第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)経営方針

 当社グループは、お得意さま・株主さま・地域社会・協力会社・従業員など、すべてのステークホルダーに対し、現在以上に価値ある企業・持続的に発展していく企業を目指すことを経営方針としている。

(2)経営戦略等

 当社グループは、2028年度に創業100周年を迎えるにあたり、あるべき姿として、

「得意な事業の展開と独自性の発揮」

「既存事業の継続、国際物流の拡大、新規基幹事業の稼働、積極的な事業投資による持続的な発展」

「働きやすい職場環境(施設・体制・働き方改革)の確立」

「社会全体のサステナビリティ確保への貢献」

「グループ営業収益500億円の達成」

と設定した。

 この長期ビジョンを見据えた成長戦略に基づき、2025年度を最終年度とする経営三カ年計画(Fly to the Next 2025)を策定し、目標達成に向けて取り組んでいる。一方、当社グループを取り巻く経営環境は、ウクライナ情勢の長期化や諸物価の高騰など、依然として不透明な状況が続いている。このような中、当社グループでは営業の拡大と経営基盤の強化に向けて次の取り組みを推進している。

 ①新たな収益の柱となる新規業務の本格稼働

 現在、2025年度中の稼働を目指して常陸那珂事業所構内に天井クレーン付き普通倉庫を建設している。また、カザフスタン共和国では倉庫拡張を進めている。お得意さまの多種多様なニーズに対して積極的に投資を行うほか、最適な物流提案を通じて取扱数量の増加を図り、国内及び中央アジア諸国を中心とした国際物流事業の拡大に取り組んでいる。

 さらに、カーボンニュートラル社会の実現に向け、「先進的CCS事業(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留)に係る設計作業等」に参画し、当社での液化二酸化炭素の港湾出荷基地の整備について、新たに専門部署を設置して具体的な検討を推進している。

 ②施設設備の更新

 当社は、倉庫や荷役機器など多くの施設設備を保有しており、長期間安定的に稼働させるために、安全かつ確実に更新する必要がある。環境及び災害対策を図りながら、計画的な更新を実施している。

 また、改修や建て替えの際は、収益性や安全性を高め、環境に配慮した施設設備への更新を進めている。

 ③人材の確保及び人材育成体制の整備による一人ひとりの能力・組織力の向上

 少子高齢化、仕事に対する価値観の変化などにより、人手不足の問題は年々深刻化している。人材の確保と定着率の維持向上、人材育成は重要な経営課題である。

 インターンシップによる学生のキャリアビジョン醸成や会社見学会、広報活動を充実させ、ダイバーシティの促進を行い、人材の確保に努めている。

 また、制度の見直し、休暇制度や福利厚生の充実を図り、働きがいや働きやすい職場環境の整備を進め、従業員の定着率向上を図っている。

 さらに、専門職の育成、グループ内人事交流の活性化、体系立てた研修などを実施するとともに、上司と部下、職場内でのコミュニケーションの促進を図り、人材育成体制を整備し、一人ひとりの能力と組織力を向上させる。

 ④DX推進による社内体制(業務、システム、人材など)の効率化・強化

 2024年度は経済産業省が定めるDX認定制度の「DX認定事業者」の認定を取得した。また、物流業界の働き方改革関連法(2024年問題)に対し、配車システム、トラック予約受付システムの活用や貨物ピッキングシステムの導入により、配送の効率化や自社倉庫におけるトラック待機の時短化を図った。さらに、東扇島DXセンター営業所を開設し、物流現場でのDX化を推進している。

 今後も標準化、システム化、業務改革のほか、営業推進、システム企画など本社機能の強化を行い、改革を促進する。

(3)経営環境

 日本経済は、雇用や所得環境の改善などを背景に景気は緩やかな回復基調にある一方、米国関税政策の動向や地政学リスクの高まり、諸物価の高騰などから、今後も不透明な状況が続くことが見込まれる。

 埠頭・倉庫を含めた物流業界は、深刻な人手不足やトラックドライバーなどの労働時間の制限、諸費用の高止まりなどにより、厳しい経営環境が続く見通しである。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、上記経営環境を踏まえつつ、経営戦略を推進するために、次の項目に着手している。

 ①カーボンニュートラル社会の実現に向け、「先進的CCS事業(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留)に係る設計作業等」に参画し、当社での液化二酸化炭素の港湾出荷基地の整備について、川崎支店埠頭部にCCS事業推進課を設置し、具体的な検討を推進している。

 ②カザフスタン共和国に新たに設立した現地法人において物流センターを開設し、中央アジア地域における新たな海外拠点の設置と物流ルートの開拓により、グローバルなサプライチェーンの安定化を図る。

 ③2023年4月に設置したデジタル推進部と情報管理部で、デジタル戦略とシステム開発を強化するとともに、サイバー攻撃や情報漏洩リスクへの対策などの強化を図っている。

 ④経営三カ年計画期間において、総額180億円の関連投資を進める。

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、経営三カ年計画では、最終年度である2026年3月期の連結業績目標を、営業収益400億円、営業利益15億円、親会社株主に帰属する当期純利益10億円とした。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

当社グループは、すべてのステークホルダーにとって現在以上に価値ある企業になるために、「サステナビリティに関する考え方」をまとめている。

 

(当社グループのサステナビリティ概念図)

 

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「サステナビリティに関する考え方」

当社グループは、お得意さまをはじめ、株主さま、地域社会、協力会社、従業員などすべてのステークホルダーに対して、現在以上に価値ある企業になるために事業を展開している。

事業展開そのものが、社会全体のサステナビリティの確保につながるよう、ESG(Environment、Social、Governance)それぞれの取り組みに対して方針を定めている。

 

Environment

: 環境の保全

環境方針

Social

: 社会への貢献

品質方針

安全衛生方針

社会・地域貢献活動推進方針

ダイバーシティ&インクルージョン方針

人材育成方針

Governance

: ガバナンスの向上

内部統制システムの基本方針

 

方針に基づいた取り組み計画を長期ビジョン、経営三カ年計画、年度ごとの予算に反映し、達成状況を確認、適時適切に改善することにより、推進する。

 

環境・社会・ガバナンスへの取り組み

課題と対応する方針

主要な取り組み

関連するSDGs

環境の保全

「環境方針」

環境に配慮した

事業活動の推進

・環境負荷低減型機材、施設の導入

・カーボンニュートラルへの取り組み

・お得意さまへのモーダルシフトの提案

・大気汚染、水質汚濁の防止

・3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進

・環境に関する認証などの取得

 

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社会への貢献

「品質方針」

物流サービスの品質向上

・ISO9001に基づく物流品質の向上

・多種多様な貨物の特性に応じた物流品質の向上

・DXの推進(業務の効率化、高度化及び情報サービスの提供)

 

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「安全衛生方針」

安全で働きやすい

職場環境の整備

・安全衛生管理の着実な実行

・働きやすい職場環境の確立

・心身両面の健康管理の強化

 

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※省エネ法「事業者クラス分け評価制度」:優良事業者Sクラス

※国際的な環境行動に関する格付機関であるCDPの2024年「SME(中小企業)版」への回答

※グリーン経営認証(川崎支店)、エコステージ認証(東扇島支店)を取得

 

 

課題と対応する方針

主要な取り組み

関連するSDGs

社会への貢献

「社会・地域貢献

活動推進方針」

地域社会との調和

・事業を通じた地域社会への貢献

・社会・地域貢献活動への参加

・業界団体や地域社会との協働

 

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「ダイバーシティ&

インクルージョン方針」

人材の多様性確保

・ダイバーシティと女性活躍の推進

・ハラスメントの防止

・多様な人材の募集

・人権の尊重

 

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「人材育成方針」

人材育成の強化

・従業員の能力向上

・体系的な研修プログラムの充実

・自己啓発制度の活用促進

・OJTの強化

・キャリアアップの促進

 

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ガバナンスの

向上

「内部統制システム

の基本方針」

ガバナンスの強化

・コンプライアンス(法令遵守)の徹底

・内部統制の実効性の向上

・リスク管理体制の強化

・情報セキュリティの強化

・災害に強い設備・体制づくり

 

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 当社グループのサステナビリティに関する具体的な考え方及び取り組みは、以下のとおりである。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題の一つとして認識している。

 毎月定例の取締役会のほか、必要に応じて取締役会を開催して迅速に意思決定し、機動的に業務を執行する体制としている。

 経営会議を定期的に開催して、業務執行上の重要課題について掘り下げて議論し、戦略を練る。

 執行役員会及び全国支店長会議を定期的に開催し、業務執行状況を確認するとともに経営方針の徹底を図る。

 コーポレート・ガバナンス体制の充実を図るため、取締役会の諮問機関として指名・報酬諮問委員会を設置し、取締役の指名・報酬等に関する手続の公正性・透明性・客観性を強化する。

 

(2)戦略

 当社グループでは、「行動の指針」や「長期ビジョン」において、事業を通じた社会貢献を推進すること、省エネルギーを心がけ地球環境を守ることや働きやすい職場環境を確立することなどへの積極的な対応を掲げている。

 詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の(2)経営戦略等」に記載している。

 当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境の整備に関する方針は、安全衛生方針、ダイバーシティ&インクルージョン方針、人材育成方針を定めており、経営三カ年計画や年度ごとの予算に反映し、推進している。

 

(3)リスク管理

 事業上のあらゆるリスクに対処し、リスク全般を統括する組織として、社長を委員長とする「コンプライアンス・リスク管理委員会」を設置し、予防対策及び有事の対策を講じている。

 コンプライアンス・リスク管理委員会に下部組織を設置し、迅速に当社のリスクを把握して、対策を講じている。

 当社のコンプライアンス・リスク管理委員会が当社グループのリスク管理体制を推進していくとともに、子会社各社にリスク管理推進責任者を置き、子会社各社のリスク管理を推進する。

 事業上のリスクについては、「3 事業等のリスク」に記載している。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境の整備に関する方針について、経営理念に基づいた人材の育成を基本に人材育成体制を整備し、公正な評価や処遇の改善などにより一人ひとりの能力を高め、組織力の向上を図っている。また、積極的な採用活動による多様な人材の確保、女性が活躍できる働きやすい職場づくりを推進している。

 当社グループは人材こそがすべての企業活動の基本であると考え、人材の育成・成長を通じて、現在以上に価値ある企業として持続的に発展していくことを目指している。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。

① 事業環境の変動

 当社グループは、総合物流企業集団として国内各地及びロシア、カザフスタン、タイ、中国に物流拠点を有し、多様な物流事業(倉庫業、港湾運送業、自動車運送業、国際物流事業、その他付帯事業等)を展開している。当社グループの事業は、国内外の経済・政治・社会情勢、公的規制の変化、環境規制の強化に伴う対応、IT技術等の進展による物流の変化、また、顧客の物流合理化に伴う競争の激化等が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。現在、顧客ニーズに対応した物流提案を行うとともに、適時適切な設備投資を行い、また、IT技術の導入等を推進し、営業の拡大と経営基盤の強化を図っている。

② 物流施設の災害による被災

 当社グループの主たる事業においては、物流施設が重要な経営資源である。これらの施設は、国内各地及びロシア、カザフスタン、タイ、中国に立地している。これらの地域で地震や、台風・豪雨等による大規模災害が発生した場合は、当社グループの物流施設に甚大な被害が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。今後の大規模災害による施設被害に備えるため、計画的に老朽施設の更新投資や補強のための投資を行っている。また、緊急事態に備えた事業継続計画(BCP)を適宜見直すとともに、防災体制の強化、当社グループ関係者への防災教育・訓練を徹底している。近年、気候変動による大規模災害が激甚化しているため、気候変動に伴うリスク・機会を適切に分析、評価、管理するとともに、さらなる対応の強化等が必要となる可能性がある。

③ 海外事業展開

 当社は、連結子会社を通じて国際物流サービスを提供している。連結子会社のうち2社はロシアを拠点として、物流事業を行っている。ロシアによるウクライナ侵攻後、同国に対する経済制裁等が行われている。当社グループは、常に現地の状況を把握することができる体制を構築し、駐在員の安全に万全を期しているが、今後の情勢によっては現地法人の運営に大きな支障をきたす可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

④ 資金調達及び金利変動

 当社グループは、必要資金を主に金融機関からの借入れにより調達している。現在当社グループは、設備投資資金の調達や運転資金等の借換えに支障をきたす状況にはなく、借入金利も安定した状況にあるが、予想外の社会・経済変動により金融市場が逼迫し、資金の調達、金利面に急激な変化が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

⑤ 株価の変動

 当社グループの保有する市場価格のない株式等以外の株式は、当連結会計年度末現在、取得原価で25億3千5百万円、連結貸借対照表計上額(時価)で77億1百万円であり、評価差額は51億6千5百万円の評価益となっている。当該株式は、主に取引先との関係の維持・強化を目的として保有しているが、今後の経済情勢または発行会社の経営状態の急激な変動等による株価の大幅な下落が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

⑥ 訴訟・係争等

 当社グループは、法令遵守に努めながら事業活動を行っているが、事業活動に関して様々な形で訴訟等の対象となる可能性があり、その結果によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。なお、当社は2022年3月28日付で損害賠償請求訴訟を提起され、2022年5月23日に訴状の送達を受けている。また、2024年6月10日付で、請求金額を51億5千7百万円(遅延損害金を除く)とする旨の拡張申立書が提出され、2024年8月26日に送達を受けた。当社としては事実関係の認識などに相違があるため、訴状の内容を精査のうえ、適切に対処していく。

 

⑦ 情報システム障害等

 当社グループは情報システム網を構築し、総合物流サービスを提供するとともに、業務の効率化や事故防止などを図っている。この情報システム網の安定性を確保するため、最新技術やデータバックアップ等の情報セキュリティ対策を導入し、情報セキュリティに関する社内体制の整備や従業員の教育に取り組んでいる。しかし、災害、事故、犯罪等によりシステム障害や情報漏洩が発生した場合には、社会的信用の低下等により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

⑧ 固定資産の減損

 当社グループは、建物及び土地をはじめとする多額の固定資産を保有しており、今後の経済変動等による固定資産の時価下落や資産グループの収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上する。これにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

⑨ 繰延税金資産

 当社グループの当連結会計年度末における繰延税金資産の計上額は、評価性引当額(回収可能性がないと判断されたもの)を除き、9億7千4百万円である。今後、グループ各社の将来所得の発生見込額の減少等に伴い、多額の評価性引当額が発生する可能性がある。

⑩ 退職給付債務

 当社は、2007年4月から退職一時金の一部を確定拠出年金に移行したが、その他の退職給付債務については、割引率、昇給率等の見積り数値を用いて計算されており、その変動に伴い変動する。

 また、当社グループは、退職給付信託を設定しており、その信託財産は、主に信託設定時に当社が拠出した株式により占められている。このため、想定外の株価変動により発生する数理計算上の差異の費用処理等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。

⑪ 投資の減損等

 当社グループの保有する市場価格のない株式等の当連結会計年度末における連結貸借対照表計上額は、4億2千5百万円であり、これらは発行会社の財政状態の悪化による実質価値の著しい低下に伴い、減損処理の対象となる可能性がある。

 また、当社グループの保有する非連結子会社及び関連会社株式の当連結会計年度末における連結貸借対照表計上額は6億1千4百万円である。これらの株式の帳簿価額は、当該子会社及び関連会社の経営成績または財政状態の悪化に伴い、減額の対象となる可能性がある。

⑫ 人材の確保・育成等

 当社グループは、最適な物流提案を行うと共に荷役等の総合物流サービスを提供している。総合物流サービスの提供を行うため、人材の確保と働きやすい職場環境の整備を進めて定着率向上を図っている。しかしながら、今後加速する労働力人口の減少、労働力確保の競争激化等で、十分な人材を確保することが困難な状況が発生した場合、当社グループの物流サービス提供に影響を及ぼす可能性がある。

 

なお、これらは当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のある主なリスクを例示したものであり、これらに限定されるものではない。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次のとおりである。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症に起因する行動制限の緩和により経済活動が正常化に向かう一方、ウクライナ、中東情勢をはじめとする地政学リスクの高まりやエネルギー資源をはじめとした諸物価の高騰、急激な円安の進行などにより、貨物の荷動きは低調に推移した。

 物流を取り巻く環境は、適正料金の収受を推し進めたが、作業費、運送費などの費用の増加により、厳しい状況が続いた。

 このような経営環境の中、当社グループでは、グループ各社の連携を一層強化し、営業の拡大、経営基盤の強化、社会的責任の向上に取り組んだ。

 国内総合物流事業では、危険品や建設土など順調に推移した貨物があったものの、全般として荷動きが低迷し、倉庫の入出庫数量、保管残高、コンテナ取扱数量などが減少した。

 国際物流事業では、海上運賃の下落やアジア、欧州向け輸出貨物の取扱いが大きく減少した。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ25億5千4百万円増加し、509億9千万円となった。当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ15億7千6百万円増加し、234億6千万円となった。当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9億7千8百万円増加し、275億3千万円となった。

b.経営成績

 当連結会計年度の営業収益は351億円(前期比4億3百万円、1.2%増収)、営業利益は11億5千5百万円(前期比1億7千6百万円、18.1%増益)、経常利益は13億8千4百万円(前期比2億3千2百万円、20.1%増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億2千4百万円(前期比1億4千3百万円、14.7%増益)となった。

 

 セグメントの経営成績は次のとおりである。

 *以下の営業収益及び営業利益は、セグメント間の取引を含んでいる。

 

○国内総合物流事業

 国内総合物流事業の営業収益は312億7千2百万円(前期比0.9%増収)、営業利益は10億9千5百万円(前期比24.5%増益)となった。

 

≪倉庫業≫

 倉庫業の営業収益は109億3千2百万円(前期比3.5%減収)となった。

 入出庫数量は328万トン(前期329万トン)と前期比ほぼ横ばいであったが、平均保管残高は28万トン(前期31万トン)と前期を大きく下回った。麦などの取扱いが増加したが、米や輸入食品類、石油化学品などの取扱いが減少した。

 

≪港湾運送業≫

 港湾運送業の営業収益は82億4千5百万円(前期比0.1%増収)となった。

 穀物などの取扱数量が減少し、ばら積み貨物の取扱数量は492万トン(前期495万トン)と減少したが、コンテナ取扱数量は増加した。

 

≪自動車運送業≫

 自動車運送業の営業収益は57億8千7百万円(前期比3.7%増収)となった。

 コンテナ貨物の取扱数量が増加した。

 

≪その他の業務≫

 その他の業務の営業収益は63億5百万円(前期比7.8%増収)となった。

 新規施設の稼働により物流関連施設の賃貸に伴う収入が増加した。

 

○国際物流事業

 国際物流事業の営業収益は42億1千1百万円(前期比2.7%増収)、営業利益は4千8百万円(前期比44.4%減益)となった。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末より22億2千5百万円増加し、44億8千6百万円となった。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、リース投資資産の増加などにより、前連結会計年度に比べ4億5千万円減少し、21億5千3百万円となった。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、22億1千9百万円の純支出となった。固定資産の取得による支出が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ11億1千9百万円純支出が増加した。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、22億9千5百万円の純収入となった。長期借入れによる収入が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ40億5千5百万円純収入が増加した。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、役務の提供を主体とする総合物流業者であり、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難であるため、これに代えてセグメント別業務別の営業収益及び取扱数量を記載している。

 

a.セグメント別業務別営業収益

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

セグメント名

業務の名称

営業収益

金額(百万円)

前年同期比(%)

国内総合物流事業

倉庫業

10,932

△3.5

港湾運送業

8,245

0.1

自動車運送業

5,787

3.7

その他の業務

6,305

7.8

31,272

0.9

国際物流事業

国際運送取扱業

4,211

2.7

合計

35,483

1.1

 (注) 上記の金額には、セグメント間の取引が含まれている。

 

b.セグメント別業務別取扱数量

○国内総合物流事業

1) 倉庫業

(イ)倉庫入出庫残高及び回転率

項目

期首残高

入庫

出庫

期末残高

回転率(%)

数量

(千トン)

数量

(千トン)

数量

(千トン)

数量

(千トン)

数量

倉庫

前連結会計年度

323

1,559

1,606

276

44.6

(2023年4月1日~

2024年3月31日)

当連結会計年度

276

1,529

1,550

256

49.9

(2024年4月1日~

2025年3月31日)

サイロ

前連結会計年度

30

52

77

5

26.9

(2023年4月1日~

2024年3月31日)

当連結会計年度

5

111

98

19

27.6

(2024年4月1日~

2025年3月31日)

 (注) 貨物回転率は貨物荷動きの状況を示すものであって、下記の算式によって算定される。

回転率=

年間入出庫高

×100

前月末残高及び当月末残高の年間累計

 

(ロ)倉庫品目別保管残高

品目

前連結会計年度

(2024年3月31日現在)

当連結会計年度

(2025年3月31日現在)

保管数量

保管数量

千トン

比率(%)

千トン

比率(%)

倉庫

 

 

 

 

農水産品

57

20.9

58

22.8

金属

12

4.6

12

4.9

金属製品・機械

9

3.4

7

3.1

窯業品

1

0.6

1

0.6

その他の化学工業品

86

31.3

70

27.4

紙・パルプ

22

8.2

24

9.6

食料工業品

22

8.1

18

7.2

雑工業品

0

0.2

0

0.4

雑品

62

22.7

61

24.0

276

100.0

256

100.0

サイロ

 

 

 

 

農水産品

2

49.4

16

85.2

雑品

2

50.6

2

14.8

5

100.0

19

100.0

 

2) 港湾運送業

(イ)一般貨物

作業別

前連結会計年度

(2023年4月1日~2024年3月31日)

当連結会計年度

(2024年4月1日~2025年3月31日)

搬入

 

 

本船揚(千トン)

1,553

1,630

車卸(千トン)

59

53

計(千トン)

1,613

1,684

搬出

 

 

本船積(千トン)

475

942

艀積(千トン)

29

19

車積(千トン)

664

637

計(千トン)

1,170

1,599

搬入、搬出を伴わない作業(千トン)

3,565

3,404

合計(千トン)

6,349

6,688

 

(ロ)コンテナ

作業別

前連結会計年度

(2023年4月1日~2024年3月31日)

当連結会計年度

(2024年4月1日~2025年3月31日)

取扱数量(TEU)

181,316

189,658

 (注) TEU:20フィートコンテナ換算

 

3) 自動車運送業

扱別

前連結会計年度

(2023年4月1日~2024年3月31日)

当連結会計年度

(2024年4月1日~2025年3月31日)

輸送数量(千トン)

1,605

1,665

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ25億5千4百万円増加し、509億9千万円となった。流動資産が、現金及び預金の増加などに伴い、前連結会計年度末に比べ24億1千7百万円増加した。

(負債)

 負債は、前連結会計年度末に比べ15億7千6百万円増加し、234億6千万円となった。設備関係支払手形や退職給付に係る負債が減少したが、借入金が長期短期合わせて27億5千万円増加した。

(純資産)

 純資産は、前連結会計年度末に比べ9億7千8百万円増加し、275億3千万円となった。利益剰余金や退職給付に係る調整累計額が増加した。

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.9ポイント低下し、53.6%となった。

2)経営成績の分析

(イ) 営業収益

 当連結会計年度における営業収益は、351億円(前連結会計年度対比4億3百万円増収)となった。なお、セグメント別営業収益の概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載している。

(ロ) 営業原価

 当連結会計年度における営業原価は、315億5千7百万円(前連結会計年度対比2億6千5百万円増加)となった。この結果、営業原価の営業収益に対する比率は89.9%となり、前連結会計年度の90.2%と比較して0.3ポイント低下した。

(ハ) 販売費及び一般管理費

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、23億8千8百万円(前連結会計年度対比3千8百万円減少)となった。

(ニ) 営業外損益

 当連結会計年度における営業外収益は、4億4千7百万円(前連結会計年度対比4千7百万円増加)となった。

 営業外費用は2億1千8百万円(前連結会計年度対比7百万円減少)となった。

 金融収支は1億1百万円の黒字(前連結会計年度対比1千万円増加)となった。

(ホ) 特別損益

 当連結会計年度における特別利益は、投資有価証券売却益4億8千7百万円、補助金収入1億4千万円、固定資産売却益3百万円を計上した。一方、特別損失は、固定資産売却損2億2千4百万円、固定資産除却損1億2千1百万円、投資有価証券売却損1百万円を計上した。

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、経営三カ年計画として2024年3月期から2026年3月期までの3年間の経営三カ年計画を策定し、最終年度である2026年3月期連結業績目標を営業収益400億円、営業利益15億円、親会社株主に帰属する当期純利益10億円としている。

 当連結会計年度における日本経済は、雇用や所得環境の改善などを背景に景気は緩やかな回復基調にあったものの、地政学リスクや諸物価の高騰が継続していることなどにより、先行き不透明な状況が続いた。

 物流を取り巻く環境は、深刻な人手不足やトラックドライバーなどの労働時間の制限、諸費用の高止まりなどにより、厳しい状況が続いた。

 このような経営環境の中、当社グループは、グループ各社の連携を一層強化し、営業の拡大、費用の削減、経営基盤の強化、社会的責任の向上に取り組んだ。

 その結果、当連結会計年度は経営三カ年計画策定時掲げた最終年度連結業績の目標に対し、営業収益87.8%、営業利益77.0%、親会社株主に帰属する当期純利益112.5%の達成率となった。

 なお、各科目の増減に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載している。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、リース投資資産の増加などにより、前連結会計年度に比べ4億5千万円減少し、21億5千3百万円となった。

 なお、当連結会計年度における投資活動・財務活動によるキャッシュ・フローの概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載している。

b.資本の財源及び資金の流動性

1)資本構成

 当社グループの当連結会計年度末における資本構成は、その他の包括利益累計額を含めた自己資本が273億5千万円(前連結会計年度末対比9億5千3百万円増加)で総資産に対する比率は53.6%、借入金が159億7千3百万円(前連結会計年度末対比27億5千万円増加)同31.3%となっており、前連結会計年度末と比較して自己資本比率が0.9ポイント低下し、借入金の比率は4.0ポイント上昇している。自己資本比率の低下は、総資産の増加率が自己資本の増加率を上回ったことによるものである。また、総資産借入金比率の上昇は、総資産の増加率が借入金の増加率を下回ったことによるものである。

2)資金の流動性

 当社グループの当連結会計年度末における流動比率は93.0%で、前連結会計年度末における73.0%と比べ20.0ポイント上昇した。

 当連結会計年度の売上債権の平均滞留期間は1.3ヶ月で前連結会計年度とおおむね変わりなく、回収は順調であった。

3)財政政策

 当社グループは現在、運転資金及び設備資金を内部資金及び借入により調達している。運転資金の借入については、当社が一括して金融機関等から短期借入により調達し、関係会社の資金需要に応じて貸し付ける方法をとっている。設備資金については、金融収支の安定性を重視し、金融機関から長期固定金利の借入により調達している。

 なお、経営三カ年計画(2023年度~2025年度)期間において投資する約180億円は、自己資金及び金融機関からの借入金にて調達する方針である。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。

 連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っているが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼしている。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりである。

a.投資の減損

 当社グループは、長期的な資金の運用または長期的な取引関係の維持等のために、金融機関を含む取引先の株式等に対する投資を行っている。これらの投資には市場価格のない株式等以外の価格変動性の高い上場会社の株式と、市場価格のない非上場会社の株式等が含まれており、当社グループはこれらの株式等の投資価値の低下が一時的でないものと判断した場合に減損処理を行うこととしている。当連結会計年度において計上した減損処理額はなく、当連結会計年度末において保有する上場会社の株式に係る未実現損失はない。

b.固定資産の減価償却等

 当社グループの主な事業である埠頭業・倉庫業は施設に多額の投資を行う必要があり、有形固定資産及び無形固定資産の当連結会計年度末における帳簿価額は293億7千8百万円で総資産額の57.6%、営業収益の額の83.7%に相当している。当社グループは、1998年4月1日以降に取得した建物(建物附属設備を除く)並びに2016年4月1日以降取得した建物附属設備及び構築物を除く有形固定資産の減価償却方法について定率法を採用し、投資資金の早期回収を図っている。当連結会計年度における減価償却費の計上額は21億5千8百万円であり、これは減価償却の対象となる固定資産の当連結会計年度末における帳簿価額の10.8%に相当している。

 

c.退職給付に係る会計処理

 当社グループは、退職給付費用及び債務の計算の前提となる割引率を、退職給付の支払見込期間を反映したAA格以上の普通社債の連結会計年度末における市場利回りを勘案して設定している。

 当社グループの数理計算上の差異の主な発生原因は、退職給付信託の設定に伴い当社が拠出した株式の想定外の価格変動及び割引率の変更によるものであり、その処理方法は発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(14年)による定額法によっている。当連結会計年度末における数理計算上の差異の未認識額は13億3千4百万円(貸方残高)である。

 制度移行に伴う過去勤務費用の処理方法は、数理計算上の差異の処理方法に準じて、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(14年)による定額法によることとしている。当連結会計年度末における過去勤務費用の未認識額はない。

d.繰延税金資産

 当社グループの税効果会計の適用に際しては、グループ各社の所得の過去の発生状況及び将来の発生見込に基づくスケジューリングの結果等を勘案して繰延税金資産の回収可能性の判定を行っている。当社グループにおいては、スケジューリング不能のもの、所得の発生見込みに不確実性の存する一部の連結子会社に係るもの等を除き回収可能であると判断している。

 また、グループ通算制度を採用しており、これに沿った会計処理を行っている。

e.偶発債務

(当社川崎支店の火災について)

 当社川崎支店において、2019年4月16日にベルトコンベアから火災事故が発生し、近隣の施設に延焼した。

 これに対し、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)6 偶発債務」に記載のとおり、延焼した施設で発電事業を行っている株式会社京浜バイオマスパワー、また発電施設の所有者である出光興産株式会社より2022年3月28日付にて、当社に対する損害賠償請求訴訟が提起され、2022年5月23日に訴状の送達を受けた。

 訴訟の推移によっては、将来金銭的負担が生じる可能性があるが、現時点では連結財務諸表に与える影響を合理的に見積もることは困難な状況である。

 なお、今後の訴訟の推移によっては、引当金を計上するなどの可能性がある。

 

5【重要な契約等】

 該当事項なし。

6【研究開発活動】

 該当事項なし。