当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「総合物流業者としてその業務を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと顧客のニーズを先取りし、生産と消費をつなぐ物流のエキスパートを目指しております。そのニーズに具体的に応える高度な情報力と革新的でスピーディーな経営を行うとともに社会や環境との共存を図り、株主、顧客、社員の信頼と期待に応えてまいります。
(2)経営戦略等
当社は、2025年4月、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現すべく、長期経営ビジョン及び中期経営計画を策定・公表いたしました。
長期経営ビジョンは、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すものであり、10年後の2035年度に向け、「VISION for 2035 物流“ソリューション”企業として新たなステージへ ~創業100年に向けた挑戦~」と題し、2042年の創業100年に向け、その中間地点にあたる2035年をターゲットとして、以下の3つの挑戦を掲げています。
挑戦1:売上高200億円・営業利益10億円の実現
挑戦2:新領域事業への進出
挑戦3:“経営参画”意識をもった“人財”による強固な組織への変革
また、同時に策定・公表した中期経営計画については、2025年度から2027年度までの3年間を長期経営ビジョンの実現に向けた『土台作り』の3年間と位置づけ、以下の4トピック10項目の取り組みテーマを掲げております。
Ⅰ 基盤拡大
1 大和工業株式会社グループとの資本業務提携によるさらなる連携強化
Ⅱ 事業成長戦略
1 船腹・船員増強による輸送力拡大
2 継続的な設備投資
3 荷主開拓による営業収益拡大
Ⅲ 事業基盤戦略
1 部門間連携による提案型営業力強化
2 適正利潤の確保による利益率向上
3 高収益商材を中心とした成長分野への取り組み強化
Ⅳ その他取組トピック
1 人的資本経営の実現
2 システム・データ利活用の促進
3 ESG経営への取り組み強化
(3)経営環境
次期の経営環境の見通しにつきましては、国内は食料品や生活必需品の断続的な値上げが続いておりますが、物価上昇率を上回る実質賃金の改善が継続されれば、個人消費は緩やかな上昇が続くと予想されます。また、企業間取引における価格転嫁の商習慣が定着すれば、国内企業の設備投資も人手不足対応やサプライチェーンの見直しにより、持ち直しが続くと予想されます。一方で、海外に目を向けると米国政策による関税引き上げにともなう貿易摩擦の激化、地政学リスクの高まりなどの不確定要素による日本経済及び世界経済に及ぼす悪影響が懸念されます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
内航事業では船舶運航費用の増加による収益悪化、船員不足及び船員高齢化によるオーナー船主の廃業が課題となっております。安定した責任輸送を果たすには、当社所属船団の維持及び新規船主を迎え入れて船団を増強する施策が不可欠となります。その為にも適正運賃を収受する必要がありますので、顧客に対しては継続的な運賃改定交渉を実施するとともに、当社はオペレーターとして所属船団の船主経済も改善するように協力していきます。また、無事故無災害の継続及び船員の労務環境の改善に向けた積極的な設備投資を推進し、慢性的な船員、艀員不足に対策を講じ、船舶不稼働による収益機会損失を軽減してまいります。
外航事業では、中国、中央アジア向けの建機輸送はRORO船との受注競争が厳しくなってきており、建機以外の受注開拓が課題となっておりますので、鉄鋼、設備機器、ゴム製品など建機と積み合わせが出来る貨物の集荷営業を強化いたします。積み合わせにより積載率を向上させ、1航海当たりの利益率の向上も目指します。また、スポット案件の受注には、外航海上輸送だけではなく、当社の他部署と連携し、国内陸上輸送や通関業務まで含めた一貫輸送の提案をして受注拡大に努めてまいります。
港運事業では、中国経済の停滞などにより当社主要顧客の取扱いが伸び悩んでおりますので、新規取引先の拡大が課題となっております。陸上輸送を依頼する協力会社不足にともなう原価上昇や当社の一般管理費も賃金改定等により上昇しておりますので、利益率の改善が課題となっております。既存顧客へ価格転嫁を粘り強く申し入れるとともに、システムを活用した業務の効率化に努めます。また、他部署と共同で物流効率化、大型貨物の荷役提案や海陸を組み合わせたモーダルシフトの推進を実施し、取引顧客の拡大を図ります。特に、関西地区においては、大阪・関西万博後の統合型リゾート(IR)の建設も始まりますので、需要の取り込みを図ります。
倉庫事業では、港運事業に連動して普通品の取扱いが伸び悩んでおります。新設倉庫が郊外に建設され、当社倉庫の拠点となる港湾地区を通過する輸出入通関にともなう貨物の集荷が課題となっております。また、倉庫作業員の確保、人員の効率的な配置及び価格競争に巻き込まれない高付加価値貨物の取扱いが出来る人材、設備の整備が必要となっております。高収益が見込め顧客ニーズのある危険品、定温貨物及び重量貨物などの取扱量を増やせるように設備投資を行ってまいります。貨物の集荷に関しましては、営業推進部署と一体となって対外的なアピールの場を持ち、倉庫部門独自の営業も積極展開してまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2025年4月に公表した中期経営計画において、計画初年度及び最終年度の目標計数として以下の計数を掲げております。
|
|
第83期 2025年度 (計画初年度) |
第85期 2027年度 (計画最終年度) |
|
売上高 |
14,000百万円 |
15,000百万円 |
|
営業利益 |
580百万円 |
680百万円 |
|
経常利益 |
630百万円 |
690百万円 |
|
当期純利益 |
440百万円 |
480百万円 |
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は、「兵機コーポレートガバナンス・ガイドライン」において、“共存共栄”の精神のもと、荷主と協力業者との一体となった信頼関係を築く姿勢を経営思考の基盤とすることを定めております。また、経営理念として「私達は、専門知識の修得に努め、高度な見識をもって常に現状の改善をめざします」「私達は、感謝の気持ちと謙虚な心をもって業務に励み、信頼される会社を築きます」「私達は、総合物流業者としてその業務を通じて社会に貢献します」の3つを掲げ、「内航・外航海運事業」「港運・倉庫事業」を柱として、事業活動を通じた社会的課題の解決に取り組んでおります。
詳細は、「
(2)戦略
(事業活動を通じた社会的課題の解決に関する方針)
当社は、国土交通省港湾局が創設した「みなとSDGsパートナー登録制度」に参画することとし、2023年6月30日付で登録されました。本制度を活用することで、「みなと」をフィールドとした企業として港湾の持続可能な発展を目指して取り組んでおります。
具体的な取り組み内容としましては、内航船舶建造時における二酸化炭素低減化基準に沿った建造、環境に配慮した塗料の使用、SOx規制適合新燃料等への切り替え等に取り組んでおります。
また、神戸物流センターでは、トラック予約受付システムを導入し、トラックドライバーの荷待ち時間削減に向けた取り組みを行っております。
なお、この他にも、環境に配慮した取り組みとして、2024年3月、本社ビルの照明をLED化いたしました。また、ダイバーシティー推進の一環として、2024年5月に神戸で開催された「2024世界パラ陸上競技選手権大会」への協賛を行いました。
また、2025年4月に策定・公表した中期経営計画においては、取り組みテーマとして「ESG経営への取り組み強化」を掲げており、「大阪万博、IR施設等地域観光資源への物流面での貢献」「二酸化炭素低減化基準に沿った内航船の建造」といった施策を通じた社会貢献に取り組んでまいります。
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針)
当社は、経営理念として「私達は、専門知識の修得に努め、高度な見識をもって常に現状の改善をめざします」を掲げております。また、2025年4月に策定・公表した長期経営ビジョンにおいて、中長期的な挑戦の1つとして「“経営参画”意識をもった“人財”による強固な組織への変革」を掲げ、人材育成を重要課題として位置づけております。さらに、同時に策定・公表した中期経営計画における取り組みテーマとして、「人的資本経営の実現」を掲げており、その実現に向けた主要施策として「従業員の経営参画意識向上に繋がる仕組みづくり」「長期的な人材育成方針・人事戦略の構築」に取り組むこととしております。
現在、具体的な人材育成策としてOJTによる業務修得、階層に応じた体系的な研修実施等を通じた人材育成に取り組んでおります。研修については、2022年度から外部セミナーを活用し、年度毎に受講者を指名することによって計画的な受講を促しており、当事業年度は74人が延べ210講座を受講いたしました。
内航船員の高齢化・将来の担い手不足等の課題に対処するため、事業パートナーである船主と共同で七洋船舶管理株式会社を設立し、船員の確保・育成に取り組んでおります。同社では、船員育成船への設備投資、女性船員の採用、若年船員の育成に特に力を入れております。
従業員が安心して働ける社内環境整備のため、安全衛生会議を毎月実施しております。また、2022年10月の「育児・介護休業法」改正への対応として、「出生時育児休業(産後パパ育休)の創設」「育児休業の分割取得」等を制度化するなど、ワークライフバランスにも配慮した取り組みも行っております。なお、男性従業員の育児休業については、2023年度は対象者5名のうち1名、2024年度は対象者5名のうち2名が取得しております。
(3)リスク管理
当社におけるリスク管理は、代表取締役社長直轄のリスク管理委員会が、当社において発生しうるリスクの発生防止に係る管理体制の整備、発生したリスクへの対応等について検討し、その検討結果を取締役会に報告する体制としており、サステナビリティ関連のリスクについても、この枠組みに沿ってリスクや機会を識別、評価及び管理する体制としております。
リスク管理体制の詳細は、「
(4)指標及び目標
(人的資本に係る指標及び目標)
当社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64条)に基づく一般事業主行動計画として、2022年4月1日から2025年3月31日までの3年間で、「管理職に占める女性の割合を8%以上とする」目標を定めておりましたが、2025年3月末現在の実績は2.0%にとどまりました。この結果を受け、新たに2030年3月31日までの5年間を計画期間とする行動計画を定め、引き続き「管理職に占める女性の割合を8%以上とする」目標に向けて取り組んでまいります。
また、当事業年度の「男性労働者の育児休業取得率」については、対象者5名のうち2名が取得し、40%となっております。
詳細は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社は、事業活動全般のリスクを全社的視点で、合理的かつ最適な方法で管理し、リスク情報の集約や全社的な管理体制を構築するためにリスク管理委員会を設けております。各部・各店にリスク管理者を置き、担当役員がこれらを管掌しております。これにより、定例的にリスクの洗い出しを行い、リスクを共有することでリスク管理を日常業務の一環としてリスク管理意識を向上せしめ、企業全体のリスク対応力の維持・向上を図っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 傭船先の経営状況の動向
当社は、内航海運事業において貨物の輸送責任を全うするために、船舶の確保が最優先課題となっております。そのためには、傭船先との協調体制が必要であることから、船主が船舶を調達するにあたり、船主への貸付金の実行や金融機関への債務保証を行う場合があります。その場合、経営環境の変化による傭船先の経営状況によっては、貸倒損失の発生や債務保証の履行等により当社が損失を被るリスクを負っており、当社の業績および財務に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスク回避の為に、通常の訪船活動でのモニタリングに加え、傭船先の財務諸表等により経営状況を常に注視しております。
② マーケット動向
当社は、外航事業において、近海マーケットに着目した積極的な事業展開を図っております。しかし、近海マーケットの需要減退、競争激化または船腹需給バランス等の影響による船舶の稼働率が低下する可能性があり、その結果、当社の業績および財務に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスク回避の為に、主要航路の複線化、取扱貨物の多様化に向けた営業活動を展開しております。
③ 金利動向
当社の資金調達手段は間接金融に負うところが大きいことから、金利上昇による利払い負担増加が業績に影響を及ぼすリスクがあります。倉庫や船舶といった大型設備投資に係る調達については、原則として金利スワップ取引による金利の固定化を図っており、運転資金借入についても、金利動向を注視しながら、固定金利と変動金利を組み合わせて調達することで利払い負担軽減を図っております。
④ 為替動向
当社の事業においては、外貨建取引もあり、為替動向により当社の損益に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、外航事業におけるドル建て売上と港運事業でのドル建てのフレイト支払等で相殺され、為替変動リスクは従前より軽減されております。
⑤ 燃料価格の動向
燃料油価格は世界的な原油需給、産油国の動向等により変動しますが、燃料油の価格の著しい高騰等により、当社の業績及び財務に影響を及ぼす可能性があります。これらに対処するために、主要取引先にはバンカーサーチャージの制度導入をお願いしており、この制度の適用拡大を引続き図ってまいります。
⑥ 特定の取引先(高売上比率先)の動向
当社は、大和工業グループ(下記5「重要な契約等」において定義します。)からその物流部門を請け負っており、またJFE物流株式会社グループとも多くの取引を頂いております。両社グループからの売上は全売上の37.0%を占めており、その輸送品目は鉄鋼であります。経済活動の産業基礎物資である鉄鋼の需要は景気動向に左右される面が大きいことから、今後の景気動向によりましては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。このような状況を踏まえ、当社は、2025年1月、大和工業グループとの間で、双方の企業価値を向上させることを目的とした資本業務提携契約を締結しており、今後の環境変化時においても、連携して対応していく体制を構築しております。また一方で、長年に培ったノウハウで顧客満足度をより一層高めるサービスの強化を図り、環境負荷が軽いモーダルシフトへの時代を見据えた取扱貨物の複線化についても取り組んでまいります。
⑦ 法的規制の動向
当社の事業は、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障等による輸出制限などの政府規制の適用を受けるとともに、通商、独占禁止、環境・リサイクル関連の法的規制を受けております。さらに、国内においても事業継続に必要な各種の法的規制を受けております。これらの規制を遵守できなかった場合、業務停止などの重いペナルティーを受ける可能性があります。当社では、法令違反による信頼の失墜が事業存続に大きな影響を与えることから、コンプライアンス委員会を設けております。各部・各店ごとにコンプライアンス委員を指名し、最高責任者には代表取締役社長が就いております。この活動を通じて業務の適正を確保するとともに、外部の専門家に適宜意見を求めて、その補完としております。
⑧ 自然災害等の発生
当社の事業拠点において自然災害が発生した場合には、顧客の輸送サービスが停止することによる売上高の減少、また被災設備の修復に一時的な費用負担が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社では、近年の自然発生の頻度から想定しうる範囲内で、顧客サービスの維持・従業員の安全・当社施設の保全に現場からの意見を重視しながら、全社的に取り組んでおります。
⑨ その他
輸送貨物や保管貨物の安全確保が不十分な場合には、貨物保証リスクの懸念があります。また、当社の輸送手段である船舶については、社有船はもとより傭船にも付保しておりますが、事故等による運航リスクがあります。当社では、このような事故が発生した場合、当社に対する顧客の信頼や社会的評価が失墜し、当社の業績及び財務に影響を及ぼす可能性があります。これらの事故を未然に防ぐためには、内航・外航海運事業では、月次の船舶安全会議及び訪船時の注意喚起、倉庫部門では月次の安全衛生会議及び外部の専門家による安全衛生講習等による指示事項の順守を図っております。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、長年続いたデフレ経済を脱却し、幅広い分野で物価が上昇するインフレ経済の局面に入りました。前半は物価上昇に賃上げが追い付かず個人消費が足踏みしたものの、7月には日経平均が史上最高値を更新し、期中以降は実質賃金の改善により国内消費に復調が見られました。また、好調なインバウンド需要も国内消費の押上げに一定の影響を与えました。一方で、期末にかけては、ウクライナ情勢及び中東情勢の停戦を巡る交渉の難航ならびに米国新政権の関税政策等により、先行きに不安定感が懸念される状況で推移いたしました。
このような状況下におきまして、当社は「安全・迅速・信頼」をモットーに、国民生活と企業活動のライフラインを支える物流業者として、如何なる時世にも顧客に対する輸送責任を果たす「堅実な兵機」との信頼を得るべく、事業展開を進めてまいりました。
内航事業では、上昇が続く運航コストを改善するため、海上運賃改定交渉を継続実施しました。また、所属船団数を維持して輸送責任を果たすため、傭船料改善や新規傭船開拓に努めました。
外航事業では、前期好調であった建機輸送が、下期以降は競合により取扱いが減少しました。一方で、台湾及び韓国向けの取扱いは堅調に推移し、スポット案件獲得も収益に寄与しました。
港運事業では、為替変動や景気低迷が続く中国発着貨物の物量減少の影響などもありましたが、他部門と連携し新規案件獲得に努め、通関取扱いは輸出入ともに前期並みの件数となりました。
倉庫事業では、兵庫埠頭物流センターの固定資産税、減価償却費が負担となった事に加え、労務費上昇も利益を圧迫しました。また、契約期間終了による物量減少もあり苦戦しました。
これらの結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ392百万円減少し、12,546百万円となりました。
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ635百万円減少し、7,693百万円となりました。
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ243百万円増加し、4,853百万円となりました。
b.経営成績
当社は、前下期(2023年10月)に、港運事業の船会社費用を売上から立替金へ変更しました。当事業年度はこの変更が通期にわたり影響したため、売上高は13,726百万円(前期比909百万円減 93.8%)と減収となりましたが、原価も同額減少したため営業利益には影響せず、営業利益は548百万円(前期比28百万円増 105.4%)となりました。一方で、前期に営業外収益として計上した貸倒引当金戻入額89百万円の剝落もあり、経常利益は618百万円(前期比60百万円減 91.1%)となりました。これらの結果、当期純利益は、435百万円(前期比77百万円減 85.0%)となりました。
当事業年度におけるセグメントの営業状況は次のとおりです。
1)海運事業
(イ)内航事業・・・・・運航コストの上昇が続くなか、適正運賃への改定を顧客へ継続交渉をするとともに、当社所属船団を維持し、安定的な輸送サービスを提供し続けるため、各船主への定期傭船料の増額実施及び船主と一体となり新造船を就航させました。また、航海期間の短い輸送にはトリップ傭船の積極的な配船や輸送ニーズに応じて台船を使用したプラント輸送などにより、収益の底上げと利益率改善を実施しました。一方で、主要顧客の工場設備の更新にともなう出荷休止期間があり、輸送取扱量が減少したこと及び社艀の不稼働期間もあり、売上は伸び悩みました。
結果としまして、取扱量が1,777千トン(前期比 97.5%)と減少しました。売上高は6,855百万円(前期比74百万円減 98.9%)と微減となりましたが、営業利益は339百万円(前期比31百万円増 110.1%)と増益になりました。
(ロ)外航事業・・・・・韓国、台湾向けの鉄鋼製品は堅調な取扱いで前年並みで推移し、設備輸送案件などスポット貨物は順調に取扱いを伸ばしました。また、円安レートによる影響でドル建て海上運賃の売上にプラス効果が表れ、収益の下支えとなりました。一方で、外航事業の主力貨物の一つである中国、中央アジア向けの建機輸送は、当事業年度後半にかけてRORO船との集荷競争により前年対比で取扱量が減少しました。
結果としまして、売上高は1,490百万円(前期比196百万円増 115.2%)、営業利益は235百万円(前期比134百万円増 232.8%)と増収増益になりました。
2)港運・倉庫事業
(イ)港運事業・・・・・欧米各国が利下げに向かうなか、日本は利上げ機会を伺う展開により歴史的な円安がひと段落しました。また、日本の主要な貿易相手国である中国経済の停滞などもあり、輸出入取引を行う当社顧客にとって、取引形態や貿易相手国の見直しなどが顕在化してきました。当社営業の中核を担う港運事業は他のセグメントと共同セールスを実施し、新規案件の獲得に努めました。なお、トラック運送料、倉庫作業料などの費用が増加しており、また一般管理費も上昇傾向にあり、価格改定の交渉を粘り強く実施しましたが、利益改善には至りませんでした。なお当社は、前下期(2023年10月)に、船会社費用を売上から立替金へ変更しており、当事業年度はこの変更が通期にわたり影響したため、売上高が減少しておりますが、原価も同額減少したため、この変更が営業利益に及ぼす影響はありません。
結果としまして、売上高は3,716百万円(前期比1,103百万円減 77.1%)となり、営業損失は18百万円(前期は営業利益101百万円)と減収減益になりました。
(ロ)倉庫事業・・・・・兵庫埠頭物流センターの固定資産税及び減価償却費の負担増、また、作業員人件費及び資材費高騰なども利益を圧迫しました。危険品貨物取扱いやISOタンクコンテナの保管収益は堅調に推移しましたが、一方で、神戸、大阪地区の一般貨物は伸び悩んだ事と、契約期間終了による物量減少もあり全体的なカバーには至りませんでした。神戸物流センター、兵庫埠頭物流センター両倉庫間の一体運営による取扱い貨物の配置換えや、需要が見込めるISOタンクコンテナ蔵置場や定温倉庫の拡大、効率的な人員の配置など神戸地区倉庫事業の運用の見直しが課題となりました。
結果としまして、売上高は1,664百万円(前期比71百万円増 104.5%)となり、営業損失は8百万円(前期は営業利益8百万円)と増収減益になりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べ65百万円減少し、当事業年度末には1,977百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は877百万円(前期は908百万円の獲得)となりました。
主な内訳は、税引前当期純利益623百万円、減価償却費404百万円等に対して、法人税等の支払額122百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は153百万円(前期は74百万円の獲得)となりました。
主な内訳は、有形固定資産の取得による支出118百万円、長期貸付けによる支出24百万円、短期貸付金の増加額19百万円等に対して、長期貸付金の回収による収入8百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は788百万円(前期は737百万円の使用)となりました。
主な内訳は、長期借入金の返済による支出1,057百万円、短期借入金の純減少額450百万円、配当金の支払額153百万円等に対して、長期借入れによる収入900百万円によるものであります。
③事業部門別売上高、輸送品目別トン数及び売上高の実績
(1)事業部門別売上高明細
当事業年度における事業部門別売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
数量 (千トン) |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
(海運事業) |
|
|
|
|
内航事業 |
1,777 |
6,855 |
98.9 |
|
外航事業 |
126 |
1,490 |
115.2 |
|
(港運・倉庫事業) |
|
|
|
|
港運事業 |
1,448 |
3,716 |
77.1 |
|
倉庫事業 |
201 |
1,664 |
104.5 |
|
合計 |
3,553 |
13,726 |
93.8 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)輸送品目別トン数及び売上高明細
当事業年度における輸送品目トン数及び売上高を示すと、次のとおりであります。
|
輸送品目別 |
数量 (千トン) |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
鉄鋼 |
1,776 |
7,276 |
97.3 |
|
飼料 |
125 |
216 |
120.4 |
|
農水産品 |
284 |
431 |
73.1 |
|
油糧 |
90 |
185 |
112.8 |
|
鉱石類 |
20 |
59 |
70.2 |
|
機械類 |
113 |
1,511 |
119.3 |
|
紙・パルプ |
11 |
16 |
95.2 |
|
自動車関連 |
46 |
83 |
52.2 |
|
石膏 |
198 |
252 |
116.3 |
|
その他貨物 |
891 |
3,692 |
82.5 |
|
合計 |
3,554 |
13,726 |
93.8 |
(注)1.外航事業・内航事業・港運・倉庫事業を合算したものであります。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
大和工業株式会社グループ |
4,070 |
27.8 |
3,733 |
27.2 |
|
JFE物流株式会社グループ |
1,312 |
9.0 |
1,347 |
9.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態
(資産)
当事業年度末における総資産額は12,546百万円となり、前事業年度末と比較して392百万円減少いたしました。
流動資産は3,907百万円となり、前事業年度末と比較して71百万円減少いたしました。これは主に、短期貸付金の増加24百万円等に対して、現金及び預金の減少65百万円、売掛金の減少22百万円、契約資産の減少11百万円等によるものであります。固定資産は8,639百万円となり、前事業年度末と比較して321百万円減少いたしました。これは主に、固定資産の取得による増加100百万円等に対して、時価の下落等による投資有価証券の減少75百万円、減価償却による固定資産の減少404百万円等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債総額は7,693百万円となり、前事業年度末と比較して635百万円減少いたしました。
流動負債は3,618百万円となり、前事業年度末と比較して549百万円減少いたしました。これは主に、短期借入金の減少566百万円、支払手形の減少47百万円等に対して、未払法人税等の増加113百万円等によるものであります。固定負債は4,074百万円となり、前事業年度末と比較して86百万円減少いたしました。これは主に、繰延税金負債の減少45百万円、長期借入金の減少41百万円等に対して、退職給付引当金の増加27百万円等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産額は4,853百万円となり、前事業年度末と比較して243百万円増加いたしました。
これは主に、配当金の支払による繰越利益剰余金の減少154百万円、その他有価証券評価差額金の減少66百万円等に対して、当期純利益の計上による繰越利益剰余金の増加435百万円等によるものであります。
2)経営成績
(売上高)
当事業年度の売上高は、13,726百万円(前期比909百万円減 93.8%)となりました。
セグメント別では、内航事業6,855百万円(前期比74百万円減)、外航事業1,490百万円(前期比196百万円増)、港運事業3,716百万円(前期比1,103百万円減)、倉庫事業1,664百万円(前期比71百万円増)となりました。
これらの要因につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」をご覧ください。
(営業利益)
当事業年度の営業利益は548百万円(前期比28百万円増 105.4%)となりました。
セグメント別では、内航事業339百万円(前期比31百万円増)、外航事業235百万円(前期比134百万円増)、港運事業は18百万円の営業損失(前期は101百万円の営業利益)、倉庫事業は8百万円の営業損失(前期は8百万円の営業利益)となりました。
これらの要因につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」をご覧ください。
(経常利益)
当事業年度の営業外収益は115百万円(前期比83百万円減 58.1%)となりました。主な要因は、貸倒引当金戻入額の減少89百万円等に対して、受取配当金の増加19百万円等によるものであります。
当事業年度の営業外費用は45百万円(前期比5百万円増 114.1%)となりました。主な要因は、支払利息の増加4百万円等によるものであります。
以上の結果、経常利益は618百万円(前期比60百万円減 91.1%)となりました。
(当期純利益)
特別利益として投資有価証券売却益9百万円及び受取保険金2百万円、特別損失として災害による損失6百万円を計上したことにより、税引前当期純利益は623百万円(前期比86百万円減 87.9%)となり、法人税等合計188百万円を差し引いた結果、当期純利益は435百万円(前期比77百万円減 85.0%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
イ)キャッシュ・フロー
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
ロ)契約債務
2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
1,150 |
1,150 |
― |
― |
― |
|
長期借入金 |
4,078 |
816 |
1,332 |
823 |
1,106 |
|
リース債務 |
36 |
25 |
7 |
2 |
2 |
上記の表において、貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
当社の第三者に対する保証は、傭船船主・協力会社の借入金等に対する債務保証であります。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社が代わりに弁済する義務があり、2025年3月31日現在の債務保証額は、1,339百万円であります。
ハ)財務政策
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は銀行借入により資金調達することとしております。このうち、銀行借入による資金調達に関しましては、運転資金については借入時の金融情勢を考慮して短期借入金及び長期借入金にて調達し、船舶建造、倉庫建設などの設備資金については、一部を除き固定金利の長期借入金にて調達しております。変動金利での借入分は金利の変動リスクに晒されていますが、デリバティブ取引(金利スワップ取引)を利用してヘッジを行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、当社の株主である大和工業株式会社及び同社の子会社であるヤマトスチール株式会社(以下、総称して「大和工業グループ」といいます。)との間で、資本業務提携契約(以下、「本資本業務提携契約」といいます。)を締結しており、その内容は以下のとおりであります。
(1)当該契約の概要
|
契約締結日 |
2025年1月31日 |
|
契約の相手方の名称及び住所 |
大和工業株式会社 兵庫県姫路市大津区吉美380番地 ヤマトスチール株式会社 兵庫県姫路市大津区吉美380番地 |
|
合意の概要 |
(1)役員について候補者を指名する権利を株主が有する旨の合意 大和工業株式会社は、同社の指名する者を最大2名、当社の取締役候補者として提案する権利を有する。 (2)株主総会又は取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を要する旨の合意 当社は以下の事項を決定又は承認する場合には、事前に大和工業株式会社へ通知し、書面による承諾を得るものとする。 ①合併、株式交換、株式移転、事業の全部又は重要な一部の譲渡 ②大和工業グループの議決権保有比率に変動を生じさせるおそれのある一切の行為 ③本業務提携(下記(2)「当該合意の目的」に定義します。)の対象となる事業の縮小、中止その他重大な変更 |
(2)当該合意の目的
本資本業務提携契約において、当社及び大和工業グループは、以下の内容の業務提携(以下「本業務提携」といいます。)を行うことを合意しておりますが、上記(1)「当該契約の概要」の「合意の概要」に記載の各合意は、本業務提携の実効性を促進することを目的としております。
①物流機能の安定化及び効率化
②海上輸送の強化
③構内作業及び荷役業務の効率的な委託運営
④船員確保及び関連業務の強化
(3)取締役会における検討状況その他の当社における当該合意に係る意思決定に至る過程
当社は、当社の意思決定過程における恣意性のおそれを排除し、その公正性、透明性及び客観性を確保すること等を目的として、五島大亮氏(当社の監査等委員である社外取締役)、濵田在人氏(当社の監査等委員である社外取締役)及び外部の有識者である西田章氏(西田法律事務所弁護士)の3名から構成される特別委員会(以下、「本特別委員会」といいます。)を設置し、大和工業グループから独立した立場で本資本業務提携契約に基づく業務提携が当社の企業価値や株主共同の利益の確保・向上を妨げるものではないかについて検討いたしました。
その上で、当社は、当社の有する海上輸送ネットワークの大和工業グループによる更なる活用を通じて、当社の業容拡大並びに大和工業グループの物流の効率化、原材料調達の安定化及び出荷業務の強化を行うことで、当社及び大和工業グループ双方の企業価値向上を図ることが可能であると判断するとともに、本特別委員会より提出を受けた、本資本業務提携契約に基づく業務提携は当社の企業価値向上に資するものであり、資本提携は当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上を妨げるものではない旨を内容とする答申書を踏まえ、取締役会において本資本業務提携契約の締結を決議しております
(4)当該合意が当社の企業統治に及ぼす影響
①役員について候補者を指名する権利を株主が有する旨の合意
本資本業務提携契約に基づき、大和工業株式会社から取締役候補者の提案が行われた場合において、当社は当該取締役候補者について、他の取締役候補者と同様に、取締役会の諮問機関であり代表取締役の任命により業務執行取締役複数名で構成される諮問委員会において審議・検討した後に、当該審議・検討を踏まえて、独立社外取締役2名のみで構成される独立審議会においてさらに当該取締役候補者を審議・検討いたします。諮問委員会及び独立審議会の意見を踏まえて、監査等委員会において審議・検討を行い、これらの適切な関与及び助言を踏まえて、知識、経験、専門性等を総合的に勘案のうえ取締役会が適任と判断した場合に、取締役候補者として株主総会に上程することとしております。したがって、大和工業株式会社が当該合意に基づき当社の取締役候補者を提案した場合においても、当社は諮問委員会並びに独立審議会及び監査等委員会による適切な関与及び助言を踏まえつつ、当社の取締役候補者を選定することから、当社の取締役としての適格性を欠く取締役候補者が当社の取締役に選任されることはなく、当該合意が当社の企業統治に及ぼす影響は限定的であると考えております。
②株主総会又は取締役会において決議すべき事項について株主の事前の承諾を要する旨の合意
大和工業株式会社の事前の承諾を要する当社の株主総会又は取締役会の決議事項は、その範囲が最小限に限定されている上、本資本業務提携契約締結後においても、当社及び大和工業株式会社は、当社が独立した上場企業として、自主的な業務運営を行っていくことを相互に確認しておりますので、当該合意が当社の企業統治に及ぼす影響は限定的であると考えております。
特記事項はありません。