第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

今後の景気動向につきましては、長引く地政学的緊張や資源価格の高止まりによる物価上昇、更には米国の政策動向など、先行きは不透明で予断を許さない状況にあります。物流業界においては、国際面は米中間における貿易摩擦の激化によるサプライチェーンの不安定化が懸念されており、国内ではトラックドライバーを中心とした労働力不足への対応など、当社グループの業績にも影響を及ぼすことが懸念されます。

当社は、引き続きグループ内の連携を強化することで顧客ニーズに対応した質の高いサービスを提供することにより、新規顧客の獲得と安定的な貨物取扱いの確保に努めるほか、国内外の有力拠点への施設拡充も視野に入れつつ、生産性の向上を図ることで、事業基盤の強化に努めてまいります。

2025年度につきましては、下記のとおりの基本方針および事業戦略のもと、事業活動を推進してまいります。

 

(基本方針)

① 国内物流事業の収益力向上

② 海外・国際物流事業の拡大と基盤強化

③ グループ経営の基盤強化

 

(主な事業戦略)

① 高機能物流への取組みによる収益力向上

・国内施設の拡充・高度化を通じて食品・医療分野の取扱拡大を図り、収益向上を目指します。

AI・ロボティクス導入による高付加価値物流を提供し、省人化と業務効率化を推進します。

・物流拠点の見直し・最適化による配送の効率化および、積載率の向上に取り組みます(神戸地区に新規拠点の神戸西流通センターを開設)。

② 海外・国際物流事業の拡大と基盤強化

・グローバルに展開する代理店との更なる連携強化で、国際物流事業の拡大を図ります。

・現地法人においては、高機能な物流センター運営と国内外輸送の提供を通じて、事業基盤の強化を図ります。

・国際物流の新規開発営業部署を新設し、現地法人にも繋がる新規取扱いの拡大を図り、グループ全体の収益向上を目指します。

③ グループ経営の基盤強化

・グローバルに活躍できる人財育成や強固な財務体質を構築するとともに、事業基盤の拡大に向け必要な投資も行い、グループ経営の強化に取り組みます。

・リスク管理、コンプライアンスの徹底、ガバナンスの強化に焦点を置き、経営基盤を強化します。

・徹底的なコスト管理、働き方改革についてDXを活用し、効率的な労働環境の実現に取り組みます。

モーダルシフトや共同配送の推進、再生可能エネルギーの導入などを通じて、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

2025年度の連結業績の見通しにつきましては、売上高510億円、営業利益31億5千万円、経常利益33億円、親会社株主に帰属する当期純利益22億円を見込んでおります。

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは総合物流企業グループとして、「お客様に歓迎され、信頼される物流サービスの提供を通じて、広く国際社会に貢献する」という経営理念のもと、倉庫・港湾運送・陸上運送・海上貨物輸送・航空貨物輸送といった物流サービスを機能的に結びつけ、「便利さ」を追求した、総合物流サービスを提供しております。

われわれ物流企業が提供するサービスは、人々の生活になくてはならない社会インフラとなっているだけでなく、世界中に張り巡らされた物流網は、地球規模でのサプライチェーンとして、ハード・ソフト両面のまさにモノ・情報をつなぐ重要なネットワークシステムとしての機能を有しています。当社グループはこれらの機能の一翼を担う企業グループとして、時代の変化に柔軟に対応しながら、常にお客様のニーズに合った質の高いサービスを提供できるよう、一丸となって取組んでまいります。

当社グループの環境保全活動の積極的な取組みとして、当社では「みなとSDGsパートナー登録制度」への参加や、環境負荷低減の取組みを推進するため、倉庫業・トラック運送事業の全事業所において「グリーン経営認証」の継続を維持しております。また、資源エネルギー庁が実施する「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」の特定事業者等を対象とするエネルギー使用状況等に基づく事業者クラス分け評価制度において、当社は10年連続で最高評価である「省エネ優良事業者(Sクラス事業者)」の評価を受けております。

加えて、設備面では、倉庫施設におけるトランスの高効率省エネ型への更新や、冷蔵倉庫における外断熱の全面改修等の実施、さらには一部の倉庫施設には太陽光発電設備の設置や省エネ型空調設備への更新の実施、現在57%を達成している照明のLED化率のさらなる向上を図るなど持続可能な社会の維持・発展のため、積極的に環境負荷低減に努め、企業の社会的責任を果たしてまいります。

一方、当社は地域社会との連携を通じた持続可能な社会の実現への取組みも行っており、その一環として神戸地区のNPO法人と協働で障害者の方々に就労の場を提供しております。今後も当NPO法人との連携を維持するとともに、この活動から得られた知見を活かし、他の地域でも障害を持たれた方へ就労の場を提供する活動を推進してまいります。

 

(1) ガバナンスおよびリスク管理

業務執行取締役・社外取締役・監査役出席のもと、業務執行に関する基本的事項および重要事項に係る意思決定を機動的に行う「グループ統轄会議」を月2回程度開催しており、持続的な企業価値向上の観点から、サステナビリティに係るリスク管理やそれに対する取組みについて当該会議において適宜議論し決定した事項を取締役会に報告し、取締役会がその監督を行う体制としております。

(2) 戦略

①環境に関する戦略

当社グループは、環境保全活動に積極的に取組むことが、お客様の事業活動や社会に貢献するための企業の社会的責任であるとの認識に立ち、環境方針を以下の通り定め、実施しております。

 

理念

歓迎され、信頼される物流サービスを提供していく企業として、環境問題への取組みを経営課題と認識し、地球環境の保全と環境負担の低減に努めます。

 

 

基本方針

・環境に関わる法規制等を遵守します。

・資源およびエネルギーの効率的利用を図り、環境に配慮した物流サービスを提供します。

・企業活動の全般にわたり、環境負担の低減に努めます。

・環境行動計画を策定し、定期的な見直しを行います。

・全従業員に環境方針を周知し、環境意識の向上に努めます。

 

②人的資本に関する戦略

当社グループの企業価値向上を図るためには、企業活動の中心である「人財」の育成への投資が重要であるとの考えから、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針を、以下の通り定めております。

 

人財育成方針

当社グループでは、「歓迎され信頼される物流サービスの提供を通じて、広く国際社会に貢献するとともに企業の安定した発展をはかり、あわせて企業に関係する人々の人間性豊かな生活を確保する」という経営理念を掲げており、「歓迎され信頼される物流サービス」を提供する上で、「人」こそが財産であるという認識のもと、「人財」の育成に努めております。

将来を担う人財の育成は最も重要な経営戦略の一つであると考えており、個々人の仕事に対する考え方や人生観など価値観が変化するなかで、仕事を通じて生きがいや働きがいを持てるようにするため、「個々の特性を活かす人事管理制度」を基軸として、諸々の教育・訓練や能力開発を行っております。

人財育成の柱として、①社員一人一人がイキイキと仕事に取り組めるよう本人の成長に寄与する環境を提供すること、②計画的に多様な職場を経験させ早期にプロフェッショナルを育成すること、③多様性を尊重しすべての社員に平等に昇進・昇格のチャンスを与えることを重視しております。

 

社内環境整備方針

上記の人財育成方針のもと、従業員の多様性・人格および個性を尊重し健全かつ安全な職場環境を確保するため、「従業員エンゲージメント調査」を実施し、多様な人財が国内外で活躍し互いが協力・協調し合える社内環境整備を進めており、具体的には以下の取組みを行っております。

・ダイバーシティへの取組みとして、採用においては通年採用を実施し、中核人財への登用は、能力主義・成果主義を基本として、性別や国籍、採用形態等の属性によることなく実施しております。併せて、外国籍の人財の採用も実施しており、グローバルな総合物流事業を目指す上で、今後、国内での外国籍社員の採用により注力していきます。

・人財定着に向けた取組みとして、出産・育児というライフイベントに対応するため、法で定められたもの以上の休暇・休職制度のほか育児に係る諸制度(短時間勤務、時差出勤)も充実させ、男女を問わずライフイベントと仕事を両立できるような仕組みづくりを行っております。また、法定の介護関連休暇・休職に加え、介護離職を減らすための施策を講じています。

・自律的かつ継続的な能力開発への取組みとして、社員一人一人の中長期のキャリアプラン・能力開発状況を本人が申告し上司と共有することで、各人のプランの推進・修正を適宜行う自己申告制度を導入しております。

また、当申告制度において、自ら希望する仕事を申告できるようにしており、その内容は経営層で共有し本人の将来的な育成・配置の参考としております。

・人財価値向上に向けた取組みとして、日々の業務の中で、OJTはもとより、業務に必要な資格取得奨励制度、自らのキャリア形成のための通信教育受講制度、資格等級別の集合研修を実施しております。また、より早期にグローバル人財を育成するため、1年間を目途に海外拠点でトレーニングを受け、現地の制度・商習慣を理解し、異文化環境でのリーダーシップスキルを身に付ける海外トレーニー制度を導入しております。

・戦略的人財育成への取組みとして、早期に物流のプロフェッショナルを育成することを主眼として、新卒採用者については、2年から3年ごとに配置転換を実施し、入社後10年以内に最低3か所以上の部署を経験させるジョブローテーションを行っております。

・様々な知見を取り込む取組みとして、当社を退職した人財が社外で経験を積んだのちに、あらためて当社へ入社できるカムバック制度を導入しており、カムバック時には、社内外でのキャリアを考慮した待遇や配置を行っております。

従業員エンゲージメント向上への取組みとして、定期的な従業員エンゲージメント調査を実施することにより、具体的なデータに基づいた課題や強みを認識し、調査結果を踏まえた施策の実施により、組織の持続的な成長と競争力強化に繋げてまいります。

 

(3) 指標及び目標

当社グループでは、上記(2)戦略において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針についての指標として、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、及び労働者の男女の賃金の差異を用いております。当該指標に関する実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しており、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、それぞれの指標に対する統一目標は設定しておりませんが、当社においては、2030年3月末までに管理職(副課長以上)に占める女性労働者の割合を20%に増やすことに加え、全社員の平均有給休暇取得率を70%以上にする目標を設定いたしました。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社は、コンプライアンスとリスク管理を統轄する組織として「危機管理委員会」を設置し、法令違反への対処、リスク発生の未然防止・発生時の損失最小化、再発防止のための措置を講ずる等、グループ会社を含めた一体的なコンプライアンス・リスク管理を行う体制を整備しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境の変動リスク

当社グループは、倉庫・流通加工・陸上運送等の国内物流事業および国際運送・航空運送・港湾作業等の国際物流事業を行っており、荷動きは、国内外の景気動向や在庫調整の影響を受け、また、価格競争等の物流市場の動向、顧客企業の物流合理化、競合企業との競争等の事業環境の変動により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社を含むグループ各社の顧客企業または協力企業との取引額が大きな企業との取引が停止し、または大幅に縮小された場合には、売上の減少や委託コストの増加につながる可能性があります。

当社グループでは、主要顧客、協力会社との信頼関係の構築に努めるとともに新規顧客の開発活動にも注力して、リスクの分散を図っております。

 

(2) 感染症に関するリスク

新たな感染症の流行が今後発生した場合には、様々な規制に伴うサプライチェーンの混乱や消費低迷に伴う荷動きの減退により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは社会インフラを支える物流事業を行っているため、感染症が蔓延したとしても、従業員の感染防止策を講じつつ、事業継続を前提として取り組んでおりますが、政府・自治体からの行動制限によっては、事業所の一時的閉鎖など、事業活動に制約が生じる可能性があります。

 

(3) 人財確保に関するリスク

少子高齢化による労働力不足等の影響から必要とする十分な人財を確保することが困難となり、人件費の増加や受注を抑制せざるを得なくなる等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

特に、トラックドライバーの人手不足感が大きく、職場環境・待遇改善や教育体制の充実、嘱託社員・パートタイマーの活用等を通じて人財の確保・育成に努めておりますが、2024年からドライバーの時間外労働の上限規制が適用された、いわゆる2024年問題の影響も顕在化しており、必要な人財確保が困難となり、事業活動に制約が生じる可能性があります。

 

(4) 災害・事故等に関するリスク

当社グループは、東京・横浜・名古屋・大阪および神戸地区に倉庫を中心とした物流施設を有しており、これらの施設は、想定を超える災害が発生し施設に損害が生じた場合には、事業所の閉鎖や修繕コストの発生等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

施設の中には、現行の耐震基準前に建設された施設もあり、古い施設についてはスクラップアンドビルドを計画的に進めていく必要性がありますが、地震等の広範囲の大規模災害が発生した場合には、集中して再建する必要に迫られ、急激な売上減少・コスト負担が生じる可能性があります。

また、火災等重大事故を起こさぬよう各種法令等遵守、定期的な保守点検、安全・品質にかかる社員教育等を実施し、不測の事態発生に備えて保険も付保しておりますが、全てが補填されるとは限らず、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 保有資産の減損リスク

当社グループが保有する事業用資産(土地・建物等)の時価が大幅に下落、或いは当該資産から十分なキャッシュ・フローが見込めない場合、また、保有する有価証券の時価が取得価格に比べて著しく下落した場合には、減損処理が発生し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

事業用資産については、適宜モニタリングすることで減損の兆候を早期に把握し収益向上策を策定する等の対応により、減損処理発生のリスク軽減を図っております。

 

(6) 繰延税金資産の減額リスク

当社グループの繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。将来獲得し得る課税所得の時期および金額は合理的に見積もっておりますが、課税所得が生じる時期および金額は、将来の不確実な経済状況の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期および金額が見積りと異なった場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 公的規制・法令違反に関するリスク

当社グループは、国内外のそれぞれの事業分野における様々な公的規制を受けております。これらの規制や法令を遵守すべく、当社グループでは「ケイヒングループ行動規範」および「ケイヒングループ行動指針」を策定しており、コンプライアンスの統轄組織として「危機管理委員会」を設置し、違反行動に対する予防・対応・再発防止のための措置等を行い、その下部組織として「コンプライアンス統轄チーム」を設け、「コンプライアンスマニュアル」に基づきコンプライアンス体制の整備・推進を図っておりますが、公的規制や法令を遵守できなかった場合には事業継続が制限される等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、規制強化や新たな法的規制が実施された場合にも、事業機会の縮小や対応するためのコスト増につながる可能性があります。

 

 

(8) 情報システムに関するリスク

当社グループで提供している物流サービスに関する情報システムに障害が発生し適切なサービスが提供できなくなった場合には、損害賠償を請求される等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。情報システムの品質を維持するためのシステム保守を厳密に行うほか、インターネットを通じた外部からの情報ネットワークシステムへの侵入による障害を防止するためのファイアウォールを設置する等の厳重な管理を実施するとともにIT賠償責任保険を付保して、リスクの軽減を図っております。

また、当社グループは、物流業務において個人情報を含む顧客等の情報を取扱っており、これらの情報の外部漏洩やデータ損失等が発生した場合には、社会的信用の毀損や損害賠償請求により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があり、これに対応した情報漏洩に係るセキュリティ保険を付保しております。

 

(9) 国際事業に関するリスク

当社グループは、シンガポール・フィリピン・香港および台湾等において国際運送取扱等の物流事業を行っております。海外各国においては、予期しない法令・規制、政策等の変更、急激な政治的・経済的変動、戦争・テロ・伝染病その他の社会的混乱等によりサプライチェーンの停滞や荷動きの減退が生じ、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

海外での事業展開に当たっては、海外子会社を統轄する部門を中心に適宜モニタリング等のリスクマネジメントを行うことで法令違反や不正行為の未然防止に努めております。海外各国特有の制度改正や新たな法規制等についても対応すべくリスクアセスメントを実施してガバナンス強化に努めております。

 

(10) 為替レートの変動リスク

当社グループの国際物流事業においては、USドル建て等外貨建て取引があり、為替レートの変動により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの海外進出国・地域での取引における、現地通貨やUSドル建て等外貨建ての収益・費用・資産・負債の項目は連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートの変動により円換算後の価値が影響を受け、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、世界経済の減速や地政学的リスクの影響を受けつつも、企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に、内需主導で緩やかな回復基調を維持しました。しかしながら、物価上昇の継続や個人消費の伸びの鈍化に加え、ウクライナ情勢の長期化、ガザ地区における停戦合意崩壊の危機、米国大統領交代による従来からの政策の変更など、世界情勢の不確実性の高まりは、依然として日本経済の先行きに不透明感をもたらしており、成長の下振れリスクを抱える不安定な状況が続いております。

このような環境下、当社グループは、お客様の多様なニーズに対応した高品質な物流サービスの提供を通じて、収益性の向上に努めてまいりました。国内物流事業においては、物流施設の拡充投資に注力し事業基盤の強化を図るとともに、国際物流事業においてもグループ内の連携を強化し、グローバルに展開する代理店との協業を推進することで新規受注の獲得に注力いたしました。これらの取組みの結果、国内物流事業では保管・入出庫の取扱いが堅調に推移し、国際物流事業では輸出車両の海上輸送取扱いが増加したことなどにより、両事業ともに増収増益を達成いたしました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は504億5千2百万円(前期比39億3千2百万円の増収8.5%増)、営業利益は28億9千8百万円(前期比2億3千万円の増益8.7%増)、経常利益は31億1百万円(前期比1億1千3百万円の増益3.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は21億8千8百万円(前期比1億3千9百万円の増益6.8%増)となりました。

 

当社グループのセグメント別概況は、次のとおりであります。

 

国内物流事業

国内物流事業におきましては、倉庫業は昨年稼働した東扇島流通センターと本牧埠頭流通センターの物流施設拡充が寄与したことにより保管・入出庫の取扱いが増加し、売上高は87億6千3百万円(前期比12.1%増となりました。一方、流通加工業は取扱個数が増加したものの、出荷件数の減少により売上高は69億3千8百万円(前期比0.6%減となりました。陸上運送業は、自動車運送・配送ともに取扱量は減少しましたが、一部料金の見直しにより、売上高は116億3千万円(前期比1.7%増)となりました。

以上の結果、国内物流事業の売上高は284億7千5百万円(前期比13億5千5百万円の増収5.0%増)、営業利益は29億7千5百万円(前期比2千6百万円の増益0.9%増)となりました。

 

国際物流事業

国際物流事業におきましては、国際運送取扱業は複合一貫輸送とプロジェクト貨物の取扱いが減少しましたが、輸出車両の海上輸送取扱いの増加、並びに、コンテナ運賃の期中での一時的な上昇もあり、売上高は198億1千6百万円(前期比15.5%増となりました。航空運送取扱業は、輸出入ともに取扱いは減少しましたが、北米向け危険物緊急輸送の取扱いが寄与し、売上高は12億6千7百万円(前期比10.7%増となりました。一方、港湾作業は、船内荷役、沿岸荷役とも取扱いが減少し、売上高は18億4千3百万円(前期比5.4%減)となりました。

以上の結果、国際物流事業の売上高は229億2千6百万円(前期比26億7千7百万円の増収13.2%増)、営業利益は16億3千8百万円(前期比3億4千6百万円の増益26.8%増)となりました。

 

(2)生産、受注及び販売の状況

① セグメント別売上高

当連結会計年度におけるセグメント別売上高は次のとおりであります。

セグメントの名称

業務の種類

売上高

金額(百万円)

前年同期比(%)

国内物流事業

倉庫業

8,763

112.1

流通加工業

6,938

99.4

陸上運送業

11,630

101.7

その他

1,142

129.7

28,475

105.0

国際物流事業

国際運送取扱業

19,816

115.5

航空運送取扱業

1,267

110.7

港湾作業

1,843

94.6

22,926

113.2

セグメント間の内部売上高

△950

合計

50,452

108.5

 

 

② セグメント別取扱高

当連結会計年度におけるセグメント別取扱高は次のとおりであります。

セグメントの名称

業務の種類

取扱高等

前年同期比(%)

国内物流事業

倉庫保管

保管残高
(数量・月平均)

155

千トン

104.6

貨物回転率
(数量・月間平均)

68.3

倉庫荷役

入庫高

1,279

千トン

113.2

出庫高

1,263

千トン

111.5

流通加工業

流通加工取扱個数

220,420

千個

104.7

陸上運送業

陸上運送高

1,540

千トン

98.7

配送取扱件数

1,495

千件

72.3

国際物流事業

国際運送取扱業

国際運送取扱高

1,636

千トン

94.8

国際運送取扱業

国際運送取扱高

113

千台

111.4

航空運送取扱業

航空運送取扱高

2,240

トン

88.0

港湾作業

港湾作業取扱高

2,018

千トン

90.5

 

 

(注) 貨物回転率は貨物荷動きの状況を示すものであり、下記の算式によって算定しております。

貨物回転率(%)

(入庫高+出庫高)×1/2

×100

月末平均保管残高×12ヶ月

 

 

(3) 財政状態の状況

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比較して16億7百万円増加511億6百万円となりました。この要因は、主に新倉庫開設に伴い固定資産が10億9千2百万円増加したことによるものであります。

一方、負債合計は、前連結会計年度末と比較して4億1千4百万円減少208億5千万円となりました。この要因は、主に営業未払金や借入金が減少したことによるものであります。

純資産合計は、利益剰余金の増加及びその他の包括利益累計額の増加により、前連結会計年度末と比較して20億2千1百万円増加302億5千6百万円となりました。

純資産の増加及び借入金の減少等により、自己資本比率は、前連結会計年度末の57.0%から59.2%へ上昇し、借入金依存度は、前連結会計年度末の16.8%から15.2%へ低下しました。

 

 

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率(%)

46.2

51.2

55.0

57.0

59.2

借入金依存度(%)

27.1

23.0

20.3

16.8

15.2

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

借入金依存度:借入金残高(社債含む)/総資産

各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが38億4百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが28億2千5百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが12億6千万円の支出となり、これらに現金及び現金同等物に係る換算差額(1億3千9百万円の増加)を加え、全体では1億4千1百万円の減少となり、現金及び現金同等物の期末残高は、85億7千8百万円となりました。

 

 ① 各キャッシュ・フローの概況

 

イ  営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益31億7千1百万円、減価償却費による資金留保20億2千3百万円等がありましたが、法人税等の支払による支出8億2千3百万円等により、38億4百万円の収入となりました。前期(39億6百万円の収入)との比較では、1億1百万円の収入の減少となりました。

 

ロ  投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得26億8千4百万円、賃借施設への敷金支払い1億4千2百万円等により、全体では28億2千5百万円の支出となりました。前期(26億6千8百万円の支出)との比較では、1億5千7百万円の支出の増加となりました。

 

ハ  財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、新倉庫建設に伴う長期借入金の収入等がありましたが、一方で既存借入金の返済、社債の償還及び配当金の支払い等により、12億6千万円の支出となりました。前期(13億8千万円の支出)との比較では、1億1千9百万円の支出の減少となりました。

 

 

② 資本の財源及び資金の流動性

イ  資金需要の主な内容

当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、物流事業に関わる海上輸送費、陸上運送費、倉庫保管・荷役費等があります。

また、設備投資に係る支出では、物流施設及び物流機器の維持・更新、物流システムに係るIT投資等があります。

 

ロ  資金調達の方法

当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、運転資金ならびに物流施設への投資については、金融機関等からの借入金及び社債発行により資金調達しております。

また、運転資金の効率的な調達を行うために当座貸越契約を、不測の事態への対応手段としてコミットメントライン契約を、金融機関と締結しております。

取引金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて財務基盤が改善されていることから、当社グループの事業の維持拡大、運営のための新たに必要な運転資金、投資資金は問題なく調達可能と認識しております。

 

2025年3月31日現在の借入金および社債の概要は下記のとおりであります。

 

区分

年度別返済予定額

合計

1年以内

1年超2年以内

2年超3年以内

3年超4年以内

4年超

短期借入金
(百万円)

1,701

1,701

長期借入金
(百万円)

5,558

1,107

1,072

808

513

2,056

社債
(百万円)

520

240

160

80

40

 

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。