第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、ライフラインを支える物流企業グループとして、物流を通じた安全かつ高品質なサービスの提供を行うことにより、お客様、株主、地域社会等から信頼され、社会とともに発展を遂げていく企業グループであり続けることを経営の基本方針としております。

 また、社是「奉仕こそ我が務め(Service is my Business)」のもと、「安全・フェア・信頼・チャレンジ・ハーモニー」の5つのキーワードからなる、「JOTグループ・ミッション」を経営理念に掲げ、企業が持続的成長を目指す上で欠かせない要素であるESG(環境・社会・ガバナンス)を含めた活動を推進してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

 上記の経営方針に基づき、2024年度から2026年度までの中期経営計画を策定しており、計画最終年度の2026年度において、売上高37,500百万円以上、営業利益1,800百万円以上、経常利益2,000百万円以上の達成を目標としております。

 

(3) 経営環境

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限が撤廃され、緩やかな回復傾向にありますが、物価高騰や中国をはじめ海外経済の下振れリスクの影響等もあり、先行きは不透明な状況で推移いたしました。

 当社グループの事業環境につきましても、エネルギー価格や原材料価格の高騰に加え、物流業界の2024年問題による一層の乗務員不足が懸念されるなど、今後も厳しい状況が続くものと予想されます。

 セグメントごとの経営環境は、以下のとおりであります。

 

① 石油輸送事業

 石油輸送事業では、鉄道タンク車およびタンクローリーによるガソリン、軽油、灯油等の石油製品の輸送等を行っており、石油元売各社等を主な顧客としております。

 当社グループは、長距離で大量の輸送を行う鉄道タンク車輸送と、高い機動性を有し、様々な輸送ニーズに柔軟に応える自動車輸送の2つの輸送手段が利用可能であることを強みとしております。

 国内石油製品の需要は長期的に減少することが見込まれ、原油価格の高騰や感染症の影響も残るなか、より厳しい事業環境にあるといえますが、当社グループでは、上記の強みを活かし、輸送数量およびシェアの維持・拡大に努めてまいります。

 

② 高圧ガス輸送事業

 高圧ガス輸送事業では、自動車による民生用および産業用のLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素等の高圧ガスの輸送を行っており、ガス会社等を主な顧客としております。

 当社グループは、現在の主力輸送品目であるLNGの輸送を1984年から継続しており、長年にわたり蓄積された経験・実績や、専用の教育施設を活用した自動車乗務員への徹底した安全教育、研修等による安全・安定輸送を強みとしております。

 温室効果ガスの排出を減らす低・脱炭素社会の実現にあたり、今後国内の高圧ガス需要は更に高まることが予想

され、当社グループでは、上記の強みを活かし新規需要をより多く取り込むことで、更なる輸送数量の拡大に努め

てまいります。

 

③ 化成品・コンテナ輸送事業

(化成品輸送事業)

 化成品輸送事業では、各種化学品、食品等の液体・粉粒体を輸送するISOタンク、ホッパコンテナ等のリース事業と、最適な輸送手段の選定、日々の輸送手配、精算処理等の一連の輸送業務を一括して請け負うワンストップサービスを国内およびアジア地区で提供しており、化学品・食品メーカー等を主な顧客としております。

 当社グループは、オーダーメイドも含めた多種多様なコンテナのラインナップや、グループ内の自動車会社の機動力を活かした輸送により、顧客の幅広いニーズに臨機応変に対応し、顧客の業務効率化に貢献できることを強みとしております。

 化学品業界においては、国内外ともに厳しい事業環境にあるものの、当社グループは、強みである高付加価値の物流サービスの提供に加え、成長事業として取り組んでいる海外事業のさらなる需要開拓、規模拡大を進め、収益力の維持・向上に努めてまいります。

 

(コンテナ輸送事業)

 コンテナ輸送事業では、輸送ニーズに合わせ、保冷性能や通風機能等を有する鉄道、自動車、船舶で輸送可能なボックスコンテナのレンタルおよびリースを行っており、国内通運会社等を主な顧客としております。

 当社グループは、上記のとおり、保冷性能や通風機能など、顧客の多様なニーズに応えられる付加価値を持ったコンテナについて、鉄道網を活用することで顧客が日本全国どこでも使用できる体制を確立していることを強みとしております。

 日本国内の貨物輸送需要は、物流業界における2024年問題の影響で、依然として先行き不透明な状況にありますが、当社グループでは鉄道輸送の担い手として、予想される輸送力不足の受け皿となるべく、新型コンテナの開発等カスタマイズコンテナの提供等による新たな需要の掘り起こしや、長期安定的なリース案件の獲得に重点的に取り組むとともに、建造から15年が経過したコンテナをリユースコンテナとして販売するなど、収益力の維持・向上に努めてまいります。

 

④ 資産運用事業

 資産運用事業では、主に不動産賃貸事業および太陽光発電事業を営んでおります。今後とも、保有資産の適切かつ有効な活用・運用による長期安定的な収益の確保、さらなる収益向上策の実現に取り組んでまいります。

 

(4) 対処すべき課題

 上記のとおり当社グループは、グループの未来像として、強い収益基盤のもと成長の好循環を図り、「国内No.1のエネルギー輸送会社」を目指す2030年ビジョンを制定しておりますが、このビジョンの実現に向け新たな中期経営計画(2024年度~2026年度)を策定いたしました。

 前中期経営計画におきましては、想定を上回る海外経済の低迷や経費の増加等の影響を受け、売上高および各利益は目標値を下回る結果となりましたが、今後の持続的成長に向けた事業基盤の強化は着実に図られております。

 新中期経営計画では、石油、国内化成品、コンテナ輸送等の基盤事業において、引き続き収益の維持・向上を目指してまいります。また、LNG、海外化成品輸送等の成長事業における規模拡大や新規顧客の開拓に注力し、加えて将来の脱炭素社会に向けた新エネルギー輸送の研究、実践等も継続してまいります。

 さらに、事業活動を支えるESG(環境・社会・ガバナンス)経営に努め、安全・安定輸送への不断の取り組みや、持続的成長に向けた人材戦略・労働生産性の向上、雇用環境の改善による乗務員の確保にも尽力いたします。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は「物流を通じた高品質なサービスの提供」という企業方針のもと、2005年4月にJOTグループ全体での取り組みを強力に推し進めるために、社長直属の組織として、CSR活動の企画・調整・チェックを統括するCSR推進室を設置するとともに、推進活動を担う横断的組織としてCSR委員会を設置しました。

 同委員会のもとで、コンプライアンス・安全・環境保全・品質管理・人間尊重および社会貢献の6テーマに基づいた各委員会が活動を推進しております。また、グループベースでのCSR活動を担う組織としてグループCSR委員会を設置し、グループ一体でのCSR活動を展開しています。2021年4月からESG委員会およびグループESG委員会にそれぞれ名称を変更し、社会的課題解決に向けた取組みを継続しております。

 なお、JOTグループのESG活動の内容および取組みの実績につきましては、当社コーポレートサイト「サステナビリティ」ページ(https://www.jot.co.jp/sustainability/)に公表しております。

 

(1) ガバナンス

 当社グループでは、上期および下期の年2回開催されるグループESG委員会において決定された活動方針・活動計画に基づいてESG活動に取り組んでおります。

 上期には、グループ各社および当社の活動テーマ別委員会から報告される前年度の活動実績に基づく討議ののち、当年度の活動計画(案)の検討・承認が行われます。下期には上期の活動実績の進捗状況に応じて活動計画の見直しを実施します。

 当社および当社グループのESG活動の推進体制を図示しますと、次のとおりです。

 

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(2) リスク管理

 事業運営に重大な影響を与えると想定されるリスクの顕在化の予防と、被害を最小限に抑え迅速に事業を継続させることを目的に、多種多様なリスクを1件ごとにシートにまとめ、これを毎年度見直すことで、リスクマネジメントに継続的に取り組んでいます。

 

(3) 指標及び目標

① 気候変動への取り組み

 当社は、人類が自然環境と共存していくために地球環境の保全は世界共通のテーマと考えており、「環境に配慮しない企業は存続しえない」との認識に立ち、「あらゆる活動を通じて、自然との調和に努め、環境負荷の低減を図り、継続的に環境保全活動を推進する。」という環境基本理念を掲げております。そのもとで「①環境関連法規の遵守、②自然環境保全、③資源・エネルギーの効率的利用、④循環型経済社会の実現、⑤環境マネジメントシステムの継続的改善、⑥環境方針の周知と公表」という6つの環境基本方針に則して、事業活動を通じた環境保全への貢献に全社で取り組んでいます。

 組織体制については、環境管理経営者を社長が、環境管理責任者を総務部長がそれぞれ務めており、その配下に設けた横断的組織の社会貢献・環境委員会が企業活動における環境負荷低減の取り組みを行っております。

 具体的には、石油輸送事業、高圧ガス輸送事業、化成品輸送事業、コンテナ輸送事業および太陽光発電事業等を通じたCO排出低減の取り組みを行っており、取り組みの内容および実績は以下のとおりです。

 

 

事業内容

環境目標

CO低減量(t-CO

2023年3月期

(2022年度)

2024年3月期

(2023年度)

石油輸送事業

(鉄道タンク車輸送)

鉄道タンク車による環境負荷の低減(注1)

115,518

142,255

高圧ガス輸送事業

(LNG輸送)

LNG輸送による環境負荷の低減(注2)

877,554

856,834

化成品輸送事業

新規リース案件の鉄道・海上輸送誘致による環境負荷の低減(注1)

4,044

3,321

コンテナ輸送事業

高い断熱性能を有するスーパーURコンテナを利用した鉄道輸送による環境負荷の低減(注1)

603

540

太陽光発電事業

太陽光発電による環境負荷の低減(注3)

1,842

1,666

環境保全活動

森林保全活動による環境負荷の低減(注4)

49

49

CO低減量 合計

999,610

1,004,665

(注)1 当社が鉄道で輸送した場合のCO排出量と自動車で輸送した場合のCO排出量の差を低減量としております。

2 当社が当事業年度中に輸送したLNGを使用した場合のCO排出量と、同量の石油製品を使用したCO排出量の差を低減量としております。

3 当社が当事業年度中の太陽光発電量実績と同量の電力を化石燃料によって発電した場合のCO排出量を低減量としております。

4 当社が参加している「かながわ水源の森林づくり」の「森林再生パートナー制度」の取り組みによるCO吸収量を低減量としております。

 

② 脱炭素社会実現への取り組み

 当社グループでは2012年に圧縮水素トレーラーによる輸送および2015年に移動式水素ステーションの運営業務をそれぞれ開始し、来る脱炭素社会に備えた取り組みに参画しています。

 また、2021年4月にクリーンロジスティクスプロジェクトを立ち上げ、クリーンエネルギー輸送の事業化に向けた調査・研究に加え、環境保全に寄与する車両の調査・研究に取り組んでいます。

 具体的には、水素、液体アンモニア等のクリーンエネルギーの輸送を、LNG燃料トラック、FC(燃料電池)トラックを利用したクリーンな方法で実現するための研究・検討を行っています。

 

③ 人材の育成および社内環境整備

 当社は「個の尊重」をテーマに、従業員の多様性を尊重し、一人ひとりが安心して働くことができるよう、より良い職場づくりをめざしています。

 

(ワークライフバランスの充実に向けて)

 仕事と生活の両立支援として、子育てや介護をしながら、誰もが仕事と生活の調和がとれた働き方ができるよう、制度および職場環境の整備に努め、ワークライフバランスの充実に向けた取組みを着実に進めています。

 働きやすい職場環境を実現するため、労働時間の管理や有給休暇取得促進等に取り組むと同時にフレックスタイム制度およびテレワーク制度も導入し、柔軟で従業員の健康を守る働き方も推進しています。1人当たりの平均有給休暇取得率は継続的に70%前後を実現しています。

 

当社の従業員数および有給取得率の推移

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

163人

166人

159人

159人

157

68.5%

67.5%

69.5%

73.5%

75.2

 

 

(人材育成プログラムの充実)

 次代を担う若手従業員の早期育成をさらに充実させ、かつ、従業員全体の専門能力を高めるために、OJT、OFF-JT、自己啓発支援を有機的に組み合わせた教育プログラムを実施しています。また、激変する事業環境に対応しうる多能的な人材育成を目的に、若手・中堅社員を中心に部門やグループの垣根を越えた横断的な研修や業務勉強会を実施しています。

 

(女性活躍に向けた取り組み)

 当社は戦略的な人事制度改革の実践にあたり、女性活躍推進法に基づく自主行動計画を策定し、従業員の誰しもが個々の能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を行うための各種施策を展開しています。策定した計画、各種施策および直近の実績は下記のとおりです。

 

女性活躍推進法に基づく行動計画

目的

女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供および職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備

計画期間

2022年4月1日~2027年3月31日までの5年間

目標1

2023年度から2027年度新卒採用者に占める女性の割合40とする

目標2

2027年4月1日時点労働者数に占める女性の割合30とする

目標3

子育てや介護を行う従業員の仕事と家庭の両立支援

 

実施策

男女格差の解消

・会社説明会等の採用活動における、女性が就業しやすい環境であることをPRし、女性の応募者を増やす

・人事部内に相談窓口を設置

・育児休職および介護休職などの両立支援制度の拡充

職業生活と家庭生活の両立

・従業員が家庭生活と仕事を両立し、メリハリのある仕事、生活ができるよう、有給休暇取得率を 65%に高める

・2027年3月末までに育児・介護を行う必要がある人を対象とした在宅勤務制度を導入する

 

実績(2024年3月31日時点)

目標1

(正社員)20%

目標2

(正社員)26%

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のものがあります。

 なお、これらのリスクが顕在化する可能性の程度や時期、顕在化した場合における当社グループに与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、ここに記載されたリスクは、当社グループにおける全てのリスクではありません。

 

(1)自然災害の発生によるリスク

 大規模な自然災害等による鉄道・道路関連施設および顧客または取引先の出荷・製造設備等への著しい損害が発生した場合、当社グループの主要事業である各種輸送サービスの提供自体が困難となるため、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、当社グループではBCP(事業継続計画)を策定し、被災時は顧客等と連携し、同計画に沿って対応することに加え、各拠点への防災備蓄品の配備や災害時の通信手段の確保、バックアップオフィスの指定などの態勢を整えております。

 また、当社グループは鉄道輸送・自動車輸送の2つの輸送手段が利用可能である強みを活かし、相互に代替輸送を行うなど、臨機応変に対応できる体制を整えております。

 

(2)石油製品・化成品・高圧ガス等の需給バランスの変化による影響

 石油製品・化成品・高圧ガス等は、当社グループの主要な取扱品目であるため、国内・世界経済や政治情勢その他の事由により、供給に大幅な変動が生じた場合や技術革新・エネルギー需要構造の変化に伴い極端な需要の変動が生じた場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。特に、海外向けの化成品輸送は、国内輸送を中心とした他の事業と比べ世界経済や政治情勢の影響を受けやすく、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、特定の事業セグメントに過度に依存することがないよう、セグメントの分散化および収益の安定化を図るよう取り組むとともに、石油製品・化成品・高圧ガス等以外の事業として、資産運用事業を含めた新規事業の拡大、開拓に継続的に取り組んでおります。

 

(3)市況変動に関わるリスク

① 燃料油価格の変動によるリスク

 自動車輸送において、タンクローリー等で使用する軽油の購入単価が原油価格の変動によって上昇した場合、燃料油脂費等の売上原価の増加要因となります。

 このリスクへの対応として、当社グループでは燃費に優れた車両の導入や、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の導入に向けた研究・検討を進めるなど、燃料油価格の変動の影響を最小限にするよう努めておりますが、燃料油調達コストの上昇分を運賃に適正に転嫁できない場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

② 為替レートの変動によるリスク

 為替レートの変動は、上記の燃料油価格の変動に影響を与えるとともに、海外向けの化成品輸送事業の業績に大きな影響を与える可能性があります。また、輸送用のISOタンクコンテナの調達先が海外メーカーであることから、過度な円安となった場合、調達価格が上昇いたします。

 このリスクへの対応として、当社グループでは為替予約等のヘッジ手段で為替変動リスクの低減に努めておりますが、為替レートが急激に変動した場合、経営成績および財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(4)過失による事故等の発生リスク

 自動車輸送における事故や輸送容器の点検不備等、当社グループの過失に起因する重大事故等を惹起した結果、輸送契約の解除や行政機関からの許認可の取消し等により、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、当社グループでは、全ての活動の中心に「安全」を据え、様々な取組みを実施しております。具体的には、安全に特化した教育施設の設置および保有車両への安全運転支援装置の新設等のハード面はもとより、荷卸し等の基本作業訓練の再徹底、重大事故実例のグループ内の水平展開など自動車乗務員への安全教育の実効性を高め、ソフト面からも安全体制の確立を目指しております。

 また、保有する輸送容器につきましては、法定点検に加え定期的な自主点検の実施や、自社以外の点検拠点の拡充等、事業ごとに点検漏れや事故を未然に防ぐ様々な取り組みを行っております。

 

(5)乗務員不足のリスク

 当社グループの従業員は、自動車乗務員がその大半を占めておりますが、高齢化の問題のほか、近年では低賃金、長時間労働が敬遠される傾向にあります。また、2024年には物流業界における時間外労働の上限規制が適用され、さらなる乗務員不足が危惧されるなど、乗務員不足によって事業継続が困難となることで、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応として、当社グループでは賃金面やシステム化による労働負担軽減など、雇用環境の改善による乗務員の確保に努めております。

 

(6)感染症等の流行によるリスク

 感染症等の流行により、当社グループの多くの従業員が感染するなど、人的資源の喪失で事業継続が困難になり、業績に大きな影響を与える可能性があります。

 このリスクへの対応としてBCPを策定し、政府等の対処方針に則り、従業員の感染予防を徹底するとともに、フレックスタイム制度の導入やテレワークの活用など、感染防止と事業の継続を両立させる措置を講じており、リスクを最小化できる体制としております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

①業績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限が撤廃され、緩やかな回復傾向にありますが、物価高騰や中国をはじめ海外経済の下振れリスクの影響等もあり、先行きは不透明な状況で推移いたしました。

 当社グループの事業環境につきましても、エネルギー価格や原材料価格の高騰に加え、物流業界の2024年問題による一層の乗務員不足が懸念されるなど、引き続き厳しい状況にありました。

 このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画(2021年度~2023年度)の達成に向け、安全・安定輸送を継続しつつ、基盤事業における収益の維持・確保や生産性向上、成長事業における収益力向上、脱炭素社会に向けた輸送需要への対応等に取り組みました。

 この結果、当連結会計年度における売上高は34,985百万円(前年同期比0.7%減)、営業利益は1,561百万円(同1.1%減)、経常利益は1,788百万円(同0.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,154百万円(同6.0%減)となりました。

 セグメント別の概況は、次のとおりであります。

 

(石油輸送事業)

 主要顧客の運賃見直しや鉄道タンク車使用料の改定に加え、自動車輸送における需要増等により、売上高は16,263百万円(前年同期比2.3%増)となりました。

 また、利益面においては人件費等は増加いたしましたが、売上高の増加等により、セグメント利益は727百万円(同47.4%増)となりました。

 

(高圧ガス輸送事業)

 LNG輸送において鉄道輸送の終了等がありましたが、運賃改定に加え、他高圧ガス輸送における他社事業の譲受等による増収もあり、売上高およびセグメント利益は増加いたしました。

 この結果、当事業における売上高は8,972百万円(前年同期比1.2%増)、セグメント利益は140百万円(同18.9%増)となりました。

 

(化成品・コンテナ輸送事業)

 化成品輸送においては、海外経済の減速等の影響により国内外の輸送需要が低迷したため、売上高は減少いたしました。

 コンテナ輸送においては、北海道地区における野菜類の生育不良がありましたが、昨年度発生した自然災害による影響の反動等により、前年並みの売上高となりました。

 この結果、当事業における売上高は9,167百万円(前年同期比7.8%減)、セグメント利益は361百万円(同46.6%減)となりました。

 

(資産運用事業)

 太陽光発電事業において銅線ケーブルの盗難による影響を受けたものの、不動産事業において物件の売却による増収があり、売上高は582百万円(前年同期比12.7%増)、セグメント利益は332百万円(同14.3%増)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ59百万円の資金収入(前年同期は1,627百万円の資金収入)となり、6,515百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、4,984百万円(前年同期は4,712百万円の資金収入)となりました。これは主として税金等調整前当期純利益1,779百万円、減価償却費3,713百万円の計上と法人税等の支払687百万円の支払によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により支出した資金は、3,126百万円(前年同期は1,047百万円の資金支出)となりました。これは主に、機械装置及び運搬具や、建物及び構築物の取得により2,548百万円を支出したこと、および有料道路預託金として491百万円を支出したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により支出した資金は、1,819百万円(前年同期は2,048百万円の資金支出)となりました。これは主に、セール・アンド・リースバックの収入748百万円があったものの、ファイナンス・リース債務2,113百万円を返済し、配当金330百万円の支出があったことによるものであります。

 

 当社グループの資金の流動性につきましては、主要な資金需要は人件費、燃料油脂費、外部委託している輸送費(鉄道運賃や用車料)等の営業費用と車両やコンテナ等の取得に係る設備投資であります。

 これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入及びリースによる資金調達にて対応していくこととしております。

 手許の運転資金につきましては、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金の一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。

 

当座貸越極度額および貸出コミットメントの総額      5,400百万円

当連結会計年度末借入実行残高               130百万円

当連結会計年度末借入未実行残高             5,270百万円

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

(2)生産、受注及び販売の状況

①販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

石油輸送事業

16,263

2.3

高圧ガス輸送事業

8,972

1.2

化成品・コンテナ輸送事業

9,167

△ 7.8

資産運用事業

582

12.7

合計

34,985

△0.7

(注)主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ENEOS㈱

12,030

34.2

12,447

35.6

 

(3)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

①重要な会計方針

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

②経営成績の分析

 経営成績の分析につきましては、「(1)業績等の概要 ①業績」を参照願います。

 

③財政状態および資金の流動性の分析

 当連結会計年度末の総資産は41,089百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,285百万円増加いたしました。

 流動資産は11,484百万円となり、前連結会計年度末に比べ352百万円増加いたしました。これは主に受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことによるものであります。固定資産は29,605百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,933百万円増加いたしました。これは主にコンテナ、土地、リース資産の取得および時価変動により投資有価証券が増加したことによるものであります。

 負債は16,082百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,868百万円増加いたしました。設備投資をリースにより調達したことからリース債務が増加したことに加え、投資有価証券が増加したため繰延税金負債が増加したことによるものであります。純資産は25,006百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,416百万円増加いたしました。これはその他有価証券評価差額金が増加したことに加え、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比べ0.5ポイント減少し、60.9%となりました。

 資金の流動性の分析につきましては、「(1)業績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」を参照願います。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。