスプレス㈱、三井倉庫ロジスティクス㈱、三井倉庫サプライチェーンソリューション㈱、三井倉庫トランスポート㈱)を対象範囲としております。
※2 2025年3月期の年間の外部委託研修費から算出しております。
※3 2025年3月31日時点によるものであります。
※4 2025年3月に調査・集計を行ったものによるものです。エンゲージメント測定ツールを利用し、中央値(スコア56)をベースにスコアの改善を目指しております。
(3)人権
<考え方>
当社グループは、社会におけるすべての人々の尊厳が守られ、権利が尊重されることが、すべての事業活動の基盤となる重要な要素と位置づけています。取り組みにあたっては、「国際人権章典」をはじめとする人権に関する国際規約を支持・尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「三井倉庫グループ人権方針」を策定し、それに基づき推進しております。
<推進体制>
当社グループは、取締役会の監督のもと、リスク管理部が主管部署となり、人権デュー・ディリジェンスをはじめとして人権尊重に関する具体的な取り組みや管理指標の検討および進捗管理を行っています。取締役会はこうした人権尊重に関する取り組みについてコンプライアンス委員会を通じて報告を受け、監督を行っています。
<具体的な取り組み>
①人権課題の特定
当社グループの事業活動によりステークホルダーの人権に及ぼす影響度を評価し、外部専門家と協議の上、重要な人権課題として「強制労働・児童労働の禁止」「あらゆる差別の禁止」「ハラスメントの禁止」「安全な労働環境の提供」「適正な労働時間管理」及び「外国人労働者の権利保障」を特定しております。
②人権デュー・ディリジェンスの実施
特定した人権課題を中心にリスクアセスメントを進めています。リスクアセスメントにあたっては2023年3月期以降毎年国内・海外の連結子会社を対象に人権デュー・ディリジェンスを行っており、人権に関する対応に重大な課題を抱えている会社や現時点で直ちにステークホルダーの救済が必要となる事実がないかを確認しております。また、2025年からは当社グループ内に限らず、サプライチェーン上の企業に対しても人権問題を含むESGに関するデュー・ディリジェンスを開始致しました。
③是正・救済・相談窓口(グリーバンス・システム)
人権にかかわる是正・救済については、外部の第三者機関に窓口を設置しております。現在は当社グループ従業員のみが対象となっておりますが、お客様・お取引き先企業を含むサプライチェーンにおけるすべての皆様にまで対象範囲を拡大予定です。人権に対する負の影響を引き起こしたこと、負の影響を助長したこと、その他負の影響に関与したことが明らかになった場合には、適切な手段を用いてその是正、救済に取り組んで参ります。
④教育・研修
人権課題の発生を未然に回避・予防し、その影響を緩和させることを目的に、人権に関する教育・研修をリスク管理部が主導するコンプライアンス研修等を通じて行っております。
当社グループは、日本、北米、欧州、北東アジア、東南アジアを中心に物流事業を行い、また日本において不動産事業を行っておりますが、これらの事業活動に影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、下記は当社グループの事業その他に関し、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。
(1) 経済環境の変化
当社グループの主たる事業である物流事業において、荷動きは、世界各国の景気動向の影響を受け、また社会情勢の不安定化によって影響を被る可能性があります。特に、主要な輸出入国である北米、欧州、日本、中国及び東南アジアの景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、在庫の減少、域内運送の減少、国際間輸送の減少や価格競争の激しいマーケットにおける収受料金の下落を招く可能性があります。
また、不動産事業においては、主な物件が首都圏に位置しており、特に首都圏の賃貸オフィス市場の需給バランスや市況動向の影響を受ける可能性があります。
(2) 公的規制の変化
当社グループは、事業を展開しております各国において、事業・投資の許可を始め、保管、作業、運送、通商、独占禁止、租税、為替管理、気候変動、環境、各種安全管理等の法的規制の適用を受けております。これらの規制を遵守するためコスト増加となる可能性があります。また、遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限され、事業及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 業界構造の変化
国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少等に起因し、産業界全体においてサプライチェーンを維持するために必要な人的リソースの不足が深刻化しており、これを背景にIoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーの利用が拡大しております。労働集約型である我々物流業においては、デジタル化・装置産業化が進展する中で、業種間の垣根が低くなり、異業種の参入を招くリスクがあると認識しておりますが、その一方で、機械と人の融合による「現場力」、お客様のサプライチェーンの高度化に資する「ソリューション提案力」、さらには、それを支える「人材」の重要性についても強く認識しております。
当社グループでは、圧倒的な現場力の構築をすべく、業務プロセスの見える化、標準化を進めることで物流品質の改善、底上げを図り、その上でIoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーを利用した省力化、省人化にも積極的に取り組んでおります。また、グループ連携を強化し、フルスペックの物流サービスによりお客様のサプライチェーンにおける課題解決に向けたソリューション提案を通じて他社との差別化を図っております。それらを下支えする人材については、「経営戦略を実行する人員体制の確立」「人材価値の最大化」を狙う人材戦略のもと、継続的かつ積極的な採用活動や、教育研修、従業員のモチベーション向上に取り組んでおります。それにもかかわらず、一連の取り組みが計画通り進捗しないことで、他社に対する優位性が低下した場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 為替レートの変動
当社グループの物流事業の売上のうち、国際間輸送では、US$建ての海上運賃、航空運賃が多くを占めております。従いまして、円建ての連結損益計算書では、円高は売上高の減少となります。
また、海外の連結子会社の売上高、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円貨換算されております。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨による価値が変わらなかったとしても、計上する円貨換算額が変動する可能性があります。
(5) 金利の変動
当社グループは、物流という社会インフラを支える企業の使命として、安定的に事業を継続するために、必要な設備の新規投資や更新を行っております。有利子負債の適正水準維持に努めるとともに、必要な設備資金及び運転資金は主として外部借入により調達しております。
固定金利による長期の安定的な資金調達を行っておりますが、金利の変動により、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。
(6) ESGの重要性の高まり
気候変動をはじめとする環境・人権などのESGに関する課題への対応の関心は、年々高まっております。これらの課題への取り組みが遅れた場合や対応を誤った場合には、レピュテーションの低下や投資対象からの除外など、当社グループの持続的成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「物流」という重要な社会インフラを支える企業として、ESGに関する課題に積極的に対応していくことが不可欠であると認識しており、グループ理念に基づき、「企業価値・社会価値の創造」、「価値創造の基盤維持・強化」という2つの枠組みで、中長期的に優先して取り組む8つのマテリアリティを特定し、それぞれにKPIを定めています。マテリアリティは、「企業価値・社会価値の創造」を実現するための2つのマテリアリティ『持続可能で強靭な物流インフラの提供』『社会課題解決につながる共創を通じたサービス・事業の創出』と、これらを持続的に推進するために必要な様々な経営基盤の維持・強化を実現する「価値創造の基盤維持・強化」の6つのマテリアリティ『人的資本経営の推進』『DXの推進』『安全・高品質な物流事業の追求』『気候変動対応・資源循環の推進』『人権の尊重』『ガバナンスの高度化』から構成されます。
当社グループは、これらのマテリアリティに基づき、ESGに関する課題への対応を経営の重要課題として位置づけ、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指してまいります。
(7) 災害や社会インフラの障害等の発生
当社グループでは、災害、戦争、テロ、感染症、その他の要因による社会的混乱の発生等に備えて損害を最小限に留めるために、日常点検・整備の実施、発生時の対応マニュアルの作成・更新、事前の訓練等必要な措置を講じておりますが、地震、風水害等の災害の発生、あるいは停電、通信回線の不通等の障害の発生による被害を完全に防止できる保証はありません。これらの被害が発生した場合、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、情報システム技術を利用して、顧客に物流情報等を提供しておりますが、災害、障害、あるいは事故、犯罪等の発生により、これらの情報提供サービスに支障が発生する可能性があります。
(8) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
当社グループは、北米、欧州、中国を始めとする北東アジア及び東南アジア、南アフリカ、南米で事業活動を行っておりますが、これらの地域への進出には以下に掲げるようなリスクが内在しております。
① 予期できない法律または規制の変更
② 事業活動に不利な政治または経済要因の発生
③ 未整備な社会インフラによる影響
④ 税制等の変更
⑤ 災害、戦争、テロ、感染症、その他の要因による社会的混乱
(9) システムに関するリスク
当社グループは、物流サービスを、より高品質で、より効率的に提供すべく、事業運営のシステム化を積極的に推進しておりますが、システムの高度化、各システム相互間の接続や通関性増加、あるいは社会一般的にサイバー攻撃が増加・巧妙化している中で、システム障害に関するリスクは年々高まっており、当該リスクを防止・低減させることも益々重要になっております。
このような状況に対して当社グループは、持株会社にグループ全体のシステム運営・管理を担う専門組織である情報システム部を設置し、システム障害発生を防止するとともに、障害発生時にはその影響を低減しつつ早期に復旧させられるよう、包括的・多面的なシステム運用体制を構築しています。また、社員教育の強化やシステム障害発生対応訓練の実施等、ソフト面での対応強化も行っております。
それにもかかわらず、社内要因(自社要因)、あるいはサイバー攻撃等の社外要因によりシステム障害が発生した場合には、物流サービスを提供することが困難となる可能性があります。
(10) 情報漏洩に関するリスク
当社グループは、事業活動を通じて取引先の機密情報やお客様の個人情報を保持しておりますが、情報全般の取り扱いに関する社会的な意識の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化等を踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっております。
当社グループでは、情報資産の保護、管理に関して、情報セキュリティ委員会を設置して情報漏洩防止、外部ネットワークからの不正侵入の防止等に関わる全社的対応策を実施しております。また、グループ全体のシステムを対象に継続的な点検を行い、システムの脆弱性を早期に検出して対応する等、情報漏洩を未然に防ぐ対応を実施しております。
しかしながら、情報が不正に外部流出した場合には、損害賠償請求を受けたり、各国政府から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下するといった可能性があります。
(11) 保有資産の時価の変動
保有資産の時価が大幅に下落し、かつ当該資産から十分なキャッシュ・フローが見込めない場合には、減損が発生する可能性があります。
また、投資有価証券に関しましても、市場価格のない株式等以外のものにつきましては時価が30%以上下落した場合に減損計上し、市場価格のない株式等につきましては当該会社の実質価額が50%以上下落し、かつ回復可能性が見込めない場合に減損処理しておりますので、将来の株式市場の変化または投資先の財務状況の悪化により減損が発生する可能性があります。
(12) 退職給付債務
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は退職給付債務については即時に認識され、退職給付費用は将来にわたって規則的に認識されるため、将来の費用に影響を及ぼします。
また、当社は、退職給付会計が導入された2001年3月期に退職給付信託の設定を行っており、毎期末の信託している株式の時価の変動により発生する数理計算上の差異につきましても、退職給付債務は即時に認識され、退職給付費用は将来にわたって規則的に認識されております。
従いまして、割引率の低下、運用利回りの悪化、あるいは信託株式の時価の低下は、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13) 固定資産の減損
当社グループは、有形・無形の固定資産を所有しております。
これらの資産については、その価値が下落した場合や期待通りの将来キャッシュ・フローが見込めない状況となった場合、減損処理が必要となり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14)借入金の財務制限条項
当社グループの借入金の一部については、シンジケートローン契約を締結しております。当該契約には、融資契約上の債務について期限の利益を喪失する財務制限条項が定められており、これに抵触した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(単位:百万円)
|
連結合計 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
260,593 |
280,742 |
20,148 |
7.7% |
|
営業利益 |
20,754 |
17,831 |
△2,922 |
△14.1% |
|
経常利益 |
21,010 |
18,037 |
△2,972 |
△14.1% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
12,107 |
10,040 |
△2,067 |
△17.1% |
・主に航空貨物輸送の物量が堅調に推移したこと、また新規物流拠点の業務開始による収益貢献が本格化したことにより、前期比増収となりました。
・一方、不動産事業では、主要ビルのマルチテナント化に伴う一時的な空室の発生により、前期比減益となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(イ)物流事業
(単位:百万円)
|
物流事業 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
251,817 |
275,071 |
23,254 |
9.2% |
|
営業利益 |
19,422 |
21,384 |
1,962 |
10.1% |
事業環境:当社を取り巻く事業環境は次のとおりであります。
・国際輸送の荷動きについては、自動車関連を中心に航空輸送の物量が堅調に推移しております。国内では電化製品や半導体関連を中心として堅調に推移しております。
・海上運賃は、紅海情勢の長期化等により前期比高水準で推移いたしました。航空運賃については、前期比概ね横ばいで推移いたしました。
営業の状況:当社の営業活動の状況は次のとおりであります。
・自動車関連の航空輸送の物量が堅調に推移し、取扱が増加いたしました。
・海外における自動車部品物流、国内におけるハイファッション物流、半導体物流、EC物流といった新規業務により取扱が増加いたしました。
・原価上昇への対応として、国内トラック輸送における積載効率向上に取り組み、収受料金の適正化もおこないました。
(ロ)不動産事業
(単位:百万円)
|
不動産事業 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
9,592 |
6,712 |
△2,879 |
△30.0% |
|
営業利益 |
5,942 |
2,161 |
△3,780 |
△63.6% |
事業環境:当社を取り巻く事業環境は次のとおりであります。
・東京ビジネス地区の既存オフィス物件の平均空室率は低下し、また平均賃料は微増となりました。
営業の状況:当社の営業活動の状況は次のとおりであります。
・当社所有のMSH日本橋箱崎ビルにおけるマルチテナント化に伴う一時的な空室の発生により前期比減収減益となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(単位:百万円)
|
連結合計 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期末比 |
増減率 |
|
自己資本 |
109,908 |
117,178 |
7,270 |
6.6% |
|
総資産 |
263,543 |
280,374 |
16,830 |
6.4% |
|
自己資本比率 |
41.7% |
41.8% |
+0.1ポイント |
0.2% |
|
有利子負債 |
83,265 |
87,615 |
4,349 |
5.2% |
|
D/Eレシオ |
0.76 |
0.75 |
△0.01 |
△1.3% |
・自己資本が増加した要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上と、保有株式の株価上昇にともなう有価証券評価差額金の増加によるものであります。
・総資産が増加した要因は、主にMSH日本橋箱崎ビルのバリューアップ工事の実施に伴う固定資産の増加によるものであります。
・有利子負債が増加した要因は、銀行借入によるものであります。
・D/Eレシオが1.0倍を下回る状態であるのは、今後の戦略投資実行に備えているものであります。
『中期経営計画2022』における経営上の数値目標の達成状況
|
|
目標(2027年3月末) |
実績(2025年3月末) |
|
営業収益 |
3,500億円 |
2,807億42百万円 |
|
営業利益 |
230億円 |
178億31百万円 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
300億円 |
219億1百万円 |
|
ROE |
12%超 |
8.8% |
当社グループは、2027年3月期を最終年度とする5ヵ年計画『中期経営計画2022』を策定しております。
目標達成に必要な対応につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(単位:百万円)
|
連結合計 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
33,417 |
30,876 |
- |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
23,176 |
21,901 |
△1,274 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△10,477 |
△15,596 |
△5,119 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△17,068 |
△2,627 |
14,441 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
30,876 |
34,652 |
- |
当期のキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
・営業活動によるキャッシュ・フローの主な内訳は、税金等調整前当期純利益、および、減価償却費の計上による資金留保であります。
・投資活動によるキャッシュ・フローの主な内訳は、MSH日本橋箱崎ビルのバリューアップ工事の実施による支出や、DX戦略に基づくソフトウェア投資、及び既存物流施設の維持更新投資であります。
・財務活動によるキャッシュ・フローの主な内訳は、配当金の支払であります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
(イ)契約債務
2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超 2年内 |
2年超 3年内 |
3年超 4年内 |
4年超 5年内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
6,470 |
6,470 |
- |
- |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
59,136 |
7,096 |
12,052 |
5,425 |
15,154 |
2,248 |
17,159 |
|
社債 |
16,000 |
- |
- |
6,000 |
- |
10,000 |
- |
|
リース債務 |
6,008 |
1,560 |
1,029 |
792 |
661 |
612 |
1,351 |
当社グループの第三者に対する保証は、従業員に対する銀行の住宅ローンに関する債務保証などです。保証した借入金の債務不履行が保証契約期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があります。2025年3月31日現在、当社グループの債務保証に基づく将来における潜在的な要支払額の合計額は9百万円であります。
このほか、 一部の物流施設の調達をオペレーティング・リース取引によって行っており、解約不能のものに係る未経過リース料は447億19百万円であります。そのうち166億54百万円相当については、契約期間及び契約面積が一致する転貸リース契約等を別途締結している顧客から、賃貸料として収受されます。
(ロ)財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金や社債及び借入により調達することとしております。借入による調達のうち、運転資金については期限が1年以内の短期借入金であり、当社及び一部の子会社が調達しております。これに対し、倉庫施設などの長期資金は、社債及び長期借入金で調達しております。2025年3月31日現在、長期借入金の残高は591億36百万円であり、無担保普通社債の残高は160億円であります。また、当社グループは、グループ会社が保有する資金をグループ内で効率よく活用するため、キャッシュマネジメントシステムを構築し運用しております。
当社グループは、営業キャッシュ・フローに加え、当座借越契約、コミットメントライン契約を締結し資金流動性を確保しており、当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び設備資金を調達することが可能と考えております。
『中期経営計画2022』における財務戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、最適DEレシオ1.0倍を財務規律とし、適切な財務レバレッジのもとで積極的な投資と株主還元強化の両立を目指します。
投資については、設備の維持更新等の通常投資に加え、DXや新規設備投資、M&Aなど成長領域への戦略投資を積極的に行ってまいります。
株主還元については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおり、連結配当性向30%を基準とする業績に連動した機動的な配当を実施する方針です。
また、経営指標としてROEを設定し、目標数値を12%超とすることで、現在の高水準な資本効率の維持を目指してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に係る会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」に記載しております。
当社経営陣は連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び評価を行わなければなりません。経営陣は、棚卸資産、貸倒れ、有価証券、有形固定資産、のれんを含む無形固定資産、法人税等、繰延税金資産、財務活動、退職給付、偶発事象、訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や現在の状況に応じ、合理的と考えられる基準・要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数値についての判断基礎となります。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当期の連結財務諸表を作成するにあたり、有形固定資産、のれんを含む無形固定資産等については、会計上の見積りを行う上で将来キャッシュ・フロー、資産の回収可能性等を検討するにあたり、入手可能な外部の情報等に基づき見積りを行っております。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、倉庫保管・荷役、港湾作業、国内運送及び国際輸送等の物流の各機能を有機的・効率的に顧客に提供する物流事業並びにビル賃貸業を中心とする不動産事業で構成されており、以下の2つを報告セグメントとしております。
・「物流事業」…倉庫保管・荷役、港湾作業・運送、海外における物流サービス・複合一貫輸送、航空貨物輸送、3PL、サプライチェーンマネジメント支援業務、陸上貨物運送等、様々な物流サービスを提供しております。
・「不動産事業」…ビル賃貸業を中心としたサービスを提供しております。
役務の提供を主体とする事業の性格上、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難でありますので、これに代えて、セグメント毎の主要業務の営業収益及び取扱高等を示すと、次のとおりであります。
(イ)セグメント毎の主要業務の営業収益
|
セグメント |
営業収益(百万円) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減額(百万円) |
比率(%) |
|
|
物流事業 |
|
|
|
|
|
(倉庫保管) |
37,680 |
38,998 |
1,318 |
3.5 |
|
(倉庫荷役) |
33,178 |
38,519 |
5,340 |
16.1 |
|
(港湾作業) |
16,854 |
16,548 |
△306 |
△1.8 |
|
(運送) |
119,707 |
133,581 |
13,874 |
11.6 |
|
(その他) |
44,396 |
47,423 |
3,027 |
6.8 |
|
計 |
251,817 |
275,071 |
23,254 |
9.2 |
|
不動産事業 |
|
|
|
|
|
(不動産賃貸) |
9,592 |
6,712 |
△2,879 |
△30.0 |
|
計 |
9,592 |
6,712 |
△2,879 |
△30.0 |
|
セグメント間取引消去 |
△816 |
△1,041 |
△225 |
- |
|
合計 |
260,593 |
280,742 |
20,148 |
7.7 |
(注) セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(ロ)セグメント毎の主要業務の取扱高等
|
セグメント の名称 |
業務の種類 |
取扱高等 |
||
|
区分 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
物流事業 |
倉庫保管 |
国内平均保管残高(千トン) |
453 |
435 |
|
国内貨物回転率(%) |
26.6 |
26.5 |
||
|
所管面積(千㎡) |
1,211 |
1,243 |
||
|
倉庫荷役 |
国内入庫高(千トン) |
1,431 |
1,386 |
|
|
国内出庫高(千トン) |
1,459 |
1,378 |
||
|
港湾作業 |
CT作業取扱高(TEU) |
930,979 |
979,440 |
|
|
運送 |
(国内運送) |
|
|
|
|
国内コンテナ運送取扱高(本数) |
161,123 |
186,775 |
||
|
(国際運送NVOCC) |
|
|
||
|
取扱高(TEU) |
54,990 |
59,330 |
||
|
(陸上貨物運送) |
|
|
||
|
貸切輸送(千トンキロ) |
523,840 |
511,573 |
||
|
取扱数量(千個) |
32,456 |
32,262 |
||
|
(航空貨物輸送) |
|
|
||
|
取扱高(トン数) |
33,348 |
37,453 |
||
|
(3PL) |
|
|
||
|
取扱個数(千個) |
99,878 |
91,415 |
||
|
(サプライチェーンマネジメント支援) |
|
|
||
|
販売物流入出庫高(千㎥) |
315.5 |
258.2 |
||
|
不動産事業 |
不動産賃貸 |
賃貸面積(千㎡) |
161 |
134 |
|
(注) 貨物回転率= |
(年間入庫高+年間出庫高)×1/2 |
× 100 |
|
月末保管残高年間合計 |
(2) 次期の見通し
ⅰ 全般の見通し
(単位:百万円)
|
連結合計 |
2025年3月期 実績 |
2026年3月期 予想 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
280,742 |
294,000 |
13,257 |
4.7% |
|
営業利益 |
17,831 |
20,000 |
2,168 |
12.2% |
|
経常利益 |
18,037 |
19,500 |
1,462 |
8.1% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
10,040 |
10,200 |
159 |
1.6% |
ⅱ セグメント別の営業利益の見通し
(単位:百万円)
|
セグメント別営業利益 |
2025年3月期 実績 |
2026年3月期 予想 |
前期比 |
増減率 |
|
物流事業 |
21,384 |
22,800 |
1,415 |
6.6% |
|
不動産事業 |
2,161 |
3,500 |
1,338 |
61.9% |
|
全社費用・消去 |
△5,715 |
△6,300 |
△584 |
- |
|
連結合計 |
17,831 |
20,000 |
2,168 |
12.2% |
・物流事業の荷動きが底を打ち徐々に取扱量が上向くこと、加えて新規業務の拡大を見込み、増収を計画しております。
・航空輸送については、堅調な物量を計画し、航空運賃も安定的な横ばい推移を見込んでおります。
・為替の変動、労働力不足、資源価格の高止まり等を背景とした各種原価の上昇圧力が引き続き想定される事から、物流拠点運営や輸配送の効率化・作業効率化や適正料金収受の取組による収益性改善に取り組む方針であります。
・不動産事業は、主に、マルチテナント化したMSH日本橋箱崎ビルへの新規テナント入居により、増収増益の見通しとなっております。
・全社費用としてDX投資の実行に伴う費用等の発生や、人的資本投資のための戦略的費用増を見込んでおります。
・米国の関税政策による業績への影響は現時点で見積ることが困難であり、業績予想には織り込んでおりません。今後の政策動向次第では業績予想が変動する可能性があり、修正の必要が生じた場合には速やかに開示いたします。
該当事項はありません。
なお、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日内閣府令第81号)附則第3条第4項の規定により、2024年4月1日前に締結した契約については、記載を省略しております。
特記事項はありません。