当社代表取締役会長兼社長執行役員 鴻池忠彦、及び専務執行役員 津加宏は、当社並びに連結子会社及び持分法適用関連会社(以下「当社グループ」という)の財務報告に係る内部統制を整備及び運用する責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております。
なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものであることから、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性があります。
財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である2025年3月31日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠しております。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定しております。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。
財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、当社グループについて、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定しました。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、財務報告に対する金額的及び質的影響並びにその発生可能性を考慮して決定しており、当社及び連結子会社14社を対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定しました。なお、連結子会社42社及び持分法適用関連会社1社については、金額的及び質的重要性の観点から僅少であると判断し、全社的な内部統制の評価範囲には含めておりません。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、当社グループは複合ソリューション事業、国内物流事業、国際物流事業と各事業拠点が多様な事業を行っているため、各事業拠点の事業活動の規模を示す売上高及び総資産に加えて、収益性を示す経常利益の3つを事業拠点の重要性を判断する指標として選定しました。具体的には、各事業拠点の過去2連結会計年度の売上高、経常利益、総資産額及び当連結会計年度の売上高、経常利益、総資産額の見込の各3期平均を重要な指標とし、各指標における各事業拠点の構成割合を総合的に判断して、財務的重要性のある当社及び連結子会社2社を「重要な事業拠点」としました。なお、各指標のおおむね70%を占める事業拠点を評価範囲に含めており、評価範囲に含まれていない事業拠点については、金額的重要性及び質的重要性並びにその発生可能性が僅少であると判断しております。
選定した重要な事業拠点においては、当社グループの事業が、製造工程等の請負業務、倉庫業務、輸送業務、工事業務等の役務サービスの提供であることから、販売活動において多額に計上される勘定残高である売上高、売掛金、外注費(売上原価)、労務費(売上原価)を事業目的に大きく関わる勘定科目とし、重要な事業拠点ごとに事業活動内容を踏まえて決定した勘定科目に至る業務プロセスを評価の対象としました。
さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点も含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス(固定資産減損プロセス及び税効果プロセス等)について、財務報告への影響を勘案し当該業務プロセスに係る勘定科目の重要性が高い事業拠点において評価対象に追加しております。
上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断しました。
前事業年度末における開示すべき重要な不備の是正
当社は、大阪国税局による税務調査の過程で、当社従業員が当社取引業者と共謀して架空の外注費用等の計上が行われた可能性を2023年11月に認識し、直ちに社内調査チームを発足させ外部の専門家の協力も得て調査を行い、当該従業員による架空請求・横領を確認いたしました。当社は、当該不正行為以外の類似の事例の有無についても客観性を確保しながら全社的な調査を行い、再発防止策等の検討を行うことを目的に、外部の弁護士を委員長及び副委員長に起用した内部統制調査委員会を組成し事実関係の調査をいたしました。
内部統制調査委員会による調査の結果、2020年度(第81期)から2023年度(第83期)までの期間において判明した不正金額の合計額は549百万円となります。過去の各期に与える業績の影響は軽微であり、過年度の有価証券報告書及び四半期報告書並びに2024年3月期(第84期)の各四半期報告書の訂正はありません。
本件の直接的な原因は、当社一拠点において要員配置が長期間固定されたことで役職者同士の共謀が起こり、本来それを防止するための上席者からの監督・牽制が機能していなかったため取引業者との癒着が発生したことです。また、そのような事態が生じた背景的な原因として、歴史ある企業であるがゆえの旧弊が一部残存していたことやコンプライアンス意識の希薄化、内部通報制度の運用不全、不正検知に対する内部監査の深度不足等が挙げられます。
このように原因は多岐にわたっており、これらを総合的に勘案すると当社グループの財務報告に潜在的に重要な影響を及ぼす可能性が高いものと考えられるため、本件にかかる全社統制及び当社の業務プロセスに係る内部統制について、財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。
そのため、2024年6月24日に当社の財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備がある旨の第81期、第82期および第83期内部統制報告書の訂正報告書ならびに第84期内部統制報告書を提出しました。
当社は、内部統制調査委員会の報告を踏まえて策定した以下の再発防止策を実行し、内部統制の改善を図ってまいりました。
1.適切な職務分掌、上席者による有効な監督の実施や人材の流動化により牽制機能を強化し、取引業者との適正な取引関係の保持を目的にした規程を整備することにより内部統制を強化する。
具体的には、不備のあった当社の業務プロセス(外注費プロセス)について、適切な職務分掌を図るとともに、上席者による有効な監督が実施されるように新たな統制行為を整備・運用してまいりました。
また、人材の流動化を促進するために、新たな人事異動ルールの制定・運用等を実施してまいりました。特に、長期滞留者(同一部署におおむね5年以上在籍する者)の解消に努めた結果、前事業年度末時点における対象者の約50%について人事異動が完了しております。残りの対象者についても解消に向けた取組を進めてまいります。
さらに、取引業者との適正な取引関係の保持を目的として企業倫理規程、購買管理規程、外注管理規程等の再整備・運用等を実施してまいりました。
2.経営陣が一丸となり統制環境を見直し、全社員への研修体制を再整備・強化する。
具体的には、経営トップによる「経営品質宣言」の発信、コンプライアンス強化月間の制定、経営幹部を含む全社員を対象として不正防止を目的とした複数のコンプライアンス研修等を実施することにより全社員のコンプライアンス意識の醸成を図ったほか、毎月開催した経営品質協議会において再発防止策の進捗と確実な実行を確認してまいりました。
なお、コンプライアンス意識を醸成し、事案の風化を防止するこれらの取組みは今後も継続して実施してまいります。
3.内部通報制度について、取引先も含めた通報者の範囲拡大とともに、制度の周知を高め、機能並びに有効性を強化する。
具体的には、通報者の範囲を全ての取引先まで拡大するとともに、制度の周知を高めるための施策(ポスターの掲示、通報窓口カードを作成して全事業拠点に設置等)を実施してまいりました。これらの施策により、社員及び協力会社からの通報総数が増加するといった効果が出ています。寄せられた通報は適時に対応しており、今後も内部通報制度の有効性を強化するための取組みを進めてまいります。
4.内部監査業務における監査の深度を高めるべく、監査対象毎の特性・実態に即して監査計画・重点監査項目を検討し、不正検知にも資する内部監査を実施する。
具体的には、不正事案を踏まえた重点監査項目の見直し(購買関係の監査項目の追加など)や、事前面談等を通じた監査人員の適切な配置の下、監査対象の特性・実態に応じた内部監査を実施したほか、現業の深い知見・知識を有する人材の内部監査部門への配置を進めてまいりました。これらの取組みについては、今後も継続してまいります。
これらの結果、前事業年度末における開示すべき重要な不備は是正され、当事業年度末日時点において、当社の財務統制に係る内部統制は有効であると判断しました。
なお、コンプライアンス意識を醸成するための施策をはじめとする、上記の再発防止策については、国内外の関係会社への展開も含め今後も着実に実行していくとともに、その実効性を確認してまいります。
該当事項はありません。