当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
今後のわが国経済は、雇用・所得環境の改善や企業業績の持ち直しを背景として、緩やかな回復基調が続くことが見込まれます。一方で、物価上昇や人手不足等、経済活動に与える下押し要因に加えて、米国の保護主義的な通商政策による国際貿易の不透明感や景気鈍化への懸念が高まっております。
このような事業環境のもと、当社グループは、澁澤倉庫グループミッション「物流を越えた、新たな価値創造により、持続可能で豊かな社会の実現を支えること」のもと、「Shibusawa 2030 ビジョン」にて「お客さまの事業活動に新たな価値を生み出す Value Partner」の実現を目指してまいります。
事業の競争力強化とサービス領域の拡大とともに、持続的な価値向上のためのESG経営の確立に取り組み、当社グループが共有する価値観である、創業者の精神「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」を体現する企業であり続けてまいります。
「Shibusawa 2030 ビジョン」の実現に向けては、以下の諸施策に取り組んでまいります。
(1) 強みを深化させたカテゴリーNO.1の物流サービスを確立します。
(2) 物流の枠を超えたアウトソーシングサービスを事業の柱に育てます。
(3) スマートで強靭な不動産ポートフォリオを確立します。
(4) ステークホルダーとの共存共栄の関係を進化させます。
(5) 多様な人材が働き甲斐を感じる労働環境、企業風土を確立します。
(6) 実効性のあるコーポレートガバナンスの確立に取り組みます。
併せて、中期経営計画「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2026」で掲げた事業戦略に基づき、以下の課題に取り組んでまいります。
(1) 物流事業の収益力強化
(2) 国内/海外における物流ネットワークの拡充
(3) 物流の枠を超えた業域の拡大
(4) 不動産ポートフォリオの拡充
(5) ESGへの取組み強化
当社グループでは、事業の成長は堅固な経営基盤の上に成り立つとの認識から、健全な財務体質の維持向上、事業インフラの整備に取り組むとともに、コンプライアンスの徹底、コーポレートガバナンスの強化により経営品質を向上させてまいります。加えて、サステナビリティ推進基本方針を策定し、以下の6項目をマテリアリティ(重要課題)と定めております。
(1) 地球温暖化の防止
(2) 循環経済への転換
(3) 安全・安心の実現
(4) イノベーションの活用
(5) 人権の尊重
(6) 共存共栄の追求
当社グループのみならず社会にとっても持続可能な成長につながる課題の解決に事業活動を通じて取り組むことにより、企業価値を向上させてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方およびサステナビリティ関連のリスク・機会に対処するための取組みは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ課題全般
① ガバナンスおよびリスク管理体制
i)組織体制
当社は、サステナビリティを巡る課題の解決に取り組むため、次のとおりのガバナンス体制・リスク管理体制を構築しております。
取締役会は、年1回または必要に応じて、サステナビリティを巡る課題に対する取組みについて議論し、サステナビリティ推進基本方針や、マテリアリティ(重要課題)に関する数値目標などの重要事項を決議し、その執行を監督します。
サステナビリティ推進委員会は、取締役社長を委員長として、サステナビリティ推進基本方針や、マテリアリ
ティ(重要課題)に関する目標の設定と重要事項の立案を行うとともに、サステナビリティに関する全社的な取組みを指導・監督しつつ、サステナビリティに係るリスクを識別・評価し、これらを取締役会に報告します。
また、サステナビリティ推進室は、サステナビリティ推進委員会の監督・指導のもと、当社グループのサステナビリティ推進に関わる事項について、適切な対策を遂行し、関係会社を含む各事業部門に指示・指導を行うとともに、目標の達成状況のモニタリングと、必要な改善策の策定と実行を行い、重要事項や行動計画をサステナビリ
ティ推進委員会に報告します。
当社のグループのサステナビリティ推進に関するガバナンス体制・リスク管理体制は以下に示すとおりです。
ⅱ)役員の保有する知見・経験
当社の経営戦略に照らして必要なスキルは、①企業経営、②事業戦略・M&A、③物流DX、④グローバルビジネス、⑤不動産、⑥サステナビリティ・ESG、⑦人事・労務、⑧財務・会計、⑨法務・コンプライアンス・内部統制と考えております。
個々の役員は、有する知見・経験に基づき各分野に適切に配置しております。サステナビリティに関するスキルについて、取締役は一定の知見を有しております。
ⅲ)サステナビリティに関する会議体の審議状況
・2024年度の取組みに関するサステナビリティ推進委員会での審議
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開催年月 |
審議内容 |
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2024年3月 |
マテリアリティに関するKGI、KPI、目標の見直し・開示について審議 |
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2024年7月 |
2023年度各種ESGデータおよび目標進捗について報告 |
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2024年11月 |
TCFDレポートの更新について審議 |
・2024年度の取組みに関する取締役会での決議・報告
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開催年月 |
決議・報告内容 |
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2024年3月 |
マテリアリティに関するKGI、KPI、目標の見直し・開示について決議 |
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2024年7月 |
2023年度各種ESGデータおよび目標進捗について報告 |
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2024年11月 |
2023年度Scope3排出量について報告 |
|
2024年12月 |
TCFDレポートの更新について報告 |
② 戦略および指標・目標
当社グループでは、「物流を越えた、新たな価値創造により、持続的で豊かな社会の実現を支えること」をグループミッション、果たすべき社会的使命と規定しております。また、サステナビリティ推進基本方針において「地球温暖化の防止」「循環経済への転換」「安全・安心の実現」「イノベーションの活用」「人権の尊重」「共存共栄の追求」の六つをマテリアリティ(重要課題)として特定し、事業活動を通じてその解決に貢献することとしております。
当社グループは、私たちのみならず社会にとっても持続可能な成長につながるマテリアリティの解決に事業活動を通じて取り組むことにより、企業価値を向上させてまいります。
ⅰ)マテリアリティの設定
当社グループのマテリアリティは、社内での知見に基づいて当社の事業環境や社会に与える影響等を考慮したうえで、さらに社外の知見者の意見も含めて総合的に判断し、サステナビリティ推進委員会で討議の上立案、社外取締役を除く上級執行役員以上で構成される経営執行会議の先議を経て、取締役会で決議・承認されています。またマテリアリティやそれに基づくKPI等は、定期的に見直しを検討し、変更のある場合は取締役会での決議がなされます。
ⅱ)マテリアリティに対する取組みと指標
マテリアリティ(重要課題)に対処するための取組みと指標は次のとおりです。
なお、評価指標に対する2024年度の実績値につきましては、当社コーポレートサイトおよび統合報告書にて2025年度に掲載を予定しております。
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マテリアリティ |
地球温暖化の防止 |
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優先する取組み |
物流事業における温室効果ガスの削減 環境配慮型施設へのバリューアップ |
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目指す姿(KGI) |
環境負荷低減に貢献する企業 2030年度営業収益あたりCO2排出量 2019年度比50%削減 |
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評価項目 |
倉庫業務におけるCO2排出量削減 陸運業務におけるCO2排出量削減 不動産事業における再生可能エネルギー導入 |
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評価指標 (達成期限 2026年度) |
事業所面積あたりCO2排出量 2019年度比40%削減(注)1 フェリー・鉄道輸送の取扱いコンテナ数 2023年度比30%増加 再生可能エネルギー導入率 100%(注)2 |
(注)1.当社物流事業所におけるCO2排出量を対象としています。
2.当社賃貸オフィスビル(茅場町・永代・蛎殻町地区)の電力を対象としています。
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マテリアリティ |
循環経済への転換 |
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優先する取組み |
循環経済(サーキュラーエコノミー)転換への貢献 |
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目指す姿(KGI) |
循環経済転換に貢献する企業 |
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評価項目 |
循環経済転換に対する貢献 |
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評価指標 (達成期限 2026年度) |
保管文書のリサイクル取扱い量 2023年度比20%増加 フォークリフト電池の二次利用方法の確立 テスト実施 |
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マテリアリティ |
安全・安心の実現 |
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優先する取組み |
安全安心な物流事業の運営 レジリエントな事業運営体制の構築 |
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目指す姿(KGI) |
安全な事業運営による安心な社会の実現 |
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評価項目 |
社会に対する安全安心向上 事業内における安全安心向上 |
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評価指標 (達成期限 2026年度) |
物流業務における交通事故件数 事故ゼロ 労働災害度数率 2023年度比3%削減 |
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マテリアリティ |
イノベーションの活用 |
|
優先する取組み |
物流事業の生産性向上と業域の拡大 |
|
目指す姿(KGI) |
事業の競争力強化と持続可能な社会の実現 |
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評価項目 |
技術導入による業務効率化 |
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評価指標 (達成期限 2026年度) |
技術導入による業務効率化推進の新規案件数 期間累計20件(注)3 |
(注)3.期間累計の目標は2024年4月から2027年3月までを対象期間とします。
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マテリアリティ |
人権の尊重 |
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優先する取組み |
ダイバーシティの推進 労働環境の改善 |
|
目指す姿(KGI) |
多様な人材が集い活躍する環境の創出 |
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評価項目 |
ダイバーシティの推進 人財への積極投資 |
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評価指標 (達成期限 2026年度) |
従業員エンゲージメントの肯定的回答率 2023年度比増加 高ストレス者比率 7%以下 人権DD対象会社数(人権DDの精度向上) 200社以上 |
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マテリアリティ |
共存共栄の追求 |
|
優先する取組み |
パートナーシップ強化によるサプライチェーンの進化 地域コミュニティ発展への貢献 災害支援 |
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目指す姿(KGI) |
パートナー企業や地域社会との共存共栄 |
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評価項目 |
事業パートナー・地域コミュニティとの連携強化 |
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評価指標 (達成期限 2026年度) |
パートナーミーティングの開催 期間累計10回(注)4 社会活動への協働 期間累計15件(注)4 |
(注)4.期間累計の目標は2024年4月から2027年3月までを対象期間とします。
(2) 気候変動
当社グループは、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表した提言に沿った形で適切な情報開示を行います。
また、当社グループはガバナンス体制を強化するとともにグループ事業における気候変動が及ぼすリスクと機会による影響について毎年分析を行い、当社グループのみならず社会にとっても持続可能な成長につながる課題の解決に事業活動を通じて取り組み、企業価値を向上させてまいります。
① ガバナンスおよびリスク管理体制
気候変動に関するガバナンスおよびリスク管理体制は、サステナビリティ課題全般のガバナンスに組み込まれております。詳細は「(1) サステナビリティ課題全般 ① ガバナンスおよびリスク管理体制」をご参照ください。
② 戦略
当社グループでは、シナリオ分析を活用し、当社グループの事業活動に中長期にわたって影響を与えると想定される気候変動に起因する重要なリスクと収益機会をサステナビリティ推進委員会にて特定、評価するとともに、対応策を検討しております。
シナリオ分析におきましては、主要事業地域である日本国内を中心に、連結子会社を含めて、4℃シナリオ、1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)の2つのシナリオで「Shibusawa 2030 ビジョン」でも指標としている2030年を想定し、次のとおり考察いたしました。
・リスク
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分類 |
種類 |
項目 |
時間軸 |
想定されるリスク |
影響度 |
|
|
1.5℃ |
4℃ |
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|
移行 |
政策・法規制 |
炭素価格の上昇 |
中期 |
事業活動に伴うCO2排出量に対して炭素税が課され操業コストが増加する。 |
大 |
中 |
|
化石燃料の使用に関する規制 |
短期 |
物流事業および不動産事業の環境性能向上(非化石燃料車両導入・ZEB化)に係るコストが増加する。 |
||||
|
省エネ政策 |
短期~長期 |
保有不動産のZEB化対応費用や自社車両のxEV化、定温倉庫における脱炭素型機器への転換に伴う設備投資額が増加する。 |
||||
|
排出権取引 |
中期 |
排出権取引制度の拡大に伴い、CO2排出量上限超過分の排出権の購入が迫られるなど、対応コストが発生する。 |
中 |
小 |
||
|
リサイクル規制 |
梱包資材や廃棄物に対する規制準拠のため、仕分け・加工(ラベルはがし等)や廃棄しないためのリース・レンタル品導入等を行うことによるコストが増加する。 |
|||||
|
再エネ政策 |
再生可能エネルギーへの電力構成切り替え等の国家方針に伴い、需要変化や発電所の発電コスト増に伴い電力価格が高騰する。 |
|||||
|
市場 |
エネルギーコストの変化 |
中期 |
・再生可能エネルギーへの需要増加等により、電力価格が高騰する。 ・化石燃料価格上昇に伴う主因のエネルギー調達費用高騰分を物流サービスへ転嫁した場合に需要が減少する。 |
中 |
小 |
|
|
評判 |
顧客の評判変化 |
短期 |
環境への取組みが不十分であると判断された場合、他サービスへの顧客流出に繋がる可能性がある。 |
大 |
中 |
|
|
投資家の評判変化 |
環境配慮・環境情報開示が不十分な場合、調達資金の減少及び資金調達コストが増加する。 |
|||||
|
物理 |
急性 |
異常気象の激甚化 |
中期~長期 |
・気象災害の激甚化による拠点の被災やサプライチェーンの寸断による営業停止損失が発生し、また、火災保険料が高騰する。 ・受託貨物への損害や事業停止による顧客からの評判が低下する。 ・災害リスクが高い地域に位置する保有資産の価値が減少する。 ・協力会社・貨物・テナントおよび第三者への損害に関する訴訟リスクが発生する。 |
中 |
大 |
|
慢性 |
平均気温の上昇 |
中期~長期 |
ヒートストレスによる労働生産性低下を防止するため、施設の空調設備や遮熱設備を導入することによりコストが増加する。 |
小 |
中 |
|
|
降水・気象パターンの変化 |
短期~長期 |
大雪や大雨など、気象の極端化に伴う交通機関の乱れが発生し、輸送遅延やキャンセル、道路や鉄道の冠水による物流ルートの遮断が発生し、収益機会が減少する。 |
||||
|
海面上昇 |
長期 |
浸水被害の増加による保有資産への損害が発生する。 |
小 |
小 |
||
・機会
|
分類 |
種類 |
項目 |
時間軸 |
想定されるリスク |
影響度 |
|
|
1.5℃ |
4℃ |
|||||
|
移行 |
政策・法規制 |
省エネ政策 |
短期~長期 |
・倉庫・物流センターのエネルギー効率向上(省エネ化)に伴いエネルギーコストが減少する。 ・環境負荷の低いモーダルシフトの利用増加により、収益機会が増加する。 |
大 |
中 |
|
リサイクル規制 |
中期 |
循環型社会への移行に伴い、紙資源の回収・溶解処理を行う文書保管サービスの収益機会が増加する。また、資源の回収および運搬に伴う物流増加により、収益機会が増加する。 |
中 |
小 |
||
|
技術 |
低炭素技術の進展 |
中期 |
・スワップボディコンテナ車両等の輸送効率手段の導入により人件費コストが削減される。 ・低炭素型ディーゼルトラック車両などの省エネ車両導入により燃料コストが削減される。 |
小 |
小 |
|
|
次世代技術の進展 |
無人フォークリフト・自動保管ラックなど、荷待ち・荷役時間短縮に向けた自動化・機械化設備導入により操業コストが減少する。 |
|||||
|
評判 |
顧客の評判変化 |
短期 |
・保有不動産において、CASBEEやZEBなど低炭素認証制度を取得することにより、環境意識の高い企業の選好度が高まり、収益機会が増加する。 ・鉄道やフェリー輸送などのエネルギー効率の高い輸送形態の拡大や、モーダルシフトの推進、リニューアブル燃料を使用したトラック輸送など、GHG排出量を従来より抑制することが可能な環境配慮型事業を行うことにより収益が増加する。 |
大 |
中 |
|
|
投資家の評判変化 |
環境配慮・環境情報開示が進んでいる場合、資金調達コストが減少する。 |
|||||
|
物理 |
急性 |
異常気象の激甚化 |
中期~長期 |
被災拠点の操業を持続するため、BCP対策を推進し、有事における安全確実な事業継続体制を確立することで、結果的に相対的な競争力強化となり、収益機会が増加する。 |
中 |
大 |
|
慢性 |
平均気温の上昇 |
中期~長期 |
気温上昇により、夏季型飲料貨物の取扱い量が増加することによって、収益が増加する。 |
小 |
中 |
|
|
降水・気象パターンの変化 |
短期~長期 |
極端な気象現象が発生した場合に備え、多様な運送ルートを整備しておくことで事業継続が可能となり営業停止損失を回避できる。また、競合との差別化により収益機会の増加にも繋がる。 |
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|
影響度の定義 「大」:財務的影響が大きい 「中」:財務的影響が不明 「小」:財務的影響が小さい
|
|
時間軸の定義 「短期」:~3年 「中期」:4~10年 「長期」:11年~30年
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(注)1.移行リスクとは、低炭素経済への移行に伴い、GHG排出量の大きい金融資産の再評価によりもたらされるリスクです。
2.物理リスクとは、洪水や高潮、暴風雨等の気象現象によってもたらされる財物損害等の直接的なインパクトリスクです。
3.評価(大・中・小)は、定性的に分析し、相対的な影響度として評価しています。
4.4℃シナリオとは、気候変動対策が現状から進展せず、地球の平均気温が産業革命以前と比較して2100年時点で約4℃上昇するとされているシナリオです。異常気象の激甚化など、物理的な損害が大きくなる一方、気候変動対策としての法規制は現行から変わらないとされています。(参考シナリオ:IEA Stated Policies Scenario)
5.1.5℃シナリオとは、カーボンニュートラル実現を目指した積極的な取組みが活発化し、地球の平均気温が産業革命以前と比較して、2100年時点で約1.5℃の上昇に抑えられるとするシナリオです。異常気象の激甚化は4℃シナリオと比べ抑制される一方、気候変動対策としての法規制は現行から大きく強められるとされています。(参考シナリオ:IEA Net Zero Emissions by 2050、一部Sustainable Development Scenarioも併用)
これらのリスク・機会は環境省発行のガイダンス「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」記載の下記手順に沿ってシナリオ分析を実施いたしました。
|
リスク重要度評価 |
→ |
シナリオ群の定義 |
→ |
事業インパクト評価 |
→ |
対応策の定義 |
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気候関連リスク・機会を洗い出し、定性的に影響の考察を行う |
|
シナリオを参照し、将来情報の入手および影響の具体化を行う |
|
将来予測値を参考に財務的な影響額を試算する |
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評価されたリスクや機会に対し、対応方向性および施策を検討する |
この気候変動への対応として、GHG排出量およびエネルギー使用量の削減・効率改善のため、また収益機会の創出のため、当社グループでは様々な取組みを行っております。
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リスク項目 |
対応の方向性 |
具体的な対応策(機会の創出) |
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炭素価格の上昇・GHG排出規制の強化・再エネ/省エネ政策への移行 |
・脱炭素化の推進 |
・モーダルシフトの推進・倉庫の大型化による拠点集約や、最適立地への配置を通じた物流効率化を推進する。 ・太陽光発電による再生可能エネルギーを利用する。 ・創電設備の設置を進める。 |
|
再エネ/省エネ/次世代技術の普及 |
・施設運営を省エネ化する。(太陽光パネル、BEMS、LED等省エネ機器の導入) ・低GHG排出への投資を促進する制度の運用による環境技術導入を推進する。 |
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社会からの評価 |
・気候変動ソリューションの創出と発信 |
・ステークホルダーへの情報発信を強化する。 |
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異常気象に起因する自然災害の激甚化 |
・施設の強靭化 ・防災/減災対策の強化 ・運送システムの多様化 ・BCPを考慮した施設の立地 |
・台風や豪雨を想定した定期的な施設の点検・補修を実施する。 ・BCPの定期的なアップデートと訓練の実施・モーダルシフト運営体制の強化を行う。 ・被災リスクを考慮した新規施設の開発を進める。 |
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平均気温の上昇 |
・職場環境の改善・省力化の推進 |
・快適な作業環境を整備する。 ・DXの推進等による省力化・省人化を推進する。 |
③ 指標・目標
当社グループでは、気候変動が経営に及ぼすリスクと機会等の影響を測定・管理するため、温室効果ガス(GHG)排出量に関連する以下の指標を設定しています。
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2026年度目標 |
2030年度目標 |
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・物流事業所面積あたりのCO2排出量 2019年度比40%削減 ・フェリー・鉄道輸送の取扱コンテナ数 2023年度比30% ・不動産事業の再生可能エネルギー導入率 100%達成 |
営業収益あたりのCO2排出量 2019年度比50%削減 |
(3)人的資本
① 戦略
当社グループは、長期的に人材が活躍できる経営基盤を確保するため、多様な人材の採用を継続的に行い、それぞれの能力を最大限に発揮できる職場環境の整備や人材育成への取組みが重要と考えています。
2030年に当社が目指す姿として「Shibusawa 2030 ビジョン」を制定し、多様な人材が働き甲斐を感じる労働環境や企業風土の確立により企業価値を向上させることを目指す姿と定めています。この「Shibusawa 2030 ビジョン」を具現化するため、人材育成方針、社内環境整備方針を以下のとおり定めています。
・人材の育成に関する方針
お客さまや社会の変化に伴い、わたしたちのビジネスは日々変化しています。コーポレートスローガン「永続する使命。」を果たし続けるためには、わたしたち一人ひとりと組織とがともに成長しあう好循環を継続し、挑戦を続けていく必要があります。
OJTとジョブローテーション、各種指名研修による人材教育とともに、自身のキャリアを見据えて学ぶ意欲のある人に公平で持続的な能力開発の機会を提供し続けます。また、成長に向けた努力や挑戦が正当に評価され、更なる成長を後押しする評価制度を整備します。そして、自律的な人材が互いの成長をサポートし協力し合う企業風土の醸成に取り組んでまいります。
・社内環境整備に関する方針
多様な価値観を尊重し、ワークライフバランスの推進、健康経営などに取り組むことで、性別、年齢、国籍、障がいの有無などにとらわれず、誰もが心身ともに健康で、安全かつ安心して活き活きと働ける社内環境を整備してまいります。
以上の方針を踏まえた具体的な取組みは以下のとおりです。
・人的資本経営の基盤構築
従業員エンゲージメントを高め、組織全体の力を最大限に引き出すための基盤構築に注力しています。その取組みとして、2023年度より対面型のタウンミーティングを全国で展開し、従業員との対話を通じて率直な意見や建設的な提案を聞き取り、組織全体の意思決定に反映させるとともに、人事諸施策の改善につなげる活動も推進しています。加えて、年に一度の自己申告制度において、現在の担当職務への意欲・適性、将来へのキャリア意向、職場環境に対する意見等を申告してもらい、これにより、適材適所の人材配置、キャリア開発、そして環境整備に役立てています。さらに、2024年度に導入したタレントマネジメントシステムを活用することで、従業員のスキル、経験、能力、キャリア志向などの情報を一元的に管理し、個々の従業員の能力を最大限に活かせる最適な人材配置や育成計画の策定、さらには組織全体の戦略的な人材マネジメントの実現を目指しています。また、エンゲージメントサーベイを年1回定期的に実施し、経年比較および部門、従業員の属性比較を行っています。これらの客観的な結果に基づき、制度や企業風土の改善、従業員エンゲージメントのさらなる向上に資する取組みを進めてまいります。
・教育育成プログラムの充実
従業員一人ひとりの成長を力強く後押しするため、教育育成プログラムの拡充に注力しています。具体的には、キャリアに応じた階層別研修や、担当業務の質を高めるための業務研修をさらに充実させ、ヒューマンスキル向上を目的とした研修も導入しています。また、グローバルに活躍できる人材を育成するため、若手社員には海外実務研修を提供し、国際的な視野と異文化理解を深める機会を設けています。加えて、女性管理職員向けには、それぞれのライフステージに合わせた柔軟なキャリア形成を支援する研修を計画中で、多様な働き方を推進する方針です。
今後も、従業員が自身のキャリアを主体的に描けるよう、希望制研修の新規導入やe-Learningコンテンツの追加など、能力開発の機会を順次拡大していく予定です。
・ダイバーシティの推進
事業環境が大きく変化する中で新たな価値を生み出すために、多様な価値観や経験を有する人材を確保するとともに、その多様性を尊重することで、個々が活躍できる企業風土の醸成を図っています。この推進の一環として、2024年度には、定年後再雇用制度を見直しました。定年後再雇用者の役割を明確化し、モチベーション維持・向上および処遇改善を通じて、組織の戦力アップを目指しています。また、女性の活躍は組織の活性化に不可欠と考え、女性社員が活躍できる社内環境整備や風土醸成に取り組んでおり、その具体的な取組みや課題については、他社と協働で継続的に意見交換会を実施しています。さらに、従業員の仕事と家庭の両立支援にも積極的に取り組んでいます。育児との両立支援制度を整備し、特に男性の育児休業取得促進に力を入れています。「次世代育成支援対策推進法」に基づき、仕事と子育ての両立を支援するための目標を設定し、男性の育児休業取得を奨励する企業風土の醸成や情報提供、相談体制の整備などを通じて、男性の育児参加を積極的に後押ししています。加えて、従業員が家族の介護と仕事を両立できるよう、介護休暇制度の活用を推進し、安心して働き続けられる環境を提供することで、従業員の多様なライフイベントに寄り添った支援を行っています。
・健康経営の推進
従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが挑戦を続けるエネルギーの源泉であると考え、澁澤健康保険組合とのコラボヘルスにより、データヘルス計画に基づき従業員とその家族の健康増進に努めています。具体的には、定期健康診断に特定健診項目を加えた特定健康診査を実施し、特定保健指導の対象者に参加を呼びかけ、生活習慣病予防と健康増進を図るプランを推進しています。また、ストレスチェック制度、外部機関による24時間健康相談サービス、メンタルヘルスのカウンセリングサービスなども提供し、多角的に従業員の健康をサポートしています。さらに、健康増進事業の一環として、2024年度より健康アプリを導入しました。このアプリでは、健康診断の結果や医療費通知の閲覧が可能なうえ、アプリを活用した健康イベントを開催し、従業員の健康促進を図っています。
② 指標・目標
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指標 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
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前年比増加 |
10.6 |
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前年比増加 |
57.7 |
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前年比増加 |
11.43 |
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前年比増加 |
150 |
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前年比増加 |
1,256 |
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(注)1.管理職員は管理職に任用できる資格者を表しています。
2.2024年度より入社2年目以降の有給休暇付与日数は20日から25日へ変更しました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重大な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 事業環境の変化
当社グループは、倉庫業ならびに陸・海・空にわたる運輸業を主体とした物流事業と不動産賃貸業を中心とする不動産事業を主たる事業としておりますが、物流事業においては、国内外の経済環境や社会情勢の変動および天候等による景気動向の変化が、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、不動産事業においても施設の改善と機能拡充を推進しておりますが、首都圏における賃貸オフィス市場の需給バランスの変化や市況動向等の影響を受ける可能性があります。
② 特有の法的規制等に係るもの
当社グループの物流事業は、国内外において法的許認可を事業基盤としており、施設、設備の安全性や車両等の安全運行のために、国際機関および各国政府の法令、規制等様々な公的規制を、事業推進にあたっては通商、租税、為替管理、環境、公正取引等に関する法規制の適用を受けております。今後、これらの法的規制の改廃や新たな法的規制が設けられる場合には、当社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります。
③ 自然災害の発生
当社グループは、物流事業と不動産事業を展開するにあたり多くの施設を有しております。そのため、地震や台風等の自然災害が発生し、当社グループの施設が被災した場合、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループの保有施設につきましては、適切な補償範囲にて企業財産包括保険を付保するとともに、建物の耐震対策として、1981年建築基準法改正以前の耐震基準の設計による建物について、必要に応じ耐震診断を行い、耐震性能が不充分な建物については現行基準並みの耐震補強工事を順次実施しております。
④ 車両燃料油価格の変動
当社グループの物流事業では、車両運行のための燃料の調達が不可欠なものとなっております。燃料費については、調達コストの平準化・削減に努めておりますが、燃料油の市場価格は概ね原油価格に連動しており、世界の景気動向、産油地域の情勢、米国を中心とする在庫水準、投機資金の流入等により影響を受ける可能性があり、燃料油価格の上昇は、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 金利の変動
当社グループは、賃貸不動産や倉庫施設等の新設や更新のため、継続的な設備投資を行っております。適切な負債資本倍率を考慮しつつ、運転資金および設備資金は主として外部借入れにて調達しております。固定金利での借入れや金利スワップ取引により金利の固定化を進めておりますが、変動金利で調達している資金については、金利変動の影響を受けます。また、金利の変動により、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。
⑥ システムトラブルによる影響
当社グループは、各種物流情報システムを構築し、インターネットを介して顧客との情報交換を行っておりますが、外部からの不正なアクセスによるシステム内部への侵入や、コンピュータウイルスの感染等の障害が発生する可能性があります。この対策としてセキュリティソフト等を導入し、安全には万全を期しております。
また、大地震、大規模停電への対策として、遠隔地でのデータ・バックアップ・センターの配備をしております。万が一システムのトラブルが発生した場合には、顧客との情報交換のための代替手段を準備しておりますが、復旧までの間、作業効率の低下を来たす可能性があります。
⑦ 個人情報漏洩等の発生
当社グループは、物流事業におけるトランクルーム、引越業務等において、個人情報を取り扱っております。当社グループでは情報保護方針を定め、当方針に基づき策定した「情報保護規程」をすべての役職員が遵守することにより、個人情報漏洩等の予防に努めております。しかしながら、予期せぬ不正アクセスやコンピュータウイルス等の不法行為による個人情報漏洩が発生した場合には、損害賠償請求等により、当社グループの事業および業績に重大な影響を及ぼす可能性があり、このようなリスクに備えるため、賠償責任保険を付保しております。
また、当社グループは、「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」の認証を2005年12月16日に取得し、2024年11月22日に「ISO/IEC 27001:2022」へ移行しております。
⑧ 保有資産の時価変動
当社グループは、減損会計基準およびその適用指針に基づき、2006年3月期より固定資産の減損会計を適用しております。今後、保有資産の時価の下落あるいは当該資産の収益性悪化等により、減損処理の手順に従い減損損失を認識した場合には、当社グループの業績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当期末における当社グループの投資有価証券残高は278億2千2百万円であります。将来において投資先の業績不振や証券市場における市況の悪化等により時価あるいは実質価額が下落し、かつ回復の可能性があると認められない場合には、当社グループの業績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 海外への事業展開
当社グループは、海外においては、現地子会社等や代理店との連携により、事業活動を行っておりますが、現地の法令規制の改廃や税制等の変更、為替相場の変動あるいは事業活動に不利な政治または経済要因の発生、戦争・テロ・伝染病などの社会的混乱により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 退職給付債務
当社グループは、従業員の退職給付費用および債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの数値は将来に対する予測に基づくものであり、今後の退職給付債務の割引率低下や年金資産の運用実績の悪化等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、これらのリスクを緩和するため、2006年4月より確定拠出年金制度を一部導入しております。
⑪ 気候変動に伴うリスク
当社グループは、気候変動に伴う豪雨や台風などの異常気象により、保有する施設の被災や交通網の遮断、高温による労働生産性の低下などの影響を受ける可能性があります。
また、国内外における、企業が排出する温室効果ガスに対する規制強化や炭素価格の導入等は、操業コストの増加原因となります。
これらの状況に対し、当社グループは、サステナビリティ推進基本方針において、地球温暖化の防止や安全・安心の実現をマテリアリティ(重要課題)として特定し、モーダルシフトの推進、物流効率化による温室効果ガスの排出削減および保有する施設の強靭化に取り組んでおります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態および経営成績の状況
全般の概況
(単位:百万円)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
73,417 |
78,620 |
5,202 |
7.1% |
|
営業利益 |
4,271 |
4,668 |
397 |
9.3% |
|
経常利益 |
5,091 |
5,583 |
491 |
9.7% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
3,728 |
4,908 |
1,180 |
31.6% |
経済環境
・当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済が全体的に緩やかな成長を維持する中、雇用・所得環境の改善等を背景に、個人消費や企業の設備投資に持ち直しの動きが見られたことから、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方で、物価上昇の長期化が消費者マインドの下振れ等を通じ家計に与える影響や、米国の通商政策をめぐる今後の不確実性の高まりなどにより、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
業績の状況
・前期および当期新たに取扱いを開始した倉庫業務や陸上運送業務が業績に寄与したことを主要因として、営業収益は前期比52億2百万円(7.1%)増の786億2千万円、コスト上昇に見合う適正料金の収受等により、営業利益は同3億9千7百万円(9.3%)増の46億6千8百万円、経常利益は同4億9千1百万円(9.7%)増の55億8千3百万円となり、前期比増収増益となりました。
・親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却益や、前期に発生した固定資産処分損の解消により、前期比11億8千万円(31.6%)増の49億8百万円となりました。
セグメント別の概況
当社グループのセグメントの概況は、次のとおりであります。
(物流事業)
(単位:百万円)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
67,665 |
72,685 |
5,020 |
7.4% |
|
営業利益 |
3,275 |
3,884 |
608 |
18.6% |
事業環境
・個人消費の回復は小幅にとどまったことから、消費財等の国内貨物の荷動きは横ばいで推移しました。
・円安効果による生産財の輸出や部品・部材類の輸入等を中心に、輸出入は堅調な荷動きで推移しました。
・人手不足や物価上昇等による物流コストの増加は継続しました。
業績の状況
・倉庫業務や陸上運送業務において、前期に取扱いを開始した飲料や工場内物流請負業務に加え、当期新たに取扱いを開始した医薬品や医療機器、食品等が寄与したほか、EC関連の取扱いが増加しました。また、コスト上昇への対応として、適正な運賃や料金の確保に努めることで、収益性の維持に取り組みました。
・港湾運送業務は、前期に取扱いを開始した飲料の荷捌業務が寄与したほか、船内荷役業務の取扱いが増加しました。
・国際輸送業務は、輸入航空貨物の取扱いは増加したものの、アジア域内航路における海上運賃単価の下振れに加え、輸出入海上貨物や輸出航空貨物の取扱いが低調に推移したことから減少となりました。
・当社グループの強みである、飲料物流や多品種小ロット物流においては、拠点ネットワーク拡充による取扱量の増大をはかるとともに、DX推進の取組みを一層強化し、省人化とオペレーションの効率化を進め、業務プロセスの最適化に努めることで、採算性の向上に継続的に取り組みました。
(不動産事業)
(単位:百万円)
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
増減率 |
|
営業収益 |
6,002 |
6,403 |
401 |
6.7% |
|
営業利益 |
2,996 |
3,350 |
353 |
11.8% |
事業環境
・都市部におけるオフィスビル市場は、空室率が引き続き低下傾向を示し、賃料についても上昇が見られるなど、全体的に安定的に推移しました。
業績の状況
・施設の稼働率向上に伴い、空調設備使用料等の不動産付帯収入が増加したことに加え、ビル工事請負業務が好調に推移しました。
・既存施設においては、計画的に保守改良工事を実施することで、現有資産の価値向上をはかるとともに、適正料金の収受に努め、安定的な収益基盤の確保と強化を推進しました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローの増加があったものの、投資活動によるキャッシュ・フローおよび財務活動によるキャッシュ・フローの減少により、全体で10億2千6百万円の減少となり、現金及び現金同等物の期末残高は85億2千1百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益および減価償却費の計上による資金留保により、63億5千万円の増加となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ5億2千1百万円上回りましたのは、税金等調整前当期純利益の計上額の増加、仕入債務の増加等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入等があったものの、固定資産の取得による支出などにより、60億1千3百万円の減少となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ9億2千7百万円上回りましたのは、投資有価証券の売却及び償還による収入が増加したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入があったものの、長期借入金の返済による支出、自己株式の取得による支出および配当金の支払いにより、14億1千万円の減少となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ102億7千4百万円上回りましたのは、社債の償還による支出の減少および社債の発行による収入の増加等によるものであります。
③ 生産、受注および販売の実績
(1) セグメントごとの主要業務の営業収益内訳
当連結会計年度の営業収益をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
営業収益(百万円) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
金額 (百万円) |
比率 (%) |
|
|
物流事業 |
67,665 |
72,685 |
5,020 |
7.4 |
|
(倉庫業務) |
18,087 |
19,937 |
1,849 |
10.2 |
|
(港湾運送業務) |
6,425 |
6,709 |
283 |
4.4 |
|
(陸上運送業務) |
31,961 |
34,719 |
2,757 |
8.6 |
|
(国際輸送業務) |
7,995 |
7,907 |
△87 |
△1.1 |
|
(その他の物流業務) |
3,194 |
3,412 |
217 |
6.8 |
|
不動産事業 |
6,002 |
6,403 |
401 |
6.7 |
|
報告セグメント計 |
73,667 |
79,089 |
5,421 |
7.4 |
|
セグメント間の内部営業収益又は |
△250 |
△468 |
△218 |
- |
|
合計 |
73,417 |
78,620 |
5,202 |
7.1 |
(注)当連結会計年度の主な相手先の営業収益および当該営業収益の連結営業収益合計に対する割合は次のとおりであります。
なお、前連結会計年度は連結損益計算書の売上高の10%を占める顧客が存在しないため、記載を省略しております。
|
相手先 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
サントリーロジスティクス㈱ |
7,923 |
10.0 |
(2) セグメントごとの主要業務の取扱高
1.物流事業
(イ) 倉庫業務
1) 所管倉庫明細
|
項目 |
面積(㎡) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (2024年3月31日現在) |
当連結会計年度 (2025年3月31日現在) |
面積 (㎡) |
比率 (%) |
|
|
所有庫 |
273,671 |
284,302 |
10,631 |
3.9 |
|
借庫 |
212,585 |
261,663 |
49,078 |
23.1 |
|
計 |
486,256 |
545,966 |
59,709 |
12.3 |
|
貸庫 |
- |
- |
- |
- |
|
合計 |
486,256 |
545,966 |
59,709 |
12.3 |
(注)1.保管面積は倉庫業法に基づく保管用面積(野積面積を除く)であります。
2.上表のほか、保管施設として上屋(港湾運送事業)16,743㎡があります。
2) 入出庫高および保管残高
|
項目 |
数量(トン) |
前連結会計年度比増減 |
|||
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
数量 (トン) |
比率 (%) |
||
|
入庫高 |
2,579,382 |
2,732,123 |
152,741 |
5.9 |
|
|
出庫高 |
2,582,254 |
2,726,066 |
143,812 |
5.6 |
|
|
合計 |
5,161,636 |
5,458,189 |
296,553 |
5.7 |
|
|
月末保管残高 |
年間合計 |
2,656,169 |
2,691,917 |
35,748 |
1.3 |
|
年間平均 |
221,347 |
224,326 |
2,979 |
1.3 |
|
3) 貨物回転率
|
項目 |
貨物回転率(%) |
前連結会計年度比増減 (ポイント) |
|
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
数量 |
97.2 |
101.4 |
4.2 |
|
(注)算定方式 |
貨物回転率 = |
(年間入庫高+年間出庫高)×1/2 |
× 100 |
|
月末保管残高年間合計 |
(ロ) 港湾運送業務
|
項目 |
取扱数量(トン) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
取扱数量 (トン) |
比率 (%) |
|
|
船内荷役 |
1,042,830 |
1,063,186 |
20,356 |
2.0 |
|
はしけ運送 |
- |
- |
- |
- |
|
沿岸荷役 |
454,222 |
462,688 |
8,466 |
1.9 |
|
合計 |
1,497,052 |
1,525,874 |
28,822 |
1.9 |
(ハ) 陸上運送業務
|
項目 |
数量(トン) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
数量 (トン) |
比率 (%) |
|
|
数量 |
7,470,958 |
7,701,423 |
230,465 |
3.1 |
2.不動産事業
|
項目 |
面積(㎡) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (2024年3月31日現在) |
当連結会計年度 (2025年3月31日現在) |
面積 (㎡) |
比率 (%) |
|
|
賃貸ビル面積(契約面積) |
94,892 |
94,892 |
- |
- |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の財政状態の分析
当社グループの連結会計年度末の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ46億7千3百万円(4.1%)増加して1,174億4千6百万円となりました。このうち流動資産は4億3千1百万円(1.5%)増加し288億8千4百万円となりました。この主な要因は、受取手形及び取引先未収金の残高が増加したこと等によるものであります。固定資産は42億6百万円(5.0%)増加し885億1千4百万円となりました。固定資産のうち有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ14億2千2百万円(2.5%)増加し574億8千4百万円となりました。この主な要因は、減価償却費が計上されたものの、物流事業における新規設備投資および不動産事業における設備更新のための投資を実施したことによるものであります。また、投資その他の資産は25億4千万円(9.3%)増加し298億3千万円となりましたが、この主な要因は、株式相場の上昇により保有する投資有価証券の時価が増加したことおよび投資有価証券の取得等によるものであります。
連結会計年度末の負債の残高は、前連結会計年度末に比べ19億7千2百万円(3.9%)増加して521億1千7百万円となりました。このうち流動負債は5億9千2百万円(3.5%)減少し162億3千5百万円となり、固定負債は25億6千4百万円(7.7%)増加し358億8千1百万円となりました。流動負債の減少の主な要因は、未払法人税等の増加があったものの、設備関係支払手形の残高の減少があったこと等によるものであり、固定負債の増加の主な要因は、借入金の約定返済が進んだものの、社債を発行したこと等によるものであります。
連結会計年度末の純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ27億1百万円(4.3%)増加して653億2千8百万円となりました。この主な要因は、自己株式の取得および配当金の支払いがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益が計上されたことやその他有価証券評価差額金が増加したこと等によるものであります。
上記の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の54.7%から54.8%となり、また、1株当たり純資産額は4,074円00銭から4,472円42銭となりました。
なお、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおり、物流業界では、消費財等の国内貨物の荷動きは横ばいで推移しましたが、輸出入は円安効果による生産財の輸出や部品・部材類の輸入等を中心に、堅調な荷動きで推移しました。また、不動産業界では、都市部におけるオフィスビル市場は、空室率が引き続き低下傾向を示し、賃料についても上昇が見られるなど、全体的に安定的に推移しました。
こうした事業環境のもと、当社グループは、3ヵ年の中期経営計画「澁澤倉庫グループ中期経営計画2026」で掲げた事業戦略に基づき、拠点ネットワーク拡充による取扱量の増大をはかるとともに、DX推進の取組みを一層強化し、省人化とオペレーションの効率化を進め、業務プロセスの最適化に努めることで、採算性の向上に継続的に取り組みました。また、不動産事業においては、既存施設の計画的な保守改良工事を実施することで、現有資産の価値向上をはかるとともに、適正料金の収受に努め、安定的な収益基盤の確保と強化を推進しました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は、前期および当期新たに取扱いを開始した倉庫業務や陸上運送業務が業績に寄与したことを主要因として、前期比52億2百万円(7.1%)増の786億2千万円、コスト上昇に見合う適正料金の収受等により、営業利益は同3億9千7百万円(9.3%)増の46億6千8百万円、経常利益は同4億9千1百万円(9.7%)増の55億8千3百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却益や、前期に発生した固定資産処分損の解消により、前期比11億8千万円(31.6%)増の49億8百万円となりました。なお、営業収益営業利益率は5.9%、総資産経常利益率は4.9%、自己資本当期純利益率は7.8%となっております。
また、事業セグメント別では、物流事業の営業収益は前期比50億2千万円(7.4%)増の726億8千5百万円、営業利益は前期比6億8百万円(18.6%)増の38億8千4百万円となりました。不動産事業の営業収益は前期比4億1百万円(6.7%)増の64億3百万円、営業利益は前期比3億5千3百万円(11.8%)増の33億5千万円となりました。
③ 資本の財源および資金の流動性
ⅰ) 資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、物流事業に関わる倉庫荷役費、港湾荷捌費、陸上運送費および不動産事業に関わる不動産維持費、付帯費ならびに各事業についての販売費及び一般管理費があります。
また、設備資金需要としては、物流施設・機器および不動産施設への投資ならびにシステム開発等があります。
ⅱ) 財務政策
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入ならびに社債の発行により資金を調達しており、運転資金および設備資金につきましては、国内・海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
資金調達に際しては、将来の金利変動リスクを避けるために、一部金利スワップを利用しており、調達コストの低減に努めております。
また、運転資金の効率的な調達を行うため、金融機関と当座貸越契約を締結しております。
④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(シンジケートローン契約)
当社は、運転資金を安定的かつ効率的に調達するために、財務制限条項付きのシンジケートローン契約を金融機関と締結しております。その内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)6 財務制限条項」に記載しております。
該当事項はありません。