第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)経営方針

当社グループは、経営理念である三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」と、コーポレートブランドである「Obbli」(オブリ)を礎に、人々の生活と産業を支えるパートナーとして、成長し続ける企業グループとなることを目指す。

 

(2)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの経営環境は、インバウンドや国内旅行の活性化により航空需要が好調に推移したが、石油製品需要の減少傾向に加えて消費者の節約志向が強まるなど、当社グループの業績に与える影響が懸念されている。当社グループにおいては、創業から基幹事業としてきた石油製品を中心とした事業の変革と新たな事業領域への挑戦が喫緊の経営課題となっている。

こうしたなか、当社グループは、中期経営計画「変貌する未来への挑戦 Challenge 2030」の第2ステージとして、2030年度に目指す姿に向けた「戦略の実行と投資の加速」を推進し、新たな事業ポートフォリオの実現に向けた動きを加速する。

 

① 中期経営計画の概要

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② 中期経営計画の定量的目標に対する進捗状況

 

(参考)2023年度実績

2024年度実績

2024年-2026年度目標

連結経常利益

177億41百万円

128億60百万円

130億円~150億円

連結ROE

9.8%

7.5%

8%以上

総還元性向

84.9%

118.3%(※)

100%を目指す

1株当たり配当金

80円

100円(※)

100円を下限

※ 2025年6月26日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)「剰余金処分の件」が原案どおり承認可決されることを前提とした数値で記載している。

 

③ 各事業別の対処すべき課題

イ.石油関連事業

石油関連事業は変革事業に位置付け、スマートフォンアプリ「Mantan」を用いた予約サービスによる効率的なSS運営に注力するとともに、全国約1,000ヶ所の系列SSのネットワークを活用した新たな成長事業への変革に向けた事業の探索をおこなってきた。

2025年度は、既存SSへの再投資と収益力の強化を図る。また、昨年7月に出資を実施したavatarin株式会社との協業を進めるなど、AI等の最新デジタル技術を用いて新業態の開発に努める。

 

ロ.化学品関連事業

化学品関連事業は成長事業に位置付け、機能化学品領域のさらなる拡充、サプライチェーン強化による収益拡大を事業方針とし、在庫の最適化による利益率の改善を進めてきた。

2025年度は、新商材の研究開発、新工場の建設を進めるなど事業基盤の拡大に努める。また、高級アルコールをはじめとした機能化学品の販売拡大を加速させる。

 

ハ.ガス関連事業

ガス関連事業は成長事業に位置付け、LPガス販売業については小売顧客軒数を拡大し、天然ガス販売業については提案型営業を通じた顧客拡大に努める。

<LPガス販売業>

当社グループは、関東・東海、近畿、中国、九州エリアを中心にLPガスの事業拠点を有し、各エリアで卸売・小売の営業展開をおこなっている。LPガス販売業では、卸売取引を通じた顧客基盤の拡大とともに営業権買収を含めたM&Aによる小売軒数の拡大を進めてきた。

2025年度は、M&Aによる小売軒数の拡大を進める一方、投資管理体制を強化し、収益性の改善に努める。また、ハウスクリーニングなど新業態への挑戦もおこなっていく。

<天然ガス販売業>

当社グループは、九州地方において競争力のある営業エリアを有しており、佐賀天然ガスパイプラインによる天然ガスの供給や佐賀ガス株式会社による都市ガスの供給などをおこなっている。佐賀天然ガスパイプラインにおいては、導管周辺の新規需要家の獲得に努めてきた。

2025年度は、販売数量の拡大に向けたLNGサテライト供給やオンサイトエネルギーサービスの提案営業を積極的に進めていく。

 

ニ.航空関連事業

当社グループは羽田空港を中心とした国内における航空機給油施設の運営と給油事業を担っており、航空関連事業を基盤事業に位置づけ安定操業と業容の拡大に努めていく。当社グループが携わっている羽田空港をはじめとした国内各空港における航空燃料取扱数量はインバウンドや国内旅行の回復により堅調に推移しており、安定供給を最優先に給油事業の拡大に向けた準備を進めてきた。

2025年度は、羽田空港第2貯油基地の建設など給油設備のさらなる拡大に向けて設備投資と人員の確保を進めていく。

 

ホ.クリーンテック事業

クリーンテック事業はその他事業セグメントに含まれているが、次の柱となる成長事業に位置付けている。

2025年度は、需要の拡大が見込まれる半導体製造装置の洗浄事業を中心に工場棟の増設などの設備投資を進めるとともに、高品質洗浄の独自技術の開発にも積極的に取り組んでいく。

 

ヘ.その他、事業領域拡大への取組み

上記のほか、事業ポートフォリオの変革に向けてDXの活用を推進し、2030年度までに既存業務の2割を削減する目標を掲げている。また、事業提携やM&Aを活用した既存領域の拡大と新領域への投資の加速に努める。

 

④ 中期経営計画における資本政策について

当社は、低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化を図り、持続的成長を続けることで株主価値を高めることを基本方針としている。そのための重要な経営指標としてROE(株主資本利益率)、総還元性向を掲げ、中期経営計画において目標値を公表している。

当社グループでは、中期経営計画の推進にあたり、資本コストの指標としてWACC(加重平均資本コスト)・IRR(内部収益率)を用いて投資判断をおこなうなど、適切な経営資源の配分に努めている。また、成長戦略・資本政策の実行と適正な株主還元により、PBR(株価純資産倍率)1倍以上の維持に努める。

 

⑤ 気候変動に関連した戦略ならびに指標および目標

気候変動に関連した戦略ならびに指標および目標については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)サステナビリティに関する重要課題 ①気候変動に関連した戦略ならびに指標および目標(気候変動への対応)」に記載のとおりである。

 

⑥ 人的資本・多様性の確保に向けた取組

人的資本・多様性の確保に向けた取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)サステナビリティに関する重要課題 ③人的資本・多様性の確保に向けた取組(人材の確保と育成)」に記載のとおりである。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組の状況は、次のとおりである。

(1)サステナビリティ基本方針

当社グループは、経営理念である三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」とコーポレートブランド「Obbli」のもと、社会インフラの一端を担う企業としてエネルギーの供給責任を果たすとともに、低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオに進化させ、人々の生活と産業を支えるパートナーとなることを目指している。

当社グループの役員および社員は、以下の5項目を基本姿勢とし、健全かつ透明性の高い経営を通じて環境や社会の課題解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していく。

    私たちは誠実・正直に行動します。

    私たちは法令、ルールを順守します。

    私たちは自然環境・地域社会との関係を大切にします。

    私たちは顧客の満足を追求します。

    私たちは、自ら学び、自ら考え、自ら行動します。

 

(2) サステナビリティ全般にかかわるガバナンスおよびリスク管理

① ガバナンス

当社グループでは 2022 年4月三愛オブリグループサステナビリティ委員会を設置した。同委員会はサステナビリティ推進活動を主導しモニタリングをおこなうことを目的としており、代表取締役社長を委員長、サステナビリティ推進部担当役員を副委員長、常勤取締役および執行役員を委員、常勤監査役をオブザーバーとして構成されている。

サステナビリティにかかわるリスクおよび機会の抽出・評価は同委員会にて審議をおこない、審議結果は取締役会に報告する。取締役会は同委員会の報告内容に基づき管理・監督をおこなう。

 

② リスク管理

当社グループでは「リスク管理規程」に基づき事業リスクを俯瞰的に抽出した上で、21の項目に識別分類し実効性のある対応策を検討している。各事業部門の対応策はサステナビリティ委員会で審議され、審議結果は取締役会に報告している。

また、気候変動に関するリスク及び機会については、サステナビリティ推進部および経営企画部が事務局となり、サステナビリティ委員会で年1回以上リスクおよび機会の評価、影響度、対応策などの見直しをおこなっている。

 

(3) サステナビリティに関する重要課題

当社グループは「サステナビリティ基本方針」のもと当社事業と社会課題との関連性を整理し、以下の4項目をサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)として特定した。

・カーボンニュートラルな社会の実現に向けた取組(気候変動への対応)

・人々の生活と産業を支えるパートナーを目指す(エネルギーの安定供給)

・人材の確保と育成(ダイバーシティ&インクルージョンほか)

・経営の効率化と透明性を確保しステークホルダーの信頼を得る(コーポレート・ガバナンス)

個別のマテリアリティにかかわる当社グループの考え方および取組は、次のとおりである。

① 気候変動に関連した戦略ならびに指標および目標(気候変動への対応)

イ.ガバナンス

気候変動への対応に関する当社グループのガバナンスは、(2) サステナビリティ全般にかかわるガバナンスおよびリスク管理に記載のとおりである。

ロ.気候変動のシナリオと対応戦略

a.想定するシナリオ

当社グループは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表している第6次評価報告書第1作業部会報告書のシナリオをベースに2030年から2040年までのシナリオ分析を実施した。

<4℃シナリオ(SSP5-8.5)>

 各国のGHG (温室効果ガス)削減が進まず、世界の平均気温が今世紀末ごろに4℃程度上昇する。平均気温が上がることで大型台風や集中豪雨による災害が頻発するとともに、新たな感染症が発生し猛威を振るっている。世界的に暖冬が続き、暖房需要が減退する。

 GHG排出については、一部の先進国で厳しい法規制が敷かれるものの、発展途上国では経済活動が優先され消極的な規制にとどまる。再生可能エネルギーの普及は進むが、化石燃料への依存が続く。

<2℃シナリオ(SSP2-4.5)>

 各国において低炭素社会実現にむけた取組みが開始され、炭素税を含む各種規制・税制が施行される。これによりGHG排出量は横ばいで推移し、世界の気温上昇速度は緩やかになる反面、税負担の増加により企業の収益性が悪化する。

 また、大型台風や集中豪雨は現在(2024年度)と同程度の頻度で発生している。

 電力供給は再生可能エネルギーの割合が大きく増加するものの、再生可能エネルギーのみの電力供給は不安定であることから化石燃料による発電も依然として続いている。

 

b.シナリオにおける定義

 気候変動が当社事業に与える財務諸表影響度と発生時期の定義は以下のとおりである。

 

財務諸表影響度(基準年度:2025年3月期 売上高6,544億円 経常利益128億円)

売上高影響度

経常利益影響度

150億円未満

10億円未満

150億円以上 600億円未満

10億円以上 30億円未満

600億円以上

30億円以上

 

発生時期

期間の定義

短期

2030年まで

中期

2030年以降 2050年まで

長期

2050年以降

 

c.シナリオ分析

・リスク

<4℃シナリオ>

種類

影響

リスク

影響度

発生

時期

対応戦略

物理的

急性

異常気象による集中豪雨や河川氾濫

・大型台風などの影響により航空機給油施設や石油製品油槽所の一部が水没

短期

・BCP(事業継続計画)の整備

慢性

気象パターンの変化による気温上昇

・海面上昇により石油製品油槽所の一部が機能不全

・航空機給油施設内の地下水上昇

長期

・他油槽所の代替利用

・高潮対策(嵩上)

・排水機能強化

移行

法規制

ガソリン車の規制強化

・ガソリン販売量の減少

短期

・効率化事業(石油)はローコスト体制へ

・経営資源を再配分

技術

航空燃料SAF※1の普及

・航空燃料はSAFの割合が増 加

短期

・SAFの貯蔵、サービス

市場

EV(電気自動車)普及率増加

・EVが普及するもライフラインとしてのSS需要は残る

短期~

中期

・ガソリン車への対応は継続しEV等への対応

評判

投資家による石油関連銘柄敬遠

・ダイベストメントによる株価下落

短期

・事業ポートフォリオの進化

 

 

<2℃シナリオ>

種類

影響

リスク

影響度

発生

時期

対応戦略

物理的

急性

大雨による被害

・大雨の影響により航空機給油施設や石油製品油槽所の一部が浸水

短期

・BCP(事業継続計画)の整備

移行

法規制

ガソリン車の規制強化

・炭素税導入によりガソリン車の利用が減少

・ガソリン販売量の減少ペースが加速

中期

・SS新業態への転換

技術

航空燃料はSAFが主流

・航空燃料はSAFが主流に

中期~

長期

・航空機給油施設の整備・運用

技術

小型航空機では一部水素を燃料にした航空機が就航

・水素を動力とした小型航空機の就航が開始

中期~

長期

・水素燃料への供給対応

市場

EVおよび水素自動車の普及率増加

・EV、水素自動車へのシフトが進みガソリン車シェアが大きく減少

短期~

中期

・成長事業への投資拡大

・EVへの対応を含むSS新業態への転換

評判

投資家による石油関連銘柄敬遠

・ダイベストメントによる株価下落

短期

・事業ポートフォリオの進化

 

・機会

<4℃シナリオ>

種類

影響

機会

影響度

発生

時期

対応戦略

資源の

効率化

灯油・重油からの燃転が進む

・オンサイトエネルギーサービス※2の需要が増加

短期

・灯油・重油よりGHG排出量が少ないLNGを用いたエネルギーサービスを展開

資源の

効率化

再生可能エネルギーの普及

・再生可能エネルギーのオペレーション&メンテナンス部門へ進出しビジネス機会が増加

中期

・風力発電などのオペレーション&メンテナンスをおこなう会社への出資

製品・

サービス

感染症蔓延により衛生分野の化学品メーカーにおける需要が増加

・衛生分野の化学品メーカーを買収

短期~

中期

・化学品メーカーの買収

製品・

サービス

空港での水素供給

・水素を動力とした空港内特殊車両への水素供給ビジネスを展開

短期~

中期

・水素貯蔵施設の建設・運営

 

 

<2℃シナリオ>

種類

影響

機会

影響度

発生

時期

対応戦略

製品・

サービス

水素ステーション建設

・エンジニアリング部門において水素ステーション建設増加

中期

・水素ステーションの建設

製品・

サービス

水素自動車の普及

・水素ステーション運営へと転換を図る

中期

・水素ステーションの運営

製品・

サービス

空港での水素供給

・水素を動力としたプライベート航空機や空港内特殊車両への水素供給ビジネスを展開

中期

・水素貯蔵施設の建設・運営

 

<4℃・2℃シナリオ>

種類

影響

機会

影響度

発生

時期

対応戦略

エネルギー源

メタネーション技術※3の確立

・合成メタン製造の技術が確立され、天然ガスから合成メタンへの切り替えが進む

長期

・新たな仕入先、販売先の確保

エネルギー源

プロパネーション技術※4の確立

・合成プロパンガス製造の技術が確立され、切り替えが進む

長期

・グリーンLPガスの販売へ切り替えていく

エネルギー源

e-fuel技術の確立

・合成燃料の製造技術が確立され化石燃料からの切り替えが進む

長期

・新たな仕入先、販売先の確保

製品・

サービス

半導体需要増

・金属表面処理業(CT事業)の拡大

短期~

中期

・旺盛な半導体需要への対応として新たなCT事業所を建設する

(用語説明)

※1 SAF

  廃食油や動植物性油脂などを原料とした航空燃料。Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)の略。

※2 オンサイトエネルギーサービス

  需要家の敷地内に燃料供給設備、ボイラ設備等を設置し、必要なエネルギーを安定供給するサービス。

※3 メタネーション技術

  水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させメタン(CH4)を合成する技術。ガスの脱炭素化技術として注目されている。

※4 プロパネーション技術

メタネーションと同様に水素と二酸化炭素を反応させ、プロパン(C3H8)を合成する技術。現時点で技術体系は確立されていない。

ハ.リスク管理

気候変動への対応に関する当社グループのリスク管理は、(2) サステナビリティ全般にかかわるガバナンスおよびリスク管理に記載のとおりである。

ニ.指標および目標

当社グループでは石油精製等の事業をおこなっておらず、本社・各事業所・SS等における電力消費がCO2排出の大半を占めている。こうしたなか、各拠点において再生可能エネルギー由来の電力導入を順次進めるとともに、当社グループの事業所に太陽光発電設備を設置することで電力から生じるCO2の削減に取り組んでいる。当社グループでは、算定対象範囲を単体および連結子会社とし、2019年度を基準として2030年度にはCO2排出量30%削減、2050年度にはカーボンニュートラルを目標とする。なお、CO2排出量はScope1およびScope2の合計となっている。

 

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

項目

指標

2019年度実績

(参考)

2023年度実績

実績

2024年度

目標

2030年度

2050年度

Scope1

Scope2の合計

17,761t-CO2※1

15,448t-CO2

14,956t-CO2※2

△30%

カーボン

ニュートラル

※1 指標となる2019年度実績については、買収等による連結子会社の変更に伴い、前年公表時の数値を修正している。

※2 2024年度の実績は、有価証券報告書提出時点で入手可能な排出係数を用いて算定した暫定値である。

 

② エネルギーの安定供給に関する取組

イ.エネルギーの安定供給に対する方針およびガバナンス

当社グループは、エネルギーを安全、安定的に供給することで社会の発展に貢献するとともに、危険物を取り扱う企業として危機管理と事業継続計画の強化に努める。

エネルギーの安定供給に関する当社グループのガバナンスは、(2) サステナビリティ全般にかかわるガバナンスおよびリスク管理に記載のとおりである。

ロ.戦略(エネルギーの安定供給に向けた施策)

・調達ルートの強化

・危険物施設の安全操業、災害対応

・油槽所の強靭化

・油槽所の代替利用

・航空燃料や石油製品の保管・備蓄

・専門技術の継承

・DX化の推進

・サービスステーションの非常用設備の充実

・地域コミュニティとの対話

ハ.リスク管理

エネルギーの安定供給に関する当社グループのリスク管理は、(2) サステナビリティ全般にかかわるガバナンスおよびリスク管理に記載のとおりである。

ニ.指標および目標

項目

指標

2024年度実績

目標

2025年度

油槽所の強靭化工事 件数

2件

2件

危険物施設等の環境安全監査 実施率

100%

100%

危険物施設等の環境安全監査 指摘事項是正率

99.1% ※1

100%

施設保全点検臨店指導 施設定期保守点検実施率

100%

100%

施設保全点検臨店指導 施設定期保守点検是正率

100% ※2

100%

※1 2023年度に実施した環境安全監査指摘事項のうち1年以内に是正した施設を集計

※2 2023年度に実施したキグナス石油㈱社有SSを対象とした施設保全点検臨店指導等の指摘事項のうち1年以内に是正した施設を集計

 

③ 人的資本・多様性の確保に向けた取組(人材の確保と育成)

イ.人的資本経営に関する基本的な考え方

当社グループは、人材を最大の経営資本と捉え、「人財力」を高めることが、企業価値の最大化・永続的な発展につながると考えている。誠実・実直・信頼が織りなす従業員の安心感と当社グループの事業戦略が生み出す安心感をすべての土台とし、人々の生活と産業を支えるパートナーとなることを使命としている。

これを踏まえ、価値創造と成長に向け前進し続ける自律した「個」の集団となることを人財戦略に掲げ、「個」の目指す姿を“自ら学び、自ら考え、自ら行動する見識のある人財”として、各施策に取り組んでいる。

人的資本経営に関する基本的な考え方の詳細については、当社ホームページに掲載している。

ロ.多様性の確保についての考え方および人材育成・社内環境整備の方針

当社グループは、三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」を経営理念としており、人材の多様性を尊重し、個々の力を結集することが企業の成長につながると考えている。そのため、人材の多様性を確保すべく、採用における女性割合の増加、障がい者雇用の促進、キャリア採用を推進している。

また、社員の属性、価値観、働き方は多様化しており、互いの価値観の違いを認め、その能力を十分に発揮するための人材育成と社内環境整備に努めている。

ハ.ガバナンス

人財戦略に係る重要事項は、経営会議において審議をおこない、経営会議における決定事項を取締役会に報告する。人事部担当役員は中期経営計画における人財戦略の原案を作成するとともに人事施策を立案し進捗を経営会議および取締役会に報告する。なお、計画の推進にあたっては人事部が事務局となる。

ニ.戦略(中期経営計画に基づく施策)

当社グループは、2030年度に向けて低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化を目指し、成長事業・安定基盤事業を中心に人的資本の強化を図っている。

2021年度から2023年度の第一次中期経営計画においては変革を生む挑戦的な組織風土を醸成するため、「人事制度の再構築」「人材活用基盤の整備と専門人材の確保」を重要課題とし各施策を実行してきた。2024年度からの第二次中期経営計画においては「事業ポートフォリオの進化の実現に向けた人財基盤の構築」を掲げ、下記の施策を含め戦略的な人事施策を継続していく。

a.人材活性化に向けた研修・教育体制強化

・職種や職域を制限しないジョブローテーションの実施

・階層別研修/選抜型研修/手挙げ型研修の実施

・国内留学制度/英会話選抜ビジネスクラスの実施

・DX研修の実施

・自社研修センターを活用した集合研修の実施

・異業種交流型研修の実施

b.専門人材のキャリア採用強化

・通年でのキャリア採用実施

・キャリア採用研修の実施

c.ダイバーシティの推進

・障がい者雇用の促進

・キャリアアップ支援制度(女性社員向け通塾型セミナー「立志塾」)

d.人的資本経営の推進

・管理職ミーティングの実施

・三愛オブリグループ人的資本研修の実施

・社員参加型表彰式(Obbli Awards)の開催

・総合職キャリアパス制度の実行

e.人事・給与制度の改正

・給与・各種手当等の見直し

・仕事と育児介護等の両立支援制度の拡充

・定年再雇用規程の改正

f.健康経営の推進

・健康経営優良法人認定に向けた取り組み

・健康経営戦略マップによる健康課題への取り組み

ホ.リスク管理

会社の事業活動において、多様性を活かし、環境の変化に迅速に順応する人財の確保が重要である。人材の流動性が高まる中、採用競争力が低下し計画通り人材獲得が進まなくなること、社員の離職などにより組織の安心感が低下することが最大のリスクと考えている。エンゲージメントサーベイなどを通じて社員の状態を把握し、働きがいのある職場環境を整えることで、リスクの低減に努めている。エンゲージメントサーベイの分析結果は、経営会議の報告事項としている。

ヘ.指標および目標

当社グループは、多様性の確保についての考え方および人材育成・社内環境整備の方針に基づき、研修・教育体制を強化することで個々の能力開発を図っている。また、キャリア採用や女性採用の割合を増加させ積極的に管理職に登用するなど、さまざまな属性の人々が活躍できる組織作りを目指している。

2024年度から2026年度の中期経営計画において、低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化の実現に向けて人財基盤の構築を図っており、エンゲージメントの向上を重要課題とし次の事項を実施する。

a.人財ポートフォリオの最適化

b.多様な人財の活躍促進

c.働きやすさの創出

当社グループの人的資本・多様性の確保に向けた指標および目標は以下のとおりである。

項目

指標

2022年度実績

実績

2024年度

目標

2026年度

従業員1人あたりの教育費

101千円

97千円

120千円

採用に占めるキャリア採用割合

63.2%

73.0

新卒採用人数に占める女性割合

10.3%

15.9

30%以上

女性管理職割合

4.9%

6.4

6%以上

(注)1.採用に占めるキャリア採用割合については、今後も同水準を維持していく。

2.女性管理職割合は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。ただし、提出会社から子会社に出向している社員が子会社の役員として就任している場合、管理職として取り扱っている。

 

3【事業等のリスク】

当社グループでは、リスク管理を統括する三愛オブリグループサステナビリティ委員会において、リスクの洗い出しをおこない、対応すべき優先順位を決定するとともに、リスク毎に具体的な対応策および予防策を検討している。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものである。また、当社グループのすべてのリスクを網羅するものではない。

 

(1) 市場環境の変化について[影響度:中~大、発生可能性:高]

① リスク内容

当社グループは、石油製品の販売を主体としたビジネスを主に国内において展開している。地球温暖化等の気候変動への対応として2050年カーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速するなかで、エネルギー転換へ向けた企業の対応が顕在化してきている。国内の石油・LPガス市場においては、消費機器の燃費向上に加えてEV車やオール電化の普及が進むことで、同業者間にとどまらず、電気などの異業種との販売競争に直面している。

また、LPガスや灯油は気温の変動にも影響を受けるため、需要期である冬場の気温が上昇した場合、需要は減少する可能性がある。

このような事業環境のなか、石油関連事業およびガス関連事業の市場規模は中長期的には縮小し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

② 対応策

このようなリスクに対して当社グループは、2024年度から2026年度までの中期経営計画「変貌する未来への挑戦 Challenge 2030 Second Stage」を策定し、低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化を目指すため、当社グループの事業を成長事業、変革事業および基盤事業に分け、成長可能性のある事業へのM&Aを含めた投資を進めていく。なお、新規事業への出資や事業創出については事業開発部を中心に取り組んでいる。

 

(2) 大規模感染症について[影響度:大、発生可能性:低]

① リスク内容

世界的に感染症が流行した場合、各国間の移動に制限がかかり、航空関連事業においては、燃料取扱数量が減少し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

石油関連事業およびガス関連事業においては、感染症の拡大等の状況次第では物流や生産活動の停滞から燃料油の需要が減少する可能性はあるが、生活必需品としての需要は底堅く推移するものと考えている。

また、従業員の感染が増加し、製造、物流、保安、営業活動などに支障をきたした場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

② 対応策

当社グループは、社会インフラの一端を担う企業の責務として、感染症の拡大等に備え、事業所ごとにBCPの見直しを実施している。また、感染症の流行が見られた場合は、感染予防のための適切な処置を講じることで、従業員の感染リスクの低減に取り組み、事業の継続に努めることとしている。

 

(3) 災害等について[影響度:大、発生可能性:低]

① リスク内容

当社グループは、国内において羽田空港を含む複数の航空機給油施設を所有・運営している。また東京オイルターミナルなどの石油製品出荷基地、福岡県久留米市から佐賀県佐賀市までの佐賀天然ガスパイプライン、日本各地に所在するSSやLPガス充填所など危険物取扱設備を有している。通常では予見できない事故、地震、異常気象による集中豪雨や河川氾濫、気象パターンの変化による気温上昇により、航空機への燃料供給障害、石油製品物流障害、燃料漏洩による土壌汚染、水害によるLPガスボンベの流出が発生した場合、操業回復までに相当の時間とコストを要することから、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

② 対応策

これらの危険物施設の安全管理・保安体制についてはリスクマネジメント委員会において、自然災害等に備え事業所ごとにBCPの見直しを実施するとともに、事件や事故の報告と再発防止策の検討をおこなっている。また、同委員会において、危険物施設の環境安全監査の実施および是正状況を確認している。さらに、地震の被害を最小限に抑え入出荷機能を維持するため、油槽所の強靭化工事を進める他、所有するすべての施設で火災保険に加入し、貯油所物件には加えて地震保険等を付保している。

(4) 投資等について[影響度:中、発生可能性:中]

   ① リスク内容

当社グループは、航空機給油施設、石油製品出荷基地、SSや充填所などの有形固定資産、M&Aにより取得した無形固定資産を有している。事業等のリスクが顕在化したことにより、保有する資産の価値や収益性が低下した場合には、固定資産の減損処理が必要となり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

   ② 対応策

投資等については回収可能性を十分に検討したうえで実行しており、定期的に投資計画との差異を検証し、必要に応じて改善策を講じている。

 

(5) 情報セキュリティに関するリスク[影響度:中~大、発生可能性:低]

   ① リスク内容

当社グループでは、羽田空港における給油システムなど事業上不可欠な基幹システムを構築・運用するとともに、営業上の機密情報を保有している。他方、外部システムを利用して販売や顧客管理を実施している部門においては、営業情報の一部を外部サーバに保管している。こうしたなかで、想定外のサイバー攻撃、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等によりシステムダウンや情報漏洩が発生した場合は、事業活動の継続に支障をきたし、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

また、業務効率化のため生成AIの利用が進む中で、情報漏洩等の重大なインシデントが発生する可能性がある。

   ② 対応策

当社グループは、情報セキュリティに関する基本方針を定めリスクの低減に努めるとともに、システムの更新等によりセキュリティの強化を図り、情報技術の適正な整備および運用状況を確認している。サイバー攻撃による逸失利益を補償し迅速に対応するためサイバー保険へ加入しリスク軽減策を講じるとともに、営業情報を外部サーバに保管する場合は、データ等の安全管理措置が適切に講じられている信頼性の高い運営会社を選定している。

また、生成AIを安全に利用するため、グループ全体で「生成AI利用規程」等を制定し、従業員の順守事項を定め周知している。

 

(6) 製品の品質および安全性に関するリスク[影響度:中、発生可能性:低]

   ① リスク内容

当社グループは、防腐・防かび剤、石油系溶剤、自動車用ケミカル商品などの化学製品の製造や販売をおこなっている。リコールや製造物責任が問われる不測の製品事故が発生した場合には、損害賠償責任を負うとともに取引上の信用失墜により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

   ② 対応策

当社グループで製造する製品の品質管理には十分留意しており、「品質保証委員会」において当社で製造するすべての製品について事前に審議することで、製造物の欠陥に起因する損害賠償請求やクレーム等を未然に防止するよう努めている。

 

(7) 保有有価証券について[影響度:小、発生可能性:中]

   ① リスク内容

経済の状況や株式市場の変動により、当社グループの保有する有価証券の価格が著しく下落した場合には、保有株式の評価損が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

   ② 対応策

当社は、保有有価証券について定性的および経済合理性の両面から、保有効果の検証をおこなっている。

 

(8) 地政学的リスクについて[影響度:小、発生可能性:中]

   ① リスク内容

当社グループは、石油製品を石油元売会社等から仕入れ、国内において販売を行うことが主力事業であるが、わが国においては、その大部分は中東周辺地域などからの輸入に依存しており、原油価格および為替レートの動向により仕入価格が変動する。また、当社グループは化学製品の輸出入もおこなっており、調達先は主にアジア地区に依存している。

そのため、このような国や地域における政治的、経済的変動、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等が発生した場合、製品や原料の調達、適正価格の維持に支障をきたし、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

 

   ② 対応策

当社グループの主要商品である石油製品の高騰に備えて資金の手元流動性を確保するとともに、複数のサプライチェーンを持つことでリスクが顕在化した際の安定供給を図っている。

 

(9) 法的規制関係について[影響度:小~中、発生可能性:低]

   ① リスク内容

当社グループは、消防法、製造物責任法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律、ガス事業法、石油コンビナート等災害防止法、環境関連法令など数多くの法律や規則に規制されている。これらの規制に抵触した場合には行政処分を受けるなど事業活動の継続に支障をきたす可能性があるとともに、将来これらの法規制が大幅に改正された場合には、事業活動への制約や対応のためのコストが発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

   ② 対応策

事業に関連する法規制について、所管する関係部所が法改正などの情報を収集し必要な対応をおこなっている。また、法令および社内ルールの順守や企業倫理の啓発に関して、「三愛オブリグループの倫理行動憲章」の周知徹底を図るとともに、「公益通報者の保護に関するガイドライン」に基づく公益通報相談窓口により、法令違反や不正行為の早期発見と是正に努めている。

 

(10) 個人情報に関するリスク[影響度:小、発生可能性:低]

   ① リスク内容

当社グループでは、SSで取り扱う車検等の個人情報ならびにLPガスおよび都市ガスの消費者データを保有している。情報セキュリティの不備や従業員の不正等により個人情報の漏洩が発生した場合には、損害賠償責任を負うとともに社会的信用の失墜により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がある。

   ② 対応策

当社グループでは、社内規程に基づき、従業員に対するeラーニングなどの教育や個人情報の取り扱いに関する自主監査、管理台帳の更新など、個人情報の適切な取扱いと管理の徹底を図っている。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費や設備投資に持ち直しの動きがみられ、景気は緩やかに回復した。一方で、先行きについては、円安や人手不足に伴う物価上昇が続くなど消費者マインドの冷え込みに加えて、トランプ政権による関税措置の影響が懸念され、不透明感が増している。

当社グループを取り巻く事業環境においては、コロナ禍明けのインバウンドや国内旅行の増加により航空燃料の需要は好調に推移したが、石油製品全体では消費者の節約志向などもあり、需要は減少傾向が続いた。

こうしたなかで、当社グループは、中期経営計画「変貌する未来への挑戦 Challenge2030」の第2ステージに入り、2024年度から2026年度までを事業戦略を確実に実行し、成長投資を加速させる期間として、さまざまな取組みを進めた。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

 

① 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ114億97百万円減少し、2,071億10百万円となった。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ76億92百万円減少し、870億86百万円となった。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ38億5百万円減少し、1,200億23百万円となった。

 

② 経営成績

当連結会計年度における当社グループの売上高は、前期比0.8%減の6,544億4百万円となった。営業利益は、前期比30.0%減の118億8百万円、経常利益は前期比27.5%減の128億60百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比22.8%減の86億56百万円となった。

 

セグメント別の財政状態及び経営成績は次のとおりである。

イ.石油関連事業

石油関連事業における売上高は前期比1.0%減の5,602億51百万円、セグメント利益は前期比11.6%減の73億77百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ72億7百万円増加し、970億31百万円となった。

 

ロ.化学品関連事業

化学品関連事業における売上高は前期比4.7%増の126億71百万円、セグメント利益は前期比18.7%増の11億44百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ51百万円増加し、44億83百万円となった。

 

ハ.ガス関連事業

ガス関連事業における売上高は前期比9.2%増の613億3百万円、セグメント利益は前期比21.6%増の21億10百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ4億27百万円減少し、252億67百万円となった。

 

ニ.航空関連事業

航空関連事業における売上高は前期比25.3%減の144億30百万円、セグメント利益は前期比58.1%減の36億69百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ2億41百万円減少し、216億68百万円となった。

 

ホ.その他事業

その他事業における売上高は前期比4.6%減の57億46百万円、セグメント利益は前期比18.5%増の8億64百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ1億49百万円増加し、73億66百万円となった。

 

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ130億92百万円減少し402億88百万円となった。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は9億38百万円となった。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上によるものである。なお、獲得した資金は前期比262億83百万円減少している。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は25億26百万円となった。これは主に、有形固定資産の取得によるものである。なお、使用した資金は前期比61億84百万円減少している。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は115億5百万円となった。これは主に、配当金の支払いおよび自己株式の取得によるものである。なお、使用した資金は前期比3億72百万円減少している。

 

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 該当事項なし。

 

(2)受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

ガス関連事業

459

71.7

56

62.4

その他事業

3,600

103.2

2,262

173.4

合計

4,059

98.3

2,319

166.2

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

石油関連事業(百万円)

560,251

99.0

化学品関連事業(百万円)

12,671

104.7

ガス関連事業(百万円)

61,303

109.2

航空関連事業(百万円)

14,430

74.7

その他事業(百万円)

5,746

95.4

合計(百万円)

654,404

99.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去している。

2.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績については連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略している。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

(1)経営成績等

① 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ114億97百万円減少し、2,071億10百万円となった。これは主に、現金及び預金の減少によるものである。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ76億92百万円減少し、870億86百万円となった。これは主に、支払手形及び買掛金が減少したことによるものである。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ38億5百万円減少し、1,200億23百万円となった。これは主に、配当金の支払いおよび自己株式の取得によるものである。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の53.9%から54.8%となった。

 

② 経営成績

当連結会計年度における当社グループの売上高は、前期比0.8%減の6,544億4百万円となった。営業利益は、航空関連事業における燃料取扱手数料の単価改定により前期比30.0%減の118億8百万円、経常利益は前期比27.5%減の128億60百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比22.8%減の86億56百万円となった。

なお、LPガス小売販売業を営む三愛オブリガス播州株式会社(所在地:兵庫県高砂市)において当初想定していた収益の達成は困難であると判断し、のれんを含む固定資産の減損損失(特別損失)12億83百万円を計上している。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。

当社グループは、営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主に運転資金や設備の更新、拡張に活用しており、営業キャッシュ・フローを上回る規模の投資については、金融機関からの借入による資金調達を見込んでいる。また、当社および連結子会社ではCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入しており、グループ会社間で資金を融通することで、手元資金の流動性を確保するとともに有利子負債の削減を進めている。

当社グループは、事業リスクに対応できる財務基盤を確保する一方、成長投資を実施することで、グループの持続的な成長を促す。成長に伴って創出されるキャッシュフローより、安定配当の継続を図る。

 

(2)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりである。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

① 資金需要

当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、当社グループの石油関連事業、化学品関連事業およびガス関連事業に関わる仕入等の債務の決済資金等がある。また、設備投資需要の主なものは航空機給油施設の増強、SSの設備更新、油槽所の保全工事がある。

 

② 財務政策

当社グループの経営基盤の拡大・充実に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用や金融機関からの借入により資金調達を実施している。なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は前連結会計年度に比べ3億34百万円減少し、41億38百万円となった。

 

(4)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

セグメントごとの財政及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

イ.石油関連事業

石油関連事業においては、ガソリンの販売数量は底堅く推移した一方で、灯油、軽油および重油などの油種は減少傾向で推移しており、石油製品全体では前期を下回った。各部門別の状況は以下のとおりである。

石油小売部門では、直営SSにおける販売数量が低調に推移し、利益は前期を下回った。石油卸売部門では、売上総利益は前期を上回ったものの、販売費及び一般管理費が増加したことにより、利益は前期を下回った。産業用燃料油販売部門では、価格競争の激化により、販売数量、利益とも前期を下回った。産業用潤滑油販売部門では、発電用ガスエンジンのメンテナンスや風力発電の内視鏡検査などによる手数料収入が増加した一方、風力発電所開発調査の中断による貸倒引当金繰入額の計上があったことから、利益は前期を下回った。

 

以上の結果、石油関連事業における売上高は前期比1.0%減の5,602億51百万円、セグメント利益は前期比11.6%減の73億77百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ72億7百万円増加し、970億31百万円となった。

 

ロ.化学品関連事業

化学品関連事業においては、各商品ともに販売数量は概ね前年並みで推移した。こうしたなか仕入や在庫管理などサプライチェーンの最適化によって利益率に改善がみられた。商品別の状況は以下のとおりである。

自動車関連商品では、自社製品である洗車薬剤の販売数量は前期を下回ったものの、利益率の改善により利益は前期を上回った。防腐・防かび剤では、販売数量、利益ともに前期並みとなった。石油系溶剤では、利益率の改善により利益は前期を上回った。粘着付与剤では、接着剤や梱包テープ用途の販売数量が回復したことにより、利益は前期を上回った。その他では、機能化学品として高級アルコールの販売が好調に推移した。

 

以上の結果、化学品関連事業における売上高は前期比4.7%増の126億71百万円、セグメント利益は前期比18.7%増の11億44百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ51百万円増加し、44億83百万円となった。

 

ハ.ガス関連事業

<LPガス販売業>

LPガス販売業においては、夏場の猛暑などにより需要が概ね減少傾向となるなか、販売数量は前期並みを維持した。各部門の状況は以下のとおりである。

小売部門では家庭用を中心に単位消費量の減少が見られたものの、料金管理の徹底による利益率の改善等により、利益は前期を上回った。卸売部門では、在庫評価の影響により利益は前期を上回った。

 

<天然ガス販売業>

天然ガス販売業においては、家庭用では伊万里ガス株式会社(※)の買収により、販売数量は前期を上回った。業務用・工業用では、一部取引先の需要減少により、販売数量は前期をやや下回った。これにより、天然ガス販売業全体では、販売数量、利益とも工業用の販売数量減少により前期を下回った。

(※)当社は2024年5月、佐賀県伊万里市において都市ガスの供給およびLPガスの小売販売をおこなう伊万里ガス株式会社の株式を取得し子会社化した。

 

以上の結果、ガス関連事業における売上高は、LPガスの販売価格の上昇により前期比9.2%増の613億3百万円となった。セグメント利益はLPガス販売業の利益率改善により前期比21.6%増の21億10百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ4億27百万円減少し、252億67百万円となった。

 

ニ.航空関連事業

航空関連事業においては、訪日外国人の増加などにより航空需要は概ね好調に推移した。

羽田空港における燃料取扱数量は、国内線では悪天候により上期は低調に推移したが、下期に入ってからは回復に転じた。国際線ではコロナ禍からの復便やインバウンド需要に伴う長距離路線の新規就航により好調に推移した。これにより、国内線と国際線を合わせた燃料取扱数量は、前期比で約8%の増加となった。

しかしながら、羽田空港における燃料取扱手数料の単価改定により、売上高、利益とも前期を大きく下回った。

 

以上の結果、航空関連事業における売上高は前期比25.3%減の144億30百万円、セグメント利益は前期比58.1%減の36億69百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ2億41百万円減少し、216億68百万円となった。

 

ホ.その他事業

その他事業においては、金属製品等の洗浄・表面処理をおこなうクリーンテック事業では、上期は半導体製造装置メーカーの生産調整等により、精密洗浄処理の受注が低調に推移したものの、下期に入ってからは回復に転じたことにより、売上高、利益ともに前期を上回った。建設工事業では、受注高が低調に推移し、売上高、利益は前期を下回った。

 

以上の結果、その他事業における売上高は、建設工事業の受注減少により前期比4.6%減の57億46百万円となった。セグメント利益はクリーンテック事業の受注回復により前期比18.5%増の8億64百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ1億49百万円増加し、73億66百万円となった。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

 

5【重要な契約等】

該当事項なし。

 

6【研究開発活動】

該当事項なし。