第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)中長期的な経営戦略・対処すべき課題

 当社グループを取り巻く外部環境は、地政学的リスクや気候変動への対応を背景としたサプライチェーン見直しの動きや、DX・AI技術の進展、日本国内においては少子高齢化の進行、ビジネスニーズ・消費者ニーズの多様化、コーポレート・ガバナンスやステークホルダーとの関係性の強化等の社会的要請など、様々な変化が生じております。
 このような事業環境の変化のもと当社グループでは、事業体制の構築と更なる成長を目指し、2030年のあるべき姿を描いた「長期ビジョン2030」の実現に向けて、最先端テクノロジー、多様な人間力、国内外に広がるネットワークを安田倉庫グループの総合力として進化させ、社会とお客様の期待を超える「YASDA Value」の提供を目指す中期経営計画「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」に基づき、物流事業・不動産事業の収益力強化とサステナビリティ経営の推進、政策保有株式縮減や株主還元強化などの資本政策を通じ、企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。

 

「長期ビジョン2030」 ~次の100年に向けて~

世界に誇れるYASDAブランドと革新的テクノロジーの融合で全てのステークホルダーの期待を超える企業グループを目指す。

 [顧 客] 他の追随を許さないロジスティクス・ソリューションと人間力で確固たる顧客満足を獲得する。

 [従業員] 多様性を尊重し働きやすく且つ働き甲斐のある職場で従業員が最大限のパフォーマンスを発揮する。

 [社 会] 事業を通じた環境負荷低減や高い災害強靭性で持続可能な社会の構築に貢献する。

 [株 主] 高い収益力と強固な財務基盤により企業価値の向上を図る。

 

中期経営計画 「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」
 1.基本方針

  最先端テクノロジーと多様な人間力、そして国内外に広がるネットワーク。

  安田倉庫グループの総合力を進化させ、社会とお客様の期待を超える「YASDA Value」の提供を目指す。

 2.基本戦略

  上記の基本方針を踏まえ、以下を基本戦略とします。

 (1)物流事業  :①グループ連携によるネットワーク拡充

          ②潜在するニーズを捉えた高品質・高付加価値物流の提供

          ③効率化、合理化の推進

グループ全体で国内・海外における物流拠点の新設や輸配送ネットワークの拡大を推進することで事業基盤の強化を推し進め、潜在するニーズを捉えた高品質・高付加価値物流の提供やソリューション提案力の強化、最先端テクノロジーやデジタル技術を積極的に活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により取引の拡大やグループ連携による利益の創出を目指す。

 (2)不動産事業 :①保有不動産の維持管理・再開発を通じた価値向上

          ②専門性を活かした不動産ソリューションの提供

保有不動産の維持管理と再開発を通じた価値向上施策や高い専門性を活かした不動産ソリューションの提供を通じ、安定的な収益基盤である不動産事業の強化・拡大を図る。

 (3)経営インフラ:①生産性向上

          ②サステナビリティ経営の推進

          ③グループガバナンス強化

          ④持続的な成長を可能にする資本政策と財務健全性維持、株主還元強化

安田倉庫グループ全体での更なる生産性向上やガバナンス体制強化に取り組むとともに、サステナビリティ経営を通じ、地球環境や社会課題の解決と事業の持続的な発展を目指す。また、財務健全性を維持しつつ、営業キャッシュ・フロー・有利子負債の活用に加え政策保有株式の縮減(3年間で時価総額約100億円を目標)や資産の入替えを通じ、施設の増強、M&Aなどの攻めの投資を継続することで、将来の稼ぐ力を高め、株主還元強化に向けて累進配当、自己株式取得の実施を適時適切に検討する。

 (4)数値目標

最終年度の2027年度に営業収益820億円、営業利益45億円、ROE5.5%以上の達成を目指す。

 

 3.投資計画

  本中期経営計画の対象期間については、規律ある財務運営を念頭に置きつつ、合計360億円(物流事業290億

  円、不動産事業40億円、DXおよびシステム30億円)の投資を計画しております。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<サステナビリティ全般>

(1)ガバナンス

 当社グループは、事業活動を通じたサステナビリティの取組の更なる推進と中長期的な企業価値向上を目的として、2024年9月に、サステナビリティ委員会を設置しました。

 サステナビリティ委員会ではサステナビリティに関わる活動の基本方針、リスク・機会の特定、目標の設定及び見直し、各種施策や教育の計画・実行、情報開示等について協議・決定し、部門横断的に多様な視点を取り入れることで、より実効性の高いサステナビリティの取組に繋げております。

 サステナビリティ委員会は取締役会による監督のもと、代表取締役社長を委員長として、取締役役付執行役員や各部門の責任者が委員となり、サステナビリティに関わる取組の協議及び決定をしております。

 

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(2)戦略

 当社グループは、「健全な企業活動を通じて、お客様、株主、従業員、地域社会の期待に応え豊かさと夢を実現する。」との経営理念に基づき、物流、不動産事業を通じ循環型社会の実現に取り組んでまいりました。当社グループが更なる発展を遂げるためには、これまで以上に地球環境や社会の持続可能性に配慮した経営を行い、「社会に必要とされ続ける企業」を目指さなければならないと考えております。

 このような状況のもと、当社は当社グループのサステナビリティを巡る諸課題に対する取組の推進機能強化と情報開示を目的として設置した「サステナビリティ推進室」を中心として、グループ全体での取組を推進してまいりました。

 当社グループとして優先的に取り組むべき重要課題は4つのマテリアリティとして特定し、このマテリアリティに紐づく具体的な取組や実績をホームページで開示しております。

 

・安田倉庫グループのマテリアリティ

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(3)リスク管理

 サステナビリティに係る重要なリスクは、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会とリスク管理委員会が相互に連携することにより、その他の当社グループの事業推進に係るリスクとともに半期ごとに検証・評価され、必要に応じて見直しを実施しています。サステナビリティ委員会、リスク管理委員会での審議結果を取締役会に報告することで、 取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。

 

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(4)指標及び目標

 中期経営計画「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」並びに「長期ビジョン2030」と連動し、非財務目標を設定し、その達成に向けて取り組むことで中長期的な価値向上に努めてまいります。

 

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   (注)1 営業日において、1日1回以上利用した生成AI利用者を「1人日」とカウントし、年間の延べ利用者数

        (人日)を年間の延べ従業員数(人日)で割り込んだ比率

   (注)2 2022年度を基準としたCO排出量削減率

 

<重要な個別テーマ>

(1)気候変動

 当社グループは、持続可能な社会の実現のために優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の一つとして「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げており、ステークホルダーの皆さまとの信頼関係を構築するためには、気候変動に係る取組の情報開示の充実が不可欠と考えております。このような考えのもと、当社は2022年6月にTCFD提言への賛同を表明し、その提言に基づき、気候変動が当社グループの事業活動に与える影響に関する情報を開示しております。

 

①ガバナンス

 当社グループは、環境保全への取組姿勢を定めた「環境方針」に基づき、事業活動のあらゆる面において地球環境との調和に努めております。気候変動に係る重要なリスク・機会の特定や影響の分析・評価、当社グループの事業へ与える影響評価については、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において報告され、その具体的な対応策が協議されております。サステナビリティ委員会での審議結果を取締役会に報告することで、 取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。

 

②リスク管理

 サステナビリティ推進室において気候変動に係るリスク・機会を選定し、当社グループの事業や業績に与える影響の大きい項目を重大なリスク・機会として識別しております。同室により識別されたリスク・機会は、リスク管理委員会において、他のリスクとともに半期ごとに検証・評価され、必要に応じて見直しを実施、適切に管理されております。

 

③戦略

 当社グループは、重要な気候関連リスク・機会について複数のシナリオ下における事業への影響を評価するとともに、事業のレジリエンスを評価しております。特定された重要な気候関連リスク・機会は以下の通りです。

 

2030年を想定した財務影響及び当社グループの対応策

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 シナリオ分析の詳細は、以下当社開示資料をご参照下さい。

https://www.yasuda-soko.co.jp/Portals/0/pdf/environment/tcfd_230628.pdf

 

④指標及び目標

 当社グループは2023年6月に、「安田倉庫グループ CO₂排出量の削減目標」を以下の通り策定しました。

 

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 目標達成に向けた各種取組については、以下当社ウェブサイトをご参照下さい。

https://www.yasuda-soko.co.jp/sustainability/tabid/344/Default.aspx

 

(2)人的資本・多様性

 当社グループでは、重要課題(マテリアリティ)の一つに「多様な人材がゆとりと豊かさを体現できる職場の実現」を掲げ、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しております。この取組は、従業員のパフォーマンスを最大限に発揮するとともに、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するものと考えております。

 

①戦略

・人材育成方針

 長期ビジョン2030において、「多様性を尊重し働きやすく且つ働き甲斐のある職場で従業員が最大限のパフォーマンスを発揮」できるよう、公正な処遇と個人の人格・個性を尊重しつつ、人材育成を強化する観点より各種研修制度、海外留学生制度、自己啓発を支援する仕組み等を拡充しております。また2021年7月に導入した新人事制度においても①職員の意識・行動を変える評価制度 ②多様な人材活用・働き方の推進 ③教育プロセスのブラッシュアップを行い現場力・企業力の強化を図る制度を導入しております。

 

・社内環境整備方針

 健康経営を行うために職場の健康づくりに取り組む環境を整え、「人を大切にする企業」として、従業員のゆとりと豊かさを実現し、安全で働きやすい環境を確保するとともに、従業員の労働災害及び健康障害を防止し、安全と健康の増進に努めております。

 2023年12月には健康企業宣言東京推進協議会より「健康優良企業 金の認定」を取得しました。

 

 人的資本・多様性についての取組の詳細は、以下当社のウェブサイトをご参照下さい。

https://www.yasuda-soko.co.jp/sustainability/tabid/348/Default.aspx

 

②指標及び目標

 上記「①戦略」において記載した、人材育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び2024年度実績は以下の通りです。なお、連結子会社の一部の集計を実施していないため、いずれも提出会社の数値を記載しております。

 

指標

目標

実績

女性管理職比率

2028年3月末時点で20%

2031年3月末時点25

12.9

年次有給休暇の取得率

2028年3月末時点で75%

2031年3月末時点75

66.2

男性の育児休業取得率

2028年3月末時点で75%

2031年3月末時点100

66.7

従業員1人当たりの研修受講回数

2028年3月末時点で4.5回

2031年3月末時点5.0

4.1

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)自然災害等

当社グループの主要な事業拠点は首都圏に集中しております。当社グループでは自然災害及び火災等による被害を最小限に抑えるべく事業継続計画の制定、防災委員会の定時開催、設備等の耐震性対策、自衛消防隊の設置及び安全パトロールの実施等を行っております。しかしながら万一自然災害及び火災等が発生した場合特に首都圏での大規模地震が発生した場合にはこれらの施策にかかわらず当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、新型コロナウイルス等をはじめとする感染症の流行等も想定し、事前の予防対策及び発生時の緊急体制の整備等を行っておりますが、感染症の拡大等により事業の安定的継続に支障が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2)法的規制

当社グループは物流事業及び不動産事業並びに経営全般において倉庫業法及び建築基準法等に代表される種々の法的規制を受けております。当社はコンプライアンス体制の強化に従来より取り組んでおりますが、今後これらの法的規制の強化又は新設が行われる場合には、対応に費用又は時間を要することにより当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3)経営環境の変化

物流事業・不動産事業ともに当社グループの提供サービスに対する需要は従来より経営環境の変化により変動しております。

物流事業においては、国内外の景気動向やお客様の物流戦略の変更等により稼働率が低下しまたは原価率が上昇し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。不動産事業においては、地価の動向及び不動産賃貸市況の動向等により賃料相場が下落し、または空室率が上昇し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(4)固定資産の減損会計

当社グループが保有する固定資産は主に物流施設及び賃貸不動産施設として使用されております。今後各事業所において土地又は建物の時価が下落した場合、採算性が悪化した場合、若しくは賃貸オフィス市況が悪化した場合等には固定資産の減損により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)投資有価証券の時価変動

当連結会計年度末における当社グループの投資有価証券残高は63,949百万円でありますが、投資先の業績不振
及び証券市場における市況の悪化等により資産価値が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があり
ます。

(6)退職給付債務

当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件により算出されております。これらの数値は将来に対する予測に基づくものであり、実際の結果が見積数値と乖離した場合には、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与えます。今後割引率の低下や運用実績の悪化が生じた場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(7)個人情報保護

当社グループは事業の過程において個人情報を取り扱っております。当社グループでは個人情報保護方針及び関連諸規程の制定・遵守や職員教育等を通じ個人情報の厳正な管理に努めておりますが、万一個人情報の流出により問題が発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)情報システム障害

当社グループでは総合物流情報システムを構築し物流サービスを提供しております。各種情報セキュリティ対策やホストコンピュータ及びネットワークの二重化体制を構築することにより当該システムの高い安全性を確保しておりますが、不正アクセス等による一時的なシステム障害により業務処理が停滞した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)海外事業展開

当社グループは海外においては、子会社等を通じて倉庫・国際貨物取扱等の物流事業を展開しております。海外の事業展開に当たっては、現地の法令、行政上の手続き、商慣習等に則した事業活動を行っておりますが、現地法令規制等の変更、為替相場の変動あるいは事業活動に不利な政治又は経済要因の発生、戦争・テロ・伝染病・その他要因による社会的混乱により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

1.財政状態及び経営成績の概要

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢に改善の動きがみられ、景気は緩やかに回復したものの、物価上昇やウクライナ、中東地域をめぐる地政学的リスクの高まり、中国経済の減速に加え米国の通商政策への懸念など先行きの見通せない状況で推移しました。

こうした経済情勢にあって、当社グループを取り巻く事業環境は、倉庫物流業界ではエネルギー・原材料価格高騰の影響や労働力不足への対応など予断を許さない状況ではありますが、国内貨物・輸出入貨物ともに堅調に推移しました。 また、不動産業界では都市部におけるオフィスビルの空室率や賃料水準は改善・上昇傾向にあり、コロナ禍で落ち込んだ需要に回復の兆しがみられました。

このような状況のもと、当社グループは、2030年のあるべき姿としての「長期ビジョン2030」と、長期ビジョンを実現するための計画として中期経営計画「変わらず、変える。YASDA Next Challenge 2024」を策定し、事業体制の構築と更なる成長を目指してまいりました。物流事業においては、付加価値の高いサービスの提供に向けたソリューションの強化とネットワークの拡充により取引の拡大や物流施設の拡充・増強など事業基盤の強化を推し進め、また、不動産事業においては、保有不動産の維持管理と価値向上施策を通じ、稼働率の維持・向上や保有不動産の再開発促進に努め、事業拡大を推進してきました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(1)財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,591百万円減の210,320百万円となりました。

負債については、前連結会計年度末に比べ1,981百万円減の116,135百万円となりました。

純資産については、前連結会計年度末に比べ389百万円増の94,185百万円となりました。

 

(2)経営成績

当連結会計年度における当社グループの経営成績は、営業収益は前年同期比7,731百万円増(11.5%増)の75,115百万円となりました。営業利益は前年同期比871百万円増(32.9%増)の3,515百万円、経常利益は前年同期比1,024百万円増(25.9%増)の4,977百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比496百万円増(21.5%増)の2,802百万円と増収増益になりました。

セグメントの経営成績は、次のとおりです。

物流事業では、営業収益は前年同期比7,787百万円増(12.6%増)の69,387百万円、セグメント利益は前年同期比1,219百万円増(36.4%増)の4,567百万円となりました。

不動産事業では、営業収益は前年同期比13百万円減(0.2%減)の6,233百万円、セグメント利益は前年同期比198百万円減(9.7%減)の1,843百万円となりました。

 

2.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,039百万円増の20,384百万円となりました。

    (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や減価償却費の資金留保、棚卸資産の売却等により13,005百万円増(前年同期は5,884百万円増)となりました。

    (投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動によるキャッシュ・フローは、主に固定資産の取得による支出等により6,815百万円減(前年同期は15,773百万円減)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済等により3,320百万円減(前年同期は12,027百万円増)となりました。

 

3.生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 生産部門がないため、該当事項はありません。

(2)受注実績

 当連結会計年度における営業能力及び受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

①物流事業

a.グループの2025年3月31日現在の各地区別の営業能力(保管面積)を示すと、次のとおりであります。

地区

所有面積

(イ)

(㎡)

前期比

(㎡)

借庫面積

(ロ)

(㎡)

前期比

(㎡)

所管面積

(イ)+(ロ)

(㎡)

前期比

(㎡)

貸庫面積

(ハ)

(㎡)

前期比(㎡)

保管面積

(イ)+(ロ)-(ハ)(㎡)

前期比

(㎡)

北海道地区

16,657

18,585

35,242

4,844

821

30,398

△821

関東地区

埼玉

63,236

37,636

28,955

92,191

37,636

12,518

179

79,673

37,457

千葉

20,953

20,953

294

20,659

東京

84,779

△3,462

54,671

139,450

△3,462

31,411

108,039

△3,462

神奈川

163,670

70,949

234,619

42,990

191,629

北陸地区

3,678

3,678

3,678

東海地区

7,464

△318

7,464

△318

7,464

△318

近畿地区

47,505

△4,793

25,846

△6,587

73,351

△11,380

13,297

△4,843

60,054

△6,537

 中国地区

11,925

6,060

17,985

17,985

 九州地区

15,458

15,458

224

15,234

435,325

29,381

205,066

△6,905

640,391

22,476

105,578

△3,843

534,813

26,319

 (注)1 倉庫業における主な営業能力は保管面積によって表示されております。

    2 保管面積は倉庫業法に基づく営業倉庫面積であります。貸庫面積は主に物流賃貸面積であります。

    3 海外における主な営業能力(保管面積)は28,983㎡であります。

 

b.グループの主要業務についての取扱高等の概要を示すと、次のとおりであります。

内訳

取扱高等

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比(%)

倉庫業(保管)

保管残高(トン)

308,791

308,230

△0.2

 

(数量・月末平均)

 

 

 

 

貨物回転率(%)

20.0

20.8

0.8

倉庫業(荷役)

入庫トン数(トン)

736,257

778,614

5.8

 

出庫トン数(トン)

746,117

763,559

2.3

自動車運送業

取扱トン数(トン)

1,940,211

2,284,268

17.7

港湾運送業

取扱トン数(トン)

881,040

914,157

3.8

 

 貨物回転率は貨物の荷動きの状況を示すものであって、次の算式によって算出されております。

 

貨物回転率=

(当期中入庫高+当期中出庫高)×1/2

(%)

 

月末保管残高年間合計

 

②不動産事業

  グループの2025年3月31日現在における建物賃貸の営業能力を示すと、次のとおりであります。

営業能力は(所有面積+賃借面積)からなっております。

地区

建物賃貸面積

所有面積

(㎡)

前期比

(㎡)

賃借面積

(㎡)

前期比

(㎡)

合計(㎡)

前期比

(㎡)

北海道地区

17,069

17,069

関東地区

東京

26,553

2,988

29,540

神奈川

59,191

1,330

1,363

60,554

1,330

102,813

1,330

4,351

107,163

1,330

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

物流事業

69,370

12.6

不動産事業

5,745

△1.0

75,115

11.5

 (注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

1.当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(1)経営成績等

①財政状態

当連結会計年度末の総資産は、主に投資有価証券の時価評価の減少と営業未収金の回収等により、前連結会計年度末に比べ1,591百万円減の210,320百万円となりました。

負債については、主に借入金の返済や営業未払金の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,981百万円減の116,135百万円となりました。

純資産については、その他有価証券評価差額金の減少等がありましたが、主に当期純利益による利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ389百万円増の94,185百万円となりました。以上の結果により自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.5ポイント増の44.6%となりました。

なお、当社グループは長期借入金の調達にあたり、調達額の一定割合に対して格付上の資本性認定を受けることが出来る劣後特約付ローンによる資金調達を行っており、同ローンの資本性を考慮した格付上の自己資本比率は49.9%となります。

 

②経営成績

(営業収益)

営業収益は、物流事業が堅調に推移したことにより、前年同期比7,731百万円増(11.5%増)の75,115百万円となりました。

(営業原価)

 営業原価は、増収に伴う作業費等の増加や前連結会計年度中に子会社化したオリエント・サービスの人件費計上などにより、前年同期比6,171百万円増(10.4%増)の65,552百万円となりました。

(販売費及び一般管理費)

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度中に子会社化したオリエント・サービスの各種費用計上などにより、前年同期比689百万円増(12.9%増)の6,047百万円となりました。

 

 

(営業利益、経常利益)

 営業利益は、前年同期比871百万円増(32.9%増)の3,515百万円となりました。また、経常利益は、前年同期比1,024百万円増(25.9%増)の4,977百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比496百万円増(21.5%増)の2,802百万円となりました。

 

(2)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループを取り巻く事業環境は、倉庫物流業界では物価上昇や消費低迷による荷動きの減速は懸念されますが、国内貨物・輸出入貨物ともに輸送量の増加が期待され、また、不動産業界では新規供給による空室率の上昇は懸念されるものの、国内景気の緩やかな回復を前提にオフィス需要は高まるものと予測しております。

物流事業においては、グループ全体で国内・海外における物流拠点の新設や輸配送ネットワークの拡大を推進することで事業基盤の強化を推し進め、潜在するニーズを捉えた高品質・高付加価値物流の提供やソリューション提案力の強化、最先端テクノロジーやデジタル技術を積極的に活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により取引の拡大やグループ連携による利益の創出を目指します。

不動産事業においては、保有不動産の維持管理と再開発を通じた価値向上施策や高い専門性を活かした不動産ソリューションの提供を通じ、安定的な収益基盤である不動産事業の強化・拡大を図ります。

従って、2026年3月期の連結業績予想につきましては、2025年5月7日に公表いたしました通期の連結業績予想に変更はありませんが、現時点で当社が把握可能な情報に基づいており、今後様々な要因によって当予想は変動する可能性があります。

 

<ご参考>

2026年3月期の連結業績予想(2025年4月1日~2026年3月31日)

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当社グループでは、2025年2月に策定した中期経営計画「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」の数値目標を達成すべく、以下の基本戦略に取り組んでおります。

・物流事業  :①グループ連携によるネットワーク拡充

        ②潜在するニーズを捉えた高品質・高付加価値物流の提供

        ③効率化、合理化の推進

・不動産事業 :①保有不動産の維持管理・再開発を通じた価値向上

        ②専門性を活かした不動産ソリューションの提供

・経営インフラ:①生産性向上

        ②サステナビリティ経営の推進

        ③グループガバナンス強化

        ④持続的な成長を可能にする資本政策と財務健全性維持、株主還元強化

なお、当社グループの経営に影響を与える要因は、「3[事業等のリスク]」に記載しております。

 

(3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、中期経営計画「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」に基づき諸施策を策定・実行し、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上を図っていく所存であります。「強くなる、ひとつになる YASDA GROUP CHALLENGE 2027」では当社グループの重要な経営指標として、最終年度の2027年度に営業収益820億円、営業利益45億円、ROE5.5%以上の達成を目指しております。

当連結会計年度における当社グループの重要な経営指標については、物流事業が堅調に推移し、営業収益は、前年同期比7,731百万円増(11.5%増)の75,115百万円、営業利益は前年同期比871百万円増(32.9%増)の3,515百万円、ROEは前年同期比0.3ポイント増の3.0%となりました。

 

(4)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 物流事業では、新規取引の開始や既存顧客の取引拡大、倉庫・輸配送ネットワークの拡充などにより倉庫保管料、作業料、陸運料、国際貨物取扱料で増収となり、営業収益は前年同期比7,787百万円増(12.6%増)の69,387百万円、セグメント利益は前年同期比1,219百万円増(36.4%増)の4,567百万円となりました。セグメント資産は主に商品販売や営業未収金の回収のための流動資産の減少等により前年同期比1,735百万円減(1.5%減)の111,484百万円となりました。

不動産事業では、施工工事は順調に推移しましたが、不動産賃貸料の減少により営業収益は前年同期比13百万円減(0.2%減)の6,233百万円、セグメント利益は前年同期比198百万円減(9.7%減)の1,843百万円となりました。セグメント資産は主に不動産施設拡充のための有形固定資産の増加により前年同期比199百万円増(0.7%増)の29,086百万円となりました。

 

2.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 2.キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な運転資金及び設備資金を主に内部資金、借入及び社債の発行により調達しております。運転資金及び設備資金の調達については、財務規律のバランスを維持しつつ、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金及び社債の償還時期等を考慮の上、適宜判断して調達していくこととしており、国内関係会社については、一部の関係会社を除き原則として資金需要に応じて当社が一括して金融機関等から借入、貸付ける方法によっております。また、一部の海外関係会社の設備資金は、直接邦銀現地法人より調達しております。

また、当社は金融機関との間で長期に亘って築き上げてきた良好な取引関係の維持と財務規律のバランスの維持により、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な運転資金及び設備資金の調達に関しては今後とも問題なく実施可能と認識しております。

なお、より安定的な資金調達能力の向上を課題とし、日本格付研究所より格付を取得しており、本報告書提出日においては「A-(安定的)」を取得しております。

 

3.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表を作成するのに当たっては、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載した基準に従っております。これらを含め、当社グループはわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて連結財務諸表を作成しております。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

(ローン契約に付される財務上の特約)

 当社が、2023年11月28日付で株式会社みずほ銀行をアレンジャー兼エージェントとして締結したシンジケートローンの契約において、財務制限条項が付されております。その内容は次のとおりであります。

 

契約締結日

2023年11月28日

借入実行日

2023年11月30日

最終弁済日

2033年11月30日

借入金額

14,500百万円

当期末残高

12,687百万円

担保保証

無担保・無保証

契約締結先

(五十音順)

株式会社青森みちのく銀行

株式会社大垣共立銀行

株式会社四国銀行

株式会社荘内銀行

株式会社千葉興業銀行

株式会社日本政策投資銀行

農林中央金庫

株式会社肥後銀行

株式会社みずほ銀行

みずほ信託銀行株式会社

株式会社三井住友銀行

株式会社横浜銀行

財務上の特約の内容

(財務制限条項)

①2024年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の

 純資産の部の金額を2023年3月決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産

 の部の金額の75%および直前の決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産

 の部の金額の75%のいずれか高い方の金額以上に維持すること。

②2024年3月期決算以降の決算期を初回の決算期とする連続する2期について、

 各年度の決算期における連結の損益計算書に示される経常損益が、2期連続して

 損失とならないようにすること。

 

 

6【研究開発活動】

 特記事項はありません。