第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

① 会社の経営の基本方針

 当社グループの営んでおります倉庫業を中心とする総合物流業は、経済活動に不可欠な公共性の高い事業であると認識し、事業を通じて顧客のために、また、顧客とともに物流システムの合理化及び効率化をすすめることにより、社会と経済の発展に貢献することを基本方針としております。

 そのため、事業の安定的な経営基盤を拡充することにより、株主と顧客及び従業員の満足度を高めていくことを目標としております。

② 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、グループ経営中長期ビジョンを見直すとともに、対象期間を2022年度から2024年度までの3カ年とする第7次中期経営計画「Let’s TRY ! 2024 」を策定し、中期経営計画最終年度である2024年度において、営業収益27,500百万円、営業利益2,050百万円、経常利益2,350百万円、営業利益率7.5%、ROIC(投下資本利益率)4.5%を連結業績目標としております。

 なお、円安・物価高による企業間物流の低迷や、燃料・動力費の高止まりによる影響等により、当初の中期経営計画目標値から修正しております。

 

 第7次中期経営計画「Let’s TRY ! 2024 」の内容につきましては、以下のとおりであります。

(3つの「TRY!」)

・自ら能動的に行動する「自身に TRY !」

・挑戦する風土を創って、分かち合う「組織で TRY !」

・社会に応える・つなげる「社会へ TRY !」

(グループ経営中長期ビジョン)

・進化する物流ニーズを創造できる企業

・多様な人材がその能力を最大限に発揮できる企業

・高い業務品質によってお客様に信頼される企業

・主体的にサステナビリティの推進に取組む企業

・健全な財務バランスを有し積極経営のできる企業

(戦略基本方針)

Ⅰ 新分野へ積極的に挑戦し、グループとして成長を遂げる企業

Ⅱ 無形資産・人的資産への投資を通じ、イノベーションを育む企業

Ⅲ 多様な価値観を尊重し、皆が高いパフォーマンスを発揮できる企業

Ⅳ デジタル技術の活用を図り、高い業務品質と生産効率を実現させる企業

Ⅴ サステナビリティの基本方針を組織に浸透させ、施策に真摯に取組む企業

Ⅵ 積極的な投資と強い財務体質をバランスさせ、健全経営を継続させる企業

Ⅶ プライム市場の企業として期待される企業

Ⅷ 上記施策展開を可能とするガバナンスの充実

 

(2) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、2025年度から2027年度までを対象期間とする第8次中期経営計画「NEXT CS-100」を策定しました。「NEXT CS-100」のCSには、「中央倉庫」と「Challenge Spirit」の意味を込めており、第7次中期経営計画の「TRY」の精神を更に発展させ、次の100年に向けて高い目標に果敢に挑戦すると共に、コーポレートスローガン・中長期ビジョンの実現を図ってまいります。

 当社が考える対処すべき主な課題は以下のとおりであります。

 

 

・時代の変化に対応しつつ強みを活かす営業戦略の展開

 物流業界の2024年問題や、原材料価格・動力費の高騰、世界情勢の不透明感に加え、国内の総物流量は近年横這いが続き、また、物流業界では人手不足が顕在化しております。当社は、これまで繊維工業品や化学工業品等の取扱いを中心に様々な事業分野のお客様との関係を築き、個々のお客様特有のニーズに合った機能や高い業務品質の提供に努めてまいりました。これからも、当社独自の物流ノウハウを磨き、お客様が物流企業に求める水準の高度化に適切に対応していくことが必要と捉えております。

 これに対処すべく、第8次中期経営計画「NEXT CS-100」における具体的な営業施策として、当社の強みであるペットボトル樹脂関連の取扱い実績を活かした循環型ビジネスの一層の拡販、お客様の高い物流ニーズにお応えする機工(輸送付随業務)分野の更なる強化、取引先とのDX共同推進、経営基盤の拡大を図る手段としてのM&A実施等、更なる事業成長の実現に向けた取組みをおこなってまいります。

 

・健全な財務体質の維持と資本効率を重視した資本政策

 上場企業を取り巻く資本市場の環境は大きく変化してきました。株主・投資家の皆様の期待に応えつつ、業容の拡大を図り、企業としての持続的成長が求められます。そのような状況下において、当社は、ROEが資本コストのレンジ付近に留まり、PBR1倍を下回り、投資家の皆様の期待に十分応えることができていない状況が続いていると認識しております。

 これに対処すべく、当社は、当社を支えるステークホルダーの皆様の期待に応えられるよう、複雑化する社会環境の変化に俊敏に対応しながら持続的に収益力を拡大し、当社企業価値の向上に資する施策の検討と実施を継続してまいります。引き続き、資本コストのレンジを上回るROE水準(5%以上)を目指し、最適なキャッシュ・アロケーションの実行と資本政策の強化、IR活動の拡充に取り組み、当社株価の向上、PBRの改善に努めてまいります。

 

・当社の成長を支える人的投資の実現

 社会環境の大きな変化に適応し、できる限り多くの選択肢から経営方針を決定することや、お客様の要求の高度化に適切に対応していくためには、人材の多様化と役職員各自のスキルの向上が不可欠です。当社は、処遇改善も含めた人事制度改革をおこない、働きやすい職場環境を整え、個人・組織のエンゲージメントを高める取組みを実施しておりますが、物流業界では人手不足の深刻化が継続しております。また、働く人の価値観が多様化し、働き甲斐やワークライフバランスが強く重視されるようになってきました。

 これに対処すべく、当社は、全ての従業員がそれぞれの個の強みや能力を最大限に発揮できるように、年代や性別にかかわらず多様な人材を活かし、併せて高度な専門知識・経験を有する人材の確保・育成に引き続き、取り組んでまいります。

 

・組織の一体化とグループとしての強み発揮

 物流業界再編の動きがある中、当社グループ独自の特色や、グループ経営によるシナジーを生み出し競争力を強化していく必要があります。

 これに対処すべく、当社グループ子会社の更なる機能発揮に取り組んでおります。現場の技術力・輸送力を惜しみなくお客様に提供できることこそ当社の強みであります。引き続き、グループ間の連携をおこなうことで、物流会社としてお客様の期待に沿った高いパフォーマンスを発揮するなど、グループとしての強みをアピールできるグループ経営に取り組んでまいります。

 

・当社物流基幹システムの移行の推進

 技術の変化が激しい現代では、自らの基幹システムが陳腐化しないように将来に向けて行動していく必要があります。当社の事業運営・お客様への付加価値のあるサービス提供が滞らないようにするために、過去のソフトウェア資産の活用並びに最新技術を取り込むことが可能なプラットフォームへの移行が重要となる中で、当社は、当社の物流基幹システムを支えているプラットフォーム(OS,ハードウェア等)の刷新をしていく必要があり、次期基幹システムプラットフォームへの移行を検討しております。

 これに対処すべく、物流基幹システムの移行にあたっては、プロジェクト管理スキル保有の専門のシステムエンジニアを配置し、推進検討項目の精緻化や進捗状況の見える化をおこない、推進課題管理と解決策の検討が着実に実施できる体制の強化に努めてまいります。また、次期基幹システムのプラットフォームにおける専門人材の配置・育成を推進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「サステナビリティ」に対する取組みとは、事業活動を通じて「自然環境」や「社会」に関わる社会的課題の解決を図り、目標をもって取組んでいくことであり、その取組みにより、新たな価値(「環境価値」※1及び「社会価値」※2)が創造されるものであると考えております。

※1「環境価値」

 :温室効果ガス排出量削減による低炭素社会の実現への貢献等の取組みを通じて生じる価値

※2「社会価値」

 :多様な人材がその能力を発揮して活躍できる職場を実現させていく取組みを通じて生じる価値

 

 当社グループは、サステナビリティ基本方針を組織に浸透させ、サステナビリティを巡る課題に対する取組みを推進していくため、サステナビリティ委員会を設置し、その活動を通じて、サステナビリティを巡る課題に具体的に取組み、持続的な成長と企業価値向上を目指しております。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティ基本方針を組織に浸透させ、サステナビリティを巡る課題に対する取組みを推進していくため、サステナビリティ委員会を設置しております。

 サステナビリティ委員会は、代表取締役社長執行役員を委員長とした関連部署の部長・室長で構成されたメンバーとし、気候変動関連の課題について審議・検討を行い、それらの内容を年2回、取締役会へ報告を行っております。

 取締役会は、その取組みの目標や計画の内容、各施策の進捗状況を協議の上、監督を行っております。サステナビリティ基本方針や各種目標設定等サステナビリティに関する戦略についても、取締役会において決定しております。

 また、サステナビリティ委員会の下部組織として、代表取締役社長執行役員を委員長とし、社内応募した当社グループ職員を構成メンバーとするサステナビリティ推進委員会を設け、全社のサステナビリティに関する具体的取組みの推進を行っております。

 当社は、これらの活動を通じて、サステナビリティを巡る課題に具体的に取組み、持続的な成長と企業価値向上を目指してまいります。

 

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(2)戦略

① 気候変動

 当社グループでは、ステークホルダーの皆様からの期待や社会の要請に対し、グループ一体となって応えていくために、「地球環境への負荷低減につながる取組みと気候変動への対応」をマテリアリティのひとつに掲げ、脱炭素社会実現に貢献する取組みを進めております。

 

 サステナビリティ基本方針のうち特に重要となる気候変動対応に関しては、当社グループにとって重要な気候変動関連のリスクと機会として特定された9種類の項目に対する事業影響の把握、対応策の検討に向けて、シナリオ分析を実施しました。今回実施した分析は、脱炭素トレンドが強まり移行リスク・機会の影響が大きくなる「1.5℃/2℃上昇シナリオ」と、気候変動が大きく進み物理的リスクの影響が強まる「4℃上昇シナリオ」の2つの気候変動シナリオに基づいております。(〔表2」参照)

 

 シナリオ分析のプロセスとして、まず各事業本部から気候変動に伴うリスクと機会についてヒアリングを行い、リスクと機会を網羅的にリストアップしました。さらにそれらのリスクと機会について、事業に与える影響の大きさの観点から整理・絞り込み、当社グループの事業に対する重要な気候変動関連のリスクと機会として以下を特定しました。(〔表1〕参照)

 シナリオ分析での評価結果を踏まえ、特に影響の大きいリスクの軽減ないし機会の獲得に向けた対応策を検討しております。

 

〔表1〕 重要な気候変動関連のリスクと機会の一覧表

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〔表2〕 参照シナリオ

想定される世界

想定事象

主な参照シナリオ

1.5℃/2.0℃

未満シナリオ

・日本を含む世界各国でカーボンプライシングの導入が進み、世界的に炭素税が上昇する。

・世界各国において低炭素・脱炭素技術向けの商品需要が拡大する。

・顧客や投資家からの脱炭素化要求が高まり、対応できない企業が淘汰される。

IEAWorldEnergyOutlook2021(SDS,NZE2050)、

IEAWorldEnergyOutlook2018(SDS)、IPCC(SSP1-1.9、SSP1-2.6)

4℃シナリオ

・日本を含む世界各国でカーボンプライシングの導入は進まない。

・世界的な温室効果ガス排出削減の遅れにより、温暖化が進行し、異常気象(サイクロン・洪水等)が増加傾向となる。平均気温の上昇や海面上昇等の影響も発生。

IEAWorldEnergyOutlook2021(STEPS)、IPCC(SSP5-8.5)

IEAWorldEnergyOutlook2018(NPS)、IPCC(SSP5-8.5)

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② 人的資本

・多様な人材がその能力を最大限に発揮できる企業を目指すため、性別に関わらず計画的な人材育成に注力し、現場経験を通してのOJT教育を行うことや知識・スキルを高めるための階層別・職務別教育に加え、外部研修による管理職のマネジメント力強化や、職員のキャリア形成を後押しする自己啓発支援制度を構築しております。また、社員が求めるキャリアアップのスピードに柔軟に対応することや、専門的で高度な能力を持つ社員を適切に処遇していくための複線型人事制度を導入しております。

・女性活躍の推進においては、女性活躍推進法に基づく行動計画(2021年4月1日~2026年3月31日)を定め、計画期間内に女性管理職を5名にするために、女性職員の管理職登用への意識を高めるキャリアアップ教育を実施しております。また、全社員が女性の活躍に向けた理解を深め、意識を変えていくために、管理職の意識改革に向けた教育の実施や女性活躍に関する目標項目を設定するなどの取組みを行っております。

・また、職員が安心して仕事に取り組み、効率的に業務を遂行できるような働く環境整備のため、転勤を伴わない勤務地限定職員制度や半日および時間単位の年次有給休暇制度、在宅勤務、子育て・介護と仕事との両立ができるように育児介護休業に関する規則を定める等、ワークライフバランスのとれた働き易い職場環境創りを行っております。

 

 

(3)リスク管理

① リスク識別・評価プロセス

 当社グループは、サステナビリティ委員会において、気候変動関連のリスクと機会を識別しております。識別したリスクと機会については、事業への影響度と発生可能性(顕在化する頻度)の観点で評価し、重要なリスクと機会を特定し、その対応方針について検討した上で、取締役会へ報告します。

 

② リスク管理プロセス

 重要と特定した気候関連のリスクと機会については、リスク管理基本方針に基づいてサステナビリティ委員会にて管理します。

 サステナビリティ委員会は、リスクの最小化に向けてサステナビリティ推進委員会と通じて、関連部署へ対応を指示するとともに、対応の取組状況をモニタリングし、取締役会に報告します。

 代表取締役社長執行役員がリスク管理を統括し、取締役会は、対応策の進捗状況や目標について監督します。

 

③ 気候変動リスク管理と全体リスク管理との統合

 当社グループは気候変動対応をマテリアリティとして掲げております。気候変動にかかるリスクについては、サステナビリティ委員会において、識別されたリスクの管理を行い、各施策の進捗状況のモニタリングを実施し、対応状況について審議します。取締役会は、サステナビリティ委員会から気候変動にかかるリスク、内部監査室から気候変動以外の全社リスクの管理状況についての報告を受け、監督を行います。内部監査室長がサステナビリティ委員会に参画することで、気候変動関連のリスクを全社リスクと統合し管理することを可能とする体制としております。

 

(4)指標及び目標

① 気候変動

 当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてCO2排出量(Scope1,2)削減率目標を2030年度30%削減(2020年度比)と設定し、目標達成に向けて、太陽光発電設備の設置や照明設備のLED化などCO2排出量削減に向けた取組みを推進してまいります。

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CO2排出量実績(Scope1,2)

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(注)2024年度におきましては、使用電力量は2023年度比で減少したものの、電力事業会社のCO2排出係数の上昇により、CO2排出量が増加しております。

 

CO2排出量以外の目標

項目

目標

実績

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

LED照明設備導入率

(営業倉庫面積に占める割合)

2024年度 100%

41%

59%

86%

100%

エネルギー使用量原単位の削減

(入出庫量トン数に対する

エネルギー使用量)

(エネルギー使用量は原油換算kl)

毎年1%の削減

1.1070

0.9987

0.9177

0.8430

運送車輛の燃費向上

(子会社 中倉陸運が保有する車輛)

毎年1%の改善

4.33km/L

4.21km/L

4.20km/L

4.17km/L

 

② 人的資本

 今後の人的資本の施策については、エンゲージメント、維持、育児休暇の項目において目標を設定し、目標達成のために以下の施策を実施してまいります。

・「エンゲージメント」の項目については、アンケート結果の良好な回答がすべての項目において60%以上になるよう、働き甲斐やコミュニケーションに関する施策を実施してまいります。

2024年度実績:92%(アンケート結果26項目中24項目で良好な回答が60%以上)

・「維持」の項目については、新卒採用者の定着率を高めるためにキャリアアップや女性活躍推進に関する施策に取り組むことで入社3年以内の定着率80%以上を目指してまいります。

2024年度実績:過去10年間の採用者の3年以内離職率 [大卒]25.0%[高卒]29.3% [全体]27.1%

・「育児休暇」の項目については、サステナビリティの一環としての働き方改革をより一層推進し、育児休業に関する規則に定められている産後パパ育休の取得を促進し、男性の育児休業取得を目指してまいります。

2024年度実績:育児休業取得率 [男性]  0% [女性]100%

(注)上記の指標について、当社においては関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みを行っておりますが、連結グループに属するそれぞれの会社においては固有の状況に基づいた個別の取り組みを行っているため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境のリスク

① 営業基盤を取巻く環境のリスク

(リスクの内容)

 当社グループの事業であります倉庫業を中核とする物流事業は、国内のみならず海外の景気動向や顧客企業の経営判断・物流合理化・事業再編等の影響を受けております。また、当社グループの主要取扱貨物の市場が縮小すること等により、当社グループの貨物取扱量が減少することが想定されます。そのような要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループは、広いエリアで多様な業種の顧客企業の様々な品目の貨物を取り扱うことでリスクの分散を図っており、また、環境問題に代表されるような社会問題にも目を向けて貨物構成を変えていくこと等により、リスクの低減を図っております。

② 他社との競合のリスク

(リスクの内容)

 当社グループの事業は同業者が多く厳しい競合状態にあります。その競合の結果、価格や過剰なサービスの競争となることで収益や利益率が低下する等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、真の顧客志向は、双方が適切なメリットを享受し取引が維持・継続できることとの信念のもと、変化する顧客企業の要求に最適な水準で応えるサービスを提供すること等により、リスクを回避してまいります。

③ 新規事業の立上げのリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、資本効率性を高め、収益基盤の多様化と持続的な成長を実現していくために新規事業への取組みが重要であると認識しております。しかし、新規事業の立上げにあたっては、設備費等の先行投資が発生し利益率が低下する可能性があり、新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間を要することも想定されます。また、契約上の問題など新規事業に固有のリスク要因が加わるとともに、事業環境の急激な変化や不測の事態等により、想定した売上が見込めない、または、想定していなかった多額の費用が発生する等、当初の計画どおりに進捗しない場合には、投資の回収が遅れる、または、回収できない等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、新規事業を開始するにあたっては、資本コストを意識するとともに、事業や契約の内容について社外専門家の調査等も踏まえた高度で多面的なリスクの検証を行い、様々な専門スキルを有するメンバーが参画する当社の指名・報酬・ガバナンス委員会や取締役会での議論を重ねることに加え、必要に応じて賠償責任保険等を付保するなどにより、リスクをコントロールしております。

④ 公的規制・制度変更のリスク

(リスクの内容)

 当社グループの事業は、関連法規による規制を受けておりますが、法令改正・制度の変更等により、それを遵守するための費用の増加や事業戦略の変更等が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、法令・制度等改正監視に係る諸規定を定め、当社グループ企業に関わる法令・制度等の改正等の情報を適確且つ早期に把握し、十分な時間を持って準備を行い適切に対処できる体制を整えることにより、リスクの低減を図っております。

 

 

⑤ 事業提携、M&A等に関するリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、経営資源の最適化を図るとともに事業規模・業態の拡大・拡充による収益の拡大、競争力強化、企業価値の向上のために、他企業との事業提携やM&A等が必要であると認識しております。しかしながら、提携・買収後の事業環境の大きな変化や当初想定できなかった対象企業のリスクが顕在化すること等により、事業計画どおりに進捗しない場合、のれんの減損処理など、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、事業提携、M&A等の実施にあたっては、対象企業について社外専門家も交えて事前の十分な検討と財務内容や契約条件等のデューデリジェンスを行うことにより、リスクの低減を図っております。

⑥ 地政学的リスク

(リスクの内容)

 当社グループの事業であります物流業におきましては、国家間の関係悪化や海外でのテロ・紛争・伝染病の発生等の影響を受けて、顧客企業の海外事業活動の停滞や国際物流の遅延・停止等に伴い物流量が低下することなどにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループは中国上海市にのみ事業拠点を有しているため海外情勢による直接的な影響は小さいものの、事業全体においては顧客企業の事業活動のグローバル化の進展により間接的・潜在的なリスクは今後も高まっていくものととらまえております。

 当社グループでは、海外情勢の動向を注視するとともに、今後も多様な業種や地域に係る顧客企業との取引を継続していくことにより、リスクの分散・低減を図っております。

 

(2)事業継続に関するリスク

① 自然災害・気候変動等に関するリスク

(リスクの内容)

 地震・台風などの自然災害や火災あるいは事故等が発生することにより、当社グループの施設等資産の損壊等や道路・鉄道・空港・港湾施設といった社会インフラの障害等が発生した場合、当社グループの通常の業務遂行が困難となること等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 また、地球規模での気候変動が進行した場合、異常気象による災害が増加、激甚化し、被害がより増大することが想定されることに加え、気候変動に対する環境経営への取り組みがより一層企業に求められることにより、当社グループの経営に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、地震・風水害の対策マニュアルを策定し、安否確認や避難訓練を定期的に行うなど社員の安全を第一に考慮した事業継続計画を策定しており、加えて、緊急事態の際には相互に機能を補完し合えるよう業務提携先である安田倉庫等との間で災害時における事業継続相互協力協定を締結する等を行い、リスクの低減を図っております。

 また、当社グループは、気候変動が経済活動・企業活動に大きな影響を与える重大な課題であると認識し、サステナビリティ基本方針を策定し、TCFD提言に基づく情報開示を行っております。重要な気候変動関連のリスクの洗い出し、特定を行い、特に影響が大きいと考えられるリスクの軽減に向けた対応策を検討・実施していくとともに、CO2排出量削減目標を掲げ、目標達成に向けて太陽光発電設備の設置や照明器具のLED化などの取り組みを推進していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献を図ってまいります。

 

 

② 感染症の発生・拡大に関するリスク

(リスクの内容)

 当社グループが営んでおります物流事業は社会基盤を支える重要な事業であり、感染症流行時等の非常時においても事業を可能な限り継続していくことが社会的責任であると考えております。しかしながら、感染拡大により当社グループ従業員が感染するリスクは否定できず、その場合には、通常の業務の遂行、事業継続が困難となり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、感染症の感染拡大発生時には正確な情報収集を可能な限り行い、適切な感染防止策及び感染拡大防止策を実施し、社員並び取引先等関係者の安全を第一に考慮した上で、適正な業務の継続に努めてまいります。また、新型コロナウィルス感染症の流行拡大から得られた経験を踏まえ、「新型感染症対策規程」を策定し、今後発生しうる可能性のある未知のウイルス等による感染症の感染拡大時の対応についての基本的な考え方や必要とされる常備品等を定めることにより、今後のリスクに備えております。

 また、PC端末などのハードウェアやWeb会議ツール等の環境整備・更新に加え、関連規程の策定・改定を適宜行っていくことにより、BCP対策も含めたテレワーク環境の整備・推進を図っております。

③ 人材の確保と育成に関するリスク

(リスクの内容)

 当社グループの事業であります倉庫業を中核とする物流事業において、特に当社が強みとする多品種の貨物の取扱いや事業拡大のための物流施設の新設・拡張等には、高い技術と経験を備えた人材の採用及び育成が不可欠となります。また、物流業のデジタルトランスフォーメーションに対応していくための情報システム要員の確保も今後さらに重要なものになると想定されます。

物流業界におきましても慢性的な人手不足の状況が続いており、かつ人口減少・少子高齢化の進行により労働力不足はさらに深刻になることが想定され、人材の安定的な確保及び育成が困難となった場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、人材確保、定着率の向上のために、時期にとらわれない採用や、働き方改革による業務のデジタル化、省力化を進めるとともに職場環境の改善等にも注力し、また、人事制度の改定等により多様な人材が活躍できる環境を整えていくなど、リスクの低減を図ってまいります。

 

(3)情報システム及び情報管理のリスク

① システム障害のリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、業務の遂行・取引先とのデーター交換や財務情報作成等を正確かつ効率的に行うため、基幹業務システム等の情報システムを利用しております。しかしながら、ハードウェア・ソフトウェア等のダウン・誤作動等のシステムの不備、コンピューターウイルス感染・外部からの不正アクセス等の情報セキュリティの不備や停電などが発生すること等で情報システムが使用できなくなった場合、それらの復旧に係る直接・間接費用の発生のみならず、基幹業務システムが使用出来なくなることで当社グループ及び取引先等の通常業務の遂行が困難となること、及びそれによる取引先の当社グループへの信用失墜等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、情報システム管理規程及び関連諸規程を定め、情報システムの適正な運用・管理を図っており、加えて、データー管理の一層の強化のためにクラウド化の推進や営業所間のバックアップ体制の強化を図っております。また、財務・人事管理、業務の一部に外部のパッケージソフトを導入することにより、関連業務の平準化、効率化を図るとともに、システムの堅確性向上、法改正等への対応を行っております。外部からのコンピューターウイルス等の攻撃に関しては、社内の基幹業務システムは専用のオペレーティングシステムを使用しており、外部からの情報セキュリティについてはUTM(統合脅威管理)機器を各事業所に設置することに加え、各端末へウイルス対策ソフトを導入することにより、二重の防御体制で対応しております。しかしながら、特に悪意を持った外部からのサイバー攻撃等は日々高度化・巧妙化しており完全に防ぐことは困難であることから、さらにセキュリティレベルを上げる対策と合わせて、防御できなかった場合も想定した対応策も策定、実施してまいります。加えて、停電対策として主要事業所に小型発電機を設置するなどの対策を実施し、リスクの低減を図っております。

 

 

② 情報技術の水準に係るリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、基幹業務システム等の情報システムを利用しておりますが、デジタル技術の急速な進歩や市場の変化、顧客企業のニーズ等に適確に対応できなかった場合、将来において当社グループの情報システムが陳腐化し、適正かつ効率的な事業の遂行に支障をきたしたり、顧客の要請に応えられず機会損失を起こす等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、従来より、基幹業務システムについては当社スタッフによる自社開発を行っておりますが、財務・人事管理、業務の一部に外部のパッケージソフトを導入し基幹業務システムと連携することにより、関連する業務の効率化や平準化に加え、法改正等への対応を行っております。また、所謂「2025年の崖」問題に対処するべく、システム改修計画を策定し計画的な投資を行っていくことで、機器の定期的な改修・更新や基幹業務システムの更新、クラウド化等を進めるとともに、外部人材の登用など人員体制の強化も行い、システムの「ブラックボックス化」などを回避していくことにより、リスクの回避低減を図ってまいります。

 また、デジタルトランスフォーメーションへの対応として、情報システム部と業務部が中心となり、得意先のニーズへの対応、生産性の向上を図るための取り組み等を、外部専門家も活用し、行ってまいります。

③ 情報管理のリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、事業活動の過程において、個人情報や事業に関する様々な情報を保有しておりますが、外部からのサイバー攻撃等は日々高度化・巧妙化しており、これらの情報の外部漏洩やデーターの喪失等が発生した場合、当社グループの信用の失墜、または損害賠償等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、情報セキュリティポリシーを定め、外部専門家の起用や情報セキュリティ機器の導入に加え、情報管理意識向上のため教育・研修を実施するなど、グループ全体の情報セキュリティの向上に継続して取り組んでおります。また、個人情報に関しては、個人情報保護方針及び関連諸規程を定め、社内で個人情報の重要性の認識を高め、その厳格な管理に努めております。

④ 基幹システムの移行のリスク

(リスクの内容)

 技術の変化が激しい現代では、自らの基幹システムが陳腐化しないように将来に向けて行動していく必要があります。当社グループの事業運営・お客様への付加価値のあるサービス提供が滞らないようにするために、過去のソフトウェア資産の活用並びに最新技術を取り込むことが可能なプラットフォームへの移行が重要となる中で、当社グループの基幹システムを支えているプラットフォーム(OS,ハードウェア等)の刷新をしていく必要があり、次期基幹システムプラットフォームへの移行を検討しておりますが、その移行が適正に行われず基幹システムの利用に支障が出た場合や、スケジュール通りに進捗しなかった場合、事業が遂行出来ないなどの要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、基幹システムの移行の問題について全社レベルで取り組むべき課題ととらえており、態勢の強化に努めております。具体的には代表取締役社長執行役員をトップとしたプロジェクトチームを立ち上げ、全体を俯瞰して課題解決に向けて組織を牽引するリーダーを配置し、併せて高い専門性を有する人材の確保にも努めております。これらの対策により、一定の期間内で着実に成果を出すことによって、想定されるリスクの影響を回避してまいります。

 

 

(4)様々な時価変動のリスク

① 固定資産の減損処理のリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、倉庫・土地等の事業用の有形固定資産を有しておりますが、資産の時価の下落や収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合、減損損失を計上することになり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループは、重要な設備投資に対して価格の妥当性や投資における将来の収支について社内及び取締役会において厳格に検証しております。また、事業所単位での経営成績管理についても、月次で分析を行い、都度、取扱貨物の構成や料金、人員配置等の適正化を図ることで、リスクの低減を図っております。

 なお、減損会計の適用にあたっては、事業用資産については独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として事業所ごとに、また、処分予定資産や遊休資産等については個別資産ごとにグルーピングを行っており、減損の兆候の把握については、資産グループの営業活動から生ずる損益や市場価格等を適正に見積もることにより判定を行っております。

② 投資有価証券の時価変動のリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、営業上の取引関係や情報交換等の協力関係の維持・強化を主な目的として投資有価証券を保有しておりますが、株式相場の変動や投資先企業の財政状態の悪化等により資産価値が下落した場合、評価損の発生により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、保有する投資有価証券について保有目的と定性的な評価、資本コストより算出される定量的な評価等に基づく検証を定期的に行っており、保有の合理性が欠ける・乏しいと判断されたものについては、一定の期間内に売却することにより、リスクの低減を図っております。

③ 資金運用のリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、資金の有効活用の観点から運用を行っておりますが、運用にあたっては株式及び債券市場や為替相場、経済情勢等の変動等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、資金運用管理規程を策定し、取締役会にて承認された運用計画に基づき、主に格付の高い国内債券等で運用するなど、リスクの低減を図っております。

④ 退職給付債務のリスク

(リスクの内容)

 当社グループの従業員の退職給付費用及び債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の前提条件によって算出されていますが、これらの数値は将来の予測に基づくものであり、今後の割引率や年金資産の運用実績の変動等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループは、年金資産の運用内容・方針等を定期的に確認し検討を加え、必要と認められる対応を適宜行うことによりリスクの低減を図っております。

 

(5)企業イメージに関するリスク

① 重要な訴訟によるリスク

(リスクの内容)

 現在、当社グループに関して、経営に大きく影響を及ぼす重要な訴訟等は提起されておりません。しかし、将来におきまして重要な訴訟等が発生した場合、その判決結果如何によっては、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、適正なコンプライアンスとガバナンス体制の構築に努めており、法的に問題となる懸念がある案件については、事前に弁護士等に確認するなどの体制を敷いております。また、仮に訴訟等が発生した場合には、速やかにその分野での専門性の高い弁護士に相談できる体制とすることなどで、リスクの低減を図っております。

 

 

② 深刻なレピュテーションリスク

(リスクの内容)

 当社グループ、当社グループ従業員及び協力会社等が、国内外において遵守すべき法令等に違反するような行為を行った場合、また、当社グループにとって事実の有無にかかわらず好ましくない風評や信用情報が広まること等によって深刻なレピュテーション上の問題が発生すること等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、内部監査室において定期的なコンプライアンス研修を実施しており、公益通報制度の整備と各営業所への周知を行うことで適正な運用を図るとともに、内部業務監査において定期・不定期のモニタリング調査を行っております。また、内部統制委員会において管理体制の評価や不正防止策の検討等、常に内部管理体制の強化に取り組んでおります。ハラスメントについても、基本方針及び関連諸規程を定めるとともに、ハラスメント対応専用相談窓口として人事部内にハラスメントヘルプラインを設置する等、管理体制の一層の強化に取り組んでおります。その上で、何か有事の際には、「正しい情報を速やかに開示」する体制を整えることで、リスクの低減を図っております。

 

(6)企業統治及び内部統制に関するリスク

① 経営の硬直化に関するリスク

(リスクの内容)

 深刻な不祥事やコンプライアンス違反、ハラスメント等が発生した際、その対応が遅れたり、社会の規範から乖離した判断を行えば、強い社会的な制裁を受ける事態となり、ステークホルダーからの信頼を失い、事業の運営継続が困難になるなど、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、変化に柔軟に対応できなくなる経営の硬直化を防ぐために、組織編制において多様性を重視し同じような価値観の集団とならないような工夫と、幅広い意見・多くの選択肢の中から最善の対応策を選択・実行できる態勢を整えることに注力しており、併せて、重要な事案については迅速に取締役会に報告する等の情報の共有化を図ることで、リスクの低減に努めております。

② グループ内部統制に関するリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、内部統制の重要性を認識し、その適正な運用に努めておりますが、M&Aなどによる子会社の増加や事業の拡大等により、内部統制が十分に構築・整備出来ないことで内部統制が有効に機能しなくなった結果、当社グループの社会的信用の失墜などにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、子会社経営管理規程を制定し、新たに買収を行った子会社等について規定や会計方針、情報セキュリティなどの整備に親会社が関与し、また、親会社の役職員が子会社の役員として出向又は兼務することにより子会社の経営に関与するなど、内部統制の適正な構築・適用によりリスクの低減を図っております。

③ 不正行為等に関するリスク

(リスクの内容)

 当社グループは、適正な業務の遂行、財務報告の信頼性などの観点から内部統制の充実・向上に努めておりますが、当社グループ役職員等によるコンプライアンス違反など、想定する範囲外の不正行為等が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対策)

 当社グループでは、内部統制システムに関する基本方針及び関連諸規程を定め、内部監査室による定期的なコンプライアンス研修や定期・不定期の内部業務監査の実施に加え、公益通報制度の整備と各営業所への周知により適正な運用を図ることなどにより、グループ全体で不正行為等の発生リスクの低減を図っております。また、リスク管理の基本方針を定め、各事業拠点で統制自己評価(CSA)を実施しリスクの想定及びそれに対する対応策を策定することや、リスク事象報告規程に従い発生したリスクに対しては適正に管理・対応することにより、リスクの低減を図っております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の激化など地政学的リスクの高まりを起因とするエネルギー価格や原材料価格の高騰が続くなか、米国の内需主導による景気拡大が見られたものの政策動向に対する景気の不安定化への懸念の広がりや、中国経済低迷の長期化等、先行き不透明な状況となりました。

 わが国経済は、企業収益や雇用・所得環境の向上により、企業の設備投資や個人消費が持ち直し、これらに加えインバウンド需要の増加などもあり、緩やかな回復傾向となりましたが、円安に伴う継続的な物価上昇や不安定な国際情勢等の影響を受け、予断を許さない状況で推移しております。

 物流業界におきましては、貨物の荷動きは徐々に回復しつつあるものの、燃料価格等の継続的なコスト増加、労働力不足等に伴う人件費の上昇、物流業界の2024年問題への対応によるコスト上昇の顕在化等、厳しい経営環境が続きました。

 このような事業環境のもと、当社グループは第7次中期経営計画「Let’s TRY!2024 」の最終年度として、自ら能動的に行動する「自身にTRY!」、挑戦する風土を創って、分かち合う「組織でTRY!」、社会に応える・つなげる「社会へTRY!」の3つのTRY!に取組み、施策展開を行ってまいりました。

 具体的には、取引先企業サプライチェーンでの物流機能・効率化の提案営業を推進し、また、リサイクルペット樹脂等の物流取扱量の拡大や、大型機械や精密機械の運搬・設置等をおこなう機工(輸送付随業務等)の取扱いを拡充いたしました。また、株式会社テスパックとのシナジー効果による梱包業のさらなる強化に取り組みました。さらに、業容の更なる成長と当社物流ネットワークの拡大のため、愛知県あま市において用地を取得し新拠点建築に向けた取組みを進めております。

 併せて、現場作業のデジタル化、業務の効率化、業務品質の向上に継続して取り組み、また、環境に配慮したグリーン経営の推進や、サステナビリティ基本方針に基づきサステナビリティ推進委員会の活動などを通じて持続的な成長と企業価値向上を目指す議論を重ね、サステナビリティを巡る課題に具体的に取り組んでおります。

 さらに、資本効率の向上を図るため自己株式取得を実施いたしました。また、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度を導入して当社グループ従業員に経営への参画意識を促す等、当社株主の皆さまとの一層の価値共有に努めました。

 これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(財政状態)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ912,124千円増の58,928,392千円となりました。

 負債につきましては、前連結会計年度末に比べ435,900千円増の12,850,803千円となりました。

 純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ476,223千円増の46,077,588千円となりました。

 

(経営成績)

 当連結会計年度の営業収益は27,840,047千円(前年同期比5.0%増)、営業利益は2,189,902千円(前年同期比13.2%増)、経常利益は2,433,529千円(前年同期比9.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,588,630千円(前年同期比6.5%減)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 国内物流事業におきましては、営業収益は22,484,694千円(前年同期比5.5%増)、セグメント利益は2,560,485千円(前年同期比15.8%増)となりました。

 国際貨物事業におきましては、営業収益は5,192,641千円(前年同期比3.3%増)、セグメント利益は498,822千円(前年同期比4.1%増)となりました。

 不動産賃貸事業におきましては、営業収益は356,654千円(前年同期比0.2%減)、セグメント利益は153,145千円(前年同期比0.8%増)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ16,781千円(0.3%)増加し、当連結会計年度末には5,268,115千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、資金は4,122,519千円の増加(前期は2,841,244千円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益2,478,853千円、減価償却費1,813,849千円、未払消費税等の増減額396,629千円であります。また、主な減少要因は、投資有価証券売却損益210,543千円、法人税等の支払額713,256千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、資金は2,054,281千円の減少(前期は1,345,875千円の減少)となりました。主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入326,046千円であります。また、主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出2,160,886千円、投資有価証券の取得による支出238,587千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、資金は2,051,391千円の減少(前期は1,167,077千円の減少)となりました。主な減少要因は、自己株式の取得による支出759,269千円、配当金の支払額604,097千円、長期借入金の返済による支出515,605千円であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの主たる事業は、倉庫業を中心とした総合物流業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難であります。

 これに代えて、当連結会計年度におけるセグメントごとの営業収益及び主要業務の取扱高等を示すと、次のとおりであります。

 

a.セグメントごとの営業収益

セグメントの名称

当連結会計年度

(2024年4月1日~2025年3月31日)

前年同期比(%)

国内物流事業(千円)

22,484,694

5.5

(内訳)

 

 

倉庫業(千円)

7,840,347

4.4

運送業(千円)

14,450,404

6.1

国際貨物事業(千円)

5,192,641

3.3

(内訳)

 

 

通関業(千円)

3,116,188

4.0

梱包業(千円)

2,076,452

2.4

不動産賃貸事業(千円)

356,654

△0.2

合計(千円)

28,033,990

5.0

 (注)1.上記の営業収益にはセグメント間の内部営業収益193,942千円を含んでおります。

2.国内物流事業の内訳の「倉庫業」、「運送業」及び国際貨物事業の内訳の「通関業」、「梱包業」は、セグメント間の内部営業収益を含まない外部顧客に対する営業収益の額を記載しております。

 

 

b.セグメントごとの主要業務の取扱高等

セグメントの名称

当連結会計年度

(2024年4月1日~2025年3月31日)

前年同期比(%)

国内物流事業

 

 

 

倉庫業

保管残高

(数量・月末平均)

322千トン

4.2

入庫高

1,468千トン

2.7

出庫高

1,435千トン

0.2

貨物回転率

(数量・月末平均)

37.6%

△2.6

運送業

運送取扱高

2,214千トン

1.7

国際貨物事業

輸出入取扱高

615千トン

3.7

梱包取扱高

128千m3

1.5

 

 (注)1.

 

倉庫業の入出庫及び保管残高、貨物回転率は、自社倉庫及び再寄託先を含めた残高に基づくものであります。

 

 

 

(年間入庫高+年間出庫高)

×

 

 

    2.

貨物回転率

×

100

月末保管残高年間合計

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

前連結会計年度比

(%)

流動資産(千円)

13,650,653

13,594,596

△0.4

固定資産(千円)

44,365,614

45,333,795

2.2

流動負債(千円)

6,745,423

7,584,463

12.4

固定負債(千円)

5,669,479

5,266,339

△7.1

純 資 産(千円)

45,601,365

46,077,588

1.0

 流動資産の減少要因は、現金及び預金が36,781千円、営業未収入金が135,856千円、それぞれ増加しましたが、その他に含まれております未収消費税等が180,029千円減少したこと等によるものです。

 固定資産の増加要因は、建物及び構築物が償却の進行により828,979千円減少しましたが、土地が愛知県あま市新倉庫建築用地取得により1,055,918千円、建設仮勘定が同地の開発・造成工事費用等で422,827千円、それぞれ増加したこと等によるものです。

 流動負債の増加要因は、1年内返済予定の長期借入金が返済の進行により189,679千円減少しましたが、未払法人税等が257,643千円、その他に含まれております未払消費税等が404,512千円、それぞれ増加したこと等によるものです。

 固定負債の減少要因は、繰延税金負債が株価の上昇などにより118,158千円増加しましたが、長期借入金が返済の進行により325,926千円減少したこと等によるものです。

 以上の結果、1株当たりの純資産額は2,474.57円と前連結会計年度2,386.86円に比し、87.71円増加し、自己資本比率は77.7%と前連結会計年度の78.1%に比し0.4ポイント減少しました。

 財政状態につきましては、資産のさらなる有効活用を図り、一層の利益を生み出すことがこれからの大きな経営の課題と考えております。今後も収益性の高い貨物へのシフトや資産をより有効に活用することに努めてまいります。

 

 

b.経営成績

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前連結会計年度比

(%)

営業収益  (千円)

26,512,364

27,840,047

5.0

営業利益  (千円)

1,934,257

2,189,902

13.2

経常利益  (千円)

2,229,804

2,433,529

9.1

親会社株主に帰属する当期純利益(千円)

1,698,179

1,588,630

△6.5

 営業収益の増加要因は、国内物流事業で1,161,203千円(そのうち倉庫業で332,208千円、運送業で828,995千円)、国際貨物事業で167,187千円、それぞれ増加したことによるものです。

 営業利益の増加要因は、国内物流事業で348,770千円、国際貨物事業で19,789千円、それぞれ増加したことによるものです。

 経常利益の増加要因は、営業利益が255,644千円増加したことによりますが、営業外収益の受取配当金が保有株式の売却などにより59,418千円減少したことなどにより、営業利益の前連結会計年度比増加率を下回る結果となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益の減少要因は、経常利益が203,724千円増加しましたが、特別利益の投資有価証券売却益が65,178千円減少し、特別損失の関係会社株式売却損31,148千円および投資有価証券評価損165,266千円をそれぞれ計上したことに加え、法人税等費用が74,173千円増加したことなどによるものであります。

 

 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(国内物流事業)

 倉庫業におきましては、既存取引先との取引拡大や新規営業開発の取組み等による取扱い貨物量の増加により、自社倉庫および再寄託先も含めた入出庫高は前期に比し増加し、自社倉庫および再寄託先も含めた月末平均保管残高も前期に比し増加しました。また、料金価格の適正化に一定の効果がありました。これらの結果、倉庫業の営業収益は増加しました。

 運送業におきましては、リサイクルペット樹脂等の物流取扱量の拡大が寄与したことや、機工部門(輸送付随業務等)での取扱い案件の増加により、取扱数量は増加し、通期で2,214千トンと前期に比し1.7%の増加となり、運送業の営業収益は増加しました。

 以上の結果、国内物流事業の営業収益、セグメント利益ともに増加しました。

(国際貨物事業)

 通関業におきましては、中国経済の影響により日本企業の商材の輸出が低調となり、輸出取扱数量は前期に比し減少しましたが、汎用樹脂の輸入化が進んだことや、一部でペットボトル用の樹脂の国内リサイクル原料から輸入回帰の動きもあり、輸入取扱数量は前期に比し増加しました。その結果、輸出入全体では、615千トンと前期に比し3.7%の増加となりました。また、梱包業の取扱数量については、連結子会社である株式会社テスパックの取扱高が増えたことなどから、128千㎥と前期に比し1.5%の増加となりました。

 以上の結果、国際貨物事業の営業収益、セグメント利益ともに増加しました。

(不動産賃貸事業)

 不動産賃貸事業におきましては、京都梅小路地区宿泊施設などの物流用途不動産以外の不動産賃貸を行っておりますが、当連結会計年度中において、一部の賃貸物件の契約が終了したことから、営業収益は微減となりました。一方、セグメント利益は、固定費用の一部見直しを行ったことなどから、微増となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度のキャッシュ・フロー状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの運転資金は、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資等資金につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

 今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金の他、事業用地取得、物流施設建築・改修等の設備投資等であります。これらの資金についても、基本方針に基づき、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要に応じて金融機関からの借入を実施する等、必要な資金を調達してまいります。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や現時点における客観的情報、将来の計画事項等を合理的・総合的に判断し会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果につきましては、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる可能性があります。なお、当社グループが採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 第7次中期経営計画「Let’s TRY! 2024 」の最終年度となる2024年度の達成状況は以下のとおりであります。

 

 営業収益は目標値比340百万円(1.2%)増、営業利益は目標値比139百万円(6.8%)増となり、営業利益率は目標値7.5%を0.4ポイント上回る7.9%となりました。経常利益は目標値比83百万円(3.6%)増となりました。また、ROIC(投下資本利益率)については4.7%となりました。

 

指標

第7次中期経営計画期間中

(2022年度~2024年度)

実績値

第7次中期経営計画

(2022年度~2024年度)

最終年度目標値

2022年度

2023年度

2024年度

(当連結会計年度)

当 初

修正後

営業収益

25,869百万円

26,512百万円

27,840百万円

29,000百万円

27,500百万円

営業利益

2,108百万円

1,934百万円

2,189百万円

2,440百万円

2,050百万円

経常利益

2,434百万円

2,229百万円

2,433百万円

2,720百万円

2,350百万円

営業利益率

8.2%

7.3%

7.9%

8.4%

7.5%

経常利益率

9.4%

8.4%

8.7%

9.4%

8.5%

ROIC

(投下資本利益率)

4.9%

4.3%

4.7%

5.0%

4.5%

※ROIC:(営業利益+受取利息・配当)÷(純資産+有利子負債)

 

 以上の結果を踏まえて、営業収益、営業利益、経常利益について、各施策を遂行した成果などにより前期実績及び修正後計画目標値を上回り、各利益率、ROICの指標も目標値を達成することができました。

 しかしながら、特別損失の計上など諸々の特殊要因があり、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度実績及び修正後計画目標値を下回りました。結果、ROEは当社が想定する資本コストのレンジを下回る状況であることは認識しております。

 今後につきましては、2025年度から開始する第8次中期経営計画「NEXT CS-100」の様々な施策に取組み、リサイクル樹脂関連ビジネスなどのさらなる拡大や、愛知県あま市に新設する営業拠点の拡充などにより収益力を高めていくとともに、より資本コストを意識した経営を行っていくことで、企業価値向上に努めてまいります。

 

5【重要な契約等】

 特記事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記事項はありません。