第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「人を大切にすることを基本理念とし、お客様にとってなくてはならない存在としての山九を築きます。そして、社業の発展を通じて社員の福祉向上並びに社会の発展に貢献します。」とする経営理念のもと、各事業分野における豊富な実績と、技術・技能に裏付けられた質の高いサービスを提供することにより、お客様・株主・従業員・社会(地域)から信頼を獲得し、世の中から選ばれる企業であり続ける事を目指してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

世界の人口構造変化、地政学的リスクの高まり、気候変動対応やデジタル技術の進展に伴う競争激化など、当社グループを取り巻く環境は、先を見通すことが難しい混沌とした状況が続いています。そのような環境下、我々の最も重要な経営資源である「人」の確保に関わる労働力不足の問題をはじめ、サプライチェーンの変化、カーボンニュートラル、DXなど、様々な事業環境変化による課題への対応が迫られています。

このような状況を踏まえ、2023年度を初年度とする「Vision2030」、「中期経営計画2026」を策定いたしました。当計画に基づき、急速に変化する事業環境においても、世界の産業を支え続けるという使命を果たしていけるよう、取り組んでまいります。

 

<Vision 2030>

1.パーパス

「心に「Thank you」を、世界の産業に山九を。」

私たち山九は自分たちを取り巻く様々な人たちへ常に感謝の念を忘れません。

その想いを分かち合うパートナーとともに、 

新たな価値を創造し、世界の産業とその先にある暮らしを支え続けます。

 

2.あるべき姿

「人・社会・環境への感謝」を事業で実現する人間力企業

 

3.長期経営戦略2030

あるべき姿を実現するための3つの方針

方針1.事業ポートフォリオのマネジメントと再構築

    将来の事業環境変化に備え、人財・投資を適切に管理し、経営資源を最適配分する仕組みの構築

     ・経営資源の有効活用を目的とした事業ポートフォリオマネジメント

    ・データ活用による経営意思決定の高度化(経営の見える化)

 

方針2.既存顧客の領域拡大(ビジネスモデル革新)

    最新技術の活用による生産性向上と新たな付加価値サービスの構築

    ・現場の知恵とテクノロジーを融合した事業モデルの構築(DX)

    ・サービスの付加価値創造(人にしか出来ない作業の追求)

 

方針3.成長市場への挑戦

    ソリューション力を高め、社会課題解決への対応力強化

    ・山九グループの強みを活かした新規事業創出

    ・海外(グローバル)展開の強化

    ・グリーン成長戦略の強化

 

 

 

 

<中期経営計画2026> 

1.4つの基本戦略

(1)既存事業の収益強化

世の中の変化が加速する中においても、中期4年間においては、既存領域における需要は旺盛であると見込んでいます。安全・品質・技術・技能・生産性を徹底的に高めて差別化を図り、顧客ニーズを捉え、確実な案件獲得に繋げてまいります。

 

(2)海外事業拡大

日本で培った事業のノウハウ・強みを活かして海外展開を拡大してまいります。日系企業に留まらず、現地の有力企業との取引拡大を見据え、海外ナショナル社員の育成拠点整備、物流施設の整備を進め、サービスレベルの高度化、グローバルな人財の流動化を図ることで、海外売上高比率を高めてまいります。

 

(3)グリーン機会の獲得・準備

主要顧客においても、既にカーボンニュートラルに向けた取り組みが進んでおり、将来の機会獲得に向けた積極的な顧客へのサポートや、必要な技術・人財等への先行投資を行ってまいります。再生可能エネルギー関連等の事業拡大も図り、既存事業の需要を獲得しながら、将来の事業機会獲得に備えることで、継続的な事業拡大・成長を図ってまいります。

 

(4)新規事業領域進出

我々がこれまで培ってきた物流・操業・設備工事・メンテナンスなどの既存の強みを活かし、新たな事業領域への拡大に挑戦することで、事業の可能性を広げてまいります。

 

2.基本戦略を支える機能強化と経営基盤強化

(1)機能強化

①人財強化

事業拡大に必要な人財を確保・育成し、個人の能力と組織のパフォーマンスを最大化

②DX推進

現場力(人)とデジタル/先進技術を融合し、生産性向上とビジネスモデル変革を推進

③パートナー連携強化

パートナーとの協調・協創による機能の補完・拡充

 

(2)経営基盤強化、リスクマネジメント

安全・品質・コンプライアンス・ガバナンス強化の継続、及び多様化する事業環境変化に対して、中期計画を確実に進めるためのリスクマネジメントの強化を行ってまいります。

 

3.各事業戦略

基本戦略に基づき、物流・機工各事業の戦略を策定し、持続的成長に向けた取り組みを推進してまいります。

 

 

 

(1)物流事業

物流事業においては、2026年のあるべき姿を「顧客ロジスティクスの最適化・高度化を担うソリューション企業」と定め、2030年の長期に向けては、個別の顧客から業界全体の最適化を提供することを目指してまいります。あるべき姿の実現に向け、以下の戦略を推進してまいります。

 

①既存の強みを活かした事業展開

ターゲット業界とエリアを絞り、特定業界や地域に経営資源を集中することで効率的に事業拡大を図ってまいります。既存の強みである、化成品、鉄鋼、電気・電子部品、自動車部品などの業界を中心に、国際ネットワーク・港湾・3PL・輸配送・構内等のメニューを用い、顧客に対する最適物流ソリューションの提案を行うことで、事業を拡大してまいります。また、リサイクルなどの世の中のニーズに合わせて、グリーン物流領域など、新しい事業創出にも挑戦してまいります。

 

②デジタル化・自動化とデータ連携強化

事業拡大の最も重要な要素として、デジタル化・自動化等による顧客とのデータ連携強化を図ってまいります。基幹システムの再構築によるビッグデータの蓄積、自動化・省力化設備の積極的な導入により、顧客の最適なサプライチェーンの構築、CO2削減、生産性向上などに寄与する、ソリューション物流企業を目指してまいります。

 

③パートナーとの協調・協創、不足機能の補完・拡充

国内外において事業拡大のために補完・拡充が必要な機能については、外部パートナーとの協調・協創を推進することで、目標達成を目指してまいります。

 

(2)機工事業

機工事業においては、2026年のあるべき姿を「基盤事業の盤石化と成長事業への挑戦」と定義し、2030年の長期に向けては、保全・工事ノウハウを進化させ、世界の成長領域で戦えるポジションの確立を目指してまいります。あるべき姿の実現に向け、以下の戦略を推進してまいります。

 

①収益基盤となる事業の深化と強化

既存の主要業界である、石油・化学・鉄鋼の分野においては、国内外において引き続き旺盛な需要があると見込んでおり、強みである動員力や技術・技能を活かし、既存領域における事業強化を図ってまいります。今後、人手不足が深刻化する中でサービスの高度化を実現するために、人財リソースや技術・技能のデータベース化、プロジェクト管理のシステム化、最新技術を用いた予防保全サービスの提供など、効率化・生産性向上に向けたDX推進を実施してまいります。

 

②成長事業と新規事業への挑戦

既存事業で培ってきたノウハウと強みを活かし、国内外の中規模EPCや、再生可能エネルギーなどのグリーン関連事業、老朽化する社会インフラのメンテナンスなど、成長領域・新規領域における事業の拡大を図ってまいります。電気・計装などの補強が必要な機能は、外部のパートナーを選定し、資本提携等の手段も含めて連携することで機能強化を図ってまいります。

 

③プロジェクトマネージャー・エンジニアの育成と流動化

機工事業の拡大に最も重要な要素となる、プロジェクトマネージャー・エンジニアの育成に関しては、日本・東南アジア・中東の3つの人財育成拠点、エンジニアリング拠点を整備し、グローバルに人財育成と流動化を図ることで、品質を保ちながら事業機会の拡大に努めてまいります。

 

 

 

(3) 投資計画

2026年度までの中期4年間、2030年度までの長期8年間における累計の成長投資額および人財投資額は、次のとおりであります。

 

 

中期4年間累計

長期8年間累計

成長投資額

1,000億円規模

1,600億円規模

人財投資額

150億円規模

300億円規模

 

 

(4) 目標とする経営指標

①財務指標

 

財務指標

中期目標

2026年度

長期目標

2030年度

売上高

6,300億円 以上

7,000億円 以上

営業利益率

6.7% 以上

8.0% 以上

海外売上高成長率(2021年度比)

25% UP

65% UP

ROIC

8.0% 水準

10.0% 水準

 

 

②非財務指標

 

非財務指標

中期目標

2026年度

長期目標

2030年度

CO2排出量削減(2020年度比)

(Scope1,2、単体及び国内連結子会社)

18% 削減

42% 削減

女性管理職比率

9.5%

11.0%

 

 

(5) 資本政策

中期経営計画2026においては、事業活動における安定した営業キャッシュ・フローの創出を見込んでいる一方、中期4年間において、将来の持続的成長に向けた多くの戦略投資を計画しております。財務の健全性・安定性を確保しながら、負債も積極的に活用し成長投資に充てることで資本コストの抑制を図ります。また、配当に加え自己株式の取得を含めた4年間の総還元性向の指標を設定し、これまでに比べより充実した株主還元を図ることで、資本の効率性を重視しながら、企業価値の最大化を目指してまいります。

 

「中期経営計画2026」指標

ROE

10% 水準

ROIC

8.0% 水準

配当性向

40% 水準

4年間の総還元性向

70% 水準

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

 ガバナンス

サステナビリティ経営の遂行は主要な経営課題の一つという認識のもと、事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに企業価値を高めるべく、代表取締役専務取締役管理・ESG管掌を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティに関する取り組みは、コンプライアンス委員会、労政委員会、人事委員会、人財育成委員会、組織風土・運営改革委員会、技術委員会、システム委員会、品質マネジメント委員会、リスクマネジメント委員会、安全衛生会議、環境会議と連携して、グループ横断的に活動を推進しております。

2023年度はサステナビリティ委員会を4回開催し、マテリアリティに対するKPI設定に関する審議のほかに、サステナビリティを巡る社内外動向や外部有識者による講演を踏まえた今後の取り組みの方向性などを審議し、重要事項は経営会議および取締役会に付議、報告しております。

 

・サステナビリティ推進体制


 

会議

議長

事務局

権限・役割

取締役会

代表取締役会長

総務部

サステナビリティに関わる重要事項の審議・決定

経営会議

代表取締役社長

経営企画部

サステナビリティに関わる重要事項の審議・決定および指示

サステナビリティ委員会

代表取締役専務取締役管理・ESG管掌

サステナビリティ企画部

サステナビリティに関わる方針等の策定・見直し、対応策等の審議、活動進捗確認および指示

環境会議

同上

カーボンニュートラル推進部

環境関連法規等の遵守徹底、環境負荷低減への取り組み推進、進捗確認および指示

組織風土・運営改革委員会

同上

労政部

いきいきと働ける職場づくり推進に関わる方針等の策定・見直し、活動進捗確認および指示

人事委員会

同上

人事部

管理職層などを対象とした人事施策等に関する重要事項の審議

労政委員会

同上

労政部

全社員を対象とした人事諸制度等に関する重要事項の審議

安全衛生会議

代表取締役専務取締役エリア管掌兼エリア統括兼安全統括

安全衛生部

安全衛生管理に関わる方針および計画等の策定・決定、ならびに安全衛生管理に関する重要事項の審議

 

 

② リスク管理

2023年6月に代表取締役専務取締役管理・ESG管掌を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント体制を敷いて、想定されるさまざまなリスクに備えています。「リスクマネジメント規程」に基づき、顕在化する可能性のあるリスクを選定、評価して的確な対策を講じて事業の継続が脅かされる事態を未然に防止することとしています。

万が一リスク事案が発生した場合には、「クライシスマネジメント規程」に基づき、代表取締役を本部長とする特別対策本部を設置、必要に応じて外部アドバイザーを加えた組織の下で迅速な対応を行い、損害の拡大防止に努める体制を整えております。

 

リスクマネジメント体制

 


 

会議体

権限・役割

取締役会

リスクマネジメント体制の整備および運用状況の監督

経営会議

リスクに関する経営目線での指摘・追加検討指示、リスクマネジメント委員会整理内容の最終決定

リスクマネジメント委員会

リスクマネジメント活動計画の策定、リスクアセスメントの実施、リスク対策フォロー

リスク所管部門

優先して対策を打つべきリスクへの対策計画の立案・実施の管轄

 

 

 

③ 戦略

サステナビリティ基本方針の中で経営理念に込められている精神を具体的に明示して、企業と社会が共に持続可能な発展を遂げるための取り組みを推し進めています。また、それを実現するためのマテリアリティを特定し、取り組みを推進しています。

 

山九グループのサステナビリティ基本方針

 山九グループは創業以来、経営理念に込められた精神を受け継ぎ、社会要請に応じて事業形態を変化させ、社会の発展と共に歩んでまいりました。これからも経営理念に基づき、事業活動を通じて、環境問題を含む社会課題の解決に貢献し、企業と社会が共に持続的に発展していくことを目指します。

 

 山九グループの「経営理念」は、サステナビリティと深く結びついています。

 1.「人を大切にすることを基本理念とする」

    誰もが安心して働き、山九グループに関わる全ての人々が幸せに暮らせる未来を目指します。
 2.「お客様にとってなくてはならない存在となる」

    環境の変化に対応し、社会の要請に応じたサービスを提供することで、世の中から選ばれ続ける企業

    を目指します。

 3.「社業の発展を通じて、社会の発展に貢献する」

    グローバルに展開する事業活動を通して、社会の発展に貢献することを目指します。

 

 

 

 

・マテリアリティ特定プロセス

国際的なガイドライン等を参照して社会課題候補を洗い出し、当社の経営理念や方針等を踏まえ、取締役や従業員、外部ステークホルダーにインタビューを実施し、当社グループの事業における重要度とステークホルダーにおける重要度で社会課題を評価してマテリアリティを特定しました。特定した16のマテリアリティを6つのテーマに整理し、テーマ毎に対応方針を定め、取り組みを推進しております。

 

テーマ

マテリアリティ

環境保全

気候変動への対応

 

資源循環

働きがいのある職場づくり

働きがいのある職場環境づくり

 

人財育成

 

ダイバーシティ

 

労働安全衛生の向上

サービスの安全・品質の担保

 

サービスの安全・品質の担保

 

社会変化に対応した価値提供

 

情報セキュリティの担保

 

革新技術を活用したサービスの提供

地域社会への貢献

人権尊重および地域社会への貢献

経営基盤の強化

ガバナンス体制の確保

 

リスク管理の徹底

 

ステークホルダーとの対話

 

事業活動の情報開示

コンプライアンス

コンプライアンスの徹底

 

 

 

④ 指標および目標

マテリアリティに対する指標は、サステナビリティ委員会にて継続審議しております。

マテリアリティ

対応方針

指標・KPI(対象)

気候変動への対応

「地球環境は全人類にとってかけがえのないものである」との共通認識に立ち、事業活動に伴う環境負荷の低減を積極的に推進します。

・CO2排出量の削減(2020年度比)

2030年度▲42%、2050年実質ゼロ

(単体・国内関係会社、Scope1および2)

・エネルギー消費原単位 5年平均年1%以上の低減(単体)

資源循環

働きがいのある職場環境づくり

「人を大切にする」という経営理念のもと、ワークライフバランスを推進し、多様な人財が一人ひとりの能力を高め、誇りを持って意欲的に働くことができる環境づくりに取組みます。

2030年度 女性管理職比率 11%

(単体・国内および海外関係会社)

人財育成

ダイバーシティ

労働安全衛生の向上

労働災害の発生状況

(単体・国内関係会社)

※協力会社含む

「安全を全てにおいて優先する」という強い決意のもと、安全を全ての事業の根幹として技術・技能を磨き、サービス品質の向上に努めます。社会要請に応じたサービスを提供することで、事業の発展を目指します。

サービスの安全・品質の担保

研修実施

(単体・国内関係会社)

社会変化に対応した価値提供

対象サービスの提供実績

(単体・国内および海外関係会社)

情報セキュリティの担保

情報セキュリティ事故発生件数

(単体・国内および海外関係会社)

革新技術を活用したサービスの提供

知的財産登録件数

(単体・国内および海外関係会社)

人権尊重および地域社会への貢献

「社業の発展を通じて社会の発展に貢献する」という経営理念に込められた精神のもと、地域社会と共に持続可能な成長を目指します。

2024年5月に人権方針を策定しました。今後、人権デューデリジェンスを実施し、その結果を精査した上で指標を策定してまいります。

ガバナンス体制の確保

適切なガバナンス体制の構築によりリスク管理を行い、経営の透明性を確保して公平公正な事業活動を行うことで、ステークホルダーから信頼される企業であることを目指します。

最適なガバナンス体制の確保に向け、株主などのステークホルダーと対話して、その意見を反映させてまいります。

リスク管理の徹底

リスクマネジメント委員会での議論を踏まえて指標を策定してまいります。

ステークホルダーとの対話

ステークホルダーとの対話実績

(単体)

事業活動の情報開示

コンプライアンスの徹底

企業倫理ならびに、法令および社内で取り決めたルールを遵守し、国際社会の一員として社会良識をもって行動します。

階層別研修および受講者数

(単体・国内関係会社)

 

 

(2) 気候変動への対応

 ガバナンス

気候変動は重要な経営課題の一つとして、サステナビリティ委員会ならびに環境会議にて審議しております。サステナビリティ委員会および環境会議の概要については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

 リスク管理

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般 ② リスク管理」をご参照ください。

 

 戦略

気候変動は重要な経営課題の一つと捉え、気候変動が与える2030年までのリスクと機会を定量的・定性的の両面から評価を実施し、気温が1.5℃上昇することを想定したシナリオ(環境保全シナリオ)と4.0℃上昇することを想定したシナリオ(成行シナリオ)を用いて財務的影響の評価と対応策を検討しております。複数のシナリオを用いることで、環境変化・社会情勢に応じた臨機応変な対応が出来るよう検討しております。

また、気候変動の原因となる温室効果ガス(特に影響の大きいCO2)について、中長期的な目標を設定し削減に向けた取り組みを推進することで、2050年までに、CO2排出削減目標である実質ゼロを目指して活動していきます。

 

 

中分類

小分類

 

 

移行

リスク

政策・

法規制

炭素価格

リスク

各国政府の炭素税の導入により、コスト負担分をサービス料金に転嫁しきれずに利益率が低下

主な対応策

・CO2排出量削減取り組みの推進

評判

金融機関・

投資家・

社職員の行動変化

リスク

グリーン戦略の実行・管理可能な体制整備の遅れ及び役職員の行動変容が伴わずに戦略推進の停滞により売上・利益が低下、市場評価も低下

主な対応策

・施策推進機能の構築
・評価制度導入

市場

顧客の

行動変化

リスク

機工・物流領域における脱炭素施策の取り組み遅れにより、顧客から選ばれず、既存売上が減少

主な対応策

・脱炭素施策の推進

顧客の

市場規模

縮小

リスク

主要顧客の環境コスト負担が大きく、海外メーカーとの製造コスト差が発生し、日本の生産量及びサプライチェーンが縮小、既存売上が減少

主な対応策

・海外のプラントにおける事業展開の強化

設備寿命の

延伸

リスク

サーキュラーエコノミーの加速で、顧客の設備寿命延長の取り組みが進み、保全に係る既存売上が減少

主な対応策

・新技術による予知保全領域への事業拡大

顧客の製造

プロセス変化

リスク

主要顧客のCO2削減対応設備の採用や循環型原料への代替など、脱炭素への対応が進むことにより、既存領域での作業が減少、売上が減少

主な対応策

・各種のCO2削減対応設備および非石油原料プラント技術に関する対応の強化

機会

新たな製造技術が進むことにより、老朽化設備の解体工事や、設備新設工事が増え、工事参画により売上機会を獲得

主な対応策

・工事対応力の強化

代替エネルギーインフラへの要請

機会

水素・アンモニアのサプライチェーン形成に伴い、製造プラントや燃料を利用する発電所・製造業等の事業機会に参画することで新たな売上機会を獲得

主な対応策

・水素・アンモニア設備に関する事業参画

廃棄物リサイクルへの要請

機会

化学製品/鉄/非鉄の領域において、商流・物流・情報流のエコシステムへの参画により、新たな売上機会を獲得

主な対応策

・静脈物流網構築、エコシステムへの参画

再エネ発電普及

機会

再エネ事業(太陽光、風力、水力等)の施工体制の整備、工法等のノウハウ習得による売上機会の獲得

主な対応策

・再エネ事業対応力の強化

 

 

 

中分類

小分類

 

 

物理的

リスク

急性

リスク

自然災害

の頻発

リスク

気候変動により引き起こされる将来の海面上昇に伴う台風豪雨発生時の被害甚大化により、倉庫移転のリスクや機材等の修繕コスト増加

主な対応策

・浸水対策等自然災害に対する対応強化

慢性

リスク

平均気温

の上昇

リスク

ヒートストレス対策コストの増加、ヒートストレスによる労働生産性の悪化により利益率が低下

主な対応策

・労働環境の整備

 

 

④ 指標および目標

気候変動への対応に関する取り組みを推進するために、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたロードマップを策定しております。

山九グループとして地球温暖化を阻止し、なによりもお客様のサプライチェーンの一員としてカーボンニュートラル達成に貢献していくための具体策をロードマップとして策定しました。内容としては以下のアプローチで取り組んでまいります。

 

省エネ・・・照明のLED化、エコドライブ推進、DX推進による削減等

創エネ・・・太陽光パネル設置(自社投資、PPA)、新規倉庫ZEB認証推進等

電化・・・・ZEⅤ車両の導入、大型FCⅤ実証実験参画等

再エネ・・・電力の再エネプランへの切替、バイオディーゼル燃料導入等

 


 

また、目標に対する進捗は、以下の通りです。

 

非財務指標

中期目標

2026年度

長期目標

2030年度

実績

(当連結会計年度)

CO2排出量削減(2020年度比)

(Scope1,2、単体及び国内連結子会社)

18% 削減

42% 削減

13.4% 削減

 

 

(3) 人的資本(人材の多様性含む)

① ガバナンス

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

 

② リスク管理

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般 ② リスク管理」をご参照ください。

 

③ 戦略

当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

a.人材育成方針(山九グループ人財育成方針)

当社グループの競争力の源泉は「人材」であり、そのため「人材」を「財産」と捉えており、社内では「人財」と認識し、表現しております。

その認識のもと当社グループにおける人財育成の目的は、全社員が企業理念を認識し、具現化に向けそれぞれの特性と能力を発揮し、山九グループにおける価値創造を最大化するとともに社会人としての自己実現をさせること、と定義しています。

具体的な取り組みとして獲得した人財に必要なスキルを身に付けさせ能力を最大化するために、以下の教育体系に基づく研修及び社員の自律的なキャリア構築を支援する制度を導入しています。

加えて育成を通して多様な人財が活躍できる土壌を整備するために階層別研修の上級管理者研修・管理者研修・係長研修において人財の多様性の理解を促す「労務管理と多様性」講座、選抜型研修にて女性社員のキャリア形成支援を目的としたダイバーシティ研修を実施しています。

また、2022年10月マレーシアに開設した海外で初となる人財育成センター「SANKYU TECHNICAL ACADEMY」にて海外関係会社社員を対象にメンテナンス研修、機械整備研修などを実施し、世界で活躍できるグローバルな技術・技能集団の育成に取り組んでまいります。

 


(注) 階層別研修、技能・技術研修、各公開講座は関係会社社員も受講しております。

 

 

b.社内環境整備方針

(a) 安全に関する取り組み

「人を大切にする」という当社(グループ)の経営理念の根幹となるのは、全社員とその家族が一人でも多く幸せを感じることであり、「安全」はその為に最優先されるべき条件であると考えています。

その為にも、安全衛生方針に示している、我々の職場には『そもそも安全な状態は存在せず、常に存在するのは危険な状態である。』という認識とともに、常に問題意識を持ち続け、全社員が一丸となって危険な状態を排除する知恵や工夫を現場に反映させることが重要となります。

また、そのような安全活動、安全管理ができる人財を育て、安全文化を継承することで、真に「人を大切にする」組織を構築していきます。

 

具体的には以下のような安全の取り組みを行っています。

 

・「山九労働安全衛生マネジメントシステム」を導入

厚生労働省策定のOSHMSをもとに「山九労働安全衛生マネジメントシステム」(Sankyu occupational Safety and Health Management System:SSMS)を策定し、2003年に全社で導入しています。

なお、導入に際しては、従来から行っていた活動に加え、新たに体系化した活動を取り入れ、組織的な安全衛生管理活動を再構築しました。

 

・安全衛生教育

教育の主管となる組織、受講する従業員の階層ごとに、体系的かつ計画的に行っています。従業員に安全衛生に関する知識および技能を習得させるとともに、意識の高揚を図るための教育を実施することを規程で定めています。

 


(注) 上記の他、人材育成方針に記載した階層別研修の全階層にて「安全衛生管理」に関する講座を実施しています。

 

(b) 働きがい向上に関する取り組み

社員が、それぞれの特性と能力を最大限発揮するには働きがいを持てる職場環境を整備することが重要となります。そのために以下のような対話活動を通して社員のニーズを把握し、職場環境の整備に取り組んでいます。

 

本社で行う労働組合との対話活動実績(2023年度:単体)

 

実施回数

取り扱う内容

労使経営委員会

2回

・経営状況の説明

労使経営懇談会

1回

・各事業本部方針の説明

労使幹部連絡会

5回

・決算説明

労使協議会

4回

・労働条件等に関する協議

労使専門委員会

11回

・労働条件等に関する意見聴取

人事制度専門委員会

1回

・人事制度の運用状況説明および意見聴取

雇用対策検討委員会

3回

・要員状況、作業状況についての説明および意見聴取

 

 

社員との対話活動実績(2023年度:単体)

 

実施回数

内容

役員対話活動

68回

・社員と取締役、執行役員との直接対話活動

小集団対話活動

1,528回

・階層別での社員同士の対話活動

 

 

社内環境整備実績(2021~2024年度:単体 (注)1)

 

65歳定年制の導入               2021年4月導入

65歳以降の再雇用制度の導入     2021年4月導入

年間所定労働時間の見直し       2021年度、2022年度実施

年次有給休暇付与日数の見直し   2023年度実施

初任給水準、賃金水準の見直し   2022年度、2023年度、2024年度実施

生活支援一時金の支給 (注)2     2023年4月支給

奨学金支援制度の導入       2024年4月導入

 

(注)1. 関係会社も各社の実態に応じ、社内環境整備に取り組んでいます。

  2. 単体、国内関係会社社員および海外関係会社社員に支給しております。

 

 

また、2023年度から社員の声を集めることによって強み・弱みを明らかにし、社員がいきいきと活躍できる「働きがい」のある会社・職場を実現することを目的として、「山九働きがい診断(エンゲージメントサーベイ)」を初めて実施しました(単体から実施)。

その中でも、会社や職場をより良くしよう・したいという思いや、仕事の達成感・充実感がどの程度あるかを示す「エンゲージメント」に関する指標は、当社が重要テーマとして位置付けている“働きがい”に繋がるテーマであるため、経営における重点項目として特に注視しております。

 

2023年度 エンゲージメントに対する回答結果


 

今回、約8割の社員がエンゲージメントに対し、肯定的または中立的な回答を行っております。しかし、回答内容を分析すると社内でのコミュニケーションに関する設問で肯定的回答が少ないこと等から「会社の中でお互いの想いが伝わるコミュニケーションができていない」ことが問題と認識し、今年度より対話活動の見直しを進めていきます。

今後も継続的な「山九働きがい診断」の実施により、課題を抽出し、課題に応じた施策を打ち出し、「働きがい」のある会社・職場の実現に向けた取り組みを進めていきます。

 

④ 指標および目標

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針のb.社内環境整備方針(a)安全に関する取り組みに関する指標は、労働災害度数率(国内連結、国内全協力会社)を用いております。当該指標の2023年の実績は、0.44(注)となります。今後、改善に向けて各方針に示した取組みを進めてまいります。

 

(注)実績は2023年1月~12月末となります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している重要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 人財の確保・育成

当社グループの事業の源泉は、人財であり、必要な技術・技能を有する人財を適切なタイミングで提供する動員力を強みとして事業展開を行っております。国内における2024年問題や生産年齢人口の減少等、労働環境の変化が加速している中、必要な労働力や有能な人財を確保するため、従業員の採用強化や定着化に向けた積極的な人財投資を行うと共に、協力会社への支払いの早期化や協力会社社員の処遇改善に繋がる支援策の実施等、関係強化に取り組んでおります。また、人による作業から機械化へと変化が見込まれる事業領域については、技術開発やDXを推進し、生産性の向上に努めています。有能な人財の確保・育成および機械化・自動化による生産性向上が計画通り達成できない場合、作業体制の維持が困難となり、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 海外事業

当社グループは、東南アジア、東アジア、米欧州、中東の各地域に現地法人等の拠点を設け積極的な事業展開を行っております。したがって、各地域において経済状況の変化・景気の後退、為替レートの変動、予期しがたい法律・規制の変更、政治の混乱、テロ・戦争等による治安の悪化といった影響を受ける可能性があります。これらリスクに対しては、グループ内および外部機関からの情報収集等を通じ、その予防、回避に努めておりますが、これらの事象が生じた場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 作業の受注および遂行

当社グループは、物流および機工事業に関し、国内外において作業の受注活動を行い、適切な作業量の確保に努めております。作業の応札・受注時においては、見積内容、契約条件、事業等におけるリスクを想定し、必要な対策を講じた上で見積・契約を行っております。また、作業の遂行時においては、定期的な進捗把握や品質マネジメントシステム等の運用により、損失なく作業を完遂できるように取り組んでおります。しかしながら、事業等のリスクに記載した他リスクの顕在化や、お客様を含む取引先の状況変化等が生じた場合は、予期せぬ作業進捗の遅れや、コストの増加によって、損益が悪化し、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 特定業界・特定取引先への依存

当社グループは、鉄鋼および石油精製・石油化学業界のお客様に関わる事業が大きなウエイトを占めております。したがって、これらの業界動向やお客様の合理化要請等が当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 事業免許・法的規制

当社グループは、物流事業にあっては貨物運送、貨物取扱い、港湾運送、倉庫、通関等に関わる各種事業免許、機工事業にあっては、建設、産業廃棄物処理等に関わる各種事業免許と、これらに付帯する各種規制に従って事業を行っております。これら各種事業免許の保持および規制のクリアは、事業推進の武器でありますが、予測し難い免許基準の変更、規制緩和等は、競合他社の増加、価格競争の激化を通じて当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 重大災害、事故等

当社グループは、主要なお客様であります鉄鋼および石油精製・石油化学業界各社の事業所および国内・海外の各地域において作業請負、プラント建設工事等を行っており、その作業を行うにあたっては安全を最重要事項と認識しております。作業遂行過程等において事故または災害等が発生いたしますと、お客様に対する損害賠償、被災者に対する補償金等の負担だけでなく、当社グループの社会的信用が低下することにより事業活動が制限される可能性があります。当社グループは、「安全を全てにおいて優先します」という行動規範に基づき、災害・事故の撲滅に向けハード面(設備対策)、ソフト面(社員教育、ルール策定等)において様々な取り組みを行っておりますが、これらの安全の問題が発生した場合は、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 為替相場の変動

当社グループは、海外への事業展開等を通じて行われる外貨建取引や、連結財務諸表作成に当たっての海外の連結子会社の財務諸表上の外貨建債権・債務残高が、為替相場の変動リスクにさらされております。当社グループでは、為替予約や外貨建債権・債務のバランス化等により為替相場の変動リスクの軽減に努めておりますが、完全に回避できるものではなく、為替相場の変動が当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 金利変動

当社グループは、運転資金および設備投資資金の一部を借入金により調達しております。当社グループでは、将来の金利変動によるリスク回避を目的として、長期借入金は、原則として固定金利による支払利息の固定化を実施しておりますが、完全に金利変動リスクを回避できるものではなく、今後の金利動向によっては当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 退職給付債務

当社グループの従業員にかかる退職給付債務額は、一部簡便法によるものを除き割引率、退職率等数理計算上で設定される基礎率等の前提条件に基づき算出されております。その前提条件による算出額と実際の結果が異なった場合、前提条件に変更が生じた場合、または年金資産の時価に変動があった場合、その影響額は将来の一定期間にわたって処理することになります。

 

(10) 繰延税金資産

繰延税金資産は、将来の課税所得の予測・仮定に基づき回収可能性があるものについて計上しております。したがって、実際の結果が予測・仮定とは異なる場合、また、法令の改正等があった場合には、繰延税金資産の金額が変動する可能性があります。

 

(11) 保有株式等の価値変動

当社グループが保有している株式は、毎年、経済的合理性や便益、資産としてのリスク、資本コストとの見合い等を具体的に精査し、保有の適否を判断しておりますが、保有株式等の価値が証券市場における市況等により変動した場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 情報セキュリティ

当社グループは、事業活動を通してお客様や取引先の機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しております。

これらの情報の外部流出や改ざん等が発生しないよう、社員教育、システムやデータ等の情報資産の保護対策等に努めておりますが、想定を超えるサイバー攻撃、自然災害等により、万一これら情報の流出、破壊、システム停止等が生じた場合には、当社グループの事業遂行の障害、これに伴う信用低下や業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 自然災害等

当社グループは、台風、洪水、地震・津波等の自然災害や新たな感染症が生じた場合に備え、緊急事態を想定した対応策の策定およびその見直しを行っておりますが、大規模な災害等に見舞われた場合は、各拠点の設備が損害を被る等により、一部事業の停止や復旧費用等の支払いが生じ、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における世界経済は、コロナ後のリバウンド需要の一巡、製造業・デジタル関連財の貿易停滞、急激な為替の変動等不透明な状況が続きました。米国では、雇用情勢が良好につき個人消費は底堅く推移していますが、資金調達環境の悪化から設備投資の低迷、製造業の不振が続いております。中国では、ゼロコロナ政策解除後、サービス消費が回復の動きをするも、輸出入の減速の動き、不動産不況の長期化等により景気回復ペースは力強さに欠けるものとなっております。東南アジアでは、インバウンド需要の回復、サービス業の雇用者回復により内需シェアが高い国々で経済成長が続いておりますが、輸出依存度が高い国々では景気回復ペースが鈍化しております。国内経済では、新型コロナウイルスの5類感染症移行後、経済活動の正常化が進み、インバウンド需要が回復し、価格転嫁の動きもみられます。一方、輸出が中心となる製造業における生産活動は、世界的な需要の低迷を受けて伸び悩んでおります。

 

このような経済情勢の下、当連結会計年度における売上高は5,635億47百万円前連結会計年度に比べ2.7%の減収、利益面においては営業利益が352億16百万円7.7%の減益経常利益が366億31百万円7.6%の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は国内における賃上げ促進税制活用等により243億79百万円2.3%の減益に留まりました。

 

セグメントごとの業績は次のとおりであります。

① 物流事業

港湾国際では、国内の海上コンテナ取扱いの減少や、これに伴うヤード内作業・保管作業が減少しました。また、国内外での海上・航空運賃の下落および輸出入取扱いが前期比減少したことに加え、プロジェクト輸送案件の減少がありました。3PL一般では、3PL作業の新規取扱等の増加はありましたが、一般物流では、中国国内需要の不調に伴う中国域内での自動車部品・消費財の輸送作業等が前期比減少したことに加え、国内では化成品・消費財の取扱いが減少しました。構内では、国内客先の単価改定の進展で堅調に推移しました。中東においても、第4四半期で追加コストが発生しましたが、前期比では減少し、新規構内作業の開始がありました。

以上の結果、物流事業全体の売上高は2,842億58百万円前期比5.9%の減収セグメント利益(営業利益)は80億57百万円前期比18.4%の減益となりました。

なお、当連結会計年度の売上高に占める割合は50.4%であります。

 

② 機工事業

設備工事では、昨年度完工した国内での鉄鋼関連改修工事、東南アジアでの石油化学製造設備の建設・化学関連設備増強工事等の剥落がありました。メンテナンスでは、国内SDM(大型定期修理工事)の工事量がマイナー年のために減少し、一方、東南アジア・中東での工事量は増加しました。

以上の結果、機工事業全体の売上高は2,526億11百万円と前期並みとなり、セグメント利益(営業利益)は251億22百万円前期比3.7%の減益となりました。

なお、当連結会計年度の売上高に占める割合は44.8%であります。

 

③ その他

鉄鋼・化学関連工事等への機材・資材貸出しの増加や、システム開発案件の受注・機器販売が増加しました。

以上の結果、その他全体の売上高は266億77百万円前期比8.1%の増収セグメント利益(営業利益)は18億45百万円前期比12.6%の増益となりました。

なお、当連結会計年度の売上高に占める割合は4.8%であります。

 

(2) 財政状態の状況

① 資産

当連結会計年度末における総資産は5,050億45百万円であり、前連結会計年度末に比べ233億84百万円増加しました。この増加の主な要因は、一部大型工事の完工による受取手形、売掛金及び契約資産の増加および時価の上昇に伴う投資有価証券の増加等によるものです。

 

② 負債

当連結会計年度末における負債の部は2,196億12百万円であり、前連結会計年度末に比べ104億84百万円増加しました。この増加の主な要因は、未払法人税、未払消費税の減少と社債、長期借入金の増加の差によるものです。

 

③ 純資産

当連結会計年度末における純資産の部は、2,854億33百万円であり、前連結会計年度末に比べ129億円増加しました。この増加の主な要因は、利益剰余金およびその他有価証券評価差額金の増加と自己株式の取得による減少の差によるものです。

その結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末を0.1ポイント下回る55.8%、D/Eレシオについては前連結会計年度末より0.07ポイント増加し、0.26倍となっております。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ39億53百万円減少し、当連結会計年度末残高は468億47百万円となりました。

 

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動による資金の増加額は、217億31百万円となりました。

前連結会計年度との比較では、協力会社に対する支払早期化の影響が一巡したことにより仕入債務の減少幅は縮小したものの、法人税等の税金支払い額の増加に加え、売上債権及び契約資産が増加したこと等により、資金の収入は115億45百万円減少しました。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動による資金の減少額は、184億34百万円となりました。

前連結会計年度との比較では、定期預金の預入による支出が増加したこと等により、資金の支出は19億円増加しました。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動による資金の減少額は、91億42百万円となりました。

前連結会計年度との比較では、自己株式の取得による支出が増加した一方、社債の発行による収入が増加したこと等により、資金の支出は19億63百万円減少しました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

当社連結グループが営んでおります事業では生産実績を定義することは困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。

 

(1) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメント名称

受注高
(百万円)

前年同期比(%)

受注残高
(百万円)

前年同期比(%)

物流事業

284,706

△5.7

735

156.1

機工事業

261,186

△0.4

81,143

11.8

その他

26,279

4.6

858

△31.7

合計

572,172

△2.9

82,737

11.6

 

 

 

(2) 売上実績

当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメント名称

売上高(百万円)

前年同期比(%)

物流事業

284,258

△5.9

機工事業

252,611

0.0

その他

26,677

8.1

合計

563,547

△2.7

 

(注)1.当社連結グループの事業では、「販売実績」という定義は実態にそぐわないため、各事業の売上実績を

    記載しております。

  2.主な相手先別の売上実績および当該売上実績の総売上実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

売上高(百万円)

割合(%)

売上高(百万円)

割合(%)

日本製鉄㈱

73,054

12.6

73,956

13.1

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

① 既存事業の維持・領域拡大

物流事業においては、国内外における、物流診断や企画・提案営業により、新規お客様の獲得や既存事業領域の深耕拡大を図るとともに、お客様との適正な単価収受への交渉、国内外のお客様のサプライ・チェーンと消費財物流に資する3PLを中心とした物流領域の拡大に取り組み、その成果は着実に出ているものと考えております。中期目標に向けて、電気・電子部品、危険品を含む化成品など既存事業の中で特に優位性のある貨種をターゲットに、ノウハウの水平展開、同業他社との協業・提携によって国内外での事業拡大を図ります。また、デジタル化・省人化を促進し、業務の効率化やコスト削減を図るとともに、お客様等とのデータ連携を強化することで、サービスの付加価値向上、競争力強化を図ってまいります。

機工事業においては、当社のビジネスモデルを武器にお客様のアウトソーシングニーズを着実に取り込み、ここ数年は国内外において、特にメンテナンス事業が大きく伸長いたしました。これはお客様を取り巻く経営環境が大きく変化する中で、生産の効率化・基盤強化・環境関連投資等への旺盛なニーズに対して、当社の強みである動員力と現場力が選ばれてきた結果だと考えております。中期目標に向けて、既存事業の優位性を更に強化し、主要業界である鉄鋼や石油化学の需要を確実に取り込むとともに、カーボンニュートラル関連、インフラ関連や海外事業などの成長領域への取り組みを強化していきます。また、サービスの高度化を伴う生産性向上を図ってまいります。

 

② 現在から未来への持続的な収益力の確保(成長市場への挑戦)

長期経営戦略の1st Stage「変革期」として、「経営基盤強化」、「リスクマネジメント強化」を経営戦略に掲げ、持続的な収益力の確保を取り組んで参りました。

物流事業においては、コスト構造の見直しや適正単価収受の交渉を進め、採算性の低い拠点の集約や作業撤退等を実行することで事業体質を改善させました。また、グローバルネットワーク・グリーン物流の拡大、デジタル化施策の推進で生産性向上を進めてまいります。

機工事業においては、事業本部が主導し、大型プロジェクトの進捗管理を徹底することで、事業全体の収益性が向上いたしました。工事工程の見直しや新技術の応用による省力化を進めるとともに、協力会社も含めた要員・機材をグループ全体で管理し、その効率的な配置にも継続的に取り組んでおります。また、グローバルな要員の流動化、環境ビジネスの体制構築、新技術獲得などをつうじて事業基盤・成長基盤の強化を図ってまいります。

これらの取組結果として、世界経済低迷の影響があったものの大きく収益性を損なうことなく、安定した利益を生み出す収益体質を構築することができました。中期経営計画2026では、「売上高6,300億円以上」、「営業利益率6.7%以上」という目標を掲げ、更なる収益性の向上に取り組んでおります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社連結グループの主な資金需要は、事業運営に必要な労務費、外注費、材料費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用、さらには当社連結グループの設備新設、改修等に係る投資であります。

上記以外にも、人の力を最大限に引き出すためのDX推進やカーボンニュートラルへの対応に加え、当社連結グループの企業価値向上に資するM&A等、新しいビジネスモデル構築のための成長投資の検討も行っております。

2027年3月期を最終年度とする中期経営計画2026では「資本効率性を重視しながら、持続的成長と企業価値の最大化を実現」としており、中期経営計画の4年間で創出が見込まれる営業キャッシュ・フロー1,800億円に、負債活用600億円を加えた2,400億円を財源にして、成長投資に1,600億円、株主還元に800億円を配分する計画としております。

株主還元については、連結配当性向40%水準を目安とし、自己株式の取得については、連結総還元性向70%水準(中期経営計画2026の4年間)を目安にして、適切な時期に実施します。また、自己株式の保有については、発行済株式総数の5%程度を目安とし、それを超える株式は原則として消却することとしております。

これらの必要資金は、まずは営業活動によるキャッシュ・フローと自己資金にて賄い、必要に応じ、適正な範囲内で金融機関からの借入、または社債発行等による資金調達によって対応して参ります。

手許の資金流動性につきましては、資金効率の向上に努めるとともに、事業運営に必要な流動性と多様な調達手段を確保しております。また、急激な金融環境の変化や突発的な資金需要への備えとして、迅速かつ機動的に資金調達ができるコミットメントライン契約を金融機関と締結しております。

なお、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フローの状況」の項目をご参照ください。

 

(3) 財政状態

当社連結グループでは、事業の選択と集中を実施し、不稼動・低稼働資産の集約・売却等による資産圧縮を行い、フリーキャッシュフローの有効活用を進める過程で、3PLや3PM(一括メンテナンス)の高度化、アジアを中心とした海外事業拡大、事業領域の拡大・新規領域への進出への投資の集中を図っております。

また、資金調達に関しては、営業キャッシュ・フローと負債の活用、設備投資の支出の状況、現預金残高の水準等を総合的に勘案し、適正な範囲内でかつ機動的に実施することを基本方針としており、その方針のもと、資金調達手段の多様化やグループ内余剰資金の有効活用等の各種施策を継続的に推進しています。

 

① 流動資産

当連結会計年度末における流動資産は2,617億66百万円であり、前連結会計年度末に比べ111億37百万円4.4%増加しました。主な要因は、一部大型工事の完工による受取手形、売掛金及び契約資産の増加等によるものです。

 

② 固定資産

当連結会計年度末における固定資産は2,432億79百万円であり、前連結会計年度末に比べ122億46百万円5.3%増加しました。主な要因は、時価の上昇に伴う投資有価証券の増加等によるものです。

 

③ 流動負債

当連結会計年度末における流動負債は1,073億37百万円であり、前連結会計年度末に比べ95億23百万円8.1%減少しました。主な要因は、未払法人税、未払消費税の減少等によるものです。

 

④ 固定負債

当連結会計年度末における固定負債は1,122億74百万円であり、前連結会計年度末に比べ200億7百万円21.7%増加しました。主な要因は、社債、長期借入金の増加等によるものです。

 

⑤ 純資産

当連結会計年度末における純資産は2,854億33百万円であり、前連結会計年度末に比べ129億円4.7%増加しました。主な要因は、利益剰余金およびその他有価証券評価差額金の増加と自己株式の取得による減少の差によるものです。

当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末を0.1ポイント下回る55.8%となっております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社連結グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。

 

① 繰延税金資産

当社連結グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。

 

② 退職給付債務および退職給付費用

退職給付債務および退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績および将来の経済・市場環境の見通し等を基礎として設定しております。割引率および長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

 

③ 工事損失引当金

受注工事・作業の将来の損失に備えるため、未成工事・作業のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事・作業について、工事損失引当金を計上することとしております。

技術的難易度の高い長期請負工事や海外でのカントリー・リスク等のある工事・作業において、工事・作業の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合等は、当社連結グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

④ 完成工事高および完成工事原価の計上

成果の確実性が認められる工事契約については、履行義務の充足に係る進捗度(工事の進捗度の見積りはインプット法)に基づき完成工事高を計上しております。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高および完成工事原価が影響を受け、当社連結グループの業績を変動させる可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。