第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

2020年春、当社グループは企業理念を定めました。

「TBSグループは、時代を超えて世界の人々に愛されるコンテンツとサービスを創りだし、

多様な価値観が尊重され、希望にあふれる社会の実現に貢献してまいります。」

この理念を実現していくうえで、当社グループの全員が常に心の中にとどめておくべき未来の志、お客様への大切な約束であるブランドプロミスも併せて制定しました。

「最高の“時”で、明日の世界をつくる。」

当社グループが、さまざまなフィールドで心揺さぶる“時間”をお届けし、社会を動かす起点となることを目指す。その未来への決意を表明したものです。

また、企業理念とブランドプロミスを凝縮し、お客様にTBSグループの提供価値をよりわかりやすくお伝えするためにブランドメッセージを制定しました。

「ときめくときを。」

我々は、この企業理念、ブランドプロミス及びブランドメッセージをあらゆる経営活動の指針とし、新しいことにチャレンジしつつ、公正・迅速な報道と愛されるコンテンツの提供に努めるとともに、さらなる企業価値の向上を目指し、株主の皆様のご期待にお応えしてまいりたいと存じます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、企業価値を生み出す源泉としての指標である「売上高」と、本業の中で効率よく利益を生み出す指標としての「営業利益」、資本効率の向上を図る指標として「ROIC」を重要な経営指標としております。

当連結会計年度の売上高は4,067億円(前年比3.1%増)、営業利益194億6千5百万円(同28.3%増)、ROICは3.1%でした。2025年度の目標を連結売上高4,250億円、同営業利益215億円、ROICは3.2%としております。

 

ROIC: Return On Invested Capital

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題と当社グループの経営戦略など

 当社グループの最大の課題は、予測が難しく絶えず変化する経営環境においても、社会に求められる企業として持続的に企業価値を向上していくことであると認識しています。こうした課題に対し、長期的な視点に立ち、将来の目指す姿として、2021年5月に「TBSグループ VISION2030」(以下、VISION2030)を策定しました。そして、2030年度までの10年間を3つのフェイズに分け、それぞれの期間の位置付けを明確にした上で、VISION2030達成に向けて計画を立案しています。

 刻々と変わる世界情勢や人口動態、日本の放送広告市場など、TBSグループを取り巻く外部環境に対し、当社グループが持つ強みと、対処すべき経営課題を明確にし、VISION2030で示した姿を目指します。

 さらに、放送局には高い信頼性や公共性が求められています。TBSテレビを中核子会社に持つ当社グループとしては、コンプライアンスと人権尊重を徹底し、「マスメディアとしての社会的使命と信頼」をしっかり果たしていきます。

<当社グループを取り巻く環境と経営課題>

0102010_001.png

  <「TBSグループ VISION2030」の概要>

 当社グループにとって重要なのは“コンテンツ制作力”です。メディア環境が激変していく中で、今まで以上に人々の“信頼”に応え、心や生活を豊かにする素晴らしいコンテンツを創出します。「心揺さぶるもの」すべてをコンテンツと定義し、その価値を最大化するグループになることを目指します。

 具体的には、オリジナルIP(知的財産)開発を推進し、クリエイティブ力を強化していきます。そして、創ったコンテンツを無限に広げる拡張戦略として「EDGE※」を推進します。

※EDGE: Expand Digital Global Experience

 配信を強化してデジタルコンテンツを開拓し(Digital)、海外市場へのさらなる飛躍を追求し(Global)、ライブエンタテインメントやライフスタイルを“体験する”事業の拡大(Experience)へ当社リソースを集中していきます。

 VISION2030では、拡張戦略「EDGE」によって、放送広告市場の大幅な拡大が見通せない状況下においても、成長事業領域を確実に伸長させることにより、グループ全体の成長を目指します。

 とはいえ、放送事業はこの成長の土台であり、放送事業の価値向上を目指すことに変わりはありません。マスメディアとしての社会的使命と信頼をしっかり果たし、パートナーと新たな価値を提案すること、また、データマーケティング推進によるメディアパワーの進化を目指していきます。

 そして、公共性や社会的使命をもつグループならではのESG経営として、私たちが暮らす地球に(Environment)、社会や働く仲間に(Social)、責任企業として(Governance)「最高の“時”」を提供するため様々な施策を講じます。私たちはコンテンツを通じて、全てのステークホルダーとともに、多様な価値観が尊重される、幸福で持続可能な社会を共創していきます。

 

 <「TBSグループ 中期経営計画2026」の概要>

 2024年5月に策定した「TBSグループ 中期経営計画2026」(以下、中計2026)は、VISION2030の第2フェイズにあたります。第1フェイズ(2021年度~2023年度)では、VISION2030へ向けた成長への種まき期間として、国内有料配信プラットフォームへの出資や知育・教育事業への進出、ライフスタイル事業の強化など、「EDGE」領域の中でも、特にDigital(デジタル)およびExperience(エクスペリエンス)領域を中心に約1,450億円規模の成長投資を行いました。

 中計2026では、第1フェイズで拡大した事業ポートフォリオをGlobal(グローバル)領域でも拡大するため、2024年度を「TBSグローバルビジネス元年」と定め、TBSが創出するコンテンツIPを世界に広げる体制整備を進めました。2025年度以降も成長を加速すべく、成長領域への継続的な種まきやコンテンツIPの獲得・増強などを推進し、2026年度において、売上高4,500億円、営業利益240億円を目指します。

 

 

<VISION2030における中計2026の位置付け>

0102010_002.jpg

 

<中計2026の定量目標>

0102010_003.png

 

 <「TBSグループ 中期経営計画2026」達成に向けた施策>

・コンテンツIP創出力の強化とレバレッジ

 TBSグループにとって重要なのは「コンテンツ制作力」であり、そこから生み出される「コンテンツIP」です。ドラマ、報道、バラエティ、アニメなど映像音声を中心とした「コアコンテンツ」に加え、第1フェイズの成長投資の過程で「新たなコンテンツ」も獲得しました。

中計2026においては、TBSグループ全体で多様なアイディアを生み出せる環境を整備し、企画を見極める眼を養うとともにマーケティング力を強化することで優れたコンテンツIPを選定します。さらにテクノロジーやデザインの力で磨き上げ、より強力なコンテンツIPを生み出せる体制を構築します。

そして、質・量ともに充実した強いコンテンツIPにレバレッジをかけ、放送だけでなく、「EDGE」領域におけるTBSの成長を加速させることで、皆様の心の中に「時代を超えて残り続ける価値」、すなわち“Timeless Value”を追求・提供するグループを目指します。

また、私たちは、自らの手でコンテンツIPを開発するだけでなく、投資によるIPの獲得も行っていきます。コンテンツIPの強化によって、「EDGE」領域の事業成長はもちろん、テレビ視聴率の全時間帯1位、無料配信再生数1位を目指します。

 

<TBSグループ一丸となったCreative Engine>

0102010_004.png

 

<コンテンツIPへのレバレッジ>

0102010_005.png

 

・新規事業創出を通じた事業ポートフォリオの拡充

中計2026では、従来の主たる収益源である地上波広告事業を始めとした放送事業、無料配信事業を「安定収益領域」とし、第1フェイズで積極的に成長投資を行ってきた有料配信事業や知育・教育事業などを「成長注力領域」と設定しました。さらに、2024年度を「TBSグローバルビジネス元年」に位置付けたグローバルビジネス領域や新規IP戦略などを「種まき領域」として設定しています。領域の区分を明確化することによって、事業ポートフォリオの拡充と不断の見直しを行い、最適なコンテンツIPのアロケーションを実現させます。

 

<2026年度に向けた事業ポートフォリオ>

0102010_006.png

 

・資本効率を意識したキャピタル・アロケーションと株主還元

コーポレートガバナンス・コードの遵守及び資本効率を意識した経営推進に向け、政策保有株式の売却を加速させます。売却による資金や営業キャッシュ・フロー等をもとに1,600億円規模の成長投資を実行することで、中長期的な利益拡大、および資本効率の向上を目指します。さらに、配当と機動的な自己株式の取得により、安定的かつ継続的な株主還元を実施します。

 

<2026年度に向けたキャピタル・アロケーション>

0102010_007.png

 

・2024年度の取組み

 グローバル領域において、米国法人であるTOKYO BROADCASTING SYSTEM INTERNATIONAL,INC.の機能強化やTOKYO BROADCASTING SYSTEM KOREA,INC.の設立などを行いました。米国ではコンテンツIP販売代理店の子会社化による販売力向上に加え、エンタテインメント企業との協業やIP開発を行っていきます。また、韓国ではドラマや映画、K-POPなどへの投資やIP開発を行います。これらの取組みを通じ、コンテンツを世界規模で制作・販売していきます。海外企業との連携では、米国のブルームバーグ・メディアと戦略的パートナーシップを締結し、TBS CROSS DIG with Bloombergを立ち上げました。また、米国の大手ライブエンタテインメント企業であるJohn Gore Organizationと連携し、ブロードウェイ作品等への直接出資を実施しています。このほか、子会社である㈱スタイリングライフ・ホールディングスでは、英国ブランドであるCath Kidstonの独占輸入販売権とライセンスを取得し、日本再上陸の実店舗を表参道と京都にオープンしました。日本市場のみならず、アジア各国に向けてライフスタイル事業を拡充していきます。

 

コンテンツIPの強化においては、㈱THE SEVENをグローバル戦略スタジオと位置づけ、「今際の国のアリス シーズン3」「国民クイズ」などの制作を進めています。アニメ事業では「アオのハコ」「地縛少年花子くん2」などの作品に加え、2025年5月公開の「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」をはじめとしたアニメ映画の展開も進めています。グローバル展開が可能なヒット作品を継続的に生み出すべく、体制を構築します。また、TBS GAMESでは「バナナサンド」「SASUKE」などのテレビ番組と連携したアプリゲームをリリースしました。更に、TBSグループキャラクターとして「ワクティ」が誕生しました。世界中のワクワクが集まって誕生したキャラクターとして「ときめくとき」をお届けしていきます。

 

キャピタル・アロケーションについては、総額396億円の政策保有株式売却を進めました。更に自己株式の取得と配当により、総額169億円の株主還元を実施しました。今後も総還元性向を意識し、自己株式の取得を機動的に行っていきます。

<TBSグループキャラクター「ワクティ」>

0102010_008.png

 

 <TBSグループマテリアリティ>

 「TBSグループマテリアリティ」は2022年5月、当社グループの企業理念・ブランドプロミスをふまえ、VISION2030で掲げた拡張戦略「EDGE」を実現し、ESG経営を推進する上で取組みが不可欠な重要課題として公表したものです。

当社グループはコンテンツグループとしての企業価値の持続的向上と、持続可能な社会の実現に向けた取組みを一層強化・促進するため、2021年10月にサステナビリティ委員会を設置しました(委員長=代表取締役社長・副委員長=CSO(Chief Sustainability Officer)である取締役)。サステナビリティ委員会は傘下に「気候変動対策」「ウエルネス」「人的資本」「知的財産」の4つのワーキンググループを置き、当社グループのサステナビリティ推進体制のチェックや、新たな施策の検討・提案、さらに適正な開示のあり方などを検証しています。2023年11月には人権の諸課題への対応や人権デュー・ディリジェンスを実施する「人権小委員会」、さらにサステナビリティ施策をグループ会社全体で共有・推進するための「グループサステナビリティ連絡会議」を新たに設置しました。

2024年度の取組みの一つとして、2024年4月にコンテンツ制作関連事業者など152社に対して、人権デュー・ディリジェンスに関するアンケートを実施しました。アンケート結果を踏まえて、「コンテンツ制作における人権尊重のための指針」の策定と救済窓口の新設を行い、より健全な制作環境の構築を目指します。

また、当社はTBSテレビとともに「健康経営優良法人2025(大規模法人部門・ホワイト500)」に2年連続で認定されました。民放キー局では唯一の認定局です。公正で心身に安全な労働環境づくりを目指し、健康経営を推進する「ウエルネスワーキンググループ」の取組みにより、従業員の生産性向上指標のプレゼンティーイズムが前年度より8.2ポイント向上しました。今後も安全で働きがいがあり、創造性を発揮できる職場づくりを目指し、様々な施策に取り組んでいきます。

 

<TBSグループが取り組むべき最重要課題>

0102010_009.png

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、次のとおりであります。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

①ガバナンス

 当社グループはコンテンツグループとしての企業価値の持続的向上と、持続可能な社会の実現に向けた取組を一層強化・促進するため、2021年10月にサステナビリティ委員会を設置しました(委員長=代表取締役社長・副委員長=CSO(Chief Sustainability Officer)である取締役)。

 サステナビリティ委員会は傘下に「気候変動対策」「ウエルネス」「人的資本」「知的財産」の4つのワーキンググループを置き、当社グループのサステナビリティ推進体制のチェックや、新たな施策の検討・提案、さらに適正な開示のあり方などを検証しています。

 2023年11月には人権の諸課題への対応や人権デュー・ディリジェンスを実施する「人権小委員会」、さらにサステナビリティ施策をグループ会社全体で共有・推進するための「グループサステナビリティ連絡会議」を新たに設置しました。

 サステナビリティ委員会による調査・検証・施策提案は、常勤役員会、取締役会に随時報告・承認され、経営最高レベルの意思決定を経てグループ全体で共有されます。

 2023年7月には社長室SDGs企画部をサステナビリティ創造センターに格上げして機能強化し、SDGs達成に向けた継続的な取組とともに、ESG施策も強化する体制をととのえました。

 世界・地球レベルのサステナビリティを目指すSDGsに賛同し、実現のために「社会を動かす起点となる」べく、2020年より開催している毎年春・秋のSDGsウィークを中核として、「サステナビリティ先進コンテンツ

カンパニー」を目指し、パートナー企業各社との共創に継続的に取り組んでいます。

<資料・サステナビリティホームページ・推進体制について>

https://www.tbs.co.jp/TBS_sustainability/vision_goals/system.html

 

②リスク管理

 サステナビリティ委員会の4ワーキンググループでは、恒常的にグループのサステナビリティリスクを監視・識別・検証し取締役会に報告・提案している他、グループ内の全役職員がサステナビリティリスクを識別・対処・回避するための方針・ガイドラインとして、「TBSグループ贈収賄・腐敗防止方針」「TBSグループ健康宣言」(以上2023年2月)「TBSグループ人権方針」「TBSグループ水資源保全方針」「TBSグループサステナブル調達ガイドライン」(以上2023年3月)「TBSグループ環境方針」「TBSグループ知的財産基本方針」(以上2025年4月)を策定しております。

 2023年11月からは人権小委員会で人権デュー・ディリジェンスに着手し、まずは2022年度の取引高上位社を中心としたコンテンツ制作パートナー152社を対象にアンケートを実施(回答率86.8%)しました。その結果、企画・編成から制作、放送・配信に至るまでの過程の中で①長時間労働・労働環境リスク②ハラスメントなど6つの代表的な人権リスクが存在することが確認できました。こうした結果をふまえ、コンテンツ制作過程のリスクに対応するため「TBSグループ コンテンツ制作における人権尊重のための指針」を策定しパートナーの皆様と共有するとともに、人権リスクが現実化した場合に備えて新たに外部の救済窓口(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構 JaCER)を設置いたしました。今後も、対処すべき課題についての対応策を講じ、取引先を含むコンテンツ制作過程全体での人権リスクの予防、軽減に一層努めてまいります。

 

(2) 重要な戦略並びに指標及び目標

①戦略

 当社は2021年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同、2022年8月に初めてとなる報告書『TCFD提言に沿った情報開示2022』を公表し、気候変動が事業に与えるリスク・機会の両面について1.5℃/4℃の2つのシナリオで分析し、その結果をまとめました。

<TCFD提言に沿った情報開示2022>

https://www.tbs.co.jp/TBS_sustainability/pdf/tcfd2022.pdf

 コンテンツグループという当社の事業特性から導き出されるリスク・機会は2つのシナリオでほぼ共通しており、移行リスクについては「脱炭素規制の導入・強化」「環境対応外圧の強化・レピュテーションリスク」、物理リスクとしては「気象災害に伴う放送内容の変更」「BCP導入・強化政策の展開」を挙げています。

 また、ライフスタイル事業については、気候変動にコンシャスな消費者が増えることにより、製造過程などでGHGを多く排出する商品が忌避され、対策をしていないと売上高が低下する、熱波により外出を控える消費者が増えることで、店舗での売上高が低下する一方、そうした市場がECなどに移行する可能性も想定しています。不動産・その他事業については、保有不動産のカーボンフリー化や水調達・効率的使用についてコストが上昇することが想定されます。

 人権については、デュー・ディリジェンスの実施を通じて、自社だけでなく、取引先、パートナーの皆様とともに健全でサステナブルな環境を構築することを目指しています。またこうした重要性が高く、影響の大きい分野から優先して取組を進めることで、当社グループ全体においても人権尊重意識の徹底と理解の浸透を図ってまいります。

 一方で、機会については、1.5℃シナリオでは「環境対応啓発キャンペーンニーズの拡大」「省エネ技術の進化」「再エネ調達コストの低下」「素材・機材の再活用技術の進化」、4℃シナリオでは「気象災害対策にかかる情報ニーズの増加」「報道機能のレジリエンス強化要請の拡大」と特定しています。

 

②指標及び目標

 シナリオ分析及びリスク・機会の特定から導き出された当社の指標と目標については、まず短期的な目標として、当社グループの主な事業拠点である「TBS放送センター」「赤坂サカス文化施設」「緑山スタジオ」で2023年度にカーボンニュートラル(Scope1及び2)を実現することを掲げ、省エネルギーを基礎に、再生エネルギーの積極活用に加え、証書購入といった取組で達成いたしました。

 2023年度にはグループ全社のScope1及び2排出量を算出しておりますが、さらに2024年度には、当社に加えて㈱TBSテレビ、㈱BS-TBS、㈱TBSラジオ、㈱TBSスパークル、㈱TBSグロウディア、㈱TBSアクトの基幹6社にて、Scope3の排出量算出も行いました。

 さらなる排出削減の可能性について現状把握を進め、当社グループの中長期的な削減目標やカーボンニュートラルの目標設定などを進めていく計画です。

 また、人権については、2023年3月に「TBSグループ人権方針」を策定し、検討を重ねてまいりました。2024年度から実施したデュー・ディリジェンスを今後も継続することで、当社だけでなく取引先も含めたコンテンツ制作過程において生じる人権リスクについて、特定・防止・軽減する仕組みづくりを進めてまいります。

 実際に人権リスクが現実化してしまった場合に備えて、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく外部の救済窓口(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構)も活用し、実効性の高い救済メカニズムを運用しております。

 

 

(3) 人的資本(人材の多様性を含む)に関する戦略並びに指標

 ①人的資本経営理念

 当社グループの企業価値向上の源泉はコンテンツ創造であり、クリエイター育成に重きを置く人的資本経営がキーサクセスファクターだと考え、以下の理念を定めます。

『多彩なクリエイティビティと高い専門性を持ち、刻々と変化する社会環境・事業環境に適応できる自立した「個人」を育成します。合わせて、自由な社風の下で多様な価値観を認め合いチームとして創造性を最大限に発揮できる「組織」をつくります。そして、共に働く全ての仲間が幸せを感じる「環境」を整えます。』

 当社グループはこの人的資本経営を通じて企業価値向上を図ります。

 

②方針、施策とKPI

人材育成方針

0102010_010.png

 

社内環境整備方針

0102010_011.png

 

 

 

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクについて、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している事項は、以下のとおりであります。必ずしも事業のリスクに該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、情報開示の観点から開示しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

なお、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅したものではありませんのでご留意ください。

 

<メディア・コンテンツ事業に関するリスク>

(1)地上波テレビ広告収入への依存と国内景気変動について

当社グループ売上高の大きな割合を占める地上波テレビ収入は、広告主である企業の業績やその購買者である消費者心理と強く連動しています。当連結会計年度は、夏以降、価格引上げが一巡し、業績好調となった業種が増加したことや、コロナ以降低調となっていた一部の業種でも広告出稿が活発となったことを受け、地上波テレビへの広告出稿は活況となりました。

広告主である企業が、広告費を固定費(半期を契約期間とするタイムセールス)から変動費(タイム単発・スポットセールス)へシフトさせようとする潮流は依然として続いております。当社グループは、クライアントのニーズにあったセールスをすべく、半期を契約期間とする従来の手法にとらわれない、柔軟なタイムセールスを推進しております。加えて、人件費や電気代・燃料費などの高騰を受けて、いち早く価格転嫁、適正価格でのセールスにも取り組んでおります。そのような取組もあり、当連結会計年度はネットタイムセールスのレギュラーベースはプラス改定となっており、スポットセールスにおいても前年度を大きく上回る売上高となりました。今後も、クライアントのニーズにそったタイム・スポット枠の柔軟な運用など、売上高を最大化する取組を継続してまいります。

当社グループは、引き続き、従来のセールス手法の枠を超えて、新しい取組を積極的に展開し、売上高の拡大を目指してまいりますが、地政学リスクや国際経済の不安定化、資源価格の高騰、各国中央銀行の金融政策の動向により、今後の経済動向が悪化し、広告市場、なかでも地上波テレビ広告市場が大幅に縮小した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループにおいて、視聴者や広告主、広く社会からレピュテーションリスクが発生した場合にも、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)メディア間の競争及びコンテンツの獲得について

テレビを中心とした映像・音声の伝送メディアは、従来型の放送、すなわち地上波、衛星(BS及びCS)、ケーブルテレビに加えてインターネット上の配信サービスの普及が進展するなど多様化し、メディア間の競争も本格化しております。こうした中で、当社グループは持続的な成長を促進するべく「VISION2030」・「中計2026」を策定し、競争力の強化に努めておりますが、更なる可処分時間の奪い合いが激しくなることが予想されます。

当社グループでは、無料見逃し配信サービスとして「TBS FREE」、民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」を利用した動画配信を提供しています。有料動画配信サービスについては、2023年4月に㈱プレミアム・プラットフォーム・ジャパンと経営統合した㈱U-NEXTとの協業を主軸に展開しております。2023年7月には㈱プレミアム・プラットフォーム・ジャパンが運営していた「Paravi」と「U-NEXT」はUI/UXも統合され、2025年2月現在で会員数は466万を超え、国内勢プラットフォームとして圧倒的な首位を走っております。当連結会計年度は、海外プラットフォームにおいても存在感を示すため「Netflix」や「Disney+」へのコンテンツ提供を継続し、配信事業全体で大幅な増収となりました。今後もコンテンツ供給を促進し、2022年4月にスタートしたリアルタイム配信も合わせて収益の裾野を持続的に拡げてまいります。

また、スポーツコンテンツについては、放送権料が高騰する傾向にあり、優良なコンテンツの獲得をめぐるメディア間の獲得競争も激化しております。

配信プラットフォームの急速な多様化を受けて、コンテンツ需要が高まるとともに、コンテンツへの投資速度は上がっております。当社グループは一層強いコンテンツを生み出し、最適なウインドウコントロールを行うことで利益を最大化し、リスクを回避してまいりますが、グローバルプラットフォームを有する有料配信事業者等が新たに広告型のサービスを展開するなど、今後、競争環境が激化し、事業が計画通りに伸長しない場合など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)映画、アニメ、イベント事業について

当社グループは、アニメや映画の企画制作や出資だけでなく、劇場(TBS赤坂ACTシアター)を所有し、演劇やテレビ番組派生イベントなどの企画制作や出資も積極的に行っております。これらの企画制作及び出資は、収支のシミュレーションを十分に行ったうえで実施しております。一方、新規参入業者の増加による競争の激化や制作費・人件費の高騰も顕著で、特にアニメ業界では人材不足が深刻化している状況です。数年かけて企画・制作を進める案件も多く、予期せぬ社会状況の変化で事業収入が計画を下回る場合もあり、出資に見合う回収が出来ずに、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)著作権等の知的財産権について

当社グループの制作するテレビ番組等のコンテンツは、原作者、脚本家、音楽の作詞・作曲家、レコード製作者、実演家等、多くの著作権者等の方々の知的創作活動の成果として著作権や著作隣接権が密接に組み合わされた創作物であります。当社グループはコンテンツを地上波放送以外にも、BS・CS等の衛星放送をはじめ、配信やパッケージなどにマルチユース展開しております。この際には、様々な著作権者等の権利に十分配慮しながら展開しておりますが、権利者からの使用許諾が得られなかった場合や、万一、著作権者等に対して不適切な対応を取った場合には、放送の差し止めや損害賠償請求等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)設備投資について

当社グループの放送事業・配信事業を支える基幹設備につきまして、従来の特定用途に限定される専用の機器から汎用装置へ転換を進めています。これはコストの低廉化が見込める一方で、基幹となる機器のライフサイクルの短期化及びソフトウェア開発を基軸とした機能確保を必要としています。このため、ハードディスク等の記憶媒体の破損による重要なデータの喪失、あるいは開発したソフトウェアの予期せぬ障害による業務の中断等の可能性があります。

また、規模が大きいソフトウェアの開発は精緻な仕様の確定が必要となり、開発コストの予期せぬ増大につながるリスクが想定されます。さらに、重要かつ不可欠なシステムの開発が大幅に遅延すること、場合によっては中止することで、事業継続にも影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)テクノロジー、システム、セキュリティについて

当社グループは、地上波及び衛星放送事業における基幹システムの更新・改修に加え、動画配信事業推進のために対応する最新技術の導入を行っています。また、コンテンツの価値の向上に寄与する高度なCG合成技術や第5世代移動通信システムなど、次世代技術分野の開発や新規投資も行っています。

一方、近年の技術革新のスピードや消費者ニーズの変化はとても速く、開発・投資した技術やシステムが当初の予想を超えて陳腐化することにより、計画値以上の再投資が必要になる場合や、投資額に見合った増収あるいは業務の効率化が見込めない場合には、固定資産の減損及び減価償却費の増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大期を経て、在宅勤務などテレワークが一般的となり、これまでオンプレミスで社内限りのアクセスであったシステムにも外部から接続する必要性が生じ、各業務システムのインターネット接続やクラウド化が進んでいます。

昨年度、SASE(Secure Access Service Edge)というネットワークセキュリティモデルの考え方に基づき、ゼロトラスト基盤を導入しました。情報の場所や働き方に捉われず、全ての通信を検査し、安全なリモートアクセスが可能となっています。

このような変化に適切に対応するため、当社はチーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO)を設置する予定であり、当社グループとしては専門のインシデント対応チーム(TBS-CSIRT)を強化し、様々なセキュリティ対策を講じています。当事業年度は、基幹ネットワーク及び放送ネットワークの監視を行うNDR(Network Detection and Response)の導入やクラウド基盤の設定ミス及び脆弱性検知を行うCSPM(Cloud Security Posture Management)の導入を進めました。さらに、専門的な知見を持つ人材をキャリア採用し、セキュリティ担当者を増員する等、体制の強化も行っております。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)主催の分野横断演習にも参加し、有事の際の情報連携方法や体制など、様々な課題を発見し改善を実施しております。

しかしながら、近年はサイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化していることから、各種システムのセキュリティリスクは年々高まっています。ランサムウェアや最先端の技術による想定を超えるような新たなセキュリティ上の脅威が発覚し、対策として多額の投資が必要になるケースや、個人情報の漏洩などで多額の補償金が発生するケースなど、万一の事態に備え、サイバーセキュリティ保険加入などの対応を取っているものの、規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

<ライフスタイル事業に関するリスク>

(7)消費者のライフスタイルの変化とコスト構造について

当社グループは、化粧品、雑貨小物、衣料品、食料品など、生活に密着した商品を調達から販売まで一貫して行うことで、消費者に豊かな生活を届けるビジネスを展開しております。景気停滞や原材料価格の高騰などのマクロ経済環境の変化に加え、消費者需要の変化、購買行動のオンライン化や商業施設の集客力低下、異常気象及び季節性による需要の偏りといった要因により滞留在庫が発生する可能性があることなどから収益機会を逃し当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらに加え、人材の確保、固定資産の減損、店舗閉鎖損失、為替変動、法規制、情報漏洩、自然災害、設備投資などのリスクを有しております。

 

(8)知育・教育を取り巻く環境の変化とレピュテーションリスクについて

当社グループは、全国に展開する様々な教育ブランドの教室や園を運営しております。

長期的な出生率の低下に伴う少子化は、生徒数確保の競争激化、また、小学校、中学校、高等学校、大学をはじめとする各種学校の学制、休暇時期、年度の変更は各講習・生徒募集時期のズレにつながる可能性があります。さらに、当社グループは、国籍、性別、年齢等において多様な人材確保に努めておりますが、労働人口の減少は人材の確保が困難となり、競合他社との競争が激化する可能性があります。

また、食中毒・誤飲・アレルギーなどの事故、従業員による不正・不祥事などが発生することで、企業の信頼性・イメージが低下し、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)フランチャイズ契約について

当社グループは、ライフスタイル事業の一部で、フランチャイズシステムを採用し、フランチャイズ加盟店オーナーとの間で締結するフランチャイズ契約に基づいて、当社グループが保有するブランド名にてチェーン展開を行っております。当社グループは、フランチャイズ加盟者への経営指導等を適切に行い、集客・生徒数増加、店舗・教室数等の増加を目指しておりますが、加盟店における不祥事等によりブランドイメージが影響を受ける可能性があります。

また、フランチャイズシステムは、契約当事者の双方向の信頼関係により業績が向上するシステムであるため、信頼関係の毀損、加盟店の収益性悪化などの理由から、多くの加盟店とのフランチャイズ契約が解消される事態に至った場合は、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

<不動産・その他事業に関するリスク>

(10)賃貸等不動産市況について

当社グループは港区赤坂を中心に不動産開発を行い、賃貸等不動産を保有しております。新型コロナウイルスの影響は緩和されましたが、一定の割合で定着したテレワークなどの勤務形態や、都心部でのオフィスビルディング新築物件の増加によって、オフィステナント需要の変化が続く見込みです。加えて、不動産開発関連工事においては、資材調達費や人件費の高騰が長期化、また既存不動産ビル運営における燃料費等の上昇により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

<その他の事業リスク>

(11)人材の確保について

当社グループの企業価値向上の源泉はコンテンツ創造です。そして、生み出したコンテンツを無限に拡げていくために、「VISION2030」において掲げたコンテンツ拡張戦略「EDGE」の推進を加速させており、放送事業を土台としつつ、新ビジネス領域の拡大に注力しています。

その基礎となるのは「人」であり、2022年度に制定した人的資本経営の体系においても、大きな柱となる「人材育成方針」として「社会への貢献と、世界で愛されるコンテンツIP開発やクリエイティブ強化を担う人材の育成」「EDGE戦略を実行するためのビジネス系人材の育成」などを掲げ、優秀な人材の育成と獲得に邁進しています。

しかし、支配的なプラットフォームはグローバルに刻々と移り変わり、コンテンツの受け手の嗜好も多様化するなど、コンテンツ業界を取り巻く環境は急速に変化し続けています。こうした状況のもと、クリエイターは言うに及ばず、グローバルビジネス、事業投資、テクノロジー、知育・教育のスペシャリストなど、当社グループの今後の成長に必須である人材の獲得競争は激しさを増しています。また、その結果として、当社グループから優秀な人材、蓄積されたスキルやノウハウが流出してしまう懸念も高まっています。

当社グループとしましては、人的資本経営体系の大きな柱として、前述した「人材育成方針」とともに「社内環境整備方針」を定め、従業員の成長をサポートするとともに多様な働き方を推進してまいります。こうした施策により、共に働く全ての仲間が幸せを感じる環境を整えることで、人材の定着率を高めるとともに、適切な人材の確保に努めてまいります。しかし、今後さらなる人材獲得競争の激化などに直面した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)投資有価証券の時価評価について

当連結会計年度の純資産の部におけるその他有価証券評価差額金は、時価の変動などにより、前連結会計年度より約2,315億円減少いたしました。投資有価証券の時価評価額の増減はキャッシュ・フローに直接影響するものではありませんが、その増減に大きな変動があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態を示す指標に影響を及ぼす可能性があります。

また、M&Aやスタートアップ企業への投資など、保有しているものの市場価格のない株式等は連結会計年度末に適切な評価を行っておりますが、投資企業の業績悪化や伸長が計画通りに進まない場合には、評価損の処理などによって当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)個人情報等の取り扱いについて

当社グループは、番組の出演者、観覧者、雑貨販売業者、通信販売事業、知育・教育事業、インターネット上の会員サービスなどにおいて個人情報を保有し、その他各種データを含めて、社内のデータベースや外部のクラウドサービスを利用して保管しております。これらの個人情報を当社グループ一体として管理すべく、2022年4月の改正個人情報保護法の施行に合わせて当社に個人情報管理事務局を設置しました。2024年7月に、当社公式サイト内へ「TBSプライバシーセンター」を開設し、当社グループにおける個人情報等の取得・管理・利用方針の平易な説明を掲載して、その周知に努めております。このように、個人情報等の取り扱いにつきましては、十分な注意を払い、また、高度なセキュリティ対策を講じておりますが、昨今のサイバー攻撃は高度化・巧妙化しております。個人情報の漏洩や不正アクセス、不正利用、ランサムウェアによる情報漏洩・システム破壊などの事態が発生した場合は、当社グループに対する信頼性の低下や損害賠償の責任により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)法的規制の影響について

当社は、放送法が定める認定放送持株会社として放送法並びに関係の法令に規制されております。また、当社グループの主たる事業であるテレビ放送事業は、放送法、電波法等の法令に規制されております。放送法は放送の健全な発展を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議会の設置などを定めています。また、電波法は、電波の公平かつ能率的な利用を確保し、公共の福祉を増進することを目的とし、無線局の免許制度を定め、放送局の免許の有効期間も定めています。当社グループの地上波テレビ放送については、1955年1月に免許を受けて以来、同法による免許の有効期間である5年毎に免許の更新を続け、その後、2009年4月1日に認定放送持株会社化した当社に代わって、子会社である㈱TBSテレビが同日免許を承継して現在に至っております。地上波ラジオ放送の免許については、1951年12月に免許を受けて以来同様に更新を続け、2001年10月に子会社である㈱TBSラジオ&コミュニケーションズ(現㈱TBSラジオ)がこれを承継して現在に至っております。また、㈱BS-TBS、㈱CS-TBSは衛星基幹放送の業務の認定を受けて現在に至っております。

従前、地上波テレビ局及び地上波ラジオ局は、放送対象地域ごとに異なる放送番組を放送しなければならず、経営状態の悪化など特別な条件を満たす場合でなければ放送番組の同一化は認められていませんでしたが、2024年4月1日に施行された改正放送法により、経営状態を問わず、総務大臣の認定を受けることにより、複数の放送対象地域において放送番組を同一化できる内容に改定されました。当該放送法改正は放送局の経営形態の合理化を意図するもので、複数の放送局間における資本関係の強化、経営統合等が実現することで、系列局の再編に発展する可能性があります。

いずれの会社も、放送法、電波法等の法令による規制等に将来重大な変更があった場合や、それら法令に抵触する決定を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。なお、放送法に定める外国人等が直接間接に占める議決権の割合が当社の議決権の5分の1以上を占めることとなるときは、放送法の規定に従い、外国人等が取得した当社株式について、株主名簿に記載または記録することを拒むことができるとされております。また、放送法及び放送法施行規則の規定により、一の者が有し、または有するものとみなされる当社株式の保有割合の合計が、当社総株主の議決権に占める割合の33%を超えることとなるときは、当該超過部分の議決権を有しないとされております。

その他、当社グループは、放送関連及び放送外の不動産賃貸事業、雑貨販売事業、通信販売事業、ビューティ&ウェルネス事業、知育・教育事業等を含む多様な企業群からなり、それぞれ、大規模小売店舗立地法、薬機法、特定商取引法、個人情報保護法などの関係法令や、表示、品質に関する基準、環境に関する基準、会計基準や税法など、事業ごとにさまざまな法規制を受けております。当社グループではコンプライアンス(法令等遵守)と倫理的行動に万全を期しておりますが、法制度の改廃などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 感染症の大規模な流行などの影響について

当社グループは感染症の影響について、事業遂行上の大きなリスクとして認識しております。流行の局面では感染防止策の徹底など、その影響を最小限にとどめるよう取組む方針ですが、予想以上に感染症の影響が長期化または更に拡大した場合、クライアントの広告宣伝費の抑制、劇場興行やイベントの中止・縮小、店舗の休業や営業時間の短縮、人流抑制による来店客の減少等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)気候変動・災害等の影響について

放送事業者は放送法(第108条)により、災害が発生、またはそのおそれがある場合には、その発生の予防または被害軽減のための放送を行うことが義務付けられております。気候変動の影響が懸念される大規模な災害の発生時には、緊急に報道特別番組を放送することにより、事前に予定されているCM放送の休止などで収入が減少することがあります。それ以外にも、自然災害や大規模災害等が発生した場合には、景気動向と連動した広告収入の中長期的な減少、放送設備等の被災による放送運行への影響などにより十分な収入が得られず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における我が国の経済は、緩やかな回復が続きました。個人消費や企業収益は改善、設備投資は持ち直しの動きがみられます。ただし、物価上昇による消費者マインドの下振れや、アメリカの通商政策の影響による景気の下振れに、注意が必要な状況となりました。

このような状況の下、当連結会計年度における当社グループの連結売上高は、㈱TBSテレビの広告収入の増収や配信広告収入の伸長、好調なスタイリングライフグループに加え、やる気スイッチグループを2023年6月に連結したこと等により、4,067億円(前年比3.1%増)となりました。

売上原価と販売費及び一般管理費を合わせた営業費用は、代理店手数料の増加や、やる気スイッチグループの連結等により、3,872億3千5百万円(前年比2.1%増)となりました。

この結果、営業利益は194億6千5百万円(前年比28.3%増)となりました。経常利益は316億4百万円(同14.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は439億1千4百万円(同15.2%増)となりました。

 

◇メディア・コンテンツ事業セグメント

メディア・コンテンツ事業セグメントの当連結会計年度の売上高は2,962億4千2百万円(前年比2.9%増)、営業利益は、84億9千万円(同116.2%増)となりました。

㈱TBSテレビのテレビ部門の当連結会計年度の売上高につきましては、放送収入が前年を上回ったこと、配信広告収入が引き続き好調なことに加え、メディア事業を2023年7月に事業部門から移管したこと等により、109億5百万円増収の2,120億3千4百万円(前年比5.4%増)となりました。このうち、タイム収入は、レギュラーセールスは好調でしたが、単発セールスの前年との規模差により減収となり、812億6千4百万円(同0.4%減)となりました。一方、スポット収入は、市況の改善やシェアの伸長等もあり、前期比45億7千8百万円増収となる823億5千5百万円(同5.9%増)となりました。配信広告収入は、引き続きTVerを中心に好調で、120億4千8百万円(同46.2%増)となりました。また、海外配信を含めた有料配信収入は、配信作品の拡充等により伸長しているものの、前連結会計年度において、大きく売上に貢献した「風雲!たけし城」や「離婚しようよ」等の反動により112億1千4百万円(同7.7%減)となりました。その他収入は、メディア事業を事業部門から移管したこと等により、251億5千万円(同17.7%増)となりました。

㈱TBSテレビの事業部門の当連結会計年度の売上高は、23億1千4百万円減収の166億9百万円(前年比12.2%減)となりました。映画は、「ラストマイル」や「グランメゾン・パリ」等が大ヒット、アニメは「五等分の花嫁」等の二次利用が好調で増収の一方、メディア事業をテレビ部門へ移管したこと等により、部門全体で減収となりました。

㈱TBSラジオは、タイム収入が堅調に推移する中、イベント収入が増加したこと等により、2億1千2百万円増収の83億5千万円(前年比2.6%増)となりました。

㈱BS-TBSは、スポット収入及びショッピングが伸長したものの、タイム収入の減少により、1億2千3百万円減収の169億8千5百万円(前年比0.7%減)となりました。

㈱TBSグロウディアは、ショッピング収入の伸長等により、4億6千6百万円増収の306億6千万円(前年比1.5%増)となりました。

㈱日音は、邦楽・洋楽収入の減少等により、8千万円減収の91億9千1百万円(前年比0.9%減)となりました。

TCエンタテインメント㈱は、前年好調であったDVD販売の反動減等により、34億8千2百万円減収の58億9千万円(前年比37.2%減)となりました。

この結果、同セグメントにおける営業利益は45億6千3百万円増益となる84億9千万円(前年比116.2%増)となりました。

 

◇ライフスタイル事業セグメント

ライフスタイル事業セグメントの当連結会計年度の売上高は、935億7千6百万円(前年比4.1%増)、営業利益は35億5百万円(同16.1%減)の増収減益となりました。

スタイリングライフグループでは、中核の雑貨小売販売事業の「プラザスタイルカンパニー」は、化粧品に加え、気温上昇に対応した暑さ対策商材及びキャラクター商材が伸長したこと等により、増収増益となりました。

ビューティ&ウェルネス事業は、化粧品の開発・製造・販売を行っている「BCLカンパニー」の主力の「サボリーノ」や、新規ブランドの「乾燥さん」が伸長したこと等により、増収増益となりました。なお、2024年5月に㈱ライトアップショッピングクラブの全株式を譲渡し、同社を連結範囲から除外した結果、スタイリングライフグループ全体で減収増益となりました。

やる気スイッチグループは、個別指導塾事業及び幼児教育他事業を展開しており、2023年6月に連結したこと等によりセグメントの売上高は増加となりましたが、人件費及び広告宣伝費の増加やのれん償却費等により、営業利益は減少となりました。

 

◇不動産・その他事業セグメント

不動産・その他事業セグメントの当連結会計年度の売上高は、賃料収入の増加等により3億2千9百万円増収の168億8千1百万円(前年比2.0%増)、営業利益74億6千8百万円(同5.7%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は745億7千7百万円で、前連結会計年度末に比べて308億7千8百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、232億8千3百万円の収入になりました(前年同期は265億3千5百万円の収入)。主な増額要因は、税金等調整前当期純利益697億5百万円、減価償却費148億3千2百万円等、一方、主な減額要因は、投資有価証券売却損益375億6千3百万円、法人税等の支払額189億2百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、136億4千5百万円の収入となりました(前年同期は295億5千6百万円の支出)。主な内訳は、投資有価証券の売却による収入397億8千4百万円、有形固定資産の取得による支出235億6千5百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、61億6百万円の支出となりました(前年同期は510億1千2百万円の支出)。主な内訳は、長期借入れによる収入107億6千4百万円、自己株式の取得による支出97億1千2百万円、配当金の支払額80億9千8百万円等であります。

 

③ 販売の実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

メディア・コンテンツ事業

296,242

2.9

ライフスタイル事業

93,576

4.1

不動産・その他事業

16,881

2.0

合計

406,700

3.1

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱電通

90,083

22.8

92,278

22.7

㈱博報堂DYメディアパートナーズ

50,801

12.9

53,513

13.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高及び営業利益

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」にて記載したとおりです。

 

b.経常利益

営業外収益は136億5千6百万円で、1千5百万円の増加となりました。受取配当金が10億5千6百万円増加したことが主な要因です。

営業外費用は15億1千7百万円で、3億5千4百万円の増加となりました。支払手数料が1億9千5百万円増加したことが主な要因です。

この結果、当連結会計年度における経常利益は316億4百万円で、39億5千1百万円、14.3%の増益となりました。

 

c.親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益は401億8千6百万円で、52億7千4百万円の増加となりました。投資有価証券売却益376億5千4百万円等を計上しました。

特別損失は20億8千5百万円で、27億5千8百万円の減少となりました。固定資産撤去費用8億1千3百万円等を計上しました。

この結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は439億1千4百万円で、57億8千8百万円、15.2%の増益となりました。

 

② 財政状態に関する分析

当連結会計年度末における資産合計は1兆2,961億2千5百万円で、前連結会計年度末に比べて2,713億7千9百万円の減少となりました。保有する株式の含み益の減少等により投資有価証券が3,268億3千万円減少したこと等によります。

負債合計は3,468億9千2百万円で、前連結会計年度末に比べて706億6千5百万円の減少となりました。保有する株式の含み益の減少等に伴い繰延税金負債が954億5千4百万円減少したこと等によります。

純資産合計は9,492億3千2百万円で、前連結会計年度末に比べて2,007億1千4百万円の減少となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の計上や配当金の支払いにより、利益剰余金が差し引き358億7百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が2,315億3千5百万円減少したこと等によります。

この結果、自己資本比率は72.2%、1株当たりの純資産は5,847円77銭となっております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」にて記載したとおりです。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローは前年を32億5千2百万円下回りました。投資有価証券の売却による収入397億8千4百万円等を計上した等により、手元資金は308億7千8百万円増加しました。設備投資や戦略的投資は、手元資金と通年の営業キャッシュ・フローに加え、政策保有株式の売却、負債調達等で賄う見込みです。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。なお、この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

5【重要な契約等】

(1)建物賃貸借契約

契約会社名

相手方の名称

契約締結年月

契約内容

株式会社TBS
ホールディングス
(当社)

三井不動産株式会社

2008年1月

赤坂サカスにおける業務棟の一括賃貸借、テナントへの転貸借及び運営管理業務一切

 

(2)事業協定

契約会社名

相手方の名称

契約締結年月

契約内容

株式会社TBS
ホールディングス
(当社)

三菱地所株式会社

2019年1月

東京都港区赤坂所在の国際新赤坂ビル及び隣接する建物の将来的な建替えに向けた事業協定

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、公共の電波を用いて国民に高品位で多様なサービスを提供するとともに次世代のデジタル放送の実用化に貢献すべく、新しい番組制作、伝送、放送技術等の研究開発を行っております。

報告セグメント別の研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

メディア・コンテンツ事業

主な研究開発活動は、①シルキーミストスクリーン装置の開発②映像内容テキストを自動生成するアプリの開発③プリビズツールの開発を行いました。①は霧状にした水でスタジオ上にスクリーンを生成するものです。すでに音楽番組等で使用し、従来のスモークでは出来なかった数々の効果を得ています。②は画像自体をAI解析することで、映像素材の内容を記述したデータを自動生成するアプリケーションです。番組制作を効率化できます。③はドラマ制作時に実際の撮影前に完成時の映像イメージを可視化するツールです。演出力の向上、セット制作や撮影の効率化が得られます。「ときめくときを。」届けるコンテンツの制作に活かす開発を複数進めています。

研究開発費の金額は、17百万円であります。

 

ライフスタイル事業

現代女性のための理想的なスキンケアの研究に取り組んでおり、消費者ニーズ、市場性等と他社との差異化の観点から製品コンセプトを企画し、企画された製品コンセプトをもとに製品開発を行っております。基礎研究においては主に新規原料の開発等を行っております。また、先端的な研究を効率的に応用できるように外部研究機関との共同研究も行っております。

研究開発費の金額は163百万円であります。

 

不動産・その他事業

特に研究開発活動は行っておりません。