文中における将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
当社グループは、技術力を極め、環境社会に貢献することをグループ共通の企業理念としており、企業活動を通じて「経済的価値」と「環境・社会的価値」を創出することを目指しております。

当社は東京証券取引所へ提出している「スタンダード市場の上場維持基準への適合に向けた計画書」に基づき、経過措置期間終了の2025年3月末までに、スタンダード市場の上場維持基準の適合「流通株式比率25%以上」に向けて、速やかに流通株式比率の改善ができるよう取り組みを進めてまいりました。
その結果、2025年3月末時点において、東京証券取引所より、上場維持基準(分布基準)への適合状況について「適合」の通知を受領し、全ての基準において適合していることを確認いたしました。
これにより、最重要課題の一つであった「上場維持基準への適合」を無事に達成いたしました。引き続き株主との対話を重視したIR活動やガバナンス体制の強化を継続し、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
2024年度の経営計画では、資本効率の高い経営を目指し、人的資本投資/研究開発投資の実行を加速化させることを織り込み一時的な増収減益としていました。投資計画を着実に実行しつつ、業績も堅調に推移し、最終的には増収増益を達成しております。2025年度においては、これまでの取組により成長基盤が整い、遅れていた老朽化設備の更新投資についても2024年度に更新計画を立案し、2025年度より本格的に推進するため、2025年度期初には10億円の資金調達も行っております。
このような足元の業績進捗及び事業環境の変化を踏まえ、「中期経営計画2022-2025」の最終年度(2026年3月期)の目標値を以下のとおり上方修正しております。
◇修正後の中期目標(2026年3月期)
・連結売上高:160億円以上(従来:150億円以上)
・営業利益率:10%以上(変更なし)
・ROE(自己資本利益率)10%以上(変更なし)
このような業績と経営基盤の強化を背景に、当社は2025年度上期中を目途に、次期中期経営計画(2026~2030年度)の策定・公表を予定しており、その最終年度となる2030年度には、連結売上高200億円以上を目指す方針です。
当社グループは、「中期経営計画2022-2025」において、3つのステートメントを宣言しています。「ESG経営の推進」により、「成長の実現」と「戦略投資と還元の両立」の達成を実現させるために、経営戦略の3本の柱である、「選択と集中」、「事業基盤のシフト」、「経営基盤の強化」を実行することとしてきました。
2025年度は中期経営計画期間最終年度となりました。中期経営計画期間3年間で3つのステートメントの進捗につきましては、以下のとおり着実に実行してまいりました。

3つのステートメント:
「ESG経営の推進」では、環境社会実現に向けた貢献、人材育成と社員福祉の充実、経営の透明性健全性に重きを置いたガバナンス強化
「成長の実現」では、新たな環境事業の創出、空港外領域事業の更なる展開
「戦略投資と還元の両立」では、資本効率の向上、積極的な戦略投資と機動的な株主還元に加え人的資本投資・研究開発投資を実行
経営戦略の3本の柱:
「選択と集中」では、安定した利益の確保と低採算事業の事業性評価やビジネスモデルの見直しと新たな成長事業への経営資源の再配分を行ってまいります。低採算事業につきましては、改善策を講じ立て直しを図ってまいります。業績改善が見込まれない場合には、当社の主力事業との関連性等も踏まえ、必要に応じ事業売却や事業縮小も含めた対応を行ってまいります。当事業年度末現在、選択と集中の一環としてAGP電気サービスは2023年3月末に新規契約を停止しました。現在は、一部些少な契約を残しておりますが、順次解約を進めております。
「事業基盤のシフト」では、これまで日本国内の主要空港に対して行ってきたサービスや事業を、空港外や海外、地方に対しても提供してまいります。さらには新規産業(物流保守サービス)への参入、新商材の拡充、多角化を推し進めてまいります。当事業年度末現在、物流保守サービスにつきましては、鋭意、市場開拓を進めております。今後は、AI、IoT等の革新技術を取り入れたサービス形態の変革を推し進める計画です。
「経営基盤の強化」では、組織体制の整備、事業運営管理の適正化、中長期的な企業成長に向けて適正な財務基盤の構築により、引き続き経営基盤の強化に努めてまいります。
当社が有する高い技術力を駆使し、環境社会に対する更なる貢献に努めるとともに、空港の安全を遵守・維持するために培われた技術と経験を活かして、地方空港、海外空港、空港外に対してもサービスの提供を拡充し、さらなる社会貢献と企業成長に挑戦してまいります。
① ESG経営の推進
② 成長の実現

③ 戦略投資と還元の充実
◆政治的な側面(政府の方針や影響する法律・制度など)
・ GX(グリーントランスフォーメーション)政策の制度化と空港インフラへの波及
政府は2023年に内閣官房GX実行会議にて「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、再エネ導入、インフラ投資、カーボンプライシングなどを含む脱炭素政策を加速させています。また、国土交通省航空局も2022年に「空港分野の脱炭素化アクションプラン」を策定し、APU*1使用時間短縮、GPU*2/PCA*3の導入、EV化を空港事業者に求めています。
これにより、GPU導入促進、再エネ調達、エネルギーマネジメントシステム(以下、「EMS」という」)による電力制御の高度化といった“インフラ側”の脱炭素責任が明確化されつつあり、当社は規制に適応するインフラ提供事業者としての役割を果たすことが、事業機会とリスクの両面に直結する状況にあります。
このような政策環境の下、当社は環境負荷低減と収益性の両立を実現する成長戦略の一環として、設備更新やエネルギー関連技術への戦略的投資を積極的に推進してまいります。
*APU:補助動力装置(Auxiliary Power Unit)
*GPU:地上動力設備(Ground Power Unit)
*PCA:空調設備(Pre Conditioned Air)
・ ガバナンス強化と透明性の確保に向けた社会的要請
企業経営におけるガバナンスの高度化は、金融庁・東京証券取引所・内閣府が連携して進める重要政策分野であり、上場企業には形式的遵守を超えた経営判断の独立性、取締役会の実効性、説明責任の強化が求められています。
また、2023年12月に東京証券取引所が公表した「支配株主を有する上場会社における独立社外取締役に期待する役割」では、実質的支配構造への対応、利益相反管理、説明責任の明確化が一層重視される方向性が明示されました。当社は、法的にはいかなる株主も“支配株主”に該当しておりませんが、主要株主間の意思形成のあり方によっては実質的な影響が及ぶ可能性があるという認識のもと、ガバナンス上のリスクを適切に管理することが重要だと考えています。
そのため当社は、「独立性の確保」「説明責任の遂行」「非財務情報の適切な開示」を通じて、形式的支配関係の有無にかかわらず、市場や社会からの信頼に足るガバナンス体制の構築に取り組んでまいります。
あわせて、経営陣の報酬制度や株主還元方針、サステナビリティ及びサイバーリスクへの対応体制などについても、非財務情報の開示を含む形で適切に整備・運用し、投資家・社会からの信頼向上に取り組んでまいります。
※以下、本有価証券報告書では、「支配株主」という用語を用いますが、これは東京証券取引所が形式的に定義する「議決権過半数を保有する単独株主」ではなく、「実質的に取締役構成・株主提案・資本政策に対して共同で影響力を行使しうる株主グループ(日本航空株式会社、日本空港ビルデング株式会社及びANAホールディングス株式会社(以下、「主要株主3社」という)を指して使用しております。主要株主3社の議決権合計保有比率は71.14%にのぼり、みなし共同保有者相当となり、支配株主と同様の行動が可能な構造となっている点を、評価・ご理解の前提としていただけますと幸いです。
・人的資本経営と構造的賃上げへの政策対応
政府は「新しい資本主義実現会議」や「骨太の方針」を通じ、人的資本投資、労働生産性の向上、構造的な賃上げの実現を中核戦略として推進しています。企業に対しては、スキル開示、エンゲージメントの可視化、ダイバーシティ、健康経営の推進などが求められており、当社としても、多角的な労働力の確保、勤務体制を含めた働き方の見直し、処遇改善と人的資本投資を三位一体で推進し、多様な人材の活躍とイノベーション創出を支える組織基盤の構築に取り組んでまいります。
◆ 経済的な側面
航空・空港需要は経済状況に大きく左右され、訪日観光需要の回復は当社の動力設備稼働率向上に寄与しています。中国、韓国、台湾、ASEAN諸国からのインバウンド需要は継続的な拡大が見込まれ、当社の主要事業においても回復基調が続いています。
一方で、環境問題に対する関心が高まるなか、燃料価格や電力料金、人件費、資材調達費といったコストの上昇により、収益に対する下押し圧力も強まっており、戦略的な価格転嫁や設備投資の選別が求められています。為替変動の影響は現時点では軽微ですが、中長期的には資材調達コストのリスク要因となる可能性もあるため、調達戦略の多様化とコスト管理の徹底が重要となっています。
◆ 社会的な側面
労働人口の減少と人材の多様化への対応について、日本社会における少子高齢化は、空港業界の現場人材確保にも大きな影響を与えており、当社では技能継承・属人化解消・多様な人材確保を重要課題と捉えています。特に2025年度は、以下の取り組みを重点的に推進します。
・外国人技術者の採用・育成(Airport Ground Power (Thailand) との連携)
・女性・高齢者・非専攻層、及び非正規社員の積極登用
・マルチスキル化とDX(デジタルトランスフォーメーション)による現場高度化
・ダイバーシティとエンゲージメントを両立させる文化醸成
・本社機能(法務・人事・企画等)の専門化と強化
これらを通じて、現場と本社の両面から持続可能な組織力を構築してまいります。
従来は、現場起点の組織構造を見直す観点から現場経験者の異動を中心に担ってきた本社機能(間接業務)についても、専門性・継続性・客観性の観点から構造的な改革を進めています。
これまでは、現場志向が強く、管理機能・制度設計・戦略立案といった業務が十分に機能してこなかったという課題がありました。現在は、法務・経営企画・人事・総務などの間接部門に対し、社外から専門性を持つ人材を計画的に採用・配置することで、組織としての質的転換を図っています。これは単なる人材補充ではなく、全社的な業務高度化と内部統制の強化、ひいては本社機能の「経営の中枢」化を通じて、戦略性と実行力を備えた全社経営体制への転換を目指しています。
これまでの有価証券報告書等における開示のとおり、社員数の推移は以下のとおりであり、非正規社員を含めた全体としての人員数に大きな変動はなく、むしろ横ばいから微増の傾向にあります。
このように、正社員数は業務効率化等の観点から計画的に調整されている一方で、非正規社員を含めた全体人数はむしろ維持・強化されております。
当社は業務の効率化を進めており、定型業務のマニュアル化などを推し進めており、選択と集中をしつつ適切なリソース配分に努めています。
◆ 技術的な側面
空港インフラを取り巻く、AI、IoT、EMS、再エネ制御、サイバーセキュリティなどの先進分野の技術環境は急速に進展しており、これらは空港運営の脱炭素化に向けた取り組みによる環境負荷低減、空港インフラ整備の効率的な運用、安全性向上などの将来を見据えた持続可能性に直結する変革要素となります。
当社ではこれらを単なる業務効率化の手段にとどめず、事業競争力の源泉と捉え、研究開発 R&D(Research and Development)の強化を通じて、技術の蓄積・製品化・標準化を推進しています。今後は空港外・海外市場への技術展開も視野に、先端技術と自社ノウハウの融合を加速してまいります。
当社グループは、空港をご利用される全ての皆様に、中立的な立場で社会インフラサービスを公平に提供し続けられるサステナブルな会社を目指しております。
社会インフラを担う企業として、“安全”且つ外部環境の変化に即した“常に進歩・発展をした”サービスを提供し続ける責務を担っていると自覚しております。また、“技術”を駆使した設備投資を行い、“環境社会に貢献する”サービスを提供することを企業理念に掲げています。
これらを実現するためにESG経営を推進し、「成長の実現」と「戦略投資と還元の両立」を図り、持続的な成長を成し遂げて、企業価値向上と株主の皆様の共同の利益を最大化する事が最大の使命であると認識しており、その実現に向けた取り組みを推進してまいります。
① 財務視点から見た課題:成長の実現を見据えた「資本効率を意識した戦略投資と還元」の実現
当社は、独立した上場企業として、持続的な成長による企業価値の向上を目指し、成長事業の創出が急務であると認識しており、そのために必要となる事業投資、機能や事業を具備するためのM&Aなどの実行に加え、成長事業の創出を支える技術開発、新たな自社製品/機能を具備するための研究開発、省人化・省力化に資する研究開発など、当社の根幹を支える技術について、資金投入を積極的に推進し成長事業の創出を実現してまいります。
このために、戦略投資と還元の両立を目指し、成長分野への資本投入を行い、投下した資本コストを上回る形でのキャッシュリターンの最大化を図りたいと考えており、営業キャッシュ・フロー計画として、手元資金に加えて当該期間中の営業キャッシュ・フローと、資本効率の向上を目的にした調達を行うことで、財務レバレッジを高めながら、戦略投資と株主還元の充実を図る計画をしておりました。しかしながら、前述のとおり、この2年間の実績としては、将来の成長の実現に向けた「戦略投資」の実行が計画より遅れており、自己資本比率が上昇しました。
航空需要の回復が著しく業績は順調に推移しましたので、利益増加によるROEは向上したものの、資本効率の向上は図られなかったことは否めません。
現中期経営計画のFY25(2026年3月期)は、当社の将来のために、積極的に収益機会を求めて戦略投資の実行を推し進めると同時に、投資事業の収益性を見極めながら株主還元の充実を図り、戦略投資と還元の両立を実現してまいります。
・ BSを意識した経営の推進
中期経営計画策定から過去3年間、成長事業の創出に対する資本投入は実現できていません。2025年度からは、資本効率の向上を重要視し、売上や利益のみを意識した経営ではなく、経営資源の適切な配分による利益最大化を目指すBS経営へシフトします。
資本効率の高い経営を目指し、成長事業を創出するための戦略投資、空港再編・拡張に対する設備更新投資、それらを実行していくための人的資本投資、外部環境の変化に適応するための革新的な技術の進歩・発展に必要となる研究開発投資等を積極的に推し進められるよう再計画を行い、成長分野への積極的な資本投入により、資本効率を高めて企業価値向上を目指します。
・ 戦略投資の実行
2025年度からは当社の将来に向けて、成長分野への積極的な資本投入を行い営業キャッシュの最大化を追求していきたいと考えており、一時的に営業利益率の減少及びフリーキャッシュフローのマイナスを計画しております。
戦略投資に関しては、過度な投資とならぬよう、株主還元方針を念頭に、業績状況に沿って適切に投資と還元をバランスさせるだけではなく、投資事業の収益性や効率性を見極めながら、慎重に資金を活用してまいります。なお、資金計画については、これまで、利用に慎重であった有利子負債も、市場の動向と事業の状況を注視しながら積極的に活用し、当社の稼ぐ力の向上と成長のために活用してまいります。ただし、財務の健全性の維持の観点から、D/Eレシオ0.5倍を上回らないようにすることといたします。
② 「優先して対処すべき課題」の解決に向けた、業務執行運営体制の改革
a)CxO制度の導入
コーポレートガバナンス体制を強化しつつ、成長戦略の実現を事業領域の枠を超え、スピード感をもって事業部間の連携強化や資源配分の最適化を行うことを目的に、CxO制度を導入しています。
CxOは次の役割を担います。
・ 経営目標の達成に向けて戦略を立案し、各戦略担務ごとの方向性を決定し、進捗をモニタリング
・ 特に戦略目標である成長事業の創出、技術研究開発、財務戦略、資本政策等の実行を加速させるため、必要な指導を実施
・ 各戦略担務の成長/事業投資において、適切に投資判断基準を充たしているか否かの判断を行う
CxOは、最高経営責任を担うCEO、技術面から経営をサポートし、新規事業開発、技術研究開発の実現を担うCTO(最高技術責任者)、中期経営計画達成及び上場維持、企業価値向上に向けた戦略の立案と実行プロセスの構築を担うCSO(最高戦略責任者)、縦割り組織の壁を越えて横断的に業務を推進し、全社的な目標達成に向けオペレーションを一貫して管理を担うCOO(最高執行責任者)に加え、財務戦略、配当計画・資金調達の戦略立案と実行を担うCFO(最高財務責任者)の5名体制により、スピード感を持った経営の実践に努めてまいります。
b)戦略担務の設置
CxO制度の導入に加えて、各役員の担当部門における執行責任を負う従来の方式に加え、戦略目標の実行の加速化を目的に、各執行役員に合計9つの戦略担務を設定し、最終目標である企業価値向上に向けて、総力を挙げて推進してまいります。
具体的な戦略担務は、次のとおりです。
*1 BPR:Business Process Re-engineeringの略称
*2 GPU:Ground Power Unitの略称

当社グループにおける、サステナビリティに関する考え方及び取組については、以下に記載のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は1965年に設立して以来、企業活動を通して空港分野において環境貢献に資する経営を推進してまいりました。当社グループの経営方針については、前述の
本経営方針及び本中期経営計画の中には、当社のサステナビリティに関する考え方及び取組も含まれており、本経営方針及び本中期経営計画のもと、中期経営計画期間中にコロナ前(2019年度)の売上・利益水準へ早期に回復させ、その後はさらなる成長を目指して売上規模200億円以上を目標に掲げ、企業価値向上に向けて経営を推進するとともに、環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営を推進してまいります。
サステナビリティについての取組
国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の4つの構成要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)に基づき、本経営方針及び本中期経営計画における当社のサステナビリティに関する考え方及び取組に付言しつつ整理の上、開示いたします。当社としては、以下のガバナンス((1)参照)及びリスク管理((3)参照)の取組は、当社のサステナビリティに関する戦略((2)参照)及び指標((4)参照)の実現に資するものであると考えております。
マーケットからは、いわゆる安定株主が株主総会における特別決議可決のために必要な水準を占めることのない公開性が求められており、この公開性の要請に応え、当社がマーケットからの投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた会社であることをお示しすることは重要であると認識しています。
◆ スタンダード市場への上場維持基準への適合と上場企業としてのガバナンス具備
当社は、東京証券取引所より「上場維持基準(分布基準)への適合状況について」の通知を受領し、2025年3月末時点において、当社が同基準に適合していることを確認いたしました。なお、2024年3月末時点においては、スタンダード市場の上場維持基準のうち「流通株式比率」の基準を満たしておりませんでしたが、2025年3月末時点では、当該基準を含む全項目において適合いたしました。
この間、当社は、成長戦略の推進、株式保有の分散化、IR・PR活動の強化、株主還元の充実、並びにWebサイトのリニューアルや人的資本への還元強化(2023年にJ-ESOP導入、2025年にJ-ESOP-RSへ拡張)など、重点施策を継続的に実行してまいりました。これらの取り組みにより、上場維持基準への適合を実現することができました。
今後も、独立性・透明性・持続可能性を重視したガバナンス体制の下、株主・投資家の皆様との建設的な対話を重ねながら、企業価値の一層の向上に努めてまいります。
① 大株主との関係を維持しつつ、少数株主の利益を適切に保護するガバナンス体制の構築を実現し、独立した上場企業として企業価値・株主価値の向上に努めています。
② 上場企業として備えるべきガバナンスの維持・向上に対する考え方につきましては、経営の透明性、健全性に重きを置き、ガバナンスの強化を図っております。また、スタンダード市場のコンセプトに準じて、上場企業としての基本的なガバナンス水準を具備できるよう、適切なガバナンスの仕組みを整え、透明性・公正性を高めると共にリスクマネジメントを強化することで経営基盤の強化を図っております。さらには、企業経営において公正な判断・運営がなされるよう、監視・統制する仕組みの整備、浸透、運用の強化を図っております。
なお、上場企業として備えるべきガバナンスを具備するための具体的な取組は次のとおりです。
指名・報酬委員会を中心に、特定株主の意向に左右されないガバナンス体制を確立するための改革(取締役構成、報酬制度、人事プロセスの見直し等)を進めております。
これまで、機動的な経営判断を行えるガバナンス体制(独立委員会・報酬設計・取締役スキルマトリクス等)を整えてきました。
課題があるとすれば、支配株主との関係性およびコーポレートガバナンスの在り方にあると認識しております。当社としては、上場を維持した上で、より実効性の高いガバナンス体制の構築を追求することが適切であると考えております。
中期経営計画(2022~2025年度)の期間を通じ「形式から実質へ」と進化するガバナンス改革を継続的に実施しています。また、東京証券取引所スタンダード市場が求めるガバナンス水準を十分に満たし、さらにそれを上回る実効性の高い体制の構築に取り組み、取締役会の独立性強化と説明責任の徹底を進めてまいりました。
これらの取り組みにより、当社は東京証券取引所スタンダード市場が求めるガバナンス基準を十分に満たし、さらにそれを上回る実効性の高い体制を構築し、持続的成長と中長期的企業価値向上にコミットする経営の土台を確立しています。
当社は、株式会社東京証券取引所の独立性に関する判断基準を基に、当社経営陣から独立した立場で社外役員としての職務を遂行できる独立性が確保できる、幅広い見識、経験に基づき、当社の経営に対して客観的且つ適切な意見を述べることができる方を招聘し、現在、独立社外取締役2名体制としてガバナンス強化を図っております。当社の独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たしていただいております。
(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
⑤ 指名・報酬委員会
指名・報酬委員会では、当社のガバナンス体制はどうあるべきかという視座に立って、株主総会に諮る取締役・監査役候補の選任議案の他、取締役の報酬の在り方等について審議を行っております。
当事業年度におきましては、主に次の活動を行っております。
・ 取締役候補・監査役候補の選任プロセス
・ 取締役スキルマトリクス項目の点検を行い最新版を策定
・ 当社のあるべき取締役会体制を検討し、独立社外取締役1名の増員を含む第61期取締役体制の原案を取締役会へ答申(第60回定時株主総会へ付議)
・ 当社の取締役報酬について、業績と連動する報酬体系とすべく、短期業績と連動する現金報酬割合と中長期的業績と連動する自社株報酬割合の適切な設定について、第59回定時株主総会における反対意見を分析、検討し修正案を取締役会へ答申

⑥ 特別委員会の設置
当社は独立社外取締役が取締役会の過半数に達していないため、経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化することを目的として、2022年独立社外取締役2名と代表取締役1名を構成員とした、取締役会の任意の諮問機関である指名・報酬委員会を設置しております。更に少数株主利益保護の観点から2024年8月に過半数を独立社外取締役で構成される特別委員会を設置しております。
2025年度は、創立60周年という節目であると同時に、現行中期経営計画(2022~2025年度)の最終年度にあたります。この60年間で培ってきた「中立性」「技術」「現場力」を原点に、2024年度にはチーフオフィサー制度の導入、専門人材の登用、ESG経営の推進など人的資本経営を強化するとともに、株主還元や上場維持に向けた資本政策など、企業価値向上に向けた多面的な変革を本格化させてきました。
2025年度はこれらの改革を着実に成果へと結びつけるとともに、次期中期経営計画(2026~2030年度)への戦略的移行を確実に進める「橋渡しの年」=戦略的移行年度として、企業価値・株主価値の最大化に取り組むこととしています。
当社は創立60周年を単なる節目ではなく、持続可能な企業成長に向けた構造的変革と戦略的成長の起点と位置づけ、次の10年に向けた飛躍を確実にスタートさせてまいります。

これらの重点施策を着実に実行し、中期的な企業価値の向上を図るためには、戦略の推進体制と業務執行の一体的な強化が不可欠であると判断し、2025年度より組織体制の抜本的な見直しを行いました。
全社戦略の実効性を高めるために、4つの部門からなる機能別・戦略別の明確な役割分担体制を導入し、あわせてチーフオフィサー制度の拡充、R&D(研究開発機能)の新設、本社機能の中枢化、現場における業務改革の推進など、経営基盤の再構築を進めてまいります。
① 組織改編とガバナンス強化
2025年度より、以下のとおり4つの部門体制を導入し、機能別・戦略別の明確な役割分担と責任体制を構築します。
・コーポレート部門:総務、経営企画、安全・品質・教育の機能に加え、全社の改革推進を担う成長戦略推進組織を新設
・営業部門:本社と支社を横串で結ぶマトリクス型組織とし、主要顧客との関係を強化と地域展開の戦略性を高める
・サービス提供部門:現場のオペレーション業務統括、人材の流動化を推進する柔軟なオペレーション体制を整備
・ソリューション事業部門:新技術・商材を扱う高機動部門、製品特性に応じた即応的な営業・開発判断を行う

② CxO体制の拡充
2024年度に導入したCxO体制に加え、2025年度はCOO(最高執行責任者)を新設し、執行役員体制との連携を強化することで、戦略の全社的推進を図ります。
・CEO(最高経営責任者):経営責任
・CSO(最高戦略責任者):中期経営計画の達成及び企業価値向上に向けた戦略立案及びプロセスの構築
・COO(最高執行責任者):縦割り組織の壁を越えて横断的に業務を推進し、全社的な目標達成に向けオペレーションを一貫して管理
・CTO(最高技術責任者):技術面から経営をサポートし、当社コア技術の確立、新規事業開発、技術研究開発の実現
・CFO(最高財務責任者):財務戦略、配当計画・資金調達の立案と実行
CxOは、組織運営における「戦略と執行の橋渡し役」として、意思決定スピードと説明責任の両立を図る中核的な役割を担います。
③ 戦略担務の再設計
2024年度より、執行役員に対し部門横断の「戦略担務」を設定し、特定テーマ(成長事業、資本効率、海外展開、人材確保等)に責任を持って取り組んでいますが、計画に対して十分な進捗が見られない領域については、本年度中にリカバリープランを策定・再設定します。
今後は、CxO体制と戦略担務を接続したPDCA運営を徹底し、各責任者の役割・進捗・成果を定量的・定性的にモニタリングし、説明責任の明確化と成果の最大化を図ってまいります。
④ R&D設置と技術革新の加速
燃える挑戦心を持ち続ける社員とともに、技術を極め、持続可能な空港環境の創造と環境貢献のリーディングカンパニーとして、2025年度より本社に研究開発機能(R&D)を新設しました。R&Dは、企業価値の持続的向上に資する技術戦略の策定と実行を担い、以下を中心に活動を推進しています。
・固定式埋設型GPUの高機能化と制御最適化
・固定式空調装置の自社開発及びコスト削減施策の推進
・海外製空調装置の導入・標準化に向けたプロジェクトマネジメント
・技術者育成と連携ネットワークの拡大
異業種や学協会との連携を深め、R&D人材の育成にも注力しています。将来の競争力の源泉となる「技術開発力」の強化と、長期的な成長基盤の確立を進めています。
今後も、社会課題に対応する技術を起点とした価値創出に取り組み、技術・製品・人材の三位一体で持続可能な未来に貢献する研究開発体制を強化してまいります。
⑤ 本社機能の中枢化
2025年度、当社は経営体制の一体運営と機能間連携の強化を目的に、総務・経営企画・安全・品質・教育を統合した「コーポレート部門」を新たに整備し、あわせてプロジェクト単位で柔軟に機能する「戦略チーム」を本社に配置しました。これにより、経営戦略の立案から制度設計、人材開発、リスク管理までを横断的に担う中枢機能としての本社体制を構築いたしました。空港拠点や事業部門と密に連携しながら、全社最適の視点から組織運営を支援し、現場主導の実行と本社による統制・支援のバランスを保つ仕組みを確立しています。
⑥ 現場におけるBPR推進
空港拠点「サービス提供部門」においては、現場業務の効率化と標準化を目的としたBPR(業務プロセス改革)を推進しています。以下の3つの観点から、実行力とコスト競争力の強化に取り組んでいます。
・業務の標準化と再現性の確保
業務手順や役割分担の明確化により属人化を排除し、業務の平準化と再現性向上を図る運用体制を整備しています。
・人材・組織の柔軟性と多様性の強化
複数拠点間での知見共有や人員の柔軟配置を通じて、業務負荷の平準化と機動的な体制構築を推進しています。あわせて、人材の多能化や、外国人技術者(Airport Ground Power (Thailand) との連携)、女性・高齢者・非専攻層および非正規社員の積極的登用を進め、多様な人材の活躍を促進しています。
・現場主導の改善活動とコストマネジメント
現場からの提案に基づく作業改善、設備更新、5S活動等を通じ、継続的なコスト構造の見直しと資源配分の最適化に取り組んでいます。
これらの取り組みにより、本社と現場の機能が明確に役割分担され、戦略と実行の有機的連動が進展しています。今後も、全社視点での統制と現場視点での柔軟な対応力を両立する組織運営を目指してまいります。
高い技術力で環境社会に貢献できる企業を目指すとともに、選択と集中により得られる経営資源を十分に活用し、事業基盤のシフトを推し進め、地方・海外空港への展開や当社技術を活かせる空港外産業への事業展開を図り、新しい商品・サービスの開発へチャレンジしながら持続的な成長へ繋げる事を志向しております。

当社は、GPU利用促進による地球温暖化防止への取り組みを継続して推し進めております。また、これまで国内主要空港にて培ってきた、GPU設備をはじめとする電気インフラに係わる知見と技術が最大限活かせる好機と捉え、当社の強みである「電気」を主軸とした、「環境」×「電気」×「DX」領域での事業多角化を行い、新たな収益の柱となるビジネス創出を目指しており、各種ソリューション開発を推し進めております。加えて、既存事業との関連性を基に、新たな技術価値によるサービス構築が急務であるとの課題を認識しており、既存事業で培った技術と親和性の高い「物流保守サービスの拡大」への取り組みを進めてまいります。
①GPU利用促進による空港の脱炭素化
・空港で駐機中の航空機に対して当社GPU設備の利用を推し進め、2025年度末までにCO2排出量削減33.5万トン以上を目指す。当事業年度末現在、CO₂排出量削減は29.4万トン(前年比+5.7%)となっております。
・当社GPU設備が配備されていない地方空港等には、各空港のニーズに合わせたGPU設備・機材の提供をはじめとした空港分野における環境貢献に寄与するサービスの拡充を目指します。現在、航空機用の電源及び空調を同時供給できる移動式機材comboを配置、また国産初のバッテリー駆動式GPU(登録商標Be power.GPU)の製品化をしております。
・カーボンニュートラル、環境負荷の低減の実現に向けて、環境貢献機材の開発を推進し、外部電源式省スペース型固定空調装置の開発、移動式GPUに対するバイオディーゼル燃料の導入試験等を継続して実施しており、今後も新技術導入による次世代製品の開発を進めます。
② GPU仕入れ電力の再生可能エネルギー化の推進
・エネルギーマネジメントシステム/AI蓄電池/再エネ導入によるエネルギーの最適化
当社はこれまで推進してきたGPU利用促進を基盤に、空港の脱炭素化とエネルギー利用最適化に向けた取り組みをさらに拡大しています。再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、調達コストの上昇が航空会社の負担増となる可能性があることから、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入と大型蓄電池の活用によって電力需給の最適化と負荷調整を進めています。これにより、グリーン電力導入に伴うコスト上昇の抑制と空港全体の電力効率向上の両立を目指し、技術開発にも注力しています。さらに、空港内EV化の進展を見据え、航空機地上支援機材(GSE)向け充電ステーションの整備も構想中です。今後も、環境価値と経済合理性の両立を重視し、空港運営管理会社と連携しながら、次世代の空港電力供給モデルの構築と脱炭素社会への貢献に向けた事業基盤の強化に努めてまいります。

③ 海外展開
当社は、日本国内で培ってきた空港技術インフラにおける高い信頼性・安全性及び運用ノウハウを強みとして、アジア市場を中心に海外展開を進めています。現在、タイの空港運営管理会社との連携を通じて、当社独自技術である固定式埋設型GPUやエネルギーマネジメントシステム(EMS)を活用した「グリーンエアポート構想」の実現を目指しております。とりわけ、日本発・当社独自の技術である「固定式埋設型GPU」は、先進的な空港インフラ技術として高い評価を受けており、今後はASEAN諸国を中心に、脱炭素・電動化に対応した次世代空港モデルとしての展開を視野に入れており、こうした取り組みは、政府が掲げる「質の高いインフラ輸出」の推進方針(ナショナルアジェンダ)にも合致するものであり、日本の空港環境技術を世界に広げる一翼を担ってまいります。
当社は、これからも日本の空港で培った技術と理念を活かし、持続可能且つ環境負荷の少ない次世代空港インフラの実現に向けて、海外においても積極的に貢献してまいります。
④ 空港外業務領域への事業展開(空港外売上目標比率20%超)
航空需要のボラティリティや経済変動への柔軟な対応力を高めるため、空港外の分野にも事業領域を広げています。
◇物流領域の拡大
・空港で培った高度な保守技術と24時間365日運用の知見を活かし、物流センター・倉庫のメンテナンス業務を拡大
・Eコマース需要拡大により、ベルトコンベア保守業務の実績が高く評価され、受託件数拡大中
・物流倉庫内搬送設備の設計・提案・工事・運用保守体制を確立(ワンストップサービス)
◇フードカート事業の拡大
・医療・介護分野にも展開し、病院・サ高住*向けフードカートの製作・販売を推進
・完全調理済食材*(クックチル・ニュークックチル)と高効率な再加熱カートを組合わせた調理提供システムの導入を積極的に推進
*サ高住:サービス付き高齢者向け住宅
*完全調理済食材:給食会社や食材会社など販売協力会社が担っています。クックチルは、最終加熱(再加熱)後(食事を提
供する前)に温かい状態で盛り付ける。ニュークックチルは、最終加熱(再加熱)前のチルド状態での
盛り付けを行う。
◆人材戦略
日本社会における少子高齢化は、空港業界の現場人材確保にも大きな影響を与えており、当社では技能継承・属人化解消・多様な人材確保を重要課題と捉えています。特に2025年度は、以下の取り組みを重点的に推進してまいります。
また、当社では、多様性の確保・容認に向けたダイバーシティ経営を推進しておりますので、その取り組みについても付記いたします。
① 外国人技術者の採用・育成(AGPT連携)
② 女性・高齢者・非専攻層の登用
③ マルチスキル化とDXによる現場高度化
④ ダイバーシティとエンゲージメントを両立させる文化醸成
⑤ 本社機能(法務・人事・企画等)の専門化と中枢化
⑥ 中長期的な要員計画の策定
⑦ 従業員への還元の充実と適正な人件費水準の維持
・透明性・公平性のある評価・報酬システムの安定運用
・適正な水準の労働分配率を維持
・従業員の生活水準の維持確保、成長事業に資する人材確保に向けた採用力強化の観点から、本年6月より、1人当たり平均で+8.2%(定期昇給除き)の賃金水準の引き上げ(2年連続の水準引上げ)
・株式給付信託(J-ESOP-RS)の導入
2023年5月より導入している「株式給付信託(J-ESOP)」の一部を改定、新たに譲渡制限付株式(RS)を組み合わせた「J-ESOP-RS」導入を決定」
「企業成長に資するダイバーシティ経営」を目指し、多様性のある人材が長期にわたって企業の価値創造に貢献できるよう、経営幹部から従業員まで全員が「ダイバーシティ経営」における理解を深められる環境を構築しています。
・毎年継続して「ダイバーシティ・インデックス*」に参加することによりダイバーシティ経営を可視化
・社内にダイバーシティ推進プロジェクトチームを設置し、ダイバーシティマインドの醸成を目指して推進
・全社的にダイバーシティ インクルージョンの研修を推進
・日本人社員のグローバル化を推進
・外国籍社員の労働環境を整備
・国籍問わず同一教育環境の整備
・女性労働者に対する職業生活に関する機会として、育児休業復帰後の多様な働き方の提供
・育児・介護休業制度導入や時短勤務など職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
*ダイバーシティ・インデックス:株式会社イー・ウーマンが運営するダイバーシティ経営を可視化、数値化し、組織の取組の進度を明確にし、課題を解決する
ために開発された指標。
◆経営の透明性/健全性に重きをおいたガバナンス
中期経営計画(2022~2025年度)の期間を通じて、当社は「形式から実質へ」と進化するガバナンス改革を継続的に実施しています。以下の取り組みにより、当社は東京証券取引所スタンダード市場が求めるガバナンス基準を上回る実効性ある体制を構築し、持続的成長と中長期的企業価値向上にコミットする経営の土台を確立しています。
① 改定コーポレートガバナンス・コードへの準拠と実質運用
コーポレートガバナンス・コードを遵守できていない残り7項目は2025年度中に完了する見込みであり、全項目を達成する方針です。
・補充原則1-2-4.決権の電子行使のための環境作り、招集通知の英訳
・補充原則3-1-2.英語での情報開示・提供
・補充原則4-1-3.最高経営責任者等の後継者計画の監督
・原則 4-2. 取締役会の役割・責務
・補充原則4-2-1.中長期的業績と連動する報酬の割合、現金報酬と自社株報酬の割合の適切な設定
・補充原則4-3-1.経営陣幹部の選任や解任に関する公正且つ透明性の高い手続きの実行*
・補充原則4-3-3.会社の業績等の適切な評価を踏まえCEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続きの確立
*補充原則4-3-1:経営陣幹部の選任については、実行済みとなります。
② 情報開示・IR活動の強化:60周年
機関投資家・個人投資家向け説明会を四半期ごとに実施。動画・媒体等を通じた情報発信を通じて、企業認知と透明性向上に注力しています。今後も引き続き認知度向上に向けた取り組みを行ってまいります。
2024年度取り組み内容
・機関投資家向け・個人投資家向け説明会の定期開催(四半期ごと)
・設立経緯・事業内容に関する対談動画の配信
・ラジオNIKKEI開局70周年記念セミナー「MARKET WAVE」にて代表取締役社長が講演
・空港内広告・電車内広告の掲出による社会的認知度向上
当社グループは、直接的又は間接的に当社グループの経営あるいは事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに対し、迅速且つ的確に対応を図るために定めたリスク管理規則に則り、毎年定期的にリスクマネジメント一覧表を取りまとめ、経営会議に報告するなどして、全社的なリスクの評価、管理、対策立案を実行しております。
顕在化したリスクがあった場合には、顕在化したリスクの内容に沿って予め決められた施策で対応を図ることとしており、必要に応じて取締役会へ情報を共有し監督及びモニタリングを実施するとともに、リスク評価・分析を行い、全社におけるリスク管理の強化を図っています。
<リスク管理体制図>

◆リスク要因の特定
当社グループは、経営方針に基づく経営戦略の阻害要因となり得るリスクについて、環境分析のもとリスク要因を特定しており、「企業経営の継続に関するリスク」と「事業運営の継続に対するリスク」を認識しています。
① 企業運営の継続に関するリスク
スタンダード市場における上場維持は、当社が市場からの投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた会社であることを示す重要な要素であると認識しております。当社はこれまで、成長戦略の推進、株式保有の分散化、IR・PR活動の強化、株主還元の充実並びにWebサイトのリニューアルや人的資本への還元強化(2023年にJ-ESOP導入、2025年にJ-ESOP-RSへと拡張)等、施策を継続的に実行してまいりました。
その結果、流通株式比率は2024年3月末時点の23.8%から2025年3月末には25.4%に上昇し、「スタンダード市場の上場維持基準(分布基準)」に適合いたしました。
流通株式比率については、基準を充足しなくなる可能性がありますので、今後も、独立性・透明性・持続可能性を重視したガバナンス体制の下、株主・投資家の皆様との建設的な対話を重ねながら、企業価値の一層の向上に努めてまいります。
② 事業運営の継続に関するリスク
当社はこれまで、空港を主たるフィールドとして、空港会社及び航空会社に対して多様なサービスを提供してまいりました。しかしながら、航空・空港産業は依然として高いボラティリティを有しており、新型感染症の拡大、自然災害、地政学的リスクなどのイベントリスクに加え、IoTやAI等の技術革新による競争環境の変化が、当社の事業運営に影響を及ぼすリスクが存在します。また、少子高齢化や働き方改革の進展に伴い、人材確保が一層困難化している現状も認識しています。
このような環境下、当社は空港外分野への事業展開を中期経営計画の重点課題と位置づけ、空港以外の事業売上比率20%超の達成を目指しています。空港における高度な保守技術及び24時間365日の運用ノウハウを活用し、物流センターや倉庫施設のメンテナンス業務の受託を積極的に進めています。特に、物流倉庫の搬送設備に関しては、設計・提案から施工・運用保守サービスまでを一貫して提供するワンストップサービス体制を構築しています。さらに、医療・介護分野においては、病院やサービス付き高齢者向け住宅向けにフードカートの製作・販売を促進し、空港外業務のさらなる拡充を図っています。
加えて、動力供給事業領域では電力料金等原材料費の高騰に対応すべく、原材料費の変動に応じた価格転嫁を継続的に実施しています。エンジニアリング事業領域においては、人材不足への対応として技術員のマルチスキル化を進め、BPR(業務プロセス改革)を通じて業務効率化・生産性向上を推進しています。
今後も、当社は、外部環境の変化を的確に捉え、空港関連事業への依存からの脱却と、持続可能な事業基盤の構築を図り、企業価値の向上を目指してまいります。
2019年に第2位株主である三菱商事株式会社から日本空港ビルデング株式会社に移行したことにより、同一業界に属する3社が当社株式の7割以上の当社株式を保有する状況となっております。このため、形式的にはいわゆる支配株主には該当しないものの、実質的には当該株主グループによる影響を強く受ける資本構成となっております。
当社は、1965年の設立当初より、駐機中の航空機に対して電力及び空調(冷暖房)を供給することで、航空機からのCO₂排出削減及び騒音低減を図り、空港環境の改善に寄与してきました。現在では、空港における環境貢献のリーディングカンパニーとして、「空港における脱炭素化の実現」を掲げ、主要8空港に自社開発の固定式埋設型GPUを設置。航空機への電力・空調供給サービスを通じて、2030年度末までにGPU利用率100%の実現を目指しています。これらの取り組みにより、2024年度にはCO₂排出量を29.4万トン削減するなど、環境負荷の低減と収益性の両立を実現しています。今後も航空会社各社への設備利用促進を進め、環境価値と経済価値の両面から企業価値の向上を図ってまいります。
GPU事業にとどまらず、ナショナルアジェンダとしてのCO₂排出削減推進を背景に、新たな環境事業の創出にも挑戦してまいります。エネルギーマネジメント、再生可能エネルギー活用、蓄電池技術との連携といった成長分野においても機会を逃さず、脱炭素社会の実現に貢献する企業として、更なる成長を目指してまいります。
① GPU利用促進による空港の脱炭素化
・2025年度末までに2019年実績の33.5万トンを超えるCO₂排出量削減を目指す。
・2030年度末までにGPU利用100%目標に向け取り組み、空港における更なるCO₂排出量削減に貢献する。

② GPU仕入れ電力の再生可能エネルギー化の推進
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、調達コストの上昇が航空会社の負担増につながる可能性があるため、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入による電力需給の最適化と、大型蓄電池の活用による負荷調整を推進しております。また、グリーン電力導入に伴うコスト上昇の抑制と、空港全体の電力使用効率向上の両立を目指し、技術開発を推進してまいります。
③ 空港内EV化の進展に対応し、GSE(航空機地上支援機材)向け充電ステーションの構想を推進しています。
④ 空港内車両(自社車両の更新)のEV化
・EV連絡車(5台)導入を予定しております。
当社は「人材は価値創出の原動力であり最大の資本」と考えており、新卒採用のみならず中途採用、次世代リーダー候補者採用、外国人採用を男女問わず優秀な人材の確保に向けての取組を進めてまいります。多様性の尊重や人材育成を通じて、働きがいのある職場環境を構築します。
キャリア採用(次世代のリーダー候補)及びオペレーション人材のバランス採用を目指します。
① 日本人新卒採用(文系/理系/高専/専門/高卒)+ タイ人理工系卒採用(30名規模を目指す)
② 外国人社員について、全社員の10%以上を目指します
③ 女性採用比率10%以上を目指します
④ 育児休業取得率100%を目指します
⑤ 社員の能力開発に向けて、営業利益の10%程度を目安に社内教育、社外教育、資格取得講習等を行う
⑥ 資格取得の奨励と自己啓発により、技術職は一人当たり10資格以上の資格取得を推奨
⑦ ダイバーシティ・インデックスの受講を含め、ダイバーシティ理解を醸成する研修及びワークショップを年4回開催
⑧ 経営陣向けの各種研修を四半期に1回実施
《ガバナンスに関する目標》
上場企業として求められる基本的なガバナンス水準の確保はもとより、透明性・公正性・説明責任を重視した経営の実践に努めています。東京証券取引所スタンダード市場のコンセプトに沿い、持続的な成長と中長期的な企業価値向上にコミットする経営体制の確立を推進しています。また、適切なガバナンス体制の整備とともに、リスクマネジメントの強化やIR・PR活動の拡充を通じて、経営基盤の安定化と企業認知度の向上を図っています。
① コーポレートガバナンス・コード7項目遵守
コーポレートガバナンス・コードを遵守できていない7項目については、2025年度中に全項目達成を目指します。
② IR・PR戦略の強化(個人投資家との関係構築含む)
機関投資家・個人投資家向け説明会を四半期ごとに実施し、また動画・媒体等を通じた情報発信を通じて上場企業としての説明責任、透明性、IR・PR活動の戦略的展開を図り、企業認知と透明性向上に注力してまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財政状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスク及び変動要因は、以下に記載のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものでありますが、全てのリスクを網羅したものではなく、災害に関するリスク等、予見しがたいリスクも存在します。
動力供給事業の売上は、航空各社の運航便数・機種及び地上動力の利用頻度により売上に影響を及ぼす可能性があります。特に、航空会社による減便・路線撤退・機材変更・ダイヤの見直しなどが発生した場合、当社設備の稼働率や利用頻度が低下し、売上や収益性に影響を及ぼすリスクがあります。また、国際情勢、感染症の流行、燃油価格の高騰、自然災害、政治的要因等により航空需要が大きく変動した場合にも、同様の影響が生じるリスクがあると認識しております。
電力料金等、燃油費等、原材料費高騰による費用増を招く恐れがありますが、2023年4月利用分より原材料費の変動に応じた価格転嫁を開始していることから、その影響は縮小しております。なお、原材料費の高騰に関しましては、国際紛争等に起因する地政学リスクの存在を認識しております。
当事業は設備投資型事業を展開しております。これらの空港インフラ整備には高額な初期投資を要し且つ回収期間は長期にわたるものです。
それゆえに、経済情勢の変化、資材価格の高騰、金利の上昇、空港利用需要の変動などの外部要因によって、事業収益性や投資回収計画に影響を及ぼす可能性があります。また、設備の老朽化に伴う更新投資についても同様のリスクが内在していることを認識しております。
また、本事業を約60年間にわたり、継続運営しておりますが、長期的な物価上昇や建設コストの上昇などにより、今後の事業環境が不利に変化する可能性は否定できません。
機械設備におけるデジタル化や自動化が急速に進展しており、設備の更新や新技術の導入が進む一方で、これに対応可能な高度な技術人材の確保・育成が必要不可欠となっております。技術革新のスピードに追随できず、保守対応力が相対的に低下した場合には、受託機会の減少や契約条件の不利な変更につながるリスクがあることを認識しています。
空港の施設整備計画が当初計画どおりに進行しない場合や、お客様が設備投資を抑制又は経費節減施策を強化する局面においては、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、少子高齢化に伴う生産労働人口の減少や働き方改革に伴い人材確保が難しく複雑になってきていることを認識しております。
他社との競争が予想され、販売が計画どおりに進まず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらリスクの存在を認識したうえで、当該リスクの発生に伴う影響を極力回避するための努力を継続してまいります。
また、当社は、技術研修の内製化やマルチスキル人材の育成を進めることでこれらリスクへの対応を図っております。一方で、労働生産人口の減少に伴う人手不足の顕在化により、自動化・省人化が更に加速することも想定されますが、これを好機と捉えてビジネス機会の発掘に努めてまいります。
当期における当社を取り巻く外部環境は、物価や人件費の上昇、人材不足などの課題に直面している一方、訪日外客数は前年度を上回る水準となり、インバウンド需要は堅調に推移し、航空需要は伸長しました。
このような状況における当社業績は、国際線の運航便数増加に伴い、動力供給事業は堅調に推移したことに加え、エンジニアリング事業は更新工事等が増加、商品販売事業はGSE販売が堅調に推移した結果、売上高合計は144億43百万円と前期末比14億56百万円(11.2%)の増収、営業利益は13億40百万円と前期末比2億81百万円(26.5%)の増益となり、全てのセグメントにおいて増収増益となりました。
経常利益は13億90百万円と前期末比3億15百万円(29.4%)の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は9億73百万円と前期末比2億84百万円(41.2%)の増益となりました。
各セグメントの業績は、以下のとおりです。
*1 特殊機械設備とは旅客手荷物搬送設備及び旅客搭乗橋設備
*2 GSEはGround Support Equipment の略称で、航空機地上支援機材の総称
※ 全社費用は、主に報告セグメントに帰属していない一般管理費です。
流動資産は、前期末比1億22百万円(1.7%)増加の73億92百万円となりました。これは、現金及び預金が4億87百万円減少した一方で、営業未収入金が2億22百万円、棚卸資産が3億63百万円増加したこと等によります。
固定資産は、前期末比87百万円(1.3%)増加の66億13百万円となりました。これは、有形固定資産が71百万円増加し、無形固定資産が10百万円減少、投資その他の資産が25百万円増加したことによります。
この結果、総資産は、前期末比2億9百万円(1.5%)増加の140億6百万円となりました。
流動負債・固定負債は、前期末比2億64百万円(6.0%)減少の41億77百万円となりました。これは、営業未払金が2億32百万円、未払法人税等が1億58百万円増加し、流動負債・固定負債を合算した借入金が2億29百万円、未払金が2億89百万円減少したこと等によります。
純資産合計は、前期末比4億74百万円(5.1%)増加の98億28百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により9億73百万円増加し、退職給付に係る調整累計額が1億83百万円増加、剰余金の配当により6億75百万円減少したこと等によります。
また、2025年3月7日開催の取締役会決議に基づき、株式給付信託(J-ESOP)への追加拠出に伴う第三者割当による新株式発行を行いました。これにより、資本金が2億45百万円、資本剰余金が2億45百万円増加し、自己株式が4億89百万円増加しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前期末比4億87百万円(12.7%)減少の33億61百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は、前期末比2億23百万円(19.0%)増加の13億98百万円となりました。これは、税金等調整前当期純利益が13億92百万円となり、減価償却費が6億24百万円、売上債権の増加額が2億26百万円、棚卸資産の増加額が3億63百万円、仕入債務の増加額が2億32百万円、法人税等の支払額が2億78百万円であったこと等によります。
投資活動の結果支出した資金は、前期末比2億8百万円(27.6%)増加の9億62百万円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が10億61百万円、国庫補助金による収入が1億28百万円であったこと等によります。
財務活動の結果支出した資金は、前期末比1億4百万円(13.0%)増加の9億11百万円となりました。これは、配当金の支払額が6億75百万円、長期借入金の返済が2億29百万円、株式の発行による収入が4億90百万円、自己株式の取得による支出が4億90百万円であったこと等によります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標は次のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。
3 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 動力供給事業は受注生産を行っていないため、記載しておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2 当社グループは、事業の性質上国内航空2社(日本航空株式会社及び全日本空輸株式会社)への売上高の総販売実績に占める割合が高くなっております。
当連結会計年度の国内航空2社に対する売上高合計の連結売上高に占める割合は、38.6%であります。
3 各地域別の販売実績は以下のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、必要となる見積りは、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。具体的には、IATA(国際航空運送協会)の航空旅客者数の予測、一般に入手可能な航空需要や電力価格推移の情報等、また過去の実績等も勘案し、繰延税金資産の回収可能性等の会計上見積りを行っております。なお、繰延税金資産について回収可能性がないと見込まれる金額まで評価性引当金を計上しておりますが、将来繰延税金資産が回収可能と判断されれば、評価性引当金を戻し入れます。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(経営成績等の状況の概要)」に記載のとおりであります。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは財務戦略の基本方針として、資本コストを意識し、資本効率の高い経営を推進することにより、ROE向上と営業キャッシュ最大化を図ることとしています。
資金調達については、円滑な事業活動に必要な流動性の確保及び財務の健全性・安定性を維持するために、財務指標を総合的に勘案しながら、安全性の観点からD/Eレシオ0.5を上回らない範囲で財務レバレッジを利かせ、最適な資金調達を進めることとしています。
収益性と資本効率を重視した成長分野への積極投資に加え、人的資本投資と研究開発投資を推し進め、株主還元は総還元性向100%以上を目指し、ROEを高めながら自己資本比率を50%台の水準とする計画をしています。
中期経営計画期間においては、安定的な配当に加え増配を行い、株主還元を機動的に実施しましたが、空港再編計画の遅れによる設備更新投資の後ろ倒しや戦略投資の遅れにより自己資本比率70.2%と資本効率は改善できておりません。前述の財務戦略に基づいた資本マネジメントサイクルを適切に運用し、引き続き資本効率改善を図ってまいります。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(3) キャッシュ・フロー」に記載のとおりであり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、33億61百万円となっており、安全な水準を維持しております。
当連結会計年度において、重要な契約等は行われておりません。
当社は、持続可能な空港環境の創造と環境貢献のリーディングカンパニーとして、燃える挑戦心を持つ社員とともに、技術を極め、イノベーションを推進するために、2025年度より本社に研究開発機能(R&D)を新設いたしました。
当社が具備する日本独自の技術である固定式埋設型GPU/PCAの性能向上及び投資コストの抑制
・固定式埋設型GPUとの高機能化と制御最適化
・固定式空調装置の自社開発
・AI蓄電池/EMS/IoTを活用した空港設備のエネルギー最適化
・研究開発のスピードと質の向上
固定式埋設型GPUの高機能化と制御最適化、固定式空調装置の自社開発およびコスト削減施策の推進、海外製空調装置の導入・標準化プロジェクトの推進、技術者育成と異業種や学協会との連携ネットワークの拡大は引き続き推進していきます。
当連結会計年度における当社グループで支出した研究開発費の総額は、
2022年国土交通省航空局の「空港分野の脱炭素化アクションプラン」や2023年内閣官房GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議の「GX実現に向けた基本方針」で求められている環境対応技術の推進や知的財産の管理・活用を通じて、環境負荷低減・脱炭素化実現などの社会的責任を果たし、持続可能な未来の実現を目指すため、再生可能エネルギーの活用検討、電力使用の最適化技術の研究・開発を一体的に進めていきます。
今後も、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の開発や蓄電池技術の導入に向けた準備を進め、電力の「グリーン化」と「スマート化」を同時に目指す取り組みを段階的に進行していきます。
研究活動をとおして、「持続的成長と競争力強化」「技術の蓄積と継承」「新技術の開発」「コスト削減」を通じて、国内外での事業展開に貢献してまいります。