文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、創業以来一貫して情報革命を通じた人類と社会への貢献を推進してきました。情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業に取り組み、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ、企業価値の最大化に取り組んでいます。
上記の経営理念に基づき、社会インフラを提供する当社グループは、本業を通じて、さまざまな社会課題の解決に貢献すべく、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中」の実現を通じて、持続可能な社会の維持に貢献し、中長期的な企業価値向上を達成すべく、当社グループが優先的に取り組むべき課題として、6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。各マテリアリティ(重要課題)の概要については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) サステナビリティ全般 c.戦略及び指標と目標 (b)マテリアリティ(重要課題)の特定」をご参照ください。
2024年度の経営環境は、地政学リスクの高まり、インフレおよび為替の大幅な変動による先行き不透明感が続くなか、大企業の堅調な設備投資需要などにより緩やかな回復傾向にありました。一方、テレワークやオンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、コロナ禍をきっかけとした人々の生活様式の変化や深刻化する人手不足に対応するため、企業や行政のデジタル化は必要不可欠なものとなりました。デジタル化は、生産性向上やイノベーションの創発を促すことで今後の日本の社会を変革していく原動力となり、さらに、文章・画像・プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができる生成AIの出現により、変革のスピードは加速しています。
当社は長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指します。これは、AIの加速度的な進化により急増すると予見されるデータ処理や電力の需要に対応できる構造を持ったインフラを構築し、未来の多様なデジタルサービスを支える不可欠な存在となることを意図しています。当社は、この実現のために必要となるテクノロジーを特定し、これまでさまざまな準備を行ってきました。2023年度から2025年度における中期経営計画では、この実現に向けた事業基盤の再構築を目指しています。
当社グループの掲げる成長戦略「Beyond Carrier」は、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的にグループの事業を拡大することで、企業価値の最大化を目指すものです。また、通信事業とそれらのグループ事業との連携を強化することで、通信事業の競争力を強化するとともに、グループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメントの向上といったシナジーを創出することを推進しています。

(a) 通信事業のさらなる成長
当社グループのビジネスの基盤となる通信事業では、5Gの展開やスマートフォン・ブロードバンドの契約数の拡大、モバイルサービスにおけるARPU(1契約当たりの月間平均収入)の向上を図ることで、さらなる成長を目指します。
ⅰ.スマートフォン契約数・ブロードバンド契約数の拡大
当社グループは特長の異なる3つのモバイルブランドを展開することで、大容量ユーザーから節約志向まで、幅広いユーザーのニーズに応えています。引き続き、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」の各種サービスやコミュニケーションアプリ「LINE」、キャッシュレス決済サービス「PayPay」といった、当社グループが提供するさまざまなサービスとの連携を強化することで、スマートフォン契約数の着実な拡大を図ります。また、「SoftBank 光」を中心とする家庭向け高速インターネットサービスについても、販売の拡大に注力します。
ⅱ.モバイルサービスにおけるARPUの向上
当社グループはモバイルサービスにおいて、セキュリティや端末保証、エンターテインメント、店舗でのサポートなどの領域で、ユーザーにとって魅力的な付加価値サービスを拡充しています。加えて、さまざまな特典を付与することで「ソフトバンク」ブランドの魅力を高め、「ワイモバイル」からのブランド移行を促進しています。
ⅲ.5Gの展開
当社グループが2020年3月に商用サービスの提供を開始した5Gは、人口カバー率95%を超え、その後もエリアを拡大しています。これまでは主に、ノンスタンドアローン方式と呼ばれる5Gサービスで、超高速・大容量の通信を実現していました。これに引き続き、スタンドアローン方式と呼ばれる5Gサービスの高度化を順次進めることにより、超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続の通信を実現し、これらの特長を生かした5Gサービスの提供を目指しています。一方、設備投資については、既存の基地局サイトを最大限に活用するほか、他社との協業、通信設備の効率化などのさまざまな工夫を行うことで、コスト効率化を図ります。
なお、当社はモバイルブロードバンドのさらなる高速化とトラフィックの需要増加に対応するため、4.9GHz帯を使用する特定基地局の開設計画を総務省に申請し、2024年12月に総務大臣より認定を受けました。今後、当社は2031年3月期末までにすべての都道府県に特定基地局を開設し、2032年3月期末までにサービスを開始することを目指していきます。
当社グループは、法人顧客向けに通信サービスを提供することに加えて、急速に拡大する企業のデジタル化ニーズに応えたDX/ソリューション商材の販売や生成AI関連ソリューションの開発・提供に注力し、新規顧客の獲得および顧客1社当たりの取引額拡大を目指します。また、社員のリスキルや採用活動を通じてデジタル人材を確保し、企業の抱える課題を解決する高付加価値なソリューションの提案を行います。さらに最先端テクノロジーの知見を駆使し、社会課題の解決に繋がる新事業の創出を目指します。
2024年9月には、ICTサービスの中核子会社であったSBテクノロジー㈱を完全子会社化しました。同社の有するエンジニアやセキュリティ・クラウドサービスおよび当社の有する経営資源を相互活用し、高付加価値なサービスにより注力することによって収益力の向上を目指します。
当社グループはメディア・EC事業において、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションアプリ「LINE」など、国内最大級のユーザー基盤を有するインターネットサービスを提供しています。同事業では、検索やニュース、オンラインショッピングなど、多様なサービスを展開しています。
ⅰ.メディア領域の拡大
インターネット広告などを扱うメディア領域では、グループの技術やアセットを活用した配信精度の向上などにより広告単価を高めることで、既存広告の売上の最大化を図ります。加えて、データの連携によるマーケティング分析の強化やコミュニケーションアプリを通じたリピート購入の促進により、新規顧客の獲得から継続的な利用の促進まで一貫したマーケティング支援を行うことで、さらなる売上成長を目指します。
2023年11月からクロスユース施策として、新たな会員サービス「LYPプレミアム」の提供を開始しました。旧「Yahoo!プレミアム」で提供していた特典に加えて、「LINE」アプリがもっと楽しく便利になる特典を利用できる サービスを通して新規会員を獲得し、LINEヤフーグループのサービス利用の拡大を目指します。
ⅱ.コマース領域の成長
オンラインショッピングなどを扱うコマース領域では、ユーザーのニーズが多様化する中、「Yahoo!ショッピング」や「ZOZOTOWN」など、特長の異なる複数のコマースサービスを展開することで幅広いユーザーの取り込みを図っています。今後は、「LINE」「Yahoo! JAPAN」「PayPay」という国内最大級のユーザー基盤を持つグループサービスの相互利用をさらに促進し、グループ経済圏を拡大することで、収益の持続的な成長を目指します。
また、今後の取り組みとして、「LINE」アプリのリニューアルを予定しています。新たに「ショッピング」タブを追加することで、メッセンジャーアプリを起点とした購入体験を提供します。「LINE」アプリのリニューアルを通じて、「LINE」の利便性向上と、さらなるクロスユースの促進強化に取り組みます。
ⅲ.セキュリティガバナンスの改善
メディア・EC事業の中心的な企業であるLINEヤフー㈱は、2023年11月に公表した不正アクセスによる情報漏洩に関して、2024年3月および4月に総務省から行政指導を、同年3月に個人情報保護委員会から勧告および報告等の求めを受けました。これに対し、同社は2024年4月以降総務省および個人情報保護委員会へ定期的に報告書を提出しています。また、2024年11月に生じた「LINE」のアルバムでサムネイル画像が正しく表示されない不具合に関して、2025年3月に総務省より行政指導を受けました。同社は、多数のユーザーを抱えるプラットフォーム事業者としての信頼を損なう重大な事態であると重く受け止め、再発防止策を推進しています。当社は、同社の親会社として、定期的なリスク状況の評価や緊急事態発生時の連絡体制強化などの実効的なセキュリティガバナンス確保の取り組みを進めています。
ファイナンス事業には、PayPay㈱とPayPayカード㈱に加えて、決済代行サービスを提供するSBペイメントサービス㈱やスマートフォン専業の証券サービスを提供するPayPay証券㈱などが含まれます。
ⅰ.「PayPay」のさらなる成長と周辺金融サービスの成長促進
効率的なプロモーションを通じたMTU(Monthly Transaction Users:月間取引ユーザー数)の増加、「PayPayクレジット」「PayPayカード」の利用拡大による決済単価・決済回数の増加、およびグループシナジーで「PayPay」のさらなる成長を図ります。加えて、「PayPay」の決済プラットフォームとしての強みを生かし周辺金融サービスの成長を促進することにより、当社グループのファイナンス事業の拡大を目指します。なお、PayPay㈱は2024年12月にPayPay銀行㈱の株式取得(注)を、2025年2月にPayPay証券㈱の子会社化(注)を発表しました。今後は、PayPay㈱主導で銀行・証券サービスの強化を目指します。
(注) PayPay証券㈱は2025年4月1日に、PayPay銀行㈱は2025年4月11日にPayPay㈱による子会社化を完了しました。
ⅱ.決済代行サービスの決済取扱高の最大化
SBペイメントサービス㈱が提供する決済代行サービスにおいては、当社の通信料金などの決済以外の領域(非通信領域)における決済機会を積極的に取り込み、決済取扱高の最大化を図ります。
当社グループが有する通信、eコマース、決済、SNSといった異なる複数の分野における数千万人規模のユーザー基盤を強みに、AI、FinTech、モビリティ、ヘルスケア、再生可能エネルギーなどの領域で、最先端テクノロジーを活用した革新的な新規事業の創出・拡大を目指します。
当社では特に生成AI領域に注力しており、複数の大規模言語モデル(LLM)を顧客のニーズに応じて提供する「マルチモデル戦略」を推進しています。その取り組みの一環として、日本語に特化したLLM(Sarashina)の自社開発に取り組みつつ、米Googleが提供する「Google Workspace with Gemini」や、米マイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」「Microsoft 365 Copilot」など、さまざまな生成AIソリューションの販売を行っています。さらに、2025年2月には、米OpenAIと企業用の最先端AIサービス開発・販売に関する提携を発表しました。加えて、今後の生成AIサービスの提供に必要となる大規模AIデータセンターの構築にも取り組んでいます。
(f) コスト効率化
当社グループは、事業投資を機動的に実施する一方で、コストの効率化に継続的に取り組みます。例えば、コールセンター業務やネットワーク運用・監視業務等を、AIを活用して自動化することに取り組み、さらなる効率化を図ります。また、PHS・3GサービスやADSLサービスの終了などに合わせ、通信設備の最適化を継続します。加えて、グループ企業との共同購買や、グループ企業を活用した業務の内製化などを推進し、グループ全体のコスト効率化を図ります。
当社グループは、プライマリー・フリー・キャッシュ・フロー(注)を重要な経営指標と考えています。高い株主還元を維持しながら、成長への投資を実施していくため、今後も安定的なプライマリー・フリー・キャッシュ・フローの創出を図ります。また、健全な財務体質を維持しつつ、適切な財務レバレッジを伴った資本効率の高い経営を行っていきます。なお、生成AIを用いたサービスの実現や次世代社会インフラの構築などの長期性の成長投資には、社債型種類株式などを活用する予定です。
(注) プライマリー・フリー・キャッシュ・フローの算定方法は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
経営理念の「情報革命で人々を幸せに」を具現化するとともに、「世界に最も必要とされる会社」の当社ビジョン実現に向けて、持続可能な社会づくりへの貢献と当社の持続的な成長の両立を目指していくことであると考えています。現在だけでなく、中長期的な外部環境や事業環境の変化を踏まえ、当社の事業活動および企業活動を通じて、経済・社会・環境の価値を向上させることにより、さまざまなステークホルダーと新たな価値共創の実践を図り、持続可能な社会づくりへの貢献と当社の持続可能な成長を通じた企業価値の向上を目指します。
お客さま、株主、取引先、従業員をはじめとするステークホルダーの皆さまからの信頼とご支持を、持続的な成長への礎とするため、サステナビリティを支える指針として「サステナビリティ基本方針」を定めています。
サステナビリティ基本方針
(a)サステナビリティ監督体制
当社は、サステナビリティ基本方針の下、成長戦略とサステナビリティを統合して推進するための企業統治の体制を構築しています。取締役会が気候変動や人的資本を含むサステナビリティに関する重要事項を審議・決議し、サステナビリティ推進状況を監督しています。さらに、経営監督機能の強化を目的に、取締役会の諮問機関としてESG推進委員会(委員長:宮川潤一)を設置し、四半期ごと(年4回、必要に応じて臨時開催)の会議にて、当社グループのサステナビリティ活動に関する進捗(マテリアリティKPIなど)のモニタリングおよび取締役会への提言などを行っています。取締役会がESG推進委員会からの提言内容を尊重し適切な意思決定を行うことに加え、取締役・監査役に求めるスキルの一つとして「サステナビリティ(気候変動などを含む)」を設定することで、当社経営に対するサステナビリティ視点の反映に努めています。なお、マテリアリティKPIの一部は役員報酬に連動しています。
ESG推進委員会については
当社の提出日現在における企業統治の体制の模式図は以下の通りです。

(b)サステナビリティ執行体制
代表取締役 社長執行役員 兼 CEOがESG推進の最高責任者として、当社グループ全体のサステナビリティ対応の責任を担い、専務執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者)がESG推進の担当役員として指揮を執っています。また、当社グループのサステナビリティ活動を推進するためにESG推進室を設置するとともに、当社の各部門および子会社にはそれぞれESG推進の責任者を設け、事業内容に合わせたさまざまな活動を行っている他、ESG推進室と連携しグループ一体となることで、効果を高められるよう取り組んでいます。さらに、各領域の重要事項を専門に扱う以下の各委員会とも連携することで、サステナビリティ課題に迅速に対応しています。
リスク管理委員会
代表取締役 社長執行役員 兼 CEOを委員長として、社内の取締役、リスク管理業務を所轄する役員、および各部門を統括する役員で構成し、収集したリスク・機会に関する情報を元に、会社として重要なリスク・機会の特定を行っています。その上で、重要なリスクに関してはリスクオーナー(リスクの責任者)を定め、対策指示などを行い、リスク管理室長を通じて状況を取締役会に報告しています。リスク管理プロセスに関しては、
情報セキュリティ委員会(ISC)
最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長として、各部門の情報セキュリティ管理担当者などで構成する情報セキュリティ委員会(ISC)を設け、全社横断的な組織として情報セキュリティ施策の推進・管理に努めています。
人権委員会
代表取締役 社長執行役員 兼 CEOを委員長として、各部門を統括する役員で構成し、取締役会の承認を受けた「ソフトバンク人権ポリシー」の考え方の下、人権デュー・ディリジェンスの管理、人権侵害のおそれのある事項の調査・対処および人権に関する研修の企画・実施による人権意識の内部浸透などの日々の活動を通じ、当社の人権活動を推進しています。「人権委員会」の付議事項は、取締役会において報告・審議されています。
環境委員会
国際規格ISO14001に準拠した環境マネジメント体制構築のため、CSR本部長を委員長として、各部門および主要な子会社の環境担当者などで構成し、ESG推進の担当役員の下、環境に関する事柄全般を横断的に検討しています。当委員会では、環境関連のマテリアリティKPIの起草、マテリアリティKPI以外の環境目標設定、目標達成に向けた環境負荷低減の推進・管理を担い、全社的な環境保全活動を推進しています。
女性活躍推進委員会
女性管理職比率を2035年度末までに20%とする目標を掲げ、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOと役員などで構成する「女性活躍推進委員会」を設置し、女性活躍の推進・強化に向けた方針や新たな施策に関する議論、各施策の進捗の確認等を実施しています。
IT管理委員会
最高情報責任者(CIO)を委員長として、IT管理責任者である各部門の本部長で構成し、全社的な枠組みの下、標準化や最適化に向けて情報システムの開発・運用に関連する施策の計画および状況把握と改善を行っています。
AI倫理委員会
国内外でAI倫理に関するさまざまなリスクが課題になっている状況を踏まえ、最高情報セキュリティ責任者(CISO)を委員長として、AIに精通した社外有識者委員と社内委員で構成し、「ソフトバンクAI倫理ポリシー」の考え方に基づき、責任あるAIの実践に向けて適正なAIの開発、運用に取り組んでいます。
当社は、サステナビリティに関するリスク・機会(気候変動、人的資本など)を含め、全社的なリスク・機会を統合的に管理しています。全社的なリスク管理プロセスにおいて、当社および主要な子会社に対して、SASBスタンダードやCDSBフレームワーク適用ガイダンスなどのサステナビリティ視点を反映したリスクアセスメントを行うとともに、当社執行役員やリスクオーナーへのヒアリング結果も踏まえて、リスク管理委員会で全社的な観点から重要なリスク・機会を選定しています。また、ESG推進委員会では、リスクアセスメントの結果を活用して、当社およびステークホルダーの観点からマテリアリティ(重要課題)およびKPIの見直しや再評価を行い、サステナビリティ活動やKPIの進捗状況をモニタリングしています。全社的なリスクの内容、リスク管理体制については
当社は、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」をコンセプトに掲げるとともに、それを実現していくためのテーマとして、6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。これらは持続可能な社会への貢献とともに、当社の持続可能な成長をしていくためのキードライバーとして捉え、将来のあるべき姿の実現に向けたビジョナリーなマテリアリティとなっています。

当社のマテリアリティおよび創出価値(事業や取り組みを通じて創出する価値)は、ダブルマテリアリティの考え方に基づき、社会や環境が当社に及ぼす影響だけではなく、当社が及ぼす各ステークホルダーへの影響についても考慮しています。
全社のリスクアセスメントで認識した短期(数年以内)・中期(3~5年程度、中期経営計画と同等の時間軸)・長期(10年~30年程度)のリスク・機会を基に、当社における重要度(発生可能性や頻度、影響度)を把握するとともに、国際ガイドラインやレポートなどでの重要性、ならびに投資家やNGO/NPOなどの団体、お客様、従業員、サプライヤーなどのステークホルダーへのポジティブ・ネガティブな影響(規模、深刻度、発生可能性など)に鑑み、外部における重要度を把握しています。当社における重要度および外部における重要度の双方の観点で評価を行い、有識者などの第三者の見解も踏まえ、ESG推進委員会での議論を経て、取締役会の承認のもと、マテリアリティを特定しています。
各マテリアリティは、複数の創出価値を構成し、ビジネスや事業機会の創出につなげています。
ⅰ.当事業年度目標KPI・実績
当事業年度における目標KPIと実績は以下の通りです。
(注) 指標と目標KPIおよび実績の範囲は、特に記載がない限り、ソフトバンク㈱のみが対象
(注1) Large Language Models(大規模言語モデル)
(注2) cross Integrated PlatForm(超分散コンピューティング基盤)
(注3) 当社グループで集計、CAGR:年平均成長率
(注4) 当事業年度より「その他」から「エンタープライズ事業」に移管したSBテクノロジー㈱およびサイバートラスト㈱等の売上高は「ソリューション等」に含まれています。また、当事業年度より事業の管理区分を見直し、「モバイル」および「固定」における一部商材を「ソリューション等」へ移管しました。これらに伴い、前事業年度の「ソリューション等」の数値を遡及修正しています。「当事業年度の増収率」は、遡及修正後の数値を基に算出しています。
(注5) PayPay㈱のみが対象、中期目標
(注6) スコープ1:自らによる温室効果ガスの直接排出、スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連するサプライチェーンでの排出)
(注7) 当社グループが対象
(注8) Science Based Targets initiative(国際的気候変動イニシアチブ)
(注9) Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)
ⅱ.翌事業年度目標KPI
当社は、環境の変化にいち早く対応するため、原則毎年目標KPIを見直しています。翌事業年度の目標KPIは以下の通りです。
(注) 指標と目標KPIおよび実績の範囲は、特に記載がない限り、ソフトバンク㈱のみが対象
(注1) 当社グループで集計、CAGR:年平均成長率
(注2) PayPay㈱のみが対象、中期目標
(注3) Large Language Models(大規模言語モデル)
(注4) スコープ1:自らによる温室効果ガスの直接排出、スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連するサプライチェーンでの排出)
(注5) 当社グループが対象
当社は、気候変動への取り組みをマテリアリティ(重要課題)の1つと認識し、ネットゼロへの取り組みを強化しています。2020年4月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFDが企業に推奨する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」のフレームワークに沿って、積極的な情報開示とその充実に努めています。
代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一がESG推進の最高責任者として、取締役会の監督のもと気候変動関連のリスク・機会に関わる戦略などを含め、サステナビリティ対応の責任を担います。また、気候関連のリスク・機会の管理および取り組みの社内推進、業務遂行を担う機関として、ESG推進の担当役員の下、CSR本部長を委員長、当社の各部門および主要な子会社の環境担当者を委員として構成する環境委員会を設置しています。環境委員会は、ネットゼロの実現に向けた具体的な施策ならびに環境負荷低減の推進・管理、全社的な環境保全活動を推進しています。同委員会で審議・検討された事項のうち、重要なものについてはESG推進委員会へ報告しています。
気候変動を含むサステナビリティ全般のガバナンスについては、「(2) サステナビリティ全般 a.ガバナンス」をご参照ください。
当社は、気候変動に関するリスク・機会ついて、全社的なリスク・機会に関する情報と統合し、識別・管理しています。全社的なリスク管理プロセスにおいて識別した気候変動関連のリスク・機会の情報は、ネットゼロ実現に向けた計画の策定や対応策の検討・改善などに生かしています。気候変動関連を含めたサステナビリティ関連のリスク・機会の識別、評価、モニタリングに関する管理体制は「(2) サステナビリティ全般 b.リスク管理」をご参照ください。
当社は、基地局設備をはじめ、多くの電力を使用する通信事業を行っており、気候変動のリスクを大きく受ける可能性があると認識しています。当社は、気候変動が当社に及ぼすリスク・機会を把握するとともに、持続可能な成長実現のための戦略の検討を行っています。
(a)シナリオ分析
気候変動により将来起こりうる事象に適応するための戦略を勘案し、急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオと気候変動対策が進まず温暖化が進行する3-4℃シナリオの2つのシナリオ分析を当事業年度に行い、バリューチェーン上流・下流を含む事業に与える財務的影響を確認しました。
(シナリオ分析の前提条件)
シナリオ分析においては、国際的に認知され、信頼性の高いシナリオを使用しました。詳細は以下の通りです。
(注1) IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)
(注2) Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)
(注3) 中期経営計画と同等の時間軸
(b)気候変動関連のリスク・機会
上記の状況を踏まえ、当社の気候関連のリスク・機会を洗い出し、IEAやIPCCなどのシナリオを参考にシナリオ分析を実施した結果、当社として以下のリスクと機会を特定しました。
(c)気候変動のリスク・機会の財務的影響
気象災害の激化に伴う基地局設備などの復旧コスト増加
生物多様性の損失による森林の防災機能の低下や、地球温暖化の進行による自然災害の頻発・激甚化に伴う基地局など通信設備の災害対策や復旧によるコスト増、バリューチェーンの断絶による調達への影響、ビジネス機会損失、被災設備による近隣被害の誘発などを潜在的リスクと認識しています。
過去のコストを参考に、将来の財務的影響を分析した結果、気温上昇が進行し、大雨の頻度が上昇したとしても、復旧コストの増加幅は限定的であり、財務的な影響は相対的に小さいと考えています。
当事業年度は、台風や線状降水帯の発生回数の増加に伴い、発生確率が上昇傾向にある洪水被害への適応策として、設備破損リスク低減、広域停電時におけるサービスの安定的に継続するために、基地局やネットワークセンターの自然災害対策として19億円を投資しました。具体的には、移動型基地局や可搬型基地局、バッテリーのリプレイスおよび保守対応、可搬型発電機の配備などへの投資が含まれています。その他、災害復旧費用として3億円を計上しました。
当社では、気候変動による影響について、把握可能な事項から開示を進めています(段階的に拡充予定)。
気候変動が当社に及ぼすリスクと機会を管理するため、温室効果ガス排出量(スコープ1、2、3)をはじめとする環境負荷データの管理を行っています。これらの排出量は、国際的な温室効果ガス算定基準である「GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)」に準拠し、スコープ1、2、3の各区分ごとに算定・開示しています。前事業年度の温室効果ガス排出量(スコープ1、2)は520,662t-CO2、スコープ3は9,287,493t-CO2となりました。
主な目標として、2030年度までに、事業活動で使用する電力などによる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル目標を設定し、当社グループが事業で使用する電力のすべての実質再生可能エネルギー化を推進します。また、長期の再生可能エネルギー調達契約を結び、当社(注)で使用する電力を風力や太陽光などの発電による再生可能エネルギーにしていくことで温室効果ガスの排出を削減し、カーボンニュートラル達成と脱炭素社会の実現に貢献します。長期の再生可能エネルギー調達契約は、電気代の高騰の影響を受けにくい事業構造へ転換を後押しします。さらに省エネ機器へのリプレイスや空調設備の効率化などネットワーク設備のさらなる省エネ化を推進することにより温室効果ガスの削減に取り組みます。カーボンニュートラル目標の対象は、スコープ1(自らによる温室効果ガスの直接排出)、およびスコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)です。
(注) 当社およびWireless City Planning㈱の合計
また、取引先などで排出される温室効果ガスであるスコープ3(スコープ1、2以外の間接排出、事業者の活動に関する他社の排出)の排出量も含めたサプライチェーン排出量を、2050年度までに実質ゼロにする「ネットゼロ」目標を設定しました。
当事業年度の温室効果ガス排出量実績(スコープ1、2、3)に関しては、当社
指標と目標を支える取り組み
ⅰ.内部炭素価格
当社は、脱炭素計画を推進するために、当事業年度にインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を拡充し、CO2排出量削減効果を得られる一部の設備投資において、社内炭素価格をCO2換算1t当たり18,000円に設定の上、調達の材料として活用します。
ⅱ.気候関連事項の役員報酬への組み込み
当社では、気候変動関連を含むサステナビリティに関するマテリアリティKPIの一部が役員報酬に連動しています。詳細は
人的資本に関する記載は当社に関する記載となります。
人的資本に関するガバナンス体制は、サステナビリティ全般と同様、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一がESG推進の最高責任者として、リスク・機会に関わる戦略などの最終責任を取締役会の監督のもと担っています。人的資本の中でも人権とダイバーシティ(女性活躍推進)については、社内推進、業務遂行を担う機関として、「人権委員会」「女性活躍推進委員会」を設置しています。人権委員会では、人権デュー・ディリジェンスの管理、人権侵害のおそれのある事項の調査・対処、および人権に関する研修の企画・実施による人権意識の内部浸透などの日々の活動を通じ、当社の人権活動を推進しています。女性活躍推進委員会では、外部の有識者をアドバイザーに迎えて、女性活躍推進に向けた本格的な取り組みを推進しています。
人的資本関連のリスクの評価、モニタリング、見直しに関する管理体制は「(2) サステナビリティ全般 b.リスク管理」をご参照ください。
(a)人材戦略の方向性
当社は、創業以来「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、「人」と「事業」をつなぎ、双方の成長を実現することを人事ミッションとしています。また、当社ならではの活力を生み出すため、チャレンジする人の可能性を支援し、成果を出した人にはしっかりと応えると共に、多様な人材がいきいきと働く環境を支援する人事ポリシーを貫いています。社員に対する考え方は、従来のように「資源」と捉え管理することから「資本」と捉え活用・成長支援をしていくことにシフトしています。当社では、従来より社員の自己成長や挑戦を後押ししていますが、さらなる事業成長のため、社員がいきいきと働き、今まで以上に成長・挑戦していけるよう、能力開発、エンゲージメント向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)、健康経営など、人的資本への様々な投資を行っています。
当社では、特にダイバーシティの推進に従前から力を入れており、多様な人材が活躍できる環境整備や社内周知の徹底、研修実施等に取り組んでいます。当社の事業の多角化が進むとともに、多様な人材活用の必要性が一層高まっており、多様な人材が活躍できる企業風土実現のため、積極的にDE&Iを推進し、ソフトバンクを躍動感のあふれる会社にしていくことを目指しています。
(a)チャレンジ・成長できる環境整備
新規事業の立ち上げや新会社設立の際には、ジョブポスティング制度でメンバーを公募し、従業員が自己成長・自己実現できる機会を提供しているほか、社内起業制度であるソフトバンクイノベンチャーで独創性・革新性に富んだアイデア(新規事業)を募集しています。このように、社員全員が変化を楽しみワクワクしながら目標に向かって進む、当社はそんな活力あふれる組織となることを目指しています。
(b)デジタル人材確保・育成の取り組み(事業即応性)
デジタル技術の進展により、企業および社会のデジタル化が進展しています。当社の事業戦略において、デジタル人材育成は非常に重要なテーマの一つです。当社ではデジタル人材を、データやテクノロジーを使って産業界に大きな変革を起こせる人材と定義し、育成の取り組みを進めています。全社員向けには「ソフトバンクユニバーシティTech」を立ち上げ、社員がテクノロジーとデータについて学べる環境づくりを進めています。また、法人統括内では、デジタル化に取り組む法人企業に対し顧客の経営課題解決に直結するソリューションセールスを推進できる人材を育成する「コンサルティング営業育成プログラム」や、社会のデジタル化を担う新規事業開発人材を育成する「事業プロデューサー制度」など、エンタープライズ事業が進めるデジタル戦略の中核を担うデジタル人材の育成に積極的に取り組んでいます。成長戦略「Beyond Carrier」を推進していく中で、既存事業に比べ、短期での個々人の成果が見えにくい新たな取り組みをいかに評価し、必要な人材を配置していくかなど、評価制度や人材活用に関する人事的な課題にも対応しています。事業戦略に沿った新たな事業を育てるために、人事が柔軟に変化・対応していくことが非常に重要だと考えています。
(c)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組み
当社では、年齢、性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず、多様な人材が個性や能力を発揮できる機会と環境の整備に取り組んでいます。社内におけるダイバーシティの推進は、人事を担当する専務執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者)が責任を持ち、その監督のもとで行っています。組織ごとの課題に向き合い、人事本部の専任組織・ダイバーシティ推進課を中心に、全社員対象のアンコンシャスバイアスに関するeラーニング研修や、管理職対象のダイバーシティマネジメント研修の実施などの取り組みを行っています。
(d)健康経営
当社は、社員一人一人が心身共に健康であることが、会社と個人の夢・志の実現に向けた原動力であり、社員の健康を維持・向上させることは重要な経営課題の一つと位置付け、「健康経営宣言」を掲げています。情報革命の新たなステージに挑戦し、成長し続けるためには、常に活力あふれた集団であることが最も大事な基盤です。ソフトバンクらしく最先端のテクノロジーを積極的に活用し、社員とその家族の健康維持・増進に取り組む健康経営を推進します。
チャレンジ・成長できる環境整備
デジタル人材確保・育成の取組(事業即応性)
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組み
健康経営
(注) 指標と目標および実績の範囲は、ソフトバンク㈱のみが対象
(注1) 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出した実績
(注2) SPQ(Single-Item Presenteeism Question 東大1項目版)にて取得
(注3) 傷病による欠勤・休職
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクならびにリスクの管理体制および管理手法を記載しています。なお、主要なリスクは、当社グループが事業を遂行する上で発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。また、文中における将来に関する事項は別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.リスク管理体制
当社では、さまざまな角度から全社的なリスクを特定し、リスクの顕在化を防止するため、「3線モデル」の考え方に基づく管理体制を整えています。第1線として、本社各部門が現場で各種施策を立案する際にリスクを含めた検討を実施するとともに、自部門におけるリスク管理を遂行しています。第2線として、リスク管理の責任者であるリスク管理室長のもと、事業部門から独立した組織であるリスク管理室が、全社的・網羅的にリスクの把握と対策状況を確認し(年2回実施)、リスク管理委員会に報告しており、社長、副社長、CFOなどを委員とし、監査役や関係部門長が参加するリスク管理委員会では、リスクの重要度や対応する責任者(リスクオーナー)を定め、対策指示などを行い、リスク管理室長を通じて状況を取締役会に報告しています。なお、リスク管理委員会では、情報セキュリティ経験を有する取締役(代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一)が中心となり当社グループに重要な影響を与えるリスク(通信サービスリスク、情報セキュリティリスク、情報システムリスク等を含む)を監督しています。
内部監査室は第3線として、第1線と第2線から独立した立場から、これら全体のリスク管理体制・状況を監査しています。
また、これとあわせて、リスク抽出プロセス等を含むリスク管理委員会における検討の内容を、リスク管理室長より会社業務の執行を監督する社外取締役および監査役に報告し、リスク管理手法や改善点等に関する意見を得て、リスク管理の対策等に反映しています。
なお、グループ全体のリスク管理の観点から、子会社・関連会社からの報告体制を整備するとともに、それぞれが抽出した事業に関連するリスクとその対策状況の定期的なチェックを実施しています。
当社はインシデントの未然防止に努めていますが、万が一インシデントが発生した場合には、発生部門が第1線としてインシデントの内容および影響を確認し、インシデント影響度判断基準に定める報告基準に従ってリスク管理室へ報告を行っています。リスク管理室は都度インシデントの影響度を評価し、当社グループの経営に重要な影響を及ぼす可能性のあるインシデントについては、速やかに経営陣、社外取締役、監査役等へ報告を行っています。
また、インシデントの影響低減や再発防止策の検討・実施に関しては、第1線である本社各部門が主体的に具体的な対策を検討・実行し、リスク管理室は第2線としてこれらの対策内容や実施状況を確認・評価するとともに、必要に応じて助言・指導を行う体制を整えています。第1線の現場に即した実効性の高い対応策を推進しつつ、第2線がリスク管理の枠組みやルールに基づいて適切な監督を行い、インシデントの再発防止と影響の最小化に努めています。

※1 リスクトレンド分析:最新のニュースや公開情報をもとにした分析を行い、新しい視点でのリスク抽出の材料とする手法
※2 KRI(Key Risk Indicators):重要リスク評価指標
※リスク管理と監査について、それぞれの責任者であるリスク管理室長と内部監査室長が、それぞれの職責に基づき独立して取締役会に報告しています。
※当社では、外部からのリスク管理に関する評価として、金融商品取引法で定められている内部統制報告制度及びSSAE18に準拠した第三者機関による内部統制の評価(年に1回)を受け、リスク体制の更なる精度向上に努めています。
2.リスク管理手法
当社は、各種施策の立案時にビジネスの機会とあわせて潜在するリスクも検討することに加え、当社グループのリスクを幅広く抽出、選定、評価するため、リスクの見直しを含めて、年度ごとに以下のようなPDCAサイクルを回すことにより、 複雑化・多様化するリスクの発見、低減、顕在化の未然防止に取り組んでいます。

(1) Plan:リスク管理室は、リスク分類表(当社と当社の子会社・関連会社の事業遂行に関わりのあるリスクシナリオから構成)を用いたリスクアセスメントや、当社の各本部長および主要子会社・関連会社の経営陣へのヒアリングを実施することに加え、当該年度のリスクオーナー(リスクの責任者)等へのインタビューを行っています。リスク管理委員会においては、現場と経営の双方の目線に基づき抽出したリスクを対象に、当社に重要な影響を与えるリスクを選定し、リスクオーナーを指名しています。その際、さまざまな観点からリスクを抽出するために、事前にリスクおよび機会を含めた外部環境レポート等の情報提供や、短期/中長期の観点も含めた質問を通じ、情報を収集することで、より多面的なリスク分析を行っています。
(2) Do:リスクオーナーは、リスク管理委員会が選定した当社に重要な影響を与えるリスクに基づき、リスクの対策等を検討し、実施しています。
(3) Check:リスク管理室は、リスクオーナーによる対策状況を月次でモニタリングし、経営陣に報告するとともに、リスク管理委員会に対策状況等を報告し、リスク管理委員会は、報告に基づき、対策の実施状況等の確認やリスクの見直しおよび追加対策の必要性等を確認しています。
(4) Action:リスクオーナーは、リスク管理委員会で追加対策が必要と判断された場合には、改善策や追加対策等を検討し、実施しています。

※「取締役会」には、社外取締役・監査役への事前説明会を含みます。
当社では、広くリスクと機会を抽出し、重要度と優先度を判断した上で、対策や各種施策内容に反映させていくための仕組みを導入しています。
リスクアセスメントやインタビューに際して、従来のリスクだけでなく、機会を含めてヒアリングするとともに、会社への影響を検討する時期軸を短期(数年以内)、中期(3年から5年程度)、長期(10年から30年程度)と設定し、より適切な分析を目指しています。
集約されたリスクについては、リスク管理委員会を中心に対策を講じるとともに、機会についての情報は、組織間で情報連携を行い、サステナビリティ戦略の立案やマテリアリティの策定等にも活用しています。
研修等の実施
新入社員を含む当社の全社員に向けては、取り組むべきリスクの社内周知やリスク管理に関する研修(eラーニングなど)等を実施し、加えて社内からの相談窓口を設置しているほか、子会社・関連会社に対しては当社と共通の研修資料を共有し、必要に応じて研修を実施しています。加えて、リスク管理は管理職を含めた従業員の能力評価に組み込まれるとともに、報酬に関する評価に反映されています。
また、取締役・監査役に向けては、定期的に、リスク管理、コンプライアンスなどに関する社内外の研修等を実施しており、社外取締役や社外監査役に対しても、リスク管理に関する適切な助言を得るため、就任時、また就任後も定期的に、リスクの選定と対策状況、リスクの見直し結果をはじめ、当社グループの事業内容、直近のリスク動向・技術動向を含めた最新のリスク関連情報などを説明し、理解する機会を設けています。
3.事業等のリスク
(1) 経営戦略上のリスク
当社グループは、スマートフォンやブロードバンド契約数の拡大、および5Gの取り組みを通じ、通信事業のさらなる成長を目指しています。そのため、安全性と信頼性の高い通信ネットワークを構築し、継続して安定的に運用していくことや、特長の異なる3つのブランドを提供するマルチブランド戦略の推進などが重要であると考えています。また、「Yahoo! JAPAN」、「LINE」といったインターネットサービスや、キャッシュレス決済サービス「PayPay」などAI、IoT、FinTechなどの最先端テクノロジーを活用したビジネスの立ち上げを通じ、引き続き通信以外の領域の拡大を目指します。
係る戦略に関連して経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。
(2) 法令・コンプライアンスに関するリスク
(3) 財務・経理に関するリスク
(4) 上記以外に、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
当連結会計年度における経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に関する認識および分析・検討内容は次の通りです。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
a.事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況
(a) 事業全体の状況
ⅰ.経営環境と当社グループの取り組み
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業を手がけ、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ企業価値の最大化に取り組んでいます。このため、取り組むべき6つのマテリアリティ(重要課題)(注1)を特定し、事業を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献しています。
2025年3月期の国内景気は、地政学リスクの高まり、インフレおよび為替の大幅な変動による先行き不透明感が続くなか、大企業の堅調な設備投資需要などにより緩やかな回復傾向にありました。一方、テレワークやオンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、コロナ禍をきっかけとした人々の生活様式の変化や深刻化する人手不足に対応するため、企業や行政のデジタル化は必要不可欠なものとなりました。デジタル化は、生産性向上やイノベーションの創発を促すことで今後の日本の社会を変革していく原動力となり、さらに、文章・画像・プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができる生成AIの出現により、変革のスピードは加速しています。このような環境の下、情報・テクノロジー領域のさまざまな事業を展開する当社グループが果たすべき役割は、ますます重要性を増しています。
当社は2023年5月、3カ年の中期経営計画とともに、長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指すことを発表しました。これは、AIの加速度的な進化により急増すると予見されるデータ処理や電力の需要に対応できる構造を持ったインフラを構築し、未来の多様なデジタルサービスを支える不可欠な存在となることを意図しています。そして、この長期ビジョンの実現に向け、本中期経営計画においては事業基盤を着実に再構築することを掲げています。すなわち、成長戦略「Beyond Carrier」を推進することにより通信料の値下げの影響からの回復に取り組み、この計画期間の最終年度である2026年3月期には、親会社の所有者に帰属する純利益を最高益とすることを目指しています。なお、2023年5月には2026年3月期の親会社の所有者に帰属する純利益の予想を5,350億円と発表しましたが、好調な業績を背景として、2025年5月に5,400億円へ上方修正しました。成長戦略「Beyond Carrier」とは、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的にグループの事業を拡大し、企業価値の最大化を目指すものです。また、通信事業とそれらのグループ事業との連携を強化することを通じて、通信事業の競争力を高め、さらにグループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメントの向上などのシナジーの創出を推進します。

<経営環境に関する認識>
当社グループが認識している主な外部環境要因および対応は以下の通りです。
<主な取り組み>
・通信分野では、2024年5月、当社とKDDI㈱は5G(注3)ネットワークにおける共同構築に関する取り組みについて、その対象を地方から全国(注4)へ拡大するなど、協業範囲を拡大する検討を開始することに合意しました。今後は、5Gに加えて、4Gの基地局資産の相互利用についても検討を進めます。また、当社は2024年11月に、AIとRAN(注5)を統合したソリューション「AITRAS(アイトラス)」を発表しました。「AITRAS」はNVIDIA AIコンピューティングインフラ上に、大容量、高性能かつ高品質なRANを提供するだけでなく、生成AIなどさまざまなAIアプリケーションの提供も、同時かつ効率的に運用できるソリューションです。今後、当社は「AITRAS」を自社の商用ネットワークへ導入するだけではなく、国内外の通信事業者などへ展開・拡大することを目指します。さらに、当社は、モバイルブロードバンドのさらなる高速化とトラフィックの需要増加に対応するため、4.9GHz帯を使用する特定基地局の開設計画を総務省に申請し、2024年12月に総務大臣より認定を受けました。今後、当社は2031年3月期末までにすべての都道府県に特定基地局を開設し、2032年3月期末までにサービスを開始することを目指します。
・生成AI等の新規領域では、2024年5月、経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資クラウドプログラムの供給確保計画」について、経済産業省から認定を受けました。当社はAI計算基盤をさらに拡張するため、約1,500億円の設備投資を行い、2025年3月期から2026年3月期にかけて国内の複数の拠点にAI計算基盤を新たに構築予定です。今回、この拡張計画が経済産業省に認定され、最大421億円の助成を受ける予定です。また、2025年2月、当社、ソフトバンクグループ㈱およびOpenAIは、個々の企業のすべてのシステム、データを安全に統合し、各企業専用にカスタマイズされた最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」の開発・販売に関するパートナーシップを発表し、当該AIの日本企業向けの独占販売権を持つ合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立することに合意しました。さらに、当社は2025年3月に、大規模なAIデータセンターの構築に向けて、大阪府堺市にあるシャープ㈱の液晶パネル工場関連の土地や建物などを取得することについて、同社と売買契約を締結しました。受電容量が約150メガワット規模のAIデータセンターを構築し、2026年中の稼働開始を目指します。
・エンタープライズ事業では、2024年9月に、当社グループのICTサービス中核会社であり当社の子会社であるSBテクノロジー㈱を完全子会社化するための株式併合を実施しました。SBテクノロジー㈱の完全子会社化により、同社の有するエンジニアやセキュリティ・クラウドサービスおよび当社の有する顧客基盤、エンジニア、ネットワークをはじめとするコミュニケーションサービス、AI/IoT/5G/デジタルマーケティングサービス等の経営資源を相互活用していきます。両社が一体となって、DX(注6)推進を課題と感じている顧客に対する効果的なITサービスを提供することが可能となり、ひいては国内ITサービス市場において競争優位性を維持・強化することができると考えています。
・ファイナンス事業では、2024年12月に、LINEヤフー㈱の子会社であるZフィナンシャル㈱が保有するPayPay銀行㈱(注7)の株式をPayPay㈱に譲渡することを決定しました。また、2025年2月には、PayPay㈱は当社およびLINEヤフー㈱からPayPay証券㈱(注7)の株式を譲り受けるとともに、PayPay証券㈱が実施する第三者割当増資を引き受けることを決定しました。今後、PayPay㈱は、PayPay銀行㈱とPayPay証券㈱の親会社となることで連携を強化し、金融サービスのさらなる利便性や顧客満足度の向上を目指します。
・当社は、2024年10月1日を効力発生日として普通株式1株につき10株の割合をもって株式分割を実施するとともに、普通株式に係る株主優待制度を新設しました。株主優待制度については、普通株式を1年以上かつ100株以上保有の株主を対象(注8)に、PayPayマネーライト(1,000円分)(注9)を贈呈します。当社は、株式分割の実施と株主優待制度の新設を通じて、若年層を含む新たに投資を始める方に、初めて投資する株式として当社株式を選択いただき、その長期保有を促していきます。さらに、当社関連サービスの利用を通じて、当社グループの事業に関する理解を深めていただくことを目指します。株式分割の実施と株主優待制度を新設した効果もあり、株主数は2025年3月末時点で約136万人となり、2024年3月末から約50万人増加しました。
・当社は、2024年10月3日を払込期日として第2回社債型種類株式を発行しました。2023年11月に発行した第1回社債型種類株式と同じく、普通株式への転換権がない、累積配当ではあるものの当初設定された優先配当金以上の配当が行われない、議決権の希薄化が生じない設計となっており、普通株式の株主に配慮した形での自己資本の拡充を行いました。調達資金は、生成AIを用いたサービスの実現、次世代社会インフラの構築など中長期的な企業価値の向上に資する成長投資資金として、その設備投資資金に充当していくことを想定しています。
・当社は2024年11月に、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する企業を選出する「第6回日経SDGs経営大賞」において、史上初めて2年連続で大賞を受賞しました。さらに、継続して高い評価を得ている企業を別途認定する「プライムシート企業」にも選出されました。また、2024年12月には、世界の代表的なESG指数である「Dow Jones Sustainability Index(ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)」の「World Index」構成銘柄に3年連続で選定されました。
(注1) マテリアリティ(重要課題)の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) サステナビリティ全般 c.戦略及び指標及び目標 (b)マテリアリティ(重要課題)の特定」をご参照ください。
(注2) 長期有利子負債は、短期借入金およびIFRS第16号「リース」適用による影響を除いた有利子負債(銀行ローン・社債・リース負債・債権流動化)を指します。固定金利での借り入れは、固定金利および金利スワップ取引等により支払利息の固定化を行った一部の変動金利の借入金を含みます。
(注3) 5G(5th Generation)とは、第5世代移動通信システムのことを指します。
(注4) 沖縄セルラーを除きます。
(注5) RAN(Radio Access Network)とは、無線アクセスネットワークのことを指します。
(注6) DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術の活用による新たな価値・体験の提供および社会の変革を指します。
(注7) PayPay証券㈱は2025年4月1日に、PayPay銀行㈱は2025年4月11日にPayPay㈱による子会社化を完了しました。
(注8) 保有期間は3月31日から翌年3月31日まで、または9月30日から翌年9月30日までの間とし、初回は2025年3月31日から2026年3月31日までとします。当社株主名簿に記載または記録された日付であり、株式を取得した日等とは異なります。また、同一の株主番号で3月31日および9月30日最終の当社株主名簿に3回以上連続で記載または記録されている株主が対象です。
(注9) PayPayマネーライトは譲渡・請求書払い(税金以外)およびPayPay/PayPayカード公式ストアでも利用可能です。出金や自治体への請求書払い(税金など)には利用できません。
ⅱ.連結経営成績の概況
(注) 調整後EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費(固定資産除却損含む)+株式報酬費用±その他の調整項目。詳細は「(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
当期の連結経営成績の概況は、以下の通りです。
(ⅰ) 売上高
当期の売上高は、全報告セグメントで増収となり、前期比4,603億円(7.6%)増の65,443億円となりました。ディストリビューション事業は法人向けICT関連商材および継続収入商材の堅調な増加、AI計算基盤に係るセグメント間取引の影響などにより2,429億円(注)、コンシューマ事業は物販等売上およびモバイル売上の増加などにより1,303億円、エンタープライズ事業はデジタル化に伴うソリューション需要の増加などにより885億円、メディア・EC事業はメディア売上およびコマース売上の増加などにより640億円、ファイナンス事業はPayPay㈱およびPayPayカード㈱が展開するQRコード決済やクレジットカードの決済取扱高の増加などにより445億円、それぞれ増収となりました。
(注) AI計算基盤に係るセグメント間取引の影響を除く売上高の増加分は1,621億円です。
(ⅱ) 営業利益
当期の営業利益は、全報告セグメントで増益となり、前期比1,129億円(12.9%)増の9,890億円となりました。メディア・EC事業がLINEヤフーグループにおいて子会社の支配喪失に伴う利益を計上したことや広告売上が増加したことなどにより693億円の増益となったほか、ファイナンス事業が382億円、コンシューマ事業が352億円、ディストリビューション事業が42億円、エンタープライズ事業が34億円、それぞれ増益となりました。なお、PayPay㈱およびPayPayカード㈱が展開するQRコード決済やクレジットカードの決済取扱高の増加に伴い、当期のファイナンス事業のセグメント利益は黒字に転じています。
(ⅲ) 純利益
当期の純利益は、前期比650億円(11.0%)増の6,553億円となりました。これは主として、保有する投資有価証券の評価損の計上、LINEヤフーグループが保有するWebtoon Entertainment Inc.に対する持分比率の変動に伴う持分変動利益の剥落、持分法適用関連会社を対象とするプット・オプションの評価損の計上があった一方、前述した営業利益の大幅増加によるものです。
(ⅳ) 親会社の所有者に帰属する純利益
当期の親会社の所有者に帰属する純利益は、前期比371億円(7.6%)増の5,261億円となりました。なお、非支配持分に帰属する純利益は、主としてLINEヤフーグループの純利益が増加したことに伴い、前期比280億円(27.6%)増の1,292億円となりました。
(ⅴ) 調整後EBITDA
当期の調整後EBITDAは、前期比855億円(5.1%)増の17,531億円となりました。これは主として、営業利益が増加したことによるものです。
(b) セグメント情報に記載された区分ごとの状況
ⅰ.コンシューマ事業
<事業概要>
コンシューマ事業では、主として国内の個人のお客さまに対し、モバイルサービス、ブロードバンドサービスおよび「おうちでんき」などの電力サービスを提供しています。また、携帯端末メーカーから携帯端末を仕入れ、ソフトバンクショップ等を運営する代理店または個人のお客さまに対して販売しています。
<業績全般>
(注) 2024年6月30日に終了した3カ月間より、「コンシューマ事業」に区分されていた一部の子会社を「その他」に移管しました。これに伴い、2024年3月31日に終了した1年間の数値を遡及修正しています。
(注1) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
売上高の内訳
(注) 2024年6月30日に終了した3カ月間より、「コンシューマ事業」に区分されていた一部の子会社を「その他」に移管したことに伴い、同社が含まれていた「ブロードバンド」について、2024年3月31日に終了した1年間の数値を遡及修正しています。
コンシューマ事業の売上高は、前期比1,303億円(4.6%)増の29,529億円となりました。そのうち、サービス売上は前期比518億円(2.4%)増の22,390億円となり、物販等売上は前期比784億円(12.3%)増の7,139億円となりました。
サービス売上のうち、モバイルは前期比526億円(3.5%)増加しました。これは主として、売上から控除している顧客獲得施策の影響が減少したこと、およびスマートフォン契約数が「ワイモバイル」ブランドを中心に伸びたことによるものです。なお、通信料の年度平均単価は、前期には120円低下したものの、当期は前期比で横ばいとなりました。これは主として、低価格の「ワイモバイル」ブランドのユーザー数の増加による下落影響を、2023年10月に導入した新料金プランの浸透により吸収したことによるものです。なお、各四半期連結会計期間のモバイル売上(顧客獲得施策影響を除く)は、2024年3月期第3四半期以降、前年同期比で増収に転じています。
(注) 一部の顧客獲得施策はIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に基づき、モバイル売上から控除しています。
ブロードバンドは前期比49億円(1.2%)増加しました。これは主として、光回線サービス「SoftBank 光」契約数(注)が増加したことによるものです。
でんきは前期比57億円(2.2%)減少しました。これは主として、「おうちでんき」契約数が減少したことによるものです。
物販等売上の増加は、主として、販売端末の平均単価が増加したことによるものです。
営業費用は24,224億円となり、前期比で950億円(4.1%)増加しました。これは主として、スマートフォンなどの仕入原価および販売促進費が増加したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比352億円(7.1%)増の5,304億円となりました。
(注)「SoftBank Air」契約数を含みます。
ⅱ.エンタープライズ事業
<事業概要>
エンタープライズ事業では、法人のお客さまに対し、モバイル回線提供や携帯端末レンタルなどのモバイルサービス、固定電話やデータ通信などの固定通信サービス、データセンター、クラウド、セキュリティ、グローバル、AI、IoT、デジタルマーケティング等のソリューションサービスなど、多様な法人向けサービスを提供しています。
<業績全般>
(注) 2024年6月30日に終了した3カ月間より、「その他」に区分されていたSBテクノロジー㈱およびサイバートラスト㈱等を「エンタープライズ事業」に移管しました。これに伴い、2024年3月31日に終了した1年間の数値を遡及修正しています。
(注1) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
売上高の内訳
(注) 2024年6月30日に終了した3カ月間より「エンタープライズ事業」に移管したSBテクノロジー㈱およびサイバートラスト㈱等の売上高は「ソリューション等」に含まれています。また、2024年6月30日に終了した3カ月間より事業の管理区分を見直し、「モバイル」および「固定」における一部商材を「ソリューション等」へ移管しました。これらに伴い、2024年3月31日に終了した1年間の「エンタープライズ事業」の売上高の内訳すべてを遡及修正しています。
エンタープライズ事業の売上高は、前期比885億円(10.6%)増の9,224億円となりました。そのうち、モバイルは前期比13億円(0.4%)増の3,159億円、固定は前期比44億円(2.6%)減の1,693億円、ソリューション等は前期比916億円(26.5%)増の4,372億円となりました。
モバイル売上の増加は、主として、契約者数の増加に伴い通信売上が増加したことによるものです。
固定売上の減少は、主として、電話サービスの契約数が減少したことによるものです。
ソリューション等売上の増加は、WeWork Japan合同会社の事業を承継したことに加え、企業のデジタル化需要をとらえ、クラウドサービス、セキュリティソリューション、IoTソリューションなどの売上が増加したこと、およびCubic Telecom Ltd.の子会社化の影響などによるものです。
営業費用は7,521億円となり、前期比で850億円(12.7%)増加しました。これは主として、前述のWeWork Japan合同会社の事業承継やCubic Telecom Ltd.の子会社化による影響、上記ソリューション等売上の増加に伴う原価の増加、前期に計上した訴訟に係る引当金の戻入の剥落によるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比34億円(2.1%)増の1,703億円となりました。
ⅲ.ディストリビューション事業
<事業概要>
ディストリビューション事業は、変化する市場環境を迅速にとらえた最先端のプロダクトやサービスを提供しています。法人のお客さま向けには、クラウドサービス、AIを含めた先進テクノロジーを活用した商材を提供しています。個人のお客さま向けには、メーカーあるいはディストリビューターとして、ソフトウエアやモバイルアクセサリー、IoTプロダクト等、多岐にわたる商品の企画・提供を行っています。
<業績全般>
(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
ディストリビューション事業の売上高は、前期比2,429億円(37.6%)増の8,895億円となりました。これは主として、法人向けのICT関連の商材や注力しているクラウドやSaaSなどの継続収入商材の堅調な伸長、AI計算基盤に係るセグメント間取引(注)の影響、およびサポートが終了するWindows 10からの移行に伴うPC売上の増加によるものです。
営業費用は8,591億円となり、前期比で2,387億円(38.5%)増加しました。これは主として、売上高の増加に伴い売上原価が増加したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比42億円(16.0%)増の304億円となりました。
(注) SB C&S㈱が、NVIDIAから仕入れたAI計算基盤をソフトバンク㈱へ売却したことに伴う、「その他」への売上高です。
ⅳ.メディア・EC事業
<事業概要>
メディア・EC事業は、メディアおよびコマースを中心としたサービスを展開し、オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供しています。メディア領域においては、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションアプリ「LINE」での広告関連サービス、コマース領域においては「Yahoo!ショッピング」、「ZOZOTOWN」などのオンラインショッピングサービスや「Yahoo!オークション」などのリユースサービス、戦略領域においては、メディア・コマースに次ぐ新たな収益の柱となるよう取り組んでいるFinTechサービス等の提供を行っています。
<業績全般>
(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
売上高の内訳
(注) 2024年12月31日に終了した3カ月間において、LINEヤフーグループでは事業の管理区分を見直し、「メディア」に区分されていた一部のサービスを「コマース」に移管しました。これに伴い、2024年3月31日に終了した1年間の「メディア・EC事業」の売上高のうち、「メディア」および「コマース」の内訳を遡及修正しています。
メディア・EC事業の売上高は、前期比640億円(4.0%)増の16,781億円となりました。そのうち、メディアは前期比295億円(4.2%)増の7,239億円、コマースは前期比209億円(2.5%)増の8,461億円、戦略は前期比127億円(14.5%)増の1,003億円、その他は前期比8億円(12.1%)増の77億円となりました。
メディア売上の増加は、主として、アカウント広告の増収によるものです。
コマース売上の増加は、主として、ZOZOグループ(㈱ZOZOおよび子会社)やアスクルグループ(アスクル㈱および子会社)における取扱高が増加したことや、トラベル・飲食予約などを扱うサービスEC事業が好調に推移したことによるものです。
戦略売上の増加は、主として、PayPay銀行㈱等のFinTech領域の売上が増加したことによるものです。
営業費用は14,108億円となり、前期比で54億円(0.4%)減少しました。これは主として、販売促進費の増加、セキュリティ対策費用の増加および売上高の増加に伴う売上原価等の増加があった一方、IPX Corporation、LINE NEXT Corporation、バリューコマース㈱のそれぞれにつき子会社の支配喪失に伴う利益の計上、LINEヤフー㈱等で減損損失が減少したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比693億円(35.0%)増の2,673億円となりました。
ⅴ.ファイナンス事業
<事業概要>
ファイナンス事業では、QRコード決済やクレジットカードなどのキャッシュレス決済サービス、加盟店のマーケティングソリューションの開発・提供、資産運用などの金融サービス、およびクレジットカード・電子マネー・QRコードなど多様化する決済を一括で提供する決済代行サービスなどを提供しています。
<業績全般>
(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
ファイナンス事業の売上高は、前期比445億円(19.1%)増の2,773億円となりました。これは主として、PayPay㈱およびPayPayカード㈱が展開するQRコード決済やクレジットカードの決済取扱高が増加したことによるものです。
営業費用は2,441億円となり、前期比で63億円(2.7%)増加しました。これは主として、固定費の最適化に伴う費用抑制があった一方で、前述の通りPayPay㈱およびPayPayカード㈱が展開するQRコード決済やクレジットカードの決済取扱高の増加により、ポイント還元などに係る販売促進費が増加したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比382億円増の332億円となり、黒字化しました。
当社グループは、コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの5つのセグメントと、それ以外の事業から構成されています。いずれも、受注生産形態をとらない事業であるため、セグメントごとに生産の規模および受注の規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。なお、当連結会計年度における販売の状況については以下の通りです。
(注) 1 金額は、外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高または振替高の合計です。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しています。
(注1) 設備投資は検収ベースでの記載です。
(注2) コンシューマ事業およびエンタープライズ事業の設備投資は、レンタル端末への投資額、他事業者との共用設備投資(他事業者負担額)、4.9GHz帯の特定基地局開設料およびIFRS第16号「リース」適用による影響は除きます。
(資産)
当期末の資産合計は、前期末から5,803億円(3.7%)増加し、161,022億円となりました。これは主として、現金及び現金同等物の減少5,573億円があった一方で、その他の金融資産の増加3,744億円、銀行事業の有価証券の増加2,248億円、有形固定資産の増加1,982億円、営業債権及びその他の債権の増加1,446億円、使用権資産の増加870億円があったことによるものです。なお、有形固定資産の増加は、シャープ㈱の堺工場の土地建物やAI計算基盤等の取得があったことによるものです。使用権資産の増加は、WeWork Japan合同会社の事業承継の影響によるものであり、承継した不動産賃貸借契約の定める将来の施設利用権を資産として認識したものです。
(負債)
当期末の負債合計は、前期末から2,506億円(2.2%)増加し、118,368億円となりました。これは主として、有利子負債の減少3,587億円があった一方で、営業債務及びその他の債務の増加2,936億円、銀行事業の預金の増加1,528億円があったことによるものです。有利子負債は、社債発行やWeWork Japan合同会社の事業承継に伴いリース負債を計上したことによる増加があったものの、各種借入の約定弁済をしたことなどにより減少となりました。
(資本)
当期末の資本合計は、前期末から3,297億円(8.4%)増加し、42,654億円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は、3,666億円増加しました。これは主として、剰余金の配当による減少4,089億円があった一方で、当期の純利益の計上による増加5,261億円、第2回社債型種類株式を含む新株の発行による増加2,238億円があったことによるものです。
(設備投資)
当期の設備投資は、前期比2,619億円増の9,128億円となりました。これは主として、AI計算基盤・AIデータセンター関連投資およびLINEヤフーグループの設備投資が増加したこと、並びに2025年3月期第3四半期連結会計期間において、4.9GHz帯を使用する特定基地局開設料として無形資産に665億円(注3)を計上したことによるものです。
(注3) 特定基地局開設料の支払期間は16年間です。認定期間にわたる長期の支払い方式である点を踏まえ、現在価値に割り引いて算出しています。
(注1) フリー・キャッシュ・フロー、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)、プライマリー・フリー・キャッシュ・フローの算定方法は、「(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
(注2) 調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)=フリー・キャッシュ・フロー+(割賦債権の流動化による調達額-同返済額)-LINEヤフーグループ、PayPay等のフリー・キャッシュ・フロー+Aホールディングス㈱からの受取配当、PayPay証券㈱への出資など。なお、LINEヤフーグループ、PayPay等にはAホールディングス㈱、LINEヤフー㈱および子会社(LINEヤフーグループ)、Bホールディングス㈱、PayPay㈱、PayPayカード㈱、PayPay証券㈱などを含みます。
(注3) プライマリー・フリー・キャッシュ・フローは、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)に、長期性の成長投資として支出した金額を足し戻した指標です。なお、長期性の成長投資はAI計算基盤・AIデータセンター関連投資、Cubic Telecom Ltd.への出資を含みます。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは13,679億円の収入となり、前期比では1,282億円収入が増加となりました。これは主として、EBITDAが増加したことに加えて、法人所得税の支出の減少や還付の増加があったことによるものです。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
当期の投資活動によるキャッシュ・フローは9,952億円の支出となり、前期比では676億円支出が増加となりました。これは主として、前期においてCubic Telecom Ltd.の子会社化に伴う株式の取得があり、当期では通信事業関連の支出が減少しましたが、シャープ㈱の堺工場の土地建物の取得やAI計算基盤等への成長投資がそれらを上回ったことによるものです。
なお、この投資活動によるキャッシュ・フローには、長期性の成長投資に係る支出1,669億円が含まれています。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
当期の財務活動によるキャッシュ・フローは9,564億円の支出となりました。これは、銀行借入・リース・社債・債権流動化・第2回社債型種類株式の発行などの資金調達による収入が18,943億円あった一方で、借入金の約定弁済・配当金支払・子会社株式の取得などの支出が28,507億円あったことによるものです。
d.現金及び現金同等物の期末残高
a.~c.ほかの結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末比5,573億円減の14,355億円となりました。
e.プライマリー・フリー・キャッシュ・フロー
当期のプライマリー・フリー・キャッシュ・フローは6,033億円の収入となり、前期比では43億円の収入の減少となりました。これは主として、2025年3月期第2四半期連結会計期間にAホールディングス㈱が実施した、LINEヤフー㈱株式の売却に伴う手取金にかかる当社への配当金があった一方で、割賦債権の流動化による収入が減少したことによるものです。
当社の財務戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営方針 d.財務戦略」をご参照ください。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
<各指標の計算方法>
親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分合計/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(※1)/キャッシュ・フロー(※2)
インタレスト・カバレッジ・レシオ:調整後EBITDA(※3)/支払利息(※4)
(※1) 有利子負債は連結財政状態計算書の流動負債と非流動負債の中の有利子負債の合計値を使用しています。
(※2) キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
(※3) 算出方法は、「(4)<財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標 a.調整後EBITDA」をご参照ください。
(※4) 支払利息は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
当社グループは、IFRSで定義されていないか、IFRSに基づき認識されない財務指標を使用しています。経営者は、当社グループの業績に対する理解を高め、現在の業績を評価する上での重要な指標として用いることを目的として、当該指標を使用しています。当該指標はIFRSでは定義されていないため、他社において当社グループとは異なる計算方法または異なる目的で用いられる可能性があります。そのため、比較可能性を担保する観点から、その有用性を制限しています。
a.調整後EBITDA
調整後EBITDAは、営業利益に「減価償却費及び償却費(固定資産除却損を含む)」、「株式報酬費用」および通常の事業活動では発生しない費用・収益である「その他の調整項目」を加減算したものです。「その他の調整項目」には、連結損益計算書に記載されている「その他の営業収益」および「その他の営業費用」が含まれています。
当社グループは、非現金取引の影響を除いた業績評価のための指標として調整後EBITDAを使用しています。調整後EBITDAは、当社グループの業績をより適切に評価するために有用かつ必要な指標であると考えています。
営業利益と調整後EBITDAの調整は、以下の通りです。
(単位:億円)
(注) 上表の「減価償却費及び償却費」には、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 d. 連結キャッシュ・フロー計算書」に記載されている減価償却費及び償却費(2024年3月31日に終了した1年間7,438億円 2025年3月31日に終了した1年間7,480億円)に加えて、同計算書に記載されている固定資産除却損(2024年3月31日に終了した1年間253億円 2025年3月31日に終了した1年間220億円)が含まれています。
b.フリー・キャッシュ・フロー、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)、およびプライマリー・フリー・キャッシュ・フロー
フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加算して計算される指標です。
調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)は、フリー・キャッシュ・フローから端末の割賦債権流動化による資金調達額を加算し、当該返済額を減算するとともに、Aホールディングス㈱からの受取配当を加算し、LINEヤフーグループ、PayPay等のフリー・キャッシュ・フローを除くなどして計算される指標です。
プライマリー・フリー・キャッシュ・フローは、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)から中長期的な成長に資するAI計算基盤の構築などの戦略投資を除いた指標であり、主として当社および当社の完全子会社での既存事業における継続的な資金創出能力すなわち債務返済能力や配当金の支払い能力を評価するために有用な指標であると考えています。
なお、連結キャッシュ・フロー計算書上、割賦債権流動化による資金調達額および返済額は、財務活動によるキャッシュ・フローに含まれています。当社グループでは、割賦債権は営業活動の中で発生するものであることから、当該債権の流動化によるキャッシュ・フローを、営業活動によるキャッシュ・フローに加減算したものが、当社グループの経常的な資金創出能力をより適切に表すと考えています。従って、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)およびプライマリー・フリー・キャッシュ・フローの算出の過程において、割賦債権流動化の資金調達額および返済額をフリー・キャッシュ・フローの調整項目として加減算しています。
フリー・キャッシュ・フロー、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)、プライマリー・フリー・キャッシュ・フローの調整項目および調整額は以下の通りです。
(単位:億円)
(注1) 投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出)に関連するキャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる投資活動によるキャッシュ・フローの「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」および「有形固定資産及び無形資産の売却による収入」の純額です。
(注2) 投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出以外)に関連するキャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる投資活動によるキャッシュ・フローの「投資の取得による支出」、「投資の売却または償還による収入」、「銀行事業の有価証券の取得による支出」、「銀行事業の有価証券の売却または償還による収入」、「子会社の支配獲得による収支(△は支出)」、「子会社の支配喪失による収支(△は支出)」および「その他」の純額です。
(注3) 割賦債権流動化取引:調達額および割賦債権流動化取引:返済額に関連するキャッシュ・フローは、主として連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる財務活動によるキャッシュ・フローの「短期有利子負債の純増減額(△は減少額)」、「有利子負債の収入」および「有利子負債の支出」に含まれています。なお、割賦債権流動化取引のうち、短期間で調達および返済を行う取引については純額表示しています。
(注4) LINEヤフーグループ、PayPay等にはAホールディングス㈱、LINEヤフー㈱および子会社(LINEヤフーグループ)、Bホールディングス㈱、PayPay㈱、PayPayカード㈱、PayPay証券㈱などを含みます。
(注5) Aホールディングス㈱からの受取配当(2025年3月期第2四半期連結会計期間に同社が実施したLINEヤフー㈱株式の売却に伴う、当社への当該手取金の配当を含みます)、PayPay証券㈱への出資などを含みます。
(注6) AI計算基盤・AIデータセンター関連投資、Cubic Telecom Ltd.への出資を含みます。
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、当社グループにとって最適な会計方針を採用し、一定の前提条件に基づく見積りを行う必要があります。連結財政状態計算書上の資産および負債、連結損益計算書上の収益および費用、または開示対象となる偶発負債および偶発資産などに重要な影響を与える可能性がある項目に関して、経営者は、過去の経験や決算日時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき見積りを行っています。
以下の各項目は、その認識および測定にあたり、経営者の重要な判断および会計上の見積りを必要とするものです。
a.企業結合により取得した無形資産およびのれんの公正価値測定ならびに減損に係る見積り
企業結合により取得した無形資産およびのれんは、支配獲得日における公正価値で認識しています。企業結合時の取得対価の配分に際しては、経営者の判断および見積りが、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。企業結合により識別した無形資産(顧客基盤や商標権など)およびのれんは、見積将来キャッシュ・フローや割引率、既存顧客の逓減率、対象商標権から生み出される将来売上予想やロイヤルティレート等の仮定に基づいて測定しています。企業結合により取得した無形資産およびのれんの取得価額は、当連結会計年度は223億円(前連結会計年度は904億円)です。
また、無形資産およびのれんの減損を判断する際に、資金生成単位の回収可能価額の見積りが必要となりますが、減損テストで用いる回収可能価額は、資産の耐用年数、資金生成単位により生じることが予想される見積将来キャッシュ・フロー、市場成長率見込、市場占有率見込および割引率等の仮定に基づいて測定しています。
これらの仮定は、経営者の最善の見積りによって決定されますが、将来の不確実な経済条件の変動により影響を受ける可能性があり、仮定の見直しが必要となった場合には連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
企業結合により取得した無形資産およびのれんの公正価値に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (2) 企業結合」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6.企業結合」をご参照ください。無形資産およびのれんの減損に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (11) 有形固定資産、使用権資産、無形資産およびのれんの減損」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産」をご参照ください。
b.有形固定資産および無形資産の残存価額・耐用年数の見積り
有形固定資産および無形資産は、当社グループの総資産に対する重要な構成要素です。見積りおよび仮定は、資産の帳簿価額および減価償却費または償却費に重要な影響を及ぼす可能性があります。
資産の減価償却費は、耐用年数の見積りおよび残存価額(有形固定資産の場合)を用いて算出されます。資産の耐用年数および残存価額は、資産を取得または創出した時点で見積りを行い、その後、各連結会計年度末に見直しを行います。資産の耐用年数および残存価額の変更は、連結財務諸表に対して重要な調整を必要とする可能性があります。経営者は、資産を取得または創出した時点ならびに見直し時に、同種資産に対する経験に基づき、予想される技術上の変化、除却時の見積費用、当該資産の利用可能見込期間、既存顧客の逓減率、当該資産から得られると見込まれる生産高またはこれに類似する単位数および資産の耐用年数に制約を与える契約上の取決めなどの関連する要素を勘案して、当該資産の耐用年数および残存価額を決定しています。有形固定資産の減価償却費は、当連結会計年度は3,073億円(前連結会計年度は3,079億円)であり、無形資産の償却費は、当連結会計年度は2,720億円(前連結会計年度は2,764億円)です。
有形固定資産および無形資産の帳簿価額・減価償却費または償却費に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.有形固定資産」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産」をご参照ください。有形固定資産および無形資産の残存価額・耐用年数の見積りに関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (7) 有形固定資産、(9) 無形資産」をご参照ください。
c.金融商品の公正価値の測定方法
当社グループは、特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いています。観察可能ではないインプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。市場で観察可能ではないインプットを用いた金融資産の公正価値は、当連結会計年度末は3,750億円(前連結会計年度末は3,451億円)です。
金融商品の公正価値に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 30.金融商品の公正価値 (1) 公正価値ヒエラルキーのレベル別分類、(2) レベル3に分類した金融商品の公正価値測定」をご参照ください。
d.契約獲得コストの償却期間の見積り
当社グループは、契約獲得コストについて、契約獲得コストに直接関連する財またはサービスが提供されると予想される期間(すなわち、契約獲得コストの償却期間)にわたって、定額法により償却しています。契約獲得コストの償却期間は、契約条件および過去の実績データなどに基づいた解約率や機種変更までの予想期間などの関連する要素を勘案して決定しています。契約獲得コストの償却期間の変更は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。契約獲得コストに係る償却費は、当連結会計年度は2,415億円(前連結会計年度は2,421億円)です。
契約獲得コストに関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (16) 収益 b.契約コスト」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.契約コスト」をご参照ください。
当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結しています。
契約に関する内容等は、以下の通りです。
①シニアローン契約
(1) 契約締結日
2021年12月21日~2024年9月25日
(2) 金銭消費貸借契約の相手方の属性
都市銀行、信託銀行、外国銀行、地方銀行、その他の銀行、系統金融機関、信用金庫、政府系金融機関等
(3) 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高および弁済期限ならびに当該債務に付された担保の内容
期末残高 840,897百万円
弁済期限 2025年9月30日~2034年5月31日
なお、当該債務に付された担保はありません。
②Export Credit Agency保証付きローン契約
(1) 契約締結日
2020年2月17日~2024年6月28日
(2) 金銭消費貸借契約の相手方の属性
都市銀行、外国銀行
(3) 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高及び弁済期限ならびに当該債務に付された担保の内容
期末残高 182,225百万円
弁済期限 2025年5月28日~2036年11月30日
なお、当該債務に付された担保はありません。
財務上の特約の内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 24. 有利子負債」をご参照ください。
また、当社の子会社であるLINEヤフー㈱において、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結していますが、2024年4月1日前に締結された契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しています。
当社グループは、通信を基盤とした様々なサービスの提供を目指し、AI、IoT、ロボット、6G、HAPS(注)、デジタルツイン、自動運転や量子技術などの先端技術の研究開発を実施しています。「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと、来たるAI社会を支える基盤の構築と通信ネットワークの高度化を推進し、社会に広がる課題をテクノロジーの力で解決することを目指し、日々研究開発に取り組んでいます。
(注)HAPS(High Altitude Platform Station):成層圏を長期間飛び続ける無人航空機を通信基地局のように運用し広域エリアに通信サービスを提供するシステムの総称。
(研究開発活動の目的)
お客さまに対して最先端技術の製品を安定的に供給していくこと、および当社グループ内での情報通信技術の中長期的なロードマップを策定していくことを目標に、情報通信技術に関わる最先端技術の動向の把握、対外的なデモンストレーションを含む研究開発および事業化検討を目的としています。
(研究成果)
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果は以下の通りです。
HAPS向け大型機体「Sunglider」が成層圏飛行に成功
当社は、AeroVironment,Inc.と米国国防総省が2024年8月に米国で行った実証実験において、ソフトバンクの成層圏から通信サービスを提供するプラットフォーム(HighAltitude Platform Station、以下「HAPS」)向け大型無人航空機「Sunglider(サングライダー)」が成層圏飛行に成功しました。「Sunglider」は翼幅78mと他のHAPS向け無人航空機と比較しても大型で、75kgまでの通信ペイロードを搭載することができ、高速かつ大容量のモバイル通信を安定的に提供できることが特長です。
今回の実証実験では、構造面や機能面で改良された機体が使用され、そのパフォーマンスは米国国防総省の要求を満たしました。
当社はこの実験結果を今後の機体開発に活用し、更なる性能向上、長期間滞空、光無線通信の実現を目指し、商用化を加速させていきます。
AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」の開発
当社は、AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」の開発を本格的に開始しました。「AITRAS」により、従来は別々に構築されていたAI(人工知能)インフラとRAN(無線アクセスネットワーク)インフラを、同一のNVIDIA製プラットフォーム上で動作させることが可能となります。国内外の通信事業者は「AITRAS」を導入することで、従来のRANインフラを生かしながらAIインフラを構築することができるため、インフラ投資の効率化、運用の簡素化、リソースの最適化を実現できます。
当社が開発した「AITRAS」の L1(注1)ソフトウエアは、NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip(注2)プラットフォーム上で動作するように設計されており、信号の並列処理やタスク起動タイミングの最適化などにより、通信事業者が求める高いレベルの安定性と高性能を実現すると同時に、RAN容量の最大化や消費電力の削減にも貢献します。
また当社は、AI-RANのコンセプトの一つである、AIアプリケーションとvRAN(virtualized Radio Access Network、仮想無線アクセスネットワーク)アプリケーションを同一の仮想化基盤上で動作させることが可能なオーケストレーターを開発しました。オーケストレーターは、AIアプリケーションとvRANアプリケーションという特性の異なるソフトウエアを一つの仮想基盤上で高効率に共存させることができます。これにより限られた資源を最大限に活用し、かつ消費電力の削減といった経済的なメリットが期待できます。
「AITRAS」のエッジAIサーバーには、大規模言語モデル(LLM)の開発・展開を容易にする機能軍で構成されたソフトウエアプラットフォームであるNVIDIA AI Enterprise(注3)が実装されており、顧客である企業自身でAIアプリケーションを開発・展開することも可能になります。
当社は2025年以降に、通信事業者向けに「AITRAS」のリファレンスキットの提供を開始する予定です。当社は「AITRAS」を通じて、通信事業者の新たな強みを創出し、AIと通信の融合による豊かな社会の発展を促進してまいります。
(注1)L1:vRANソフトウエア構造におけるOSI参照モデル「物理層(第1層)」。
(注2)NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip:NVIDIA が開発した高性能計算(HPC)とAIに特化した巨大なプロセッサ。1つのパッケージにCPUとGPUを統合した点が特徴で、高性能かつ低消費電力な処理を実現する。
(注3)NVIDIA AI Enterprise:企業が AI を開発・導入するためのエンドツーエンドのソフトウエアプラットフォーム。
国内最大級のAI基盤の整備に向け、4.7エクサフロップスの計算能力の実現と「二相式DLC技術を最適化したラック統合型ソリューション」の開発
当社は、AIとの共存社会に向け、AI時代を支えるさまざまな社会基盤の構築に取り組んでいます。AI計算基盤の構築においては、2024年10月に新たに約4,000基のNVIDIA Hopper GPUの整備を完了し、AI計算基盤全体のGPUを約6,000基に拡張しました。これにより2023年9月から稼働しているAI計算基盤と比較して約7倍となる4.7EFLOPS(エクサフロップス)(注1)の計算処理能力を実現しています。
国内最大級(注2)のAI基盤の整備と国産大規模言語モデル(LLM)の開発に取り組む中、データセンターのエネルギー効率向上は、AI開発の加速と持続可能な社会の実現に不可欠といえますが、当社は、ZutaCore,Inc.(以下、ZutaCore)、Hon Hai Precision Industry Co.,Ltd.と協業し、NVIDIA H200 GPUを搭載したAIサーバー向けに、ZutaCoreの二相式DLC(Direct Liquid Cooling、直接液冷)技術(注3)を世界に先駆けて(注4)実装しました。
また当社は、二相式DLC技術を搭載した冷却機器をはじめとするサーバーの各構成要素を、ラックスケールで統合したラック統合型ソリューションを設計・開発し、このソリューションでラック単位での冷却効率としてpPUE1.03(実測値)を達成しました(注5)。
(注1)エクサ:10の18乗、フロップス:コンピューターの処理能力の単位。
(注2)2024年10月31日時点での公開情報に基づく。当社調べ。
(注3)二相式DLC技術:サーバー内部の半導体チップ(プロセッサ)上のコールドプレートに、水を使用しない絶縁性冷媒を二相式(液体、気体)で循環させて冷却する技術。
(注4)2025年1月時点、ZutaCore調べ。
(注5)ZutaCore調べ。pPUE(partial Power Usage Effectiveness)とは、データセンターの冷却効率を示す指標の一つであるPUE(Power Usage Effectiveness)に対して、サーバールームやモジュールなど特定の範囲や設備の効率を示す指標。数値が1.0に近いほど、エネルギー効率が良いことを示す。
自動運転の社会実装に向け「交通理解マルチモーダルAI」と「遠隔自動運転サポートシステム」を開発
当社は、自動運転車の運行業務の完全無人化を目指し、低遅延なエッジAIサーバーで動作する自動運転向け「交通理解マルチモーダルAI」(注1)を開発しました。
「交通理解マルチモーダルAI」は、自動運転車から送信された走行映像などを基に交通状況を判断し、そのリスクと対処法をリアルタイムで言語化することが可能です。また、日本の交通知識、走行シーン、リスクと対処方法を学習済みのAI基盤モデルを使用しているため、交通状況と走行リスクを高度に理解できることも特徴としてあげられます。
2024年10月に開始した実証実験では、エッジAIサーバー上で稼働させた「交通理解マルチモーダルAI」が、現在の「交通状況」「走行リスク」「リスク対処のための推奨動作」を生成し、外部から自動運転を遠隔サポートできることを確認しました。
当社はまた、レベル4(高度運転自動化)(注2)の自動運転の社会実装に向けて、AI-RANの統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」のエッジAI(人工知能)サーバー上で動作する「遠隔自動運転サポートシステム」を開発しました。
このシステムは、自動運転車に搭載した前方カメラの映像を5Gネットワーク経由でエッジAIサーバーに送信し、エッジAIサーバー上にある認知AIが送信された映像を基に前方の障害物や路面の形状などを即座に認知し、その結果を自動運転車へ伝送することで、自動走行をサポートします。
更に「遠隔自動運転サポートシステム」と「交通理解マルチモーダルAI」を連携させることで、自動運転車の自動運転システムや認知AIでは対応できない予測困難な事態に直面した場合でも、スムーズに走行を続けることが可能になります。
2025年2月に開始した実証実験では、横断歩道に障害物がある状況を「交通理解マルチモーダルAI」が分析して停車指示を出し、その停車指示を「AITRAS」のエッジAIサーバー上で動作する「遠隔自動運転サポートシステム」がリアルタイムで自動運転車へ伝送することで、障害物の手前で安全に停車できることを確認しました。
当社は「交通理解マルチモーダルAI」の精度を向上させ、将来的には「遠隔自動運転サポートシステム」と「交通理解マルチモーダルAI」を活用した自動運転車の運行業務の完全無人化を目指します。また当社は今後も自動運転の社会実装に向けた研究開発を推進してまいります。
(注1)マルチモーダルAI:テキストや音声、画像、センサー情報など、複数の異なるデータ種別から情報を収集し、それらを統合して処理するAIシステムのこと。
(注2)レベル4:特定の条件下で、システムが全ての運転のタスクを実施する状態のこと。
金属リチウム電池の寿命予測モデルの構築に成功
当社は国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下「NIMS」)との共同研究で、現行のリチウムイオン電池よりも複雑な劣化機構を持つ金属リチウム電池において、特定の劣化機構を仮定することでなく、機械学習を用いて高精度な寿命予測モデルを構築することに成功しました。
当社は、多数の金属リチウム電池セルの充放電データから抽出した放電、充電、緩和プロセスにおける特微量(注1)に基づいたデータ駆動型のアプローチを採用することで、予測精度に寄与する特微量を特定させ、決定係数(注2)R² = 0.89という高い精度の寿命予測を可能としました。
当社は、今後も寿命予測モデルの更なる高精度化、新規材料開発への活用を進めることで、高エネルギー密度金属リチウム電池の早期実用化を目指してまいります。
(注1)特微量:機械学習のモデルが学習や予測を行う際に使う、データの特徴を数値で表したもの。
(注2)決定係数:予測モデルのあてはまりの良さを表す指標。この値が1に近いほど、より予測精度の高いモデルであるといえる。
上記の他、主にHAPS、AI、広告関連サービスやアプリの研究開発を行い、当連結会計年度における研究開発費は