第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

Ⅰ.事業別戦略

当社の事業領域は、放送、コンテンツ、ライフスタイルの3つの領域に分かれています。各事業の役割を明確化することで、大きく変化する事業環境の中で、グループのコンテンツ、サービスの価値を最大化し、「総合コンテンツ事業グループ」として成長を続けることを目指します。

 

1.放送事業

朝日放送テレビ・朝日放送ラジオ・スカイA(CS放送)からなる放送事業では、主力のテレビ広告市場において先行きの不透明感から、広告主が固定費を見直す傾向が続いていましたが、2024年度は、コロナ禍からの回復でサプライチェーンが正常化したことや、円安の影響などでインバウンド需要が増加して企業収益の回復、消費者の購買意欲が高まったことなどで、3年ぶりに増加に転じました。これに加えて、当社としても、朝日放送テレビが個人全体視聴率で12年ぶりの4冠(全日、ゴールデン、プライム、プライム2)を達成し、高い視聴率を背景に放送事業の業績回復が顕著でした。2025年度も、引き続き放送の信頼性をさらに向上させ、安全・安心な社会に貢献することで当社グループの存在意義を示すと同時に、当社グループの強みである企画・提案力を強化していくことで収益力の維持、向上を目指します。また、一人でも多くのユーザー・視聴者・リスナー・生活者にコンテンツを届けられるよう、TVerやradikoへの配信等、新しい時代に沿った事業展開の強化も進めております。

 

2.コンテンツ事業

成長のキードライバーであるコンテンツ事業では、実写コンテンツ分野において、ドラマ・バラエティ・ドキュメンタリーの3つを軸に成長を図っております。順調に成長を続けているアニメについては、アニメ周辺事業や海外展開を拡充・強化しております。さらに、グループ会社が連携し、ドラマやアニメ等に連動したイベント、音楽分野にも注力しております。

コロナ禍で急速に進んだオンライン化で、動画配信サービス市場が急速に伸び、コンテンツプロバイダーの競争が激化していますが、同時に、質の高いエンターテインメント系コンテンツのニーズも高まっています。海外コンテンツ市場も活況で、特に、家庭用ゲーム、アニメ等を中心に日本のコンテンツの海外展開は増加傾向にあります。質の高いコンテンツを、多様な手法で視聴者・リスナー・消費者に届ける総合コンテンツ事業グループとして、海外展開の強化・ラインナップの拡充等により、さらなる成長を目指します。

 

3.ライフスタイル事業

ライフスタイル事業の売上高の7割を占めるハウジング事業は、人口減少やライフスタイルの多様化など、様々な課題に直面しております。そうした中、当社は、業界のパイオニアとして、トップクラスのシェアをもつという優位性を活かしながら、単に住宅を展示する場から、顧客に寄り添いライフスタイルを提案する場に進化させていく戦略をとっております。今後も、放送やコンテンツの力も活用しながら、リアルなコミュニケーションや体験の場をより一層、幅広く提供し住まいや暮らしに関する様々な情報を発信する「複合ライフスタイル情報発信拠点」として発展・進化させていきます。

通販事業においてはEC市場の拡大と消費者ニーズの多様化と細分化が進んでいます。同時に市場競争は激しさを増しており、インターネットを通じて、様々な情報があふれています。安全・安心な商品を届け、生活者の豊かな生活に貢献していきます。今後も市場成長が予想されるEC事業を強化し、進化させていきます。

 

Ⅱ.業績の推移と2026年3月期予想

2024年度の業績は、連結売上高は919億2千3百万円となり、4年連続の増収となりました。営業利益は25億9千1百万円、経常利益は25億6百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は25億2百万円となり、前年同期比ですべての利益が大幅な増益となりました。2026年3月期も連結売上高は925億円、営業利益・経常利益はともに27億円、親会社株主に帰属する当期純利益は31億円と、増収増益を見込んでいます。

 


 

Ⅲ.人権に関する取り組みの強化

当社グループは、2024年4月に朝日放送グループ人権方針を制定しました。本方針に基づき、人権に関して2026年度までのロードマップを策定し、取り組みを実施しております。

 

1.人権デュー・ディリジェンスの実施

2024年度は、当社の人権リスクの特定と評価に着手し、当社および朝日放送テレビ株式会社の役員・従業員を対象にアンケートを実施しました。2025年度は当社グループ全体をリスクの特定の対象範囲として広げてまいります。

 

2.社内啓発・教育

2025年度は、各種ガイドラインを策定し周知するほか、当社グループで毎年実施しているコンプライアンス研修において、人権に関する内容を強化し、意識の徹底と理解の浸透を図ります。

 

3.人権相談窓口の設置

従来の内部通報窓口に加え、ステークホルダーの皆様からの人権に関する通報に対応するため、新たに人権相談窓口をウェブ上に設置しました。(https://corp.asahi.co.jp/ja/company/rule/human-rights.html)

 

当社グループは、マテリアリティ(重要課題)に「人権を尊重しすべての人々が幸福に生きる社会をめざす」を掲げており、人権デュー・ディリジェンスなど今後も取り組みを進めてまいります。

 


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 朝日放送グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 


 

 当社グループは、2021年の取締役会で決議した「朝日放送グループ サステナビリティ方針」に基づいて、グループのサステナビリティを進めています。この方針は、持続可能な社会実現のための私たちの姿勢と決意を表明したものです。「朝日放送グループは、変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として社会の発展に寄与する。」との経営理念に沿って、今後もより一層、サステナビリティ(持続可能性)をめぐる諸課題へ対応するとともに、社会および当社グループの事業活動の持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けて、グループ全体で戦略的に推進していく基本的考えを定めました。その前提として、私たちのサステナビリティは、「メディアとしての使命と責務」を果たすことを約束しています。当社グループは現在、メディアを中心としたグループとして、多岐にわたる事業を行っています。まず、深刻化、複雑化する「地球環境」や「わたしたち、人」、そして「地域社会」などに関するあらゆる社会課題について正しく理解し、当社グループの多様なコンテンツを通じて情報発信すること、さらに「事業として」だけでなく“社会の一員として”向き合い解決していく、という視座をもって行動することが重要だと考えています。

 

①ガバナンスとリスク管理

 朝日放送グループホールディングスは、中長期的な持続可能性(サステナビリティ)への対応をグループ全体で戦略的に推進していくため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。サステナビリティ推進委員会の傘下には、「環境分科会」「社会分科会」とグループ全社による「グループ分科会」の3つの分科会を設置し、サステナビリティに関する諸課題について、リスク・機会の分析や具体的施策の立案・実施を行い、サステナビリティ推進委員会へ提言をしています。サステナビリティ推進委員会は四半期に1度の頻度で開かれ(2024年度:3回開催)、各分科会等からの提言をもとにサステナビリティ諸課題に関する現状の把握と対応を検討し、それらは執行役員会を通じて取締役会に報告・付議されています。取締役会の審議を経て、執行役員会がサステナビリティ推進委員会あるいはグループ各社に指示を出しています。

 当社グループは気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然環境災害などへの危機管理など、サステナビリティをめぐる様々な課題へ対応し、社会および当社グループの事業活動の持続的成長と中長期的な企業価値向上の推進を行うとともに、グループのサステナビリティへの取り組みに関する、適切かつ効果的な情報開示を進めていきます。

 なお、サステナビリティ課題対応への関連方針として、「朝日放送グループ環境方針」「COLORFUL化推進取組方針」を定めており、2024年4月に新たに「朝日放送グループ人権方針」を定め、開示しました。

 

 

1)ガバナンス体制図


 

2)サステナビリティ推進委員会メンバー

・委員長:サステナビリティ推進担当役員

 

・委員:総務、人事、経営戦略の各担当役員、総務局長、人事局長、経営戦略局長、およびグループの主要な事業会社の各代表者など

 

 

 

3)「人権方針」「環境方針」「COLORFUL化推進取組方針」

朝日放送グループは、「朝日放送グループサステナビリティ方針」の他、人権尊重、環境、多様性推進のため、以下の方針を定めております。
 

 ■「朝日放送グループ人権方針」

当社グループの人権尊重の取り組みを通じて、役員・従業員のワーク・エンゲージメントを向上させるとともに、すべてのステークホルダーの「幸福」を目指すことを示しています。

 

※「朝日放送グループ人権方針」の詳細は以下を参照下さい。

 https://corp.asahi.co.jp/ja/company/rule/human-rights.html

 

 ■「朝日放送グループ環境方針」

当社グループの事業活動によって生じる環境負荷の低減や、様々な環境課題への対応で目指すものを示しています。

 

 ※「朝日放送グループ環境方針」の詳細は以下を参照下さい。

 https://corp.asahi.co.jp/ja/csr/environment.html

 

 ■「COLORFUL化推進取組方針」

一人ひとりが尊重され認めあえる職場環境を創造し、十人十色に多様な能力を発揮できる企業を目指すことを示しています。

 

 ※「COLORFUL化推進取組方針」の詳細は以下を参照下さい。

 https://corp.asahi.co.jp/ja/company/rule/colorful.html

 

 

②戦略

 当社グループは経営理念に基づき、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上のために優先して取り組むべき重要課題「マテリアリティ」を2023年12月に特定しました。特定したマテリアリティは8項目で、それぞれのマテリアリティについて具体的な行動目標やKPI等を設定し、当社グループの各事業戦略と連携しながら課題解決への取り組みを推進しています。

 

 1)朝日放送グループのマテリアリティ

マテリアリティ

 

領域


未来を創る人財を育てる

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進による組織活性化

適応力とチャレンジ精神を生む企業風土の醸成

人も組織も成長できる職場環境や制度の充実

人的資本


コンテンツの力で豊かな明日を創造する

世界に感動を届けるコンテンツや体験の提供

希望あふれるインクルーシブな社会への貢献

子どもたちの健やかな成長の支援

社会&事業


地球の健康を取り戻し次世代へつなぐ

地球環境や生物多様性を守る情報発信

命と暮らしを守る防災・減災報道の強化

カーボンニュートラルの実現など環境に配慮した事業活動の促進

環境&事業


信頼されるメディアグループであり続ける

メディアとしての公正、公平性の堅持

テクノロジーやライフスタイルの変化に対応した情報伝達

健全な情報社会の育成と、情報格差の解消

社会


人権を尊重しすべての人々が幸福に生きる社会をめざす

人権への理解向上と人権侵害の防止

サプライチェーンに関わる人々の健康と安全への配慮

厳正な情報管理によるプライバシーの保護

人権


ガバナンスを強化し持続的な成長を実現する

コーポレートガバナンスの高度化

コンプライアンス、情報セキュリティの強化

ステークホルダーとの対話や情報開示の充実

ガバナンス


テクノロジーの活用で未来を照らす

デジタル技術活用によるビジネス機会の創出

事業におけるDXの推進

デジタルリテラシーの向上

テクノロジー


輝く地域づくりに貢献する

地域の魅力や課題の発信

地域の文化、経済の活性化への寄与

地域創生

 

 

 2)マテリアリティ特定プロセス

マテリアリティの特定にあたっては、まず、グループ横断的なプロジェクトチームを組成し、国際的な情報開示ガイドラインであるGRIなどを参考に「バリューチェーン分析」「ステークホルダー分析」「メガトレンド分析」「経営・事業分析」の4つの分析を実施し、環境、社会、経済にわたるサステナビリティ課題を抽出しました。次に、抽出された課題を集約し、「ダブルマテリアリティ」の考え方に基づき、リスク・機会の分析などでそれらの重要度を評価しました。執行役員会や担当役員審議による課題の優先付けや最終化を行い、取締役会での最終承認を経て特定しています。また、このマテリアリティは社会環境の変化に応じて適宜見直し、情報開示を行ってまいります。

 

(2)人的資本に関する取り組み

 ①戦略

 1)人材育成方針

 

  <人材育成方針>

 グループ全体が持続的に成長するためには、既存事業における自己革新と、新しい事業の開発を推進するための「変化に対応できる人材」が必要です。必要な能力はリーダーシップとマネジメント力、そしてイノベーティブな思考です。そうした能力を育むために、リーダー養成等の研修はもちろん、グループ外の人材との研修や社外派遣を実施します。また、グループ各社内での部門をまたぐ育成異動や抜擢人事、グループ内外との人材交流を進めていきます。

 

   ■ABCカレッジ

    2023年7月にスタートした「ABCカレッジ」は、様々な「学び」と「交流」の場です。

グループ社員が自由に参加し、時には社外の人も参加する、成長できる機会にあふれるワクワクする場所、それが「ABCカレッジ」です。

グループ内のナレッジを共有するのはもちろんのこと、事業分野に捉われず、視野を広げ、多様な視点を持てるような講演会などもラインナップしています。また、業務外で気軽にグループ社員が交流できる機会を設けて、グループのつながりをさらに活性化しています。

 

        ABCカレッジの3つの柱

        ●アカデミア ~多様性・新たな「視野」~

視野を広げ、新たな発想を生むことや、人間力アップを目的としたジャンルにとらわれない講演会やイベントです。外部からゲストをお招きしてお話しいただく内容が中心となります。全く異なるフィールドの方々の講演で参加者も大きな刺激を受けています。

 

    ●グループゼミ ~「知」の共有~

グループ社員自らが講師となって、グループ各社や部署の取り組みを紹介するなど、ナレッジを共有することで、グループ相互の理解を深め、グループ間のコラボレーションのきっかけとなることを目的とした勉強会です。各社やそのメンバーのもつ専門知識や経験をシェアしていくことで、組織としての底上げを図るとともに新たなアイデアが生まれることを目指しています。

 

    ●ぐるcafé ~交流~

グループ社員が業務以外で交流する懇親会です。テーマに沿って交流するものから、共通の趣味で気軽に参加いただけるものまで幅広くラインナップし、普段の仕事だけではなかなか増えないグループ内の接点をつくる機会にしています。たとえば、福本豊さんと伊藤史隆アナウンサーと一緒にビールを飲みながらカフェで阪神戦を観戦して盛り上がったり、秋祭りと題して、グループ社員が自由に飲食を楽しみ、スポーツ体験もできるイベントを開催するなど、アカデミアやグループゼミとは違った、楽しく気軽な雰囲気で交流してもらうことが狙いです。

 

   ■ABCサロン

グループ外も含めて広く豊かな人脈を作り上げる異業種交流の機会や、各界の著名人の方々との交流を深める機会を創出します。この取り組みは、特に社外の方々との交流に主眼を置いたもので、環境の変化に対応して新しいコンテンツを創り続けるために、自らも変わり続ける必要があるというところから始まりました。この企画ではグループの社員が主体的に外の世界・流れに飛び込んでいくことでさらなる化学変化が起こることを期待しています。

 

 

取り組み

ABCカレッジ

ABCサロン

目的

アカデミア

世界で活躍する様々な分野の講師を招いて開催
(2024年度2回)

グループゼミ

グループの知見共有

(2024年度5回)

ぐるcafé

グループ各社の交流

(2024年度3回)

企業・団体のトップ、

社員の方々とグループ社員との交流を促進

(2024年度5回)

 

 

  <多面的な研修制度>

 グループ中核の朝日放送テレビ(以下 ABCテレビ)では、自身のグレードや役職に必要なマインドや能力を習得する階層別研修の他、リーダー育成、イノベーション推進などのテーマ別研修も実施し、未来を担う多彩な人材を育成しています。他社との異業種交流研修でも、様々な地域の様々な企業から選抜されたビジネスパーソンが参加。新たな思考や視点、人脈を得る機会を創出しました。2025年度も異業種研修には引き続き注力し、多様な考え方を習得し、新たなビジネスチャンスの創出につなげます。「グループシナジーの向上」の観点から実施しているグループ各社の選抜メンバーによる研修は、2024年度は多角的な視点を備えるリーダーの育成を目的に、次世代リーダー候補を対象とした20代・30代の選抜人材による「みらいリーダー研修」を実施。2025年度は管理職のうち、マネージャー層を対象として実施予定です。また、グループ内インターンプログラムなど、人材交流も積極的に行い、グループとしての組織力の向上を図ります。

 その他、社員一人ひとりが自分らしく活躍できるためのキャリア開発支援として、主体的なキャリア設計「キャリアデザイン」と、自律的な学びによる新たなスキル習得と実践「リスキリング」を並行して行い、社員の成長を多面的に支援します。キャリアデザインでは、30・35・40・45・50・55歳と5年おきにキャリアデザイン研修やキャリア面談、キャリアカウンセリングなどを実施し、定期的に必要なポイントで自身のキャリアを主体的に考える機会を設けています。また、シニアスタッフ(定年以降の再雇用者)に対してもキャリアセミナーを実施し、定年後のワークライフバランスも意識したキャリア設計について考える機会を提供しています。リスキリングは、2025年度も昨年度に引き続きe-ラーニング学び放題のシステムをシニアスタッフも含めた全社員に対して導入し、一人ひとりが自身のニーズに合う研修を、いつでも受講し、業務のスキルアップ自己研鑽ができる環境を提供します。また、ビジネススキルを高めたい社員について、希望制で専門分野に強いe-ラーニングをあわせて付与しています。より主体的なキャリア選択の機会を設けるために、グループ会社を含めた各部署が、特定の業務内容で求める人材を募集し、社員自らが応募できる、社内人材公募制度「ジョブチャレンジ制度」は昨年度に引き続き実施し、社員の積極的なキャリア形成を支援しています。

 


 

 

 2)社内環境整備方針(多様化推進の取り組み)

 当社グループは、様々なコンテンツやサービスを通じて、地域社会と文化の向上に貢献するため、性別、年齢、国籍、宗教、ライフステージ、障がいの有無、性的指向などにかかわらず、1人1人が尊重され認めあえる職場環境を創造し、十人十色に多様な能力を発揮できる企業を目指すという「COLORFUL化推進取組方針」を定めております。この方針の下、2022年6月に、「働き方の多様性」「働く人の多様性」の推進を通じて、お互いに思いやりをもって協働できる職場づくりを行い、従業員一人ひとりが、多彩な色彩で自分らしく活躍できるように、という思いを込めて、「ABC@Colorful宣言」を掲げました。この宣言に基づいた各種取り組みを推進しております。主な取り組みの内容と進捗については以下の通りです。

 


 

  <働き方@Colorful>

 一人ひとりがワークライフバランスを実現できるよう、テレワーク制度の導入や時短勤務制度の拡充など、グループ全体で働きやすい環境の整備を行います。また、従業員がより長く働きたいと思えるように、有給休暇取得率の向上を目指した休暇制度などの整備や、個人としての活躍を支援する仕組みをつくるなど、働き方の多様性を高める取り組みを推進していきます。

(参照:(2)人的資本に関する取組 ②指標及び目標 「有給休暇取得率」「直近3年採用者の離職率」)

 

   ■取り組み①:時短勤務、テレワーク推進

 ワークライフバランスの実現や育児・介護の負担軽減など、生活の質の向上のため、時短勤務制度やテレワーク制度の積極的な活用を推進しています。今後は出退勤時間の裁量を拡大する「フレックス勤務」の導入の検討・研究を進め、多様な働き方を推進していきます。

 

   取り組み②:フリーアドレス化推進

 ABCテレビ大阪本社、東京支社を中心にフリーアドレス化を進め、コミュニケーションの活性化、多様な働き方を支援しています。

 

■取り組み③:ES調査による継続的な改善

 朝日放送グループホールディングス(以下、HD)・ABCテレビの従業員を対象に継続的にES調査を行い、従業員エンゲージメントの向上を図るための示唆を得て、施策につなげることで、さらなる従業員の満足度と、企業価値の向上を図ります。

 以下の図表は過去5年間に調査したeNPS指標の一部抜粋です。会社として改善策を講じることで、満足度は年々向上する形で推移しております。

 


 

  <働く人@Colorful>

 グループの力が最大限に発揮されるためには、多種多様な人材の活躍が必須です。そのために、女性活躍推進をはじめ、働く人の多様性を尊重し、活かす取り組みをさらに推進します。組織の多様性を形づくるキャリア採用も積極的に進めており、HD・ABCテレビの直近3年間のキャリア採用比率は5割前後で推移しています。また、男女問わず働きながら育児しやすい制度の整備や、育休が取得しやすい職場環境づくりも推進していきます。

 

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

キャリア採用

5名

12名

14名

12名

14名

新卒採用

11名

10名

12名

13名

14名

 

※直近4年間のキャリア採用比率は5割前後で推移

 

  ■取り組み①:育児支援

 HD・ABCテレビでは、育児・介護休業法の改正にあわせ、育児休業の取得を促進するための取り組みを実施しました。育児休業については、性別問わず、取得率100%を目指しています。2024年度における育児休業取得率は、女性社員100%で、男性社員においても100%となりました。

2025年度には、HD・ABCテレビで「育休応援手当」を制度化し、育休を取得する社員の業務をサポートし、代替する周囲の社員に対して手当を支給します。同僚の出産・育児休暇に当たって、部署や会社全体で支援する風土を醸成し、引き続き100%の育休取得率を目指します。

 

 

   ■取り組み②:女性活躍推進

 女性従業員の割合は若い年代ほど高く、直近3年間の20代の女性従業員比率は、グループ全体で50%を超え、中核のABCテレビでも40%以上で推移しています。また、ABCテレビでは2027年に女性管理職比率を17%、2030年に20%以上とすることを目指しております。なお、2024年度末の女性管理職比率はABCテレビでは13.9%、連結グループ全体では17.0%となりました。

(参照:(2)人的資本に関する取組 ②指標及び目標 3)女性管理職人数・比率 4)年代別女性従業員人数・比率)

 

   ■取り組み③:LGBTフレンドリーな企業へ

 HD・ABCテレビでは、2022年度より「同性パートナーシップ制度」を導入しました。同性間でパートナーシップを結んだ従業員に対しても、異性との結婚と同様に福利厚生制度を適用するというものです。本制度の導入に伴い、アウティング行為を明確に禁止するとともに、周囲の理解を深めるための動画研修も制作・配信いたしました。

 

 ②指標及び目標

 1)有給休暇取得率

 働き方@Colorful宣言に基づくワークライフバランスの改善状況を測る指標の一つとして計測しており、毎年改善することを目指しています。

 

2022年度

2023年度

2024年度

HD+ABCテレビ

41.6%

42.9%

45.4%

 

※HDとABCテレビについては、それぞれの原籍社員で集計

 

 2)直近3年採用者の離職率

 働き方@Colorful宣言に基づく各取り組みが、従業員の働きやすさ、モチベーションに与える影響を測る指標の一つとして計測しております。

 

グループ全体

HD+ABCテレビ

2022~24年度に採用した人数
(新卒・中途・契約社員等を含む)

440

72名

 

うち、直近3年の退職人数

68

4名

 

うち、直近3年の離職率

15.5

5.6%

 

2025年3月31日現在 ※執行役員就任に伴う退職者1名含む

 

 3)女性管理職人数・比率

ABCテレビ目標:女性管理職比率が2027年に17%、2030年に20%以上

 

2022年度

2023年度

2024年度

グループ全体 管理職人数

314名

350名

318名

 

女性管理職人数

52名

65名

54

 

女性管理職比率

16.6%

18.6%

17.0

ABCテレビ 管理職人数

168名

182名

187名

 

女性管理職人数

16名

25名

26名

 

女性管理職比率

9.5%

13.7%

13.9%

 

※2022年度までは4月1日現在、2023年度からは3月31日現在

 

 

 4)年代別女性従業員人数・比率

 

20代

30代

40代

50代

60代

70代

グループ全体 従業員人数

307名

492名

458名

412名

117名

5名

1,791名

 

女性従業員人数

172名

198名

133名

115名

21名

1名

640

 

女性従業員比率

56.0%

40.2%

29.0%

27.9%

17.9%

20.0%

35.7

ABCテレビ 従業員人数

73名

142名

166名

243名

60名

0名

684名

 

女性従業員人数

36名

44名

31名

54名

7名

0名

172名

 

女性従業員比率

49.3%

31.0%

18.7%

22.2%

11.7%

25.1%

 

2025年3月31日現在

 

 5)育児休業取得者数

HD・ABCテレビ目標:性別問わず、育児休業取得率100%

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

グループ全体

 

男性

育児休業対象者数

27名

32名

31名

47名

34

 

育児休業取得者数

5名

3名

21名

27名

29

 

育児休業取得割合

18.5%

9.4%

67.7%

57.5%

85.3

 

女性

育児休業対象者数

28名

24名

20名

22名

18

 

育児休業取得者数

28名

24名

20名

22名

18

 

育児休業取得割合

100%

100%

100%

100%

100

育児休業取得率(全体)

60.0%

48.2%

80.4%

71.0%

90.4

育児休業復帰率

100%

100%

100%

98.0%

91.5

HD+ABCテレビ

 

男性

育児休業対象者数

16名

13名

17名

19名

19名

 

育児休業取得者数

5名

2名

15名

14名

19名

 

育児休業取得割合

31.3%

15.4%

88.2%

73.7%

100%

 

女性

育児休業対象者数

10名

10名

5名

6名

4名

 

育児休業取得者数

10名

10名

5名

6名

4名

 

育児休業取得割合

100%

100%

100%

100%

100%

育児休業取得率(全体)

57.7%

52.2%

90.9%

80.0%

100%

育児休業復帰率

100%

100%

100%

100%

100%

 

 

 

(3)気候変動への対応

 当社グループは環境方針を制定し事業活動によって生じる環境負荷の低減や、様々な環境課題への対応の指針としています。特に、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして捉えており、2023年12月に特定したマテリアリティでも、「地球の健康を取り戻し次世代へつなぐ」の具体的な取り組みとして、「カーボンニュートラルの実現など環境に配慮した事業活動の促進」を掲げております。また、気候変動問題についての情報開示などを進める上で有効な枠組みになると考え、2022年5月にTCFD提言に賛同しました。

 

①ガバナンス

 当社グループは、取締役会より、サステナビリティに関連した課題の検討や対応の推進について委嘱された「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。

 委員会の下に「環境分科会」が配置され、気候変動対応に関するシナリオ分析、リスク・機会の分析、対応策の策定等を行い、委員会へ提言をしています。委員会は、四半期に1度の頻度で開かれ(2024年度:3回開催)、環境分科会からの提言等をもとに気候変動に関する現状の把握と対応を検討し、それらは執行役員会を通じて取締役会に報告・付議されています。取締役会の審議を経て、執行役員会がサステナビリティ推進委員会あるいはグループ各社に指示をしています。

 

②戦略

 TCFDが推奨するガイダンスに則り、2040年までの事業環境について、シナリオ分析の手法を活用し、気候変動が当社に与える影響を分析・評価しています。また、影響があるとするリスクや機会に対して、どのように対応をすべきか検討を行っています。

 

1)シナリオ分析の概要

対象範囲

グループ連結対象企業

時間軸

現在~2040年

シナリオ構築

(ⅰ)今世紀末の地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5℃以内に抑えるシナリオ

(1.5℃シナリオ)

参照情報

 

● IEA WEO2021 NZE、SDSシナリオ

● IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より SSP1-1.9,2.6

● その他

 

(ⅱ)今世紀末の地球の平均気温が産業革命以前の水準から4℃程度上昇するシナリオ

(4℃シナリオ)

参照情報

 

● IEA WEO2021 STEPSシナリオ

● IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より SSP2-4.5、SSP3-7.9、SSP5-8.5

● A-PLAT S8 気候 RCP8.5

● その他

 

 

2)気候変動に関連して想定される事業環境の変化

 (ⅰ) 1.5℃シナリオ(気候変動への緩和)において想定される事業環境の変化

 温室効果ガス排出量削減に向けたより厳しい規制等が企業に迫られ、それにより大気中の温室効果ガスの増加スピードは下降していきます。現時点の地球の平均気温は産業革命以前の水準から既に1.1℃上昇しており、さらに2040年ごろの近畿地方の平均気温は現在より0.5℃から1℃程度高くなり、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の2倍程度になります。

 気候変動に対する社会の関心の高まりから視聴者・リスナー等やクライアントの行動変容や社会変容が進み、気候変動対応を行わないメディアには選別も行われるようになります。クライアントの事業内容にも多様な変化が起こり、それに伴い、既存クライアントのCM出稿計画の変更や新規クライアントのCM出稿が増えていきます。

 電気料金は長期的には横ばいあるいは低下しますが、再生可能エネルギーへの転換期には短期的な需給バランスの崩れにより高騰することがあります。

 

 (ⅱ) 4℃シナリオ(気候変動への適応)において想定される事業環境の変化

 特に厳しい温室効果ガス排出の規制がないことから、大気中の温室効果ガスは加速度的に増え続け、2040年ごろに近畿地方の平均気温は現在より2℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の4倍程度になります。激甚化する風水害に対して政府の対策がより強化されていきます。気温上昇により、熱中症搬送者数は現在の2倍程度に増加するとともに、これまで少なかった蚊媒介の感染症なども増えていきます。

 化石資源の価格及び電気料金は上昇していきます。また、風水害の激甚化による被災頻度が高くなり、事業のイレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が増加します。特に、暴風雨と高潮により、堂島川河畔の本社の浸水の危険性が高まります。

 

3)気候変動対応に関連する主なリスクと機会

1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ下における事業環境の変化から、発生する可能性のあるリスクと機会を抽出し、推測される財務への影響度について検討を行いました。その結果、当社の経営に大きく影響を及ぼす可能性があると推測されるものが次表となります。

シナリオ分析からは、リスクに関しては当社の事業のうち特に住宅展示場事業、ゴルフ事業において長期に発現可能性のある物理的リスクがあることが分かりました。一方、機会に関しては世界的な気候変動対応の潮流の中で、視聴者・リスナー等やクライアントともに意識、事業が変わることにより、番組内容、その提供方法など多岐にわたり新たな事業機会があることが分かりました。当社では、それらのリスク・機会に対して適切に対応していくために、それぞれについて取り組み方針を策定しました。

以下、「短期」は直近1~3年程度、「中期」は4年~10年程度、「長期」は11年~約20年程度。リスク分類はTCFDに沿った分類を行っています。

 

財務に影響が大きいと考えられるリスク

発現時期

主な取り組み方針

政策・法規制リスク

 より厳しい温室効果ガス排出抑制基準が設けられ、企業は排出削減のための投資や技術改善を迫られる。

短~長期

 グループで「ABCグリーン宣言」などにより、CO2フリー電力使用への転換などの実施を持続的に行う。

物理的リスク

 予期せぬ風水害の発生や激甚化、夏場の高温の影響で、番組変更の増加や危険を伴う報道・制作・技術などにより関わる社内の人的負担や必要となる各種リソースが増大する。

長期

 人的負担や各種リソース増大に対応する人的資本など各関連資本への投資配分を強化しつつ、放送を持続しメディアとしての責務を果たす。

 激甚化する暴風雨等の災害により住宅展示建物等が損害を受け人的負担・費用負担も増加、集客にも影響を及ぼす。

長期

 災害にも高いレジリエンスを持つ会場設営を行う。災害に強い展示建築物を出展社に促す。

 住宅展示場で、夏場の高温による顧客の減少が発生する。

長期

 災害に強いWEB対応などビジネスモデルの再構築をさらに進める。

 住宅展示場で、激甚化する暴風雨等の災害により来場者数の減少傾向が強まる。

長期

 災害時にもリアル顧客以外にも対応するビジネスモデルの再構築を進める。

 ゴルフ場で、激甚化する暴風雨等の災害により建物、設備、コース等が損害を受け人的負担、費用負担が増加。

長期

 災害にも高いレジリエンスを持つ各設備等の補強や対応を行う。

 暴風雨などの水面上昇により、堂島川河畔の本社の浸水の危険性が高まる。

長期

 社屋の浸水被害など災害防止のための設備対応を実施する。現行のBCPの浸水対策等の再検討・再策定を行う。

 

 

財務に影響が大きいと考えられる機会

発現時期

主な取り組み方針

市場/製品/

サービス

 気候変動の影響によるカスタマーの行動変容や社会変容に伴い、既存クライアントのCM出稿計画の変更や新規クライアントのCM出稿が想定される。

短~長期

 気候変動による市場変化に対応したクライアントの事業内容に適合させ、新たな顧客対応モデルを早期に考え、またビジネスチャンスに結び付ける。

 視聴者・リスナーの災害多発時代に合わせた生活や意識の変容により地球環境や自然に関連した情報への訴求が高まり関連コンテンツへニーズが高まる。

長期

・情報訴求の高い関連コンテンツの見直しや開発、及び番組編成の再考・実施。
・災害現場の最前線での取材・ロケなどに十分対応できる技術イノベーションの開発を行う。 

 報道コンテンツのニーズが高まることによって、ニュース番組の視聴率・聴取率が上昇し、即時性が高いWEBコンテンツの訴求も高まる。

長期

 放送だけでなく配信での展開も研究し、TV視聴者ニーズとWEBユーザーのニーズを融合した立体的な発信の仕方をさらに開発する。

 テレビ社等放送各社が気候変動対応を十分に行い社会から改めて高い信頼を得ることで、コンテンツビジネスなどがスムーズに発展する。

長期

 ビジネス開発には年数がかかるため、早いうちから気候変動に対応したビジネスを研究し、実現する。

 気候変動関連の番組・コンテンツ作りが行われる、視聴者・リスナーや配信ユーザーから極めて大きなニーズが生まれる。

長期

 制作も報道も日常的に「命を守る情報」の発信が必要とされるため、気候変動に関する深い知識を持った人材を育成する。

 災害に強い住宅やZEH、ZEB等が注目され新たな顧客ニーズがさらに増加する。

短~長期

 各住宅メーカーやビルダーとともに災害に強い様々な施策を進める。

 

 

4)気候変動に対する緩和・適応へのレジリエンス

気候変動を緩和する1.5℃シナリオと気候変動が激しくなる4℃シナリオの2つのシナリオに対して当社の事業を分析した結果、政策・法規制リスク、物理的リスクにおいて比較的影響度の高い課題が抽出されました。政策・法規制リスクに対しては、既に対応を進めております。また、物理的リスクに対しては、発現時期が中期、長期であることから、いずれも今後の対応により回避できるリスクであると考えられます。従って当社は気候変動に対して一定のレジリエンスを有していると判断しています。

 

5)温室効果ガス排出量の削減計画

 (ⅰ) Scope1,2

 2022年1月に脱炭素社会への貢献と対応を行う「ABCグリーン宣言」を発表しました。主な取り組み内容は、当社の使用電力について(Scope2)、2022年4月に、大阪本社屋で使用する電力を実質 100%再生可能エネルギー由来に変換するなどし、2025年には、CO₂フリー電力化の実現を目指すものです。また、2022年4月よりオフィス・スタジオ等の照明LED化を開始し、2025年に作業完了することで、電力量削減によるCO₂排出量削減に貢献します。

 なお、Scope1,2のエネルギー使用量とガス排出量はデータ算出を進めており、より具体的かつ精緻な削減を行っていきます。

 

 (ⅱ) Scope3

 当社の事業活動に関連するサプライチェーンで排出される温室効果ガスの排出量等(Scope3)のデータ集約も段階的に対応を進めていき、その内容は、適宜適切に情報開示を行っていく方針です。

 

③リスク管理

気候変動を含む環境リスクの抽出や対応策の検討はサステナビリティ推進委員会及びその下部組織である環境分科会が中心となって行います。TCFDの対応についても環境分科会でシナリオ分析などを進め、サステナビリティ推進委員会に報告しております。シナリオ分析を含めた当社のリスク関連の情報は、グループ全体のリスク管理を行う執行役員会にも報告されます。執行役員会ではグループ全体の主要なリスクを検討し、必要に応じて事前予防策の検討や実施の管理を行っています。執行役員会で検討された内容は、取締役会に報告され審議されます。取締役会審議を経て、執行役員会が、サステナビリティ推進委員会あるいはグループ各社に指示が行われます。

 

④指標及び目標

1)温室効果ガス排出量の削減に関する指標と目標

 (ⅰ)Scope1,2のこれまでの温室効果ガス排出量の実績は以下のとおりです。

 Scope3は現在、データ算出作業を行っており、算出が完了次第開示する予定です。

 

指標データ範囲

朝日放送グループの大阪・東京等各オフィスおよび施設等の一部 ※

データ年度

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

CO2排出量

(t-co2)

※※

Scope1

847.7

843.6

705.4

689.7

695.7

706.8

655.4

666.0

596.6

Scope2

8,061.8

7,842

7,723.7

6,574

5,257.3

4,902.2

5,409.0

949.3

252.3

トータル

8,909.5

8,685.5

8,429.1

7,263.7

5,953

5,609

6,064.4

1,615.3

848.9

 

※HD・ABCテレビ本社、高石・生駒送信所、ザ・タワー大阪無線中継室、中之島フェスティバルタワー無線中継室、中継局(総合)、神戸・京都支局、abcd堂島ビル(5F,6F)、東京オフィス、名古屋支社、ABCアネックス

※※データは、経済産業省・総務省・国土交通省への報告数値。電気については、環境省公表「電気事業者別排出係数一覧」の調整後排出係数で算出。

 

 

 (ⅱ)当社高石市太陽光発電所(※)による温室効果ガス排出削減貢献量(太陽光発電事業による再生可能エネルギー電力の供給量の数値)の実績は以下のとおりです。

 

データ年度

2017

(5月~
2018年3月)

2018

 

2019

 

2020

 

2021

 

2022

 

2023
 

発電量(kWh)

2,986,664

3,216,127

3,240,767

3,273,416

3,240,581

3,245,681

3,158,368

CO2排出削減貢献量

(t-co2)※※

1,520

1,344

1,082

1,041

1,137

1,009

1,371

 

※高石市太陽光発電所:高石ラジオ送信所内(大阪府高石市綾園四丁目)

※※環境省公表「電気事業者別排出係数一覧」の調整後排出係数(関西電力)で算出。

リスクや事業機会の管理に必要な指標、目標値は、それぞれのリスクや機会への具体的な対応策が決定された後に設定する予定です。

 

2)ABCグリーン宣言進捗

 前述②戦略5)(ⅰ)に記載のとおり、TCFDの提言に基づく情報開示に先立ち、2022年1月、当社は「ABCグリーン宣言」を発表し、2025年にグループ全体でCO₂フリー電力化を目指しております。

 


 

なお、上記「ABCグリーン宣言」の目標に対し、2025年3月31日時点での進捗は以下の通りです。

(1)CO₂フリー電力化の進捗状況

    CO₂フリー電力化の対応が可能な対象全22社のうち、2024年度に15社で達成(対象社の70%)しており、今後、目標の2025年度に全社で達成する見込みです。

また、テレビ・ラジオの送信所は100%CO₂フリー電力化をすでに完了しております。

 (2)照明LED化の進捗状況
 本社屋については、放送スタジオは完了し、オフィスを含む本社屋全体では約80%の進捗となります。対応可能なグループ会社については、概ね2025年度中に目標を達成する見込みです。

(3)太陽光発電パネルの設置

  当社グループでは、2013年11月に大阪・高石ラジオ送信所にて太陽光発電事業をスタートさせ、グリーン電力の持続的創出に貢献しています。また、ライフスタイル事業2社、エー・ビー・シー開発(計9施設)およびABCゴルフ倶楽部の各事業所内に太陽光パネル設備を設置し、自然エネルギーの利用を推進しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済状況による影響について

当社グループの主たる事業である放送事業は、広告収入に依存しております。日本の広告市場は、国内マクロ経済の動向や広告支出額の多い企業の業績に影響を受けると考えられます。

2024年の日本の総広告費は、好調な企業収益や消費意欲の活性化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、前年から4.9%増加し、7兆6,730億円となりました。中でもインターネット広告費は、進展する社会のデジタル化を背景に、前年比9.6%増と前年より大きく増加しました。

当社グループの連結業績は、メディア接触の変容と相まって、今後も国内広告市場等の動向に影響を受ける可能性があります。こうしたリスクに対応するために、中核である放送事業の価値を維持、向上しながらコンテンツ事業、ライフスタイル事業の成長を図ることで、各事業間、グループ各社間の連携をより深化させ、グループ全体で変化に対応できる体制を構築いたします。

 

(2) 放送事業について

①番組制作について

当社グループは、朝日放送テレビ株式会社を中心に放送事業各社が連携し、継続して斬新で魅力ある番組を開発し発信する体制を整えてまいりました。しかし、視聴者や広告主、社会のニーズに応えることができなければ、支持される番組を制作し続けることはできないと考えております。経営理念に掲げている通り「変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として、社会の発展に寄与する」ことは当社事業の根幹であり、視聴者・広告主・社会のニーズに応えることができなければ、当社の経営にも悪影響を及ぼす可能性があると考えています。

今後も、これまで以上に、視聴者のニーズや社会の変化を積極的に感じ取り寄り添うことで、これまでの手法にとらわれない新たな番組作りのあり方を常に模索し、広く支持される番組作りを進めてまいります。

②番組内容について

当社グループは、放送番組の内容については、番組審議会や放送番組検討会議等の社内チェック機関ならびに日常の社員教育により問題が生じないように努めておりますが、完璧であることを保証するものではありません。大きな訴訟や賠償につながるような誤った報道または番組内容があった場合は、当社グループの評価に重要な影響を与え、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

そうした事態を避けるため、今後も放送人としての意識とモラルを保つための制度や研修体制を強化し、放送倫理に基づいた番組制作体制の確立をはかってまいります。

③競合メディアについて

技術革新とIT化の普及により、映像コンテンツに触れることができるデバイスは多様化し、インターネット動画配信サービスが利用者を大きく伸ばし続けるなど、放送事業においては大きな脅威となっており、今後もこの状況は進んでいくものと思われます。

一方で、コンテンツの供給先としてとらえれば、こうした状況はビジネスチャンスの拡大につながると考えられますが、それらの進展状況や当社グループとしての対応が遅延する又は支障が生じた場合には経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

今後は、地上波放送の価値を維持しながら、グループ全体でコンテンツビジネスの拡大を図り、新たなメディア環境に柔軟に対応しうる体制を構築してまいります。

 

 

(3) 法的規制について

当社は放送法の規定に基づき認定放送持株会社としての認定を受けております。また当社グループの売上の大半を占める放送事業は、電波法や放送法等の法令による規制および政府、監督官庁の放送行政に大きな影響を受けております。

朝日放送株式会社は1951年10月に放送法に基づく放送免許を取得、60年以上にわたり更新し、2018年4月にテレビおよびラジオの放送免許を当社の子会社である朝日放送テレビ株式会社および朝日放送ラジオ株式会社にそれぞれ承継しております。最近では2023年11月に更新を受けており、有効期限が5年であります。

しかしながら、将来において、これら法令に違反する重大な事実が発生した場合、免許・登録等の取り消しや行政処分が発せられ、当社グループの事業活動や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、法令改正や監督官庁の放送行政の施策により、新たな設備投資が必要となりコストの増加が生じる可能性も考えられ、その場合、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を及ぼすことになります。

こうしたことから、当社グループでは内部管理体制の強化やコンプライアンス体制の整備に努めており、免許・登録等の取り消しや更新拒否の事由となる事実は現時点では発生しておりません。

 

(4) 個人情報の取り扱いについて

当社グループでは、番組の出演者、観覧者、会員サービス、ショッピング事業やハウジング事業の顧客情報等の個人情報を保有しております。これら個人情報の取り扱いに関しましては、十分な注意を払っておりますが、不正アクセスや想定していない事態によって外部流出等が発生した場合、当社グループの社会的信用に悪影響を与え、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは今後、最新のデジタル技術も活用し、グループ内の各種データの厳密な管理を徹底してまいります。

 

(5) 災害や事故による影響について

当社グループは、放送事業においては、放送事故や放送中断による悪影響を最小化するため、全ての設備における定期的な更新と点検整備を行っております。しかし、放送設備、中継設備で発生する災害、停電またはその他の中断事故につながる全ての事象を完全に防止または軽減できる保証はありません。従って、大規模地震や火災、停電等により放送設備等が被害を受ける等した場合、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、ハウジング事業やゴルフ事業等における事業用地に何らかの被害が発生した場合も事業収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうした事態に対応しうるよう、従業員の安全を確保しながらの放送継続のためのBCP事業継続計画を整備し、体制を維持・強化してまいります。

 

(6) 外国人等が取得した株式の取扱等について

放送法では認定放送持株会社の認定要件の一つとして、日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者が特定役員である場合と、日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者、外国の法人、団体が議決権の5分の1以上を占める場合には、認定しない旨が規定されています。一方で、放送法では一定の条件のもとで、上記の外国人等からの名義書換を拒むことができるとの規定もあります。

当社では現在、外国人等の議決権比率が5分の1以上を占める状態にはありませんが、今後も外国人等の議決権比率に対する注視を続け、認定を維持するべく必要に応じた適切な対処を行ってまいります。

 

 

(7) 成長投資に伴う業務提携や企業買収等について

当社グループでは、認定持株会社体制下でグループ成長の原動力とするための成長投資を積極的に行ってきました。今後も事業拡大やバリューチェーン構築のための選択肢の一つとして、業務提携や企業買収等を実行する可能性があります。これらについて、必ずしも予期したとおりの成果が得られるという保証はなく、事業環境の急変等により事業収益性が低下した場合には、株式の評価損やのれんの減損等にかかる損失が発生するリスクがあります。また、投資先等においてコンプライアンスや内部統制の不備等が内在するリスクも否定できず、これらに起因して、当社グループの経営成績、財務状況、およびグループガバナンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクを低減するため、投資プロセスにおいて、チャンスとリスクについて検討し協議する体制、制度を整備し、管理バックアップ体制を強化してまいります。その上で、放送事業、コンテンツ事業、ライフスタイル事業、それぞれの領域における戦略に沿った機能や資源を獲得する手段としてM&Aなどの投資を行い成長のエンジンとしてまいります。

 

(8) 固定資産の減損会計による影響について

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証し、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

<経営成績>

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)の日本経済は、雇用や所得環境の改善等に伴い、緩やかに回復を続けました。しかしながら、アメリカの政策動向の影響や継続的な物価上昇等により、先行き不透明な状況が続いております。

このような経済状況の中、当社グループが主力事業を展開する放送・コンテンツ事業は、テレビスポット収入やネットタイム収入等テレビ放送における収入が増加し、増収となりました。ライフスタイル事業は減収となりました。以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は919億2千3百万円となり、前年同期に比べて14億7千万円1.6%)の増収となりました。

費用面では売上原価が617億5千9百万円で、前年同期に比べて11億4千6百万円△1.8%)減少しました。販売費及び一般管理費は275億7千2百万円となり、8億5千8百万円3.2%)増加しました。この結果、営業利益は25億9千1百万円となり、17億5千9百万円211.3%)の増益経常利益は25億6百万円17億8千3百万円246.6%)の増益となりました。また、特別利益に投資有価証券売却益等を計上した一方、特別損失に減損損失および子会社清算損を計上しました。

以上の結果、税金等調整前当期純利益は35億2千5百万円39億2千6百万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は25億2百万円となり、33億8千7百万円の増益となりました。

セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。

 

 [放送・コンテンツ事業]

放送・コンテンツ事業の売上高は785億2千9百万円となり、前年同期に比べ18億2千8百万円2.4%)の増収となりました。放送・コンテンツ事業は、テレビスポット収入やネットタイム収入等の増加に加え、テレビコンテンツの配信収入等も増加しました。営業費用は0.3%増加しました。この結果、営業利益は28億2千4百万円となり、前年同期に比べて19億6百万円207.8%)の増益となりました。

 

 [ライフスタイル事業]

ライフスタイル事業の売上高は133億9千4百万円となり、前年同期に比べ3億5千7百万円△2.6%)の減収となりました。前期に落ち込んだテレビ通販の収入が番組の改編により回復しましたが、不動産販売収入等で販売不動産の規模縮小等により減収となりました。減収に伴い営業費用は、2.0%減少しました。この結果、営業利益は2億3千8百万円となり、前年同期に比べて1億3千5百万円△36.2%)の減益となりました。

 

 

<財政状態>

(資産)

当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べて53億1千3百万円増加し、1,285億3千8百万円となりました。有価証券や退職給付に係る資産が増加したこと等によるものです。

 

(負債)

負債合計は前連結会計年度末に比べて32億3千9百万円増加し、503億1千2百万円となりました。未払金や長期借入金が増加したこと等によるものです。

 

(純資産)

純資産合計は前連結会計年度末に比べて20億7千3百万円増加し、782億2千6百万円となりました。非支配株主持分等が減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が増加したこと等によるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動により52億9千9百万円の収入となり、投資活動により38億9百万円の支出となり、財務活動により2億7千5百万円の収入となりました。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度の期末残高は、前連結会計年度末より17億6千5百万円増加269億1百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を計上した上で、減価償却費や減損損失等の非資金性費用を調整した結果、52億9千9百万円の収入(前年同期は56億5千8百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により38億9百万円の支出 (前年同期は56億5千9百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入等により2億7千5百万円の収入(前年同期は11億4千5百万円の収入)となりました。

 

③販売の状況

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

放送・コンテンツ事業

78,529

2.4

ライフスタイル事業

13,394

△2.6

合計

91,923

1.6

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当社グループは、主要な顧客である広告主に対し、広告代理店を通じてテレビ広告枠の販売などを行っております。最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合を広告代理店別に示すと次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

㈱電通

18,893

20.9

20,251

22.0

㈱博報堂DYメディアパートナーズ

15,312

16.9

15,816

17.2

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社経営陣は、この連結財務諸表の作成に際し、決算日における財政状態及び経営成績に影響を与える会計方針の決定及び見積りを行わなければならず、貸倒引当金、投資、財務活動、退職金、偶発事象等に関しては、継続して評価を行っております。また、その他の当社グループ固有の事象については、他の方法では判定しづらい場合には、過去の実績等を勘案して、より合理的であると当社経営陣が考えられる基準に基づき判定の根拠としています。従って、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

<経営成績等の状況>

当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

当社グループは、地上波テレビ・ラジオ、CS放送による放送事業を中核に、アニメ・動画配信・イベント事業などによるコンテンツ事業、そして住宅展示場やゴルフ場運営、通販事業などによるライフスタイル事業等を合わせた「強力な創造集団」として企業価値の向上に取り組んでいます。

2025年3月期の連結売上高は919億2千3百万円であり、前年同期に比べて14億7千万円の増収となりました。また、営業利益は25億9千1百万円であり、17億5千9百万円の増益となりました。そして、親会社株主に帰属する当期純利益は25億2百万円で、増収増益という結果になりました。

当連結会計年度の日本経済は、雇用や所得環境の改善等に伴い、緩やかに回復を続けました。しかしながら、アメリカの政策動向の影響や継続的な物価上昇等により、先行き不透明な状況が続いております。

このような経済状況の中、当社グループが主力事業を展開する放送・コンテンツ事業は、テレビスポット収入やネットタイム収入等テレビ放送における収入が増加し、増収となりました。ライフスタイル事業は減収となりました。

 

<資本の財源及び資金の流動性についての分析>

当社グループの当連結会計年度の資本の財源及び資金の流動性の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

投資にかかる資本コストを意識した経営資源配分を行うことで事業ポートフォリオを最適化し、中期経営戦略実現のための継続的な成長投資を行うことで、総合コンテンツ事業グループとしての企業価値向上を目指します。そして、財務の健全性と財務レバレッジの適切なバランスを維持するために、最適な資金調達手段及び資金効率の最大化を目指します。

 

<経営成績に重要な影響を与える要因について>

詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

5 【重要な契約等】

当社の連結子会社である朝日放送テレビ株式会社は、2025年3月25日開催の取締役会において、保有する固定資産を譲渡することを決議し、同日付で譲渡契約を締結しました。

固定資産譲渡の内容

譲渡物件:大阪府大阪市福島区福島一丁目

土地:1,117.99㎡

現況:駐車場賃貸等

譲渡益:約24億円

引渡日:2025年4月18日

②譲渡先の概要

譲渡先は国内法人であり、譲渡先の意向により譲渡価額、帳簿価額につきましては非開示とさせていただきます。なお、譲渡先と当社との間には、資本関係、人的関係、取引関係および関連当事者として特記すべき事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

1. 朝日放送グループホールディングスではプライバシーに配慮した形で、各種データを格納したCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築、このCDPのデータを用いて以下のようなワークフローおよびサービス開発やデータマーケティング支援を行いました。

●カスタマージャーニーの可視化

グループのWEBサイトを来訪するユーザーを増やすために、実際に来訪したカスタマーの動きを分析、各WEBサイトとの相関関係を可視化しました。

●顧客へのメール配信

CDPのデータからオーディエンスを生成・抽出し、当社が運営するふるさと納税サービス「ふるラボ」の会員に対してメールによるターゲティング施策を実施、同様の施策をABCファンライフが運営する「ABCミッケ」でも実施しました。

●各種プラットフォームから自社のデータを自動集約して、可視化・分析などを行うツールを導入、グループ社におけるデータドリブンなマーケティングを支援しました。

●一般社員を対象とし、リテラシー向上を目的とした勉強会を実施し、データに基づいた事業判断を行えるようになるための支援を行いました。

 

2. 生成AIを積極的に活用し、業務効率化や新たなアイデアの創出を図るため、情報漏洩の心配がなく、安心・安全に利用できる朝日放送グループ独自のChatGPT利用環境「ABChat(エビチャット)」を開発し、グループ全体に提供しています。さらに、生成AIを活用したサービスとして、人事局への問い合わせに対応するチャットボット、映像素材にメタデータを自動付与するメタ付けアプリの構築を行いました。加えて、エンターテインメント分野における取り組みとして、企業や施設の玄関受付やイベント会場において来訪者への挨拶や案内を行う「デジタルヒューマン」や、イベントなどで異世界に転生した自分の姿を仮想体験できる展示ブース「異世界転生」の試作開発を行いました。

 

3. 朝日放送グループホールディングスでは、最新の技術調査のために継続して海外展示会の視察を行っています。2024年度は、4月にGoogle Cloud NEXTを視察し、生成AIやデータエンジニアリングの最新情報をキャッチアップし、人脈構築も行うことができました。また、世界最大規模の最新テクノロジーの見本市のCES2025では映像体験・メディア・広告業界の最新動向、AIやテクノロジーの新技術動向の調査を行いました。

 

4. 朝日新聞社と共同で展開している「バーチャル高校野球」では、配信環境の変化に対応するために、必要なシステムの研究・検証を行いながら、毎年サービスや設備のアップグレードを行っています。2024年度は地方大会のエンコーダの統一および内製化ツールによるオペレーションにより、配信運用効率化を行いました。また、全国大会ではフルHD画質での配信を行い、品質の向上を実現し、HDRの配信検証も行いました。

 

5. 朝日放送テレビでは、Media over IP技術の研究・検証を進め、副調整室(サブ)、社内外の回線を取り扱う回線センター等のIP社内設備を順次導入、共用化によるコスト削減や拡張性に富む柔軟な設備構築に積極的に取り組んでいます。また、IOWNを利用した万博におけるリモートプロダクションの共用化などの活動を通して、NTT西日本をはじめ各社とも積極的に連携して新技術の検証を進めています。

 

6. NTTSportictとの協業で、タブレット端末による操作で簡単に本格的な試合配信ができる新たなサービス、次世代型マルチアングルライブ配信システム「STADIUM TUBE Touch」を開発しました。Webブラウザで簡単にライブ映像の切り替えが可能なクラウドシステムで、最大4台のカメラ接続、得点などのスコア表示やプレーのリプレイ挿入もボタン1つで可能です。2024年度のINTER BEE AWARD 2024 コンテンツ制作 / 放送・メディア(トータルソリューション)部門 で、グランプリを受賞しました。

 

7. 朝日放送テレビでは、番組やコンテンツ制作において、新技術を活用したワークフロー改善・コンテンツ価値向上に継続して取り組んでいます。

●取材素材の文字起こし自動化への取り組み

番組内容をわかりやすく伝えるために必要な文字テロップ作成は、取材素材の文字起こし作業なども伴うため、制作担当者にとって大きな負担となります。この取材素材の文字起こし作業について、AIを活用し高精度に自動化するアプリケーションを開発、このアプリケーションは「熱闘甲子園」などの番組で活用され、制作現場の負荷軽減に貢献、他の制作番組でも活用を進めています。

●コンテンツ配信に関わる素材編集自動化の取り組み

多岐にわたるコンテンツ配信先に対応した素材を提供するため、それぞれの配信先に対し素材編集作業を行っていましたが、「見逃し配信自動編集システム」を開発、見逃し配信プラットフォーム用コンテンツの編集自動化を実現し、作業負荷を大幅に軽減しました。

●コンテンツ制作におけるバーチャルセット活用の取り組み

汎用3D制作プラットフォームを活用し、カメラ映像とバーチャルセットを高度にリアルタイムで連動させる番組制作を実施しました。市販の3D_CG部品を組み合わせることで、バーチャルセット制作のワークフローを改善、高精細なセットを低コストで実現しています。さらに実証案件を継続し、ノウハウ蓄積に取り組んでいます。

●新たなCM手法開発の取り組み

長年、高校野球中継で「ワイプCM」を放送してきた知見を活かし、「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」でスポーツ視聴にとって重要な中継映像の送出を継続しながら、よりテレビ広告の価値をあげる取り組みとして、駅伝中継映像+動画広告+静止画広告の「トリプルスクリーンCM」を実施しました。

 

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は192百万円であります。