第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

(1) 経営基本方針

当社グループは、『信は万事の本を為す』に則り、社業を通じて豊かな社会の実現に貢献することを企業理念としております。この原点であり土台である企業理念のもとで、グループすべての役職員が大切にする価値観「Values」として「挑戦を楽しむ」「チーム力を信じる」「“ありがとう”を繋げる」を定め、当社グループのパーパスである「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」を実現し、チャレンジ精神溢れる企業文化を醸成することで、中長期的に企業価値の向上を図ることを経営の基本方針としております。

また、当社グループは、持続可能な社会の実現への貢献と持続的な企業価値の向上を目指し、「サステナビリティ方針」を策定し、4つの取り組むべき行動指針を掲げ、その実効性を高めるため当社グループが取り組むべき「環境」「社会」「ガバナンス」に関するマテリアリティ(重要課題)を特定し、2030年目標としております。

 

<サステナビリティ方針 行動指針>

 a.長期ビジョンを掲げ、その達成のために「環境」「社会」「経済」の持続可能性の側面から課題を抽出し、事

   業を通じてその解決に取組みます

 b.攻めと守りのガバナンス強化と多様な人財の活躍推進のため組織基盤の整備に取組みます

 c.適正な情報開示を行い、ステークホルダーの皆様と積極的な対話を行います

 d.パートナーシップを強固にし、バリューチェーン全体を通して持続可能な社会の実現に取組みます

 

<マテリアリティ 取組み重点テーマ及び2030年目標>

≪E:環境≫

環境に配慮した事業活動の推進

・温室効果ガス排出量削減

・エネルギー使用量の削減

・廃棄物及び有害物質の管理

 

 2030年目標

 

 □GHG排出量削減2013年度対比▲50%以上

≪S:社会≫

製品・サービスの品質向上

・安心,安全な商品・サービスの提供・安全衛生の推進 

・個人情報保護及び高度なデータセキュリティ

・リスクマネジメント

 

 2030年目標

 

 □重篤な労働災害事故(※1)0件

 □ISO9001認証取得 全拠点(営業倉庫/精米工場)

 □個人情報漏洩事故0件

≪S:社会≫

人財の多様性と活躍の促進

・生産性向上による働き方改革 ・人財育成及び教育

・女性活躍を含む多様な人財の活躍推進

・差別防止及び社会的弱者への配慮

 

 2030年目標

 

 □有給休暇取得率80%以上

 □女性管理職比率(※2)20%以上

 □キャリア採用者の活躍促進

≪S:社会≫

地域コミュニティ及び生産地と農業の発展

・コミュニティへの参画及び発展への寄与

 

 2030年目標

 

 □地域社会の文化活動への貢献

 □大規模災害発生時の官民連携を推進

 □産地・行政・取引企業とのコンソーシアム構築

≪S:社会≫

持続可能なコメの調達の推進

・持続可能な材料調達と効率的な使用

 

 2030年目標

 

 □産地のブランド化による持続的営農の実現

≪G:ガバナンス≫

コーポレート・ガバナンスの深化

・経営の健全性の確保、効率化の追求、透明性の向上、

 再現性の堅持

・リスクマネジメント ・適正な情報開示

 

 2030年目標

 

 □取締役会によるリスクと機会の把握と適切な対処

 □重大なコンプライアンス違反0件

 

 

※1 重篤な労働災害事故

   ①死亡、長期療養を要する(または可能性のある)疾病、障がいの残る(または可能性のある)怪我、特定伝染病

    ②一時に3人以上の労働者が業務上死傷または罹病した災害(不休含む)

※2 対象範囲:株式会社ヤマタネ

 

 

(2) 経営戦略及び業績目標

当社グループでは、経済や社会環境の変化やSDGsに対する意識の高まりなど、変貌する外部環境の中でサステナビリティ経営の高度化を目指し、目指すべき企業像を描いた「ヤマタネ2031ビジョン」を策定しております。

「ヤマタネ2031ビジョン」においては、当社グループの企業理念である「信は万事の本を為す」に則り、当社グループのパーパス(存在意義)を見つめ直し、9年間で目指すべきビジョンとして「物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジしていく」を掲げております。

また、「ヤマタネ2031ビジョン」の第2フェーズを投資効果最大化に向けた成長期と位置づけ、新中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」(2026年3月期~2028年3月期)を策定いたしました。

新中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」においては、更なるパーパス経営の推進と次の100年に向けたヤマタネグループの転換期とすべく、社員一人ひとりの活性化を促しチャレンジ精神溢れる企業文化を醸成し、より一層の企業価値向上に努めてまいります。

昨今の資本市場より求められております資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、当社グループは部門別収益管理の高度化、更なる事業シナジーの創出、資本コストを意識した資本収益性の改善、また、ガバナンス体制の強化等に一段と取り組んでいくために、2025年4月より「カンパニー制」に移行いたしました。親会社である当社の事業本部とグループ子会社が一体となった4カンパニーを設置した上で、コーポレート本部を新設し、事業ポートフォリオ管理体制の高度化を図り、資本効率を意識した事業を推進いたします。また、各カンパニーへ権限の委譲を進めることで意思決定スピードを向上させ、成長投資の活性化を推進し、収益力の更なる向上を目指すとともに次期経営層の育成も図ってまいります。さらに、グループ全体の収益力の強化を推進するためコーポレート本部を中心に部門間のシナジーを創出してまいります。

 

「ヤマタネ2031ビジョン」の概要

a.パーパス(存在意義)

 「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」

 

b.ビジョン(9年間で目指す姿)

 「物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジしていく」

 

「ヤマタネ2028プラン」の概要

a.基本方針

 ・部門別収益管理および部門間シナジー最大化によりグループ全体最適化を進める

 ・資本収益性改善に取り組むと同時に、実行力の高いガバナンス体制を構築する

 ・次の100年に向け、社内外のステークホルダーと共に持続的成長の基盤を創る

 

b.財務目標

 

2025年3月期

ヤマタネ2028プラン

目標

売上高

809億円

880億円

営業利益

37.8億円

47億円

EBITDA

80.6億円

92億円

ROE

5.6%

6.5%以上

配当性向

35.1%

-

総還元性向

-

70%~80%

 

 

 

c.カンパニー別方針

カンパニー

テーマ

施策

物流

「食×物流」シナジー創出

①   収益力強化

②   業界特化型プラットフォーム構築

③   コールドチェーン参入検討

食品

バリューチェーン拡大

①   米事業収益改善

②   川下戦略(新規顧客開拓)

③   川上参入(生産への進出)

情報

特化型SI展開

①   ヤマタネグループDX支援

②   機器販売サービス展開

③   地方展開

不動産

CRE戦略高度化

①   保有不動産有効活用

②   不動産流動化事業開始

③   新たな分野への取り組み

 

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

今後を展望いたしますと、複数の経済研究機関が2025年度のわが国の実質GDP成長率は+1%前後と予測しており、緩やかな回復基調にあるとされています。一方で、米国の通商政策を含めた動向や地政学的な混乱などが日本経済の下押しリスクとされており、先行きは不透明な状況にあります。

そのような状況下で、ヤマタネグループの Values(価値観)、「挑戦を楽しむ」「チームの力を信じる」「“ありがとう”を繋げる」をすべての業務の中心に据え、パーパス経営を実践してまいります。次の100年に向けた第二の創業期を迎え、チャレンジ精神溢れる企業文化の醸成を図ってまいります。社員の活性化を最優先課題とし、企業価値の極大化、社員のエンゲージメント向上、処遇改善、株価向上を目指します。中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」の初年度では、以下の項目を対処すべき課題と考え、人的資本投資を中心とした投資活動を積極的に推進し、重点方針に取り組み、中期経営計画達成に向けたスタートダッシュを図ります。

 

<対処すべき課題>

a.「チャレンジ精神溢れる企業文化の醸成」

b.「社員活性化への取組」

c.「企業価値向上に向けて」

d.「DX推進」

 

新中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」の初年度にあたる2026年3月期の連結業績予想につきましては、売上高は870億50百万円(前期比7.6%増)を予想し、営業利益は38億円(同0.5%増)、経常利益は35億40百万円(同3.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は35億30百万円(同14.2%増)を予想しております。売上高につきましては、食品関連のコメ卸売販売業において原料調達コストの高止まりから販売価格も現在の水準が継続すると見込んでおり増収を予想しております。営業利益につきましては、物流関連において、倉庫事業で物流2024年問題での外注コスト転嫁が進むことに加え、物流不動産事業で一部物件を流動化し計画的販売に着手しますが、食品関連において、コメ卸売販売での安定供給を目的とした原料確保が販売粗利を圧縮することに加え、人的資本投資の拡充に向けた戦略費用や研修費用、将来に向けた基盤整備のための各種投資による費用の計上等があり、微増の計画を予想しております。経常利益は、金利上昇が見込まれることによる支払利息の増加等により減益を予想していますが、親会社株主に帰属する当期純利益は、物流関連における山下埠頭営業所から本牧埠頭営業所へのリプレイスに関する撤去費用及び移転に関する受取補償金の計上、投資有価証券の売却、加えて連結子会社であった山種不動産吸収合併により非支配株主に帰属する利益がなくなったこと等により増益を予想しております。

 

事業別の経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりであります。

(物流関連事業)

物流業界におきましては、物流2024年問題を契機とした構造改革が求められています。賃金上昇等、所得環境は改善が見込まれるものの、人手不足は依然として課題となっています。物流DXの推進に加え、更なる待遇改善と労働環境の整備を行い、多様な人財の受け入れが急務とされています。また、物流大企業が成長戦略の一環として、後継者不足や経営環境の悪化といった課題を抱える中小企業をM&Aし、業界の集約化が進むと見込まれています。

このような状況下で、物流関連におきましては、既存事業領域の収益力強化に向けて、本牧新倉庫を含む既存倉庫の稼働率向上に取り組みます。阪急阪神エステート・サービス株式会社からのアーカイブ事業の譲受を目的とした新会社の株式取得を実施し、機密文書保管・電子化事業を拡大します。また、顧客の物流パートナーからSCM(サプライチェーンマネジメント)パートナーになるべく、2024年4月に新設したSCM推進部を中心にあらゆるサービスを提供できる総合物流会社として、効率化や高度化へのサービス拡充提案、実現を進めます。特に、食品事業とのコメのサプライチェーン最適化に取り組み、農産物の物流プラットフォーム構築を目指します。さらには、人手不足により外注コスト等が上昇する中で、更なる業務の標準化、サービスの効率化を推進するとともに、お客様目線での高品質なサービスを提供し、顧客満足度向上に努めるとともに、適正な利潤の確保を図ってまいります。

 

(食品関連事業)

コメ流通業界におきましては、コメ不足解消のために実施された備蓄米の放出が、民間在庫逼迫の解消や小売価格の上昇抑制に繋がるかが注目されています。一方で、生産力の低下と異常気象のリスクは解消されておらず、原料玄米の調達競争が激化しています。また、加工食品卸売業界におきましては、産業給食事業者向け需要は底堅く、加えて消費者のライフスタイルの変化等により中食(総菜)需要はさらに伸長することが見込まれます。

このような状況下で、食品関連におきましては、コメ卸売販売業では、販売において、安定供給を目的とした計画的な販売に努めるとともに、新規顧客の開拓に注力してまいります。仕入においては「産地の続くを支える」を掲げ、産地が抱える全ての課題に対し向き合い、農業の活性化を実現することで、産地との関係強化を進めています。その一環として未利用バイオマス(籾殻等)の有効活用を目的に「新みやぎ農業協同組合」及び「トレ食株式会社」と協定を締結いたしました。生産においては、2022年に開設した印西精米センターの安心安全の品質向上と効率化に更に取り組むとともに、国内屈指の環境配慮生産を実現する同センターの価値の見える化に取り組みます。また、事業戦略部と協働し、新たな事業領域への進出を検討してまいります。加工食品卸売業では、給食事業得意先の業態変化への対応、デリカ事業の一層の成長とビジネスモデルの確立、商品ブランドの再構築と育成等の戦略を掲げ、事業を推進してまいります。

さらには、コメ卸売販売業と加工食品卸売業のそれぞれの強みを生かすクロスセルや商品開発を行うとともに、加工食品卸売業の持続的な成長を加速させるため物流事業とのシナジーを検討してまいります。

 

(情報関連事業)

情報サービス業界におきましては、DX推進は継続的な経営課題であり、クラウドサービスの更なる拡大、AI活用推進、セキュリティ対策の強化等、大企業を中心に投資が加速すると見込まれます。一方で、需要の増加に伴い、IT人財不足もさらに深刻化すると見込まれます。

このような状況下で、情報関連におきましては、技術者の確保、提携先との更なる関係強化を図り、汎用機基盤の開発や運用業務の拡大を図るとともに、ヤマタネグループ内でのDX支援を通じ物流・食品業界特有のシステム課題解決ノウハウを積み上げ、顧客向けサービスを高度化してまいります。あわせて、既存顧客へ機器販売サービスを新たに提供することや、地方におけるサービス展開を検討すること等、収益力強化と顧客開拓を推進してまいります。また、棚卸機器レンタル事業においては、引き続きスマホアプリサービスへの転換を進め、提供サービスの拡張を図ります。

 

(不動産関連事業)

不動産業界におきましては、建築コストが抑制される機運はなく、新築物件の価格高止まりが継続する可能性が高いとされています。また、金利変動のリスクが高まっており、動向を注視する必要があります。また、緩やかな景気回復を前提に、賃貸オフィスビル市場の需要は堅調に推移すると見込まれます。今後、国内の主要都市ではオフィスビルの大量供給が見込まれるものの、事務所移転や拡大の需要もあることから、賃料は底堅く推移するものと予想されます。

このような状況下で、不動産関連におきましては、中長期修繕計画に基づき、物件の付加価値や安全性の向上を図るとともに再生可能エネルギーの積極的な活用等、環境に配慮したオフィスビル運営により、既存物件の品質、サービスの高度化を図り、高稼働率の維持を図ってまいります。さらにグループ全体の企業価値の向上を目指し、資産の有効活用、流動化等のCRE戦略の高度化を進めてまいります。また、越中島開発計画においても、着実に計画を推進してまいります。

 

日本の農業は、高齢化による生産者の減少、資材や農機具の高騰、異常気象など様々な課題を抱えています。

ヤマタネグループでは、パーパスである「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」のもと、ヤマタネグループのリソースやノウハウを活用し、「産地の続くを支える」ための課題解決に向け取組んでおります。

 

農業問題への対処すべき課題は以下のとおりであります。

(農業問題への取組み)

地域の生産者と共に直接農業生産を行い、提携先企業との協業を通じて先進的な手法を実証することで、新たな農業運営モデルの確立を目指す活動を行っております。

 

●人財支援・・後継者不足への取組み

 <現状>
・一次産業従事者は高齢化や担い手不足といった要因から、大幅な人財不足状態にあります。
・日本には四季があり、一次産業の繁忙期は人が足りなくなってしまう等、必要な人員(労働力)の偏り

 が発生する一方、一次産業従事者にとって収入の問題から従業員として通年雇用を行うのが困難であり

 ます。

⇒各事業との連携

・海外人財の状況を把握・支援・管理・教育し、通年を通して必要とされるエリアに人財を派遣する取り

 組み。

・DX推進により、ドローンを活用した農薬散布や物流を行う取り組み。

・プラットフォームにより、一次産業従事者からの相談を受け、課題を可視化し提言する取り組み。

 

 

●農産物の生産革新・・収益確保への取組み

 <現状>
・当社グループが取扱うコメ生産においては、利益率が低い状態です。

・担い手の急激な減少に加え、生産性も向上しておりません。

⇒各事業との連携

・地域の生産者と共に直接農業生産を行い、提携先企業との協業を通じて先進的な手法を実証し、高収益

 モデルの確立を目指しております。

・生産から販売まで一貫した事業を展開し、高効率な栽培技術による原価削減や梱包効率化、海外市場開

 拓、収益性の高い農業モデルの構築を目指しております。

・AIシステムを活用して農場運営に於ける経営管理や作業手順を最適化し、経験値に依存しない効率的

 且つ再現性の高い農場運営の構築や高収益が見込める有機栽培への取り組み。

・農業リモートセンシングサービス「e-kakashi」や自動で雑草を抑制し有機米の栽培を促進させるための

 農業用ロボ(アイガモロボ)を活用する取組み。

・未利用バイオマス(籾殻等)の課題解決に向け、籾殻からセルロースを抽出する事業を開始します。環

 境型農業への復元を目指すとともに、稲作産地での籾殻処理に伴うコストの削減や資源の再利用を通じ

 た生産者への還元を期待できます。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは、環境・社会・経済の観点から持続可能な社会への貢献と企業価値向上のため、サステナビリティ方針を策定し、事業上のマテリアリティの特定と2030年目標を設定しております。取締役会では、当社グループの長期ビジョンや中期経営計画、年度経営方針、年度計画の審議において、サステナビリティ方針と目標に基づいてその適切性を検証し、その監督権限によって取り組みが有効になされることを常勤取締役及び執行役員に求めています。

 

サステナビリティ経営課題に対する取締役会の役割は下記の通りです。

a.サステナビリティ方針に基づき特定されたマテリアリティの承認

b.経営会議で審議されたサステナビリティ目標や重要課題の承認

c.マテリアリティや2030年目標に基づく長期ビジョンの承認

d.マテリアリティや2030年目標に基づく中期経営計画の承認

e.毎年度のサステナビリティ関連計画や予算の承認

f.計画の進捗確認と、執行役員や関係部署への周知と指導

g.その他のサステナビリティに関する重要事項の指導

 

 推進体制図


 

(2) 戦略

当社グループにおける、気候変動問題に対処するための取組み及び人的資本に関する取組みは、以下のとおりであります。

<気候変動に対処するための取組み

気候変動に関するリスクと機会について、確からしさと影響の大きさの観点から、重要度評価を行いました。このうち重要度が高く、試算可能なリスクについて、移行リスクと物理的リスクによる追加コスト・被害額を対象とし、2030年(短期)2050年(中期)2100年(長期)時点での当社グループへの財務的影響を試算しました。シナリオ分析は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)の情報に基づき、1.5℃/2℃上昇、4℃上昇を想定しました。当社グループでは、特に重要度の高いリスクの軽減及び機会獲得に向けて、対応策を検討・実行しており、1.5℃/2℃、4℃シナリオに対して十分なレジリエンスを有していることを確認しています。

 

移行リスク

 ・税制度導入による追加コスト 

  ① 炭素税等

物理的リスク

 ・自然災害による追加コスト・被害額

  ① 洪水・高潮による拠点の浸水

 

 

 シナリオ分析と対応策


 

<人的資本に関する取組>

企業理念に基づき、持続的な企業価値の向上に向けて、事業変革に取り組んでいくためには、多様な人財を確保・育成していく必要があると認識しております。このため、サステナビリティ方針に基づき特定したマテリアリティの取組み重点テーマの一つに「人財の多様性と活躍の促進」を掲げ、生産性の向上による働き方改革、人財育成及び教育、女性活躍を含む多様な人財の活躍推進、差別防止及び社会的弱者への配慮に取り組むこととしております。また、教育・研修などの人的資本への投資を拡充するとともに、専門能力や経験を有する高齢者雇用や女性管理職の登用を推進し、多様な人財基盤を構築することを目標としております。これらの重点テーマや目標に取り組んでいくため、人財の多様性を含む人財の育成に関する方針(人財育成方針)及び社内環境整備に関する方針(社内環境整備方針)を定め、着実に取組みを推進してまいります。

 

人財育成方針

当社の最も重要な資本は人財であり、教育や研修あるいは日々の業務等を通じて、それぞれの能力を高めることにより、企業の活性化と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。当社は人と組織のレベルアップのために社員に自己啓発の努力を求めると共に、教育体制を整え、教育・研修・自己啓発支援等を通じて社員一人一人の成長を支援してまいります。そのために必要な施策や投資を積極的に行ってまいります。

 

具体的には、以下の取組みを推進しております。

 

① 戦略的な人事制度の構築

人事管理や評価等の取組みはこれまで、人事関係者や所属長の主観的な所見に基づいて行われる傾向がありました。しかし、主観に頼った人事管理だけでは、個人の能力を正しく把握できないだけでなく、誤った判断を招きやすくなります。そのような状況から、社員のデータを収集・蓄積するデータ基盤としてカルテ化し、データ分析に基づく適切な人員配置の実施や、離職因子の分析に取り組んでおります。

 

② 社員の成長支援のための研修制度の拡充

社員に対して、等級要件に定められた期待される役割を積極的に果たし、次等級の役割を積極的に挑戦していくことを求めています。社員がその期待に応え、能力を最大限発揮できるように、必要な知識技能の習得を支援し、成果と成長を実感できるようにする必要があります。そのために、職位別新任研修や等級別スキル研修などの研修制度の拡充を図っております。

 

③ 次世代経営人財の育成強化

中長期的な視点で事業を捉え、ヤマタネの企業価値向上や持続可能性について包括的に考えることができ、理念や自分の理想に加え、ヤマタネの社会的使命を自覚し、推進できる将来の経営人財(マネジメント人財・オペレーショナルエクセレンス人財)となり得るリーダーを意図的・計画的に輩出していくために、執行役員・部長・課長層から候補者を選抜し、経営人財育成プログラム(ヤマタネ経営塾)を通じて徹底的に鍛え上げていく育成カリキュラムを実施しています。また、当該人財となるべく次の世代に向けた育成プログラムも導入しています。

 

社内環境整備方針

当社は全ての社員等がその能力を十分に発揮できるようにすると共に、仕事と生活の調和された「ワークライフバランス」をめざし、職場環境の整備と多様な人財が活躍できる雇用環境の整備に取り組んでまいります。

 

具体的には以下の環境を整備しております。

 

① 生産性向上による働き方改革への取組み

各部門において、業務改革及びクロストレーニングの推進を図るとともに経営会議で時間外労働実績の報告を行う他、社内会議体を通じて、時間外労働の削減に向けた意識啓発を図っております。また、物流現場や生産工場においては生産性向上に向けた各種アプリの開発、RFIDやデジタルサイネージ等を導入。また、深刻化する人員不足への対応としてAGVや無人フォークリフトの導入検討を進めており、今後自動化、省人化を加速させてまいります。

 

② 女性が活躍できる雇用環境の整備

創業者である山﨑種二の活躍を支えた妻「ふう」の名前より、当社の女性活躍推進プロジェクトを「ふうさんプロジェクト」と称しています。プロジェクトでは女性同士のネットワーク構築、キャリア教育を目的としたフォーラムの開催、職種転換推進、社外研修への参加促進、また、社外で活躍されている方々を招いての講演会を実施し、活発な意見交換が行われています。また、女性の活躍に必要な社内制度設計や意識改革に向けた改善策等の検討を行い、経営会議へ提言を行っております。

 

③ 定年後も働き続けられる高齢者雇用体制の構築

物流業などのエッセンシャルサービスを提供する当社にとって、人口減少に伴う現場の人員不足は大きな課題です。そのため、社員が高齢になっても引き続き倉庫現場や精米工場で働けるために、高齢者雇用安定法の理念に沿って高齢者雇用体制の構築を図っております。

 

④ キャリア採用者の活躍推進

事業環境の変化や経営戦略の転換等に伴い必要な人財を外部から登用・確保する観点からキャリア採用については、毎年一定数の採用を目標としています。2017年から本格的なキャリア採用を開始し、非正規社員から正社員への登用も積極的に行っております。なお、管理職登用については採用時期や国籍での差は生じないと認識しております。

 

⑤ タレントマネジメントシステム導入

近年、人的資本経営の重要性が高まる中、社員一人ひとりのスキルやキャリア志向を可視化し、戦略的人財配置や育成を実現するため、タレントマネジメントシステムの導入を決定しました。従来の属人的な管理手法では対応が難しく、社員のエンゲージメント向上や離職防止にも限界があったことから、データに基づいた一元的な人財管理体制の構築を目指したものであります。

 

<パーパス(存在意義)への取組>

当社グループは、ヤマタネグループのValues(大切にする価値観)、「挑戦を楽しむ」「チームの力を信じる」「“ありがとう”を繋げる」をすべての業務の中心に据え、パーパス経営を実践していきます。

次の100年に向けた第二の創業期を迎え、チャレンジ精神溢れる企業文化の醸成を図ります。社員の活性化を最優先課題とし、企業価値の極大化、社員のエンゲージメント向上、処遇改善、株価向上を目指します。

中期経営計画「ヤマタネ2028 プラン」の初年度として、人的資本投資を中心とした投資活動を積極的に推進し、中期経営計画達成に向けたスタートダッシュを図ります。

 

① 心理的安全性の確保

心理的安全性の確保を目的としたマネジメントシステムを構築することで、エンゲージメントが向上し、パーパスも「確かなもの」になるという考えに基づき、外部機関と連携し、心理的安全性確保プログラム(研修)を継続してまいります。これは、心理的安全性確保についての理解や、年代や職場の垣根を越えた場でのマインドリセットに繋がる新鮮な対話の体験することが目的で、社員全員の受講を目指してまいります。

 

② 社内コミュニケーション活性化

各部拠点の月例会議において、社員個々人が作成した「マイパーパス」をお互いに共有することで、パーソナリティの相互理解を促進します。また、当社グループのパーパスと「マイパーパス」の接点を見つけ、具体的行動目標を設定することで行動変容を促してまいります。また、「関係の質」向上のために必要な相互理解の機会創出を目的に部門間やグループ会社間等の垣根を越えた部活動・懇親会等の活性化を図ってまいります。

 

③ 社員のエンゲージメントレベルの把握

中長期的な組織力の維持・向上を目指し、自社にとって重要なエンゲージメント項目を整理し、社員のエンゲージメントレベルを定期的に把握することといたしました。

 

④ 社内活性化に向けた各種プロジェクト活動への参画公募制化

2024年7月に迎えた創業100周年や越中島地区再開発等に関して各種プロジェクトを発足させています。プロジェクトメンバーについては可能な限り公募を行い、社員が自律的にキャリアを形成し、高いエンゲージメントレベルで働ける環境を整備しております。

 

⑤ 社会貢献活動の推進

ヤマタネ創業の地「深川」で開催している障がい者のアート作品を中心とした芸術祭「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」は、芸術の地域活性化と福祉の課題解決を同時に実現するCSV型の価値づくりを目指しており、「地域コミュニティの一員として文化事業等を通じた地域社会への貢献」をサステナビリティ方針の取組テーマとして掲げている当社グループは、同芸術祭へ協賛しております。また、中学・高校等からの職場体験受入や清掃活動を通じて地域貢献活動を推進しております。

 

⑥ 部門別パーパス策定

全社的なパーパス経営の推進に伴い、各部門が自らの業務と企業の存在意義とのつながりを明確にし、主体的な価値創出を促すことを目的に、部門別パーパスの導入を決定しました。画一的な方針浸透だけでは各現場の納得感が得られにくく、部門の特性や役割に即したパーパスを策定することで、社員の共感と自律的な行動変容を促進し、組織全体の一体感と挑戦意欲の醸成を目指してまいります。

 

⑦ チャレンジ評価制度

チャレンジ精神溢れる企業文化を醸成するため、チャレンジ評価制度の導入を決定しました。従来の評価制度では成果重視に偏り、挑戦的な行動やプロセスが正当に評価されにくいという課題がありました。本制度では、必ずしも成果にはこだわらず、失敗を恐れず挑戦する姿勢や成長への取り組みを評価対象とすることで、社員の自律的な行動と組織の持続的な成長を後押しすることを目指しております。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、リスクに対応するため、社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。同委員会ではサステナビリティ課題を含む当社グループ全体のリスクマネジメントにあたるとともに、リスクマネジメント方針の策定、体制の整備、運用状況の確認を行っています。実務面では、環境経営戦略に関してはコーポレート本部経営企画部長が担い、人的資本戦略に関してはコーポレート本部人財戦略部長が担い、コーポレート本部長が2つの戦略の責任を負います。

 

リスク管理のプロセス

現在、下記①~④に示す手順に従い、3年に1回の中期経営計画の策定時及び必要に応じて、バリューチェーン全体のサステナビリティ関連のリスクと機会の特定及び評価を行っております。そのプロセスは取締役会が決定した「内部統制システムの整備に関する基本方針」に基づくリスクマネジメント方針のリスク管理プロセスと統合しております。

 

① マテリアリティの特定プロセス

経営企画部が課題候補リストを作成し、カンパニーごとにカンパニー長がバリューチェーンにおける課題の抽出を実施します。抽出した課題をカンパニーの重要度と社会的重要度を判定して、両方の重要度が高いものが各カンパニーのマテリアリティとして特定されます。マテリアリティは経営会議で決議後、取締役会で承認されます。現在、マテリアリティに人的資本の価値向上や気候変動問題への対応は含まれています。

 

② マテリアリティの経営戦略への統合プロセス

まずマテリアリティに対処するため3ヵ年の中期経営計画が策定されます。それに基づき、リスクマネジメント委員会は、リスク毎の対応方針として年度経営方針を決定します。カンパニー長はそれに基づき、カンパニーごとの年度計画を作成します。計画の適切性は経営会議で決議後、取締役会で承認されます。

 

③ 実行と実績評価のプロセス

活動の進捗や成果を、社長及び常勤取締役が出席する年二回のレビュー会議で評価します。社長及び常勤取締役は評価に応じて修正や是正といった処置をカンパニー長及び執行役員に指示します。それらの内容は、社長及び常勤取締役の職務執行状況として取締役会に報告されます。

 

 

④ 見直しと修正のプロセス

3ヵ年の中期経営計画期間中に経営環境に大きな変化があった場合、リスクマネジメント委員会は各カンパニーに対策を指示します。指示を受けたカンパニー長及び執行役員は、対応方針を決定して計画を策定します。計画の適切性は経営会議で決議後、取締役会で承認されます。

 

(4) 指標及び目標

<気候変動>

当社グループでは「温室効果ガス排出量削減」を事業活動のマテリアリティの一つとして特定しており、GHGプロトコルに沿ってScope1~3までの排出量の算定を実施し、目標としてGHG排出量(Scope1・2)を「2030年までに2013年度対比50%削減」を掲げております。

 

  □GHG排出量実績(注)

区  分

排出量(tCO2)

2024年度

Scope1(燃料の燃焼・フロンの漏えい)

 

4,960

Scope2(電気・熱の使用)

ロケーション基準

12,652

マーケット基準

5,168

Scope3(サプライチェーンを通じた間接排出)

288,867

 

計(Scope1+2)

(ロケーション基準)

17,612

(マーケット基準)

10,128

 

計(Scope1+2+3)

(ロケーション基準)

306,479

(マーケット基準)

298,995

 

(注)ISO14064-3に準拠して温室効果ガスの排出量を算定

 

<人的資本・多様性>

上記(2)戦略において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、次の指標を設定しております。また、各指標の目標は、中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」最終年度となる2027年度としております。なお、連結グループ全体での目標設定が困難なため、当社単体での指標及び目標を設定しております。

 

人財育成方針に関する指標を次のように定めております。研修制度を拡充するための費用を投資と位置付け、一人当たりの研修費用を研修の拡充度を表す指標としております。また、誰もが研修を受ける環境となっているかを確認する指標として職位別新任研修受講修了率と等級別スキル研修受講率を設定しております。さらに、社員のキャリアプランの設定が重要であるとの認識の下、非管理職を中心にキャリアプランについて人事部長が直接面談を実施するキャリア面談実施率を指標としております。

 

指標

実績(2022年度)

実績(2023年度)

実績(2024年度)

目標(2027年度

一人あたり研修費用

35,392円

74,202円

89,961

90,000

職位別新任研修受講修了率(注1)

27.0%

65.0%

94.6

100.0

等級別スキル研修受講率(注2)

96.4%

79.0%

90.6

100.0

キャリア面談実施率(注3)

89.3%

97.0%

99.6

100.0

 

(注) 1.職位別新任研修とは、ヤマタネの現状や理念を再確認し、職位別に必要な共通スキルを習得する研修です。

         (職位別新任研修受講修了率は、同研修受講修了者数(2022~2024年度累計)を同研修受講対象者数で除し

      て算出しております)。

2.等級別スキル研修とは、等級毎に必要なスキルを習得する研修であり、職位別新任研修の補完的位置づけの

     研修としております(等級別スキル研修受講率は、年度毎の同研修受講者数を同研修受講対象者で除して算

     出しております)。

3.キャリア面談とは、毎年1度、人事部長が、キャリアプランに関して社員と行う面談を示しております。

    なお、同面談の結果を社員データとして収集・蓄積するとともに人事異動等へ反映させております(キャリ

    ア面談実施率は、1等級から3等級の全社員、4等級の面談希望者を加算した人数を1等級から4等級全社

      員で除して算出しております)。

 

社内環境整備方針に関する指標を次のように定めております。生産性向上による働き方改革に取組んでおりますが、その成果を確認するため、一人当たり時間外労働時間及び年次有給休暇取得率を指標としております。また、女性が活躍できる雇用環境の整備を確認するため、女性管理職比率を指標としております。また、高齢者雇用体制の構築については、定年後再雇用者継続雇用率を、またキャリア採用者の活躍推進については、キャリア採用者管理職比率をそれぞれ指標として設定しております。

 

指標

実績

(2022年度)

実績

(2023年度)

実績

(2024年度)

目標

2030年

一人当たり時間外労働時間(月平均)(注1)

21.5時間

22.6時間

22.5時間

20時間以内

年次有給休暇取得率(注2)

63.2%

70.0%

72.8

80%以上

女性管理職比率(注3)

9.6%

13.3%

14.4

20%以上

定年後再雇用者継続雇用率(注4)

85.7%

75.0%

71.4

90%以上

キャリア採用者管理職比率(注5)

11.6%

19.0%

25.2

16%以上

 

(注) 1.当社が策定した一般事業主行動計画では、一人当たり時間外労働時間(月平均)の2027年度目標を21時間以

 内としております。

2.正社員の年次有給休暇の総取得日数を年次有給休暇総付与日数(前年度繰越分含まず)で除して算出してお

         ります。なお、当社が策定した一般事業主行動計画では、年次有給休暇取得率の2027年度目標を73%以上と

     しております。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律64号)の規定に基づき算出したもので

    あります。なお、当社が策定した一般事業主行動計画では女性管理職比率の2027年度目標を17%以上として

    おります。

4.当事業年度内に定年後再雇用社員になった正社員数を当事業年度内に定年を迎えた正社員数で除して算出し

    ております

5.キャリア採用者の4等級以上の人数を総管理職数で除して算出しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループにおいては、事業に関連する様々なリスクを適切に管理し、事業の遂行とリスク管理のバランスを取りながら持続的成長による企業価値向上をめざしております。このため、取締役会が決定した「内部統制システムの整備に関する基本方針」に基づき、リスクマネジメント方針を制定し、全社的なリスクマネジメントを計画・実行するために「リスクマネジメント委員会」を設置しております。事業を遂行していく上で生じる可能性のある様々なリスクへ適切な対応を行うために、現状を正しく評価し、発生可能性とその影響度を分析し、リスク対策の実施等を行い、リスクマネジメントの継続的な改善に努めてまいります。

なお、文中に記載されている将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 事業ごとの経営成績の変動リスク

  当社グループは、物流関連事業、食品関連事業、情報関連事業、不動産関連事業の各事業を営んでおり、各事業の主要なリスクは以下のとおりです。

(物流関連事業のリスク)

当社グループの主要顧客基盤は大手の食品、家電、医療分野と生活必需品となっております。しかしながら、顧客の市場環境は様々であり、市場環境に対応し各顧客の物流戦略が変わる可能性があります。その影響を受け、当社グループでの取扱量の変動による収益への影響、運営方法の変動による運営コストへの影響、また、運営拠点の見直し等、事業採算が悪化するリスクが考えられます。当社グループとしては、顧客との連携を図り顧客ニーズを速やかにとらえ、採算と顧客ニーズのバランスを考慮した提案を行うことにより、リスクの低減を図れると考えております。

(食品関連事業のリスク)

販売においては、人口減少や消費者の消費性向の変動により食料消費は減少していくことが想定されます。この市場環境の影響により競合との価格競争リスクが高まることが考えられます。調達においては米の生産地における高齢化の進展と昨今の気候変動の影響により生産量が減少していくことも想定され、調達価格の変動リスクも高まることが考えられます。また、輸入冷凍加工食品については、地政学リスク、為替リスク等を抱えています。当社グループとしては、生産地やサプライヤーとの協業を強化していくことによって調達力を高めていくことにより、販売、調達両面での価格リスクの低減を図れると考えております。製造している商品につきましては、品質管理の徹底を目的とした「CS向上委員会」を設置し、商品管理を徹底しておりますが、万が一製品の表示や品質に問題があった場合には社会的信用の低下を招くとともに商品回収や交換、弁金等大きな損失が発生する可能性があります。

(情報関連事業のリスク)

当社グループは汎用系システムを主力事業としてまいりました。しかしながら、AI、IoT等の先端IT技術が急速に進展する中で、汎用系システム事業は一定程度の需要は見込まれるものの、技術競争力が低下していくリスクが考えられます。当社グループとしては、専門部署において先端技術をキャッチアップすると共に外部システム会社との連携を強化していくことにより、リスクの低減が図れると考えております。

(不動産関連事業のリスク)

当社グループは首都圏を中心に保有しているオフィスビルの賃貸事業を主力事業としております。しかしながら、首都圏では大型オフィスビルの供給が続いており、テナント退去による空室リスクや価格競争リスクが考えられます。当社グループとしては計画的な修繕や再開発により競争力を維持し、リスクの低減を図れると考えております。

(各事業に共通するリスク)

取引をしている顧客の属する業界の環境変化あるいは顧客独自の理由による事業の状況変化により取引を継続することができない事態になる可能性があります。また、その様な際には、突然の取引停止により損失を被る可能性もあります。

 

 

(2) 財政状態の変動について

当社グループは、有利子負債の削減を進めるとともに、変動金利借入の金利変動リスクを低減するため、主に固定金利による調達を図ってまいりました。しかしながら、変動金利借入利息及び借換時における資金調達に関しては、金利情勢の影響を受け、業績が変動する可能性があります。また、当社グループが保有する資産について、今後経済価値が低下した場合には必要な減損処理を実施する必要が生じ、財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 情報セキュリティについて

情報セキュリティに対しては、社内情報管理体制の整備に努め、情報流出の防止、社内情報システムへの外部からの侵入防御等適切な対応をしております。また、個人情報の取扱いについてもプライバシーマークの認証を取得する等適切な対応をしております。しかしながら、情報システムの一時的な操作不能状態や情報流出、喪失等の事態が生じた場合には当社グループのみならず取引先企業等への影響が予想され、当社グループの信用低下並びに業績への影響を招く可能性があります。

 

(4) 自然災害等について

大規模地震等の自然災害や新型コロナウイルス等の感染症につきましては、対応策を検討し、対応マニュアルを整備し、事業継続計画(BCP)を策定しておりますが、当社グループのみならず取引先企業等に多大な被害が発生した場合には、業績への影響を招く可能性があります。

 

(5) コンプライアンスについて

当社グループにおいては、企業の社会的使命を認識し、関係法令及び社内規程遵守の徹底により全ての企業活動が健全な商習慣と企業倫理に適合するよう、「コンプライアンス推進委員会」を設置し、コンプライアンス基本方針を作成するとともに、行動規範、行動原則を制定しています。しかしながら、この様な活動を実施していても、関連法令、規制などに抵触する事態が発生する可能性があり、その場合には社会的信用の低下と多額の費用発生あるいは損害賠償が請求されるなど、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 人財について

当社グループにとって人財は重要な経営資源であり、グループの成長のためには、人財の活用が大きな課題となります。またグループではそれぞれ異なる事業を展開しており、様々な人財を必要としております。この様な状況において、優秀な人財の採用、確保と人財の育成が出来ない場合、あるいは人財の流出等を防止できない場合には当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、適切な労務管理ができない等により従業員に重大な労働災害が発生した場合など社会的信用の低下などの問題が生じる可能性があります。

 

(7) エネルギー価格や外注コスト等の高騰について

ウクライナ情勢の長期化や円安の進行等によりエネルギー価格等の高騰が更に進み、長期化する可能性があります。当社グループでは、物流事業での運送事業コスト等の上昇や食品事業での製造コストの上昇、また、設備投資額の上昇等により業績に影響を及ぼす可能性があります。また、物流2024年問題の顕在化等により、懸念されるドライバー不足の傾向はさらに強くなることが予想され、外注コスト等の上昇により業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは可能な限り顧客への価格転嫁を進め、また、効率的な事業運営や生産工程の効率化等により、業績への影響の低減を図ってまいります。

 

(8) M&A等について

当社グループでは、企業買収や出資を行う際、事前にリスクを把握・回避するために、対象となる企業の財務内容や事業等についてデューデリジェンスを実施しております。しかしながら、買収や出資後に予期しない債務が発覚する可能性や、事業環境や競合状況の変化等により当社グループの事業計画に支障をきたす可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

2023年10月2日(みなし取得日2023年10月1日)に行われた株式会社ショクカイとの企業結合について前連結会計年度に暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における経営成績の状況については、次のとおりであります。

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により、景気は緩やかに回復いたしました。一方で、継続的な物価上昇による消費マインドの下振れや米国の通商政策の影響等、先行き不透明な状況が続いております。

このような状況下におきまして、当連結会計年度の連結業績は、食品関連事業におけるコメ卸売販売において、コメ不足の影響で販売単価が大きく上昇したこと、また、2023年10月にM&Aで100%連結子会社となった加工食品卸売業である株式会社ショクカイ(以下、「ショクカイ」という。)の業績が通年で寄与したこと等により増収増益となりました。

この結果、売上高は809億22百万円(前期比25.4%増)となり、営業利益は37億80百万円(同8.5%増)となりました。経常利益は36億50百万円(同14.8%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は30億91百万円(同24.3%増)となりました。なお、当連結会計年度の業績計画に対しましては、売上高は概ね計画通りの水準となり、利益面では全ての項目で上回っております。

 

当社グループのセグメントごとの業績は以下のとおりであります。

(物流関連事業)

売上高は249億27百万円(前期比2.2%増)となり、営業利益は16億25百万円(同29.4%減)となりました。

(食品関連事業)

売上高は495億86百万円(前期比45.2%増)となり、営業利益は23億51百万円(同269.2%増)となりました。

(情報関連事業)

売上高は17億52百万円(前期比1.0%増)となり、営業利益は46百万円(同57.3%減)となりました。

(不動産関連事業)

売上高は46億55百万円(前期比10.0%増)となり、営業利益は19億8百万円(同7.3%減)となりました。

 

当連結会計年度末における財政状態の状況については、次のとおりであります。

総資産は前連結会計年度末比111億38百万円増の1,670億44百万円 (7.1%増)となりました。負債は前連結会計年度末比88億5百万円増の1,086億60百万円 (8.8%増)となりました。純資産は前連結会計年度末比23億32百万円増の583億84百万円 (4.2%増) となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動による収入57億97百万円や財務活動による収入28億64百万円がありましたが、不動産などの成長戦略への積極的な投資を行い、投資活動による支出は100億27百万円となり、その結果、前連結会計年度より13億65百万円減少し、当連結会計年度末には49億82百万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの業種・業態は多分野にわたっており、また、取引形態も一様ではないので、セグメントごとに生産・受注及び販売の規模については金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」における各セグメントの経営成績の分析に関連付けて示しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の状況に関する認識及び分析・検討は以下のとおりであります。

当連結会計年度の経営成績は、物流関連では、関西地区での管理面積増加と国際輸送のフォワーディング及び海外引越の取扱いが前期を上回って推移し、食品関連ではコメ卸売販売業においてコメ不足の影響で販売単価が大きく上昇いたしました。また、「物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジしていく」という長期ビジョンに基づき2023年10月にM&Aで100%連結子会社となったショクカイの業績が概ね計画どおりに推移し、連結業績に通期で寄与いたしました。この結果、売上高は809億22百万円(前期比25.4%増)となりました。営業利益は、人的資本投資の拡充に加え、物流関連における外注コストの増加と一部荷主の解約、また、のれん償却等の費用計上がありましたが、ショクカイの業績が通期で寄与したことに加え、コメ卸売販売業で価格転嫁を進めたことにより、37億80百万円(同8.5%増)となりました。経常利益は、印西精米センターでの補助金収入がなくなった一方で、M&Aに伴うシンジケートローン手数料がなくなったこと等から、36億50百万円(同14.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、さいたま市岩槻区に保有していた遊休不動産の売却による固定資産売却益がなくなったものの、投資有価証券売却益等の特別利益の計上や2025年2月の連結子会社であった山種不動産株式会社の吸収合併により非支配株主に帰属する当期純利益が減少したことにより30億91百万円(同24.3%増)となり、ROEは5.6%となりました。なお、中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」の最終年度となる当連結会計年度において、当中期経営計画の財務目標の内、売上高、営業利益、EBITDA、ROE、配当性向の各項目の計数目標を達成いたしました。

 

当連結会計年度で重点的に取組んだ対処すべき課題は以下のとおりです。

a.「100周年事業の推進」

b.「パーパス経営の推進」

c.「企業価値向上に向けた取組」

d.「中期経営計画2025の達成と次期中期経営計画の策定」

e. 「DX推進」

 

当連結会計年度では、創業100周年を迎えるにあたり、改めて創業当時のエネルギーに思いをはせ、次の100年に向けてチャレンジ精神溢れる企業文化の醸成を目指すため、顧客・地域・従業員等、全てのステークホルダーへの感謝の気持ちを忘れずに、グループ社員全員が一丸となり様々な100周年事業に取り組み、隅田川での花火大会を主体とした100周年事業式典においては、顧客・地域等の多くの方々からご好評を頂いておりました。

当社グループのパーパス(存在意義)である「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」を実現すべく、若手社員を中心としたPJチームにて「大切にすべき価値観」を策定し行動規範の策定及び理念体系を再整備し社内に浸透をさせております。また、部活動等による社内コミュニケーションの活性化、チャレンジを評価する制度の導入、人事評価制度の見直しにも着手しております。

更なる企業価値向上へ向けて、役員及び社員への譲渡制限付株式報酬制度の導入や各種研修実施など人的資本投資を拡充しております。また、中期経営計画の方針である「チャレンジ領域」への取組みとして、農業における産地問題解決や新たなビジネスに関連した出資を積極的に行っており協業等を開始しております。本社が所在する越中島開発計画につきましては、2025年5月にグランドビジョンを公表しており、CRE戦略の観点を持って経済的価値と社会的価値を両立する開発計画の検討を推進しております。

中期経営計画の最終年度である2025年3月期においては、各事業目標を着実に実行し、最終財務目標である売上 高565億円・営業利益32億円・EBITDA66億円・配当性向35.0%以上の目標は達成しております。また、次期中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」につきましては2024年11月に弊社HPにて公表しております。

管理業務の統合や効率化に向け各改善施策に取組んでおります。また、情報セキュリティ対策に注力するとともに情報システムの最適化を推進しております。

 

当社グループのセグメントごとの経営成績の分析は以下のとおりであります。

(物流関連事業)

物流業界におきましては、国内貨物輸送では2024年度上期の総輸送量は堅調に推移しましたが、下期は建設関連貨物が大幅なマイナスで推移したことで、通期の総輸送量は前年を若干下回りました。一方で、国際貨物輸送では、世界経済の緩やかなプラス成長や円安を背景とした輸出の活性化により、総輸送量が前年を若干上回る状況となりました。

このような状況下で、物流関連におきましては、国内物流では、上期は堅調に推移していた倉庫事業における入庫トン数が下期に落ち込み、通期でも前年を下回りました。一方で、国際業務において、国際輸送取扱件数と海外引越取扱件数が前年を上回り堅調に推移しました。この結果、売上高は249億27百万円(前期比2.2%増)となりました。一方、営業利益は、一部荷主の解約の影響があったこと、2024年6月に竣工した本牧埠頭新倉庫の不動産取得税等の計上や減価償却費が増加したこと、加えて物流2024問題を背景とした想定を上回るコスト増加に対し顧客への価格転嫁が遅れたこと等から、16億25百万円(同29.4%減)となりました。

(食品関連事業)

コメ流通業界におきましては、近年の高温による品質低下と農家の高齢化の進行による生産量減少などを主要因とし、令和の米騒動と呼ばれる大きな変動に見舞われました。需給の逼迫により、民間在庫は統計開始以降の最低水準で推移し、店頭小売価格は前年比150%超となりました。また、円安の進行やエネルギー価格の高騰で、食品全体の価格が上昇し、消費者物価指数は前年を大きく上回り推移しました。

このような状況下で、食品関連では、コメ卸売販売業において、原料調達が計画を下回り販売数量は71千玄米トン(前期比23.0%減)となりましたが、需給の逼迫に伴い販売単価が上昇し、売上高が増加しました。また、2023年10月より100%連結子会社となった加工食品卸売業のショクカイは、産業給食事業向け及びデリカ事業向けの販売が堅調に推移し、業績が通年寄与しました。この結果、売上高は495億86百万円(前期比45.2%増)となりました。営業利益は、コメ卸売販売業において、需給環境が逼迫する中で顧客への安定供給を図るとともに、価格転嫁を進めたことで増益となり、さらにショクカイの業績が概ね計画通りに推移して通期で寄与したことから、23億51百万円(同269.2%増)となりました。

(情報関連事業)

情報サービス業界におきましては、企業のDX推進やクラウドサービスの利用拡大、セキュリティ対策の重要性が高まり、AI関連の需要増加などを背景に市場規模が拡大しました。大企業を中心としてIT投資は増加し、業界全体は高い成長率を維持しました。

このような状況下で、情報関連におきましては、棚卸機器レンタル事業でモバイルアプリによるサービスへの移行が進みビジネスモデルの転換が進みました。また、常駐型ビジネスにおいて前年のインボイス対応に向けたスポット開発案件がなくなったものの、汎用機基盤の開発・運用業務の新規獲得や拡大が寄与しました。その結果、部門全体の売上高は17億52百万円(前期比1.0%増)となりました。一方で、営業利益は、汎用機基盤の開発・運用業務は堅調に推移したものの、Windows10の保守切れ対応に伴いオフィスライセンス一括購入を実施したこと等により、46百万円(同57.3%減)となりました。

(不動産関連事業)

不動産業界におきましては、住宅市場が全国的に上昇傾向にあり、特にマンション価格の上昇が顕著となりました。賃貸オフィスビル市場でも、経済の緩やかな回復に伴う経済活動の活性化やオフィス回帰の動きにより空室率は低下傾向となりました。一方で、資材費や人件費の高騰による建築コストは高止まりしており、開発計画の見直しを迫られる案件も見受けられました。

このような状況下で、不動産関連におきましては、既存物件での高稼働率を維持したことに加え、新規賃貸不動産を取得したこともあり、売上高は46億55百万円(前期比10.0%増)となりました。一方で、営業利益は前年に計上した「KABUTO ONE」の不動産取得税の減額分がなくなったことに加え、2025年2月に連結子会社であった山種不動産を吸収合併したことにより不動産移転に係る登録免許税の一時費用の計上があり、19億8百万円(同7.3%減)となりました。

 

 

財政状態の状況に関する認識及び分析・検討は以下のとおりであります。

(資 産)

当連結会計年度末における流動資産は248億78百万円となり、前連結会計年度末比24億5百万円増加いたしました。これは主に固定資産から販売用不動産への振替等により棚卸資産が27億円増加したことによるものであります。固定資産は1,421億21百万円となり、前連結会計年度末比87億75百万円増加いたしました。これは主に物流関連での新倉庫建設や不動産関連での賃貸物件購入等により有形固定資産が60億72百万円増加したこと、また時価評価による投資有価証券の増加等により投資その他の資産が33億36百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は1,670億44百万円となり、前連結会計年度末比111億38百万円増加いたしました。

(負 債)

当連結会計年度末における流動負債は372億95百万円となり、前連結会計年度末比159億40百万円増加いたしました。これは主に固定資産からの振替等により1年内返済予定長期借入金や1年内償還予定の社債が増加したことによるものであります。当連結会計年度末における固定負債は713億64百万円となり、前連結会計年度末比71億35百万円減少いたしました。これは主に、設備投資資金の借入等により長期借入金29億26百万円の増加はありましたが、流動資産への振替等により社債が109億79百万円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は1,086億60百万円となり、前連結会計年度末比88億5百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は583億84百万円となり、前連結会計年度末比23億32百万円増加いたしました。これは主に剰余金の配当8億21百万円はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益30億91百万円や有価証券評価差額金が23億52百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は35.0%(前連結会計年度末は33.2%)となりました。

 

当連結会計年度は、長期的戦略への計画的な取組みに基づき、投資資金の調達を借入により行い、不動産関連の投資や物流関連の新規開発投資及び食品関連の出資を実施した結果、資産及び負債は増加いたしましたが、各投資計画の稼働により、減価償却費の負担は増加したものの、EBITDA等キャッシュベースの収益力は向上しており、企業価値の向上に寄与しているものと考えております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券売却益10億74百万円や法人税等の支払い17億23百万円及び利息の支払い7億49百万円等がありましたが、税金等調整前当期純利益47億12百万円や減価償却費31億87百万円等があったことから、57億97百万円の収入(前期比21億13百万円の収入増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入14億54百万円等がありましたが、有形及び無形固定資産の取得による支出106億97百万円等があったことから、100億27百万円の支出(前期比69億45百万円の支出減)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出55億11百万円や社債の償還による支出19億38百万円等がありましたが、長期借入による収入119億9百万円等があったことから、28億64百万円の収入(前期比83億56百万円の収入減)となりました。

中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」3年目であった当連結会計年度は長期的戦略の計画的な取組みに基づく成長投資の実施により、現金及び現金同等物は前期比13億65百万円減少いたしました。

 

 

資本の財源及び資金の流動性についての情報については以下のとおりであります。

(資金需要)

当社グループの資金需要の主なものは、各セグメント事業活動に必要な営業費用(コメや加工食品仕入資金含む)、設備維持更新資金、販売費及び一般管理費等の各運転資金及び成長設備投資資金があります。また、銀行借入金及び社債の返済資金があります。

(資金調達方法)

当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、営業キャッシュ・フローに加え銀行借入金並びに社債の発行による資金を調達しております。また、運転資金の効率的な調達を行うため、金融機関と当座貸越契約を締結しており、一部成長投資資金の効率的な資金調達のためコミットメントライン契約を締結しております。一部借入金については、将来の金利上昇リスクを避けるため、金利スワップ契約を締結しております。

(財務方針)

当社グループでは、不動産関連の連結子会社では一部個別に資金調達を行っておりますが、それ以外の連結子会社は当社において資金調達を一元管理しております。当社グループは、基本的に営業キャッシュ・フローにより設備維持更新資金を含む各事業資金を賄っており、一部余剰資金については信用力向上のため、銀行借入金等の有利子負債の返済資金に充当しております。また、成長投資資金については、案件ごとに採算管理を行い、調達した銀行借入金等の有利子負債は個別に管理する体制を取っております。また、株主還元支出については、安定配当の基本方針のもと、中期経営計画における連結配当性向目標を中計最終年度にDOE(連結純資産配当率)3.0%としております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

(固定資産の減損)

当社グループは、物流関連、不動産関連においては複数の事業用物件を所有し事業を運営しており、食品関連においても工場を所有し生産・販売を行っております。所有する固定資産の減損損失の認識においては、物流、不動産関連においては主に個々の事業用物件を資産グループとして捉え、また、食品関連では米穀卸売業と加工食品卸売業をそれぞれの資産グループとして捉えております。当社グループでは、長期戦略のもと新規物件投資を進めており、また、総資産に占める有形及び無形固定資産割合は67.9%となっており、固定資産の減損損失の認識の判定に係る会計上の見積りは経営上重要と考えております。なお、当該見積りに用いた仮定等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」をご参照ください。

(のれんの評価)

当社グループは、経営戦略の一環として、M&Aを実施しております。これらの企業結合取引により生じた対象会社の取得価額と被取得企業の識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価との差額をのれんとして計上しており、のれんの減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定は、対象会社ごとに行っております。今後、経営環境の変動等により、対象会社の業績が大幅に悪化した場合、財務諸表におけるのれんの金額に重要な影響を与える可能性があり、のれんの評価に係る会計上の見積りは経営上重要と考えております。なお、当該見積りに用いた仮定等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」をご参照ください。

 

5 【重要な契約等】

当社は、2024年11月14日開催の取締役会において、2025年2月1日を効力発生日として、当社を吸収合併存続会社、当社の完全子会社で会った山種不動産株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併の決議を行い、同日付で合併契約を締結し、2025年2月1日付で吸収合併いたしました。

詳細は、第5経理の状況  2 財務諸表等  注記事項 (企業結合等関係)に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。